図面 (/)
課題・解決手段
熱ムラが少なく、熱拡散性が高く、ヒータとして極めて有効で、人体に良い温熱機器を実現することができる遠赤外線輻射シートを提供する。平面状に形成され、遠赤外線を輻射する遠赤外線輻射シート(1)であって、基本材および炭素繊維を混抄して形成された発熱型混抄紙(20)と、発熱型混抄紙(20)に設けられた電極(21)と、発熱型混抄紙(20)に積層され、基本材および高熱伝導性を有する炭素繊維または黒鉛を混抄して形成された熱拡散型混抄紙(10)と、発熱型混抄紙(20)および熱拡散型混抄紙(10)に積層されたプリプレグ(11,22)およびPETフィルム(23)と、を備え、電極(21)に通電することによって遠赤外線を輻射する。
概要
背景
熱の伝わり方には、「伝導」、「対流」および「輻射」があるが、従来の暖房に関する技術では、熱の「伝導」または「対流」のいずれかにより熱を伝達しようとする手法が多かった。例えば、エアコンやガスファンヒータから供給される温風や、温水式の床暖房システムにおけるパイプ内の湯は「対流」により熱を伝える。また、例えば、温水やニクロム線から得られる熱を「伝導」させることによって床暖房として機能させる方式もあった。熱源からの熱を拡散させるためには、熱伝導率の優れたアルミニウムや銅をフィルム状にして、それを熱拡散ツールとし、床の裏面に貼り付ける、すなわち、ヒータの最表面に貼り付ける手法が採られていた。
一方、熱の「輻射」を用いた暖房技術については、従来から、加熱や暖房を行なうためのヒータとして、炭素繊維を用いた面状発熱体が提案されている。炭素繊維を用いた面状発熱体は、遠赤外線を輻射する発熱体として注目され、遠赤外線輻射シートとして実用化されている。この遠赤外線輻射シートは、パルプなどにチョッピング状の炭素繊維を混抄し、抄紙化したシートに、銅箔や銀ペースト等を使って電極を設け、ガラスエポキシやPETフィルムなどの絶縁物でパッキングまたは積層することで作成される。このような遠赤外線輻射シートは、導電性を有し、面状に効率良く遠赤外線を輻射するヒータ材として使用されている。
例えば、特許文献1には、特定の波長領域の遠赤外線をより高い効率で輻射する遠赤外線輻射シートが開示されている。この遠赤外線輻射シートでは、単なる発熱体としてではなく、遠赤外線輻射材料として、炭素繊維が用いられており、黒色に着色された炭素繊維混抄紙に電極が設けられ、前記炭素繊維混抄紙に有機化合物層が積層された構成が採られている。なお、遠赤外線とは、約4μmから約100μmの範囲の波長を有する赤外線のことである。
概要
熱ムラが少なく、熱拡散性が高く、ヒータとして極めて有効で、人体に良い温熱機器を実現することができる遠赤外線輻射シートを提供する。平面状に形成され、遠赤外線を輻射する遠赤外線輻射シート(1)であって、基本材および炭素繊維を混抄して形成された発熱型混抄紙(20)と、発熱型混抄紙(20)に設けられた電極(21)と、発熱型混抄紙(20)に積層され、基本材および高熱伝導性を有する炭素繊維または黒鉛を混抄して形成された熱拡散型混抄紙(10)と、発熱型混抄紙(20)および熱拡散型混抄紙(10)に積層されたプリプレグ(11,22)およびPETフィルム(23)と、を備え、電極(21)に通電することによって遠赤外線を輻射する。
目的
このような遠赤外線の「輻射」を用いる暖房技術では、効率良く熱を拡散させる手法が提案されておらず、有効な解決策が望まれていた
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
平面状に形成され、遠赤外線を輻射する遠赤外線輻射シートであって、基本材および炭素繊維を混抄して形成された発熱型混抄紙と、前記発熱型混抄紙に設けられた電極と、前記発熱型混抄紙に積層され、遠赤外線を吸収し、熱拡散機能を有する熱拡散シートと、前記発熱型混抄紙および前記熱拡散シートに積層された有機化合物層と、を備え、前記電極に通電することによって遠赤外線を輻射することを特徴とする遠赤外線輻射シート。
請求項2
前記発熱型混抄紙および前記熱拡散シートは、複数の前記有機化合物層でそれぞれ挟持されるようにパッキングされ、前記発熱型混抄紙および前記熱拡散シートは、相互に絶縁されていることを特徴とする請求項1記載の遠赤外線輻射シート。
請求項3
遠赤外線を用いる床暖房システムであって、基本材および炭素繊維を混抄して形成された発熱型混抄紙と、前記発熱型混抄紙に設けられた電極と、前記発熱型混抄紙に積層され、遠赤外線を吸収し、熱拡散機能を有する熱拡散シートと、前記発熱型混抄紙および前記熱拡散シートに積層された有機化合物層と、温度を検知して前記発熱型混抄紙への通電または非通電を切り替えるサーモスタットと、温度を検知するセンサと、前記センサにより検知した温度に応じて前記発熱型混抄紙への通電制御を行なう制御部と、を備え、前記制御部が、前記電極に通電することによって遠赤外線を輻射することを特徴とする床暖房システム。
請求項4
技術分野
背景技術
0002
熱の伝わり方には、「伝導」、「対流」および「輻射」があるが、従来の暖房に関する技術では、熱の「伝導」または「対流」のいずれかにより熱を伝達しようとする手法が多かった。例えば、エアコンやガスファンヒータから供給される温風や、温水式の床暖房システムにおけるパイプ内の湯は「対流」により熱を伝える。また、例えば、温水やニクロム線から得られる熱を「伝導」させることによって床暖房として機能させる方式もあった。熱源からの熱を拡散させるためには、熱伝導率の優れたアルミニウムや銅をフィルム状にして、それを熱拡散ツールとし、床の裏面に貼り付ける、すなわち、ヒータの最表面に貼り付ける手法が採られていた。
0003
一方、熱の「輻射」を用いた暖房技術については、従来から、加熱や暖房を行なうためのヒータとして、炭素繊維を用いた面状発熱体が提案されている。炭素繊維を用いた面状発熱体は、遠赤外線を輻射する発熱体として注目され、遠赤外線輻射シートとして実用化されている。この遠赤外線輻射シートは、パルプなどにチョッピング状の炭素繊維を混抄し、抄紙化したシートに、銅箔や銀ペースト等を使って電極を設け、ガラスエポキシやPETフィルムなどの絶縁物でパッキングまたは積層することで作成される。このような遠赤外線輻射シートは、導電性を有し、面状に効率良く遠赤外線を輻射するヒータ材として使用されている。
0004
例えば、特許文献1には、特定の波長領域の遠赤外線をより高い効率で輻射する遠赤外線輻射シートが開示されている。この遠赤外線輻射シートでは、単なる発熱体としてではなく、遠赤外線輻射材料として、炭素繊維が用いられており、黒色に着色された炭素繊維混抄紙に電極が設けられ、前記炭素繊維混抄紙に有機化合物層が積層された構成が採られている。なお、遠赤外線とは、約4μmから約100μmの範囲の波長を有する赤外線のことである。
先行技術
0005
特許第3181506号明細書
発明が解決しようとする課題
0006
しかしながら、従来の遠赤外線輻射シートでは、温度ヒューズ付きのサーモスタットやPTCシステム、またはサーミスタなどを使用して温度制御しているが、同一シート内において10%〜20%の温度ムラがあることが分かっている。また、任意の箇所において、放熱を遮断された状態が継続すると、“篭り熱”が発生し、局所的に温度が上昇してしまう。特に、遠赤外線輻射シートは、人の生活空間における床に設置するため、家具などを置いた箇所に“篭り熱”が発生する可能性が高い。
0007
このような課題を解決させるためには、熱を拡散させることが必要であるが、「伝導」の方式で用いられているアルミニウムや銅などは、遠赤外線を反射してしまうため、熱拡散ツールとして輻射面の最表面に用いることができない。このような遠赤外線の「輻射」を用いる暖房技術では、効率良く熱を拡散させる手法が提案されておらず、有効な解決策が望まれていた。
0008
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、熱ムラが少なく、熱拡散性が高く、ヒータとして極めて有効で、人体に良い温熱機器を実現することができる遠赤外線輻射シートを提供し、これを用いた床暖房システムおよびドーム型温熱機器を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0009
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の遠赤外線輻射シートは、平面状に形成され、遠赤外線を輻射する遠赤外線輻射シートであって、基本材および炭素繊維を混抄して形成された発熱型混抄紙と、前記発熱型混抄紙に設けられた電極と、前記発熱型混抄紙に積層され、遠赤外線を吸収し、熱拡散機能を有する熱拡散シートと、前記発熱型混抄紙および前記熱拡散シートに積層された有機化合物層と、を備え、前記電極に通電することによって遠赤外線を輻射することを特徴とする。
0010
このように、発熱型混抄紙に対し、遠赤外線を吸収し、熱拡散機能を有する熱拡散シートを積層するので、熱伝導効率を高めることが可能となり、温度ムラを軽減させ、また、放熱を遮断された状態によって起こる局所的な温度の上昇による“篭り熱”の発生を抑制することが可能となる。また、このような熱拡散シートは、熱を拡散させると共に、遠赤外線を吸収して放射する機能も有するため、遠赤外線の輻射を遮ることなく活用すると同時に熱拡散の促進を図ることが可能であり、温度のムラを改善し、局所的な温度上昇を抑制し、また、発熱型混抄紙の輻射面の最表層部に密着させるように積層することが可能となる。本発明に係る遠赤外線輻射シートは、様々な温度域における赤外線の全放射率が高く、また、広い波長帯で高く安定した放射率を有するため、ヒータとして極めて有効である。
0011
(2)また、本発明の遠赤外線輻射シートにおいて、前記発熱型混抄紙および前記熱拡散シートは、複数の前記有機化合物層でそれぞれ挟持されるようにパッキングされ、前記発熱型混抄紙および前記熱拡散シートは、相互に絶縁されていることを特徴とする。
0012
このように、前記発熱型混抄紙および前記熱拡散シートは、複数の前記有機化合物層でそれぞれ挟持されるようにパッキングされ、前記発熱型混抄紙および前記熱拡散シートは、相互に絶縁されているので、熱伝導性を高めると共に、絶縁性を高めることが可能となる。
0013
(3)また、本発明の床暖房システムは、遠赤外線を用いる床暖房システムであって、基本材および炭素繊維を混抄して形成された発熱型混抄紙と、前記発熱型混抄紙に設けられた電極と、前記発熱型混抄紙に積層され、遠赤外線を吸収し、熱拡散機能を有する熱拡散シートと、前記発熱型混抄紙および前記熱拡散シートに積層された有機化合物層と、温度を検知して前記発熱型混抄紙への通電または非通電を切り替えるサーモスタットと、温度を検知するセンサと、前記センサにより検知した温度に応じて前記発熱型混抄紙への通電制御を行なう制御部と、を備え、前記制御部が、前記電極に通電することによって遠赤外線を輻射することを特徴とする。
0014
このように、発熱型混抄紙に対し、遠赤外線を吸収し、熱拡散機能を有する熱拡散シートを積層するので、熱伝導効率を高めることが可能となり、温度ムラを軽減させることが可能となる。また、このような熱拡散シートは、熱を拡散させると共に、遠赤外線を吸収して放射する機能も有するため、遠赤外線の輻射を遮ることなく活用すると同時に熱拡散の促進を図ることが可能であり、温度のムラを改善し、局所的な温度上昇を抑制し、また、発熱型混抄紙の輻射面の最表層部に密着させるように積層することが可能となる。本発明に係る遠赤外線輻射シートは、様々な温度域における赤外線の全放射率が高く、また、広い波長帯で高く安定した放射率を有するため、ヒータとして極めて有効である。
0015
(4)また、本発明のドーム型温熱機器は、遠赤外線を輻射するドーム型温熱機器であって、半円筒状に形成され、両端が開口するフレームと、前記フレームの内面に設けられた上記(1)または(2)記載の遠赤外線輻射シートと、前記フレームおよび前記遠赤外線輻射シートを被覆するカバー部と、を備えることを特徴とする。
0016
この構成により、熱拡散シートが、熱を拡散させると共に、遠赤外線を吸収して放射する機能も有するため、遠赤外線の輻射を遮ることなく活用すると同時に熱拡散の促進を図ることが可能となる。また、発熱型混抄紙の輻射面の最表層部に密着させるように積層することが可能となる。さらに、本発明に係る遠赤外線輻射シートは、様々な温度域における赤外線の全放射率が高く、さらに、人体に最も有効に作用する育成光線と呼ばれている波長帯の放射率が極めて高く、安定しているため、人体に良い温熱機器を実現することが可能となる。
発明の効果
0017
本発明によれば、発熱箇所の熱拡散を促し、局所的な温度上昇を抑制することが可能となる。また、熱拡散シートが、熱を拡散させると共に、遠赤外線を吸収して放射する機能も有するため、遠赤外線の輻射を遮ることなく活用すると同時に熱拡散の促進を図ることが可能であり、温度ムラを改善し、発熱型混抄紙の輻射面の最表層部に密着させるように積層することが可能となる。また、様々な温度域における赤外線の全放射率が高く、広い波長帯で高く安定した放射率を有するため、ヒータとして極めて有効である。さらに、高い放射率で安定して育成光線を放射することができるので、人体に良い温熱機器を実現することが可能となる。
図面の簡単な説明
0018
本実施形態に係る遠赤外線輻射シートの分解図である。
変形例に係る遠赤外線輻射シートの分解図である。
本検証に係る装置の概要を示す「実験キッド構造図」である。
本検証に係る装置の概要を示す「実験キッド平面図」である。
従来型の遠赤外線輻射シートと本実施形態に係る黒鉛シート積層型の遠赤外線輻射シートとの遠赤外線放射エネルギー量の測定と比較をするための「カメラ設置部構造図」である。
従来型の遠赤外線輻射シートと本実施形態に係る黒鉛シート積層型の遠赤外線輻射シートとの遠赤外線放射エネルギー量の測定と比較をするための「実験キッド構造図」である。
従来型の遠赤外線輻射シートと本実施形態に係る黒鉛シート積層型の遠赤外線輻射シートとの遠赤外線放射エネルギー量の測定と比較をするための「実験キッド平面図」である。
従来型の遠赤外線輻射シートと本実施形態に係る黒鉛シート積層型の遠赤外線輻射シートとの遠赤外線放射エネルギー量の測定と比較をするための「実験キッド側面図」である。
従来型の「黒鉛無しシート」の室温における分光放射率スペクトルの測定結果を示す図である。
本実施形態に係る「黒鉛積層型シート」の室温における分光放射率スペクトルの測定結果を示す図である。
本実施形態に係る床暖房システムの概略構成を示す図である。
本実施形態に係る床暖房システムの概略構成を示す図である。
サーモスタットが設けられた遠赤外線輻射シート1の概略を示す図である。
畳式床暖房システムの概要を示す図である。
畳式床暖房システムの分解構成図である。
畳式床暖房システムの分解側面図である。
畳式床暖房システムの分解側面図である。
本実施形態に係るドーム型温熱機器の分解図である。
ドーム型温熱機器を、円柱としての軸方向のほぼ中央で切断した場合の断面図である。
ドーム型温熱機器に用いられる遠赤外線輻射シートの平面図である。
実施例
0019
本発明者は、遠赤外線輻射シートの特性として、温度ムラがあることと、任意の箇所において、放熱を遮断された状態が継続すると、“篭り熱”が発生し、局所的な温度上昇が発生することに着目し、熱伝導性の高い炭素繊維または黒鉛を混抄した混抄紙を用いることで、温度ムラや“篭り熱”を抑制することができることを見出し、本発明に至った。従来は、高熱伝導性の炭素繊維、または黒鉛を使用した熱拡散シートは、主にヒートシンクなどの放熱用のシートとして利用されてきたが、本発明は、熱拡散シートを発熱型混抄紙の輻射面に積層し、熱拡散ツールとして使用することによって、熱拡散効率の向上を図る。
0020
すなわち、本発明の遠赤外線輻射シートは、平面状に形成され、遠赤外線を輻射する遠赤外線輻射シートであって、基本材および炭素繊維を混抄して形成された発熱型混抄紙と、前記発熱型混抄紙に設けられた電極と、前記発熱型混抄紙に積層され、遠赤外線を吸収し、熱拡散機能を有する熱拡散シートと、前記発熱型混抄紙および前記熱拡散シートに積層された有機化合物層と、を備え、前記電極に通電することによって遠赤外線を輻射することを特徴とする。
0021
これにより、本発明者は、遠赤外線輻射シートの熱伝導効率を高めることを可能とし、温度ムラを改善し、局所的な温度上昇を抑制し、また、発熱型混抄紙の輻射面の最表層部に密着させるように積層することを可能とした。また、様々な温度域における赤外線の全放射率が高く、広い波長帯で高く安定した放射率を実現すると共に、人体に良い温熱機器を実現することを可能とした。以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
0022
図1Aは、本実施形態に係る遠赤外線輻射シートの分解図である。この遠赤外線輻射シート1では、熱拡散型混抄紙10が、0.1mm〜0.2mmの厚さを有するプリプレグ11と、0.1mmの厚さを有するPET(Polyethylene terephthalate)フィルム23aとに挟持される。このプリプレグとは、ガラスクロスや炭素繊維のような繊維状の補強材に、硬化剤、着剤材などの添加物を混合したエポキシなどの熱硬化性樹脂を均等に含浸させて、加熱または乾燥させたプラスチック成形材料のことである。本実施形態では、0.1mm〜0.2mmの厚さを有するプリプレグ11を用いたが、本発明は、これに限定されるわけではなく、厚さを適宜変更することが可能である。例えば、プリプレグ11の熱拡散型混抄紙10と接触する部分の厚さと、プリプレグ11のPETフィルム23aと接触する部分の厚さとが均一となるよう、通常のガラスエポキシよりも少し多いエポキシ樹脂を含んだプリプレグを用いることもできる。
0023
次に、本実施形態に係る熱拡散シートとしての熱拡散型混抄紙10は、炭素繊維を含む基本材に、黒鉛を圧縮製紙することで熱拡散型混抄紙として作製される。なお、本発明は、これに限定されるわけではなく、既存の黒鉛シートやグラファイトシートを用いることができる。すなわち、遠赤外線を吸収し、熱拡散を促す機能を有するシートであれば適用可能である。図1Aに示すように、本実施形態では、この熱拡散型混抄紙10は、後述する発熱型混抄紙20の輻射面に対して、最表層部に位置している。
0024
発熱型混抄紙20は、図1Aの紙面に対して両端部に電極21を有しており、上述したPETフィルム23aと、0.1mm〜0.2mmの厚さを有するプリプレグ22によって挟持されている。また、発熱型混抄紙20は、絶縁および保護のため、最下面に、0.1mmの厚さを有するPETフィルム23bを有している。
0025
なお、本実施形態では、0.1mm〜0.2mmの厚さを有するプリプレグ22を用いたが、本発明は、これに限定されるわけではなく、厚さを適宜変更することが可能である。例えば、プリプレグ22の発熱型混抄紙20と接触する部分の厚さと、プリプレグ22のPETフィルム23aと接触する部分の厚さとが均一となるよう、通常のガラスエポキシよりも少し多いエポキシ樹脂を含んだプリプレグを用いることもできる。また、本実施形態では、熱拡散型混抄紙10を発熱型混抄紙20の輻射面に対して、最表層部に設けたが、本発明は、これに限定されるわけではなく、熱拡散型混抄紙10を発熱型混抄紙20に対して鉛直下方側に積層させたり、発熱型混抄紙20を上下から挟むように積層させたりする態様を採ることも可能である。
0026
発熱型混抄紙20は、例えば、特許第3181506号明細書に開示されているものを用いることが可能である(本発明はこれに限定されるわけではない)。すなわち、発熱型混抄紙20は、以下のようにして作成される。和紙の原料となるコウゾ、ミツマタまたはガンピ等の靱皮繊維に水を加えてパルプ液を作り、5mm程度にカッテングされた炭素繊維をその中に混入し、分散させる。そのパルプ液を抄紙用の網上に流し、ウエットシートを形成する。そのウエットシートを搾水用のロールを用いて機械的に脱水し乾燥させた後、所定の寸法に裁断する。このようにして、厚さ0.1mm前後の発熱型混抄紙20が形成される。
0027
次に、発熱型混抄紙20の対向する二辺に沿って、帯状の銀ペーストまたは銅ペーストを印刷し、銀ペーストまたは銅ペースト上に、銅箔を貼着し、電極21を形成する。そして、この発熱型混抄紙20に黒色塗料等の黒色物質を塗布または含浸させることが効果的である。黒色物質としては、例えば、CuO(酸化銅)、Fe3O4(四三酸化鉄または酸化二鉄)、Fe3P(リン化三鉄)、Fe2MgO4(酸化マグネシウム鉄)、Fe(C9H7)2(ビスインデニル鉄)等である。なお、発熱型混抄紙20に一対の電極21を取り付ける前に、発熱型混抄紙20を黒色に着色しても良い。また、発熱型混抄紙20の製造工程において、パルプ液に黒色顔料等の黒色物質を混入および分散させることにより、黒色の発熱型混抄紙20を作製しても良い。なお、熱拡散型混抄紙10と発熱型混抄紙20との絶縁性は、その間に挟まれるPETフィルム23aによって確保される。
0028
このように、発熱型混抄紙20に対し、熱拡散型混抄紙10を積層するので、熱伝導効率を高めることが可能となり、温度ムラを改善し、局所的な温度上昇を抑制することが可能となる。また、このような熱拡散型混抄紙10は、熱を拡散させると共に、遠赤外線を吸収して放射する機能も有するため、遠赤外線の輻射を遮ることなく活用すると同時に熱拡散の促進を図ることが可能であり、発熱型混抄紙20の輻射面の最表層部に密着させるように積層することが可能となる。
0029
(変形例)図1Bは、変形例に係る遠赤外線輻射シートの分解図である。この遠赤外線輻射シート1では、熱拡散型混抄紙10が、0.1mm〜0.2mmの厚さを有する一組のプリプレグ11でパッキングされることでガラスエポキシ板化され、熱拡散シート12が構成されている。
0030
発熱型混抄紙20は、図1Bの紙面に対して両端部に電極21を有しており、0.1mm〜0.2mmの厚さを有する一組のプリプレグ22によってパッキングされ、ガラスエポキシ板化されている。さらに、このガラスエポキシ板化された発熱型混抄紙20は、絶縁および保護のため、両面から、0.1mmの厚さを有する一組のPET(Polyethylene terephthalate)フィルム23aおよび23bによってパッキングされている。
0031
このような構成により、熱拡散型混抄紙10と発熱型混抄紙20との絶縁性は、その間に挟まれるPETフィルム23aによって確保される。なお、熱拡散シート12は、一つのみならず、複数設けても良い。すなわち、一つ以上の熱拡散シート12を最上位から最下位にいずれかの位置に積層させる態様や、最上位および最下位に積層させる態様を採ることも可能である。
0032
[黒鉛シートの熱拡散効果および2次元的熱分布の均一化効果における影響に関する検証] 次に、黒鉛シートの熱拡散効果および2次元的熱分布の均一化効果における影響に関する検証について説明する。ここでは、図1Aに示す遠赤外線輻射シートを用いて検証した。
0033
[検証期間] 2017年1月24日〜2017年2月1日である。
0034
[検証目的] 本実施形態に係る発熱型混抄紙に、高熱伝導性の炭素繊維、もしくは黒鉛を使用した熱拡散型混抄紙を、遠赤外線の輻射面に積層させる手段が、熱拡散率を向上させると共に、2次元的な熱分布を均一化させる事に有用であることを、数値により証明する。なお、高熱伝導性を有する炭素繊維や黒鉛を使用したシート(熱拡散型混抄紙)として、グラファイトシートなど数種の選択肢があるが、これらの中で、価格や入手し易さにも考慮し、本検証では、天然黒鉛を圧縮製紙した黒鉛シート(以下「黒鉛シート」と呼称する)を用いた。また、熱拡散率はシートの熱容量により影響を受けるため、「薄手」と「厚手」の2種類の黒鉛シートについて検証した。
0036
[検証概要]黒鉛シートを積層しない遠赤外線輻射シート(以下、「黒鉛無しシート」と呼称する)及び、黒鉛シートを遠赤外線輻射シートの輻射面に積層したシート(以下、「黒鉛積層型シート」と呼称する)を用いたフローリング床を再現し、接触型デジタル温度計(以下「温度計」と呼称する)を設置する。加温開始し、設定温度に到達した後に温度安定した状態で、両シート上3点の温度を計測し、熱分布の均一状態を比較する。その後、ウレタン系アルミ付き断熱材を用いて、人為的に異常発熱を発生させ、時間の経過毎に異常発熱帯と放熱帯の温度変化を計測することで、黒鉛シートが熱拡散に有用である事を確認する。
0037
[検証条件] 室温:15.6℃〜16.3℃温度制御センサを有するコントローラ(以下、「コントローラ」と呼称する)の設定温度:50℃薄手黒鉛積層型シート:厚さ65μm、熱伝導率(面方向)80W/m・K厚手黒鉛積層型シート:厚さ105μm、熱伝導率(面方向)120W/m・K
0038
[検証装置]図2は、本検証に係る装置の概要を示す「実験キッド構造図」であり、図3は、本検証に係る装置の概要を示す「実験キッド平面図」である。 (1)薄手黒鉛積層型シート(80W)上のA(放熱帯から20cm離れた箇所)、B(放熱帯)、C(異常発熱帯)に温度計を設置する。 (2)厚手黒鉛積層型シート(120W)上のD(放熱帯から20cm離れた箇所)、E(放熱帯)、F(異常発熱帯)に温度計を設置する。 (3)薄手黒鉛積層型シートの代わりに、黒鉛無しシートを用い、A(放熱帯から20cm離れた箇所)、B(放熱帯)、C(異常発熱態)に温度計を設置する。 (4)コントローラを設置し、検証時の制御温度を50℃にする。
0039
[検証手順] 以下の(a)〜(c)各シートのそれぞれにつき、下記(手順1)〜(手順6)の順にて行なう。 (a)黒鉛無しシート(b)薄手黒鉛積層型シート (c)厚手黒鉛積層型シート
0040
(手順1)コントローラを50℃に設定した上で、加温を開始する。 (手順2)コントローラ上の温度が50℃(ピーク温度)に達した後、温度計の数値を計測することで、上昇温度が安定したことを確認し、その時点での温度から熱ムラ指数を割り出し、2次元的熱分布の均一度を比較する。 (手順3)上記(手順2)にて温度の安定を確認後、ウレタン系アルミ付き断熱材を温度計CおよびF上に設置することにより、異常発熱を発生させる。 (手順4)異常発熱下での、温度変化を計測し、上記(a)黒鉛無しシートの異常発熱帯シート表面温度が94℃に達する時点を上限とし計測する。 (手順5)温度計設置箇所それぞれにおいて、平常発熱状態下での安定ピーク温度と異常発熱開始から上記(手順4)時点のピーク温度との数値差を割り出し、熱拡散効果を検証する。 (手順6)熱容量が熱拡散率へ与える影響を明らかにするため、黒鉛積層型シートについては、上記(b)薄手黒鉛積層型シート、(c)厚手黒鉛積層型シートのいずれかの異常発熱帯シート表面温度が94℃に達するまで検証を続行する。ここで、「94℃」としたのは、接触型デジタル温度計の温度限界が「95℃」であるため、これに到達しないようにするためである。
0041
[結果/2次元的熱分布均一化効果に関する結果] ここでは、黒鉛無しシートおよび黒鉛積層型シート厚手/薄手それぞれにおけるA/D(放熱帯から20cm離れた箇所)、B/E(放熱帯)、C/F(異常発熱帯)という3地点の平均温度と、それに対する計測点ABCもしくは計測点DEF内での最高温度、最低温度との温度差比較を示す。
0042
(α)平均温度に対する最高温度、最低温度との温度差は、「熱ムラ指数」として表す。 (β)「熱ムラ指数」とは、平均温度に対する最高温度と最低温度それぞれの温度差値をプラス方向・マイナス方向に関係なく足したものである。 (γ)熱ムラ指数値が低いほど熱ムラが小さい(つまり、2次元的熱分布の均一化が成されている)と判断できる。
0043
0044
上記の表において、熱ムラ指数を比較すると、黒鉛無しシートに対して、薄手・厚手いずれの黒鉛積層型シートも指数が低いことから、黒鉛シートを輻射面に積層させる手段が、2次元的な熱分布を均一化させる効果を有することが明らかとなった。
0045
[結果/熱拡散率に関する結果]黒鉛無しシートにおける異常発熱帯シート表面温度が120分後に94℃に達した。また、黒鉛積層型シートにおいては、(b)薄手黒鉛シートが340分後に94℃に達した。以下、平常発熱状態下での安定ピーク温度と異常発熱開始120分後の温度差(上昇温度)を示す。
0046
0047
0048
0049
ここで、「熱拡散指数」とは、異常発熱帯(C/F)上昇温度から、放熱帯(B/E)上昇温度を減算したもので、熱拡散効果が高いほど数値が低くなる。
0050
この「熱拡散指数」を比較すると、黒鉛無しシートと比べて、黒鉛積層型シート(薄)、黒鉛積層型シート(厚)共に指数値が低いことから、黒鉛シートが熱拡散率を向上させる事が明らかとなった。
0051
次に、黒鉛積層型シート(薄手/厚手)の時間別熱拡散指数推移を示す。ここでは、熱拡散効率における黒鉛シートの有用性を更に明らかにするために、黒鉛積層型シート(薄手)の異常発熱帯シート表面温度が94℃に到達するまでの所要時間である、異常発熱後340分を基準に、黒鉛積層型シート薄手および厚手の時間別熱拡散指数推移を比較した。
0052
0053
黒鉛無しシートでは、異常発熱120分後の熱拡散指数が+31.5であるのに対し、黒鉛積層型シートでは、異常発熱後340分を経過した時点でも、熱拡散指数+30.2(薄手)および+24.7(厚手)であった。
0054
このことから、黒鉛シートを積層することが、熱拡散率を向上させる上で有効であり、黒鉛積層型シート(薄手)においては、熱拡散率が劣る黒鉛無しシートと同じ数値(異常発熱帯シート表面温度94℃/熱拡散指数+30.0以上)に至るまでの所要時間を約2.8倍以上に伸ばすことが可能であることが数値として確認された。
0055
[結論] 以上のように、本実施形態に係る検証結果から、黒鉛シートを遠赤外線輻射シートの輻射面に積層する事が、熱拡散率を向上させると共に、2次元的な熱分布を均一化させ、局所的な温度情報を抑制する事に有用であると結論付けられる。
0056
[遠赤外線放射エネルギー量の測定と比較] 次に、従来型の「黒鉛無しシート」と本実施形態に係る「黒鉛積層型シート」について、遠赤外線放射エネルギー量を測定し、両者を比較した。
0057
[測定日時] 2017年7月7日〜2017年7月14日である。
0058
[測定場所] 株式会社IWC内、「遠赤王技術センターIWC第1工場」である。
0059
[測定目的]従来型の「黒鉛無しシート」と本実施形態に係る「黒鉛積層型シート」は、遠赤外線の放射エネルギー量にどのような差が有るかを数値として明らかにする。
0060
[測定の概要]従来型の「黒鉛無しシート」と本実施形態に係る「黒鉛積層型シート」を、同条件下に設置した上で加温し、赤外線パワーメータ(TMM-P-10)を用いて、赤外線の放射エネルギー量を測定する。測定の対象とする赤外線の波長帯は7〜14μmとする。
0062
[測定装置]図4A、図4B、図4Cおよび図4Dは、本測定に用いた装置の詳細を示す図である。図4Aに示すように、赤外線検出用カメラをカメラ設置台に設置する。このとき、赤外線検出用カメラのレンズ部をカメラ設置台の開口部に差し込んでカメラを設置する。カメラ設置台に赤外線検出用カメラを設置すると、カメラのレンズ面から検出面までの距離は、450mmとなっている。なお、カメラ設置台の内部には遠赤外線反射用のアルミニウム箔が貼付されている。
0063
[遠赤外線パワーメータについて]図4B〜図4Dに示すように、赤外線検出用カメラには、AC100Vで駆動する赤外線パワーメータが接続されている。この赤外線パワーメータ(TMM-P-10)は、放射される赤外線エネルギーを3種類の波長帯:F1(0.7〜3μm)、F2(3〜7μm)、F3(7〜14μm)に分割し、放射エネルギー量を単位面積(W/cm2)あたりで測定することが可能な光度計である。今回の測定では、赤外線の中でも遠赤外線波長帯における成長光線とも呼ばれる波長帯F3(7〜14μm)のみを表示するよう手動で設定した。
0064
[測定ポイントと温度制御センサ位置について] 本実施形態に係る遠赤外線輻射シートの特性として、同じシート上であっても、場所によって2次元的な温度分布に多少のムラが発生することから、図4Bに示すように、測定開始前にサーモグラフィーカメラにて測定対象の両シートを測定し、同温度帯の箇所(直径70ミリの円状箇所)をそれぞれのシートに設定し、本測定における「測定ポイント」として定めた。また、同様の理由により発生し得る測定時の温度制御条件差をなくすため、温度制御センサを、本実施形態に係る「黒鉛積層型シート」上の一箇所に設置した。
0065
[測定手順] (手順1)図4Bに示すように、従来型の「黒鉛無しシート」と本実施形態に係る「黒鉛積層型シート」を並行して設置する。そして、図4B〜図4Dに示すように、各シートの測定ポイント上に赤外線パワーメータの赤外線検出用カメラを設置する。 (手順2)赤外線パワーメータの設定を「FINDER」とし、従来型の「黒鉛無しシート」または本実施形態に係る「黒鉛積層型シート」の測定ポイントに合わせ、メータ数値をゼロになるよう手動で調整する。 (手順3)メータ数値のゼロ調整を行なった後30分ほど放置し、数値の安定を確認する。放置中に誤差が発生した場合は改めて手動にて調節する。 (手順4)温度制御センサ付きコントローラをONにして加温を開始する。同時に、赤外線パワーメータの設定を「MEASURE」に移し測定を開始する。 (手順5)温度制御センサ付きコントローラが設定温度の50℃に達し、加温が初回OFFになった後、温度制御センサ付きコントローラにより繰り返される加温ON時とOFF時に合わせ、赤外線パワーメータが表示する数値を約60分間測定する。
0066
[測定結果] すべての測定結果の数値から、温度制御センサ付きコントローラの働きにより、加温が初回OFFとなった後0〜30分間、31〜60分間それぞれの平均値を用いる。単位は全て「×10−3W/cm2」である。
0067
これらの測定結果の数値から、赤外線の波長帯7〜14μmにおける放射エネルギー量は、いずれの時点でも本実施形態に係る「黒鉛積層型シート」の方が多いことが分かる。時間帯ごとの増加率を割り出すと、次の表の通りとなる。
0068
0069
[結論] 本実施形態に係る「黒鉛積層型シート」を、従来型の「黒鉛無しシート」と比較した場合、赤外線の波長帯7〜14μmにおける放射エネルギー量は、15%以上増えることが明らかとなった。
0070
[遠赤外線の放射率の測定と比較] 次に、従来型の「黒鉛無しシート」と本実施形態に係る「黒鉛積層型シート」について、遠赤外線の放射率を測定し、両者を比較した。ここで、黒鉛シートが遠赤外線を吸収する能力は、遠赤外線を放射する能力に対応していることから、“遠赤外線の放射率が高い”ということは、“遠赤外線の吸収率も高い”と言うことができる。ここでは、専門の検査機関(一般財団法人ファインセラミックスセンター)に依頼して、従来型の「黒鉛なしシート」と本実施形態に係る「黒鉛積層型シート」について、「JIS R 1693−2 2012」に準拠した「FTIRによる赤外線放射率測定」を行なった。
0071
[使用装置] FTIR装置:「Perkin Elmer製のSystem2000型」を使用した。積分球:「Labsphere製のRSA-PE-200-ID」であり、球内部は金によりコーティングされている。 積分球入射口径:φ16mmである。測定部口径:φ24mmである。
0072
[測定条件] 測定領域:370〜7800cm−1(有効範囲:400〜6000cm−1)である。積算回数:200回である。光源:MIR検出器:MIR−TGS分解能:16cm−1である。 Beam splitter:optimizedKBr なお、光源から検出器までの光路には、N2ガスを充満させパージを行なった。
0074
[測定結果] 次の表は、各温度における全放射率の測定結果を示している。この表によれば、本実施形態に係る「黒鉛積層型シート」は、各温度における全放射率が、従来型の「黒鉛無しシート」よりも優れていることが分かる。
0075
0076
また、図5Aは従来型の「黒鉛無しシート」の室温における分光放射率スペクトルの測定結果を示し、図5Bは本実施形態に係る「黒鉛積層型シート」の室温における分光放射率スペクトルの測定結果を示している。図5Aに示すように、従来型の「黒鉛無しシート」は、5μm〜10μmの波長帯で、「放射率(Intensity)」が80%〜97%の間で大きく上下している。10μm〜20μmの波長帯では安定して見えるものの、「放射率(Intensity)」は88%〜93%の範囲に留まっている。これに対し、本実施形態に係る「黒鉛積層型シート」は、図5Bに示すように、6μm〜25μmの広い波長帯において安定していると共に、「放射率(Intensity)」が90%〜95%と高い値を示している。特に、6μm〜14μmは、「放射率(Intensity)」が93%〜95%と高い値を示しているが、この波長帯の赤外線は、人体に最も有効に作用する育成光線と呼ばれており、本実施形態に係る「黒鉛積層型シート」が人体にも良いと言える。分光放射率スペクトルの測定においては、これほど広い波長帯で安定的に高い値を示すことは稀であり、本実施形態に係る「黒鉛積層型シート」は非常に優れた赤外線放射特性を有することが分かる。
0077
[フローリング式床暖房システム] 次に、本実施形態に係る遠赤外線輻射シートを用いたフローリング式床暖房システムについて説明する。図6Aおよび図6Bは、本実施形態に係るフローリング式床暖房システムの概略構成を示す図である。図6Aは、本実施形態に係るフローリング式床暖房システムを分解した様子を斜め方向から表したものであり、図6Bは、本実施形態に係るフローリング式床暖房システムを分解した一部の様子を図6AのPの方向から見た場合の側面図である。この床暖房システム40では、本実施形態に係る複数の遠赤外線輻射シート1が適用されている。ここでは、各遠赤外線輻射シート1は、縦が250mmで、横が900mmの大きさに形成されている。また、各遠赤外線輻射シート1は、コンパネ41aの上で、根太41bおよび捨貼コンパネ41cで囲まれた部分に、マトリックス状に配置されている。各遠赤外線輻射シートは、相互に並列に接続されており、制御部としてのコントローラ42からの電気的な制御を受けるように構成されている。コンパネ41aは、大引き41dおよび根太41eによって支持されている。図6Bに示すように、コンパネ41aの上面(遠赤外線輻射シート側の面)に、下地を介して各遠赤外線輻射シート1が設けられ、最上位面にフローリング41fが設けられている。
0078
複数の遠赤外線輻射シート1のうち、いずれか一つの遠赤外線輻射シート1(図6Aでは中央に位置するもの)に、温度センサとしてのサーミスタ43が設けられている。サーミスタ43が検知した温度情報は、コントローラ42に伝送され、温度情報に応じてコントローラ42が各遠赤外線輻射シート1への通電を制御する。各遠赤外線輻射シート1は、相互に並列に接続されているため、コントローラ42により、すべての遠赤外線輻射シート1の温度制御を一括して制御することが可能である。このようなサーミスタ43およびコントローラ42による一括式の温度制御は、1次的安全装置として機能する。
0079
また、各遠赤外線輻射シート1には、独自のスイッチ機能を有するサーモスタットが設けられている。図6Cは、サーモスタットが設けられた遠赤外線輻射シート1の概略を示す図である。サーモスタット44は、例えば、バイメタル式を採ることができ、温度を検知すると共に、独自に通電または非通電を切り替える機能を有する。図6Aおよび図6Cに示すように、縦が約250mmで、横が約900mmの遠赤外線輻射シートの横幅を3分割した位置に、2つのサーモスタット44が設置されている。このようにサーモスタット44が設けられているため、局所的な異常発熱が発生すると各サーモスタット44がこれを検知し、通電から非通電に切り替える。これにより、独自に異常発熱温度を検知した遠赤外線輻射シート1のみ、電流をOFFにすることが可能となる。
0080
すなわち、床暖房として約300mmピッチで敷設すると、床全体的に約300mm角のマトリックス状にサーモスタット44が設置されていることになり、これが2次的安全装置として機能する。このシステムにより、任意の箇所で起きた局所的な過発熱は、いずれかのサーモスタット44に触れることになるため、隙間無く安全装置の管理下にあることになる。また、仮に約300mm角よりも小さい領域で局所的な過発熱が生じた場合においても、約300mm角の内角で生じた局所的な過発熱は、熱拡散型混抄紙10の熱拡散効果によって、4角いずれかのサーモスタット44に感知されるので、事実上、2次的安全装置の隙間が無いことになる。これにより、安全性の高い床暖房システムを提供することが可能となる。
0081
また、図6Cに示すように、断熱材として、7〜12mmの硬質ウレタンフォーム50の上面にアルミ箔51を設け、その上にサーモスタット44が2個設けられた遠赤外線輻射シート1を設置する。このように、遠赤外線輻射シート1の下面側に硬質ウレタンフォーム50が設けられているため、遠赤外線の輻射熱は床下に洩れることなく、床上に集中させることができる。また、硬質ウレタンフォーム50の表面にアルミ箔51が設けられているため、熱拡散が促され、遠赤外線が反射される。遠赤外線の輻射を利用しない方式の他の暖房システムでは、ヒータの最表面にアルミ箔や銅箔を設けることがあるが、本発明では、遠赤外線輻射シート1の輻射面の最表面ではなく、下面側のみにアルミ箔51を設けることで、遠赤外線を反射させている。その結果、床上に遠赤外線を集中させることができる。
0082
なお、以上のフローリング式床暖房システムの説明では、一例として、「根太」という合板の受け材を使い、根太の上に例えばコンパネ41aを載せる「根太工法」を示したが、本発明は、これに限定されるわけではない。根太を使用せず、根太工法よりも相対的に厚さが大きい合板を用いる「根太レス工法(剛床工法)」に本発明を適用することも可能である。
0083
このような床暖房システム40では、遠赤外線輻射シート1において、発熱型混抄紙20の遠赤外線輻射面(鉛直上方側)に、熱拡散型混抄紙10が積層されていることから、発熱箇所の熱拡散を促し、局所的な温度上昇を抑制することが可能となる。また、熱拡散型混抄紙10が、熱を拡散させると共に、遠赤外線を吸収して放射する機能も有するため、遠赤外線の輻射を遮ることなく活用すると同時に熱拡散の促進を図ることが可能であり、温度ムラを改善し、発熱型混抄紙20の輻射面の最表層部に密着させるように積層することが可能となる。
0084
[第1の畳式床暖房システム] 次に、本実施形態に係る遠赤外線輻射シートを用いた畳式床暖房システムについて説明する。図7Aは、畳式床暖房システムの概要を示す図であり、図7Bは、畳式床暖房システムの分解構成図である。ここでは、一般的な畳に代えて畳式床暖房システムを適用する一例を示す。図7Aおよび図7Bに示すように、畳式床暖房システム52では、複数の遠赤外線輻射シート1が適用されている。各遠赤外線輻射シート1のサイズや接続は、上述したフローリング式床暖房システムと同様に構成することができる。各遠赤外線輻射シート1は、断熱のための片面AL硬質ウレタンフォーム64a、64bの上に敷かれている。各遠赤外線輻射シート1は、相互に並列に接続されており、制御部としてのコントローラ53からの電気的な制御を受けるように構成されている。さらに、片面AL硬質ウレタンフォーム64a、64bの下には、高さ調整および、断熱材として、押出法ポリスチレンフォームなどの発泡式硬質断熱材63が敷かれている(なお、硬質で断熱機能があれば、これに限定されない)。この発泡式硬質断熱材63の下には、構造用合板などによるベニヤまたはコンパネによる下地62が敷かれており、これらが大引き60および根太61によって支持されている。そして、最上位面に畳部として、厚さが約15mmの薄畳65が設けられている。
0085
図7Cは、図7Aに示すPの方向から見た畳式床暖房システム52の分解側面図である。遠赤外線輻射シート1の下面側には、サーモスタットとしてのバイメタル66が設けられており、温度を検知すると共に、独自に各遠赤外線輻射シート1に対する通電または非通電を切り替える機能を発揮する。また、ここでは、下地としてコンパネ62aが大引き60および根太61によって支持されている。図7Cに示すように、厚さが30mmの発泡式硬質断熱材63、厚さが10mmの片面AL硬質ウレタンフォーム64b、厚さが6mmのバイメタル66、厚さが0.6mmの遠赤外線輻射シート1、厚さが15mm薄畳65を積層し、バイメタル66が局所的な厚さとなるためこれを無視すると、厚さの合計は、55〜56mmとなる。JIS規格では、一般的な畳の厚さは55〜60mmであるため、これに代えて畳式床暖房システム52を適用することが可能である。
0086
[第2の畳式床暖房システム]図7Dは、いわゆる「施工設置型」の畳式床暖房システムであるが、一般的なフローリングに代えて畳式床暖房システムを適用する一例を示す。図7Dに示すように、大引き60および根太61によって支持される下地としてコンパネ62aに、厚さが7mmの片面AL硬質ウレタンフォーム64b、厚さが6mmのバイメタル66、厚さが0.6mmの遠赤外線輻射シート1、厚さが15mmの薄畳65を積層し、バイメタル66が局所的な厚さとなるためこれを無視すると、厚さの合計は、22〜23mmとなる。一般的なフローリングは、厚さが12mmであり、フローリングに代えて本実施形態に係る畳式床暖房システムを適用すると、厚さは7mmほど大きくなる。この構成により、従前のフローリングに代えて畳式床暖房システムを適用することが可能となる。
0087
なお、以上の第1および第2の畳式床暖房システムの説明では、一例として、「根太」という合板の受け材を使い、根太の上に例えばコンパネ62aを載せる「根太工法」を示したが、本発明は、これに限定されるわけではない。根太を使用せず、根太工法よりも相対的に厚さが大きい合板を用いる「根太レス工法(剛床工法)」に本発明を適用することも可能である。
0088
[ドーム型温熱機器]図8Aは、本実施形態に係るドーム型温熱機器の分解図である。このドーム型温熱機器70は、半円筒状に形成され、両端が開口するフレーム71の内面に、本実施形態に係る遠赤外線輻射シート73が設けられている。フレーム71は、中空の半円筒状であって、円柱としての軸方向の断面形状が円弧上に形成されている。すなわち、外郭として、アルミ、ステンレス、またはスチールなどで製造したメタルのフレーム71を、表装クロス(外)75bで被覆する。これが外郭ケースとなる。一方、遠赤外線輻射シート73は、フレキシブルな独立気泡断熱材72に貼着され、表装クロス(内)75aによって被覆されている。これが輻射側(内側)の遠赤外線輻射ユニットとなる。上記のような外郭ケースの内側に、遠赤外線輻射ユニットを嵌め込み、一体化することで、ドーム型温熱機器が完成し、ドーム内側から遠赤外線が輻射される。なお、遠赤外線輻射シート73にはコントローラへ接続するためのケーブル74が設けられている。
0089
図8Bは、ドーム型温熱機器70を、円柱としての軸方向のほぼ中央で切断した場合の断面図である。図8Bに示すように、遠赤外線輻射シート73は、フレーム71の内側に設けられており、フレーム71の円弧の中心方向に遠赤外線を輻射できるように構成されている。ケーブル74は、コントローラ76に接続され、コントローラ76は、コネクタ76aを介してAC100Vの電源の供給を受ける。
0090
図8Cは、ドーム型温熱機器70に用いられる遠赤外線輻射シート73の平面図であり、遠赤外線輻射シート73の2つの面のうち、図8Aにおけるフレーム71に向く面の平面図に該当する。遠赤外線輻射シート73は、約330×950mmの大きさを有し、発熱型混抄紙73aの両端に2つの電極73bが設けられ、これらがガラエポおよびPETフィルムなどで形成された有機物73cによってパッキングされることにより構成されている。そして、遠赤外線輻射シート73には、温度センサ73dとしてのサーミスタが1箇所、感応温度により独自にスイッチ機能を作動させるバイメタル式サーモスタット73eが2箇所に設置されている。なお、発熱型混抄紙73aには、図示しない本実施形態に係る熱拡散型混抄紙が積層されている。
0091
温度センサ73dは、遠赤外線輻射シート73の表面温度を検知して、その温度情報をコントローラ76に伝達し、コントローラ76が遠赤外線輻射シート73の通電制御をする。バイメタル式サーモスタット73eは、温度センサ73dによる制御が正常に働いている間は作動することは無いが、温度センサ73dがショートなどによって故障し、遠赤外線輻射シート73に何らかの異常発熱があった際に、独自で温度を感知し、送電を停止させ、安全装置として機能する。この構成により、高い放射率で安定して育成光線を放射することができるので、人体に良い温熱機器を実現することが可能となる。
0092
以上説明したように、本実施形態に係る遠赤外線輻射シートによれば、シート内での温度ムラを大幅に軽減し、また、任意の箇所において放熱を遮断された状態が継続することによって起きる局所的な温度上昇を抑えることが可能となり、任意の発熱箇所の熱拡散を促し、篭り熱の発生を大幅に軽減することが可能となる。さらに、篭り熱が発生するまでの時間を大幅に引き延ばすことが可能となる。また、様々な温度域における赤外線の全放射率が高く、広い波長帯で高く安定した放射率を有するため、ヒータとして極めて有効である。さらに、高い放射率で安定して育成光線を放射することができるので、人体に良い温熱機器を実現することが可能となる。
0093
なお、本国際出願は、2017年8月7日に出願した日本国実用新案登録出願第2017−003632号に基づく優先権を主張するものであり、日本国実用新案登録出願第2017−003632号の全内容を本国際出願に援用する。
0094
1遠赤外線輻射シート10熱拡散型混抄紙11プリプレグ12熱拡散シート20発熱型混抄紙21電極22 プリプレグ23a、23bPETフィルム40床暖房システム(フローリング式)41aコンパネ41b根太41c 捨貼コンパネ41d大引き41e 根太41f フローリング42コントローラ43サーミスタ44サーモスタット50硬質ウレタンフォーム51アルミ箔52 床暖房システム(畳式)53 コントローラ60 大引き61 根太62下地(構造用合板など)62a コンパネ63発泡式硬質断熱材64a、64b 片面AL硬質ウレタンフォーム65 薄畳66バイメタル70ドーム型温熱機器71フレーム72独立気泡断熱材73 遠赤外線輻射シート73a 発熱型混抄紙73b 電極73c有機物73d温度センサ73eバイメタル式サーモスタット74ケーブル75a表装クロス(内)75b 表装クロス(外)76 コントローラ76a コネクタ
技術視点だけで見ていませんか?
この技術の活用可能性がある分野
分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成