図面 (/)
概要
背景
圧電素子を超音波発生源として利用する超音波振動子は各種の構成のものが知られているが、その代表的な構成として、一対の金属ブロックとこれらの金属ブロックの間に固定された分極処理済の圧電素子から構成されたランジュバン型超音波振動子が知られている。なかでも、分極処理済の圧電素子を一対の金属ブロックの間でボルトにより接続し、高圧で締め付け固定した構造のボルト締めランジュバン型超音波振動子は高エネルギーの超音波振動の発生が可能なため、各種材料の切削加工、塑性加工、砥粒加工などを行うための工具に付設して用いる超音波加工での利用が検討され、実際に使用されている。さらに、各種の超音波振動子については、その超音波振動子にて発生する超音波振動を振動板や振動手段を介して送信することによる、超音波洗浄、金属接合、プラスチック溶着、超音波霧化、乳化・分散などの超音波処理の用途、そして魚群探知機などの水中音響器(ソナー)、超音波探傷器、医療用エコー診断装置、流量計などの通信的応用機器への利用が検討され、多くの分野で実際に使用されている。
ボルト締めランジュバン型超音波振動子を含む各種の超音波振動子の構成は既に知られているが、念のため、代表的なボルト締めランジュバン型超音波振動子の構成とその利用形態の一例を添付の図1と図2を参照して以下に簡単に説明する。
図1は、ボルト締めランジュバン型超音波振動子の代表的な構造の例を示す図であり、(A)は、その上面図であって、(B)は、(A)のA−A線で切断した断面を示す正面断面図である。
図1において、ボルト締めランジュバン型超音波振動子1は、一対の金属ブロック2、3(通常、これらを、フロントマス、リアマスと云う)の間に分極済の圧電素子(例:PZTなどの圧電セラミック板)5a、5b、5c、5dを挟み、ボルト6とナット9を用いて金属ブロック2、3を互いに締め付けた構造を有する。図1において、圧電素子に記入されている矢印は分極方向を示す。なお、圧電素子3には、電気エネルギーを印加するための端子として利用する電極片(通常はリン青銅などの電極片を用いる)7a、7b、7c、7dが接続されている。また、このボルト締めランジュバン型超音波振動子1を、別に用意した保持装置で保持するための接続に利用するフランジ8が備えられている。
図2は、ボルト締めランジュバン型超音波振動子を超音波振動源として用いる超音波研削加工装置(研磨機)の構成例を示す図である。図2において、超音波研削加工装置10は、ハウジング11内に、下端部にホーン12を介して接続された研磨具13を備えた超音波振動子1を収容し、この超音波振動子1を軸受14により回転可能に支持している。超音波振動子1の回転は、サーボユニット15に接続された交流スピンドルモータ16により駆動される。図2の装置では、超音波振動子1の超音波振動のための電気エネルギーは、外部に設けた電気エネルギー供給源17に接続しているカーボンブラシとスリップリングとから構成されている接触型給電装置18を介して供給される。
超音波加工装置において各種工具に超音波振動を与えることにより期待される効果は、超音波振動子にて発生した超音波振動が、超音波振動子に組み合わされている工具保持具に保持されている工具に高い効率で伝達され、その結果として得られる当該工具による加工作業に必要な電気エネルギーの節減や加工精度の向上などである。しかしながら、これまでに製造され、実際の加工作業に使用されている超音波加工装置では、その期待された効果が充分に得られていない場合が多い。このため現在の時点でも、超音波加工装置の普及は十分進んでいるとは云えない。従って、超音波加工の更なる普及を進めるためには、超音波振動子にて発生した超音波振動が高い効率で工具に伝達されるようにする改良が必要となる。
本発明の発明者は、これまでに、超音波振動子にて発生した超音波振動が高い効率で工具に伝達されるようにする改良を提供する発明を案出し、特許出願を行ってきた。それらの改良発明の内で最近の発明の一つとしては、特許文献1に開示されている発明を挙げることができる。
特許文献1には、工具と超音波振動体との振動複合体を高い安定性にて支持し、かつ超音波振動体において発生する超音波エネルギーの該振動複合体の支持体(固定支持体)への漏出を低いレベルに抑制することによって振動エネルギーの工具への高い効率での印加を可能にする支持構造として、工具を備えた超音波振動体にフランジを付設し、フランジの片側面を、別に用意した固定体に形成したフランジ支持面に応力を掛けた状態で接触させることにより係合支持する支持構造(但し、超音波振動体のフランジは、固定体のフランジ支持面には接合されてなく、また固定体の支持面に接触して係合支持された超音波振動体のフランジは、該超音波振動体が振動状態にある時にはフランジの厚み方向に超音波振動する構造とされる)が開示されている。
概要
超音波加工装置に組み込んで用いるのに適したランジュバン型超音波振動子を備えた超音波振動付与具であって、ランジュバン型超音波振動子にて発生した超音波振動の効率の高い利用を可能にする。接触面を内周面下部もしくは底部に備え、そして外周面下部にねじ部を備えた円筒状ハウジング;該円筒状ハウジングの上記接触面に嵌め合わされる接触面を備えた円盤状膨出部を上部に有する円筒状工具取付具を含むフロントマスと、該フロントマスの上方に配置したリアマスとの間に分極処理済の圧電素子を挟んだ状態でボルト締めした構成のランジュバン型超音波振動子;そして、円筒状ハウジングのねじ部がねじ込まれるねじ部を内周面上部に有するリング状釣り合い重りを含む超音波振動付与具。
目的
本発明の発明者は、これまでに、超音波振動子にて発生した超音波振動が高い効率で工具に伝達されるようにする改良を提供する
効果
実績
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請求項1
接触面を内周面下部もしくは底部に備え、そして外周面下部にねじ部を備えた円筒状ハウジング;該円筒状ハウジングの上記接触面に嵌め合わされる接触面を備えた円盤状膨出部を上部に有する円筒状工具取付具を含むフロントマスと、該フロントマスの上方に配置したリアマスとの間に分極処理済の圧電素子を挟んだ状態でボルト締めした構成のランジュバン型超音波振動子;そして、円筒状ハウジングのねじ部がねじ込まれるねじ部を内周面上部に有するリング状釣り合い重りを含む超音波振動付与具。
請求項2
請求項3
リング状釣り合い重りのねじ部の内周縁と外周縁との距離が、リング状釣り合い重りの厚みの1/1から2/1の範囲にある請求項1に記載の超音波振動付与具。
請求項4
リング状釣り合い重りのねじ部の下側に、内径が該ねじ部の内径よりも小さい下側小径部が形成されていて、その下側小径部の上面と円筒状ハウジングの底面との間に空隙が形成されている請求項1乃至3の内のいずれかの項に記載の超音波振動付与具。
請求項5
リング状釣り合い重りのねじ部の下側に、内径が該ねじ部の内径よりも小さい下側小径部が形成されていて、その下側小径部の内周面と円筒状工具取付具の側面と間に空隙が形成されている請求項1乃至3の内のいずれかの項に記載の超音波振動付与具。
請求項6
請求項7
円筒状ハウジングの接触面が、該円筒状ハウジングの内周側底部に形成された、円筒状ハウジングの内周面よりも径の大きなリング状の凹部の上面及び/又は周面であって、円筒状工具取付具の円盤状膨出部の接触面が該円盤状膨出部の上面及び/又は側面である請求項1乃至3の内のいずれかの項に記載の超音波振動付与具。
請求項8
請求項9
技術分野
0001
本発明は、超音波振動付与具及び超音波加工装置に関する。本発明は特に、ランジュバン型超音波振動子を使用する新規な構成の超音波振動付与具と、その超音波振動付与具を用いる超音波加工装置に関する。
背景技術
0002
圧電素子を超音波発生源として利用する超音波振動子は各種の構成のものが知られているが、その代表的な構成として、一対の金属ブロックとこれらの金属ブロックの間に固定された分極処理済の圧電素子から構成されたランジュバン型超音波振動子が知られている。なかでも、分極処理済の圧電素子を一対の金属ブロックの間でボルトにより接続し、高圧で締め付け固定した構造のボルト締めランジュバン型超音波振動子は高エネルギーの超音波振動の発生が可能なため、各種材料の切削加工、塑性加工、砥粒加工などを行うための工具に付設して用いる超音波加工での利用が検討され、実際に使用されている。さらに、各種の超音波振動子については、その超音波振動子にて発生する超音波振動を振動板や振動手段を介して送信することによる、超音波洗浄、金属接合、プラスチック溶着、超音波霧化、乳化・分散などの超音波処理の用途、そして魚群探知機などの水中音響器(ソナー)、超音波探傷器、医療用エコー診断装置、流量計などの通信的応用機器への利用が検討され、多くの分野で実際に使用されている。
0003
ボルト締めランジュバン型超音波振動子を含む各種の超音波振動子の構成は既に知られているが、念のため、代表的なボルト締めランジュバン型超音波振動子の構成とその利用形態の一例を添付の図1と図2を参照して以下に簡単に説明する。
0004
図1は、ボルト締めランジュバン型超音波振動子の代表的な構造の例を示す図であり、(A)は、その上面図であって、(B)は、(A)のA−A線で切断した断面を示す正面断面図である。
図1において、ボルト締めランジュバン型超音波振動子1は、一対の金属ブロック2、3(通常、これらを、フロントマス、リアマスと云う)の間に分極済の圧電素子(例:PZTなどの圧電セラミック板)5a、5b、5c、5dを挟み、ボルト6とナット9を用いて金属ブロック2、3を互いに締め付けた構造を有する。図1において、圧電素子に記入されている矢印は分極方向を示す。なお、圧電素子3には、電気エネルギーを印加するための端子として利用する電極片(通常はリン青銅などの電極片を用いる)7a、7b、7c、7dが接続されている。また、このボルト締めランジュバン型超音波振動子1を、別に用意した保持装置で保持するための接続に利用するフランジ8が備えられている。
0005
図2は、ボルト締めランジュバン型超音波振動子を超音波振動源として用いる超音波研削加工装置(研磨機)の構成例を示す図である。図2において、超音波研削加工装置10は、ハウジング11内に、下端部にホーン12を介して接続された研磨具13を備えた超音波振動子1を収容し、この超音波振動子1を軸受14により回転可能に支持している。超音波振動子1の回転は、サーボユニット15に接続された交流スピンドルモータ16により駆動される。図2の装置では、超音波振動子1の超音波振動のための電気エネルギーは、外部に設けた電気エネルギー供給源17に接続しているカーボンブラシとスリップリングとから構成されている接触型給電装置18を介して供給される。
0006
超音波加工装置において各種工具に超音波振動を与えることにより期待される効果は、超音波振動子にて発生した超音波振動が、超音波振動子に組み合わされている工具保持具に保持されている工具に高い効率で伝達され、その結果として得られる当該工具による加工作業に必要な電気エネルギーの節減や加工精度の向上などである。しかしながら、これまでに製造され、実際の加工作業に使用されている超音波加工装置では、その期待された効果が充分に得られていない場合が多い。このため現在の時点でも、超音波加工装置の普及は十分進んでいるとは云えない。従って、超音波加工の更なる普及を進めるためには、超音波振動子にて発生した超音波振動が高い効率で工具に伝達されるようにする改良が必要となる。
0007
本発明の発明者は、これまでに、超音波振動子にて発生した超音波振動が高い効率で工具に伝達されるようにする改良を提供する発明を案出し、特許出願を行ってきた。それらの改良発明の内で最近の発明の一つとしては、特許文献1に開示されている発明を挙げることができる。
0008
特許文献1には、工具と超音波振動体との振動複合体を高い安定性にて支持し、かつ超音波振動体において発生する超音波エネルギーの該振動複合体の支持体(固定支持体)への漏出を低いレベルに抑制することによって振動エネルギーの工具への高い効率での印加を可能にする支持構造として、工具を備えた超音波振動体にフランジを付設し、フランジの片側面を、別に用意した固定体に形成したフランジ支持面に応力を掛けた状態で接触させることにより係合支持する支持構造(但し、超音波振動体のフランジは、固定体のフランジ支持面には接合されてなく、また固定体の支持面に接触して係合支持された超音波振動体のフランジは、該超音波振動体が振動状態にある時にはフランジの厚み方向に超音波振動する構造とされる)が開示されている。
先行技術
発明が解決しようとする課題
0010
特許文献1に記載の新たな超音波振動子の支持構造を利用する超音波加工装置により、従来知られていた構造の超音波振動子を用いる超音波加工装置の問題点については少なからずの解決が見られた。しかしながら、特許文献1に記載の超音波振動子の支持構造を利用した超音波振動付与具についても、それを実際の超音波加工装置に組み込んで使用した場合に、いくつかの問題が発生することに気付いた。その問題の一つとしては、超音波加工装置内での超音波振動子の保持(支持)が厚みの薄いフランジにより行われているため、超音波加工装置の長期間の使用の間に、フランジ部の疲労や、フランジ部を介しての超音波振動子の保持(支持)に緩みが発生する場合があることを挙げることができる。
0011
従って、本発明の課題は、超音波加工装置に組み込んで用いるのに適したランジュバン型超音波振動子を備えた超音波振動付与具であって、その超音波振動付与具に取り付けられた工具に、ランジュバン型超音波振動子にて発生した超音波振動を高い効率で伝達することができる超音波振動付与具を提供することにある。
課題を解決するための手段
0012
本発明の発明者は、ランジュバン型超音波振動子を利用する超音波振動付与具にて発生した超音波振動の超音波振動付与具への漏出機構に関する研究をさらに続けてきた。そして、その結果、以下に記載する本発明の超音波振動付与具(Ultrasonic Vibration Applicator)を利用することにより、上記の課題が高い満足度を以て解決されることを確認した。
0013
本発明により提供される超音波振動付与具は、下記の部材、(a)、(b)、(c)を主たる構成として含む。
(a)接触面を内周面下部もしくは底部に備え、そして外周面下部にねじ部を備えた円筒状ハウジング;
(b)該円筒状ハウジングの上記接触面に嵌め合わされる接触面を備えた円盤状膨出部を上部に有する円筒状工具取付具を含むフロントマスと、該フロントマスの上方に配置したリアマスとの間に分極処理済の圧電素子を挟んだ状態でボルト締めした構成のランジュバン型超音波振動子;
そして、
(c)円筒状ハウジングのねじ部がねじ込まれるねじ部を内周面上部に有するリング状釣り合い重り。
0014
また、本発明により、上記の本発明の超音波振動付与具そして該超音波振動付与具の円筒状工具取付具に取り付けられた工具を含む超音波加工装置も提供される。
0015
本発明の超音波振動付与具の好ましい態様を以下に記載する。
(1)リング状釣り合い重りのねじ部の内周縁と外周縁との距離が、リング状釣り合い重りの厚みの2/3から3/1の範囲、好ましくは1/1から2/1の範囲、にある。
0017
(3)リング状釣り合い重りのねじ部の下側に、内径が該ねじ部の内径よりも小さい下側小径部が形成されていて、その下側小径部の内周面と円筒状工具取付具の側面と間に空隙が形成されている。
0019
(5)円筒状ハウジングの接触面が、該円筒状ハウジングの内周側底部に形成された、円筒状ハウジングの内周面よりも径の大きなリング状の凹部の上面及び/又は周面であって、円筒状工具取付具の円盤状膨出部の接触面が該円盤状膨出部の上面及び/又は側面である。
0020
(6)リング状釣り合い重りの外周縁部が、ランジュバン型超音波振動子の超音波振動に応じて、該超音波振動の方向と逆の方向に振動する。
発明の効果
0021
超音波加工装置に、本発明の超音波振動付与具を組み込んで用いると、超音波振動付与具からの超音波加工装置の超音波振動付与具の支持部材(超音波加工装置に組み込むための支持部材)への超音波振動エネルギーの漏出が顕著に低減する。このため、ランジュバン型超音波振動子にて発生した超音波振動を、超音波振動付与具に取り付けられた工具に、高い効率、かつ高い安定性にて伝達することが可能となる。
図面の簡単な説明
0022
代表的なボルト締めランジュバン型超音波振動子の構成を示す図である。
ボルト締めランジュバン型超音波振動子を利用する超音波加工装置の構成の例を示す図である。
本発明の超音波振動付与具の代表的な構成例を示す図である。
図3に示した本発明の超音波振動付与具に発生した縦一次振動に応じて振動するリング状釣り合い重りの振動モードを説明する説明図である。
図3に示した本発明の超音波振動付与具に発生した疑似縦零次振動に応じて振動するリング状釣り合い重りの振動モードを説明する説明図である。
本発明の超音波振動付与具の図3の構成とは異なる構成例を示す図である。
本発明の超音波振動付与具の図3や図6の構成とは異なる構成例を示す図である。
本発明の超音波振動付与具の構成例を示す斜視図であって、円筒状ハウジングとして、側面にスリットを設けた態様を示す。
本発明の超音波振動付与具を組み込んだ超音波加工装置の例(工具はドリル)の構成例を示す図である。
本発明の超音波振動付与具を組み込んだ超音波加工装置の例(工具はスピンドル)の構成例を示す図である。
本発明の超音波振動付与具を組み込んだ超音波加工装置の例(工具はカッター)の構成例を示す図である。
実施例
0024
図3は、本発明の超音波振動付与具の代表的な構成例を示す図である。(A)は、平面図であり、(B)は、(A)のB−B線に沿った面で切断した切断である。図3の(B)において、超音波振動付与具は、下記の(a)円筒状ハウジング11、(b)ランジュバン型超音波振動子1、そして(c)リング状釣り合い重り20が、主構成部材として含まれ、それらにより超音波振動付与具が構成されている。
(a)接触面を内周面下部もしくは底部に備え、そして外周面下部にねじ部を備えた円筒状ハウジング;
(b)該円筒状ハウジングの上記接触面に嵌め合わされる接触面を備えた円盤状膨出部を上部に有する円筒状工具取付具を含むフロントマスと、該フロントマスの上方に配置したリアマスとの間に分極処理済の圧電素子を挟んだ状態でボルト締めした構成のランジュバン型超音波振動子;
そして、
(c)円筒状ハウジングのねじ部がねじ込まれるねじ部を内周面上部に有するリング状釣り合い重り。
0025
図3に示した円筒状ハウジング11は、円筒状工具取付具の接触面に嵌め合わされる接触面21を内周面下部もしくは底部に備え、そして外周面下部にねじ部22を備えている。図3の円筒状ハウジング11では、接触面21は、下方に向けて拡がるテーパ状の斜面域とされている。円筒状ハウジング11のねじ部22は、後述するリング状釣り合い重りのねじ部(雌ねじ)と螺合(ねじ結合)している雄ねじ部である。
0026
図3に示したランジュバン型超音波振動子1は、円筒状ハウジング11の接触面20に嵌め合わされる接触面22を備えた円盤状膨出部23を上部に有する円筒状工具取付具24を含むフロントマスと、該フロントマスの上方に配置したリアマス3との間に、通常通り、分極処理済の圧電素子を挟んだ状態でボルト締めした構成のランジュバン型超音波振動子である。すなわち、本発明の超音波振動付与具を構成するランジュバン型超音波振動子は、通常のランジュバン型超音波振動子のフロントマスと一般的に用いられている円筒状の工具取付具をフロントマスとして利用している。この工具取付具の上方に別に用意したフロントマスを接続した構成であっても良い。また、円筒状工具取付具の円筒状とは、一般的に円筒と同等と見ることのできる断面が多角形の筒状であってもよい。
超音波加工機における工具取付具については、各種の形態や構造のものが知られており、それらの何れの形態や構造の工具取付具は、本発明の超音波振動付与具の機能を損なうもので無い限り、本発明において使用可能である。
0027
図3に示したリング状釣り合い重り20は、円筒状ハウジング11のねじ部22がねじ込まれるねじ部(雌ねじ部)25をを内周面上部に有する。本発明の超音波振動付与具において、このリング状釣り合い重りの外周縁部は、ランジュバン型超音波振動子にて発生した超音波振動の振動の方向(向き)と反対の方向(向き)で振動する。このランジュバン型超音波振動子にて発生した超音波振動の振動の方向(向き)とリング状釣り合い重りの振動の方向(向き)との関係を、図4と図5を参照して、以下に詳しく説明する。
0028
図4は、図3に示した超音波振動付与具を、その円筒状ハウジング11を介して支持装置26で支持(保持)し、その状態で、ランジュバン型超音波振動子1への電気エネルギーの印加により、縦一次振動モードの超音波振動を発生した場合に起きる、ランジュバン型超音波振動子1の超音波振動、そして、その超音波振動によって励起されるリング状釣り合い重り23の振動を示す図である。ランジュバン型超音波振動子1の縦一次振動モードの超音波振動は、ランジュバン型超音波振動子1のほぼ中央に位置する振動の節(黒丸で表示)を中心として上下に往復運動する振動である。この往復運動を実線と破線の矢印で示してある。そして、このランジュバン型超音波振動子1の上下の往復運動(上下での伸び縮み)により、ランジュバン型超音波振動子1の円筒状工具保持具24の円盤状膨出部23のテーパ状接触面と円筒状ハウジング11のテーパ状接触面との接触位置(黒丸で表示)を節とする、リング状釣り合い重り20の外周縁部の振動(上下方向の往復運動)が発生する。このリング状釣り合い重り20の外周縁部の往復運動も実線と破線の矢印で示してある。ただし、リング状釣り合い重り20の外周縁部の往復運動の振動方向は、ランジュバン型超音波振動子の往復運動(伸縮運動)の振動方向とは反対の方向となる。
0029
上述のリング状釣り合い重り20の外周縁部の振動(上下方向の往復運動)の発生により、ランジュバン型超音波振動子1で発生した超音波振動は、円筒状ハウジング11に伝達されにくくなる。従って、円筒状ハウジングを介しての支持装置への超音波振動の漏出が顕著に低減し、その結果、ランジュバン型超音波振動子1で発生した超音波振動は、円筒状工具保持具24に保持される工具に効率良く伝達されることになる。そして、超音波加工に利用される工具への超音波振動の伝達が効率良く実現するため、超音波加工の精度や安定度が向上し、また超音波振動励起のための電力エネルギーの低減も実現する。さらに、ランジュバン型超音波振動子1の円筒状工具保持具24の上部の円盤状膨出部23と円筒状ハウジング11との接触領域の面積を、従来使用されている超音波加工装置でのランジュバン型超音波振動子のフランジ部の断面積に比べて大きくすることができるため、超音波加工装置でのランジュバン型超音波振動子の支持が確実となり、また長期間の連続使用によっても、安定的なランジュバン型超音波振動子とそれに付設された工具の保持が可能となる。
0030
図5は、図3に示した本発明の超音波振動付与具を、その円筒状ハウジング11を介して支持装置26(図示せず)し、その状態で、ランジュバン型超音波振動子1への電気エネルギーの印加により、疑似零次縦振動モードの超音波振動を発生した場合に起きる、ランジュバン型超音波振動子1の超音波振動、そして、その超音波振動によって励起されるリング状釣り合い重り23の振動を示す図である。なお、ランジュバン型超音波振動子の疑似零次縦振動モードについては、本発明の発明者の発明を開示したWO2017/065263A1に詳しい記載があるため、この公報の記載内容を本願の記載内容とする。
0031
図5において、ランジュバン型超音波振動子1への電気エネルギーの印加により、疑似零次縦振動モードの超音波振動を発生した場合には、ランジュバン型超音波振動子1の内部に振動の節を持つ振動(伸縮運動)は発生せず、ランジュバン型超音波振動子自体が上下に振動する往復運動が発生する。この往復運動を、実線と破線の矢印で示す。そして、リング状釣り合い重り20の振動は、同じく実線と破線とで示すように、ランジュバン型超音波振動子1の往復運動とは反対の方向の往復運動となる。
0032
従って、ランジュバン型超音波振動子の疑似零次縦振動モードの超音波振動を利用した場合でも、図4で説明したように、上述のリング状釣り合い重り20の外周縁部の振動(上下方向の往復運動)の発生により、ランジュバン型超音波振動子1で発生した超音波振動は、円筒状ハウジングに伝達されにくくなる。従って、円筒状ハウジングを介しての支持装置への超音波振動の漏出が顕著に低減し、その結果、ランジュバン型超音波振動子1で発生した超音波振動は、円筒状工具保持具24に保持される工具に効率良く伝達されることになる。そして、超音波加工に利用される工具への超音波振動の伝達が効率良く実現するため、超音波加工の精度や安定度が向上し、また超音波振動励起のための電力エネルギーの低減も実現する。さらに、ランジュバン型超音波振動子1の円筒状工具保持具24の上部の円盤状膨出部と円筒状ハウジング11との接触領域の面積を、従来使用されている超音波加工装置でのランジュバン型超音波振動子のフランジ部の断面積に比べて大きくすることができるため、超音波加工装置でのランジュバン型超音波振動子の支持が確実となり、また長期間の連続使用によっても安定的なランジュバン型超音波振動子とそれに付設された工具の保持が可能となる。
0033
図8は、本発明の超音波振動付与具の別の構成例を示す斜視図であって、円筒状ハウジング11として、側面にスリット27を設けた態様を示す。20は、リング状釣り合い重りであり、24は、円筒状工具保持具である。また、超音波振動付与具は、超音波加工機の支持装置26により支持固定されている。このような、円筒状ハウジングの側面へのスリット27の形成により、ランジュバン型超音波振動子で発生し、円筒状ハウジングに漏れてくる超音波振動の超音波加工機の支持装置への漏出がさらに低減し、また、このように円周方向に沿って形成された細長いスリットにより、ランジュバン型超音波振動子からの超音波振動による発熱が低下し、また超音波振動の反射も起こる。
0035
図9に示す超音波加工装置は、モータ31、モータ軸32、回転軸33、電源34、ロータリートランス固定部35、ロータリートランス回転部36b、固定側トランス台37、スリーブ38、回転側トランス台39、そしてベアリング30を含む超音波振動付与具支持回転装置に、工具41を備えた本発明の超音波振動付与具が装着されている構成にある。この超音波振動子支持回転装置は超音波加工装置における超音波振動子支持回転装置として一般的に利用されている装置である。
0036
図10は、超音波加工方法の利用の一態様である工具(超音波振動子の中心軸の周囲を回転する工具)として研磨具あるいはスピンドルを使用する超音波加工装置に本発明の超音波振動付与具を組み込んだ構成例を示す図である。そして、図10の超音波加工装置では、電源34から供給される電気エネルギーが、ロータリートランス42、43を介してランジュバン型超音波振動子1に伝えられる。この図10に示した著音波加工装置は、上部45を介してマシニングセンタに組み入れての使用を想定している。