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課題・解決手段

本発明は、低酸素障害虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤移植用細胞保護剤、及び生体保存剤を提供する。式(I)(式中の各記号は明細書に記載の通りである)で示される複素環化合物又はその塩、式S=C=N−R5(II)(式中の記号は明細書に記載の通りである)で示されるイソチオシアネート化合物、及びTRPA1作動薬から選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤、移植用細胞保護剤、及び生体保存剤。

概要

背景

ヒトや動物進化過程危機に瀕した際に生存確率を高める能力を獲得してきたと考えられる。雪山などで遭難したヒトが低体温状態発見され心停止後数時間以上経過したにもかかわらず回復したという例が数多く知られている。このような例では潜在的な内在性の個体保護作用が何らかの刺激により誘発された可能性が考えられる。クマリスなどの哺乳類の一部は冬眠する能力を持っている。これらの動物では冬眠時には体温酸素消費量が低下した状態で生命を維持することができる。心停止により酸素供給が停止すると脳などの酸素要求性の高い組織細胞不可逆的なダメージを受ける。一方で、心停止後の血流再開活性酸素などの発生を引き起こし、組織に大きなダメージを与える。このような低酸素障害虚血再灌流障害は、人為的に個体を低体温誘導する低体温療法により緩和される。また、冬眠状態の動物では炎症や虚血再灌流障害などに対する抵抗性も上昇することが知られる(非特許文献1−3)。

恐怖は危険が身に迫っていることを脳が判断した際に誘発される情動で、逃避行動天敵に発見される確率を低下させるFreezing行動(すくみ行動)などを引き起こすと共に、さまざまな種類の生理応答を誘発する。恐怖症患者恐怖刺激提示されて失神する際には心拍数が50%近く低下する(非特許文献4)。このように恐怖情動はヒトにおいても強力な生理応答の誘発と結びついている。危機に陥ったヒトや動物が低体温や低代謝に加え抗炎症免疫制御応答を誘発することで、組織や個体の保護作用を高めることができれば、生存確率を高めることが可能となる。しかし、恐怖情動性や潜在的な内在性の個体保護作用を誘発する技術は開発されていない。

概要

本発明は、低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤移植用細胞保護剤、及び生体保存剤を提供する。式(I)(式中の各記号は明細書に記載の通りである)で示される複素環化合物又はその塩、式S=C=N−R5(II)(式中の記号は明細書に記載の通りである)で示されるイソチオシアネート化合物、及びTRPA1作動薬から選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤、移植用細胞保護剤、及び生体保存剤。

目的

本発明は、恐怖情動性や潜在的な内在性の個体保護作用を誘発する技術を提供し、低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤、移植用細胞保護剤、及び生体保存剤を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

式(I)(式中、環Aは、窒素原子酸化されていてもよい硫黄原子及び酸素原子から選択される1又は2個のヘテロ原子を含む5から7員の複素環であり;R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、C1−6アルキル基ハロゲン原子アミノ基、−SH、C1−6アルキルチオ基、C2−6アルケニルチオ基、C1−6アルキルカルボニル基ホルミル基、C6−10アリール基、C1−6アルコキシカルボニル基、5又は6員ヘテロアリール基、又はオキソ基であり;R1及びR2は、互いに結合して、置換されていてもよい5又は6員環を形成してもよく;nは0、1、又は2である)で示される複素環化合物又はその塩、及び式(II)S=C=N−R5(II)(式中、R5は、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、C2−6アルケニル基、C6−10アリール基、又は5又は6員ヘテロアリール基である)で示されるイソチオシアネート化合物から選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、低酸素障害虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤移植用細胞保護剤、又は生体保存剤

請求項2

環Aが、チアゾリンチアゾールチアゾリジンチオモルホリンチオフェンピロールモルホリンアゼパンピリジンピラジンフラン、2,3−ジヒドロ−4H−1,4−チアジン、又はイミダゾールである、請求項1に記載の剤。

請求項3

有効成分が式(I)で示される複素環化合物又はその塩である、請求項1又は2に記載の剤。

請求項4

有効成分が式(II)で示されるイソチオシアネート化合物である、請求項1に記載の剤。

請求項5

低酸素障害又は虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の剤。

請求項6

移植用細胞保護剤である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の剤。

請求項7

生体保存剤である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の剤。

請求項8

鼻腔投与用の請求項1〜7のいずれか1項に記載の剤。

請求項9

TRPA1作動薬を有効成分として含有する低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤。

請求項10

TRPA1作動薬を有効成分として含有する移植用細胞保護剤。

請求項11

TRPA1作動薬を有効成分として含有する生体保存剤。

請求項12

鼻腔投与用の請求項9〜11のいずれか1項に記載の剤。

請求項13

低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療に使用するための、式(I)(式中、各記号は請求項1で定義した通りである)で示される複素環化合物又はその塩、及び式(II)S=C=N−R5(II)(式中、R5は請求項1で定義した通りである)で示されるイソチオシアネート化合物から選択される少なくとも1種の化合物

請求項14

式(I)(式中、各記号は請求項1で定義した通りである)で示される複素環化合物又はその塩、及び式(II)S=C=N−R5(II)(式中、R5は請求項1で定義した通りである)で示されるイソチオシアネート化合物から選択される少なくとも1種の化合物の移植用細胞保護剤又は生体保存剤としての使用。

請求項15

低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療に使用するための、TRPA1作動薬。

請求項16

TRPA1作動薬の移植用細胞保護剤又は生体保存剤としての使用。

請求項17

低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤、移植用細胞保護剤、又は生体保存剤を製造するための、式(I)(式中、各記号は請求項1で定義した通りである)で示される複素環化合物又はその塩、及び式(II)S=C=N−R5(II)(式中、R5は請求項1で定義した通りである)で示されるイソチオシアネート化合物から選択される少なくとも1種の化合物の使用。

請求項18

低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤、移植用細胞保護剤、又は生体保存剤を製造するための、TRPA1作動薬の使用。

請求項19

有効量の、式(I)(式中、各記号は請求項1で定義した通りである)で示される複素環化合物又はその塩、及び式(II)S=C=N−R5(II)(式中、R5は請求項1で定義した通りである)で示されるイソチオシアネート化合物から選択される少なくとも1種の化合物を哺乳動物投与することを含む、哺乳動物における低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療方法

請求項20

移植用細胞を、式(I)(式中、各記号は請求項1で定義した通りである)で示される複素環化合物又はその塩、及び式(II)S=C=N−R5(II)(式中、R5は請求項1で定義した通りである)で示されるイソチオシアネート化合物から選択される少なくとも1種の化合物と接触させることを含む、移植用細胞の保護方法

請求項21

生体を、式(I)(式中、各記号は請求項1で定義した通りである)で示される複素環化合物又はその塩、及び式(II)S=C=N−R5(II)(式中、R5は請求項1で定義した通りである)で示されるイソチオシアネート化合物から選択される少なくとも1種の化合物と接触させることを含む、生体の保存方法

請求項22

有効量のTRPA1作動薬を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療方法。

請求項23

移植用細胞を、TRPA1作動薬と接触させることを含む、移植用細胞の保護方法。

請求項24

生体を、TRPA1作動薬と接触させることを含む、生体の保存方法。

技術分野

0001

本発明は、低酸素障害虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤移植用細胞保護剤、及び生体保存剤に関する。

背景技術

0002

ヒトや動物進化過程危機に瀕した際に生存確率を高める能力を獲得してきたと考えられる。雪山などで遭難したヒトが低体温状態発見され心停止後数時間以上経過したにもかかわらず回復したという例が数多く知られている。このような例では潜在的な内在性の個体保護作用が何らかの刺激により誘発された可能性が考えられる。クマリスなどの哺乳類の一部は冬眠する能力を持っている。これらの動物では冬眠時には体温酸素消費量が低下した状態で生命を維持することができる。心停止により酸素供給が停止すると脳などの酸素要求性の高い組織細胞不可逆的なダメージを受ける。一方で、心停止後の血流再開活性酸素などの発生を引き起こし、組織に大きなダメージを与える。このような低酸素障害や虚血再灌流障害は、人為的に個体を低体温誘導する低体温療法により緩和される。また、冬眠状態の動物では炎症や虚血再灌流障害などに対する抵抗性も上昇することが知られる(非特許文献1−3)。

0003

恐怖は危険が身に迫っていることを脳が判断した際に誘発される情動で、逃避行動天敵に発見される確率を低下させるFreezing行動(すくみ行動)などを引き起こすと共に、さまざまな種類の生理応答を誘発する。恐怖症患者恐怖刺激提示されて失神する際には心拍数が50%近く低下する(非特許文献4)。このように恐怖情動はヒトにおいても強力な生理応答の誘発と結びついている。危機に陥ったヒトや動物が低体温や低代謝に加え抗炎症免疫制御応答を誘発することで、組織や個体の保護作用を高めることができれば、生存確率を高めることが可能となる。しかし、恐怖情動性や潜在的な内在性の個体保護作用を誘発する技術は開発されていない。

0004

日本特許第5350496号明細書

先行技術

0005

N Engl J Med 346:612-613, 2002
Lancet Neurol 2: 410-416, 2003
Nat Rev Neurosci 13: 267-278, 2012
Psychosom Med 23: 493-507, 1961
Nature 450: 503-508, 2007
Cell 163: 1153-1164, 2015

発明が解決しようとする課題

0006

本発明は、恐怖情動性や潜在的な内在性の個体保護作用を誘発する技術を提供し、低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤、移植用細胞保護剤、及び生体保存剤を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0007

恐怖情動は先天的と後天的なメカニズムで制御される。本発明者らは、鼻腔内で先天的と後天的な匂い情報が分離した神経回路により脳へ伝達され行動を制御することを解明した(非特許文献5)。この発見により、匂いに対する先天的な行動制御を担う神経回路の存在が証明され、その結果、匂いに対する行動は後天的な学習や経験により決定されるという従来の常識は覆された。匂いに対する応答が先天的に制御されるのであれば、この遺伝的なメカニズムに働きかけ匂い分子を開発することで、行動を望ましく制御する技術が開発できる可能性がある。実際に本発明者らは、極めて強力な先天的恐怖情動を誘発する人工匂い分子である「チアゾリン類恐怖臭: thiazoline-related fear odors(tFOs)」の開発に世界で初めて成功した(特許文献1、非特許文献6)。tFOsの開発により、これまで解明が困難であった先天的な恐怖情動の制御メカニズムや、先天的恐怖情動により誘発される生理応答の詳細な解明が可能となった。

0008

嗅覚による先天的と後天的な恐怖刺激は共に同等レベルのFreezing行動を誘発した。しかし、生理応答を指標にすると、先天的な恐怖刺激のみが体温や心拍数の低下を誘発することが明らかになった。さらに、本発明の下記一般式で示される先天的恐怖や潜在的な内在性の個体保護作用の誘発に関与する化合物群複素環化合物及びイソチオシアネート化合物)を嗅がせる、或いは、腹腔内に投与することで、低酸素障害や虚血再灌流障害や炎症が抑制できることが明らかになった。一方で、本発明者らは、恐怖情動性や潜在的な内在性の個体保護作用を誘発する化合物はTRPA1(transient receptor potential ankyrin 1)を活性化する性質があり、また、TRPA1ノックアウトマウスでは恐怖情動性や潜在的な内在性の個体保護作用が部分的に抑制されることを解明した。これらの結果は、恐怖情動性や潜在的な内在性の個体保護作用の一部がTRPA1遺伝子を介して制御されることを示す。TRPA1遺伝子は本発明の技術による低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤と移植用細胞保護剤を利用する対象となるヒトや家畜などの哺乳類から鳥類魚類昆虫に至るまで広範な生物で存在する。

0009

すなわち、本発明は以下に関する。
[1] 式(I)

0010

0011

(式中、
環Aは、窒素原子酸化されていてもよい硫黄原子及び酸素原子から選択される1又は2個のヘテロ原子を含む5から7員の複素環であり;
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、C1−6アルキル基ハロゲン原子アミノ基、−SH、C1−6アルキルチオ基、C2−6アルケニルチオ基、C1−6アルキルカルボニル基ホルミル基、C6−10アリール基、C1−6アルコキシカルボニル基、5又は6員ヘテロアリール基、又はオキソ基であり;
R1及びR2は、互いに結合して、置換されていてもよい5又は6員環を形成してもよく;
nは0、1、又は2である)
で示される複素環化合物又はその塩、及び
式(II)
S=C=N−R5 (II)
(式中、R5は、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、C2−6アルケニル基、C6−10アリール基、又は5又は6員ヘテロアリール基である)
で示されるイソチオシアネート化合物から選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤、移植用細胞保護剤、又は生体保存剤。
[2] 環Aが、チアゾリンチアゾールチアゾリジンチオモルホリンチオフェンピロールモルホリンアゼパンピリジンピラジンフラン、2,3−ジヒドロ−4H−1,4−チアジン、又はイミダゾールである、[1]に記載の剤。
[3] 有効成分が式(I)で示される複素環化合物又はその塩である、[1]又は[2]に記載の剤。
[4] 有効成分が式(II)で示されるイソチオシアネート化合物である、[1]に記載の剤。
[5] 低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の剤。
[6] 移植用細胞保護剤である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の剤。
[7] 生体保存剤である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の剤。
[8]鼻腔投与用の[1]〜[7]のいずれか1項に記載の剤。
[9] TRPA1作動薬を有効成分として含有する低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤。
[10] TRPA1作動薬を有効成分として含有する移植用細胞保護剤。
[11] TRPA1作動薬を有効成分として含有する生体保存剤。
[12] 鼻腔投与用の[9]〜[11]のいずれか1項に記載の剤。
[13] 低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療に使用するための、前記式(I)で示される複素環化合物又はその塩、及び前記式(II)で示されるイソチオシアネート化合物から選択される少なくとも1種の化合物。
[14] 前記式(I)で示される複素環化合物又はその塩、及び前記式(II)で示されるイソチオシアネート化合物から選択される少なくとも1種の化合物の移植用細胞保護剤又は生体保存剤としての使用。
[15] 低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療に使用するための、TRPA1作動薬。
[16] TRPA1作動薬の移植用細胞保護剤又は生体保存剤としての使用。
[17] 低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤、移植用細胞保護剤、又は生体保存剤を製造するための、前記式(I)で示される複素環化合物又はその塩、及び前記式(II)で示されるイソチオシアネート化合物から選択される少なくとも1種の化合物の使用。
[18] 低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤、移植用細胞保護剤、又は生体保存剤を製造するための、TRPA1作動薬の使用。
[19] 有効量の、前記式(I)で示される複素環化合物又はその塩、及び前記式(II)で示されるイソチオシアネート化合物から選択される少なくとも1種の化合物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療方法
[20] 移植用細胞を、前記式(I)で示される複素環化合物又はその塩、及び前記式(II)で示されるイソチオシアネート化合物から選択される少なくとも1種の化合物と接触させることを含む、移植用細胞の保護方法
[21] 生体を、前記式(I)で示される複素環化合物又はその塩、及び前記式(II)で示されるイソチオシアネート化合物から選択される少なくとも1種の化合物と接触させることを含む、生体の保存方法
[22] 有効量のTRPA1作動薬を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療方法。
[23] 移植用細胞を、TRPA1作動薬と接触させることを含む、移植用細胞の保護方法。
[24] 生体を、TRPA1作動薬と接触させることを含む、生体の保存方法。

発明の効果

0012

恐怖は危険な状況を察知した脳により誘発される情動で、危機に瀕したヒトや動物の生存確率を上昇させる行動や生理応答を誘発する。人為的に体温や代謝を低下させる低体温療法は緊急患者の予後を改善する効果を持つ。従って、恐怖や危機シグナル感知した脳や神経系などが全身の体温や代謝の低下を誘導したり、炎症や免疫反応を制御したりすることで、組織や個体保護作用を獲得するという機能は合目的である。しかし、このような恐怖情動性や潜在的な内在性の個体保護作用を制御するメカニズムは未解明であった。本発明の技術は、特定の化学構造ルールを満たす化合物の投与により、先天的恐怖や潜在的な内在性の個体保護作用を特徴づける行動と低体温や低代謝などの生理応答を誘発したり、炎症や免疫反応を抑制したりすると同時に、低酸素障害や虚血再灌流障害や炎症に対する強力な抵抗性を与えるものである。本発明の技術で利用する化合物は、揮発した匂い分子として受容体を活性化したり体内に取り込ませたりする方法や、注射などの方法で直接体内に投与する方法で効果を発揮する。その効果は、低体温、低代謝、酸素消費量の抑制、低心拍数、抗炎症反応の誘導、低酸素条件での組織や個体の保護作用、虚血再灌流障害に対する保護作用、炎症に対する保護作用などである。この技術により、個体に対する低酸素障害と虚血再灌流障害と炎症に対する治療薬移植用臓器の保護剤、ならびに生体保存剤が提供可能である。

図面の簡単な説明

0013

A:2MT(2-methyl-2-thiazoline)または後天的恐怖を誘発する匂い分子(anis-FS+)を嗅がせた際の体表面温度の経時的な変化(平均±標準誤差)を示す図である。B:2MTまたは後天的恐怖を誘発する匂い分子(anis-FS+)を提示している20分間の体表面温度の平均変化を示す図である。
様々な種類のチアゾリン類縁化合物または後天的恐怖を誘発する匂い分子(Anis-FS+)を提示した際の体表面温度の平均変化を示す図である。
A:様々な種類のチアゾリン類縁化合物を腹腔内注射した際の不動行動(すくみ行動)の平均±標準誤差を示す図である。B:様々な種類のチアゾリン類縁化合物を腹腔内注射した際の体表面温度の変化の平均±標準誤差を示す図である。
A:2MTまたは後天的恐怖を誘発する匂い分子(anis-FS+)を嗅がせた際の体深部温度の経時的な変化(平均±標準誤差)を示す図である。B:2MTまたは後天的恐怖を誘発する匂い分子(anis-FS+)を提示している20分間の体深部温度の平均変化を示す図である。
A:2MTまたは後天的恐怖を誘発する匂い分子(anis-FS+)を嗅がせた際の心拍数の経時的な変化(平均±標準誤差)を示す図である。B:2MTまたは後天的恐怖を誘発する匂い分子(anis-FS+)を提示している20分間の心拍数の平均変化を示す図である。
A:2MTまたは後天的恐怖を誘発する匂い分子(Anis-FS+)を嗅がせた際の血流量の経時的な変化(平均±標準誤差)を示す図である。B:匂い無しおよび2MTまたは後天的恐怖を誘発する匂い分子(Anis-FS+)を提示した際の平均の皮膚血流量を示す図である。
A:2MTまたはスパイスの匂い(Eug)を嗅がせた際の呼吸数の経時的な変化(平均±標準誤差)を示す図である。B:匂い無しおよび2MTまたはスパイスの匂い(Eug)を提示した際の平均の呼吸数を示す図である。
A:2MTを提示した際と匂い無し(Saline)の際のマウスの体重当たりの酸素消費量の経時的な変化(平均±標準誤差)を示す図である。B:2MTを提示した際と匂い無しの際のマウスの体重当たりの平均酸素消費量を示す図である。
A:2MTを提示した際と匂い無し(no odor)の際のマウスの4%酸素中での生存時間を、カプラマイヤー曲線を用いて示す図である。B:Aの実施例と同じ条件で匂い提示を行った際の体深部温度の経時変化(平均±標準誤差)を示す図である。
それぞれの複素環化合物を腹腔内注射した際のマウスの4%酸素中での生存時間(平均±標準誤差)を示す図である。
実施例10で使用した化合物の構造式図10Aグラフの順に示す図である。
それぞれのイソチオシアネート化合物を腹腔内注射した際のマウスの4%酸素中での生存時間(平均±標準誤差)を示す図である。
実施例11で使用した化合物の構造式を図11Aのグラフの順に示す図である。
チオモルホリンと生理食塩水を投与したマウスの4%酸素中での生存時間を、カプランマイヤー曲線を用いて示す図である。
図中に示されたそれぞれの溶液を腹腔内注射したマウスの生存時間を各個体ごとにプロットした図である。
A:匂い無しの条件での創傷部の変化を個体ごとに毎日観察した結果を示す写真である。B:2MTを提示した条件での創傷部の変化を個体ごとに毎日観察した結果を示す写真である。C:AおよびBで観察された創傷部の面積定量化した図である。D:A−Cの実施例と同じ条件で匂い提示を行った際の体深部温度の経時変化(平均±標準誤差)を示す図である。
コントロールマウス(trpa1+/-; n=5)およびTrpa1ノックアウトマウス(trpa1-/-; n=8)に2MTを提示した際の体表面温度の変化の平均を示す図である。
A:コントロールマウス(trpa1+/-; n=7)およびTrpa1ノックアウトマウス (trpa1-/-; n=7)に2MTを提示した際の体深部温度の経時的な変化を示す図である。B:コントロールマウス(trpa1+/-)およびTrpa1ノックアウトマウス(trpa1-/-)に2MTを提示した際の体深部温度の変化の平均を示す図である。
コントロールマウス(Hetero)およびTrpa1ノックアウトマウス(KO)に生理食塩水または2MTを提示した際の4%酸素中での生存時間の平均を示す図である。
それぞれの複素環化合物あるいはイソチオシアネート化合物を敗血症モデルマウスに腹腔内注射した際の血中のTNF-α量(平均±標準誤差)を示す図である。
A:敗血症モデルマウスに2MTを腹腔内注射した際の血中のIL-1β量(平均±標準誤差)を示す図である。B:敗血症モデルマウスに2MTを腹腔内注射した際の血中のIL-10量(平均±標準誤差)を示す図である。
敗血症モデルマウスに2MTを腹腔内注射した際の血中のHMGB1量(平均±標準誤差)を示す図である。
敗血症モデルマウスに2MTを腹腔内注射した際の生存時間をカプランマイヤー曲線および棒グラフ(平均±標準誤差)で示す図である。
脳虚血再灌流障害モデルマウスにおける脳の組織染色および障害された領域の面積を定量化した図である。
それぞれの複素環化合物をコントロールマウス(Trpa1+/+)およびTrpa1ノックアウトマウス(Trpa1-/-)に腹腔内投与した際の4%酸素中での生存時間(平均±標準誤差)を示した図である。
コントロールマウス(Trpa1+/+)およびTrpa1ノックアウトマウス(Trpa1-/-)にThiomorpholineを腹腔内投与した際の4%酸素中での生存時間(平均±標準誤差)を示した図である。
コントロールマウス(Trpa1+/-)およびTrpa1ノックアウトマウス(Trpa1-/-)に2MTを提示した際の酸素消費量の経時的な変化(平均±標準誤差)を示す図である。
A:それぞれのTrpa1作動薬を投与した際の4%酸素中での生存時間(平均±標準誤差)を示した図である。B:コントロールマウス(Trpa1+/+、Trpa1+/-)およびTrpa1ノックアウトマウス(Trpa1-/-)にアセトアミノフェンを投与した際の4%酸素中での生存時間(平均±標準誤差)を示した図である。
A:コントロールマウス(Trpa1+/-)およびTrpa1ノックアウトマウス(Trpa1-/-)に4E2MT(4-Ethyl-2-methyl-2-thiazoline)を腹腔内注射した際の体表面温度の経時変化(平均±標準誤差)を示した図である。B:コントロールマウス(Trpa1+/-)およびTrpa1ノックアウトマウス(Trpa1-/-)に4E2MTを腹腔内注射した際の4%酸素中での生存時間(平均±標準誤差)を示した図である。C:コントロールマウス(Trpa1+/+、Trpa1+/-)およびTrpa1ノックアウトマウス(Trpa1-/-)にLPS(Lipopolysaccharide)と4E2MTを投与した際の血中のTNFα量(平均±標準誤差)を示した図である。
チオモルホリン(TMO)および2MTを腹腔内投与した際の酸素消費量の経時変化(平均±標準誤差)を示した図である。

0014

式(I)の環Aは、窒素原子、酸化されていてもよい硫黄原子及び酸素原子から選択される1又は2個のヘテロ原子を含む5から7員の複素環を示す。環Aは、窒素原子及び酸化されていてもよい硫黄原子から選択される1又は2個のヘテロ原子を含む5から7員の複素環が好ましい。環Aは、窒素原子及び酸化されていてもよい硫黄原子を含む5から7員の複素環がさらに好ましい。環Aの員数は、5又は6がさらに好ましい。

0015

前記複素環の例としては、限定されないが、例えば、ピロール、ピリジン、ピリダジンピリミジン、ピラジン、ピペラジンピロリジンヘキサヒドロピリダジン、イミダゾール、イミダゾリジンピペリジン、チオフェン、チオラン、テトラヒドロ−2H−チオピラン、チアゾリン(例、2−チアゾリン、3−チアゾリン、4−チアゾリン)、チアゾール、チアゾリジン、イソチアゾールイソチアゾリン、チオモルホリン、チアジアゾリンチアジアゾールチアジアゾリジン、1,3−チアジナン、5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン、2,3−ジヒドロ−4H−1,4−チアジン、フラン、2H−ピラン、4H−ピラン、オキサゾールイソオキサゾール、モルホリン、オキサゾリン、アゼパンなどが挙げられる。好ましくは、チアゾリン(例、2−チアゾリン、3−チアゾリン、4−チアゾリン)、チアゾール、チアゾリジン、チオモルホリン、チオフェン、ピロール、モルホリン、アゼパン、ピリジン、ピラジン、フラン、2,3−ジヒドロ−4H−1,4−チアジン、又はイミダゾールであり、さらに好ましくは、チアゾリン(例、2−チアゾリン)、チアゾール、チアゾリジン、チオモルホリン、チオフェン、又は2,3−ジヒドロ−4H−1,4−チアジンである。

0016

ここで用いられる「ハロゲン原子」は、好ましくは、フッ素原子塩素原子臭素原子及びヨウ素原子から選択される。

0017

ここで用いられる「C1−6アルキル基」(基又は基の一部として用いられる場合)は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基を意味する。C1−6アルキル基としては、メチル基エチル基プロピル基イソプロピル基ブチル基、1−メチルプロピル基(sec−ブチル基)、2−メチルプロピル基(イソブチル基)、tert−ブチル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチル−2−メチルプロピル基などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいC1−6アルキル基としては、例えば、C1−4アルキル基(1〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基)が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。

0018

ここで用いられる「C1−6ハロアルキル基」は、1〜5個のハロゲノ基で置換されたC1−6アルキル基を意味し、ハロゲノ基が2個以上である場合の各ハロゲノ基の種類は、同一又は異なっていてもよい。ハロゲノ基としては、フルオロ基クロロ基ブロモ基などが挙げられる。C1−6ハロアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基クロロジフルオロメチル基、1−フルオロエチル基、2−フルオロエチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、1,1−ジフルオロエチル基、1,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル基、1−フルオロプロピル基、1,1−ジフルオロプロピル基、2,2−ジフルオロプロピル基、3−フルオロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4−フルオロブチル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、5−フルオロペンチル基、5,5,5−トリフルオロペンチル基、6−フルオロヘキシル基、6,6,6−トリフルオロヘキシル基などが挙げられるが、これに限定されない。

0019

ここで用いられる「C2−6アルケニル基」(基又は基の一部として用いられる場合)は、2〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルケニル基を意味する。C2−6アルケニル基としては、ビニル基アリル基プロパ−1−エニル基ブタ−1−エン−1−イル基、ブタ−2−エン−1−イル基、ペンタ−4−エン−1−イル基、2−メチルアリル基などが挙げられるが、これらに限定されない。

0020

ここで用いられる「C1−6アルコキシ基」(基又は基の一部として用いられる場合)は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基を意味する。C1−6アルコキシ基としては、メトキシ基エトキシ基プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、1−メチルプロポキシ基、2−メチルプロポキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、1−メチルブトキシ基、2−メチルブトキシ基、3−メチルブトキシ基、1,1−ジメチルプロポキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、1,2−ジメチルプロポキシ基、1−エチルプロポキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられるが、これらに限定されない。

0021

ここで用いられる「C1−6アルキルチオ基」は、C1−6アルキル基で置換された−SH基を意味する。C1−6アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基プロピルチオ基、ブチルチオ基などが挙げられるが、これらに限定されない。

0022

ここで用いられる「C2−6アルケニルチオ基」は、C2−6アルケニルで置換された−SH基を意味する。C2−6アルケニルチオ基としては、ビニルチオ基、アリルチオ基、プロパ−1−エニルチオ基、ブタ−1−エン−1−イルチオ基、ブタ−2−エン−1− イルチオ基、ペンタ−4−エン−1−イルチオ基、2−メチルアリルチオ基などが挙げられるが、これらに限定されない。

0023

ここで用いられる「C1−6アルキル−カルボニル基」は、C1−6アルキル基が結合したカルボニル基を意味する。C1−6アルキル−カルボニル基としては、例えば、アセチル基プロピオニル基ブチリル基イソブチリル基、バレリル基、ヘキサノイル基などが挙げられるが、これらに限定されない。

0024

ここで用いられる「C1−6アルコキシカルボニル基」は、C1−6アルコキシ基が結合したカルボニル基を意味する。C1−6アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されない。

0025

ここで用いられる「C6−10アリール基」は、6〜10個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基を意味する。C6−10アリール基としては、例えば、フェニル基ナフチル基(1−ナフチル基、2−ナフチル基)などが挙げられるが、これらに限定されない。

0026

ここで用いられる「5又は6員ヘテロアリール基」は、窒素原子、酸化されていてもよい硫黄原子及び酸素原子から選択される少なくとも1個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1又は2個)のヘテロ原子を含む5又は6員ヘテロアリール基を意味する。5又は6員ヘテロアリール基としては、窒素原子及び酸化されていてもよい硫黄原子から選択される1又は2個のヘテロ原子を含む5又は6員ヘテロアリール基が好ましい。

0027

5又は6員ヘテロアリール基の例としては、ピロリル基ピリジル基ピリダジニル基ピリミジニル基ピラジニル基、イミダゾリル基チエニル基チアゾリル基イソチアゾリル基、チアジアゾリル基、フリル基オキサゾリル基イソオキサゾリル基などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ピリジル基、チエニル基などである。

0028

ここで用いられる「オキソ基」なる語(基又は基の一部として用いられる場合)は、=O基を示す。

0029

ここで用いられる「酸化されていてもよい硫黄原子」は、S、SO、又はSO2を意味する。

0030

R1及びR2が、互いに結合して形成する、「置換されていてもよい5又は6員環」の「5又は6員環」は、窒素原子、酸化されていてもよい硫黄原子及び酸素原子から選択される少なくとも1個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1又は2個)のヘテロ原子を含む5又は6員環を意味する。前記5又は6員環の例としては、ベンゼン環テトラヒドロピリミジン環などが挙げられる。前記5又は6員環は置換されていてもよく、置換基としては、例えば、C1−6アルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、−SH、C1−6アルキルチオ基、C2−6アルケニルチオ基、C1−6アルキル−カルボニル基、ホルミル基、C1−6アルコキシカルボニル基、オキソ基などから選択される1から4個(好ましくは1又は2個)の置換基が挙げられる。置換基としては、好ましくは、C1−6アルキル基(例、メチル)及びオキソ基から選択される1から4個の置換基である。

0031

式(I)において、好ましくは、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、C1−6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピルイソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル)、ハロゲン原子(例、塩素原子)、アミノ基、−SH、C1−6アルキルチオ基(例、メチルチオ)、C2−6アルケニルチオ基(例、アリルチオ)、C1−6アルキル−カルボニル基(例、アセチル)、ホルミル基、C6−10アリール基(例、フェニル)、5又は6員ヘテロアリール基(例、チエニル)、又はオキソ基であり;R1及びR2は、互いに結合して、置換されていてもよい5又は6員環(例、ベンゼン環、テトラヒドロピリミジン環)を形成してもよい。

0032

式(I)において、n=1又は2の場合、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1個は水素原子でないことが好ましい。式(I)において、n=0の場合、R1、R2及びR3のうち少なくとも1個は水素原子でないことが好ましい。

0033

本発明において、有効成分として用いられる好適な式(I)の複素環化合物としては、例えば、
2−メチル−2−チアゾリン(2MT)、
2,4,5−トリメチルチアゾール、
2−アミノチアゾール
チオモルホリン、
2−エチルピロール、
2−アセチルチオフェン
3−クロロチオフェン
2,3−ジメチルチオモルホリン、
2,6−ジメチルチオモルホリン、
2−メチルチオモルホリン、
2−(メチルチオ)−2−チアゾリン、
2−メチルチオフェン
2−sec−ブチル−2−チアゾリン(SBT)、
4−エチル−2−メチル−2−チアゾリン(4E2MT)、
2−アミノ−2−チアゾリン、
2−エチルチオフェン、
2,4,5−トリメチル−3−チアゾリン(TMT)、
2−メチルチアゾール
3−メチルピロール
チオモルホリン 1,1−ジオキシド
2−イソプロピル−4−メチルチアゾール、
アゼパン、
2,6−ジメチルピリジン(2,6−ルチジン)、
2−エチル−4−メチルチアゾール、
2−メルカプトチアゾール、
チアゾール、
2,4−ジメチルピリジン、
2−プロピルチアゾール、
4−フェニルチオモルホリン 1,1−ジオキシド、
2−(アリルチオ)−2−チアゾリン、
5−メチルチアゾール、
チアゾリジン、
2−メチルベンゾ[d]チアゾール、
2−クロロチアゾール
2,4−ジメチル−1H−ピロール、
カフェイン
2−アセチルチアゾール
2,3−ジエチルピラジン
2−イソブチルチアゾール、
2−(2−チエニル)ベンゾチアゾール
3,4−ジメチルピリジン、
2−エチルフラン
3−メチルチオフェン、
2H−1,4−ベンゾチアジン−3(4H)−オン
5−チアゾールカルボキシアルデヒド(5−ホルミルチアゾール)、
2,6−ジメチルピラジン
2,2−ジメチルチアゾリジン、
2,3−ジメチルピリジン、
3−メチルピリジン
モルホリン、
2−チオフェンカルボキシアルデヒド、
2,5−ジメチル−2−チアゾリン、
2−エチル−2−チアゾリン
2−エチル−3,5−ジメチルピラジン
などが挙げられるが、これらに限定されない。

0034

本発明において、有効成分として用いられる好適な式(II)のイソチオシアネート化合物としては、例えば、
メタリルイソチオシアネート
アリル イソチオシアネート、
エチルイソチオシアネート、
2−クロロエチルイソチオシアネート、
3−ピリジルイソチオシアネート、
フェニルイソチオシアネート、
4−ペンテン−1−イルイソチオシアネート、
ブチルイソチオシアネート、
プロピルイソチオシアネート
などが挙げられるが、これらに限定されない。

0035

本発明において、TRPA1作動薬とは、TRPA1を活性化する物質をいう。本発明において、有効成分として用いられる好適なTRPA1作動薬としては、例えば、
5−メチルチアゾール、
2−エチルフラン、
4−エチル−2−メチル−2−チアゾリン、
2−メチルチオフェン、
2,3−ジエチルピラジン、
2−エチル−3,5−ジメチルピラジン、
2−アセチルチオフェン、
2,6−ルチジン(2,6−ジメチルピリジン)、
チオモルホリン、
アセトアミノフェン、
アリルイソチオシアネート、
デルタ9−テトラヒドロカンナビノール
などが挙げられるが、これらに限定されない。

0036

本発明において、有効成分として用いられる式(I)の複素環化合物及び式(II)のイソチオシアネート化合物は、試薬として一般的に知られた物質が含まれ、市販のものを利用でき、また自体公知の方法により得ることができる。式(I)の複素環化合物及び式(II)のイソチオシアネート化合物を、低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤、移植用細胞保護剤、又は生体保存剤として使用することはこれまで開示も示唆もされていない。

0037

式(I)で示される複素環化合物の好ましい例としては、下記式(A)〜(D)で示される化合物又はその塩が挙げられる。

0038

0039

(式中、
X1は、S、O、又はN(R16)であり;
X2は、N又はCR12であり;
X3は、S、SO2、O、又は−(CH2)2−であり;
X4は、N又はCR15であり;

0040

0041

は、単結合又は二重結合を示し;
R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、それぞれ独立して、水素原子、C1−6アルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、−SH、C1−6アルキルチオ基、C2−6アルケニルチオ基、C1−6アルキル−カルボニル基、ホルミル基、C6−10アリール基、C1−6アルコキシカルボニル基、5又は6員ヘテロアリール基、又はオキソ基であり;R13及びR14は、互いに結合して、ベンゼン環、又はC1−6アルキル基及びオキソ基から選択される1から4個の置換基で置換されていてもよいテトラヒドロピリミジン環を形成してもよい;ただし、式(A)において、R11及びR12はオキソ基ではなく;式(A)において、

0042

0043

が二重結合を示すとき、R13及びR14はオキソ基ではなく;
式(D)において、R11、R12、R13、R14及びR15はオキソ基ではなく、式(B)において、R11とR12が一緒になって、オキソ基を形成してもよい)

0044

式(A)から(D)において、好ましくは、R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、それぞれ独立して、水素原子、C1−6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル)、ハロゲン原子(例、塩素原子)、アミノ基、−SH、C1−6アルキルチオ基(例、メチルチオ)、C2−6アルケニルチオ基(例、アリルチオ)、C1−6アルキル−カルボニル基(例、アセチル)、ホルミル基、C6−10アリール基(例、フェニル)、5又は6員ヘテロアリール基(例、チエニル)、又はオキソ基であり;
R13及びR14は、互いに結合して、ベンゼン環、又はC1−6アルキル基及びオキソ基から選択される1から4個の置換基で置換されていてもよいテトラヒドロピリミジン環を形成してもよい。

0045

本発明に係る化合物の塩としては、医薬的に許容される塩であればよく、例えば、ナトリウム塩カリウム塩のようなアルカリ金属塩マグネシウム塩カルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩ジメチルアンモニウム塩トリエチルアンモニウム塩のようなアンモニウム塩塩酸塩過塩素酸塩硫酸塩、硝酸塩のような無機酸塩酢酸塩メタンスルホン酸塩のような有機酸塩などが挙げられる。

0046

本発明において、低酸素障害とは、低酸素に起因する疾患をいう。例えば、低酸素症、低酸素脳症新生児低酸素症、低酸素性虚血性脳症、低酸素性低酸素症、虚血性低酸素症、うっ血性低酸素症、高山病脳梗塞心筋梗塞腎不全心不全糖尿病性血管障害閉塞性動脈硬化症潰瘍脊髄障害視神経障害視細胞障害、神経障害などが挙げられる。

0047

本発明において、虚血再灌流障害とは、虚血状態にある臓器への血流再開に伴う再灌流によって虚血臓器の細胞や組織に生じる障害をいう。例えば、心筋梗塞、脳梗塞、腸間膜血管閉塞症などに対する再灌流療法後や臓器移植後の虚血再灌流障害、褥瘡などが挙げられる。

0048

本発明において、炎症とは、外傷病原体侵入化学物質刺激、放射線障害などが原因となり誘発される全身や組織での病的な炎症状態を示す。例えば、敗血症、脳炎髄膜炎動脈炎副鼻腔炎鼻炎肺炎気管支炎口内炎食道炎胃炎腸炎肝炎筋炎皮膚炎関節炎腎炎副腎炎リンパ管炎関節リウマチ乾癬骨粗鬆症クローン病などが挙げられる。

0049

本発明において、移植用細胞保護剤とは、移植用細胞(臓器、組織を含む)を保護するために使用する薬剤をいう。細胞は、心臓腎臓肝臓骨髄膵臓、皮膚、骨、静脈動脈角膜、血管、小腸大腸、脳、脊髄平滑筋骨格筋卵巣精巣子宮臍帯などの臓器、組織、及びそれに由来する細胞が挙げられる。

0050

本発明において、生体保存剤とは、生物を食料として貯蔵または輸送する際に、生物の全身又は一部を保存したり鮮度を維持するために用いることができる。そのような生物は、食品として利用する動植物魚介類などの生物が挙げられる。本発明において、生体とは、食品として利用する動植物や魚介類などの生物(例えば、魚類、貝類畜産動物野菜果物など)の全体又は一部をいう。

0051

前記式(I)で示される複素環化合物又はその塩、又は前記式(II)で示されるイソチオシアネート化合物(以下、本発明の化合物ともいう)を気化させて吸引させる、又は、体内に投与することで、低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤として利用することができる。あるいは、移植用の臓器を摘出するドナーに本発明の化合物を投与するか、摘出した移植用臓器(組織、細胞を含む)の保存液に添加することで移植用細胞保護剤として利用することができる。又、食料として供される動植物や魚介類などの保存液に添加することで生体保存剤として利用することができる。

0052

投与方法
低酸素障害や虚血再灌流障害や炎症を発症した、或いは、発症する可能性があるヒトを含む動物に対して障害発生の予防や症状の緩和を目的として本発明の化合物を投与することができる。また、臓器移植ドナーの体内に組織保護を目的として本発明の化合物を投与することができる。本発明の化合物に由来する0.1から100,000 ppm(又は10から100,000 ppm)の濃度で発生させた気体ガスガスマスクや類似した機能を持つ装置を用いて鼻腔や肺を経由して吸引させることができる。あるいは、本発明の化合物を1 μg/kgから5,000 mg/kgの投与量で経口投与することができる。あるいは、皮内注射皮下注射筋肉内注射静脈内注射動脈内注射、脊髄腔内注射、腹腔内注射などの方法で1 μg/kgから5,000 mg/kgの投与量の本発明の化合物を体内に注射することができる。投与の頻度は、単回投与、あるいは、一定時間毎の継続投与や、異なる時間間隔での継続投与とすることができる。本発明の移植用細胞保護剤を移植用臓器(組織、細胞を含む)の保存液に添加する場合、保存液中の本発明の化合物の濃度は、好ましくは1 μg/lから5,000 mg/lである。投与対象又は臓器移植ドナーである動物としては、哺乳類(ヒト、マウス、ラットハムスターウサギネコイヌウシヒツジ、ブタ、ウマサルなど)が挙げられる。本発明の生体保護剤を食料の貯蔵や輸送の際の保存液に添加する場合、保存液中の本発明の化合物の濃度は、好ましくは1 μg/lから5,000 mg/lである。投与対象となる生物としては、哺乳類、魚類、鳥類、昆虫が挙げられる。

0053

本発明の化合物を低酸素障害又は虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤、移植用細胞保護剤、又は生体保存剤(以下、本発明の剤ともいう)として使用する場合、必要に応じて医薬的に許容可能な添加剤を配合することができる。すなわち、本発明の剤は、本発明の化合物及び医薬的に許容可能な添加剤を含有する組成物医薬組成物)として使用することができる。

0054

医薬的に許容可能な添加剤の具体例としては、抗酸化剤、保存剤、着色料風味料、および希釈剤乳化剤懸濁化剤溶媒フィラー増量剤緩衝剤送達ビヒクル、希釈剤、キャリア賦形剤および/または医薬的アジュバントなどが挙げられるが、これらに限定されない。

0055

本発明の剤の製剤形態は特に限定されないが、例えば、液剤注射剤徐放剤、噴霧剤などが挙げられる。本発明の剤を上記製剤として処方するために使用される溶媒としては、水性または非水性のいずれでもよい。

0056

注射剤は当該分野において周知の方法により調製することができる。例えば、適切な溶剤(生理食塩水、PBSのような緩衝液滅菌水など)に溶解した後、フィルターなどで濾過滅菌し、次いで無菌容器(例えば、アンプルなど)に充填することにより注射剤を調製することができる。この注射剤には、必要に応じて、慣用薬学的キャリアを含めてもよい。非侵襲的カテーテルを用いる投与方法も使用され得る。本発明で用いることができるキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンを含む生理食塩水などが挙げられる。

0057

以下に実施例、実験例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、実施例、実験例は本発明を限定するものではない。

0058

実施例1:チアゾリン類縁化合物によって誘発される体表面温度低下
実験方法
チアゾリン類縁化合物および後天的恐怖を誘発する匂い分子の体表面温度に与える影響を解析した。約3か月齢のC57/BL6N雄マウステストの2-3日前にペントバルビタール(50m g/kg, i.p.)を用いて麻酔し、背中の毛を脱毛クリームで脱毛した。テスト当日にはマウスを1匹ずつテストケージに入れ、10分間馴化後に、チアゾリン類縁化合物(2-methyl-2-thiazoline; 2MT)又は後天的恐怖を誘発する匂い分子(anisole)をそれぞれ271 μmol浸み込ませたろ紙をテストケージに提示した際の背中の体表面温度の変化を、サーモグラフィーカメラ(NECAvio)を用いて解析した。体表面温度変化の値は水を提示した10分間の体表面温度の平均とそれぞれの匂い分子を提示した20分間の体表面温度の平均の差分として計算し、匂いなしの時の体表面温度の変化を0とした。後天的な恐怖を誘発する匂いを嗅がせたマウスに関しては、計測の1日前に電気ショックとanisoleの匂いの関連学習を行い、マウスがanisoleの匂いに対して後天的な恐怖を感じるように学習させた。

0059

結果
結果を図1に示す。
図1A:チアゾリン類縁化合物(2MT)または後天的恐怖を誘発する匂い分子(anis-FS+)を嗅がせた際の体表面温度の経時的な変化(平均±標準誤差)を示した(n≧8)。
図1B:チアゾリン類縁化合物(2MT)または後天的恐怖を誘発する匂い分子(anis-FS+)を提示している20分間の体表面温度の平均変化を示した。グラフは平均値±標準誤差の値を示し、匂いがない場合と匂いを提示した場合の体表面温度の変化に関してStudentのt検定を行った。***はp<0.001で有意差があることを表す。
先天的恐怖を誘発するチアゾリン類縁化合物(2MT)は体表面温度の明確な低下を引き起こした。これに対し、後天的恐怖を誘発する匂い分子(anis-FS+)は体表面温度に有意な影響を与えなかった。

0060

実施例2:様々なチアゾリン類縁化合物によって誘発される体表面温度低下
実験方法
様々なチアゾリン類縁化合物の体表面温度に与える影響を実施例1と同様の方法で解析した。コントロールとして、後天的恐怖を誘発する匂い分子の影響も解析した。
実験化合物括弧内は図2中の表記を示す)
2−メチル−2−チアゾリン(2-methylthiazoline)
2,5−ジメチル−2−チアゾリン(2,5-dimethylthiazoline)
2,2−ジメチルチアゾリジン(2,2-dimethylthiazolidine)
2,4,5−トリメチル−3−チアゾリン(TMT)
チアゾール(Thiazole)
2−エチル−2−チアゾリン(2-ethylthiazoline)
チオモルホリン(thiomorpholine)

0061

結果
結果を図2に示す。
図2:様々な種類のチアゾリン類縁化合物または後天的恐怖を誘発する匂い分子(Anis-FS+)を提示した際の体表面温度の平均変化を示した。グラフは平均±標準誤差の値を示し、後天的恐怖を誘発する匂い分子とチアゾリン類縁化合物を提示した際の体表面温度の変化に関してStudentのt検定を行った。***はp<0.001で有意差があることを示す(各n≧8)。
様々な種類のチアゾリン類縁化合物は体表面温度を有意に低下させる効果を持つことが示された。

0062

実施例3:様々なチアゾリン類縁化合物を腹腔内投与した場合に誘発されるすくみ行動および体表面温度低下
実験方法
様々な種類のチアゾリン類縁化合物を腹腔内投与した際のマウスのすくみ行動(不動時間と体表面温度への影響を解析した。匂い分子の投与は、生理食塩水で100倍希釈した溶液100 μl(約40 mg/kg, i.p.)を腹腔内注射する方法で行い、体表面温度の計測は実施例1と同様の方法で行った。すくみ行動の計測は、すくみ行動解析ソフトウェア(Freeze Frame2)を用いて、匂い分子投与後20分間の不動時間の割合(%)として算出した。コントロールとして生理食塩水(saline)と先天的恐怖を誘発しない匂い分子(thiophene)を腹腔内投与した際のすくみ行動と体表面温度の変化も解析した。
実験化合物(括弧内は図3中の表記を示す)
チオフェン(thiophene)
5−メチルチアゾール(5-methylthiazole)
2−sec−ブチル−2−チアゾリン(SBT)
2,4,5−トリメチル−3−チアゾリン(TMT)
2−メチル−2−チアゾリン(2-methylthiazoline)
チオモルホリン(thiomorpholine)
2,2−ジメチルチアゾリジン(2,2-dimethylthiazolidine)
2−メチル−4−エチル−2−チアゾリン(2-methyl-4-ethylthiazoline)
2−エチルチオフェン(2-ethylthiophene)

0063

結果
結果を図3に示す。
図3A:様々な種類のチアゾリン類縁化合物を腹腔内注射した際の不動行動(すくみ行動)の平均±標準誤差を示した。コントロールとして匂いなし(saline)の際の不動行動を解析し、匂い無しの場合と匂いありの場合の不動行動に関してStudentのt検定を行った。**はp<0.01、***はp<0.001で有意差があることを、nsはp>0.05で有意差がないことを示す。
図3B:様々な種類のチアゾリン類縁化合物を腹腔内注射した際の体表面温度の変化の平均±標準誤差を示した。コントロールとして匂いなし(saline)の際の体表面温度の変化を解析し、匂い無しの場合と匂いありの場合の体表面温度の変化に関してStudentのt検定を行った。**はp<0.01、***はp<0.001で有意差があることを、nsはp>0.05で有意差がないことを示す。
チアゾリン類縁化合物は腹腔内投与によってすくみ行動を引き起こした。また、チアゾリン類縁化合物の多くの化合物で腹腔内投与によって体表面温度の低下が観察された。

0064

実施例4:チアゾリン類縁化合物によって誘発される体深部温度低下
実験方法
チアゾリン類縁化合物および後天的恐怖を誘発する匂い分子の体深部温度に与える影響を解析した。約3か月齢のC57/BL6Nの雄マウスの腹部無線式生体パラメータ計測装置(Physiotel社製)を埋め込んだ。マウスは術後約10日間の回復期間後に以下の実験を行った。マウスは1匹ずつテストケージに入れ、10分間馴化後に、水を浸み込ませたろ紙を10分間提示し、その後チアゾリン類縁化合物(2-methyl-2-thiazoline; 2MT)または後天的恐怖を誘発する匂い分子(anisole)をそれぞれ271 μmol浸み込ませたろ紙を20分間提示し、その間の体温の情報をDataquest A.R.T.ソフトウェア(DataScience international)を用いて10秒ごとに記録した。体深部温度変化の値は水を提示した10分間の体深部温度の平均とそれぞれの匂い分子を提示した20分間の体深部温度の平均の差分として計算し、匂いなしの時の体深部温度の変化を0とした。後天的な恐怖を誘発する匂いを嗅がせたマウスに関しては、計測の1日前に電気ショックとanisoleの匂いの関連学習を行い、マウスがanisoleの匂いに対して後天的な恐怖を感じるように学習させた。

0065

結果
結果を図4に示す。
図4A:チアゾリン類縁化合物(2MT)または後天的恐怖を誘発する匂い分子(anis-FS+)を嗅がせた際の体深部温度の経時的な変化(平均±標準誤差)を示した(n≧8)。
図4B:チアゾリン類縁化合物(2MT)または後天的恐怖を誘発する匂い分子(anis-FS+)を提示している20分間の体深部温度の平均変化を示した。グラフは平均値±標準誤差の値を示し、匂いがない場合(control)と匂いを提示した場合の体表面温度の変化に関してStudentのt検定を行った。***はp<0.001で有意差があることを表す。
チアゾリン類縁化合物(2MT)は体深部温度の明確な低下を引き起こした。これに対し、後天的恐怖を誘発する匂い分子(anis-FS+)は体表面温度を有意に上昇させた。

0066

実施例5:チアゾリン類縁化合物によって誘発される心拍数低下
実験方法
チアゾリン類縁化合物および後天的恐怖を誘発する匂い分子の心拍数に与える影響を解析した。約3か月齢のC57/BL6Nの雄マウスの腹部に無線式の生体パラメーター計測装置(Physiotel社製)を埋め込んだ。マウスは術後約10日間の回復期間後に以下の実験を行った。マウスは1匹ずつテストケージに入れ、10分間馴化後に、水を浸み込ませたろ紙を10分間提示し、その後、チアゾリン類縁化合物(2-methyl-2-thiazoline; 2MT)または後天的恐怖を誘発する匂い分子(anisole)をそれぞれ271 μmol浸み込ませたろ紙を20分間提示し、その間の心拍数の情報をDataquest A.R.T.ソフトウェア(DataScience international)を用いて10秒ごとに記録した。心拍数変化の値は水を提示した10分間の心拍数とそれぞれの匂い分子を提示した20分間の平均心拍数の差分として計算し、匂いなしの時の心拍数の変化を0とした。後天的な恐怖を誘発する匂いを嗅がせたマウスに関しては、計測の1日前に電気ショックとanisoleの匂いの関連学習を行い、マウスがanisoleの匂いに対して後天的な恐怖を感じるように学習させた。

0067

結果
結果を図5に示す。
図5A:チアゾリン類縁化合物(2MT)または後天的恐怖を誘発する匂い分子(anis-FS+)を嗅がせた際の心拍数の経時的な変化(平均±標準誤差)を示した(n≧8)。
図5B:チアゾリン類縁化合物(2MT)または後天的恐怖を誘発する匂い分子(anis-FS+)を提示している20分間の心拍数の平均変化を示した。グラフは平均値±標準誤差の値を示し、匂いがない場合(control)と匂いを提示した場合の体表面温度の変化に関してStudentのt検定を行った。***はp<0.001で有意差があることを表す。
チアゾリン類縁化合物(2MT)は心拍数を3分以内に半減させるなどの明確な低下を引き起こした。これに対し、後天的恐怖を誘発する匂い分子(anis-FS+)は心拍数に有意な影響を与えなかった。

0068

実施例6:チアゾリン類縁化合物によって誘発される皮膚血流量の低下
実験方法
チアゾリン類縁化合物および後天的恐怖を誘発する匂い分子の皮膚血流量に与える影響を解析した。約3か月齢のC57/BL6N雄マウスをテストの約5日前にペントバルビタール(50 mg/kg, i.p.)を用いて麻酔し、背中の毛を脱毛クリームで脱毛した。50 mlチューブ観察窓を開けたマウス保定装置を作成し、除毛した次の日からマウスを保定装置に入れる訓練を行い、この操作をテストの前日まで行い馴化した。テスト当日にはマウスを1匹ずつ保定装置に入れ、粘着テープレーザードップラープローブをマウスの除毛した背中に張り付けた。血流シグナルが安定したのを確認後、(1) 匂い無し10分、(2) Eugenolの匂いを10分間提示、(3) チアゾリン類縁化合物(2MT)または後天的恐怖を誘発する匂い(Anis-FS+)を20分間提示し、血流量の変化を計測した。匂いの提示はそれぞれ271 μmolの匂い分子を浸み込ませたろ紙をマウスの先に近づけることで行った。血流量はレーザードップラー血流計(ADVANCE社ALF21D)を用いて10秒ごとに計測した。平均の皮膚血流量は匂い無し(10分)とチアゾリン類縁化合物または後天的恐怖を誘発する匂いの提示中(20分)の血流量の平均値を計算し、匂いなしの平均皮膚血流量を100%として、その相対値として示した。

0069

結果
結果を図6に示す。
図6A:チアゾリン類縁化合物(2MT)または後天的恐怖を誘発する匂い分子(Anis-FS+)を嗅がせた際の血流量の経時的な変化(平均±標準誤差)を示した(n≧8)。
図6B:匂い無しおよびチアゾリン類縁化合物(2MT)または後天的恐怖を誘発する匂い分子(Anis-FS+)を提示した際の平均の皮膚血流量を棒グラフで示した。グラフは平均値±標準誤差の値を示し、匂いがない場合と匂いを提示した場合の血流量に関してStudentのt検定を行った。**はp<0.01、***はp<0.001で有意差があることを表す。チアゾリン類縁化合物および後天的恐怖を誘発する匂い分子は共に皮膚血流量を低下させた。
チアゾリン類縁化合物によって体温低下が誘発されるメカニズムとしては皮膚血流量を増加させることによる熱交換の促進と熱産生の減少の2つのメカニズムが考えられたが、本結果はチアゾリン類縁化合物が熱交換の促進ではなく熱産生の減少を誘発している可能性を示唆している。

0070

実施例7:チアゾリン類縁化合物によって誘発される呼吸数の減少
実験方法
チアゾリン類縁化合物および後天的恐怖を誘発する匂い分子の呼吸数に与える影響を解析した。呼吸数はパルスオキシメーター(Mouse Oxplus; STARRLife Science)を用いて解析した。約3か月齢のC57/BL6N雄マウスをテストの約1週間前からオキシメータープローブを首に貼りつける操作を繰り返し行い馴化させた。テストの2日前にマウスをペントバルビタール(50 mg/kg, i.p.)を用いて麻酔し、首の毛を脱毛クリームで脱毛した。テスト当日にはマウスの除毛した首にオキシメータープローブを貼りつけ、シグナルが安定したのを確認後、匂い無しのベースラインを10分間測定した後に、チアゾリン類縁化合物(2MT)または中立の匂い(Eugenol; Eug)を提示した際の呼吸数の変化を20分間計測した(各n=6)。それぞれの匂いは271 μmolの匂いを浸み込ませたろ紙をテストケージに入れることで提示した。オキシメーターのシグナルは1Hzで取得した。平均呼吸数は匂い無し10分間と匂い提示後20分間の呼吸数の平均を示した。

0071

結果
結果を図7に示す。
図7A:チアゾリン類縁化合物(2MT)またはスパイスの匂い(Eug)を嗅がせた際の呼吸数の経時的な変化(平均±標準誤差)を示した(n=6)。
図7B:スパイスの匂い(Eug)を提示した群とチアゾリン類縁化合物(2MT)を提示した群について、匂い無しのベースラインの平均呼吸数(ctrl)と匂い(Eug又は2MT)を提示した際の平均呼吸数を棒グラフで示した。グラフは平均値±標準誤差の値を示し、2MTを提示した群とEugを提示した群の呼吸数に関してStudentのt検定を行った。**はp<0.01で有意差があることを、nsはp>0.05で有意差がないことを表す。
チアゾリン類縁化合物によって呼吸数が約半分に低下することが明らかになった。体温低下や代謝量の低下は冬眠時の動物によって観察されるが、冬眠時の動物では呼吸数が低下することがよく知られている。チアゾリン類縁化合物によっても冬眠時と同様に呼吸数低下が引き起こされることが明らかになった。

0072

実施例8:チアゾリン類縁化合物によって誘発される酸素消費量の低下
実験方法
チアゾリン類縁化合物の酸素消費量に与える影響を解析した。酸素消費量は小動物用エネルギー代謝測定装置(ARCO-2000;アルコステム)を用いて解析した。約3か月齢のC57/BL6N雄マウスを1匹ずつ計測チャンバーに入れ、約2時間馴化後、チアゾリン類縁化合物(2MT)を提示した。匂いの提示は100 μl(104 mmol)の匂い分子を浸み込ませたろ紙を計測チャンバーに入れる事で行った。コントロールとして生理食塩水(Saline)を浸み込ませたろ紙をマウスに提示する実験も行った。酸素消費量の計測は1分毎に行った。平均酸素消費量は匂い提示前の10分間と匂い提示後の20分間の平均として算出した。

0073

結果
結果を図8に示す。
図8A:チアゾリン類縁化合物(2MT)を提示した際と匂い無し(Saline)の際のマウスの体重当たりの酸素消費量の経時的な変化(平均±標準誤差)を示した(n=8)。
図8B:チアゾリン類縁化合物(2MT)を提示した際と匂い無しの際のマウスの体重当たりの平均酸素消費量を棒グラフで示した。グラフは平均値±標準誤差の値を示し、2MTを提示した場合とSalineを提示した場合の酸素消費量に関してStudentのt検定を行った。***はp<0.001で有意差があることを、nsはp>0.05で有意差がないことを表す。
コントロール(saline)の条件では新規物質(ろ紙)を提示することで酸素消費量が上昇した。それに対してチアゾリン類縁化合物(2MT)を提示すると酸素消費量が顕著に減少した。冬眠時の動物では代謝量が減少するのに伴い酸素消費量が減少することが知られているが、同様の変化がチアゾリン類縁化合物によっても引き起こされることが示された。

0074

実施例9:チアゾリン類縁化合物によって誘発される低酸素抵抗性
実験方法
約3か月齢のC57/BL6N雄マウスを1匹ずつ密封性の高い飼育ケージに入れ、飼育ケージ内にチアゾリン類縁化合物(2MT)を計100 μl(104 mmol)浸み込ませたろ紙を入れ、50分間匂いを提示した。匂い提示後、酸素濃度を4%に調整したタイトボックス内にマウスを入れ、マウスの生存時間を最大30分まで計測した。コントロールとして水を浸み込ませたろ紙を提示したマウスの生存時間も計測した(no odor)。また、本実施例と同じ条件で匂いを提示した際の体深部温度の変化を実施例4と同様の実験方法で計測した。

0075

結果
結果を図9に示す。
図9A:チアゾリン類縁化合物(2MT)を提示した際と匂い無し(no odor)の際のマウスの4%酸素中での生存時間を、カプランマイヤー曲線を用いて示した(各n=6)。
図9B:図9Aの実施例と同じ条件で匂い提示を行った際の体深部温度の経時変化(平均±標準誤差)を示した(2MT, n=8; no odor, n=6)。
匂い無しのコントロールの条件では4%酸素中では20分以内に全ての個体が死亡するのに対し、チアゾリン類縁化合物(2MT)を提示した条件では30分後でも多くの個体が生存した。本実施例で採用した匂いの提示条件でも体深部温度の顕著な低下が認められた。チアゾリン類縁化合物によって低酸素抵抗性が生じることが示された。

0076

実施例10:様々な複素環化合物によって誘発される低酸素抵抗性
実験方法
様々な種類の複素環化合物を腹腔内投与した際のマウスの低酸素環境下での生存時間への影響を解析した。匂い分子の投与は、生理食塩水で100倍希釈した溶液200 μl(約80 mg/k g, i.p.)を腹腔内注射し、30分後に酸素濃度を4%に調整したタイトボックス内にマウスを入れ、マウスの生存時間を最大30分まで計測した。コントロールとして、生理食塩水を腹腔内注射したマウス(コントロール)の生存時間を計測した。

0077

結果
結果を図10Aに示す。
図10A:それぞれの複素環化合物を腹腔内注射した際のマウスの4%酸素中での生存時間(平均±標準誤差)を棒グラフで示した。生存時間は、生理食塩水を腹腔内注射したコントロールの平均生存時間を100%とし、その相対値(%)で示した(n=4)。コントロール群各化合物投与群との間で生存時間に関してStudentのt検定を行った。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001で有意差があることを表す。
図10B:実施例10で使用した化合物の構造式をグラフの順に示した。
様々な種類の複素環化合物によって低酸素抵抗性が生じることが示された。

0078

実施例11:イソチオシアネート化合物によって誘発される低酸素抵抗性
実験方法
実施例10と同様の方法で、各種イソチオシアネート化合物を腹腔内投与(約80 mg/kg, i.p.)した際のマウスの低酸素環境下での生存時間への影響を解析した。

0079

結果
結果を図11Aに示す。
図11A:それぞれの化合物を腹腔内注射した際のマウスの4%酸素中での生存時間(平均±標準誤差)を棒グラフで示した。生存時間は、生理食塩水を腹腔内注射したコントロールの平均生存時間を100%とし、その相対値(%)で示した(n=4)。コントロール群と各化合物投与群との間で生存時間に関してStudentのt検定を行った。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001で有意差があることを表す。
図11B:実施例11で使用した化合物の構造式をグラフの順に示した。
各種イソチオシアネート化合物によって低酸素抵抗性が生じることが示された。

0080

実施例12:チオモルホリン(thiomorpholine)腹腔内投与によって誘発される低酸素抵抗性
実験方法
約3か月齢のC57/BL6N雄マウスに生理食塩水で100倍希釈したチオモルホリン溶液200 μl(約80 mg/kg, i.p.)を腹腔内注射し、30分後に酸素濃度を4%に調整したタイトボックス内にマウスを入れ、マウスの生存時間を計測した。コントロールとして生理食塩水を腹腔内注射したマウスの生存時間を計測した。

0081

結果
結果を図12に示す。
図12:チオモルホリンと生理食塩水を投与したマウスの4%酸素中での生存時間を、カプランマイヤー曲線を用いて示した(n=6)。
チオモルホリンによって低酸素抵抗性が生じることが示された。

0082

実施例13:NaHS腹腔内投与による4%酸素条件下での生存時間への影響
実験方法
約3か月齢のC57/BL6N雄マウスにNaHS溶液200 μlを腹腔内注射し、30分後に酸素濃度を4%に調整したタイトボックス内にマウスを入れ、マウスの生存時間を最大30分間計測した。NaHSは0.1%、0.125%、0.05%、0.0125%の4種類の濃度の溶液を用いた。このうち、0.1%溶液を腹腔内注射した場合には数分以内にマウスが死亡してしまったことから残りの3つの濃度で生存時間の計測を行った。コントロールとして生理食塩水(saline)、2−メチルチオフェン(2-methylthiophene)(1%溶液)を腹腔内注射した際の4%酸素中での生存時間を解析した。

0083

結果
結果を図13に示す。
図13図13に示されたそれぞれの溶液を腹腔内注射したマウスの生存時間を各個体ごとにプロットした。点線で示された2つの群の間で生存時間の比較をStudentのt検定を用いて行った。***はp<0.001で有意差があることを、nsはp>0.05で有意差がないことを示す。
H2Sの供与体であるNaHSは虚血再灌流障害の防止効果を持つことが報告されている(Yu et al., Cell Physiol Biochem 36: 1539-1551, 2015)。しかしながら、NaHSは濃い濃度では注射後速やかにマウスが死亡してしまい、薄い濃度では低酸素抵抗性は認められなかった。これに対し、チアゾリン類縁化合物の1種である2−メチルチオフェンを投与したマウスでは、全ての個体において30分間の観察時間の間4%酸素中での生存が認められた。

0084

実施例14:チアゾリン類縁化合物による虚血再灌流障害の軽減効果
実験方法
皮膚の虚血再灌流障害モデルマウスはUchiyamaらの方法に従って以下の通り作成した(Uchiyama et al., Sci Rep 5: 9072, 2015)。約3か月齢のC57/BL6N雄マウスはテストの2-3日前に実施例1と同様の方法により背中の毛を除毛した。テスト当日にマウスは1匹ずつ密封性の高いケージに入れ、飼育ケージ内にチアゾリン類縁化合物(2MT)を計100 μl(104 mmol)浸み込ませたろ紙を入れ、30分間匂いを提示した。コントロールとしては水を浸み込ませたろ紙を30分間提示した(no odor)。30分後にマウスをケージから取り出し、背中の皮膚を2つの円形磁石ではさみ、密封ケージに戻した。密封ケージ内にさらに100 μl(104 mmol)の2MTまたは水を浸み込ませたろ紙を入れ、12時間マウスを放置した。12時間後にマウスを密封ケージから取り出し、磁石を外し、匂い無しの通常の飼育ケージに移した。磁石ではさんでいた背中の皮膚の状態を毎日写真撮影することで記録した。取得した画像を元に創傷の面積を画像解析ソフト(Photoshop, Adobe)で定量化した。また、本実施例と同じ条件で匂いを提示した際の体深部温度の変化を実施例2と同様の実験方法で計測した。

0085

結果
結果を図14に示す。
図14A:匂い無しの条件での創傷部の変化を個体ごとに毎日観察した結果を示した(n=5)。
図14B:2MTを提示した条件での創傷部の変化を個体ごとに毎日観察した結果を示した(n=5)。
図14C:AおよびBで観察された創傷部の面積を定量化した。グラフは創傷部の面積の経時変化(平均±標準誤差)を、3日後の匂い無しの条件での創傷部の面積の平均を100%とした相対値で示した。同じ日に観察された2MTを提示した場合と匂い無しの場合の創傷部の面積に関してStudentのt検定を行った。**はp<0.01、***はp<0.001で有意差があることを表す。
図14D:A−Cの実施例と同じ条件で匂い提示を行った際の体深部温度の経時変化(平均±標準誤差)を示した(各n=6)。
匂い無しのコントロールでは、皮膚を磁石で12時間はさむことで褥瘡ができるのに対し、2MTを嗅がせた条件では褥瘡の形成が有意に減少した。本実施例で採用した匂いの提示条件でも体深部温度の顕著な低下が認められた。褥瘡は持続的な圧迫によって虚血状態になることで引き起こされる。チアゾリン類縁化合物が虚血再灌流障害の軽減・防止効果を持つことが示された。

0086

実施例15:Trpa1ノックアウトマウスのチアゾリン類縁化合物に対する体表面温度の変化
実験方法
約3か月齢の雄のTrpa1ノックアウトマウスとその同腹のヘテロマウスを用いて、実施例1と同様の方法でチアゾリン類縁化合物(2MT)によって誘発される体表面温度の変化を解析した。体表面温度の変化は、2MT提示中の20分間の体表面温度の平均から、匂い無しで馴化中の体表面温度の平均を引いた差分として計算した。

0087

結果
結果を図15に示す。
図15:コントロールマウス(trpa1+/-; n=5)およびTrpa1ノックアウトマウス(trpa1-/-; n=8)にチアゾリン類縁化合物(2MT)を提示した際の体表面温度の変化の平均を示した。コントロールマウスとノックアウトマウスの体表面温度の変化に関してStudentのt検定を行った。**はp<0.01で有意差があることを示す。
Trpa1ノックアウトマウスではチアゾリン類縁化合物(2MT)によって誘発される体表面温度の減少が観察されなかった。2MTによる体表面温度の減少はTrpa1によって誘発されていることが示唆された。

0088

実施例16:Trpa1ノックアウトマウスのチアゾリン類縁化合物に対する体深部温度の変化
実験方法
約3か月齢の雄のTrpa1ノックアウトマウスとその同腹のヘテロマウスを用いて、実施例2と同様の方法でチアゾリン類縁化合物(2MT)によって誘発される体深部温度の変化を解析した。体深部温度の変化は、2MT提示中の20分間の体深部温度の平均から、匂い無しで馴化中の体深部温度の平均を引いた差分として計算した。

0089

結果
結果を図16に示す。
図16A:コントロールマウス(trpa1+/-; n=7)およびTrpa1ノックアウトマウス(trpa1-/-; n=7)に2MTを提示した際の体深部温度の経時的な変化を示した。
図16B:コントロールマウス(trpa1+/-)およびTrpa1ノックアウトマウス(trpa1-/-)に2MTを提示した際の体深部温度の変化の平均を示した。コントロールマウスとノックアウトマウスの体深部温度の変化に関してStudentのt検定を行った。***はp<0.001で有意差があることを示す。
Trpa1ノックアウトマウスではチアゾリン類縁化合物(2MT)によって誘発される体深部温度の減少が観察されなかった。2MTによる体深部温度の減少はTrpa1によって誘発されていることが示唆された。

0090

実施例17:Trpa1ノックアウトマウスのチアゾリン類縁化合物によって誘発される低酸素抵抗性
実験方法
約3か月齢の雄のTrpa1ノックアウトマウスとその同腹のヘテロマウスに対してチアゾリン類縁化合物(2MT)を10分間提示し、その後、酸素濃度を4%に調整したタイトボックス内にマウスを入れ、マウスの生存時間を最大30分まで計測した。匂いの提示は、271 μmolの2MTを浸み込ませたろ紙を飼育ケージ内に入れる方法で行った。コントロールとして、生理食塩水を浸み込ませたろ紙を提示する実験も行った(no odor)。

0091

結果
結果を図17に示す。
図17:コントロールマウス(Hetero) およびTrpa1ノックアウトマウス(KO)に生理食塩水または2MTを提示した際の4%酸素中での生存時間の平均を示した(heteroのno odorはn=6、それ以外はn=7)。それぞれのマウスについて、生理食塩水と2MTを提示した際の生存時間に関してStudentのt検定を行った。*はp<0.05で有意差があることを、nsはp>0.05で有意差がないことを示す。
コントロールマウスとは異なり、Trpa1ノックアウトマウスではチアゾリン類縁化合物(2MT)を提示しても4%酸素中での生存時間が有意に増加しなかった。チアゾリン類縁化合物によって誘発される低酸素抵抗性はTrpa1を介することが示唆された。

0092

実施例18:敗血症モデルにおける様々な複素環化合物およびイソチオシアネート化合物の血中TNF-α抑制効果
実験方法
約2-3ヶ月齢の雄のBalb/cマウスにlipopolysaccharide (LPS) (0.6 mg/kg)を腹腔内投与し、敗血症モデルを作成した。LPS投与直後に様々な複素環化合物およびイソチオシアネート化合物を生理食塩水で100倍希釈した溶液200 μl(約80 mg/kg)を腹腔内投与した。LPSおよび化合物投与60分後に採血を行い、EDTA血漿を調製し、炎症性サイトカインであるTNF-αの血中量をELISA法により計測した。

0093

結果
結果を図18に示す。図18中の"4-Ethyl-2-methyl-thiazoline"は、4-エチル-2-メチル-2-チアゾリンを意味する。
それぞれの化合物を投与した際の血中のTNF-α量(平均±標準誤差)を棒グラフで示した。TNF-α量は、LPSのみを投与し、化合物を投与しなかった場合(saline)の平均TNF-α量を100%とし、その相対値(%)で示した(n≧4)。コントロール群(saline)と各化合物投与群との間でTNF-α量に関してStudentのt検定を行なった。*はp<0.5、**はp<0.01、***はp<0.001で有意差があることを表す。様々な種類の複素環化合物およびイソチオシアネート化合物の投与によって炎症性サイトカインであるTNF-α量の血中濃度が減少することから、これらの化合物は敗血症モデル動物において抗炎症効果を持つことが示された。

0094

実施例19:敗血症モデルにおける炎症性サイトカイン・抗炎症性サイトカイン産生に対するチアゾリン類縁化合物の効果
実験方法
実施例18と同じ方法で敗血症モデルマウスを作成した。LPS投与直後に生理食塩水で100倍希釈したチアゾリン類縁化合物(2MT)溶液200 μl (約80 mg/kg)を腹腔内投与した。LPSおよびチアゾリン類縁化合物(2MT)を投与して1時間後および4時間後に採血を行い、EDTA血漿を調製し、炎症性サイトカインであるInterleukin-1β (IL-1β)、および抗炎症性サイトカインであるInterleukin-10 (IL-10)の血中量をELISA法により計測した。

0095

結果
結果を図19に示す。
チアゾリン類縁化合物(2MT)を投与した際とコントロールとしてsalineを投与した際のIL-1β量(図19A)、IL-10量(図19B)(全て平均±標準誤差)を棒グラフで示した(n=6)。コントロール群(saline)とチアゾリン類縁化合物(2MT)投与群との間でそれぞれの条件でStudentのt検定を行なった。*はp<0.05、**はp<0.01で有意差があることを表す。チアゾリン類縁化合物の投与によって炎症性サイトカインであるIL-1βの血中濃度が減少し、逆に抗炎症性サイトカインであるIL-10の血中濃度が増加することから、チアゾリン類縁化合物は敗血症モデル動物において抗炎症効果を持つことが示された。

0096

実施例20:敗血症モデルにおけるチアゾリン類縁化合物の炎症性メディエーターHMGB1抑制効果
実験方法
実施例18と同じ方法で敗血症モデルマウスを作成した。LPS投与直後に生理食塩水で100倍希釈したチアゾリン類縁化合物(2MT)溶液200 μl(約80 mg/kg)を腹腔内投与した。LPSおよびチアゾリン類縁化合物(2MT)を投与して16時間後に採血を行い、EDTA血漿を調製し、炎症性メディエーターであるHigh Mobility Group Box 1 (HMGB1)の血中量をELISA法により計測した。

0097

結果
結果を図20に示す。
チアゾリン類縁化合物(2MT)を投与した際とコントロールとしてsalineを投与した際の血中のHMGB1量 (平均±標準誤差)を棒グラフで示した(n=6)。コントロール群(saline)とチアゾリン類縁化合物(2MT)投与群との間でStudentのt検定を行なった。***はp<0.001で有意差があることを表す。チアゾリン類縁化合物の投与によって炎症性メディエーターあるHMGB1の血中濃度が減少することから、チアゾリン類縁化合物は敗血症モデル動物において抗炎症効果を持つことが示された。

0098

実施例21:チアゾリン類縁化合物腹腔内投与による敗血症モデル動物の生存時間の延長効果
実験方法
実施例18と同じ方法で敗血症モデルマウスを作成した。LPS投与直後に生理食塩水で100倍希釈したチアゾリン類縁化合物(2MT)溶液200 μl(約80 mg/kg)を腹腔内投与した。チアゾリン類縁化合物(2MT)を投与した場合とコントロールとして生理食塩水を投与した場合(saline)でマウスの生存時間を計測した。

0099

結果
結果を図21に示す。
コントロール群(saline)とチアゾリン類縁化合物(2MT)を投与した群に関して生存曲線を示した(左図)。また、それぞれの群に関して平均生存時間(平均±標準誤差)を棒グラフで示した(n=10; 右図)。コントロール群とチアゾリン類縁化合物(2MT)投与群との間でStudentのt検定を行なった。**はp<0.01で有意差があることを表す。チアゾリン類縁化合物投与は敗血症モデル動物の生存時間を延長する効果があることが示された。

0100

実施例22:チアゾリン類縁化合物による脳虚血再灌流障害の軽減効果
実験方法
約3ヶ月齢のC57/BL6マウスの両側の総頚動脈クリップで縛り、脳虚血障害を誘発した、さらに30分後にクリップを取り除くことで血液を再灌流させた。再灌流の際にチアゾリン類縁化合物(2MT)溶液200 μl(約80 mg/kg)、またはコントロールとして生理食塩水(saline)を腹腔内投与した。再灌流の2日後にマウスの脳組織を取り出し、脳の切片を作成して、障害の起きた領域をMicrotubule-associated protein 2 (MAP2)の抗体染色によって解析した。

0101

結果
結果を図22に示す。
実験のプロトコールを図の一番上に示した。コントロールとチアゾリン類縁化合物(2MT)投与動物の脳の切片をMAP2抗体染色した代表例を図の左に示した。図中、脳のダメージを受けた領域はMAP2で染色されない領域(黒)として観察された。また、図の右にコントロール群およびチアゾリン類縁化合物(2MT)投与群におけるMAP2で染色されない領域の面積、すなわち障害を受けた領域の面積(平均±標準誤差)を棒グラフで示した(salineはn=9、2MTはn=8)。コントロール群とチアゾリン類縁化合物(2MT)投与群との間でStudentのt検定を行なった。*はp<0.05で有意差があることを表す。再灌流時にチアゾリン類縁化合物を投与することで脳虚血再灌流障害を軽減する効果があることが示された。

0102

実施例23:Trpa1による複素環化合物投与に対する低酸素抵抗性の誘発効果
実験方法
約3ヶ月から6ヶ月齢の雄のTrpa1ノックアウトマウスと野生型マウスに対して、生理食塩水で100倍希釈した様々な複素環化合物溶液200 μl(約80 mg/kg)を腹腔内注射し、30分後に、酸素濃度を4%に調整したタイトボックス内にマウスを入れ、マウスの生存時間を最大30分まで計測した。

0103

結果
結果を図23に示す。図23中の"4-Ethyl-2-methyl-thiazoline"は、4-エチル-2-メチル-2-チアゾリンを意味する。
図23:野生型マウス(Trpa1+/+)およびTrpa1ノックアウトマウス(Trpa1-/-)に生理食塩水(saline)または各複素環化合物を投与した際の4%酸素中での生存時間(平均±標準誤差)を棒グラフで示した(n=4)。各条件についてコントロール群(saline)と化合物投与群との間でStudentのt検定を行なった。**はp<0.01、***はp<0.001で有意差があることを、nsはp>0.05で有意差がないことを表す。様々な種類の複素環化合物は野生型マウスに投与した際には低酸素条件下での生存時間を有意に増加させる効果を持つが、このような効果はTrpa1ノックアウトマウスでは見られなかった。従って、これらの複素環化合物による低酸素抵抗性はTrpa1により誘発されることが示唆された。

0104

実施例24:Trpa1によるチオモルホリン投与に対する低酸素抵抗性の誘発効果
実験方法
約3ヶ月から6ヶ月齢の雄の野生型マウスとTrpa1ノックアウトマウスに対して、生理食塩水で100倍希釈した複素環化合物(チオモルホリン) 200 μl(約80 mg/kg)を腹腔内注射し、30分後に、酸素濃度を4%に調整したタイトボックス内にマウスを入れ、マウスの生存時間を計測した。

0105

結果
結果を図24に示す。
図24:野生型マウス(Trpa1+/+)およびTrpa1ノックアウトマウス(Trpa1-/-)にチオモルホリンを投与した際の4%酸素中での生存時間(平均±標準誤差)を棒グラフで示した(n=6)。コントロール群(saline)と化合物投与群との間でStudentのt検定を行なった。***はp<0.001で有意差があることを表す。複素環化合物(Thiomorpholine)を野生型マウスに投与した際には低酸素条件下での生存時間を大きく延長させる効果を持つが、Trpa1ノックアウトマウスでは野生型マウスと比較すると生存時間が有意に減少した。従って、チオモルホリンによる低酸素抵抗性はTrpa1により誘発されることが示された。

0106

実施例25:Trpa1によるチアゾリン類縁化合物投与に対する酸素消費量抑制の誘発効果
実験方法
酸素消費量の計測は実施例8と同様に小動物エネルギー代謝測定装置を用いて行った。約3ヶ月から6ヶ月齢のTrpa1ノックアウトマウスとその同腹のヘテロマウスを1匹ずつ小動物エネルギー代謝測定装置の計測チャンバーに入れ、約2時間馴化後、チアゾリン類縁化合物(2MT)を提示した。匂いの提示は271 μmolのチアゾリン類縁化合物(2MT)を染み込ませたろ紙2枚を計測チャンバーに入れることで行った。

0107

結果
結果を図25に示す。
図25:チアゾリン類縁化合物(2MT)を提示した際のコントロールマウス(Trpa1+/-; n=9)とTrpa1ノックアウトマウス(Trpa1-/-; n=7)の体重あたりの酸素消費量の経時的な変化(平均±標準誤差)を示した。匂いは図中の10分の時点で提示した。コントロールマウスではチアゾリン類縁化合物(2MT)の提示により酸素消費量が低下するのに対し、Trpa1ノックアウトマウスでは酸素消費量の低下は認められなかった。従って、チアゾリン類縁化合物による酸素消費量の低下はTrpa1を介することが示された。

0108

実施例26:Trpa1作動薬投与による低酸素抵抗性の誘発効果
実験方法
約3ヶ月齢の雄のC57/BL6Nマウスに生理食塩水または既知のTrpa1作動薬であるデルタ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC; 10 mg/kg)、アリルイソチオシアネート(AITC; 40 mg/kg)、アセトアミノフェン(APAP; 300 mg/kg)を腹腔内投与し、30分後に酸素濃度を4%に調整したタイトボックス内にマウスを入れ、マウスの生存時間を最大30分まで計測した。APAPに関しては約3ヶ月から6ヶ月齢の雄のTrpa1ノックアウトマウスとその同腹のヘテロマウスに対しても同様に4%酸素環境下での生存時間を計測した。

0109

結果
結果を図26に示す。
図26A:野生型マウスに生理食塩水(saline)または各種Trpa1作動薬を投与した際の4%酸素中での生存時間(平均±標準誤差)を棒グラフで示した(salineはn=22、Δ9-THC,AITCはn=8、APAPはn=7)。コントロール群とTrpa1作動薬投与群との間でStudentのt検定を行なった。**はp<0.01、***はp<0.001で有意差があることを表す。Trpa1作動薬の投与によって低酸素環境下での生存時間が延長する効果が認められた。
図26B:Trpa1作動薬(APAP)を腹腔投与した際のコントロールマウス(Trpa1+/-)とTrpa1ノックアウトマウス(Trpa1-/-)の4%酸素中での生存時間(平均±標準誤差)を棒グラフで示した(n=8)。コントロール群(saline)とTrpa1作動薬投与群(APAP)との間でStudentのt検定を行なった。**はp<0.01で有意差があることを、nsはp>0.05で有意差がないことを表す。Trpa1作動薬(APAP)はコントロールマウスでは低酸素環境下での生存時間を延長する効果があるのに対して、Trpa1ノックアウトマウスではそのような効果が認められなかった。Trpa1作動薬による低酸素抵抗性の誘発はTrpa1を介することが示された。

0110

実施例27:チアゾリン類縁化合物によって誘発される体表面度変化、低酸素抵抗性および抗炎症作用に対するTrpa1ノックアウトマウスの効果
実験方法
約3ヶ月から6ヶ月齢の雄のTrpa1ノックアウトマウスとその同腹のヘテロマウスに対してチアゾリン類縁化合物(4-エチル-2-メチル-2-チアゾリン; 4E2MT)を腹腔投与した際の体表面温度の変化、低酸素環境下における生存時間、LPS投与時の血中のTNF-α産生をそれぞれ実施例3、実施例10、実施例18と同様の方法で計測した。

0111

結果
結果を図27に示す。
図27A:チアゾリン類縁化合物(4E2MT)を腹腔内注射した際のコントロールマウス(Trpa1+/‐)とTrpa1ノックアウトマウス(Trpa1‐/‐)の体表面温度の経時変化(平均±標準誤差)を示した。チアゾリン類縁化合物(4E2MT)の投与は10分の時点で行った。チアゾリン類縁化合物(4E2MT)投与後30分間の平均表面温度に関し、コントロールマウスとTrpa1ノックアウトマウスの間でStudentのt検定を行なった結果を図中に示した。***はp<0.001で有意差があることを示す。チアゾリン類縁化合物を腹腔内に投与した際の体表面温度低下はTrpa1ノックアウトマウスでは見られなくなることが明らかになった。
図27B:チアゾリン類縁化合物(4E2MT)を腹腔内注射した際のコントロールマウス(Trpa1+/‐)とTrpa1ノックアウトマウス(Trpa1‐/‐)の4%酸素中での生存時間(平均±標準誤差)を棒グラフで示した。コントロールマウスとTrpa1ノックアウトマウスの間でStudentのt検定を行なった。**はp<0.01で有意差があることを示す。チアゾリン類縁化合物を腹腔内注射した際の低酸素環境下での生存時間の延長効果はTrpa1ノックアウトマウスでは抑制されることが明らかになった。
図27C:LPSの腹腔内投与と同時にチアゾリン類縁化合物(4E2MT)を腹腔内注射した際のコントロールマウス(Trpa1+/+、Trpa1+/‐)とTrpa1ノックアウトマウス(Trpa1‐/‐)の投与後1時間の血中のTNF-α量(平均±標準誤差)を棒グラフで示した。コントロールとして、コントールマウス(Trpa1+/+)にLPSと生理食塩水(saline)を投与した際の血中のTNF-α量の計測も行った。**はp<0.01、***はp<0.001で有意差があることを表す。敗血症モデルマウスにチアゾリン類縁化合物(4E2MT)を投与することで、炎症性サイトカインであるTNF-αの血中量が低下するが、この効果はTrpa1ノックアウトマウスでは抑制されることが示された。
図27A−Cの結果より、チアゾリン類縁化合物によって誘発される体表面温度低下、低酸素抵抗性、抗炎症効果はTrpa1を介することが示された。

0112

実施例28:複素環化合物によって誘発される酸素消費量抑制効果
実験方法
約3ヶ月齢のC57/BL6Nマウスに対して、複素環化合物(2MTおよびThiomorpholine(TMO))を腹腔内注射した際の酸素消費量の変化を実施例8に記載した方法と同様の方法で計測した。

実施例

0113

結果
結果を図28に示す。
図28:複素環化合物(2MT, TMO)および生理食塩水(saline)を投与した際の酸素消費量の経時変化(平均±標準誤差)を示した(n=4)。複素環化合物(2MT, TMO)および生理食塩水(saline)の投与は図中の矢印で示した時点で行った。複素環化合物の投与は酸素消費量を減少させる効果があることが示された。

0114

本発明の化合物は、低体温、低代謝、酸素消費量の抑制、低心拍数、抗炎症反応を誘導し、低酸素条件での組織や個体の保護作用、虚血再灌流障害に対する保護作用、炎症に対する保護作用を示すので、低酸素障害、虚血再灌流障害又は炎症の予防又は治療剤、移植用細胞保護剤、及び生体保存剤として有用である。

0115

本出願は、日本で出願された特願2018−049761を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含される。

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