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技術 熱電変換材料、熱電変換モジュールおよび熱電変換材料の製造方法

出願人 日立金属株式会社
発明者 島田武司王楠松田三智子
出願日 2019年1月15日 (2年2ヶ月経過) 出願番号 2019-565129
公開日 2021年2月4日 (1ヶ月経過) 公開番号 WO2019-139168
状態 未査定
技術分野 金属質粉又はその懸濁液の製造 連続鋳造 熱電素子 粉末冶金
主要キーワード 断面SEM写真 ダイヤモンドコート 密閉作業 熱電対間 電圧引き 単位経路 キープ温度 耐熱性容器内
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (20)

課題・解決手段

無次元性能指数ZTが高い熱電変換材料熱電変換モジュールおよび熱電変換材料の製造方法を提供する。本発明に係る熱電変換材料(1)は、Yb、CoおよびSbを含んでなるスクテルイト型の結晶構造を有する多数の多結晶体粒(11)と、隣り合う前記多結晶体粒(11)の間に存在し、Ybに対するOの原子比が0.4を超え1.5未満の結晶(13)を有する粒間層(12)と、を有することとしている。本発明に係る熱電変換材料の製造方法は、量工程(S1)と、混合工程(S2)と、前記素原料溶湯液体急冷凝固法により急冷凝固してリボンを作製するリボン作製工程(S3)と、酸素濃度を調節した不活性雰囲気中で熱処理する第1熱処理工程(S4)と、還元雰囲気中で熱処理する第2熱処理工程(S5)と、不活性雰囲気中で加圧焼結して前記熱電変換材料(1)を製造する加圧焼結工程(S6)と、を含む。

概要

背景

現在、火力発電所などの大型発電ステム鉄鋼関連炉、ごみ焼却場、化石燃料エンジン走行する自動車などから膨大な量の熱エネルギーが排出されている。排出される熱エネルギーの一部は給湯暖房熱源などとして利用されているが、殆どが利用されずに捨てられている。利用されずに捨てられている排熱エネルギーは、未利用排熱エネルギーなどと呼称されている。未利用排熱エネルギーを効率的に利用・回収等できれば、社会システム全体のエネルギー消費の低減に繋がり、エネルギー問題地球温暖化などの環境問題の解決に大きく貢献できる。

熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電発電システムは、未利用排熱エネルギーの再資源化という意味で注目されてきた。熱電発電システムは、電子キャリアとして持つn型の熱電変換材料と、ホール正孔)をキャリアとして持つp型の熱電変換材料とを、導電材を介して接続した素子を複数有する熱電変換モジュールを用いた発電システムである。熱電変換モジュールの一方と他方との間に温度勾配が生じると、n型の熱電変換材料では高温領域の電子が活性化され(運動エネルギーが増え)、低温度領域へ電子が伝導して熱起電力が発生し、高温側が高電位になる。一方、p型の熱電変換材料では高温領域の正孔が活性化され、低温領域に正孔が移動して熱起電力を発生し、低温側が高電位となる。n型の熱電変換材料とp型の熱電変換材料とを導電材を介して接続すると、これらの間に電流が流れ(ゼーベック効果と呼ばれている)、一種電池のようにふるまう。熱電発電システムはこのようにして得た電気エネルギーを供給するものである。

つまり、熱電変換モジュールに用いられる熱電変換材料は、固体による直接エネルギー交換を行うものであり、炭酸ガスの排出がなく、フルオロカーボンガスなどの冷媒を用いて冷却する必要もない。したがって、環境と共生するエネルギー技術として、近年、その価値が見直されている。

熱電変換材料に関する技術が、例えば、非特許文献1〜3や特許文献1に掲載されている。
非特許文献1には、BaxRyCo4Sb12(R=La、Ce、およびSr)の多結晶二成分充填スクッテルダイトの低温輸送特性報告されている。
非特許文献2には、複数の共充填材Ba、La、およびYbを有するスクテルイトCoSb3が合成され、850Kで非常に高い熱電性能指数無次元性能指数)ZT=1.7が実現されたと報告されている。
非特許文献3には、高性能n型YbxCo4Sb12(x=0.2〜0.6)充填スクッテルダイトについて研究したところ、Yb0.3Co4Sb12の850Kでの最大ZTは1.5であったと報告されている。なお、非特許文献3には、前記生成物を得るため、750℃で168h(7日間)ものアニーリングを行った旨の記載がある。また、非特許文献3には、アニーリング後粉末X線回折分析(Powder X-ray diffraction;XRD)を行った結果、Yb2O3やYbSb2が生成されていた旨の記載がある。

また、特許文献1には、希土類金属R(ただし、RはLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Ybのうちの少なくとも1種)、遷移金属T(ただし、TはFe、Co、Ni、Os、Ru、Pd、Pt、Agのうちの少なくとも1種)、金属アンチモン(Sb)からなる合金原料を溶解し、その溶湯ストリップキャスト法により急冷凝固することを特徴とするフィルドスクッテルダイト系合金の製造方法が記載されている。
この特許文献1には、ほぼ均一なフィルド充填)スクッテルダイト系合金が、ストリップキャスト法を用いた鋳造法により大量に簡便に生産できる、と記載されている。また、この特許文献1には、製造されたフィルドスクッテルダイト系合金は、粉砕および焼結の工程を省略してそのまま熱電変換素子に用いることができるために、熱電変換素子の生産コストが大幅に低減できる、と記載されている。

概要

無次元性能指数ZTが高い熱電変換材料、熱電変換モジュールおよび熱電変換材料の製造方法を提供する。本発明に係る熱電変換材料(1)は、Yb、CoおよびSbを含んでなるスクッテルダイト型の結晶構造を有する多数の多結晶体粒(11)と、隣り合う前記多結晶体粒(11)の間に存在し、Ybに対するOの原子比が0.4を超え1.5未満の結晶(13)を有する粒間層(12)と、を有することとしている。本発明に係る熱電変換材料の製造方法は、量工程(S1)と、混合工程(S2)と、前記素原料の溶湯を液体急冷凝固法により急冷凝固してリボンを作製するリボン作製工程(S3)と、酸素濃度を調節した不活性雰囲気中で熱処理する第1熱処理工程(S4)と、還元雰囲気中で熱処理する第2熱処理工程(S5)と、不活性雰囲気中で加圧焼結して前記熱電変換材料(1)を製造する加圧焼結工程(S6)と、を含む。

目的

本発明は前記状況に鑑みてなされたものであり、無次元性能指数ZTが高く、かつ信頼性も高い熱電変換材料、熱電変換モジュールおよび熱電変換材料の製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

Yb、CoおよびSbを含んでなるスクテルイト型の結晶構造を有する多数の多結晶体粒と、隣り合う前記多結晶体粒の間に存在し、Ybに対するOの原子比が0.4を超え1.5未満の結晶を有する粒間層と、を有することを特徴とする熱電変換材料

請求項2

前記Yb、CoおよびSbを含んでなるスクッテルダイト型の結晶構造が、組成式YbxCo4Sb12(ただし、xは0を超え0.3以下)であることを特徴とする請求項1に記載の熱電変換材料。

請求項3

酸素濃度が1200容積ppm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱電変換材料。

請求項4

前記粒間層の厚みが5nm以上1μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱電変換材料。

請求項5

熱伝導率および電気伝導率のうちの少なくとも一方が異方性を有していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の熱電変換材料。

請求項6

請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の熱電変換材料と、スクッテルダイト型の結晶構造を有し、前記熱電変換材料とは逆相の熱電変換材料とを、導電材を介して接続した素子を複数有することを特徴とする熱電変換モジュール

請求項7

Ybを含む素原料、Coを含む素原料およびSbを含む素原料をそれぞれ量する秤量工程と、前記素原料を溶解して混合する混合工程と、前記素原料の溶湯液体急冷凝固法により急冷凝固してリボンを作製するリボン作製工程と、作製した前記リボンに対して、酸素濃度を調節した不活性雰囲気中で熱処理を行う工程と、粉砕する工程と、を有し、多結晶体粒を得る第1熱処理工程と、前記第1熱処理工程で熱処理した多結晶体粒を還元雰囲気中で熱処理する第2熱処理工程と、前記第2熱処理工程で熱処理した多結晶体粒を不活性雰囲気中で加圧焼結して熱電変換材料を製造する加圧焼結工程と、を含むことを特徴とする熱電変換材料の製造方法。

請求項8

前記加圧焼結工程は、還元雰囲気中で前記多結晶体粒を熱処理した後、アルゴンガス置換した雰囲気中で加圧焼結することを特徴とする請求項7に記載の熱電変換材料の製造方法。

請求項9

前記加圧焼結工程における熱処理温度が600℃以上800℃以下であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の熱電変換材料の製造方法。

請求項10

前記第1熱処理工程における前記酸素濃度が10容積ppm以下であることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の熱電変換材料の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、熱電変換材料熱電変換モジュールおよび熱電変換材料の製造方法に関する。

背景技術

0002

現在、火力発電所などの大型発電ステム鉄鋼関連炉、ごみ焼却場、化石燃料エンジン走行する自動車などから膨大な量の熱エネルギーが排出されている。排出される熱エネルギーの一部は給湯暖房熱源などとして利用されているが、殆どが利用されずに捨てられている。利用されずに捨てられている排熱エネルギーは、未利用排熱エネルギーなどと呼称されている。未利用排熱エネルギーを効率的に利用・回収等できれば、社会システム全体のエネルギー消費の低減に繋がり、エネルギー問題地球温暖化などの環境問題の解決に大きく貢献できる。

0003

熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電発電システムは、未利用排熱エネルギーの再資源化という意味で注目されてきた。熱電発電システムは、電子キャリアとして持つn型の熱電変換材料と、ホール正孔)をキャリアとして持つp型の熱電変換材料とを、導電材を介して接続した素子を複数有する熱電変換モジュールを用いた発電システムである。熱電変換モジュールの一方と他方との間に温度勾配が生じると、n型の熱電変換材料では高温領域の電子が活性化され(運動エネルギーが増え)、低温度領域へ電子が伝導して熱起電力が発生し、高温側が高電位になる。一方、p型の熱電変換材料では高温領域の正孔が活性化され、低温領域に正孔が移動して熱起電力を発生し、低温側が高電位となる。n型の熱電変換材料とp型の熱電変換材料とを導電材を介して接続すると、これらの間に電流が流れ(ゼーベック効果と呼ばれている)、一種電池のようにふるまう。熱電発電システムはこのようにして得た電気エネルギーを供給するものである。

0004

つまり、熱電変換モジュールに用いられる熱電変換材料は、固体による直接エネルギー交換を行うものであり、炭酸ガスの排出がなく、フルオロカーボンガスなどの冷媒を用いて冷却する必要もない。したがって、環境と共生するエネルギー技術として、近年、その価値が見直されている。

0005

熱電変換材料に関する技術が、例えば、非特許文献1〜3や特許文献1に掲載されている。
非特許文献1には、BaxRyCo4Sb12(R=La、Ce、およびSr)の多結晶二成分充填スクッテルダイトの低温輸送特性報告されている。
非特許文献2には、複数の共充填材Ba、La、およびYbを有するスクテルイトCoSb3が合成され、850Kで非常に高い熱電性能指数無次元性能指数)ZT=1.7が実現されたと報告されている。
非特許文献3には、高性能n型YbxCo4Sb12(x=0.2〜0.6)充填スクッテルダイトについて研究したところ、Yb0.3Co4Sb12の850Kでの最大ZTは1.5であったと報告されている。なお、非特許文献3には、前記生成物を得るため、750℃で168h(7日間)ものアニーリングを行った旨の記載がある。また、非特許文献3には、アニーリング後粉末X線回折分析(Powder X-ray diffraction;XRD)を行った結果、Yb2O3やYbSb2が生成されていた旨の記載がある。

0006

また、特許文献1には、希土類金属R(ただし、RはLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Ybのうちの少なくとも1種)、遷移金属T(ただし、TはFe、Co、Ni、Os、Ru、Pd、Pt、Agのうちの少なくとも1種)、金属アンチモン(Sb)からなる合金原料を溶解し、その溶湯ストリップキャスト法により急冷凝固することを特徴とするフィルドスクッテルダイト系合金の製造方法が記載されている。
この特許文献1には、ほぼ均一なフィルド充填)スクッテルダイト系合金が、ストリップキャスト法を用いた鋳造法により大量に簡便に生産できる、と記載されている。また、この特許文献1には、製造されたフィルドスクッテルダイト系合金は、粉砕および焼結の工程を省略してそのまま熱電変換素子に用いることができるために、熱電変換素子の生産コストが大幅に低減できる、と記載されている。

0007

特開2004−76046号公報

先行技術

0008

J. Yang, et al., “Dual-frequency resonant phonon scatteringin BaxRyCo4Sb12(R=La, Ce and Sr)”, Applied Physics Letters 90, 192111, (2007)
Xun Shi, et al., “Multiple-filled Skutterudites: High Thermoelectric Figure of Merit through Separately Optimizing Electrical and Thermal Transports”, J. Am. Chem. Soc., 133 (2011), p7837-7846
Shanyu Wang, et al., “High-performance n-type YbxCo4Sb12: from partially filled skutterudite towardscomposite thermoelectrics”, NPGAsia Materials (2016) 8, e285, p1-11

発明が解決しようとする課題

0009

熱電変換材料の性能は、無次元性能指数ZTと呼ばれる量で評価されており、ZTが1よりも大きいことが実用化の目安とされている。なお、ZT≒1の熱電変換材料では理論発電効率は約9%であると言われている。

0010

ZT=S2σT/κ…(1)
ここで、前記式(1)において、S:ゼーベック係数、σ:電気伝導率、κ:熱伝導率、T:絶対温度である。

0011

前記式(1)に示されているように、性能の良い、すなわち、高効率の熱電変換材料とは、電気伝導率σおよびゼーベック係数Sが大きく、熱伝導率κが小さい材料である。しかし、一般的に、熱電変換材料は、電気伝導率σが高い材料ほど熱伝導率κが高く、電気伝導率σが低い材料ほど熱伝導率κが低くなる相関関係があるため、無次元性能指数ZTを高くするのは困難なことである。

0012

非特許文献1に記載のBaのみを充填した熱電変換材料には、電気伝導率σが低く、熱伝導率κが高いため、無次元性能指数ZTが低いという問題がある。また、非特許文献1、2および特許文献1のようにして仮に高いZTが得られたとしても、BaやLa、Srのような活性な材料を導入することは信頼性を著しく低下させる問題も生じる。なお、非特許文献3に記載の生成物を得るには、前記したように長時間のアニーリングが必要であり、量産には向かない。

0013

本発明は前記状況に鑑みてなされたものであり、無次元性能指数ZTが高く、かつ信頼性も高い熱電変換材料、熱電変換モジュールおよび熱電変換材料の製造方法を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0014

本発明の課題は以下の手段によって達成される。
本発明に係る熱電変換材料は、Yb、CoおよびSbを含んでなるスクッテルダイト型の結晶構造を有する多数の多結晶体粒と、隣り合う前記多結晶体粒の間に存在し、Ybに対するOの原子比が0.4を超え1.5未満の結晶を有する粒間層と、を有するものとしている。

0015

本発明に係る熱電変換モジュールは、前記した本発明に係る熱電変換材料と、スクッテルダイト型の結晶構造を有し、前記熱電変換材料とは逆相の熱電変換材料とを、導電材を介して接続した素子を複数有する。

0016

本発明に係る熱電変換材料の製造方法は、Ybを含む素原料、Coを含む素原料およびSbを含む素原料をそれぞれ量する秤量工程と、前記素原料を溶解して混合する混合工程と、前記素原料の溶湯を液体急冷凝固法により急冷凝固してリボンを作製するリボン作製工程と、作製した前記リボンに対して、酸素濃度を調節した不活性雰囲気中で熱処理を行う工程と、粉砕する工程と、を有し、多結晶体粒とする第1熱処理工程と、前記第1熱処理工程で熱処理した多結晶体粒を還元雰囲気中で熱処理する第2熱処理工程と、前記第2熱処理工程で熱処理した多結晶体粒を不活性雰囲気中で加圧焼結して熱電変換材料を製造する加圧焼結工程と、を含むこととしている。

発明の効果

0017

本発明によれば、無次元性能指数ZTが高く、かつ信頼性も高い熱電変換材料、熱電変換モジュールおよび熱電変換材料の製造方法を提供できる。

図面の簡単な説明

0018

本実施形態に係る熱電変換材料の組織を模式的に図示した模式図である。
図1AのB部拡大図である。
本実施形態に係る熱電変換材料の電気抵抗マッピングした観察図観察範囲20μm×20μm)である。
加圧焼結前処理の雰囲気について何ら処理しない、従来例に係る熱電変換材料の一例の電気抵抗をマッピングした観察図(観察範囲20μm×20μm)である。
本実施形態に係る熱電変換モジュールの構成を示す斜視図である。図4は、上部基板を取り付ける前の状態を示している。
本実施形態に係る熱電変換モジュールの構成を示す斜視図である。図5は、上部基板を取り付けた後の状態を示している。
本実施形態に係る熱電変換材料の製造方法の内容を示すフローチャートである。
実施例であるNo.10に係るサンプルのEPMA像である。同図中、(a)は、EPMA像であり、(b)〜(e)はそれぞれ、Yb、Co、Sb、Oについて行った元素マッピングの結果を示す図である。(a)〜(e)の下方にあるそれぞれのスケールバーは50μmを示している。
実施例であるNo.16に係るサンプルのEPMA像である。同図中、(a)は、EPMA像であり、(b)〜(e)はそれぞれ、Yb、Co、Sb、Oについて行った元素マッピングの結果を示す図である。(a)〜(e)の下方にあるそれぞれのスケールバーは50μmを示している。
比較例であるNo.3に係るサンプルのEPMA像である。同図中、(a)は、EPMA像であり、(b)〜(e)はそれぞれ、Yb、Co、Sb、Oについて行った元素マッピングの結果を示す図である。(a)〜(e)の下方にあるそれぞれのスケールバーは50μmを示している。
実施例であるNo.10に係るサンプルの透過型電子顕微鏡TEM写真と元素マッピングの結果とを示す図である。同図中、(a)は、No.10に係るサンプルのTEM写真であり、(b)〜(e)はそれぞれ、Co、Sb、Yb、Oについて行った元素マッピングの結果を示す図である。(b)〜(e)の下方にあるそれぞれのスケールバーは20.00nmを示している。
実施例であるNo.29に係るサンプルのTEM写真と、同図中、点線の丸で囲った箇所の電子線回折パターンとを示す図である。同図中の右下にあるスケールバーは20nmを示している。
図11Aの位置1〜5のEDX分析値(at%)を示す表である。
比較例であるNo.7に係るサンプルのTEM写真と、同図中、点線の丸で囲った箇所の電子線回折パターンとを示す図である。同図中の右下にあるスケールバーは20nmを示している。
比較例であるNo.7に係るサンプルのTEM写真と、同図中、点線の丸で囲った箇所の電子線回折パターンとを示す図である。同図中の右下にあるスケールバーは20nmを示している。
図12A図12Bの位置1〜4のEDX分析値(at%)を示す表である。
実施例であるNo.10に係るサンプルのTEM写真と電子線回折パターンを示す図である。同図中、(a)は、TEM写真である。(b)は、(a)中の位置1の部分(多結晶体粒)に係る電子線回折パターンである。(c)は、(a)中の位置2の部分(粒間層)に係る電子線回折パターンである。(d)は、(a)中の位置3の部分(粒間層の界面−a)に係る電子線回折パターンである。(e)は、(a)中の位置3の部分(粒間層の界面−b)に係る電子線回折パターンである。(a)の右下にあるスケールバーは100nmを示している。
(a)〜(c)は、電子線回折パターンとシミュレーションからの同定結果を示す図である。
比較例であるNo.7に係るサンプルの高抵抗部分のSEM写真である。同図中の右下にあるスケールバーは10μmを示している。
図15Aに示すライン分析位置について行った高感度ライン分析の結果を示すグラフである。
比較例であるNo.7に係るサンプルの多結晶体粒の境界線付近断面SEM写真である。同図中の右下にあるスケールバーは10μmを示している。

0019

次に、適宜図面を参照して本発明に係る熱電変換材料、熱電変換モジュールおよび熱電変換材料の製造方法の一実施形態について詳細に説明する。

0020

[熱電変換材料]
図1Aは、本実施形態に係る熱電変換材料の組織を模式的に図示した模式図である。図1Bは、図1AのB部拡大図である。なお、図1Aおよび図1Bは、電子線マイクロアナライザ(EPMA)像から模式的に図示したものである。
図1Aに示すように、本実施形態に係る熱電変換材料1(図1には図示せず。図4参照。)は、Yb、CoおよびSbを含んでなるスクッテルダイト型の結晶構造を有する多数の多結晶体粒11と、隣り合う多結晶体粒11の間に存在し、Ybに対するOの原子比が0.4を超え1.5未満の結晶13(図1B参照)を有する粒間層12と、を有する構造を有することとしている。後述するように、多結晶体粒11は、製造過程で製造された粉砕粒であり、本実施形態に係る熱電変換材料1は、当該多結晶体粒11を加圧焼結して得られた焼結体である。なお、前記した粒間層12には、多結晶体粒11と析出結晶粒(図示せず)との反応中間生成物(図示せず)が共存し得る。この熱電変換材料1は、後述する熱電変換材料の製造方法によって好適に得られる。

0021

Yb、CoおよびSbを含んでなるスクッテルダイト型の結晶構造とは、頂点共有したSbの八面構造体にCoが囲まれた結晶構造(立方晶)を有し、当該結晶構造の隙間にYbを充填したものをいう(充填スクッテルダイト構造などと呼称されている)。このようなYb、CoおよびSbを含んでなるスクッテルダイト型の結晶構造として、好ましくは組成式YbxCo4Sb12(ただし、xは0を超え0.3以下)で表されるものを用いることができる。なお、xは0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。また、xは、0.3未満が好ましい。このような結晶構造の結晶粒を含んで構成される多結晶体粒11、好ましくは前記組成式で表される結晶構造の結晶粒を含んで構成される多結晶体粒11は、熱電変換材料1として好適に機能する。

0022

この熱電変換材料1は、熱伝導率および電気伝導率のうちの少なくとも一方が異方性を有しているのが好ましい。このような異方性は、図1Aに示すように、熱電変換材料1を構成するアスペクト比が異なる多結晶体粒11が、ほぼ一定の方向に向かって並んでいることによって得られる。すなわち、電気伝導率や熱伝導率の異方性は、アスペクト比が異なる多結晶体粒11の形状の異方性により、単位経路あたりに通過する前記粒間層12の数が異なるために生じると考えられる。

0023

アスペクト比が異なる多結晶体粒11は、例えば、後述する製造方法で説明するように、液体急冷凝固法でリボンを作製した後、当該リボンを粉砕して粉砕粒である多結晶体粒11を得、当該多結晶体粒11をタッピングした後、加圧焼結して製造されることによって得ることができる。つまり、このような異方性は、タッピングした後、加圧焼結されることによって多結晶体粒11の形状をアスペクト比が異なるものにすることができるとともに、その形状がほぼ一定の方向に向かって並んだ状態となる。熱伝導率と電気伝導率とは、タッピングの後、加圧焼結されてなる多結晶体粒11の形状とこれにともなって形成される粒間層12によって付与されるものであるため、多くの場合、熱伝導率と電気伝導率の異方性の向きは一致する。異方性を得易くするため、前記したようにタッピングするなどして多結晶体粒11に振動を与えて据わりを良くした後、加圧焼結するのが好ましい。

0024

多結晶体粒11の大きさは、例えば、最大長さが10〜500μmであるのが好ましい。なお、最大長さとは、例えば、電子顕微鏡写真などで撮影した画像における1つの多結晶体粒11において取り得る最も離れた二点間の長さをいう。多結晶体粒11の大きさがこの範囲にあると、加圧焼結後における焼結体中の酸素濃度を制御し易くなる。多結晶体粒11の大きさは、例えば、リボンを粉砕する際の粉砕時間等を適宜変更することで制御できる。
多結晶体粒11は、金属組織として、前記したYb、CoおよびSbを含んでなるスクッテルダイト型の結晶構造で構成された多数の結晶粒を含んで形成されている。1つ1つの結晶粒は互いに原子配列の向きが異なっているため、隣り合う結晶粒との間に結晶構造の原子配列が乱れた領域、すなわち、粒界結晶粒界)を形成している。多結晶体粒11を構成する結晶粒の大きさは、例えば、1〜50μmであるのが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。結晶粒の大きさがこの範囲にあると、高い緻密性を得ることができる。結晶粒の大きさは、例えば、リボン作製工程における急冷速度や、第1熱処理工程、第2熱処理工程、加圧焼結工程における熱処理温度を適宜変更することで制御できる。

0025

熱電変換材料1は、前記した多数の多結晶体粒11と、隣り合う多結晶体粒11の間に存在し、Ybに対するOの原子比が0.4を超え1.5未満の結晶13を有する粒間層12と、を有している。粒間層12に析出した結晶13は、Ybに対するOの原子比が1以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.67以下であることがさらに好ましい。

0026

なお、本実施形態においては、Ybに対するOの原子比が0.4を超え1.5未満の結晶13を有する粒間層12を有していればよい。つまり、粒間層12に含まれている結晶13のYbに対するOの原子比が全て前記した範囲になくともよい。熱電変換材料1は、粒間層12に析出した結晶に、Ybに対するOの原子比が0.4以下の結晶が混在して含まれていてもよく、1.5以上の結晶が混在して含まれていてもよい。

0027

粒間層12に析出した結晶13のYbに対するOの原子比が前記した範囲内にあると、Ybの酸化物を含みながら、金属Ybの比率が高い結晶13となる。このようになる理由としては、例えば、Yb2O3などの電気伝導率σおよび熱伝導率κが低く極めて安定なYb酸化物の結合中から酸素外れることによって、酸素欠陥を有する安定な酸化物が生成されるためであると考えられる。さらに、電気的中性を確保するため、この欠陥を有するYb酸化物は電子を生成する必要があるので、必然的に電気伝導率が高くなっていると考えられる。そのため、熱電変換材料1の熱伝導率κを小さくしつつ、電気伝導率σを高くすることができ、無次元性能指数ZTを高くすることができると考えられる。前述した電気伝導率や熱伝導率の異方性は、アスペクト比が異なる多結晶体粒11の形状の異方性により、単位経路あたりに通過する前記粒間層12(すなわち、Ybに対するOの原子比が前記した範囲内にある結晶13を含む粒間層12)の数が異なるために生じると考えられる。

0028

ここで、図2は、本実施形態に係る熱電変換材料の電気抵抗をマッピングした説明図(観察範囲20μm×20μm)である。この図2は、加圧焼結前処理の雰囲気を3%水素とした後、アルゴン0.1MPaで加圧し、焼結体の酸素濃度を470容積ppmとした熱電変換材料の電気抵抗を走査型プローブ顕微鏡で観察したものである。図3は、従来例に係る熱電変換材料の電気抵抗をマッピングした説明図(観察範囲20μm×20μm)である。この図3は、加圧焼結前処理の雰囲気について何ら処理しない熱電変換材料の電気抵抗を走査型プローブ顕微鏡で観察したものである。
図2に示す本実施形態に係る熱電変換材料1(図4参照)は、図3に示す従来例に係る熱電変換材料と比較して電気抵抗の高い黒い部分がなく、電気抵抗が低い(電気伝導率σが高い)ことが分かる。なお、図2に示す単位面積当たりの電気抵抗は6.3μΩmであり、図3に示す単位面積当たりの電気抵抗は32.2μΩmであった。

0029

粒間層12に析出した結晶13のYbに対するOの前記原子比は0.5(すなわち、Yb2O)や0.67(すなわち、Yb3O2)であるのが好ましい。このようにすると、安定して酸素欠陥を有する安定な酸化物を粒間層12に維持することができる。
粒間層12に析出した結晶13のYbに対するOの前記原子比は、後述する製造方法における第1熱処理工程と第2熱処理工程と加圧焼結工程とを行うことで得ることができる。

0030

本実施形態に係る熱電変換材料1は、酸素濃度が1200容積ppm以下であるのが好ましく、700容積ppm以下であるのがより好ましく、510容積ppm以下であるのがさらに好ましい。このようにすると、容易に、つまり、後記する第2熱処理工程S5を水素濃度100%で行わなくても、Ybに対するOの原子比が0.4を超え1.5未満の結晶13を有する粒間層12を得ることができる。その結果、熱電変換材料1の電気抵抗を低くできる。一方、酸素濃度の下限は低ければ低いほど望ましく、0容積ppmであるのが好ましいが、現実的には測定精度などを考慮して、例えば50容積ppm以上であるのが好ましい。

0031

前記した粒間層12の厚みは5nm以上1μm以下であるのが好ましい。粒間層12の厚みがこの範囲にあると、粒間層12の中に存在する結晶13が多くなり、また、高抵抗の酸化物を少なくすることができる。したがって、熱電変換材料1の熱伝導率κが小さくなるとともに、電気伝導率σも高くなるので、無次元性能指数ZTをより高くすることができる。この効果をさらに確実に得る観点から、前記した粒間層12の厚みは5nm以上100nm以下であるのがさらに好ましい。
なお、前記した粒間層12の厚みは、例えば、リボン作製工程における急冷速度や加圧焼結工程における熱処理温度を適宜変更することで制御できる。
粒間層12の厚みは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などで観察・測定することができる。粒間層12の厚みの測定は、例えば、粒間層12を含む範囲を観察した際に、隣り合う多結晶体粒11間の距離が最短となる任意の2点間を測定することで行うことができる。

0032

なお、本実施形態に係る熱電変換材料1は、熱電変換に悪影響を及ぼさない範囲であれば不純物が含まれていてもよい。

0033

以上に説明した本実施形態に係る熱電変換材料1は、Yb、CoおよびSbを含んでなるスクッテルダイト型の結晶構造を有する多数の多結晶体粒11と、隣り合う多結晶体粒11の間に存在し、Ybに対するOの原子比が0.4を超え1.5未満の結晶13を有する粒間層12と、を有している。また、本実施形態に係る熱電変換材料1は、BaやLa、Srのような活性な材料が導入されていない。そのため、本実施形態に係る熱電変換材料1は、無次元性能指数ZTが高く、かつ信頼性も高い。

0034

[熱電変換モジュール]
次に、本実施形態に係る熱電変換モジュールについて説明する。
図4および図5は、本実施形態に係る熱電変換モジュールの構成を示す斜視図である。図4は、上部基板6を取り付ける前の状態を示し、図5は、上部基板6を取り付けた後の状態を示している。

0035

図4および図5に示すように、前述した本実施形態に係る熱電変換材料1は、熱電変換モジュール10に搭載することができる。熱電変換モジュール10は、柱状の熱電変換材料1と、この熱電変換材料1とは逆相の柱状の熱電変換材料2とを、導電材3を介して端部同士を接続した素子4を複数有してなる。特に限定されるものではないが、素子4は、図4および図5に示すように、導電材3を介して熱電変換材料1と逆相の熱電変換材料2とを交互に、かつ電気的に直列に接続することができる。熱電変換材料1と逆相の熱電変換材料2と導電材3とが接続してなる素子4は、下部基板5と上部基板6(図5参照)との間に配置されている。なお、導電材3のうち、第1の導電材3aは熱電変換材料1と接続されており、第2の導電材3bは熱電変換材料2と接続されている。そして、第1の導電材3aは電圧引き出し用の第1の配線7と接続され、第2の導電材3bは電圧引き出し用の第2の配線8と接続されている。

0036

ここで、逆相の熱電変換材料2は、例えば、熱電変換材料1がp型である場合はn型とし、熱電変換材料1がn型である場合はp型とするものである。
導電材3としては、例えば、銅、銀、金、白金アルミニウムまたはこれらの中から選択されたいずれか1つの金属の合金を用いた薄板材フィルム薄膜などを挙げることができる。導電材3は導電性を有していればよく、前記した金属や形態などに限定されるものではない。例えば、低温側に配置されるのであれば、導電材3として、導電性ポリマーで形成したフィルムなどを用いることができる。
下部基板5および上部基板6は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)や窒化シリコン(Si3N4)、酸化アルミナ(Al2O3)などで形成された板材を用いることができる。

0037

以上に述べた態様の熱電変換モジュール10は、例えば、上部基板6を加熱または高熱部に接触させることで、熱電変換材料1および逆相の熱電変換材料2に対して同一方向に温度勾配を発生させることができる。これにより、熱電変換材料1と逆相の熱電変換材料2はゼーベック効果によって熱起電力が発生する。このとき、熱電変換材料1と逆相の熱電変換材料2では温度勾配に対して逆向きに熱起電力が発生することになり、熱起電力は打ち消されずに足し合わされる。そのため、熱電変換モジュール10は、大きな熱起電力を発生させることができる。温度勾配の付け方は、前記した態様のほかに下部基板5を冷却または低温部に接触させてもよい。また、上部基板6を加熱または高熱部に接触させつつ、下部基板5を冷却または低温部に接触させてもよい。

0038

以上に説明した本実施形態に係る熱電変換モジュールは、前述した本実施形態に係る熱電変換材料1を用いている。そのため、本実施形態に係る熱電変換モジュールは、本実施形態に係る熱電変換材料1について説明した理由と同様の理由により、無次元性能指数ZTが高く、かつ信頼性も高い。

0039

[熱電変換材料の製造方法]
次に、本実施形態に係る熱電変換材料の製造方法について説明する。
図6は、本実施形態に係る熱電変換材料の製造方法(以下、単に本製造方法という)の内容を示すフローチャートである。本製造方法は、例えば、前述した本実施形態に係る熱電変換材料1を製造する製造方法である。

0040

図6に示すように、本製造方法は、秤量工程S1と、混合工程S2と、リボン作製工程S3と、第1熱処理工程S4と、第2熱処理工程S5と、加圧焼結工程S6とを含む。本製造方法では、加圧焼結工程S6の前に行う第1熱処理工程S4および第2熱処理工程S5の間や、第2熱処理工程S5および加圧焼結工程S6の間において、酸化雰囲気(例えば、大気)に触れさせないようにすると、酸化量を抑制し、還元量を低減できるため望ましい。また、第2熱処理工程S5後も酸化雰囲気(例えば、大気)に触れさせずに加圧焼結工程S6を行うのが望ましい。好ましくは、第2熱処理工程S5と加圧焼結工程S6は、気密を保てる炉を用いて行う。
以下、これらの工程について順に説明する。

0041

(秤量工程S1)
秤量工程S1は、Ybを含む素原料、Coを含む素原料およびSbを含む素原料をそれぞれ秤量する工程である。これらの素原料の秤量は、一般的な秤量機を用いて行うことができる。素原料の形態はどのようなものであってもよい。すなわち、素原料は、例えば、鉱石であってもよいし、スクラップ材などであってもよいし、予め精製された純度の高い精製品であってもよい。ここで、Yb、CoおよびSbは、それぞれの素原料中に含まれている含有率を予め分析しておき、その分析を基に、秤量後の原料の組成式がYbxCo4Sb12(ただし、xは0を超え0.3以下)となるように秤量するのが好ましい。

0042

また、秤量は、グローブボックスのような外気遮断された状況下で作業が可能な密閉作業装置で行うのが好ましい。密閉作業装置は、内部に窒素やアルゴンなどの不活性ガスを供給できるものを用いるのが好ましい。秤量は、酸素濃度が0.1〜100容積ppmである密閉作業装置内で行うのが好ましい。密閉作業装置内で秤量した素原料は、例えば、黒鉛るつぼなどの耐熱性容器に入れるのが好ましい。また、密閉作業装置内で秤量した素原料は石英製の容器などに入れて真空封入するのが好ましい。これらの態様はいずれか1つのみでも素原料の過度の(必要以上の)酸化を防止できるが、全てを行うのが好ましい。なお、後述するように、本実施形態においては、過度の酸化は好ましくないが、リボンの表面のみを僅かに酸化させる程度に酸化させた後、第2熱処理工程S5で熱処理を行って粒間層12に析出した結晶13のYbの酸化物の一部を還元することにより、電気抵抗を低減させることができる。

0043

(混合工程S2)
混合工程S2は、前記した素原料を溶解して混合する工程である。素原料の溶解は、例えば、1020℃以上、好ましくは1050℃以上で行う。なお、コストや加熱装置保全などの観点から、素原料の溶解は1300℃以下、より好ましくは1100℃以下で行う。
素原料の溶解は前記温度で数時間から数十時間保持して行い、その後、急冷するのが好ましい。例えば、素原料の溶解を前記温度で20時間保持して行った後、20℃以下に冷却された水中に入れて急冷するのが好ましい。なお、原料が多い場合は、徐冷であってもよい。急冷後、石英製の容器から不活性雰囲気中でインゴットを取り出し、黒鉛るつぼなどの耐熱性容器に装荷するのが好ましい。なお、1時間以内の短時間であれば空気中でインゴットを取り出し、耐熱性容器に装荷することができる。その後、例えば、高周波加熱炉で1100℃まで昇温して再加熱し、溶湯にする。

0044

(リボン作製工程S3)
リボン作製工程S3は、前記した素原料の溶湯を液体急冷凝固法により急冷凝固してリボンを作製する工程である。液体急冷凝固法とは、溶解した金属(溶湯)を回転する金属ロール滴下し、結晶の核形成速度より急速に冷却することで非晶質金属のリボンを作製する方法である。
リボン作製工程S3で得られるリボンの厚さは10〜200μmであるのが好ましい。リボンの厚さがこの範囲にあると、組織の均一性が高くなり、また、酸化の程度がコントロールし易い。リボン作製工程S3も前記同様、不活性雰囲気中で行う。

0045

(第1熱処理工程S4)
第1熱処理工程S4は、作製した前記リボンに対して、酸素濃度を調節した不活性雰囲気中で熱処理を行う工程(図6において図示せず)と、粉砕する工程(図6において図示せず)と、を有し、粉砕粒である多結晶体粒11を得る工程である。すなわち、第1熱処理工程S4は、酸素濃度を調節した不活性雰囲気中でリボンを熱処理した後に当該リボンを粉砕して粉砕粉である多結晶体粒11としてもよい。また、第1熱処理工程S4は、前記したリボンを粉砕して粉砕粉である多結晶体粒11を得た後に酸素濃度を調節した不活性雰囲気中で当該多結晶体粒11を熱処理してもよい。

0046

熱処理を行う前に、密閉作業装置(酸素濃度0.1〜100容積ppm)内で黒鉛るつぼなどの耐熱性容器に再装荷して蓋をするのが好ましい。なお、耐熱性容器内の酸素濃度を低くすることができるため、耐熱性容器の蓋は深さ寸法が深いものを用いるのが好ましい。耐熱性容器の蓋の深さ寸法は、例えば、5〜10cmなどとするのが好ましい。また、耐熱性容器内の酸素濃度を低くするため、金属Tiなどのゲッター材を装荷するのが好ましい。

0047

第1熱処理工程S4における不活性雰囲気中の酸素濃度は、例えば、10容積ppm以下とするのが好ましく、5容積ppm以下とするのがより好ましい。このようにすると、リボンの表面のみを僅かに酸化させた状態とすることができる。本実施形態においては、過度の酸化は好ましくないが、このような雰囲気中で処理することによってリボンの表面または多結晶体粒11の表面のみを僅かに酸化させることができる。そして、後ほど行う第2熱処理工程S5で熱処理を行って粒間層12に析出した結晶13のYbの酸化物の一部を還元することにより、電気抵抗を低減させることができる。また、このようにすると、粒間層12に析出した結晶13のYbに対するOの原子比を0.4を超え1.5未満にすることができる。したがって、熱電変換材料1の熱伝導率κを小さくしつつ、電気伝導率σを高くすることができ、無次元性能指数ZTを高くすることができる。

0048

不活性雰囲気としては、例えば、窒素およびアルゴンのうちの少なくとも一方の雰囲気を挙げることができるが、これに限定されない。不活性雰囲気の酸素濃度の調節は、例えば、水素とアルゴンの混合気体、水素と窒素の混合気体、または水素を単独で用いることで行うことができる。なお、不活性雰囲気には、水蒸気が含まれていてもよい。水蒸気が含まれていると酸化が少し促進される。

0049

第1熱処理工程S4の熱処理条件としては、例えば、熱処理温度を500〜800℃とすることができる。また、第1熱処理工程S4の熱処理条件としては、例えば、熱処理温度を700℃とした場合、3時間以上168時間未満とすることができる。熱処理時間は、リボンまたは多結晶体粒11の極端な酸化を防止する観点から、48時間以下とするのが好ましい。

0050

リボンの粉砕は、密閉作業装置(酸素濃度0.1〜100ppm)内で行うのが好ましい。粉砕して得られた多結晶体粒11はメディアン径(d50)が10〜100μmであるのが好ましい。このようにすると、酸素と接触して酸素濃度制御が行い易くなり、後述する加圧焼結で緻密な焼結体を得ることが容易となる。
リボンの粉砕は、例えば、乳鉢および乳棒を用いたり、ボールミルロッドミル高圧粉砕ロール縦軸インパクタミルジェットミルなどを用いたりすることによって行うことができる。

0051

第1熱処理工程S4で得られた多結晶体粒11は、密閉作業装置内で秤量した後、ドラフト内カーボン型カーボン製のダイス)に装荷し、ホットプレス機などの加圧焼結装置内に導入する。

0052

(第2熱処理工程S5)
第2熱処理工程S5は、第1熱処理工程S4で熱処理した多結晶体粒11を還元雰囲気中で熱処理する工程である。この第2熱処理工程S5を行うことによって、粒間層12に析出した結晶13のYbの酸化物の一部を還元する。この工程を行った後に後記する加圧焼結工程S6を行うことで、最終的に、粒間層12に析出した結晶13のYbに対するOの原子比を0.4を超え1.5未満にすることができる。本実施形態では、この第2熱処理工程S5を行うことによって、粒間層12に析出した結晶13のYbに対するOの原子比を前記範囲にできるため、Ybの酸化物を含みながら、金属Ybの比率を高めることができる。このようになる理由は定かではないが、前述したように、例えば、Yb2O3などの電気伝導率σおよび熱伝導率κが低い極めて安定なYb酸化物の結合中から酸素が外れることによって、酸素欠陥を有する安定な酸化物が生成されるためであると考えられる。さらに、電気的中性を確保するため、この欠陥を有するYb酸化物は電子を生成する必要があるので、必然的に電気伝導率が高くなっていると考えられる。そのため、この第2熱処理工程S5で熱処理された熱電変換材料1の熱伝導率κを小さくしつつ、電気伝導率σを高くすることができるので、その結果として、無次元性能指数ZTが高くなると考えられる。言い換えると、第2熱処理工程S5は、第1熱処理工程S4で多結晶体粒11の表面に生成した結晶性Yb亜酸化物を焼結する直前でその一部または全部を電気的中性を保つべく伝導電子が生成する程度まで熱処理を行う工程であるということができる。

0053

第2熱処理工程S5における還元雰囲気としては、例えば、水素濃度3容量%または100容量%とすることを挙げることができる。この第2熱処理工程S5も密閉作業装置(酸素濃度0.1〜100ppm)内で行うのが好ましい。
第2熱処理工程S5は、加圧焼結を行う加圧焼結装置で行うのが好ましい。このようにすると、第2熱処理工程S5と加圧焼結工程S6とを同一炉内で連続して行うことができる。そのため、第2熱処理工程S5で熱処理した多結晶体粒11の酸化反応を抑制できる。本実施形態においては、加圧焼結装置内を真空引きし、例えば10Pa程度とした後、不活性雰囲気に置換するのが好ましい。なお、不活性雰囲気としては、例えば、窒素およびアルゴンのうちの少なくとも一方の雰囲気を挙げることができるが、これに限定されない。この操作を2回以上繰り返し、最後の真空引きを終えた後に、前記したように水素濃度を3容量%または100容量%とするのが好ましい。そして、加圧焼結装置内のガス圧力ゲージ圧で0.1〜0.6MPa(1〜6気圧)になったら、約400〜600℃で1〜6時間熱処理し、その後冷却する。

0054

(加圧焼結工程S6)
加圧焼結工程S6は、第2熱処理工程S5で熱処理した多結晶体粒11を不活性雰囲気中で加圧焼結して前述した本実施形態に係る熱電変換材料1を製造する工程である。つまり、加圧焼結工程S6は、第2熱処理工程S5後、加圧焼結工程S6を終えるまで酸化雰囲気(例えば、大気)に触れさせずに加圧焼結して前述した本実施形態に係る熱電変換材料1を製造する工程である。なお、不活性とは、酸化性でないことをいう。このような不活性雰囲気は、例えば、10Pa以下まで真空引きして、Arガスで置換することを3回繰り返すなどして、大気中の酸素を炉内から排出することにより、好適に具現できる。

0055

この加圧焼結工程S6では、加圧焼結を行う前に、還元雰囲気を不活性雰囲気に置換するのが好ましい。例えば、前記したように、加圧焼結装置内の還元雰囲気を真空引きして10Pa程度とした後、不活性雰囲気に置換する。このとき、加圧焼結装置を大気開放することなく操作するのが好ましい。不活性雰囲気としては、例えば、窒素およびアルゴンのうちの少なくとも一方の雰囲気を挙げることができるが、これに限定されない。なお、不活性雰囲気としては、アルゴン雰囲気であるのが好ましい。また、還元雰囲気を不活性雰囲気に置換するにあたって、前記した置換操作を2回以上行うのが好ましく、3回以上行うのがより好ましい。加圧焼結装置としては、例えば、ホットプレス機を用いることができる。なお、この工程では、真空引きの前に2時間程度の短時間であれば大気開放することも可能である。

0056

不活性雰囲気に置換した後、加圧焼結装置内を、例えば、300〜600℃/hの昇温速度で昇温し、600〜800℃で1時間保持する。このとき、キープ温度加圧圧力が例えば50〜70MPa、具体的には例えば68MPaになるよう、昇温速度と同等の速度で加圧する。保持が終わった後、500℃/h以下の冷却速度で冷却し、減圧を行う。なお、冷却は、加圧焼結装置内で自然放冷することによって行うのが好ましい。ここまでの操作で前述した本実施形態に係る熱電変換材料1を好適に製造することができる。

0057

(後処理)
加圧焼結装置から製造した熱電変換材料1をカーボン型ごと取り出し、熱電変換材料1(焼結体)を耐熱性容器から取り出す。熱電変換材料1の表面のデブリを取り除いた後、精密加工機で任意の寸法・形状に切り出す。これらの作業は空気中で行うことができる。精密加工機は、ダイヤモンドブレードを備えたものを用いるのが好ましい。また、必要に応じて常法により、ゼーベック係数、電気伝導率、比熱、熱伝導率などを測定することができる。

0058

以上に説明した本実施形態に係る熱電変換材料の製造方法は、前記したように、秤量工程S1から加圧焼結工程S6を行うので、Yb、CoおよびSbを含んでなるスクッテルダイト型の結晶構造を有する多数の多結晶体粒11と、隣り合う多結晶体粒11の間に存在し、Ybに対するOの原子比が0.4を超え1.5未満の結晶13を有する粒間層12と、を有する熱電変換材料1を製造することができる。本実施形態に係る熱電変換材料の製造方法は、その製造過程においてBaやLa、Srのような活性な材料を導入していない。そのため、本実施形態に係る熱電変換材料の製造方法は、無次元性能指数ZTが高く、かつ信頼性も高い熱電変換材料1を製造することができる。そして、本実施形態に係る熱電変換材料の製造方法は、粒間層12に含まれている結晶13のYbに対するOの原子比を0.4を超え1.5未満とするため、第2熱処理工程S5を行うので、第1熱処理工程S4における熱処理時間(アニーリング時間)を短くすることができる。したがって、本実施形態に係る熱電変換材料の製造方法は、従来法と比較して量産性に優れている。

0059

次に、本発明に係る熱電変換材料、熱電変換モジュールおよび熱電変換材料の製造方法について、本発明の効果を奏する実施例と、そうでない比較例とにより、さらに詳細に説明する。

0060

(比較例に係るNo.1〜9に係るサンプルの製造)
比較例に係るNo.1〜9に係るサンプルを次のようにして製造した。

0061

〔1〕(秤量工程、混合工程、リボン作製工程)
Sb、Co、Ybの原料を準備し、Yb0.2〜0.3Co4Sb12になるように酸素濃度0.1〜100ppm以下のグローブボックス中で秤量した。秤量した原料を黒鉛るつぼ中に装荷し、石英管に入れた後、石英管を真空封入してアンプルを得た。アンプルを1080℃まで昇温し、20時間保持した後、20℃以下に冷却された水中に入れ、急冷した。急冷後のアンプルから不活性雰囲気中でインゴットを取り出し、急冷用黒鉛るつぼに装荷した。そして、高周波加熱炉で1100℃まで昇温し、再溶解した。溶解した溶湯を液体急冷凝固法により銅ロール上に滴下し、急冷リボンを作製した。

0062

〔2〕(第1熱処理工程)
グローブボックス内で急冷リボンを黒鉛るつぼに再装荷し、アンプル中に真空封入した。アンプルをアニーリング炉にて700℃で表1に示すように3〜168時間熱処理した。炉内の雰囲気、酸素濃度およびアニーリング炉で用いた黒鉛るつぼの形状とその蓋の形状を表1に示した。そして、熱処理を行った急冷リボンをグローブボックス中で取り出し、乳鉢と乳棒で粉砕してd50が10〜100μmの粉砕粉(多結晶体粒)を作製した。得られた多結晶体粒はグローブボックス内で秤量した後、ドラフト内でカーボン型(カーボン製のダイス)に装荷し、ホットプレス機内に導入した。

0063

〔3〕(加圧焼結工程)
ホットプレス機で300〜600℃/hの昇温速度で昇温し、700〜750℃で1時間保持した。このとき、キープ温度でプレス圧力(加圧圧力)が68MPaになるよう昇温速度と同等の速度で加圧した。なお、ホットプレス機での昇温は、キープ温度が低温(700℃)の場合、600℃/hで行い、キープ温度が高温(750℃)の場合、300℃/hで行った。保持が終わった後、500℃/h程度で冷却し、減圧を行った。

0064

〔4〕(後処理)
ホットプレス機からカーボン型を取り出し、空気中で焼結体を取り出した。焼結体表面のデブリを取り除いた後、ダイヤモンドブレードを使った精密加工機で3mm角×10mm長の直方体を切り出し、ゼーベック係数、電気伝導率を測定した。また、同焼結体から2〜3mm角×2mm厚の小片と10mm角×1mm厚の角板を切り出し、それぞれ比熱、熱拡散率を測定し、熱伝導率を算出した。

0065

〔5〕(分析)
(酸素濃度の測定)
融解酸素濃度分析装置(HORIBA社製EMGA−920)で焼結体の酸素濃度を測定した。

0066

組成の分析)
ICP誘導結合プラズマ分析装置島津製作所社製ICPS−8100)で組成を分析した。

0067

(組織、結晶構造の同定)
走査型電子顕微鏡(SEM)(日立製作所社製S−2300)、透過型電子顕微鏡(TEM)(日立ハイテクノロジーズ社製HF−2100)およびエックス線回折装置(Bruker AXS社製D8 Advance)を併用して組織、結晶構造の同定を行った。なお、SEMおよびTEMでの測定は、粒間層を含む範囲を観察した際に、隣り合う多結晶体粒間の距離が最短となる任意の2点間を測定することで行った。

0068

(組織の分析)
電子線マイクロアナライザ(島津製作所社製EPMA1610)で組織を分析した。なお、電子線マイクロアナライザの測定条件として加速電圧を15kV、電流を100nA、ビーム径を10μmとし、5点の平均値を求めた。

0069

抵抗分布の観察)
走査型プローブ顕微鏡(Bruker AXS社Digital Instruments製NanoScope IVaAFM)で抵抗分布を観察した。なお、走査型プローブ顕微鏡は、コンタクトモード拡がり抵抗同時測定とした。走査型プローブ顕微鏡の探針は、ダイヤモンドコートシリコンカンチレバーを採用した。試料は、機械研磨により断面を作製し、素子の各層を短絡して共通のバイアス電圧を加えられるようにした。測定は、大気中、室温で行った。

0070

(熱電変換材料の性能)
ゼーベック係数及び電気伝導率は、アドバンス理工社製ZEM−3で測定した。ゼーベック係数及び電気伝導率の測定条件は、装置メーカー推奨する標準的な測定条件で測定した。試料を2つの端面を有する形状に加工し、ゼーベック係数は、差温ヒータ試料端面を加熱して、試料の両端に温度差をつけ、試料側面に押し当てたプローブ熱電対間の温度差と起電力計測した。電気抵抗は直流四端子法で測定した。
熱伝導率は、比熱と熱拡散率と密度とから算出した。比熱測定は入力補償示差走査熱量計であるPerkin−Elmer社製Pyris1で測定し、熱拡散率はレーザーフラッシュ法を行うNETZSCH社製LFA467で測定し、密度はアルキメデス法で測定した。
無次元性能指数ZTは、測定して得られたゼーベック係数、熱伝導率、電気伝導率から前述した式(1)で算出した。

0071

(実施例に係るNo.10〜34に係るサンプルの製造)
実施例に係るNo.10〜34に係るサンプルは、前記〔2〕および〔3〕をそれぞれ次の〔2A〕および〔3A〕のようにした以外は、比較例と同様にして製造した。

0072

〔2A〕(第1熱処理工程S4)
グローブボックス内で急冷リボンを黒鉛るつぼに再装荷し、そのまま(アンプル中に真空封入しないで)アニーリング炉にセットした。黒鉛るつぼの酸素濃度を低くするため、表1に示すように、黒鉛るつぼの蓋は深さ寸法が深いもの(深さ12cm)を用いた。さらに、表1に示すように、ゲッター材(金属Ti)を黒鉛るつぼの内部に装荷したものもあった。
黒鉛るつぼに再装荷した急冷リボンを700℃で表1に示すように3〜48時間熱処理した。熱処理を行う炉内の雰囲気、酸素濃度およびアニーリング炉で用いた黒鉛るつぼの形状とその蓋の形状を表1に示した。そして、熱処理を行った急冷リボンをグローブボックス中で取り出し、乳鉢と乳棒で粉砕してd50が10〜100μmの粉砕粉(多結晶体粒)を作製した。得られた多結晶体粒はグローブボックス内で秤量した後、ドラフト内でカーボン型に装荷し、ホットプレス機内に導入した。

0073

〔3A〕(第2熱処理工程S5、加圧焼結工程S6)
ホットプレス機内を10Paになるまで真空引きし、Arガスで置換した。これを2回以上繰り返し、最後の真空引き後、表1に示すように、3容量%または100容量%水素を導入した。そして、ホットプレス機内のガス圧力がゲージ圧で0.1〜0.6MPa(1〜6気圧)になった後、表1に示すように、400〜600℃で1〜6時間熱処理した。このとき、プレス圧力(加圧圧力)は加えなかった。
冷却後、ホットプレス機を大気開放することなく10Pa以下になるまで再び真空引きし、Arガスを導入した(ゲージ圧で0MPa(この場合、表1に圧力を示す数値は示さず))。なお、このArガスを導入した際、表1に示すように、ゲージ圧で0.1MPaまたは0.6MPaで加圧したものもあった。
Arガスによる置換が完了した後、再び300〜600℃/hの昇温速度で昇温し、表1に示すように、750℃で1時間保持した。このとき、キープ温度750℃でプレス圧力(加圧圧力)が68MPaになるよう昇温速度と同等の速度で加圧した。保持が終わった後、500℃/h程度で冷却し、減圧を行った。

0074

そして、比較例と同様に〔4〕、〔5〕を行った。

0075

表1に、No.1〜34に係るサンプルの熱処理の時間(h)、熱処理時の雰囲気、熱処理時のO2濃度(容積ppm)、熱処理時の黒鉛るつぼの形状、加圧焼結前処理の雰囲気、加圧焼結前処理の温度(℃)、加圧焼結前処理の時間(h)、加圧焼結温度(℃)を示す。なお、表1において、空白の欄は、真空であったため測定できなかったことを示しており、「−」は、実施していないことを示している。「加圧焼結前処理の雰囲気」における「%」は「容積%」を示している。
また、表2に、No.1〜34に係るサンプルの焼結体の酸素濃度(容積ppm)、ゼーベック係数S(絶対値)(×102μV/K)、熱伝導率(W/mK)、電気伝導率(S/m)、及び無次元性能指数ZT(at 500℃)を示す。

0076

0077

0078

表1に示すように、比較例であるNo.1〜9に係るサンプルは、〔3〕の操作で加圧焼結前処理(第2熱処理工程S5)を行っておらず、また、加圧焼結工程でArガス置換などを行っていなかった。そのため、これらのサンプルは、表2に示すように、無次元性能指数ZTが1.05未満となり、良好でない結果となった。なお、比較例であるNo.7に係るサンプルは、黒鉛るつぼ内の空気のアルゴンへの置換がうまく行われなかった可能性があり、これにより焼結体の酸素濃度が著しく高くなったと推察される。

0079

これに対し、実施例であるNo.10〜34に係るサンプルは、〔3A〕の操作で加圧焼結前処理(第2熱処理工程S5)を行っており、また、加圧焼結工程S6でArガス置換などを行っていた(表1参照)。そのため、これらのサンプルは、表2に示すように、無次元性能指数ZTが1.05以上となり、良好な結果となった。

0080

実施例に係るNo.10〜34に係るサンプルは、無次元性能指数ZTが良好な結果であった。このことから、これらのサンプルは、スクッテルダイト型の結晶構造を有するものであって、かつこれらのサンプルとは逆相のサンプルを、導電材を介して接続した素子を複数有する熱電変換モジュールを作製すれば、無次元性能指数ZTが高い(熱電変換効率の良い)ものとすることができる。

0081

図7は、実施例であるNo.10に係るサンプルのEPMA像である。同図中、(a)は、EPMA像であり、(b)〜(e)はそれぞれ、Yb、Co、Sb、Oについて行った元素マッピングの結果を示す図である。
図8は、実施例であるNo.16に係るサンプルのEPMA像である。同図中、(a)は、EPMA像であり、(b)〜(e)はそれぞれ、Yb、Co、Sb、Oについて行った元素マッピングの結果を示す図である。
図9は、比較例であるNo.3に係るサンプルのEPMA像である。同図中、(a)は、EPMA像であり、(b)〜(e)はそれぞれ、Yb、Co、Sb、Oについて行った元素マッピングの結果を示す図である。

0082

図9に示すように、比較例では、個々の多結晶体粒の外縁にYbやSbが高い濃度で分布し、輪郭を明確に確認することができる。
これに対し、図7および図8に示すように、実施例では、多結晶体粒の内部にYbやSbが均一に分布しており、輪郭を明確に確認することができない。実施例におけるこのような状態は、加圧焼結前に所定の熱処理(第1熱処理工程S4および第2熱処理工程S5)を行ったことによって得られたものである。なお、実施例における個々の多結晶体粒の形状は、図7、8ではYbなどが均一に分布しているため明確に確認できるものは少ない。しかしながら、多結晶体粒を加圧焼結している点は同じであるので、比較例と同じような形状・分布であると考えられる。
また、図7〜9に示すように、多結晶体粒の個々の形状は、長細く、ほぼ一定の方向に配向している。これは、加圧焼結することによって得られたものであると考えられる。そして、このように、多結晶体粒の形状が長細いことから、電気伝導率や熱伝導率などが異方性を有していると考えられる。

0083

図10は、実施例であるNo.10に係るサンプルの透過型電子顕微鏡(TEM)写真と元素マッピングの結果とを示す図である。同図中、(a)は、No.10に係るサンプルのTEM写真であり、(b)〜(e)はそれぞれ、Co、Sb、Yb、Oについて行った元素マッピングの結果を示す図である。(b)〜(e)において、白い部分がマッピング対象となる元素の濃度が高いことを示し、黒い部分がマッピング対象となる元素の濃度が低いことを示す。
図10(a)〜(e)に示すように、各写真中央付近に、熱電変換材料の表面から一定の方向(垂直方向)に伸びる粒間層が確認でき、当該粒間層を挟むようにして多結晶体粒が存在していることが確認できた。
そして、図10(b)、(c)に示すように、多結晶体粒にCoとSbが分布していることが確認できた。
また、図10(d)、(e)に示すように、粒間層の中の小さい結晶にYbとOが分布(偏在)していることが確認できた。

0084

図11Aは、実施例であるNo.29に係るサンプルのTEM写真と、同図中、点線の丸で囲った箇所の電子線回折パターンとを示す図である。同図中、位置1〜5でエネルギー分散X線分析装置(EDX)による分析を行った。その結果を図11Bの表に示す。
図11Aおよび図11Bに示すように、位置1〜3はYb・Oリッチであり、Ybに対するOの原子比は約0.5であった。すなわち、位置1〜3はYb2Oであった。一方、位置5は、主相と考えられる部分であり、SbとCoを多く含んでいた。すなわち、位置5は、Yb、CoおよびSbを含んでなるスクッテルダイト型の結晶構造(所定の結晶粒)であった。なお、位置4は、位置5と比較してYbの量がやや少ないことから、析出したYbの相(主相)からYbが取られて形成された相(つまり、Ybの欠陥のあるYbの相)であると考えられる。

0085

図12Aは、比較例であるNo.7に係るサンプルのTEM写真と、同図中、点線の丸で囲った箇所の電子線回折パターンとを示す図である。図12Bは、比較例であるNo.7に係るサンプルのTEM写真と、同図中、点線の丸で囲った箇所の電子線回折パターンとを示す図である。図12Aおよび図12B中、位置1〜4でEDXによる分析を行った。その結果を図12Cの表に示す。
図12A図12Bおよび図12Cに示すように、位置1はYbリッチであり、Ybに対するOの原子比は約0.1であった。位置2は、主相と考えられる部分(所定の結晶粒)であり、SbとCoを多く含んでいた。位置3、4は、Yb・Oリッチであったが、Ybに対するOの原子比は0.4(小数第2位以下切り捨て)であった。すなわち、位置3、4はYb2.5Oであった。

0086

図11Aと、図11Bに示した表と、図12Aおよび図12Bと、図12Cに示した表とを比較して分かるように、加圧焼結前に所定の熱処理(第1熱処理工程S4および第2熱処理工程S5)を行うことにより、Ybに対するOの原子比を0.4を超え1.5未満という所定の範囲にすることができる。

0087

図13は、実施例であるNo.10に係るサンプルのTEM写真と電子線回折パターンを示す図である。同図中、(a)は、TEM写真である。(b)は、(a)中の位置1の部分(所定の結晶粒)に係る電子線回折パターンである。(c)は、(a)中の位置2の部分(粒間層)に係る電子線回折パターンである。(d)は、(a)中の位置3の部分(粒間層の界面−a)に係る電子線回折パターンである。(e)は、(a)中の位置3の部分(粒間層の界面−b)に係る電子線回折パターンである。
また、図14(a)〜(c)は、電子線回折パターンとシミュレーションからの同定結果を示す図である。なお、同図中、(a)は、CoSb3(空間群:Im−3、a=9.08Å)に対して電子線を[011]方位に沿って入射させたものである。(b)は、Yb2O3(空間群:C2/m、a=13.73Å、b=3.42Å、c=8.45Å)に対して電子線を[101]方位に沿って入射させたものである。(c)は、YbO(空間群:Fm−3m、a=10.434Å)に対して電子線を[112]方位に沿って入射させたものである。図14(a)の電子線回折パターンと比較して、図14(b)の電子線回折パターンは面間隔が若干ずれており、図14(c)の電子線回折パターンは面間隔が一致していない。

0088

図13(b)の電子線回折パターンと図14(a)の電子線回折パターンの一致性が高いことから、実施例に係る熱電変換材料の多結晶体粒を構成する所定の結晶粒は、CoSb3に相当するものであることが分かった。
また、図13(c)、(d)の電子線回折パターンと図14(b)の電子線回折パターンの一致性が高いことから、実施例に係る熱電変換材料において隣り合う多結晶体粒の間に存在する粒間層の一部は、Yb2O3に相当するものであることが分かった。つまり、Ybに対するOの原子比が1.5であるか、またはこれに近い値(例えば、1.5未満)であることが分かった。
そして、図13(e)の電子線回折パターンと図14(c)の電子線回折パターンの一致性が高いことから、実施例に係る熱電変換材料において隣り合う多結晶体粒の間に存在する粒間層の一部は、YbOに相当するものであることが分かった。つまり、Ybに対するOの原子比が1であることが分かった。
図13に示す内容から、実施例に係る熱電変換材料は、Yb、CoおよびSbを含んでなるスクッテルダイト型の結晶構造(すなわち、結晶粒)を有する多数の多結晶体粒と、隣り合う多結晶体粒の間に存在し、Ybに対するOの原子比が0.4を超え1.5未満の結晶を有する粒間層と、を有していることが分かった。

0089

図7図8図10図11A図11Bおよび図13に示した結果は、他の実施例に係るサンプルについても同様であった(図示等省略)。

0090

実施例であるNo.29に係るサンプルの電気抵抗をマッピングした。その図が、図2に示す観察図(観察範囲20μm×20μm)である。
また、比較例であるNo.7に係るサンプルの電気抵抗をマッピングした。その図が、図3に示す観察図(観察範囲20μm×20μm)である。
図2に示すように、実施例であるNo.29に係るサンプルは、Yb、CoおよびSbを含んでなるスクッテルダイト型の結晶構造を有する多数の多結晶体粒と、隣り合う多結晶体粒の間に存在し、Ybに対するOの原子比が0.4を超え1.5未満の結晶を有する粒間層と、を有しているので、電気抵抗が高抵抗である箇所が殆どなく、電気伝導率が高いことが確認された。一方、図3に示すように、比較例であるNo.7に係るサンプルは、電気抵抗が高抵抗である箇所が点在し、電気伝導率が低いことが確認された。

0091

図15Aは、比較例であるNo.7に係るサンプルの高抵抗部分のSEM写真である。そして、図15Bは、図15Aに示すライン分析位置について行った高感度ライン分析の結果を示すグラフである。これらは、図3に示した高抵抗相成分組成を高感度で分析する目的で観察した結果となる。図15Bに示すように、検出したX線ピーク強度の比較から高抵抗相、すなわち高酸素濃度析出物図15A参照)の成分組成はYb2O3であることが確認できる。

0092

図16は、比較例であるNo.7に係るサンプルの多結晶体粒の境界線付近の断面SEM写真である。図16は、比較例であるNo.7に係るサンプルの信頼性低下を確認するために撮像したものである。図16に示すように、リボン粒界(急冷リボン作製の際に形成された粒界)で酸化物として存在しているYbが徐々に結晶粒界に沿って結晶粒の内部に侵入していくこと(リボン表面から粒界侵入し、材料を侵食すること)が確認された。さらに、図16にあるように、Yb(具体的にはYb酸化物)の近傍には、主相であるCo4Sb12から変化したCoSb2(これも主相である)が存在していた。CoSb2は、Co4Sb12よりも酸化し易いため結晶構造の変化や酸素原子の移動などから発生する応力で生じる機械的損傷のみならず、Co4Sb12と比較して活性が高い材料として働き得るためCoSb2などの酸化量の経時変化により電気伝導率も変化し、信頼性が低下すると考えられる。

実施例

0093

以上、本発明に係る熱電変換材料、熱電変換モジュールおよび熱電変換材料の製造方法について実施形態および実施例により詳細に説明したが、本発明は前記した実施形態および実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。

0094

1熱電変換材料
11多結晶体粒
12 粒間層
13結晶
2逆相の熱電変換材料
3導電材
3a 第1の導電材
3b 第2の導電材
4素子
5 下部基板
6 上部基板
7 第1の配線
8 第2の配線

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