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課題・解決手段
概要
背景
近年、食生活の欧米化による脂質摂取量増加と同時に、運動不足等による肥満が問題となっている。肥満とは、体脂肪が過剰に蓄積し、過体重になった状態であり、糖尿病をはじめとした生活習慣病を引き起こす危険因子となる。
肥満は、エネルギー摂取量と消費量のバランスが崩れ、消費量よりも摂取量が上回ることで起こるとされている。肥満をはじめとしたメタボリックシンドロームの予防、改善には身体活動量を増やすことにより、エネルギー消費量を増加させることが有効と考えられている。
主にエネルギー消費は、基礎代謝の他、食事に起因する食事誘発性熱産生、身体活動起因する熱産生に分けられる。身体活動に起因する熱産生は、スポーツ等の運動による熱産生と、それ以外の日常的な身体活動に起因する非運動性活動熱産生(Non Exercise Activity Thermogenesis:NEAT)からなる(非特許文献1)。更に、運動によるエネルギー消費は、運動中に限らず、運動終了後においてもエネルギー消費量の増加が継続することが知られている。
これまでにエネルギー消費を促進させる成分として、交感神経活性化作用を有するカフェイン等が報告されている(非特許文献2)。しかし一方で、カフェインの摂取によって血圧の上昇が引き起こされる可能性が報告されており(非特許文献3)、安全性や刺激性の観点からその実用性が限定される。
ところで、乳などに由来するカゼインを加水分解して得られるカゼイン加水分解物は、血中コレステロールや血中中性脂肪を低減させる作用や、脂質代謝改善作用等を有することが知られている(特許文献1〜3)。
また、遊離アミノ酸が50質量%程度のカゼインの加水分解物が、脂質利用量を増加させるものの、エネルギー消費量には影響を与えないことが報告されている(非特許文献4)。
また、カゼイン加水分解物に含まれるMet−Lys−Proのアミノ酸配列からなるトリペプチドが、アンジオテンシン変換酵素阻害作用及びブラジキニン不活性化抑制作用を有し、血圧降下に有効であることも知られている(特許文献4)。
また、乳清タンパク質を加水分解して得られる乳清タンパク質加水分解物は、消化管ホルモンGLP−2分泌促進作用やシステインプロテアーゼ阻害作用、インターロイキン−18誘導作用等を有することが知られている(特許文献5〜7)。
概要
エネルギー消費を促進させることが可能な技術を提供する。平均分子量が220ダルトン以上かつ1000ダルトン以下である乳タンパク質分解物、又はMet−Lys−Proからなるペプチド、又は前記アミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含有する、エネルギー消費促進用組成物。
目的
本発明は、エネルギー消費を促進させることが可能な技術を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
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- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
請求項2
体温上昇のために用いられる、請求項1に記載のエネルギー消費促進用組成物。
請求項3
運動後に摂取される、請求項1又は2に記載のエネルギー消費促進用組成物。
請求項4
前記乳タンパク質が、カゼインである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエネルギー消費促進用組成物。
請求項5
前記乳タンパク質が、乳清タンパク質である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエネルギー消費促進用組成物。
請求項6
請求項7
請求項8
請求項9
請求項10
平均分子量が220ダルトン以上かつ1000ダルトン以下である乳タンパク質分解物を有効成分として含有する、エネルギー消費促進用飲食品組成物。
請求項11
体温上昇のために用いられる、請求項10に記載の飲食品組成物。
請求項12
運動後に摂取される、請求項10又は11に記載の飲食品組成物。
請求項13
前記乳タンパク質が、カゼインである、請求項10〜12のいずれか一項に記載の飲食品組成物。
請求項14
前記乳タンパク質が、乳清タンパク質である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の飲食品組成物。
請求項15
前記乳タンパク質分解物が、タンパク質分解酵素による加水分解物である、請求項10〜14のいずれか1項に記載の飲食品組成物。
請求項16
前記乳タンパク質分解物が、少なくともMet−Lys−Proからなるペプチド、または前記アミノ酸配列を含むペプチドを含む、請求項10〜15のいずれか1項に記載の飲食品組成物。
請求項17
前記エネルギー消費が、基礎代謝、食事誘発性熱産生、非運動性活動熱産生、及び運動による熱産生からなる群より選ばれるものに起因する、請求項10〜16のいずれか1項に記載の飲食品組成物。
請求項18
Met−Lys−Proからなるペプチド、又は前記アミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含有する、エネルギー消費促進用組成物。
請求項19
前記エネルギー消費が、基礎代謝、食事誘発性熱産生、非運動性活動熱産生、及び運動による熱産生からなる群より選ばれるものに起因する、請求項18に記載のエネルギー消費促進用組成物。
請求項20
エネルギー消費機能低下により引き起こされる疾患の予防及び/又は改善用組成物の製造における、乳タンパク質分解物の使用。
請求項21
エネルギー消費機能低下により引き起こされる疾患の予防及び/又は改善のために用いられる、乳タンパク質分解物。
請求項22
エネルギー消費機能低下により引き起こされる疾患の予防及び/又は改善における、乳タンパク質分解物の使用。
請求項23
乳タンパク質分解物を、エネルギー消費機能低下により引き起こされる疾患の予防及び/又は改善が必要な対象に投与することを含む、エネルギー消費低下により引き起こされる疾患を予防及び/又は改善する方法。
請求項24
エネルギー消費機能低下により引き起こされる疾患の予防及び/又は改善用組成物の製造における、Met−Lys−Proからなるペプチド、又は前記アミノ酸配列を含むペプチドの使用。
請求項25
エネルギー消費機能低下により引き起こされる疾患の予防及び/又は改善のために用いられる、Met−Lys−Proからなるペプチド、又は前記アミノ酸配列を含むペプチド。
請求項26
エネルギー消費機能低下により引き起こされる疾患の予防及び/又は改善における、Met−Lys−Proからなるペプチド、又は前記アミノ酸配列を含むペプチドの使用。
請求項27
Met−Lys−Proからなるペプチド、又は前記アミノ酸配列を含むペプチドを、エネルギー消費機能低下により引き起こされる疾患の予防及び/又は改善が必要な対象に投与することを含む、エネルギー消費低下により引き起こされる疾患を予防及び/又は改善する方法。
技術分野
背景技術
0002
近年、食生活の欧米化による脂質摂取量増加と同時に、運動不足等による肥満が問題となっている。肥満とは、体脂肪が過剰に蓄積し、過体重になった状態であり、糖尿病をはじめとした生活習慣病を引き起こす危険因子となる。
肥満は、エネルギー摂取量と消費量のバランスが崩れ、消費量よりも摂取量が上回ることで起こるとされている。肥満をはじめとしたメタボリックシンドロームの予防、改善には身体活動量を増やすことにより、エネルギー消費量を増加させることが有効と考えられている。
主にエネルギー消費は、基礎代謝の他、食事に起因する食事誘発性熱産生、身体活動起因する熱産生に分けられる。身体活動に起因する熱産生は、スポーツ等の運動による熱産生と、それ以外の日常的な身体活動に起因する非運動性活動熱産生(Non Exercise Activity Thermogenesis:NEAT)からなる(非特許文献1)。更に、運動によるエネルギー消費は、運動中に限らず、運動終了後においてもエネルギー消費量の増加が継続することが知られている。
これまでにエネルギー消費を促進させる成分として、交感神経活性化作用を有するカフェイン等が報告されている(非特許文献2)。しかし一方で、カフェインの摂取によって血圧の上昇が引き起こされる可能性が報告されており(非特許文献3)、安全性や刺激性の観点からその実用性が限定される。
0003
ところで、乳などに由来するカゼインを加水分解して得られるカゼイン加水分解物は、血中コレステロールや血中中性脂肪を低減させる作用や、脂質代謝改善作用等を有することが知られている(特許文献1〜3)。
また、遊離アミノ酸が50質量%程度のカゼインの加水分解物が、脂質利用量を増加させるものの、エネルギー消費量には影響を与えないことが報告されている(非特許文献4)。
また、カゼイン加水分解物に含まれるMet−Lys−Proのアミノ酸配列からなるトリペプチドが、アンジオテンシン変換酵素阻害作用及びブラジキニン不活性化抑制作用を有し、血圧降下に有効であることも知られている(特許文献4)。
また、乳清タンパク質を加水分解して得られる乳清タンパク質加水分解物は、消化管ホルモンGLP−2分泌促進作用やシステインプロテアーゼ阻害作用、インターロイキン−18誘導作用等を有することが知られている(特許文献5〜7)。
0004
特許3920933号
特許5972235号
国際公開2007/142230号パンフレット
国際公開2003/044044号パンフレット
特許4219707号
特開2005−139084号公報
特開2009−137982号公報
先行技術
0005
Levine JA,J.Intern.Med.2007 262(3) 273-287
Dulooo AG.et al., Am. J. Clin. Nutr. 1989 49(1) 44-50
Nurminen ML.et al., Eur J Clin Nutr. 1999 53(11) 831-9
Lillefosse et al., J. Nutrition, 2013 143(9) 1367-1375
発明が解決しようとする課題
0006
本発明は、エネルギー消費を促進させることが可能な技術を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0007
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の乳タンパク質分解物が、優れたエネルギー消費促進作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
0008
すなわち、本発明は、平均分子量が220ダルトン以上かつ1000ダルトン以下である乳タンパク質分解物を有効成分として含有する、エネルギー消費促進剤又はエネルギー消費促進用組成物である(以降、「本発明のエネルギー消費促進用組成物」とも記す)。なお、本発明において組成物及び剤の用語は、同一の意味である。
本発明の一形態においてエネルギー消費促進用組成物は、好ましくは体温上昇用に用いられる。
また、本発明の一形態においてエネルギー消費促進用組成物は、運動後に摂取されることが好ましい。
また、本発明の一形態において、前記乳タンパク質はカゼイン又は乳清タンパク質であることが好ましい。
また、本発明の好ましい一形態において、前記乳タンパク質分解物は、タンパク質分解酵素による加水分解物である。
また、本発明の一形態において、前記乳タンパク質分解物は、少なくともMet−Lys−Proからなるペプチドを含むことが好ましい。
また、本発明の好ましい一形態において、前記エネルギー消費は、基礎代謝、食事誘発性熱産生、非運動性活動熱産生、及び運動による熱産生からなる群より選ばれるものに起因する。
0010
また、本発明の別の態様は、平均分子量が220ダルトン以上かつ1000ダルトン以下である乳タンパク質分解物を有効成分として含有する、エネルギー消費促進用の飲食品組成物である。
また、本態様の飲食品組成物は、好ましくは体温上昇用に用いられる。
また、本態様の飲食品組成物は、運動後に摂取されることが好ましい。
また、本態様の飲食品組成物において、前記乳タンパク質はカゼイン又は乳清タンパク質であることが好ましい。
本態様において好ましくは、前記乳タンパク質分解物は、タンパク質分解酵素による加水分解物である。
また、本態様において、前記乳タンパク質分解物は、少なくともMet−Lys−Proからなるペプチド、又は該配列を含むペプチド(以降「MKPペプチド」とも記す)を含むことが好ましい。なお、前記Met−Lys−Proを含むペプチドとは、Met−Lys−Proの配列を含み、そのC末端及び/又はN末端側に1又は複数個の任意のアミノ酸が付加したものをいう。ここで複数個とは、好ましくは2〜10個をいうが特に限定されない。
本態様において好ましくは、前記エネルギー消費は、基礎代謝、食事誘発性熱産生、非運動性活動熱産生、及び運動による熱産生からなる群より選ばれるものに起因する。
発明の効果
0011
本発明によれば、安全性が高いエネルギー消費促進用組成物が提供される。本発明のエネルギー消費促進用組成物は、医薬品又は飲食品組成物に含有させることができ、エネルギー消費機能低下の治療、改善及び/又は予防やエネルギー消費の促進、運動後のエネルギー消費機能の改善、及び/又は増大に有効である。
図面の簡単な説明
0012
運動後にカゼイン分解物を摂取したときのエネルギー消費量の経時変化を表すグラフ。
安静時にカゼイン分解物を摂取したときのエネルギー消費量の経時変化を表すグラフ。
安静時にカゼイン分解物、乳清タンパク質分解物、又はMKPペプチドを摂取した60分間のエネルギー消費量を表すグラフ。
0013
次に、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。
0014
<エネルギー消費促進用組成物>
本発明のエネルギー消費促進剤及びエネルギー消費促進用組成物は、平均分子量が220ダルトン以上かつ1000ダルトン以下である、乳タンパク質分解物を有効成分として含有する。
0015
本発明における乳タンパク質分解物の平均分子量は、前述の通り220ダルトン(以下、「Da」)以上1000Da以下であるが、好ましくは250Da以上かつ400Da以下であり、より好ましくは300Da以上かつ390Da以下である。
なお、本発明において、カゼインの加水分解物を利用するときには、より好ましくは350〜390Daの平均分子量のものを用いることが好ましく、乳清タンパク質の場合は360〜400Daの平均分子量のものを用いることが好ましい。
なお、非特許文献4のカゼイン加水分解物の平均分子量は、本発明におけるものよりも小さいと推測される。
0016
本発明における乳タンパク質分解物の平均分子量は、以下の数平均分子量の概念により求めるものである。
数平均分子量(Number Average of Molecular Weight)は、例えば文献(社団法人高分子学会編、「高分子科学の基礎」、第116〜119頁、株式会社東京化学同人、1978年)に記載されているとおり、高分子化合物の分子量の平均値を次のとおり異なる指標に基づき示すものである。
すなわち、タンパク質加水分解物等の高分子化合物は不均一な物質であり、かつ分子量に分布があるため、タンパク質加水分解物の分子量は、物理化学的に取り扱うためには、平均分子量で示す必要があり、数平均分子量(以下、Mnと略記することがある。)は、分子の個数についての平均であり、ペプチド鎖iの分子量がMiであり、その分子数をNiとすると、次の式により定義される。
0017
0018
本明細書において、乳タンパク質分解物の平均分子量は、以下の方法で測定及び算出したものをいう。すなわち、高速液体クロマトグラフィーを使用して、ポリヒドロキシエチル・アスパルタミド・カラム(Poly Hydroxyethyl Aspartamide Column:ポリ・エル・シー(Poly LC)社製;直径4.6×200mm)を用い、20mM塩化ナトリウム、50mMギ酸により溶出速度0.4mL/分で溶出する(宇井信生ら編、「タンパク質・ペプチドの高速液体クロマトグラフィー」、化学増刊第102号、第241頁、株式会社化学同人、1984年)。検出は、UV検出器(島津製作所社製)を使用して行い、GPC分析システム(島津製作所社製)によりデータ解析して数平均分子量を算出する。なお、分子量算出のための標品は、分子量が既知のタンパク質及び/又はペプチドを適宜用いればよい。
0019
タンパク質分解物には、一般に製造過程において遊離アミノ酸が含まれる。本発明における乳タンパク質分解物のアミノ酸遊離率は、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。
0020
本明細書において、アミノ酸遊離率は、乳タンパク質分解物全体に対する遊離アミノ酸量の割合であり、以下の方法で測定・算定することができる。
トリプトファン、システイン及びメチオニン以外のアミノ酸については、試料を6規定の塩酸で110℃、24時間加水分解し、トリプトファンについては、水酸化バリウムで110℃、22時間アルカリ分解し、システイン及びメチオニンについては、過ギ酸処理後、6規定の塩酸で110℃、18時間加水分解し、それぞれアミノ酸自動分析機(日立製作所製、835型)により分析し、アミノ酸の質量を測定する。
上記の方法により試料中の各アミノ酸の組成を測定し、これを合計して試料中の全アミノ酸の質量を算出する。次いで、スルホサリチル酸で試料を除蛋白し、残留する各遊離アミノ酸の質量を上記の方法により測定し、これを合計して試料中の全遊離アミノ酸の質量を算出する。これらの値から、試料中の遊離アミノ酸含有率を次式により算出する。
アミノ酸遊離率(質量%)=(全遊離アミノ酸の質量/全アミノ酸の質量)×100
0021
上記のような乳タンパク質分解物は、通常は乳タンパク質を分解処理、好ましくは加水分解することにより好適に取得できる。乳タンパク質の分解処理としては、特に限定されないが、例えば酵素処理、酸処理、アルカリ処理、熱処理等が挙げられ、これらの2種以上の処理を適宜組み合わせてもよい。
0022
本明細書において乳タンパク質分解物は、特に限定されないがカゼイン分解物又は乳清タンパク質分解物が好ましい。
カゼイン分解物を取得するにあたり出発原料となるカゼインは、例えば、市販品の各種カゼイン;ミセラーカゼイン;乳酸カゼイン、塩酸カゼイン等の酸カゼイン;ナトリウムカゼイネイト、カリウムカゼイネイト、カルシウムカゼイネイト等のカゼイネイト等から選ばれる1種のもの又は2種以上の混合物が挙げられる。当該混合物は任意の割合で混合すればよい。
乳清タンパク質分解物を取得するにあたり出発原料となる乳清タンパク質は、特に限定されないが、市販の各種乳清タンパク質、例えば、乳清タンパク質濃縮物(WPC)、乳清タンパク質単離物(WPI)等が好ましい。また、牛乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳から乳清蛋白質を常法により精製することもできる。
また、前記カゼイン又は乳清タンパク質は、牛乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳等から公知の方法によって単離されたカゼイン又は乳清タンパク質であることが好ましい。
0023
以下に乳タンパク質分解物の好適な取得方法を説明するが、特にこれに限定されるものではない。
原料乳タンパク質を水又は温湯に分散し、溶解して乳タンパク質水溶液を調製する。当該乳タンパク質水溶液の濃度は、特に限定されないが、通常、タンパク質濃度として2質量%以上、さらに好ましくは5〜15質量%程度の濃度範囲に設定するのが好適である。
さらに、前記乳タンパク質水溶液を、ナトリウム型又はカリウム型陽イオン交換樹脂(好適には強酸性陽イオン交換樹脂)を用いたイオン交換法、電気透析法、限界濾過膜法、ルーズ逆浸透膜法等で脱塩し、適宜pH調整やカルシウム濃度調整を行うのが好適である。脱塩の際には、カラム式やバッチ式の何れを採用してもよい。また、乳タンパク質水溶液を、脱塩前等に適宜、加熱殺菌をおこなってもよい。
0024
次いで、前記乳タンパク質水溶液を、加水分解処理する。当該加水分解処理として、例えば酵素処理、酸処理、アルカリ処理、熱処理等が挙げられ、これらの2種以上の処理を適宜組み合わせてもよい。
本開示のタンパク質分解酵素は、例えば、植物由来、動物由来、微生物由来等が挙げられ、これらから1種又は2種以上組み合わせて使用できる。当該タンパク質分解酵素としては、エンドプロテアーゼが好適である。
前記エンドプロテア−ゼとしては、例えば、セリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテイナーゼが挙げられ、これらを1種又は2種以上選択して用いることができる。このうち、セリンプロテアーゼ及び/又はメタロプロテアーゼを用いるのが好適である。
また、プロテアーゼは、アルカリ性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ及び酸性プロテアーゼに分類される。このうち中性プロテアーゼを用いるのが好適である。
0025
前記タンパク質分解酵素は、市販品を用いることができる。前記タンパク質分解酵素として、例えば、ビオプラーゼ(長瀬生化学工業社製)、プロレザー(天野エンザイム社製)、プロテアーゼS(天野エンザイム社製)、PTN6.0S(ノボザイムズ社製)、サビナーゼ(ノボザイムズ社製)、GODO B.A.P(合同酒精社製)、プロテアーゼN(天野エンザイム社製)、GODO B.N.P(合同酒精社製)、ニュートラーゼ(ノボザイムズ社製)、アルカラーゼ(ノボザイムズ社製)、トリプシン(ノボザイムズ社製)、キモトリプシン(ノボザイムズ社製)、スブチリシン(ノボザイムズ社製)、パパイン(天野エンザイム社製)、ブロメライン(天野エンザイム社製)等が挙げられ、これらから1種又は2種以上の酵素を選択して用いてもよい。
これらのうち、スブチリシン(subtilisin:例えば、ビオプラーゼ)、トリプシン(trypsin:例えばPTN6.0S)、及びバシロシン(bachillolysin:例えばプロテアーゼN)から選ばれる1種又は2種以上の中性プロテアーゼが好ましく、より好ましくはこれら3種を組み合わせて用いる。
0026
前記乳タンパク質に対するエンドプロテア−ゼの使用量は、特に限定されず、基質濃度、酵素力価、反応温度及び反応時間等により適宜調整すればよいが、一般的には、乳タンパク質中のタンパク質1g当り2,000〜11,000活性単位の割合で添加することが好ましい。
前記タンパク質分解酵素による加水分解条件を適宜調整することにより、本発明に係る特定の平均分子量の範囲の乳タンパク質分解物を得ることができる。
0027
前記タンパク質分解酵素による加水分解前に、前記原料乳タンパク質溶液のpHを、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等の食品上使用可能な塩類を用いて、使用酵素の至適pHに調整することもできる。前記原料乳タンパク質溶液のpHは、好ましくは5〜10、より好ましくは7〜10に調整する。
0028
前記タンパク質分解酵素の反応温度は、使用酵素の最適温度の範囲で行うことが望ましく、好ましくは30〜60℃、より好ましくは40〜60℃で行う。
前記タンパク質分解酵素の反応保持時間は、前記特定の非タンパク態窒素比率になるように適宜調整すればよく、例えば0.5〜24時間で行うことが可能であり、好ましくは1〜15時間、より好ましくは3〜10時間である。
前記タンパク質分解酵素による加水分解は、当該酵素を加熱して失活させて終了させればよい。例えば、100℃以上(好適には110〜130℃)で失活させる場合には1〜3秒間、100℃未満60℃以上で失活させる場合には3〜40分間で行うことが好適である。
加水分解終了後、必要に応じて分解液のpHを、好ましくは6〜8、より好ましくは7.0±0.5、さらに好ましくは7.0±0.3とするのが好適である。
0029
なお、本発明に係る乳タンパク質分解物の製造において、カルシウム濃度未調整の溶液を加水分解した場合には、得られた分解液を、前記のような脱塩処理し、カルシウム濃度を調整してもよい。次いで、常法により加熱して酵素を失活させる。反応加熱温度と反応保持時間は使用した酵素の熱安定性を配慮し、十分に失活できる条件を適宜設定することができる。加熱失活後、常法により冷却し、そのまま利用することもでき、必要に応じて濃縮して濃縮液を得ることもでき、更に濃縮液を乾燥し、粉末製品を得ることも可能である。
0030
また、前記乳タンパク質水溶液を酸処理又はアルカリ処理にて加水分解する際には、乳タンパク質水溶液のpHを調整して処理すればよい。当該pH調整による処理の場合には、乳タンパク質水溶液のpHが、好ましくはpH5以下又はpH9以上であり、より好ましくはpH4以下又はpH10以上である。このようにpH処理された水溶液は、室温にて数分以上、好ましくは5分〜1時間、放置又は撹拌することによって、酸処理又はアルカリ処理の加水分解物を得ることができる。ここで、「室温」とは、4〜40℃程度であるが、10〜30℃が好適である。
また、前記乳タンパク質水溶液を、熱処理にて加水分解してもよい。この乳タンパク質水溶液は、pH未調整でもよく、またpH調整(具体的には、酸性(pH5以下)、中性(pH6〜8)、アルカリ性(pH8以上))してもよい。熱処理は、4〜100℃程度で、上記酸アルカリ処理のような条件にて行えばよい。
0031
得られた乳タンパク質加水分解物は、未精製のままの状態で使用しても効能を発揮することが可能であるが、さらに、適宜公知の分離精製を行ってもよい。例えば、得られた乳タンパク質加水分解物に対して分子量分画を行い、本発明に係る平均分子量及びアミノ酸遊離率の範囲を満たす乳タンパク質分解物を得ることができる。
分子量分画として、例えば、限外濾過、ゲル濾過等の方法が採用でき、これにより不要な分子量のペプチドや遊離アミノ酸の除去率を高めることができる。
限外濾過の場合には、所望の限外濾過膜を使用すればよく、ゲル濾過の場合には、所望のサイズ排除クロマトグラフィーに用いるゲルろ過剤を使用すればよい。
さらに、脱塩や不純物を除去したり、純度を高めたりするために、公知の分離精製方法(例えば、イオン交換樹脂等)を用いてもよい。
0032
本発明において乳タンパク質分解物は少なくともMet−Lys−Proのアミノ酸配列からなるトリペプチド又は前記配列を含むペプチド(総称して、「MKPペプチド」という)を含むことが好ましい。前記ここで前記MKPペプチドはその塩類の形態で含まれていてもよい。なお、Metはメチオニン残基を、Lysはリジン残基を、Proはプロリン残基をそれぞれ示す。
本発明においてMKPペプチドは、大豆、卵、小麦、大麦、米、じゃが芋、さつま芋、えんどう豆、トウモロコシ、畜肉、魚肉、魚介などに由来するタンパク質を分解処理して取得したものであってもよいし、該分解処理物からMKPペプチドをさらに単離・精製したものであってもよいし、化学合成又は生合成によりMKPペプチドを取得したものであってもよい。
なお、本明細書において有効成分として「乳タンパク質分解物」というときは、上記の如く乳以外に由来するタンパク質を分解処理して得たMKPペプチドや、化学合成又は生合成により得たMKPペプチドをも含む概念とする。
0033
なお、本発明においてMet−Lys−Proのアミノ酸配列を含むペプチドとは、Met−Lys−Proの配列のN末端又はC末端にペプチド残基が1又は複数個の任意のアミノ酸が付加したものをいい、より具体的には1〜10残基、望ましくは1〜5残基、さらに望ましくは1〜3残基付加したペプチドであって、かつエネルギー消費の促進作用を有する配列が望ましい。例えば、配列番号1〜4に記載された配列が好適に挙げられるが、これらに限らない。
0034
本発明において、乳タンパク質加水分解物中のMKPペプチドの含有率は特に限定されないが、その下限値は、本発明の効能をより良好に発揮させる観点から、好ましくは0.001質量%以上であり、0.005質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、その上限値は、本発明の分解物の製造効率の観点から、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.1質量%以下である。当該MKPペプチドの含有率 として、より好ましくは0.001〜1質量%、さらに好ましくは0.005〜0.5質量%、よりさらに好ましくは0.01〜0.1質量%である。
0035
なお、本発明において、MKPペプチド含有量は、下記の方法にて測定できる。
(a)試料粉末を、1.0mg/mLとなるように、0.2%ギ酸水溶液に希釈溶解し、10分間超音波破砕したのち、0.22μm口径のPVDFフィルター(Millipore社製)でろ過して粉末溶液を調製し、下記測定条件によるLC/MS分析を実施する。一方、MKPペプチドの化学合成標準ペプチド(ペプチド研究所社製)の溶解液を濃度別に数点調製し、下記測定条件によるLC/MS分析を実施し、検量線を作成する。
前記粉末溶液の分析におけるピークのうち、標準ペプチドと分子量及びリテンションタイムが一致するものを、標準ペプチドと同一の配列として同定する。標準ペプチドのピーク面積と資料粉末のピーク面積を対比することにより、前記粉末溶液中にMKPペプチドの含有量を求める。
0036
(b)MKPペプチド含有量(mg/カゼイン加水分解物1g)
MKP含有量(mg/カゼイン加水分解物1g)=〔得られたカゼイン加水分解物中のMKPペプチド測定値(mg)〕/〔得られたカゼイン加水分解物の質量(g)〕
〔得られたカゼイン加水分解物中のMKPペプチド測定値(mg)〕は、下記「LC/MS」による、試料中のMKPペプチドの測定値である。
0037
(c)LC/MS使用機器
質量分析計:TSQ Quantum Discovery MAX(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)。
高速液体クロマトグラフ:Prominence (島津製作所社製)、カラム:XBridge BEH300 C18 φ2.1 mm×250 mm,3.5 μm(Waters社製)。
0038
(d)LC/MS測定条件
移動相A:0.2重量%ギ酸−水溶液
移動相B:0.2重量% ギ酸−アセトニトリル溶液
タイムプログラム:2%B(0.0分)−25%B(5.0分)−65%B(5.1分)−65%B(10分)−85%B(10.1分)−85%B(13.0%)−2%B(13.1分)−STOP(30.0分)。
試料注入量:10μL、カラム温度:40℃、液体流量:200μL/min
分析モード:SRM測定。
Product Mass:m/z=260.10(Parent m/z = 375.21)
0039
本発明に係る乳タンパク質分解物は、エネルギー消費の促進作用を有する。
エネルギー消費量は、間接熱量測定法によりエネルギー消費量を求めることができる。エネルギー消費量の算出にはTadaishi et al.PLoS One. 2011 6(12) e28290.(文献名等)2011ら の方法に従って、以下の式を用いることにより求めることができる。
エネルギー消費量(cal/min)=3.91 VO2(ml/min)+1.10VCO2(ml/min)
0040
本発明において、エネルギー消費とは、特に限定されないが、基礎代謝によるエネルギー消費と、食事に起因する食事誘発性熱産生によるエネルギー消費、日常的な身体活動に起因する非運動性活動熱産生によるエネルギー消費、及び運動に起因する熱産生とを含むものと考えられる。
なお、本明細書において運動とは、健康のため、体を鍛えるため、楽しみのために計画的・意図的に実施するスポーツ、ウォーキング、ジョギング等の活動であり、身体活動とは、労働、家事、通勤・通学、趣味等の運動を除く日常の生活における身体活動を指す。
また、本発明において、エネルギー消費の促進とは、通常のエネルギー消費レベルから増強させてエネルギー消費量を増大させること、諸々の原因により低下したエネルギー消費レベルを回復させてエネルギー消費量を通常又はそれ以上にまで増大させること、及び/又は、運動後に増加するエネルギー消費をさらに促進させることを含む。
したがって本発明に係る乳タンパク質分解物は、エネルギー消費の促進用途や、エネルギー消費機能低下の治療、改善及び/又は予防用途のために用いることができる。さらに、エネルギー消費機能の向上、エネルギー消費機能低下に関わる様々な状態や疾患の制御、例えば免疫力向上、体力向上、血流改善、疲労改善、肥満の予防及び/又は改善、ダイエット、メタボリックシンドロームの予防及び/又は改善、糖尿病等の生活習慣病の予防及び/又は改善について効果を期待できる。
0041
さらに本発明に係る乳タンパク質分解物は、運動後に増加するエネルギー消費をさらに促進できるので、運動時及び/または運動後に投与することにより、運動後に増加するエネルギー消費をさらに増加させることが可能である。したがって全身の発汗向上、身体の温熱効果向上、新陳代謝の促進等が期待でき、肥満予防、ダイエット、メタボリックシンドロームの予防、改善について効果を期待できる。
0042
一般に、エネルギー消費量の大部分は熱として失われることから(井上芳光、近藤徳彦編集「体温II−体温調節システムとその適応」有限会社NAP社)、本発明に係る乳タンパク質分解物は、体温上昇、特に深部体温上昇の効果が得られる。したがって、本発明のエネルギー消費促進用組成物は、体温上昇のために用いることができる。
本発明に係る乳タンパク質分解物は、体温の上昇作用を有するので、生体の体温を正常な状態に戻す、またはより高めることによる体温低下の予防や改善、末梢血流の改善、発汗作用の亢進、体感作用が期待される。また、持続する低体温状態を原因とする低血圧、内臓機能低下(便秘・下痢)、免疫力低下、血行不良(冷え・肩こり・腰痛・関節痛)、睡眠障害、新陳代謝低下(肥満)疾患等の治療や改善や予防に用いることができる。
0043
なお、好ましくは、本発明に係る乳タンパク質分解物の使用目的からは、血中コレステロールや血中中性脂肪を低減させる目的や、脂質代謝を改善させる目的で用いる態様を除く。
0044
前述した疾患又は状態に対する本発明のエネルギー消費促進剤及び組成物の適用は、適用対象であるヒト又はヒト以外の動物(特に、哺乳動物)に対するものとすることができる。また、その適用は、治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。なお、「非治療的」とは、医療行為、すなわち治療による人体への処置行為を含まない概念である。
すなわち、本発明の別の態様は、本発明のエネルギー消費促進剤及び組成物を対象に投与する工程を含む、エネルギー消費を促進する方法である。さらには、エネルギー消費を促進することにより、前述した疾患又は状態を治療、改善及び/又は予防する方法であってもよく、また、対象の体温を上昇させる方法であってもよい。
0045
本明細書において、「改善」とは、疾患、症状又は状態の好転;疾患、症状又は状態の悪化の防止、遅延若しくは疾患又は症状の進行の逆転、防止又は遅延をいう。
また、本明細書において、「予防」とは、適用対象における疾患若しくは症状の発症の防止又は遅延、或いは適用対象の疾患若しくは症状の発症の危険性を低下させることをいう。
0046
本発明は、エネルギー消費機能低下により引き起こされる疾患の予防及び/又は改善用組成物の製造における、乳タンパク質分解物の使用とも言うことができる。
本発明は、エネルギー消費機能低下により引き起こされる疾患の予防及び/又は改善のために用いられる、乳タンパク質分解物とも言うことができる。
本発明は、エネルギー消費機能低下により引き起こされる疾患の予防及び/又は改善における、乳タンパク質分解物の使用とも言うことができる。
本発明は、乳タンパク質分解物を、エネルギー消費機能低下により引き起こされる疾患の予防及び/又は改善が必要な対象に投与することを含む、エネルギー消費低下により引き起こされる疾患を予防及び/又は改善する方法とも言うことができる。
0047
本発明は、エネルギー消費機能低下により引き起こされる疾患の予防及び/又は改善用組成物の製造における、Met−Lys−Proからなるペプチド、又は前記アミノ酸配列を含むペプチドの使用とも言うことができる。
本発明は、エネルギー消費機能低下により引き起こされる疾患の予防及び/又は改善のために用いられる、Met−Lys−Proからなるペプチド、又は前記アミノ酸配列を含むペプチドとも言うことができる。
本発明は、エネルギー消費機能低下により引き起こされる疾患の予防及び/又は改善における、Met−Lys−Proからなるペプチド、又は前記アミノ酸配列を含むペプチドの使用とも言うことができる。
本発明は、Met−Lys−Proからなるペプチド、又は前記アミノ酸配列を含むペプチドを、エネルギー消費機能低下により引き起こされる疾患の予防及び/又は改善が必要な対象に投与することを含む、エネルギー消費低下により引き起こされる疾患を予防及び/又は改善する方法とも言うことができる。
0048
本発明のエネルギー消費促進剤又は組成物は、上述のようなエネルギー消費の促進及び/又はエネルギー消費機能低下が関与する疾病、疾患や症状のための、又はエネルギー消費の促進及び/又はエネルギー消費機能低下等の予防、改善及び/又は治療のための、ヒト用若しくは動物用の医薬品、医薬部外品、皮膚外用剤、化粧品及び食品等の有効成分としてこれらに配合して使用可能である。また、本明細書に係る乳タンパク質分解物は、これら各種製剤の製造のために使用可能である。
本発明のエネルギー消費促進用組成物における乳たんぱく質分解物の含有量は、最終組成物に対し、0.001〜100質量%に設定することができる。
また、本発明のエネルギー消費促進用組成物におけるMKPペプチドの含有量は、最終組成物に対し、0.00001〜1質量%に設定することができる。
なお、本明細書において、最終組成物とは、対象者に投与するとき又は対象者が摂取するときの組成物のことをいう。
本発明では、対象者に対する乳たんぱく質分解物の使用量は、好ましくは、0.0001〜1g/kg体重/日、より好ましくは0.0005〜0.5g/kg体重/日、さらに好ましくは0.0001〜0.1g/kg体重/日である。
0049
<医薬品>
本発明のエネルギー消費促進用組成物は、医薬品の態様とすることが好適である。その場合、経口投与剤や非経口投与剤等とすることができる。
本発明のエネルギー消費促進用組成物の一態様である医薬品組成物は、経口投与及び非経口投与の何れでもよいが、経口投与が望ましい。非経口投与として、静注、直腸投与、吸入等が挙げられる。かかる医薬品は、投与方法に応じて、適宜所望の剤形に製剤化することができる。例えば、経口投与の場合、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化することができる。また、非経口投与の場合、座剤、軟膏剤等に製剤化することができる。
製剤化に際しては、本明細書に係る乳タンパク質分解物の他に、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。また、公知の又は将来的に見出される上述のエネルギー消費促進作用等を有する薬、脂質代謝異常改善薬、高脂血症治療薬などを併用することも可能である。
加えて、製剤化は剤形に応じて適宜公知の方法により実施できる。製剤化に際しては、適宜、製剤担体を配合して製剤化してもよい。
0050
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α−デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられる。
0051
結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等が挙げられる。
0052
崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられる。
0053
滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ピーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
0054
安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
0056
本発明の医薬品組成物を摂取するタイミングは、特に限定されないが、例えば食前2時間〜食後2時間の範囲内で摂取又は投与することが好ましく、食前1時間〜食後1時間がより好ましい。また、摂取前後の状態は、運動または安静のいずれでもよい。さらに本発明のエネルギー消費促進剤は運動前の1時間〜運動後1時間の範囲内で摂取又は投与することが好ましく、特に運動開始直前〜運動終了直後に摂取又は投与することが好ましい。
0057
<飲食品組成物>
本発明のエネルギー消費促進剤又は組成物を食品に配合する場合には、上述のエネルギー消費の促進及び/又はエネルギー消費機能低下によって引き起こされる各種疾患等の予防、改善又は治療用途が表示された飲食品として提供・販売されることが可能である。また、本明細書に係る乳タンパク質分解物は、これら食品等の製造のために使用可能である。
0058
かかる「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本発明の「表示」行為に該当する。
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
0059
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
0060
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、医薬部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、若しくは機能性表示食品に係る制度、又はこれらに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク減少表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示等を挙げることができ、より具体的には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一年内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)及びこれに類する表示が典型的な例である。
かかる表示としては、例えば、運動中及び/又はダイエット中である人を対象として、「エネルギー消費を向上させたい方」、「代謝を向上させたい方」、「体脂肪を減らしたい方」等と表示することが挙げられる。
または、高齢者及び/又は免疫力が低下した人、基礎代謝能力が低下した人を対象として、「基礎代謝の低下が気になる方」「体をあたためたい方」「冷え症の方」「疲労を感じている方」等と表示することが挙げられる。
0061
また、本明細書に係る乳タンパク質分解物を有効成分として飲食品中に含有させ、本明細書に係る乳タンパク質分解物及びこれを有効成分として含有する上述の各種製剤の一態様として、上述のエネルギー消費促進作用等を有する食品として加工することも可能である。
0062
このような食品として、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず、錠菓、流動食、飼料(ペット用を含む)等のほか、例えば、小麦粉製品、即席食品、農産加工品、水産加工品、畜産加工品、乳・乳製品、油脂類、基礎調味料、複合調味料・食品類、冷凍食品、菓子類、飲料類、これら以外の市販食品等が挙げられる。
前記小麦粉製品として、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等が挙げられる。
前記即席食品類として、即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等が挙げられる。
前記農産加工品として、 農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等が挙げられる。
前記水産加工品として、水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等が挙げられる。
前記畜産加工品として、畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等が挙げられる。
前記乳・乳製品として、加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等が挙げられる。
前記油脂類として、バター、マーガリン類、植物油等が挙げられる。
前記基礎調味料として、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等が挙げられる。
前記複合調味料・食品類として、調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等が挙げられる。 例えば、前記冷凍食品として、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等が挙げられる。
前記菓子類として、キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、その他の菓子等が挙げられる。
前記飲料類として、炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等が挙げられる。
上記以外の市販食品として、ベビーフード、ふりかけ、お茶潰けのり等が挙げられる。
0063
本発明に係るエネルギー消費促進剤、並びにこれを含有する医薬品及び飲食品組成物における、本明細書に係る乳タンパク質分解物の含有量は、剤又は組成物の最終物に対し、少なくとも0.001質量%であることが好ましい。
本明細書に係る乳タンパク質分解物の摂取量又は投与量は、年齢、症状等により異なるが、通常、0.001g〜0.5g/kg体重/日、好ましくは0.006kg〜0.334g/kgであり、さらに好ましくは0.015g〜0.167g/kg体重であり、特に好ましくは0.03g〜0.1g/kg体重であり、1日1回から3回に分けて投与してもよい。
本明細書に係るMKPペプチドの摂取量又は投与量は、年齢、症状等により異なるが、通常、0.4μg〜200μg/kg体重/日、好ましくは2.4μg〜130μg/kgであり、さらに好ましくは6μg〜66.8μg/kg体重であり、特に好ましくは12μg〜40μg/kg体重であり、1日1回から3回に分けて投与してもよい。
0064
なお、前記乳タンパク質分解物はタンパク質であることから、1日のタンパク質摂取量と前記乳タンパク質分解物摂取量の比からヒトへの投与の際の用量を推測することができる。
乳タンパク質分解物のマウスへの投与量(タンパク質換算量)は、マウスの体重を22gとして算出すると約11〜22mg/個体であり、接餌量を3.5g/日、餌に対するタンパク質量を20.7%として算出すると、食餌によって摂取するタンパク質の約1.5〜3.0質量%に相当する。これをヒトに換算した場合、一日のタンパク質摂取量を成人男性60g、成人女性50gとして算出すると、成人男性約0.9〜1.8g、成人女性約0.75〜1.5gとなる。
0065
以下に実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
0066
<1>乳タンパク質分解物の取得
(1)カゼイン分解物の取得
市販のカゼイン(ニュージーランドデーリーボード製)100gに水900gを加え、よく分散させ、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを7.0に調整し、カゼインを完全に溶解し、濃度約10質量%のカゼイン水溶液を調製した。該カゼイン水溶液を85℃ で10分間加熱殺菌し、50℃に温度調整し、水酸化ナトリウムを添加してpHを9.5 に調整した後、ビオプラーゼsp−20(長瀬生化学工業社製)100,800活性単位(タンパク質1g当り1,200活性単位)、プロテアーゼN(天野エンザイム社製)168,000活性単位(タンパク質1g当り2,000活性単位)、及びPTN6.0S(ノボザイムズ・ジャパン社製)588,000活性単位(タンパク質1g当り7,000活性単位)を添加して、加水分解反応を開始した。カゼインの分解率が24.1%に達した時点で、80℃で6分間加熱して酵素を失活させて酵素反応を停止し、10℃に冷却した。この加水分解液を分画分子量3,000の限外ろ過膜(旭化成社製)で限外ろ過し、濃縮後凍結乾燥し、凍結乾燥品を得た。
得られた加水分解物の分子量及び遊離アミノ酸量を前述の方法にて測定したところ、平均分子量は360Da、アミノ酸遊離率は10質量%以下、分子量200〜500のペプチドが53質量%含まれているカゼイン加水分解物を得た。
0067
(2)乳清タンパク質分解物の取得
市販の牛乳乳清タンパク質濃縮物2.6kg(ミライ社製。タンパク質当量として2kg)を脱イオン水18kgに溶解し、10%水酸化ナトリウム水溶液を使用して、pHを7.2に調整し、タンパク質濃度約10%の乳清タンパク質水溶液20.6kgを調製した。該乳清タンパク質水溶液をプレート式熱交換器を使用して80℃で6分間加熱殺菌し、液温を53℃に調整し、10%水酸化カリウム水溶液を使用して、pHを9.0に調整し、エンドプロテアーゼであるPTN6.0S(ノボザイムズ社製)、プロテアーゼNアマノ(天野エンザイム社製)、及びアルカラーゼ2.4L(天野エンザイム社製)をそれぞれタンパク質1g当たり5000活性単位、2000活性単位、及び500活性単位の割合で添加し、タンパク質加水分解反応を開始した。10時間経過し、分解率が20%となった時点で、120℃で3秒間加熱して酵素を失活させ、酵素反応を停止し、10℃に冷却した。
この加水分解液を、孔径0.45μmの精密濾過膜(ミリポア社製)により膜分画し、透過画分としてタンパク質加水分解物水溶液約18kgを得た。該タンパク質加水分解物水溶液の液温を55℃に調整し、エキソプロテアーゼであるプロテアーゼAアマノ(天野エンザイム社製)をタンパク質当量1g当たり500活性単位の割合で添加し、第二のタンパク質加水分解反応を開始した。10時間経過し、分解率を7%増加し、かつ最終的な分解率が27%となった時点で、プレート式熱交換器を使用して120℃で3秒間加熱して酵素を失活させ、酵素反応を停止し、10℃に冷却した。
得られた乳清加水分解物の分子量及び遊離アミノ酸を前述の方法にて測定したところ、平均分子量は360Da、アミノ酸遊離率は12質量%以下、分子量200〜500のペプチドが45質量%含まれていた。
0068
(3)MKPペプチドの取得1
市販のカゼイン(ニュージーランドデーリーボード製)100gに水900gを加え、よく分散させ、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを7.0に調整し、カゼインを完全に溶解し、濃度約10%のカゼイン水溶液を調製した。該カゼイン水溶液を85℃で10分間加熱殺菌し、50℃に温度調整し、水酸化ナトリウムを添加してpHを9.5に調整した後、ビオプラーゼsp−20(長瀬生化学工業社製)100,800活性単位(タンパク質1g当り1,200活性単位)、プロテアーゼN(天野エンザイム社製)168,000活性単位(タンパク質1g当り2,000活性単位)、及びPTN6.0S(ノボザイムズ・ジャパン社製)588,000活性単位(タンパク質1g当り7,000活性単位)を添加して、加水分解反応を開始した。カゼインの分解率が24.1%に達した時点で、80℃で6分間加熱して酵素を失活させて酵素反応を停止し、10℃に冷却した。この加水分解液を分画分子量3,000の限外ろ過膜(旭化成社製)で限外ろ過し、濃縮後凍結乾燥し、凍結乾燥品85gを得た。
0069
上記で得たカゼイン加水分解物に対して逆相HPLCによる分離を行った。HPLC条件は以下に示す条件1の通り。
[HPLC条件1]
カラム:カプセルパックC18(UG120、5μm)20mmI.D.×250mm(資生堂)
検出:UV215nm
流速:16ml/分
溶離液A:0.05%TFAを含む1%アセトニトリル水溶液
溶離液B:0.05%TFAを含む25%アセトニトリル水溶液
溶離液A100%から、40分後に溶離液B100%になるような直線グラジエント条件で、加水分解物を分離した。
0070
リテンションタイム22分に溶出された画分に含まれるペプチドを精製するため、さらに下記条件2によるHPLCによる分離を行った。
[HPLC条件2]
カラム:カプセルパックC18(UG300、5μm)2.0mmI.D.×250mm(資生堂)
検出:UV215nm
流速:0.2ml/分
溶離液A:0.05%TFAを含む1%アセトニトリル水溶液
溶離液B:0.05%TFAを含む10%アセトニトリル水溶液
溶離液A100%から15分後に溶離液B100%になるような直線グラジエント条件で、リテンションタイム13分のピークに含まれるペプチドを凍結乾燥した。
なお、該凍結乾燥品は、特許文献4に記載される通り、H−Met−Lys−Pro−OHの構造を有するトリペプチド(MKPペプチド)を含むことが確認された。
該凍結乾燥品85g中のMKPペプチド含有量は43.5mgであった。
0071
(4)MKPペプチドの取得2
ペプチドシンセサイザー(Model433A型、アプライドバイオシステムズ社) を使用し、Fmoc−L−Met(アプライドバイオシステムズ社)、Fmoc−Lys(Boc)(アプライドバイオシステムズ社)、Fmoc−Pro−TrtA−PEG Resin( 渡辺化学工業(株))を原料に用いて、固相合成法によりトリペプチドMet−Lys−Proを合成した。操作はアプライドバイオシステムズ社のマニュアルに従って行った後、脱保護した。このペプチドは、前述のHPLC条件1で精製し、精製物について質量分析によりMKPペプチドであることを確認した。
0072
<2>乳タンパク質分解物の投与
以下の実施例により、乳タンパク質分解物のエネルギー消費促進作用を検討した。
(1)運動後の投与
雄性C57BL/6Jマウスに16時間絶食させた後に、15m/分で60分間のトレッドミル走行を行わせた。その後、3群に分け(各群n=8)、糖質及びカゼイン加水分解物(Glu+Pep、1.5mg+0.5mg/g体重)、糖質及びカゼイン加水分解物と同組成のアミノ酸混合物(Glu+AA、1.5mg+0.5mg/g体重)、又は糖質のみ(Glu、1.5mg/g体重)を各群に経口投与した。カゼイン加水分解物と同組成のアミノ酸混合物は、カゼイン加水分解物を全てアミノ酸まで分解した際のアミノ酸組成に合わせて20種の結晶アミノ酸を混合、調製した。なお、糖質としてはグルコースを用い、カゼイン加水分解物は前述の<1>で調製したものを用いた。投与30分後から投与120分まで、呼気ガスを連続的に採取し、呼気中の酸素濃度、二酸化炭素濃度から、間接熱量測定法によりエネルギー消費量を求めた。なお、エネルギー消費量の算出にはTadaishi et al.PLoS One. 2011 6(12) e28290.らの方法に従い、以下の式を用いた。
エネルギー消費量(cal/min)=3.91 VO2(ml/min)+1.10VCO2(ml/min)
また、統計処理には、二元配置分散分析およびTukeyのHSD検定を用いた。エネルギー消費量の測定結果を図1に示す。糖質のみを投与した群、並びに糖質及びアミノ酸混合物を投与した群と比較して、糖質及びカゼイン加水分解物を投与した群では、エネルギー消費量が有意に高値を示した(p<0.01)。この結果から、運動後のカゼイン加水分解物の摂取は、同組成のアミノ酸摂取と比較してエネルギー消費量を増大させる効果を有することがわかる。
0073
(2)安静時の投与1
雄性C57BL/6Jマウスに1時間絶食させた後に、4群に分け(各群n=7)、カゼイン加水分解物(Pep)、カゼイン(Cas)、カゼイン加水分解物と同組成のアミノ酸混合物(AA)、又は水(Water)を各群に1.0mg/g体重ずつ経口投与した。なお、カゼイン加水分解物は前述の<1>で調製したものを用い、カゼインは<1>で加水分解する前の原料を用いた。投与5分後から投与120分までのエネルギー消費量を前述の(1)と同様に求めた。また、統計処理には(1)と同様に、二元配置分散分析およびTukeyのHSD検定を用いた。
エネルギー消費量の測定結果を図2に示す。水、及びアミノ酸混合物を投与した群と比較し、カゼイン加水分解物の摂取は、エネルギー消費量が有意に高値を示した(p<0.01)。また、カゼインを投与した群との比較においても、カゼイン加水分解物を摂取した群ではエネルギー消費量が高値を示した(p<0.05)。この結果から、カゼインをタンパク質やアミノ酸の状態で摂取することと比較し、カゼインを加水分解したカゼイン加水分解物の状態で摂取することによって、効率的にエネルギー消費を促進させることがわかる。
0074
(3)安静時の投与2
雄性C57BL/6Jマウスを実験動物に用い、安静、カゼイン加水分解物、MKPペプチド、乳清タンパク質加水分解物投与群の4群に分けた。マウスに1時間の絶食をさせた後に、カゼイン加水分解物及び乳清タンパク質加水分解物はそれぞれ1.0mg/g体重、MKPペプチドは0.4μg/g体重を経口投与し、エネルギー消費量を測定した。実験に用いたマウスは、各群n=12とし、ランダム化クロスオーバー試験にて実施した。
なお、カゼイン加水分解物、乳清タンパク質加水分解物は、前述の<1>(1)〜(2)で調製したものを、MKPペプチドは合成ペプチドをペプチド研究所より購入し用いた。投与から60分間のエネルギー消費量を求めた。
投与後60分間のエネルギー消費量の平均値を図3に示す。安静群と比較し、カゼイン加水分解物、MKPペプチド、および乳清タンパク質加水分解物の全ての群でエネルギー消費量が高値を示した。これらの結果から、乳タンパク質を構成するカゼインおよび乳清タンパク質の加水分解物、またはMKPペプチドを摂取することにより、エネルギー消費量が高まることが分かる。
0075
<製造例1>
牛乳又は脱脂乳に、実施例1で製造されたカゼイン加水分解物並びにスクラロース(三栄源エフエフ社製)及び希少単糖(商品名:レアシュガースウィート(松谷化学工業社製))を配合し、(A)乳タンパク質3.5質量%以上、(B)乳脂肪3.5質量%以下、(C)炭水化物5.0質量%以上、及び(D)カルシウム0.15質量%以上を含むように調乳液を調製する。
当該調乳液と乳酸菌及びビフィズス菌を均一に混合した混合物を発酵させる。これにより、カゼイン加水分解物及び難消化性デキストリンを含むエネルギー消費用組成物(発酵乳)を得る。当該発酵乳には、(E)実施例1のカゼイン加水分解物0.3〜0.8質量%、(F)難消化性デキストリン4〜8質量%、(G)スクラロース0.05〜0.02質量%、(H)D−プシコース及びD−アロース0.05〜0.1質量%、及び(I)ラクチュロース1〜4質量%が含まれる。
カゼイン加水分解物の摂取量が、0.0001〜1g/kg体重/日、になるように、本発明のエネルギー消費用組成物を毎日継続して摂取する。これにより、エネルギー消費促進効果が期待できる。
0076
<製造例2>
表1に示す各成分(粉末)を混合して、エネルギー消費用組成物の粉末を得る。当該粉末は、サプリメントとして使用することができ、また水と混合することで飲料とすることができる。また、当該粉末は、カブセル容器に充填又はカプセル皮膜することで、エネルギー消費用のカプセル剤とすることができる。当該粉末は、圧縮成形することで、エネルギー消費促進用の錠菓とすることができる。当該粉末により、エネルギー消費促進の効果が期待できる。なお、当該粉末の原料のカゼイン分解物として、実施例1のカゼイン加水分解物を使用することができる。
実施例
0077
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