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技術 鋼材およびその製造方法

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 寺澤祐介
出願日 2019年9月4日 (1年5ヶ月経過) 出願番号 2019-571567
公開日 2020年10月22日 (3ヶ月経過) 公開番号 WO2020-054553
状態 特許登録済
技術分野 薄鋼板の熱処理 鋼の加工熱処理
主要キーワード バケットコンベヤー 運搬機器 衝撃摩耗 左辺値 耐摩耗鋼 運搬機械 試験片回 基地相
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年10月22日)のものです。
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図面 (2)

課題・解決手段

鋼材及びその製造方法を提供する。質量%で、C:0.10%以上2.50%以下、Mn:8.0%以上45.0%以下、P:0.300%以下、S:0.1000%以下、Ti:0.10%以上5.00%以下、Al:0.001%以上5.000%以下、N:0.5000%以下、O:0.1000%以下を含み、かつ、C、Ti、Mnを、25([C]−12.01[Ti]/47.87)+[Mn]≧25(ここで、[C]、[Ti]、[Mn]:各元素含有量(質量%))を満足するように含有し、残部はFe及び不可避不純物である成分組成と、面積率で、オーステナイト相を90%以上、Ti炭化物を0.2%以上含む組織と、を有する鋼材とする。このような組織は、上記した成分組成の鋼材を950℃以上の温度に加熱したのち、900℃から500℃の間の温度域を1℃/s超の冷却速度で冷却することにより得られる。これにより、耐摩耗性に優れた鋼材となる。なお、オーステナイト相の硬さを200HV以上に調整することにより、耐衝撃摩耗性が顕著に向上する。

概要

背景

建設土木鉱業などの分野で使用される、例えば、パワーショベルブルドーザーホッパーバケットコンベヤー岩石破砕装置などの産業機械運搬機器は、岩石、砂、鉱石などによるすべり摩耗衝撃摩耗などの摩耗に晒される。そのため、産業機械、運搬機器等の部材には、機械機器等の寿命向上という観点から、耐摩耗性に優れることが求められる。

鋼材の耐摩耗性は、鋼材硬さの増加に伴い、向上することが知られている。鋼組織のなかで、オーステナイト相は、歪が加わった際の硬化量、即ち、加工硬化性が大きい。従って、オーステナイト系鋼材は、例えば岩石が衝突するような衝撃力が加わる衝撃摩耗環境下において、使用中に摩耗面近傍で硬化が進行し、非常に優れた耐摩耗性を示す。さらにオーステナイト相は、フェライト相マルテンサイト相等の組織に比べて延性靱性が良好である。そこで、例えば、ハッドフィールド(Hadfield)鋼のように、高マンガン含有によりオーステナイト組織が得られるオーステナイト系鋼材が、安価な耐摩耗鋼材として、幅広く用いられてきた。

例えば、特許文献1には、「耐摩耗オーステナイト系鋼材及びその製造方法」が記載されている。特許文献1に記載された技術は、重量%で、マンガン(Mn):15〜25%、炭素(C):0.8〜1.8%、0.7C-0.56(%)≦Cu≦5%を満たす銅(Cu)、残部Feおよびその他の不可避的不純物からなり、−40℃でのシャルピー衝撃値が100J以上である溶接熱影響部の靭性に優れた耐摩耗オーステナイト系鋼材である。特許文献1に記載された技術によれば、高マンガン含有により安定してオーステナイト組織が得られ、さらに溶接後の熱影響部炭化物の生成を抑制でき、溶接熱影響部の靭性低下を防止することができるとしている。

また、特許文献2には、「耐摩耗オーステナイト系鋼材及びその製造方法」が記載されている。特許文献2に記載された耐摩耗オーステナイト系鋼材は、重量%で、8〜15%のマンガン(Mn)、23%<33.5C−Mn≦37%の関係を満たす炭素(C)、1.6C−1.4(%)≦Cu≦5%を満たす銅(Cu)、を含み残部Feおよびその他の不可避的不純物からなり、炭化物の面積分率で10%以下である、延性に優れた耐摩耗オーステナイト系鋼材である。特許文献2に記載された技術によれば、高マンガン含有により安定してオーステナイト組織が得られ、しかも鋼材内部の炭化物の形成も抑制でき、鋼材の靭性低下を防止することができるとしている。

概要

鋼材及びその製造方法を提供する。質量%で、C:0.10%以上2.50%以下、Mn:8.0%以上45.0%以下、P:0.300%以下、S:0.1000%以下、Ti:0.10%以上5.00%以下、Al:0.001%以上5.000%以下、N:0.5000%以下、O:0.1000%以下を含み、かつ、C、Ti、Mnを、25([C]−12.01[Ti]/47.87)+[Mn]≧25(ここで、[C]、[Ti]、[Mn]:各元素含有量(質量%))を満足するように含有し、残部はFe及び不可避不純物である成分組成と、面積率で、オーステナイト相を90%以上、Ti炭化物を0.2%以上含む組織と、を有する鋼材とする。このような組織は、上記した成分組成の鋼材を950℃以上の温度に加熱したのち、900℃から500℃の間の温度域を1℃/s超の冷却速度で冷却することにより得られる。これにより、耐摩耗性に優れた鋼材となる。なお、オーステナイト相の硬さを200HV以上に調整することにより、耐衝撃摩耗性が顕著に向上する。

目的

本発明は、かかる従来技術の問題に鑑み、耐摩耗性に優れたオーステナイト系鋼材及びその製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

質量%で、C:0.10%以上2.50%以下、Mn:8.0%以上45.0%以下、P:0.300%以下、S:0.1000%以下、Ti:0.10%以上5.00%以下、Al:0.001%以上5.000%以下、N:0.5000%以下、O(酸素):0.1000%以下を含み、かつ、C、Ti、Mnを、下記(1)式を満足する範囲にて含有し、残部がFe及び不可避不純物である成分組成と、面積率で、オーステナイト相を90%以上、Ti炭化物を0.2%以上含む組織と、を有する鋼材。記25([C]−12.01[Ti]/47.87)+[Mn]≧25……(1)ここで、[C]、[Ti]、[Mn]:各元素含有量(質量%)

請求項2

前記オーステナイト相は、ビッカース硬さが200HV以上である、請求項1に記載の鋼材。

請求項3

前記成分組成に加えてさらに、質量%で、Si:0.01%以上5.00%以下、Cu:0.1%以上10.0%以下、Ni:0.1%以上25.0%以下、Cr:0.1%以上30.0%以下、Mo:0.1%以上10.0%以下、Nb:0.005%以上2.000%以下、V:0.01%以上2.00%以下、W:0.01%以上2.00%以下、B:0.0003%以上0.1000%以下、Ca:0.0003%以上0.1000%以下、Mg:0.0001%以上0.1000%以下、REM:0.0005%以上0.1000%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項1または2に記載の鋼材。

請求項4

溶鋼を溶製し、鋳片とする鋳造工程と、該鋳片を加熱する加熱工程と、前記加熱した鋳片を熱間圧延して鋼材とする熱延工程と、前記鋼材に冷却を施す冷却工程と、を順次施す鋼材の製造方法であって、前記鋳片を、質量%で、C:0.10%以上2.50%以下、Mn:8.0%以上45.0%以下、P:0.300%以下、S:0.1000%以下、Ti:0.10%以上5.00%以下、Al:0.001%以上5.000%以下、N:0.5000%以下、O(酸素):0.1000%以下を含み、かつ、C、Ti、Mnを、下記(1)式を満足する範囲にて含有し、残部がFe及び不可避不純物である成分組成とし、前記加熱工程における加熱の温度を、950℃以上1300℃以下とし、前記冷却工程における冷却を、900〜500℃の温度範囲における平均冷却速度で、1℃/s超とする、鋼材の製造方法。記25([C]−12.01[Ti]/47.87)+[Mn]≧25……(1)ここで、[C]、[Ti]、[Mn]:各元素の含有量(質量%)

請求項5

前記鋳片は、前記成分組成に加えてさらに、質量%で、Si:0.01%以上5.00%以下、Cu:0.1%以上10.0%以下、Ni:0.1%以上25.0%以下、Cr:0.1%以上30.0%以下、Mo:0.1%以上10.0%以下、Nb:0.005%以上2.000%以下、V:0.01%以上2.00%以下、W:0.01%以上2.00%以下、B:0.0003%以上0.1000%以下、Ca:0.0003%以上0.1000%以下、Mg:0.0001%以上0.1000%以下、REM:0.0005%以上0.1000%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する、請求項4に記載の鋼材の製造方法。

請求項6

前記熱間圧延は、950℃以下の温度域での総圧下率が25%以上である、請求項4または5に記載の鋼材の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、鋼材およびその製造方法に係り、特にオーステナイト系鋼材耐摩耗性の向上に関する。

背景技術

0002

建設土木鉱業などの分野で使用される、例えば、パワーショベルブルドーザーホッパーバケットコンベヤー岩石破砕装置などの産業機械運搬機器は、岩石、砂、鉱石などによるすべり摩耗衝撃摩耗などの摩耗に晒される。そのため、産業機械、運搬機器等の部材には、機械機器等の寿命向上という観点から、耐摩耗性に優れることが求められる。

0003

鋼材の耐摩耗性は、鋼材硬さの増加に伴い、向上することが知られている。鋼組織のなかで、オーステナイト相は、歪が加わった際の硬化量、即ち、加工硬化性が大きい。従って、オーステナイト系鋼材は、例えば岩石が衝突するような衝撃力が加わる衝撃摩耗環境下において、使用中に摩耗面近傍で硬化が進行し、非常に優れた耐摩耗性を示す。さらにオーステナイト相は、フェライト相マルテンサイト相等の組織に比べて延性靱性が良好である。そこで、例えば、ハッドフィールド(Hadfield)鋼のように、高マンガン含有によりオーステナイト組織が得られるオーステナイト系鋼材が、安価な耐摩耗鋼材として、幅広く用いられてきた。

0004

例えば、特許文献1には、「耐摩耗オーステナイト系鋼材及びその製造方法」が記載されている。特許文献1に記載された技術は、重量%で、マンガン(Mn):15〜25%、炭素(C):0.8〜1.8%、0.7C-0.56(%)≦Cu≦5%を満たす銅(Cu)、残部Feおよびその他の不可避的不純物からなり、−40℃でのシャルピー衝撃値が100J以上である溶接熱影響部の靭性に優れた耐摩耗オーステナイト系鋼材である。特許文献1に記載された技術によれば、高マンガン含有により安定してオーステナイト組織が得られ、さらに溶接後の熱影響部炭化物の生成を抑制でき、溶接熱影響部の靭性低下を防止することができるとしている。

0005

また、特許文献2には、「耐摩耗オーステナイト系鋼材及びその製造方法」が記載されている。特許文献2に記載された耐摩耗オーステナイト系鋼材は、重量%で、8〜15%のマンガン(Mn)、23%<33.5C−Mn≦37%の関係を満たす炭素(C)、1.6C−1.4(%)≦Cu≦5%を満たす銅(Cu)、を含み残部Feおよびその他の不可避的不純物からなり、炭化物の面積分率で10%以下である、延性に優れた耐摩耗オーステナイト系鋼材である。特許文献2に記載された技術によれば、高マンガン含有により安定してオーステナイト組織が得られ、しかも鋼材内部の炭化物の形成も抑制でき、鋼材の靭性低下を防止することができるとしている。

先行技術

0006

特許第5879448号公報
特許第6014682号公報

発明が解決しようとする課題

0007

しかしながら、特許文献1,2に記載されたオーステナイト系鋼材では、鋼材に衝撃力が加わらない、例えば、砂が鋼材表面を擦るような摩耗形態、すなわちすべり摩耗のような摩耗形態では、鋼材表面に大きな硬化層が形成されないため、耐摩耗性の顕著な向上は得られない。

0008

本発明は、かかる従来技術の問題に鑑み、耐摩耗性に優れたオーステナイト系鋼材及びその製造方法を提供することを目的とする。ここでいう「耐摩耗性に優れた」とは、優れた耐すべり摩耗性と優れた耐衝撃摩耗性とを兼備することをいい、「鋼材」とは、板状の鋼板板材)、棒状の棒鋼棒材)、線状の線材、種々の断面形状の形鋼を含むものとする。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、上記した目的を達成するため、まず、オーステナイト系鋼材の耐すべり摩耗性に影響する各種要因について、鋭意検討を行った。その結果、オーステナイト系鋼材の耐すべり摩耗性を向上させるには、基地相(オーステナイト相)中に硬質粒子を含むことが有効であり、とくに、基地相(オーステナイト相)中に含むことができる粒子の中で、非常に高い硬さを有するTi炭化物が有効であることを見出した。すべり摩耗では、鋼材の最表層部分が連続的に削られることで摩耗が進行していくため、基地相(オーステナイト相)中に硬質粒子を含むことにより、摩耗が進行し鋼材最表層に硬質粒子が現れたときに、摩耗の進行に対して抵抗となり、耐摩耗性が向上し、摩耗寿命長寿命化する。

0010

一方、オーステナイト系鋼材の耐衝撃摩耗性を向上させるためには、安定なオーステナイト組織を保持することが肝要であり、しかも、常温においても安定なオーステナイト組織を安価に得るためには、オーステナイト安定化元素であるC、Mnの固溶量を多くする必要がある。しかし、上記したように、耐すべり摩耗性向上のために、基地相中に多量のTi炭化物を含むと、安定なオーステナイト組織の保持に有効なCの固溶量の減少を伴う。そこで、本発明者らは、オーステナイト安定化元素であるC、Mnの固溶量と、C、Mnのオーステナイト安定化能の違いを考慮し、次式(1)
25([C]−12.01[Ti]/47.87)+[Mn]≧ 25 ……(1)
(ここで、[C]、[Ti]、[Mn]:各元素の含有量(質量%))
関係式満足するように、C、Mn量を調整することが、優れた耐すべり摩耗性と優れた耐衝撃摩耗性とを兼備させるために、有効であることを新規に見出した。

0011

本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものであり、その要旨とするところは、次のとおりである。
(1) 質量%で、
C:0.10%以上2.50%以下、
Mn:8.0%以上45.0%以下、
P:0.300%以下、
S:0.1000%以下、
Ti:0.10%以上5.00%以下、
Al:0.001%以上5.000%以下、
N:0.5000%以下、
O(酸素):0.1000%以下
を含み、かつ、C、Ti、Mnを、下記(1)式を満足する範囲にて含有し、残部がFe及び不可避不純物である成分組成と、面積率で、オーステナイト相を90%以上、Ti炭化物を0.2%以上含む組織と、を有する鋼材。

25([C]−12.01[Ti]/47.87)+[Mn]≧ 25 ……(1)
ここで、[C]、[Ti]、[Mn]:各元素の含有量(質量%)

0012

(2) 前記オーステナイト相は、ビッカース硬さが200HV以上である、前記(1)に記載の鋼材。

0013

(3) 前記成分組成に加えてさらに、質量%で、
Si:0.01%以上5.00%以下、
Cu:0.1%以上10.0%以下、
Ni:0.1%以上25.0%以下、
Cr:0.1%以上30.0%以下、
Mo:0.1%以上10.0%以下、
Nb:0.005%以上2.000%以下、
V:0.01%以上2.00%以下、
W:0.01%以上2.00%以下、
B:0.0003%以上0.1000%以下、
Ca:0.0003%以上0.1000%以下、
Mg:0.0001%以上0.1000%以下、
REM:0.0005%以上0.1000%以下
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、前記(1)または前記(2)に記載の鋼材。

0014

(4)溶鋼を溶製し、鋳片とする鋳造工程と、該鋳片を加熱する加熱工程と、前記加熱した鋳片を熱間圧延して鋼材とする熱延工程と、前記鋼材に冷却を施す冷却工程と、を順次施す鋼材の製造方法であって、
前記鋳片を、質量%で、
C:0.10%以上2.50%以下、
Mn:8.0%以上45.0%以下、
P:0.300%以下、
S:0.1000%以下、
Ti:0.10%以上5.00%以下、
Al:0.001%以上5.000%以下、
N:0.5000%以下、
O(酸素):0.1000%以下
を含み、かつ、C、Ti、Mnを、下記(1)式を満足する範囲にて含有し、残部がFe及び不可避不純物である成分組成とし、
前記加熱工程における加熱の温度を、950℃以上1300℃以下とし、
前記冷却工程における冷却を、900〜500℃の温度範囲における平均冷却速度で、1℃/s超とする、鋼材の製造方法。

25([C]−12.01[Ti]/47.87)+[Mn]≧ 25 ……(1)
ここで、[C]、[Ti]、[Mn]:各元素の含有量(質量%)

0015

(5) 前記鋳片は、前記成分組成に加えてさらに、質量%で、
Si:0.01%以上5.00%以下、
Cu:0.1%以上10.0%以下、
Ni:0.1%以上25.0%以下、
Cr:0.1%以上30.0%以下、
Mo:0.1%以上10.0%以下、
Nb:0.005%以上2.000%以下、
V:0.01%以上2.00%以下、
W:0.01%以上2.00%以下、
B:0.0003%以上0.1000%以下、
Ca:0.0003%以上0.1000%以下、
Mg:0.0001%以上0.1000%以下、
REM:0.0005%以上0.1000%以下
のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する、前記(4)に記載の鋼材の製造方法。

0016

(6) 前記熱間圧延は、950℃以下の温度域での総圧下率が25%以上である、前記(4)または前記(5)に記載の鋼材の製造方法。

発明の効果

0017

本発明によれば、優れた耐すべり摩耗性と優れた耐衝撃摩耗性とを兼備する、耐摩耗性に優れたオーステナイト系鋼材を、提供でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、種々の摩耗環境下において稼動する産業機械、運搬機械等の寿命を向上できる、という効果もある。

図面の簡単な説明

0018

実施例で使用した摩耗試験装置の概略を模式的に示す説明図である。
実施例で使用した摩耗試験装置の概略を模式的に示す説明図である。

0019

本発明のオーステナイト系鋼材は、質量%で、C:0.10%以上2.50%以下、Mn:8.0%以上45.0%以下、P:0.300%以下、S:0.1000%以下、Ti:0.10%以上5.00%以下、Al:0.001%以上5.000%以下、N:0.5000%以下、O(酸素):0.1000%以下を含み、かつ、C、Ti、Mnを、次(1)式
25([C]−12.01[Ti]/47.87)+[Mn]≧ 25 ……(1)
(ここで、[C]、[Ti]、[Mn]:各元素の含有量(質量%))
の関係式を満足する範囲にて含有し、残部Fe及び不可避不純物である成分組成を有する。
まず、鋼材の成分組成の限定理由について説明する。なお、以下、成分組成に関する「質量%」は、特に断らない限り、単に「%」で記す。

0020

C:0.10%以上2.50%以下
Cは、オーステナイト相を安定化する元素であり、常温においてオーステナイト組織を得るために重要な元素である。このような効果を得るためには、0.10%以上のC含有を必要とする。Cが0.10%未満では、オーステナイト相の安定度不足し、常温において、十分なオーステナイト組織を得ることができない。一方、2.50%を超えると、硬度が高くなり、溶接部の靱性が低下する。そのため、本発明では、Cは0.10%以上2.50%以下の範囲に限定した。なお、好ましくは0.12%以上2.00%以下である。

0021

Mn:8.0%以上45.0%以下
Mnは、オーステナイト相を安定化する元素であり、常温においてオーステナイト組織を得るために重要な元素である。このような効果を得るためには、8.0%以上のMn含有を必要とする。Mnが8.0%未満では、オーステナイト相の安定度が不足し、十分なオーステナイト組織が得られない。一方、45.0%を超えると、オーステナイト相安定化の効果は飽和し、経済的に不利となる。そのため、本発明では、Mnは8.0%以上45.0%以下の範囲に限定した。なお、好ましくは10.0%以上40.0%以下である。

0022

P:0.300%以下
Pは、結晶粒界偏析して粒界脆化させ、鋼材の靭性を低下させる作用を有する元素である。本発明では、Pはできる限り低減することが望ましいが、0.300%以下であれば許容できる。好ましくは0.250%以下である。なお、Pは、不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であり、少ないほど好ましいが、過度の低P化は、精錬時間の増加や精錬コストの上昇を招くため、Pは0.001%以上とすることが好ましい。

0023

S:0.1000%以下
Sは、主として硫化物系介在物として鋼中に分散し、鋼の延性、靭性を低下させる元素である。そのため、本発明ではできるだけ低減することが望ましいが、0.1000%以下であれば許容できる。なお、好ましくは0.0800%以下である。Sは少ないほど好ましいが、過度の低S化は、精錬時間の増加や精錬コストの上昇を招くため、Sは0.0001%以上とすることが好ましい。

0024

Ti:0.10%以上5.00%以下
Tiは、本発明において重要な元素であり、硬質な炭化物を形成して、オーステナイト組織の耐すべり摩耗性を向上させる作用を有する元素である。このような効果を得るために、0.10%以上の含有を必要とする。一方、5.00%を超える含有は、延性および靭性を低下させる。そのため、Tiは0.10%以上5.00%以下の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.60%以上4.50%以下である。

0025

Al:0.001%以上5.000%以下
Alは、脱酸剤として有効に作用する元素であり、その効果を得るためには、0.001%以上の含有を必要とする。一方、5.000%を超えて含有すると、鋼の清浄度が低下し、延性および靭性が低下する。そのため、Alは0.001%以上5.000%以下とする。なお、好ましくは0.003%以上4.500%以下である。

0026

N:0.5000%以下
Nは、不純物として鋼中に不可避的に含有され、溶接部の延性、靱性を低下させる元素であり、できるだけ低減することが望ましいが、0.5000%以下であれば許容できる。好ましくは0.3000%以下である。Nは、少ないほど好ましいが、過度の低N化は精錬時間の増加や精錬コストの上昇を招く。このため、Nは0.0005%以上とすることが好ましい。

0027

O(酸素):0.1000%以下
Oは、不純物として鋼中に不可避的に含有され、酸化物等の介在物として鋼中に存在し、延性、靱性を低下させる元素であり、できるだけ低減することが望ましいが、0.1000%以下であれば許容できる。好ましくは0.0500%以下である。Oは、少ないほど好ましいが、過度の低酸素化は、精錬時間の増加や精錬コストの上昇を招くため、Oは0.0005%以上とすることが好ましい。

0028

本発明では、C、Ti、Mnを、上記した各範囲内で、かつ、次(1)式
25([C]−12.01[Ti]/47.87)+[Mn]≧ 25 ……(1)
(ここで、[C]、[Ti]、[Mn]:各元素の含有量(質量%))
の関係式を満足するように含有する。
(1)式の左辺は、オーステナイト相の安定化度を表わし、左辺値が大きいほど、オーステナイト相の安定化度が高いことを意味する。(1)式の左辺は、オーステナイト相の安定化に寄与する元素であるCの含有量とMnの含有量の和であり、各元素のオーステナイト安定化能を考慮して、オーステナイト安定化能に応じた係数を乗じている。なお、Cは、Ti炭化物として析出し、オーステナイト相の安定化に寄与しなくなった量を差し引いた有効含有量としている。
なお、C、Ti、Mn含有量が、(1)式を満足しない場合、オーステナイト安定度が不足し、常温で所望のオーステナイト組織が得られない。
また、オーステナイト相の安定化度の観点から、(1)式の左辺値は30以上であることが好ましい。

0029

本発明では、上記した成分が、基本の成分であるが、これら基本成分に加えてさらに、必要に応じて、選択元素として、Si:0.01%以上5.00%以下、Cu:0.1%以上10.0%以下、Ni:0.1%以上25.0%以下、Cr:0.1%以上30.0%以下、Mo:0.1%以上10.0%以下、Nb:0.005%以上2.000%以下、V:0.01%以上2.00%以下、W:0.01%以上2.00%以下、B:0.0003%以上0.1000%以下、Ca:0.0003%以上0.1000%以下、Mg:0.0001%以上0.1000%以下、REM:0.0005%以上0.1000%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することができる。

0030

Si、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、V、W、B、さらにCa、Mg、REMはいずれも、鋼材の強度(母材や溶接部の強度)を向上させる元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上を含有できる。

0031

Si:0.01%以上5.00%以下
Siは、脱酸剤として有効に作用するとともに、固溶して鋼材の高硬度化にも寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。Siが0.01%未満では、上記した効果を充分に得ることができない。一方、5.00%を超える含有は、延性および靭性を低下させることに加えて、介在物量が増加する等の問題を生じる。このようなことから、含有する場合には、Siは0.01%以上5.00%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.05%以上4.50%以下である。

0032

Cu:0.1%以上10.0%
Cuは、固溶してあるいは析出して鋼材の強度向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、10.0%を超えて含有しても、その効果は飽和し、経済的に不利となる。そのため、含有する場合には、Cuは0.1%以上10.0%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.5%以上8.0%以下である。

0033

Ni:0.1%以上25.0%以下
Niは、鋼材の強度向上に寄与するとともに、靭性を向上させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、25.0%を超えて含有しても、その効果が飽和し経済的に不利となる。そのため、含有する場合には、Niは0.1%以上25.0%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.5%以上20.0%以下である。

0034

Cr:0.1%以上30.0%以下
Crは、鋼の強度向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、30.0%を超えて含有すると、その効果が飽和し経済的に不利となる。そのため、含有する場合には、Crは0.1%以上30.0%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは、0.5%以上28.0%以下である。

0035

Mo:0.1%以上10.0%以下
Moは、鋼の強度向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、10.0%を超えて含有すると、その効果が飽和し経済的に不利となる。そのため、含有する場合には、Moは0.1%以上10.0%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.5%以上8.0%以下である。

0036

Nb:0.005%以上2.000%以下
Nbは、炭窒化物として析出することで、鋼の強度向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上の含有を必要とする。一方、2.000%を超える含有は、靱性を低下させる。そのため、含有する場合には、Nbは0.005%以上2.000%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.007%以上1.700%以下である。

0037

V:0.01%以上2.00%以下
Vは、炭窒化物として析出し、鋼の強度向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、2.00%を超える含有は、靱性を低下させる。そのため、含有する場合には、Vは0.01%以上2.00%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.02%以上1.80%以下である。

0038

W:0.01%以上2.00%以下
Wは、鋼の強度向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、2.00%を超える含有は、靱性を低下させる。そのため、含有する場合には、Wは0.01%以上2.00%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.02%以上1.80%以下である。

0039

B:0.0003%以上0.1000%以下
Bは、結晶粒界に偏析し、粒界強度の向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.0003%以上の含有を必要とする。一方、0.1000%を超えて含有すると、炭窒化物の粒界析出により靱性が低下する。そのため、含有する場合には、Bは0.0003%以上0.1000%の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.0005%以上0.0800%以下である。

0040

Ca:0.0003%以上0.1000%以下
Caは、高温における安定性が高い酸硫化物を形成して、結晶粒界をピンニングし、とくに溶接部の結晶粒の粗大化を抑制し結晶粒を細かく維持して、溶接継手部の強度および靱性の向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.0003%以上の含有を必要とする。一方、0.1000%を超えて含有すると、清浄度が低下して鋼の靭性が低下する。そのため、含有する場合には、Caは0.0003%以上0.1000%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.0005%以上0.0800%以下である。

0041

Mg:0.0001%以上0.1000%以下
Mgは、高温における安定性が高い酸硫化物を形成して、結晶粒界をピンニングし、とくに溶接部の結晶粒の粗大化を抑制し結晶粒を細かく維持して、とくに、溶接継手部の強度および靱性の向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.0001%以上の含有を必要とする。一方、0.1000%を超えて含有すると、清浄度が低下して鋼材の靭性が低下する。そのため、含有する場合には、Mgは0.0001%以上0.1000%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.0005%以上0.0800%以下である。

0042

REM:0.0005%以上0.1000%以下
REM(希土類金属)は、高温における安定性が高い酸硫化物を形成して、結晶粒界をピンニングし、とくに溶接部の結晶粒の粗大化を抑制し結晶粒を細かく維持して、溶接継手部の強度および靱性の向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.0005%以上の含有を必要とする。一方、0.1000%を超えて含有すると、清浄度が低下して鋼材の靭性が低下する。そのため、含有する場合には、REMは0.0005%以上0.1000%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.0010%以上0.0800%以下の範囲である。

0043

上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。

0044

本発明オーステナイト系鋼材は、上記した成分組成を有し、さらに面積率で、90%以上のオーステナイト相と、0.2%以上のTi炭化物と、を含む組織を有する。

0045

組織中のオーステナイト相:90%以上
本発明鋼材の組織は、耐衝撃摩耗性向上の観点からオーステナイト相を主とする。このような効果を得るために、オーステナイト相は、面積率で90%以上とする。オーステナイト相が、面積率で90%未満では、耐衝撃摩耗性が低下し、さらには、延性や靱性、加工性、溶接部(溶接熱影響部)の靱性も低下する。そのため、組織中のオーステナイト相は、面積率で90%以上とし、100%であってもよい。ここでいう「組織中のオーステナイト相」の割合は、介在物や析出物を除いた組織全量に対するオーステナイト相の割合(面積率)を示す。なお、オーステナイト相以外の組織は、面積率で合計10%未満の、フェライト相、ベイナイト組織マルテンサイト組織パーライト組織のうちの1種以上であってよい。

0046

組織中のオーステナイト相の面積率は、後方散乱電子回折(EBSP)解析を行い、得られたInverse Pole Figure(逆極点図マップから、介在物、析出物を除いた組織(フェライト相、ベイナイト組織、マルテンサイト組織、パーライト組織、オーステナイト相)全量に対するオーステナイト相の割合を算出することにより、求めるものとする。また、ここでいう「オーステナイト相の割合」は、鋼材の表面下1mm深さの位置で測定した値を用いるものとする。

0047

なお、耐摩耗性、とくに耐衝撃摩耗性をさらに向上させるためには、基地(オーステナイト相)の硬さ、すなわちオーステナイト相自体の硬さを高く維持することが好ましい。オーステナイト相の硬さを、とくにビッカース硬さで200HV以上とすることにより顕著な耐衝撃摩耗性向上が認められる。オーステナイト相硬さが200HV未満では、耐衝撃摩耗性の向上が少ない。このため、耐衝撃摩耗性の向上という観点からは、オーステナイト相の硬さを200HV以上とすることが好ましい。より好ましくは250HV以上である。また、延性を確保するため、好ましくは400HV以下であり、より好ましくは380HV以下である。

0048

Ti炭化物:0.2%以上
本発明では、組織中に、Al2O3、SiO2等の砂や岩石成分より硬質な粒子であるTi炭化物を含む。組織中に含まれるTi炭化物は硬質な粒子であり、砂や岩石成分によるすべり摩耗に対して抵抗となり、耐すべり摩耗性を向上させる作用を有する。このような効果を得るためには、Ti炭化物を、組織中に面積率で0.2%以上含む必要がある。このため、Ti炭化物の含有量は面積率で0.2%以上に限定した。好ましくは0.5%以上である。なお、Ti炭化物の含有量の上限はとくに限定されないが、鋼材の延性、靭性の観点から、面積率で10%以下とすることが好ましい。より好ましくは8.0%以下である。

0049

なお、本発明では、走査型電子顕微鏡(SEM)のエネルギー分散型X線分光法(EDS)を利用して、Ti炭化物を同定し、画像解析ソフトを用いて該Ti炭化物の総面積を測定し、Ti炭化物の面積率を算出した。なお、EDSの測定に際しては、原子分率でTiを10at%以上、Cを30at%以上含む析出物をTi炭化物としてカウントした。また、ここでいう「Ti炭化物の含有量」は、鋼材の表面下1mm深さの位置で測定した値を用いるものとする。

0050

つぎに、上記した成分組成、組織を有する鋼材の好ましい製造方法について説明する。
本発明鋼材の好ましい製造方法では、まず、溶鋼を、電気炉真空溶解炉等の常用溶製炉により溶製したのち、鋳造して鋳片を得る鋳造工程と、該鋳片を加熱する加熱工程と、をこの順に実施する。そして、加熱された鋳片を、熱間圧延(熱間加工)して鋼材とする熱延工程と、該熱延工程に引き続き、得られた鋼材に、冷却を施す冷却工程と、を実施する。このような工程により得られる鋼材としては、板状の鋼板、棒状の棒鋼、線状の線材、H形等の種々の断面形状の形鋼等がある。

0051

本発明の好ましい製造方法では、まず、電気炉、真空溶解炉等の常用の溶製炉により溶製した溶鋼を鋳造して、上記した所定の成分組成を有する鋳片とする鋳造工程を行う。

0052

通常、鋳造時の冷却速度は非常に遅いため、鋳造時に、含有するCが、Ti炭化物以外の炭化物としても析出することがある。含有するCがTi炭化物以外の炭化物として析出すると、オーステナイト相の安定度が低下する。そのため、常温まで冷却した後に、オーステナイト相を安定して形成しにくくなる。

0053

そこで、本発明では、上記した成分組成を有する鋳片を加熱する加熱工程を行う。

0054

ここでいう「加熱」する温度、すなわち「加熱温度」は、Ti炭化物以外の炭化物が固溶する温度域である950℃以上1300℃以下の温度域とする。Ti炭化物は、溶鋼が凝固した後の冷却時に生成し、その固溶温度は、鋼の融点に近く非常に高温である。そのため、上記した温度範囲へ加熱する工程では、Ti炭化物は、固溶せずに残存し、Ti炭化物以外の炭化物が固溶する。

0055

加熱温度が950℃未満では、鋳造時に析出した炭化物が固溶することはない。このため、固溶C量が不足し、オーステナイト相の安定化度が低く、室温まで冷却した後に、オーステナイト相が得られない。一方、加熱温度が1300℃を超えると、加熱温度が高くなりすぎて、加熱のための費用が増大し経済的に不利となる。そのため、加熱する温度は950℃以上1300℃以下の範囲の温度に限定した。好ましくは、980℃以上1270℃以下である。なお、上記した温度は、鋼材の表面下1mmの位置での温度である。

0056

ついで、加熱された鋳片に、熱間圧延(熱間加工)を施して所定形状の鋼材とする熱延工程を行う。

0057

なお、本発明では、所望の寸法形状の鋼材に圧延(加工)できる条件であれば、温度、圧下率等の圧延(加工)条件はとくに限定する必要はない。なお、鋼材の耐摩耗性、とくに耐衝撃摩耗性をさらに向上させようとする際には、基地であるオーステナイト相の硬さを高くする必要がある。この場合、熱間圧延を、950℃以下の温度域での総圧下率が25%以上となる条件で、行うことが好ましい。

0058

なお、950℃以下の温度域での総圧下率rは、次式
r(%)={(ti−tf)/ti}×100
(ここで、ti:圧延中に鋼板温度が950℃となった時の板厚(mm)、tf:圧延終了時の板厚(mm))
で算出できる。

0059

950℃以下の温度域での総圧下率が25%以上となる条件で、熱間圧延を行うことにより、オーステナイト相の硬さが200HV以上と高くなり、耐摩耗性、とくに耐衝撃摩耗性が向上する。950℃以下の温度域での総圧下率が25%未満では、オーステナイト相の硬さ向上が不十分である。総圧下率は、好ましくは30%以上である。また、圧延能率を考慮すると、総圧下率は80%以下とするのが好ましく、70%以下がより好ましい。なお、950℃を超える温度域での圧下で導入された転位は、オーステナイト相の再結晶消費され、オーステナイト相の硬さ向上への寄与は少ない。その観点から、仕上圧延温度は930℃以下とするのが好ましい。また、操業効率を考慮すると、仕上圧延温度は600℃以上とするのが好ましく、650℃以上がより好ましい。

0060

加熱された鋳片に熱間圧延を施す工程に引続き、900℃以下500℃以上の温度範囲の平均冷却速度が1℃/s超の冷却を施す冷却工程を行う。

0061

冷却工程では、900℃から500℃間での平均冷却速度を1℃/s超に調整する。900℃から500℃間での平均冷却速度が1℃/s以下では、炭化物が析出し、固溶C量が減少し、オーステナイト安定化度が不足することにより、冷却後に所望のオーステナイト相が得られない。そのため、冷却は、900℃から500℃の温度範囲での平均冷却速度を1℃/s超とする。なお、好ましくは2℃/s以上である。冷却方法は、上記した冷却速度を達成できる常用の冷却方法がいずれも適用できる。

0062

また、平均冷却速度の上限はとくに限定する必要はないが、平均冷却速度が300℃/sを超えるような急速冷却を実現するためには、高価な冷却設備を必要とする。そのため、冷却における900℃から500℃間での平均冷却速度は300℃/s以下とすることが好ましい。より好ましくは200℃/s以下である。なお、上記した温度は、鋼材の表面下1mm位置での温度である。
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに説明する。

0063

(実施例1)
まず、真空溶解炉により、溶鋼を溶製し、鋳造して、表1に示す成分組成の鋳片(肉厚:100〜200mm)を製造した。ついで、得られた鋳片を、表2に示す加熱温度に加熱する加熱工程と、加熱された鋳片に、表2に示す条件で熱間圧延を施し表2に示す板厚の鋼板(鋼材)とする熱延工程と、引続き、得られた鋼板に、表2に示す、900℃から500℃間の平均冷却速度で冷却を施す冷却工程と、を順次行い、鋼材(鋼板)を得た。なお、一部の熱間圧延では、950℃以下の温度域での圧下率(累積圧下率)を調整した熱間圧延とした。

0064

また、熱延工程後の冷却工程は、冷却を、水冷あるいは空冷、あるいはそれらの組合せにより行った。なお、平均冷却速度は、鋼板の表面下1mmの位置に取り付けた熱電対で測定した温度に基づき算出した。冷却開始温度が900℃未満となった場合には、平均冷却速度は冷却開始温度から500℃の間で算出した。

0065

得られた鋼板について、硬さ測定試験組織観察、および摩耗試験を実施し、表面下1mm部でのオーステナイト相の硬さ、オーステナイト相の面積率、Ti炭化物の面積率を求め、さらに、耐すべり摩耗性、耐衝撃摩耗性を評価した。試験方法はつぎのとおりとした。

0066

(1)硬さ測定試験
得られた各鋼板の所定の位置から、硬さ測定用試験片採取し、板厚方向断面が測定面となるように研磨したのち、ビッカース硬度計(試験力:10kgf)で表面下1mmの位置におけるオーステナイト相のビッカース硬さHVを各10点、測定し、その平均値を当該鋼板の硬さとした。なお、オーステナイト相が存在しない場合には、硬さの測定は行わなかった。

0067

(2)組織観察
得られた各鋼板の所定の位置から、観察面が、表面下1mmの位置となるように、組織観察用試験片を採取し、観察面を研削、研磨(鏡面)した。

0068

(2−1)オーステナイト相面積率
採取した組織観察用試験片を用い、鏡面研磨された観察面について、後方散乱電子回折(EBSP)解析を行った。EBSP解析は、1mm×1mmの範囲を、測定電圧:20kV、ステップサイズ:1μmの条件で行い、得られたInverse Pole Figure(逆極点図)マップから、介在物、析出物を除いた組織(フェライト相、ベイナイト組織、マルテンサイト組織、パーライト組織、オーステナイト相)全量に対するオーステナイト相の割合(面積率)を算出した。

0069

(2−2)Ti炭化物面積率
採取した組織観察用試験片を用いて、鏡面研磨された観察面について、走査型電子顕微鏡(SEM)のエネルギー分散型X線分光法(EDS)を用いて、1mm×1mmの範囲を、加速電圧:15kV、ステップサイズ:1μmの条件で、解析し、Ti炭化物を同定し、画像解析ソフトを用いて該Ti炭化物の総面積を測定し、Ti炭化物の面積率を算出した。なお、EDSの測定に際しては、原子分率でTiを10at%以上、Cを30at%以上含む析出物をTi炭化物としてカウントした。

0070

(3)摩耗試験
鋼材の耐摩耗性は、主に表面の特性によって決まる。そこで、得られた鋼板の表面下1mmの位置が試験位置試験面)となるように、摩耗試験片10(厚さ10mm×幅25mm×長さ75mm)を採取した。なお、試験片の厚さは、鋼板厚さが10mmを超える場合には、減厚して厚さ10mmに調整した。鋼板厚さが10mm以下である場合には、試験位置(表面下1mm)の調整以上の減厚は行わなかった。

0071

(3−1)衝撃摩耗試験
各鋼板から採取した摩耗試験片10を各3本ずつ同時に、図1に示す摩耗試験装置に装着して、衝撃摩耗試験を実施した。なお、試験片は、試験面が摩耗材2と衝突する向きに装着した。また、摩耗試験の条件は、
ドラム回転速度:45rpm、
試験片回転速度:600rpm
とした。なお、試験片回転数が10000回ごとに、摩耗材を入れ替え試験し、試験片回転数が合計で50000回に達した時点で、試験を終了した。摩耗材2としては、SiO2を90%以上含む石(円相当直径5〜35mm)を使用した。なお、比較として、軟鋼板SS400)から採取した摩耗試験片について、同様の摩耗試験を実施した。
試験後、各試験片の摩耗量(試験前と試験後の重量変化(減少)量)を測定した。得られた各試験片の摩耗量の平均値を各鋼板の摩耗量の代表値とした。
そして、得られた摩耗量から、軟鋼板の摩耗量と各鋼板(試験鋼板)の摩耗量との比、(軟鋼板の摩耗量)/(各鋼板(試験鋼板)の摩耗量)を、耐衝撃摩耗比として算出した。この耐衝撃摩耗比が大きいほど、各鋼板の耐衝撃摩耗性が優れていることを意味する。ここで、耐衝撃摩耗比が1.7以上である鋼材を優れた耐衝撃摩耗性を有するとして合格と評価し、それ以外を不合格と評価した。

0072

(3−2)すべり摩耗試験
各鋼板から採取した摩耗試験片10を、図2に示す摩耗試験装置に装着して、AMTM G−65の規定に準拠して、すべり摩耗試験を実施した。摩耗試験は、各鋼板で各3本とした。摩耗材は、SiO2を90%以上含む砂(円相当直径210〜300μm)を使用した。なお、比較として、軟鋼板(SS400)から採取した摩耗試験片について、同様の摩耗試験を実施した。試験条件は、下記のとおり、
摩耗材(砂)の流量:300g/min、
ラバーホイール回転数:200±10rpm、
荷重:130±3.9N
とした。ラバーホイール回転数が2000回に達した時点で、試験を終了した。
試験後、各試験片の摩耗量(試験前と試験後の重量変化(減少)量)を測定した。得られた各試験片の摩耗量の平均値を各鋼板の摩耗量の代表値とした。
そして、得られた摩耗量から、軟鋼板の摩耗量と各鋼板(試験鋼板)の摩耗量との比、(軟鋼板の摩耗量)/(各鋼板(試験鋼板)の摩耗量)を、耐すべり摩耗比として算出した。この耐すべり摩耗比が大きいほど、各鋼板の耐すべり摩耗性が優れていることを意味する。ここで、耐すべり摩耗比が、3.0以上である鋼材を優れた耐すべり摩耗性を有するとして合格と評価し、それ以外を不合格と評価した。
得られた結果を表2に示す。

0073

0074

0075

本発明例(鋼材No.1〜No.31)はいずれも、組織が90%以上のオーステナイト相を含み、0.2%以上のTi炭化物が含まれた組織となり、優れた耐すべり摩耗性と優れた耐衝撃摩耗性を兼備した鋼材(鋼板)となっている。これに対して、本発明の範囲を外れる比較例(鋼材No.32〜No.45)では、オーステナイト相が90%未満であるか、あるいはTi炭化物の含有量が0.2%未満である組織となり、耐すべり摩耗性、耐衝撃摩耗性のうち、少なくとも一方が低下している。

0076

例えば、C含有量が低い鋼材No.32、No.35では、オーステナイト安定度が低下し、オーステナイト相の割合が低いため、耐衝撃摩耗性が低下している。Mn含有量が低い鋼材No.33、No.37では、オーステナイト安定度が低く、オーステナイト相の割合が低いため、耐衝撃摩耗性が低下している。(1)式を満足しない鋼材No.34、No.36では、オーステナイト安定度が低く、オーステナイト相の割合が低いため、耐衝撃摩耗性が低下している。また、Ti含有量が低い鋼材No.38、No.39では、Ti炭化物の含有量が低いため、耐すべり摩耗性が低下している。加熱後の冷却速度が遅い鋼材No.40、No.41、No.44、No.45では、オーステナイト相の形成が認められず、耐衝撃摩耗性が低下している。また、加熱温度が低い鋼材No.42、No.43、No.46では、オーステナイト相の割合が少ないため、耐衝撃摩耗性が低下している。

0077

(実施例2)
真空溶解炉により、溶鋼を溶製し、鋳造して、表3に示す成分組成の鋳片(肉厚:100〜200mm)を製造した。ついで、得られた鋳片を、表4に示す加熱温度に加熱する加熱工程と、加熱された鋳片に、表2に示す条件で熱間圧延を施し表4に示す板厚の鋼板(鋼材)とする熱延工程と、引続き、鋼板に、表4に示す、900℃から500℃間の平均冷却速度で冷却を施す冷却工程と、を順次行い、鋼材(鋼板)を得た。なお、熱延工程では、表4に示すように、950℃以下の温度域での圧下率(累積圧下率)を調整し、表4に示す仕上圧延温度とする熱間圧延を施した。

0078

また、熱延工程後の冷却工程は、冷却を、水冷あるいは空冷、あるいはそれらの組合せにより行った。なお、平均冷却速度は、鋼板の表面下1mmの位置に取り付けた熱電対で測定した温度に基づき算出した。冷却開始温度が900℃未満である場合には、平均冷却速度は冷却開始温度から500℃の間で算出した。

0079

得られた鋼板について、実施例1と同様に、硬さ測定試験、組織観察、および摩耗試験を実施し、表面下1mm部でのオーステナイト相の硬さ、オーステナイト相の面積率、Ti炭化物の面積率を求め、さらに、耐すべり摩耗性、耐衝撃摩耗性を実施例1と同様に、評価した。
得られた結果を表4に併記した。

0080

0081

0082

本発明例(鋼材No.51〜No.81)はいずれも、組織が90%以上のオーステナイト相を含み、かつ該オーステナイト相の硬さ(表面下1mmの位置)が200HV以上で、さらに0.2%以上のTi炭化物が含まれた組織となり、優れた耐すべり摩耗性と優れた耐衝撃摩耗性を兼備した鋼材(鋼板)となっている。オーステナイト相の硬さ(表面下1mmの位置)が200HV未満である本発明例(鋼材No.96〜No.98)に比較して、とくに耐衝撃摩耗性の向上が著しい。

0083

一方、本発明の範囲を外れる比較例(鋼材No.82〜No.95)では、オーステナイト相が90%未満であるか、あるいはTi炭化物の含有量が0.2%未満である組織となり、耐すべり摩耗性、耐衝撃摩耗性のうち、少なくとも一方が低下している。

実施例

0084

例えば、C含有量が低い鋼材No.82、No.85では、オーステナイト安定度が低下し、オーステナイト相の割合が低いため、耐衝撃摩耗性が低下している。Mn含有量が低い鋼材No.83、No.87では、オーステナイト安定度が低く、オーステナイト相の割合が低いため、耐衝撃摩耗性が低下している。(1)式を満足しない鋼材No.84、No.86では、オーステナイト安定度が低く、オーステナイト相の割合が低いため、耐衝撃摩耗性が低下している。また、Ti含有量が低い鋼材No.88、No.89では、Ti炭化物の含有量が低いため、耐すべり摩耗性が低下している。加熱後の冷却速度が遅い鋼材No.90、No.91、No.94、No.95では、オーステナイト相の形成が認められず、耐衝撃摩耗性が低下している。また、加熱温度が低い鋼材No.92、No.93では、オーステナイト相の割合が少ないため、耐衝撃摩耗性が低下している。

0085

ドラム
2摩耗材(石)
10摩耗試験片
21ラバーホイール
22
23ホッパー
24 摩耗材(砂)

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