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技術 木材及び木材の製造方法

出願人 国立大学法人東京農工大学株式会社日本触媒
発明者 堀川祥生津島梨乃暮井達己
出願日 2019年2月28日 (2年9ヶ月経過) 出願番号 2020-503632
公開日 2021年2月25日 (10ヶ月経過) 公開番号 WO2019-168127
状態 特許登録済
技術分野 木材等の化学的、物理的処理
主要キーワード 低減割合 アオダモ 製造限界 銅エチレンジアミン溶液 次亜塩素酸イオン濃度 低減度合い コウヤマキ 耐圧管
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図面 (16)

課題・解決手段

セルロース及びヘミセルロースから構成される構造を維持しながらリグニンを除去する。木質原材料を140℃以上170℃以下の条件下で酸とアルコールとを含有する溶液中に浸漬し、その後、木質原材料を亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンを含む溶液に浸漬する。

概要

背景

木材は建築材料家具音響材料及び紙類原材料として広く利用されている。また、バイオエタノール生産といったバイオリファイナリーの観点からも木質バイオマスは利用されている。なかでも、バイオリファイナリーの観点で木材が利用される場合、木材の構成成分であるリグニンを除去して、セルロース及びへミセルロースを取り出す。一般にリグニン除去のための処理は前処理と呼称される。いままで細胞壁層破壊する様々な前処理技術が報告されてきた。

リグニン除去のための前処理法としては、水蒸気爆砕処理酸処理及びアルカリ処理等に代表される物理化学的手法、リグニン分解酵素或いはリグニン分解微生物を利用する生物学的手法が挙げられる。また、これら以外にも現在まで、前処理方法として、例えば、物理的な粉砕蒸煮オゾン酸化γ線照射等が検討されてきた。

また、酢酸エタノール高沸点アルコールフェノールなどの有機溶媒を用いた高温加熱処理ソルボリシスと呼ばれ、リグニンを除去する有効な前処理法として知られている。Hallac et al. Ind Eng Chem Res,49(4),1467−1472,2010aには、ウツギの一種の木材を粉砕し、エタノールと硫酸混合溶媒で195℃、1時間処理することにより、リグニンの重量パーセントが1桁になる条件を見出している。さらに、Hallac et al. Biotechnol Bioeng,107,795−801,2010bでは、前処理後試料組織観察をしたところ、細胞間層(細胞と細胞の間にある層)のリグニンが優先的に除去されていることを明らかにした。以上の結果から、Hallac et al.Ind Eng Chem Res,49(4),1467−1472,2010a及びHallac et al.Biotechnol Bioeng,107,795−801,2010bに記載された前処理法は、リグニンを除去すると同時に細胞間の単離を促進させるパルプ化の効果も高いと結論付けられている。

一方、特開2006−001270号公報には、スギ材チップセッケンソーダ灰混合水に浸漬し、過酸化水素水で処理することでリグニン除去木材チップを製造することが開示されている。特開2015−080759号公報には、リグノセルロース系ノミイオマスを、エチレングリコール溶液加熱抽出固液分離一段で処理し、リグニンを含む液体成分とセルロースを含む固体成分とに分離する方法が開示されている。特開2012−111849号公報には、木材チップを粉砕した木粉脱脂処理脱リグニン処理、脱へミセルロース処理、漂白処理した後、セルラーゼ系酵素による処理を行ない、その後、微細化処理を行うことで微細繊維状セルロースを製造する方法が開示されている。特に、脱リグニン処理としては一例として亜塩素酸ナトリウムと酢酸を用いるWise法が開示されている。なお、木材学会誌vol.50,No.3,pl32−138(2010)にも、酢酸を加えてpHを3.8−4.0とした亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて脱リグニン処理することが開示されている。

概要

セルロース及びヘミセルロースから構成される構造を維持しながらリグニンを除去する。木質原材料を140℃以上170℃以下の条件下で酸とアルコールとを含有する溶液中に浸漬し、その後、木質原材料を亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンを含む溶液に浸漬する。

目的

本発明は、上述した実情に鑑み、木材としての構造を維持しながらリグニンが低減された木材、セルロース及びへミセルロースから構成される構造を維持しながらリグニンを除去する方法、当該方法を適用することでリグニンが低減した木材及び当該木材の製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

リグニン含有量が3重量%未満であり、セルロース含有量が75重量%以上である、木材。

請求項2

前記セルロースの粘度平均重合度DPvが、300以上である、請求項1に記載の木材。

請求項3

ヘミセルロース含有量が0.01重量%以上15重量%以下である、請求項1または2に記載の木材。

請求項4

木質原材料を140℃以上170℃以下の条件下で酸とアルコールとを含有する溶液中に浸漬する第1の工程と、その後、木質原材料を亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンを含む溶液に浸漬する第2の工程とを経て作製され、リグニン成分が低減された木材。

請求項5

上記木質原材料の形状を維持したことを特徴とする請求項4記載の木材。

請求項6

リグニン成分が検出限界以下に低減されたことを特徴とする請求項4または5記載の木材。

請求項7

白色であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の木材。

請求項8

木質原材料を140℃以上170℃以下の条件下で酸とアルコールとを含有する溶液中に浸漬する第1の工程と、その後、木質原材料を亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンを含む溶液に浸漬する第2の工程とを含む、リグニン成分が低減された木材の製造方法。

請求項9

上記アルコールは、150℃以上の沸点を有するアルコールであることを特徴とする請求項8記載の木材の製造方法。

請求項10

上記酸とアルコールとを含有する溶液は、硫酸エチレングリコールとを含有する溶液または硫酸とプロピレングリコールとを含有する溶液であることを特徴とする請求項8または9記載の木材の製造方法。

請求項11

上記酸とアルコールとを含有する溶液は、アルコール濃度を90〜99.5重量%とし、酸濃度を0.05〜10重量%とすることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の木材の製造方法。

請求項12

上記第1の工程では、上記木質原材料を上記溶液に浸漬させた状態で密閉し、密閉空間内を脱気することを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の木材の製造方法。

請求項13

上記亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンを含む溶液は、亜塩素酸ナトリウム溶液または次亜塩素酸ナトリウム溶液であることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の木材の製造方法。

請求項14

上記亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンを含む溶液は、亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオン濃度を0.01〜10重量%とする溶液であることを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載の木材の製造方法。

請求項15

上記第2の工程を複数回繰り返すことを特徴とする請求項8〜14のいずれか1項に記載の木材の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、リグニン及びセルロースを含む木材、木質原材料を処理して得られる木材、及びその製造方法に関する。

背景技術

0002

木材は建築材料家具音響材料及び紙類原材料として広く利用されている。また、バイオエタノール生産といったバイオリファイナリーの観点からも木質バイオマスは利用されている。なかでも、バイオリファイナリーの観点で木材が利用される場合、木材の構成成分であるリグニンを除去して、セルロース及びへミセルロースを取り出す。一般にリグニン除去のための処理は前処理と呼称される。いままで細胞壁層破壊する様々な前処理技術が報告されてきた。

0003

リグニン除去のための前処理法としては、水蒸気爆砕処理酸処理及びアルカリ処理等に代表される物理化学的手法、リグニン分解酵素或いはリグニン分解微生物を利用する生物学的手法が挙げられる。また、これら以外にも現在まで、前処理方法として、例えば、物理的な粉砕蒸煮オゾン酸化γ線照射等が検討されてきた。

0004

また、酢酸エタノール高沸点アルコールフェノールなどの有機溶媒を用いた高温加熱処理ソルボリシスと呼ばれ、リグニンを除去する有効な前処理法として知られている。Hallac et al. Ind Eng Chem Res,49(4),1467−1472,2010aには、ウツギの一種の木材を粉砕し、エタノールと硫酸混合溶媒で195℃、1時間処理することにより、リグニンの重量パーセントが1桁になる条件を見出している。さらに、Hallac et al. Biotechnol Bioeng,107,795−801,2010bでは、前処理後試料組織観察をしたところ、細胞間層(細胞と細胞の間にある層)のリグニンが優先的に除去されていることを明らかにした。以上の結果から、Hallac et al.Ind Eng Chem Res,49(4),1467−1472,2010a及びHallac et al.Biotechnol Bioeng,107,795−801,2010bに記載された前処理法は、リグニンを除去すると同時に細胞間の単離を促進させるパルプ化の効果も高いと結論付けられている。

0005

一方、特開2006−001270号公報には、スギ材チップセッケンソーダ灰混合水に浸漬し、過酸化水素水で処理することでリグニン除去木材チップを製造することが開示されている。特開2015−080759号公報には、リグノセルロース系ノミイオマスを、エチレングリコール溶液加熱抽出固液分離一段で処理し、リグニンを含む液体成分とセルロースを含む固体成分とに分離する方法が開示されている。特開2012−111849号公報には、木材チップを粉砕した木粉脱脂処理脱リグニン処理、脱へミセルロース処理、漂白処理した後、セルラーゼ系酵素による処理を行ない、その後、微細化処理を行うことで微細繊維状セルロースを製造する方法が開示されている。特に、脱リグニン処理としては一例として亜塩素酸ナトリウムと酢酸を用いるWise法が開示されている。なお、木材学会誌vol.50,No.3,pl32−138(2010)にも、酢酸を加えてpHを3.8−4.0とした亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて脱リグニン処理することが開示されている。

0006

上述のように、木材等のリグノセルロース材料に対して種々の方法で脱リグニン処理する方法は知られていた。しかしながら、上述した従来の方法は、リグニンを、セルロース及びへミセルロースから分離するための手法であり、木材の組織や細胞を破壊することとなり、処理前の形状を維持することはできなかった。なお、特開2006−001270号公報には木材チップのハニカム構造を維持するリグニン除去方法が開示されるものの、木材チップ自体の形状を維持できる処理ではない。

0007

以上のように、これまでリグニンを確実に除去しながら、セルロース及びへミセルロースから構成される構造を維持する技術は知られていなかった。そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、木材としての構造を維持しながらリグニンが低減された木材、セルロース及びへミセルロースから構成される構造を維持しながらリグニンを除去する方法、当該方法を適用することでリグニンが低減した木材及び当該木材の製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

上述した目的を達成するため、本発明は以下を包含する。
(1)リグニン含有量が3重量%未満であり、セルロース含有量が75重量%以上である、木材。
(2)前記セルロースの粘度平均重合度DPvが、300以上である、(1)に記載の木材。
(3)ヘミセルロース含有量が0.01重量%以上15重量%以下である、(1)または(2)に記載の木材。
(4)木質原材料を140℃以上170℃以下の条件下で酸とアルコールとを含有する溶液中に浸漬する第1の工程と、その後、木質原材料を亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンを含む溶液に浸漬する第2の工程とを経て作製され、リグニン成分が低減された木材。
(5)上記木質原材料の形状を維持したことを特徴とする(4)記載の木材。
(6)リグニン成分が検出限界以下に低減されたことを特徴とする(4)または(5)記載の木材。
(7)白色であることを特徴とする(4)〜(6)のいずれかに記載の木材。
(8)木質原材料を140℃以上170℃以下の条件下で酸とアルコールとを含有する溶液中に浸漬する第1の工程と、その後、木質原材料を亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンを含む溶液に浸漬する第2の工程とを含む、リグニン成分が低減された木材の製造方法。
(9)上記アルコールは、150℃以上の沸点を有するアルコールであることを特徴とする(8)に記載の木材の製造方法。
(10)上記酸とアルコールとを含有する溶液は、硫酸とエチレングリコールとを含有する溶液または硫酸とプロピレングリコールとを含有する溶液であることを特徴とする(8)または(9)に記載の木材の製造方法。
(11)上記酸とアルコールとを含有する溶液は、アルコール濃度を90〜99.5重量%とし、酸濃度を0.05〜10重量%とすることを特徴とする(8)〜(10)のいずれかに記載の木材の製造方法。
(12)上記第1の工程では、上記木質原材料を上記溶液に浸漬させた状態で密閉し、密閉空間内を脱気することを特徴とする(8)〜(11)のいずれかに記載の木材の製造方法。
(13)上記亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンを含む溶液は、亜塩素酸ナトリウム溶液または次亜塩素酸ナトリウム溶液であることを特徴とする(8)〜(12)のいずれかに記載の木材の製造方法。
(14)上記亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンを含む溶液は、亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオン濃度を0.01〜10重量%とする溶液であることを特徴とする(8)〜(13)のいずれかに記載の木材の製造方法。
(15)上記第2の工程を複数回繰り返すことを特徴とする(8)〜(14)のいずれかに記載の木材の製造方法。

図面の簡単な説明

0009

実施例1で使用した未処理の木質原材料(A)、第1の工程後の木質原材料(B)及び処理後に得られた白い木材(C)を撮像した写真である。
実施例1で使用した未処理の木質原材料(A)、第1の工程後の木質原材料(B)及び処理後に得られた白い木材(C)について赤外線吸収スペクトルで成分を分析した結果を示す特性図である。
実施例1で使用した未処理の木質原材料と、白い木材とについてX線CTにより画像解析した結果を示すX線画像である。
実施例1で使用した未処理の木質原材料と、白い木材とについてX線回折により得られたX線繊維図を示す画像である。
実施例2で使用した未処理の木質原材料及び処理後に得られた白い木材を撮像した写真である。
実施例2で使用した未処理の木質原材料及び処理後に得られた白い木材について赤外線吸収スペクトルで成分を分析した結果を示す特性図である。
実施例2で使用した未処理の木質原材料と、白い木材とについてX線CTにより画像解析した結果を示すX線画像である。
実施例3で使用した未処理の木質原材料及び処理後に得られた白い木材を撮像した写真である。
実施例3で使用した未処理の木質原材料及び処理後に得られた白い木材について赤外線吸収スペクトルで成分を分析した結果を示す特性図である。
実施例4で使用した未処理の木質原材料(A)、第1の工程後の木質原材料(B)及び処理後に得られた白い木材(C)を撮像した写真である。
実施例4で使用した未処理の木質原材料及び処理後に得られた白い木材について赤外線吸収スペクトルで成分を分析した結果を示す特性図である。
実施例5で使用した未処理の木質原材料(A)、第1の工程後の木質原材料(B)及び処理後に得られた白い木材(C)を撮像した写真である。
実施例5で使用した未処理の木質原材料、第1の工程後の木質原材料及び処理後に得られた白い木材について赤外線吸収スペクトルで成分を分析した結果を示す特性図である。
実施例6で使用した処理後に得られた白い木材を撮像した写真である。
実施例6で使用した未処理の木質原材料、アルカリ処理後の木質原材料、第1の工程後の木質原材料及び処理後に得られた白い木材について赤外線吸収スペクトルで成分を分析した結果を示す特性図である。

0010

本発明の第一実施形態は、リグニン含有量が3重量%未満であり、セルロース含有量が75重量%以上である、木材である。かかる実施形態によれば、セルロースを主成分とし、リグニン成分が十分に低減されている木材となる。セルロースは細胞壁を構成する主要成分であり、木材の強度を担保する重要な役割を果たす。一方、リグニンは、細胞間または細胞壁内のミクロフィブリル間を接着する役割を果たし、木材の構造維持に重要な役割を果たしていると考えられてきた。このため、リグニンを低減しつつ、木材としての構造を維持することは非常に困難であった。しかしながら、本実施形態の木材によれば、リグニン成分が十分に低減されているにも関わらず、木材としての三次元構造が維持されている。このようにリグニン量が低減されているにもかかわらず、三次元構造が維持されている詳細なメカニズムは不明であるが、例えば、後述の製造方法により木材を製造することで、リグニンが除去された部分に水が置換すること、また、本来の木材が有するセルロース構造セルロースミクロフィブリルなど)が破壊されずに維持されることで、三次元構造体としての形状が維持されているものと考えられる。なお、上記考察は本発明の技術的範囲を何ら制限するものではない。

0011

本実施形態の木材は、リグニン成分が十分に低減されているために、外部から視認すると白色の木材となる。ゆえに、新しい素材として広く利用することができる。

0012

ここで、本明細書における木材とは、細胞が規則正しく並んでいる構造(組織)が形成されているものを指す。木材は、パルプとは明確に区別される。細胞が規則正しく並んで組織が形成されていることは、後述の実施例に記載のとおり、X線CT画像などを用いて観察することができる(例えば、図3)。図3で示されるように、木材においては、隣接した細胞が互いに解離することなく順序よく配列している。

0013

本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。また、本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度45%RH以上55%RH以下の条件で行う。

0014

以下、第一実施形態について詳細に説明する。

0015

木材中のリグニン含有量は、好ましい順に、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.1重量%未満である。リグニン含有量がこのような範囲にあることで、白色度が向上する。リグニン含有量は少なければ少ないほど好ましく、下限は0重量%である。ここで、0重量%は、下記各成分の含有量HPLCにより測定した際に検出限界以下であることを指す。

0016

木材中のセルロースの含有量は、75重量%以上であり、好ましい順に、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、95重量%以上である。セルロースの含有量が75重量%以上であることで、木材構造中のセルロース繊維方向の強度が向上し、白色度が向上する。なお、セルロースの含有量の上限は、木材構造を維持するという観点で、製造限界を考慮すると、通常99.9重量%以下であり、好ましくは99.5%以下である。

0017

木材中に含まれるセルロースの粘度平均重合度DPvは、300以上であることが好ましい。セルロースの粘度平均重合度DPvが、300以上であることで、本来の樹木が有しているセルロースの繊維状態に近しいものとなり、木材の強度が向上するので好ましい。通常、何かしらの化学的処理を行った場合、セルロースの粘度平均重合度は著しく低下するが、例えば、後述の製造方法によれば、セルロースの粘度平均重合度の著しい低下が抑制される。セルロースの粘度平均重合度DPvは、500以上であることがより好ましく、800以上であることがさらに好ましく、1,000以上であることが特に好ましい。また、セルロースの粘度平均重合度DPvの上限は、本来樹木に存在するセルロースに近いほうが好ましく、このような観点から、通常は、10,000以下であり、5,000以下であることが好ましく、3,000以下であることがより好ましい。

0018

セルロースの粘度平均重合度は、以下の測定方法により測定することができる。

0019

<粘度平均重合度の測定方法>
木材に対して亜塩素酸ナトリウムおよび酢酸を用いるWise法を繰り返し、その後5%水酸化ナトリウム水溶液煮沸処理することによってセルロースを抽出する。セルロースを銅エチレンジアミンに溶解後、キャノンフェンス粘度計により、その落下速度から重合度を測定する。具体的には以下のように測定される。

0020

0.5Mの銅エチレンジアミン溶液を調製し、キャノン−フェンスケ粘度計を用いて粘度η0を測定する。また、セルロースを0.5Mの銅エチレンジアミン溶液に溶解した溶解液セルロース濃度をc(g/dL)とする)を調製し、キャノン−フェンスケ粘度計を用いて粘度ηを測定する。以下の式1によりセルロースの溶解液の固有粘度(「極限粘度」と称することもある)[η]を求める。

0021

固有粘度[η]=(η0/η)/{c(1+A×η/η0)} 式1
式1において、「A」は、溶液の種類による固有の値を示す。0.5Mの銅エチレンジアミン溶液の場合、「A」は0.28である。

0022

次に、以下の式2(Mark−Houwink−Sakurada式)により、粘度平均重合度DPvを求める。

0023

固有粘度[η]=K×DPv×a 式2
式2において、「K」及び「a」は、高分子の種類による固有の値を示す。セルロースの場合、「K」は0.57×10−3、「a」は1である。

0024

木材中のヘミセルロースの含有量は、0.01重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましく、0.5重量%以上であることがさらに好ましく、1重量%以上であることがさらにより好ましく、2重量%以上であることが特に好ましい。ヘミセルロースの含有量が上記下限以上であることで、セルロース同士を結着させるのに十分な量となり、三次元構造体が維持されやすくなる。また、ヘミセルロースの上限は特に限定されるものではなく、セルロースの含有量が75重量%以上であることから、第1の工程後の木質原材料25重量%以下であり、20重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましく、10重量%未満であることがさらに好ましく、5重量%未満であることが特に好ましい。好適な実施形態は、ヘミセルロースの含有量が0.01重量%以上15重量%以下である。

0025

各成分の含有量は、下記測定条件に沿って測定した値を採用する。

0026

<測定条件>
試料を72%硫酸で室温1時間処理する。その後、約3%程度に硫酸を水で希釈する。希釈硫酸を121℃、1時間オートクレーブで処理する。得られた試料をガラスフィルターで固体と液体画分に分離する。固体は重量測定によりリグニン量とする。液体画分については中和した後、HPLCによって糖分析を行う。HPLC条件は下記の通りである。

0027

装置:Prominence UFLC(島津製作所社製)
カラム:Asahipak NH2P−50 4E(4mm×250mm,Lot:080806,Shodex(登録商標)、昭和電工社製)
プレカラム:Asahipak NH2P−50G 4A/Opti−guardDVB(昭和電工社製)
溶媒
移動相A:0.3%りん酸水溶液
移動相B:0.3%りん酸アセトニトリル
反応液ほう酸−Lアルギニン水酸化カリウム水溶液
反応器温度:150℃
カラム温度:45℃
検出条件:RF−AXL検出器
上記HPLCにより測定されたグルコース量(重量%)に0.9をかけた値をセルロース量とする。また、ヘミセルロース量は、以下の式から算出される;

0028

0029

木材の最大荷重は、結晶構造を維持し、機械的強度が担保されているという観点から、0.1N以上であることが好ましく、1N以上であることがより好ましく、5N以上であることがさらに好ましく、10N以上であることがさらにより好ましい。また、木材の最大荷重の上限は、特に制限されるものではないが、1,000N以下であることが好ましく、500N以下であることがより好ましい。木材の最大荷重が上記上限以下であることで、木材が多孔質構造を採りやすい。

0030

最大荷重は以下の測定条件で測定した値を採用する。

0031

装置:AandD社製フォテスターMCT−2150
試料サイズ:1cm3ブロック
方向:繊維方向(木口面圧縮
本実施形態の木材は、リグニン量が低減されているため、外観は白色木材となる。外観が白色となることで、透明樹脂含浸させることにより透明成型物を得る事が可能であり、また、染色等の着色も可能となる。木材のL*は、88以上であることが好ましく、より好ましくは90以上、更に好ましくは92以上、最も好ましくは93以上である。また、木材のa*は、5以下であることが好ましく、より好ましくは3以下であり、最も好ましくは1以下であり、更に−5以上であることが好ましく、より好ましくは−3以上であり、最も好ましくは−1以上である。木材のb*は、5以下が好ましく、より好ましくは3以下であり、最も好ましくは2以下である。白色度は、色差計(日本電色工業社製SE−6000)を用いて木材表面を5点測定した値の平均値を採用する。

0032

また、PAS染色多糖類染色法)によってセルロースおよびヘミセルロースを染色してセルロースおよびヘミセルロースの存在を定性的に確認することができる。また、染色面積比などによりセルロースおよびヘミセルロース量を定量することもできる。
測定条件は下記のとおりである。

0033

<測定条件>
切片を過よう素酸水溶液で酸化後、シッフ試薬で反応させる。亜硫酸水洗浄後、さらに蒸留水で洗浄する。プレパラートを作成し、観察し、色差計によって評価する。

0034

このような木材は、例えば、下記の第三実施形態の製造方法によって得られる。製造条件は、木材の大きさ、木材種などによって適宜設定すればよいが、第1の工程の浸漬時間、回数、第2の工程の浸漬時間、回数などによって制御することができる。特に第2の工程の浸漬時間を長くする、回数を増やすことによって、上記のようにリグニン量が低減された木材が得られやすくなる。

0035

第一実施形態の木材においては、X線回折によって得られるX線繊維図において、同心円状の回折像中に複数の回折スポットが存在することが好ましい。このような回折スポットは、X線繊維図において黒色点として視認できる。複数の回折スポットが存在するということは、細胞壁内のセルロースミクロフィブリルの配向乱れがないことを示す。ゆえに、木材は、細胞壁内のセルロースミクロフィブリルの構造も維持し、ゆえに強度に優れる。ここで、複数とは2以上であればよい。X線回折スポットの数は同じ種類の原料木材観測されるスポット同数であることが好ましい。

0036

X線繊維図は以下のようにして測定される。まず、放射切片を作製し、L方向を軸にして筒状に巻いた試料をセットして測定する。測定条件は以下の通りである。

0037

イメージングプレート単結晶構造解析装置:(株)リガク製 R−AXIS RAPID
X線源:Cuターゲット
また、セルロースの結晶構造において、X線回折(200面)の半値全幅FWHM)は、リグニン量が低減されセルロースの配向性が向上し、繊維方向の強度に優れという観点で、3以下であることが好ましく、2.8以下であることがより好ましく、2.6以下である事がさらに好ましい。また、透明樹脂を含浸させることにより透明成型物を得る事が可能であり、また、染色等の着色も可能になるという観点で、1以上である事が好ましく、1.6以上であることが好ましく、2以上であることが最も好ましい。セルロースのX線回折(200面)の半値全幅(FWHM)がかような範囲にあることで、天然セルロースの結晶構造が維持されていると言える。ゆえに、木材は強度に優れる。

0038

セルロースの結晶構造は以下のように測定する。

0039

X線装置全自動平型多目的X線回折装置(リガク社製、SmartLab)
X線源:Cuターゲット
木材の原料由来)は、特に限定されないが、木本であることが好ましく、好適な形態は、木材の原料が針葉樹広葉樹およびからなる群から選択される。本明細書における木材の定義は上記にあるとおり、「細胞が規則正しく並んでいる構造(組織)が形成されているものを指す」ため、本明細書においては木材の原料として竹も含まれる。このため、本明細書においては、木材に竹材を含む。

0040

針葉樹としては、特に限定されないが、スギエゾマツカラマツクロマツ、トドマツ、ヒメコマツ、イチイイチョウ、ネズコ、カヤ、ハリモミ、イラモミイヌマキ、モミ、サワラ、トガサワラ、アスナロヒバツガ、コメツガ、コウヤマキヒノキ、サワラ、イチイ、イヌガヤ、トウヒイエローシーダーベイヒバ)、ロウソンヒノキ(ベイヒ)、ダグラスファーベイマツ)、シトカスプルースベイトウヒ)、ラジアータマツ、イースタンスプルース、イースタホワイトパイン、ウェスタンラーチ、ウェスタンファー、ウェスタンへムロック及びタマラック等を挙げることができる。中でも、木材の原料としては、スギ、カラマツ、およびヒノキのいずれかであることが好ましい。

0041

広葉樹としては、特に限定されないが、ブナシナシラカバクルミポプラユーカリアカシアアサダ、ナラ、イタヤカエデカツラセンノキ、クリニレキリホオノキヤナギ、セン、ウバメガシ、コナラ、クヌギ、トチノキ、ケヤキ、ツゲ、ミズメ、ミズナラ、ミズキアカガシアオダモバルサ及びアオハダ等を挙げることができる。中でも、木材の原料としては、ブナ、バルサおよびニレのいずれかであることが好ましく、ブナ、およびニレのいずれかであることが好ましい。

0042

竹としては、マダケ、モウソウチク孟宗竹)及びハチク等を挙げることができる。

0043

よって、本発明の好適な形態は、原料(由来)がスギ、カラマツ、ヒノキ、ブナ、ニレ、バルサまたは竹であり、より好適にはスギ、カラマツ、ヒノキ、ブナ、ニレまたは竹である。

0044

本発明の第二実施形態は、木質原材料を140℃以上170℃以下の条件下で酸とアルコールとを含有する溶液中に浸漬する第1の工程と、その後、木質原材料を亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンを含む溶液に浸漬する第2の工程とを経て作製され、リグニン成分が低減された木材である。

0045

第二実施形態に係る木材は、木質原材料を140℃以上170℃以下の条件下で酸とアルコールとを含有する溶液中に浸漬する第1の工程と、その後、木質原材料を亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンを含む溶液に浸漬する第2の工程とを経て作製される。すなわち、本発明は、木質原材料を140℃以上170℃以下の条件下で酸とアルコールとを含有する溶液中に浸漬する第1の工程と、その後、木質原材料を亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンを含む溶液に浸漬する第2の工程とを含む、リグニン成分が低減された木材の製造方法の形態も提供する。このような方法によれば木質原材料に含まれているリグニン成分を、セルロースとへミセルロースからなる構造を維持しながら低減することができる。したがって、当該方法によって作製された木材は、木質原材料が本来有しているセルロースとへミセルロースからなる構造を維持し、且つ、リグニン成分が低減されているといった特徴を有する。

0046

リグニン成分が低減されたとは、木材中のリグニン成分が、好ましい順に3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.1重量%未満となることが好ましい。

0047

ここで、木質原材料とは、木を原料として所定の形状を有する材料である。原料として使用される木は、特に限定されないが、木本であることが好ましく、好適な形態は、木材の原料が針葉樹、広葉樹および竹からなる群から選択される。特に針葉樹が好ましい。

0048

針葉樹としては、特に限定されないが、スギ、エゾマツ、カラマツ、クロマツ、トドマツ、ヒメコマツ、イチイ、イチョウ、ネズコ、カヤ、ハリモミ、イラモミ、イヌマキ、モミ、サワラ、トガサワラ、アスナロ、ヒバ、ツガ、コメツガ、コウヤマキ、ヒノキ、サワラ、イチイ、イヌガヤ、トウヒ、イエローシーダー(ベイヒバ)、ロウソンヒノキ(ベイヒ)、ダグラスファー(ベイマツ)、シトカスプルース(ベイトウヒ)、ラジアータマツ、イースタンスプルース、イースタンホワイトパイン、ウェスタンラーチ、ウェスタンファー、ウェスタンへムロック及びタマラック等を挙げることができる。

0049

広葉樹としては、特に限定されないが、ブナ、シナ、シラカバ、クルミ、ポプラ、ユーカリ、アカシア、アサダ、ナラ、イタヤカエデ、カツラ、センノキ、クリ、ニレ、キリ、ホオノキ、ヤナギ、セン、ウバメガシ、コナラ、クヌギ、トチノキ、ケヤキ、ツゲ、ミズメ、ミズナラ、ミズキ、アカガシ、アオダモ、バルサ及びアオハダ等を挙げることができる。

0050

竹としては、マダケ、モウソウチク(孟宗竹)及びハチク等を挙げることができる。

0051

よって、本発明の好適な形態は、木質原材料がスギ、カラマツ、ヒノキ、ブナ、ニレ、バルサまたは竹であり、より好適にはスギ、カラマツ、ヒノキ、ブナ、ニレまたは竹である。

0052

木質原材料は、原料の木に対して所定の加工を施して作製されたものであっても良い。木に対する加工としては、特に限定されないが、切削加工研削加工研磨加工、鉋加工及び曲げ加工等を挙げることができる。これら加工によれば原料となる木を所望の形状に加工して、当該形状を有する木質原材料を得ることができる。

0053

また、木質原材料は、単一の部材から構成されていても良いし、複数の部材から構成されていても良い。例えば、複数の部材を一般的な方法によって接合することで、複数の部材で構成された木質原材料を作製することができる。複数の部材を接合する方法としては、例えば、接着剤を使用する方法、ビスを使用する方法、金具を使用する方法、ほぞ組み等の組み手を使用する方法を挙げることができる。

0054

木質原材料の形状は、特に限定されず、板状、棒状、チップ状、箱状及び球状等を挙げることができる。木質原材料の形状については、上述した第1の工程及び第2の工程において溶液に所定時間浸漬したときに当該溶液が内部に十分浸透するような形状とすることが好ましい。言い換えると、木質原材料の溶液に対する浸漬時間を調整すればよく、木質原材料は如何なる形状でも良いことが理解できる。

0055

また、木質原材料の寸法は、特に限定されないが、上述した第1の工程及び第2の工程において溶液に浸漬したときに溶液が内部に十分浸透する寸法とすることができる。この観点から木質原材料の寸法は、溶液に対する浸漬時間及び原料として使用した木の種類、特に木の密度に応じて好ましい範囲が異なることがわかる。例えばスギを用い、第1の工程及び第2の工程における浸漬時間を1時間とした場合、木質原材料の内部において表面からの距離が最も短い位置について、表面からの距離が10cm以下であることが好ましく、5cm以下であることがより好ましく、3cm以下であることが更に好ましく、1cm以下、0.5cm以下であることが最も好ましい。生産における取り扱いやすさの観点では、0.05cm以上であることが好ましく、0.1cm以上であることがより好ましい。また、スギ(針葉樹)に代えてケヤキ、ニレ、ブナ、ナラ(広葉樹)を用いた場合、第1の工程及び第2の工程における浸漬時間を1時間とした場合における同寸法は、5cm以下とすることが好ましく、2.5cm以下であることがより好ましく、1.5cm以下であることが更に好ましく、0.5cm以下であることが最も好ましい。また、スギ(針葉樹)に代えて竹を用いた場合、第1の工程及び第2の工程における浸漬時間を1時間とした場合における同寸法は、10cm以下であることが好ましく、5cm以下であることがより好ましく、3cm以下であることが更に好ましく、1cm以下であることが最も好ましい。

0056

本実施形態においては、木質原材料が前記工程だけでは白色化が難しい場合、特に木質原材料が竹である場合、下記第1の工程の前にアルカリ処理を行うことが好ましい。このような前処理を行うことで、リグニン成分の除去が効率的に行われるため好ましい。

0057

アルカリ処理において、アルカリ溶液を調製するために使用されるアルカリは、特に制限されず、水酸化ナトリウム水酸化カリウム炭酸ナトリウム炭酸カリウム水酸化カルシウム炭酸水素ナトリウム炭酸水素カリウム水酸化リチウムアンモニア等が挙げられる。これらのうち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウムが好ましく、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウムがより好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。なお、上記アルカリは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。

0058

また、上記アルカリを溶解するための溶媒は、特に制限されないが、水であることが好ましい。すなわち、アルカリ溶液は、水酸化ナトリウム水溶液であることが好ましい。

0059

アルカリ処理は、上記アルカリ溶液に木質原材料を浸漬することで行われる。この際、浸漬時間としては、木質原材料の形状及び寸法、木質原材料の含水率等に応じて適宜設定することができるが、例えば、10分〜5時間であり、30分〜2時間である。また、浸漬温度は特に限定されるものはないが、135℃以下が好ましく、115℃以下がより好ましい。また、浸漬温度は55℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。温度条件が高すぎると木材がピーリングしてしまい、低すぎると後の工程での脱リグニンが困難となる。

0060

本実施形態に係る木材の製造方法では、先ず、上述した木質原材料を140℃以上170℃以下の条件下で酸とアルコールとを含有する溶液中に浸漬する(第1の工程)。なお、本工程に先立って、木質原材料を乾燥させても良い。例えば含水率が20%以下程度の乾燥材を用いて木質原材料を作製した場合、特に乾燥する工程は不要としても良いが、含水率が20%を超える材料で木質原材料を作製した場合、含水率が20%以下となるように乾燥することが好ましい。

0061

木質原材料を140℃以上170℃以下の条件下で酸とアルコールとを含有する溶液中に浸漬する。ここで、140℃以上170℃以下の条件下とは、浸漬する環境下における雰囲気温度が140℃以上170℃以下であるとの意である。温度条件は、脱リグニンを効率よく進めるという観点で140℃以上が好ましく、145℃以上がより好ましい。セルロースの分子量低下を抑制するという観点では、170℃以下であることが好ましく、165℃以下であることがより好ましく、160℃以下であることがさらにより好ましい。

0062

第1の工程では、木質原材料の形状や寸法に応じて、木質原材料の全体を浸漬するに足る溶液量を準備する。第1の工程で使用する溶液は、酸とアルコールを含有する溶液である。ここで、酸としては、特に限定されないが、硫酸、塩酸硝酸及び酢酸等の酸を挙げることができる。なかでも、酸としては低揮発性であることから、硫酸を使用することが好ましい。また、アルコールとしては、特に限定されないが、溶媒が加熱によっても残留しやすいことから、例えば高沸点のアルコールを使用することが好ましい。高沸点アルコールとは、例えば150℃以上の沸点、好ましくは160℃以上の沸点、より好ましくは170℃以上の沸点、更に好ましくは180℃以上の沸点を有するアルコールを意味する。第1の工程で使用できるアルコールとしては、例えば、1,2−エタンジオール(エチレングリコール、沸点:197.2℃)、ジエチレングリコール(沸点:244.3℃)、トリエチレングリコール(沸点:287.4℃)、プロピレングリコール(沸点:187.4℃)、1,3−ブタンジオール(沸点:207.5℃)、1,4−ブタンジオール(沸点:228℃)、2−エチル−1−ヘキサノール(沸点:184.7℃)、ベンジルアルコール(沸点:205.45℃)等を使用することができる。中でもアルコールとしては、エチレングリコールまたはプロピレングリコールを用いることが好ましく、エチレングルコールを用いることがより好ましい。プロピレングリコールは食品添加物として使用できる材料であり、食品包装材等に使用できる材料であり安全性の面で好ましい。本木材を得る為に残留する材料を食品添加物とすることは好ましい例であり、反応に使用する材料全てを食品添加物とすることは最も好ましい例である。

0063

本発明の好適な形態は、酸とアルコールとを含有する溶液が、硫酸とエチレングリコールとを含有する溶液または硫酸とプロピレングリコールとを含有する溶液である。本発明の好適な形態は、酸とアルコールとを含有する溶液が、硫酸とエチレングリコールとを含有する溶液である。

0064

第1の工程に使用する溶液において、木質原材料のリグニン成分を十分に低減できるという観点で、酸の濃度が、好ましい順に0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.3%重量以上、0.5重量%以上であり、セルロースとへミセルロースからなる構造を維持しやすい、セルロースの分子量を維持しやすいという観点で、酸の濃度が、好ましい順に10重量%以下、5重量%以下、3重量%以下である。好適な形態は、酸とアルコールとを含有する溶液は、酸濃度を0.05〜10重量%とする。

0065

また、第1の工程に使用する溶液において、アルコールの濃度は、90〜99.5重量%とすることができ、95〜99.5重量%とすることが好ましく、97〜99重量%とすることがより好ましく、98〜99重量%とすることが更に好ましい。溶液におけるアルコールの濃度がこの範囲であることで、木質原材料のリグニン成分を十分に低減しやすい。また溶液におけるアルコールの濃度がこの範囲であることで、木質原材料のリグニン成分を十分に低減でき、かつ、セルロースとへミセルロースからなる構造を維持しやすい。

0066

第1の工程に使用する溶液は、水溶液であることが好ましい。水溶液であることで、溶媒中の水が構造体入り込み、木材の三次元構造体を維持しやすくなる。なお、ここでいう「水溶液」とは、溶媒の100重量%が水に限定されず、水溶性有機溶剤(例えば、アルコール等)を0〜30重量%、好ましくは0〜5重量%を併用してもよく、本発明ではこれらを水溶液として扱う。最も好ましい形態は、溶媒の100重量%が水である。

0067

第1の工程では、上記の溶液に木質原材料を浸漬し、140℃以上170℃以下の温度条件で加熱する。このような温度範囲で加熱することで、溶液が木質原材料内部にまで浸透しやすい。このとき、温度条件としては、上記範囲内であれば特に限定されないが、使用するアルコールの沸点より低い温度とすることが好ましく、使用するアルコールの沸点よりも10℃以上低い温度とすることがより好ましく、使用するアルコールの沸点よりも20℃以上低い温度とすることがさらに好ましい。また、第1の工程における浸漬時間は、特に限定されないが、溶液が木質原材料の内部に十分浸透する程度とすることが好ましい。このため、第1の工程における浸漬時間は、木質原材料の形状及び寸法、木質原材料の原料とした木の種類、木質原材料の含水率等に応じて適宜設定することができる。加熱温度条件以下の沸点の溶媒を使用する場合には、溶媒揮発量を低減するという観点で加圧下で反応することが好ましく、耐圧容器を使用することも好ましい例である。

0068

また、第1の工程では、木質原材料を溶液に浸漬した状態で木質原材料に含まれる空気や水を当該溶液に置換する処理を実施することが好ましい。このような処理を行うことで、木質原材料内部にまで溶液が浸透しやすい。当該処理としては、上記木質原材料を上記溶液に浸漬させた状態で密閉し、密閉空間内を脱気する処理が挙げられる。例えば、木質原材料を容器内の溶液に浸漬した状態で、容器ごと真空チャンバ内に格納し、真空チャンバ内を減圧する処理が挙げられる。その他にも、マイクロ波照射電子レンジで熱をかけたり)、超音波照射を行うといった処理によっても木質原材料に含まれる空気、水を上記溶液に置換することができる。

0069

木質原材料に含まれる空気を当該溶液に置換する処理を実施した場合には、当該処理を実施しない場合と比較して第1の工程における浸漬時間を短時間とすることができる。例えば、スギからなる1cm角の直方体の木質原材料(含水率:約15%)であれば、当該処理を実施した場合、第1の工程における浸漬時間を30分以上とすることができ、45分以上とすることが好ましく、1時間以上とすることがより好ましい。この例に従えば、木質原材料の形状及び寸法、木質原材料の原料とした木の種類、木質原材料の含水率に応じて浸漬時間を適宜設定することができる。

0070

第1の工程においては、酸とアルコールを含む溶液を用いて温度条件を140〜170℃としているため木質原材料に含まれるリグニン成分を除去しながらも、セルロースとへミセルロースからなる構造を破壊すること無く維持できる。なお、第1の工程は、1回でも複数回行っても良い。

0071

第1の工程の後、得られた木質原材料に対して洗浄処理を行ってもよい。ここで、洗浄に用いられる液としては、水、アルコールなどが挙げられる。水とアルコールの混合物を用いてもよい。アルコールとしては、その後の工程で取り扱いやすい、メタノール、エタノールなどが挙げられる。洗浄は複数回行ってもよく、各回において用いられる液種が異なっていてもよい。

0072

次に、第三実施形態に係る木材の製造方法では、第1の工程後の木質原材料を、亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンを含む溶液に浸漬する第2の工程を実施する。第2の工程では、第1の工程と同様に、木質原材料の形状や寸法に応じて、木質原材料の全体を浸漬するに足る溶液量を準備する。第2の工程で使用する溶液は、少なくとも亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンを含有する溶液である。好ましくは亜塩素酸イオンを含有する溶液である。亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンを含有する溶液とは、亜塩素酸塩または次亜塩素酸塩の溶液(好ましくは水溶液)ということができる。亜塩素酸塩としては、特に限定されないが、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カルシウム等を挙げることができる。なかでも、リグニンの除去がより効果的に行われることから、亜塩素酸イオンを含有する溶液としては、亜塩素酸ナトリウム溶液とすることが好ましい。次亜塩素酸塩としては、特に限定されないが、次亜塩素酸ナトリウム次亜塩素酸カルシウム等を挙げることができる。なかでも、次亜塩素酸イオンを含有する溶液としては、リグニンの除去がより効果的に行われることから、次亜塩素酸ナトリウム溶液とすることが好ましい。

0073

また、第2の工程で使用する溶液は、亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンの他に、強い酸化力を有する二酸化塩素を発生させて脱リグニンを進めるように、酢酸等の弱酸を含有することが好ましい。第2の工程で使用できる弱酸成分としては、酢酸、炭酸及びホウ酸等を挙げることができるが、酢酸を使用することが最も好ましい。第2の工程で使用する溶液のpHは11未満が好ましく、pH9以下がより好ましく、pH8以下がさらに好ましい。一方、木材構造の維持、およびセルロースの分子量の維持の観点から、第2の工程で使用する溶液のpHは1以上が好ましく、pH3以上がより好ましく、pH4以上が最も好ましい。

0074

第2の工程に使用する溶液において、亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンの濃度は、0.01〜10重量%とすることが好ましく、0.05〜5重量%がより好ましく、0.1〜5重量%がさらに好ましく、0.5〜5重量%がさらにより好ましく、0.5〜2重量%が特に好ましい。溶液における亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンの濃度がこの範囲内であると、木質原材料のリグニン成分を十分に低減できる。また溶液における亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンの濃度がこの範囲内であると、木質原材料のリグニン成分を十分に低減でき、セルロースとへミセルロースからなる構造を維持しやすい。なお、上記亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンの濃度は、少なくとも初回の添加時に当該範囲であることが好ましい。また、亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンの反応性が高く且つ不安定であるため、反応中には上記濃度は必ずしも維持されない。

0075

また、第2の工程に使用する溶液において、弱酸の濃度は、0.005〜2.0重量%とすることができ、0.01〜1.0重量%とすることができ、0.05〜0.8重量%とすることが好ましく、0.1〜0.6重量%とすることがより好ましく、0.5重量%とすることが更に好ましい。溶液における弱酸の濃度がこの範囲であると、木質原材料のリグニン成分を十分に低減できる。また溶液における弱酸の濃度がこの範囲であると、木質原材料のリグニン成分を十分に低減でき、セルロースとへミセルロースからなる構造を維持しやすい。

0076

第2の工程に使用する溶液は、水溶液であることが好ましい。水溶液であることで、溶媒中の水が構造体に入り込み、三次元構造体を維持しやすくなる。なお、ここでいう「水溶液」とは、溶媒の100重量%が水に限定されず、水溶性有機溶剤(例えば、アルコール等)を0〜30重量%、好ましくは0〜5重量%を併用してもよく、本発明ではこれらを水溶液として扱う。最も好ましい形態は、溶媒の100重量%が水である。

0077

第2の工程では、上記の溶液に第1の工程後の木質原材料を浸漬する。このとき、第1の工程後の木質原材料をエタノールや水で洗浄することが好ましい。特に、第1の工程後の木質原材料をエタノールで洗浄した場合には、第1の工程に使用した酸成分とリグニン成分とを除去することができる。

0078

また、第2の工程における浸漬時間は、特に限定されないが、第1の工程と同様に溶液が木質原材料の内部に十分浸透し、残存するリグニン成分を除去できる程度とすることが好ましい。このため、第2の工程における浸漬時聞は、第1の工程と同様に、木質原材料の形状及び寸法、木質原材料の原料とした木の種類、木質原材料の含水率等に応じて適宜設定することができる。但し、第2の工程では、溶液中の亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンの反応性が高く且つ不安定であるため、上述した亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンの濃度が維持できるよう、所定時聞が経過した段階で亜塩素酸塩または次亜塩素酸塩を溶液に添加することが好ましい。或いは、第2の工程は、複数回繰り返して行うことが好ましい。第2の工程を繰り返し複数回行うことで、木質原材料の内部に亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンを含む溶液が十分浸透し、残存するリグニン成分を除去することができる。ここで、複数回とは、2回以上を指すが、好ましくは4回以上であり、より好ましくは6回以上であり、特に好ましくは8回以上である。このように第2の工程を複数回行うことで、木質原材料の内部にまで残存するリグニン成分を除去することができる。また、第2の工程の繰り返し回数の上限は特に限定されるものではないが、生産性を考慮すると、20回以下であることが好ましく、15回以下であることがより好ましく、10回以下であることが特に好ましい。なお、複数回としては、連続滴下を含み、溶液内のpHを制御しながら滴下することも、好ましい例である。

0079

例えば、スギからなる1cm角の直方体の木質原材料であれば、第2の工程における浸漬時間は、1時間毎に次亜塩素酸塩を添加して5時間以上とすることができ、6時間以上とすることが好ましく、7時間以上とすることがより好ましい。浸漬時間の上限は特に限定されないが、効果の飽和性と生産性とを鑑みて、10時間以下とすることが好ましい。ただし、第2の工程における浸漬時間は、第1の工程と同様に、木質原材料の形状及び寸法、木質原材料の原料とした木の種類、木質原材料の含水率に応じて浸漬時間を適宜設定することができる。

0080

なお、第2の工程において温度条件としては、特に限定されないが、例えば50〜90℃とすることができ、60〜80℃とすることが好ましく、65〜75℃とすることがより好ましい。第2の工程の温度条件をこの範囲とすることで、第1の工程を経ても残存したリグニン成分を十分に除去することができる。

0081

第2の工程においては、亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンを含む溶液或いは亜塩素酸イオンまたは次亜塩素酸イオンと弱酸を含む溶液を用いているため、第1の工程で残存した木質原材料に含まれるリグニン成分を確実に除去しながらも、セルロースとへミセルロースからなる構造を破壊すること無く維持できる。すなわち、本発明に係る木材の製造方法では、当該第2の工程を経ることによって、木質原材料にもともと含まれていたリグニン成分を大幅に低減することができる。

0082

第2の工程で得られた木材を水やアルコールなどで洗浄することが好ましい。洗浄は、水およびアルコールの混合物であってもよい。アルコールとしては、その後の工程で取り扱いやすい、メタノール、エタノールなどが挙げられる。洗浄処理することで、リグニン成分や余分な第2工程の原料・反応成分を除去することができるとともに、構造を維持した木材が得られやすいため好ましい。

0083

また、洗浄後、乾燥を行う際には、凍結乾燥を行うことが好ましい。

0084

第三実施形態に係る木材の製造方法によれば、木質原材料にもともと含まれていたリグニン成分の80重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、更に好ましくは98重量%以上、最も好ましくは99重量%以上を低減することができる。言い換えると、本発明に係る木材は、木質原材料にもともと含まれていたリグニン成分の80重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、更に好ましくは98重量%以上、最も好ましくは99重量%以上を低減した木材と言える。

0085

特に、第三実施形態に係る木材の製造方法においては、木質原材料の形状及び寸法、木質原材料の原料とした木の種類、木質原材料の含水率等に応じて上記第1の工程及び第2の工程の条件を調整することによって、木質原材料に含まれる大凡全てのリグニン成分を除去することができる。なお、木質原材料に含まれる大凡全てのリグニン成分を除去するとは、木材中のリグニンを定量的に測定する手法により上記木質原材料に含まれるリグニン成分を測定したときに、検出限界以下となることを意味する。

0086

また、本発明に係る木材の製造方法によれば、木材原材料に含まれていたリグニン成分を上述の範囲で低減できることから、処理前の木材原材料が白色化することとなる。木材原材料の白色化とは、リグニン成分の低減度合いに応じて白色に近づくことを意味し、リグニン成分の低減割合が高ければ高いほど、より白色に近い色を呈することを意味する。例えば、本発明に係る木材の製造方法により得られた木材のリグニン成分を測定したときに検出限界以下であった場合、当該木材は白色となる。このように、本発明に係る木材の製造方法によれば「白い木材」を製造することができる。

0087

さらに、第三実施形態に係る木材の製造方法によれば、木材原材料に含まれていたリグニン成分を上述のように低減するとともに、セルロースとへミセルロースからなる構造を維持することができる。ここで、セルロースとへミセルロースからなる構造を維持するとは、木材原材料の原料として使用した木が本来有している細胞壁構造が維持されること、また、その結果、処理前の木材原材料の外形形状・寸法が維持されることを意味する。処理前の木材原材料の外形形状・寸法が維持されるとは、木材原材料の処理前後の寸法を測定した時にその変化量が5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下であることを意味する。

0088

以上のように、第三実施形態に係る木材の製造方法によれば、処理前の木材原材料に含まれるリグニン成分を大幅に低減でき、且つ処理前の木材原材料の外形形状・寸法を維持した木材を製造することができる。第一実施形態の木材、または第二実施形態の木材(以下「白い木材」)は、従来にない新たな材料として、特に限定されず、様々な分野への応用が可能となる。本発明の好適な形態は、木質原材料の形状を維持した木材である。

0089

白い木材の特徴として、原料の樹木が本来有している組織・細胞構造が維持されている点に着目すると、樹木が生み出した最適なフレーム構造を利用した材料開発の基盤として白い木材を利用できる。厳しい自然環境の中、100mを超える巨大体躯生存を1000年以上にも亘って保障するのは、樹木が精密に形成制御した木質高分子から成る階層構造に他ならない。

0090

従来、ミクロフィブリルの製造において、組織構造が解消したパルプ状に加工してからミクロフィブリルを抽出するため、樹木が有していた階層構造とは無関係に、配向性を有しないミクロフィブリルしか得られない。また、配向性を有しないミクロフィブリルを一軸配向させる技術も確立されていない。しかしながら、白い木材はこの階層構造を維持していることから、白い木材における配向性を維持してミクロフィブリルを利用することができる。

0091

すなわち、得られた白い木材の接線方向並びに板目方向に圧縮すれば、セルロースミクロフィブリルが配向した紙やフィルムを開発することができる。また、原料として使用する樹木の種類によって、様々な組織構造を有する白い木材を得ることができる。このため、白い木材を使用した紙・フィルムについても、このような組織構造の特徴を生かすことができ、目的に応じた材料として利用できる。なお、得られた白い木材に含まれるセルロースミクロフィブリルは、従来、セルロースミクロフィブリルやセルロースナノファイパ一等が利用されてきた用途にも当然利用することができる。例えば、車体、タイヤ窓ガラスディスプレイ電池材料、スビーカー、おむつ、増粘剤食品用包装材人工血管人工軟骨、食品添加物等に対して、白い木材由来のセルロースミクロフィプリルを利用することができる。

0092

一方、白い木材の特徴として、木材原材料(木質原材料)の外形形状・寸法を維持している点に着目すると、軽くて強い構造材料として白い木材を利用することができる。例えば、建築資材として、従来利用されてきた木材に代えて白い木材を利用することができる。なお、建築資材等のより強度が求められる分野へ使用される場合、白い木材に対して樹脂等のマトリックス成分を吸収させることもできる。すなわち、白い木材は、求められる強度に応じた、新たな3次元複合樹脂材料として使用することができる。

0093

また、白い木材の特徴として、木材原材料を構成するセルロースとへミセルロースからなる構造を維持する点に着目すると、細胞内腔が作るマイクロメートルオーダーの細孔に加え、多糖間にあるナノオーダー微細孔が形成された多孔性材料として白い木材を利用することができる。ナノオーダーの微細孔が形成された材料をメソポーラス材料(細孔の直径が数ナノメートルから数十ナノメートルの多孔質材料)と呼称されるが、白い木材はメソポーラス材料として利用することができる。

0094

メソポーラス材料としての用途としては、例えば、ガス吸着材断熱材、ガス分離材微生物培地などを挙げることができる。

0095

また、The Murata Science Foundation Annual Report No.30 2016 page 151−153に記載されるように、銀ナノワイヤーとセルロース繊維からなるナノペーパーとから高誘電材料を作製するという技術が知られている。白い木材の特徴としてセルロースミクロフィブリルが配向していることから、一軸配向したナノペーパーの特徴を維持した高誘電材料を作製することができる。なお、白い木材に銀ナノワイヤーを張り巡らせることで導電性材料を作製することができる。このように、白い木材は、電子部品の材料として使用することができる。

0096

さらに、白い木材における色の特徴、すなわち白色は、セルロースとへミセルロース成分の屈折率と、内部に含まれる空気の屈折率が異なることによる特徴である。したがって、白い木材に例えばアクリル系樹脂含侵させることによって、セルロースとへミセルロース成分の屈折率と内部の屈折率とを近づけることができ、無色透明を呈することとなる。白い木材にアクリル系樹脂を含侵させた無色透明材料は、例えば、ディスプレイや太陽電池基板に応用することができる。

0097

さらにまた、白い木材は、例えば水酸化ナトリウム水溶液に浸漬することで膨潤し、木材ゲル材料となる。これは白い木材を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬すると、ナトリウムイオンセルロース結晶内部に入り込み分子間を広げ、部分的に水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、水で洗浄するとセルロース同士が架橋構造を形成することで、ゲルとしての物性を発現する。具体的な処理条件は8〜20%の水酸化ナトリウム水溶液に室温で浸漬させて、12時間処理し、その後水で洗浄する条件を挙げることができる。白い木材を用いた木材ゲル材料は、例えば、ゲル化により弾性を有する機能性材料となるため、例えば創傷被膜材といった医療用ゲル材料や食品用ゲルに応用することができる。

0098

さらに、白い木材の特徴として、樹木由来且つ化学的な修飾を有しないという特徴に着目すると、生分解性材料であった低環境負荷な材料とも言える。すなわち、上述したように、白い木材の様々な特徴に着目して幅広い分野への具体的な応用が理解できるが、白い木材を利用した物は全てセルラーゼによって完全に分解することができる。例えば、白い木材のメソポーラス構造に着目して吸着材として利用した場合、当該吸着材を生分解することで、例えば、環境中から吸着した物質濃縮することが可能となる。また、白い木材を従来の発泡スチロールに代わり、例えば、生分解性断熱材として利用することが可能となる。

0099

以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。

0100

[実施例1]
本実施例では、スギ(針葉樹)からなる直方体(各辺1cm)の木材原材料(木質原材料)を準備した。先ず、エチレングリコールと50重量%硫酸を99:1(溶液中の酸濃度0.5重量%)で混合した溶液を準備した。密閉容器内にて、当該溶液に木材原材料を浸漬し、ポンピングをすることにより、木材原材料中の空気を溶媒と置換した。つぎに、木材原材料を溶液ごと耐圧管に移し、150℃(雰囲気温度)で1時間処理した(第1の工程)。

0101

処理後、木材原材料を取り出し、エタノールで繰り返し洗浄した。また、酢酸0.08ml、亜塩素酸ソーダ0.4g及び水60mlからなる溶液を準備した。そして、エタノール洗浄後の木材原材料を当該溶液に浸漬した。温度条件を70℃とし、浸漬時間を1時間とした(第2の工程)。本実施例では、第2の工程を7回、すなわち1時間の浸漬時聞が経過した後、酢酸0.08ml及び亜塩素酸ソーダ0.4gを加え更に1時間処理する工程を7回実施した(浸漬時間、合計8時間)。

0102

そして、完全に漂白された木材を取り出し、水で洗浄することによって、リグニン成分が除去されるとともに、セルロースとへミセルロースからなる構造を維持した白い木材を得ることができた(図1)。なお、図1は、(A)に未処理の木質原材料、(B)に第1の工程処理後の木質原材料、(C)に得られた白い木材を示している。これら未処理の木質原材料(A)及び白い木材(C)の寸法を計測したところ以下のようになった(表1)。この結果から、白い木材は、未処理の木質原材料の外形形状・寸法を維持していることが明らかになった。

0103

0104

また、(A)〜(C)について構成成分を分析したところ、(B)の木質原材料ではリグニン量は13.81%であった。これに対して(C)の白い木材ではリグニン量は0.1重量%未満であった。具体的には、HPLCによる成分分析は下記のようであった。

0105

0106

ここで、木材中のセルロース量は、グルコース含有量(重量%)に0.9をかけた96.44×0.9=86.8重量%となる。また、ヘミセルロース量は、上記キシロースアラビノースマンノースガラクトース含有量(重量%)から、1.21×0.88+0.01×0.88+0.99×0.9+0.23×0.9=2.16重量%となる。

0107

また、実施例1の白い木材のセルロースの粘度平均重合度は1115、X線回折による200面の半値全幅(FWHM)の値は、2.50(未処理は3.18)、最大荷重は27Nであった。実施例1の寸法を1.2cm×1.2cm×1cmとした以外は実施例1と同じ操作を行った白い木材の白色度はL*:94.0、a*:−0.26、b*:1.02(未処理:L*:80.11、a*:3.39、b*:17.7)であった。

0108

さらに、(A)〜(C)について赤外線吸収スペクトルで成分を分析した結果を図2に示した。図2に示すように、(C)の白い木材においてはリグニンに帰属されるバンド(1510cm−1)は認められなかった。

0109

さらに、未処理の木質原材料と、白い木材とについて、X線CT(マイクロフォーカスX線CTシステム、inspeXioSMX−100CT、島津製作所社製)により画像解析した結果を図3に示した。図3に示すように、本実施例で作製した白い木材は、未処理の木質原材料と同様に、組織及び細胞構造を維持していることが分かった。

0110

図4は、実施例1で使用した未処理の木質原材料と、白い木材とについてX線回折により得られたX線繊維図を示す画像である。図4のX線繊維図は、同心円状画像上に複数の回折スポットが観察される。ゆえに、本実施例で作製した白い木材は、未処理の木質原材料と同様に、細胞壁内のミクロフィブリルの配向を維持していることが分かった。

0111

なお、上記各種分析(寸法計測以外)においては、必要により、次の凍結乾燥を行った。以下の実施例においても同様である。50%エタノール水溶液に試料を浸漬した後、順に70%エタノール水溶液、90%エタノール水溶液、95%エタノール水溶液、99.5%エタノール水溶液、無水エタノール(3回)のそれぞれに試料を10〜15分ほど浸漬した。その後、試料を無水エタノール:t−ブチルアルコール=1:1で15〜30分ほど浸漬し、さらに、t−ブチルアルコールに15分以上浸漬した。この操作を3回繰り返した。サンプルから溶媒を軽くぬぐって、冷蔵庫に15分以上保存して凍結乾燥を行った。

0112

以上の結果より、本実施例では、原料としてスギを用いた木質原材料について、リグニン成分をほぼ完全に除去するとともに、セルロースとへミセルロースからなる構造を維持し、処理前の形状を維持した白い木材を製造できることが明らかとなった。

0113

[実施例2]
本実施例では、原料としてケヤキ(広葉樹)を使用し、第1の工程の条件を150℃で6時間処理とした以外は実施例1と同様にして白い木材を製造した。

0114

処理前の木質原材料及び得られた白い木材を図5に示した。また、本実施例の未処理の木質原材料及び白い木材の寸法を計測したところ以下のようになった。この結果から、白い木材は、未処理の木質原材料の外形形状・寸法を維持していることが明らかになった。

0115

0116

また、処理前の木材原材料及び得られた白い木材について赤外線吸収スペクトルで成分を分析した結果を図6に示した。図6に示すように、白い木材においてはリグニンに帰属されるバンド(1510cm−1)は認められなかった。

0117

さらに、未処理の木質原材料と、白い木材とについて、X線CTにより画像解析した結果を図7に示した。図7に示すように、本実施例で作製した白い木材は、未処理の木質原材料と同様に、組織及び細胞構造を維持していることが分かった。

0118

以上の結果より、本実施例では、原料としてケヤキを用いた木質原材料について、リグニン成分をほぼ完全に除去するとともに、セルロースとへミセルロースからなる構造を維持し、処理前の形状を維持した白い木材を製造できることが明らかとなった。

0119

[実施例3]
本実施例では、第1の工程において、エチレングリコールの代わりにプロピレングリコールを用いたこと以外は実施例1と同様にして白い木材を製造した。

0120

処理前の木質原材料及び得られた白い木材を図8に示した。なお、図8は、(A)に未処理の木質原材料、(B)に得られた白い木材を示している。これら未処理の木質原材料(A)及び白い木材(B)の寸法を計測したところ以下のようになった(表4)。この結果から、白い木材は、未処理の木質原材料の外形形状・寸法を維持していることが明らかになった。

0121

0122

また、処理前の木材原材料及び得られた白い木材について赤外線吸収スペクトルで成分を分析した結果を図9に示した。図9に示すように、白い木材においてはリグニンに帰属されるバンド(1510cm−1)は認められなかった。

0123

さらに、未処理の木質原材料と、白い木材とについて、X線CTにより画像解析した結果、本実施例で作製した白い木材は、未処理の木質原材料と同様に、組織及び細胞構造を維持していることが分かった。

0124

以上の結果より、本実施例では、第1の工程におけるアルコールとしてプロピレングリコールを用いた場合において、リグニン成分をほぼ完全に除去するとともに、セルロースとへミセルロースからなる構造を維持し、処理前の形状を維持した白い木材を製造できることが明らかとなった。

0125

[実施例4]
本実施例では、原料としてハルニレ(広葉樹)を使用した以外は実施例1と同様にして白い木材を製造した。

0126

処理前の木質原材料及び得られた白い木材を図10に示した。なお、図10は、(A)に未処理の木質原材料、(B)に第1の工程処理後の木質原材料、(C)に得られた白い木材を示している。これら未処理の木質原材料(A)及び白い木材(C)の寸法を計測したところ以下のようになった(表5)。この結果から、白い木材は、未処理の木質原材料の外形形状・寸法を維持していることが明らかになった。

0127

0128

また、処理前の木材原材料及び得られた白い木材について赤外線吸収スペクトルで成分を分析した結果を図11に示した。図11に示すように、白い木材においてはリグニンに帰属されるバンド(1510cm−1)は認められなかった。

0129

さらに、未処理の木質原材料と、白い木材とについて、X線CTにより画像解析した結果、本実施例で作製した白い木材は、未処理の木質原材料と同様に、組織及び細胞構造を維持していることが分かった。

0130

以上の結果より、本実施例では、原料としてハルニレを用いた木質原材料について、リグニン成分をほぼ完全に除去するとともに、セルロースとへミセルロースからなる構造を維持し、処理前の形状を維持した白い木材を製造できることが明らかとなった。

0131

[実施例5]
本実施例では、原料としてブナ(広葉樹)を使用した以外は実施例1と同様にして白い木材を製造した。

0132

処理前の木質原材料及び得られた白い木材を図12に示した。なお、図12は、(A)に未処理の木質原材料、(B)に第1の工程処理後の木質原材料、(C)に得られた白い木材を示している。これら未処理の木質原材料(A)及び白い木材(C)の寸法を計測したところ以下のようになった(表6)。また、本実施例の未処理の木質原材料及び白い木材の寸法を計測したところ以下のようになった。この結果から、白い木材は、未処理の木質原材料の外形形状・寸法を維持していることが明らかになった。

0133

0134

また、処理前の木材原材料及び得られた白い木材について赤外線吸収スペクトルで成分を分析した結果を図13に示した。図13に示すように、白い木材においてはリグニンに帰属されるバンド(1510cm−1)は認められなかった。

0135

さらに、未処理の木質原材料と、白い木材とについて、X線CTにより画像解析した結果、本実施例で作製した白い木材は、未処理の木質原材料と同様に、組織及び細胞構造を維持していることが分かった。

0136

以上の結果より、本実施例では、原料としてブナを用いた木質原材料について、リグニン成分をほぼ完全に除去するとともに、セルロースとへミセルロースからなる構造を維持し、処理前の形状を維持した白い木材を製造できることが明らかとなった。

0137

[実施例6]
本実施例では、以下の条件で第1の工程の前にアルカリ処理を行ったこと、原料としてモウソウチクを使用したこと、第1の工程の条件を150℃で4時間処理としたこと以外は実施例1と同様にして白い木材を製造した。

0138

アルカリ処理は、木材原材料を1%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬させ、95℃で1時間、熱処理を施すことで行った。

0139

得られた白い木材を図14に示した。また、本実施例の未処理の木質原材料及び白い木材の寸法を計測したところ、白い木材は、未処理の木質原材料の外形形状・寸法を維持していた。

0140

また、処理前の木材原材料及び得られた白い木材について赤外線吸収スペクトルで成分を分析した結果を図15に示した。図15に示すように、白い木材においてはリグニンに帰属されるバンド(1510cm−1)は認められなかった。なお、図15において、S1〜S4は内側から表皮にかけて区分を4つにわけたもの(内側S1→表皮側S4)である。

0141

さらに、未処理の木質原材料と、白い木材とについて、X線CTにより画像解析した結果、本実施例で作製した白い木材は、未処理の木質原材料と同様に、組織及び細胞構造を維持していることが分かった。

0142

また、実施例6の木材のセルロースの粘度平均重合度は1473であった。

0143

以上の結果より、本実施例では、原料としてモウソウチクを用いた木質原材料について、リグニン成分をほぼ完全に除去するとともに、セルロースとへミセルロースからなる構造を維持し、処理前の形状を維持した白い木材を製造できることが明らかとなった。

0144

[実施例7]
本実施例では、原料としてバルサ(広葉樹)を使用した以外は実施例1と同様にして白い木材を製造した。

0145

白い木材の白色度(寸法5cm×5cm×0.5cm)はL*:93.1、a*:−0.28、b*:1.36(未処理:L*:85.56、a*:2.25、b*:10.64)であった。

0146

さらに、未処理の木質原材料と、白い木材とについて、X線CTにより画像解析した結果、本実施例で作製した白い木材は、未処理の木質原材料と同様に、組織及び細胞構造を維持していることが分かった。

0147

なお、各実施例において、リグニン含有量は3重量%未満であり、セルロース含有量は75重量%以上であり、ヘミセルロース含有量は0.01重量%以上15重量%以下であった。

実施例

0148

本出願は、2018年2月28日に出願された日本特許出願番号2018−035653号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。

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