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技術 シート状脱細胞化材料及び同材料を用いる人工血管

出願人 株式会社ADEKA
発明者 山口雄木村拓矢
出願日 2018年10月24日 (2年2ヶ月経過) 出願番号 2019-551177
公開日 2020年9月24日 (3ヶ月経過) 公開番号 WO2019-087880
状態 未査定
技術分野 微生物、その培養処理 医療用材料
主要キーワード 耐圧性試験 高静水圧 物理的撹拌 層構造部分 チャック付き袋 二重巻き 重合性接着剤 打抜き刃
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (2)

課題・解決手段

本発明は、4方向の引張強さの最大値が4MPa以上であって、引張強さが最大となる方向における伸び率が50%〜300%である、生体材料由来シート脱細胞化材料に関する。本発明によって、血管として又は血管の修復に用いた際、優れた耐圧性を維持することができるシート状材料が提供される。

概要

背景

血管移植片が、バイパス手術のための血管の構築に、また損傷しているか若しくは病的な血管の修復又は置換に用いられている。例えば、管状動脈又は末梢血管アテローム性動脈硬化症治療において、直径5mm未満の患部には、自己血管が好適な置換移植片であり、自己内胸動脈橈骨動脈伏在静脈等の自己血管が用いられている。しかし、自己の血管を使用する場合、採取時に侵襲を避けることはできないため、患者の身体への負担が大きく、また個人又は症例によって、その長さ又は質にばらつきがあることは避けられない。さらに、再手術の場合には、既に使用されているために供給できないとの問題があった。

一方、ポリエステルポリテトラフルオロエチレン等の合成樹脂素材とした人工血管が、四肢抹消動脈の血行再建等に用いられている。しかし、これらの合成樹脂を素材とした人工血管は冠動脈のような小口径の血管に使用した場合、早期に血栓が生じて内膜肥厚となるため使用することができない。また、これら合成樹脂を素材とした人工血管の血液凝固を予防するために、人工血管の内腔患者本人血管内皮細胞組織工学的手法によって被覆することが行われている。しかし、手術前に患者から骨髄を採取し、培養し、これを人工血管に生着させなければならず、事前の準備が必要であり、緊急で施術しなければならないような手術においてはその有用性は低かった。また、血管内腔を被覆した内皮細胞も剥がれやすく、それによって血栓が生じるとの問題もあった。

かかる中、特許文献1では、拒絶反応を防ぐために脱細胞化された生体材料シートを管状に成形した人工血管が提案されている。具体的には、ブタ大動脈から調製したシートをそのまま管状に巻いて人工血管が形成されている。しかし、その内腔の断面に、シートの縁部がシートの厚みの分だけ、管の内腔に突き出ることになり、管の断面が円形又は楕円形にはならない(参照:特許文献2の図8)。管状構造体の断面がそのような形状であると、血液が流れた時に、その突き出た部分に局所的な圧力がかかり、それによって剥がれる場合があり、血管の耐圧性が充分ではなかった。また、耐圧性を確保するためにシートを厚くすれば、施術時のハンドリング性が悪くなるとの問題が生じる。さらに、突き出た部分に血小板などが付着しやくなり、血栓ができやすくなるとも考えられる。

上記の特許文献1の問題を解決したのが、本出願人による特許文献2に記載された発明である。特許文献2には、少なくとも1辺の縁部が末端に向かって厚み方向に薄くなるテーパーを有する生体由来組織のシート、及びこのシートを用いる管状構造体が記載されている。実施例では特許文献1と同じく、ブタ大動脈を用いてシート等が調製されている。
以上の通り、特許文献1及び2の生体由来組織のシートとして、ブタ大動脈から調製されたものが具体的に用いられている。そこで、ブタ大動脈由来の生体由来組織のシートよりもさらに耐圧性が向上され、血管として又は血管の修復に用いた際、優れた耐圧性を維持することができる材料が望まれていた。

概要

本発明は、4方向の引張強さの最大値が4MPa以上であって、引張強さが最大となる方向における伸び率が50%〜300%である、生体材料由来シート状脱細胞化材料に関する。本発明によって、血管として又は血管の修復に用いた際、優れた耐圧性を維持することができるシート状材料が提供される。

目的

そこで、ブタ大動脈由来の生体由来組織のシートよりもさらに耐圧性が向上され、血管として又は血管の修復に用いた際、優れた耐圧性を維持することができる材料が望まれていた

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

4方向の引張強さの最大値が4MPa以上であって、引張強さが最大となる方向における伸び率が50%〜300%である、生体材料由来シート脱細胞化材料。

請求項2

ロール化後の人工血管耐圧強度が400mmHg以上である、請求項1に記載の生体材料由来シート状脱細胞化材料。

請求項3

引張強さに異方性があり、最大応力比が1.5〜5である、請求項1又は2に記載の生体材料由来シート状脱細胞化材料。

請求項4

心膜由来である、請求項1〜3のいずれかに記載の生体材料由来シート状脱細胞化材料。

請求項5

人工血管用又は血管の修復用である、請求項1〜4のいずれかに記載の生体材料由来シート状脱細胞化材料。

請求項6

請求項1〜4のいずれかに記載の生体材料由来シート状脱細胞化材料からなる人工血管。

技術分野

0001

本発明は、シート脱細胞化材料及び同材料を用いる人工血管に関する。

背景技術

0002

血管移植片が、バイパス手術のための血管の構築に、また損傷しているか若しくは病的な血管の修復又は置換に用いられている。例えば、管状動脈又は末梢血管アテローム性動脈硬化症治療において、直径5mm未満の患部には、自己血管が好適な置換移植片であり、自己内胸動脈橈骨動脈伏在静脈等の自己血管が用いられている。しかし、自己の血管を使用する場合、採取時に侵襲を避けることはできないため、患者の身体への負担が大きく、また個人又は症例によって、その長さ又は質にばらつきがあることは避けられない。さらに、再手術の場合には、既に使用されているために供給できないとの問題があった。

0003

一方、ポリエステルポリテトラフルオロエチレン等の合成樹脂素材とした人工血管が、四肢抹消動脈の血行再建等に用いられている。しかし、これらの合成樹脂を素材とした人工血管は冠動脈のような小口径の血管に使用した場合、早期に血栓が生じて内膜肥厚となるため使用することができない。また、これら合成樹脂を素材とした人工血管の血液凝固を予防するために、人工血管の内腔患者本人血管内皮細胞組織工学的手法によって被覆することが行われている。しかし、手術前に患者から骨髄を採取し、培養し、これを人工血管に生着させなければならず、事前の準備が必要であり、緊急で施術しなければならないような手術においてはその有用性は低かった。また、血管内腔を被覆した内皮細胞も剥がれやすく、それによって血栓が生じるとの問題もあった。

0004

かかる中、特許文献1では、拒絶反応を防ぐために脱細胞化された生体材料のシートを管状に成形した人工血管が提案されている。具体的には、ブタ大動脈から調製したシートをそのまま管状に巻いて人工血管が形成されている。しかし、その内腔の断面に、シートの縁部がシートの厚みの分だけ、管の内腔に突き出ることになり、管の断面が円形又は楕円形にはならない(参照:特許文献2の図8)。管状構造体の断面がそのような形状であると、血液が流れた時に、その突き出た部分に局所的な圧力がかかり、それによって剥がれる場合があり、血管の耐圧性が充分ではなかった。また、耐圧性を確保するためにシートを厚くすれば、施術時のハンドリング性が悪くなるとの問題が生じる。さらに、突き出た部分に血小板などが付着しやくなり、血栓ができやすくなるとも考えられる。

0005

上記の特許文献1の問題を解決したのが、本出願人による特許文献2に記載された発明である。特許文献2には、少なくとも1辺の縁部が末端に向かって厚み方向に薄くなるテーパーを有する生体由来組織のシート、及びこのシートを用いる管状構造体が記載されている。実施例では特許文献1と同じく、ブタ大動脈を用いてシート等が調製されている。
以上の通り、特許文献1及び2の生体由来組織のシートとして、ブタ大動脈から調製されたものが具体的に用いられている。そこで、ブタ大動脈由来の生体由来組織のシートよりもさらに耐圧性が向上され、血管として又は血管の修復に用いた際、優れた耐圧性を維持することができる材料が望まれていた。

先行技術

0006

国際公開2014/109185号パンフレット
国際公開2016/194895号パンフレット

発明が解決しようとする課題

0007

本発明が解決しようとする課題は、血管として又は血管の修復に用いた際、優れた耐圧性を維持することができるシート状材料を提供することにある。

課題を解決するための手段

0008

本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、引張強さと伸び率を特定の範囲にした生体材料由来シート状脱細胞化材料を用いて人工血管を調製したところ、意外にも従来最適と考えられていたブタ大動脈由来の材料よりも遥かに高い耐圧性を有する人工血管を調製することができることを見出して、本発明を完成した。

0009

すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)4方向の引張強さの最大値が4MPa以上であって、引張強さが最大となる方向における伸び率が50%〜300%である、生体材料由来シート状脱細胞化材料。
(2)ロール化後の人工血管の耐圧強度が400mmHg以上である、(1)に記載の生体材料由来シート状脱細胞化材料。
(3)引張強さに異方性があり、最大応力比が1.5〜5である、(1)又は(2)に記載の生体材料由来シート状脱細胞化材料。
(4)心膜由来である、(1)〜(3)のいずれかに記載の生体材料由来シート状脱細胞化材料。
(5)人工血管用又は血管の修復用である、(1)〜(4)のいずれかに記載の生体材料由来シート状脱細胞化材料。
(6)(1)〜(4)のいずれかに記載の生体材料由来シート状脱細胞化材料からなる人工血管。

発明の効果

0010

本発明の生体材料由来シート状脱細胞化材料は、従来最適と考えられていたブタ大動脈由来の材料よりも遥かに高い耐圧強度を有する人工血管を調製することができる。従って、本発明の生体材料由来シート状脱細胞化材料を血管として又は血管の修復に用いた際、血管そのものの耐圧性にも匹敵する優れた耐圧性を維持することができる。

図面の簡単な説明

0011

(i)本発明の一実施態様の人工血管の正面断面を表す図である。(ii)本発明の別の実施態様の人工血管の正面断面を表す図である。

0012

1.生体材料由来シート状脱細胞化材料
本発明の生体材料由来シート状脱細胞化材料は、4方向の引張強さの最大値が4MPa以上であって、引張強さが最大となる方向における伸び率が50%〜300%である、生体材料由来シート状脱細胞化材料である。

0013

本発明の生体材料由来シート状脱細胞化材料に用いられる生体材料は、動物に由来する材料である。動物としては、好ましくは脊椎動物等が挙げられ、拒絶反応が少ないことから、より好ましくは哺乳類鳥類等が挙げられる。また、入手が容易であることから、さらに好ましくは哺乳類の家畜、鳥類の家畜、ヒト等が挙げられる。具体的な哺乳類の家畜としては、例えば、ウシブタヒツジウマヤギシカイヌネコウサギハムスターモルモットラットマウスラクダ、リャマ、ロバヤクアルパカ、タヌキ、イタチキツネリスアライグマ等が挙げられる。具体的な鳥類の家畜としては、例えば、ニワトリ、アヒル七面鳥ガチョウホロホロ鳥キジダチョウウズラインコ、オウム等が挙げられる。好ましい動物として、ブタ、ウシ、ウマ、ヒト等が挙げられ、入手しやすさ及び安全性の面で、ブタ、ウシ等がより好ましい。

0014

生体材料として用いる動物の組織の部位としては、細胞外マトリックス構造を持った部位が挙げられる。具体的には、例えば、心臓、心膜、心臓弁膜筋膜、皮膚、真皮、血管、肝臓腎臓尿管膀胱尿道扁桃食道小腸大腸肛門膵臓脾臓、脳、骨、脊髄軟骨精巣子宮卵管卵巣胎盤角膜骨格筋、神経、硬膜臍帯羊膜腸管小腸粘膜下組織、その他のコラーゲン含有組織等が挙げられる。皮膚、真皮等を用いた場合は、膜厚が大きいためハンドリング性に劣り、また毛穴に由来する部分が残れば、その部分に血小板などが付着しやくなり、血栓ができやすくなるとの問題も生じうる。これらを考慮すると、また脱細胞化のし易さ、入手のし易さ、ロール化したときの耐圧性とハンドリング性の観点から、上記の部位の中で、心臓、心膜、心臓弁膜、筋膜、皮膚、血管等が好ましい。なお、優れた耐圧性を示すことができるため、心臓、心膜、心臓弁膜、筋膜、皮膚等がより好ましく、血管そのものの耐圧性にも匹敵する優れた耐圧性を示すため、心膜が特に好ましい。

0015

生体材料は続いて、脱細胞化とシート化を行うことで、生体材料由来シート状脱細胞化材料を調製することが得られる。脱細胞化は、シート化の前でも、後でも行うことができ、あるいはロール化して人工血管とした後に行うこともできる。しかし、加工性と脱細胞化のし易さから、脱細胞化は、ロール化の前に行うことが好ましく、またシート形状とした後に行うことが好ましい。

0016

脱細胞化は、動物から採取した生体材料から細胞及び核酸成分等の抗原性を有する成分を除去するために行う。脱細胞化を行うことで、生体移植組織として使用した場合に起こる拒絶反応を抑制することができる。

0017

本発明において、脱細胞化の方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。脱細胞化の例としては、物理的撹拌超音波処理凍結融解法高静水圧法、高張液低張液法、アニオン性界面活性剤又はノニオン性仮面活性剤等の界面活性剤による処理、蛋白分解酵素又は核酸分解酵素等による酵素処理アルコール溶剤による処理等が挙げられ、これらの2種以上を組み合わせることもできる。
本発明においては、構造タンパク質力学強度を保持したまま効率良く脱細胞化できること、及び血液適合性の観点から、高静水圧法を含む方法を用いることが好ましい。

0018

シート化においては、シートの形状は問わないが、ロール化した人工血管の耐圧性とハンドリング性、加工性の点から矩形長方形)又は略矩形が好ましい。シートが矩形又は略矩形の場合、その大きさは、目的の人工血管の大きさによって適宜選択することができる。ロール化としたときの、耐圧性とハンドリング性の点から、長さ方向の1辺(長辺)の長さは通常10〜400mmであり、20〜300mmが好ましい。シートの幅方向の1辺の長さ(短辺)は通常1.5〜200mmであり、3〜70mmが好ましく、6〜40mmがより好ましい。

0019

本発明の生体材料由来シート状脱細胞化材料において、4方向の引張強さの最大値は4MPa以上であり、好ましくは5MPa以上である。4方向の引張強さの最大値が4MPa以上である本発明の生体材料由来シート状脱細胞化材料を用いることで、ロール化して調製される人工血管が極めて高い耐圧強度を有する。他方、試験例3及び4から理解されるように、ブタ大動脈又はウシ大動脈を用いて調製された生体材料由来シート状脱細胞化材料では、4方向の引張強さの最大値がそれぞれ3.1MPa又は3.9MPaであり、そのためロール化して調製される人工血管の耐圧強度も劣っている。

0020

本発明の生体材料由来シート状脱細胞化材料において、引張強さが最大となる方向における伸び率が50%〜300%であり、好ましくは100〜250%であり、より好ましくは150〜220%である。伸び率をこの範囲にすることで、ロール化して調製される人工血管が極めて高い耐圧強度を有する。他方、試験例3及び4から理解されるように、ブタ大動脈又はウシ大動脈を用いて調製された生体材料由来シート状脱細胞化材料では、伸び率がそれぞれ304%又は332%であり、そのためロール化して調製される人工血管の耐圧強度も劣っている。

0021

本発明の生体材料由来シート状脱細胞化材料において、引張強さに異方性があって、最大応力比が1.5〜5であるものも好ましい。その場合、本発明の生体材料由来シート状脱細胞化材料のロール化は、血管の円周方向に引張強さが大きくなるように行うことが好ましい。

0022

従来最適と考えられていたブタ大動脈又はウシ大動脈を用いて調製されたシート状脱細胞化材料をロール化して調製される人工血管は、試験例3及び4に記載の通り、耐圧強度が120mmHg又は121mmHgと低い。それに対して、4方向の引張強さの最大値が4MPa以上であり、引張強さが最大となる方向における伸び率が50%〜300%である本発明の生体材料由来シート状脱細胞化材料を用いてロール化して調製される人工血管は、試験例3及び4に記載の通り、従来最適と考えられていたブタ大動脈由来の材料よりも遥かに高い、例えば400mmHg以上の耐圧強度を有する。すなわち、本発明の人工血管の耐圧強度は、好ましくは、400mmHg以上であり、より600mmHg以上であり、さらに好ましくは800mmHg以上であり、最も好ましくは1000mmHg以上である。

0023

2.人工血管
本発明の生体材料由来シート状脱細胞化材料を用いて、人工血管を調製することができる。本発明の人工血管の正面断面の形状としては、例えば、円形、略円形、楕円形、略楕円形等が挙げられ、柔軟性に富むために、その形状は用途に応じて変形させることができる。その内周は通常、1.5〜200mmが好ましく、3〜70mmがより好ましく、更に好ましくは6〜40mmである。

0024

本発明の人工血管は、耐圧性の観点から、人工血管を形成する壁部の一部が2層構造となっていることが好ましい。人工血管を形成する壁部の一部が2層構造となっている態様としては、壁部として2層構造及び3層構造を有する人工血管(例えば図1(i))、壁部として全てが2層構造である人工血管、及び壁部として単層構造及び2層構造を有する人工血管(例えば図1(ii))が含まれる。

0025

壁部として2層構造及び3層構造を有する人工血管における、2層構造部分の長さ(図1(i)における、外壁上の点gから、右回りに点hまでの外壁上の距離)は、外周の長さに対し、0%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ここで、外周の長さは、人工血管の任意の1点を始点及び終点とする人工血管の外壁部の長さを指す。例えば、図1(i)の外周の長さとは、gを始点及び終点とする人工血管の外壁部の長さを指す。

0026

壁部として単層構造及び2層構造を有する人工血管における、2層構造部分の長さ(図1(ii)における、外壁上の点jから、左回りに点kまでの外壁上の距離)は、外周の長さに対し、10%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ここで、外周の長さは、人工血管の任意の1点を始点及び終点とする人工血管の外壁部の長さを指す。例えば、図1(ii)の外周の長さとは、jを始点及び終点とする人工血管の外壁部の長さを指す。

0027

本発明の人工血管では、特許文献2に記載された少なくとも1辺の縁部が末端に向かって厚み方向に薄くなる形状(テーパー)を有する生体材料由来シート状脱細胞化材料を用いることが好ましい。すなわち、生体材料由来シート状脱細胞化材料の断面の両端又は一端が先細りの形状となったものである。その生体材料由来シート状脱細胞化材料の断面は、直線的に加工されている必要はない。テーパー部は、生体材料由来シート状脱細胞化材料の4辺の縁部全てに有してもよく、生体材料由来シート状脱細胞化材料の3辺、2辺または1辺の縁部がテーパー状になっていてもよい。生体材料由来シート状脱細胞化材料はテーパー部が人工血管の内腔側になるようにロール化して、人工血管を形成する。また、生体材料由来シート状脱細胞化材料の少なくとも2辺の縁部にテーパーを有することが好ましく、生体材料由来シート状脱細胞化材料の長さ方向の2辺の縁部にテーパーを有することが更に好ましく、生体材料由来シート状脱細胞化材料の1辺の縁部にテーパーを有することがなお更に好ましく、長さ方向の1辺の縁部にテーパーを有することが最も好ましい。

0028

人工血管の調製の一実施態様として、芯材にシートを巻きつけることによって人工血管を形成することができる。ここで、芯材の外周や長さは、目的とする人工血管の内周や長さによって種々の芯材を選択することができ、材質は問わない。使用する芯材の外周は、概ね人工血管の内周に対応するため、目的とする人工血管の内周に応じて、芯材を適宜選択すればよい。芯材としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製やポリウレタン(PU)製、ステンレス鋼材(SUS)製のチューブ円柱状の棒材が挙げられる。

0029

本発明の人工血管は、生体材料由来シート状脱細胞化材料の一部を縫合することにより、又は接着剤で貼りあわせることにより形成することが可能であり、これらの両方とも用いてもよい。加工性の点から、接着剤を用いて貼りあわせることが好ましい。従って、生体材料由来シート状脱細胞化材料のテーパー部は縫合や接着剤などの手段で人工血管の内壁に固定され得る。
使用できる接着剤は、従来使用されている生体組織用の接着剤であればよく、フィブリン糊シアノアクリレート系の重合性接着剤ゼラチンレゾルシノールホルマリン架橋させるゼラチンなどが挙げられ、耐圧性の点から、フィブリン糊が好ましい。フィブリン糊とは、フィブリノゲン酵素であるトロンビンが作用して形成される糊状凝塊を、例えば組織の閉鎖臓器損傷の接着及び止血などに利用する製剤のことをいう。

0030

接着剤は、生体材料由来シート状脱細胞化材料が人工血管を形成するように貼り合わすことができれば、接着剤を塗布する場所は特に限定されない。しかし、人工血管の内壁面に接着剤が存在しないように塗布することが好ましい。接着剤が人工血管の内側(内腔)を通過する物質と接触することで何らかの悪影響を及ぼす可能性があるためである。さらに、テーパー部には十分に接着材を塗布して、図1(i)又は(ii)のような、人工血管の断面が円形、略円形、楕円又は略楕円形となるように接着させる必要がある。テーパー部の接着が不十分であると、その部分の耐圧性が悪化する可能性があり、所望の人工血管を得ることができないからである。

0031

本発明の人工血管は、人工血管用途として用いられるが、例えば、尿管、気管リンパ管等の管状の生体組織の移植片としても使用できる。
本発明の人工血管は、従来最適と考えられていたブタ大動脈由来の材料よりも遥かに高い耐圧強度を有する。本発明の人工血管の耐圧強度は、好ましくは、600mmHg以上であり、より好ましくは800mmHg以上であり、さらに好ましくは1000mmHg以上である。また、本発明の人工血管は、手術時等のハンドリング性に優れる。

0032

本発明の生体材料由来シート状脱細胞化材料を用いて、血管補修材として血管の補修のために用いることもできる。例えば、本発明の生体材料由来シート状脱細胞化材料を用いて、血管の損傷した部分に貼り付ける等の処置を行うことができる。

0033

以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
実施例1
ブタ大動脈シート状脱細胞化材料の調製
ブタ大動脈の外膜を全体的に剥離し除去した後、切り開いてシート状の大動脈を得た。ポリエチレンチャック付き袋に、得られたシートを、生理食塩水媒体として、研究開発高圧処理装置((株)神戸製鋼所製:Dr.CHEF)で100MPaにて15分間高静水圧処理を行った。処理したシートを核酸分解酵素のDNaseを20ppm含有する生理食塩水中、4℃で96時間振盪し、続いて80%エタノール中で4℃にて72時間、最後に生理食塩水中で4℃にて2時間洗浄を行って、ブタ大動脈シート状脱細胞化材料を得た。

0034

実施例2
ブタ大動脈脱細胞化人工血管の調製
実施例1で調製したブタ大動脈シート状脱細胞化材料を24mm×100mmに成型し、管状構造体に成形後内側になるようにして、生体接着剤のフィブリン糊を、中膜組織側の面に塗布しながら、外径3.0mmのPTFEチューブを芯として二重巻きに巻きつけ、5分間圧着して成形した。それを生理食塩水に浸漬し、芯材のPTFEチューブを抜き取り、両端を切断して、100mm×3mmφの人工血管を作製した。ロール化は大動脈の流路と同一の方向に流路が形成されるように成型した。

0035

試験例1
耐圧性試験
ブタ大動脈の一端を鉗子クランプし、反対側の端部にカニューレを挿入して結紮した。カニューレにはシリンジ及びマノメーターを接続した。シリンジ内の生理食塩水をブタ大動脈内に注入し、破裂した際の圧力を耐圧力として測定した。結果を表1に示す。
実施例2で調製した人工血管の一端を鉗子でクランプし、反対側の端部にカニューレを挿入して結紮した。カニューレにはシリンジ及びマノメーターを接続した。シリンジ内の生理食塩水を人工血管内に注入し、人工血管が破裂した際の圧力を耐圧力として測定した。結果を表1に示す。

0036

0037

実施例3
ブタ心膜シート状脱細胞化材料の調製
ポリエチレン製チャック付き袋に、採取したブタ心膜シートを、生理食塩水を媒体として、研究開発用高圧処理装置((株)神戸製鋼所製:Dr.CHEF)で100MPaにて15分間高静水圧処理を行った。処理したシートを核酸分解酵素のDNaseを20ppm含有する生理食塩水中、4℃で96時間振盪し、続いて80%エタノール中で4℃にて72時間、最後に生理食塩水中で4℃にて2時間洗浄を行って、ブタ心膜シート状脱細胞化材料を得た。

0038

実施例4
ブタ真皮シート状脱細胞化材料の調製
ブタの皮膚から真皮層を分離し、シート状の真皮を得た。ポリエチレン製チャック付き袋に、この真皮と、高静水圧処理の媒体として生理食塩水を入れ、研究開発用高圧処理装置((株)神戸製鋼所製:Dr.CHEF)を用いて、100MPaの静水圧を15分間印加した。高静水圧処理した真皮を、核酸分解酵素としてDNaseを20ppm含有する生理食塩水中、4℃で96時間振盪することにより洗浄し、更に、80%エタノール中、4℃で72時間振盪した後、生理食塩水中、4℃で2時間振盪して、ブタ真皮シート状脱細胞化材料を得た。

0039

試験例2
ブタ由来シート状脱細胞化材料の引張試験
(1)試験片の採取・作製
実施例1、3及び4で調製した長方形をしたシート状脱細胞化材料(ブタ大動脈、ブタ心膜、ブタ真皮)からISO37に記載されているダンベル形状8号形試験片を採取した。シート内における引張強さの異方性も評価するため、長辺と平行方向に試験片を採取する場合を0°とし、1枚のシートから0°、30°、60°、90°の4方向についてダンベル状試験片を作製した。

0040

(2)試験片の測定
ダンベル状試験片の平行部分の厚さは、3Dワンショット形状測定装置VR−3200、キーエンス社製)を用いて測定した。試験片の幅(mm)は、平行部分の打抜き刃形の切断端面間の長さ(40mm)をそのまま用いた。
試験片の厚さと幅から試験片の断面積A(mm2)を次の式で算出した。
A=t×w
(A:試験片断面積(mm2)、t:試験片厚さ(mm)、w:試験片幅(mm))

0041

(3)試験手順
ISO37に準拠し、以下の通り引張試験を実施した。断面に均一に引張力分布させるため、試験片の両端が対象的に保持されるように、試験片を力学試験機(MCT2150、AND社製)に取り付けた。試験機を作動させ標線間距離の変化と力の変化を継続的に観察し、最大荷重Fmax(N)と切断時の標線間距離Lb(mm)を測定した。つかみ具の速度は、200mm/minとした。標線間の外側で破断した試験片データは、棄却し、追加の試験片で繰り返し試験を行った。4方向に打ち抜いた試験片は、方向毎に正しく2回測定されるまで行った。測定値から下記計算式で4方向の引張強さ、引張強さの異方性、伸び率を計算し、表2に示した。
なお、「4方向の引張強さ」及び「応力比」は、方向毎の平均値に基づいて4方向間について比較した。

0042

(4)結果の計算
<引張強さσ>
σ(MPa(N/mm2))は次の式で算出した。
σ=Fmax/A
(σ:引張強さ(MPa)、Fmax:最大加重(N)、A:試験片断面積(mm2))
<伸び率(切断時伸び)ε>
ε(%)は、次の式で算出した。
ε=(Lb−L0)/L0×100
(Lb:切断時の標線間距離(mm)、L0:初期の標線間距離(mm))
<シート内の異方性>
シート内の異方性は、次の式で算出される応力比Sとして取り扱った。
S=σmax/σmin
(σmax:4方向の引張試験のうち、最大の引張強さ(MPa))
σmin:4方向の引張試験のうち、最小の引張強さ(MPa))

0043

実施例5
ブタ由来シート状脱細胞化人工血管の調製
実施例2及び3で調製したシート状脱細胞化材料を24mm×100mmに成型し、表面の水分をふき取り、生体接着剤のフィブリン糊を塗布しながら、外径3.0mmのPTFEチューブを芯として二重巻きに巻きつけ、5分間圧着して成形した。それを生理食塩水に浸漬し、芯材のPTFEチューブを抜き取り、両端を切断して、100mm×3mmφの人工血管を作製した。ロール化は、血管の円周方向に引張強さが大きくなるように成形した。

0044

試験例3
ブタ由来シート状脱細胞化人工血管の引張試験及び耐圧性試験
実施例2及び5で調製した3つの人工血管の一端を鉗子でクランプし、反対側の端部にカニューレを挿入して結紮した。カニューレにはシリンジ及びマノメーターを接続した。シリンジ内の生理食塩水を人工血管内に注入し、人工血管が破裂した際の圧力を耐圧力として測定した。結果を表2に示す。

0045

0046

実施例6
ウシ由来シート状脱細胞化材料及びウシ由来シート状脱細胞化人工血管の調製
ブタ大動脈に代えてウシ大動脈、及びブタ心膜に代えてウシ心膜を用いた以外は実施例1〜5と同様にして、ウシ大動脈シート状脱細胞化材料及びウシ心膜シート状脱細胞化材料、並びにウシ大動脈脱細胞化人工血管及びウシ心膜脱細胞化人工血管を調製した。

0047

試験例4
ウシ由来シート状脱細胞化人工血管の引張試験及び耐圧性試験
実施例6で調製したウシ由来シート状脱細胞化材料及びウシ由来シート状脱細胞化人工血管を用いて、試験例3と同様にして引張試験及び耐圧性試験を行った。その結果を表3に示す。

0048

実施例

0049

今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。

0050

本発明の生体材料由来シート状脱細胞化材料は、従来最適と考えられていたブタ大動脈由来の材料よりも遥かに高い耐圧強度を有する人工血管を調製することができる。従って、本発明の生体材料由来シート状脱細胞化材料を血管として又は血管の修復に用いた際、血管そのものの耐圧性にも匹敵する優れた耐圧性を維持することができる。

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