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技術 組織弾性の測定装置及び測定方法

出願人 国立大学法人東京大学
発明者 揃田陽子中塚拓馬佐藤雅哉中川勇人池田均小池和彦矢冨裕
出願日 2018年3月7日 (2年11ヶ月経過) 出願番号 2019-504635
公開日 2020年2月6日 (1年0ヶ月経過) 公開番号 WO2018-164181
状態 特許登録済
技術分野 超音波診断装置
主要キーワード 統計図 周期的タイミング 流速領域 波形タイプ 波形状態 部分波 トレース波形 腹部エコー
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図面 (14)

課題・解決手段

肝線維化のような組織弾性に関連する生体変化を定量的に評価することを可能にする組織弾性の測定装置及び測定方法を提供する。情報処理部100bがパルスウェーブドプラ法によって得た脈波形から変動係数であるCV値に相当する偏差指標値算定するので、脈波形の形状の変化を再現性良く定量的に評価できる。脈波形の形状に対応する脈波形の変動係数は、肝線維化といった組織弾性の増加体内臓器病変又は変化の進行度に応じて小さくなる傾向があり、かかる脈波形の変動係数又は偏差指標値を利用することで組織弾性の増加延いては生体組織の病変又は変化の進行度の評価が容易になる。

概要

背景

例えば、慢性肝炎から肝硬変肝細胞癌へと進展することが知られており、肝臓診療において、肝炎病態把握、治療選択、肝癌リスク評価などにとって、肝線維化評価は非常に重要である。肝線維化の評価法として肝組織生検による病理組織像評価基準とされてはいるが、侵襲性が高く肝臓の1点だけしか評価できないという問題がある。また、非侵襲的線維化推測法として、肝硬度を測定するtransient elastography(例えばフィブロスキャン登録商標))その他のエラストグラフィと呼ばれるものがある。しかしながら、エラストグラフィは、装置が高価であり普及率が低い。また、エラストグラフィによる肝硬度測定は、肝臓に炎症があったりうっ血があったりすると、測定値が影響され正しい値が測定できなくなってしまうという問題がある。また肥満や狭肋間の場合は測定不能となってしまう。

パルスウェーブドプラ法と呼ばれる血流速度を測定する方法があり、パルスウェーブドプラ法を用いて得られた肝静脈波形が肝線維化に関連することは知られている(非特許文献1)。しかしながら、パルスウェーブドプラ法による肝線維化の判定は、肝静脈波形状態目視によって定性的に判断する評価にとどまっており、定量的な評価は行われていない。

一般的な超音波診断法として、超音波エコーを検出する様々な手法が提案されており、例えば単にエコー像を得るだけでなく組織性状解析するためエコーデータ又は超音波画像データから振幅分散度を反映した変動係数CVを算出するものが公知となっている(例えば、特許文献1、2)。しかしながらこのような手法は、超音波エコーの画像的処理に過ぎず、肝線維化の評価といった臓器組織弾性を評価するものではない。

概要

肝線維化のような組織弾性に関連する生体変化を定量的に評価することを可能にする組織弾性の測定装置及び測定方法を提供する。情報処理部100bがパルスウェーブドプラ法によって得た脈波形から変動係数であるCV値に相当する偏差指標値算定するので、脈波形の形状の変化を再現性良く定量的に評価できる。脈波形の形状に対応する脈波形の変動係数は、肝線維化といった組織弾性の増加体内臓器病変又は変化の進行度に応じて小さくなる傾向があり、かかる脈波形の変動係数又は偏差指標値を利用することで組織弾性の増加延いては生体組織の病変又は変化の進行度の評価が容易になる。

目的

本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたもので、肝線維化のような組織弾性に関連する生体変化を定量的に評価することを可能にする組織弾性の測定装置及び測定方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

パルスウェーブドプラ法によって血流速度に対応する脈波形計測する超音波計測部と、前記超音波計測部によって得た脈波形から変動係数に相当する偏差指標値算定する情報処理部とを備える組織弾性測定装置

請求項2

前記情報処理部は、脈波形の各時相の絶対値最大流速最大値最小値、及び平均値の少なくとも1つを決定する波形処理部を有し、前記絶対値最大流速、前記最大値、前記最小値、及び前記平均値の少なくとも1つから変動係数を算出する、請求項1に記載の組織弾性の測定装置。

請求項3

前記波形処理部は、流速の上昇ピークを有する逆行性の第1波形部と、流速の降下ピークを有する順行性の第2波形部と、流速の降下ピークを有する順行性の第3波形部とを拍動周期中に有する3相標準的な脈波形に当てはめるように包絡線を抽出して変動係数を算出する、請求項2に記載の組織弾性の測定装置。

請求項4

前記第1波形部がある場合、前記第1波形部の絶対値の高速側の包絡線を抽出し、前記第2波形部がある場合、前記第2波形部の絶対値の高速側の包絡線を抽出し、前記第3波形部がある場合、前記第3波形部の絶対値の高速側の包絡線を抽出する、請求項3に記載の組織弾性の測定装置。

請求項5

前記変動係数であるCV値は、下記式で与えられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組織弾性の測定装置。ここで、n:脈波形のサンプル数Vi:血流速度Vm_peak:血流速度の平均値

請求項6

前記情報処理部は、複数の拍動周期に対応する静脈波形から前記偏差指標値を計測する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組織弾性の測定装置。

請求項7

前記超音波計測部は、ドプラ成分から高速フーリエ変換を利用して時間の分解能ごとに流速の測定値を生成する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組織弾性の測定装置。

請求項8

前記超音波計測部は、肝臓の静脈波形を計測する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組織弾性の測定装置。

請求項9

パルスウェーブドプラ法によって血流速度に対応する脈波形を得る測定方法であって、計測によって得た脈波形から変動係数に相当する偏差指標値を算定する、組織弾性の測定方法。

技術分野

0001

本発明は、組織弾性定量化を可能にする測定装置及び測定方法に関し、特に肝線維化等の生体変化の定量的評価を容易にする組織弾性の測定装置及び測定方法に関する。

背景技術

0002

例えば、慢性肝炎から肝硬変肝細胞癌へと進展することが知られており、肝臓診療において、肝炎病態把握、治療選択、肝癌リスク評価などにとって、肝線維化評価は非常に重要である。肝線維化の評価法として肝組織生検による病理組織像評価基準とされてはいるが、侵襲性が高く肝臓の1点だけしか評価できないという問題がある。また、非侵襲的線維化推測法として、肝硬度を測定するtransient elastography(例えばフィブロスキャン登録商標))その他のエラストグラフィと呼ばれるものがある。しかしながら、エラストグラフィは、装置が高価であり普及率が低い。また、エラストグラフィによる肝硬度測定は、肝臓に炎症があったりうっ血があったりすると、測定値が影響され正しい値が測定できなくなってしまうという問題がある。また肥満や狭肋間の場合は測定不能となってしまう。

0003

パルスウェーブドプラ法と呼ばれる血流速度を測定する方法があり、パルスウェーブドプラ法を用いて得られた肝静脈波形が肝線維化に関連することは知られている(非特許文献1)。しかしながら、パルスウェーブドプラ法による肝線維化の判定は、肝静脈波形状態目視によって定性的に判断する評価にとどまっており、定量的な評価は行われていない。

0004

一般的な超音波診断法として、超音波エコーを検出する様々な手法が提案されており、例えば単にエコー像を得るだけでなく組織性状解析するためエコーデータ又は超音波画像データから振幅分散度を反映した変動係数CVを算出するものが公知となっている(例えば、特許文献1、2)。しかしながらこのような手法は、超音波エコーの画像的処理に過ぎず、肝線維化の評価といった臓器の組織弾性を評価するものではない。

0005

Liver Stiffness: A Significant Relationship with the Waveform Pattern in the Hepatic Vein. Sekimoto T et al., Ultrasound in Medicine & biology 2015

先行技術

0006

特開2012−105838号公報
特開2014−210121号公報

0007

本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたもので、肝線維化のような組織弾性に関連する生体変化を定量的に評価することを可能にする組織弾性の測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。

0008

上記目的を達成するため、本発明に係る組織弾性の測定装置は、パルスウェーブドプラ法によって血流速度に対応する脈波形計測する超音波計測部と、超音波計測部によって得た脈波形から変動係数に相当する偏差指標値算定する情報処理部とを備える。

0009

上記組織弾性の測定装置では、情報処理部がパルスウェーブドプラ法によって得た脈波形から変動係数に相当する偏差指標値を算定するので、脈波形の形状の変化を再現性良く定量的に評価できる。脈波形の形状に対応する脈波形の変動係数は、例えば肝線維化といった組織弾性の増加に応じて小さくなる傾向があり、かかる脈波形の変動係数又は偏差指標値を利用することで組織弾性の増加延いては生体組織病変又は変化の進行度の評価が容易になる。なお、変動係数に相当する偏差指標値については、対象部位の炎症やうっ血の影響を受けにくいことや、血流速度の個人差の影響を受けないことが確認された。

0010

本発明の別の側面では、上記組織弾性の測定装置において、情報処理部は、脈波形の各時相の絶対値最大流速最大値最小値、及び平均値の少なくとも1つを決定する波形処理部を有し、絶対値最大流速、最大値、最小値、及び平均値の少なくとも1つから変動係数を算出する。この場合、脈波形における速度のゆらぎ成分又はノイズ成分を除いて脈波形の特徴を抽出することができる。

0011

本発明のさらに別の側面では、波形処理部は、流速の上昇ピークを有する逆行性の第1波形部と、流速の降下ピークを有する順行性の第2波形部と、流速の降下ピークを有する順行性の第3波形部とを拍動周期中に有する3相標準的な脈波形に当てはめるように包絡線を抽出して変動係数を算出する。例えば正常な肝静脈波形は、上記第1〜第3波形部を典型的に有し、肝線維化の進行とともに第1波形部が失われ、肝線維化のさらなる進行によって第2及び第3波形部の境界が失われる傾向があり、上記第1〜第3波形部に当てはめる包絡線又はトレース波形によって、肝線維化の進行度の評価が確実になる。

0012

本発明のさらに別の側面では、第1波形部がある場合、第1波形部の絶対値の高速側の包絡線を抽出し、第2波形部がある場合、第2波形部の絶対値の高速側の包絡線を抽出し、第3波形部がある場合、第3波形部の絶対値の高速側の包絡線を抽出する。この場合、上記第1〜第3波形部の波形の特徴を正確に抽出した測定が可能になる。

0013

本発明のさらに別の側面では、変動係数であるCV値は、下記式で与えられる。

ここで、nは脈波形のサンプル数であり、Viは血流速度であり、Vm_peakは血流速度の平均値である。

0014

本発明のさらに別の側面では、情報処理部は、複数の拍動周期に対応する脈波形から偏差指標値を計測する。この場合、得られる偏差指標値の信頼性をより高めることができる。

0015

本発明のさらに別の側面では、超音波計測部は、ドプラ成分から高速フーリエ変換を利用して時間の分解能ごとに流速の測定値を生成する。

0016

本発明のさらに別の側面では、超音波計測部は、肝臓の静脈波形を計測する。この場合、肝線維化の進行度の評価ができる。

0017

上記目的を達成するため、本発明に係る組織弾性の測定方法は、パルスウェーブドプラ法によって血流速度に対応する脈波形を得る測定方法であって、計測によって得た脈波形から変動係数に相当する偏差指標値を算定する。

0018

上記組織弾性の測定方法では、パルスウェーブドプラ法によって得た脈波形から変動係数に相当する偏差指標値を算定するので、脈波形の形状の変化を再現性良く定量的に評価できる。脈波形の形状に対応する脈波形の変動係数は、例えば肝線維化といった組織弾性の増加に応じて小さくなる傾向があり、かかる脈波形の変動係数又は偏差指標値を利用することで組織弾性の増加延いては生体組織の病変又は変化の進行度の評価が容易になる。

図面の簡単な説明

0019

実施形態の組織弾性の測定装置を説明するブロック図である。
正常な肝静脈波形の典型例を示す概念図である。
実施形態の測定装置を用いた組織弾性の測定方法の一例を説明する概念図である。
図4A〜図4Eは、肝線維化の進行に伴う肝静脈波形の変化及び分類(タイプ1〜5)を説明する図である。
肝静脈波形の分類とフィブロスキャンで測定した肝硬度との関係を説明する図である。
図6Aは、CV値の計測に用いたタイプ1の肝静脈波形の一例を示し、図6Bは、CV値の計測に用いたタイプ2の肝静脈波形の一例を示す。
図7Aは、CV値の計測に用いたタイプ3の肝静脈波形の一例を示し、図7Bは、CV値の計測に用いたタイプ4の肝静脈波形の一例を示す。
CV値の計測に用いたタイプ5の肝静脈波形の一例を示す。
タイプ1〜5の多数の肝静脈波形について取得したCV値を表示する統計図である。
図10Aは、フィブロスキャンで測定した肝硬度とCV値との関係を示すチャートであり、図10Bは、フィブロスキャンで測定した肝硬度の対数値とCV値との関係を示すチャートである。
CV値と肝生検の結果との関係を説明する図である。
図12A及び12Bは、F=0とF=1〜4との区別に関してCV値と硬度測定値とによる診断能を比較したROC曲線とその解析結果、DeLong法による有意差検定を示し、図12C及び12Dは、F=0〜1とF=2〜4との区別に関してCV値と硬度測定値とによる診断能を比較したROC曲線とその解析結果、DeLong法による有意差検定を示す。
図13A及び13Bは、F=0〜2とF=3〜4との区別に関してCV値と硬度測定値とによる診断能を比較したROC曲線とその解析結果、DeLong法による有意差検定を示し、図13C及び13Dは、F=0〜3とF=4との区別に関してCV値と硬度測定値とによる診断能を比較したROC曲線とその解析結果、DeLong法による有意差検定を示す。

実施例

0020

以下、図1等を参照して、本発明に係る一実施形態の組織弾性の測定装置及び測定方法ついて説明する。

0021

図1に示す組織弾性の測定装置100は、超音波プローブ11と、送信部21と、受信部22と、駆動制御部23と、信号処理部31と、主制御部41と、表示部42と、操作部43とを備える。これらのうち、超音波プローブ11と、送信部21と、受信部22と、駆動制御部23と、信号処理部31とは、パルスウェーブドプラ法によって血流速度に対応する脈波形を計測する超音波計測部100aを構成する。また、信号処理部31と、主制御部41と、操作部43とは、超音波計測部100aによって得た脈波形から変動係数に相当する偏差指標値(具体的にはCV値)を算定する情報処理部100bを構成する。

0022

送信部21は、超音波プローブ11を駆動して周期的タイミング超音波パルスを被検体内に送信し、受信部22は、超音波プローブ11を駆動して被検体内からの超音波エコーを受信する。駆動制御部23は、送信部21による超音波パルスの周期的な送信動作の制御を行うとともに、これに同期させた受信部22による超音波エコーの受信動作の制御を行う。

0023

信号処理部31は、ドプラ処理部51と、高速フーリエ変換部52と、波形演算部53とを含む。ここで、ドプラ処理部51は、位相検波サンプルホールド低周波カット等のフィルタリングを行い、超音波エコーから被検体内の対象のうちサンプル領域における血流に起因するドプラ成分つまり周波数シフトを抽出する。高速フーリエ変換部52は、ドプラ処理部51によって得たドプラ成分つまり周波数シフトに対して高速フーリエ変換による周波数解析を行うことで周波数スペクトラムデータを算出する。波形演算部53は、高速フーリエ変換部52によって得た周波数スペクトラムデータからドプラ波形を形成し、表示部42に対して表示処理可能な状態で出力する。ここで、ドプラ波形は、静脈又は動脈の血流速度を表す脈波形である。この脈波形は、横軸を時間とし縦軸を血流速度としたものである。高速フーリエ変換部52及び波形演算部53は、脈波形生成部58であり、ドプラ成分から高速フーリエ変換を利用して時間の分解能ごとに流速の測定値を生成する。ドプラ成分又は血流速度については、超音波プローブ11の配置等に起因する超音波進入角度を考慮して、脈波形生成部58において補正処理が可能になっている。脈波形生成部58は、具体的には例えば静脈を計測対象とする場合、静脈波形生成部として機能する。

0024

なお、信号処理部31は、パルスウェーブドプラ法によって処理を行っていない超音波エコー(つまりその振幅等)をそのまま又は加工して2次元画像データとする機能も有している。信号処理部31は、超音波エコーに対応する断層像的なエコー画像も、表示部42に対して表示処理可能な状態で出力する。

0025

主制御部41は、脈波形の各時相の絶対値最大流速、最大値、最小値、及び平均値の少なくとも1つを決定する波形処理部として機能する。主制御部41は、駆動制御部23、信号処理部31、表示部42等の動作を統括的に制御している。主制御部41は、駆動制御部23を介して送信部21及び受信部22を適宜動作させることで、対象からの超音波エコーを取得させる。また、主制御部41は、信号処理部31を適宜動作させることで、パルスウェーブドプラ法による測定を可能にし、超音波エコーからドプラ波形又は脈波形を取得させる。主制御部41は、表示部42を適宜動作させることで、ドプラ波形又は脈波形を装置オペレーターに対して可視的に表示部42の表示エリア上に表示する。この際、主制御部41は、ドプラ波形、エコー画像、これらに付随する情報等をそのまま或いは加工して表示部42に表示させることができる。

0026

主制御部41は、信号処理部31で取得したドプラ波形(例えば静脈波形)、エコー画像を加工したもの等を一時的に保管するメモリー41aを有しており、装置オペレーターの指示に基づいて任意のタイミングで表示部42に過去のドプラ波形やこれらを統計処理したものを表示させることができる。

0027

主制御部(波形処理部)41は、信号処理部31によって得た一回又は複数の拍動又は脈拍周期分のドプラ波形に対して波形の輪郭等を自動的に波形トレースして、得られたトレース波形をドプラ波形に重畳表示するため、ドプラ波形を解析する機能を有する。トレース波形は、脈波形の形状(具体的には急峻さ)を示すものであり、トレース波形の変化(具体的には急峻さの低下)は、臓器の機能状態の変化又は劣化を示す。主制御部41は、装置オペレーターが操作する操作部43を介して指令受け付けており、GUI技術等を利用して装置オペレーターが表示部42に表示されたドプラ波形に対して直接的に波形トレースすることを可能としている。

0028

図2は、正常な肝静脈波形の典型例を示す概念図である。横軸は時間tであり、縦軸は超音波プローブ11に向かう血流速度Vである。図示の肝静脈波形は、3相タイプであり、一回の拍動又は脈拍(つまり拍動周期Tp)に対応する基本の静脈波形B0は、流速の上昇ピークを有する逆行性の第1波形部WAと、流速の降下ピークを有する順行性の第2波形部WSと、流速の降下ピークを有する順行性の第3波形部WDとを有する。第2波形部WSと第3波形部WDとの間には、血流が低下する谷部WVが存在する。第1波形部WAは、全体として正の流速領域であり、肝臓側に戻る血流を示し、第2及び第3波形部WS,WDは、全体として負の流速領域であり、心臓側に戻る血流を示す。なお、肝線維化の進行が進むと、まず第1波形部WAが失われ、肝線維化のさらなる進行によって第2及び第3波形部WS,WDの境界が失われる傾向があり、最終的には第2及び第3波形部WS,WDを判別することが困難となる。なお、肝静脈波形は、大きく変動する波形成分中に速度のゆらぎ成分又はノイズ成分を有するバンド状又は帯状であり、各時相において最大値と最小値との間に大きな差分が存在する。

0029

図2に示す肝静脈波形に対して波形トレースを行う場合、速度のゆらぎ成分又はノイズ成分を考慮する必要がある。主制御部(波形処理部)41は、第1に、肝静脈波形において各時相の最大値MXをトレースするような処理が可能である。また、主制御部(波形処理部)41は、第2に、肝静脈波形において各時相の最小値MIをトレースするような処理も可能である。さらに、主制御部(波形処理部)41は、第3に、肝静脈波形において各時相の最小値及び最大値の中間の平均値AVをトレースするような処理も可能である。さらに、主制御部(波形処理部)41は、第4に、肝静脈波形において各時相の絶対値最大流速(図示省略)をトレースするような処理も可能である。絶対値最大流速のトレースは、波形の振れの大きな外側を選択するようなものと考えることができ、肝静脈波形の特徴を目立つように取り出したものといえる。絶対値最大流速のトレースの場合、具体的には、第1波形部WAの絶対値の高速側の包絡線を抽出し、第2波形部WSがある場合、第2波形部WSの絶対値の高速側の包絡線を抽出し、第3波形部WDがある場合、第3波形部WDの絶対値の高速側の包絡線を抽出する。以上のトレース処理は、主制御部41が静脈波形の各時相における最大値や最小値に対して包絡線を抽出するような処理を行うことで実現するが、装置オペレーターが操作部43を介して手動でトレースすることを許容しその結果を記録することによっても実現する。

0030

波形トレースは、上記の例に限らず、様々なものとできる。具体的には、主制御部41は、第1波形部WAにおいて最大値MXをトレースし、第2及び第3波形部WS,WDにおいて最小値MIをトレースするような折衷的処理も可能である。この場合、第1波形部WAの高速側の包絡線を抽出し、第2波形部WSがある場合、第2波形部WSの低速側の包絡線を抽出し、第3波形部WDがある場合、第3波形部WDの低速側の包絡線を抽出するものとなる。この処理は、上記した絶対値最大流速を用いる処理の一種とみることができる。

0031

主制御部(図示省略)41は、波形トレースによって得た1又は複数の脈波形(トレース波形又はトレースパターンとも呼ぶ)から偏差指標値としての変動係数すなわちCV値を決定する。変動係数又はCV値(=標準偏差/平均速度)は、対象とする脈波形における血流速度のばらつきを示し、次式(1)で与えられる。

ここで、nは脈波形を構成する血流速値のサンプル数であり、Viは脈波形における血流速度(m/s)であり、Vm_peakは血流速度の平均値(m/s)である。変動係数(CV値)は、簡易ベルヌーイ式により平均圧較差PG(mmHg)を用いて次式(2)で表すことができる。

平均圧較差MPGは、異なる箇所間の圧力差を示すパラメーターであり簡易ベルヌーイの式により着目する箇所の血流速度をVとして圧較差ΔP(mmHg)=4V2で近似的に求められる。本実施形態では、主制御部41がトレース波形つまり波形トレース後の脈波形から圧較差MPGを計算することができ、波形トレース後のトレース波形又は脈波形からそのばらつきすなわち血流速度のばらつきに関するCV値も得ることができる。

0032

以上のようにして得たCV値及びこれに適宜の処理を施して得た値を含む偏差指標値は、肝線維化といった体内臓器の組織弾性又は組織硬度の増加、つまり体内臓器の病変又は変化の進行度に応じて小さくなる傾向があり、脈波形の変動係数又はCV値を利用することで肝臓その他の対象箇所又は被検箇所の病変又は変化の進行度の評価が容易になる。

0033

以下、図3を参照して、図1に示す測定装置100を用いた組織弾性の測定方法について説明する。

0034

まず、装置オペレーター又は測定者は、被検体の対象箇所又は被検箇所の体表面に超音波プローブ11を当ててエコー画像を読み取る(ステップS11)。この際、被検箇所が肝静脈である場合、肝静脈の延びる方向に対して適切となるように超音波プローブ11を配置する。

0035

次に、測定者は、表示部42及び操作部43を利用し、エコー画像を観察しながら被検体の被検箇所又は計測ポイントをドプラ波形検出のターゲットとして指定する(ステップS12)。被検箇所の指定は、表示部42に表示されたエコー画像にマークを付するといった操作によって達成される。

0036

その後、主制御部41は、信号処理部31を適宜動作させることで、ステップS12でターゲットとした被検箇所又は計測ポイントについて、パルスウェーブドプラ法によるドプラ波形又は脈波形を取得させる(ステップS13)。

0037

次に、主制御部(波形処理部)41は、ステップS13で得たドプラ波形に対して波形の輪郭等を自動的に波形トレースし、得られたトレース後の脈波形すなわちトレース波形を元のドプラ波形に重畳表示する(ステップS14)。

0038

さらに、主制御部(波形処理部)41は、トレース後の静脈波形すなわちトレース波形に対して変動係数又はCV値を計算する処理を行って(ステップS15)、CV値から組織弾性又は臓器硬度の増加度を評価したり、体内臓器の病変又は変化の進行度を評価したりする。具体的には、肝静脈波形に対してCV値を得た場合、肝線維化の進行に応じてCV値が小さくなる傾向があり、CV値に基づいて組織の弾性若しくは硬度の増加或いは肝線維化の進行度を定量的に評価することができる。なお、実際の測定又は診断では、CV値を逆数にしたり、対数的換算したりするといった処理を施した様々な偏差指標値を用いることができる。

0039

また、上記のようにして得たCV値に対して複数の閾値を設定することで、組織弾性の増加状態又は変動状態を、3段階、5段階、…といったようなレベル分け又は離散的カテゴリー変数に変換することができる。

0040

以上で説明した組織弾性の測定装置100によれば、情報処理部100bがパルスウェーブドプラ法によって得た脈波形から変動係数(CV値)又はこれを加工した偏差指標値を算定するので、脈波形の形状の変化(具体的には急峻さの低下)を再現性良く定量的に評価できる。脈波形の形状(具体的には急峻さ)に対応する脈波形の変動係数は、例えば肝線維化といった組織弾性又は組織硬度の増加に応じて小さくなる傾向があり、かかる脈波形の変動係数又は偏差指標値を利用することで組織弾性の増加延いては生体組織の病変又は変化の進行度の評価が容易になる。

0041

以下、本発明に係る静組織弾性の測定方法又は診断方法について、具体的な試験例を参照しつつ説明する。

0042

図4A〜4Eは、肝線維化の進行に伴う肝静脈波形の変化を示しており、上からの順でタイプ1〜5の肝静脈波形を示している。図4Aに示すタイプ1の波形の場合、図2で説明した第1〜第3波形部WA,WS,WDに対応する逆行性の部分波Aと順行性の部分波S,Dとを有し、順行性の部分波S,D間に速度が下がる谷状の部分Vを有している。図4Bに示すタイプ2の波形の場合、上記と同様の部分波A,S,Dを有するが、部分波S,D間の移行部分である部分Vが速度ゼロ基準線よりも下に降りてきている。図4Cに示すタイプ3の波形の場合、部分波Aが消失し、部分波S,Dのみが残って2相波となっている。図4Dに示すタイプ4の波形の場合、部分波S,D間の部分Vが消失し、部分波S,Dの区別が無くなる。図4Eに示すタイプ5の波形の場合、部分波S,Dも判別が困難となる。以上のように、肝静脈波形の変化を5タイプに区分する方法は一般的でなく、従来、図4Aに示す急峻なタイプ1を典型的な3相波として肝線維化があまり進行していない状態とし、図4Cに示す比較的なだらかなタイプ3を典型的な2相波として肝線維化がある程度進行した状態とし、図4Eに示す平坦なタイプ5を典型的な単相波として肝線維化が重度に進行した状態としていた。

0043

図5は、図4A〜4Eに示す肝静脈波形の分類と、エラストグラフィの測定器であるフィブロスキャン(Fibroscan touch 502 (Echosens, Paris, France))で測定した肝硬度との関係を説明する箱ひげ図である。横軸のタイプ1〜5の上のnの値は、標準的な硬度レンジにある標本数を示している。また、チャート中でボックスは、四分位範囲(IQR)を示し、チャート中で印★や○は、最大値及び最小値を超えた外れ値を示す。

0044

図5に示す肝静脈波形及び肝硬度間の関係は、慢性肝疾患患者148名を対象として、腹部エコーと肝硬度測定を施行することによって得られた。具体的な試験方法としては、4時間以上の絶食後の患者に対して、株式会社東メディカルステムズAplio 300もしくはAplio 500を用いた腹部エコー検査と肝静脈パルスドプラ測定とを行った。また、Fibroscan touch 502 (Echosens, Paris, France)を用いた肝硬度測定を同日に行った。パルスドプラ測定において、肝静脈波形の計測の対象領域として、右肋間から右肝静脈、もしくは中肝静脈描出し、下大静脈との分岐部から5cm以内に計測ポイントを設定した。静脈波形の計測は、仰臥位平常呼吸で行った。記録した静脈波形に対して心拍動一回分を手動でトレースを行い、このトレースに基づいてCV(変動係数)を算出した。静脈波形のトレースに際しては、絶対値最大流速(波形の外側)を利用した。

0045

図6Aは、試験によって得られたタイプ1の肝静脈波形の一例を示し、肝静脈波形中にCV値の計測に用いた急峻な3相のトレース跡又はトレース波形(点線)が表示されている。図6Bは、タイプ2の肝静脈波形の一例を示し、肝静脈波形中にCV値の計測に用いた比較的なだらかな3相のトレース跡又はトレース波形(点線)が表示されている。図7Aは、タイプ3の肝静脈波形の一例を示し、肝静脈波形中にCV値の計測に用いたなだらかな2相のトレース跡又はトレース波形(点線)が表示されている。図7Bは、タイプ4の肝静脈波形の一例を示し、肝静脈波形中にCV値の計測に用いた若干起伏が残る単相のトレース跡又はトレース波形(点線)が表示されている。図8は、タイプ5の肝静脈波形の一例を示し、肝静脈波形中にCV値の計測に用いた平坦な単相のトレース跡又はトレース波形(点線)が表示されている。

0046

図9は、タイプ1〜5の多数の肝静脈波形について取得したCV値をチャート化したものであり、図5に対応する。ここで横軸は予め目視によって区分した波形タイプであり、縦軸は、図6A、6B、図7A、7B、及び図8に例示する手法によって肝静脈波形に対してトレースを行って得たCV値となっている。図9をみれば明らかなように、タイプ1〜5の肝静脈波形と、上述の手法で得たCV値との間には、明らかな相関があり、タイプ1からタイプ5に移行するに従って、当初CV値が急激に減少し、その後CV値が徐々に緩やかに減少するという傾向が生じている。

0047

図10Aは、FibroScanを用いた肝硬度測定値と、肝静脈波形に対してトレースを行って得たCV値との関係を示すスキャッタプロットであり、図10Bは、FibroScanを用いた肝硬度測定値の対数値と、肝静脈波形に対してトレースを行って得たCV値との関係を示すスキャッタプロット又はチャートである。これらを比較すれば明らかなように、CV値とFibroScanの肝硬度測定値との間には有意な相関が認められ、図10Bのように対数化した場合、反比例的な関係が成り立っていることが分かる。

0048

図11は、東京大医学部附属病院にて肝生検を施行された慢性肝疾患患者である被験者に対して超音波検査にて得られた肝静脈波形から算出したCV値と、肝生検を行って得た組織学的な線維化の程度との関係を説明する箱ひげ図である。横軸は、病理専門の医師が判定した肝組織の線維化の程度を示し、線維化指標値F=0は、線維化がない正常な状態を示し、線維化指標値F=1〜4の数値が大きいほど線維化が進行していることを示す。具体的には、F=1は、門脈域の線維性拡大が見られる状態であり、F=2は、線維性架橋が形成されている状態であり、F=3は、小葉の歪みを伴う線維性架橋が形成されている状態であり、F=4は、肝硬変の状態である。チャート中でnは被験者の数を示す。肝生検では、総数43人の被験者を対象とし、肝臓に針を刺して組織を採取し、顕微鏡による目視で線維化の程度を観察した。肝生検は、肝組織を直接目で観察できるので、最も確実な検査法である。線維化指標値F=1〜4は、図4B〜図4Eに示すタイプ2〜5の肝静脈波形に対応している。CV値は、肝生検による線維化指標値Fと相関性を有しており、線維化指標値Fが大きくなるほどCV値が反比例的に減少することが分かる。

0049

以下、図11で説明した肝生検で得た線維化指標値Fを基準として、CV値を用いた診断能と、FibroScanによる硬度測定値を用いた診断能とを比較する。

0050

図12Aは、CV値を用いた場合のF=0とF=1〜4との区別に関する診断能を示すROC曲線(Receiver Operating Characteristic Curve)であり、図12Bは、FibroScanによる硬度測定値を用いた場合のF=0とF=1〜4との区別に関する診断能を示すROC曲線である。なお、横軸は特異度であり、縦軸は感度である。両者を比較すると、CV値を用いた場合の方がAUC(area under the curve)の値が有意に大きいことが分かる。2つのAUCについてDeLong検定にて精度を比較すると、p値が0.01以下となり、有意にCVの診断能が高かった。

0051

図12Cは、CV値を用いた場合のF=0〜1とF=2〜4との区別に関する診断能を示すROC曲線であり、図12Dは、FibroScanによる硬度測定値を用いた場合のF=0〜1とF=2〜4との区別に関する診断能を示すROC曲線である。両者を比較すると、CV値を用いた場合の方がAUCの値が大きいことが分かる。2つのAUCについて精度を比較すると、p値が0.01以下となった。

0052

図13Aは、CV値を用いた場合のF=0〜2とF=3〜4との区別に関する診断能を示すROC曲線であり、図13Bは、FibroScanによる硬度測定値を用いた場合のF=0〜2とF=3〜4との区別に関する診断能を示すROC曲線である。両者を比較すると、CV値を用いた場合の方がAUCの値が大きいことが分かる。2つのAUCについて精度を比較すると、p値が0.01以下となった。

0053

図13Cは、CV値を用いた場合のF=0〜3とF=4との区別に関する診断能を示すROC曲線であり、図13Dは、FibroScanによる硬度測定値を用いた場合のF=0〜3とF=4との区別に関する診断能を示すROC曲線である。両者を比較すると、CV値を用いた場合のほうがわずかにAUCの値が大きいことが分かる。2つのAUCについて精度を比較すると、p値が0.01以下となった。

0054

以上をまとめると、CV値を用いた場合の診断能の方がFibroScanによる硬度測定値を用いた場合の診断能よりも高いことが分かる。

0055

上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、肝静脈波形に限らず、頸動脈甲状腺等における脈波形を計測しこれらのCV値から頸動脈の硬化、甲状腺に形成された腫瘍等の状態を診断するために本願の組織弾性の測定装置及び測定方法を用いることができる。例えば、甲状腺腫悪性度を判断するために腫瘍血流のPI(拍動係数)及びRI抵抗係数)を求めることが一般にされているが、これも波形の形状又は急峻さの評価を目的としている。また他の例では、動脈硬化の判定にも指の動脈に発生する脈波形(指尖脈波)を評価することが一般に用いられている。このような生体内における脈波神経伝達などの生体信号はその波形の形状又は急峻さ、なだらかさを判断することで診断に寄与しており、本願のCV値を用いた波形の変化で定量的評価が可能となる。

0056

以上では、脈波形に対して波形トレースを行ってからCV値を決定しているが、脈波形からCV値を直接決定することもできる。

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