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技術 ヒト肝前駆細胞の調製方法

出願人 国立研究開発法人国立がん研究センター株式会社インターステム
発明者 勝田毅落谷孝広山田哲正
出願日 2017年10月27日 (2年4ヶ月経過) 出願番号 2018-547784
公開日 2019年9月19日 (6ヶ月経過) 公開番号 WO2018-079714
状態 不明
技術分野
  • -
主要キーワード 日がさ ゼノア SO含有量 ヂヒドロ インドフェノール法 酵素反応機構 凍結保存容器 SKU
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重要な関連分野

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図面 (20)

課題・解決手段

生体外でヒト成熟肝細胞を、自己複製能をもつ肝前駆細胞へとリプログラミングする方法を提供する。 ヒト成熟肝細胞を血清、A−83−01及びCHIR99021を含有する培地で培養することを含む、ヒト肝前駆細胞調製方法

概要

背景

重篤肝疾患に対する有効な治療法は現在肝移植のみであるが、絶対的なドナー不足が問題である。これを代替するために、これまでiPS細胞から肝細胞分化誘導し移植治療に用いる試みが続けられてきた。

しかしながら、iPS細胞は分化全能性と高い増殖能をもつため、免疫不全マウスへの移植に伴い奇形種を形成するとの報告もあり、iPS細胞から肝細胞製作時に未分化iPS細胞がわずかでも混入すると移植後に腫瘍ができる危険性が生じる。また、iPS細胞を用いた肝臓などの内胚葉細胞への効率的な分化誘導法はいまだ確立されておらず、肝機能代替えできるほどの肝細胞をiPS細胞から作成することは現状では不可能である。

これに対して、成体肝臓内にごく少数存在する肝前駆細胞の利用も細胞ソースと考えられてきた。また、最近の研究から、慢性肝炎時に成熟肝細胞が、肝細胞および胆管上皮細胞への二分化能を有する前駆細胞へとリプログラミングされるという事実が明らかとなった(非特許文献1〜4)。

概要

生体外でヒト成熟肝細胞を、自己複製能をもつ肝前駆細胞へとリプログラミングする方法を提供する。 ヒト成熟肝細胞を血清、A−83−01及びCHIR99021を含有する培地で培養することを含む、ヒト肝前駆細胞調製方法

目的

本発明は、生体外でヒト成熟肝細胞を、自己複製能をもつヒト肝前駆細胞へとリプログラミングする方法を提供する

効果

実績

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請求項1

ヒト成熟肝細胞血清、A−83−01及びCHIR99021を含有する培地で培養することを含む、ヒト肝前駆細胞調製方法

請求項2

前記成熟肝細胞が乳幼児由来である、請求項1に記載のヒト肝前駆細胞の調製方法。

請求項3

前記血清がウシ胎児血清である、請求項1又は2に記載のヒト肝前駆細胞の調製方法。

請求項4

ヒト成熟肝細胞を血清、A−83−01及びCHIR99021を含有する培地で培養することにより調製された、ヒト肝前駆細胞。

請求項5

請求項4に記載されたヒト肝前駆細胞から誘導された成熟肝細胞。

請求項6

請求項5に記載された成熟肝細胞を用いることを含む、被検物質スクリーニング方法

請求項7

請求項5に記載された成熟肝細胞を用いることを含む、肝炎ウイルス培養方法

請求項8

請求項5に記載された成熟肝細胞が非ヒト哺乳動物移植された、ヒト肝モデル動物

請求項9

ヒト肝前駆細胞又は成熟肝細胞を用いて、被検物質の代謝及び/又は肝毒性を評価するためのキットであって、ヒト成熟肝細胞を血清、A−83−01及びCHIR99021を含有する培地で培養することにより調製されたヒト肝前駆細胞、又は該ヒト肝前駆細胞から誘導された成熟肝細胞を含む、キット。

技術分野

0001

本発明は、ヒト肝前駆細胞調製方法に関する。

背景技術

0002

重篤肝疾患に対する有効な治療法は現在肝移植のみであるが、絶対的なドナー不足が問題である。これを代替するために、これまでiPS細胞から肝細胞分化誘導し移植治療に用いる試みが続けられてきた。

0003

しかしながら、iPS細胞は分化全能性と高い増殖能をもつため、免疫不全マウスへの移植に伴い奇形種を形成するとの報告もあり、iPS細胞から肝細胞製作時に未分化iPS細胞がわずかでも混入すると移植後に腫瘍ができる危険性が生じる。また、iPS細胞を用いた肝臓などの内胚葉細胞への効率的な分化誘導法はいまだ確立されておらず、肝機能代替えできるほどの肝細胞をiPS細胞から作成することは現状では不可能である。

0004

これに対して、成体肝臓内にごく少数存在する肝前駆細胞の利用も細胞ソースと考えられてきた。また、最近の研究から、慢性肝炎時に成熟肝細胞が、肝細胞および胆管上皮細胞への二分化能を有する前駆細胞へとリプログラミングされるという事実が明らかとなった(非特許文献1〜4)。

先行技術

0005

Yanger K. et. al., Genes & Development, pp.719-724, 27, 2013
Tanimizu N. et. al., Journal of Biological Chemistry, pp.7589-7598, 289(11), 2014
Yimlamai D. et. al., Cell, pp.1324-1338, 157, 2014
Tarlow B. D. et. al., Cell Stem Cell, pp.605-618, 15, 2014

発明が解決しようとする課題

0006

本発明は、生体外でヒト成熟肝細胞を、自己複製能をもつヒト肝前駆細胞へとリプログラミングする方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0007

本発明者らは、本課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、生体外でヒト成熟肝細胞を血清、A−83−01(TGF−βシグナル阻害薬)及びCHIR99021(GSK3阻害薬)を含有する培地中で培養することにより、自己複製能をもつヒト肝前駆細胞へとリプログラミングすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。

0008

すなわち、本発明は、下記に掲げるヒト肝前駆細胞の調製方法を提供する。
項1.ヒト成熟肝細胞を血清、A−83−01及びCHIR99021を含有する培地で培養することを含む、ヒト肝前駆細胞の調製方法。
項2.前記ヒト成熟肝細胞が乳幼児由来である、項1に記載のヒト肝前駆細胞の調製方法。
項3.前記血清がウシ胎児血清である、項1又は2に記載のヒト肝前駆細胞の調製方法。
項4.ヒト成熟肝細胞を血清、A−83−01及びCHIR99021を含有する培地で培養することにより調製された、ヒト肝前駆細胞。
項5.項4に記載されたヒト肝前駆細胞から誘導された成熟肝細胞。
項6.項5に記載された成熟肝細胞を用いることを含む、被検物質スクリーニング方法
項7.項5に記載された成熟肝細胞を用いることを含む、肝炎ウイルス培養方法
項8.項5に記載された成熟肝細胞が非ヒト哺乳動物に移植された、ヒト肝モデル動物
項9.ヒト肝前駆細胞又は成熟肝細胞を用いて、被検物質の代謝及び/又は肝毒性を評価するためのキットであって、
ヒト成熟肝細胞を血清、A−83−01及びCHIR99021を含有する培地で培養することにより調製されたヒト肝前駆細胞、又は該ヒト肝前駆細胞から誘導された成熟肝細胞を含む、キット。

発明の効果

0009

本発明により、生体外でヒト成熟肝細胞を、自己複製能をもつ肝前駆細胞へとリプログラミングする方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

0010

図1は、ヒト成熟肝細胞をAC−F培地(A)、YAC−F培地(B)又はYAC培地(C)で培養した結果を示す位相差顕微鏡写真である。
図2は、ヒト成熟肝細胞をAC−F培地で培養した結果を示す位相差顕微鏡写真である。
図3は、ヒト成熟肝細胞をAC−F培地又はFBS培地で培養した結果を示す位相差顕微鏡写真である。
図4は、ヒト成熟肝細胞をAC−F培地又はFBS培地で培養した結果を示す位相差顕微鏡写真である。
図5は、cDNA−uPA/SCIマウスへの肝前駆細胞の投与後における、血中human特異的アルブミン経時変化を示すグラフである。
図6は、cDNA−uPA/SCIDマウスへの肝前駆細胞の投与70日後における、内側右葉でのHuman CYP2C9の発現を示す免疫染色写真である。
図7は、cDNA−uPA/SCIDマウスへの肝前駆細胞の投与70日後における、内側左葉でのHuman CYP2C9の発現を示す免疫染色写真である。
図8は、TK−NOGマウスへの肝前駆細胞の投与後における、血清中human特異的アルブミンの経時変化を示すグラフである。
図9は、TK−NOGマウスへの肝前駆細胞の投与60日後における、肝臓でのHuman CYP2C9の発現を示す免疫染色写真である。
図10は、TK−NOGマウスへの肝前駆細胞の投与60日後における、肝臓でのHuman CYP2C9の発現を示す免疫染色写真である。
図11は、本発明の肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)における、代謝酵素CYP1A2の活性を示すグラフである。
図12は、本発明の肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)における、Omeprazolによる誘導有り無しでの代謝酵素CYP1A2の活性比率を示すグラフである。
図13は、本発明の肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)における、代謝酵素CYP3A4の活性を示すグラフである。
図14は、本発明の肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)における、Phenobarbitalによる誘導有り無しでの代謝酵素CYP3A4の活性比率を示すグラフである。
図15は、本発明の肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)における、ALBの遺伝子発現量を示すグラフである。
図16は、本発明の肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)における、TATの遺伝子発現量を示すグラフである。
図17は、本発明の肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)における、TDO2の遺伝子発現量を示すグラフである。
図18は、本発明の肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)における、TTRの遺伝子発現量を示すグラフである。
図19は、本発明の肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)における、G6PCの遺伝子発現量を示すグラフである。
図20は、本発明の肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)における、NTCPの遺伝子発現量を示すグラフである。
図21は、本発明の肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)における、CYP1A2の遺伝子発現量を示すグラフである。
図22は、本発明の肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)における、CYP2B6の遺伝子発現量を示すグラフである。
図23は、本発明の肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)における、CYP2C9の遺伝子発現量を示すグラフである。
図24は、本発明の肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)における、CYP2C19の遺伝子発現量を示すグラフである。
図25は、本発明の肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)における、CYP2D6の遺伝子発現量を示すグラフである。
図26は、本発明の肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)における、CYP3A4の遺伝子発現量を示すグラフである。
図27は、本発明の肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)における、CYP7A1の遺伝子発現量を示すグラフである。
図28は、cDNA−uPA/SCIDマウスへ移植する前の、本発明の肝前駆細胞の写真である。
図29は、cDNA−uPA/SCIDマウスへ本発明の肝前駆細胞を移植した後、取り出し、4日間培養を行った細胞の写真である。
図30は、cDNA−uPA/SCIDマウスから取り出した肝細胞におけるCYP1A2の活性を示すグラフである。
図31は、cDNA−uPA/SCIDマウスから取り出した肝細胞におけるCYP3A4の活性を示すグラフである。
図32は、cDNA−uPA/SCIDマウスへ移植する前の、本発明の肝前駆細胞の写真である。
図33は、cDNA−uPA/SCIDマウスへ本発明の肝前駆細胞を移植した後、取り出し、4日間培養を行った細胞の写真である。
図34は、cDNA−uPA/SCIDマウスから取り出した肝細胞におけるCYP1A2の活性を示すグラフである。
図35は、cDNA−uPA/SCIDマウスから取り出した肝細胞におけるCYP3A4の活性を示すグラフである。
図36は、cDNA−uPA/SCIDマウスへ移植する前の、本発明の肝前駆細胞の写真である。
図37は、cDNA−uPA/SCIDマウスへ本発明の肝前駆細胞を移植した後、取り出し、4日間培養を行った細胞の写真である。
図38は、cDNA−uPA/SCIDマウスから取り出した肝細胞におけるCYP1A2の活性を示すグラフである。
図39は、cDNA−uPA/SCIDマウスから取り出した肝細胞におけるCYP3A4の活性を示すグラフである。

0011

本発明は、ヒト成熟肝細胞を血清、A−83−01及びCHIR99021を含有する培地で培養することを含む、ヒト肝前駆細胞の調製方法に関するものである。

0012

[ヒト成熟肝細胞]
本発明に使用するヒト成熟肝細胞は、生体肝臓組織から既知の任意の方法にしたがって、取得することができる。なお、本明細書において、生体肝臓組織とは、出生後のヒト肝臓から取得した肝臓組織を意味する。生体肝臓組織の供給個体は、生存していても死亡していてもよい。生体肝臓組織の供給個体の年齢は限定されないが、細胞増殖の観点から、20代以下が好ましく、さらに好ましくは10以下であり、より好ましくは、乳幼児(0才〜7才)であり、最も好ましくは乳児(0才〜2才)である。

0013

また、本発明に使用するヒト成熟肝細胞は、成熟肝細胞として特徴を有していればよく、生体肝臓組織から取得した後に凍結保存された細胞でもよく、生体肝臓組織から取得した後に適宜、凍結保存及び融解を繰り返した細胞であってもよい。本発明に使用するヒト成熟肝細胞は、市販されているヒト由来成熟肝細胞をであってもよい。

0014

さらに、本発明の方法に使用するヒト成熟肝細胞は、インビトロで増殖能を有しない、完全に分化した肝細胞を包含する。

0015

本発明の方法に使用するヒト成熟肝細胞は、iPS細胞(induced pluripotent stem cells、誘導多能性幹細胞)、ES細胞(embryonic stem cells、胚性幹細胞)等から分化誘導された肝細胞であってもよい。

0016

[血清]
本発明に用いられる血清は、例えば、ヒト血清、ウシ胎児血清(FBS)、ウシ血清仔ウシ血清、ヤギ血清ウマ血清ブタ血清、ヒツジ血清、ウサギ血清、ラット血清などが挙げられ、好ましくはFBS、仔ウシ血清、ウシ血清であり、さらに好ましくはFBSである。また、本発明に用いられる血清とは、アルブミン(ウシ、ブタ、ヒト、イヌ、ウサギ、ラット、マウス、ニワトリ等)、ヒト血小板溶解物等の血清成分由来の物質であってもよい。本発明に用いられる血清は、市販品であってもよい。

0017

本発明に用いられる血清の含有量は、培地全体の量に対して、0.1v/v%〜30v/v%、好ましくは1v/v%〜20v/v%、さらに好ましくは5v/v%〜15v/v%、さらにより好ましくは8v/v%〜12v/v%、最も好ましくは10v/v%である。

0018

[A−83−01]
A−83−01(CAS No.909910−43−6)はTGF−βシグナル阻害薬の一種であり、TGF−β type I/activin受容体キナーゼ(ALK5)、type I activing/nodal受容体キナーゼ(ALK4)、type Inodal受容体キナーゼ(ALK7)を選択的に阻害することができる。A−83−01は、3−(6−メチル−2−ピリジニル)−N−フェニル−4−(4−キノリニル)−1H−ピラゾール−1−カルボチオアミド(3−(6−Methyl−2−pyridinyl)−N−phenyl−4−(4−quinolinyl)−1H−pyrazole−1−carbothioamide)としても公知である。限定はされないが、A−83−01は和光純薬工業株式会社等から入手することができる。

0019

本発明に用いられるA−83−01の含有量は、培地全体の量に対して、0.0001μM〜5μM、好ましくは0.001μM〜2μM、さらに好ましくは0.01μM〜1μM、さらにより好ましくは0.05μM〜0.7μM、最も好ましくは0.5μMである。

0020

[CHIR99021]
CHIR99021(CAS No.252917−06−9)はGSK−3β(Glycogen Synthase Kinase 3β)阻害剤の一種で、現在最も選択性の高い阻害剤として知られている。CHIR99021は6−[[2−[[4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(5−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)−2−ピリミジニルアミノエチル]アミノ]−3−ピリジンカルボニトリル(6−[[2−[[4−(2,4−dichlorophenyl)−5−(5−methyl−1H−imidazol−2−yl)−2 pyrimidinyl]amino]ethyl]amino]−3−pyridinecarbonitrile)としても公知である。限定はされないが、CHIR99021は和光純薬工業株式会社等から入手することができる。

0021

本発明に用いられるCHIR99021の含有量は、培地全体の量に対して、0.001μM〜20μM、好ましくは0.01μM〜10μM、さらに好ましくは0.1μM〜5μM、さらにより好ましくは0.3μM〜4μM、最も好ましくは3μMである。

0022

ROCKインヒビター]
本発明において、ヒト成熟肝細胞を培養する培地は、さらにROCKインヒビターを含有していてもよい。ここで、ROCKインヒビターとしては、限定はされないが、Y−27632(CAS No. 146986−50−7)、GSK269962(CAS No. 850664−21−0)、Fasudil hydrochloride(CAS No. 105628−07−7)、H−1152(CAS No. 871543−07−6)が例示され、Y−27632が好ましい。Y−27632は選択的かつ強力なROCK(Rho−associated coiled forming kinase/Rho結合キナーゼ)阻害剤である。Y−27632は、トランス−4−[(1R)−1−アミノエチル]−N−4−ピリジニル−シクロヘキサンカルボキサミド(trans−4−[(1R)−1−aminoethyl]−N−4−pyridinyl−cyclohexanecarboxamide)としても公知である。また、Y−27632はフリー体であっても、塩酸塩硫酸塩等の塩の形であっても、水和物であってもよい。GSK269962Aは、N−[3−[[2−(4−アミノ−1,2,5−オキサジアゾル−3−イル)−1−エチル−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−6−イル]オキシ]フェニル]−4−[2−(4−モルフォリニル)エチオキシベンザミド(N−[3−[[2−(4−Amino−1,2,5−oxadiazol−3−yl)−1−ethyl−1H−imidazo[4,5−c]pyridin−6−yl]oxy]phenyl]−4−[2−(4−morpholinyl)ethoxy]benzamide)としても公知である。Fasudil hydrochlorideは、ファスジル塩酸塩(1−(5−Isoquinolinesulfonyl)homopiperazine Dihydrochloride)としても公知である。Fasudil hydrochlorideは、フリー体であっても、塩酸塩、硫酸塩等の塩の形であっても、水和物であってもよい。H−1152は、(S)−(+)−2−メチル−1−[(4−メチル−5−イソキノリニル)sulfonyl]−ヘキサハイドロ−1H−1,4−ヂアゼピンヂヒドロクロリド((S)−(+)−2−Methyl−1−[(4−methyl−5−isoquinolinyl)sulfonyl]−hexahydro−1H−1,4−diazepine dihydrochloride)としても公知である。限定はされないが、Y−27632は和光純薬工業株式会社等、SK269962AはAxon medchem社等、Fasudil hydrochlorideはTocris Bioscience社等、H−1152は和光純薬工業社等から入手することができる。

0023

本発明に用いられるROCKインヒビターの含有量は、培地全体の量に対して、0.001μM〜50μM、好ましくは0.01μM〜30μM、さらに好ましくは0.1μM〜20μM、さらにより好ましくは1μM〜15μM、最も好ましくは10μMである。

0024

本発明において、ヒト成熟肝細胞を培養する培地には、ES細胞、iPS細胞等の誘導技術として公知の様々な遺伝子の内、1種類から複数種類の遺伝子、又はそれらの遺伝子産物タンパク質mRNAなど)或いは薬剤などを添加することができる。また、哺乳動物細胞中にES細胞、iPS細胞等の誘導技術として公知の様々な遺伝子の内、1種類から複数種類の遺伝子、又はそれらの遺伝子産物(タンパク質やmRNAなど)を発現又は導入することができる。

0025

本発明において、ヒト成熟肝細胞を培養する培地には、肝前駆細胞への誘導効率を上げるために、ES細胞、iPS細胞等を誘導することが知られている薬剤、化合物、抗体を添加することができる。例えば、FGFレセプターチロシンキナーゼ、MEK(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)/ERK(細胞外シグナル制御キナーゼ1および2)経路、GSK(グリコーゲンシンターゼキナーゼ)3の三つの低分子阻害剤〔SU5402及びPD184352〕、MEK/ERK経路及びGSK3の低分子阻害剤〔PD0325901〕、ヒストンメチル化酵素G9aの阻害剤である低分子化合物〔BIX−01294(BIX)〕、アザシチジントリコスタチンA(TSA)、7−hydroxyflavone、lysergic acid ethylamide、kenpaullone、TGF−β receptor I kinase/activin−like kinase 5 (ALK5)の阻害剤〔EMD 616452〕、TGF−β receptor 1(TGF−βR1)kinaseの阻害剤〔E−616452及びE−616451〕、Src−family kinaseの阻害剤〔EI−275〕、thiazovivin、PD0325901、SU5402、PD184352、SB431542、抗TGF−β中和抗体、TNr5a2、p53阻害化合物、p53に対するsiRNA、p53経路の阻害剤等を、添加することができる。

0026

また、ヒト成熟肝細胞を培養する培地には、肝前駆細胞への誘導効率を上げるため、更に、ES細胞、iPS細胞等を作製するのに使用するマイクロRNA(micro RNA)を用いることも可能である。

0027

本発明において、ヒト成熟肝細胞を培養する培地には、TGF−βなどの活性を阻害又は中和する各々の阻害剤又は抗体などを使用することもできる。TGF−βの阻害剤としては、例えば、TGF−βRI阻害剤、TGF−βRIキナーゼ阻害剤などが挙げられる。

0028

本発明の培養において、コーティングをした培養ディッシュ上にて培養を行うこともまた好ましい。コーティングとして、マトリゲルコート、コラーゲンコートゼラチンコート、ラミニンコート、フィブロネクチンコート等を使用することができる。好ましくは、コーティングとして、マトリゲルコートを使用する。

0029

本発明に用いることができる基本の培地としては、例えば、ES培地〔40%ダルベッコ改変イーグル培地DMEM)、40%のF12培地(シグマ社製)、2 mM L−グルタミン又はGlutaMAX(シグマ社製)、1%のnon essential amino acid(シグマ社製)、0.1 mMのβ−メルカプトエタノール(シグマ社製)、15〜20%のKnockout Serum Replacement(インビトロジェン社製)、10μg/mlのゲンタマイシン(インビトロジェン社製)、4〜10ng/mlのbFGF(FGF2)〕(以下ES培地という)、0.1 mMのβ−メルカプトエタノールを除いたES培地で、マウス胚性繊維芽細胞MEFを24時間培養した上清である馴化培地に、0.1 mMのβ−メルカプトエタノール及び10 ng/mlのbFGF(FGF2)を加えた培地(以下MEF馴化ES培地)、iPS細胞用最適培地(iPSellon社製)、フィーダー細胞用最適培地(iPSellon社製)、StemPro〔登録商標〕hESCSFM(インビトロジェン社製)、mTeSR1(ステムセルテクノロジー・ベリタス社製)、アニマルプロテインフリーのヒトES/iPS細胞維持用無血清培地TeSR2〔ST−05860〕(ステムセルテクノロジー・ベリタス社製)、霊長類ES/iPS細胞用培地(リプロセル社)、ReproStem(リプロセル社)、ReproFF(リプロセル社)、ReproFF2(リプロセル社)などを例示することができるが、これらの培地に制限されることはない。これらの培地に、本発明の調製方法に必要な、血清、A−83−01、およびCHIR99021が含まれていない場合には、適宜追加するものとする。

0030

本発明において、ヒト成熟肝細胞を、ヒト肝前駆細胞へと調製する際の最適な培養条件は、常法に従い、適宜変更され得る。限定はされないが、ヒト成熟肝細胞をヒト肝前駆細胞へと調製する際の最適な培養条件は、例えば以下の通りである。
培養温度:15℃〜45℃が好ましく、25℃〜40℃がさらに好ましく、37℃が最も好ましい。
CO2濃度:1%〜10%が好ましく、3%〜8%がさらに好ましく、5%が最も好ましい。
培養期間:1日(24時間)〜30日が好ましく、3日〜20日がさらに好ましい。

0031

本発明において、肝前駆細胞の増殖培養又は継代培養する手法は、ES細胞、iPS細胞等の培養において当業者通常用いるいずれかの方法を使用することができる。例えば、細胞から培地を除きPBS(−)で洗浄し、細胞剥離液を加えて静置した後、1×抗生物質抗真菌剤及びFBSを10%含むD−MEM高グルコース)培地を加えて遠心分離し、更に、上清を除去した後、1×抗生物質−抗真菌剤、mTeSR1及び10μM Y−27632を加え、MEFが播種してあるマトリゲルコート、ゼラチンコート又はコラーゲンコート培養皿に細胞懸濁液を播種することによって、継代培養する方法が例示できる。

0032

本発明における肝前駆細胞は、成熟肝細胞、または胆管上皮細胞等に分化する能力を備えていればよい。肝前駆細胞は、凍結保存細胞であっても、適宜凍結保存及び融解を繰り返した細胞であってもよい。本発明において、凍結保存は、当業者に周知の凍結保存液へ肝前駆細胞を懸濁し、冷却することによって行い得る。懸濁は、細胞をトリプシンなどの剥離剤によって剥離し、凍結保存容器に移し、適宜、処理した後、凍結保存液を加えることによって行い得る。

0033

凍結保存液は、凍害防御剤として、DMSO(Dimethyl sulfoxide)を含有していてもよいが、DMSOは、細胞毒性を有することから、DMSO含有量を減らすことが好ましい。DMSOの代替物として、グリセロールプロピレングリコール又は多糖類が例示される。DMSOを用いる場合、5%〜20%の濃度、好ましくは5%〜10%の濃度、より好ましくは10%の濃度を含有する。この他にも、WO2007/058308に記載の添加剤を含んでもよい。このような凍結保存液として、例えば、バイオベルデ社、日本ジェネティクス株式会社、リプロセル社、ゼノアック社、コスモ・バイオ社、コージンバイオ株式会社、サーモフィッシャーサイエンティフィック社などから提供されている凍結保存液を用いてもよい。

0034

上述の懸濁した細胞を凍結保存する場合、−80℃〜−100℃の間の温度(例えば、−80℃)で保管することで良く、当該温度に達成しえる任意のフリーザーを用いて行い得る。特に限定されないが、急激な温度変化を回避するため、プログラムフリーザーを用いて、冷却速度を適宜制御してもよい。冷却速度は、凍結保存液の成分によって適宜選択しても良く、凍結保存液の製造者指示に従って行われ得る。

0035

保存期間は、上記条件で凍結保存した細胞が融解した後、凍結前と同等の性質を保持している限り、特に上限は限定されないが、例えば、1週間以上、2週間以上、3週間以上、4週間以上、2か月以上、3か月以上、4か月以上、5か月以上、6か月以上、1年以上、又はそれ以上が挙げられる。より低い温度で保存することで細胞障害を抑制することができるため、液体窒素上の気相(約−150℃以下から−180℃以下)へ移して保存してもよい。液体窒素上の気相で保存する場合、当業者に周知の保存容器を用いて行うことができる。特に限定されないが、例えば、2週間以上保存する場合、液体窒素上の気相で保存することが好ましい。

0036

凍結保存した肝前駆細胞の融解は、当業者に周知の方法によって行い得る。例えば、37℃の恒温槽内又は湯浴中にて静置又は振とうすることによって行う方法が例示される。

0037

本発明により得られた肝前駆細胞をさらに培養することにより、成熟肝細胞、あるいは胆管上皮細胞等に分化させることが可能である。

0038

このようにして得られた成熟肝細胞(以下「分化成熟肝細胞」と言う)は、肝前駆細胞に比べ、ALB(Albumin)、AFP(Alpha Fetoprotein)、TAT(Tyrosine Aminotransferase)、TDO2(Tryptophan 2,3−dioxygenase)、TTR(Transthyretin)、G6PC(Glucose−6−phosphatase)、NTCP(sodium taurocholate cotransporting polypeptide)、Cnx32、CYP1A1(Cytochrome P1A1)、CYP1A2(Cytochrome P1A2)、CYP2B6(Cytochrome P2B6)、CYP2C9(Cytochrome P2C9)、CYP2C19(Cytochrome P2C19)、CYP2D6(Cytochrome P2D6)、CYP3A4(Cytochrome P3A4)及びCYP7A1(Cytochrome P7A1)からなる群より選択される少なくとも1種の遺伝子の発現量が著しく高くなる。限定はされないが、分化成熟肝細胞は、肝前駆細胞に比べ、前述の遺伝子の発現量が10〜50,000倍に上昇することを特徴とする。

0039

ヒト肝前駆細胞から分化成熟肝細胞への分化誘導(以下「分化」又は「誘導」とも言う)は、例えば、オンコスタチンM及びデキサメタゾン基礎培地(上述の基本の培地等)に添加することによって行うことができる。分化誘導培地における各増殖分化因子の濃度を与えるのに必要な量のオンコスタチンMは、例えば培地1Lあたり1μg〜100μg、好ましくは5μg〜50μgである。分化誘導培地における各増殖分化因子の濃度を与えるのに必要な量のデキサメタゾンは、例えば培地1Lあたり0.1mM〜10mM、好ましくは0.5mM〜5mMである。

0040

ヒト肝前駆細胞から分化成熟肝細胞への分化誘導は、ヒト肝前駆細胞を、動物の肝臓もしくは、脾臓へ移植することによっても行う事がでる。移植される動物は、ヒト肝前駆細胞から分化成熟肝細胞への分化誘導ができる動物であれば特に限定はされないが、哺乳動物が望ましく、例えば、ウサギ、イヌ、ネコモルモットハムスター、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ミニブタウマ、ウシ及びサル等が挙がられるが、マウス、ラット、ミニブタ、サルがさらに好ましい。

0041

また、肝前駆細胞から分化された成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)は、機能として、例えば、グルコース産生能、アンモニア代謝能、アルブミン生産能尿素合成能等を有することが挙げられる。グルコース生産能は、例えば、グルコースオキシダーゼ法によって培養上清中のグルコースレベル分析することで確認できる。アンモニア代謝能は、例えば、改変インドフェノール法(Horn DB & Squire CR,Chim.Acta.14:185−194.1966)によって、培養培地中のアンモニアレベルを分析することで確認できる。アルブミン生産能は、例えば、血清アルブミン濃度を測定する方法により、培養液中のアルブミン濃度を分析することで確認できる。また、尿素合成能は、例えば、Colorimetric assay(シグマ社)を使用して確認できる。

0042

また、本発明は、本発明の方法により製造された肝前駆細胞及び肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)を提供することができる。本発明の方法により製造された肝前駆細胞及び肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)の機能や形態は、従来の方法により製造された肝細胞の機能や形態と比較して、ヒト成熟肝細胞に、より近いという特徴を有する。また、本発明の方法により製造された肝前駆細胞及び肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)は、インビボにおいても機能するという特徴を有する。よって、本発明の肝前駆細胞及び肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)は、例えば医療分野(例えば再生医療分野)において有用である。

0043

例えば、本発明の肝前駆細胞を用いることで、肝疾患の治療ができる。例えば、肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)を直接的に肝門脈を通して移植する方法やコラーゲンポリウレタン、その他公知の生体親和性材料包埋した形で移植する方法により、肝疾患を治療できる。このように、本発明は上記工程により製造された肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化した成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)の用途もまた提供する。より具体的には、肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化した成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)を含む肝疾患の治療剤を提供する。また、該細胞を用いた肝疾患の治療方法を提供する。具体的疾患としては、肝硬変劇症肝炎、慢性肝炎、ウイルス性肝炎アルコール性肝炎肝線維症自己免疫性肝炎脂肪肝薬剤アレルギー肝障害ヘモクロマトーシス、ヘモジデローシス、ウィルソン病原発性胆汁性肝硬変原発性硬化性胆管炎肝膿瘍慢性活動性肝炎慢性持続性肝炎胆道閉鎖症肝癌等が挙げられるが、これらに限定されるものでない。

0044

また、肝前駆細胞から分化された胆管上皮細胞は、その形態的特徴上皮細胞マーカーなどから、確認することができる。

0045

また、本発明は、本発明の方法により製造された肝前駆細胞から分化させた胆管上皮細胞(以下「分化胆管上皮細胞」と言う)を提供することができる。本発明の方法により製造された分化胆管上皮細胞の機能や形態は、従来の方法により製造された細胞の機能や形態と比較して、ヒト胆管上皮細胞により近いという特徴を有する。また、本発明の方法により製造された分化胆管上皮細胞は、インビボにおいても機能するという特徴を有する。よって、本発明の肝前駆細胞及び肝前駆細胞から分化させた胆管上皮細胞(分化胆管上皮細胞)は、例えば医療分野(例えば再生医療分野)において有用である。

0046

例えば、本発明の肝前駆細胞を用いることで、本発明の肝前駆細胞又は胆管上皮細胞を胆管疾患、例えば、胆石胆嚢ポリープ胆嚢がん胆管癌胆管炎、胆管肝炎胆嚢炎アラジール症候群(AGS)、胆嚢結石、胆嚢腺筋症、胆嚢隆起性病変、無石胆管痛、原発性硬化性胆管炎(PSC)等の治療に用いることができる。

0047

また本発明の肝前駆細胞は、例えば肝疾患の治療を目的とした研究分野においても有用である。例えば、人工臓器人工肝臓など)の研究開発において用いることができる。さらに、本発明のヒト肝細胞は、医薬品や食品等の開発の分野においても有用である。具体的には、被検物質の代謝や肝毒性の評価、肝疾患治療剤、肝炎ウイルス感染阻害剤、またはウイルス性肝炎治療剤スクリーニングに利用できる。

0048

本発明の方法により製造された肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)あるいは胆管上皮細胞(分化胆管上皮細胞)を利用することで、被検物質の代謝や肝毒性を評価することが可能である。

0049

被検物質の代謝や肝毒性の評価には、従来、動物モデル等が用いられていたが、一度に評価できる被検物質の数に制限があり、また動物モデル等で得られた評価を、そのままヒトに適用できないという問題があった。そのため、ヒト肝がん細胞株や初代正常ヒト培養肝細胞を用いる評価方法が採用されつつある。しかしながら、ヒト肝がん細胞株はがん細胞であるため、ヒト肝がん細胞株で得られた評価が、ヒト正常肝細胞に適用できないという可能性が残る。また、初代正常ヒト培養肝細胞は安定供給やコストの面での問題がある。また、初代正常ヒト培養肝細胞を不死化した細胞株は、不死化していない場合と比較して、CYP3A4の活性が低下していることが示されている(International Journal of Molecular Medicine 14:663−668,2004,Akiyama I. et al.)。本発明の方法により製造された肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)あるいは胆管上皮細胞(分化胆管上皮細胞)を利用することで、このような問題を解決しうる。

0050

本発明の分化成熟肝細胞は、被検物質のスクリーニングに利用できる。本発明における被検物質のスクリーニングは、代謝酵素の解析代謝経路の解析、代謝産物の解析、代謝活性の解析、細胞毒性の解析、遺伝毒性の解析、発がん性発現の解析、変異原性の解析、肝毒性発現の解析、肝臓に対する作用の解析等を指標にすることができる。

0051

本発明は、被検物質の代謝を評価する方法を提供する。該方法では、本発明の方法により製造された肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)に被検物質を接触させる。次いで、該細胞に接触させた被検物質の代謝を測定する。

0052

本発明で用いる被検物質としては、特に制限はない。例えば、生体異物天然化合物、有機化合物無機化合物、タンパク質、ペプチドなどの単一化合物、並びに、化合物ライブラリー遺伝子ライブラリー発現産物細胞抽出物細胞培養上清、発酵微生物産生物海洋生物抽出物植物抽出物医薬品原料化粧品原料食品原料医薬品添加物化粧品添加物食品添加物サプリメント成分等が挙げられるが、これらに限定されない。

0053

生体異物としては、例えば薬剤や食品の候補化合物候補物質、既存の薬剤や食品が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、生体にとって異物である限り、本発明の生体異物に含まれる。より具体的には、Rifampin、Dexamethasone、Phenobarbital、Ciglirazone、Phenytoin、Efavirenz、Simvastatin、β−Naphthoflavone、Omeprazoie、Clotrimazole、3−Methylcholanthreneなどが例示できる。

0054

本発明における「接触」は、通常、培地や培養液に被検物質を添加することによって行うが、この方法に限定されない。被検物質がタンパク質等の場合には、該タンパク質を発現するDNAベクターを、該細胞へ導入することにより、「接触」を行うことができる。

0055

被検物質の代謝は、当業者に周知の方法で測定することが可能である。例えば被検物質の代謝産物が検出された場合に、被検物質が代謝されたと判定される。また、被検物質の接触により、CYP(チトクロムp450)、MDR(MultiDrug Resistance、ABCB1)、MPR(Multidrug Resistance−associated Protein、ABCC2)等の酵素遺伝子の発現が誘導された場合や、これら酵素の活性が上昇した場合に、被検物質が代謝されたと判定される。

0056

代謝酵素の解析は、例えば、被検物質を本発明の分化成熟肝細胞へ接触させた後に被検物質の構造の変化を解析することにより、被検物質の代謝に関与する酵素の解析が可能である。具体的には、被検物質を本発明の分化成熟肝細胞への接触させた後に被検物質の構造の変化を各種酵素の阻害・拮抗物質あるいは各種酵素の中和抗体により解析することによる被検物質代謝に関与する酵素の同定、被検物質の細胞への接触による被検物質の構造の変化を解析することによる酵素反応機構の解析、基質特異性の解析などをあげることができる。

0057

代謝経路の解析および代謝産物の解析は、例えば、被検物質を本発明の分化成熟肝細胞への接触させた後に被検物質の構造の変化を解析することにより被検物質の代謝経路の解析および代謝産物の解析が可能である。被検物質の代謝産物を検出するための方法は、公知方法を用いることができる。例えば、被検物質と接触させた分化成熟肝細胞の培地等を、液体クロマトグラフィー質量分析などによって分析することによって、代謝産物を検出することができる。

0058

代謝活性の解析は、例えば、被検物質を本発明の分化成熟肝細胞へ接触させ、被検物質代謝酵素活性の上昇、酵素量の増加または酵素をコードする遺伝子の転写量の上昇などを検出することにより被検物質代謝酵素の活性の促進の解析が可能である。具体的には、チトクロームP450酵素活性の上昇、タンパク量の増加、mRNAの増加を検出することで解析が可能である。検出方法としては、各種P450に対応する酵素活性の測定、各種P450蛋白質に対応するウエスタンブロティング、各種P450 mRNAに対応するノザンハイブリダイゼーションあるいはRTPCR法など公知の手法を使用することができる。

0059

また、本発明は、被検物質の肝毒性を評価する方法を提供する。該方法では、本発明の方法により製造された肝前駆細胞及び肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)に被検物質を接触させる。次いで、被検物質を接触させた該細胞の障害の程度を測定する。障害の程度は、例えば該細胞の生存率GOT(glutamate oxaloacetate transaminase)やGPT(glutamic pyruvic transaminase)などの肝障害マーカーを指標に測定できる。

0060

肝毒性発現の解析は、例えば、被検物質を本発明の分化成熟肝細胞に接触させ、該細胞毒性の発現を観察することにより、あるいは、被検物質を該細胞に接触させた後に、該細胞により変化した被検物質を他の肝細胞、肝切片摘出肝または、実験動物へ投与しそれによる細胞、組織、生体の変化を観察することにより被検物質代謝による肝毒性を解析することが可能である。

0061

例えば、肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)の培養液に被検物質を添加することにより、該細胞の生存率が低下する場合、該被検物質は肝毒性を有すると判定され、生存率に有意な変化がない場合、該被検物質は肝毒性を有さないと判定される。また、例えば、該細胞の培養液に被検物質を添加後、培養液中のGOTやGPTが上昇する場合、該被検物質は肝毒性を有すると判定され、GOTやGPTに有意な変化がない場合、該被検物質は肝毒性を有さないと判定される。

0062

なお、すでに肝毒性の有無が判明している物質を対照として用いることで、より正確に、被検物質が肝毒性を有するか否かを評価することができる。

0063

細胞毒性の解析は、例えば、被検物質を本発明の分化成熟肝細胞へ接触させ、被検物質の代謝物による細胞毒性の解析が可能である。具体的には、被検物質の接触による該細胞の形態の変化、生細胞数の変動、細胞内酵素漏出細胞表層構造の変化あるいは細胞内酵素の変動などを観察することにより解析される。

0064

生遺伝毒性の解析は、例えば、被検物質を本発明の分化成熟肝細胞に接触させ、該細胞を染色体異常試験小核試験などに付すことより被検物質代謝による遺伝毒性の解析が可能である。また、被検物質を本発明の分化成熟肝細胞に接触させた後に、該細胞により変化した被検物質を適切な評価系で評価することにより染色体異常試験、小核試験、復帰突然変異試験などに付すことにより解析が可能である。

0065

発がん性発現の解析は、例えば、被検物質を本発明の分化成熟肝細胞に接触させ、該細胞を染色体異常試験、DNAの修飾などに付すことにより被検物質代謝による発ガン性の解析が可能である。また、被検物質を本発明の分化成熟肝細胞に接触させた後に、該細胞により変化した被検物質を適切な化学物質による発ガン評価系で評価することにより解析が可能である。

0066

変異原性の解析は、例えば、被検物質を本発明の分化成熟肝細胞に接触させ、該細胞を染色体異常試験、小核試験などに付すことにより被検物質代謝による変異原性の解析が可能である。また、被検物質を本発明の分化成熟肝細胞に接触させた後に、該細胞により変化した被検物質を適切な評価系で評価することにより染色体異常試験、小核試験、復帰突然変異試験などに付すことにより解析が可能である。

0067

また、本発明は、肝疾患または胆管疾患の治療剤のスクリーニング方法を提供することが可能である。該方法では、本発明の方法により製造された肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)に被検物質を接触させる。次いで、被検物質を接触させた該細胞の機能を測定する。次いで、被検物質を接触させた該細胞の機能を亢進させる物質を選択する。

0068

肝臓に対する作用の解析は、例えば、被検物質を本発明の分化成熟肝細胞への接触させた後に、該細胞の変化の発現を観察することにより、あるいは、被検物質を該細胞に接触させた後に、細胞により変化した被検物質を他の肝藏細胞、肝藏切片、摘出肝藏または、実験動物へ投与しそれによる細胞、組織、生体の変化を観察することにより肝藏への作用の発現を解析することが可能である。被検物質を接触させた分化成熟肝細胞において、細胞機能の亢進が見られた場合に、被検物質の肝臓に対する治療効果が期待される。

0069

本発明における肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)の機能は、例えば、グルコース産生能、アンモニア代謝能、アルブミン生産能、尿素合成能、CYP等の酵素の活性を指標に測定できる。

0070

グルコース生産能は、例えば、グルコースオキシダーゼ法によって培養上清中のグルコースレベルを分析することで確認できる。アンモニア代謝能は、例えば、改変インドフェノール法(Horn DB&Squire CR,Chim.Acta.14:185−194.1966)によって、培養培地中のアンモニアレベルを分析することで確認できる。アルブミン生産能は、例えば、血清アルブミン濃度を測定する方法により、培養液中のアルブミン濃度を分析することで確認できる。また、尿素合成能は、例えば、Colorimetric assay(シグマ社)を使用して確認できる。本発明のCYPは特に制限はないが、例えばCYP1A1、CYP2C8、CYP2C9、CYP3A4などが挙げられる。CYPの活性測定方法は、当業者に周知の方法を使用することができる。

0071

本発明の方法により製造された肝前駆細胞及び肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)の機能や形態は、ヒト成熟肝細胞により近いため、肝炎ウイルスに感染しうる。

0072

本発明は、肝炎ウイルス感染阻害剤のスクリーニング方法を提供する。該方法では、本発明の方法により製造された肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)に、被検物質の存在下において肝炎ウイルスを接触させる。次いで、肝炎ウイルスを接触させた該細胞における肝炎ウイルスの感染の有無を検査する。次いで、肝炎ウイルスの感染を阻害する物質を選択する。細胞への肝炎ウイルスの接触は、常法によって実施することができる。

0073

肝炎ウイルスとしては、特に制限はないが、C型肝炎ウイルスA型肝炎ウイルスB型肝炎ウイルスが含まれる。これら肝炎ウイルスは、株化されたものであってもよいし、肝炎ウイルス感染者から直接単離されたものでもよい。また、精製された状態であってもよいし、クルードな状態(例えば感染者から得られた血清の状態)であってもよい。

0074

肝炎ウイルスの感染の有無は、例えば細胞中の肝炎ウイルス量を指標に検査することができる。細胞中の肝炎ウイルス量は、例えば細胞中の肝炎ウイルスのRNA量を指標に判定できる。肝炎ウイルスのRNA量は、常法に従って測定することができる。また、本発明者らが確立した方法によって測定してもよい(T.Takeuchi et al. Real−Time Detection System for Quantification of Hepatitis C Virus Genome. Gastroenterology 1999, 116:636−642)。

0075

さらに、本発明は、ウイルス性肝炎治療剤のスクリーニング方法を提供することができる。該方法では、本発明の方法により製造された肝前駆細胞または肝前駆細胞から分化させた成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)に、肝炎ウイルスを接触させる。次いで、肝炎ウイルスが感染した該細胞に、被検物質を接触させる。次いで、被検物質を接触させた細胞における肝炎ウイルスの増殖を測定する。次いで、肝炎ウイルスの増殖を阻害する物質を選択する。

0076

肝炎ウイルスの増殖を阻害する物質には、1)被検物質を接触させていない場合と比較して、肝炎ウイルスの増殖を阻害する物質、2)肝炎ウイルスの増殖を完全に阻害する物質、3)肝炎ウイルスを消失させる物質の全てが含まれる。肝炎ウイルスの増殖や消失は、細胞中の肝炎ウイルス量を測定することで検査することができる。

0077

本発明において、被検物質は、通常、分化成熟肝細胞の培地や培養液に被検物質を添加することによって、該細胞に接触させることができる。その他、分化成熟肝細胞内で被検物質をコードする遺伝子を発現させることによって、該細胞に接触させることができる。あるいは、被検物質を産生する細胞と分化成熟肝細胞を共培養することによっても、被検物質を該細胞に接触させることができる。

0078

本発明の分化成熟肝細胞の機能や形態は、成熟肝細胞により近いため、肝炎ウイルスに感染しうる。よって、本発明は肝炎ウイルスの培養方法を提供することができる。本発明の肝炎ウイルスの培養方法において、ウイルスの種類は特に限定されないが、例えば、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス及びE型肝炎ウイルスが挙げられる。本発明の肝炎ウイルスの培養方法は、既に単離されたウイルスの継代増幅に有用である。また、本発明の肝炎ウイルスの培養方法は、環境や患者に由来するサンプルから肝炎ウイルスを分離することができる。

0079

本発明のヒト肝臓モデル動物は、本発明の分化成熟肝細胞を非ヒト哺乳動物に移植することによって得られる。非ヒト哺乳動物に対する移植のための、分化成熟肝細胞の投与経路としては、肝臓表面への直接投与、肝臓内投与、門脈内投与、脾臓内投与、経口投与皮下投与筋肉内投与静脈内投与動脈内投与、舌下投与経直腸投与、経投与、経皮投与等が挙げられるが、本発明の分化成熟肝細胞の生着率の観点から、好ましくは肝臓表面への直接投与、肝臓内投与、脾臓内投与、動脈内投与及び静脈内投与であり、より好ましくは肝臓内投与、脾臓内投与、肝動脈内投与である。

0080

本発明のヒト肝臓モデル動物における、分化成熟肝細胞の投与量は、非ヒト哺乳動物及び投与経路によって異なりうるが、通常、1x10〜1x1010個/個体、好ましくは1x102〜1x109個/個体、さらに好ましくは1x103〜1x108個/個体である。なお、本用量を1回量として、複数回投与してもよく、本用量を複数回に分けて投与しても良い。

0081

本発明における非ヒト哺乳動物としては、哺乳動物であれば特に限定されないが、例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ミニブタ、ウマ、ウシ及びサル等が挙げられるが、マウス、ラット、ミニブタ、サルがさらに好ましい。

0082

また、本発明は、ヒト成熟肝細胞を血清、A−83−01及びCHIR99021を含有する培地で培養することにより調製されたヒト肝前駆細胞、又は該ヒト肝前駆細胞から誘導された成熟肝細胞(分化成熟肝細胞)を含む、キットを提供することができる。このようなキットは、ヒト肝前駆細胞又は分化成熟肝細胞を用いて、被検物質の代謝及び/又は肝毒性を評価するために用いられる。別の実施形態においては、このようなキットは、被検物質のスクリーニング、具体的には、肝疾患または胆管疾患の治療剤のスクリーニング、肝炎ウイルス感染阻害剤のスクリーニング、ウイルス性肝炎治療剤のスクリーニング等に用いることも可能である。それぞれの具体的な評価方法、スクリーニング方法は、既述に順じる。

0083

以下に、実施例及び試験例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。以下において、用いた細胞に関する年齢・月齢情報は、それぞれ、「M」(Month)、「Y」(Year)の略称により表記する。

0084

(実施例1)
ヒト凍結肝細胞(Lot.ID:HC3−14、45Y、Male、Caucasian、Xenotech社製)を、解凍用培地(William’s E培地(Life Technologies社製、32551−020)、10% FBS(Life Technologies社製)、10−4M insulin(Sigma社製)、1x antibiotic/antimycotic solution(Life Technologies社製))に懸濁し、500rpm(約40xg)、4℃、2minの低速遠心にてヒト肝細胞回収した。回収した細胞を播種培地(L−15培地(Life Technologies社製、11415−064)、1x antibiotic/antimycotic solution (Life Technologies社製))に再度懸濁し、細胞数カウントした。コラーゲンコートプレート(IWAKI社製)に、1x104 cells/cm2となるように播種し、CO2インキュベーター(37℃、5%CO2)内に入れ、細胞が接着した3−5時間後に播種培地から、基礎培地(以下、「SHM培地」(DMEM/F12培地(Life Technologies社製、11320033)、5mMHEPES(Sigma社製、St. Louis、 MO)、30mg/L L−proline(Sigma社製)、0.05% BSA(Sigma社製)、10ng/mL epidermal growth factor(Sigma社製)、insulin−transferrin−serine(ITS)−X(Life Technologies社製)、10−7M dexamethasone(Dex)(Sigma社製)、10mM nicotinamide(Sigma社製)、100mM ascorbic acid−2 phosphate(Wako社製)、1x antibiotic/antimycotic solution(Life Technologies社製))に、10% FBS(Life Technologies社製)、0.5μM A−83−01(WAKO社製)及び3μM CHIR99021(Axon Medchem社製)を加えたAC−F培地、基礎培地に10% FBS(Life Technologies社製)、0.5μM A−83−01(WAKO社製)、3μM CHIR99021(Axon Medchem社製)及び10μM Y−27632(WAKO社製)を加えたYAC−F培地、及び0.5 μM A−83−01(WAKO社製)、3μM CHIR99021(Axon Medchem社製)及び10μM Y−27632(WAKO社製)を加えたYAC培地に置き換えた。その後は2−3日に一回の頻度で各試験用培地を用いて培地交換を行い、CO2インキュベーター(37℃、5%CO2)内で培養を行った。

0085

17日後に位相差顕微鏡にて、培養細胞の形態の観察を行ったところ、AC−F培地及びYAC−F培地で培養した細胞では、小型の細胞が数多くみられ、これらはNuclei/Cytoplasm(N/C)比が高く、白い核が認められたため、肝前駆細胞であることが確認できた(図1A及び図1B)。これに対して、YAC培地で培養した細胞は、12日後においてN/C比が低く、核が黒く、2核の細胞も観察された(図1C)ことから、これらの細胞は肝前駆細胞ではないことが確認できた。また、AC−F培地及びYAC−F培地で培養した細胞は、YAC培地で培養した細胞に比べ、増殖速度が速かった。

0086

上より、成熟肝細胞から肝前駆細胞を得るには、培地中に血清、A−83−01及びCHIR99021を含有することが必要であることが明らかとなった。

0087

(実施例2)
実施例1と同様にヒト凍結肝細胞(10M、Female、Hispanic、Celsis社製)を用いて、AC−F培地で培養を行ったところ、6日後(D6)、9日後(D9)及び12日後(D12)において、肝前駆細胞が観察された(図2)。図2において、矢印は肝前駆細胞から、一部自発的に分化し成熟化した細胞を示す。

0088

(実施例3)
実施例1と同様にヒト凍結肝細胞(2Y、Male、Caucasian、Biopredic社製)を用いて、AC−F培地で培養を行ったところ、7日、及び14日後において、肝前駆細胞が観察された。これに対して、試験培地を10% FBS(Life Technologies社製)のみを含有するFBS培地として、培養を行った場合には、肝前駆細胞は観察されなかった(図3)。

0089

同様にヒト凍結肝細胞(8M、Male、Caucasian、BioreclamationIVT社製)を用いて、AC−F培地で培養を行ったところ、7日、及び14日後において、肝前駆細胞が観察され、試験培地をFBS培地として培養を行った場合には、肝前駆細胞は観察されなかった(図4)。

0090

(実施例4)
uPA遺伝子が肝細胞特異的に発現し、先天的に肝臓が障害を受け続けることで慢性肝障害発症するcDNA−uPA/SCIDマウスに、本発明の肝前駆細胞の移植を行い、cDNA−uPA/SCIDマウスの肝臓に、本発明の肝前駆細胞由来の肝細胞が生着することを確認する。

0091

実施例1と同様にヒト凍結肝細胞(10M、Female、Hispanic、Celsis社製)を用いて、AC−F培地で4日間培養を行った細胞について、PBS(−)で2回洗浄した後に、TrypLEExpress(Thermo社製、SKU:12604013)にて剥離回収して、細胞数の測定を行った。細胞懸濁液を遠心(200xg、5分)した後、5x107cellsになるように、DMEM10(10%FBS−DMEM)に懸濁した。

0092

cDNA−uPA/SCIDマウス(Tateno et. al.、 2015、2−4週齢)をイソフルラン麻酔下にて開腹し、脾臓を露出し、0.5x105〜2x106 cells/mouseで移植した後、開腹部を縫合した。1週間に1回、20〜40uLの血液を眼窩から採取して、血清を分離して、血清中のhuman特異的なアルブミンをALB Human ALBELISAkit(Bethyl社製、商品コード:E88−129)で測定する。細胞移植後8週間に剖検を行い、全血および肝臓・脾臓の組織サンプル(パラフィンおよび凍結ブロック)を作製する。

0093

(実施例5)
肝細胞特異的にtimidine kinaseを発現するため、ガンシクロビル投与によって肝細胞特異的に細胞死を誘導し、肝障害を引き起こすことができる、TK−NOG mouseに本発明の肝前駆細胞の移植を行い、TK−NOG mouseの肝臓に、本発明の肝前駆細胞由来の肝細胞が生着することを確認する。

0094

実施例4と同様にヒト凍結肝細胞(10M、Female、Hispanic、Celsis社製)を用いて、細胞懸濁液を調製した。TK−NOG mouse(Hasegawa et. al.、 2011、7−8週齢、インビボサイエンス社製)に、細胞移植7日前および5日前に、ガンシクロビル(GCV、Sigma社製、G2536−100MG)10mgを測り取り、16.7mLのPBS(−)に溶かし、0.22umフィルターにてろ過滅菌して、10uL/g体重(6mg/kg)を腹腔内投与した。TK−NOG mouseをイソフルラン麻酔下にて開腹し、脾臓を露出し、0.5x105〜2x106 cells/mouseで投与した後、開腹部を縫合した。1週間に1回、20〜40uLの血液を尾静脈から採取して、血清を分離して、血清中のhuman特異的なアルブミンをALB Human ALBELISAkit(Bethyl社製、商品コード:E88−129)で測定する。細胞投与後8週間に剖検を行い、全血および肝臓・脾臓の組織サンプル(パラフィンおよび凍結ブロック)を作製する。

0095

(実施例6)
肝細胞へ分化されたことを確認する遺伝子発現の試験
実施例1と同様にヒト凍結肝細胞を用いて、AC−F培地で培養を行い、肝前駆細胞を調製した後に、oncostatin M(OSM)及びデキサメサゾン(Dex)を含む培地で6日間培養を行い、その後マトリゲルで培養を行い、肝細胞へ分化させる。分化させた肝細胞について、取扱説明書に従って、SurePrint G3 Rat GE 8x60K Kit(G4853A)及びSurePrint G3 Mouse GE 8x60K Ver 2.0 Kit(G4852B)を用い、one−color microarray−based gene expression analysis system(Agilent Technologies社製)によりデータを取得する。強度数値は2を底として対数変換して、Partek Genomics Suite 6.6(Partek Inc製、 Chesterfield、MO、USA)にデータを読み込む。遺伝子発現の解析にはone−wayANOVAを用い、発現に差のある遺伝子を同定する。それぞれの解析において、P値及び変化量の比を算出する。Partek Genomics Suite 6.6を用い、全データセット又はソート済みのデータセットについて、選択したプローブセットを用いたEuclidean distances of average linkage clusteringの手法によって、Unsupervised clustering及びヒートマップ作成を実施し、肝特異的遺伝子の発現の確認を行う。

0096

(実施例7)胆管上皮細胞へ分化したことを確認する試験
セクレチンアッセイ
実施例1と同様にヒト凍結肝細胞を用いて、AC−F培地で培養を行い、肝前駆細胞を調製した後に、mTeSR1及びYACを含む培地で、MEF上で、6日間培養を行い、その後2%マトリゲルを添加して2日間培養を行い、胆管上皮細胞へ分化させる。分化させた胆管上皮細胞について、ラットセクレチンを2x10−7 M(Wako社製)にて添加して30分培養したのち、位相差顕微鏡を用いて、胆管様構造における管腔領域の拡大を観察して、胆管上皮細胞への分化の確認を行う。

0097

(実施例8)
フルオレセインジアセテートアッセイ
実施例7と同様に、肝前駆細胞から胆管上皮細胞へ分化させ、得られた胆管上皮細胞にフルオレセインジアセテートを添加して、15分培養したのち、新しい培地に交換する。さらに30分間培養を継続することで分解されたフルオレセインの管腔領域への輸送を促す。そののち、培地をHBSS(+)に置換し、蛍光顕微鏡にてフルオレセインの分布を観察して、胆管上皮細胞への分化の確認を行う。

0098

(実施例9)
肝細胞へ分化させた際の肝特異的遺伝子の発現の確認試験
実施例6と同様に、肝前駆細胞から肝細胞へ分化させ、得られた肝細胞についてmiRNeasy Mini Kit (QIAGEN社製、 Venlo、 The Netherlands)を用い、トータルRNAを抽出する。取扱説明書に従って、High−CapacitycDNAReverse Transcription Kit (Life Technologies社製)を用いて逆転写を行う。作製したcDNAを鋳型に、Platinum SYBR Green qPCRSuperMix UDG (Invitrogen社製)を用いてPCRを行い、肝特異的遺伝子の発現の確認を行う。

0099

(実施例10)
実施例1と同様にヒト凍結肝細胞(10M、Female、Hispanic、Celsis社製)を用いて、AC−F培地で11日間培養を行った細胞について、PBS(−)で2回洗浄した後に、TrypLEExpress(Thermo社製、SKU:12604013)にて剥離回収して、細胞数の測定を行った。細胞懸濁液を遠心(200xg、5分)した後、5x107cellsになるように、DMEM10(10%FBS−DMEM)に懸濁した。

0100

cDNA−uPA/SCIDマウス(Tateno et. al.、 2015、2−4週齢、n=3)をイソフルラン麻酔下にて開腹し、脾臓を露出し、1x106 cells/mouseで移植した後、開腹部を縫合した。1週間に1回、20〜40uLの血液を眼窩から採取して、血中のhuman特異的なアルブミンを Human ALBELISAkit(Bethyl社製、商品コード:E88−129)で測定した。図5に示すようにマウス血中human ALBが存在することが確認でき、肝前駆細胞由来の肝細胞が生着することが確認された。なお、細胞投与後70日における血中human ALBは、それぞれ17.2mg/mL、12.1mg/mL及び12.0mg/mLであった。

0101

また、細胞投与後70日のマウスの肝臓におけるHuman CYP2C9の発現の確認を行ったところ、それぞれ94.6〜96.1%(Right medial lobe)、91.3〜97.2%(Left medial lobe)及び93.1〜96.0%(Total)発現していることが確認された(それぞれ図6及び7)。

0102

(実施例11)
実施例10と同様にヒト凍結肝細胞(10M、Female、Hispanic、Celsis社製)を用いて、AC−F培地で11日間培養を行った細胞について、PBS(−)で2回洗浄した後に、TrypLEExpress(Thermo社製、SKU:12604013)にて剥離回収して、細胞数の測定を行った。細胞懸濁液を遠心(200xg、5分)した後、5x107cellsになるように、DMEM10(10%FBS−DMEM)に懸濁した。TK−NOG mouse(Hasegawa et. al.、 2011、7−8週齢、インビボサイエンス社製、n=2)にガンシクロビル(GCV)を投与し、投与1週間後にALTを測定して400−1600 U/dLの値を示した個体を被移植動物として使用した。なおGCV の調製に当たっては500 mg(田辺三菱製薬点滴静注用デノシン)を10 mLの注射用蒸留水(大塚)で溶解(50 mg/mL)し、0.2mLずつ分注したものをオリジナルストックとし、移植時にこれをPBS(−)で5倍希釈したものを用事調製し、マウス体重10gあたり0.1mLを腹腔内投与して、肝細胞特異的に細胞死を誘導した。TK−NOG mouseをイソフルラン麻酔下にて開腹し、脾臓を露出し、1x106 cells/mouseで投与した後、開腹部を縫合した。1週間に1回、20〜40uLの血液を尾静脈から採取して、血清を分離して、血清中のhuman特異的なアルブミンをALB Human ALBELISAkit(Bethyl社製、商品コード:E88−129)で測定した。図8に示すようにマウス血清中human ALBが存在することが確認でき、肝前駆細胞由来の肝細胞が生着することが確認された。なお、細胞投与後60日における血清中human ALBは、それぞれの個体で8.1mg/mL及び2.2mg/mLであった。

0103

また、細胞投与後60日におけるマウスの肝臓におけるHuman CYP2C9の発現の確認を行ったところ、それぞれの個体で57.5%及び30.6%発現していることが確認された(図9及び10)。

0104

(実施例12)
実施例1同様にヒト凍結肝細胞1(10M、Female、Hispanic、Celsis社製)及びヒト凍結肝細胞2(8M、Male、Caucasian、BioreclamationIVT社製)を用いて、AC−F培地で培養を行い、肝前駆細胞(それぞれ「FCL」、「DUX」と言う)を調製した後に、oncostatin M(OSM、5ng/ml)及びデキサメサゾン(Dex、10−6M)を含む培地で6日間培養を行い、その後マトリゲルで2日間培養を行い、肝細胞へ分化させた。肝前駆細胞及び分化させた肝細胞について、メタノール(MeOH、1%濃度)及びオメプラゾール(OMP、50 μM)を用いて、代謝酵素CYP1A2の活性の測定を行った。また、蒸留水及びフェノバルビタール(1 mM)を用いて、代謝酵素CYP3A4の活性の測定を行った。代謝酵素の活性は、プロメガ社のLuciferin1A2キット及び、Luciferin−IPAキットによりそれぞれ行った。肝前駆細胞を肝細胞に分化させることにより、CYP1A2及びCYP3A4が誘導されることが明らかとなった(図11〜14)。

0105

(実施例13)
実施例1と同様にヒト凍結肝細胞(10M、Female、Hispanic、Celsis社製)を用いて、AC−F培地で培養を行い、肝前駆細胞を調製した後に、oncostatin M(OSM、5ng/ml)及びデキサメサゾン(Dex、10−6M)を含む培地で6日間培養を行い、その後マトリゲルで2日間培養を行い、肝細胞へ分化させた。肝前駆細胞及び分化させた肝細胞について、PCRを用いて、各代謝酵素等の発現量を測定した。肝前駆細胞を肝細胞に分化させることにより、ALB、TAT、TDO2、TTR、G6PC、NTCP、CYP1A2、CYP2B6、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4及びCYP7A1が誘導されることが明らかとなった(図15〜27)。

0106

(実施例14)
実施例1と同様にヒト凍結肝細胞(10M、Female、Hispanic、Celsis社製)を用いて、肝前駆細胞を調製した後に、cDNA−uPA/SCIDマウス(2−4M、Male、フェニクスバイオ社製)をイソフルラン麻酔下にて開腹し、脾臓を露出し、0.5x105〜2x106 cells/mouseで移植した後、開腹部を縫合した。移植後73日目に、肝臓を摘出して肝細胞をかん流分離し、4x105 cells/wellで24穴コラーゲンプレート(IWAKI社製)上で2%FBS−SHM培地を用いて4日間培養を行った。図28及び図29はそれぞれ、移植前の肝前駆細胞及び移植後取り出し、4日間培養を行った細胞の写真であり、形態学的な観察から、移植された細胞がマウス肝臓内で完全に肝細胞へと成熟している様子がうかがえた。

0107

マウスから取り出した肝細胞について、メタノール(MeOH、1%濃度)及びオメプラゾール(OMP、50μM)を用いて、代謝酵素CYP1A2の活性の測定を行った。また、リファンピシン(RF、10μM)、メタノール(MeOH、1%濃度)、フェノバルビタール(1 mM)及び蒸留水を用いて、代謝酵素CYP3A4の活性の測定を行った。代謝酵素の活性は、プロメガ社のLuciferin1A2キット及び、Luciferin−IPAキットによりそれぞれ行った。動物の肝に移植され、培養された肝前駆細胞についても、オメプラゾールによりCYP1A2が、リファンピシン及びフェノバルビタールによりCYP3A4が誘導されることが明らかとなった(図30及び図31

0108

(実施例15)
実施例1と同様にヒト凍結肝細胞(8M、Male、Caucasian、BioreclamationIVT社製)を用いて、肝前駆細胞を調製し、実施例14と同様に移植及び培養を行った。図32及び図33はそれぞれ、移植前の肝前駆細胞及び移植後取り出し、4日間培養を行った細胞の写真である。

0109

マウスから取り出した細胞について、実施例14と同様に、代謝酵素の活性測定を行ったところ、実施例14と同様、オメプラゾールによりCYP1A2が、リファンピシン及びフェノバルビタールによりCYP3A4が誘導されることが明らかとなった(図34及び図35

0110

(実施例16)
実施例1と同様にヒト凍結肝細胞(1Y、Male)を用いて、肝前駆細胞を調製し、実施例14と同様に移植及び培養を行った。図36及び37はそれぞれ、移植前の肝前駆細胞及び移植後取り出し、4日間培養を行った細胞の写真である。

実施例

0111

マウスから取り出した細胞について、実施例14と同様に、代謝酵素の活性測定を行ったところ、実施例14と同様、オメプラゾールによりCYP1A2が、リファンピシン及びフェノバルビタールによりCYP3A4が誘導されることが明らかとなった(図38及び図39

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