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図面 (19)

課題・解決手段

キャピラリー電気泳動時に、不純物などによるスパイク状ノイズや、標識蛍光体波長スペクトルとは異なるスペクトルを有するノイズピークが検出されてしまう現象がある。そこで、本開示は、不純物によるノイズ蛍光ピークに影響されずに標識蛍光体自体の強度を特定する技術を提供する。本開示では、ノイズピークに共通する蛍光強度特性(ノイズの蛍光プロファイル)を設定し、ノイズピークを、標識蛍光体とは異なる蛍光体として扱い、標識蛍光体+ノイズ蛍光体で色変換することで、蛍光体とノイズを分離する(図5参照)。

概要

背景

蛍光体を標識とするDNAの塩基配列を決定する方法として、例えば周知のSangerらのジデオキシ法がある。このジデオキシ法では、まず、解析するDNAをベクターに導入して増幅し、変性させて一本鎖鋳型DNAをつくる。そして、この鋳型DNAにプライマーDNAを結合させ、プライマーDNAを起点とした相補鎖合成を行わせる。この際、4種のデオキシヌクレオチド三リン酸の他に、ターミネーターとなる特定の1種のジデオキシヌクレオチド三リン酸を加えておく。このジデオキシヌクレオチド三リン酸が取り込まれたときに相補鎖合成が停止するため、特定の塩基で終わる種々の長さのDNA断片が得られる。アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)の4種の塩基に対するジデオキシヌクレオチド三リン酸、即ち、ddATP、ddCTP、ddGTP、ddTTPを使用し、それぞれ上記の相補鎖合成反応を行ない、末端塩基がそれぞれA、C、G、Tである種々の長さのDNA断片を得、これらDNA断片を分子量分離し、分子量順に塩基種読むことで塩基配列が解析できる。

分子量分離は、ポリアクリルアミドゲルなどを使用する電気泳動で行う。近年は、キャピラリー内ゲルまたは分子量分離できるポリマー充填し、電気泳動を行う方式が主となっている。このキャピラリー電気泳動法を用いたDNAの塩基配列決定装置(DNAシーケンサ)は連続自動分析に対応し、高速に多数の試料並行して分析処理を行うことが可能であり、現在最も広く普及しているDNAシーケンサである。

検出される断片の塩基種の判定原理は、上記断片があらかじめ末端塩基種ごとに異なる4種の蛍光体で標識され、特定の検出位置で励起光照射され、生じる蛍光スペクトルの違いから塩基種を判別するというものである。この原理に基づく装置は、DNAシーケンサとしての用途以外に、蛍光標識された生体関連物質分析幅広活用できるものである。

標識として使用される蛍光体の組み合わせは種々ありえるが、青系、緑系、黄系、赤系色など異なる特性の蛍光体を選定する、例えば、4種の蛍光体の場合、蛍光極大波長が各々528nm、549nm、575nm、602nmとそれぞれ互いにずれているものが使われ、この蛍光極大波長の違いや蛍光スペクトルの違いから、蛍光体種識別または蛍光体種の混合状態が識別でき、末端塩基種が判定できる。検出される蛍光スペクトルから蛍光体種を算定する方法は、例えば特許文献1に記載されているような周知の方法が使われる。

標識として使用する蛍光体種は、塩基配列決定においては通常4種であるが、5種以上を使いフラグメント種ごとに異なる蛍光体で標識し、DNAの分子量分離パターン計測する測定もある。5種以上であっても、検出される蛍光体からの蛍光スペクトル等から蛍光体種を識別し、フラグメント種およびその長さを判別できる。

測定装置は、少なくとも蛍光体種の数以上の異なる波長帯蛍光強度を測定する機能を有している。蛍光体の蛍光スペクトルはそれぞれ異なっており、スペクトル特性に基づく複数の波長帯ごと蛍光強度比率が蛍光体種毎に異なる。そこで、検出される複数の波長帯の蛍光強度と、蛍光体種毎の蛍光強度比率から、蛍光体種ごとの強度(量)を行列計算により変換する。蛍光体種の量が塩基種の量であることから、塩基毎の量が算定でき、泳動による塩基ごとの時間変化を得ることができる。

例えば、特許文献2には、上述したようなキャピラリー電気泳動装置が記載されている。一般に、キャピラリー電気泳動装置では、石英キャピラリー中のポリアクリルアミド等の分離媒体測定対象であるDNAを含む試料を注入して、キャピラリーの両端部に電圧印加する。試料中のDNAを含む試料はキャピラリー内を移動し、分子量の大きさ等によって分離されキャピラリー内にDNAバンドが生じる。各DNAバンドは、上述のような蛍光色素を含むため、レーザ光LED光などの照射によって蛍光発光する。この蛍光発光を蛍光計測手段で読み取ると、DNAの配列を決定することができる。蛋白質の分離・分析も同様に行って、蛋白質の構成を調べることができる。キャピラリー電気泳動装置におけるサンプルへの光照射方式は以下のようなものである。すなわち、平面基板上に並んだ複数のキャピラリーからなるキャピラリーアレイの一方あるいは両側の端のキャピラリーにレーザ光を照射し、レーザ光が隣接するキャピラリーに順次に伝搬してキャピラリーアレイを横断するようにして全てのキャピラリーを泳動する試料に照射するものである。また、蛍光検出方式は以下のようなものである。すなわち、キャピラリーアレイ上のレーザ光照射部の像を、集光レンズ透過型回折格子結像レンズを通して、2次元CCD上に結像する。これにより、複数の蛍光体からの蛍光を、複数の波長帯で(例えば、500nmから700nmまでの波長域を10nm毎に20分割して)、その強度を検出する。

概要

キャピラリー電気泳動時に、不純物などによるスパイク状ノイズや、標識蛍光体の波長スペクトルとは異なるスペクトルを有するノイズピークが検出されてしまう現象がある。そこで、本開示は、不純物によるノイズ蛍光ピークに影響されずに標識蛍光体自体の強度を特定する技術を提供する。本開示では、ノイズピークに共通する蛍光強度特性(ノイズの蛍光プロファイル)を設定し、ノイズピークを、標識蛍光体とは異なる蛍光体として扱い、標識蛍光体+ノイズ蛍光体で色変換することで、蛍光体とノイズを分離する(参照)。

目的

本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、不純物によるノイズ蛍光ピークに影響されずに標識蛍光体自体の強度を特定する技術を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

生体ポリマー試料とし、標識物として複数種蛍光体を使用し、それぞれの蛍光強度を検出することにより、前記生体ポリマーを分析する生体ポリマー分析方法であって、前記試料に使用しているQ種(Qは1以上の整数)の標識蛍光体のプロファイルを設定することと、前記標識蛍光体とは異なるR種(Rは1以上の整数)の蛍光体である非標識蛍光体のプロファイルを設定することと、所定の測定方式を用いて、前記試料からの蛍光強度を検出することと、前記蛍光強度と、前記Q種の標識蛍光体のプロファイルと、前記R種の非標識蛍光体のプロファイルとを用いて、Q+R種の蛍光体を識別することと、を含む生体ポリマー分析方法。

請求項2

請求項1において、さらに、前記識別されたQ種の蛍光体のデータから前記生体ポリマーを解析することを含む生体ポリマー分析方法。

請求項3

請求項1において、前記試料からの蛍光強度を検出することにおいて、所定幅検出波長域を設定し、当該検出波長域をP(Pは正の整数)個の波長帯に分割して検出する、生体ポリマー分析方法。

請求項4

請求項3において、分割された波長帯ごと検出強度をs(p,t)、前記Q種の標識蛍光体のプロファイルをx(q,p)、前記R種の非標識蛍光体のプロファイルをy(r,p)、測定時の背景強度をb(p,t)、標識蛍光体からの蛍光強度をf(q,t)、非標識蛍光体からの蛍光強度をn(r,t)とした場合に、以下の式から、前記Q+R種の蛍光体を識別する、生体ポリマー分析方法。または、ここで、tは時間、pは分割波長帯の番号(p=0,1,・・・,P−1)、qは標識蛍光体種の番号(q=0,1,・・・,Q−1)、rは非標識蛍光体の番号(r=0,1,・・・,R−1)

請求項5

請求項4において、前記式によりf(q,t)を算定し、前記Q種の蛍光体を識別する、生体ポリマー分析方法。

請求項6

請求項4において、前記式によりn(r,t)を算定し、前記s(p,t)から前記n(r,t)に起因する信号強度を減算することにより、前記非標識蛍光体が除去された分割された波長帯ごとの検出強度を算定し、Q種の蛍光体を識別する、生体ポリマー分析方法。

請求項7

請求項1において、前記試料をキャピラリー内泳動させること、あるいは前記試料を逐次反応させることを含む、生体ポリマー分析方法。

請求項8

請求項1において、さらに、前記R種の非標識蛍光体の出現頻度、および当該非標識蛍光体の強度の少なくとも一方が予め設定された閾値以上か否か判断することにより、前記所定の測定方式による測定結果信頼度を評価することを含む生体ポリマー分析方法。

請求項9

生体ポリマーを試料とし、標識物として複数種の蛍光体を使用し、それぞれの蛍光強度を検出することにより、前記生体ポリマーを分析する生体ポリマー分析装置であって、所定の測定方式を用いて、前記試料からの蛍光強度を検出する測定部と、前記試料に使用しているQ種(Qは1以上の整数)の標識蛍光体のプロファイルと、前記標識蛍光体とは異なるR種(Rは1以上の整数)の蛍光体である非標識蛍光体のプロファイルとを格納するメモリと、前記メモリから前記Q種の標識蛍光体のプロファイルと前記R種の非標識蛍光体のプロファイルとを読み込み、前記検出強度と、前記Q種の標識蛍光体のプロファイルと、前記R種の非標識蛍光体のプロファイルとを用いて、Q+R種の蛍光体を識別するデータ処理部と、を備える生体ポリマー分析装置。

請求項10

請求項9において、前記データ処理部は、さらに、前記識別されたQ種の蛍光体のデータから前記生体ポリマーを解析する、生体ポリマー分析装置。

請求項11

請求項9において、前記測定部は、予め設定された所定幅の検出波長域をP(Pは正の整数)個の波長帯に分割して検出する、生体ポリマー分析装置。

請求項12

請求項11において、分割された波長帯ごとの検出強度をs(p,t)、前記Q種の標識蛍光体のプロファイルをx(q,p)、前記R種の非標識蛍光体のプロファイルをy(r,p)、測定時の背景強度をb(p,t)、標識蛍光体からの蛍光強度をf(q,t)、非標識蛍光体からの蛍光強度をn(r,t)とした場合に、前記データ処理部は、以下の式から、前記Q+R種の蛍光体を識別する、生体ポリマー分析装置。または、ここで、tは時間、pは分割波長帯の番号(p=0,1,・・・,P−1)、qは標識蛍光体種の番号(q=0,1,・・・,Q−1)、rは非標識蛍光体の番号(r=0,1,・・・,R−1)

請求項13

請求項12において、前記データ処理部は、前記式からf(q,t)を演算し、前記Q種の蛍光体を識別する、生体ポリマー分析装置。

請求項14

請求項12において、前記データ処理部は、前記式からn(r,t)を算定し、前記s(p,t)から前記n(r,t)に起因する信号強度を減算することにより、前記非標識蛍光体が除去された分割された波長帯ごとの検出強度を算定し、該強度を表示させる機能を有する、生体ポリマー分析装置。

請求項15

請求項9において、前記データ処理部は、さらに、前記R種の非標識蛍光体の出現頻度、および当該非標識蛍光体の強度の少なくとも一方が予め設定された閾値以上か否か判断することにより、前記所定の測定方式による測定結果の信頼度を評価する機能を有する、生体ポリマー分析装置。

請求項16

請求項9において、試料を泳動させる電気泳動機構部、または、逐次反応させる逐次反応機構部をさらに有する、生体ポリマー分析装置。

請求項17

生体ポリマー試料が、DNA、オリゴヌクレオチドであり、前記試料を、塩基種または解析フラグメントごとに異なる蛍光体で標識し、試料からの蛍光を検出することで、その塩基配列フラグメント種を解析する生体ポリマー分析方法において、試料に使用しているQ種の標識蛍光体の蛍光プロファイルと、前記標識蛍光体とは異なる蛍光プロファイルを有するR種(Rは1以上)の蛍光プロファイルを設定し、前記検出蛍光強度と、前記Q+R種の蛍光プロファイルから、Q種の蛍光体を識別することを特徴とする生体ポリマー分析方法。

請求項18

生体ポリマー試料が、DNA、オリゴヌクレオチドであり、前記試料を、塩基種または解析フラグメントごとに異なる蛍光体で標識し、試料からの蛍光を検出することで、その塩基配列・フラグメント種を解析する生体ポリマー分析装置において、試料に使用しているQ種の標識蛍光体の蛍光プロファイルと、前記標識蛍光体とは異なる蛍光プロファイルを有するR種(Rは1以上)の蛍光プロファイルと、前記検出蛍光強度とから、Q種の蛍光体を識別するデータ処理部を有することを特徴とする生体ポリマー分析装置。

技術分野

0001

本開示は、生体ポリマー分析方法、および生体ポリマー分析装置に関する。

背景技術

0002

蛍光体を標識とするDNAの塩基配列を決定する方法として、例えば周知のSangerらのジデオキシ法がある。このジデオキシ法では、まず、解析するDNAをベクターに導入して増幅し、変性させて一本鎖鋳型DNAをつくる。そして、この鋳型DNAにプライマーDNAを結合させ、プライマーDNAを起点とした相補鎖合成を行わせる。この際、4種のデオキシヌクレオチド三リン酸の他に、ターミネーターとなる特定の1種のジデオキシヌクレオチド三リン酸を加えておく。このジデオキシヌクレオチド三リン酸が取り込まれたときに相補鎖合成が停止するため、特定の塩基で終わる種々の長さのDNA断片が得られる。アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)の4種の塩基に対するジデオキシヌクレオチド三リン酸、即ち、ddATP、ddCTP、ddGTP、ddTTPを使用し、それぞれ上記の相補鎖合成反応を行ない、末端塩基がそれぞれA、C、G、Tである種々の長さのDNA断片を得、これらDNA断片を分子量分離し、分子量順に塩基種読むことで塩基配列が解析できる。

0003

分子量分離は、ポリアクリルアミドゲルなどを使用する電気泳動で行う。近年は、キャピラリー内ゲルまたは分子量分離できるポリマー充填し、電気泳動を行う方式が主となっている。このキャピラリー電気泳動法を用いたDNAの塩基配列決定装置(DNAシーケンサ)は連続自動分析に対応し、高速に多数の試料並行して分析処理を行うことが可能であり、現在最も広く普及しているDNAシーケンサである。

0004

検出される断片の塩基種の判定原理は、上記断片があらかじめ末端塩基種ごとに異なる4種の蛍光体で標識され、特定の検出位置で励起光照射され、生じる蛍光スペクトルの違いから塩基種を判別するというものである。この原理に基づく装置は、DNAシーケンサとしての用途以外に、蛍光標識された生体関連物質分析幅広活用できるものである。

0005

標識として使用される蛍光体の組み合わせは種々ありえるが、青系、緑系、黄系、赤系色など異なる特性の蛍光体を選定する、例えば、4種の蛍光体の場合、蛍光極大波長が各々528nm、549nm、575nm、602nmとそれぞれ互いにずれているものが使われ、この蛍光極大波長の違いや蛍光スペクトルの違いから、蛍光体種識別または蛍光体種の混合状態が識別でき、末端塩基種が判定できる。検出される蛍光スペクトルから蛍光体種を算定する方法は、例えば特許文献1に記載されているような周知の方法が使われる。

0006

標識として使用する蛍光体種は、塩基配列決定においては通常4種であるが、5種以上を使いフラグメント種ごとに異なる蛍光体で標識し、DNAの分子量分離パターン計測する測定もある。5種以上であっても、検出される蛍光体からの蛍光スペクトル等から蛍光体種を識別し、フラグメント種およびその長さを判別できる。

0007

測定装置は、少なくとも蛍光体種の数以上の異なる波長帯蛍光強度を測定する機能を有している。蛍光体の蛍光スペクトルはそれぞれ異なっており、スペクトル特性に基づく複数の波長帯ごと蛍光強度比率が蛍光体種毎に異なる。そこで、検出される複数の波長帯の蛍光強度と、蛍光体種毎の蛍光強度比率から、蛍光体種ごとの強度(量)を行列計算により変換する。蛍光体種の量が塩基種の量であることから、塩基毎の量が算定でき、泳動による塩基ごとの時間変化を得ることができる。

0008

例えば、特許文献2には、上述したようなキャピラリー電気泳動装置が記載されている。一般に、キャピラリー電気泳動装置では、石英キャピラリー中のポリアクリルアミド等の分離媒体測定対象であるDNAを含む試料を注入して、キャピラリーの両端部に電圧印加する。試料中のDNAを含む試料はキャピラリー内を移動し、分子量の大きさ等によって分離されキャピラリー内にDNAバンドが生じる。各DNAバンドは、上述のような蛍光色素を含むため、レーザ光LED光などの照射によって蛍光発光する。この蛍光発光を蛍光計測手段で読み取ると、DNAの配列を決定することができる。蛋白質の分離・分析も同様に行って、蛋白質の構成を調べることができる。キャピラリー電気泳動装置におけるサンプルへの光照射方式は以下のようなものである。すなわち、平面基板上に並んだ複数のキャピラリーからなるキャピラリーアレイの一方あるいは両側の端のキャピラリーにレーザ光を照射し、レーザ光が隣接するキャピラリーに順次に伝搬してキャピラリーアレイを横断するようにして全てのキャピラリーを泳動する試料に照射するものである。また、蛍光検出方式は以下のようなものである。すなわち、キャピラリーアレイ上のレーザ光照射部の像を、集光レンズ透過型回折格子結像レンズを通して、2次元CCD上に結像する。これにより、複数の蛍光体からの蛍光を、複数の波長帯で(例えば、500nmから700nmまでの波長域を10nm毎に20分割して)、その強度を検出する。

先行技術

0009

特開2011−30502号公報
特開2004−144479号公報

発明が解決しようとする課題

0010

特許文献1に開示されているように、検出対象となる蛍光体は、標識に使われている蛍光体(標識蛍光体)である。つまり、上記行列計算により変換は、検出された蛍光強度が、どの蛍光体種(塩基種)由来であるか、または蛍光体種(塩基種)同士の混合比率がどうであるかを決定するものである。

0011

しかし、電気泳動において、目的(検出対象)外の成分が泳動されて検出される場合がある。例えば、泳動サンプルに含まれる不純物ゴミなどが泳動され、キャピラリーの検出領域を通過する場合である。この不純物によるノイズ蛍光ピークは、本来の標識蛍光体のピーク信号に重なったり、単独で検出されたりする。このような場合、ノイズ蛍光ピークが、標識蛍光体のどれか、または複数の標識蛍光体の組み合わせと誤判断されるなど、蛍光体種への変換、塩基種の判定に影響を与えてしまうという懸念がある。

0012

このノイズ蛍光信号は、対象としている標識蛍光体の蛍光スペクトルとは異なるため、通常の蛍光スペクトル強度を蛍光体種強度に変換するマトリックス変換では、正しい変換が行われない。そして、ノイズ蛍光信号は、蛍光体種強度に重層され、正確でない強度に計算され、フラグメント種または塩基種の判定に影響を及ぼしてしまうという課題がある。
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、不純物によるノイズ蛍光ピークに影響されずに標識蛍光体自体の強度を特定する技術を提供する。

課題を解決するための手段

0013

発明者らは、標識に使われている蛍光体以外の泳動ピークを解析した結果、標識に使われている蛍光体の蛍光スペクトルとは異なるスペクトルを有していること、および複数の不純物蛍光ピークのスペクトルに共通性があることを見出した。

0014

そこで、発明者らの発見に基づき、本開示では、ノイズ蛍光を泳動される蛍光体として扱い、他の標識蛍光体と同じく、ノイズ蛍光の複数の波長帯ごとの蛍光強度比率を決定することとする。また、蛍光スペクトル強度を蛍光体種強度に変換するためのマトリックス変換において、標識蛍光体(Q種)とノイズ蛍光体(R種)の行列として計算し、標識蛍光体の濃度を算定する。これにより、ノイズ蛍光ピークはノイズとして識別でき、標識蛍光体のピークから除外することが可能になる。

0015

本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではないことを理解する必要がある。

発明の効果

0016

本開示によれば、電気泳動データエレクトロフェログラム)において、不純物によるノイズ蛍光ピークが検出される場合においても、それに影響されずに、標識蛍光体自体の強度を算定でき、塩基種等生体関連成分を正確に識別し、検出することが可能になる。

図面の簡単な説明

0017

本実施形態によるキャピラリー電気泳動装置100の概略構成例を示す図である。
本実施形態によるキャピラリー電気泳動装置100の構成要素である検出機構部37の概略内部構成(光検出系)例を示す図である。
解析手法1に基づいてデータ処理部101が実行する電気泳動データ解析処理を説明するためのフローチャートである。
解析手法2に基づいてデータ処理部101が実行する電気泳動データ解析処理を説明するためのフローチャートである。
実施例1によるノイズ蛍光除去の効果を示す図である。
実施例2によるノイズ蛍光除去の効果を示す図である。
実施例3で使用した標識蛍光体の蛍光分光プロファイル:x(q,p)、およびノイズ蛍光プロファイル:y(r,p)(q=0,1,2,3、r=0、p=0,1,2,...,19)を示す図である。
測定された電気泳動時のエレクトロフェログラムs(p,t)の一例を示す図である。
最小自乗法により解析されたノイズ蛍光体の強度波形:n(r、t)の一部(ノイズ蛍光1の信号強度901)を示す図である。
ノイズピーク演算により除去した結果(各標識蛍光体からの蛍光強度波形f(q、t):蛍光体1から4の強度波形1001から1004)を示す図である。
比較例として、ノイズ蛍光体を設定せずに計算された標識蛍光体からの蛍光強度波形(蛍光体1から4の強度波形1101から1104)を示す図である。
4種の標識蛍光体のプロファイル(蛍光体1から4のプロファイル1201から1204)と2種のノイズ蛍光体のプロファイル(ノイズ蛍光1および2のプロファイル1205および1206)を示す図である。
実施例4で用いた標識蛍光体の蛍光分光プロファイル:x(q,p)(q=0,1,2,3,4、p=0,1,2,...,19)を示す図である。
実施例4で用いたノイズ蛍光プロファイル:y(r,p)(r=0,1、p=0,1,2,...,19)を示す図である。
測定された電気泳動時のエレクトロフェログラムs(p,t)の一例を示す図である。
解析手法1に従って算出されたノイズ蛍光体の強度波形:n(r、t)の一部を示す図である。
解析手法1による演算によって得られた結果(泳動時の標識蛍光体からの蛍光強度波形:f(q、t))を示す図である。
比較例として、ノイズ蛍光体の蛍光プロファイルy(r,p)を設定せずに算出された標識蛍光体からの蛍光強度波形を示す図である。

実施例

0018

以下、添付図面を参照して本実施形態および実施例について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った具体的な実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。

0019

また、本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。

0020

さらに、本実施形態は、後述するデータ処理部の機能を汎用コンピュータ上で稼動するソフトウェアで実装しても良いし、専用ハードウェア又はソフトウェアとハードウェアの組み合わせで実装しても良い。

0021

本実施形態は、蛍光体を標識とするDNA、タンパク等の生体関連成分(生体ポリマー)の解析技術に関し、例えば、DNAの塩基配列を決定する方法、及びその装置、またはDNAの分子量分離パターンを計測する方法、及びその装置に関するものである。

0022

本実施形態は、標識蛍光体のプロファイルの他に、標識蛍光体以外の蛍光体(非標識蛍光体)のプロファイル(例えば、ノイズのプロファイル)を予め設定し、これを用いて、非標識蛍光体の蛍光強度の時間変化(波形)を演算(後述の式(1)等参照)で求め、検出されるエレクトロフェログラム信号からノイズを除去することを特徴としている。また、本実施形態は、後述の式(1)から直接的に泳動時の標識蛍光体からの蛍光強度を演算で求めることを特徴としている。

0023

<キャピラリー電気泳動装置の構成例>
図1は、本実施形態によるキャピラリー電気泳動装置100の概略構成例を示す図である。キャピラリー電気泳動装置100は、生体ポリマー分析装置であって、例えば、試料を分離するための分離媒体を含むキャピラリーからなるマルチキャピラリーアレイ1と、マルチキャピラリーアレイの負電極2と試料導入部22とを浸すバッファー液3を保持する第1バッファー容器23と、バルブ6を有するゲルブロック4と、ゲルブロック4とアース電極7とを浸すバッファー液12を保持する第2バッファー容器25と、キャピラリーアレイ内に泳動媒体であるゲルを注入するためのシリンジ10と、試料に依存する情報を取得するための検出部26と、泳動される試料内の蛍光体を励起するためのレーザ光9を光照射箇所8に照射する光源20と、試料から生じる蛍光を取得する検出機構部37と、キャピラリーアレイ1の温度を調節する恒温槽11と、分離媒体に電圧を印加する高圧電源21と、各種処理を実行するデータ処理部(プロセッサ)101と、後述の各標識蛍光体のプロファイル(蛍光分光プロファイルと同義)および各ノイズ蛍光プロファイルを格納するメモリ102と、過去の検出データや演算結果などを格納する記憶デバイス103と、オペレータが指示や各種データ等を入力する入力デバイスマウスキーボード、各種スイッチ、タッチパネルなど)104と、検出(測定)結果、演算結果や判定結果などを出力する出力デバイス表示デバイス警告音などを発するスピーカなど)105と、を備える。

0024

マルチキャピラリーアレイ1は、管状部材である石英製キャピラリー16複数本(例えば、96本、24本、16本、12本、8本など)で構成され、光照射箇所(レーザ光9を照射する場所)8を含む検出部26で平面上に整列したものを使用する。各キャピラリー16はポリイミドなどで被覆されているが、光照射箇所8では被覆除去され、光照射が可能になっている。また、マルチキャピラリーアレイ1には、DNA分子などのサンプルが含まれている検査試料検査試料中のDNA分子を分離するための分離媒体であるポリマー水溶液が充填される。マルチキャピラリーアレイ1の一端には、キャピラリー16内に試料を導入できる試料導入部22が形成され、負電圧を印加できる負電極2が配置されている。他端には、ゲルブロック4と連結するゲルブロック接続部5を有し、ゲルブロック4からキャピラリーアレイ1に分離媒体(例えば、分子ふるい効果を有するポリマー水溶液)が注入される。検出部26は、試料導入部22とゲルブロック接続部5との間に設けられる。

0025

泳動分離媒体であるポリマー水溶液をキャピラリー16内に注入する流動媒体注入機構24は、ゲルブロック4と、シリンジ10と、バルブ6とを有する。各キャピラリー16内に泳動媒体であるポリマー水溶液を充填する際には、例えば、図示しない制御部によって、バルブ6が閉じられ、シリンジ10が押し込まれることによって、シリンジ10内のポリマー水溶液がキャピラリー内に注入される。

0026

キャピラリーアレイ1、ゲルブロック4、バッファー液3、負電極2、アース電極側のバッファー12、アース電極7、および高圧電源21は、分離媒体(ポリマー水溶液)中で検査試料を電気泳動させるための電圧印加機構を構成する。電気泳動をさせる際には、負電極2はバッファー液3に浸され、図示しない制御部はバルブ6を開放する。これにより、負電極2、バッファー液3、キャピラリーアレイ(より正確には、各キャピラリー16内のポリマー水溶液)1、ゲルブロック(より正確には、ゲルブロック4内のポリマー水溶液)4、アース電極側のバッファー12、およびアース電極7からなる通電路が形成される。この通電路に高圧電源21により電圧が印加される。通電路に電圧が印加されると、検査試料が分離媒体(ポリマー水溶液)中を電気泳動し、その分子量等の性質に従って分離される。

0027

電気泳動装置100の光学系は、光源20と、光照射箇所8を含む検出部26と、検出部26から生じる蛍光35を検出する検出機構部37とで構成される。光源20は、レーザ光9(488.0nmおよび514.5nmの光)を発振する。レーザ光9に代えてバンドパスフィルタなどで単色化したLED光やその他蛍光励起可能な光源から出射される光を使用してもよい。検出部26には、レーザ光9がキャピラリーアレイ1を透過する個所である光照射箇所8が並列に配置されている。そして、複数本のキャピラリーの光照射箇所8を同時に貫くように、検出部26に対して、キャピラリー16の並びの両方向(図1では上下方向)からレーザ光9が照射される。このレーザ光9が検査試料を励起して、検査試料から蛍光が放出されることになる。2次元検出器34を含む検出機構部37がこの蛍光を検出することにより、DNA分子配列等の検査試料に依存した情報を取得できる。

0028

<検出機構部37の内部構成例>
図2は、本実施形態によるキャピラリー電気泳動装置100の構成要素である検出機構部37の概略内部構成(光検出系)例を示す図である。図2には、検出機構部37と光照射箇所8が示されている。

0029

検出機構部37は、蛍光集光レンズ31と、グレーティング32と、フォーカスレンズ33と、CCDカメラCMOSカメラなどの2次元検出器34と、を備える。図示していないが、光路途中に、励起光を除去するための光学フィルタを適宜挿入してもよい。光照射箇所8にレーザ光9が照射されることで生じる、アレイ台15に載置されたキャピラリー16中の検査試料からの蛍光35は、蛍光集光レンズ31によって平行光36となり、グレーティング32によって分光され、フォーカスレンズ33によって2次元検出器34上に結像される。図2右側にその結像に関する要素(キャピラリーアレイ1、光照射箇所8、グレーティング32、2次元検出器34)の構成例が示されている。Y軸方向にキャピラリーアレイ1のアレイ像(図では16本)が並び、X軸方向に各キャピラリー16からの発光が分光されて結像し、2次元検出器のX方向の1画素ごとに異なる波長での蛍光強度が検出される。データ処理部101は、例えば、オペレータが入力デバイス104から入力した指示に応答して、検出された蛍光強度の信号を解析し、塩基配列などを決定する。また、データ処理部101は、例えば、オペレータによって入力された指示に応答して、蛍光強度の信号や解析結果である塩基配列などを出力デバイス105に出力(表示)する。

0030

<電気泳動データ解析の概要
続いて、本実施形態における電気泳動データ(エレクトロフェログラム)解析の概要について説明する。
電気泳動装置100は、泳動中の信号を指定の時間で繰り返し検出する(レーザ光9を連続照射し、検出を周期的あるいは所定期間毎に実行してもよいし、レーザ光9の照射タイミング信号検出イミングとを同期させてもよい)。なお、繰り返し回数をtとする(1秒に1回測定する場合は回数=時間(秒)となる)。

0031

また、各標識蛍光体から発する蛍光は、各蛍光スペクトルに従い、分光波長ごとに特定の強度比率で発光する。これをグレーティング、プリズムなどで、分光して検出器で検出する。標識蛍光体の組み合わせを基に、波長W1から波長W2までの検出波長域を設定し、この範囲の蛍光を複数の波長帯に分けて検出する。例えば、520nmから700nmまでの波長領域を連続する20波長帯に2次元検出器34のセンサ面を分割して検出する。このように分割波長帯番号をp(=0,1,2, ... , P−1;P=分割数)、標識蛍光体種の番号をq(=0,1,2,...,Q−1;Q=蛍光体種数)、ノイズ蛍光の番号をr(=0, ... ,R−1;R=設定したノイズ蛍光体種数)とし、時間tでの各信号成分を下記のように表記する。
検出される分割波長帯毎のエレクトロフェログラム信号:s(p,t)
泳動時の標識蛍光体からの蛍光強度:f(q,t)
泳動されている蛍光性ノイズの強度:n(r,t)
分割波長帯毎の背景強度:b(p,t)
標識蛍光体の蛍光プロファイル:x(q,p)
設定したノイズの蛍光プロファイル:y(r,p)

0032

s(p,t)は、複数の波長帯に分けて検出された強度(測定された信号)である。f(q,t)は、泳動されたバンド等から発する各蛍光体の蛍光強度である。n(r,t)は、泳動されたバンドに含まれると考えられるノイズの強度である。b(p,t)は、各検出波長帯の背景強度である。背景強度は、ベースラインとなる信号の強度であり、実際に検出されたs(p,t)において非パルス的な変動をする信号を抽出することによって得られる。x(q,p)は、各標識蛍光体の蛍光プロファイルであり、各標識蛍光体(標識蛍光体種(q))自体が発光する際に検出波長帯(p)毎に検出される強度を蛍光体種毎に規格化したプロファイルである。標識蛍光体が決まれば一意に特定され、蛍光スペクトルに相当するものである。y(r,p)は、ノイズとみなされる蛍光に対してx(q,p)と同様に算定したプロファイルであり、ノイズの蛍光スペクトルに相当するものとして設定する。例えば、蓄積された検出データに基づいてノイズを解析(または、ノイズが如何なる特性を有しているかを仮定)して抽出されたプロファイルである。なお、ここでは、“ノイズのプロファイル”と表現しているが、標識蛍光体とは異なる別の蛍光体のプロファイルと表現することができる。

0033

上記で、s(0,t)、…、s(P−1,t)をP行1列で表した行列をS、f(0,t)、…、f(Q−1,t)をQ行1列で表した行列をF、n(0,t)、…、n(R−1,t)をR行1列で表した行列をN、b(0,t)、…、b(P−1,t)をP行1列で表した行列をB、x(0,0)、…、x(Q−1,P−1)をP行Q列で表した行列をX、y(0,0)、…、y(R−1,P−1)をP行R列で表した行列をY、とすれば、式(1)と表現できる。なお、式(1)では、行列S、F、N、B、X、Yを太字体イタリック体で表示している。



例えば、分割数を20、標識蛍光体数を6、ノイズ蛍光体数を2とすると、式(2)のように表現することができる。

0034

0035

また、式(1)より、行列Fと行列Nをまとめて(Q+R)行1列の行列Gに置き換え、行列Xと行列YをまとめてP行(Q+R)の行列Zに置き換えることで、式(3)のように表現することができる。そして、分割数Pを20、標識蛍光体数Qを6、ノイズ蛍光体数Rを2とすると、式(3)は式(4)のように表現することができる。なお、式(3)では、行列S、G、B、Zを太字体・イタリック体で表示している。

0036

0037

0038

式(3)は、ノイズを蛍光体とみなし、試料に使用している標識蛍光体Q種とノイズ蛍光体R種が試料に含まれると想定し、Q+R種の蛍光体で、蛍光スペクトル強度から蛍光体種強度に変換する行列変換方式となる。

0039

ノイズ蛍光が検出されない場合は、行列N≒0となり、通常の変換になるが、泳動によってノイズピークが検出される場合は、上記を元に、行列Fおよび行列Nを求めることが、塩基種などを算定する上で、有効になる。

0040

行列Xおよび行列Yは、蛍光体種、蛍光スペクトル分割条件などの泳動条件によって決まる固定値であり、この値と測定される行列S、行列Bから、各時刻の行列F、行列Nを最小自乗法により決定する。この処理により、ノイズ蛍光ピークの影響が除外された標識蛍光体強度波形行列Fを得ることができ、塩基種、フラグメント種の正確な値を得ることが可能となる(解析手法1)。

0041

また、上記計算で得られる行列Nから検出波長帯毎の強度、すなわち行列YNを算定し、行列Sから差し引くことで、ノイズピークを除去したエレクトロフェログラムを得ることが可能になる(解析手法2)。

0042

<データ処理部における解析処理>
ここでは、上述した解析手法1および2をデータ処理部101が実行する処理として説明する。図3は、解析手法1に基づいてデータ処理部101が実行する電気泳動データ解析処理を説明するためのフローチャートである。図4は、解析手法2に基づいてデータ処理部101が実行する電気泳動データ解析処理を説明するためのフローチャートである。

0043

(i)解析手法1に基づく処理
(i-1)ステップ301
検出機構部37は、レーザ光9を照射することによって検査試料から生じる蛍光を検出する。検出機構部37では、2次元検出器34において、検出波長帯0からP−1(P:波長分割数であって、例えば、P=20)までP分割され、所定の泳動時間t(例えば、t=0から10000)の検出データが繰り返し出力される。そして、データ処理部101は、検出機構部37から繰り返し出力される検出データをエレクトロフェログラム信号(電気泳動データ)s(p,t)として取得する。つまり、ここでは、分割波長帯数(P個)分のエレクトロフェログラム信号が得られることになる。データ処理部101は、例えば、順次得られる各波長帯のエレクトロフェログラム信号s(p,t)をメモリ102に一時的に格納する。

0044

(i-2)ステップ302
データ処理部101は、メモリ102から各波長帯におけるエレクトロフェログラム信号を読出し、当該信号から、非パルス的変化を示している信号を背景強度の時間変化の信号b(p,t)としてそれぞれ抽出する。つまり、分割波長帯(P分割)毎にエレクトロフェログラム信号が取得されるため、P個の背景強度の時間変化が抽出されることになる。より具体的には、例えば、エレクトロフェログラム信号s(p,t)にローパスフィルタをかけることにより、高周波成分である蛍光強度信号を取り除き、さらに、波形の谷を検出してその位置を結んでえられる信号を背景強度の時間変化b(p,t)とすることができる。または、一定区間ごとに最小となる強度を得、それらを結んで背景強度の時間変化とする方式などもある。

0045

(i-3)ステップ303
データ処理部101は、予め用意されている、検査試料で使用されている各標識蛍光体の蛍光プロファイルと、標識蛍光体以外の蛍光体(非標識蛍光体:例えば、ノイズ)の蛍光プロファイルを、メモリ102から読み込む。各標識蛍光体プロファイルは、標識蛍光体の種類が分かれば一意に特定されるプロファイルである。ノイズの蛍光プロファイルは、ノイズが有するプロファイルの特徴を仮定し、当該仮定されたプロファイルの特徴に基づいて、過去に取得した複数の電気泳動データ(エレクトロフェログラム信号)のそれぞれを解析することにより、決定される。従って、これらのプロファイルは、泳動条件(蛍光体種、分割条件等)によって決まる固定値である。例えば、各標識蛍光体のプロファイル、およびノイズの蛍光プロファイルは、電気泳動を実行する前に求められており、予めメモリ102に格納されているものとする。

0046

(i-4)ステップ304
上記式(2)あるいは(4)は、所定の波長分割数における、検出されたエレクトロフェログラム信号s(p,t)、泳動時の背景強度b(p,t)、各標識蛍光体の蛍光プロファイルx(q,p)、設定したノイズプロファイルy(r,p)と、泳動時の標識蛍光体からの蛍光強度f(q,t)と泳動時の蛍光性ノイズの強度n(r,t)との関係を規定している。
データ処理部101は、例えば、式(4)に基づき、各時間の蛍光強度f(q,t)と各時間の蛍光性ノイズの強度n(r,t)を、最小自乗法(一例)を用いて算出する。

0047

(i-5)ステップ305
データ処理部101は、ステップ304で算出した各時間の蛍光強度f(q,t)を、標識蛍光体別に出力デバイス(表示装置)105に表示する(例えば、実施例2の図10参照)。

0048

(i-6)ステップ306
データ処理部101は、ステップ304で算出した各時間の蛍光強度f(q,t)を解析し、検査試料に含まれる塩基配列を決定する。決定した塩基配列の情報を出力デバイス(表示装置)105に表示してもよい。なお、塩基配列の決定法については周知の方法(例えば、特許文献1に記載の方法)を用いることができる。

0049

(ii)解析手法2に基づく処理
解析手法2では、ステップ301から304までは解析手法1と同じ処理が行われる。そこで、ここでは解析手法1とは異なるステップ401から403についてのみ説明する。

0050

(ii-1)ステップ401
データ処理部101は、メモリ102から読み込んだノイズの蛍光プロファイルy(r,p)とステップ304で算出した泳動時の蛍光性ノイズの強度n(r,t)とを乗算し、これを検出された各波長帯のエレクトロフェログラム信号s(p,t)から減算し、ノイズピーク成分を除去したエレクトロフェログラム信号を取得する。

0051

(ii-2)ステップ402
データ処理部101は、ステップ401で算出した、ノイズピーク成分を除去した各波長帯のエレクトロフェログラム信号を、出力デバイス(表示装置)105に表示する(例えば、実施例1の図5下段図6下段参照)。

0052

(ii-3)ステップ403
データ処理部101は、ステップ402で算出した、ノイズピーク成分を除去した各波長帯のエレクトロフェログラム信号を解析し、検査試料に含まれる塩基配列を決定する。決定した塩基配列の情報を出力デバイス(表示装置)105に表示してもよい。なお、塩基配列の決定法については周知の方法(例えば、特許文献1に記載の方法)を用いることができる。

0053

<実施例1>
図5は、実施例1によるノイズ蛍光除去の効果を示す図である。実施例1は、解析手法2に基づいて得られる測定結果である。図5上段は、測定(検出)されたエレクトロフェログラムs(p,t)の時間変化、図5中段は演算によって得られたノイズ蛍光n(r,t)の時間変化、図5下段がn(r,t)に基づく検出波長帯成分をs(p,t)から除去した、ノイズ蛍光ピークの影響の少ないエレクトロフェログラムを示している。

0054

図5は、蛍光体種が5種の場合で、ノイズ蛍光を1種としてあらかじめ蛍光プロファイルを測定し、設定した場合の測定および演算結果を示している。図5において、s(p,t)の時間変化は、20分割された信号のうち、2、5、8、11、14、17番目の強度を抜き出して表示した(各波形が6つの検出波長帯の強度変化を示している)。また、泳動時間t=9640scan付近にノイズピーク501が検出された。当該ノイズピーク501は、検出されるバンド幅が蛍光体フラグメントのバンド幅に比べ小さく、ノイズであると確認することができた。図5上段の信号波形s(p,t)の時間変化からノイズ蛍光成分(図5中段の信号波形)に基づく検出波長帯を差し引きすることで、ノイズピークの除去された波形(図5下段の信号波形)が得られ、塩基解析が正確にできるようになる。

0055

また、図5には示していないが、直接、標識蛍光体からの蛍光強度f(q,t)の時間変化を式(3)に基づいて決定した場合(解析手法1)でも、ノイズピークが除かれた蛍光強度波形を得ることができる。このように、本来の蛍光体の泳動バンドのピークにノイズが重なった場合でもその影響を除くことができる。

0056

<実施例2>
図6は、実施例2によるノイズ蛍光除去の効果を示す図である。実施例2は、実施例1と同様に、解析手法2に基づいて得られる測定結果である。図6では、図1と同様に、図6上段は測定(検出)されたエレクトロフェログラムs(p,t)の時間変化、図6中段は演算によって得られたノイズ蛍光n(r,t)の時間変化、図6下段はノイズ蛍光成分に基づく検出波長帯強度成分をs(p,t)から除去したノイズ蛍光ピークの影響の少ないエレクトロフェログラムを示している。

0057

実施例2においては、泳動時間t=11170、12220、12650、12720scan付近にノイズピークが検出され、s(p,t)にそのノイズピーク601から604が見られる。11170および12220scan付近のピーク601および602は、蛍光プロファイルから判断すると標識蛍光体と異なることが分かる。また、12650および12720scan付近のピーク603および604は、他の多数の泳動バンドと比べ、バンド幅が狭くなっていることからもノイズと識別される。このように、ノイズピークが判定できていることと確認できた。図6上段のs(p,t)の時間変化から、算定されたノイズ蛍光成分(図6中段の信号波形)に基づく検出波長帯強度成分を差し引きすることで、ノイズピークの除去された信号波形(図6下段の信号波形)が得られた。このノイズピークが除去された信号波形に基づけば、塩基解析を正確に実行することができるようになる。

0058

<実施例3>
実施例3は、解析手法1に基づく結果の効果について示すものである。実施例3では、塩基配列決定用の試料を測定する場合に、4種の標識蛍光体を使用した例が示されている。蛍光体1、2、3、および4として、蛍光の極大波長が各々528nm、549nm、575nm、および607nmとなる蛍光体を使用する。2次元検出器34として、X方向の画素数が256、または512画素を使用し、約0.72nm/画素程度に波長分散させて蛍光を結像させる。検出波長域をW1=520m、W2=692nmと設定し、ほぼ均等の波長帯幅となるように20分割して検出する(各波長帯の幅は約8.6nm)。2次元検出器34では、約12画素ごとに強度を積算して強度を算定する。

0059

図7は、実施例3で使用した標識蛍光体の蛍光分光プロファイル:x(q,p)、およびノイズ蛍光プロファイル:y(r,p)(q=0,1,2,3、r=0、p=0,1,2,...,19)を示す。実施例3では、標識蛍光体は蛍光体1、2、3、4の4種であり、ノイズ蛍光体は1種として、あらかじめ各々の蛍光強度特性を別途解析し、その蛍光プロファイルを得た。図7には、標識蛍光体1から4のプロファイル701から704、およびノイズ蛍光体1のプロファイル705が示されている。なお、信号強度は分割した全波長帯の強度の積算値が1になるように規格化して表示している。

0060

図7に示されるように、4種の標識蛍光体、および1種のノイズ蛍光体は波長プロファイルが異なっており、上述の式(3)から、最小自乗法により逆変換が可能である。そこで、図3で説明したように、データ処理部101が、最小自乗法を用いて、泳動時の標識蛍光体からの蛍光強度波形:f(0,t)、f(1,t)、f(2,t)、f(3,t)、およびノイズ蛍光体の強度波形:n(0,t)を演算する。

0061

図8は、測定された電気泳動時のエレクトロフェログラムs(p,t)の一例を示している。図8では、泳動時間t=8600scanから9100scanとし、検出波長帯0から検出波長帯19の20波長帯のそれぞれの強度変化が示されている。そして、図9は、最小自乗法により解析されたノイズ蛍光体の強度波形:n(0,t)の一部(ノイズ蛍光1の信号強度901)を示す図である。図9からも分かるように、t=8800scan付近にノイズピークが検出されている。しかし、本開示の手法(解析手法1)によれば、このようなノイズピークが検出されても、標識蛍光体からの蛍光強度波形はその影響を除いて解析することができる。図10は、ノイズピークを演算により除去した結果(各標識蛍光体からの蛍光強度波形f(0,t)、f(1,t)、f(2,t)、f(3,t):蛍光体1から4の強度波形1001から1004)を示している。一方、図11は、比較例として、ノイズ蛍光体を設定せずに計算された標識蛍光体からの蛍光強度波形(蛍光体1から4の強度波形1101から1104)を示している。図11の蛍光体1の蛍光強度波形1101は、泳動時間t=8800から8850に亘って鈍っており、ノイズの蛍光強度波形(図9)の影響を受けていることが分かる。そのため、波形が鈍った部分における塩基の識別の判断を誤る可能性がある。つまり、蛍光体1の強度波形1101の鈍りが小さければ誤りが生じる可能性は小さくなるが、強度波形1101の鈍りが大きいと蛍光体1の塩基が重なって表示されているという可能性も出てくる。よって、正確に塩基識別をするためには、ノイズ成分を除去しなければならない。これに対して、図10に示される蛍光強度波形f(q,t):(q=0、1、2、3)では、ノイズピーク付近(泳動時間t=8800付近)における標識蛍光体からの蛍光強度がより正確に算定されていることが分かる。

0062

なお、ノイズ蛍光体として実施例では1種を設定したが、2種類として設定すれば、異なるプロファイルを有するノイズも除去することが可能で、より正確性が高まる。例えば、図12は、4種の標識蛍光体のプロファイル(蛍光体1から4のプロファイル1201から1204)と2種のノイズ蛍光体のプロファイル(ノイズ蛍光1および2のプロファイル1205および1206)を示す図である。この場合も、4種の標識蛍光体1201から1204と2種のノイズ蛍光体1205および1206とは互いに波長プロファイルが異なっており、識別が可能となる。

0063

また、検出波長領域を分割して検出する場合、必ずしも検出波長帯を連続させる必要はなく、非連続(飛び飛び)の波長帯を用いてもよい。さらに、各波長帯の波長幅も、波長帯ごとに同じ幅(検出波長帯幅が均等:実施例3では均等に設定されている)でなく、任意の幅(例:不均等に設定した検出波長帯幅:後述の実施例4(図13および14)ではピーク部分の波長帯幅を他の部分よりも大きく設定している)でもよい。例えば、蛍光極大波長付近をより広く(大きく)したり、レーザ光9のラマン散乱が検出される波長帯についてその幅を狭く(小さく)したり、その波長帯からの信号を検出しないようにしたりすることが可能である。検出波長幅を連続かつ均等にすると、標識蛍光体やノイズ蛍光体に由来しないレーザ光9のラマン散乱の影響が検出信号に現れてしまうため、不均等に検出波長幅を設定することは有効である。分割数も各実施例で示した20個でなくてもよい。それらの条件で、標識蛍光体の蛍光プロファイル、ノイズ蛍光体の蛍光プロファイルを設定すればよい。

0064

<実施例4>
実施例4では、5種の標識蛍光体を使用し、5種のフラグメントを解析した。標識蛍光体1、2、3、4、5として、蛍光の極大波長が各々520nm、550nm、570nm、590nm、655nm付近となる蛍光体を使用した。また、2次元検出器34として、X方向の画素数が256または512画素を使用し、約0.72nm/画素程度に波長分散させて蛍光を結像させる。検出波長域をW1=522.5nm、W2=690nmと設定した。波長帯分割数は実施例3と同様に20分割とした。また、各検出波長帯の波長幅(=画素数)は同一ではなく、蛍光極大波長付近を広く(大きく)、それ以外を狭く(小さく)設定した。検出波長帯の幅と間隔は不ぞろいに設定した。

0065

図13は、実施例4で用いた標識蛍光体の蛍光分光プロファイル:x(q,p)を示す図である。図14は、実施例4で用いたノイズ蛍光プロファイル:y(r,p)(q=0,1,2,3,4、r=0,1、p=0,1,2,...,19)を示す図である。実施例4では、標識蛍光体は蛍光体1、2、3、4、5の5種であり、ノイズ蛍光体を2種として予め各々の蛍光強度特性を別途解析し、その蛍光プロファイルを得た。蛍光プロファイルの強度は、波長帯の強度の積算値が1になるように規格化して表示している。なお、検出波長帯番号1、4、7、10、および16は、概略5つの蛍光極大波長域の蛍光を検出する設定となっている。また、図13および図14から分かるように、5種の標識蛍光体、および2種のノイズ蛍光体は、蛍光プロファイルが互いに異なっている。従って、式(3)に基づいて、最小自乗法により逆変換が可能である。このため、データ処理部101は、上述した解析手法1に従って、泳動時の標識蛍光体からの蛍光強度波形:f(q,t)、およびノイズ蛍光体の強度波形:n(r,t)を算出する。

0066

図15は、測定された電気泳動時のエレクトロフェログラムs(p,t)の一例を示す図である。図15では、泳動時間t=10000scanから115000scanでの検出波長帯0から検出波長帯19の20波長帯の強度変化が示されている。また、図16は、解析手法1に従って算出されたノイズ蛍光体の強度波形:n(r,t)の一部を示す図である。図15を参照すると、t=11100scan付近に標識蛍光体からの蛍光ではないピーク1501が検出されている。図15では、ピーク1501の蛍光プロファイルは、5種の標識蛍光体とは異なり、また、明らかにバンド幅が蛍光体の標識されたフラグメントに比べて狭い。このため、ピーク1501は、ノイズピークであると認識することができる。しかしながら、実施例4では、このようなノイズピーク1501が検出されても、標識蛍光体からの蛍光強度波形はその影響を除いて解析することができた。

0067

図17は、解析手法1による演算によって得られた結果(泳動時の標識蛍光体からの蛍光強度波形:f(q,t))を示す図である。一方、図18は、比較例として、ノイズ蛍光体の蛍光プロファイルy(r,p)を設定せずに算出された標識蛍光体からの蛍光強度波形を示す図である。図18では、t=11100scan付近に鋭いピーク1801が認識される。これに対して、図17に示される蛍光強度波形f(q,t)においては、ピーク1801が出現していない。そして、データ処理部101は、ノイズピーク1801を除去した蛍光強度波形を解析処理する。これにより、ノイズの影響の少ないフラグメント解析をすることができる。

0068

なお、実施例4においては、ノイズ蛍光体を1種として設定しても、ノイズ除去の効果を見出すことができた。また、フラグメント解析においては、標識蛍光体種が6種あるいは4種の場合等のように、蛍光体の種々の組み合わせに対応することができ、ノイズピークを識別してその影響を少なくすることができる。

0069

電気泳動結果信頼性表示処理>
上記実施例1から4では、標識蛍光体以外の物質からの蛍光強度をノイズとして抽出している(図5、6、9、および16参照)。このようなノイズは、電気泳動結果に出現しないことが理想であるが、ゼロとすることは非常に困難である。ノイズの混入不可避であったとしても、抽出されるノイズ出現頻度が多かったり、ノイズの強度(レベル)が大きすぎたりする場合には、対応する電気泳動の結果(検出データ)自体の信頼性が低いと判断することできる。そこで、例えば、信頼性が低いと判断できるノイズ出現頻度の閾値と強度の閾値を予め設定する。そして、データ処理部101は、抽出したノイズの出現頻度および強度が上記閾値を超えるか否か判断し、少なくとも一方の閾値を超えた場合には、電気泳動結果の信頼性が低いと判定して、判定結果を出力デバイス105に出力する。出力形態は、警告音であってもよいし、画面アラート表示をしてもよい。このようにすることにより、ピーク強度とその発生頻度から泳動結果を評価する泳動評価判定部を有する電気泳動装置を提供することができる。そして、オペレータは、電気泳動の測定を再度実行すべきか判断することができるようになる。

0070

<まとめ>
(i)本実施形態では、キャピラリー電気泳動で試料を泳動させて、その時間波形を解析しているが、本開示はキャピラリー電気泳動に限定されず、泳動全般について適用可能で同様の効果を有する。また、標識蛍光体以外の物質による発光は、泳動以外の測定方式を用いた場合にも発生しうる。

0071

電気泳動においては、反応させたサンプルを、分子ふるい効果を有する媒体(例えば、ポリマー水溶液)中で泳動させると分子量が小さい順から流れ、特にDNAの場合には一塩基ずつ分離するため、これを順次読み込むことにより、信号強度を測定することができる。一塩基ずつ読み込むのは基本的なシーケンスであるため、一塩基ずつ読み込む方法として、電気泳動以外の別の方法を用いることもできる。例えば、基板に一塩基毎に蛍光体を取り付けて読み込み、それを外して、次の塩基に蛍光体を取り付けて読み込むといった手順を繰り返すことによっても一塩基ずつ信号を読み込むことができる。このようなDNAの塩基配列を逐次反応させながら検出する方式や装置でも、反応検出時に標識蛍光体以外からの蛍光が重層される場合がある。つまり、標識蛍光体以外の蛍光体(ノイズ蛍光体とみなす)による信号が検出される場合があり、これがノイズとなる。このように一塩基ずつ読み込む場合でも、検出される信号における時間情報は、連続的に塩基を読み込む塩基泳動と基本的に同じであるため、塩基に由来する蛍光強度信号にノイズが重層されて検出されることになる。そして、標識蛍光体以外の物質による発光を特定し、その蛍光プロファイルを設定し、標識蛍光体とそれ以外の蛍光体からの蛍光が発光するとして変換演算することにより、標識蛍光体の強度と、標識蛍光体以外の蛍光強度とを分離することができ、塩基種をより正確に算定することが可能になる。
よって、本開示の技術を適用すれば、電気泳動以外の方法でも、電気泳動の場合と同様にノイズを除去することができる。

0072

(ii)DNAを例として、本実施形態について説明したが、本開示の技術は、多糖類タンパク質酵素ペプチド)、核酸(DNA、RNA)など、生体ポリマーに対して適用可能である。

0073

(iii)本実施形態では、生体ポリマーに使用するQ種(Qは1以上の整数)の標識蛍光体のプロファイルと、標識蛍光体とは異なるR種(Rは1以上の整数)の蛍光体である非標識蛍光体(例えば、ノイズ)のプロファイルとを予め設定しておき、メモリ102や記憶デバイス103に保持しておく。また、電気泳動などの測定方式を用いて、複数の波長帯の強度の時間変化を検出する。そして、データ処理部(例えば、プロセッサ)101は、メモリ102などから標識蛍光体のプロファイルと非標識蛍光体のプロファイルを読み込み、複数の波長帯の強度の時間変化と、Q種の標識蛍光体のプロファイルと、R種の非標識蛍光体のプロファイルとを用いて、Q+R種の蛍光体を識別する。さらに、データ処理部101は、識別されたQ種の蛍光体のデータから生体ポリマーを解析する。解析は、周知の技術を用いて実行される。このように非標識蛍光体のプロファイルを導入することにより、不純物によるノイズに影響されずに標識蛍光体自体の強度を算定でき、生体ポリマーの成分を正確に検出し、識別することができるようになる。

0074

本実施形態では、所定幅の検出波長域(例えば、520nmから700nm)を設定し、当該検出波長域をP(Pは正の整数:例えば、20分割)個の波長帯に分割して、複数の蛍光体の強度の時間変化(s(p,t))を検出する。このようにすることにより、波長帯毎に各標識蛍光体の蛍光強度比率が異なるため、精度良くかつ効率的に標識蛍光体および非標識蛍光体を検出し、これらを分離することができるようになる。

0075

具体的には、本実施形態では、2つの方法で、標識蛍光体および非標識蛍光体を識別することができる。1つ目は、例えば、上述の式(1)(あるいは式(3))から、f(q,t)を演算し、得られたf(q,t)を用いてQ種の蛍光体を識別する方法である(解析手法1)。2つ目は、式(1)からn(r,t)を演算し、s(p,t)からn(r,t)に基づく検出波長帯成分を減算することにより非標識蛍光体の蛍光強度を除去し、非標識蛍光体が除去された複数の蛍光体の強度の時間変化を用いて、Q種の蛍光体を識別する方法である。(解析手法2)。

0076

さらに、本実施形態では、さらに、R種の非標識蛍光体の出現頻度、および当該非標識蛍光体の強度の少なくとも一方が予め設定された閾値以上か否か判断することにより、測定結果の信頼度を評価するようにしてもよい。このようにすることにより、オペレータは再度測定を実行した方がよいか判断することが可能となる。

0077

(iv)本開示は、上述の実施形態や実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、実施形態や実施例の記載は、本開示の技術を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。

0078

標識蛍光体として4から6種のほか、種々に適用可能である。また、ノイズ蛍光体として1種類、2種類のほか、複数種類を設定することも可能である。蛍光体の組み合わせも実施例記載のほか、種々の組み合わせが可能である。検出波長帯の設定も分割数をより多くすることも可能である。これらの組み合わせに応じた、蛍光プロファイルをそれぞれ設定すれば同様の解析が可能である。さらに、上記実施例では、DNAを測定対象としたが、たんぱく質などの生体関連成分を、分離検出する方法および装置についても適用でき、同様に不純物由来の蛍光成分の影響を受けない、または影響の少ない測定をすることが可能である。

0079

1キャピラリーアレイ
2負電極
3 負電極側のバッファー液
4ゲルブロック
5 ゲルブロックへの接続部
6バルブ
7アース電極
8光照射箇所
9レーザ光
10シリンジ
11恒温槽
12 アース電極側のバッファー液
15アレイ台
16キャピラリー
20光源
21高圧電源
22試料導入部
23 第1バッファー容器
24流動媒体注入機構
25 第2バッファー容器
26 検出部
31蛍光集光レンズ
32グレーティング
33フォーカスレンズ
34 2次元検出器
35 キャピラリー部からの発光
36 キャピラリー部らの発光が蛍光集光レンズによって平行光となった光束
37蛍光の検出機構部
100キャピラリー電気泳動装置
101データ処理部
102メモリ
103記憶デバイス
104入力デバイス
105 出力デバイス

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