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技術 放卵又は放精を誘起するペプチド

出願人 国立大学法人九州大学国立研究開発法人水産研究・教育機構
発明者 吉国通庸加藤慎一山野恵祐藤原篤志
出願日 2017年10月27日 (2年4ヶ月経過) 出願番号 2018-547236
公開日 2019年9月19日 (6ヶ月経過) 公開番号 WO2018-079861
状態 不明
技術分野
  • -
主要キーワード 体内空間 有機溶媒置換 江戸時代 棘皮動物門 置換除去 生産施設 自然保護 マナマコ
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図面 (8)

課題・解決手段

式I:CCXXXCXXXXXXXXC(I)(Xはシステイン残基以外の任意のアミノ酸残基を表す。)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド、及び式II:CXXXXXXXXXXXC(II)(Xは前記と同様である。)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドを含み、かつ、ナマコに属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチド。

概要

背景

中国では食用ナマコ類を干して作られる干ナマコは、滋養強壮富む高級食材として取引されてきた。近年の中国の経済発展に伴って国際的に干ナマコ需要急増しており、2013年には年間4億米ドル市場へと成長している。干ナマコは様々な種類の食用ナマコから製造されているが、なかでもマナマコから作られる干ナマコは最高級品として珍重され、江戸時代には日本からの重要な輸出海産物の一つとなっていた。マナマコは極東地域に局在する種であるが、中国沿岸での棲息数は既に激減しており、近年の漁獲は殆ど無い状態と思われる。日本での水揚げ天然資源の保護を考慮して採りすぎない漁業が行われている。こうした中、中国の旺盛な購買意欲は、熱帯地域に生息する食用ナマコ類の漁獲の急増が支えている。

現在、30種以上の熱帯性ナマコ類が食用とされていると考えられるが、その半数は世界自然保護連合により絶滅危惧種(EN(絶滅危機),VU危急区分)に指定されている(IUCN,2013)。マナマコも絶滅危機(EN)に指定されているが、日本国内では、厳格な漁業管理と共に、各地で稚ナマコの生産種苗生産)と漁場への放流種苗放流)が継続的に行われ天然資源の保護・育成が進められている。一方、熱帯では、多くの食用ナマコ種で天然資源の枯渇が懸念されているが、日本のような十分な天然資源の保護・育成事業は行われていない。

種苗生産事業は受精卵を得ることから始まる。しかし、動物は母個体から外科的に取りだした状態では受精能力を持たないことから、受精可能な卵を得るためには母個体の産卵を誘発する必要がある。これまでに動物種に応じて様々な産卵誘発技術が試みられてきたが、加温や干出等の物理化学的刺激主体とした従来の方法では効果的な産卵誘発効果は得られなかった。マナマコにおいては、神経系に含まれる産卵誘発ホルモン「クビフリン」が解明され(特許文献1:特許第5401736号、非特許文献1〜4)、クビフリンを投与して産卵を誘発する技術は、今では全国の主なマナマコ種苗生産施設で欠かせない技術として利用されている。

熱帯圏諸国においても、干ナマコ需要の増加に伴って漁獲が急増している熱帯性食用ナマコ類の天然資源の保護・育成が急務となっているが、漁業管理体制構築や種苗生産・放流事業の活動は日本のように充分には行われてはいない。種苗生産においては効果的な産卵誘発技術が必要であるが、マナマコでのクビフリンの様な実用的な効果を持つ技術は開発されておらず(非特許文献5〜8)、やむを得ず従来の物理化学的刺激法が運用されている。マナマコクビフリンは極めて種特異性が高く、熱帯性ナマコ類には作用しないと考えられており、熱帯性ナマコ類における同様のホルモンの解明が期待されている。

概要

式I:CCXXXCXXXXXXXXC(I)(Xはシステイン残基以外の任意のアミノ酸残基を表す。)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド、及び式II:CXXXXXXXXXXXC(II)(Xは前記と同様である。)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドを含み、かつ、ナマコに属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチド。

目的

本発明は、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するペプチドを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
- 件
牽制数
- 件

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請求項1

次式(I):CCXXXCXXXXXXXXC(配列番号1)(I)(Xはシステイン残基以外の任意のアミノ酸残基を表す。)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、次式(II):CXXXXXXXXXXXC(配列番号2)(II)(Xは前記と同様である。)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドと二量体を形成することによりナマコに属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有する、前記式(I)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。

請求項2

次式(II):CXXXXXXXXXXXC(配列番号2)(II)(Xはシステイン残基以外の任意のアミノ酸残基を表す。)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、次式(I):CCXXXCXXXXXXXXC(配列番号1)(I)(Xは前記と同様である。)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドと二量体を形成することによりナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有する、前記式(II)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。

請求項3

次式(I):CCXXXCXXXXXXXXC(配列番号1)(I)(Xはシステイン残基以外の任意のアミノ酸残基を表す。)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド、及び次式(II):CXXXXXXXXXXXC(配列番号2)(II)(Xは前記と同様である。)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドを含み、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチド。

請求項4

式(I)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドが、X1GX2X3X4X5CCX6X7GCX8X9SX10X11X12X13X14C(配列番号3)(I−1)(X1〜X14はシステイン残基以外の任意のアミノ酸残基を表す。)で示されるアミノ酸配列を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のペプチド。

請求項5

X1がグリシン残基アルギニン残基スレオニン残基アラニン残基プロリン残基セリン残基若しくはアスパラギン残基を表し、X2がイソロイシン残基若しくはメチオニン残基を表し、X3がアラニン残基若しくはグリシン残基を表し、X4がアルギニン残基、トリプトファン残基若しくはグルタミン残基を表し、X5がアルギニン残基若しくはチロシン残基を表し、X6がアラニン残基、セリン残基若しくはスレオニン残基を表し、X7がセリン残基、スレオニン残基、イソロイシン残基、アラニン残基、アスパラギン残基若しくはヒスチジン残基を表し、X8がセリン残基若しくはアラニン残基を表し、X9がセリン残基、スレオニン残基、フェニルアラニン残基、アルギニン残基若しくはメチオニン残基を表し、X10がアスパラギン酸残基若しくはグルタミン酸残基を表し、X11がイソロイシン残基若しくはロイシン残基を表し、X12がアラニン残基若しくはセリン残基を表し、X13がリシン残基若しくはアルギニン残基を表し、及び/又はX14がロイシン残基若しくはイソロイシン残基を表す、請求項4に記載のペプチド。

請求項6

式(I−1)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドが、SGGIRRCCASGCSSSDIAKLC(配列番号6)、NGGIARRCCASGCSSSDIAKLC(配列番号24)、SGGIARRCCSSGSTSDIAKLC(配列番号26)、SGRGGIARRCCTSGCSSSDIAKLC(配列番号28)、SGRGGIARRCCTSGCSSSDIAKLC(配列番号30)、NARGGIARRCCASGCSSSDIAKLC(配列番号32)、NAHRGIARRCCSTGCSSSDIAKLC(配列番号34)、SAHRGIARRCCSSGCSSSDIAKLC(配列番号36)、VTRSTGIARRCCSTGCSSSDIAKLC(配列番号38)、VTRSTGIARRCCSTGCSSSDIAKLC(配列番号40)、VTRSTGIARRCCSTGCSSSDIAKLC(配列番号42)、VTRTGGIARRCCSTGCSSSDIAKLC(配列番号44)、VTRTGGIARRCCSIGCSSSDIAKLC(配列番号46)、VTRSAGIARRCCSAGCSSSDIAKLC(配列番号48)、VTRSAGIARRCCSAGCSSSDIAKLC(配列番号50)、VTRSAGIARRCCSAGCSSSDIAKLC(配列番号52)、VSRGTGIARRCCSNGCSFSDIAKLC(配列番号54)、APPGIGWRCCSSGCSRSEISRLC(配列番号56)、TSGIARRCCTAGCARSDIAKLC(配列番号58)、又はSYNGMAQYCCSHGSMSELARIC(配列番号60)で示されるものである請求項4又は5に記載のペプチド。

請求項7

式(II)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドが、X21LCGX22X23LX24X25AX26YX27X28CSX29(配列番号4)(II−1)(X21〜X29はシステイン残基以外の任意のアミノ酸残基を表す。)で示されるアミノ酸配列を含むものである請求項1〜6のいずれか1項に記載のペプチド。

請求項8

X21がアルギニン残基若しくはリシン残基を表し、X22がアルギニン残基、アラニン残基、セリン残基、プロリン残基、ヒスチジン残基若しくはチロシン残基を表し、X23がグルタミン酸残基、アルパラギン酸残基若しくはアラニン残基を表し、X24がセリン残基若しくはスレオニン残基を表し、X25がアルギニン残基、リシン残基若しくはセリン残基を表し、X26がイソロイシン残基、バリン残基若しくはロイシン残基を表し、X27がアルギニン残基、セリン残基、グルタミン残基、ヒスチジン残基、グルタミン酸残基若しくはアスパラギン残基を表し、X28がイソロイシン残基若しくはバリン残基を表し、及び/又は、X29がヒスチジン残基、チロシン残基若しくはフェニルアラニン残基を表す、請求項7に記載のペプチド。

請求項9

式(II−1)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドが、TRLCGRELSRAIYRICSH(配列番号8)、VRLCGADLSRAVYRVCSH(配列番号25)、TRLCGAALSRAVYRVCSH(配列番号27)、VRLCGADLSRAVYRVCSH(配列番号29)、RRLCGSELSRAVYSVCSH(配列番号31)、VRLCGADLSRAVYRVCSH(配列番号33)、TRLCGSDLSRALYRVCSH(配列番号35)、TRLCGSDLSRALYRVCSH(配列番号37)、GRLCGAELSRAVYRICSH(配列番号39)、GRLCGAELSRAVYRICSH(配列番号41)、GRLCGAELSRAVYRICSH(配列番号43)、IRLCGPDLSRAVYQICSH(配列番号45)、TRLCGPDLSRAVYQICSH(配列番号47)、TRLCGPDLSRAVYQICSH(配列番号49)、GRLCGAELSRAVYRICSH(配列番号51)、GRLCGAELSRAVYRICSH(配列番号53)、DRLCGADLSRALYHVCSH(配列番号55)、EKLCGHELTKAIYEICSY(配列番号57)、ARLCGHELSSAIYNICSF(配列番号59)、又はGRKLCGYELSRAVYQVCSH(配列番号61)で示されるものである請求項7又は8に記載のペプチド。

請求項10

以下の(a1)〜(a4)から選ばれるいずれかのヘテロ二量体ペプチド。(a1)配列番号6及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むヘテロ二量体ペプチド(a2)配列番号6及び配列番号8に示されるアミノ酸配列(システイン残基を除く)において1若しくは数個アミノ酸欠失置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチド(a3)配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むヘテロ二量体ペプチド(a4)配列番号10に示されるアミノ酸配列(システイン残基を除く)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチド

請求項11

以下の(a1)〜(a4)から選ばれるいずれかのヘテロ二量体ペプチドをコードするDNAを含む遺伝子。(a1)配列番号6及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むヘテロ二量体ペプチド(a2)配列番号6及び配列番号8に示されるアミノ酸配列(システイン残基を除く)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチド(a3)配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むヘテロ二量体ペプチド(a4)配列番号10に示されるアミノ酸配列(システイン残基を除く)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチド

請求項12

以下の(b1)〜(b4)から選ばれるいずれかのDNAを含む遺伝子。(b1)配列番号5及び配列番号7に示される塩基配列を含むDNA(b2)配列番号5及び配列番号7に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチドをコードするDNA(b3)配列番号9に示される塩基配列を含むDNA(b4)配列番号9に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチドをコードするDNA

請求項13

請求項3に記載のヘテロ二量体ペプチドをコードするDNAを含む遺伝子。

請求項14

前記DNAは、次式(I):CCXXXCXXXXXXXXC(配列番号1)(I)(Xはシステイン残基以外の任意のアミノ酸残基を表す。)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドをコードするDNAと、次式(II):CXXXXXXXXXXXC(配列番号2)(II)(Xは前記と同様である。)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドをコードするDNAとを含むものである、請求項13に記載の遺伝子。

請求項15

請求項11〜14のいずれか1項に記載の遺伝子を含む組換えベクター

請求項16

請求項15に記載の組換えベクターを含む形質転換体

請求項17

請求項16に記載の形質転換体を培養し、得られる培養物から、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチドを採取することを特徴とする、当該ヘテロ二量体ペプチドの製造方法。

請求項18

請求項3〜10のいずれか1項に記載のヘテロ二量体ペプチドを含む、ナマコ綱に属する無脊椎動物の放卵又は放精誘起剤。

請求項19

ナマコ綱に属する無脊椎動物に請求項3〜10のいずれか1項に記載のヘテロ二量体ペプチドを投与することを特徴とする、前記動物に放卵又は放精を誘起させる方法。

請求項20

ナマコ綱に属する無脊椎動物に請求項3〜10のいずれか1項に記載のヘテロ二量体ペプチドを投与して前記動物に放卵又は放精を誘起させ、得られた及び精子を用いて人工授精させることを特徴とする、前記動物の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、ナマコに属する無脊椎動物、具体的にはナマコにおける放卵又は放精誘起するペプチドに関する。

背景技術

0002

中国では食用ナマコ類を干して作られる干ナマコは、滋養強壮富む高級食材として取引されてきた。近年の中国の経済発展に伴って国際的に干ナマコ需要急増しており、2013年には年間4億米ドル市場へと成長している。干ナマコは様々な種類の食用ナマコから製造されているが、なかでもマナマコから作られる干ナマコは最高級品として珍重され、江戸時代には日本からの重要な輸出海産物の一つとなっていた。マナマコは極東地域に局在する種であるが、中国沿岸での棲息数は既に激減しており、近年の漁獲は殆ど無い状態と思われる。日本での水揚げ天然資源の保護を考慮して採りすぎない漁業が行われている。こうした中、中国の旺盛な購買意欲は、熱帯地域に生息する食用ナマコ類の漁獲の急増が支えている。

0003

現在、30種以上の熱帯性ナマコ類が食用とされていると考えられるが、その半数は世界自然保護連合により絶滅危惧種(EN(絶滅危機),VU危急区分)に指定されている(IUCN,2013)。マナマコも絶滅危機(EN)に指定されているが、日本国内では、厳格な漁業管理と共に、各地で稚ナマコの生産種苗生産)と漁場への放流種苗放流)が継続的に行われ天然資源の保護・育成が進められている。一方、熱帯では、多くの食用ナマコ種で天然資源の枯渇が懸念されているが、日本のような十分な天然資源の保護・育成事業は行われていない。

0004

種苗生産事業は受精卵を得ることから始まる。しかし、動物は母個体から外科的に取りだした状態では受精能力を持たないことから、受精可能な卵を得るためには母個体の産卵を誘発する必要がある。これまでに動物種に応じて様々な産卵誘発技術が試みられてきたが、加温や干出等の物理化学的刺激主体とした従来の方法では効果的な産卵誘発効果は得られなかった。マナマコにおいては、神経系に含まれる産卵誘発ホルモン「クビフリン」が解明され(特許文献1:特許第5401736号、非特許文献1〜4)、クビフリンを投与して産卵を誘発する技術は、今では全国の主なマナマコ種苗生産施設で欠かせない技術として利用されている。

0005

熱帯圏諸国においても、干ナマコ需要の増加に伴って漁獲が急増している熱帯性食用ナマコ類の天然資源の保護・育成が急務となっているが、漁業管理体制構築や種苗生産・放流事業の活動は日本のように充分には行われてはいない。種苗生産においては効果的な産卵誘発技術が必要であるが、マナマコでのクビフリンの様な実用的な効果を持つ技術は開発されておらず(非特許文献5〜8)、やむを得ず従来の物理化学的刺激法が運用されている。マナマコクビフリンは極めて種特異性が高く、熱帯性ナマコ類には作用しないと考えられており、熱帯性ナマコ類における同様のホルモンの解明が期待されている。

0006

0007

特許第5401736号

先行技術

0008

Neuronal peptides induce oocyte maturation and gamete spawning of sea cucumber,Apostichopus japonicas.,Kato S.,Tsurumaru S.,Taga M.,Yamane T.,Shibata Y.,Fujiwara A.,Yamano K.,Yoshikuni M.,Developmental Biology,326,169−176,2009.
A method for induced spawning of the sea cucumber Apostichopus japonicas by using a bioactive peptide,cubifrin.,Yamano K.,Fujiwara A.,Yoshikuni M.,日本水産学会誌,79,782−784,2013.
In vitro induction of oocyte maturation in the Japanese sea cucumber Apostichopus japonicas by cubifrin and the developmental ability of the eggs.,Yamano K.,Fujiwara A.,Nakamura A.,Yoshikuni M.,Fisheries Science,79,823−832,2013.
Spawning induced by cubifrin in the Japanese common sea cucumber Apostichopus japonicas.,Fujiwara A.,Yamano K.,Ohno K.,Yoshikuni M.,Fisheries Science,76,795−801,2010.
Gonad−stimulating substance−like molecule from the radial nerve of the sea cucumber.,Katow HJ.,Katow T.,Moriyama A.,International Journal of Developmental Biology,83,483−491,2009.
A new method to induce oocyte maturation in holothuroids(Echinodermata).,Leonet A.,Rasolofonirina R.,Walliez R.,Jangoux M.,Eechhaut I.,Invertebrate Reproduction and Development,53,13−21,2009.
Perivisceral coelomic fluid as a mediator of spawning induction in tropical holothurians.,Mercier A.,Hamel J.−F.,Invertebrate Reproduction and Development,41,223−234,2002.
Holothuria n oocyte maturation induced by radial nerve.,Maruyama Y.K.,Biological Bulletin,168,249−262,1985.

発明が解決しようとする課題

0009

本発明は、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するペプチドを提供することを目的とする。

0010

本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ナマコの周口組織から目的のペプチドを単離することに成功し、本発明を完成するに至った。

課題を解決するための手段

0011

すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)次式(I):
CCXXXCXXXXXXXXC (配列番号1) (I)
(Xはシステイン残基以外の任意のアミノ酸残基を表す。)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、
次式(II):
CXXXXXXXXXXXC (配列番号2) (II)
(Xは前記と同様である。)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチドと二量体を形成することによりナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有する、
前記式(I)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
(2)次式(II):
CXXXXXXXXXXXC (配列番号2) (II)
(Xはシステイン残基以外の任意のアミノ酸残基を表す。)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、
次式(I):
CCXXXCXXXXXXXXC (配列番号1) (I)
(Xは前記と同様である。)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチドと二量体を形成することによりナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有する、
前記式(II)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
(3)次式(I):
CCXXXCXXXXXXXXC (配列番号1) (I)
(Xはシステイン残基以外の任意のアミノ酸残基を表す。)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチド、及び
次式(II):
CXXXXXXXXXXXC (配列番号2) (II)
(Xは前記と同様である。)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチド
を含み、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチド。
(4)式(I)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドが、
X1GX2X3X4X5CCX6X7GCX8X9SX10X11X12X13X14C (配列番号3) (I−1)
(X1〜X14はシステイン残基以外の任意のアミノ酸残基を表す。)
で示されるアミノ酸配列を含むものである(1)〜(3)のいずれか1項に記載のペプチド。
(5)X1がグリシン残基アルギニン残基スレオニン残基アラニン残基プロリン残基セリン残基若しくはアスパラギン残基を表し、
X2がイソロイシン残基若しくはメチオニン残基を表し、
X3がアラニン残基若しくはグリシン残基を表し、
X4がアルギニン残基、トリプトファン残基若しくはグルタミン残基を表し、
X5がアルギニン残基若しくはチロシン残基を表し、
X6がアラニン残基、セリン残基若しくはスレオニン残基を表し、
X7がセリン残基、スレオニン残基、イソロイシン残基、アラニン残基、アスパラギン残基若しくはヒスチジン残基を表し、
X8がセリン残基若しくはアラニン残基を表し、
X9がセリン残基、スレオニン残基、フェニルアラニン残基、アルギニン残基若しくはメチオニン残基を表し、
X10がアスパラギン酸残基若しくはグルタミン酸残基を表し、
X11がイソロイシン残基若しくはロイシン残基を表し、
X12がアラニン残基若しくはセリン残基を表し、
X13がリシン残基若しくはアルギニン残基を表し、及び/又は
X14がロイシン残基若しくはイソロイシン残基を表す、(4)に記載のペプチド。
(6)式(I−1)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドが、
SGGIRRCCASGCSSSDIAKLC(配列番号6)、
NGGIARRCCASGCSSSDIAKLC(配列番号24)、
SGGIARRCCSSGSTSDIAKLC(配列番号26)、
SGRGGIARRCCTSGCSSSDIAKLC(配列番号28)、
SGRGGIARRCCTSGCSSSDIAKLC(配列番号30)、
ARGGIARRCCASGCSSSDIAKLC(配列番号32)、
AHRGIARRCCSTGCSSSDIAKLC(配列番号34)、
SAHRGIARRCCSSGCSSSDIAKLC(配列番号36)、
VTRSTGIARRCCSTGCSSSDIAKLC(配列番号38)、
VTRSTGIARRCCSTGCSSSDIAKLC(配列番号40)、
VTRSTGIARRCCSTGCSSSDIAKLC(配列番号42)、
VTRTGGIARRCCSTGCSSSDIAKLC(配列番号44)、
VTRTGGIARRCCSIGCSSSDIAKLC(配列番号46)、
VTRSAGIARRCCSAGCSSSDIAKLC(配列番号48)、
VTRSAGIARRCCSAGCSSSDIAKLC(配列番号50)、
VTRSAGIARRCCSAGCSSSDIAKLC(配列番号52)、
VSRGTGIARRCCSNGCSFSDIAKLC(配列番号54)、
APPGIGWRCCSSGCSRSEISRLC(配列番号56)、
TSGIARRCCTAGCARSDIAKLC(配列番号58)、又は
SYNGMAQYCCSHGSMSELARIC(配列番号60)
で示されるものである(4)又は(5)に記載のペプチド。
(7)式(II)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドが、
X21LCGX22X23LX24X25AX26YX27X28CSX29(配列番号4) (II−1)
(X21〜X29はシステイン残基以外の任意のアミノ酸残基を表す。)
で示されるアミノ酸配列を含むものである(1)〜(6)のいずれか1項に記載のペプチド。
(8)X21がアルギニン残基若しくはリシン残基を表し、
X22がアルギニン残基、アラニン残基、セリン残基、プロリン残基、ヒスチジン残基若しくはチロシン残基を表し、
X23がグルタミン酸残基、アルパラギン酸残基若しくはアラニン残基を表し、
X24がセリン残基若しくはスレオニン残基を表し、
X25がアルギニン残基、リシン残基若しくはセリン残基を表し、
X26がイソロイシン残基、バリン残基若しくはロイシン残基を表し、
X27がアルギニン残基、セリン残基、グルタミン残基、ヒスチジン残基、グルタミン酸残基若しくはアスパラギン残基を表し、
X28がイソロイシン残基若しくはバリン残基を表し、及び/又は、
X29がヒスチジン残基、チロシン残基若しくはフェニルアラニン残基を表す、(7)に記載のペプチド。
(9)式(II−1)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドが、
TRLCGRELSRAIYRICSH(配列番号8)、
VRLCGADLSRAVYRVCSH(配列番号25)、
TRLCGAALSRAVYRVCSH(配列番号27)、
VRLCGADLSRAVYRVCSH(配列番号29)、
RRLCGSELSRAVYSVCSH(配列番号31)、
VRLCGADLSRAVYRVCSH(配列番号33)、
TRLCGSDLSRALYRVCSH(配列番号35)、
TRLCGSDLSRALYRVCSH(配列番号37)、
GRLCGAELSRAVYRICSH(配列番号39)、
GRLCGAELSRAVYRICSH(配列番号41)、
GRLCGAELSRAVYRICSH(配列番号43)、
IRLCGPDLSRAVYQICSH(配列番号45)、
TRLCGPDLSRAVYQICSH(配列番号47)、
TRLCGPDLSRAVYQICSH(配列番号49)、
GRLCGAELSRAVYRICSH(配列番号51)、
GRLCGAELSRAVYRICSH(配列番号53)、
DRLCGADLSRALYHVCSH(配列番号55)、
EKLCGHELTKAIYEICSY(配列番号57)、
ARLCGHELSSAIYNICSF(配列番号59)、又は
GRKLCGYELSRAVYQVCSH(配列番号61)で示されるものである(7)又は(8)に記載のペプチド。
(10)以下の(a1)〜(a4)から選ばれるいずれかのヘテロ二量体ペプチド。
(a1)配列番号6及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むヘテロ二量体ペプチド
(a2)配列番号6及び配列番号8に示されるアミノ酸配列(システイン残基を除く)において1若しくは数個アミノ酸欠失置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチド
(a3)配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むヘテロ二量体ペプチド
(a4)配列番号10に示されるアミノ酸配列(システイン残基を除く)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチド
(11)以下の(a1)〜(a4)から選ばれるいずれかのヘテロ二量体ペプチドをコードするDNAを含む遺伝子。
(a1)配列番号6及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むヘテロ二量体ペプチド
(a2)配列番号6及び配列番号8に示されるアミノ酸配列(システイン残基を除く)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチド
(a3)配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むヘテロ二量体ペプチド
(a4)配列番号10に示されるアミノ酸配列(システイン残基を除く)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチド
(12)以下の(b1)〜(b4)から選ばれるいずれかのDNAを含む遺伝子。
(b1)配列番号5及び配列番号7に示される塩基配列を含むDNA
(b2)配列番号5及び配列番号7に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチドをコードするDNA
(b3)配列番号9に示される塩基配列を含むDNA
(b4)配列番号9に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチドをコードするDNA
(13)前記(3)に記載のヘテロ二量体ペプチドをコードするDNAを含む遺伝子。
(14)前記記DNAは、
次式(I):
CCXXXCXXXXXXXXC (配列番号1) (I)
(Xはシステイン残基以外の任意のアミノ酸残基を表す。)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチドをコードするDNAと、
次式(II):
CXXXXXXXXXXXC (配列番号2) (II)
(Xは前記と同様である。)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチドをコードするDNAと
を含むものである、前記(13)に記載の遺伝子。
(15)前記(11)〜(14)のいずれか1つに記載の遺伝子を含む組換えベクター
(16)前記(15)に記載の組換えベクターを含む形質転換体
(17)前記(16)に記載の形質転換体を培養し、得られる培養物から、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチドを採取することを特徴とする、当該ヘテロ二量体ペプチドの製造方法。
(18)前記(3)〜(10)のいずれか1つに記載のヘテロ二量体ペプチドを含む、ナマコ綱に属する無脊椎動物の放卵又は放精誘起剤。
(19)ナマコ綱に属する無脊椎動物に前記(3)〜(10)のいずれか1つに記載のヘテロ二量体ペプチドを投与することを特徴とする、前記動物に放卵又は放精を誘起させる方法。
(20)ナマコ綱に属する無脊椎動物に前記(3)〜(10)のいずれか1つに記載のヘテロ二量体ペプチドを投与して前記動物に放卵又は放精を誘起させ、得られた卵及び精子を用いて人工授精させることを特徴とする、前記動物の製造方法。

発明の効果

0012

本発明により、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するペプチドが提供される。本発明のペプチドを用いることで、産卵期のナマコを用いて任意の時期に確実に放卵・放精を起こさせることが可能となるために、種苗生産現場での計画的で効率的な受精卵の生産が、安価で簡便で確実に実施することが可能となる。

図面の簡単な説明

0013

第1段目ゲルろ過クロマトグラフィーの結果を示した図である。図中マーカーで示した部分に生理活性を検出した。
第2段目の逆相高速液体クロマトグラフィーの結果を示した図である。図中マーカーで示した部分に生理活性を検出した。
第3段目の逆相高速液体クロマトグラフィーの結果を示した図である。図中マーカーで示した部分に生理活性を検出した。
第4段目の逆相高速液体クロマトグラフィーの結果を示した図である。図中マーカーで示した部分に生理活性を検出した。
第5段目の逆相高速液体クロマトグラフィーの結果を示した図である。図中マーカーで示した部分にに生理活性を検出した。
第5段目の副活性画分の逆相高速液体クロマトグラフィーの結果を示した図である。図中マーカーで示した部分に生理活性を検出した。
複数のナマコ類での相同アミノ酸配列を示す図である。
in vitroでの排卵写真である。

0014

以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。なお、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。

0015

1.本発明のペプチド
本発明者は、ナマコ綱に属する無脊椎動物(いわゆる、ナマコ類)の放卵又は放精活性を有するペプチドとして、種を超えて当該活性を有するヘテロ二量体ペプチドが存在することを見出した。具体的には、ナマコ類が有するインスリンスーパーファミリーシステインモチーフを有するヘテロ二量体ペプチドが、上記放卵又は放精活性を有することを見出した。

0016

本発明のペプチドは、ヘテロ二量体を形成するペプチドであり、その二量体を構成するペプチドは、次式(I):
CCXXXCXXXXXXXXC (I)
(Cはシステイン残基、Xはシステイン残基以外の任意のアミノ酸残基を表す。)
で示されるアミノ酸配列(配列番号1)を含むペプチド、及び次式(II):
CXXXXXXXXXXXC (II)
(C及びXは前記式(I)と同様である。)
で示されるアミノ酸配列(配列番号2)を含むペプチドである。

0017

これらのペプチドが二量体を形成することで、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有することとなる。
従って、上記式(I)で示されるペプチドも、上記式(II)で示されるペプチドとヘテロ二量体を形成して前記放卵又は放精誘起活性を有する限り、本発明に含まれる。同様に、上記式(II)で示されるペプチドも、上記式(I)で示されるペプチドとヘテロ二量体を形成して前記放卵又は放精誘起活性を有する限り、本発明に含まれる。

0018

式(I)及び(II)で示されるアミノ酸配列は、ナマコ類が有するインスリンスーパーファミリーのシステインモチーフである。本明細書において、式(I)で示されるアミノ酸配列を有するペプチドをA鎖、式(II)で示されるアミノ酸配列を有するペプチドをB鎖と呼ぶ。
A鎖は、「CC(任意の3アミノ酸)C(任意の8アミノ酸)C」(計15アミノ酸残基)を含むかたちで構成され、B鎖は「C(任意の11アミノ酸)C」(計13アミノ酸残基)を含むかたちで構成される。

0019

本発明におけるヘテロ二量体ペプチド、すなわち、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチドは、前記A鎖と、前記B鎖とを含むものである。限定はされないが、詳しくは、A鎖とB鎖とにより形成されるヘテロ二量体ペプチドは、A鎖とB鎖との間に2つのジスルフィド架橋を持つとともに、A鎖内に1つのジスルフィド架橋を持つことを特徴とする。

0020

本発明において、「ペプチド」とは、少なくとも2個以上のアミノ酸がペプチド結合によって結合して構成されたものを意味し、オリゴペプチドポリペプチドなどが含まれる。さらに、ポリペプチドが一定の立体構造を形成したものはタンパク質と呼ばれるが、本発明においては、このようなタンパク質も上記「ペプチド」に含まれるものとする。従って、本発明のペプチドは、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質のいずれをも意味し得るものである。また、「任意の」とは、タンパク質を構成する20種類のアミノ酸残基のいずれかの、という意味であり、アラニン(A,Ala)、アルギニン(R,Arg)、アスパラギン(N,Asn)、アスパラギン酸(D,Asp)、システイン(C,Cys)、グルタミン(Q,Gln)、グルタミン酸(E,Glu)、グリシン(G,Gly)、ヒスチジン(H,His)、イソロイシン(I,Ile)、ロイシン(L,Leu)、リシン(K,Lys)、メチオニン(M,Met)、フェニルアラニン(F,Phe)、プロリン(P,Pro)、セリン(S,Ser)、トレオニン(T,Thr)、トリプトファン(W,Trp)、チロシン(Y,Tyr)、バリン(V,Val)のいずれかを表す(カッコ内はアミノ酸の1文字及び3文字表記である。)。さらに、本発明においては、「任意のアミノ酸残基」としては、天然物由来のアミノ酸以外に、非天然アミノ酸人工的に化学合成して得られたものなど)も採用することができ、具体的には、特に限定はされないが、例えば、ノルバリンノルロイシンメチルロイシンアリルグリシンなどが挙げられる。

0021

A鎖のペプチドとしては、具体的には、例えば、次式(I−1):
X1GX2X3X4X5CCX6X7GCX8X9SX10X11X12X13X14C(配列番号3) (I−1)
(X1〜X14はシステイン残基以外の任意のアミノ酸残基を表す。)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチドが挙げられる。
ここで、式(I−1)のアミノ酸配列において、X1〜X14のアミノ酸残基は例えば以下の通りである。
X1:G、R、T、A、P、S又はN
X2:I又はM
X3:A又はG
X4:R、W又はQ
X5:R又はY
X6:A、S又はT
X7:S、T、I、A、N又はH
X8:S又はA
X9:S、T、F、R又はM
X10:D又はE
X11:I又はL
X12:A又はS
X13:K又はR
X14:L又はI
X1〜X14のすべてが上記例示列挙したアミノ酸残基であってもよいし、X1〜X14のうちの一部が上記例示列挙したアミノ酸残基であってもよく、限定はされない。
また、A鎖のペプチドとしては、後述の表1に示されるもの、例えば、
SGGIARRCCASGCSSSDIAKLC(配列番号6)
で示されるものが挙げられる。

0022

他方、B鎖のペプチドとしては、例えば、次式(II−1):
X21LCGX22X23LX24X25AX26YX27X28CSX29(配列番号4) (II−1)
(X21〜X29はシステイン残基以外の任意のアミノ酸残基を表す。)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチドが挙げられる。
ここで、式(II−1)のアミノ酸配列において、X21〜X14のアミノ酸残基は例えば以下の通りである。
X21:R又はK
X22:R、A、S、P、H又はY
X23:E、D又はA
X24:S又はT
X25:R、K又はS
X26:I、V又はL
X27:R、S、Q、H、E又はN
X28:I又はV
X29:H、Y又はF
X21〜X29のすべてが上記例示列挙したアミノ酸残基であってもよいし、X21〜X29のうちの一部が上記例示列挙したアミノ酸残基であってもよく、限定はされない。
また、B鎖のペプチドとしては、後述の表1に示されるもの、例えば、
TRLCGRELSRAIYRICSH(配列番号8)
で示されるものが挙げられる。

0023

本発明においては、以上に述べたA鎖及びB鎖のペプチドは、限定はされないが、C末端アミド化されているものであってもよいし(特にB鎖)、または当該ペプチドを構成するアミノ酸においてアミノ酸置換化学修飾などがなされているものであってもよい。

0024

ここで、本発明において解析された複数のナマコ類での相同アミノ酸配列を図7に示す。図7において、緑背景部分で示したアミノ酸(下線を付したアミノ酸)は、これまでに明らかになった相同遺伝子間で共通するアミノ酸を示す。A鎖、B鎖中のC(システイン:点線で囲ったアミノ酸)の位置がインスリンスーパーファミリー(Insulin superfamily)ペプチドのモチーフとなっている。また、B鎖のC末端(右側)は、G(グリシン)またはアミド化されている。A鎖のN末端側(左側)のアミノ酸数は種によって異なり、例えば、ニセクロナマコでは、SGGIARR(配列番号11)のアミノ酸配列を有し、クロナマコでは、SGRGGIARR(配列番号12)のアミノ酸配列を有し、マナマコでは、VTRTGGIARR(配列番号13)のアミノ酸配列を有する。上記ナマコ類におけるA鎖及びB鎖のアミノ酸配列の対応関係を表1に示す。

0025

さらに、本発明は、以下の(a1)〜(a4)から選ばれるいずれかのヘテロ二量体ペプチドを提供する。
(a1)配列番号6及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むヘテロ二量体ペプチド
(a2)配列番号6及び配列番号8に示されるアミノ酸配列(システイン残基を除く)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチド
(a3)配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むヘテロ二量体ペプチド
(a4)配列番号10に示されるアミノ酸配列(システイン残基を除く)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチド
前記(a2)又は(a4)のヘテロ二量体ペプチドは、前記(a1)又は(a3)のヘテロ二量体ペプチドと機能的に同等なペプチドである。
本発明においては、上記(a1)及び(a2)における「配列番号6及び配列番号8」に代えて、配列番号24及び配列番号25、配列番号26及び配列番号27、配列番号28及び配列番号29、配列番号30及び配列番号31、配列番号32及び配列番号33、配列番号34及び配列番号35、配列番号36及び配列番号37、配列番号38及び配列番号39、配列番号40及び配列番号41、配列番号42及び配列番号43、配列番号44及び配列番号45、配列番号46及び配列番号47、配列番号48及び配列番号49、配列番号50及び配列番号51、配列番号52及び配列番号53、配列番号54及び配列番号55、配列番号56及び配列番号57、配列番号58及び配列番号59、並びに配列番号60及び配列番号61の各組合せ(表1)のうちのいずれかを選択することもできる。

0026

ここで、上記「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」としては、例えば、1〜15個、1〜14個、1〜13個、1〜12個、1〜11個、1〜10個のほか、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個又は1個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列が挙げられ、限定はされないが、当該欠失、置換又は付加の数は、一般的には小さい程好ましい。但し、S−S結合による二量体形成が妨げられないように、各単量体又は二量体ペプチドにおいてシステインモチーフを構成するシステイン残基は、欠失したり置換しないことが好ましい。

0027

前記欠失、置換又は付加等の変異の導入は、ペプチドを遺伝子工学的に作製する場合には、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入キット、例えば、GeneTailorTM Site−Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社)、及びTaKaRa Site−Directed Mutagenesis System(Mutan−K、Mutan−Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて行うことができる。また、上記欠失、置換又は付加の変異が導入されたペプチドであるかどうかは、各種アミノ酸配列決定法、並びに質量分析等による構造解析法などを用いて確認することができる。

0028

また、前記(a1)又は(a3)のヘテロ二量体ペプチドと機能的に同等なペプチドとしては、例えば、配列番号6及び配列番号8(あるいは、先に述べた他のアミノ酸配列の配列番号の組合せ(例えば、配列番号24及び配列番号25など))に示されるアミノ酸配列、又は配列番号10に示されるアミノ酸配列に対して、65%以上の同一性相同性)を有するアミノ酸配列を有し、かつナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するペプチドも挙げられる。さらにこのようなペプチドとしては、配列番号6及び配列番号8(あるいは、先に述べた他のアミノ酸配列の配列番号の組合せ(例えば、配列番号24及び配列番号25など))に示されるアミノ酸配列、又は配列番号10に示されるアミノ酸配列に対して、約65%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性(相同性)を有するアミノ酸配列を有し、かつナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するペプチドが挙げられる。上記相同性数値は一般的に大きい程好ましい。

0029

本発明において、「放卵又は放精誘起活性」とは、配偶子の最終成熟の誘起活性、排卵・排精の誘起活性を意味し、当該活性は、例えば、配偶子の顕微鏡観察法、生殖腺からの排卵・排精の観察法、個体の放卵・放精行動の観察法等により測定することができる。

0030

本発明においては、前記配列番号1〜4に示されるアミノ酸配列を含むペプチド、及び前記(a1)〜(a4)のペプチドは、天然物由来のペプチドであってもよいし、人工的に化学合成して得られたものであってもよく、限定はされない。
天然物由来のペプチドとしては、天然に存在するオリゴペプチド、ポリペプチド及びタンパク質、又はこれらを断片化した状態のもの等が挙げられる。天然物由来のペプチドは、天然のナマコ綱に属する無脊椎動物から公知の回収法及び精製法により直接得てもよいし、又は、公知の遺伝子組換え技術(例えばSambrook J.et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(4th edition),Cold Spring Harbor Laboratory Press(2012))により、当該ペプチドをコードする遺伝子を各種発現ベクター等に組込んで細胞に導入し、発現させた後、公知の回収法及び精製法により得てもよい。

0031

あるいは、市販のキット、例えば、試薬キットTNTTM System(プロメガ)、RTS(フナコシ)等を用いた無細胞タンパク質合成系により当該ペプチドを産生し、公知の回収法及び精製法により得てもよく、限定はされない。
また、化学合成ペプチドは、公知のペプチド合成方法を用いて得ることができる。合成方法としては、例えば、アジド法、酸クロライド法、酸無水物法、混合酸無水物法、DCC法活性エステル法、カルボイミダゾール法及び酸化還元法等が挙げられる。また、その合成は、固相合成法及び液相合成法のいずれをも適用することができる。市販のペプチド合成装置を使用してもよい。合成反応後は、クロマトグラフィー等の公知の精製法を組み合わせてペプチドを精製することができる。

0032

本発明においては、前記配列番号1〜4に示されるアミノ酸配列を含むペプチド、及び前記(a1)〜(a4)のペプチドは、当該ペプチドの誘導体の態様であってもよい。当該誘導体とは、当該ペプチドに由来して調製され得るものをすべて含む意味であり、例えば、構成アミノ酸の一部が非天然のアミノ酸に置換されたものや、構成アミノ酸の一部に化学修飾が施されたもの等が挙げられる。ここで、上記化学修飾としては、特に限定はされないが、例えば、アミド化やピルグルタミル化等の生体内で行われる生体による修飾、極性基非極性基の付加等によるペプチドの物理化学的特性の変更を意図した修飾、ならびに、蛍光標識酵素標識放射線標識、その他のタグ付加等の利用目的による修飾など、様々な修飾が採用され得る。

0033

本発明においては、前記配列番号1〜4に示されるアミノ酸配列を含むペプチド、及び前記(a1)〜(a4)のペプチド(上記誘導体の場合も含む)は、当該ペプチドの塩の態様であってもよい。塩としては、生理学的に許容される酸付加塩又は塩基性塩が好ましい。酸付加塩としては、例えば、塩酸リン酸臭化水素酸硫酸などの無機酸との塩、あるいは酢酸ギ酸プロピオン酸フマル酸マレイン酸コハク酸酒石酸クエン酸リンゴ酸蓚酸安息香酸メタンスルホン酸ベンゼンスルホン酸などの有機酸との塩が挙げられる。塩基性塩としては、例えば、水酸化ナトリウム水酸化カリウム水酸化アンモニウム水酸化マグネシウムなどの無機塩基との塩、あるいはカフェインピペリジントリメチルアミンピリジンなどの有機塩基との塩が挙げられる。

0034

塩は、塩酸などの適切な酸、又は水酸化ナトリウムなどの適切な塩基を用いて調製することができる。例えば、水中、又はメタノールエタノール若しくはジオキサンなどの不活性な水混和性有機溶媒を含む液体中で、標準的なプロトコルを用いて処理することにより調製することができる。

0035

本発明においては、本発明のペプチドを用いるナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精の誘起方法も提供する。同様に、本発明のペプチドを用いるナマコ綱に属する無脊椎動物の製造方法を提供する。当該方法は、被験動物に対して本発明のペプチドを投与する工程を含む方法であり、それ以外にどのような工程を含むものであってもよく、限定はされない。被験動物としては、特に限定はされるものではなく、ナマコ綱に属する無脊椎動物が挙げられる。そのような動物としては、例えば、ニセクロナマコ、ハネジナマコ、イシナマコ、バイカナマコ、チブサナマコ、ヨコスジオオナマコ、トゲクリイロナマコ、クリイロナマコ、ヨコスジナマコ、シカクナマコ、アデヤカバイカナマコ、ジャノメナマコ、アカミシキリ、クロナマコ、マナマコ、ミツマタナマコ、オニイボナマコ等が挙げられ、その他にも、Holothuria graberrima、Parastichopus parvimensis、Australostichopus mollis、Cucumaria geoglana、Abyssocucumis albatrossi、Leptosynapta tenuisなどのナマコを用いることもできる。特に、本発明においては、公知の種々の食用ナマコ種を用いることができる。
本発明のペプチドの投与方法については、例えば、産卵期の成熟親個体の体内空間体腔)内部への注射による投与方法等を適宜適用することができるが、この方法に限定されるものではない。本発明のペプチドの用法、用量については、体内での最終濃度は個体のホルモン感受性性成熟度と理解してもよい)により有効濃度が決まるため、特に限定されるものではないが、例えば10−8M程度の濃度で適宜投与すればよい。

0036

なお、被験動物の生体内に本発明のペプチドを投与する場合は、本発明の誘起剤の有効成分である本発明のペプチド等を直接投与してもよいし、あるいは本発明のペプチドをコードするDNAの状態で導入(遺伝子導入)してもよく、限定はされない。DNAの導入は、リポソーム法(リポプレックス法)、ポリプレックス法、ペプチド法、エレクトロポレーション法電気穿孔法)、及びウイルスベクター法などの公知の各種遺伝子導入方法を用いて行うことができる。

0037

ここで、ナマコ類の放卵又は放精活性を有するペプチドの具体例として、ニセクロナマコ由来のペプチドのアミノ酸配列とそれをコードするcDNAの塩基配列を、以下に示す。

上記アミノ酸配列中、「/」の表記は、「/」で区切られた各領域が、どのような役割等を有する部分であるかを説明するための便宜上の表記である。
まず、N末端側から説明すると、
「MASKIRVFFAAVCVLLLEEAAS」(配列番号63)の部分はシグナル配列であり(活性には不要な取り除かれる部分)、
「TRLCGRELSRAIYRICSH」(配列番号65)の部分はB鎖に相当する部分であり、「GKR」の部分はB鎖とC鎖の切断部分となる配列であり(活性には不要な取り除かれる部分;先頭にGがあるので、直前のB鎖の末端のHはアミド化される)、
「GYPMVDLEEEDFSQELDTEWDEFLQALTGLLESRFAADIESDRYFTIPQ」(配列番号67)はC鎖であり(活性には不要な取り除かれる部分)、
「RFRR」(配列番号69)の部分はC鎖とA鎖の切断部分となる配列であり(活性には不要な取り除かれる部分)、
「SGGIARRCCASGCSSSDIAKLC」(配列番号71)の部分はA鎖に相当する部分である。

0038

上記塩基配列においても、「/」の表記は、上記アミノ酸配列と同様の意味の便宜上の表記である。
まず、5’末端側から説明すると、
「ATGGCGTCCAAAACAATCAGGGTAGTCTTCTTTGCAGCCGTTTGTGTCTTGTTGGTGTTGGAGGAAGCAGCGTCG」(配列番号62)の部分はシグナル配列をコードするcDNAであり、
「ACAAGACTGTGTGGACGTGAACTATCAAGGGCAATTTATCGTATTTGTTCACAT」(配列番号64)の部分はB鎖に相当する部分をコードするcDNAであり、
「GGCAAAAGA」の部分はB鎖とC鎖の切断部分となる配列をコードするcDNAであり、
「GGTTATCCTATGGTCGACCTAGAGGAAGAAGATTTCAGTCAGGAACTAGACACAGAGTGGGATGAATTTTTGGCTCAGGCTTTAACGGGACTTTTAGAATCACGGACGTTTGCGGCAGACATCGAATCCGACAGATACTTTACTATACCTCAG」(配列番号66)はC鎖をコードするcDNAであり、
「AGATTCAGACGA」(配列番号68)の部分はC鎖とA鎖の切断部分となる配列をコードするcDNAであり、
「 AGTGGAGGTATCGCGCGAAGATGTTGTGCTAGTGGATGTAGCTCTTCAGACATTGCCAAATTATGC 」(配列番号70)の部分はA鎖に相当する部分をコードするcDNAである。

0039

2.本発明のペプチドの採取
本発明のペプチドを、ナマコ綱に属する無脊椎動物から採取する方法を以下に説明する。
(1)ナマコ
ナマコは、棘皮動物門ナマコ綱に属する無脊椎動物であり、当該動物は、さらに、無足亜綱、楯手亜綱、樹手亜綱に区分される。このうち殆どの食用ナマコ類は、楯手亜綱に含まれ、楯手亜綱は、さらに、楯手目、板足目に区分される。そして、殆どの食用ナマコ類は、楯手目に含まれる。樹手亜綱には樹手目が含まれ、無足亜綱には無足目が含まれる。
本発明においては、楯手目内のクロナマコ科、シカクナマコ科に含まれる食用ナマコ類、及び樹手目キンコ科に含まれる食用ナマコ類が好ましい。

0040

クロナマコ科には、クロナマコ属、クリイロナマコ属、ジャノメナマコ属などが含まれ、本発明においては、これらの属に属するナマコを使用することができる。
クロナマコ科に含まれ、本発明において使用可能な食用ナマコを以下に示す。
クロナマコ属:イシナマコ、ハネジナマコ、チブサナマコ、クロナマコ、クロホシアカナマコ、アカミシキリ、ニセトラフナマコ、ニセクロナマコ、テツイロナマコ、イソナマコ、トラフナマコ、エクレアナマコ、ミナミフジナマコ、イサミナマコなど
クリイロナマコ属:トゲクリイロナマコ、クリイロナマコ、ヨコスジナマコなど
ジャノメナマコ属:ジャノメナマコ、クロエリナマコ、チズナマコなど

0041

シカクナマコ科には、シカクナマコ属、マナマコ属、バイカナマコ属などが含まれ、本発明においては、これらの属に属するナマコを使用することができる。
シカクナマコ科に含まれ、本発明において使用可能な食用ナマコを以下に示す。
シカクナマコ属:ヨコスジオオナマコ、シカクナマコ、タマナマコ、オニイボナマコなど
バイカナマコ属:バイカナマコ、アデヤカバイカナマコなど
マナマコ属:マナマコ
また、ミツマタナマコ科に属するナマコとして、ミツマタナマコなどが挙げられる。
さらに、循手目内に属するナマコとして、Holothuria graberrima、Parastichopus parvimensis、Australostichopus mollisなどが挙げられる。

0042

樹手目キンコ科には、キンコ属などが含まれ、本発明においては、これらの属に属するナマコを使用することができる。
キンコ科に含まれ、本発明において使用可能な食用ナマコを以下に示す。
キンコ属:キンコなど
また、樹手目には、Cucumaria geoglana、Abyssocucumis albatrossiなどが含まれる。
さらに無足目には、Leptosynapta tenuisなどが含まれる。
(2)抽出
生きたナマコの口器部を含む頭部分を切断後、直ちに液体窒素凍結し、予冷したアセトン液などの中に浸漬し、超低温冷凍庫(例えば−75℃)で保存する。保存中に、凍結試料中の水分はアセトンに置換されるので、試料中の水分がなくなるまで適宜アセトンを交換する。試料中の水分が抜けた後、減圧乾燥機中でアセトンを気化させて除去する。生物組織超低温下で凍結保存中に、アセトンのような非水性溶媒で水分を置換除去することで、その後の摘出操作中の核酸・ペプチドの分解を抑えることが出来る。
次に、解剖顕微鏡を用いて乾燥試料から神経組織(例えば放射神経組織)を摘出する。摘出した乾燥放射神経組織は、分解されていない無傷の核酸・ペプチドの抽出に使用することが可能である。神経組織試料に適量の酢酸を加えてホモゲナイズし、ホモゲナイズした試料液超遠心分離操作し、その上清部分を得る。
得られた超遠心上清を限外ろ過装置で処理し、分子量10,000以下の画分を得て精製用試料とする。あるいは、超遠心上清をゲルろ過クロマトグラフィーで処理し、タンパク質・塩類を除去した画分を得て精製用試料とする。

0043

(3)精製
本発明のペプチドの精製は、タンパク質精製に一般に使用される各種クロマトグラフィーを採用することができる。例えば、ゲルろ過クロマトグラフィーにより、精製用試料からタンパク質等の高分子成分を除去する。或いは、分画分子量10,000の限外ろ過により高分子成分を除去する。本発明のペプチド成分は、分子量10,000以下の画分(低分子活性画分)に回収される。
次に、高速液体クロマトグラフ装置を用いた高速液体クロマトグラフィーにより低分子活性画分を段階的に分離する。クロマトグラフィーで分画された画分について、放卵又は放精活性を測定し、活性が認められた画分について、精製工程を繰り返す。通常は、数回(2回〜5回)程度のクロマトグラフィーで相当程度に精製されたペプチド成分を得ることができる。クロマトグラフィーとしては、逆相クロマトグラフィーイオン交換クロマトグラフィーアフィニティクロマトグラフィー等が挙げられ、これらを単独で、又は適宜組み合わせて利用することができる。

0044

(3)本発明のペプチドの構造解析
本発明のペプチドの構造解析は、精製されたペプチド成分を、その存在量に応じて、プロテインシーケンサー若しくは質量分析装置、又はこれら二つの装置を併用して、アミノ酸配列構造を解析する。得られたアミノ酸配列情報を元に、材料となるペプチドを化学合成し、そのペプチドを用いて人工ホルモンを作製する。

0045

3.DNA、遺伝子、組換えベクター、形質転換体
(1)DNA、遺伝子
本発明においては、前記(a1)〜(a4)のいずれかのペプチドをコードする塩基配列を含むDNAも包含される。
具体的には、以下の(a1)〜(a4)から選ばれるいずれかのヘテロ二量体ペプチドをコードするDNAを含む遺伝子も包含される。
(a1)配列番号6及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むヘテロ二量体ペプチド
(a2)配列番号6及び配列番号8に示されるアミノ酸配列(システイン残基を除く)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチド
(a3)配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むヘテロ二量体ペプチド
(a4)配列番号10に示されるアミノ酸配列(システイン残基を除く)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチド
本発明においては、上記(a1)及び(a2)における「配列番号6及び配列番号8」に代えて、配列番号24及び配列番号25、配列番号26及び配列番号27、配列番号28及び配列番号29、配列番号30及び配列番号31、配列番号32及び配列番号33、配列番号34及び配列番号35、配列番号36及び配列番号37、配列番号38及び配列番号39、配列番号40及び配列番号41、配列番号42及び配列番号43、配列番号44及び配列番号45、配列番号46及び配列番号47、配列番号48及び配列番号49、配列番号50及び配列番号51、配列番号52及び配列番号53、配列番号54及び配列番号55、配列番号56及び配列番号57、配列番号58及び配列番号59、並びに配列番号60及び配列番号61の各組合せ(表1)のうちのいずれかを選択することもできる。

0046

また、本発明は、以下の(b1)〜(b4)から選ばれるいずれかのDNAを含む遺伝子も包含される。
(b1)配列番号5及び配列番号7に示される塩基配列を含むDNA
(b2)配列番号5及び配列番号7に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチドをコードするDNA
(b3)配列番号9に示される塩基配列を含むDNA
(b4)配列番号9に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチドをコードするDNA

0047

さらに、本発明においては、前述したヘテロ二量体ペプチドをコードするDNAを含む遺伝子、すなわち、前記式(I)で示されるアミノ酸配列(配列番号1)又はその具体例である前記式(I−1)で示されるアミノ酸配列(配列番号3)を含むペプチド、及び前記式(II)で示されるアミノ酸配列(配列番号2)又はその具体例である前記式(II−1)で示されるアミノ酸配列(配列番号4)を含むペプチドを含み、かつ、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起活性を有するヘテロ二量体ペプチドをコードするDNAを含む遺伝子も包含される。
当該DNAは、詳しくは、例えば、前記式(I)で示されるアミノ酸配列(配列番号1)又はその具体例である前記式(I−1)で示されるアミノ酸配列(配列番号3)を含むペプチドをコードするDNAと、前記式(II)で示されるアミノ酸配列(配列番号2)又はその具体例である前記式(II−1)で示されるアミノ酸配列(配列番号4)を含むペプチドをコードするDNAとを含むものが挙げられる。

0048

本発明において、前記DNAは、本発明のペプチドをコードする塩基配列からなるDNAであってもよいし、あるいは、当該塩基配列を一部に含み、その他に遺伝子発現に必要な公知の塩基配列(転写プロモーターSD配列、Kozak配列、ターミネーター等)を含むDNAであってもよく、限定はされない。なお、本発明のペプチドをコードする塩基配列では、コドンの種類は限定されず、例えば、転写後、ナマコ綱に属する無脊椎動物において一般的に使用されているコドンを用いたものであってもよいし、大腸菌酵母等の微生物や、植物等において一般的に使用されているコドンを用いたものであってもよく、適宜選択又は設計することができる。

0049

ここで、「ストリンジェントな条件」とは、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよく、「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するDNAが効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度等の複数の要素が考えられ、当業者であればこれらの要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。

0050

上記以外にハイブリダイズが可能なDNAとしては、FASTA、BLASTなどの相同性検索ソフトウェアにより、デフォルトパラメーターを用いて計算したときに、配列番号5及び配列番号7に示される塩基配列を含むDNA又は配列番号9に示される塩基配列を含むDNA、あるいは、配列番号6及び配列番号8(あるいは、先に述べた他のアミノ酸配列の配列番号の組合せ(例えば、配列番号24及び配列番号25など))に示されるアミノ酸配列を含むヘテロ二量体ペプチドをコードするDNA又は配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むヘテロ二量体ペプチドをコードするDNAと、約50%以上の相同性(同一性)を有するDNAや、さらには約80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の相同性(同一性)を有するDNAを挙げることができる。
但し、前記DNAの塩基配列においては、Cysモチーフを構成するシステイン残基をコードするコドンは、他のアミノ酸残基へのコドンに変異しないことが好ましい。

0051

(2)組換えベクター
本発明においては、適当なベクターに上記本発明のDNAを連結(挿入)することにより組換えベクターを得る。組換えベクターを得る方法は公知である(Sambrook J.et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(4th edition),Cold Spring Harbor Laboratory Press(2012))。本発明のDNAを挿入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミドDNA、ファージDNA、ウイルス等が挙げられる。

0052

プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミドなどが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ等が挙げられる。またウイルスとしてはアデノウイルスレトロウイルスなどが挙げられる。
本発明の組換えベクターには、プロモーター、本発明のDNAのほか、所望によりエンハンサーなどのシスエレメントスプライシングシグナルポリ付加シグナルリボソーム結合配列(SD配列)、選択マーカー遺伝子レポーター遺伝子などを連結することができる。なお、選択マーカー遺伝子としては、例えばジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子ネオマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。レポーター遺伝子としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)又はその変異体(EGFP、BFP、YFP等の蛍光タンパク質)、ルシフェラーゼアルカリフォスファターゼ、LacZ等の遺伝子が挙げられる。

0053

(3)形質転換体及び培養
本発明においては、上記本発明の組換えベクターを、目的遺伝子が発現し得るように宿主中に導入して得ることができる形質転換体も包含される。
形質転換に使用する宿主としては、目的の遺伝子を発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、細菌(大腸菌、枯草菌等)、酵母、動物細胞(COS細胞CHO細胞等)、昆虫細胞又は昆虫が挙げられる。ヤギ等の哺乳動物を宿主として使用することも可能である。宿主への組換えベクターの導入方法は公知である(Sambrook J.et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(4th edition),Cold Spring Harbor Laboratory Press(2012))。

0054

細菌を宿主とする場合は、本発明の組換えベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合配列、本発明のDNA、転写終結配列を含めることができる。細菌としては、大腸菌(Escherichia coli)などが挙げられる。プロモーターとしては、例えばlacプロモーターなどが用いられる。細菌へのベクター導入法としては、公知の各種導入方法、例えばカルシウムイオン法等が挙げられる。
酵母を宿主とする場合は、例えばサッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などが用いられる。この場合、プロモーターとしては酵母中で発現できるものであれば特に限定されず、例えばgal1プロモーター等が挙げられる。酵母へのベクター導入法としては、例えばエレクトロポレーション法、スフェロプラスト法等が挙げられる。
そして、前記形質転換体を培養し、その培養物から放卵または放精を誘起するペプチドを採取する。「培養物」とは、(a)培養上清、(b)培養細胞若しくは培養菌体又はその破砕物のいずれをも意味するものである。

0055

培養後、目的ペプチド菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することによりペプチドを抽出する。また、目的ペプチドが菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。その後、ペプチドの単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー疎水性クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、目的のペプチドを単離精製することができる。

0056

4.ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起剤
本発明のペプチドは、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起のための有効成分として有用である。

0057

(1)in vitroでの排卵誘発
ナマコの産卵期において、性成熟した親個体から外科的に摘出した卵巣海水または人工海水に浸し、合成ホルモンを加えて自然海水温程度の温度下で培養すると、1時間程度で卵巣からの排卵現象を誘起することができる。精巣の場合は、海水中で精巣組織上皮層に傷を付けるだけで傷口から精子が漏れ出してくる。海水に触れた精子は間もなく遊泳を開始する。

0058

(2)in vivoでの放卵または放精の誘発
ナマコの産卵期において、性成熟した親個体に、本発明のペプチドを投与して海水中に静置すると、1時間程度で雄では放精行動、雌では放卵行動を誘起することができる。
本発明のペプチドは、種の違いを越えて広くナマコ類の産卵を誘発する生理作用を持つ。従って、採取されたペプチドが由来するナマコの種類に限定されず、他種のナマコにも適用することができる。
他種への適用として、例えばニセクロナマコ由来のペプチドを、クロナマコ、イシナマコ、マナマコなどに使用することができ、ハネジナマコ由来のペプチドを、ニセクロナマコ、イシナマコなどに使用することができる。

0059

(3)用法
本発明の誘起剤の投与量は、被験動物(ナマコ綱に属する無脊椎動物)の年齢性別、体重などにより異なっていてもよい。通常、成体一匹あたり、一回につき体内最終濃度として10−11M〜10−8Mの範囲で投与することができるが、限定はされない。本発明においては、10−8M程度でよい。
例えば注射剤により投与する場合は、ナマコ綱に属する無脊椎動物に対し、1回の投与において成体一匹(1000g体重あたり)、10−8〜10−5Mの濃度の注射用高濃度ペプチド溶液1mlを投与することができる。投与は1回のみでもよい。投与の形態としては、体腔内注射、皮下注射などが挙げられるが、好ましくは体腔内注射である。また、注射剤は、場合により、非水性の希釈剤(例えばポリエチレングリコールオリーブ油等の植物油、エタノール等のアルコール類など)、懸濁剤あるいは乳濁剤として調製することもできる。そのような注射剤は、フィルターによる濾過滅菌殺菌剤の配合等により無菌化することもできる。注射剤は、用時調製の形態として製造することができる。すなわち、凍結乾燥法などによって無菌固体組成物とし、使用前に無菌の注射用蒸留水または他の溶媒に溶解して使用することができる。

0060

5.ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起用キット
本発明においては、構成成分として本発明のペプチドを含むことを特徴とする、ナマコ綱に属する無脊椎動物における放卵又は放精誘起用キットも提供される。本発明のキットは、ナマコ綱に属する各動物の放卵又は放精の誘起を行うことが可能である。
本発明のキットは、本発明のペプチドの他に、各種バッファー滅菌水操作マニュアル説明書)等を含んでいてもよく、限定はされない。

0061

6.棘皮動物(ナマコ綱に属する無脊椎動物)の生産方法
本発明においては、ナマコ綱に属する無脊椎動物における産卵期において、性的に成熟した雄ナマコ、雌ナマコに本発明のペプチドを投与することで、放精・放卵を誘起することができる。得られた精子・卵を用いて人工授精させることで、受精卵の発生を開始させることができる。受精卵を飼育することにより、養殖用または種苗放流用の稚ナマコが得られる。
本発明のペプチドを摘出した生殖巣に作用させるには、産卵期に性成熟した親個体から摘出した卵巣を用いて、本発明のペプチドとともに培養する。これにより排卵を誘起することができる。排卵された卵に精子を人工授精することで、受精卵の発生を開始させることができる。上記と同様に受精卵を飼育して、養殖用または種苗放流用の稚ナマコを得ることができる。

0062

以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。

0063

ペプチドの単離・精製
以下の手順で、活性のあるペプチドを抽出、精製した。

0064

1.抽出
(i)生きたナマコの口器部を含む頭部分を切断後、直ちに液体窒素で凍結し、−75度で予冷した100%アセトン液中に浸漬し、超低温冷凍庫(−75度)で保存した。
(ii)試料中の水分がなくなるまで適宜アセトンを交換し、試料中の水分が抜けた後、減圧乾燥機中、アセトンを気化させて除去した。
(iii)解剖顕微鏡を用いて乾燥試料から神経組織を高純度に摘出した。
(iv)摘出した乾燥神経組織は、分解されていない無傷の核酸・ペプチドの抽出に使用した。((i)〜(iv):有機溶媒置換凍結乾燥法)
(v)神経組織試料に適量の2規定酢酸を加えてポリトロンなどの試料破砕装置を用いてホモゲナイズした。
(vi)ホモゲナイズした試料液を、超遠心分離操作(100,000×g,1時間)の後、超遠心上清部分を得た。
(vii)超遠心上清を凍結乾燥し、神経抽出物乾燥標品として保存した。
(viii)神経抽出物乾燥標品を人工海水に溶解し、限外ろ過装置(ミリポア社など)で処理し、分子量10,000以下の画分を得て精製用試料とした。または、神経抽出物乾燥標品を人工海水に溶解し、ゲルろ過クロマトグラフィーで処理し、タンパク質・塩類を除去した画分を得て精製用試料とする。

0065

2.クロマトグラフィー精製
(i)第1段ゲル濾過クロマトグラフィー
人工海水で平衡化したHiLoad Superdex 30カラム内径26mm xカラム長600mm)を用いたゲルろ過クロマトグラフィーにより、精製用試料からタンパク質等の高分子成分を除去した。或いは、ザルトリウス社Vivaflow 50(分画分子量10,000)を用いた限外ろ過により高分子成分を除去した。本発明のペプチド成分は、分子量10,000以下の画分(低分子活性画分)に回収された。
(ii)第2段高液体クロマトグラフィー
InertSustain C18カラム(内径10mm x 長さ250mm)を用いてアセトニトリルの直線濃度勾配(4−40%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸流速毎分3ml)による逆相液体クロマトグラフィーによりホルモン活性画分を分離した。
(iii)第3段高速液体クロマトグラフィー:
InertSustain C18カラム(内径4.6mm x 長さ250mm)を用いてアセトニトリルの直線濃度勾配(4−32%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸、流速毎分1ml)による逆相液体クロマトグラフィーによりホルモン活性画分を分離した。
(iv)第4段高速液体クロマトグラフィー:
Develosil RPAQUEOUS−AR−3カラム(内径4mm x 長さ150mm)を用いてアセトニトリルの直線濃度勾配(4−16.8%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸、流速毎分0.6ml)による逆相液体クロマトグラフィーによりホルモン活性画分を分離した。
(v)第5段高速液体クロマトグラフィー:
Develosil RPAQUEOUS−AR−3カラム(内径4mm x 長さ150mm)を用いてアセトニトリルの直線濃度勾配(4−20.8%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸、流速毎分0.1ml)による逆相液体クロマトグラフィーにより主活性画分を分離した。
(vi)第6段高速液体クロマトグラフィー:
Develosil RPAQUEOUS−AR−3カラム(内径1.5mm x 長さ250mm)を用いてアセトニトリルの直線濃度勾配(X−XX%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸、流速毎分0.1ml)による逆相液体クロマトグラフィーにより副活性画分を分離した。
クロマトグラフィーの実施例を図1図6に示す。

0066

3.ホルモン成分の構造解析
(i)逆相高速液体クロマトグラフィーにより得られた精製ホルモン成分を、プロテインシーケンサー(ABI社Procise 492cLC)および質量分析装置(日立NanoFrontier L、BrukerDaltonics REFREX III)を用いて、そのアミノ酸配列構造を解析した。
(ii)得られたアミノ酸配列情報を元に、材料となるペプチドを化学合成し、そのペプチドを用いて人工ホルモンを作製した。
化学合成したニセクロナマコインスリン様ペプチドA鎖(ニセクロA鎖という)およびB鎖(ニセクロB鎖という)をそれぞれ20mM酢酸で溶解し、5mMペプチド溶液を調製した。二量体の形成には、Methodsin Enzymology(289巻 639−646頁)等の方法を参考にした。
5mMニセクロA鎖溶液320μl(1.6μmole)、5mMニセクロB鎖溶液240μl(1.2μmole)、1Mジチオスレイトール水溶液144μl、水660μlを50ml遠沈管中で混ぜ合わせた後、1Mグリシンバッファ(pH10.5)72μlを加えて溶液を塩基性として、4℃で17日間、空気酸化を行なった。反応の進行をHPLCを用いて確認し、原料ペプチドピークが減少し、目的成分および副生成物のピークの出現が確認されたところで4M酢酸を加えて反応液酸性として反応を停止した。反応物をHPLCにより精製し、合成ニセクロナマコインスリン様ペプチド0.63mg(0.15μmole)を得た。

0067

卵巣に対する活性試験
産卵期のナマコ類の卵巣内部には、受精能を持たない未成熟卵母細胞が、一つずつ個別に濾胞細胞層に包まれた状態で存在する。未成熟の卵母細胞内には、大きな1個の核(卵核胞)が存在する。これらの卵母細胞は、産卵誘発ホルモンの作用により受精可能な卵細胞へと変化すると同時に排卵される。この変化の過程卵成熟と呼ぶ。このとき、核膜消失により卵核胞が見えなくなる(卵核胞崩壊)。
産卵誘発ホルモン活性の有無は、未成熟な卵母細胞に排卵と卵核胞崩壊を誘起するか否かで判定することが出来る。

0068

1.方法
(i)産卵期の性成熟した雌個体から、卵巣の一部または全部を外科的に摘出し、室温あるいは自然海水温度調温した自然海水または人工海水中に保存した。
(ii)解剖などを用いて、摘出した卵巣から実験目的に適した大きさの卵巣断片を調製した。血球凝集反応板(トミー精工)や24穴マルチウェルプレート等を用いてホルモンとの培養試験を行う場合には、5mm長程度の卵巣片を調製する。
(iii)合成ホルモンを段階的に希釈して種々の濃度となるように海水または人工海水に溶かしたものを血球凝集反応板の各ウェルに200マイクロリットル程度に満たし、卵巣片を浸して2時間培養した。ホルモン濃度は、10−7M〜10−12M程度の範囲となるように調整した。培養温度は、産卵期の自然海水温度(20℃)で行った。

0069

2.結果
(i)合成ホルモンと共に培養することで、産卵期の発達した卵巣片に排卵現象を誘起できた。排卵現象は、濾胞細胞が離脱したの卵が卵巣片から絞り出されるか、または、こぼれ落ちて来ることで確認した。また、排卵された卵は卵核胞崩壊(核膜の消失)を起こしていることを確認した。
in vitroにおける合成ホルモンによる排卵の誘発試験の結果を、下記表に示した。また、in vitroでの排卵の写真を図8に示した。

0070

0071

ここで、上記表中、「日付」欄は排卵誘発実験実施日を示す。「ホルモン」欄は合成したニセクロナマコホルモン(表中では「ニセクロ」)、ハネジナマコホルモン(表中では「ハネジ」)を示す。「卵巣」欄は、排卵誘発試験に用いたナマコ種名を示し(表中、「クロ」はクロナマコ、「ニセクロ」はニセクロナマコ)、ナマコ種名の後のA〜Eは、ナマコ個体識別名を示す。
また、「ホルモン濃度」欄の各数値は、排卵度を、4(100%排卵)〜0(0%排卵)の範囲で示したものであり、各行は同時に行った試験区(N=3〜5)の排卵度の平均値である。その結果、ニセクロナマコ、ハネジナマコの合成ホルモンが、異なる種の卵巣に作用することが示された。
マナマコでは、排卵を誘発するクビフリンの有効濃度(ED50など)は個体差が大きいことが知られている。これは同一時期であっても、個体間で卵巣の発達の程度が異なることに因ると思われる。ニセクロナマコでも同様の傾向が見られた。

0072

(ii)卵巣片中の全ての卵数に対する排卵された卵数の割合を排卵率と定義し、ホルモン濃度と排卵率との関係を検討した。次に、ホルモンのED50(半数有効濃度)等の有効濃度の指標を求めた。
その結果、ホルモンに反応して排卵が起きる場合の、用いたホルモンの最高濃度はたかだか10−8Mであった。よりホルモン感受性の高い卵巣では、10−12M以下のホルモン濃度でも排卵が誘起された。

0073

個体に対する活性試験
本実施例では、産卵期の性成熟した雄または雌個体の体腔内部に合成ホルモンを投与することで放精行動または放卵行動を誘起した。以後、これらのどちらかまたは両方を意味する場合に産卵行動と言う場合がある。
ニセクロナマコ、ハネジナマコ及びマナマコの合成ホルモンを作製し、様々な種のナマコに投与して産卵行動の誘発を試験した。合成ホルモンと試験に供するナマコの種の組み合わせを変えることで、合成ホルモンの汎用性と種毎の感受性を求めることができる。そこで本実施例では、ニセクロナマコ、ハネジナマコ及びマナマコ由来のホルモン(合成ペプチド)を用いて、他種ナマコの放精・放卵行動を誘起した。
なお、ニセクロナマコの合成ホルモンは、配列番号6で示されるアミノ酸配列を含むペプチドと、配列番号8で示されるアミノ酸配列を含むペプチドとを含む、ヘテロ二量体ペプチドであり、
ハネジナマコの合成ホルモンは、配列番号24で示されるアミノ酸配列を含むペプチドと、配列番号25で示されるアミノ酸配列を含むペプチドとを含む、ヘテロ二量体ペプチドであり、
マナマコの合成ホルモンは、配列番号42で示されるアミノ酸配列を含むペプチドと、配列番号43で示されるアミノ酸配列を含むペプチドとを含む、ヘテロ二量体ペプチドである。

0074

1.方法
産卵期の性成熟した様々な種のナマコ個体(ニセクロナマコなど)の体腔内に、各種ナマコ(前述したニセクロナマコ、ハネジナマコ及びマナマコ)の合成ホルモンを溶かした海水(ホルモン液)を、注射法で投与した。また、体腔内での最終濃度を様々に変えて合成ホルモンを投与することで、ホルモンの有効投与量を求めることができる。ナマコの体重を測定し、同重量の水に対するホルモン量を定めることで、体液中のホルモン濃度を調整した。

0075

2.結果
(i)体腔内のホルモンの最終濃度(体内最終濃度)は10−9Mであり、たかだか10−8M濃度を超えない濃度で人為的に産卵行動を誘起することができた。
(ii)合成ニセクロナマコホルモンで、ニセクロナマコ、イシナマコ、マナマコ、ヨコスジオオナマコ、トゲクリイロナマコの産卵行動を誘起することができた。
(iii)合成ハネジナマコホルモンで、ニセクロナマコ、イシナマコ、マナマコ、ヨコスジオオナマコ、トゲクリイロナマコの産卵行動を誘起することができた。
(iv)合成マナマコホルモンで、マナマコ、ヨコスジオオナマコ、トゲクリイロナマコの産卵行動を誘起することができた。
以上の結果をまとめたものを、下記表3に示した。

0076

0077

種苗生産
1.方法
(i)産卵期に捕獲したニセクロナマコ個体から部分切開法により得た生殖腺の一部の顕微鏡観察により、精巣・卵巣の区別を行い雌雄判定を行った。
(ii)卵巣の場合は、卵巣内の卵母細胞の平均卵径を測定し、その大きさから卵巣の発達度を判定した。
(iii)精巣の場合は、精巣片の切断面から泳ぎ出す精子の有無及びその遊泳の程度から精巣の発達度を判定した。
(iv)発達度の高い生殖腺を持つ雌雄個体に、体重に合わせて適当量のホルモン液を投与することで、およそ1時間程度で産卵行動を誘起した。
(v)雌雄の個体数を調整して、同時に同じ水槽内で産卵誘発を行うことができる。雄の個体数を調節することで至適な精子濃度に調整する事ができる。

0078

2.結果
雌雄を別々の水槽で産卵誘発を行い、雌が放卵した水槽内へ、雄が放精した水槽の海水(精子海水)を適当量混ぜることで、受精に至適な精子濃度を得た。
雌個体から外科的に摘出した卵巣をホルモン処理して排卵を誘発し、排卵された卵細胞に適当量の精子海水を加えることでin vitroで人工授精することができた。

0079

cDNAのクローニング
1.ニセクロナマコ神経totalRNAの抽出
1−1.RNA抽出用ニセクロナマコ周口神経組織採集
採取後すみやかに液体窒素で凍結したニセクロナマコ頭部を冷却した(−75℃)アセトンに1週間浸漬、冷却した(−75℃)エタノールに1週間浸漬したのち、液中から取り出したニセクロナマコ頭部を凍結乾燥した。
乾燥したニセクロナマコ頭部から実体顕微鏡を用いて神経組織を採取した。

0080

1−2.ニセクロナマコ周口神経組織からtotalRNA抽出
前記1−1のニセクロナマコ神経組織にTRIzol(Invitrogen,現Thermofisher scientific)を加えてヒスコトロンにより破砕、クロロホルムを加えて激しく攪拌後、遠心分離により二層に分離し、上層のRNA含有画分を分画した。RNA画分にイソプロパノールを加えてRNAを沈殿させる。遠心分離により沈殿と上清に分画。上清を除去した後、75%EtOHで洗浄した。得られた沈殿をスピンカラム(AllPrepDNA/RNA micro kit(QIAGEN)のRNA精製プロトコル)を用いて精製した。

0081

2.ニセクロナマコインスリン様ペプチドの遺伝子断片情報の取得
2−1.ニセクロナマコ周口神経組織mRNA逆転写
前記1−2で精製したニセクロナマコ周口神経由来totalRNA(0.19μg/4μl)をPrimeScript II 1st strandcDNASynthesis kit(takara bio)を用いて標準プロトコル1/2量で逆転写した。逆転写primerとしてOligo dT Primerを使用した。

0082

2−2.ニセクロナマコ周口神経cDNAからインスリン様ペプチド部分配列のPCR増幅
ハネジナマコインスリン様ペプチド配列を元に作成したプライマーを用いてニセクロcDNAよりニセクロインスリン様ペプチドのクローニングを試みた。EXTaq(takara bio)を使用し反応系30μl系,94℃ 2min(98℃ 10s,45℃ 30s,72℃ 30s,30cycles),72℃ 10sで増幅した。PCR増幅産物はスピンカラム(EZ−10 spin columnPCRproducts purification kit)を用いて精製した。

0083

使用プライマー
Hs−B34s−F22:TATCGTGTATGTTCACACGGCA(配列番号16)
Hs−A43s−R25: AGCATAATTTGGCAATATCTGAGGA(配列番号17)

0084

2−3.カナマイシン耐性ベクターへの増幅断片へのライゲーションおよび形質転換
精製した増幅断片をDynaExpress TAPCRCloninng kit(pTAKN−2)(BioDynamics Laboratory)を利用し、カナマイシン耐性ベクターにライゲーションした。反応は標準プロトコルの1/2量の5μl系で行なった。16℃ 30minでインキュベートした後、ライゲーションにより得られたプラスミドの導入をヒートショックによる形質転換をコンピテントセル化した大腸菌(DH5α)(TOYOBO)を用いて行なった。形質転換した大腸菌をLB寒天培地播種したのち、37℃一晩培養した。

0085

2−4.コロニーPCR
前項5.で37℃一晩培養したLB寒天培地から大腸菌コロニーをTEバッファ20μlに懸濁、95℃ 3min加熱処理した溶液を鋳型としてプラスミドベクター由来の配列のシーケンスプライマー(M13 primer)を用いてコロニーPCR(Prime Star(takara bio),反応系100μl系,98℃ 10s,55℃ 5s,72℃ 40s,30cycles)を行なった。目的のニセクロナマコ配列断片を含む増幅産物をスピンカラム(EZ−10 spin column PCR products purification kit)により精製した。

0086

2−5.ダイターミネーター法によるDNAシークエンシング(BigDye反応)
前記2−4で精製したコロニーPCR産物配列決定をダイターミネター法(BigDye Terminator v3.1Cycle Sequencing Kit)により行った。M13primer(Forward primer)をシーケンスプライマーとして反応系10μl系(BigDyeの量標準の1/8量),94℃ 1min,(94℃ 5s,50℃ 10s,72℃ 3min,30cycles)でシーケンス反応を行った。シーケンス反応後、エタノール沈殿による精製を行ない、キャピラリーDNAシーケンサー(ABI3500xlもしくはABI3130xl)により、下記のとおり、ニセクロナマコインスリン様ペプチド遺伝子断片(配列番号18)のDNA情報を得た。

0087

0088

3.ニセクロナマコインスリン様ペプチド遺伝子の5’RACEによる5’側配列の決定
3−1.ニセクロナマコ周口神経の5’RACE Libraryの作成
SMARTer RACE 5’/3’kitを使用してニセクロ周口神経5’RACE Libraryを作成した。(標準プロトコルの1/2量)。作成した5’RACE Libraryを5.5倍希釈して保存した。

0089

3−2.ニセクロナマコ周口神経5’RACE Libraryからのインスリン様ペプチドの増幅
ニセクロナマコ周口神経5’RACE Libraryから、SMARTer付属primer mixと前記2−5で決定した配列から設計した特異プライマーを用いたPCRによりニセクロナマコインスリン様ペプチド遺伝子の増幅を試みた。PCR酵素PrimeStar 反応系10μl系,(98℃ 10s,55℃ 5s,72℃ 80s,30cycles)で2回増幅したのち、EX Taq 反応系50μl系,94℃ 2min,(98℃ 10s,58.4℃ 30s,72℃ 45s,30cycles),72℃10sで1回増幅の計3回増幅した。PCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動後、約400bpのバンド切り出し、スピンカラム(EZ−10 Spin Column DNA Gel Extraction Kit)で精製した。

0090

ニセクロナマコ遺伝子断片の配列情報から設計したプライマー
nise−5’_GSPB38−R30: GACTGAAATCTTCTTCTTCTAGGTCGACCA(配列番号19)

0091

3−3.カナマイシン耐性ベクターへの増幅断片へのライゲーションおよび形質転換
精製した増幅断片をDynaExpress TAPCRCloninng kit(pTAKN−2)(BioDynamics Laboratory)を利用し、カナマイシン耐性ベクターにライゲーションした。ライゲーション反応は標準プロトコルの1/2量の5μl系で行なった。16℃30minでインキュベートした後、ライゲーション反応により得られたプラスミドをコンピテントセル化した大腸菌(DH5α)(TOYOBO)に導入した。形質転換した大腸菌をLB寒天培地に播種したのち、37℃一晩培養した。

0092

3−4.コロニーPCR
前記3−3で37℃一晩培養したLB寒天培地から大腸菌コロニーをTEバッファ20μlに懸濁、95℃ 3min加熱した溶液をもちいてプラスミドベクター由来の配列のシーケンスプライマー(M13 primer)を用いてコロニーPCR(Emarld MAX PCR Master Mix(takara bio),反応系10μl系,(98℃ 10s,50℃ 30s,72℃ 45s,30cycles))を行なった。目的のニセクロナマコ配列断片を含む増幅産物にExoSAP−IT(affymetrix)(標準プロトコルの1/10希釈)を加え、37℃ 90min,80℃ 10minで未反応のプライマーおよびdNTPを除去した。

0093

3−5.ダイターミネーター法によるDNAシークエンシング(BigDye反応)
前記3−4でExoSAP−IT処理したコロニーPCR産物の配列決定をダイターミネター法(BigDye Terminator v3.1Cycle Sequencing Kit)により行った。M13primer(Forward primer)をシーケンスプライマーとして反応系10μl系,94℃ 1min,(94℃ 5s,50℃ 10s,72℃ 3min,30cycles)でシーケンス反応をおこなった。シーケンス反応後、エタノール沈殿による精製を行ない、キャピラリーDNAシーケンサー(ABI3500xlもしくはABI3130xl)により、下記のとおり、ニセクロナマコインスリン様ペプチド5’RACE遺伝子断片(配列番号20)の情報を得た。

0094

0095

4.ニセクロナマコインスリン様ペプチド遺伝子の3’RACEによる3’側配列の決定
4−1.ニセクロナマコ周口神経の3’RACE Libraryの作成
SMARTer RACE 5’/3’ kitを使用してニセクロ周口神経3’RACE Libraryを作成した。(標準プロトコルの1/2量)。作成した5’RACE Libraryを4倍希釈して保存した。

0096

4−2.ニセクロナマコ周口神経5’RACE Libraryからのインスリン様ペプチドの増幅
前記4−1で作成したニセクロナマコ周口神経5’RACE Libraryから、SMARTer付属primerと12.で決定した遺伝子配列から設計した特異プライマー(下記)を用いたPCRによりニセクロナマコインスリン様ペプチド遺伝子の増幅を試みた。PCR酵素PrimeStar 反応系10μl系,(98℃ 10s,54.9℃ 5s,72℃ 80s,30cycles)で2回増幅した。

0097

5’RACEの結果から作成(シグナルペプチドよりも5’側のプライマー)
ni3’−GSP120−F26: GGGATATACGTGCATCTTTACAGGCT(配列番号21)

0098

4−3.ニセクロナマコ周口神経5’RACE Libraryからのインスリン様ペプチドのnestedPCR(PCR3回目
前記4−2で増幅したPCRで増幅したPCR産物をSMARTer付属primerと上記13で使用したプライマーよりも3’側の特異プライマーを使用してNEST PCRを行なった。PCR酵素PrimeStar 反応系10μl系,(98℃ 10s,54.9℃ 5s,72℃ 80s,30cycles)で増幅した。

0099

PCR産物のNESTPCR(Primestar3回目)
ni3−GSP269−F28: ATGGCGTCCAAAACAATCAGGGTAGTCT(配列番号22)

0100

4−4.ニセクロナマコ周口神経5’RACE Libraryからのインスリン様ペプチドの増幅PCR4回目
前記4−2と同一プライマーセットを用いて、前項15.のPCR産物の増幅を行なった。PCR酵素PrimeStar 反応系50μl系,(98℃ 10s,54.9℃ 5s,72℃ 80s,30cycles)で増幅した。PCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動後、約1.2kbpのバンドを切り出し、スピンカラム(EZ−10 Spin Column DNA Gel Extraction Kit)で精製した。

0101

4−5.PCR産物への末端dA付加反応
Mighty TA−cloning Reagent Set for PrimeSTAR(takara bio)を用いて前記4−4で精製したPCR産物末端へのdA付加反応をおこなった。反応後そのままベクターへのライゲーション反応をおこなった。

0102

4−6.カナマイシン耐性ベクターへの増幅断片へのライゲーションおよび形質転換
精製した増幅断片をDynaExpress TAPCRCloninng kit(pTAKN−2)(BioDynamics Laboratory)を利用し、カナマイシン耐性ベクターにライゲーションした。反応は標準プロトコルの1/2量の5μl系で行なった。16℃30minでインキュベートした後、ライゲーションにより得られたプラスミドの導入ををコンピテントセル化した大腸菌(DynaExpress jet comptent cell DH5α,BioDynamics Laboratory)を用いて行なった。形質転換した大腸菌をLB寒天培地に播種したのち、37℃一晩培養した。

0103

4−7.コロニーPCR
前記2−3で37℃一晩培養したLB寒天培地から大腸菌コロニーをTEバッファ20μlに懸濁、95℃ 3min加熱処理した溶液を鋳型としてプラスミドベクター由来の配列のシーケンスプライマー(M13 primer)を用いてコロニーPCR(Emarld MAX PCR Master Mix(takara bio),反応系10μl系,(98℃ 10s,50℃ 30s,72℃ 45s,30cycles))を行なった。目的のニセクロナマコ配列断片を含む増幅産物にExoSAP−IT(affymetrix)(標準プロトコルの1/10希釈)を加え、37℃ 90min,80℃ 10minで未反応のプライマーおよびdNTPを除去した。

0104

4−8.ダイターミネーター法によるDNAシークエンシング(BigDye反応)
前記3−4でExoSAP処理したコロニーPCR産物の配列決定をダイターミネター法(BigDye Terminator v3.1Cycle Sequencing Kit)により行った。M13primer(Forward primer)をシーケンスプライマーとして反応系10μl系,94℃ 1min,(94℃ 5s,50℃ 10s,72℃ 3min,30cycles)でシーケンス反応をおこなった。シーケンス反応後、エタノール沈殿による精製を行ない、キャピラリーDNAシーケンサー(ABI3500xlもしくはABI3130xl)により、下記のとおり、ニセクロナマコインスリン様ペプチド遺伝子全長を含む3’RACE遺伝子断片(配列番号23)の情報を得た。

実施例

0105

0106

配列番号1:合成ペプチド
配列番号1:Xaaは任意のアミノ酸残基を表す(存在位置:3〜5、7〜14)。
配列番号2:合成ペプチド
配列番号2:Xaaは任意のアミノ酸残基を表す(存在位置:2〜12)。
配列番号3:合成ペプチド
配列番号3:Xaaは任意のアミノ酸残基を表す(存在位置:1、3〜6、9、10、13、14、16〜20)。
配列番号4:合成ペプチド
配列番号4:Xaaは任意のアミノ酸残基を表す(存在位置:1、5、6、8、9、11、13〜14、17)。配列番号16:合成DNA
配列番号17:合成DNA
配列番号19:合成DNA
配列番号21:合成DNA
配列番号22:合成DNA
配列番号23:nはa、c、g又はtを表す(存在位置:881、882、942、945、946、948〜951、954〜957、963、964、973、979、980、985、1002、1004、1005、1007、1009、1013、1014、1016〜1019、1022、1024、1025、1028〜1035、1037〜1049、1051〜1058、1062、1066〜1070、1073、1074、1077〜1088、1090、1092〜1097)。
配列表

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