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課題・解決手段

抗HSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、単純ヘルペスウイルス(HSV)のエンベロープ糖タンパク質B(gB)に特異的に結合する、抗HSV gBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片であって、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号5に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号6に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。

概要

背景

単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus;HSV)は、向神経性病原体であり、粘膜上皮に初感染後は知覚神経移行し、三叉神経節又は仙骨神経節にて終生潜伏感染する。潜伏しているHSVはときに再活性化し、様々な病態を引き起こす(非特許文献1)。

HSVには2つの血清型(HSV−1、HSV−2)が知られており、HSV−1は主に口唇角膜ヘルペス、HSV−2は主に性器ヘルペスの原因となる。しかし近年、性行動多様化等から、しばしばHSV−1が性器ヘルペス、HSV−2が口唇ヘルペスの原因となることもある。日本における抗体陽性者(既感染者比率は、HSV−1で60〜80%、HSV−2は10%であり、HSV−2に限ったとしてもワクチン潜在需要は1000万人と推測される(非特許文献2)。また、米国における抗体陽性者(既感染者)比率は、HSV−1が57%、HSV−2が20%(そのうち約10%が顕在性の性器ヘルペス)となっている(非特許文献3)。

HSVの細胞への感染成立には、吸着侵入の2段階で5つのエンベロープ糖タンパク質(glycoprotein)が関与していることが知られている。この5つのエンベロープ糖タンパク質はそれぞれ、エンベロープ糖タンパク質B(gB)、エンベロープ糖タンパク質C(gC)、エンベロープ糖タンパク質D(gD)、エンベロープ糖タンパク質H(gH)、エンベロープ糖タンパク質L(gL)と呼ばれている(非特許文献4)。

まず、吸着過程は、gB及びgCが細胞表面のヘパラン硫酸に結合することがきっかけとなる(非特許文献5、6)。この過程はHSVが細胞に侵入する際必須ではないが、より効率的な侵入に関与していると考えられている。次に、侵入過程では、gB及びgDがそれぞれの宿主細胞受容体と結合し、ウイルスエンベロープと宿主細胞膜が融合することによって開始される。

宿主細胞受容体としてgB受容体とgD受容体が知られている。gB受容体として、NM−IIA(非特許文献7、8)及びMAG(非特許文献9)が同定されている。gD受容体として、ネクチン1(非特許文献10)、HVEM(非特許文献11)、及び3−O−硫酸化ヘパラン硫酸(非特許文献12)が同定されている。また、gH/gLのヘテロダイマーは、gB及びgDと相互作用膜融合において重要な役割を果たしていることが知られている(非特許文献13)。

2006年にHSV−1 gBの構造が解かれた結果、gBは5つのドメインをもった3量体を形成していることが明らかになった(非特許文献14)。また、gBの構造は膜融合タンパク質として知られているVSV(Vesicular stomatitis virus)のgGと似た構造をとっており、このことはgBがHSVの膜融合タンパク質であることを裏付けている。また、gBは他のヘルペスウイルスにおいても高度に保存されており、その機能はヘルペスウイルスに共通するものであると考えられている。

これまでに、HSVgBの機能性領域を特定するため、gBの変異体モノクローナル抗体を用いた解析が複数のグループで行われきた(非特許文献15〜18)。その結果、いくつかの機能性領域が見出されてきている。

現在、HSVの治療としてはアシクロビル等の抗ウイルス薬が用いられているが、ウイルスを完全に除去することはできず、服用中止するとウイルスが再活性化する。これは、HSVが神経節への潜伏感染という特殊な感染形態をとることに起因している。そのため、HSVの感染そのものを防御する予防用ワクチン、又は感染症状・再活性化症状を軽減・緩和する治療用ワクチンの開発が望まれるが、現在、有効なワクチンは存在せず、そのアンメットニーズは高い。

また、アシクロビルやホスカルネット等の抗ウイルス薬の高頻度又は長期の使用によって、耐性ウイルス株の増加をもたらすことが懸念されている(非特許文献19)。更に、それらの抗ウイルス薬は肝機能異常、造精能低下、消化管障害腎機能異常などの様々な副作用を有しており、時に減薬や休薬を避けられないケースも発生し得る。

HSVは従来型ワクチンや病原体感染歴では十分な防御免疫を獲得できない病原体の一つであるとして知られている。これはHSVが様々な免疫逃避機構を有し、宿主免疫反応を巧妙にくぐり抜けているからであると考えられている。

概要

抗HSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、単純ヘルペスウイルス(HSV)のエンベロープ糖タンパク質B(gB)に特異的に結合する、抗HSV gBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片であって、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号5に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号6に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。

目的

本発明は、HSVに対して中和効果を示し、HSVの細胞間伝播を抑制し、HSV感染症の予防及び/又は治療に利用し得る新規な抗HSV gBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する

効果

実績

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請求項1

単純ヘルペスウイルス(HSV)のエンベロープ糖タンパク質B(gB)に特異的に結合する、抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片であって、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号5に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号6に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む、抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。

請求項2

配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含む、請求項1に記載の抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。

請求項3

前記HSVが、HSV−1又はHSV−2である、請求項1又は2に記載の抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。

請求項4

請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド

請求項5

請求項4に記載のポリヌクレオチドと、当該ポリヌクレオチドに作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを含む発現ベクター

請求項6

請求項5に記載の発現ベクターが導入された形質転換体

請求項7

請求項4に記載のポリヌクレオチド、請求項5に記載の発現ベクター、又は請求項6に記載の形質転換体を用いて、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を製造する方法。

請求項8

請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む、HSV感染症を予防又は治療するための医薬組成物

請求項9

前記HSV感染症が、HSV−1感染症又はHSV−2感染症である、請求項8に記載の医薬組成物。

請求項10

前記HSV感染症は、口唇ヘルペス角膜ヘルペス性器ヘルペス全身性新生児ヘルペス、並びに、HSVに起因する口内炎皮膚疾患脳炎髄膜炎、及び脊髄炎からなる群より選択されるものである、請求項8又は9に記載の医薬組成物。

請求項11

配列番号10に記載の単純ヘルペスウイルス−1(HSV−1)のエンベロープ糖タンパク質B(gB)の383−388アミノ酸残基からなる領域における少なくとも1つのアミノ酸残基、及び/又は、配列番号11に記載の単純ヘルペスウイルス−2(HSV−2)のエンベロープ糖タンパク質B(gB)の386−391アミノ酸残基からなる領域における少なくとも1つのアミノ酸残基に特異的に結合する、抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。

請求項12

配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号5に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号6に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む、請求項11に記載の抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。

請求項13

配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含む、請求項12に記載の抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。

請求項14

請求項11〜13のいずれか一項に記載の抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド。

請求項15

請求項14に記載のポリヌクレオチドと、当該ポリヌクレオチドに作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを含む発現ベクター。

技術分野

0001

本発明は、抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片に関する。

背景技術

0002

単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus;HSV)は、向神経性病原体であり、粘膜上皮に初感染後は知覚神経移行し、三叉神経節又は仙骨神経節にて終生潜伏感染する。潜伏しているHSVはときに再活性化し、様々な病態を引き起こす(非特許文献1)。

0003

HSVには2つの血清型(HSV−1、HSV−2)が知られており、HSV−1は主に口唇角膜ヘルペス、HSV−2は主に性器ヘルペスの原因となる。しかし近年、性行動多様化等から、しばしばHSV−1が性器ヘルペス、HSV−2が口唇ヘルペスの原因となることもある。日本における抗体陽性者(既感染者比率は、HSV−1で60〜80%、HSV−2は10%であり、HSV−2に限ったとしてもワクチン潜在需要は1000万人と推測される(非特許文献2)。また、米国における抗体陽性者(既感染者)比率は、HSV−1が57%、HSV−2が20%(そのうち約10%が顕在性の性器ヘルペス)となっている(非特許文献3)。

0004

HSVの細胞への感染成立には、吸着侵入の2段階で5つのエンベロープ糖タンパク質(glycoprotein)が関与していることが知られている。この5つのエンベロープ糖タンパク質はそれぞれ、エンベロープ糖タンパク質B(gB)、エンベロープ糖タンパク質C(gC)、エンベロープ糖タンパク質D(gD)、エンベロープ糖タンパク質H(gH)、エンベロープ糖タンパク質L(gL)と呼ばれている(非特許文献4)。

0005

まず、吸着過程は、gB及びgCが細胞表面のヘパラン硫酸に結合することがきっかけとなる(非特許文献5、6)。この過程はHSVが細胞に侵入する際必須ではないが、より効率的な侵入に関与していると考えられている。次に、侵入過程では、gB及びgDがそれぞれの宿主細胞受容体と結合し、ウイルスエンベロープと宿主細胞膜が融合することによって開始される。

0006

宿主細胞受容体としてgB受容体とgD受容体が知られている。gB受容体として、NM−IIA(非特許文献7、8)及びMAG(非特許文献9)が同定されている。gD受容体として、ネクチン1(非特許文献10)、HVEM(非特許文献11)、及び3−O−硫酸化ヘパラン硫酸(非特許文献12)が同定されている。また、gH/gLのヘテロダイマーは、gB及びgDと相互作用膜融合において重要な役割を果たしていることが知られている(非特許文献13)。

0007

2006年にHSV−1 gBの構造が解かれた結果、gBは5つのドメインをもった3量体を形成していることが明らかになった(非特許文献14)。また、gBの構造は膜融合タンパク質として知られているVSV(Vesicular stomatitis virus)のgGと似た構造をとっており、このことはgBがHSVの膜融合タンパク質であることを裏付けている。また、gBは他のヘルペスウイルスにおいても高度に保存されており、その機能はヘルペスウイルスに共通するものであると考えられている。

0008

これまでに、HSVgBの機能性領域を特定するため、gBの変異体やモノクローナル抗体を用いた解析が複数のグループで行われきた(非特許文献15〜18)。その結果、いくつかの機能性領域が見出されてきている。

0009

現在、HSVの治療としてはアシクロビル等の抗ウイルス薬が用いられているが、ウイルスを完全に除去することはできず、服用中止するとウイルスが再活性化する。これは、HSVが神経節への潜伏感染という特殊な感染形態をとることに起因している。そのため、HSVの感染そのものを防御する予防用ワクチン、又は感染症状・再活性化症状を軽減・緩和する治療用ワクチンの開発が望まれるが、現在、有効なワクチンは存在せず、そのアンメットニーズは高い。

0010

また、アシクロビルやホスカルネット等の抗ウイルス薬の高頻度又は長期の使用によって、耐性ウイルス株の増加をもたらすことが懸念されている(非特許文献19)。更に、それらの抗ウイルス薬は肝機能異常、造精能低下、消化管障害腎機能異常などの様々な副作用を有しており、時に減薬や休薬を避けられないケースも発生し得る。

0011

HSVは従来型ワクチンや病原体感染歴では十分な防御免疫を獲得できない病原体の一つであるとして知られている。これはHSVが様々な免疫逃避機構を有し、宿主免疫反応を巧妙にくぐり抜けているからであると考えられている。

先行技術

0012

Roizman, B.ら、Herpes simplex viruses, p. 2501-2602. In D. M. Knipe and P. M. Howley (ed.), 「FieldsVirology」, 5th ed. Lippincott Williams &Wilkins, Philadelphia, P.A. 2007
Hashido M1ら、An epidemiologic study of herpes simplex virus type 1 and 2 infection in Japan based on type-specific serological assays, Epidemiol Infect. 1998 Mar; 120(2):179-86
Decision Resources; Emerging Vaccines 2008
ウイルス2010 第60巻第2号,pp.187-196
Herold, B. C.ら、Glycoprotein C-independent binding of herpes simplex virus to cells requires cell surface heparan sulphate and glycoprotein B. J Gen Virol 1994 75 (Pt 6):1211-22
Herold, B. C.ら、Glycoprotein C of herpes simplex virus type 1 plays a principal role in the adsorption of virus to cells and in infectivity. J Virol 1991 65:1090-8
Arii, J.ら、Non-muscle myosin IIA is a functional entry receptor for herpes simplex virus-1. Nature 2010 467:859-62
Satoh, T.ら、PILRalpha is a herpes simplex virus-1 entry coreceptor that associates with glycoprotein B. Cell 2008 132:935-44
Suenaga, T.ら、Myelin-associated glycoprotein mediates membrane fusion and entry of neurotropic herpesviruses. Proc Natl Acad Sci U S A 2010 107:866-71
Geraghty, R. J.ら、Entry of alphaherpesviruses mediated by poliovirus receptor-related protein 1 and poliovirus receptor. Science 1998 280:1618-20
Montgomery, R. I.ら、Herpes simplex virus-1 entry into cells mediated by a novel member of the TNF/NGF receptor family. Cell (1996)87:427-36
Shukla, D.,ら、A novel role for 3-O-sulfated heparan sulfate in herpes simplex virus 1 entry. Cell 1999 99:13-22
Eisenberg RJら、Herpes virus fusion and entry: a story with many characters. Viruses 2012 4:800-832 10.3390/v4050800
SCIENCE 2006 313, 14, 217-220
Virology 1989 172(1),11-24
Virology 1991 180(1),135-152
Virology 1992 186(1),99-112
Bender FCら、Antigenic and mutational analyses of herpes simplex virus glycoprotein B reveal four functional regions. J Virol. 2007 Apr;81(8):3827-41. Epub 2007 Jan 31
Pottage JC Jrら、Herpes simplex virus resistance to acyclovir: clinical relevance. Infect Agents Dis. 1995 Sep;4(3):115-24
Krawczyk Aら、Impact of valency of a glycoprotein B-specific monoclonal antibody on neutralization of herpes simplex virus. J Virol. 2011 Feb;85(4):1793-803. doi: 10.1128/JVI.01924-10. Epub 2010 Dec 1

発明が解決しようとする課題

0013

本発明は、HSVに対して中和効果を示し、HSVの細胞間伝播を抑制し、HSV感染症の予防及び/又は治療に利用し得る新規な抗HSV gBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0014

本発明者らは、ヒト抗体ライブラリーを用いて実施した抗HSVgB抗体の網羅的探索によって、44種類の抗gB抗体を取得した。それらの抗体をウイルス中和試験に供した結果、モノクローナル抗体D48と命名された株は、HSV−1及びHSV−2に対する強力なウイルス中和活性プラーク数減少活性)及び細胞間伝播(Cell to cell感染拡大)の抑制活性を示し、その活性強度は他の抗体を圧倒していたことを見出した。本発明者らは、モノクローナル抗体D48に対してさらに詳細な解析を行い、本発明の完成に至った。

0015

すなわち、本発明は、以下の各発明に関する。
(1)単純ヘルペスウイルス(HSV)のエンベロープ糖タンパク質B(gB)に特異的に結合する、抗HSV gBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片であって、
列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号5に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、
配列番号6に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域
を含む、抗HSV gBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含む、上記(1)の抗HSV gBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
(3)HSVが、HSV−1又はHSV−2である、上記(1)又は(2)の抗HSV gBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかの抗HSV gBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド
(5)上記(4)のポリヌクレオチドと、当該ポリヌクレオチドに作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを含む発現ベクター
(6)上記(5)の発現ベクターが導入された形質転換体
(7)上記(4)のポリヌクレオチド、上記(5)の発現ベクター、上記(6)に記載の形質転換体を用いて、上記(1)〜(3)のいずれかの抗HSV gBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を製造する方法。
(8)上記(1)又は(2)の抗HSV gBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む、HSV感染症を予防又は治療するための医薬組成物
(9)HSV感染症が、HSV−1感染症又はHSV−2感染症である、上記(8)の医薬組成物。
(10)HSV感染症は、口唇ヘルペス、角膜ヘルペス、性器ヘルペス、全身性新生児ヘルペス、並びに、HSVに起因する口内炎皮膚疾患脳炎髄膜炎、及び脊髄炎からなる群より選択されるものである、上記(8)又は(9)の医薬組成物。
(11)配列番号10に記載の単純ヘルペスウイルス−1(HSV−1)のエンベロープ糖タンパク質B(gB)の383−388番目アミノ酸残基からなる領域における少なくとも1つのアミノ酸残基、及び/又は、配列番号11に記載の単純ヘルペスウイルス−2(HSV−2)のエンベロープ糖タンパク質B(gB)の386−391番目のアミノ酸残基からなる領域における少なくとも1つのアミノ酸残基に特異的に結合する、抗HSV gBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
(12)配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号5に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、
配列番号6に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と
を含む、上記(11)の抗HSV gBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
(13)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、
を含む、上記(12)の抗HSV gBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
(14)上記(11)〜(13)のいずれかの抗HSV gBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド。
(15)上記(14)のポリヌクレオチドと、当該ポリヌクレオチドに作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを含む発現ベクター。

発明の効果

0016

本発明の抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、in vitroでHSV−1及びHSV−2に対する強力なウイルス中和活性(プラーク数減少活性)を有すると共に、強力なCell to cell感染拡大(細胞間伝播)抑制活性を有しており、また、in vivoでも予防的投与のみならず、生体において既にHSV感染が成立している状況下での治療的投与においても有意な感染防御効果を示す。それによって、HSV感染を予防及び/又は治療・再活性化防止に適用でき、特にHSV感染リスクの高い免疫不全患者、又は免疫抑制剤を投与している骨髄移植血液幹細胞移植、又は臓器移植患者に対する予防薬として、或いはHSVの再活性化を繰り返す患者に対する治療薬として既存抗ウイルス薬の代替薬又は併用薬として使用することができる。

図面の簡単な説明

0017

実施例2のELISAによる抗HSVgB抗体(Fab)の反応性解析の結果を示す図である。
実施例2のELISAによる抗HSV gB抗体(ヒト−マウスキメラIgG2a)の反応性解析の結果を示す図である。
実施例3のイムノブロットによる抗HSV gB抗体の反応性解析の結果を示す図である。
実施例6の水素重水素交換質量分析HDX−MS)によるエピトープ解析の結果を示す図である。
実施例8の抗体D48、F67及びE31によるマウス感染防御試験生存率の比較結果を示す図である。
実施例8の抗体D48によるマウスへの予防的投与の生存率の結果を示す図である。
実施例8の抗体D48によるマウスへの予防的投与の症状スコアの結果を示す図である。
実施例8の抗体D48によるマウスへの治療的投与の生存率の結果を示す図である。
実施例8の抗体D48によるマウスへの治療的投与の症状スコアの結果を示す図である。
実施例9の抗体D48によるモルモットへの予防的投与の症状スコアの結果を示す図である。
実施例9の抗体D48によるモルモットへの治療的投与の症状スコアの結果を示す図である。
実施例9の抗体D48によるモルモットへの治療的投与の拭い液中のHSV放出量の結果を示す図である。
HSV−1由来gBのアミノ酸配列(配列番号10)及びHSV−2由来gBのアミノ酸配列(配列番号11)を多重整列した比較結果を示した図であり、斜体部はリーダー配列を示し、下線部はHSV−1由来gBのドメインIIの383−388番目のアミノ酸残基(I383−R388)、及び、HSV−2由来gBのドメインIIの386−391番目のアミノ酸残基(I386−R391)を示す。

0018

以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。

0019

本発明の一実施形態の抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、単純ヘルペスウイルス(HSV)のエンベロープ糖タンパク質B(gB)に特異的に結合する。本発明の抗HSV gBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号5に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号6に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、を含む。

0020

本発明者らは、ヒト抗体ライブラリーを用いて実施した抗HSV—2 gB抗体の網羅的探索によって、44種類の抗gB抗体を取得した。それらの抗体をウイルス中和試験に供した結果、モノクローナル抗体D48は強力なプラーク数減少活性及びCell to cell感染拡大抑制活性を示した。

0021

抗体D48は、表1に示す配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を有し、また、配列番号3〜5のアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、重鎖CDR2、及び重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号6〜7のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、軽鎖CDR2、及び軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを有する。

0022

本発明の抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、モノクローナル抗体D48のCDR配列を含むものであるため、HSV−1及びHSV−2に対する強力なウイルス中和活性(プラーク数減少活性)を有すると共に、強力なCell to cell感染拡大(細胞間伝播)抑制活性を有する。

0023

抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含むものであってもよい。

0024

抗HSVgBモノクローナル抗体は、少なくとも重鎖の可変ドメイン及び軽鎖の可変ドメインを含む抗体であり、完全抗体であってよい。完全抗体は、2つの全長の軽鎖と2つの全長の重鎖とを有し、それぞれの軽鎖と重鎖とはジスルフィド結合によって連結されている。完全抗体は、IgAIgDIgEIgM及びIgGを含み、IgGは、サブタイプとして、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む。

0025

抗原結合断片は、抗体断片ともいい、抗原に結合する機能を持つ断片(抗原結合フラグメント)を意味する。抗原結合断片は、例えば、1本鎖可変領域断片(scFv)、Fab、Fab’、F(ab’)2、scAb、scFvFc及びFvを含む。Fabは、軽鎖及び重鎖の可変領域と軽鎖の不変領域及び重鎖の最初の不変領域(CH1ドメイン)を持つ構造として1つの抗原結合部位を持つ。Fab’は、重鎖CH1ドメインのC末端に少なくてもシステイン残基を含むヒンジ領域を持つという点でFabと異なる。F(ab’)2抗体は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基間のジスルフィド結合によって生成される。Fv(可変断片)は、重鎖可変部位及び軽鎖可変部位のみを持つ最小の抗原結合断片を意味する。二本鎖Fv(dsFv)は、重鎖可変部位とジスルフィド結合によって軽鎖可変部位と連結されており、一本鎖Fv(scFv)は、一般的にペプチドリンカーを通じて重鎖可変領域が軽鎖可変領域と共有結合で連結されている。scAbは、scFvにL鎖又はH鎖定常領域の一部のドメイン(Cドメイン)が結合したものである。scFvFcは、scFvにH鎖のCH1及びCH2が結合したものである。

0026

抗原結合断片は、例えば、完全抗体からタンパク質加水分解酵素を用いて得ることができる。例えば、完全抗体をパパインで切断することで、Fab断片を得ることができ、ペプシンで切断することで、F(ab’)2断片を得ることができる。また、抗原結合断片は、遺伝子組み換え技術を用いて作製することもできる。軽鎖及び重鎖の可変領域は、相補性決定領域(以下「CDR」という)と呼ばれる3つの多変可能な領域を含む。CDRは、主に抗原のエピトープに結合する役割をする。3つのCDRは、N−末端から順にそれぞれ、CDR1、CDR2、CDR3と呼ばれる。

0027

抗HSVgBモノクローナル抗体は、ヒト抗体(完全ヒト抗体)、ヒト化抗体、又はキメラ抗体であってもよく、特にヒトモノクローナル抗体又はヒト化モノクローナル抗体であることが好ましい。

0028

本実施形態の抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、単純ヘルペスウイルス(HSV)のエンベロープ糖タンパク質B(gB)に特異的に結合する。HSV gBは、HSV−1由来gB及びHSV−2由来gBを含むが、図13は、HSV−1由来gBのアミノ酸配列(配列番号10)及びHSV−2由来gBのアミノ酸配列(配列番号11)を多重整列した比較結果を示す。図13によれば、両者の配列同一性が87%である本実施形態の抗HSV gBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、HSV−1由来gB及びHSV−2由来gBのいずれに特異的に結合し、特にgBのドメインII、さらに特にHSV−1由来gBのドメインIIのI383−R388、又は、HSV−2由来gBのドメインIIのI386−R391に対応する領域における少なくとも1つ、又は少なくとも2つ、さらに少なくとも3つのアミノ酸残基に特異的に結合する。

0029

本実施形態の抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、既存抗ウイルス薬に対するメリットとして、(1)副作用が少ない、(2)耐性ウイルス株出現リスクが低い、の2点が考えられる。特に後者に関しては、本実施形態の抗HSV gBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、ウイルス複製サイクルに不可欠なHSV−1及びHSV−2外被表面糖タンパク質B(gB)上のエピトープ配列に特異的に結合する抗体であり、それゆえ、gBタンパク質中の当該エピトープ配列の変異に起因するであろうHSV耐性の出現は、その変異自体がウイルス感染価喪失をもたらすものと考えられるため、可能性は低いものと考えられる。

0030

本発明の別の実施形態の抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、配列番号10に記載の単純ヘルペスウイルス−1(HSV−1)のエンベロープ糖タンパク質B(gB)の383−388番目のアミノ酸残基からなる領域における少なくとも1つのアミノ酸残基、及び/又は、配列番号11に記載の単純ヘルペスウイルス−2(HSV−2)のエンベロープ糖タンパク質B(gB)の386−391番目のアミノ酸残基からなる領域における少なくとも1つのアミノ酸残基に特異的に結合する。該抗HSV gBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片としては、例えば、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号5に記載のアミノ酸配列からなる重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号6に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含むものが挙げられる。

0031

別の実施形態として、上記モノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオヂド、上記ポリヌクレオチドと、当該ポリヌクレオチドに作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを含む発現ベクター、及び上記発現ベクターを含む形質転換体が提供される。

0032

ポリヌクレオチドは、完全抗体をコードするポリヌクレオチド、並びに、配列番号1〜8に記載のアミノ酸配列を含む抗原結合断片をそれぞれコードするポリヌクレオチドであり得、複数のCDRをコードするポリヌクレオチドを一つのポリヌクレオチドに組み込んでもよい。このようなポリヌクレオチドは、例えば、化学合成より得ることができる。

0033

本実施形態の抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオヂドと、当該ポリヌクレオチドに作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを含む発現ベクターとしては、特に限定されないが、宿主細胞において、ポリヌクレオチドを複製及び/又は発現可能なベクターであり得る。たとえば、pCAG、pETなどが挙げられる。調節配列は、宿主細胞におけるポリヌクレオチドの発現を制御する配列(例えば、プロモータエンハンサーリボソーム結合配列転写終結配列等)であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。当該発現ベクターは、宿主細胞でポリヌクレオチドが発現できるように、適切なプロモータと作動可能に連結されており、また、選別用マーカーを含むベクターであってもよい。また、配列番号1〜8に記載のアミノ酸配列を含む抗原結合断片をそれぞれコードするポリヌクレオチド、たとえば、重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドと、軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドとを別々のベクターで発現させてもよい。

0034

宿主細胞としては、抗体を発現できるものであれば、特に限定されないが、例えば、ヒト、チャイニーズハムスター、マウス、ラットウサギブタサルヤギウマなどの哺乳類動物細胞植物細胞酵母細胞昆虫細胞、又はバクテリア細胞等が挙げられる。

0035

宿主細胞の形質転換の方法としては、特に限定されないが、電気穿孔法リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。

0036

モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、例えば、既知遺伝子工学の方法により作製することができる。モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、例えば、上述の抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞において発現することによって作製することができる。ポリヌクレオチドの設計は、ヒト抗体か、ヒト化抗体か、又はキメラ抗体によって、当業者が適宜に行える。たとえば、ヒト抗体又はその抗原結合断片の場合、配列番号1及び2に記載の重鎖及び軽鎖の可変領域、或いは、配列番号3〜8に記載の重鎖CDR1〜3及び軽鎖CDR1〜3をコードするポリヌクレオチドに加えて、ヒト抗体のこれらの部分以外の部分のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの少なくとも一部をさらに含み得る。完全抗体の場合、上記可変領域又はCDR1〜3をコードするポリヌクレオチドと、それ以外の部分をコードするポリヌクレオチドとが正しい順番で機能的に連結することによって得ることができる。重鎖及び軽鎖をコードするポリヌクレオチドを一つのポリヌクレオチドに組み込んでもよく、別々のポリヌクレオチドに組み込んでもよい。また、発現させるためのプロモータや、発現の確認に必要なタグをコードするポリヌクレオチドをさらに含んでもよい。キメラ抗体又はその抗原結合断片の場合は、配列番号1及び2に記載の重鎖及び軽鎖の可変領域、或いは、配列番号3〜8に記載の重鎖CDR1〜3及び軽鎖CDR1〜3をコードするポリヌクレオチド以外の部分は、マウス又はモルモットなどの動物由来のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含み得る。

0037

さらなる実施形態は、抗HSVgBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む、HSV感染症を予防又は治療するための医薬組成物を提供する。HSV感染症は、HSV−1及びHSV−2による感染症を含み、例えば、口唇ヘルペス、角膜ヘルペス、性器ヘルペス、全身性の新生児ヘルペス、並びに、HSVに起因する口内炎、皮膚疾患、脳炎、髄膜炎、及び脊髄炎などが挙げられる。

0038

予防とは、HSV感染リスクのある対象、特にHSV感染リスクの高い免疫不全患者、又は免疫抑制剤を投与している骨髄移植・血液幹細胞移植・臓器移植患者に投与することによる感染の発症を抑制又は遅らせる或いは症状を緩和することを意味する。治療とは、生体において既にHSV感染が成立している対象に投与することによる症状の緩和、好転又は完治を意味し、HSV再発を繰り返す対象に投与することによる再発防止をも含む。HSV感染症を治療するための医薬組成物は、既存抗ウイルス薬の代替薬又は併用薬として使用することができる。

0039

医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含んでもよい。薬学的に許容可能な担体としては、特に限定されないが、水、塩類溶液リン酸緩衝化整理食塩水デキストロースグリセロールエタノールなどが挙げられる。これらの担体は、1種単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。

0040

医薬組成物は、錠剤顆粒カプセル注射剤点眼剤吸入剤湿布剤とすることができる。そのための製剤化剤として、例えばさらに、潤滑剤、乳化剤防腐剤緩衝材安定化剤など、抗体または抗体部分保存性又は有効性を増大させる少量の補助物質を含んでもよい。

0041

以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。

0042

実施例1 抗HSVgBモノクローナル抗体D48の作製
ヒト抗体ライブラリーを用いて実施した抗HSV−2 gB(HSV gB2)抗体の網羅的探索によって、取得した抗体D48について、scFv−hFc型、Fab型、ヒト−マウスキメラIgG2a型及びヒト−モルモットキメラIgG2κ型の4種類の分子形態の抗体D48を作製し、さらに解析を行った。

0043

<scFv−hFc>
配列番号9に示すアミノ酸配列をコードする単離した抗体D48 scFv(single chain Fv)遺伝子をヒトIgG1に由来するFc遺伝子(CH2−CH3)と連結し、pCAGベクターにクローニングし、scFv−Fc発現プラスミド構築した。発現には、FreeStyle293又はExpi293発現システムライフテクノロジー社)を用いた。発現プラスミドを細胞にトランスフェクションし、4〜6日で培養上清回収した。培養上清をAb−Rapid PuRe 10(ProteNova)又はAb−Rapid PuRe Ex(ProteNova)を用いて精製し、scFv−hFcを得た。

0044

<Fab>
単離した抗体D48 scFv遺伝子のVH領域をマウスIgG2aに由来するCH1遺伝子と連結し、pCAGベクターにクローニングし、H鎖発現プラスミドを構築した。また、抗体D48 scFv遺伝子のVL領域をマウスCL遺伝子と連結し、pCAGベクターにクローニングし、L鎖発現プラスミドを構築した。精製を容易にするため、CH1遺伝子の後(C末端側)にHis tag遺伝子を連結している。発現には、FreeStyle293又はExpi293発現システムを用いた。発現プラスミドを細胞にトランスフェクションし、4〜6日で培養上清を回収した。培養上清をNiNTA Agarose(QIAGEN)を用いて精製し、Fabを得た。

0045

<ヒト−マウスキメラIgG2a>
単離した抗体D48 scFv遺伝子のVH領域をマウスIgG2aに由来するH鎖定常領域遺伝子(CH1−CH2−CH3)と連結し、pCAGベクターにクローニングし、H鎖発現プラスミドを構築した。また、抗体D48 scFv遺伝子のVL領域をマウスCL遺伝子と連結し、pCAGベクターにクローニングし、L鎖発現プラスミドを構築した。発現には、FreeStyle293又はExpi293発現システムを用いた。発現プラスミドを細胞にトランスフェクションし、4〜6日で培養上清を回収した。培養上清をHi Trap ProteinA HP Column(GEヘルスケア)を用いて精製し、ヒト−マウスキメラIgG2aを得た。

0046

<ヒト−モルモットキメラIgG2κ>
単離した抗体D48 scFv遺伝子のVH領域をモルモットIgG2に由来するH鎖定常領域遺伝子(CH1−CH2−CH3)と連結し、pCAGベクターにクローニングし、H鎖発現プラスミドを構築した。また、抗体D48 scFv遺伝子のVL領域をマウスCL遺伝子と連結し、pCAGベクターにクローニングし、L鎖発現プラスミドを構築した。発現には、FreeStyle293又はExpi293発現システムを用いた。発現プラスミドを細胞にトランスフェクションし、4〜6日で培養上清を回収した。培養上清をHi Trap ProteinA HP Columnを用いて精製し、ヒト−モルモットキメラIgG2κを得た。

0047

実施例2ELISAによる抗HSVgB抗体の反応性解析
<Fabの反応性解析>
取得したFabの結合活性はELISAによって評価した。FabをPBSで2μg/mLに希釈し、MaxiSorp plate(Nunc)に100μL入れ、2時間室温でインキュベートすることによってFabを固相化した。固相化後、プレートをPBSで洗浄し、1μg/mLから3.16倍ずつ0.316ng/mLまで段階希釈して組換えHSV−1 gB(gB1−705−strep)プレートのウェルに100μL加え、37℃でインキュベーションした。1時間後、PBSTで洗浄し、検出抗体抗strep−Tactin/HRP(フナコシ)をプレートのウェルに100μL加え、37℃でインキュベーションした。1時間後、PBSTで洗浄し、TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)をプレートのウェルに100μL加えることによって発色させた。30分後、1N硫酸で反応を停止させ、マイクロプレートリーダーモレキュラーデバイス)で発色値(O.D.450nm/650nm)を測定した。使用した組換えgB(gB1−705−strep)は、配列番号11に示すアミノ酸配列の1〜705アミノ酸残基からなるHSV−2の333株由来の野生型gBのエクトドメインのC末端にStrep tagIIを結合したものであり、このタグを用いて精製やELISAでの検出を行った。

0048

その結果、図1に示すように組換えgB(gB1−705−strep)は、抗体D48Fabに特異的な結合を示した。

0049

<ヒト−マウスキメラIgG2aの反応性解析>
取得したヒト−マウスキメラIgG2aの結合活性はELISAによって評価した。組換えgB(gB1−705−strep)をPBSで1μg/mLに希釈し、MaxiSorp plateに100μL入れ、1時間室温でインキュベートすることによって組換えgB(gB1−705−strep)を固相化した。固相化後、プレートをPBSで洗浄し、1μg/mLから3.16倍ずつ0.316ng/mLまで段階希釈して、ヒト−マウスキメラIgG2aをプレートのウェルに100μL加え、37℃でインキュベーションした。1時間後、PBSTで洗浄し、検出抗体ウサギ抗マウスIgG/HRP(invitrogen)をプレートのウェルに100μL加え、37℃でインキュベーションした。1時間後、PBSTで洗浄し、TMBをプレートのウェルに100μL加えることによって発色させた。30分後、1N硫酸で反応を停止させ、マイクロプレートリーダーで発色値(O.D.450nm/650nm)を測定した。

0050

その結果、図2に示すように、ヒト−マウスキメラIgG2aは、組換えgB(gB1−705−strep)に特異的な結合を示した。

0051

実施例3イムノブロットによる抗HSVgB抗体の反応性解析
gB1−705−strepを8−16重量%SDS−PAGE用ゲルに2μg/レーン注入電気泳動した。電気泳動後、ゲルをニトロセルロース膜(Immobilon−P、MILLIPORE)へ転写し、2%スキムミルク(Wako)−PBSTを用いてブロッキングした。ブロッキングしたニトロセルロース膜は、PBSTによる洗浄後、2%スキムミルク−PBST、並びに、10μg/mLのscFv−hFc、Fab、ヒト−マウスキメラIgG2a、又はヒト−モルモットキメラIgG2κと室温で60分間反応させた。再度の洗浄の後、ニトロセルロース膜は、2%スキムミルク−PBST中でそれぞれ抗hIgG(H+L)/HRP(BIORAD)、抗Hisタグ/HRP(R&D)、抗マウスIgG(H+L)/HRP、又は抗モルモット(H+L)/HRP(Invitrogen)と反応させ、Immobilon Western Detection Regent(Millipore)で発色させた。未変性gB1−705−strep、変性gB1−705−strep、及び、還元・変性gB1−705−strepを作成した。還元・変性gB1−705−strepは1M DTTを加え、96℃で5分間煮沸させることで得た。変性gB1−705−strepは、96℃で5分間煮沸することで得た。未変性gB1−705−strepはこれらの操作を行っていない。作成した未変性gB1−705−strep、変性gB1−705−strep、及び、還元・変性gB1−705−strepを直接ゲルに注入した。

0052

結果を図3に示す。レーン1〜3は順に、未変性gB1−705−strep、変性gB1−705−strep、及び、還元・変性gB1−705−strepであり、レーンM及びM´はそれぞれBenchMark prestained Ladder及びMagic Western standardであった。左の写真はSDS−PAGEであり、バンド染色にはCBB染色を行った。右側の4つの写真はウェスタンブロット(WB)の結果であった。図3から分かるように、原体であるscFv−hFcは、未変性gB1−705−strepと比較して還元・変性gB1−705−strepへと強く反応する興味深い特徴を有していたが、分子形態を変更したFab型、ヒト−マウスキメラIgG2a型及びヒト−モルモットキメラIgG2κ型でもこの特徴は引き継がれていた。変性抗原へ強く反応する抗体は、リニアな配列のエピトープを認識している可能性が高いと考えられる。したがって、この結果から、抗体D48はgBのリニアな配列を認識すると推測される。

0053

実施例4表面プラズモン共鳴(SPR)による解析
Biacore T200(GE Healthcare)を使用して行われた。すべての実験においてHBS−EP+bufferを使用し、温度は25℃、流速は30μL/分に設定した。センサーチップはCM5(GE Healthcare)を使用し、gB1−705−strepを約100レゾナンスユニット(RU)固相化した。測定はシングルサイクルカイネティクスモードで実施し、scFv−hFcについては128nM、64nM、32nM、16nM、8nM、Fabについては64nM、32nM、16nM、8nM、4nM、ヒト−マウスキメラIgG2a、ヒト−モルモットキメラIgG2κ、モノクローナル抗体E31、モノクローナル抗体F67については256倍、128倍、64倍、32倍、16倍に希釈して使用した。すべてのサンプルは一回のみ測定した。モノクローナル抗体E31とモノクローナル抗体F67はともにgBのドメインIVを認識する抗体である。

0054

結果は、表2に示す。SPRを用いた速度論的解析からも親和性が維持されたままであることが示唆された。また同速度論的解析から、ヒト抗体ライブラリーを用いた抗HSVHSV gB2抗体の網羅的探索によって得られた別の抗体株であるF67及びE31は、抗体D48よりも1オーダー低い親和性を有していることを判明した。

0055

実施例5アラニンスキャニングによるエピトープ解析
抗体D48のエピトープを同定するためにgB1−705に含まれる荷電アミノ酸をアラニンに置換した187クローンを作製し、抗体D48のscFv−hFcとの反応性を確認した。

0056

gB1−705中の荷電アミノ酸残基(187箇所)をそれぞれアラニンに改変した遺伝子をPCRによって構築し、pCAGGS1−dhfr−neoにクローニングした。発現には、FreeStyle293又はExpi293発現システムを用いた。取得したgBアラニン置換体の発現量と、アラニン置換体と抗体断片との結合活性をELISAによって評価した。

0057

gBアラニン置換体を含む培養上清をMaxiSorp plateに入れ、室温で1時間インキュベートすることによってgBアラニン置換体を固相化した。固相化後、プレートをPBSTで洗浄し、検出抗体StrepTactin/HRP(IBA)をプレートのウェルに100μL加え、室温でインキュベーションした。1時間後、PBSTで洗浄し、TMBをプレートのウェルに100μL加えることによって発色させた。30分後、1N硫酸で反応を停止させ、マイクロプレートリーダーで発色値(O.D.450nm/650nm)を測定し、発現量を求めた。

0058

一方、gBアラニン置換体を含む培養上清をStreptactin(IBA)を固定化したMaxiSorp plateに入れ、室温で1時間インキュベートすることによってgBアラニン置換体を固相化した。固相化後、プレートをPBSTで洗浄し、抗体断片をプレートのウェルに100μL加え、室温でインキュベーションした。1時間後、PBSTで洗浄し、検出抗体anti−human Fc/HRP(コスモバイオ)をプレートのウェルに100μL加え、室温でインキュベーションした。1時間後、PBSTで洗浄し、TMBをプレートのウェルに100μL加えることによって発色させた。30分後、1N硫酸で反応を停止させ、マイクロプレートリーダーで発色値(O.D.450nm/650nm)を測定し、結合活性を求めた。アラニン置換していない野生型gB1−705と比較して発現量あたりの反応性が変化しているかどうかによってエピトープ候補を選出した。

0059

その結果、gBのドメインII上のR391がエピトープとして重要なアミノ酸残基であることが示唆されている。

0060

実施例6水素−重水素交換質量分析(HDX−MS)によるエピトープ解析
アラニンスキャングは親水性残基のみをターゲットとした解析であり、その他の非親水性残基がエピトープであるという可能性が十分に予想された。

0061

したがって、水素/重水素交換質量分析法(HDX−MS)を用いて抗体D48の詳細なエピトープ解析を実施した。この手法は、タンパク質がD2Oに暴露された場合、安定な水素結合を形成していない構造表面及び天然変性(disorder)領域のアミド水素が急速にHからDへと交換されるという現象を利用している。例えば抗体がTightな結合を形成した抗体−タンパク質界面では、揺らぎ運動(breathing motion)によってのみD2Oの侵入が可能となるため、HDXからは強く保護されることとなり、結果として低速のHDXしか発生しない。一方、抗体−タンパク質界面以外ではHDXからは保護されないため、結果として高速のHDXが発生する。このHDX速度の差によって不均一にHDXが起こった状態の抗体−タンパク質複合体質量変化をMSベースペプチドマッピングによって解析することで、抗体の詳細なエピトープ解析が可能となる。HDX−MSは既に多方面での応用実績のある確立された手法となっており、特に抗体のエピトープ解析においては、溶液中で立体構造を保ったままコンフォメーショナルなエピトープを解析できる点で重要な技術となっている。

0062

実験方法は、以下のとおりであった。120μMのgB1−705と400μMの抗体D48Fabを等量で混合し、gB1−705/抗体D48 Fab複合体を調製した。この複合体はPBS(pH7.2)で調製し、ジュウテリウム緩衝剤としてPBS(pD7.2)を用い20℃でH/D交換反応を行った。反応後の複合体にQuench buffer(100mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、4Mグアニジン塩酸塩、150mMトリス(2−カルボキシエチルホスフィン塩酸塩(TCEP))を加え、pH2.4になるように調製した。ペプシンカラムを用いて、複合体をペプチド断片にし、LC−MSで解析した。この際の切断、溶出条件はInjected sample:75pmol、ペプシン消化脱塩時間:6分、LCのグラジエント条件:9分とした。この条件においてgB1−705、gB1−705/抗体D48 Fab複合体の3回測定で共通するペプチドは192本であり、配列包括度(Sequence coverage)は99.2%であった。

0063

水素−重水素交換質量分析(HDX−MS)によるエピトープ解析の結果を図4に示す。gB1−705と抗体D48Fabを用いた解析を実施した結果、ヒットしたペプチドはV380−D389であった。また、L377−C385は重水素交換率に差がないペプチドであると判断されたため、I386−D389が抗体D48のエピトープであると示唆された。これはこれまでの本発明者らの解析結果であるR391の非常に近傍である。

0064

また、今回の検討では消化酵素としてペプシンを使用しており、R391を含むペプチドを得ることはできなかったが、総合的に考えて配列番号11に記載のHSV−2 gBのI386−R391が抗体D48のエピトープである可能性は非常に高いと考えられる。また、D389、R388、G387、I386のいずれかのみがエピトープである可能性があると考えられる。さらに、R391以降がエピトープの一部を構成している可能性もある。同様に、配列番号11に記載のHSV−2 gBのI386−R391に対応する、配列番号10に記載のHSV−1 gBのI383−R388からなる領域が抗体D48のエピトープである可能性は非常に高いと考えられる。

0065

立体構造を見るとI386−R391はgBドメインIIの溶媒面に位置するαへリックスを形成しており、抗体がアクセスしやすい部位であると言える。また、ヒットのクライテリアを達成することはできなかったが、L416−L422についても重水素交換率に差が検出されていた。L416−L422はI386−R391より構造内部側に位置し、溶媒に露出しにくい部位に存在しているため、この重水素交換率差構造変化による影響を受けたものであると考えられる。

0066

既報抗体の中でドメインII上にエピトープを有する抗HSVgBモノクローナル抗体としてはC226、H1838及びH1781が知られており、大まかなエピトープ及びin vitroの生物活性報告されているが、in vivoの生物活性の詳細は報告されていない(非特許文献18)。

0067

実施例7ウイルス中和試験
<細胞及びウイルスの培養>
ウイルスの培養、感染価測定、中和抗体価測定にはATCCから購入したVero細胞(CCL.81)を使用した。Vero細胞は、37℃、5%CO2条件下で培養した。拡張、維持、解析プレート作製時は、10%FBS含有MEM培地を使用し、感染価測定及び中和抗体価測定時は、2%FBS含有MEM培地を使用した。中和試験及び感染防御能解析に用いるウイルスバンクはATCCから購入した、Human herpesvirus 2(HSV−2)MS株(VR−540)及びHuman herpesvirus 1(HSV−1)KOS株(VR−1493)をm.o.i=0.01〜1でフルシートのVero細胞に接種し、2〜3日間2%FBS含有MEM培地で培養した。回収した感染細胞培養ボトルを3回凍結融解して細胞を破砕後、TOMY遠心器で室温にて3500rpm、10分遠心し、上清をHSV−2ウイルスバンク及びHSV−1ウイルスバンクとした。

0068

<中和試験>
中和試験はプラーク数減少活性(プラークリダクション活性)測定とcell to cell感染拡大抑制活性測定の2種類の方法を用いて行った。対象とするウイルスはHSV−2 MS株とHSV−1 KOS株の2種を用いた。

0069

プラークリダクション活性測定は、被験抗体を所定の濃度になるように調製し約100PFUのHSV−2 MS株又はHSV−1 KOS株と混合後、37℃で1時間反応させた。48ウェルプレートにフルシートになったVero細胞に反応液播種し、30℃で1時間吸着後に1%メチルセルロース含有MEM(2%FBS)培地で24時間培養後、50%メタノール/50%エタノール(−20℃)で、−20℃で30分間不活化及び固定を行った。その後、抗HSV gBモノクローナル抗体を37℃で1時間反応させ、抗マウスIgG/HRP(Dako P0447)とTMBHで免疫染色し、ELISPOTアナライザー(ImmunoSpot S6 Analyzer CTL社)で各ウェルの画像を取り込み、解析ソフト(BioSpot CTL社)でプラーク数をカウントした。

0070

Cell to Cell感染拡大抑制活性測定は、48ウェルプレートにフルシートになったVero細胞に約100PFUのHSV−2 MS株又はHSV−1 KOS株を接種し、30℃で1時間吸着後、所定濃度の被験抗体を含有した1%メチルセルロース含有MEM(2%FBS)培地(抗体濃度は5、25及び125μg/mL)を添加し、HSV−2 MS株は約40時間、HSV−1 KOS株は約48時間培養後、50%メタノール/50%エタノール(−20℃)で、−20℃で30分間不活化及び固定を行った。その後、自家調製した抗HSV gBモノクローナル抗体を37℃で1時間反応させ、抗マウスIgG/HRPとTMBHで免疫染色し、ELISPOTアナライザーで各ウェルの画像を取り込み、解析ソフトでプラークサイズ平均値を解析した。

0071

結果を表3に示す。抗体D48のscFv−hFc、Fab、ヒト−マウスキメラIgG2a、及びヒト−モルモットキメラIgG2kは、何れもKOS(HSV−1)、MS(HSV−2)の両株に対して1nM以下又は数nMの強力な50%プラーク数減少活性を示した。また、抗体D48のscFv−hFc及びヒト−マウスキメラIgG2aはMS(HSV−2)株に対して、それぞれ40nM及び48nMの強力な50%Cell to cell感染拡大抑制活性を示した。

0072

抗体D48のin vitroにおけるHSV−1及びHSV−2に対する50%プラーク数減少活性は、既報の様々な抗HSV gBモノクローナル抗体の中でも突出している。

0073

実施例8マウス感染防御試験
試験方法
マウス性器ヘルペス感染モデルを用いて、抗HSVgBモノクローナル抗体(ヒト−マウスキメラIgG2a)の予防的投与及び治療的投与における感染防御試験を実施した。BALB/cマウス(5週齢メス)を用いた。所定量の抗体を注射用生理食塩水(saline)に溶解してマウスに抗体を投与する。予防的投与の場合にはウイルス接種24時間前に200μL/匹の容量にて腹腔内投与した。治療的投与の場合にはウイルス接種48時間後に、200μL/匹の容量にて腹腔内投与した。1群あたりN=10の例数を設定した。ウイルス接種時の感染効率を向上させるために、ウイルス接種6日前にDepo−Proveraを2mg/匹で皮下接種した。麻酔下で5×105PFU/20μLのHSV−2 MS株を経接種し、21日間経過観察を行った。生存日数(生存率)及び症状スコアを指標に感染防御能を示した。症状スコアは、膣病変症状の有無及び程度によってスコアを定義し各群における平均値を示した。スコアの付け方として、0:変化なし、1:部分的な紅斑腫脹、2:広範囲の腫脹・浮腫、3:潰瘍出血、4:死亡、とした。回復の見込みのない重篤全身症状立毛麻痺、震戦、痙攣など)が認められた場合、その日はスコアを3.5とし、犠牲死させ、次の日に死亡として扱ってスコアを4とした。

0074

<抗体D48、F67及びE31によるマウス感染防御試験>
表4に示す3種類の抗HSVgB2抗体D48、F67及びE31(何れもヒト−マウスキメラIgG2a)に関して、それぞれのマウス感染防御能を評価し比較した。抗体D48がHSV gBのドメインII領域にエピトープを有し強力なウイルス中和活性(50%プラーク数減少活性)を有する抗体であるのに対し、F67及びE31は共にドメインIV領域にエピトープを有し、前者がウイルス中和活性を有さず、後者は中程度のウイルス中和活性を有していた。

0075

各群の動物例数をn=7として予防的投与を行い、表5に感染後の生存日数及びその平均値を示し、図5に感染後の生存率(%)の平均値を示す。マウス感染防御能に関しては、抗体D48が30μg/匹/回及び3μg/匹/回で顕著な生存日数延長効果を示し、0.3μg/匹/回でも有意な生存日数延長効果を示したのに対し、F67及びE31は何れも限定された効果を示すにとどまっていた。この結果から、抗体D48が他の抗HSVgB2抗体に比してin vitroのみならずin vivoにおいても顕著な感染防御活性を有し、その優秀性はエピトープ領域及び親和性の差異に基づく可能性が示唆された。

0076

<抗体D48によるマウス感染防御試験結果>
マウス性器ヘルペス感染モデル(n=10)を用いて、抗体D48(ヒト−マウスキメラIgG2a)の予防的投与及び治療的投与における感染防御試験結果を示す。予防的投与の結果は、表6(投与量別の生存日数)、図6(生存率)及び図7(症状スコア)に示す。治療的投与の結果は、表7(投与量別の生存日数)、図8(生存率)及び図9(症状スコア)に示す。

0077

予防的投与において、設定した全ての投与量(10mg/kg、3mg/kg、1mg/kg、0.5mg/kg、0.3mg/kg)において、陰性対照群(saline投与群)に比して有意な生存日数延長効果を示した。特に、高用量域である10mg/kg及び3mg/kgの2用量において、顕著な生存率及び症状スコアの改善効果を示した。

0078

治療的投与において、HSVは感染局所から体内に侵入後48時間以内に神経節に移行するという報告がある。しかし、感染後48時間時点において抗体D48を治療的投与した場合も、10mg/kg及び3mg/kgの2用量において顕著な生存率及び症状スコアの改善効果を示した。これらの結果から、抗体D48は予防的投与のみならず治療的投与においても強力な感染防御効果を示すことが確認された。

0079

実施例9モルモット感染防御試験
<試験方法>
モルモット性器ヘルペス感染モデルを用いて、抗HSVgBモノクローナル抗体D48(ヒト−モルモットキメラIgG2k)の予防的投与及び治療的投与における感染防御試験を実施した。SLC社から購入したHartleyモルモット(3〜5週齢、メス)を用いた。所定量の抗体を注射用生理食塩水(saline)に溶解し、予防的投与の場合にはウイルス接種24時間前に、また治療的投与の場合にはウイルス接種4日間後に、何れも1mg/kg〜30mg/kgの容量にて腹腔内投与した。治療的投与の場合は、投与前に症状観察を行い、膣症状を呈している個体を選別し、各群の平均スコア偏りが生じない様にランダマイズした。各群の動物例数を予防的投与ではN=9に設定し、治療的投与ではN=15に設定した。ウイルス接種は麻酔下で5×105PFU/50μLのHSV−2 MS株を経腟接種し、急性期症状を接種後2〜3週間観察した。症状スコアは、0:明確な病変なし、0.5−1:紅斑、1.5−2:限局的水泡、2.5−3:限局的な潰瘍又は痂皮、3−5:広範に及ぶ水泡・潰瘍又は痂皮、3−7:失禁を伴う広範な潰瘍又は痂皮、7.5:重篤な症状による安楽殺、8:死亡、とした。また、ウイルス接種後7日目に、膣拭い液(膣swab)を採取し、プラーク法によってウイルス放出量を測定した。膣Swabは、MEM培地で湿潤させた綿棒を膣内に挿入後、膣内壁粘膜を拭い取るようにして採取した。採取した膣Swabは、シリコナイズチューブに1mLずつ分注したMEM培地にて懸濁し、使用時まで凍結保存した。ウイルス放出量の測定時に膣swabを原液、10倍、100倍、1000倍希釈し、100μL/ウェルで96ウェル又は48ウェルにフルシートになったVero細胞に接種した。膣Swab接種後37℃で1時間ウイルス吸着を行い、1%メチルセルロース含有2%FBSMEM培地で24〜72時間培養した後に、所定の方法でプラーク数を計測した。

0080

<結果>
モルモット性器ヘルペス感染モデル(急性期)を用いて、抗体D48(ヒト−モルモットキメラIgG2κ)の予防的投与の感染防御試験の症状スコアの結果を図10に、治療的投与感染防御試験の症状スコアの結果を図11に、治療的投与感染防御試験の膣拭い液中のHSV放出量を図12に示す。

0081

図10に示すように、予防的投与では設定した投与量(30mg/kg、10mg/kg、3mg/kg、1mg/kg)の全ての用量において、陰性対照群(saline投与群)に比して有意な症状スコアの改善効果が認められた。

実施例

0082

図11に示すように、感染後4日時点において既に膣症状を呈しているモルモットに対して抗体D48を30mg/kgを投与した結果、陰性対照群(saline投与群)に比して有意に症状スコアが軽減した。また、ウイルス接種後7日目において膣拭い液(膣swab)を採取し、プラーク法によってウイルス放出量を測定した結果、図12に示すように陰性対照群に比して有意にウイルス放出量が減少した。以上から、抗体D48は予防的投与のみならず治療的投与においても有意な感染防御効果を示すことが確認された。

0083

本発明によれば、HSVに対して強力な中和効果を示し、HSVの細胞間伝播を抑制できる新規な抗HSV gBモノクローナル抗体を提供できる。それによって、HSV感染を予防及び/又は治療に適用でき、特にHSV感染リスクの高い免疫不全患者、又は免疫抑制剤を投与している骨髄移植・血液幹細胞移植・臓器移植患者に対する予防薬として、或いはHSV再発を繰り返す患者に対する治療薬として既存抗ウイルス薬の代替薬又は併用薬として使用することができる。

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