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技術 ダイシングフィルム基材用樹脂組成物、ダイシングフィルム基材およびダイシングフィルム

出願人 三井・ダウポリケミカル株式会社
発明者 中野重則佐久間雅巳高岡博樹
出願日 2019年8月5日 (2年6ヶ月経過) 出願番号 2020-535743
公開日 2021年3月11日 (11ヶ月経過) 公開番号 WO2020-031928
状態 特許登録済
技術分野 積層体(2) ダイシング 高分子組成物
主要キーワード 伸長距離 試験片サンプル 重層体 基材用樹脂組成物 拡張テーブル 紫外線硬化成分 デンプン粉 樹脂投入口
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課題・解決手段

高い強度と高い熱収縮性両立したダイシングフィルムを製造するためのダイシングフィルム基材用樹脂組成物を提供する。エチレン不飽和カルボン酸不飽和カルボン酸エステル共重合体アイオノマー(A)30質量部以上90質量部以下と、エチレン系共重合体(B)10質量部以上70質量部以下(ただし、成分(A)および成分(B)との合計を100質量部とする)とを含有し、JIS K7206−1999で規定されるビカット軟化点が50℃未満である、ダイシングフィルム基材用樹脂組成物、および当該樹脂組成物を用いたダイシングフィルム用基材およびダイシングフィルム。

概要

背景

IC等の半導体装置製造過程においては、回路パターンを形成した半導体ウエハ薄膜化した後、半導体ウエハをチップ単位分断するためのダイシング工程を行うことが一般的である。ダイシング工程においては、半導体ウエハの裏面に伸縮性を有するウエハ加工用フィルムダイシングフィルムまたはダイシングテープという)を貼着した後に、ダイシングブレードレーザー光などにより半導体ウエハをチップ単位に分断する。そして次の拡張工程(エキスパンド工程ともいう)においては、切断されたウエハに対応するダイシングテープを拡張することにより、チップ小片化する。

エキスパンド工程においては、例えば、ダイシングフィルムの下に設けた拡張テーブル押し上げることで、ダイシングフィルムを拡張(エキスパンド)する。このとき、チップを分割するためには、拡張テーブルの全面にわたってダイシングフィルムが均一に拡張することが重要である。また、拡張テーブルの周縁部でダイシングフィルムにかかる応力は、拡張テーブルの中心部よりも大きいため、拡張工程後のダイシングフィルムは、拡張テーブル周縁部に対応した部分にたるみが生じる。このようなたるみは分割されたチップの間隔を不均一にし、さらには後の工程における製品不良の原因となり得る。

ダイシングフィルムのたるみを解消する手段として、たるんだ部分に実温度約80〜100℃の温風を吹きかけてフィルムを加熱することで収縮させ、元の状態に復元するヒートシリンク工程が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この工程を実施するためには、ダイシングフィルムは、80℃程度の温度において高い熱収縮性を有する必要がある。

また、近年着目されているダイシング方法に、ステルスダイシング登録商標)法がある。当該方法においては、レーザー光によってウエハの表面ではなく、内部に亀裂を形成し、低温(約−15℃〜0℃)で実施する次の拡張工程において、ダイシングフィルムの応力を利用してウエハを分断する。こうすることによって、ダイシング工程における半導体製品のロスを抑制し、収率を上げることができる。ここで使用するダイシングフィルムとしては、ウエハの分断に必要な応力に耐えうる強度と、ウエハ分断時に発生し得るたるみをヒートシュリンク工程で解消するための熱収縮性とを両立するものが求められている。

ダイシングフィルムに用いるダイシングフィルム用基材として、カルボキシル基を有する化合物陽イオン架橋したアイオノマーと、オクテン含有共重合体とを有するダイシングフィルム基材(特許文献2)、JIS K7206で規定されるビカット軟化点が80℃以上の熱可塑性樹脂からなる最下層と、JIS K7206で規定されるビカット軟化点が50℃以上80℃未満の熱可塑性樹脂からなる他の層とを有するダイシングフィルム基材(特許文献3)、およびJIS K7206で規定されるビカット軟化点が50℃以上90℃未満の熱可塑性樹脂からなるダイシングフィルム基材(特許文献4)が知られている。

また、特許文献5には、ステルスダイシング(登録商標)に好適な、拡張性に優れたダイシングフィルムとして、−10℃における初期弾性率が200MPa以上、380MPa以下であり、Tanδ(損失弾性率貯蔵弾性率)が0.080以上、0.3以下である、ダイシングフィルムが開示されている。

概要

高い強度と高い熱収縮性を両立したダイシングフィルムを製造するためのダイシングフィルム基材用樹脂組成物を提供する。エチレン不飽和カルボン酸不飽和カルボン酸エステル共重合体のアイオノマー(A)30質量部以上90質量部以下と、エチレン系共重合体(B)10質量部以上70質量部以下(ただし、成分(A)および成分(B)との合計を100質量部とする)とを含有し、JIS K7206−1999で規定されるビカット軟化点が50℃未満である、ダイシングフィルム基材用樹脂組成物、および当該樹脂組成物を用いたダイシングフィルム用基材およびダイシングフィルム。

目的

本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
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請求項1

エチレン不飽和カルボン酸不飽和カルボン酸エステル共重合体アイオノマー(A)30質量部以上90質量部以下と、エチレン系共重合体(B)10質量部以上70質量部以下(ただし、成分(A)および成分(B)との合計を100質量部とする)とを含有し、JISK7206−1999で規定されるビカット軟化点が50℃未満である、ダイシングフィルム基材用樹脂組成物

請求項2

前記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体のアイオノマー(A)の、JISK7206−1999で規定されるビカット軟化点が、25℃以上60℃以下である、請求項1に記載のダイシングフィルム基材用樹脂組成物。

請求項3

前記エチレン系共重合体(B)が、JISK7206−1999で規定されるビカット軟化点が50℃以下の樹脂、または前記ビカット軟化点を持たない樹脂である、請求項1または請求項2に記載のダイシングフィルム基材用樹脂組成物。

請求項4

前記エチレン系共重合体(B)が、エチレン・α−オレフィン共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のダイシングフィルム基材用樹脂組成物。

請求項5

前記エチレン系共重合体(B)の、JISK7210−1999に準拠した方法により190℃、荷重2160gにて測定されるメルトフローレートMFR)が、0.2g/10分〜30.0g/10分である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のダイシングフィルム基材用樹脂組成物。

請求項6

前記ダイシングフィルム基材用樹脂組成物の、JISK7210−1999に準拠した方法により190℃、荷重2160gにて測定されるメルトフローレート(MFR)が、0.1g/10分〜50g/10分である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のダイシングフィルム基材用樹脂組成物。

請求項7

請求項1〜6のいずれか一項に記載のダイシングフィルム基材用樹脂組成物を含む層を少なくとも一層含む、ダイシングフィルム基材

請求項8

請求項1〜6のいずれか一項に記載のダイシングフィルム基材用樹脂組成物を含む第1樹脂層と、前記第1樹脂層に積層された、樹脂(C)を含む第2樹脂層とを含む、請求項7に記載のダイシングフィルム基材。

請求項9

前記樹脂(C)が、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体および前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載のダイシングフィルム基材。

請求項10

請求項7〜9のいずれか一項に記載のダイシングフィルム基材と、前記ダイシングフィルム基材の少なくとも一方の面に積層された粘着層と、を有することを特徴とする、ダイシングフィルム。

技術分野

0001

本発明は、ダイシングフィルム基材用樹脂組成物、ならびにそれを用いたダイシングフィルム基材およびダイシングフィルムに関する。

背景技術

0002

IC等の半導体装置製造過程においては、回路パターンを形成した半導体ウエハ薄膜化した後、半導体ウエハをチップ単位分断するためのダイシング工程を行うことが一般的である。ダイシング工程においては、半導体ウエハの裏面に伸縮性を有するウエハ加工用フィルム(ダイシングフィルムまたはダイシングテープという)を貼着した後に、ダイシングブレードレーザー光などにより半導体ウエハをチップ単位に分断する。そして次の拡張工程(エキスパンド工程ともいう)においては、切断されたウエハに対応するダイシングテープを拡張することにより、チップ小片化する。

0003

エキスパンド工程においては、例えば、ダイシングフィルムの下に設けた拡張テーブル押し上げることで、ダイシングフィルムを拡張(エキスパンド)する。このとき、チップを分割するためには、拡張テーブルの全面にわたってダイシングフィルムが均一に拡張することが重要である。また、拡張テーブルの周縁部でダイシングフィルムにかかる応力は、拡張テーブルの中心部よりも大きいため、拡張工程後のダイシングフィルムは、拡張テーブル周縁部に対応した部分にたるみが生じる。このようなたるみは分割されたチップの間隔を不均一にし、さらには後の工程における製品不良の原因となり得る。

0004

ダイシングフィルムのたるみを解消する手段として、たるんだ部分に実温度約80〜100℃の温風を吹きかけてフィルムを加熱することで収縮させ、元の状態に復元するヒートシリンク工程が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この工程を実施するためには、ダイシングフィルムは、80℃程度の温度において高い熱収縮性を有する必要がある。

0005

また、近年着目されているダイシング方法に、ステルスダイシング登録商標)法がある。当該方法においては、レーザー光によってウエハの表面ではなく、内部に亀裂を形成し、低温(約−15℃〜0℃)で実施する次の拡張工程において、ダイシングフィルムの応力を利用してウエハを分断する。こうすることによって、ダイシング工程における半導体製品のロスを抑制し、収率を上げることができる。ここで使用するダイシングフィルムとしては、ウエハの分断に必要な応力に耐えうる強度と、ウエハ分断時に発生し得るたるみをヒートシュリンク工程で解消するための熱収縮性とを両立するものが求められている。

0006

ダイシングフィルムに用いるダイシングフィルム用基材として、カルボキシル基を有する化合物陽イオン架橋したアイオノマーと、オクテン含有共重合体とを有するダイシングフィルム基材(特許文献2)、JIS K7206で規定されるビカット軟化点が80℃以上の熱可塑性樹脂からなる最下層と、JIS K7206で規定されるビカット軟化点が50℃以上80℃未満の熱可塑性樹脂からなる他の層とを有するダイシングフィルム基材(特許文献3)、およびJIS K7206で規定されるビカット軟化点が50℃以上90℃未満の熱可塑性樹脂からなるダイシングフィルム基材(特許文献4)が知られている。

0007

また、特許文献5には、ステルスダイシング(登録商標)に好適な、拡張性に優れたダイシングフィルムとして、−10℃における初期弾性率が200MPa以上、380MPa以下であり、Tanδ(損失弾性率貯蔵弾性率)が0.080以上、0.3以下である、ダイシングフィルムが開示されている。

先行技術

0008

特開平9−007976公報
特開2000−345129号公報
特開2009−231700号公報
特開2011−216508号公報
特開2015−185591号公報

発明が解決しようとする課題

0009

特許文献1には、ヒートシュリンク工程によるたるみの除去が可能なダイシングフィルムとして、例えば、融点が71℃のアイオノマー(アクリル酸エステルメタクリル酸エステル等を重合させた3元体重合体のアイオノマー)と、エチレン酢酸ビニル共重合体とのブレンドからなる層を有するダイシングフィルム等が記載されている。しかし、ダイシングフィルムの拡張性や強度といった、ダイシングフィルムに必要な基本性能について何ら記載はない。

0010

特許文献2には、ダイシングフィルム用基材の具体例として、エチレン/メタクリル酸/アクリル酸エステルの三元共重合体などのアイオノマーと、オクテン含有共重合体とを有するダイシングフィルム用基材が記載されている。しかし、ダイシングフィルムの熱収縮性に関する記載はない。

0011

ビカット軟化点が80℃以上の熱可塑性樹脂からなる層を有する特許文献3のダイシングフィルム基材や、ビカット軟化点が50℃以上90℃未満の熱可塑性樹脂からなる特許文献4のダイシングフィルム基材は、本発明者らの研究によると、80℃における熱収縮性が低く、ヒートシュリンク工程によってたるみを元の状態に復元するのは難しいと考えられる。

0012

また、特許文献5には、エチレン・α−オレフィン共重合体や、エチレン・α−オレフィン共重合体のアイオノマーを含む基材を有するダイシングフィルムが記載されている。しかし、エチレン・不飽和カルボン酸不飽和カルボン酸エステルといった3元以上の多元共重合体のアイオノマーや、3元以上の多元共重合体とエチレン系共重合体とを含む樹脂組成物を含むダイシングフィルム用基材に関する記載はない。

0013

本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、高い強度と高い熱収縮性を両立したダイシングフィルムを製造するためのダイシングフィルム基材用樹脂組成物を提供することにある。さらに本発明の課題は、本発明のダイシングフィルム基材用樹脂組成物を用いたダイシングフィルム基材およびダイシングフィルムを提供することにある。

課題を解決するための手段

0014

即ち、本発明によれば、以下に示すダイシングフィルム基材用樹脂組成物、ダイシングフィルム基材、およびダイシングフィルムが提供される。

0015

[1]エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体のアイオノマー(A)30質量部以上90質量部以下と、エチレン系共重合体(B)10質量部以上70質量部以下(ただし、成分(A)および成分(B)との合計を100質量部とする)とを含有し、JIS K7206−1999で規定されるビカット軟化点が50℃未満である、ダイシングフィルム基材用樹脂組成物。
[2] 前記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体のアイオノマー(A)の、JIS K7206−1999で規定されるビカット軟化点が、25℃以上60℃以下である、[1]に記載のダイシングフィルム基材用樹脂組成物。
[3] 前記エチレン系共重合体(B)が、JIS K7206−1999で規定されるビカット軟化点が50℃以下の樹脂、または前記ビカット軟化点を持たない樹脂である、[1]または[2]に記載のダイシングフィルム基材用樹脂組成物。
[4] 前記エチレン系共重合体(B)が、エチレン・α−オレフィン共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種である、[1]〜[3]のいずれかに記載のダイシングフィルム基材用樹脂組成物。
[5] 前記エチレン系共重合体(B)の、JIS K7210−1999に準拠した方法により190℃、荷重2160gにて測定されるメルトフローレートMFR)が、0.2g/10分〜30.0g/10分である、[1]〜[4]のいずれかに記載のダイシングフィルム基材用樹脂組成物。
[6] 前記ダイシングフィルム基材用樹脂組成物の、JIS K7210−1999に準拠した方法により190℃、荷重2160gにて測定されるメルトフローレート(MFR)が、0.1g/10分〜50g/10分である、[1]〜[5]のいずれかに記載のダイシングフィルム基材用樹脂組成物。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載のダイシングフィルム基材用樹脂組成物を含む層を少なくとも一層含む、ダイシングフィルム基材。
[8] [1]〜[6]のいずれか一項に記載のダイシングフィルム基材用樹脂組成物を含む第1樹脂層と、前記第1樹脂層に積層された、樹脂(C)を含む第2樹脂層とを含む、[7]に記載のダイシングフィルム基材。
[9] 前記樹脂(C)が、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体および前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[8]に記載のダイシングフィルム基材。
[10] [7]〜[9]の一項に記載のダイシングフィルム基材と、前記ダイシングフィルム基材の少なくとも一方の面に積層された粘着層と、を有することを特徴とする、ダイシングフィルム。

発明の効果

0016

本発明は、高い強度と高い熱収縮性を両立したダイシングフィルムを製造するためのダイシングフィルム基材用樹脂組成物、ならびにそれを用いたダイシングフィルム基材およびダイシングフィルムを提供する。

図面の簡単な説明

0017

本発明のダイシングフィルム基材の一実施形態を示す断面図である。
本発明のダイシングフィルム基材の一実施形態を示す断面図である。
本発明のダイシングフィルムの一実施形態を示す断面図である。
本発明のダイシングフィルムの一実施形態を示す断面図である。

0018

以下、本発明のダイシングフィルム基材用樹脂組成物について詳細に説明すると共に、ダイシングフィルム基材およびダイシングフィルムについても詳述する。
尚、本明細書中において、数値範囲を表す「〜」の表記は、数値範囲の下限値と上限値の値を含む意味である。
また、「(メタアクリル酸」は、「アクリル酸」および「メタクリル酸」の双方を包含して用いられる表記であり、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の双方を包含して用いられる表記である。

0019

半導体ウエハの製造過程において、拡張(エキスパンド)工程後のダイシングフィルムのたるみをフィルムの熱収縮を利用して取り除く(元の状態に復元する)ためには、ダイシングフィルムが80℃近傍の温度において高い熱収縮性を有する必要がある。本発明においては、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体のアイオノマー(A)30質量部以上90質量部以下と、エチレン系共重合体(B)10質量部以上70質量部以下(ただし、成分(A)および成分(B)との合計を100質量部とする)とを含む樹脂組成物を用いてダイシングフィルム基材を製造することで、高い強度と高い熱収縮性を両立したダイシングフィルムを製造することができた。そのメカニズムは明らかではないが、次のように考えられる。

0020

エチレン系共重合体は、ポリオレフィン系樹脂に配合することによって、その熱収縮性を高めることが知られている。しかし、ポリオレフィン系樹脂とエチレン系共重合体とを含む樹脂組成物でフィルムを製造すると、当該フィルムの強度および拡張性は、ダイシングフィルムとしては不十分である。一方、本発明においては、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体のアイオノマーと、エチレン系共重合体とを用いて、ビカット軟化点が50℃未満である樹脂組成物を製造することによって、アイオノマーのイオン架橋構造由来するフィルム強度や拡張性(分断性)を大幅に低下させることなく、熱収縮性を高めたダイシングフィルムを得ることができた。

0021

本発明のダイシングフィルムは、半導体ウエハをチップ単位に分断するためのダイシング工程と拡張工程に加え、ヒートシュリンク工程を実施する半導体デバイスの製造方法に好適に使用することができる。特に本発明のダイシングフィルムは高い強度と高い熱収縮性とを両立していることから、拡張工程においてダイシングフィルムに従来法(ブレードダイシング法やレーザーアブレーション法等)よりも大きな応力が加えられるステルスダイシング(登録商標)法を採用する製造方法に好適に用いることができる。本発明のダイシングフィルムを使用することで、分割後のチップの間隔を均一にし、その後の工程における製品不良を低減し、高い収率での半導体装置の製造を可能とする。

0022

以下に、例示的な実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。

0023

1.ダイシングフィルム基材用樹脂組成物
本発明の第1の態様は、ダイシングフィルム基材用樹脂組成物である。ダイシングフィルム基材用樹脂組成物は、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体のアイオノマー(A)30質量部以上90質量部以下と、エチレン系共重合体(B)10質量部以上70質量部以下(ただし、成分(A)および成分(B)との合計を100質量部とする)とを含有する。

0024

1−1.樹脂(A)
樹脂(A)として使用するエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体のアイオノマー(以下、単に「アイオノマー(A)」ともいう)は、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部または全てが、金属(イオン)で中和されたものである。本発明では、共重合体の酸基の少なくとも一部が金属(イオン)で中和されているものを「アイオノマー」とし、共重合体の酸基が金属(イオン)によって中和されていないものを「共重合体」とする。

0025

上記アイオノマー(A)を構成するエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレンと、不飽和カルボン酸と、不飽和カルボン酸エステルとが共重合した少なくとも三元の共重合体であり、さらに第4の共重合成分が共重合した四元以上の多元共重合体であってもよい。尚、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、一種単独で用いてもよく、二種以上のエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体を併用してもよい。

0026

エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体を構成する不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、イタコン酸無水イタコン酸フマル酸クロトン酸マレイン酸無水マレイン酸等の炭素数4〜8の不飽和カルボン酸などが挙げられる。特に、アクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。

0027

エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体を構成する不飽和カルボン酸エステルとしては、不飽和カルボン酸アルキルエステルが好ましい。アルキルエステルアルキル部位の炭素数は1〜12が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜4が更に好ましい。アルキル部位の例としては、メチルエチル、n−プロピルイソプロピルn−ブチルイソブチルセカンダリーブチル、2−エチルヘキシルイソオクチル等が挙げられる。不飽和カルボン酸アルキルエステルの具体例としては、アクリル酸メチルアクリル酸エチルアクリル酸イソブチルアクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチルメタクリル酸エチルメタクリル酸イソブチルマレイン酸ジメチルマレイン酸ジエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。

0028

エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体が四元以上の多元共重合体であるとき、多元共重合体を形成するモノマー(第4の共重合成分)を含んでもよい。第4の共重合成分としては、不飽和炭化水素(例えば、プロピレンブテン、1,3−ブタジエンペンテン、1,3−ペンタジエン1−ヘキセン等)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニルプロピオン酸ビニル等)、ビニル硫酸やビニル硝酸等の酸化物ハロゲン化合物(例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル等)、ビニル基含有1,2級アミン化合物一酸化炭素二酸化硫黄等が挙げられる。

0029

共重合体の形態は、ブロック共重合体ランダム共重合体グラフト共重合体のいずれであってもよく、三元共重合体、四元以上の多元共重合体のいずれでもよい。中でも、工業的に入手可能な点で、三元ランダム共重合体、または三元ランダム共重合体のグラフト共重合体が好ましく、より好ましくは三元ランダム共重合体である。

0030

エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体の具体例としては、エチレン・メタクリル酸・アクリル酸ブチルエステル共重合体などの三元共重合体が挙げられる。

0031

エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体における、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体を構成する構成単位の全量を100質量%としたとき、不飽和カルボン酸由来の構成単位の含有比率は、4質量%以上20質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上15質量%以下である。エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体中における、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体を構成する構成単位の全量を100質量%としたとき、不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位の含有比率は、1質量%以上20質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上18質量%以下、特に好ましくは5質量%以上17質量%以下である。不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位の含有比率は、フィルムの拡張性の観点から、1質量%以上、好ましくは5質量%以上であることが好ましい。また、不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位の含有比率は、ブロッキングおよび融着を防ぐ観点からは、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましく、17質量%以下であることが特に好ましい。

0032

本発明において樹脂(A)として用いるアイオノマー(A)は、上記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体に含まれるカルボキシル基が金属イオンによって任意の割合で架橋(中和)されたものが好ましい。酸基の中和に用いられる金属イオンとしては、リチウムイオンナトリウムイオンカリウムイオンルビジウムイオンセシウムイオン亜鉛イオンマグネシウムイオンマンガンイオン等の金属イオンが挙げられる。これら金属イオンの中でも、工業化製品の入手容易性からマグネシウムイオン、ナトリウムイオンおよび亜鉛イオンが好ましく、ナトリウムイオンおよび亜鉛イオンがより好ましく、亜鉛イオンであることが特に好ましい。
金属イオンは一種を単独で用いてもよく、又は、二種以上を併用してもよい。

0033

アイオノマー(A)におけるエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体の中和度(以下、「アイオノマー(A)の中和度」ともいう)に特に限定はないが、10%〜100%が好ましく、30%〜100%がより好ましい。中和度が上記範囲内であると、フィルム強度や分断性が向上するため好ましい。
尚、アイオノマー(A)の中和度とは、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体に含まれる全カルボキシル基のモル数に対する、金属イオンによって中和されているカルボキシル基の割合(モル%)である。

0034

エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体のアイオノマー(A)としては、上市されている市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、三井・デュポンポリケミカル株式会社製、ハイミラン(登録商標)シリーズ等が挙げられる。

0035

エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステルのアイオノマー(A)のメルトフローレート(MFR)は、0.2g/10分〜20.0g/10分の範囲が好ましく、0.5g/10分〜20.0g/10分がより好ましく、0.5g/10分〜18.0g/10分が更に好ましい。メルトフローレートが前記範囲内であると、フィルムを成形する際に有利である。
尚、MFRは、JIS K7210−1999に準拠した方法により190℃、荷重2160gにて測定される値である。

0036

さらにエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステルのアイオノマー(A)のビカット軟化点は、25℃以上60℃以下が好ましく、35℃以上60℃以下がより好ましい。アイオノマー(A)のビカット軟化点が上記範囲内にあると、樹脂組成物のビカット軟化点を50℃未満に調整することが容易である。
尚、ビカット軟化点は、JIS K7206−1999で規定されるA50法に準じて測定された値である。

0037

本発明のダイシングフィルム基材用樹脂組成物における樹脂(A)の含有量は、樹脂(A)および後述する樹脂(B)の合計100質量部に対して、30質量部以上90質量部以下であり、40質量部以上90質量部以下が好ましく、50質量部以上70質量部以下がより好ましい。樹脂(A)の含有量が30質量部以上であれば、ダイシングフィルムとして十分な強度が得られ、90質量部以下であれば、熱収縮率を高めることができる。

0038

1−2.樹脂(B)
樹脂(B)として使用するエチレン系共重合体(B)(以下、単に「共重合体(B)」ともいう)は、エチレンと、他の単量体との共重合体であり、その種類に特に限定はない。しかし、上述したアイオノマー(A)と共に樹脂組成物を調製した際に、当該組成物のビカット軟化点が50℃未満となるようなアイオノマー(A)と共重合体(B)とを組み合わせることが重要である。このような観点から、共重合体(B)は、ビカット軟化点が50℃以下の樹脂、またはビカット軟化点を持たない樹脂であることが好ましい。また、共重合体(B)がビカット軟化点を有する場合には、加工性の観点から、ビカット軟化点が25℃以上であることが好ましい。
尚、ビカット軟化点は、JIS K7206−1999で規定されるA50法に準じて測定された値である。

0039

本発明において使用するエチレン系共重合体(B)の一例として、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・ビニルエステル共重合体などが挙げられるが、エチレン・αオレフィン共重合体、およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体が好ましい。

0040

エチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと、α−オレフィンとの共重合体である。当該共重合体には、α−オレフィンが1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。α−オレフィンの具体例には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が含まれる。中でも、入手の容易さからプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテンが好ましい。尚、エチレン・α−オレフィン共重合体はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体が好ましい。

0041

エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる、エチレンに由来する構成単位の含有割合に特に限定はないが、50mol%を超えて95mol%以下であることが好ましく、70mol%以上94mol%以下であることがより好ましい。エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる、α−オレフィンに由来する構成単位(以下、「α−オレフィン単位」とも記す)の割合は5mol%以上50mol%未満であることが好ましく、6mol%以上30mol%以下であることがより好ましい。このようなエチレン・α−オレフィン共重合体は、収縮性を確保する上で有利である。

0042

エチレン・α−オレフィン共重合体としては、密度が895kg/m3以下、とくに860〜890kg/m3のものが好ましい。

0043

エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレンと、不飽和カルボン酸エステルとの共重合体である。当該共重合体には、不飽和カルボン酸エステル構成単位が1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。不飽和カルボン酸エステル構成単位を構成する不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等の炭素数4〜8の不飽和カルボン酸などが挙げられる。特に、アクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。

0044

さらにエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体に含まれる不飽和カルボン酸エステル構成単位としては、不飽和カルボン酸アルキルエステルが好ましい。アルキルエステルのアルキル部位の炭素数は1〜12が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜4が更に好ましい。アルキル部位の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、2−エチルヘキシル、イソオクチル等が挙げられる。不飽和カルボン酸アルキルエステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。

0045

エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体における、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体を構成する構成単位の全量を100質量%としたとき、不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位の含有比率は、5質量%以上40質量%以下が好ましく、より好ましくは7質量%以上40質量%以下、特に好ましくは8質量%以上40質量%以下である。不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位の含有比率が上記上限値以下であると、フィルム加工性の観点から好ましい。また、不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位の含有比率が上記下限値以上であると、収縮性の観点から好ましい。

0046

エチレン系共重合体(B)のメルトフローレート(MFR)は、0.2g/10分〜30.0g/10分の範囲が好ましく、0.5g/10分〜25.0g/10分がより好ましい。メルトフローレートが前記範囲内であると、樹脂組成物を成形する際に有利である。
尚、MFRは、JIS K7210−1999に準拠した方法により190℃、荷重2160gにて測定される値である。

0047

さらにエチレン系共重合体(B)の融点は、30℃以上100℃以下が好ましく、30℃以上80℃以下がより好ましい。
尚、融点は、JIS−K7121(1987年)に準拠して、示唆走査熱量計DSC)で測定した融解温度である。

0048

ダイシングフィルム基材用樹脂組成物における樹脂(B)の含有量は、樹脂(A)および樹脂(B)の合計100質量部に対して、10質量部以上70質量部未満であり、10質量部以上60質量部以下が好ましく、20質量部以上50質量部以下がより好ましい。樹脂(B)の含有量が10質量部以上であると、樹脂(B)による熱収縮率向上効果が発揮され、70質量部未満であると、ダイシングフィルム基材の強度が不十分となる恐れが低い。

0049

1−3.他の重合体および添加剤
ダイシングフィルム基材用樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてその他の重合体や各種添加剤が添加されてもよい。その他の重合体の例として、ポリアミドポリウレタン、2元共重合体のアイオノマー等を挙げることができる。このようなその他の重合体は、樹脂(A)および樹脂(B)の合計100質量部に対し、例えば20質量部以下の割合で配合することができる。添加剤の一例として、帯電防止剤酸化防止剤熱安定剤光安定剤紫外線吸収剤顔料染料滑剤ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防黴剤抗菌剤難燃剤難燃助剤、架橋剤、架橋助剤発泡剤発泡助剤無機充填剤繊維強化材などを挙げることができる。

0050

1−4.樹脂組成物の物性
本発明の樹脂組成物は、JIS K7206−1999で規定されるビカット軟化点が50℃未満であり、好ましくは25℃以上、50℃未満である。樹脂組成物のビカット軟化点が50℃未満であると、熱収縮率が向上し、25℃以上であれば、樹脂組成物をフィルム状に加工することができる。

0051

本発明の樹脂組成物は、190℃、2160g荷重にて測定されるメルトフローレート(MFR)が、0.1g/10分〜50g/10分であることが好ましく、0.5g/10分〜20g/10分であることがより好ましい。
尚、MFRは、JIS K7210−1999に準拠した方法により190℃、荷重2160gにて測定される値である。

0052

樹脂組成物の中和度に特に限定はないが、10%〜85%が好ましく、更に15%〜82%が好ましい。樹脂組成物の中和度が10%以上であると、チップ分断性をより向上することができ、85%以下であることで、フィルムの成形性に優れる。樹脂組成物の中和度は、基本的にアイオノマー(A)の中和度およびその含有量に依存し、下記式によって計算することができる。(樹脂組成物の中和度)=(アイオノマー(A)の中和度)×(樹脂組成物中のアイオノマー(A)の割合)
よって、アイオノマー(A)の中和度が低い場合には、その含有量を多めにしたり、アイオノマー(A)の中和度が高い場合には、その含有量を少なめにしたりすることで、樹脂組成物の中和度を調整することができる。

0053

さらに本発明の樹脂組成物は、厚さ100μmに加工したフィルムの80℃における熱収縮率が6%以上であることが好ましく、7%以上であることがより好ましい。80℃における熱収縮率が6%以上であれば、ヒートシュリンク工程によるたるみの解消が可能なダイシングフィルムの製造に好適に用いることができる。熱収縮率の上限は特に限定されないが、ヒートシュリンク後の後工程(ピックアップ工程)での不良率低減の観点から20%以下であると好ましい。

0054

尚、本願において80℃における熱収縮率は、次の方法で測定した値である。
樹脂組成物フィルムを厚さ100μm、幅方向25mm×長さ方向150mmに切断し、標線間100mmにマーキングを行い試験片サンプルとした。それをデンプン粉打粉したガラス板の上に置き、80℃の熱板上で2分間加熱し、加熱後のフィルムの標線間を測定し、以下の式から収縮率(%)を算出する。
収縮率(%)=100mm−収縮後の標線間距離(mm)/100mm×100

0055

1−5.樹脂組成物の製造方法
ダイシングフィルム基材用樹脂組成物は、樹脂(A)および樹脂(B)、更に必要に応じてその他の重合体や添加剤などを混合することによって得ることができる。上述したように、本発明の樹脂組成物は、JIS K7206−1999で規定されるビカット軟化点が50℃未満であることから、樹脂組成物のビカット軟化点が50℃未満となるように、樹脂(A)、樹脂(B)および所望により添加剤の種類や量を選択する。

0056

樹脂組成物の製造方法に特に限定はないが、例えば、全ての成分をドライブレンドした後に溶融混練することで得ることができる。

0057

2.ダイシングフィルム基材
本発明の第2の態様は、上述したダイシングフィルム基材用樹脂組成物を含む層を少なくとも一層含むダイシングフィルム基材である。図1Aおよび1Bは、本発明のダイシングフィルム基材10の一実施形態を示す断面図である。図1Aは、上述したダイシングフィルム基材用樹脂組成物を含む第1樹脂層1のみからなる単層のダイシングフィルム基材であり、図1Bは、上述したダイシングフィルム基材用樹脂組成物を含む第1樹脂層1と、他の樹脂または樹脂組成物を含む第2樹脂層2とが積層された多層のダイシングフィルム基材である。

0058

本発明のダイシングフィルム基材の強度は、25%モジュラスが5MPa以上15MPa以下の範囲であることが好ましく、6MPa以上12MPa以下であることがより好ましい。25%モジュラスが5MPa以上であると、ダイシングフィルム基材としてのチップ分断性(強度)に優れ、15MPa以下であると拡張性に優れる。

0059

本発明におけるモジュラスは、JIS K 7127−1999に準拠し、ダイシングフィルム基材のMD方向(Machine Direction:機械軸方向)、及びTD方向(Transverse Direction:直交方向)について、試験速度:500mm/min、試験片:幅10mm×長200mm、チャック間:100mmの条件下で、伸長距離25%または50%時のフィルム強度(25%モジュラスまたは50%モジュラス)として測定される値である。

0060

本発明のダイシングフィルム基材の80℃における熱収縮率は、6%以上20%以下の範囲が好ましく、7%以上であることがより好ましい。80℃における熱収縮率が6%以上であるとダイシングフィルム基材としてのヒートシュリンク特性(たるみの解消)に優れ、20%以下であるとヒートシュリンク後の後工程(ピックアップ工程)での不良率低減に優れる。
尚、本願において80℃における熱収縮率は、次の方法で測定した値である。
ダイシングフィルム基材を厚さ100μm、幅方向25mm×長さ方向150mmに切断し、標線間100mmにマーキングを行い試験片サンプルとした。それをデンプン粉を打粉したガラス板の上に置き、80℃の熱板上で2分間加熱し、加熱後のフィルムの標線間を測定し、以下の式から収縮率(%)を算出する。
収縮率(%)=100mm−収縮後の標線間距離(mm)/100mm×100

0061

2−1.第1樹脂層
第1樹脂層は、上述したダイシングフィルム基材用樹脂組成物、即ち、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体のアイオノマー(A)30質量部以上90質量部以下と、エチレン系共重合体(B)10質量部以上70質量部以下(ただし、成分(A)および成分(B)との合計を100質量部とする)とを含有し、JIS K7206−1999で規定されるビカット軟化点が50℃未満である、ダイシングフィルム基材用樹脂組成物を含む層である。また、第1樹脂層は上記ダイシングフィルム基材用樹脂組成物からなる層でもよい。このような樹脂組成物層は、強度と熱収縮率とのバランスが優れている。

0062

ダイシングフィルム基材が単層構成の場合、原料となる樹脂組成物のアイオノマー(A)の含有量が70質量部以上90質量部以下、エチレン系共重合体(B)の含有量が10質量部以上30質量部以下であることが好ましく、アイオノマー(A)の含有量が80質量部以上90質量部以下、エチレン系共重合体(B)の含有量が10質量部以上20質量部以下(ただし、成分(A)および成分(B)との合計を100質量部とする)であることがより好ましい。このように、アイオノマー(A)の比率の高い樹脂組成物を用いることで、単層であっても、ダイシングフィルム基材として必要な強度が達成される。

0063

一方、ダイシングフィルム基材が多層構成の場合、第1樹脂層の原料となる樹脂組成物は、上述した本発明の樹脂組成物である限り、アイオノマー(A)と共重合体(B)との比率に特に限定なく、アイオノマー(A)の含有量が30質量部以上90質量部以下、エチレン系共重合体(B)の含有量が10質量部以上70質量部以下であればよい。

0064

2−2.第2樹脂層
第2樹脂層は、樹脂(C)を含む層または樹脂(C)からなる層であり、樹脂(C)は、第1樹脂層を構成する樹脂組成物との接着性の高い樹脂である限り特に限定はない。樹脂(C)を含む(または樹脂(C)からなる)第2樹脂層を第1樹脂層と積層することによって、層間剥離の問題を生じることなく、ダイシングフィルム基材の強度を高め、且つダイシングフィルムに必要なチップ分断性と拡張性とのバランスを維持することが可能となる。

0065

<樹脂C>
本発明における樹脂(C)は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体(以下、単に「共重合体(C)」ともいう)および前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(以下、単に「アイオノマー(C)」ともいう)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。樹脂(C)として用いるエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーは、上記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のカルボキシル基の一部、または全てが金属(イオン)で中和されたものである。
尚、下記で詳細に説明するように、樹脂(C)は、第1樹脂層を構成する樹脂組成物に含まれる樹脂(A)や樹脂(B)と同様の樹脂であってもよい。

0066

上記共重合体(C)、またはそのアイオノマー(C)を構成するエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸とが共重合した少なくとも二元の共重合体であり、さらに第3の共重合成分が共重合した三元以上の多元共重合体であってもよい。尚、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体は、一種単独で用いてもよく、二種以上のエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体を併用してもよい。

0067

エチレン・不飽和カルボン酸二元共重合体を構成する不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等の炭素数4〜8の不飽和カルボン酸などが挙げられる。特に、アクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。

0068

エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体(C)が三元以上の多元共重合体であるとき、多元共重合体を形成するモノマー(第3の共重合成分)を含んでもよい。第3の共重合成分としては、不飽和カルボン酸エステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル)、不飽和炭化水素(例えば、プロピレン、ブテン、1,3−ブタジエン、ペンテン、1,3−ペンタジエン、1−ヘキセン等)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、ビニル硫酸やビニル硝酸等の酸化物、ハロゲン化合物(例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル等)、ビニル基含有1,2級アミン化合物、一酸化炭素、二酸化硫黄等が挙げられ、これら共重合成分としては、不飽和カルボン酸エステルが好ましい。

0069

例えば、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体(C)が三元共重合体である場合は、エチレンと、不飽和カルボン酸と、不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、エチレンと、不飽和カルボン酸と、不飽和炭化水素との三元共重合体等が好適に挙げられる。

0070

不飽和カルボン酸エステルとしては、不飽和カルボン酸アルキルエステルが好ましく、アルキルエステルのアルキル部位の炭素数は1〜12が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜4が更に好ましい。アルキル部位の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、2−エチルヘキシル、イソオクチル等が挙げられる。

0071

不飽和カルボン酸エステルの具体例としては、アルキル部位の炭素数が1〜12の不飽和カルボン酸アルキルエステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル等のアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル等のメタクリル酸アルキルエステル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸アルキルエステル)等が挙げられる。
不飽和カルボン酸アルキルエステルの中では、アルキル部位の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。

0072

共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよく、二元共重合体、三元以上の多元共重合体のいずれでもよい。中でも、工業的に入手可能な点で、二元ランダム共重合体、三元ランダム共重合体、二元ランダム共重合体のグラフト共重合体あるいは三元ランダム共重合体のグラフト共重合体が好ましく、より好ましくは二元ランダム共重合体または三元ランダム共重合体である。

0073

エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体の具体例としては、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体などの二元共重合体、エチレン・メタクリル酸・アクリル酸イソブチル共重合体などの三元共重合体が挙げられる。また、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体として上市されている市販品を用いてもよく、例えば、三井・デュポンポリケミカル社製のニュクレルシリーズ(登録商標)等を使用することができる。

0074

エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体中における、不飽和カルボン酸の共重合比質量比)は、4質量%〜20質量%が好ましく、より好ましくは5質量%〜15質量%である。エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体中における、不飽和カルボン酸エステルの共重合比(質量比)は、1質量%〜20質量%が好ましく、より好ましくは5質量%〜18質量%である。不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位の含有比率は、拡張性の観点から、1質量%以上、好ましくは5質量%以上であることが好ましい。また、不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位の含有比率は、ブロッキングおよび融着を防ぐ観点からは、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましい。

0075

本発明において樹脂(C)として用いるアイオノマー(C)は、上記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体に含まれるカルボキシル基が金属イオンによって任意の割合で架橋(中和)されたものが好ましい。酸基の中和に用いられる金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン等の金属イオンが挙げられる。これら金属イオンの中でも、工業化製品の入手容易性からマグネシウムイオン、ナトリウムイオンおよび亜鉛イオンが好ましく、ナトリウムイオンおよび亜鉛イオンがより好ましく、亜鉛イオンであることが特に好ましい。
金属イオンは一種を単独で用いてもよく、又は、二種以上を併用してもよい。

0076

アイオノマー(C)におけるエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体の中和度は、10%〜85%が好ましく、更に15%〜82%が好ましい。中和度が10%以上であると、チップ分断性をより向上することができ、85%以下であることで、フィルムの加工性や成形性に優れる。
尚、中和度とは、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体に含まれる全カルボキシル基のモル数に対する、金属イオンによって中和されているカルボキシル基の割合(モル%)である。

0077

樹脂(C)のメルトフローレート(MFR)は、0.2g/10分〜20.0g/10分の範囲が好ましく、0.5g/10分〜20.0g/10分がより好ましく、0.5g/10分〜18.0g/10分が更に好ましい。メルトフローレートが前記範囲内であると、フィルム成形する際に有利である。
尚、MFRは、JIS K7210−1999に準拠した方法により190℃、荷重2160gにて測定される値である。

0078

樹脂(C)は、ビカット軟化点が50℃以上100℃以下であることが好ましい。ビカット軟化点が50℃未満の樹脂組成物からなる第1樹脂層に、ビカット軟化点の高い樹脂を第2樹脂層として積層することで、ダイシングフィルム基材の強度や耐熱性を高めることができる。
尚、ビカット軟化点は、JIS K7206−1999で規定されるA50法に準じて測定された値である。

0079

<他の重合体および添加剤>
第2樹脂層を構成する樹脂(C)には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて各種添加剤やその他の樹脂が添加されてもよい。前記添加剤の一例として、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、難燃助剤、架橋剤、架橋助剤、発泡剤、発泡助剤、無機充填剤、繊維強化材などを挙げることができる。熱融着防止の観点から前記添加剤を少量添加してもよい。

0080

2−3.層構成
本発明のダイシングフィルム基材には、上記第1樹脂層1のみからなる単層構成のもの(図1A)と、上記第1樹脂層1および上記第2樹脂層2を含む多層構成のもの(図1B)がある。多層構成のダイシングフィルム基材は、上記2層を含む限り、その層構成は特に限定されないが、層間剥離を防止する観点から、第1樹脂層と第2樹脂層は直接積層されていることが望ましい。

0081

多層構成のダイシングフィルム基材は、3層以上となる多層構成であってもよい。例えば、第1樹脂層を構成する樹脂組成物を用いて成形されるシートを複数積層したところに、第2樹脂層を設けた構成であってもよいし、2つの第1樹脂層で第2樹脂層を挟んだ構成でもよい。また、第1樹脂層と第2樹脂層に加えて、他の樹脂層を積層した構成であってもよい。

0082

本発明のダイシングフィルム基材に積層する他の樹脂層を構成する樹脂の代表例としては、直鎖状低密度ポリエチレンLLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン・α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、およびエチレン・ビニルエステル共重合体から選ばれる、単体もしくは任意の複数からなるブレンド物を挙げることができる。

0083

また、積層する他の樹脂層は機能性層(例えば、粘着シート等)であってもよいし、ポリオレフィンフィルム(またはシート)、ポリ塩化ビニルフィルム(またはシート)等の基材であってもよい。前記基材は、単層又は多層のいずれの構造を有するものでもよい。本発明においてはこれら基材を含めて「ダイシングフィルム基材」という。

0084

ダイシングフィルム基材表面の接着力を向上させるために、ダイシングフィルム基材表面に、例えばコロナ放電処理などの公知の表面処理を施してもよい。
また、耐熱性向上の観点から、第1樹脂層、第2樹脂層や他の樹脂層、またはダイシングフィルム基材に、必要に応じて、電子線照射を行なってもよい。

0085

2−4.ダイシングフィルム基材の製造方法
単層のダイシングフィルム基材の製造方法としては、公知の方法でダイシングフィルム用樹脂組成物をフィルム状に加工する方法が挙げられる。樹脂組成物をフィルム状に加工する方法に特に限定はないが、例えば、従来公知のTダイキャスト成形法、Tダイニップ成形法インフレーション成形法押出ラミネート法カレンダー成形法などの各種成形方法で、フィルムを製造することができる。

0086

多層のダイシングフィルム基材の製造方法としては、第1樹脂層を構成する樹脂組成物および第2樹脂層を構成する樹脂(C)をそれぞれ公知の方法でフィルム状に加工し、積層する方法が挙げられる。樹脂組成物または樹脂をフィルム状に加工する方法に特に限定はないが、例えば、従来公知のTダイキャスト成形法、Tダイニップ成形法、インフレーション成形法、押出ラミネート法、カレンダー成形法などの各種成形方法で、フィルムを製造することができる。

0087

また、多層のダイシングフィルム基材は、第1樹脂層を構成する樹脂組成物と、第2樹脂層を構成する樹脂(C)とを、例えば、共押出ラミネートに付すことで製造することができる。

0088

例えば、第1樹脂層を構成する樹脂組成物をTダイフィルム成形機、又は押出コーティング成形機などにより第2樹脂層となる樹脂(C)のフィルムの表面に積層する場合は、第2樹脂層との接着性を向上させるために、共押出コーティング成形機により接着性樹脂層を介して形成されてもよい。このような接着性樹脂としては、前述の各種エチレン共重合体、あるいはこれらの不飽和カルボン酸グラフト物から選ばれる、単体もしくは任意の複数からなるブレンド物を代表例として挙げることができる。

0089

また、本発明のダイシングフィルム基材の成形例としてTダイフィルム成形機、又は、押出コーティング成形機を用い、第2樹脂層となる樹脂(C)のフィルムの表面に、第1樹脂層を構成する樹脂組成物を熱接着させることで重層体を形成する方法が挙げられる。

0090

尚、第2樹脂層となる樹脂(C)のフィルム上に、第1樹脂層となる樹脂組成物からなる層を形成する方法について記載したが、これと反対に、第1樹脂層となる樹脂組成物のフィルム上に、第2樹脂層となる樹脂(C)から層を形成したり、他の樹脂層の上に第1樹脂や第2樹脂層を設ける方法でも、本発明のダイシングフィルム基材を製造することができる。

0091

ダイシングフィルム基材の厚みは特に限定されないが、ダイシングフィルムの構成部材として用いることを考慮すると、ダイシング時のフレーム保持の観点から65μm以上、拡張性の観点から200μm以下であることが好ましい。また、多層のダイシングフィルム基材を構成する各樹脂層の厚みは、それらの合計がダイシングフィルム基材の上記厚みを超えない限り特に限定はないが、第1樹脂層、第2樹脂層共に30μm以上100μm以下であることが好ましく、第1樹脂層と第2樹脂層との厚みの比は、30/70〜70/30であることが好ましい。

0092

3.ダイシングフィルム
本発明の第3の態様は、上述した本発明のダイシングフィルム基材と、その少なくとも一方の面に積層された粘着層と、を備えたダイシングフィルムである。図2Aおよび図2Bは、本発明のダイシングフィルム20の一実施形態を示す断面図である。図2Aに示すダイシングフィルム20は、第1樹脂層1のみからなるダイシングフィルム基材10と、その表面に設けられた粘着層11とを有し、図2Bに示すダイシングフィルム20は、第1樹脂層1および第2樹脂層2を含むダイシングフィルム基材10と、その表面に設けられた粘着層11とを有する。

0093

ダイシングフィルムは、最表層に粘着層が形成された構成が好ましい。粘着層は、ダイシングフィルム基材の表面に配置される。この粘着層を介して半導体ウエハにダイシングフィルムを貼付けて、半導体ウエハのダイシングを行うことができる。尚、図2Bにおいては、粘着層11を本発明のダイシングフィルム基材用樹脂組成物からなる第1樹脂層1の上に配置しているが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。粘着層11は第2樹脂層2(または他の樹脂層)の上に配置してもよい。

0094

<粘着層>
本発明のダイシングフィルムは、本発明のダイシングフィルム基材と、ダイシングフィルム基材の片面に設けられた粘着層とを備えるものであり、粘着層に、ダイシング加工の対象となる半導体ウエハが貼着固定される。粘着層の厚さは、粘着剤の種類にもよるが、3〜100μmであることが好ましく、3〜50μmであることがさらに好ましい。

0095

粘着層を構成する粘着剤として、従来公知の粘着剤を用いることができる。粘着剤の例には、ゴム系、アクリル系、シリコーン系ポリビニルエーテル系の粘着剤;放射線硬化型粘着剤加熱発泡型粘着剤などが含まれる。なかでも、半導体ウエハからのダイシングフィルムの剥離性などを考慮すると、粘着層は紫外線硬化型粘着剤を含むことが好ましい。

0096

粘着層を構成しうるアクリル系粘着剤の例には、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、および(メタ)アクリル酸エステルと共重合性モノマーとの共重合体が含まれる。(メタ)アクリル酸エステルの具体例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルなどが含まれる。

0097

(メタ)アクリル酸エステルとの共重合性モノマーの具体例には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N−ヒドロキシメチルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート等)、酢酸ビニル、スチレンアクリロニトリルなどが含まれる。

0098

粘着層を構成しうる紫外線硬化型粘着剤は、特に限定されないが、上記アクリル系粘着剤と、紫外線硬化成分(アクリル系粘着剤のポリマー側鎖炭素炭素二重結合を付加しうる成分)と、光重合開始剤と、を含有する。さらに、紫外線硬化型接着剤には、必要に応じて架橋剤、粘着付与剤充填剤老化防止剤着色剤等の添加剤などを添加してもよい。

0099

紫外線硬化型粘着剤に含まれる紫外線硬化成分とは、例えば分子中に炭素−炭素二重結合を有し、ラジカル重合により硬化可能なモノマー、オリゴマー、またはポリマーである。紫外線硬化成分の具体例には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル、またそのオリゴマー;2−プロペニルジ−3−ブテニルシアヌレート、2−ヒドロキシエチルビス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロキシエチル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレートなどが含まれる。

0100

紫外線硬化型粘着剤に含まれる光重合開始剤の具体例には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの芳香族ケトン類ベンジルジメチルケタールなどの芳香族ケタール類ポリビニルベンゾフェノンクロチオキサントンドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン類などが含まれる。

0101

紫外線硬化型粘着剤に含まれる架橋剤の例には、ポリイソシアネート化合物メラミン樹脂尿素樹脂ポリアミンカルボキシル基含有ポリマーなどが含まれる。

0102

本発明のダイシングフィルムの粘着層の表面には、セパレータを貼付けることが好ましい。セパレータを貼付けることで、粘着層の表面を平滑に保つことができる。また、半導体製造用フィルムの取り扱いや運搬が容易になるとともに、セパレータ上にラベル加工することも可能となる。

0103

セパレータは、紙、またはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムなどでありうる。また、セパレータの粘着層と接する面には、粘着層からの剥離性を高めるために、必要に応じてシリコーン処理フッ素処理等の離型処理が施されていてもよい。セパレータの厚みは、通常10〜200μm、好ましくは25〜100μm程度である。

0104

<ダイシングフィルムの製造方法>
本発明のダイシングフィルムを製造する際には粘着剤を公知の方法、例えばグラビヤロールコーターリバースロールコーターキスロールコーターディップロールコーター、バーコーターナイフコータースプレーコーターなどを用いて、ダイシングフィルム基材に直接塗布する方法、あるいは剥離シート上に粘着剤を上記公知の方法で塗布して粘着層を設けた後、ダイシングフィルム基材の表面層に貼着し粘着層を転写する方法などを用いることができる。

0105

また、本発明の樹脂組成物と、粘着層を構成する材料とを共押出しすること(共押出成形法)によって、本発明のダイシングフィルム基材と粘着層との積層体であるダイシングフィルムを得ることができる。さらに得られた積層体の基材(第1樹脂層)側に第2樹脂層を設けることによって、第1樹脂層および第2樹脂層を含むダイシングフィルム基材を有するダイシングフィルムを製造することもできる。

0106

また、粘着剤組成物の層を、必要に応じて加熱架橋を実施して粘着層としてもよい。
さらに、粘着層の表面上にセパレータを貼付けてもよい。

0107

次に、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

0108

1.樹脂(A)
樹脂(A)として、下記表1に記載したエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体またはエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体の亜鉛(Zn)イオン中和アイオノマー(以下、「アイオノマー」という)を準備した。

0109

0110

2.樹脂(B)
樹脂(B)として、下記表2に示したエチレン系共重合体を準備した。

0111

0112

表1および表2のビカット軟化温度は、JIS K7206−1999で規定されるA50法に準じて測定した値である。
表2中のMFR(メルトフローレート)は、JIS K7210−1999に準拠して、190℃、2160g荷重で測定した値である。
表2中の融点は、DSC法で測定した値である。

0113

3.樹脂(C)
樹脂(C)としては、アイオノマー1(IO−1)(樹脂(A)として使用するものと同一)を準備した(上記表1参照)。

0114

(実施例1)
表3に示した割合(質量%)の樹脂(A)および樹脂(B)をドライブレンドした。次に、40mmφ単軸押出機樹脂投入口にドライブレンドした混合物投入して、ダイス温度200℃で溶融混練することで、第1樹脂層用の樹脂組成物を得た。

0115

得られた第1樹脂層用の樹脂組成物と、第2樹脂層用の樹脂(C)とを、2種2層40mmφTダイフィルム成形機を用いて、それぞれの押出機に投入し、加工温度240℃の条件で成形し、100μm厚の2種2層Tダイフィルムを作製した。作製した二層構造を有する100μm厚の積層フィルムは、第1層と第2層との厚み比を60/40とした。

0116

(実施例2〜8および12〜14、比較例1〜3、5および10)
樹脂(A)と樹脂(B)の種類および量を表3または表4に示したように変更した以外は実施例1と同様に、第1樹脂層用の樹脂組成物を作製した。次に、第1樹脂層および第2樹脂層の厚みを表3または表4に示したように変更した以外は実施例1と同様に、第1樹脂層および第2樹脂層を含む積層フィルムを作製した。

0117

(実施例9〜11、比較例4および6〜9)
樹脂(A)と樹脂(B)の種類および量を表3または表4に示したように変更した以外は実施例1と同様に、第1樹脂層用の樹脂組成物を作製した。次に、作製した樹脂組成物を用い、樹脂(C)を使用せずに、実施例1と同様に100μm厚の1層Tダイフィルムを作製した。

0118

上記実施例および比較例で得られた第1樹脂層用の樹脂組成物およびフィルムについて、下記の方法で評価した。評価結果は表3または表4に示した。

0119

(1)樹脂組成物の中和度
中和度は、樹脂(A)の中和度とその含有量から計算した。

0120

(2)樹脂組成物のMFR
MFRは、JIS K7210−1999に準拠して、190℃、2160g荷重で測定した。

0121

(3)樹脂組成物のビカット軟化温度
ビカット軟化温度は、JIS K7206−1999で規定されるA50法に準じて測定した。

0122

(4)80℃収縮率
樹脂組成物を厚さ100μmのフィルム上に成形し、幅方向25mm×長さ方向150mmに切断し、標線間100mmにマーキングを行い試験片サンプルとした。ガラス板の上に、フィルムの付着を防止するためのデンプン粉(ニッカ(株)製、ニッカリ粉)を打粉し、その上に試験片サンプルを置き、プレス成形機の熱板上で80℃で2分間加熱した。加熱後のフィルムの標線間を測定し、以下の式から収縮率(%)を算出した。
収縮率(%)=100mm−収縮後の標線間距離(mm)/100mm×100

0123

(5)引張試験(モジュラス)
ダイシングフィルム基材を10mm幅短冊状に裁断して測定対象とした。JIS K7127に準拠し、試験片:幅10mm×長200mm、チャック間:100mmの条件下で、測定対象のMD方向、TD方向それぞれにおける伸長距離25%および50%時のフィルム強度(25%モジュラスおよび50%モジュラス)をそれぞれ測定した。尚、試験速度は500mm/分とした。

0124

0125

0126

エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体(3元共重合体)のアイオノマーである樹脂(A)を30質量部以上90質量部以下、およびエチレン系共重合体である樹脂(B)を10質量部以上70質量部以下含有し、且つビカット軟化点が50℃未満である樹脂組成物を用いて作製した実施例のダイシングフィルム基材は、熱(80℃)収縮性と強度の両方が優れていた。一方、2元共重合体のアイオノマーを用いた比較例1の樹脂組成物は、ビカット軟化点が50℃を超えていた。このような樹脂組成物を用いて作製したダイシングフィルム基材は、熱収縮率が低かった。樹脂(A)と樹脂(B)とを含有するものの、ビカット軟化点が50℃を超えた比較例2および3の樹脂組成物を用いて作製したダイシングフィルム基材も、比較例1と同様に、熱収縮率が低かった。

0127

70質量部以上90質量部以下の樹脂(A)と、30質量部以上10質量部以下の樹脂(B)とを含有し、ビカット軟化点が50℃未満である樹脂組成物を用いた実施例9〜11のダイシングフィルム基材は、単層でありながらも、十分な強度と熱収縮性とを同時に発揮した。

0128

90質量部を超える量の樹脂(A)、10質量部未満の樹脂(B)と含有する比較例4と5の樹脂組成物は、ビカット軟化点が50℃を超えていた。このような樹脂組成物を用いて作製したダイシングフィルム基材は、強度は高いものの、熱収縮率が低かった。同様に、第1樹脂層としアイオノマーを用いた比較例6〜10のダイシングフィルム基材も、高い強度を示したものの、熱収縮率が低かった。特に比較例7で使用したアイオノマー2は、ビカット軟化点が50℃未満であるが、熱収縮率が低かった。

0129

これらの結果から、高い強度と高い熱収縮率とを両立したダイシングフィルム基材を得るためには、原料となる樹脂組成物のエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体のアイオノマーである樹脂(A)の含有量が30質量部以上90質量部以下であり、エチレン系共重合体である樹脂(B)の含有量が10質量部以上70質量部以下であり、且つビカット軟化点が50℃未満であることが重要であることがわかる。

実施例

0130

本出願は、2018年8月8日出願の特願2018−149562に基づく優先権を主張する。当該出願明細書に記載された内容は、全て本願明細書に援用される。

0131

本発明のダイシングフィルムは、半導体ウエハをチップ単位に分断するためのダイシング工程と拡張工程に加え、ヒートシュリンク工程を実施する半導体デバイスの製造方法に好適に使用することができる。特に本発明のダイシングフィルムは高い強度と高い熱収縮性とを両立していることから、拡張工程においてダイシングフィルムに従来法(ブレードダイシング法やレーザーアブレーション法等)よりも大きな応力が加えられるステルスダイシング(登録商標)法を採用する製造方法に好適に用いることができる。本発明のダイシングフィルムを使用することで、分割後のチップの間隔を均一にし、その後の工程における製品不良を低減し、高い収率での半導体装置の製造を可能とする。

0132

1 第1樹脂層
2 第2樹脂層
10ダイシングフィルム基材
11粘着層
20 ダイシングフィルム

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