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技術 音響信号処理装置、音響信号処理方法および音響信号処理プログラム

出願人 日本電信電話株式会社
発明者 堤公孝野口賢一高田英明羽田陽一
出願日 2019年2月28日 (2年2ヶ月経過) 出願番号 2020-503603
公開日 2021年2月4日 (3ヶ月経過) 公開番号 WO2019-168083
状態 未査定
技術分野 可聴帯域変換器の回路等 可聴帯域変換器の細部(特性を得るもの)
主要キーワード 駆動関数 焦点座標 多重極子 回転方向θ 複素正弦波 音響コンテンツ 対象周波数 テイラー展開
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (11)

課題・解決手段

音響信号処理装置1は、複数の初期焦点座標と、仮想音源座標および指向性の方向を取得して、複数の初期焦点座標のうち極性の異なる一対の初期焦点座標について、仮想音源の座標に基づいて、初期焦点座標に前記指向性の方向から特定される回転行列をかけて、焦点座標を決定する焦点位置決定部12と、円調和係数から、焦点座標を含む多重極子に与える重みを算出する円調和係数変換部13と、スピーカアレイの各スピーカについて、焦点座標と、焦点座標の極性と、多重極子に与える重みから、スピーカに与える重み付き駆動関数演算するフィルタ係数演算部14と、スピーカアレイの各スピーカについて、入力音響信号Iに、スピーカに対応する重み付き駆動関数を畳み込んで、スピーカへの出力音響信号Oを出力する畳み込み演算部15を備える。

概要

背景

パブリックビューイングコンサートでは、上映会場に設置した複数のスピーカから音声音楽などを再生する。近年、仮想的な音源上映空間に作り出すことにより、これまで以上に臨場感のある音響再生を実現する取り組みが行われている。特に直線状に多数のスピーカを並べてできるスピーカアレイを用いて、スピーカより前面、客席近くまで飛び出る仮想音源を生成することで高い臨場感を実現するといったことが行なわれている。

また、一般に、楽器や人間の声は方向によって放射されるパワーが異なるため、上映空間に仮想的な音源を生成する際に方向による音響信号のパワーの違い(指向性)を再現することで、さらに臨場感の高い音響コンテンツを実現することが期待されている。

上映空間に仮想的な音源を作り出す音響再生技術に対し、波面合成と呼ばれる方法がある(特許文献1)。特許文献1に基づく方法は、音響信号を収録する地点の音響信号を複数地点に設置したマイクロフォン収音した上で、上下左右方向の音響信号の到来方向分析し、上映空間中に設置した複数のスピーカを用いて収録会場の音響信号を物理的に再現する。

想定する仮想音源に吸込み型音源(acoustic sink)を仮定し、第1種レイリー積分から導出される駆動信号をスピーカアレイに与えることにより、スピーカより前面に仮想音像を作り出すことができる技術がある(非特許文献1)。また、直線状スピーカアレイを用いて上映空間に生成する仮想的な音源にダイポールなどの原始的な指向性を実現できる技術がある(非特許文献2)。

スピーカから放射される音の指向性を制御する方法として、多重極音源がある(非特許文献3)。多重極音源は、音の指向性をダイポール、クアドラポールといった原始的な指向性の組み合わせで表現する手法であり、原始的な指向性それぞれは互いに近接した極性の異なる無指向性点音源モノポール音源)の組み合わせで実現される。非特許文献3は、指向性の向きを回転させるには、強度の異なる原始的な指向性を重ねあわせることを開示する。

概要

音響信号処理装置1は、複数の初期焦点座標と、仮想音源の座標および指向性の方向を取得して、複数の初期焦点座標のうち極性の異なる一対の初期焦点座標について、仮想音源の座標に基づいて、初期焦点座標に前記指向性の方向から特定される回転行列をかけて、焦点座標を決定する焦点位置決定部12と、円調和係数から、焦点座標を含む多重極子に与える重みを算出する円調和係数変換部13と、スピーカアレイの各スピーカについて、焦点座標と、焦点座標の極性と、多重極子に与える重みから、スピーカに与える重み付き駆動関数演算するフィルタ係数演算部14と、スピーカアレイの各スピーカについて、入力音響信号Iに、スピーカに対応する重み付き駆動関数を畳み込んで、スピーカへの出力音響信号Oを出力する畳み込み演算部15を備える。

目的

本発明の目的は、多重極子を重ね合わせて任意の指向特性を実現する音響信号処理装置、音響信号処理方法および音響信号処理プログラムを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

入力音響信号を、仮想音源を実現するための複数のスピーカを並べて構成したスピーカアレイの各スピーカへの出力音響信号に変換する音響信号処理装置であって、複数の初期焦点座標と、仮想音源の座標および指向性の方向を取得して、前記複数の初期焦点座標のうち極性の異なる一対の初期焦点座標について、前記仮想音源の座標に基づいて、前記初期焦点座標に前記指向性の方向から特定される回転行列をかけて、焦点座標を決定する焦点位置決定部と、円調和係数から、前記焦点座標を含む多重極子に与える重みを算出する円調和係数変換部と、前記スピーカアレイの各スピーカについて、前記焦点座標と、前記焦点座標の極性と、前記多重極子に与える重みから、前記スピーカに与える重み付き駆動関数演算するフィルタ係数演算部と、前記スピーカアレイの各スピーカについて、前記入音響信号に、前記スピーカに対応する重み付き駆動関数を畳み込んで、前記スピーカへの出力音響信号を出力する畳み込み演算部を備えることを特徴とする音響信号処理装置。

請求項2

前記円調和係数変換部は、式(1)により、多重極子に与える重みを算出することを特徴とする請求項1に記載の音響信号処理装置。

請求項3

前記フィルタ係数演算部は、前記焦点座標のそれぞれを用いて駆動関数を算出し、前記多重極子のそれぞれについて、前記多重極子を構成する各焦点座標の極性と駆動関数から算出した合成駆動関数と、前記多重極子に与える重みから、前記スピーカに与える重み付き駆動関数を演算することを特徴とする請求項1に記載の音響信号処理装置。

請求項4

前記フィルタ係数演算部は、前記多重極子に含まれる各焦点座標について、前記焦点座標の極性と駆動関数をかけた関数加算して、前記多重極子の前記合成駆動関数を算出することを特徴とする請求項3に記載の音響信号処理装置。

請求項5

前記フィルタ係数演算部は、前記多重極子のそれぞれについて算出した合成駆動関数に、前記多重極子に与える重みをかけて加算して、前記重み付き駆動関数を算出することを特徴とする請求項3に記載の音響信号処理装置。

請求項6

入力音響信号を、仮想音源を実現するための複数のスピーカを並べて構成したスピーカアレイの各スピーカへの出力音響信号に変換する音響信号処理方法であって、複数の初期焦点座標と、仮想音源の座標および指向性の方向を取得するステップと、前記複数の初期焦点座標のうち、前記複数の初期焦点座標のうち極性の異なる一対の初期焦点座標について、前記仮想音源の座標に基づいて、前記初期焦点座標に前記指向性の方向から特定される回転行列をかけて、焦点座標を決定するステップと、円調和係数から、前記焦点座標を含む多重極子に与える重みを算出するステップと、前記スピーカアレイの各スピーカについて、前記焦点座標と、前記焦点座標の極性と、前記多重極子に与える重みから、前記スピーカに与える重み付き駆動関数を演算するステップと、前記スピーカアレイの各スピーカについて、前記入力音響信号に、前記スピーカに対応する重み付き駆動関数を畳み込んで、前記スピーカへの出力音響信号を出力するステップを備えることを特徴とする音響信号処理方法。

請求項7

コンピュータに、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の音響信号処理装置として機能させるための音響信号処理プログラム

技術分野

0001

本発明は、入力音響信号を、仮想音源を実現するための複数のスピーカを並べて構成したスピーカアレイの各スピーカへの出力音響信号に変換する音響信号処理装置音響信号処理方法および音響信号処理プログラムに関する。

背景技術

0002

パブリックビューイングコンサートでは、上映会場に設置した複数のスピーカから音声音楽などを再生する。近年、仮想的な音源上映空間に作り出すことにより、これまで以上に臨場感のある音響再生を実現する取り組みが行われている。特に直線状に多数のスピーカを並べてできるスピーカアレイを用いて、スピーカより前面、客席近くまで飛び出る仮想音源を生成することで高い臨場感を実現するといったことが行なわれている。

0003

また、一般に、楽器や人間の声は方向によって放射されるパワーが異なるため、上映空間に仮想的な音源を生成する際に方向による音響信号のパワーの違い(指向性)を再現することで、さらに臨場感の高い音響コンテンツを実現することが期待されている。

0004

上映空間に仮想的な音源を作り出す音響再生技術に対し、波面合成と呼ばれる方法がある(特許文献1)。特許文献1に基づく方法は、音響信号を収録する地点の音響信号を複数地点に設置したマイクロフォン収音した上で、上下左右方向の音響信号の到来方向分析し、上映空間中に設置した複数のスピーカを用いて収録会場の音響信号を物理的に再現する。

0005

想定する仮想音源に吸込み型音源(acoustic sink)を仮定し、第1種レイリー積分から導出される駆動信号をスピーカアレイに与えることにより、スピーカより前面に仮想音像を作り出すことができる技術がある(非特許文献1)。また、直線状スピーカアレイを用いて上映空間に生成する仮想的な音源にダイポールなどの原始的な指向性を実現できる技術がある(非特許文献2)。

0006

スピーカから放射される音の指向性を制御する方法として、多重極音源がある(非特許文献3)。多重極音源は、音の指向性をダイポール、クアドラポールといった原始的な指向性の組み合わせで表現する手法であり、原始的な指向性それぞれは互いに近接した極性の異なる無指向性点音源モノポール音源)の組み合わせで実現される。非特許文献3は、指向性の向きを回転させるには、強度の異なる原始的な指向性を重ねあわせることを開示する。

0007

特開2011−244306号公報

先行技術

0008

Sascha Spors, Hagen Wierstorf, Matthias Gainer, and Jens Ahrens, ”Physical and Perceptual Properties of Focused Sources in Wave Field Synthesis,” in 127th Audio Engineering Society Convention paper 7914, 2009, October.
J. Ahrens, and S. Spors, “Implementation of Directional Sources in Wave Field Synthesis,” Proceeding ofIEEE Workshop on Applications of Signal Processing to Audio and Acoustics, pp. 66-69, 2007.
羽田陽一,古家賢一,島内末廣,“球調和関数展開に基づく多重極音源を用いた指向性合成”,日本音学会誌69巻 11号 pp577-588 2013.

発明が解決しようとする課題

0009

しかしながらいずれの文献も、多重極子を重ね合わせて任意の指向特性を実現する技術については触れられていないので、いずれの文献からも、多重極子を用いて、楽器などの音源が持つ指向性をモデル化することは難しい。

0010

従って本発明の目的は、多重極子を重ね合わせて任意の指向特性を実現する音響信号処理装置、音響信号処理方法および音響信号処理プログラムを提供することである。

課題を解決するための手段

0011

上記課題を解決するために、本発明の第1の特徴は、入力音響信号を、仮想音源を実現するための複数のスピーカを並べて構成したスピーカアレイの各スピーカへの出力音響信号に変換する音響信号処理装置に関する。本発明の第1の特徴に係る音響信号処理装置は、複数の初期焦点座標と、仮想音源の座標および指向性の方向を取得して、複数の初期焦点座標のうち極性の異なる一対の初期焦点座標について、仮想音源の座標に基づいて、初期焦点座標に指向性の方向から特定される回転行列をかけて、焦点座標を決定する焦点位置決定部と、円調和係数から、焦点座標を含む多重極子に与える重みを算出する円調和係数変換部と、スピーカアレイの各スピーカについて、焦点座標と、焦点座標の極性と、多重極子に与える重みから、スピーカに与える重み付き駆動関数演算するフィルタ係数演算部と、スピーカアレイの各スピーカについて、入力音響信号に、スピーカに対応する重み付き駆動関数を畳み込んで、スピーカへの出力音響信号を出力する畳み込み演算部を備える。

0012

ここで円調和係数変換部は、式(1)により、多重極子に与える重みを算出しても良い。

0013

0014

フィルタ係数演算部は、焦点座標のそれぞれを用いて駆動関数を算出し、多重極子のそれぞれについて、多重極子を構成する各焦点座標の極性と駆動関数から算出した合成駆動関数と、多重極子に与える重みから、スピーカに与える重み付き駆動関数を演算しても良い。

0015

フィルタ係数演算部は、多重極子に含まれる各焦点座標について、焦点座標の極性と駆動関数をかけた関数加算して、多重極子の合成駆動関数を算出しても良い。

0016

フィルタ係数演算部は、多重極子のそれぞれについて算出した合成駆動関数に、多重極子に与える重みをかけて加算して、重み付き駆動関数を算出しても良い。

0017

本発明の第2の特徴は、入力音響信号を、仮想音源を実現するための複数のスピーカを並べて構成したスピーカアレイの各スピーカへの出力音響信号に変換する音響信号処理方法に関する。本発明の第2の特徴に係る音響信号処理方法は、複数の初期焦点座標と、仮想音源の座標および指向性の方向を取得するステップと、複数の初期焦点座標のうち、複数の初期焦点座標のうち極性の異なる一対の初期焦点座標について、仮想音源の座標に基づいて、初期焦点座標に指向性の方向から特定される回転行列をかけて、焦点座標を決定するステップと、円調和係数から、焦点座標を含む多重極子に与える重みを算出するステップと、スピーカアレイの各スピーカについて、焦点座標と、焦点座標の極性と、多重極子に与える重みから、スピーカに与える重み付き駆動関数を演算するステップと、スピーカアレイの各スピーカについて、入力音響信号に、スピーカに対応する重み付き駆動関数を畳み込んで、スピーカへの出力音響信号を出力するステップを備える。

0018

本発明の第3の特徴は、コンピュータに、第1の特徴に記載の音響信号処理装置として機能させるための音響信号処理プログラムに関する。

発明の効果

0019

本発明によれば、多重極子を重ね合わせて任意の指向特性を実現する音響信号処理装置、音響信号処理方法および音響信号処理プログラムを提供することができる。

図面の簡単な説明

0020

本発明の実施の形態に係る音響信号処理装置のブロック図である。
本発明の実施の形態において多重極子を重ね合わせて実現される指向特性を説明する図である。
本発明の実施の形態に係る音響信号処理装置の焦点位置決定処理を説明するフローチャートである。
本発明の実施の形態に係る音響信号処理装置の焦点位置決定処理において、初期焦点座標を説明する図である。
本発明の実施の形態に係る音響信号処理装置の焦点位置決定処理においてもちいられる回転行列の一例を説明する図である。
本発明の実施の形態に係る音響信号処理装置の焦点位置決定処理において、指向性が考慮された焦点座標を説明する図である。
本発明の実施の形態に係る音響信号処理装置の円調和係数変換処理を説明するフローチャートである。
本発明の実施の形態に係る音響信号処理装置のフィルタ係数演算処理を説明するフローチャートである。
本発明の実施の形態に係る音響信号処理装置のフィルタ係数演算処理で算出される各関数の一例を説明する図である。
本発明の実施の形態に係る音響信号処理装置の畳み込み演算処理を説明するフローチャートである。

実施例

0021

次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。

0022

(音響信号処理装置)
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る音響信号処理装置1を説明する。音響信号処理装置1は、処理装置(図示せず)、メモリ10などを備える一般的なコンピュータである。一般的なコンピュータが音響信号処理プログラムを実行することにより図1に示す機能を実現する。

0023

本発明の実施の形態に係る音響信号処理装置1は、図2に示すような、複数のスピーカを直線状に並べた直線状スピーカアレイを用いて、多重極子に重みをかけることにより、スピーカよりも前面に飛び出し、かつ、指向性を有する仮想音源を実現する。本発明の実施の形態において、スピーカアレイを構成する各スピーカは、直線状に並ぶ場合を説明するが、これに限られない。スピーカアレイは、複数のスピーカで構成されればよく、複数のスピーカが直線状に並ばなくても良い。

0024

本発明の実施の形態においては、仮想音源を実現するために、互いに近接する位置に極性の異なる2以上の焦点音源を生成することで、多重極音源を実現する。焦点音源は、極性の異なる無指向性の点音源(モノポール音源)の組み合わせである。本発明の実施の形態において焦点音源は、2つの多重極子を備え、一つの多重極子は、1つのモノポール音源で構成され、もう一方の多重極子は、極性の異なる2つのモノポール音源で構成される場合を説明するが、これに限られない。

0025

本発明の実施の形態では、図2(a)に示す多重極子M1と多重極子M2を重ねて、図2(b)に示す指向特性を実現する。多重極子M1は、プラス極性を持つ焦点P1を有し、多重極子M2は、マイナス極性を持つ焦点P2と、プラス極性を持つ焦点P3を有する。本発明の実施の形態は、多重極子M1および多重極子M2にそれぞれ重みをかけて重ね合わせることにより、図2(b)に示す多重極音源の指向特性を実現する。図2(b)に示すように、様々な指向特性を持つ多重極子を重ね合わせることで、所望の範囲で所望の指向特性を実現することが可能になる。

0026

音響信号処理装置1は、このような仮想音源を実現するために、入力音響信号Iを、直線状スピーカアレイの各スピーカへの出力音響信号Oに変換する。

0027

図1に示すように音響信号処理装置1は、メモリ10、焦点位置決定部12、円調和係数変換部13、フィルタ係数演算部14、畳み込み演算部15、入出力インタフェース(図示せず)等を備える。入出力インタフェースは、入力音響信号を音響信号処理装置1に入力し、各スピーカへの出力音響信号を出力するためのインタフェースである。入出力インタフェースは、音響信号処理装置1が実現する仮想音源の座標および指向性の方向の各情報、さらに円調和係数を、音響信号処理装置1に入力する。

0028

メモリ10は、焦点データ11を記憶する。焦点データ11は、仮想音源を実現するための複数の焦点の座標と、各焦点の極性を対応づける。本発明の実施の形態において、焦点データ11に記憶される焦点を、初期焦点と称し、初期焦点の座標を初期焦点座標と称する。

0029

焦点位置決定部12は、仮想音源の位置、指向性の方向の情報、および対象周波数の各情報を受け取り、指向性を考慮した、必要な数の焦点に関する座標を出力する。焦点位置決定部12は、複数の初期焦点座標と、仮想音源の座標および指向性の方向を取得して、複数の初期焦点座標のうち極性の異なる一対の初期焦点座標について、仮想音源の座標に基づいて、初期焦点座標に指向性の方向から特定される回転行列をかけて、焦点座標を決定する。焦点位置決定部12は、仮想音源の座標に対する初期焦点座標の相対座標に回転行列をかけ、回転行列をかけて得られた座標に、仮想音源の座標を加算して、指向性を考慮した焦点座標を決定する。なお、仮想音源は、焦点座標の中心となる。

0030

焦点位置決定部12は、複数の初期焦点座標のうち、対をなさない初期焦点座標について、何ら変換することなく、初期焦点座標を焦点座標として決定する。図2に示す例において、プラス極性の焦点を有する多重極子M1について、焦点位置決定部12は、プラス極性の初期焦点座標を焦点座標として出力する。プラス極性の焦点とマイナス極性の焦点を有する多重極子M2について、焦点位置決定部12は、これらの初期焦点座標に回転をかけた座標を、焦点座標として出力する。

0031

焦点位置決定部12は、メモリ10から、極性の異なる一対以上の初期焦点座標を取得するとともに、音響信号処理装置1が実現する特性として、外部入力等により、仮想音源の座標および指向性の方向を取得する。焦点位置決定部12は、取得した指向性の方向から、初期焦点座標に対してかける回転方向θを特定する。

0032

焦点位置決定部12は、一対の初期焦点座標を、



とした場合、X軸方向に対してθ方向を指定すると、この方向から特定できる回転行列Gは、式(1)で求まるため、回転後のモノポールの座標は、式(2)で決定できる。

0033

0034

焦点位置決定部12は、メモリから読み出した所望の特性に対応する1対以上の初期焦点座標に対し、指向性の方向から特定できる回転行列を座標毎にかけた上で、仮想音源の座標を座標毎に加算することで、全ての焦点座標を計算する。

0035

焦点位置決定部12は、多重極子の識別子と、この多重極子を構成する焦点座標と、各焦点座標の極性とを対応づけて出力する。

0036

なお、クアドラポールなど、2より多数のモノポール音源からなる多重極音源についても、回転行列で回転させて新たな座標を算出することで指向性の回転に対応したモノポール音源の座標を計算する。

0037

図3を参照して、本発明の実施の形態に係る焦点位置決定部12による焦点位置決定処理を説明する。焦点位置決定部12は、極性の異なる一対以上の初期焦点座標について図3の処理を行い、それ以外の初期焦点座標については、初期焦点座標を焦点座標として出力する。

0038

まずステップS11において焦点位置決定部12は、仮想音源の座標と指向性の方向の情報を取得し、ステップS12において、メモリから所望の特定に対応する1以上の初期焦点の情報を読み出す。

0039

次に、ステップS12で読み出した各初期焦点について、焦点位置決定部12は、ステップS13およびステップS14の処理を繰り返す。ステップS13において焦点位置決定部12は、処理対象の対象焦点座標に、ステップS11で取得した指向性の方向から特定される回転行列をかける。ここで用いられる対象焦点座標は、仮想音源に対する相対座標である。ステップS14において焦点位置決定部12は、仮想音源の座標に、ステップS13により回転行列をかけた後の座標を加算して、指向性を考慮した焦点座標を決定する。

0040

ステップS12で読み出した各初期焦点について、ステップS13およびステップS14の処理が終了すると、焦点位置決定部12は処理を終了する。

0041

なお、ステップS13ないしステップS14の処理は、各焦点に対して行われればよく、どのような順序で行われても良い。

0042

図4ないし図6を参照して、焦点位置決定部12の処理のシミュレーション結果を説明する。図4は、直線状スピーカアレイと、初期焦点を示す。直線状スピーカアレイは、(−2,0)から、(2,0)に配設され、一対の初期焦点座標は、(0,1−0.0345)および(0,1+0.0345)である。このとき、仮想音源の座標は、(0,1)である。この際の音場は、図4に示すように、左右対称に形成され、指向性がない。

0043

焦点位置決定部12は、このような初期焦点座標に対して、式(1)で特定される回転行列かける。図5に示すように、初期焦点座標(1,1.0345)の仮想音源座標(0.0,1.0)に対する相対座標は、(0.0,0.0345)となる。焦点位置決定部12は、初期焦点座標の仮想音源座標に対する相対座標に対して、回転行列をかけ、仮想音源座標を加算することにより、回転後の座標(0.0172,1.0299)を得る。もう一方の初期焦点座標(0,1−0.0345)に対しても同様に処理することにより、焦点位置決定部12は、回転後の座標(−0.0172,0.9701)を得る。

0044

図6は、図5の計算によって得られた回転後の座標における音場を示す。各モノポール座標は、図4と比べて時計回りに回転され、指向性が実現されている。

0045

焦点位置決定部12によって、各初期焦点について、指向性を考慮した焦点座標が算出されると、フィルタ係数演算部14により、処理される。

0046

円調和係数変換部13は、円調和係数から、焦点座標を含む多重極子に与える重みを算出する。

0047

円調和係数変換部13は、円調和級数解析的に変換することで各焦点音源に与える重みを決定し、現実に存在する音源が持つ指向特性を有する仮想音像の生成を実現する。円調和係数変換部13は、焦点位置決定部12が出力した各焦点座標を含む各多重極子に与える重みを、算出する。

0048

円調和係数変換部13は、式(3)により、多重極子に与える重みを算出する。

0049

0050

式(3)におけるm,nは、それぞれ、x軸方向およびy軸方向に関する音場の偏微分次数であるが、mとnの組み合わせは重複しないので、単なるインデックスとして扱っても良い。

0051

円調和係数変換部13は、円調和係数を、適宜取得する。例えば、円調和係数を、外部プログラムから受け取るものでも良いし、指向性を測定する対象となる音源を中心とする円上に配置された複数のマイクロフォンで観測して得られたものでも良い。また円調和係数は、別途設けられたメモリに事前に格納され、必要に応じて円調和係数変換部13によって読み出されても良い。

0052

ここで、円調和係数から多重極子の重みを出力するための式(3)の導出を説明する。まず、xy平面上の原点に、任意の指向性を持つ音源を仮定し、この音源が生成する音場をS(x)とする。この音場を原点でテイラー展開した時、単位円上の点x=(cosα,sinα)における音場は次式で与えられる。

0053

0054

一方、任意の音場は円調和展開により式(5)で表現できる。

0055

0056

複素正弦波についてオイラー公式を適用した後、νに関する二項展開を行うことで次式のように変形する。

0057

0058

さらに、式(4)と式(6)の係数を比較することにより、重み係数を、式(3)の通りに算出することができる。

0059

図7を参照して、円調和係数変換部13による円調和係数変換処理を説明する。

0060

円調和係数変換部13は、焦点位置決定部12が出力した各多重極子について、ステップS21の処理を行う。ステップS21において円調和係数変換部13は、式(3)に従って、円調和係数から多重極子の重みを算出する。

0061

フィルタ係数演算部14は、スピーカアレイの各スピーカについて、焦点座標と、焦点座標の極性と、多重極子に与える重みから、スピーカに与える重み付き駆動関数を演算する。フィルタ係数演算部14は、直線状スピーカアレイの各スピーカについて、焦点位置決定部12により決定された焦点座標のそれぞれから、入力音響信号Iに畳み込む重み付き駆動関数を算出する。フィルタ係数演算部14は、焦点座標のそれぞれを用いて駆動関数を算出し、多重極子のそれぞれについて、多重極子を構成する各焦点座標の極性と駆動関数から算出した合成駆動関数と、多重極子に与える重みから、スピーカに与える重み付き駆動関数を演算する。ここでフィルタ係数演算部14は、多重極子に含まれる各焦点座標について、焦点座標の極性と駆動関数をかけた関数を加算して、多重極子の合成駆動関数を算出する。またフィルタ係数演算部14は、多重極子のそれぞれについて算出した合成駆動関数に、多重極子に与える重みをかけて加算して、重み付き駆動関数を算出する。

0062

フィルタ係数演算部14は、まず、所定のスピーカについて重み付き駆動関数を算出する際、各焦点について、式(7)により駆動関数を算出する。

0063

0064

次に、フィルタ係数演算部14は、所定の多重極子について、この多重極子に属する焦点音源の極性と、式(7)で算出された各焦点の駆動関数から、式(8)による合成駆動関数を算出する。

0065

0066

フィルタ係数演算部14は、多重極子のそれぞれについて、式(8)で算出した合成駆動関数に、円調和係数変換部13で算出した重みをかけて、式(9)により、重み付き駆動関数を算出する。

0067

0068

次に図8を参照して、フィルタ係数演算部14によるフィルタ係数演算処理を説明する。ここで、図2に示す多重極子および焦点が与えられた場合の計算式について、図9を参照して説明する。

0069

まずステップS31において、フィルタ係数演算部14は、焦点位置決定処理で決定された各焦点座標を取得する。このときフィルタ係数演算部14は、各焦点の極性と、多重極子を構成する焦点座標の関係を、併せて取得する。

0070

フィルタ係数演算部14は、ステップS32からステップS37の処理を繰り返して、各スピーカに対する重み付き駆動関数を算出する。ステップS32においてフィルタ係数演算部14は、対象スピーカの重み付き駆動関数をゼロで初期化する。

0071

フィルタ係数演算部14は、各焦点について、ステップS33の処理を繰り返す。ステップS33においてフィルタ係数演算部14は、対象焦点の座標を用いて駆動関数を算出する。図9に示す例において、フィルタ係数演算部14は、式E11ないしE13を、各焦点の駆動関数を算出する。

0072

フィルタ係数演算部14は、各多重極子について、ステップS34ないしステップS36の処理を繰り返して、各多重極子の合成駆動関数を算出する。ステップS34においてフィルタ係数演算部14は、処理対象の多重極子の合成駆動関数を初期化する。

0073

フィルタ係数演算部14は、処理対象の多重極子に含まれる各焦点について、ステップS35の処理を行う。ステップS35においてフィルタ係数演算部は、対象焦点の極性を用いて、ステップS33で算出した対象焦点の駆動関数を、合成駆動関数に加算する。図9に示す例において、フィルタ係数演算部14は、多重極子M1について、式E21を算出し、多重極子M2について、式E22を算出する。

0074

ステップS36においてフィルタ係数演算部14は、ステップS35で算出された合成駆動関数に、円調和係数変換部13で算出された重みをかけて、重み付き駆動関数を算出する。図9に示す例において、フィルタ係数演算部14は、多重極子M1について算出した式E21に、多重極子M1の重みをかけた関数と、多重極子M2について算出した式E22に、多重極子M2の重みをかけた関数と加算して、式E31の重み付き駆動関数を算出する。

0075

ステップS37においてフィルタ係数演算部14は、各多重極子について計算した後に得られた重み付き駆動関数を、対象スピーカに与える重み付き駆動関数として出力する。

0076

フィルタ係数演算部14により、直線状スピーカアレイの各スピーカに対する重み付き駆動関数が算出されると、畳み込み演算部15が、入力音響信号Iに、重み付き駆動関数を畳み込むことにより、各スピーカに与える出力音響信号Oを算出する。

0077

畳み込み演算部15は、直線状スピーカアレイの各スピーカについて、入力音響信号Iに、スピーカに対応する重み付き駆動関数を畳み込んで、スピーカへの出力音響信号Oを出力する。畳み込み演算部15は、所定のスピーカについて、このスピーカに対応する重み付き駆動関数を、入力音響信号Iに畳み込むことにより、このスピーカに対する出力音響信号Oを得る。畳み込み演算部15は、各スピーカについて同様の処理を繰り返し、各スピーカに対する出力音響信号Oを得る。

0078

図10を参照して、畳み込み演算部15による畳み込み演算処理を説明する。

0079

畳み込み演算部15は、ステップS41およびステップS42の処理を、直線状スピーカアレイの各スピーカに対して繰り返す。ステップS41において畳み込み演算部15は、フィルタ係数演算部14から、処理対象の対象スピーカの重み付き駆動関数を取得する。ステップS42において入力音響信号Iに、ステップS31で取得した重み付き駆動関数を畳み込み、出力音響信号Oを取得する。

0080

各スピーカについてステップS41ないしステップS42の処理が終了すると、畳み込み演算部15は、処理を終了する。なお、ステップS41ないしステップS42の処理は、各スピーカに対して行われればよく、どのような順序で行われても良い。

0081

本発明の実施の形態に係る音響信号処理装置1は、予め、初期焦点座標に回転をかけて、所望の指向性を実現する焦点座標を算出して、各焦点座標に対して、各スピーカに対応する重み付き駆動関数を算出する。音響信号処理装置1は、入力音響信号Iに対して、各スピーカに対応する重み付き駆動関数を畳み込むことにより、各スピーカへの出力音響信号Oを得る。この重み付き駆動関数は、各多重極子毎に、円調和係数から変換された重みが与えられているので、円調和係数を適宜設定することにより、各スピーカへの出力音響信号Oを、任意に調節することが可能になる。このように本発明の実施の形態に係る音響信号処理装置1は、楽器などの音源が持つ指向性をモデル化し、多重極子を重ね合わせて任意の指向特性を実現することができる。

0082

(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなる。

0083

本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。

0084

1音響信号処理装置
10メモリ
11焦点データ
12焦点位置決定部
13 円調和係数変換部
14フィルタ係数演算部
15畳み込み演算部
I入力音響信号
O 出力音響信号

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