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技術 植物のストレスの検出方法及び植物における発光タンパク質の検出方法

出願人 国立大学法人筑波大学
発明者 木下奈都子
出願日 2018年10月24日 (2年2ヶ月経過) 出願番号 2019-551215
公開日 2020年9月24日 (3ヶ月経過) 公開番号 WO2019-082942
状態 未査定
技術分野 植物の栽培
主要キーワード 微小段 成長具合 次産業 ディバイダー 香り物質 励起発光波長 拡大防止 耐性強化
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年9月24日)のものです。
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図面 (17)

課題・解決手段

農作物などの対象植物病害虫被害早期発見するための方法を提供する。 農作物などの対象植物の近傍に、ストレス応答性プロモーター及び該ストレス応答性プロモーターの下流に作動可能に連結された発光タンパク質遺伝子を含むモニター植物を配置する。

概要

背景

植物は、脊椎動物に見られるような抗体反応・食作用などの免疫システムによる生体防御機構を有していないが、それとは異なる仕組みにより病原菌などの攻撃から身を守っている。植物は、一部の組織で病原菌の感染を受けるとシグナル全身発信し、未感染組織に防御態勢誘導させることができる。感染シグナルを全身に伝える伝達経路は、複数あることが知られており、代表的なものとしては、全身獲得抵抗性シグナル伝達経路誘導抵抗性シグナル伝達経路、及び誘導全身抵抗性シグナル伝達経路などが存在する。このようなシグナル伝達経路においては、植物の一部の組織が、病原菌による感染ストレスなどを受けた場合、その感染部位から何らかのシグナル物質が放出され、それが植物体内を通ってまだ感染を受けていない部位まで到達し、そこで抵抗性発現関与する遺伝子の発現を誘導する。この抵抗性に関与する物質としては、それ自身が抗菌活性を有するPRタンパク質細胞壁を溶解するグルカナーゼ及びキチナーゼ、病原菌に対して毒性を示すファイトアレキシンなどが挙げられる。これまで、このような抵抗性の誘導は、同一植物個体内に限定して起こるものと考えられていた。しかしながら、ジャスモン酸メチル短鎖アルデヒド及びイソプレノイドなどの植物由来揮発性成分には、植物の抵抗性を誘導する風媒性シグナルとしての機能が存在することが発見され、物理的に離れた同種又は異種の植物がそれを認識することによって、生体防御機構を活性化させること(立ち聞き効果)が知られるようになった。
このような植物の立ち聞き効果を利用した技術として、植物由来揮発性物質植物抵抗性誘導剤として利用することが報告されている(特許文献1)。
また、植物はストレスに応答して微弱生体発光することが知られており、植物に病原体攻撃等のストレスを与えた場合に特定波長の発光を観測する方法(特許文献2)や、免疫安定資材アブシジン酸)と誘導物質サリチル酸ジャスモン酸)により発生するバイオフォトンを測定することにより、植物の病害抵抗性反応の抑制を阻害する植物免疫安定化資材の効果を評価する方法(特許文献3)が報告されている。

概要

農作物などの対象植物病害虫被害早期発見するための方法を提供する。 農作物などの対象植物の近傍に、ストレス応答性プロモーター及び該ストレス応答性プロモーターの下流に作動可能に連結された発光タンパク質遺伝子を含むモニター植物を配置する。

目的

本発明が解決しようとする課題は、農作物などの対象植物に対する病害虫による被害を早期発見することにある

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

対象植物ストレスを検出する方法であって、前記対象植物の近傍に、ストレス応答性プロモーター及び該ストレス応答性プロモーターの下流に作動可能に連結された発光タンパク質遺伝子を含むモニター植物を配置する工程、前記対象植物のストレスを可視化する工程、を含み、ここで、前記対象植物のストレスの可視化が、前記対象植物がストレスに応答して放出する揮発性物質を前記モニター植物が受容すると、前記モニター植物において、ストレス応答性プロモーターが応答し、これにより、前記発光タンパク質発現することによって行われることを特徴とする、方法。

請求項2

前記ストレス応答性プロモーターが、PR1プロモーター、PR2プロモーター、PR3プロモーター、PR4プロモーター、PR5プロモーター、AOSプロモーター、VSP1プロモーター、VSP2プロモーター、HPLプロモーター、AtMYC2プロモーター、CYP83B1プロモーター、At2g24850プロモーター、LOX2プロモーター、IAR3プロモーター、GST5プロモーター、OPR3プロモーター、ERFプロモーター、THI2.1プロモーター、JAZ遺伝子群プロモーター、PDF1.2プロモーター、WRKYプロモーター、PAD4プロモーター、EDS1プロモーター、SID1プロモーター、EDS5プロモーター、BGL2プロモーター、又はこれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

請求項3

前記発光タンパク質が、緑色蛍光タンパク質黄色蛍光タンパク質赤色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質青色蛍光タンパク質などの蛍光タンパク質、生物発光タンパク質化学発光タンパク質、ナノランタンなどのFRET技術を利用したタンパク質、又はこれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。

請求項4

前記揮発性物質が、ジャスモン酸メチルサリチル酸メチル青葉アルコールアロオシメンテルペン類ミルセン、(E,E)−4,8,12−トリメチルトリデカ−1,3,7,11−テトラエン(TMTT)、エステル類アルデヒド類芳香族化合物2−ペンタノール、又はこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。

請求項5

前記モニター植物が、シロイヌナズナコケネコジャラシ、又はブラポディウムであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。

請求項6

植物における発光タンパク質を検出する方法であって、発光タンパク質遺伝子を含む植物の撮像画像から、前記発光タンパク質の発光波長波長帯及び該植物の自家発光の波長帯を含む画像領域を特定する工程、及び前記特定された画像領域内に存在する発光タンパク質の発光波長信号のみを検出する工程、を含むことを特徴とする、方法。

請求項7

前記植物における発光タンパク質が、撮像される対象の生物が発する光の波長を含む波長帯の光の撮像画像から、前記生物が発する光の画像領域を検出する検出部と、前記検出された画像領域に基づいて前記撮像画像から前記生物の画像処理対象領域を抽出する画像処理対象領域抽出部と、前記撮像画像から特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル抽出部と、前記抽出された特異的シグナルの画像領域の中から、前記抽出された画像処理対象領域に含まれる特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル選択部と、を備える画像処理装置、によって検出される、請求項6に記載の方法。

請求項8

前記植物における発光タンパク質が、非サンプル生物とサンプル生物とが混在して配置され、前記サンプル生物が発する光の波長を含む波長帯の光を撮像する撮像部と、前記撮像部が前記サンプル生物を撮像した撮像画像から、前記サンプル生物が発する光の画像領域を検出する検出部と、前記検出された画像領域に基づいて前記撮像画像から前記サンプル生物の画像処理対象領域を抽出する画像処理対象領域抽出部と、前記撮像画像から特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル抽出部と、前記抽出された特異的シグナルの画像領域の中から、前記抽出された画像処理対象領域に含まれる特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル選択部と、を備える画像処理システム、によって検出される、請求項6に記載の方法。

請求項9

前記画像処理装置又は画像処理システムが、コンピュータに、撮像される対象の生物が発する光の波長を含む波長帯の光の撮像画像から、前記生物が発する光の画像領域を検出する検出機能と、前記検出された画像領域に基づいて前記撮像画像から前記生物の画像処理対象領域を抽出する画像処理対象領域抽出機能と、前記撮像画像から特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル抽出機能と、前記抽出された特異的シグナルの画像領域の中から、前記抽出された画像処理対象領域に含まれる特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル選択機能と、を実現させるための画像処理プログラム、を備えることを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。

請求項10

前記モニター植物における発光タンパク質が、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法によって検出されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の対象植物のストレスを検出する方法。

技術分野

0001

本発明は、植物のストレスを検出する方法、及び植物における発光タンパク質を検出する方法に関する。

背景技術

0002

植物は、脊椎動物に見られるような抗体反応・食作用などの免疫システムによる生体防御機構を有していないが、それとは異なる仕組みにより病原菌などの攻撃から身を守っている。植物は、一部の組織で病原菌の感染を受けるとシグナル全身発信し、未感染組織に防御態勢誘導させることができる。感染シグナルを全身に伝える伝達経路は、複数あることが知られており、代表的なものとしては、全身獲得抵抗性シグナル伝達経路誘導抵抗性シグナル伝達経路、及び誘導全身抵抗性シグナル伝達経路などが存在する。このようなシグナル伝達経路においては、植物の一部の組織が、病原菌による感染ストレスなどを受けた場合、その感染部位から何らかのシグナル物質が放出され、それが植物体内を通ってまだ感染を受けていない部位まで到達し、そこで抵抗性発現関与する遺伝子の発現を誘導する。この抵抗性に関与する物質としては、それ自身が抗菌活性を有するPRタンパク質細胞壁を溶解するグルカナーゼ及びキチナーゼ、病原菌に対して毒性を示すファイトアレキシンなどが挙げられる。これまで、このような抵抗性の誘導は、同一植物個体内に限定して起こるものと考えられていた。しかしながら、ジャスモン酸メチル短鎖アルデヒド及びイソプレノイドなどの植物由来揮発性成分には、植物の抵抗性を誘導する風媒性シグナルとしての機能が存在することが発見され、物理的に離れた同種又は異種の植物がそれを認識することによって、生体防御機構を活性化させること(立ち聞き効果)が知られるようになった。
このような植物の立ち聞き効果を利用した技術として、植物由来揮発性物質植物抵抗性誘導剤として利用することが報告されている(特許文献1)。
また、植物はストレスに応答して微弱生体発光することが知られており、植物に病原体攻撃等のストレスを与えた場合に特定波長の発光を観測する方法(特許文献2)や、免疫安定資材アブシジン酸)と誘導物質サリチル酸ジャスモン酸)により発生するバイオフォトンを測定することにより、植物の病害抵抗性反応の抑制を阻害する植物免疫安定化資材の効果を評価する方法(特許文献3)が報告されている。

0003

特開2005−41782号公報
特開2001−99830号公報
特開2009−131187号公報

先行技術

0004

Zarate et al., 2007 Plant Physiol. Vol. 143, 866-875
Reymond et al., 2004 Plant Cell 16: 2132-3147
Kishimoto et al., 2006 Phytochemistry 67: 1520-1529
Betsuyaku et al., Plant Cell Physiol. 59(1): 8-16 (2018)
Plant Biotechnology 35, 1-6 (2018)
Takai et al., 2015 PNAS 112: 4352
Saito et al., 2012 Nature Communications 3:1262

発明が解決しようとする課題

0005

本発明が解決しようとする課題は、農作物などの対象植物に対する病害虫による被害早期発見することにある。

課題を解決するための手段

0006

本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し、実験を重ねた結果、農作物などの対象植物の近傍に、ストレス応答性プロモーター及び該ストレス応答性プロモーターの下流に作動可能に連結された発光タンパク質遺伝子を含むモニター植物を配置することにより、対象植物の被害が微少な段階で、モニター植物内の発光タンパク質が発現し発光するという驚くべき知見を見出した。かかる知見に基づき、植物などの動く生体サンプルに対応して自動で蛍光シグナルの定量を行うことが可能な画像処理装置画像処理システム及び画像処理プログラムの開発に成功し、本発明を完成するに至った。

0007

本発明は、以下の通りである。
[1]対象植物のストレスを検出する方法であって、
前記対象植物の近傍に、ストレス応答性プロモーター及び該ストレス応答性プロモーターの下流に作動可能に連結された発光タンパク質遺伝子を含むモニター植物を配置する工程、
前記対象植物のストレスを可視化する工程、
を含み、ここで、前記対象植物のストレスの可視化が、前記対象植物がストレスに応答して放出する揮発性物質を前記モニター植物が受容すると、前記モニター植物において、ストレス応答性プロモーターが応答し、これにより、前記発光タンパク質が発現することによって行われることを特徴とする、方法。
[2] 前記ストレス応答性プロモーターが、PR1プロモーター、PR2プロモーター、PR3プロモーター、PR4プロモーター、PR5プロモーター、AOSプロモーター、VSP1プロモーター、VSP2プロモーター、HPLプロモーター、AtMYC2プロモーター、CYP83B1プロモーター、At2g24850プロモーター、LOX2プロモーター、IAR3プロモーター、GST5プロモーター、OPR3プロモーター、ERFプロモーター、THI2.1プロモーター、JAZ遺伝子群プロモーター、PDF1.2プロモーター、WRKYプロモーター、PAD4プロモーター、EDS1プロモーター、SID1プロモーター、EDS5プロモーター、BGL2プロモーター、又はこれらの組み合わせであることを特徴とする、1に記載の方法。
[3] 前記発光タンパク質が、緑色蛍光タンパク質黄色蛍光タンパク質赤色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質青色蛍光タンパク質などの蛍光タンパク質、生物発光タンパク質化学発光タンパク質、ナノランタンなどのFRET技術を利用したタンパク質、又はこれらの組み合わせであることを特徴とする、1又は2に記載の方法。
[4] 前記揮発性物質が、ジャスモン酸メチル、サリチル酸メチル青葉アルコールアロオシメンテルペン類ミルセン、(E,E)−4,8,12−トリメチルトリデカ−1,3,7,11−テトラエン(TMTT)、エステル類アルデヒド類芳香族化合物2−ペンタノール、又はこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、1に記載の方法。
[5] 前記モニター植物が、シロイヌナズナコケネコジャラシ、又はブラポディウムであることを特徴とする、1に記載の方法。
[6] 植物における発光タンパク質を検出する方法であって、
発光タンパク質遺伝子を含む植物の撮像画像から、前記発光タンパク質の発光波長波長帯及び該植物の自家発光の波長帯を含む画像領域を特定する工程、及び
前記特定された画像領域内に存在する発光タンパク質の発光波長信号のみを検出する工程、
を含むことを特徴とする、方法。
[7] 前記植物における発光タンパク質が、
撮像される対象の生物が発する光の波長を含む波長帯の光の撮像画像から、前記生物が発する光の画像領域を検出する検出部と、
前記検出された画像領域に基づいて前記撮像画像から前記生物の画像処理対象領域を抽出する画像処理対象領域抽出部と、
前記撮像画像から特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル抽出部と、
前記抽出された特異的シグナルの画像領域の中から、前記抽出された画像処理対象領域に含まれる特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル選択部と、
を備える画像処理装置、
によって検出される、6に記載の方法。
[8] 前記植物における発光タンパク質が、
サンプル生物とサンプル生物とが混在して配置され、
前記サンプル生物が発する光の波長を含む波長帯の光を撮像する撮像部と、
前記撮像部が前記サンプル生物を撮像した撮像画像から、前記サンプル生物が発する光の画像領域を検出する検出部と、
前記検出された画像領域に基づいて前記撮像画像から前記サンプル生物の画像処理対象領域を抽出する画像処理対象領域抽出部と、
前記撮像画像から特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル抽出部と、
前記抽出された特異的シグナルの画像領域の中から、前記抽出された画像処理対象領域に含まれる特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル選択部と、
を備える画像処理システム、
によって検出される、6に記載の方法。
[9] 前記画像処理装置又は画像処理システムが、
コンピュータに、
撮像される対象の生物が発する光の波長を含む波長帯の光の撮像画像から、前記生物が発する光の画像領域を検出する検出機能と、
前記検出された画像領域に基づいて前記撮像画像から前記生物の画像処理対象領域を抽出する画像処理対象領域抽出機能と、
前記撮像画像から特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル抽出機能と、
前記抽出された特異的シグナルの画像領域の中から、前記抽出された画像処理対象領域に含まれる特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル選択機能と、
を実現させるための画像処理プログラム、
を備えることを特徴とする、7又は8に記載の方法。
[10] 前記モニター植物における発光タンパク質が、6〜9のいずれかに記載の方法によって検出されることを特徴とする、1〜5のいずれかに記載の対象植物のストレスを検出する方法。
[11] 撮像される対象の生物が発する光の波長を含む波長帯の光の撮像画像から、前記生物が発する光の画像領域を検出する検出部と、
前記検出された画像領域に基づいて前記撮像画像から前記生物の画像処理対象領域を抽出する画像処理対象領域抽出部と、
前記撮像画像から特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル抽出部と、
前記抽出された特異的シグナルの画像領域の中から、前記抽出された画像処理対象領域に含まれる特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル選択部と、
を備える画像処理装置。
[12] 非サンプル生物とサンプル生物とが混在して配置され、
前記サンプル生物が発する光の波長を含む波長帯の光を撮像する撮像部と、
前記撮像部が前記サンプル生物を撮像した撮像画像から、前記サンプル生物が発する光の画像領域を検出する検出部と、
前記検出された画像領域に基づいて前記撮像画像から前記サンプル生物の画像処理対象領域を抽出する画像処理対象領域抽出部と、
前記撮像画像から特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル抽出部と、
前記抽出された特異的シグナルの画像領域の中から、前記抽出された画像処理対象領域に含まれる特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル選択部と、
を備える画像処理システム。
[13] コンピュータに、
撮像される対象の生物が発する光の波長を含む波長帯の光の撮像画像から、前記生物が発する光の画像領域を検出する検出機能と、
前記検出された画像領域に基づいて前記撮像画像から前記生物の画像処理対象領域を抽出する画像処理対象領域抽出機能と、
前記撮像画像から特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル抽出機能と、
前記抽出された特異的シグナルの画像領域の中から、前記抽出された画像処理対象領域に含まれる特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル選択機能と、
を実現させるための画像処理プログラム。

発明の効果

0008

本発明によれば、農作物自体遺伝子操作を行うことなく、農作物の病害虫被害を初期段階で検出することが可能となり、ひいては、食の安全性確保や害虫耐性強化軽減に寄与する。

図面の簡単な説明

0009

被害植物立ち聞き者間における情報連絡の状況を示す図である。
シロイヌナズナ形質転換体の模式図である。
自家蛍光によるタイムラプス中に動く植物の画像を示す図である。
蛍光シグナルの検知の状況を示す図である。
シロイヌナズナ植物群における免疫系の活性化状態を蛍光シグナルで検知する状況を示す図である。
個体別シグナル強度経時的変化を示すグラフ図である。
一実施形態に係る未来農業構想図である。
一実施形態に係る画像処理方法の一例を示す図である。
モニター植物生育装置写真である。左:モニター植物生育装置を上から見た写真であり、中央にディバイダーが埋めてある。左側に野生型実生が5個体生育中である。右:モニター植物生育装置を横からみた写真であり、ディバイダーの培地の上に突き出る部分は、揮発性物質は拡散するが、害虫は通過できないように0.5mmの穴が開けてある。モニター植物2個体の実生が生育中である。
ジャスモン酸メチル(MeJA)、サリチル酸メチル(MeSA)、及び溶媒ジクロロメタン)への暴露から24時間後のモニター植物の蛍光写真である。
上段野生型シロイヌナズナとコナガの区画の写真(白色光)である。下段:モニター植物の区画の写真(蛍光シグナル)である。
上段:アワトウとシロイヌナズナの区画の写真(白色光)である。下段:モニター植物の区画の写真(蛍光シグナル)である。
ジャスモン酸メチルの濃度勾配における蛍光シグナルを示す写真である。
傷害ストレスによる蛍光シグナルを示す写真である。
開始直後(左)と3時間後(右)における、イヌガラシ(Rorippa indica)抽出液粉砕液由来の揮発性物質に応答した蛍光シグナルを示す写真である。
オシメン、ジャスモン酸メチル(MeJA)、及び溶媒(ジクロロメタン)への暴露後のモニター植物の蛍光シグナル示す写真である。

0010

[1.諸言]
植物は、一部の組織で病原菌の感染を受けるとシグナルを全身に発信し、未感染組織に防御態勢を誘導させることができる。感染シグナルを全身に伝える伝達経路は、複数あることが知られており、代表的なものとしては、全身獲得抵抗性シグナル伝達経路、誘導抵抗性シグナル伝達経路、及び誘導全身抵抗性シグナル伝達経路などが存在する。
全身獲得抵抗性シグナル伝達経路では、過敏感反応をひきおこすような病原菌が感染すると、感染の局所で生じたシグナル物質が篩管組織を経由して全身に移動し、結果として植物がさまざまな病原菌に対して全身で抵抗性になる。このシグナル伝達経路では、植物ホルモン的な成分であるサリチル酸が重要な役割を果たす。サリチル酸は、感染部位で蓄積するほかシグナルが伝えられた先の細胞でも蓄積し、サリチル酸が蓄積すると、NPR1(PR蛋白質産生制御因子)、WRKY(転写制御因子)、PR−1、PR−2、PR−5などの遺伝子が順次誘導され、抵抗性が発現すると考えられている。一方、誘導抵抗性シグナル伝達経路においては、病害虫による被害を受けると、ジャスモン酸及びエチレンが蓄積し、PDF1.2などの遺伝子が蓄積する。また、誘導全身抵抗性シグナル伝達経路においても、ジャスモン酸及びエチレンが関与し、根における感染刺激が全身に伝えられる。
具体的には、病原菌感染によって起こるサリチル酸シグナル経路の活性化の際に顕著に発現量が上昇する遺伝子として、PAD4、EDS1、SID1、EDS5、PR1、PR5、BGL2などが知れている(非特許文献1)。ジャスモン酸メチルと虫害で共通に発現する遺伝子としては、PR2、AtMYC2、CYP83B1、At2g24850、LOX2、VSP2、IAR3、GST5、OPR3、AOS、HPL、PR4、PDF1.2などが知れている(非特許文献2)。また、ジャスモン酸メチル、サリチル酸メチル、又は青葉アルコールによって発現が上昇する遺伝子としては、PR1、PR2、AOS、VSP1、HPL、PR3など(非特許文献3)が知られている。

0011

これまで、このような抵抗性の誘導は、同一植物個体内に限定して起こるものと考えられていた。しかしながら、ジャスモン酸メチル、短鎖アルデヒド及びイソプレノイドなどの植物由来の揮発性成分には、植物の抵抗性を誘導する風媒性シグナルとしての機能が存在することが発見され、物理的に離れた同種又は異種の植物がそれを認識することによって、生体防御機構を活性化させること(立ち聞き効果)が知られるようになった。すなわち、植物が病害虫による被害を受けると揮発性免疫活性物質香り)を放ち、周辺植物(立ち聞き者)の免疫系を活性化すると考えられる(図1参照)。

0012

本発明は、このような揮発性免疫活性物質を介した植物個体間のコミュニケーションを利用して、対象植物の近傍に、ストレス応答性プロモーター及び該ストレス応答性プロモーターと作動可能に連結された発光タンパク質遺伝子を含むモニター植物を配置することにより、農作物が病害虫による被害に応答して放出する揮発性物質をモニター植物が受信すると、前記モニター植物において、免疫経路遺伝子マーカーであるストレス応答性プロモーターが応答し、これにより、前記発光タンパク質が発現することによって、対象植物の食害又は病害ストレスを可視化することに基づく(図2参照)。

0013

本発明において、「ストレス応答性プロモーター」は、植物が病害虫による被害などのストレスに応答して放出する揮発性物質を受容したときに、その下流に作動可能に連結された発光タンパク質遺伝子を転写させる機能を有する。

0014

[2.対象植物のストレスを検出する方法]
本発明の第1の観点によれば、対象植物のストレスを検出する方法であって、前記対象植物の近傍に、ストレス応答性プロモーター及び該ストレス応答性プロモーターの下流に作動可能に連結された発光タンパク質遺伝子を含むモニター植物を配置する工程、前記対象植物のストレスを可視化する工程、を含み、ここで、前記対象植物のストレスの可視化が、前記対象植物がストレスに応答して放出する揮発性物質を前記モニター植物が受容すると、前記モニター植物において、ストレス応答性プロモーターが応答し、これにより、前記発光タンパク質が発現することによって行われることを特徴とする、方法が提供される。本発明において検出される対象植物のストレスには、虫等による食害、カビや細菌等による病害植物体折損や破損などが含まれる。

0015

本発明で用いられるストレス応答性プロモーターは、周辺植物が病害虫による被害などのストレスに応答して放出する揮発性物質を受容したときに下流に位置する発光タンパク質遺伝子を転写させる機能を有する限り特に制限されないが、典型的には、植物のストレスにより発現が上昇する遺伝子のプロモーター、すなわち、PR1プロモーター、PR2プロモーター、PR3プロモーター、PR4プロモーター、PR5プロモーター、AOSプロモーター、VSP1プロモーター、VSP2プロモーター、HPLプロモーター、AtMYC2プロモーター、CYP83B1プロモーター、At2g24850プロモーター、LOX2プロモーター、IAR3プロモーター、GST5プロモーター、OPR3プロモーター、ERFプロモーター、THI2.1プロモーター、JAZ遺伝子群プロモーター、PDF1.2プロモーター、WRKYプロモーター、PAD4プロモーター、EDS1プロモーター、SID1プロモーター、EDS5プロモーター、又はBGL2プロモーターであり、好ましくは、PR1プロモーター、PR2プロモーター、AOSプロモーター、VSP1プロモーター、HPLプロモーター、ERFプロモーター、THI2.1プロモーター、JAZ遺伝子群プロモーター、PDF1.2プロモーター、WRKYプロモーター、又はPR3プロモーターであり、最も好ましくはVSP1プロモーター、PDF1.2プロモーター、又はPR1プロモーターである。

0016

本発明で用いられる発光タンパク質は、モニター植物内で発現し、可視化できる程度に発光する限り特に制限されないが、典型的には、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質などの蛍光タンパク質、生物発光タンパク質(例えば、ルシフェラーゼ)、化学発光タンパク質、又はナノランタンなどのFRET技術を用いたタンパク質である。

0017

本発明で用いられるモニター植物は、上記ストレス応答性プロモーター及び該ストレス応答性プロモーターの下流に作動可能に連結された発光タンパク質遺伝子を含むベクターを、通常の形質転換方法、例えば、アグロインフィルトレーション法、又はパーティクルガン法を用いて、宿主植物に組み込むことにより作成することができる。

0018

アグロインフィルトレーション法は、目的遺伝子を挿入したT−DNAベクター形質転換したアグロバクテリウム培養液を、物理的手法シリンジ等による注入減圧等による浸透などの手法)で植物組織内に導入し、植物に感染させることにより、目的遺伝子を植物のゲノムへ挿入して発現させる手法である。フローラルディップ法で植物の生殖細胞のゲノムへ挿入することで、安定的な形質転換系統作出することができる。アグロバクテリウム(Agrobacterium)は、グラム陰性菌に属する土壌細菌であるリゾビウム属(Rhizobium)のうち、植物に対する病原性を有するものの総称であり、アグロバクテリウムの例としては、根頭癌腫病に関連するアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)が挙げられる。アグロバクテリウム由来のベクターを利用して植物に外来遺伝子恒常的に全ての細胞のゲノムに挿入する場合、通常はベクターを物理的手法(シリンジ等による注入や減圧等による浸透などの手法)で植物生殖細胞内に導入し、植物に感染させる。一旦生殖細胞のゲノムへ挿入された目的遺伝子は、安定的に継代される。植物の全細胞のゲノムで外来遺伝子が挿入される。

0019

パーティクル・ガン(パーティクル・ボンバードメント)法は、DNA又はベクターをコーティングした金やタングステンなどの金属の微粒子高速射出することにより、目的DNAを細胞内に導入する手法である。

0020

本願明細書において、揮発性物質は、植物由来の揮発性免疫活性物質を意味し、周辺植物の立ち聞き効果を惹起して、その免疫系を活性化できる限り特に制限されないが、典型的には、ジャスモン酸メチル、サリチル酸メチル、エチレン、青葉アルコール、青葉アルデヒド、テルペン類、エステル類、アルデヒド類、芳香族化合物などがある。具体的には、ミルセン、(E,E)−4,8,12−トリメチルトリデカ−1,3,7,11−テトラエン(TMTT)、2−ペンタノール、1−オクテン−1−オールアセトフェノンフェランドレントランス−2−ヘキセナール、(1R,2S,5R)−ピナンテルネロールファルネセンベータアコディエン、ビサボレンネロリドール、(E)−4,8−ディメチル−1,3,7−ノナトリエンDMNT)、2−ペンタナールカレン、4−メチル−3−ペンテン−2−オンベンズアルデヒドサリチル酸エチル、オシメン、2,4−ヘキサエナール、ベータセスキフェランドレン、テルピネオールゲラニルアセトンヘキサノールリモネンリナロール、ネロール、インドールエレメンベルベノン、2−ペンテン−1−オール、(Z)−3−ヘキセン−1−オール、デカナールカプロン酸、シス−3−ヘキセナール、酢酸3−ヘキセニル、(Z)−2−ヘキサナール、(Z)−2−ヘキサノール、(Z)−2−ヘキサニルアセテート、(E)−2−ヘキサナール、(E)−2−ヘキサノール、(E)−2−ヘキサニルアセテート、(n)−2−ヘキサナール、(n)−2−ヘキサノール、(n)−2−ヘキサニルアセテート、又はこれらの組み合わせから選択される。

0021

前記モニター植物の作製において、宿主植物として形質転換される植物は、発光タンパク質を発現できるものであれば特に限定されないが、典型的にはシロイヌナズナ、コケ、ネコジャラシ、又はブラキポディウムである。モニター植物は、対象植物と同種であっても良い。

0022

対象植物の種は特に制限されないが、典型的には、農作物であり、イネ科マメ科アブラナ科キク科ナス科バラ科ウリ科ヒルガオ科などの植物が挙げられる。好ましい植物としては、例えば、アルファルファオオムギインゲンマメカノーラササゲ、綿、トウモロコシクローバーハスレンズマメルピナスキビオートムギエンドウマメ落花生、イネ、ライムギスイートクローバー、ヒマワリスイートピーダイズモロコシライコムギクズイモハッショウマメソラマメコムギ、フジ、堅果植物等、シロイヌナズナ、コヌカグサネギキンギョソウ、オランダミツバナンキンマメ、アスパラガスロウトウ、カラスムギホウライチク、アブラナブロムグラス、ルリマガリバナ、ツバキアサトウガラシヒヨコマメケノポジキクニガナカンキツコーヒーノキ、ジュズダマキュウリカボチャギョウギシバカモガヤチョウセンアサガオジギタリスヤマノイモアブラヤシ、オオシバ、フェスキュ、イチゴフクロウソウ、ダイズ、ヒマワリ、キスゲ、パラゴムノキ、オオムギ、ヒヨスサツマイモレタスヒラマメユリ、アマ、ライグラス、ハス、トマトマヨラナリンゴマンゴー、イモノキ、ウマヤシ、アフリカウランタバコ、イガマメ、キビ、テンジクアオイ、チカラシバツクバネアサガオインゲン、アワガエリ、イチゴツナギサクラキンポウゲ、ラディッシュスグリトウゴマキイチゴサトウキビサルメンバナ、ライムギ、セネシオ、セタリア、シロガラシ、ナスソルガム、イヌシバ、カカオ、ジャジクソウ、レイリョウコウ、ブドウ等が挙げられる。

0023

[3.植物における発光タンパク質を検出する方法]
本発明の第2の観点によれば、植物における発光タンパク質を検出する方法であって、発光タンパク質遺伝子を含む植物の撮像画像から、前記発光タンパク質の発光波長の波長帯及び該植物の自家発光の波長帯を含む画像領域を特定する工程、及び前記特定された画像領域内に存在する発光タンパク質の発光波長信号のみを検出する工程、を含むことを特徴とする、方法が提供される。

0024

前記植物における発光タンパク質の検出は、具体的には、以下の画像処理装置、画像処理システム、及び画像処理プログラムを用いることにより達成できる。

0025

通常、植物などの生体サンプルはマクロスケールで大きく動くため、ミクロスケール頻用されているROI(Region of Interest:関心領域)では定量ができない(図3参照)。図3には、自家蛍光によるタイムラプス中に動く植物の画像が示される。この例では、12時間で大きく移動していることがわかる。

0026

動くサンプルに対応し、自動で時空間的に定量する技術が未だない。そこで、自家(恒常的)又は組織特異的な蛍光シグナルをバックグラウンドとして、その領域における特異的遺伝子の発現ダイナミクスを自動的に定量できるソフトウェア構築する。マクロスケールでの定量ツールが開発されると、数理モデル化が直接可能になる。このため、個体・集団と言う高次なレベルでの特異的な遺伝子発現の精密な解析ができる。これが可能になることで、例えば、集団における病害虫応答や、病害虫被害が集団内でどのように広まるのか、予測することも可能になる。

0027

応用面では、被害植物から放たれる香りを検知して発光を放つ植物を利用することで、害虫被害を早期に検出することが可能になる。定量データによる数理モデリングを用いことで、作物集団内での被害の移動を予測することができる。このような画像・映像解析基盤とした「害虫ストレス早期発見型の予防的ナノ農業」への応用には、定量技術が欠かせない。

0028

そこで、ストレス検出システムの構築に向けた技術基盤として、時空間で精度の高い個体レベルの蛍光シグナルの定量を自動的に解析するソフトウェアの提供をさらなる目的とした。

0029

本実施形態について、いくつかの特長を以下に示す。
・香りを使用した植物間のコミュニケーションをリアルタイムで可視化する点である。
・個体間のみならず集団内における香りの情報拡散を解析する点である。
・従来の技術では、生きた細胞・個体をサンプルとして使用しているにも関わらず、固定することによるストレスという副作用が避けられなかった。本実施形態では、動くサンプルの定量化を行うことで、副作用がより少ない状態での精度が高い定量が可能である。
・自家蛍光など、シグナルを測定したい部分特異的なシグナルの抽出である。そのため、特異的シグナルに関する植物以外のバックグラウンドは自動的に排除される。バックグラウンドノイズが極めて低い定量方法である(後述の図8(C)、図8(D)参照)。
・従来の技術(Velasques、他(2015年))では、蛍光タンパク質ではなく、ホタル由来の発光タンパク質を利用して根の成長をモニターしている。この定量法では、根の成長具合は定量できるものの、単色でのモニタリングなので、特異的な遺伝子発現を観察することは困難である。また、発光シグナルは蛍光よりも弱いため、露光時間が長い。このために行う実験が制限される。当該従来の技術では5分の露光時間であるが、本実施形態のシステムでは、5秒で十分である。

0030

ここで、電動ステージ全自動実体顕微鏡を用いたタイムラプス・イメージングを説明する。
1.被害植物からの香りに応答した蛍光シグナルを個体レベルで検知(図4参照)。
2.植物の集団における免疫系の活性化応答を時空間的に検知(図5参照)。
これにより、広範囲(個体レベル・集団レベル)における蛍光シグナルを経時的に検知することができる。図4には、害虫による被害植物からの香り物質に反応して放たれた蛍光シグナルの検知の状況が示される。図5には、シロイヌナズナ植物群における免疫系の活性化状態を蛍光シグナルで検知する状況が示される。

0031

次いで、植物集団におけるストレスシグナルを、一般の画像処理ソフトウェア(例えばImageJ)を用いてマニュアルフレーム毎に定量する。フレーム内で植物の形態を選択し、その領域での輝度をマニュアルで測定する。図6には、図5における蛍光シグナルの変化を個体毎にマニュアルで定量した結果のグラフ図が示される。
本実施形態では、このような定量解析を各フレームを対象に自動的に行う、精度が高い定量化ソフトウェアの提供を一つの目的とする。

0032

また、本実施形態では、病害虫の被害に曝された植物から放出される香り物質を、ナノセンサーで可視化することから、次の基礎生物学的(a,b)、又は農業現場での応用(c,d)において、(a)植物個体間コミュニケーション、(b)集団内における(a)の効果、(c)圃場で使用すると病害虫被害を早期に発見できる、(d)定量結果と数理モデリングを組み合わせることにより、病害虫の被害が集団内でどのように広がって行くのか予測できる。農業現場での香りを使ったモニタリングを利用した「予防型」農業の試みは、未だ報告されていない。これは、今までの「抵抗性病害虫」の出現を誘発する化学農薬遺伝子組換え作物による病害虫対策とは原理的に異なる。自家蛍光(又は恒常的に発現している)や組織特異的に発現している蛍光を用いて、経時的に「動く」サンプルの形態を認識することである。発生段階など、時間・時期特異的に特異的な組織・器官・細胞などを蛍光色素マークし、これをバックグラウンドとすることも可能である。さらに認識した領域に存在する遺伝子特異的蛍光シグナルを抽出することである。このため、遺伝子特異的蛍光シグナルにバックグラウンドシグナルがあった場合も、スムーズに自動的に解析をすることが可能である。サンプルが動くことによって、解析前には検出できなかったノイズが出てきた際にもこれを自動的に除去することができる。

0033

図7には、植物からの蛍光シグナルによるストレスマーカー免疫活性)で圃場における病害虫被害の早期発見と予防対策による未来型農業の構想図が示される。図7において、白抜きの植物が蛍光シグナルを放つ被害植物である。矢印は害虫を表す。被害は香り成分としてコミュニケートされることから、作物とストレスマーカーを混植することで、遺伝子組替え植物はマーカーのみでよく、作物は遺伝子組替えである必要はない。蛍光は昆虫ロボットで、他のデータと合わせた数理モデリングから被害拡散の予測が行われる。

0034

本実施形態のいくつかの特長を以下に示す。
・植物のみでなく、動物や昆虫などでもすぐに使用できる汎用性が高いメソッドである。
オープンソースである一般の画像処理ソフトウェア(例えばImageJ又はFiji)へのアドオンマクロを作成することにより、それを元にさらに高次的なソフトウェアの開発にも貢献することができる。
・省農薬は、持続可能な農業という側面のみならず、消費者生産従事者に安全な食糧生産方式である。省労力であることから、高齢化社会におけるフードセキュリティの確保に貢献できる。データ処理によって、地球温暖化異常気象など予測困難な状況にも対応できる技術である。経験のみでなく、データを用いAIで解析する、次世代型の一次産業創出が可能である。
・将来的には気象条件土壌成分投入肥料成育状態までもモニタリングした農業生態系のデジタル化がある。画像データ処理から早期に被害症状を検知する事が可能になり、被害の拡大を防止できる。この技術により省労力・省農薬・被害拡大防止が可能になり持続可能なプレシジョン農業が達成できる。消費者・生産従事者に安全な予防型精密農業である。

0035

次に、図8を参照して、本発明で用いられる画像処理方法の一例を説明する。図8には、マクロタイムラプス映像用自動定量ソフトウェアの各ステップに対応する画像が示される。
ステップA:自家蛍光の認識(図8(A))。
ステップB:定量ステージに抽出(図8(B))。
ステップA,Bにおいては、自家蛍光を抽出し、植物の形の認識に利用する。これを経時的に追跡することで測定対象領域を設定する。

0036

ステップC:特異的シグナルの抽出(図8(C))。ステップCでは、目的遺伝子特異的シグナルを抽出する。

0037

ステップD:特異的シグナルをオーバーレイする(図8(D))。ステップDでは、ステップBの測定対象領域とステップDの特異的シグナルとを重ね合わせることにより、個体レベルでの特異的なシグナルを抽出して定量することができる。

0038

図8に示される本発明で用いられる画像処理方法によれば、自家蛍光と特異的シグナルを重ねるオーバーレイにより、自家蛍光Fがある部分のみの特異的シグナルSを特異的に測定することができる。また、バックグラウンドシグナル(ノイズ)の除去が自動的にできる(図8(C)、図8(D)参照)。

0039

なお、本発明で用いられる画像処理は、オープンソースである一般の画像処理ソフトウェア(例えばImageJ又はFiji)のアドイン、マクロでプログラミングを行ってもよい。

0040

本発明で用いられる画像処理装置は、
撮像される対象の生物が発する光の波長を含む波長帯の光の撮像画像から、前記生物が発する光の画像領域を検出する検出部と、
前記検出された画像領域に基づいて前記撮像画像から前記生物の画像処理対象領域を抽出する画像処理対象領域抽出部と、
前記撮像画像から特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル抽出部と、
前記抽出された特異的シグナルの画像領域の中から、前記抽出された画像処理対象領域に含まれる特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル選択部と、
を備える画像処理装置であってもよい。

0041

なお、本発明で用いられる画像処理装置は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、あるいはパーソナルコンピュータ等のコンピュータシステムにより構成され、本発明で用いられる画像処理装置の各部の機能を実現するためのプログラムを実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。

0042

また、その画像処理装置には、周辺機器として入力装置表示装置等が接続されてもよい。ここで、入力装置とはキーボードマウス等の入力デバイスのことをいう。表示装置とはCRT(Cathode Ray Tube)や液晶表示装置等のことをいう。
また、上記周辺機器については、画像処理装置に直接接続するものであってもよく、あるいは通信回線を介して接続するようにしてもよい。

0043

本発明で用いられる画像処理システムは、
非サンプル生物とサンプル生物とが混在して配置され、
前記サンプル生物が発する光の波長を含む波長帯の光を撮像する撮像部と、
前記撮像部が前記サンプル生物を撮像した撮像画像から、前記サンプル生物が発する光の画像領域を検出する検出部と、
前記検出された画像領域に基づいて前記撮像画像から前記サンプル生物の画像処理対象領域を抽出する画像処理対象領域抽出部と、
前記撮像画像から特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル抽出部と、
前記抽出された特異的シグナルの画像領域の中から、前記抽出された画像処理対象領域に含まれる特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル選択部と、
を備える画像処理システムであってもよい。

0044

本発明で用いられる画像処理プログラムは、
コンピュータに、
撮像される対象の生物が発する光の波長を含む波長帯の光の撮像画像から、前記生物が発する光の画像領域を検出する検出機能と、
前記検出された画像領域に基づいて前記撮像画像から前記生物の画像処理対象領域を抽出する画像処理対象領域抽出機能と、
前記撮像画像から特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル抽出機能と、
前記抽出された特異的シグナルの画像領域の中から、前記抽出された画像処理対象領域に含まれる特異的シグナルの画像領域を抽出する特異的シグナル選択機能と、
を実現させるための画像処理プログラムであってもよい。

0045

以上、本発明で用いられる画像処理装置、画像処理システム、又は画像処理プログラムに関する実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。

0046

また、上述した装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。

0047

さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワーク電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル差分プログラム)であっても良い。

0048

上述のとおり植物における発光タンパク質を検出する対象植物のストレスを検出ことにより、農作物などの対象植物のストレスを検出することが可能となる。

0049

以下の実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。

0050

[例1.黄色蛍光タンパク質遺伝子が導入された形質転換シロイヌナズナ]
1.材料
ジャスモン酸メチル応答性の黄色蛍光タンパク質が導入されたシロイヌナズナ系統をモニター植物(VSP1プロモーター+黄色蛍光タンパク質遺伝子)として使用した。このモニター植物は、Betsuyaku et al., Plant Cell Physiol. 59(1): 8-16 (2018)に記載のものと同一であり、該論文著者である別役博士から分与いただいたものである。
作物側は野生型シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)を使用した。

0051

2.生育
種子滅菌処理後、シロイヌナズナ形質転換系統と野生型(作物側)を、9cmのシャーレ播種した。シャーレ内の培地は、1/2×ムラシゲスクーグ培地、1%スクロース、0.3%フィゲル登録商標)である。
培地は添付の仕切りをあらかじめ設置したシャーレに調製した。仕切りの片方に5個体の野生型を播種し、もう片方に2個体の形質転換体を播種した(図9)。
栽培は22℃、明期16時間/暗期8時間で行った。植物体は播種後3週間のものを用いた。シャーレは、根が接触せず、形質転換植物と作物側植物が物理的に隔離されているが、揮発性物質が通過する様に、地上部には細かな穴を開けた。培地に埋まっている部分はその様な通気口を設けていない。
コナガ(Plutella xylostella)の生育は、25±10℃,60±10% RH、明期16時間/暗期8時間で行った。3−4齢幼虫を用い、実験前日から絶食させた。アワヨトウの生育も同様に行った。絶食後は、シャーレの野生型区画に害虫を放虫した。コナガは3−4頭、アワヨトウは2頭使用した。

0052

3.撮影
タイムラプス画像
ライブ画像を取得するために、電動ステージを備えたM205FA自動立体顕微鏡を使用した。画像はDFC7000TカラーCCDカメラ(Leica Microsystems)で撮影した。この装置は、LasXソフトウェア(Leica Microsystems)によって制御した。励起光源としてメタルハライドバルブライカEL6000)を用いた。クロロフィル自己蛍光(Komisら、2015)及びYFPシグナルは、それぞれテキサスレッドフィルター及びYFPフィルターによって検出した(Leica Microsystems; Plant Biotechnology 35, 1-6 (2018)参照のこと)。
YFP及びテキサスレッドフィルターの励起発光波長はそれぞれ510/20−560/40nm及び560/40−610LPnmであった。テキサスレッドフィルターは、死んだ植物細胞からの非特異的な自家蛍光シグナルのほとんどすべてを減少させた(Betsuyaku et al., 2018)。
明視野、YFP及びテキサスレッド画像を20分ごとに捕捉した。LasXソフトウェア(Leica Microsystems)を用いて、これらの間、植物標本を白色光に曝露した。

0053

4.結果
4−1揮発性物質の検知
モニター植物を、0.1Mのジャスモン酸メチル(MeJA)とサリチル酸メチル(MeSA)、溶媒(ジクロロメタン)に暴露し、24時間後に撮影した。
図10に示されるとおり、MeJAに特異的に反応した。

0054

4−2 コナガの食害の検知
図11に示されるとおり、コナガの食害を微小段階で検知することができた。

0055

4−3アワヨトウの食害の検知
図12に示されるとおり、アワヨトウの食害を微小段階で検知することができた。

0056

4−4濃度勾配に応じたシグナルによる揮発性物質の発信源の予測
図13に示されるとおり、揮発性物質(meJA)の発信源物質の濃度勾配によって、蛍光シグナルの勾配ができた。これによって、どこから揮発性物質が拡散しているのか予測することが可能となる。

0057

4−5傷害ストレスによる蛍光シグナル
図14に示されるとおり、傷害ストレスのみでもモニター植物において蛍光シグナル(丸で囲まれた部位)が検知された。傷害ストレスを受けたのは、シロイヌナズナ野生型で物理的に隔離された区画(写真の外)にある。

0058

4−6 他の植物における傷害ストレスに対する反応
生重量50mgのイヌガラシ(Rorippa indica)を乳ばち乳棒粉砕し、その抽出液をろ紙に染み込ませ、これを用いて、モニター植物の傷害ストレスに対する反応を観察した。
図15に示されるとおり、抽出液から放散される揮発性物質をモニター植物が感知し、蛍光シグナルが検知された(丸で囲まれた部位)。

0059

4−7 他の揮発性成分に対する反応
0.01Mのオシメン又はジャスモン酸メチルをシャーレ内で拡散し、モニター植物の蛍光シグナルを検出した。
図16に示されるとおり、モニター植物は、ジャスモン酸メチルだけでなく、オシメンにも応答してシグナルを発することがわかった。

実施例

0060

[例2.ナノランタン遺伝子が導入されたシロイヌナズナ系統モニター植物]
ナノランタンDNA(大阪大学永井研究室から分与;Takai et al., 2015 PNAS 112: 4352; Saito et al., 2012 Nature Communications 3:1262)をIn-fusion (Clontech)を用いて、シロイヌナズナ形質転換用ベクター(pBA002a)にEcoRV、MluI、XhoIを利用してクローニングした。プロモーターにはジャスモン酸応答性のVSP1とサリチル酸応答性のPR1を用いた。
これをアグロバクテリウム(GV3101)にエレクトロポーレーション法で形質転換した。VSP1−ナノランタン、PR1−ナノランタンをそれぞれLB培地大量培養し、ローラルディップ法により野生型シロイヌナズナへ形質転換した。網(ナイロンメッシュ、生ゴミ用)をかけたポットで栽培されたシロイヌナズナを、逆さにし、アグロバクテリウム懸濁液に2分間つけた。これを水平にして、ペーパータオルサランラップ包み暗所で24時間リカバリーさせた。その後通常に生育させた。得られた種子をビアラフォスアンモニウム(BASTA)とカルニシンを含んだ培地で選抜し、形質転換シロイヌナズナを得た。

0061

F…自家蛍光、S…特異的シグナル

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