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技術 抗PD−1抗体若しくは抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する方法、がんの悪性度を評価する方法、及び抗PD−1抗体若しくは抗PD−L1抗体療法の奏効性を上昇させる方法

出願人 ジェイファーマ株式会社国立大学法人群馬大学国立大学法人大阪大学
発明者 遠藤仁石原豪史解良恭一金井好克
出願日 2018年11月7日 (2年1ヶ月経過) 出願番号 2018-559401
公開日 2020年9月24日 (3ヶ月経過) 公開番号 WO2019-093383
状態 未査定
技術分野 ペプチド又は蛋白質 生物学的材料の調査,分析 酵素、微生物を含む測定、試験
主要キーワード バイオ産業 病理画像 単染色 乳腺がん 子宮平滑筋肉腫 大腸がん患者 コンパニオン 陽性所見
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年9月24日)のものです。
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図面 (16)

課題・解決手段

本発明は、新しいバイオマーカーに基づく、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性予測する方法及びがん悪性度を評価する方法を提供することを目的とする。本発明に係る被験者に対する抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する方法は、被験者のがん組織から採取した試料のLAT1の発現レベルを測定する工程と、LAT1の発現レベルに基づいて被験者に対する抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する工程と、を備える。被験者のがんの悪性度を評価する方法は、被験者のがん組織から採取した試料を抗LAT1抗体及び抗PD−L1抗体で染色する工程と、LAT1陽性かつPD−L1陽性の部位の有無に基づいて被験者のがんの悪性度を評価する工程と、を備える。

概要

背景

免疫チェックポイント阻害薬として、PD−1(Programmed cell death 1)/PD−L1(Programmed cell death ligand−1)を標的とする薬剤が開発されている。例えば、抗PD−1モノクローナル抗体としてニボルマブ及びペムブロリズマブが開発されており、抗PD−L1モノクローナル抗体としてアテゾリズマブ、アベルマブ及びデュバルマブが開発されている。また、抗PD−1抗体療法の奏効性予測する方法として、患者がん細胞におけるPD−L1発現を調べる方法が開発されている。

PD−L1の発現は、多くのがん(腎がん食道がん胃がん尿路上皮がん、膵がん黒色腫等)で予後との逆相関が認められている(非特許文献1)。しかしながら、近年の抗PD−1モノクローナル抗体医薬又は抗PD−L1モノクローナル抗体医薬の奏効率と、患者のがん組織のPD−L1タンパク質発現強度との相関は明らかではなく、PD−L1の発現強度の測定がいわゆるコンパニオン診断としての役割を果たしているとは言い難い状態である。

がん組織に発現しているLAT1(L−type amino acid transporter 1)はがん胎児タンパク質一種で、悪性度致死率)の高いがん組織での発現レベルが高い。このLAT1の発現強度と患者の致死率との間の高い相関性が、多くのがん(肺がん;非特許文献2、胃がん;非特許文献3、膵がん;非特許文献4、胆道がん;非特許文献5、子宮内膜がん;非特許文献6、前立腺がん;非特許文献7、大腸がん乳腺がん頭頚部がん、生殖器がん、及び軟部組織がん;非特許文献8)で報告されている。

概要

本発明は、新しいバイオマーカーに基づく、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する方法及びがんの悪性度を評価する方法を提供することを目的とする。本発明に係る被験者に対する抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する方法は、被験者のがん組織から採取した試料のLAT1の発現レベルを測定する工程と、LAT1の発現レベルに基づいて被験者に対する抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する工程と、を備える。被験者のがんの悪性度を評価する方法は、被験者のがん組織から採取した試料を抗LAT1抗体及び抗PD−L1抗体で染色する工程と、LAT1陽性かつPD−L1陽性の部位の有無に基づいて被験者のがんの悪性度を評価する工程と、を備える。

目的

本発明が解決すべき別の課題の一つは、PD−L1及びLAT1の関連性を明らかにすることにある

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

被験者に対する抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性予測する方法であって、前記被験者のがん組織から採取した試料のLAT1の発現レベルを測定する工程と、前記LAT1の発現レベルに基づいて、前記被験者に対する抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する工程と、を備える方法。

請求項2

前記被験者のがん組織から採取した試料のPD−L1の発現レベルを測定する工程をさらに備え、前記被験者に対する前記抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する工程において、前記LAT1及びPD−L1の発現レベルに基づいて予測を行う、請求項1記載の方法。

請求項3

前記抗PD−1抗体がニボルマブである、請求項1又は2に記載の方法。

請求項4

前記がんが肺がんである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。

請求項5

前記肺がんが非小細胞肺がんである、請求項4に記載の方法。

請求項6

前記非小細胞肺がんが腺がんである、請求項5に記載の方法。

請求項7

前記発現レベルの測定を免疫組織化学により行う、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。

請求項8

前記LAT1の発現レベルの測定を免疫組織化学により行い、前記免疫組織化学は、前記試料から調製された単一切片単染色することを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。

請求項9

前記LAT1の発現レベルの測定と前記PD−L1の発現レベルの測定とを免疫組織化学により行い、前記免疫組織化学は、前記試料から調製された各連続切片を単染色することを含む、請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。

請求項10

前記LAT1の発現レベルの測定と前記PD−L1の発現レベルの測定とを免疫組織化学により行い、前記免疫組織化学は、前記試料から調製された単一切片を二重染色することを含む、請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。

請求項11

被験者のがんの悪性度を評価する方法であって、前記被験者のがん組織から採取した試料を抗LAT1抗体及び抗PD−L1抗体で染色する工程と、LAT1陽性かつPD−L1陽性の部位の有無に基づいて、前記被験者のがんの悪性度を評価する工程と、を備える方法。

請求項12

前記がんが肺がん、大腸がん膵がん又は胆道がんである、請求項11に記載の方法。

請求項13

前記染色工程が、前記試料から調製された各連続切片を単染色することを含む、請求項11又は12に記載の方法。

請求項14

前記染色工程が、前記試料から調製された単一切片を二重染色することを含む、請求項11又は12に記載の方法。

請求項15

抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体と組み合わせて投与されることを特徴とし、前記抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体と同時に又は別々に投与される、O−(5−アミノ−2−フェニルベンズオキサゾール−7−イルメチル−3,5−ジクロロ−L−チロシン又はその薬理学的に許容される塩。

請求項16

抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体と、O−(5−アミノ−2−フェニルベンズオキサゾール−7−イル)メチル−3,5−ジクロロ−L−チロシン又はその薬理学的に許容される塩と、の組み合わせを含む、抗がん剤

請求項17

抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体と、O−(5−アミノ−2−フェニルベンズオキサゾール−7−イル)メチル−3,5−ジクロロ−L−チロシン又はその薬理学的に許容される塩と、を含む、がんを治療するための医薬組成物

技術分野

0001

本発明は、抗PD−1抗体若しくは抗PD−L1抗体療法の奏効性予測する方法、がん悪性度を評価する方法、及び抗PD−1抗体若しくは抗PD−L1抗体療法の奏効性を上昇させる方法に関する。

背景技術

0002

免疫チェックポイント阻害薬として、PD−1(Programmed cell death 1)/PD−L1(Programmed cell death ligand−1)を標的とする薬剤が開発されている。例えば、抗PD−1モノクローナル抗体としてニボルマブ及びペムブロリズマブが開発されており、抗PD−L1モノクローナル抗体としてアテゾリズマブ、アベルマブ及びデュバルマブが開発されている。また、抗PD−1抗体療法の奏効性を予測する方法として、患者のがん細胞におけるPD−L1発現を調べる方法が開発されている。

0003

PD−L1の発現は、多くのがん(腎がん食道がん胃がん尿路上皮がん、膵がん黒色腫等)で予後との逆相関が認められている(非特許文献1)。しかしながら、近年の抗PD−1モノクローナル抗体医薬又は抗PD−L1モノクローナル抗体医薬の奏効率と、患者のがん組織のPD−L1タンパク質発現強度との相関は明らかではなく、PD−L1の発現強度の測定がいわゆるコンパニオン診断としての役割を果たしているとは言い難い状態である。

0004

がん組織に発現しているLAT1(L−type amino acid transporter 1)はがん胎児タンパク質一種で、悪性度(致死率)の高いがん組織での発現レベルが高い。このLAT1の発現強度と患者の致死率との間の高い相関性が、多くのがん(肺がん;非特許文献2、胃がん;非特許文献3、膵がん;非特許文献4、胆道がん;非特許文献5、子宮内膜がん;非特許文献6、前立腺がん;非特許文献7、大腸がん乳腺がん頭頚部がん、生殖器がん、及び軟部組織がん;非特許文献8)で報告されている。

先行技術

0005

本庶ら、「抗PD−1抗体によるがん治療基礎臨床応用」、2013台日科学技術フォーラムトランスレーシナル医療バイオ産業発展、2013年9月23日;http://www.tnst.org.tw/ezcatfiles/cust/img/img/20130923_jp11.pdf
Kaira et al., "Prognosticsignificance of L-type amino acid transporter 1 expression in resectable stageI-III nonsmall cell lung cancer.", Br J Cancer. 98(4):742-8, 2008.
Ichinoe et al., "High expressionof L-type amino-acid transporter 1 (LAT1) in gastric carcinomas: Comparisonwith non-cancerous lesions.", Pathol Int. 61(5):281-9, 2011.
Yanagisawa et al. "Highexpression of L-type amino acid tansporter 1 (LAT1) predicts poor prognosis inpancreatic ductal adenocarcinomas.", J Clin Pathol. 65(11): 1019-23, 2012.
Yanagisawa et al, "Highexpression of L-type amino acid transporter 1 (LAT1) as a prognostic marker inbile duct adenocarcinomas.", Cancer Med. 3(5):1246-55, 2014.
Watanabe et al., "L-typeamino acid transporter 1 (LAT1) expression increases in well-differentiated butdecreases in poorly differentiated endometrial endometrioid adenocarcinoma, andshows an inverse correlation with p53 expression.", Int JGynecol Cancer.24(4): 659-63, 2014.
Sakata et al., "L-typeamino-acid transporter 1 as a novel biomarker for high-grade malignancy inprostate cancer.", Pathol Int. 59(1):7-18, 2009.
Kaira K et al., "L-typeamino acid transporter 1 and CD98 expression in primary and metastatic sites ofhuman neoplasms.", Cancer Sci. 99(12):2380-6, 2008.

発明が解決しようとする課題

0006

がん組織を構成するがん細胞の細胞膜には、PD−L1及びLAT1が存在している。これらそれぞれについてがんの悪性度との関連性が示唆されているものの、これら2種のがん特異的タンパク質が相互に関連性を持つか否かにつき未だ明確な報告はない。

0007

本発明が解決すべき課題の一つは、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性の予測に使用できる新たなバイオマーカーの提供にある。また、本発明が解決すべき別の課題の一つは、PD−L1及びLAT1の関連性を明らかにすることにある。

0008

ある特定のがん(肺がん、胃がん、大腸がん等)組織を構成する多くのがん細胞は不揃いで、均一ではない。同一疾患名のがんに罹患している患者一人一人の状況は全て異なるため、抗がん療法には個別化医療が原則とされる。本発明者らは、2つのがんマーカーPD−L1及びLAT1を登場させることにより、多くの不均一患者のがん組織を、大雑把にではあるが、幾つかのサブタイプに分けることが可能と考え、実際に分類を試みた。その結果、表1にまとめたように、PD−L1の発現レベルが高いがん組織(P−優位タイプ)、LAT1の発現レベルが高いがん(L−優位タイプ)、及び、PD−L1及びLAT1の両方を発現する細胞を含み、かつ、PD−L1及びLAT1の発現レベルが高いがん(PL共存タイプ)の3タイプに、がん組織を分けることができた。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、LAT1ががんの新たなバイオマーカーとなることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、被験者に対する抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する方法であって、被験者のがん組織から採取した試料のLAT1の発現レベルを測定する工程と、LAT1の発現レベルに基づいて、被験者に対する抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する工程とを備える方法を提供する。

0010

上記方法において、LAT1の発現レベルとPD−L1の発現レベルとの組み合わせから、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測してもよい。すなわち、上記方法において、被験者のがん組織から採取した試料のPD−L1の発現レベルを測定する工程をさらに実施してもよく、また、被験者に対する抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する工程において、LAT1及びPD−L1の発現レベルに基づいて予測を行ってもよい。

0011

上記方法において、抗PD−1抗体はニボルマブであってよい。

0012

上記方法において、がんは肺がんであってよく、非小細胞肺がんであってよく、腺がんであってよい。

0013

上記方法において、LAT1及びPD−L1の発現レベルの測定には免疫組織化学を用いることができる。

0014

上記方法において、免疫組織化学は、種々の条件で実施できる。表2に、免疫組織化学の種々の条件の例を示す。LAT1のみを染色する免疫組織化学では、抗LAT1抗体を用いて単一切片単染色することができる。PD−L1のみを染色する免疫組織化学では、抗PD−L1抗体を用いて単一切片を単染色することができる。PD−L1とLAT1の両方を染色する免疫組織化学では、2つの連続切片を用意し、片方の切片を抗PD−L1抗体を用いて単染色し、もう片方の切片を抗LAT1抗体を用いて単染色することができる。あるいは、PD−L1とLAT1の両方を染色する免疫組織化学では、抗PD−L1抗体及び抗LAT1抗体を用いて単一切片を二重染色することもできる。単染色の場合、PD−L1及びLAT1を同じ色、例えば褐色(DAB色素)に染めることができる。二重染色の場合、異なるがんマーカーを異なる色、例えば、緑色と赤色の色素を用いて染色してもよい。判定の精度は条件によって異なる。なお、免疫組織化学に先立って、病理組織通常用いるヘマトキシリンエオジン染色により細胞の形を観察することもできる。

0015

すなわち、免疫組織化学は、被験者のがん組織から採取された試料から調製された単一切片を単染色することを含んでもよく、被験者のがん組織から採取された試料から調製された各連続切片を単染色することを含んでもよく、被験者のがん組織から採取された試料から調製された単一切片を二重染色することを含んでもよい。

0016

また、本発明者らは、PL−共存タイプのがん患者は予後が良くないことを見出した。すなわち、本発明は、被験者のがんの悪性度を評価する方法をも提供する。かかる方法は、被験者のがん組織から採取した試料を抗LAT1抗体及び抗PD−L1抗体で染色する工程と、LAT1陽性かつPD−L1陽性の部位の有無に基づいて、被験者のがんの悪性度を評価する工程と、を備える。がんは、肺がん、大腸がん、膵がん又は胆道がんであってよい。染色工程は、被験者のがん組織から採取された試料から調製された各連続切片を単染色することを含んでもよく、被験者のがん組織から採取された試料から調製された単一切片を二重染色することを含んでもよい。

0017

さらに、本発明は、以下に示す、がんを治療する方法及び抗PD−1抗体若しくは抗PD−L1抗体療法の奏効性を上昇させる方法も提供する。
[1]被験者のがん組織から採取した試料のLAT1及びPD−L1の発現レベルを測定する工程と、上記LAT1及びPD−L1の発現レベルに基づいて、上記被験者に対する抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する工程と、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法が治療効果を示す可能性が高いと予測された上記被験者に抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体を投与する工程と、を備える、がんを治療する方法。
[2]抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法が治療効果を示す可能性が高いと予測された上記被験者に抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体を投与する工程において、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体とLAT1阻害薬とを投与する、[1]に記載の方法。
[3]被験者のがん組織から採取した試料のLAT1の発現レベルを測定する工程と、上記LAT1の発現レベルに基づいて、上記被験者に対する抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する工程と、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法が治療効果を示す可能性が低いと予測された上記被験者に抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体とLAT1阻害薬とを投与する工程と、を備える、がんを治療する方法。
[4]上記抗PD−1抗体がニボルマブである、[1]〜[3]のいずれか一つに記載の方法。
[5]上記がんが肺がんである、[1]〜[4]のいずれか一つに記載の方法。
[6]上記肺がんが非小細胞肺がんである、[5]に記載の方法。
[7]上記非小細胞肺がんが肺腺がんである、[6]に記載の方法。
[8]上記発現レベルの測定を免疫組織化学により行う、[1]〜[7]のいずれか一つに記載の方法。
[9]上記LAT1の発現レベルの測定を免疫組織化学により行い、上記免疫組織化学は、上記試料から調製された単一切片を単染色することを含む、[1]〜[7]のいずれか一つに記載の方法。
[10]上記LAT1の発現レベルの測定と上記PD−L1の発現レベルの測定とを免疫組織化学により行い、上記免疫組織化学は、上記試料から調製された各連続切片を単染色することを含む、[1]に記載の方法。
[11]上記LAT1の発現レベルの測定と上記PD−L1の発現レベルの測定とを免疫組織化学により行い、上記免疫組織化学は、上記試料から調製された単一切片を二重染色することを含む、[1]に記載の方法。
[12]被験者に抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体とLAT1阻害薬とを投与する工程を備える、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を上昇させる方法。
[13]上記被験者が、上記被験者のがん組織から採取した試料のLAT1及びPD−L1の発現レベルに基づいて、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法が治療効果を示す可能性が高いと予測された被験者である、[12]に記載の方法。
[14]上記被験者が、上記被験者のがん組織から採取した試料のLAT1の発現レベルに基づいて、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法が治療効果を示す可能性が低いと予測された被験者である、[12]に記載の方法。

0018

さらに、本発明は、以下に示す、抗がん化合物及びその使用、抗がん剤キット、並びに医薬組成物も提供する。
[15]抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体と組み合わせて投与されることを特徴とし、上記抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体と同時に又は別々に投与される、O−(5−アミノ−2−フェニルベンズオキサゾール−7−イルメチル−3,5−ジクロロ−L−チロシン又はその薬理学的に許容される塩。
[16]抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体と、O−(5−アミノ−2−フェニルベンズオキサゾール−7−イル)メチル−3,5−ジクロロ−L−チロシン又はその薬理学的に許容される塩と、の組み合わせを含む、抗がん剤。
[17]抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体と、O−(5−アミノ−2−フェニルベンズオキサゾール−7−イル)メチル−3,5−ジクロロ−L−チロシン又はその薬理学的に許容される塩と、の組み合わせを含む、がんを治療するためのキット。
[18]抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体と、O−(5−アミノ−2−フェニルベンズオキサゾール−7−イル)メチル−3,5−ジクロロ−L−チロシン又はその薬理学的に許容される塩と、を含む、がんを治療するための医薬組成物。
[19]抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体と組み合わせて投与されることを特徴とし、上記抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体と同時に又は別々に投与される、がんの治療における使用のための、O−(5−アミノ−2−フェニルベンズオキサゾール−7−イル)メチル−3,5−ジクロロ−L−チロシン又はその薬理学的に許容される塩。
[20]抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体と組み合わせて投与されることを特徴とし、上記抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体と同時に又は別々に投与される医薬の製造のための、O−(5−アミノ−2−フェニルベンズオキサゾール−7−イル)メチル−3,5−ジクロロ−L−チロシン又はその薬理学的に許容される塩の使用。

発明の効果

0019

本発明によれば、抗PD−1抗体若しくは抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測すること、がんの悪性度を評価すること、又は、抗PD−1抗体若しくは抗PD−L1抗体療法の奏効性を上昇させることが可能である。

図面の簡単な説明

0020

表1に示したがん組織のタイプ分類によりP−優位タイプに分類された、PD−L1の発現レベルが高いがんの例を示す図である。
表1に示したがん組織のタイプ分類によりL−優位タイプに分類された、LAT1の発現レベルが高いがんの例を示す図である。
表1に示したがん組織のタイプ分類によりPL−共存タイプに分類された、PD−L1及びLAT1の両方を発現する細胞を含み、かつ、PD−L1及びLAT1の発現レベルが高いがんの例を示す図である。
大腸がん組織の染色の結果の一例を示す図である。
トリプルネガティブ乳がんの連続切片を用いた染色の結果の一例を示す図である。
膵がん組織の染色の結果の一例を示す図である。
膵がん組織の染色の結果の別の一例を示す図である。
ニボルマブを投与された肺がん症例におけるPD−L1とLAT1発現の免疫組織学的病理画像の一例を示す図である。
ニボルマブを投与された肺がん症例におけるPD−L1とLAT1発現の免疫組織学的病理画像の別の一例を示す図である。
ニボルマブを投与された肺がん症例におけるPD−L1とLAT1発現の免疫組織学的病理画像のさらに別の一例を示す図である。
PD−L1発現レベルに従ったLAT1発現(全症例)を表すグラフである。上はPD−L1高発現群を、下はPD−L1低発現群を表す。
LAT1発現レベルに従ったPD−L1発現(全症例)を表すグラフである。上はLAT1高発現群を、下はLAT1低発現群を表す。
PD−L1発現レベルに従ったニボルマブの治療効果(全症例)を表すグラフである。上はPD−L1高発現群を、下はPD−L1低発現群を表す。
LAT1発現レベルに従ったニボルマブの治療効果(全症例)を表すグラフである。上はLAT1高発現群を、下はLAT1低発現群を表す。
ニボルマブ奏効例及び増悪例におけるLAT1発現の割合を表すグラフである。上は奏効群を、下は増悪群を表す。
抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体、及びLAT1阻害薬の作用機序を示す概念図である。

0021

抗PD−1抗体療法及び抗PD−L1抗体療法とは、患者にそれぞれ抗PD−1抗体及び抗PD−L1抗体を投与するがんの治療方法である。抗PD−1抗体として、例えば、ニボルマブ及びペムブロリズマブなどのヒト型抗ヒトPD−1モノクローナル抗体が挙げられる。抗PD−L1抗体として、例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ及びデュルバルマブなどのヒト型抗ヒトPD−L1モノクローナル抗体が挙げられる。

0022

抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体の投与に先立って、それぞれ抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体が奏効するか否かを予測することが、医療経済の観点及び患者のQOL(Quality Of Life)の観点から重要である。本発明の一実施形態に係る、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する方法は、被験者のがん組織から採取した試料のLAT1の発現レベルを測定し、LAT1の発現レベルに基づいて被験者に対する抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する。本発明の別の実施形態に係る抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する方法は、被験者のがん組織から採取した試料のLAT1及びPD−L1の発現レベルを測定し、LAT1及びPD−L1の発現レベルに基づいて被験者に対する抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する。LAT1及びPD−L1の両方をバイオマーカーとして用いることで、LAT1単独又はPD−L1単独をバイオマーカーとして用いる場合よりも正確に奏効性を予測することが可能となる。

0023

被験者のがん組織から採取した試料における、LAT1及びPD−L1の発現レベルを測定する方法は特に限定されず、例えば、免疫組織化学、ELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)等の公知の方法が挙げられる。

0024

LAT1の発現レベルに基づいて被験者に対する抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する。奏効性予測の基準として、例えば、(a)LAT1低発現の被験者に治療効果を示す可能性が高い、(b)LAT1高発現の被験者に治療効果を示す可能性が低い、を設定し得る。LAT1の発現の高低測定方法に依存するが、例えば、免疫組織化学の場合、試料中の全細胞に対してLAT1陽性細胞が25%未満の場合をLAT1低発現と定義し、25%以上の場合をLAT1高発現と定義することができる。

0025

また、LAT1及びPD−L1の発現レベルに基づいて被験者に対する抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測することもできる。奏効性予測の基準として、例えば、(c)LAT1低発現かつPD−L1高発現の被験者に治療効果を示す可能性が高い、(d)LAT1高発現かつPD−L1低発現の被験者に治療効果を示す可能性が低い、を設定し得る。PD−L1の発現の高低は測定方法に依存するが、例えば、免疫組織化学の場合、試料中の全細胞に対してPD−L1陽性細胞が10%未満の場合をPD−L1低発現と定義し、10%以上の場合をPD−L1高発現と定義することができる。

0026

抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性の予測の対象となるがんは特に限定されないが、例えば、肺がん、特に、非小細胞肺がん及び肺腺がんを対象とし得る。

0027

一実施形態において、本発明は、がんを治療する方法も提供する。かかる方法では、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する上記方法により得られた結果に基づいて、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法を行うことができる。具体的には、本発明の一実施形態に係るがんを治療する方法は、被験者のがん組織から採取した試料のLAT1及びPD−L1の発現レベルを測定する工程と、LAT1及びPD−L1の発現レベルに基づいて、被験者に対する抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する工程と、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法が治療効果を示す可能性が高いと予測された被験者に、それぞれ抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体を投与する工程と、を備える。抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する方法の詳細は、上述したとおりである。抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体を投与する方法は特に限定されず、例えば、静脈注射により抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体を投与することができる。

0028

上記患者には、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体と組み合わせてLAT1阻害薬を投与してもよい。抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体とLAT1阻害薬とは、同時に又は別々に投与することができる。LAT1阻害薬は特に限定されず、例えば、O−(5−アミノ−2−フェニルベンズオキサゾール−7−イル)メチル−3,5−ジクロロ−L−チロシンであってよい。LAT1阻害薬を投与する方法は特に限定されず、例えば、静脈注射によりLAT1阻害薬を投与することができる。本発明者らの新たな発見によれば、PD−L1とLAT1とは相互に関連しており、驚くべきことに、LAT1の発現又は活性が低下すると、PD−L1の発現が上昇する。したがって、患者のがん細胞におけるLAT1の発現レベル又は活性をLAT1阻害薬により低下させることにより、患者のがん細胞におけるPD−L1発現レベルを上昇させることができる。PD−L1の発現レベルが高いほど抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体による治療効果は上昇すると考えられるため、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体と組み合わせてLAT1阻害薬を投与することにより、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体を単独で投与する場合と比べて、より顕著な抗がん効果を得ることができる。

0029

また、本発明の別の一実施形態に係るがんを治療する方法は、被験者のがん組織から採取した試料のLAT1の発現レベルを測定する工程と、上記LAT1の発現レベルに基づいて、上記被験者に対する抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を予測する工程と、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法が治療効果を示す可能性が低いと予測された上記被験者に、それぞれ抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体とLAT1阻害薬とを投与する工程と、を備える。抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体とLAT1阻害薬とは、同時に又は別々に投与することができる。LAT1の発現レベルが高い患者(L−優位タイプ又はPL−共存タイプの患者)において抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体を単独で投与しても、その奏効性は低いと予測され得る。しかしながら、上述のとおり、LAT1阻害薬は、患者におけるLAT1の発現レベル又は活性を低下させるだけでなく、PD−L1発現レベルを上昇させることができるため、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体とLAT1阻害薬を併用することにより、LAT1の元々の発現レベルが高い、L−優位タイプ又はPL−共存タイプの患者においても、LAT1の発現レベルが低くかつPD−L1の発現レベルが高いP−優位タイプにおいて得られる抗がん効果と同程度の抗がん効果を得ることができる。

0030

同様の観点から、本発明の一実施形態は、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法とLAT1阻害療法とを併用することを含む、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を上昇させる方法を提供するといえる。かかる方法は、被験者に抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体とLAT1阻害薬とを投与する工程を備える。上記被験者は、上記被験者のがん組織から採取した試料のLAT1及びPD−L1の発現レベルに基づいて、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法が治療効果を示す可能性が高いと予測された被験者であってもよいし、上記被験者のがん組織から採取した試料のLAT1の発現レベルに基づいて、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法が治療効果を示す可能性が低いと予測された被験者であってもよい。

0031

図16に抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体、及びLAT1阻害薬の作用機序を示す。図16(A)は、抗がん療法を行っていないときの、患者におけるT細胞とがん細胞を示す。抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体の非存在下ではT細胞のPD−1とがん細胞のPD−L1とが結合可能な状態にある。患者に抗PD−1抗体を投与することで、図16(B)−1に示すように、PD−1とPD−L1との結合が阻害される。これにより貪食細胞がPD−L1を認識することができるようになるため、抗がん効果が発揮される。一方、患者に抗PD−L1抗体を投与することで、図16(B)−2に示すように、がん細胞のPD−L1と抗PD−L1抗体が結合する。これにより貪食細胞がPD−L1を強く認識することができるようになるため、抗がん効果が発揮される。抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体に加えてLAT1阻害薬を患者に投与することで、図16(C)−1及び(C)−2に示すように、LAT1阻害薬がLAT1の働きを阻害するため、がん細胞内へのアミノ酸供給が低下し、がん細胞のアポトーシスが増加する。それだけでなく、LAT1阻害薬によりPD−L1の発現レベルが上昇するため、より多くの貪食細胞がPD−L1を認識することができるようになり、よって、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体の奏効性が上昇する。したがって、より顕著な抗がん効果を得ることができると推察される。

0032

本発明の一実施形態に係る、被験者のがんの悪性度を評価する方法は、被験者のがん組織から採取した試料を抗LAT1抗体及び抗PD−L1抗体で染色する工程と、LAT1陽性かつPD−L1陽性の部位の有無に基づいて、被験者のがんの悪性度を評価する工程と、を備える。抗LAT1抗体及び抗PD−L1抗体による染色は、免疫組織化学により行うことができる。

0033

悪性度が高いがん組織においては、LAT1陽性かつPD−L1陽性の部位が存在する傾向にあり、悪性度が低いがん組織においては、LAT1陽性かつPD−L1陽性の部位が存在しない傾向にあるという知見を本発明者らは見出している。したがって、LAT1陽性かつPD−L1陽性の部位の有無に基づいてがんの悪性度を評価できる。

0034

悪性度の評価に基づいて被験者に対する治療方針を決定することができる。

0035

悪性度の評価の対象となるがんは特に限定されないが、例えば、肺がん、大腸がん、膵がん及び胆道がんを対象とし得る。

0036

(染色例1)
がん患者3名からがん組織を採取し、単一切片を抗LAT1抗体及び抗PD−L1抗体を用いて二重染色した結果を図1図3に示した。

0037

図1は、肺がん組織の染色の結果の一例である(倍率400倍)。上段左はLAT1を緑色の色素で染めたときの写真を表し、上段右はPD−L1を赤色の色素で染めたときの写真を表し、下段は両者を重ねた写真を表す。この肺がん組織ではPD−L1が優位に染め出されている。

0038

図2は、乳がん組織の染色の結果の一例である(倍率400倍)。上段左はLAT1を緑色の色素で染めたときの写真を表し、上段右はPD−L1を赤色の色素で染めたときの写真を表し、下段は両者を重ねた写真を表す。この乳がん組織ではLAT1が優位に染め出されている。

0039

図3は、肺がん組織の染色の結果の別の一例である(倍率400倍)。上段左はLAT1を緑色の色素で染めたときの写真を表し、上段右はPD−L1を赤色の色素で染めたときの写真を表し、下段は両者を重ねた写真を表す。下段の枠で囲った部分に黄色の染色像が認められた。黄色の染色像は、赤色の染色像と緑色の染色像が重なった結果であり、黄色で染まった部分には、PD−L1とLAT1の両方が存在していることを意味する。すなわち、この肺がん組織は、LAT1及びPD−L1の両方を発現する細胞を含む、PL−共存タイプのがん組織の一例である。

0040

(染色例2)
大腸がん患者からがん組織を採取し、単一切片をヘマトキシリン−エオジン(HE)及び抗体(抗LAT1、抗PD−1及び抗PD−L1)を用いて染色した。結果を図4に示した(倍率200倍)。HEは切片を紫色に染色し、抗体は切片を褐色に染める。上段左はHE染色像である。上段右は抗LAT1抗体による染色像である。下段左は抗PD−1抗体による染色像である。下段右は抗PD−L1抗体による染色像である。この大腸がん組織ではLAT1が強陽性であった。

0041

(染色例3)
トリプルネガティブ乳がん患者からがん組織を採取し、連続切片をHE及び抗体(抗LAT1、抗PD−1及び抗PD−L1)を用いて染色した。結果を図5に示した(倍率400倍)。上段左はHE染色像である。上段右は抗LAT1抗体による染色像である。下段左は抗PD−1抗体による染色像である。下段右は抗PD−L1抗体による染色像である。この乳がん組織ではPD−L1が陽性であった。

0042

(染色例4)
膵がん患者からがん組織を採取し、単一切片を抗LAT1抗体及び抗PD−L1抗体を用いて二重染色した。結果を図6に示した(倍率400倍)。上段左はLAT1を緑色の色素で染めたときの写真を表し、上段右はPD−L1を赤色の色素で染めたときの写真を表し、下段は両者を重ねた写真を表す。下段の写真に、PL−共存タイプのがん組織を示す黄色は認められなかった。

0043

図7に、別の膵がん患者のがん組織の結果を示す。上段左はLAT1を緑色の色素で染めたときの写真を表し、上段右はPD−L1を赤色の色素で染めたときの写真を表し、下段は両者を重ねた写真を表す。下段の写真に、PL−共存タイプのがん組織を示す黄色の陽性所見(矢印の部分)が明白に認められた。

0044

試験例1)非小細胞性肺がんでのニボルマブの奏効性の予測(1)
以下の試験例1〜3において、LAT1の発現レベル、又はLAT1の発現レベルとPD−L1の発現レベルとの組み合わせに基づいた、ニボルマブの奏効性の予測について検討した。本試験に組み込まれた、初回化学療法無効な再発進行非小細胞肺がんの患者21名(ステージIII/IV)からがん組織を採取し、抗LAT1抗体及び抗PD−L1抗体を用いた免疫組織化学によりLAT1及びPD−L1の発現を調べた。PD−L1及びLAT1発現の高発現及び低発現の判定基準を表3及び表4に示す。PD−L1及びLAT1ともに、腫瘍の細胞膜が染色されたときを陽性と判定して、10%以上のPD−L1陽性細胞を有する腫瘍をPD−L1高発現であると定義し、25%以上のLAT1陽性細胞を有する腫瘍をLAT1高発現であると定義した。

0045

非小細胞肺がんの患者21名(ステージIII/IV)の患者背景を表5に示す。

0046

その後、患者にニボルマブを投与し、ニボルマブの奏効性を調べた。ニボルマブの治療効果は、RECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)によるCT(Computed Tomography)で判定した。奏効率は、腫瘍の大きさをCTで計測して、奏効、増悪、又は安定のいずれかに分類する国際判断基準に従って評価した。奏効は、薬剤の投与後に、腫瘍の長径に30%以上の縮小が認められた場合を指す。増悪は、薬剤の投与後に、腫瘍の長径に20%以上の増大が認めた場合を指す。安定は、奏効と分類するには腫瘍の縮小が不十分で、かつ増悪と分類するには治療開始以降の最小の最長径の和に比して腫瘍の増大が不十分である場合を指す。

0047

図8図10に、いくつかの症例におけるLAT1及びPD−L1発現の免疫組織学的病理画像を示した。

0048

図8は、ニボルマブ治療に奏効して、10カ月以上無増悪生存が得られている患者の治療前のがん組織の染色の結果を示す図である(倍率200倍)。左はPD−L1抗体による染色像を示し、右はLAT1抗体による染色像を示す。PD−L1は高発現であるのに対し、LAT1は低発現であった。

0049

図9は、ニボルマブ治療で増悪した患者の治療前のがん組織の染色の結果を示す図である(倍率200倍)。左はPD−L1抗体による染色像を示し、右はLAT1抗体による染色像を示す。LAT1は高発現であるのに対し、PD−L1は低発現であった。

0050

図10は、ニボルマブ治療で増悪した患者の治療前のがん組織の染色の結果を示す図である(倍率200倍)。左はPD−L1抗体による染色像を示し、右はLAT1抗体による染色像を示す。PD−L1及びLAT1の発現は共に高発現であった。

0051

図8図10の結果から、PD−L1が高発現でありLAT1が低発現である患者(P−優位タイプの患者)においてはニボルマブ治療の奏効性が高くなり、PD−L1が低発現でありLAT1が高発現である患者(L−優位タイプの患者)並びにPD−L1及びLAT1の両方が高発現である患者(PL−共存タイプの患者)においては、ニボルマブを単独で用いた治療が奏効しないか、奏効性が低くなることが示唆された。

0052

21人の患者のがん組織試料における、2つのがんマーカーの発現レベルの結果を図11図12に示す。PD−L1の高発現群は21例中8例(図11上)であり、低発現群は13例(図11下)であった。PD−L1の高発現群のうち、LAT1の高発現群は1例であり、低発現群は7例であり、この差異統計学的に有意であった(p=0.010)。PD−L1の低発現群のうち、LAT1の高発現群は8例であり、低発現群は5例であり、統計学的有意差は認められなかった(p=0.433)。

0053

LAT1の高発現群は21例中9例(図12上)であり、低発現群は12例(図12下)であった。LAT1の高発現群のうち、PD−L1の高発現群は1例であり、低発現群は8例であり、この差異は統計学的に有意であった(p=0.003)。LAT1の低発現群のうち、PD−L1の高発現群は7例であり、低発現群は5例であり、統計学的有意差は認められなかった(p=0.684)。

0054

以上の結果から、非小細胞性肺がん患者のがん組織中のLAT1及びPD−L1発現の間には、負の相関が認められた。

0055

表5の組織型の行に示すように、非小細胞性肺がんの全症例21症例中、17例は肺腺がんであり、4例は扁平上皮がんであった。この肺腺がん17例を解析すると、PD−L1高発現の7例すべてがLAT1低発現であった(図示せず)。また、LAT1高発現の8例すべてがPD−L1低発現であった(図示せず)。したがって、いずれの組織型のがんにおいても、2つのがんマーカーに負の相関が認められた。LAT1及びPD−L1発現の間の上記負の相関は、がん組織内での両マーカーの未知のCross−talkの存在を伺わせる。

0056

(試験例2)非小細胞性肺がんでのニボルマブの奏効性の予測(2)
PD−L1の発現レベルのみに基づいてニボルマブの奏効性を予測することの可能性について検討した。2つのがんマーカーを指標にした、上記21人の患者のがん組織試料におけるニボルマブの奏効性を表す結果を、図13及び図14に示す。図13上はPD−L1高発現群の奏効性を、図13下はPD−L1低発現群の奏効性を表す。PD−L1高発現群は8例であり、そのうち4例が奏効であり、1例が増悪であり、3例が安定であった。他方、PD−L1低発現群は13例であり、そのうち3例が奏効であり、7例が増悪、3例が安定であった。

0057

図14上はLAT1高発現群の奏効性を、図14下はLAT1低発現群の奏効性を表す。LAT1高発現群は9例であり、そのうち1例が奏効であり、6例が増悪、2例が安定であった。他方、LAT1低発現群は12例であり、そのうち4例が奏効であり、3例が増悪、5例が安定であった。

0058

以上の結果から、PD−L1高発現の場合にニボルマブの奏効性が高いと予測し、PD−L1低発現の場合にニボルマブの奏効性が低いと予測したとすると、奏効性を正しく予測できた例は、21例中7例(PD−L1高発現群の奏効例4例+PD−L1低発現群の奏効例3例)、すなわち全患者の3分の1にとどまることになる。つまり、ニボルマブの奏効には大前提としてPD−L1の発現が必須ではあるが、PD−L1の発現レベルのみに基づいてニボルマブの奏効性を予測した場合、予測の正確性は33%となる。

0059

(試験例3)非小細胞性肺がんでのニボルマブの奏効性の予測(3)
PD−L1及びLAT1の発現レベルに基づいてニボルマブの奏効性を予測することの可能性について検討した。上記21症例の非小細胞性肺がん患者でのニボルマブの奏効と増悪の結果を図15にまとめた。図15上は奏効群を、図15下は増悪群を表す。奏効群7例のうち、LAT1高発現群は1例であり、LAT1低発現群は6例であり、統計学的有意差が認められた(p=0.029)。また、増悪群7例のうちLAT1高発現群は5例であり、LAT1低発現群は2例であり、統計学的有意差は認められなかった。

0060

PD−L1の発現自体は21例全部に認められたが、7例が奏効(奏効率=33%)で、14例が非奏効であり、非奏効の半分の7例は増悪を示した。奏効した7例のうちLAT1の低発現群が6例であることから、PD−L1を発現し、かつLAT1低発現である場合にニボルマブの奏効性が高いと予測することにより、奏効率の予測の正確性は85%(=6/7)に達する。一方、上記結果から、LAT1の高発現に基づく増悪率の予測の正確性は、71%(=5/7)となる。

0061

(試験例4)PD−L1とLAT1が同一細胞に発現するがん細胞を有する患者の予後予測
既に図3及び図10で示したような、上記2つのがんマーカーが同一細胞に存在する、PL−共存タイプのがん組織を有する患者の予後を表6に例示した。PL−共存タイプにおいては、同一細胞に2つのがんマーカーが発現しているので、PL−共存タイプは、各マーカーに対する分子標的に特異的な治療薬に対して抵抗性を発揮すると考えられる。PL−共存タイプ組織の検出には、単一切片を用いた二重染色を施す必要があるので、高い技術が必要とされる。標的がん細胞に対する新規治療法の開発が、この治療抵抗性を克服できるものと思われる。

0062

大腸がん、膵がん、肺がん及び胆道がんの患者2名ずつからがん組織を採取し、抗LAT1抗体及び抗PD−L1抗体を用いた免疫組織化学によりLAT1及びPD−L1の発現を調べた。PD−L1及びLAT1の両方を発現する細胞が存在するか否かを調べ、表6にまとめた。

0063

0064

表6から明らかなように、LAT1とPD−L1の両方を発現する細胞をがん組織中に含む患者は、LAT1とPD−L1の両方を発現する細胞をがん組織中に含まない患者と比較して、生存年数が短いことが分かった。

0065

(試験例5)LAT1及びPD−L1のノックダウンの相互効果
siRNAを使ってPD−L1又はLAT1のmRNA発現転写レベルでの抑制を試みた。WiDr細胞(ヒト結腸腺がん由来)、SKN細胞(ヒト子宮平滑筋肉腫細胞由来)、及びH520細胞(ヒト肺扁平上皮がん細胞由来)を培養皿播種した。PD−L1のmRNA発現を抑制するsiRNA、LAT1のmRNA発現を抑制するsiRNA、又はコントロールsiRNAを細胞に導入した。siRNAとしては、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社のAmbion(登録商標シリーズのSilencer(登録商標) Select siRNAsを用いた。具体的には、PD−L1のmRNA発現を抑制するsiRNAとしては、配列番号1及び2で示されるsiPD−L1#2(siRNA ID:s26548)を、LAT1のmRNA発現を抑制するsiRNAとしては、配列番号3及び4で示されるsiLAT1#3(siRNA ID:s15653)を、コントロールsiRNAとしては、Silencer Select Negative control #2(Cat#:390847)を用いた。発現抑制の効果が顕著に表れやすい48時間後に細胞を回収し、定量PCR法にて、細胞当たりのLAT1及びPD−L1のmRNA発現量を解析した。結果を表7に示す。

0066

0067

表7において、細胞当たりのmRNAの発現量は、コントロールsiRNAを導入した細胞のmRNAの発現量を1とした相対値で表した。WiDr細胞、SKN細胞、及びH520細胞のいずれにおいても、PD−L1及びLAT1の発現を、それぞれのマーカーに対応するsiRNAにより十分に抑制できることが確認された。また、PD−L1の発現を抑制するとLAT1の発現が増加し、LAT1の発現を抑制するPD−L1の発現が増加した。これらの結果より、PD−L1又はLAT1どちらか一方の発現の抑制が他方の発現を増加させること、及び、これらのタンパク質はがん細胞において相補的に働くことが示唆された。

0068

(試験例6)JPH203によるPD−L1発現量の変化
siRNAを用いた遺伝子抑制のかわりに、阻害薬JPH203を用いたLAT1活性の抑制を行い、試験例5と同様の結果が得られるかを調べた。JPH203はO−(5−アミノ−2−フェニルベンズオキサゾール−7−イル)メチル−3,5−ジクロロ−L−チロシンである。HuccT1細胞(ヒト胆管がん由来)及びOST細胞(ヒト骨線肉腫由来)を培養皿に播種した。30μMのJPH203(LAT1選択的阻害薬)で24時間処理した後、細胞を回収し、定量PCR法にてPD−L1のmRNA発現量を解析した。結果を表8に示す。

0069

実施例

0070

表8において、細胞当たりのmRNAの発現量は、JPH203で処理しなかったコントロールの発現量を1とした相対値で表した。HuccT1細胞及びOST細胞の両方で、PD−L1の発現が増加した。この結果より、LAT1活性の選択的阻害によってPD−L1の発現が増加することが示された。この結果は、試験例5の結果とともに、LAT1とPD−L1ががん細胞において相補的に働くことを裏付ける。また、LAT1の阻害によりPD−L1の発現が増加したことから、LAT1阻害療法によって、患者におけるLAT1の発現レベル又は活性を低下させるとともにPD−L1の発現レベルを上昇させることができると考えられる。すなわち、LAT1阻害療法によって、患者におけるPD−L1の発現レベルをP−優位タイプの患者におけるそれに近づけることができると考えられる。試験例1及び試験例3の結果が示すように、PD−L1高発現かつLAT1低発現の患者(P−優位タイプの患者)におけるニボルマブの奏効性は高い。したがって、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法とLAT1阻害療法とを組み合わせることによって、患者に抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体療法の奏効性を上昇させることができることが、本試験例により示唆された。

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