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技術 無菌化された粘稠性基剤の製造方法及び医薬製剤の製造方法

出願人 一般財団法人阪大微生物病研究会
発明者 南晃司五味康行小川博暢山本麻未近藤哲也
出願日 2018年7月26日 (1年2ヶ月経過) 出願番号 2018-557941
公開日 2019年7月25日 (2ヶ月経過) 公開番号 WO2019-022182
状態 特許登録済
技術分野 医薬品製剤 抗原、抗体含有医薬:生体内診断剤
主要キーワード 温度センサ配置 ハーフサイクル 混合処理物 ステンレスボトル メンブレン材 イオン反発 pH測定 熱処理効率
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (15)

課題・解決手段

無菌化された粘稠性基剤の製造方法であって、滅菌効率が良く且つ簡便な方法を提供する。酸性領域よりも中性領域で高い粘度を示す粘稠剤の酸性溶液(基剤番号2)を加熱滅菌する加熱滅菌工程と;前記加熱滅菌工程の後、前記粘稠剤の酸性溶液の加熱滅菌処理物(基剤番号3)に塩基を添加して中和する中和工程と;を含む、無菌化された粘稠性基剤(基剤番号5)の製造方法。

概要

背景

粘稠性性質を有する基剤(以下、粘稠性基剤)は食品化粧品医薬品、その他工業製品等の様々な分野で利用されている。粘稠性基剤は、液体粘性を調節するために混入する添加物である。食品分野における粘稠性基剤の利用目的としては、液状のものをゼリー状に固める効果、及び粘性を高めて食品成分を均一に分散させる効果等が挙げられる。また化粧品分野における粘稠性基剤の利用目的としては、連続層の粘度の調整、製剤の安定化、及び使用感触コントロール等が挙げられる。

一方で、医薬品分野においても粘稠性基剤が幅広く利用されている。例えば医療用点眼剤においては、薬物の結膜のう内滞留性を向上させ、薬効持続性や眼内移行性を高める目的で利用されている。更に、ワクチン分野においても粘稠性基剤の有用性が注目されている。ワクチンは、感染症の予防を目的として接種する薬液であり、感染症を引き起こす病原体の毒性を弱めた成分又は無毒化した成分が含まれている。ワクチンを接種することで当該感染症に対する免疫が誘導され、感染症の発症リスクの低下が期待される。

従来のワクチンは、皮下接種が主な投与経路であった。ワクチンを皮下接種した場合、体内において免疫が誘導され感染症の発症を予防できるものの、感染自体を予防することは困難であると考えられる。そこで近年、鼻腔粘膜における免疫誘導を目的とした経鼻接種ワクチンの開発が試みられている。例えば気道粘膜において感染が起こり得る感染症に対して、感染の場である鼻腔内で免疫を誘導することにより、感染症の発症のみならず感染自体の予防も期待されている。

気道粘膜において感染が起こり得る感染症の原因として、インフルエンザウイルスライノウイルスコロナウイルスパラインフルエンザウイルスRSウイルスアデノウイルス百日咳菌肺炎球菌ジフテリア菌等が挙げられる。例えばインフルエンザウイルスは、はくしゃみなどを通じて、口、といった気道粘膜から体内に侵入する。従来の皮下接種型のインフルエンザワクチンは、血液中IgG抗体を産生することで、体内に侵入したウイルスに対して当該抗体が機能し、重症化を予防する。一方、インフルエンザワクチンを経鼻接種することで、血液中のIgG抗体に加えウイルスが侵入してくる粘膜面IgA抗体を産生することが可能となるため、インフルエンザウイルスの体内への侵入の予防も期待できる。

経鼻接種ワクチンは、鼻腔粘膜で有効な免疫応答を誘導するため、鼻腔粘膜に長く滞留させることを目的として、粘稠性基剤が添加される。たとえば非特許文献1及び非特許文献2には、粘稠剤としてカルボキシビニルポリマー(以下、CVP)が用いられたインフルエンザワクチンが記載されている。また、特許文献1には、CVP及びジェランガムを含み、外部からせん断力を加えて粘度を調整したスプレータイプの皮膚・粘膜付着型製剤が記載されている。

医薬品を製造する上で、医薬品の無菌化は重要な要求事項であり、様々な滅菌方法にて無菌化された医薬品が市場に存在する。滅菌方法としては、加熱、濾過ガス放射線等による方法が挙げられる。特許文献2には、インフルエンザワクチンの調製において、CVPにL−アルギニン及び塩化ナトリウム溶液を加えた基剤に高圧蒸気滅菌を行い、その後、インフルエンザワクチンと混和することが記載されている。特許文献3には、点鼻噴霧ノズルが設けられる医療用シリンジに収容する薬剤の調製において、CVPとL−アルギニンとを含んで調製された基剤に、更に加熱処理または高圧蒸気滅菌等の滅菌処理を行ってよいことが記載されている。

CVPは、上述のように薬剤に用いられる基剤の他、超音波診断における接触子用の媒体に有用なゲル組成物としても用いられる。特許文献4には、このようなゲル組成物の調製において、CVPを中和した後にガンマ線滅菌等の滅菌処理を行ってよいことが記載されている。

概要

無菌化された粘稠性基剤の製造方法であって、滅菌効率が良く且つ簡便な方法を提供する。酸性領域よりも中性領域で高い粘度を示す粘稠剤の酸性溶液(基剤番号2)を加熱滅菌する加熱滅菌工程と;前記加熱滅菌工程の後、前記粘稠剤の酸性溶液の加熱滅菌処理物(基剤番号3)に塩基を添加して中和する中和工程と;を含む、無菌化された粘稠性基剤(基剤番号5)の製造方法。

目的

本発明は、無菌化された粘稠性基剤の製造方法であって、滅菌効率が良く且つ簡便な方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

酸性領域よりも中性領域で高い粘度を示す粘稠剤の酸性溶液加熱滅菌する加熱滅菌工程と、前記加熱滅菌工程の後、前記粘稠剤の酸性溶液の加熱滅菌処理物に塩基を添加して中和する中和工程と、を含む、無菌化された粘稠性基剤の製造方法。

請求項2

前記粘稠剤がカルボキシビニルポリマーである、請求項1に記載の無菌化された粘稠性基剤の製造方法。

請求項3

前記塩基が塩基性アミノ酸である、請求項1又は2に記載の無菌化された粘稠性基剤の製造方法。

請求項4

前記塩基性アミノ酸がアルギニンである、請求項3に記載の無菌化された粘稠性基剤の製造方法。

請求項5

前記塩基性アミノ酸が70℃未満の水溶液に調製される、請求項3又は4に記載の粘稠性基剤の製造方法。

請求項6

前記無菌化された粘稠性基剤において、前記塩基性アミノ酸の変性が抑制されている、請求項3〜5のいずれかに記載の無菌化された粘稠性基剤の製造方法。

請求項7

前記中和工程の前に、前記塩基性アミノ酸を濾過滅菌する工程を更に含む、請求項3から6のいずれかに記載の無菌化された粘稠性基剤の製造方法。

請求項8

前記粘稠剤の酸性溶液の20℃における粘度が100〜1000mPa・sである、請求項1から7のいずれかに記載の無菌化された粘稠性基剤の製造方法。

請求項9

前記粘稠剤の酸性溶液の26℃におけるpHが2.0〜3.5である、請求項1から8のいずれかに記載の無菌化された粘稠性基剤の製造方法。

請求項10

請求項1から9のいずれかに記載の無菌化された粘稠性基剤の製造方法を行う工程と、前記製造方法によって得られた無菌化された粘稠性基剤と医薬成分とを混合して製剤化する工程と、を含む、医薬製剤の製造方法。

請求項11

前記医薬成分がワクチン抗原であり、前記医薬製剤が経鼻投与ワクチン製剤である、請求項10に記載の医薬製剤の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、粘稠剤の無菌化技術に関する。より具体的には、本発明は、効率よく無菌化された粘稠性基剤を製造する方法及びそれを用いた医薬製剤の製造方法に関する。

背景技術

0002

粘稠性の性質を有する基剤(以下、粘稠性基剤)は食品化粧品医薬品、その他工業製品等の様々な分野で利用されている。粘稠性基剤は、液体粘性を調節するために混入する添加物である。食品分野における粘稠性基剤の利用目的としては、液状のものをゼリー状に固める効果、及び粘性を高めて食品成分を均一に分散させる効果等が挙げられる。また化粧品分野における粘稠性基剤の利用目的としては、連続層の粘度の調整、製剤の安定化、及び使用感触コントロール等が挙げられる。

0003

一方で、医薬品分野においても粘稠性基剤が幅広く利用されている。例えば医療用点眼剤においては、薬物の結膜のう内滞留性を向上させ、薬効持続性や眼内移行性を高める目的で利用されている。更に、ワクチン分野においても粘稠性基剤の有用性が注目されている。ワクチンは、感染症の予防を目的として接種する薬液であり、感染症を引き起こす病原体の毒性を弱めた成分又は無毒化した成分が含まれている。ワクチンを接種することで当該感染症に対する免疫が誘導され、感染症の発症リスクの低下が期待される。

0004

従来のワクチンは、皮下接種が主な投与経路であった。ワクチンを皮下接種した場合、体内において免疫が誘導され感染症の発症を予防できるものの、感染自体を予防することは困難であると考えられる。そこで近年、鼻腔粘膜における免疫誘導を目的とした経鼻接種ワクチンの開発が試みられている。例えば気道粘膜において感染が起こり得る感染症に対して、感染の場である鼻腔内で免疫を誘導することにより、感染症の発症のみならず感染自体の予防も期待されている。

0005

気道粘膜において感染が起こり得る感染症の原因として、インフルエンザウイルスライノウイルスコロナウイルスパラインフルエンザウイルスRSウイルスアデノウイルス百日咳菌肺炎球菌ジフテリア菌等が挙げられる。例えばインフルエンザウイルスは、はくしゃみなどを通じて、口、といった気道粘膜から体内に侵入する。従来の皮下接種型のインフルエンザワクチンは、血液中IgG抗体を産生することで、体内に侵入したウイルスに対して当該抗体が機能し、重症化を予防する。一方、インフルエンザワクチンを経鼻接種することで、血液中のIgG抗体に加えウイルスが侵入してくる粘膜面IgA抗体を産生することが可能となるため、インフルエンザウイルスの体内への侵入の予防も期待できる。

0006

経鼻接種ワクチンは、鼻腔粘膜で有効な免疫応答を誘導するため、鼻腔粘膜に長く滞留させることを目的として、粘稠性基剤が添加される。たとえば非特許文献1及び非特許文献2には、粘稠剤としてカルボキシビニルポリマー(以下、CVP)が用いられたインフルエンザワクチンが記載されている。また、特許文献1には、CVP及びジェランガムを含み、外部からせん断力を加えて粘度を調整したスプレータイプの皮膚・粘膜付着型製剤が記載されている。

0007

医薬品を製造する上で、医薬品の無菌化は重要な要求事項であり、様々な滅菌方法にて無菌化された医薬品が市場に存在する。滅菌方法としては、加熱、濾過ガス放射線等による方法が挙げられる。特許文献2には、インフルエンザワクチンの調製において、CVPにL−アルギニン及び塩化ナトリウム溶液を加えた基剤に高圧蒸気滅菌を行い、その後、インフルエンザワクチンと混和することが記載されている。特許文献3には、点鼻噴霧ノズルが設けられる医療用シリンジに収容する薬剤の調製において、CVPとL−アルギニンとを含んで調製された基剤に、更に加熱処理または高圧蒸気滅菌等の滅菌処理を行ってよいことが記載されている。

0008

CVPは、上述のように薬剤に用いられる基剤の他、超音波診断における接触子用の媒体に有用なゲル組成物としても用いられる。特許文献4には、このようなゲル組成物の調製において、CVPを中和した後にガンマ線滅菌等の滅菌処理を行ってよいことが記載されている。

0009

国際公開第2007/123193号
特開1991−038529号公報
特開2016−007409号公報
特開2001−097847号公報

先行技術

0010

Influenza and Other Respiratory Viruses. 2013 Nov; 7(6): 1218−1226.
Vaccine. 2016 Feb 24;34(9):1201−7

発明が解決しようとする課題

0011

医薬製剤の質的安定性の確保には、基剤を無菌化することが重要である。しかしながら、非特許文献1及び非特許文献2、並びに特許文献1には、CVPを含む基剤(図14の基剤番号0に相当)の無菌化については何ら記載されていない。

0012

一方、特許文献2から特許文献4ではCVPを含む基剤の無菌化についての記載がある。これらの技術においては、滅菌工程は調製後の基剤つまり中和されたCVP基剤(図14の基剤番号0に相当)に対して行われる。このような中和されたCVP基剤(図14の基剤番号0に相当)は非常に粘度が高い。このような粘度の高い基剤に対して特許文献2及び特許文献3に記載の高圧滅菌処理法を行って無菌化されたCVP基剤(図14の基剤番号1に相当)を製造することは、熱の浸透性が非常に悪く滅菌工程に極めて長い時間を要する点で問題となる。一方、特許文献4に記載のガンマ線滅菌法は、滅菌後の品質の変化に特に注意を要するため照射総線量の調節が困難である点で問題となる。
そこで本発明は、無菌化された粘稠性基剤の製造方法であって、滅菌効率が良く且つ簡便な方法を提供することを主たる課題とする。

課題を解決するための手段

0013

本発明者は鋭意検討の結果、粘稠性基剤を中和する前に滅菌を行うことによって上記本発明の課題を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下に掲げる発明を提供する。

0014

項1.酸性領域よりも中性領域で高い粘度を示す粘稠剤の酸性溶液加熱滅菌する加熱滅菌工程と;前記加熱滅菌工程の後、前記粘稠剤の酸性溶液の加熱滅菌処理物に塩基を添加して中和する中和工程と;を含む、無菌化された粘稠性基剤の製造方法。
項2. 前記粘稠剤がカルボキシビニルポリマーである、項1に記載の無菌化された粘稠性基剤の製造方法。
項3. 前記塩基が塩基性アミノ酸である、項1又は2に記載の無菌化された粘稠性基剤の製造方法。
項4. 前記塩基性アミノ酸がL−アルギニンである、項3に記載の無菌化された粘稠性基剤の製造方法。
項5. 前記塩基性アミノ酸が70℃未満の水溶液に調製される、項3又は4に記載の粘稠性基剤の製造方法。
項6. 前記無菌化された粘稠性基剤において、前記塩基性アミノ酸の変性が抑制されている、項3〜5のいずれかに記載の無菌化された粘稠性基剤の製造方法。
項7. 前記中和工程の前に、前記塩基性アミノ酸を濾過滅菌する工程を更に含む、項3〜6のいずれかに記載の無菌化された粘稠性基剤の製造方法。
項8. 前記粘稠剤の酸性溶液の20℃における粘度が100〜1000mPa・sである、項1から7のいずれかに記載の無菌化された粘稠性基剤の製造方法。
項9. 前記粘稠剤の酸性溶液の26℃におけるpHが2.0〜3.5である、項1から8のいずれかに記載の無菌化された粘稠性基剤の製造方法。
項10. 項1から9のいずれかに記載の無菌化された粘稠性基剤の製造方法を行う工程と; 前記製造方法によって得られた無菌化された粘稠性基剤と医薬成分とを混合して製剤化する工程と;を含む、医薬製剤の製造方法。
項11. 前記医薬成分がワクチン抗原であり、前記医薬製剤が経鼻投与ワクチン製剤である、項10に記載の医薬製剤の製造方法。

発明の効果

0015

本発明によれば、無菌化された粘稠性基剤の製造方法であって、滅菌効率が良く且つ簡便な方法が提供される。

図面の簡単な説明

0016

本発明の粘稠性基剤の製造方法の概略フロー(基剤番号2、基剤番号3及び基剤番号5を経るフロー)を示す。
試験例1における熱浸透確認試験の結果を示す。
試験例1における熱浸透確認試験の結果を示す。
試験例1の非無菌未中和CVP基剤の熱処理効率試験における、ステンレスタンク内のBI試験紙及び温度センサ配置箇所、及びステンレスタンク外且つスタークレー内の温度センサ配置箇所を示す。
試験例1における熱浸透確認試験の結果を示す。
試験例1における熱浸透確認試験の結果を示す。
試験例1における熱浸透確認試験の結果を示す。
試験例2におけるL−アルギニン水溶液を40℃で処理した時のUPL分析結果を示す。
試験例2におけるL−アルギニン水溶液を50℃で処理した時のUPLC分析結果を示す。
試験例2におけるL−アルギニン水溶液を60℃で処理した時のUPLC分析結果を示す。
試験例2におけるL−アルギニン水溶液を70℃、80℃、90℃、100℃、121℃で処理した時のUPLC分析結果を示す。
試験例4における粘度測定試験の結果を示す。
試験例4におけるpH測定試験の結果を示す。
従来の粘稠性基剤の製造方法の概略フローを示す。

0017

[1.粘稠性基剤の製造方法]
図1に、粘稠性基剤の製造方法の概略フロー(基剤番号2、基剤番号3及び基剤番号5を経るフロー)を示す。なお、図1では、粘稠剤の一例としてCVP、中和剤の一例としてL−アルギニンを挙げて示している。本発明の粘稠性基剤の製造方法では、加熱滅菌工程と中和工程とをこの順で行う。本発明の粘稠性基剤の製造方法では、中和工程の前に中和剤の濾過滅菌工程が行われてもよい。これらの工程によって無菌化された粘稠性基剤を得る。

0018

なお、本発明において、無菌とは、微生物死滅又は除去された状態をいい、具体的には、医療現場で国際的に求められる無菌性保証水準(sterility assurance level; SAL、適切な滅菌工程により滅菌された製品中の汚染菌の最大生存確率をいう)が10-6未満となる水準、つまり、106個の菌を殺滅したときに、生存する菌が1個未満である水準をいう。10-6未満という無菌性保証水準(SAL)は、「最終滅菌法による無菌医薬品の製造に関する指針」(2012年11月9日:日本国全面改訂厚生労働省医薬食品局監視指導麻薬対策課事務連絡)においても定められている。また、無菌化とは、このような無菌の状態にすることをいう。滅菌とは、無菌状態にするための手法、つまり微生物を死滅又は除去する手法をいう。

0019

また、以下において、粘稠性基剤とは、溶液に対して粘稠剤を分散させること、又は、溶液に対して粘稠剤の分散及び中和を行うことで得られる、増粘された溶液をいう。

0020

[1−1.加熱滅菌工程]
加熱滅菌工程では、酸性領域よりも中性領域で高い粘度を示す粘稠剤の酸性溶液(図1の基剤番号2に相当)を加熱滅菌し、その加熱滅菌処理物として無菌化された未中和基剤(図1の基剤番号3に相当)を得る。加熱滅菌を粘稠性基剤の粘度が低くなる液性(つまり酸性)条件下で行うことで、熱処理効率を向上させ、これによって滅菌効率を向上させることができる。また、滅菌手段として加熱滅菌を採用することにより、加熱温度及び時間を調整する簡便な操作で滅菌を行うことができる。加熱滅菌工程に供される粘稠剤の酸性溶液(基剤番号2に相当)は、粘稠剤と水とを含んでいればよい。

0021

粘稠剤は、酸性領域よりも中性領域で高い粘度を示す物質であり、具体的には水溶性ポリマーであり、より具体的には側鎖にカルボキシル基を有するポリマーである。このようなポリマーは、水中に分散させると酸性を呈し、側鎖カルボキシル基が未中和の状態で比較的柔軟な立体配置をとる一方、側鎖カルボキシル基が中和されてイオン化されると、側鎖間イオン反発により分子が伸張し粘度を上昇させると考えられている。なお、酸性領域は、具体的には、粘稠剤の酸性溶液(基剤番号2)のpHの領域に相当し、中性領域は、具体的には、無菌化された粘稠性基材(基剤番号5)のpHの領域に相当する。

0022

粘稠剤の例としてはカルボキシビニルポリマー(CVP)が挙げられる。カルボキシビニルポリマーは、カルボキシポリメチレン又はカルボマーとも呼ばれ、アクリル酸を主な単位構造とする水溶性ポリマーであり、水に溶解又は膨潤し、増粘させることができれば特に制限されず、部分的に架橋がされていてもよく、また、他の単位構造を含むコポリマーであってもよい。粘稠剤の分子量としては、例えば1万〜1000万、好ましくは5万〜50万であってよい。カルボキシル基含量は、カルボキシビニルポリマーにおいて例えば50モル%〜75モル%であってよい。粘稠剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。

0023

粘稠剤の酸性溶液(基剤番号2に相当)中の粘稠剤の量は、最終物(後述基剤番号5に相当)において適切な粘性を得る等の観点から、例えば0.1〜2.0質量%、好ましくは0.5〜1.8質量%、更に好ましくは1.0〜1.5質量%であってよい。

0024

粘稠剤の酸性溶液(基剤番号2に相当)は、更にグリセリン及び/又はポリグリセリンを含んでいてよい。ポリグリセリンの重合度としては特に制限されないが、例えば2〜16、好ましくは2〜10、更に好ましくは2〜6、特に好ましくは2であってよい。グリセリン及び/又はポリグリセリンとしては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。

0025

粘稠剤の酸性溶液(基剤番号2に相当)の20℃における粘度は、加熱滅菌を効率的に行う観点から、例えば2500mPa・s以下、好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは400mPa・s以下が挙げられ。最終物(基剤番号5に相当)において十分な粘性を得る観点から、10mPa・s以上、好ましくは100mPa・s以上、より好ましくは200mPa・s以上が挙げられる。具体的には、粘稠剤の酸性溶液(基剤番号2に相当)の20℃における粘度範囲としては、10〜2500mPa・s、10〜1000mPa・s、10〜400mPa・s、100〜2500mPa・s、100〜1000mPa・s、100〜400mPa・s、200〜2500mPa・s、200〜1000mPa・s、200〜400mPa・sが挙げられる。
なお、当該粘稠剤の酸性溶液(基剤番号2に相当)についての上述の粘度は、日本薬局方一般試験法」の粘度測定法における回転粘度計法に準じて得られる。具体的には、あらかじめ20℃に設定したTVE−25H形粘度計コーンプレート形)のサンプルカップ検体1.1mLを気泡が入らないように入れ、5分間静置した後、回転数2.5rpmにて3分間せん断力を加えた時の粘度値として得るものとする。ローターは1°34’×R24(ローターコード:01)を使用する。

0026

粘稠剤の酸性溶液(基剤番号2に相当)のpHとしては、加熱滅菌を効率的に行う等の観点から、21〜27℃のいずれかで測定した場合において、例えば1.5〜4.5、好ましくは2.0〜4.0、より好ましくは2.0〜3.5、更に好ましくは2.3〜3.3、一層好ましくは2.5〜3.0、特に好ましくは2.5〜2.9が挙げられる。具体的には、粘稠剤の酸性溶液(基剤番号2に相当)のpHとして、26℃で測定した場合において例えば2.0〜3.5、好ましくは2.3〜3.3、より好ましくは2.5〜3.0、更に好ましくは2.5〜2.9が挙げられる。

0027

加熱滅菌工程における具体的な滅菌方法としては特に限定されず、当業者によって適宜選択されるが、通常、高圧蒸気滅菌法が挙げられる。本発明においては、滅菌を加熱処理によって行うことで、簡便な滅菌が可能となる。したがって、非加熱滅菌法の一例である濾過滅菌法で生じる粘稠性基剤のフィルター集積の問題、及び非加熱滅菌法の他の例である放射線滅菌法で生じる設備の導入困難性の問題等を回避することができる。

0028

加熱滅菌工程における具体的な条件としては特に限定されず、達成すべき無菌性水準(SAL)に応じて当業者によって適宜選択される。例えば「最終滅菌法による無菌医薬品の製造に関する指針」(2012年11月9日:全面改訂,日本国厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課事務連絡)を参照して10-6未満の無菌性保証水準(SAL)を確保するための工程パラメータを特定し、当該指針に記載される11章及び参考情報A.2及びA.3に基づいて適切な滅菌条件を設定することができる。製品の無菌性保証水準を保証する方法としては、ハーフサイクル法、オーバーキル法、BIとバイオバーデン併用法、絶対バイオバーデン法が挙げられ、これらの方法に基づき、容器材質及び基剤の量に応じて、具体的な滅菌条件(滅菌温度、滅菌時間)を設定することができる。高圧蒸気滅菌の場合は、ハーフサイクル法では14D〜16Dを達成する滅菌時間が求められている。加熱滅菌温度の具体例として、110℃〜140℃が挙げられる。

0029

高圧蒸気滅菌は、容器内の基剤を静置させた状態で行ってもよいが、加熱効率を更に向上させる観点から、基剤を撹拌しながら行ってもよい。撹拌の方法は基剤の対流を促進可能である限り特に限定されないが、たとえば、基剤を入れた容器自体を所定の回転数で回転させる方法、所定時間ごとに容器自体の回転方向を変更する方法、及び基剤内に投入した撹拌子等により容器内の基剤を対流させる方法等が挙げられる。この場合、所定の回転数及び所定時間は基剤の対流が促進されるものであれば特に限定されない。基剤を撹拌しながら高圧蒸気滅菌を行う場合、無菌性保証水準(SAL)を達成する条件を容器の材質及び基剤の量に応じて設定する。たとえば、ハーフサイクル法で要求される14D〜16Dの滅菌時間の半分の滅菌時間における無菌性を確認する場合は、F0値として11分〜260分、望ましくは20〜200分、更に望ましくは20〜60分を設定することができる。なお、D値は、微生物の死滅率を表す値で、供試微生物の90%を死滅させ、生存率を1/10に低下させるのに要する時間又は放射線量をいう。F0値は、プロセスの微生物致死量であって、10℃のz値(D値が10倍変化するのに必要な温度)を持つ微生物について、121.1℃の温度に等価な加熱時間(分)で表される値である。加熱効率を更に向上させる他の方法として、振とうを行ってもよい。更に、撹拌と振とうを組み合わせてもよい。

0030

[1−2.中和工程]
中和工程では、加熱滅菌処理物としての無菌化未中和基剤(基剤番号3に相当)に、塩基(好ましくは、中和剤番号12に相当する無菌化した塩基)を中和剤として添加することで、中和するとともに増粘し、無菌化された粘稠性基剤(基剤番号5に相当)を得る。

0031

塩基としては特に限定されず、水酸化ナトリウム水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物水酸化バリウム水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア水トリエタノールアミンモノエタノールアミンジイソプロパノールアミンアミノメチルプロパノールトリエチルアミン及びテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンなどの有機アミン類;L−アルギニン、L−リジンヒスチジンオルチニン、カナバニン等の塩基性アミノ酸などが挙げられる。これらの塩基の中でも、基剤が生体へ適用されることを考慮すると塩基性アミノ酸であることが好ましい。塩基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。

0032

塩基は、得られる無菌化された粘稠性基剤(基剤番号5に相当)が所定のpHとなる量で適宜用いられる。例えば、無菌化された粘稠性基剤(基剤番号5に相当)100質量%に対して1〜20質量%、好ましくは2〜10質量%となる量で用いることができる。

0033

塩基は、水溶液の態様で用いることができる。効率的に中和を行うために、塩基水溶液加温状態とし、室温の飽和濃度より高い濃度の水溶液として用いることもできる。加温状態とする場合であって、且つ塩基として塩基性アミノ酸を用いる場合、水溶液を効果的に高濃度化するとともに塩基性アミノ酸の熱変性を回避する観点で加温条件を設定することが好ましい。例えば、温度としては、水溶液を効果的に高濃度化する観点から40℃以上であってよく、塩基性アミノ酸の熱変性を回避する観点から70℃未満であってよい。後述の濾過滅菌をあらかじめ行う場合にあっては濾過作業時に溶液が冷却されうることを考慮すると、塩基の析出を抑制しやすくする観点から50℃以上であることが好ましく、加温時間を十分(例えば30分以上、好ましくは45分以上)確保しつつ熱変性を良好に抑制する観点から60℃未満であることが好ましい。より具体的には、40℃以上50℃未満で6時間以下;50℃以上60℃未満で6時間以下、好ましくは3時間以下、より好ましくは2時間以下;又は60℃以上70℃未満で6時間以下、好ましくは3時間以下、より好ましくは1時間以下などの加温条件が挙げられる。なお、加温時間とは、溶質としての塩基が水溶液調製のために当該加温時間に供された時から中和が完了(増粘が完了)するまでの時間をいう。

0034

本発明によって得られる無菌化された粘稠性基剤(基剤番号5に相当)の20℃における粘度は、粘稠性基剤の粘膜における滞留性を良好に確保する観点からたとえば3000mPa・s以上、好ましくは4000mPa・s以上であってよく、投与の際の噴霧容易性及び/又は噴霧される液滴径均一性等を確保する観点から10000mPa・s以下、好ましくは9000mPa・s以下であってよい。具体的には、本発明によって得られる無菌化された粘稠性基剤(基剤番号5に相当)の20℃における粘度範囲としては、3000〜10000mPa・s、3000〜9000mPa・s、4000〜10000mPa・s、4000〜9000mPa・sが挙げられる。なお、ここに示す無菌化された粘稠性基剤(基剤番号5に相当)の粘度は、日本薬局方「一般試験法」の粘度測定法における回転粘度計法に準じて得られる。具体的には、あらかじめ20℃に設定したTVE−25H形粘度計(コーン・プレート形)のサンプルカップに検体1.1mLを気泡が入らないように入れ、5分間静置した後、回転数2.5rpmにて3分間せん断力を加えた時の粘度値として得るものである。ローターは1°34’×R24(ローターコード:01)を使用する。

0035

また、無菌化された粘稠性基剤(基剤番号5)のpHは、上述の粘度を得る観点、及び/又は製剤化後に医薬成分の適切な安定性及び/又は吸収性を得る観点等から、21〜27℃のいずれかで測定した場合において、例えば6.0〜8.5、好ましくは6.5〜8.0、更に好ましくは6.8〜8.0であってよい。好ましくは、26℃で測定した場合において、例えば6.0〜8.5、好ましくは6.5〜8.0、更に好ましくは6.8〜8.0であってよい。

0036

更に、中和剤として塩基性アミノ酸を用いた場合、無菌化された粘稠性基剤(基剤番号5)においては、塩基性アミノ酸の変性が抑制されていることが好ましい。塩基性アミノ酸の変性が抑制されているとは、塩基性アミノ酸を高圧蒸気滅菌の加熱条件下(例えば、110℃以上)で処理した場合に比べて、変性していない塩基性アミノ酸に対する変性した塩基性アミノ酸の割合が少ないことをいい、具体的には、クロマトグラムにおいて変性されていない塩基性アミノ酸のピーク面積を100%とした場合の変性された塩基性アミノ酸のピーク面積の割合(以下、変性率(%)と記載する。)が例えば0%以上30%以下、好ましくは0%以上25%以下、より好ましくは0%以上20%以下、更に好ましくは0%以上10%以下であることをいう。塩基性アミノ酸の変性がこのように抑制されることで、中和工程による粘稠性基剤(基剤番号5に相当)の増粘効果を好ましく得ることができる。

0037

なお、アミノ酸の変性率の測定法としては特に限定されず、当業者によって適宜測定されるが、例えば、高速液体クロマトグラフィーHPLC)又はUltra Performance Liquid Chromatography(以下、UPLC)などの一般的な液体クロマトグラフィーにて取得したクロマトグラムにおいて、変性していないアミノ酸のピーク面積とアミノ酸の変性による分解物のピーク面積との比較に基づき、アミノ酸の変性による分解物のピーク面積比導出する方法により測定することができる。無菌化された粘稠性基剤(基剤番号5)を、塩基性アミノ酸の変性が抑制されているものとして得るためにとりうる手段としては、塩基性アミノ酸を、上述の加温条件(すなわち、70℃未満、好ましくは60℃未満、より具体的には、40℃以上50℃未満で6時間以下;50℃以上60℃未満で6時間以下、好ましくは3時間以下、より好ましくは2時間以下;又は60℃以上70℃未満で6時間以下、好ましくは3時間以下、より好ましくは1時間以下)を採用すること、又は、当該加温条件を採用することに加えて後述のように中和剤の滅菌工程において加熱を要さない滅菌法を採用することが挙げられる。

0038

[1−3.中和剤の滅菌工程]
中和工程で用いる中和剤としては、塩基水溶液(図1の中和剤番号11に相当)として調製された後に滅菌を経て無菌化された塩基水溶液(図1の中和剤番号12に相当)を用いることが好ましい。中和剤に用いる塩基が塩基性アミノ酸以外の耐熱性を有する塩基であれば、高圧蒸気滅菌などの加熱滅菌処理により滅菌しても構わない。一方、中和剤に用いる塩基が塩基性アミノ酸である場合は、熱変性を回避する観点から、加熱を要さない滅菌法を用いることが好ましい。加熱を要さない滅菌法としては、濾過滅菌、ガス滅菌、放射線滅菌等が挙げられ、好ましくは濾過滅菌が利用される。滅菌手段として濾過滅菌を採用することにより、濾過の簡便な操作で滅菌を行うことができる。なお、濾過滅菌は加熱を要さないが、フィルターの材質に影響しない限り、加熱された塩基水溶液に対しても用いることができる。上述のように、塩基水溶液を加温し室温の飽和濃度より高い濃度の水溶液として調製する場合は、加熱温度は塩基性アミノ酸の変性を抑制する限度において加熱されるが、このような場合においても濾過滅菌は好ましく用いられる。

0039

濾過滅菌の方法として特に限定されないが、具体的には、第十七改正日本薬局方における濾過法による滅菌法が好ましい。濾過装置としては特に限定されないが、滅菌用フィルターを用いることができ、第十七改正日本薬局方における濾過法による滅菌法で用いられる滅菌用フィルターが好ましい。かかる滅菌用フィルターとしては特に限定されないが、孔径が0.45μm以下、好ましくは0.30μm以下、より好ましくは0.22μm以下の滅菌用フィルターであってよい。滅菌用フィルターとしては、ポリフッ化ビニリデンPVDF)等の樹脂製フィルター陶土製(シャベラン型)フィルター、珪藻土製(ベルケフェルド型)フィルター、多孔性半融ガラス製フィルターメンブランフィルター等が挙げられる。

0040

[2.医薬製剤の製造方法]
本発明の医薬製剤の製造方法は、上述の無菌化された粘稠性基剤(基剤番号5に相当)の製造を行う工程と、無菌化された粘稠性基剤(基剤番号5に相当)と医薬成分とを混合して製剤化する工程とを含む。これによって、製剤化された医薬組成物を得る。得られる医薬組成物は、無菌化された粘稠性基剤(基剤番号5に相当)の粘性によって、粘膜における滞留性が付与されているため、特に経鼻用医薬組成物として有用である。

0041

医薬成分としては、生体内で所望の効果を奏する任意の生理活性物質が挙げられる。たとえば、インフルエンザウイルス抗原日本脳炎ウイルス抗原、ジフテリア菌抗原、百日咳菌抗原、破傷風菌抗原、b型インフルエンザ菌抗原、肺炎球菌抗原、髄膜炎菌抗原、B型肝炎ウイルス抗原、水痘ウイルス抗原、麻疹ウイルス抗原おたふくかぜウイルス抗原、風疹ウイルス抗原、HSV−1抗原、HSV−2抗原、狂犬病ウイルス抗原、RSウイルス抗原、パルボウイルス抗原、ジカウイルス抗原、コクサッキーウイルス抗原、エンテロウイルス抗原、レオウイルス3型抗原、黄熱ウイルス抗原、アデノウイルス1型〜47型抗原、ポリオウイルス抗原、ラッサウイルス抗原及びワクシニアウイルス抗原等のワクチン抗原;ヒトグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、ヒト副甲状線ホルモン(hPTH)およびそのN末断片hPTH(1−34)、ヒトモチリンヒトグレリンヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド脳性ナトリウムペプチド(BNP)、C型ナトリウムペプチド(CNP)、ヒトインスリンレプチンレジスチングルカゴンリラキシンガラニンガストリンアペリンセレクチンカルシトニンアドレノメデュリンアミリンヒューマニンチモシンエンドルフィンエンドモルフィン、ノシスタチンエンケファリンニューロペプチドYニューロペプチドS、ニューロメジンU、アンジオテンシンエンドセリングアニリン、サリューシンウロテンシンオキシトシンバソプレシンニューロフィジンメラニン細胞刺激ホルモンウロコルチンリポトロピン黄体形成ホルモン放出ホルモンメスタチン、プロラクチン放出ペプチドソマトスタチンコルチスタチン甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンサブスタンスPニューロキニンエンドキニンニューロテンシン、ニューロメジンN、オベスタチンオレキシンインスリン様成長因子1(IGF−1)、メラニン凝集ホルモン副腎刺激ホルモン放出ホルモンエクセンジン−4、カタカルシンコレシストキニンコルチコトロピンメラトロピン、ニューロメジンC、コペプチン下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)、ペプチドYYチロリリン等のホルモン;が挙げられる。

0042

ワクチンとは、身体中に投与されて免疫を活性化する、通常感染性因子または感染因子のある部分を含む抗原性懸濁液または溶液をいう。弱毒生ワクチン不活化ワクチン組換えタンパク質ウイルス様粒子を抗原とするワクチン等が挙げられる。弱毒生ワクチンには、細胞培養継代遺伝子操作をすることにより弱毒したウイルスや細菌等の抗原が含まれている。不活化ワクチンには、不活化した抗原(以下、不活化抗原)が含まれている。抗原の不活化方法としては、例えば、物理的な方法(X線照射、熱、超音波などを用いる方法)、化学的な方法(ホルマリン、水銀、アルコール塩素などを用いる方法)が挙げられ、感染力を失わせ免疫原性を保持させた抗原であればよい。不活化抗原としては、完全ウイルス粒子であるビリオン不完全ウイルス粒子、ビリオン構成粒子、ウイルス非構造タンパク質感染防御抗原中和反応エピトープなどが挙げられる。

0043

インフルエンザウイルスは、脂質二重膜構造エンベロープを有する。エンベロープの内層は主としてマトリックスタンパク質及びRNAとタンパク質複合体であるRNPから成る。外層にはいわゆる表面タンパク質であるインフルエンザNAタンパク質及びインフルエンザHAタンパク質が突起物として存在する。インフルエンザウイルスは、PB2、PB1、PA、HA、NP、NA、M及びNS分節の8つのゲノム分節からなる。HAおよびNAのゲノム分節は、それぞれHA及びNAの抗原タンパク質をコードしている。HAの種類としてHA1〜HA16が知られており、NAの種類としてはNA1〜NA9が知られている。抗原タンパク質は、天然のウイルス等の病原体から精製してもよく、合成または組換え技術により作製してもよい。そのような方法は当業者によって適宜選択され、市販される機器試薬ベクターなどを用いて実施することができる。また、抗原タンパク質は、弱毒化、細胞培養増殖適合化、鶏卵培養増殖適合化、粘膜投与適合化等の改変を加えた組換えウイルスから精製してもよい。

0044

医薬組成物における医薬成分の量としては特に限定されず、生体内で所望の効果を奏する有効量が当業者によって適宜選択される。例えば医薬成分がワクチンであり、医薬製剤を経鼻投与型ワクチン製剤として調製する場合は、医薬組成物中のワクチン量は、鼻腔粘膜に免疫を誘導するのに十分な量が当業者によって適宜選択される。

0045

医薬組成物には上述の成分の他、各種塩類保存剤安定化剤抗酸化剤矯臭剤等を適宜含ませることができる。これらの成分は、適宜滅菌されていてよい。

0046

各種塩類を含有させる目的は特に限定されないが、たとえば粘度調整の目的で含有させることができる。各種塩類としては、水溶性の塩が挙げられ、例えば、塩化ナトリウム塩化カリウム塩化カルシウム塩化マグネシウム塩化亜鉛炭酸カリウム硫酸マグネシウムリン酸水素ナトリウム等の無機塩や、クエン酸ナトリウムエデト酸ナトリウムソルビン酸カリウムアルギニン塩酸塩リジン塩酸塩アスパラギン酸ナトリウムアスパラギン酸マグネシウムカプリル酸ナトリウムグルコン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウムコハク酸ナトリウム酢酸ナトリウム酢酸カルシウム酒石酸ナトリウムリンゴ酸ナトリウム等の有機塩等が挙げられる。これらは単独でも、1種または2種以上混合してもよい。

0047

保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチルパラオキシ安息香酸エチルパラオキシ安息香酸プロピルパラオキシ安息香酸ブチルベンザルコニウム塩化物、ソルビン酸カリウム、エデト酸ナトリウム、クロロブタノールフェノキシエタノール安息香酸ナトリウム等が挙げられるが、好ましくはパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル等のパラベン類が挙げられる。これらは単独でも、1種または2種以上混合してもよい。

0048

安定化剤としては、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム等が挙げられる。抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸トコフェロール等が挙げられる。矯臭剤としては、例えばメントールカンキツ香料等が挙げられる。これらは単独でも、1種または2種以上混合してもよい。

0049

以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下において、CVP、L−アルギニン、濃グリセリン及び水の混合処理物である基剤番号0の非無菌中和CVP基剤は、国際公開第2014/103488号の段落0036の記載に従って調製することができるものである。また、CVP、濃グリセリン、及び水の混合物である基剤番号2の非無菌未中和CVP基剤は、L−アルギニンと、水の一部(具体的には、当該L−アルギニンを24w/w%の濃度で溶解する分量の水)とを捨象したことを除き、基剤番号0の基剤の調製と同様にして調製することができるものである。

0050

(試験例1)従来法及び本発明における熱処理効率の比較
粘稠剤としてカルボキシビニルポリマー(CVP)を用いた。中和及び未中和CVP基剤の高圧蒸気滅菌を行い、熱処理効率を比較した。なお、中和CVP基剤(図14における基剤番号0)の熱処理は、従来法(図14における基剤番号1の無菌化中和CVP基剤を得る方法)の過程で行われる熱処理であり、未中和CVP基剤(図1における基剤番号2)の熱処理は、本発明(図1における基剤番号5の無菌化中和CVP基剤を得る方法)の過程で行われる熱処理である。従って、両熱処理効率を比較することによって、従来法と本発明とにおける熱処理効率の比較を行った。熱浸透の確認は、高精度温度測定器エラブジパン株式会社製、ID:S00496)を用い、滅菌中の温度を測定することによって行った。

0051

滅菌の確認は、BI(バイオロジカルインジケータ生物学的指標)を用いたチャレンジテストにより行った。用いたBIは、STERIS製スポアストリップス試験紙(菌種:Geobacillus stearothermophilus、菌数:2.2×106(CFU)、D121値:1.7(Min)、Lot.No.:1205A)である。ハーフサイクル法で要求される滅菌時間14D〜16Dの半分の滅菌時間である7D〜8Dの熱負荷を達成するため、熱浸透状態などの確認を行った。D121値が2分である106CFUのBIを死滅させるのに必要な熱負荷がF0値14〜16分であるところ、本試験例では、当該時間よりも高負荷であるF0値20分を滅菌の基準とした。

0052

[参考例1]
(1)中和CVP基剤の熱処理効率−1(従来法における熱処理効率)
CVP、L−アルギニン、濃グリセリン、及び水の混合物である非無菌中和CVP基剤(図14の基剤番号0)10.8kgを、10Lステンレスタンクに投入し、オートクレーブメーカー:株式会社讃岐田製作所)を用いて滅菌温度122℃に設定し熱処理することで、高圧蒸気滅菌を行った。滅菌中において、タンクは静置状態とし、内容物を機械的に振とうさせる操作及び撹拌させる操作は行わなかった。ステンレスタンクの内壁表面からの距離が異なる複数の測定点におけるタンク内温度経時的変化を調べた。測定点における温度の経時的変化を示す熱浸透確認試験の結果を図2に、滅菌時のF0値(滅菌の基準:F0値=20分)の経時的変化を示す熱浸透確認試験の結果を図3に示す。図2に示されるように、タンク内中心部まで滅菌温度121℃に到達させた。図3に示されるように、タンク内中心部のF0値が滅菌の基準(F0値=20分)に到達するには、10時間以上の時間が必要であった。

0053

(2)中和CVP基剤の熱処理効率−2(従来法における熱処理効率 )
CVP、L−アルギニン、濃グリセリン、及び水の混合物である非無菌中和CVP基剤(図14の基剤番号0)7Kgを、30Lステンレスタンクに投入し、スタークレーブ(高圧蒸気滅菌機、メーカー:Biott、型式:SC−40)を用いて滅菌温度122℃に設定して熱処理することで、高圧蒸気滅菌を行った。滅菌中において、タンクは静置状態とし、内容物を機械的に振とうさせる操作及び撹拌させる操作は行わなかった。ステンレスタンク内のBI試験紙及び温度センサ配置箇所、及びステンレスタンク外且つスタークレーブ缶内の温度センサ配置箇所を図4に示す。図4中符号1の箇所における中和CVP基剤の加熱後2.7時間のF0値は0.00分であった。また、測定点における温度の経時的変化を示す熱浸透確認試験の結果を図5に示す。図5に示すように、設定滅菌温度に到達しなかった。

0054

[参考例2]
(1)未中和CVP基剤の熱処理効率−1(本発明における熱処理効率)
CVP、濃グリセリン、及び水の混合物である非無菌未中和CVP基剤(図1の基剤番号2)7Kgを、30Lステンレスタンクに投入し、スタークレーブ(高圧蒸気滅菌機、メーカー:Biott、型式:SC−40)を用いて滅菌温度122℃に設定して熱処理することで、高圧蒸気滅菌を行った。滅菌中において、タンクは静置状態とし、内容物を機械的に振とうさせる操作及び撹拌させる操作は行わなかった。図4中符号1の箇所における未中和CVP基剤の加熱後2.7時間のF0値は6.41分だった。また、測定点における温度の経時的変化を示す熱浸透確認試験の結果を図6に示す。図6に示すように、図5に比して顕著に速やかな温度上昇が認められ、熱処理時間を大幅に軽減することができた。

0055

(2)未中和CVP基剤の熱処理効率−2(本発明における熱処理効率)
CVP、濃グリセリン、及び水の混合物である非無菌中和CVP基剤(図1の基剤番号2)7Kgを、30Lステンレスタンクに投入し、スタークレーブ(高圧蒸気滅菌機、メーカー:Biott、型式:SC−40)を用いて滅菌温度122℃に設定して熱処理することで、高圧蒸気滅菌を行った。滅菌中において、タンクを回転数15rpmで内容物を機械的に撹拌させる操作を行った。図4の符号1の箇所における未中和CVP基剤の加熱後2.7時間のF0値は38.65分だった。また、測定点における温度の経時的変化を示す熱浸透確認試験の結果を図7に示す。図7に示されるように、3時間以下の熱処理によってタンク内中心が滅菌温度121℃まで到達し、熱処理時間を大幅に軽減することができた。

0056

本試験は3回行った。BIを用いたチャレンジテストにおいては、BI試験紙を図示された配置において滅菌した後、ソイビーンカゼインダイジェスト培地を用いて、55〜60℃で7日間(以上)の培養を行った。結果、3回の試験全てにおいて陰性を確認した。また、熱浸透確認試験の結果を表1に示す。

0057

0058

熱浸透確認より算出された未中和CVP基剤中のF0値(3回の試験の平均値:51.96分)は、滅菌基準値であるF0値20分を超えていることが確認された。このことから、本滅菌条件は非無菌未中和CVP基剤(基剤番号2)を滅菌するために必要な熱負荷を与えることができると考えられる。
上より、ハーフサイクル法にて要求される滅菌時間の半分の滅菌時間における熱負荷にて6log以上のBIが死滅したため、実製造滅菌工程において微生物負荷が12log以上減少することが確認された。

0059

以上に示すように、従来法のように中和後の状態でCVP基剤を熱処理する場合(参考例1)に比べ、本発明のように未中和の状態でCVP基剤を熱処理する場合(参考例2)は滅菌処理にかかる熱処理の効率を顕著に向上させることができた。つまり、本発明のように未中和の状態でCVP基剤を熱処理することによって、熱処理効率を顕著に向上させ、これによって、滅菌効率を顕著に向上させることができた。熱処理効率の比較のため、参考例1及び参考例2の方法によってタンク内中心部が121℃になるまでの時間を表2にまとめた。なお、非無菌中和CVP基剤(基剤番号0)の粘度(TVE−25H形粘度計を用いて測定した粘度)は後述の試験例5での表7に示すとおり4741mPa・sであり、非無菌未中和CVP基剤(基剤番号2)の粘度は後述の試験例4での表5に示すとおり3回測定の平均値が274mPa・s、pHは後述の試験例4での表6に示すとおり2.7であった。

0060

0061

(試験例2)中和剤の熱に対する性状解析
中和剤としてL−アルギニンを用いた。L−アルギニン粉末協和発酵バイオ株式会社)を用いて、24w/w%及び2.4w/w%のL−アルギニン水溶液を調製した。調製した24w/w%L−アルギニン水溶液を40℃、50℃及び60℃、2.4w/w%のL−アルギニン水溶液を70℃、80℃、90℃、100℃及び121℃で熱処理した後、UPLC分析を行った。UPLC分析は、下記条件にて行った。
使用装置ACQUITY UPLC H−Class(Waters社製)
使用カラムACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm
検出 UV(210nm)

0062

L−アルギニン水溶液を40℃で処理した時のUPLC分析結果を図8に、50℃で処理した時のUPLC分析結果を図9に、60℃で処理した時のUPLC分析結果を図10に示した。また、L−アルギニン水溶液を70℃、80℃、90℃、100℃、121℃で処理した時のUPLC分析結果を未処理のL−アルギニン水溶液の結果と共に図11に示した。
図8に示すように、40℃で30分、2時間、6時間処理したL−アルギニン水溶液についてUPLC分析を行ったところ、処理時間を長くするに従い、保持時間0.6分及び0.9分付近に異なる波形が確認された。なお、6時間処理時の変性率は18.23%であった。図9に示すように、50℃で30分、1時間、2時間、3時間、6時間処理したL−アルギニン水溶液についてUPLC分析を行ったところ、処理時間を長くするに従い、保持時間0.6分及び0.9分付近に異なる波形が確認された。なお、2時間処理時の変性率は5.47%、3時間処理時の変性率は15.57%、6時間処理時の変性率は17.70%であった。図10に示すように、60℃で30分、1時間、2時間、3時間、6時間処理したL−アルギニン水溶液についてUPLC分析を行ったところ、処理時間を長くするに従い、保持時間0.6分及び0.9分付近に異なる波形が確認された。なお、30分処理時の変性率は5.78%、1時間処理時の変性率は18.52%、2時間処理時の変性率は23.06%、3時間処理時の変性率は23.08%、6時間処理時の変性率は36.48%であった。従って、24w/w%L−アルギニン水溶液を40℃で処理した場合は6時間まで、50℃の場合は6時間まで、60℃の場合は3時間までであれば、L−アルギニンの変性を好ましく抑制できることを確認した。

0063

また、図11に示すように、70℃、80℃、90℃、100℃、121℃で各20分間処理したL−アルギニン水溶液のUPLC分析結果から、処理温度を高くするに従い、保持時間0.6分付近に異なる波形が確認された。高圧蒸気滅菌で供される温度である121℃で処理するとその傾向は顕著となり、保持時間0.4分付近にも未処理時とは異なる波形が確認された。なお、100℃20分処理時の変性率は4.20%、121℃で20分処理時の変性率は76.33%であった。従って、2.4w/w%L−アルギニン水溶液を121℃で処理した場合は、わずか20分でL−アルギニンが顕著に変性されることが分かった。

0064

(試験例3)従来法及び本発明による粘稠性基剤の性状比較
粘稠剤としてCVPを用いた。中和及び未中和CVP基剤の高圧蒸気滅菌を経て無菌化中和CVP基剤を調製し、化学的性状変化を比較した。中和CVP基剤の高圧蒸気滅菌を経て無菌化中和CVP基剤(図14の基剤番号1)を調製する方法は従来法に該当し、未中和CVP基剤の高圧蒸気滅菌を経て無菌化中和CVP基剤(図1の基剤番号5)を調製する方法は本発明に該当する。化学的性状の比較においては、粘度及びpHを評価し、比較基準としては、非無菌中和CVP基剤(図14の基剤番号0)の粘度及びpHを用いた。

0065

(3−1)基剤
[参考例3]
非無菌中和CVP基剤(基剤番号0):CVP、L−アルギニン、濃グリセリン、及び水の混合処理物である非無菌中和CVP基剤(基剤番号0)を用意した。

0066

[比較例1]
無菌化中和CVP基剤(基剤番号1):非無菌中和CVP基剤(基剤番号0)50gを200mLのステンレスボトルに投入し、オートクレーブ(メーカー:株式会社トミー精工、型番BS-235)を用いて121.0℃で6時間、高圧蒸気滅菌を行った。滅菌中において、ボトルは静置状態とし、内容物を機械的に振とうさせる操作及び撹拌させる操作は行わなかった。これによって、無菌化中和CVP基剤(基剤番号1)を得た。

0067

[実施例1]
無菌化中和CVP基剤(基剤番号5):CVP、濃グリセリン、及び水の混合物である非無菌未中和CVP基剤(基剤番号2)50gを200mLのステンレスボトルに投入し、滅菌温度121.0℃で6時間熱処理を行った。滅菌中において、内容物は静置状態とした。これによって、まず、無菌化未中和CVP基剤(基剤番号3)を得た。別途、L−アルギニン粉末(協和発酵バイオ株式会社)を加温溶解し、24w/w%に調製した非無菌L−アルギニン水溶液(中和剤番号11)を濾過滅菌(Millex(登録商標)、孔径:0.22μm、メンブレン材質:PVDF)し、24w/w%の無菌化L−アルギニン水溶液(中和剤番号12)を得た。上記の無菌化未中和CVP基剤(基剤番号3)と無菌化L−アルギニン水溶液(中和剤番号12)を9:1の質量比で混合し、均質になるまで撹拌し、無菌化中和CVP基剤(基剤番号5)を得た。

0068

(3−2)化学的性状確認試験
非無菌中和CVP基剤(基剤番号0)、無菌化中和CVP基剤(基剤番号1)及び無菌化中和CVP基剤(基剤番号5)について、化学的性状を確認するため、粘度測定試験及びpH測定試験を行った。

0069

粘度測定には、第十七改正日本薬局方「一般試験法」の粘度測定法である回転粘度計法を準用した。検体0.3 mLを、気泡が入らないようあらかじめ20℃に設定したTVE−22L形粘度計(コーン・プレート形)のサンプルカップに入れて5分間放置した後、3分間せん断力を加えた時の粘度を測定した。ローターは3°×R12(ローターコード:05)を使用した。粘度測定試験の結果を表3に示す。

0070

0071

表3に示した比較例1の無菌化中和CVP基剤(基剤番号1)及び実施例1の無菌化中和CVP基剤(基剤番号5)について、参考例3の非無菌中和CVP基剤(基剤番号0)を基準とした相対粘度はそれぞれ76.2%、98.2%であった。つまり、中和CVP基剤に滅菌処理を施した比較例1の無菌化中和CVP基剤(基剤番号1)では、粘度の低下が認められるのに対し、実施例1の無菌化中和CVP基剤(基剤番号5)では、粘度の実質的な低下が認められなかった。

0072

pH測定には、第十七改正日本薬局方「一般試験法」のpH測定法を準用して測定した。26℃におけるpH測定試験の結果を表4に示す。

0073

0074

表4に示した比較例1の無菌化中和CVP基剤(基剤番号1)及び実施例1の無菌化中和CVP基剤(基剤番号5)について、参考例3の非無菌中和CVP基剤(基剤番号0)を基準とした相対pHはそれぞれ98.6%、107%であった。

0075

(試験例4)本発明による粘稠性基剤の性状解析−1
本発明の方法による無菌化中和CVP基剤(基剤番号5)の化学的性状を解析した。具体的には、化学的性状として粘度及びpHを測定し、非無菌未中和CVP基剤(基剤番号2)、無菌化未中和CVP基剤(基剤番号3)、及び非無菌中和CVP基剤(基剤番号4)の当該化学的性状と比較した。

0076

(4−1)基剤
[参考例4]
非無菌未中和CVP基剤(基剤番号2):CVP、濃グリセリン、及び水の混合処理物である非無菌未中和CVP基剤(基剤番号2)を用意した。

0077

[参考例5]
無菌化未中和CVP基剤(基剤番号3):非無菌未中和CVP基剤(基剤番号2)7kgを30Lステンレスタンクに投入し、スタークレーブ(高圧蒸気滅菌機、メーカー:Biott、型式:SC−40)を用いて高圧蒸気滅菌を行い、無菌化未中和CVP基剤(基剤番号3)を得た。高圧蒸気滅菌は、122℃で、240分間熱処理を行った。滅菌中において、タンクを回転数15rpmで内容物を機械的に攪拌させる操作を行った。

0078

[参考例6]
非無菌中和CVP基剤(基剤番号4):24w/w%の非無菌L−アルギニン水溶液(中和剤番号11)を60℃1時間にて加温溶解を行って調製し、上記の非無菌中和CVP基剤(基剤番号2)と非無菌L−アルギニン水溶液(中和剤番号11)とを9:1の質量比で混合し、均質になるまで撹拌し、非無菌中和CVP基剤(基剤番号4)を得た。

0079

[実施例2]
無菌化中和CVP基剤(基剤番号5):24w/w%の非無菌L−アルギニン水溶液(中和剤番号11)を60℃1時間にて加温溶解を行って調製した後、濾過滅菌(Millex(登録商標)、孔径:0.22μm、メンブレン材質:PVDF)し、24w/w%の無菌化L−アルギニン水溶液(中和剤番号12)を得た。上記の無菌化未中和CVP基剤(基剤番号3)と無菌化L−アルギニン水溶液(中和剤番号12)とを9:1の質量比で混合し、均質になるまで撹拌し、無菌化中和CVP基剤(基剤番号5)を得た。

0080

(4−2)化学的性状確認試験
粘度測定には、第十七改正日本薬局方「一般試験法」の粘度測定法である回転粘度計法を準用して試験を実施した。あらかじめ20℃に設定したTVE−25H形粘度計(コーン・プレート形)のサンプルカップに検体1.1mLを気泡が入らないように入れた。5分間静置した後、回転数2.5rpmにて3分間せん断力を加えた時の粘度値を測定した。ローターは1°34’×R24(ローターコード:01)を使用した。

0081

粘度測定試験の試験結果を以下表5及び図12に示した。参考例4の基剤はn=1、参考例5、参考例6及び実施例2の各基剤はn=3で調製後、試験を実施し、得られた各基剤の粘度の平均値(平均粘度)を算出した。なお、図12に示したエラーバー標準偏差を示す。表5に示した参考例5の無菌化未中和CVP基剤(基剤番号3)については、その滅菌前の態様である参考例4の非無菌未中和CVP基剤(基剤番号2)を基準にした相対粘度が101%であった。実施例2の無菌化中和CVP基剤(基剤番号5)については、滅菌せずに中和した態様である非無菌中和CVP基剤(基剤番号4)を基準にした相対粘度が95.4%であった。

0082

0083

試験例3と同様の手法でpH測定を行った。pH測定試験の結果を以下表6及び図13に示した。参考例4の基剤はn=1、参考例5、参考例6及び実施例2の各基剤はn=3で調製後、試験を実施し、得られた各基剤のpHの平均値(平均pH)を算出した。なお、図13に示したエラーバーは標準偏差を示した。表6に示した無菌化未中和CVP基剤(基剤番号3)については、その滅菌前の態様である非無菌未中和CVP基剤(基剤番号2)を基準にした相対pHが100%であった。無菌化中和CVP基剤(基剤番号5)については、滅菌せずに中和した態様である非無菌中和CVP基剤(基剤番号4)を基準にした相対pHが95.9%であった。

0084

0085

(試験例5)本発明による粘稠性基剤の性状解析−2
本発明の方法による無菌化中和CVP基剤(基剤番号5)の化学的性状を解析した。具体的には、化学的性状として粘度及びpHを測定し、非無菌中和CVP基剤(基剤番号0)の当該化学的性状と比較した。

0086

(5−1)基剤
[参考例7]
非無菌中和CVP基剤(基剤番号0)としては、試験例3と同じ基剤を用いた。

0087

[実施例3]
無菌化中和CVP基剤(基剤番号5):CVP、濃グリセリン、及び水を混合して得られた非無菌未中和CVP基剤(基剤番号2)50gを200mLステンレスボトルに投入し、ボトルを静置状態とし、内容物を機械的に振とうさせる操作及び撹拌させる操作は行わなかった。オートクレーブ(メーカー:株式会社トミー精工、型番:BS-235)を用いて121℃にて高圧蒸気滅菌を6時間行い、無菌化未中和CVP基剤(基剤番号3)を得た。無菌化未中和CVP基剤(基剤番号3)と60℃1時間にて加温溶解を行った無菌化L−アルギニン水溶液(中和剤番号12)を9:1の質量比で混合し、均質になるまで撹拌し、無菌化中和CVP基剤(基剤番号5)を得た。

0088

(5−2)化学的性状確認試験
非無菌中和CVP基剤(基剤番号0)及び無菌化中和CVP記載(基剤番号5)について、化学的性状を確認するため、粘度測定試験及びpH測定試験を行った。なお、参考例7の基剤はn=1、実施例3の基剤はn=2で調製後、試験を実施した。

0089

試験例4と同様の手法で、TVE−25H形粘度計を用いた粘度測定を行った。粘度測定結果及び参考例7の非無菌中和CVP基剤(基剤番号0)の粘度を基準とした相対粘度を表7に示した。表7が示すように、実施例3の無菌化中和CVP基剤(基剤番号5)は、参考例7の非無菌中和CVP基剤(基剤番号0)と同等(99.5%及び101%)の粘度であった。

0090

0091

試験例3と同様の手法でpH測定を行った。pH測定試験成績を表8に示した。pH測定結果及び参考例7の非無菌中和CVP基剤(基剤番号0)のpHを基準とした相対pHを表8に示した。表8に示すように、実施例3の無菌化中和CVP基剤(基剤番号5)は、参考例7の非無菌中和CVP基剤(基剤番号0)と同等(101%及び104%)のpHであった。

0092

0093

なお、上述の本発明による無菌化中和CVP基剤(基剤番号5)にワクチン抗原を加えて医薬製剤を調製したところ、ワクチンの免疫原性に影響はなかった。

実施例

0094

本発明の好ましい実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれらのみに限定されるものではなく、本発明の趣旨から逸脱することのない様々な変形例が実施される。

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