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技術 フィルムおよびそれを用いてなる積層シートと積層構造体

出願人 東レ株式会社
発明者 青山滋吉田昌平
出願日 2017年9月25日 (2年5ヶ月経過) 出願番号 2017-550639
公開日 2019年9月12日 (6ヶ月経過) 公開番号 WO2018-079161
状態 不明
技術分野
  • -
主要キーワード 厚み方向位置 薄膜層厚 エアコンモータ 配向測定 損失正接tanδ 転移熱 ポリエチレングリコール系樹脂 プロファイルモード
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (1)

課題・解決手段

フィルム厚み方向へのラマン分光による配向測定により求められる配向パラメーターが1.5以上の層(領域I)を有し、フィルム面内ヤング率が最も小さい方向(方向b)の25℃10Hzでの方向bの損失正接をtanδbとしたとき、tanδbが0.03以上であるフィルム、およびそれを用いてなる積層シート積層構造体。本発明により、耐熱性および寸法安定性に優れ、かつ、制振性形状追従性に優れたフィルムと、それを用いた積層シートと積層構造体が提供される。

概要

背景

ポリエステル(特にポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリエチレン−2、6−ナフタレンジカルボキシレートなど)樹脂機械特性熱特性耐薬品性電気特性成形性に優れ、様々な用途に用いられている。そのポリエステルをフィルム化したポリエステルフィルム、中でも二軸配向ポリエステルフィルムは、その機械特性、電気的特性などから、銅貼り積層板太陽電池用バックシート粘着テープフレキシブルプリント基板メンブレンスイッチ面状発熱体、もしくはフラットケーブルモーター絶縁材料などの電気絶縁材料磁気記録材料や、コンデンサ用材料、包装材料自動車用材料、建築材料写真用途、グラフィック用途感熱転写用途などの各種工業材料として使用されている。

また、近年、電子部品の小型化が進み、高集積化され、また取り扱われるデータ量が膨大となってきている。それに伴い、その動作安定性のために、それに用いられる部品等の微小振動制御が極めて重要になってきている。例えば、ハードディスクなどの作動高速化に当たっては、僅かな設計外の微小振動が、読み込みの速度に大きく影響を与えたりしており、モーター等の絶縁材料、回路材料筐体材料など、従来のポリエステルフィルムが使用されている部分(モーター等の絶縁フィルム電子部品用粘着テープ、フレキシブルプリント基板、メンブレンスイッチなど)においても、微小振動を抑制することが重要となっている。

また、自動車分野や鉄道分野、航空機分野においては、室内空間の静寂性向上の要求が高まり、風切り音などの外部からのごく僅かな微小振動や、エンジンノイズなどを抑える技術が求められている。

また、風力発電分野では、駆動中のなどの衝突に対して振動や衝撃を抑え、ブレード等の破損を防止するため、衝撃を吸収する技術が求められている。

また、医療用分野においては、患者の負担低減のため、経皮吸収剤等のフィルムを貼り付ける形の薬の適用範囲が拡大してきている。この経皮吸収剤は薬剤を含有する粘着剤基材のフィルム上に設けたものであり、PETフィルムなどのポリエステルフィルムが主に用いられている。しかしながら、ポリエステルフィルムは剛性が高いので使用時にゴワ付き、またフィルムが動く際に音がする等の問題があり、使用時の装着感を高め、音を抑制することが求められている。さらには人体に装着するフレキシブルデバイスにおいても同様に装着感を高め、音を抑制することが求められている。

従来、振動や音を抑える材料として、ゴムエラストマーに多量の粒子を添加したものが用いられている(特許文献1)。また、自動車用途においては、たとえば窓においてはガラスの中間にポリビニルブチラール系樹脂に粒子を含有させたものが用いられている(特許文献2)。また、風力発電用途においてはブレード表面にフィルムを貼り合わせたりする場合がある(特許文献3)

概要

フィルム厚み方向へのラマン分光による配向測定により求められる配向パラメーターが1.5以上の層(領域I)を有し、フィルム面内ヤング率が最も小さい方向(方向b)の25℃10Hzでの方向bの損失正接をtanδbとしたとき、tanδbが0.03以上であるフィルム、およびそれを用いてなる積層シート積層構造体。本発明により、耐熱性および寸法安定性に優れ、かつ、制振性形状追従性に優れたフィルムと、それを用いた積層シートと積層構造体が提供される。

目的

本発明の課題は、制振性および寸法安定性、耐熱性の全てに優れたフィルムを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
- 件
牽制数
- 件

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請求項1

フィルム厚み方向へのラマン分光による配向測定により求められる配向パラメーターが1.5以上の層(領域I)を有し、フィルム面内ヤング率が最も小さい方向(方向b)の25℃10Hzでの方向bの損失正接をtanδbとしたとき、tanδbが0.03以上であるフィルム

請求項2

25℃10Hzでの、方向bとはフィルム面内で垂直な方向(方向a)の損失正接をtanδaとしたとき、tanδaとtanδbの比tanδa/tanδbが1/3〜3/1の範囲にある請求項1に記載のフィルム。

請求項3

前記配向パラメーターが1.5未満の層(領域II)を有する請求項1または2に記載のフィルム。

請求項4

前記領域Iの厚みの和TI(μm)と、前記領域IIの厚みの和TII(μm)の比TII/TIが1/4〜15/1の範囲にある請求項3に記載のフィルム。

請求項5

方向bのフィルムのヤング率をEb(GPa)、方向bとはフィルム面内で垂直な方向(方向a)のフィルムのヤング率をEa(GPa)としたときに、EaとEbの比Ea/Ebが1/1〜3/1の範囲にある請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム。

請求項6

方向bの100%伸張時応力が100MPa以下である請求項1〜5のいずれかに記載のフィルム。

請求項7

少なくとも2層を有するフィルムであって、結晶性ポリエステルを主たる成分とする層(A層)と、熱可塑性エラストマーを主たる成分とする層(B層)を含む請求項1〜6のいずれかに記載のフィルム。

請求項8

前記A層の厚みの和TA(μm)と、前記B層の厚みの和TB(μm)の比TB/TAが1/4〜15/1の範囲にある請求項7に記載のフィルム。

請求項9

前記A層を構成する樹脂組成物融点TmAが230℃以上280℃以下であり、前記B層を構成する樹脂組成物の融点TmBが140℃以上240℃以下である請求項7または8に記載のフィルム。

請求項10

前記A層を構成する樹脂組成物の融点TmAと前記B層を構成する樹脂組成物の融点TmBの間に微少吸熱ピークを有する請求項7〜9のいずれかに記載のフィルム。

請求項11

前記B層中の前記熱可塑性エラストマーがポリエステル系エラストマーである請求項7〜10のいずれかに記載のフィルム。

請求項12

前記B層が充填材を含み、その充填材の含有率がB層を構成する樹脂組成物全体に対して1〜50重量%の範囲にある請求項7〜11のいずれかに記載のフィルム。

請求項13

前記A層が少なくとも片側表層に存在する請求項7〜12のいずれかに記載のフィルム。

請求項14

前記B層が少なくとも片側表層に存在する請求項7〜12のいずれかに記載のフィルム。

請求項15

請求項1〜14のいずれかに記載のフィルム上に粘着層を形成してなる積層シート

請求項16

請求項1〜14のいずれかに記載のフィルムと、ガラス、金属、繊維強化プラスチックからなる群から選ばれる1種以上の材料とが一体化されてなる積層構造体

請求項17

風力発電機自動車鉄道航空機のいずれかに用いられる請求項16に記載の積層構造体。

請求項18

請求項1〜14のいずれかに記載のフィルムと、織布、不織布からなる群から選ばれる1種以上の材料とが一体化されてなる積層構造体。

請求項19

医療用に用いられる請求項18に記載の積層構造体。

請求項20

フレキシブルデバイスに用いられる請求項1〜14のいずれかに記載のフィルム。

技術分野

0001

本発明は、優れた制振性を有するとともに良好な寸法安定性耐熱性を有するフィルムと、該フィルムと粘着層からなる積層シート、および該フィルムとガラス、金属、繊維強化プラスチックからなる群から選ばれる1種以上の材料とが一体化されてなる積層構造体に関する。

背景技術

0003

また、近年、電子部品の小型化が進み、高集積化され、また取り扱われるデータ量が膨大となってきている。それに伴い、その動作安定性のために、それに用いられる部品等の微小振動制御が極めて重要になってきている。例えば、ハードディスクなどの作動高速化に当たっては、僅かな設計外の微小振動が、読み込みの速度に大きく影響を与えたりしており、モーター等の絶縁材料、回路材料筐体材料など、従来のポリエステルフィルムが使用されている部分(モーター等の絶縁フィルム電子部品用粘着テープ、フレキシブルプリント基板、メンブレンスイッチなど)においても、微小振動を抑制することが重要となっている。

0004

また、自動車分野や鉄道分野、航空機分野においては、室内空間の静寂性向上の要求が高まり、風切り音などの外部からのごく僅かな微小振動や、エンジンノイズなどを抑える技術が求められている。

0005

また、風力発電分野では、駆動中のなどの衝突に対して振動や衝撃を抑え、ブレード等の破損を防止するため、衝撃を吸収する技術が求められている。

0006

また、医療用分野においては、患者の負担低減のため、経皮吸収剤等のフィルムを貼り付ける形の薬の適用範囲が拡大してきている。この経皮吸収剤は薬剤を含有する粘着剤基材のフィルム上に設けたものであり、PETフィルムなどのポリエステルフィルムが主に用いられている。しかしながら、ポリエステルフィルムは剛性が高いので使用時にゴワ付き、またフィルムが動く際に音がする等の問題があり、使用時の装着感を高め、音を抑制することが求められている。さらには人体に装着するフレキシブルデバイスにおいても同様に装着感を高め、音を抑制することが求められている。

0007

従来、振動や音を抑える材料として、ゴムエラストマーに多量の粒子を添加したものが用いられている(特許文献1)。また、自動車用途においては、たとえば窓においてはガラスの中間にポリビニルブチラール系樹脂に粒子を含有させたものが用いられている(特許文献2)。また、風力発電用途においてはブレード表面にフィルムを貼り合わせたりする場合がある(特許文献3)

先行技術

0008

特開2011−38069号公報
国際公開第2009/131195号パンフレット
特開2011−52683公報

発明が解決しようとする課題

0009

しかしながら、従来のゴムや、通常のエラストマー(ウレタン系、アクリル系、オレフィン系など)をベースとした制振材料は耐熱性や寸法安定性等の特性が乏しいといった問題があり、電子部品や自動車といった高耐熱、高耐久を要求される用途への適用は制限があった。また、シリコーン系エラストマーは耐熱性に優れるものの、シリコン汚染の問題で電子部品への使用を嫌煙される傾向にある。

0010

また、通常のポリエステルフィルムは寸法安定性に優れるものの、剛直であり、振動、音や衝撃を抑えることは困難であった(以下、振動、音や衝撃を抑える特性を制振性と称す)。また、医療用用途においても、エラストマーをベースとしたフィルムでは、粘着層等を加工する際に、フィルムが伸びてしまうため、寸法安定性とゴワ付きや音を抑制することを両立させることは困難であった。また、フレキシブルデバイスにおいても加工時の寸法安定性とゴワ付きや音を抑制することを両立させることは困難であった。

0011

そこで本発明の課題は、制振性および寸法安定性、耐熱性の全てに優れたフィルムを提供するとともに、それを用いた制振性および寸法安定性、耐熱性に優れた積層シートと積層構造体を提供することにある。

課題を解決するための手段

0012

上記課題を解決するために、本発明は以下の構成をとる。すなわち、
(1)フィルム厚み方向へのラマン分光による配向測定により求められる配向パラメーターが1.5以上の層(領域I)を有し、フィルム面内ヤング率が最も小さい方向(方向b)の25℃10Hzでの方向bの損失正接をtanδbとしたとき、tanδbが0.03以上であるフィルム。
(2)25℃10Hzでの、方向bとはフィルム面内で垂直な方向(方向a)の損失正接をtanδaとしたとき、tanδaとtanδbの比tanδa/tanδbが1/3〜3/1の範囲にある(1)に記載のフィルム。
(3)前記配向パラメーターが1.5未満の層(領域II)を有する(1)または(2)に記載のフィルム。
(4)前記領域Iの厚みの和TI(μm)と、前記領域IIの厚みの和TII(μm)の比TII/TIが1/4〜15/1の範囲にある(3)に記載のフィルム。
(5)方向bのフィルムのヤング率をEb(GPa)、方向bとはフィルム面内で垂直な方向(方向a)のフィルムのヤング率をEa(GPa)としたときに、EaとEbの比Ea/Ebが1/1〜3/1の範囲にある(1)〜(4)のいずれかに記載のフィルム。
(6)方向bの100%伸張時応力が100MPa以下である(1)〜(5)のいずれかに記載のフィルム。
(7)少なくとも2層を有するフィルムであって、結晶性ポリエステルを主たる成分とする層(A層)と、熱可塑性エラストマーを主たる成分とする層(B層)を含む(1)〜(6)のいずれかに記載のフィルム。
(8)前記A層の厚みの和TA(μm)と、前記B層の厚みの和TB(μm)の比TB/TAが1/4〜15/1の範囲にある(7)に記載のフィルム。
(9)前記A層を構成する樹脂組成物融点TmAが230℃以上280℃以下であり、前記B層を構成する樹脂組成物の融点TmBが140℃以上240℃以下である(7)または(8)に記載のフィルム。
(10)前記A層を構成する樹脂組成物の融点TmAと前記B層を構成する樹脂組成物の融点TmBの間に微少吸熱ピークを有する(7)〜(9)のいずれかに記載のフィルム。
(11)前記B層中の前記熱可塑性エラストマーがポリエステル系エラストマーである(7)〜(10)のいずれかに記載のフィルム。
(12)前記B層が充填材を含み、その充填材の含有率がB層を構成する樹脂組成物全体に対して1〜50重量%の範囲にある(7)〜(11)のいずれかに記載のフィルム。
(13)前記A層が少なくとも片側表層に存在する(7)〜(12)のいずれかに記載のフィルム。
(14)前記B層が少なくとも片側表層に存在する(7)〜(12)のいずれかに記載のフィルム。
(15)(1)〜(14)のいずれかに記載のフィルム上に粘着層を形成してなる積層シート。
(16)(1)〜(14)のいずれかに記載のフィルムと、ガラス、金属、繊維強化プラスチックからなる群から選ばれる1種以上の材料とが一体化されてなる積層構造体。
(17)風力発電機、自動車、鉄道、航空機のいずれかに用いられる(16)に記載の積層構造体。
(18)(1)〜(14)のいずれかに記載のフィルムと、織布、不織布からなる群から選ばれる1種以上の材料とが一体化されてなる積層構造体。
(19)医療用に用いられる(18)に記載の積層構造体。
(20)フレキシブルデバイスに用いられる(1)〜(14)のいずれかに記載のフィルム。

発明の効果

0013

本発明によれば、耐熱性や寸法安定性に優れ、シリコンの汚染の懸念のない、かつ制振性、形状追従性に優れるフィルムを提供することができる。かかるフィルムは、銅貼り積層板、太陽電池用バックシート、粘着テープ、フレキシブルプリント基板、メンブレンスイッチ、面状発熱体、もしくはフラットケーブルなどの電気絶縁材料、コンデンサ用材料、筐体材料、自動車・鉄道・航空機用制振材料、建築制振材料をはじめとした制振性と耐熱性が重視されるような用途、風力発電ブレードや航空機の構造体保護用材料、医療用材料、フレキシブルデバイスに好適に使用することができる。特には、かかるフィルム自体の他、該フィルムに粘着層を設けた積層シートや、該フィルムとガラス、金属、繊維強化プラスチックからなる群から選ばれる1種以上の材料とが一体化されてなる積層構造体として用いることで、より静粛な電子機器、自動車、鉄道、航空機、及び発電効率耐久性の高い風力発電機を提供することができる。さらには、かかるフィルムと織布、不織布からなる群から選ばれる1種以上の材料とを一体化することで、ゴワ付きや音が抑制され、装着感が良く、加工時の寸法安定性の良い医療用材料を提供することが可能となる。

図面の簡単な説明

0014

粒子を外接直方体で囲んだ模式図である。

0015

以下に、本発明について、実施の形態とともに詳細に説明する。
本発明のフィルムは、フィルム厚み方向へのラマン分光による配向測定により求められる配向パラメーターが1.5以上の層(領域I)を有し、フィルム面内でヤング率が最も小さい方向(方向b)の25℃10Hzでの方向bの損失正接をtanδbとしたとき、tanδbが0.03以上であるフィルムとする必要がある。配向パラメーターは分子配向結晶化の指標であり、配向パラメーターが高いほど分子が配向・結晶化していることを表し、耐熱性や寸法安定性が高くなる。また、損失正接はフィルム材料粘弾性の指標であり、損失正接が大きくなるほど、粘性が高くなり、外部からの振動を吸収し、熱エネルギーへと変換するのが容易となる。また、材料自身からの音の発生も抑えられる。その結果、制振性が高くなる。通常のフィルムの場合、配向パラメーターが高くなるほど、剛直となるため制振性は失われる。それに対し、本発明においては、所定の配向パラメーターとなる領域を有する状態下で高損失正接とした結果、とくに、配向パラメーターが1.5以上の層(領域I)を有する状態下でtanδbが0.03以上であるフィルムとした結果、高い耐熱性および寸法安定性と、優れた制振性との両立を可能としたものである。すなわち、配向パラメーターが1.5以上の層(領域I)を有するという要件と、tanδbが0.03以上であるという要件の両方を満たすことによってはじめて、高い耐熱性および寸法安定性と、優れた制振性との両方を満たすフィルムが完成されたのである。

0016

このように、本発明のフィルムにおいて、まず、フィルム厚み方向へのラマン分光による配向測定により求められる配向パラメーターが1.5以上の層(領域I)を有することが必要である。ここでいうラマン分光により求められる配向パラメーターとは、フィルム断面ラマン分光法により測定して得られるもので、異方性に対し強い感度を有するピーク強度比にて定義されるものである。例えば以下の方法で測定することにより得られるものである。なお、複数の樹脂が混合されている場合など、異方性に対し強い感度を有するピークが複数存在する場合などは、最もピーク強度が高いピークを用いて配向パラメーターを求める。

0017

[層を構成する主たる成分が芳香族ポリエステル系樹脂の場合]
以下の(a1)〜(a3)の方法により得ることが出来る。
(a1)フィルム面内方向に対し、平行方向の偏光照射した場合、および垂直方向の偏光を照射した場合、それぞれにおいてラマンバンドを求める。
(a2)得られたラマンバンドのうち、波数1615cm−1近傍のC=C伸縮振動のピーク強度をそれぞれ求め、平行方向の偏光を照射した場合のピーク強度をI(平行)、垂直方向の偏光を照射した場合のピーク強度をI(垂直)とする。
(a3)I(平行)とI(垂直)の比I(平行)/I(垂直)にて配向パラメーターとする。

0018

[層を構成する主たる成分が脂肪族ポリエステル系樹脂の場合]
以下の(b1)〜(b3)の方法により得ることが出来る。
(b1)フィルム面内方向に対し、平行方向の偏光を照射した場合、および垂直方向の偏光を照射した場合、それぞれにおいてラマンバンドを求める。
(b2)得られたラマンバンドのうち、波数1730cm−1近傍のC=O伸縮振動のピーク強度をそれぞれ求め、平行方向の偏光を照射した場合のピーク強度をI(平行)、垂直方向の偏光を照射した場合のピーク強度をI(垂直)とする。
(b3)I(垂直)とI(平行)の比I(垂直)/I(平行)にて配向パラメーターとする。

0019

[層を構成する主たる成分がポリエチレン系樹脂の場合]
以下の(c1)〜(c3)の方法により得ることが出来る。
(c1)フィルム面内方向に対し、平行方向の偏光を照射した場合のラマンバンドを求める。
(c2)得られたラマンバンドのうち、波数1130cm−1近傍の対称C−C伸縮振動のピーク強度、および1060cm−1近傍の非対称C−C伸縮振動のピーク強度をそれぞれ求め、対称C−C伸縮振動のピーク強度をI(対称)、非対称C−C振動のピーク強度をI(非対称)とする。
(c3)I(対称)とI(非対称)の比I(対称)/I(非対称)にて配向パラメーターとする。

0020

[層を構成する主たる成分がポリプロピレン系樹脂の場合]
以下の(d1)〜(d3)の方法により得ることが出来る。
(d1)フィルム面内方向に対し、平行方向の偏光を照射した場合のラマンバンドを求める。
(d2)得られたラマンバンドのうち、波数810cm−1近傍のC−C伸縮振動のピーク強度、および波数840cm−1近傍のC−H伸縮振動のピーク強度をそれぞれ求め、C−C伸縮振動のピーク強度をI(C−C)、C−H伸縮振動のピーク強度をI(C—H)とする。
(d3)I(C−C)とI(C−H)の比I(C−C)/I(C−H)にて配向パラメーターとする。

0021

[層を構成する主たる成分がポリアミド系樹脂の場合]
以下の(e1)〜(e3)の方法により得ることが出来る。
(e1)フィルム面内方向に対し、平行方向の偏光を照射した場合、および垂直方向の偏光を照射した場合、それぞれにおいてラマンバンドを求める。
(e2)得られたラマンバンドのうち、波数1650cm−1近傍のC=O伸縮振動のピーク強度をそれぞれ求め、平行方向の偏光を照射した場合のピーク強度をI(平行)、垂直方向の偏光を照射した場合のピーク強度をI(垂直)とする。
(e3)I(垂直)とI(平行)の比I(垂直)/I(平行)にて配向パラメーターとする。

0022

本発明のフィルムにおいては、フィルム厚み方向への上述のラマン分光による配向測定により求められる配向パラメーターが1.5以上の層(領域I)を有することが必要であり、より好ましくは、配向パラメーター2.0以上、更に好ましくは3.0以上である。配向パラメーターが1.5以上の層(領域I)を有することで、高い耐熱性と寸法安定性を付与することが可能となる。なお、配向パラメーターの上限は特に制限されるものではないが、実質30以下、より好ましくは20以下である。

0023

本発明のフィルムにおいて、配向パラメーターが1.5以上の(領域I)のみであると、分子鎖緊張して剛直となり、損失正接が低下して制振性は失われる場合がある。そのため、配向パラメーターが1.5未満の層(領域II)も有することが好ましい。

0024

本発明のフィルムにおいて、配向パラメーターが1.5未満の層(領域II)を有する場合、前記領域Iの厚みの和TI(μm)と、領域IIの厚みの和TII(μm)の比TII/TIが1/4〜15/1であるのが好ましい。より好ましくは1/1以上10/1以下である。更に好ましくは3/1以上8/1以下である。TII/TIが1/4に満たないと、制振性や、形状追従性が低下することがある。また、TII/TIが15/1を越えると、フィルムの耐熱性や寸法安定性が低下する傾向にある。本発明のフィルムにおいて、TII/TIを1/4以上15/1以下とすることで、制振性、耐熱性、寸法安定性、形状追従性を全て満たしたフィルムとすることが可能となる。

0025

本発明のフィルムにおいては、さらに、フィルム面内でヤング率が最も小さい方向(方向b)の25℃10Hzでの方向bの損失正接をtanδbとしたとき、tanδbが0.03以上であることが必要である。より好ましくはtanδbが0.05以上、更に好ましくは0.08以上、特に好ましくは0.1以上である。tanδbを0.03以上とすることによって、フィルムに制振性を付与することが可能となる。なお、tanδbの上限は特に制限されるものではないが、寸法安定性、耐熱性と制振性との両立という観点からは、実質1以下である。

0026

本発明のフィルムにおいて、方向bとはフィルム面内で垂直な方向(方向a)の損失正接をtanδaとしたとき、25℃10Hzでのtanδaとtanδbの比tanδa/tanδbが1/3〜3/1であるのが好ましい。より好ましくは1/2〜1/2、更に好ましくは1/1.5〜1.5/1である。tanδa/tanδbを1/3〜3/1とすることによって、フィルム面内のいかなる方向の振動においても優れた制振性を発現することが可能となる。

0027

通常の場合、配向パラメーターを高めるためにはフィルムを延伸するのが有効であるが、その場合分子鎖が緊張して剛直となり、損失正接が低下して制振性は失われる傾向にある。そのため、従来は、配向パラメーターを1.5以上の領域Iを有した上で、tanδbを0.03以上とすることは困難であった。本発明のフィルムにおいて、配向パラメーターを1.5以上の領域Iを有した上でtanδbを0.03以上とするための方法について、以下詳述する。

0028

本発明のフィルムを構成する樹脂は、特に限定されないが、好ましい例として、(i)ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートポリプロピレンテレフタレートポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル系樹脂、(ii)脂肪族ポリエステル樹脂脂肪族芳香族ポリエステル多糖類デンプンを含むポリマーなどの生分解性樹脂、(iii)ポリメタアクリレートなどアクリル系樹脂、(iv)ポリエチレン、ポリプロピレンポリメチルペンテンポリイソプレンエポキシ変性ポリオレフィン酸変性ポリオレフィン脂環式ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、(v)ポリアミド系樹脂、ポリカーボネートポリスチレンポリエーテルポリエステルアミドポリエーテルエステルポリ塩化ビニルポリビニルアルコールポリアセタールポリフェニレンサルファイドポリエーテルエーテルケトンポリウレタンポリスルホンポリフェニレンオキサイドポリイミドポリエーテルイミドポリエステルエラストマーポリアミドエラストマーポリオレフィンエラストマーなどのその他の樹脂、(vi)エポキシ樹脂不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂硬化して得られるもの、およびこれらを成分とする共重合体、またはこれらの混合物などが挙げられる。その中でも、ポリエステル系樹脂(芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂)、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂のいずれかの樹脂を主成分とすることが好ましい。

0029

本発明のフィルムにおいて、耐熱性、寸法安定性等の観点から、構成する樹脂はポリエステルが好ましい。以下、ポリエステルの場合について詳細を記載する。

0030

本発明のフィルムは、結晶性ポリエステルを主たる成分とする層(A層)と、熱可塑性エラストマーを主たる成分とする層(B層)を含むのが好ましい。なお、本発明において、主たる成分とは、対象に対して50質量%以上含む成分を表す。

0031

本発明のフィルムにおいて、結晶性ポリエステルとは、主たる構成成分が、ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分を有してなるポリエステルであり、かつJIS K7122(1987)に準じて、昇温速度20℃/minで樹脂を25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱し(1stRUN)、その状態で5分間保持後、次いで25℃以下となるよう急冷し、再度室温から20℃/minの昇温速度で300℃まで昇温を行って得られた2ndRUNの示差走査熱量測定チャートにおいて、融解ピークピーク面積から求められる結晶融解熱量ΔHmAが、15J/g以上である樹脂である。より好ましくは結晶融解熱量がΔHmA20J/g以上、さらに好ましくは25J/g以上、特に好ましくは30J/g以上の樹脂を用いるのがよい。A層を構成するポリエステルとして、結晶性ポリエステルとすることで、後述する製造方法において、配向・結晶化が容易となり、高耐熱のフィルムとすることができる。なお、本明細書において、構成成分とはポリエステルを加水分解することで得ることが可能な最小単位のことを示す。

0032

かかる結晶性ポリエステルを構成するジカルボン酸構成成分としては、マロン酸コハク酸グルタル酸アジピン酸スベリン酸セバシン酸ドデカンジオン酸ダイマー酸エイコサンジオン酸ピメリン酸アゼライン酸メチルマロン酸エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビドシクロヘキサンジカルボン酸デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸テレフタル酸イソフタル酸フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニルフルオレン酸等芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。また、上述のカルボン酸構成成分のカルボキシル基末端に、l-ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類、およびその誘導体や、オキシ酸類が複数個連なったもの等を付加させたものも好適に用いられる。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。

0033

また、かかるポリエステルを構成するジオール構成成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類シクロヘキサンジメタノールスピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3—ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、芳香族ジオール類等のジオール、上述のジオールが複数個連なったものなどが例として挙げられるがこれらに限定されない。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。

0034

また、本発明のフィルムにおいて、A層中の結晶性ポリエステル中の全ジカルボン酸構成成分中の芳香族ジカルボン酸構成成分の割合は、90モル%以上100モル%以下が好ましい。より好ましくは95モル%以上100モル%以下が好ましい。更に好ましくは98モル%以上100モル%以下、特に好ましくは99モル%以上100モル%以下、最も好ましくは100モル%、すなわちジカルボン酸構成成分全てが芳香族カルボン酸構成成分であるのが良い。芳香族ジカルボン酸構成成分の割合が90モル%に満たないと、耐熱性が低下したりする場合がある。本発明のフィルムにおいて、A層中の結晶性ポリエステル中の全ジカルボン酸構成成分中の芳香族ジカルボン酸構成成分の割合を90モル%以上100モル%以下とすることで、後述する製造方法において、配向・結晶化が容易となり、高耐熱のフィルムとすることができる。

0035

本発明のフィルムにおいて、A層の結晶性ポリエステルの繰り返し単位、すなわち、ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分からなる主たる繰り返し単位は、エチレンテレフタレートエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、プロピレンテレフタレートブチレンテレフタレート、1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートからなるものが好適に用いられ、これらが主たる繰り返し単位となることが好ましい。なお、ここでいう主たる繰り返し単位とは、上記繰り返し単位の合計が、ポリエステル層(A層)に含まれる結晶性ポリエステルの場合は、全繰り返し単位の80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上である。

0036

さらには低コストで、より容易に重合が可能で、かつ耐熱性に優れるという点で、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが主たる繰り返し単位であることが好ましい。この場合、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位として用いた場合はより安価で汎用性のある耐熱性を有するフィルムを得ることができ、またエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートをより主たる繰り返し単位として用いた場合はより耐熱性に優れるフィルムとすることができる。

0037

上述の構成成分(ジカルボン酸とジオール)を適宜組み合わせて、重縮合させることでポリエステルを得ることができるが、本発明のフィルムにおいて、A層の結晶性ポリエステルは、カルボキシル基および/または水酸基を3つ以上有する構成成分などが共重合されていることも好ましい。その場合は、カルボキシル基および/または水酸基を3つ以上有する構成成分の共重合率が、結晶性ポリエステルの全構成成分に対して0.005モル%以上2.5モル%であることが好ましい。

0038

本発明のフィルムにおいて、ポリエステル層(A層)を構成する結晶性ポリエステルの固有粘度(IV)は0.6以上であることが好ましい。より好ましくは0.65以上、更に好ましくは0.68以上、特に好ましくは0.7以上である。IVが0.6に満たないと、熱可塑性エラストマーを主たる成分とする層(B層)との積層が困難であったり、分子間の絡み合いが少なくなりすぎて、機械物性が得られなかったり、経時での機械特性の劣化が進行しやすくなり、脆化しやすくなる場合がある。本発明のフィルムにおいて、ポリエステル層(A層)を構成する結晶性ポリエステルのIVを0.6以上とすることによって、熱可塑性エラストマーを主たる成分とする層(B層)との積層性、およびフィルムの高い機械特性を得ることができる。なお、IVの上限は特に決められるものではないが、重合時間が長くなるためコスト的に不利であったり、溶融押出が困難となるという点から好ましくは1.0以下、更に好ましくは0.9以下である。

0039

なお、上記固有粘度とするには、溶融重合によって所定の溶融粘度になった時点で吐出ストランド化、カッティングを行い、チップ化することにより得られるポリエステルを用いる方法と、目標より低めの固有粘度で一旦チップ化し、その後固相重合を行うことにより得られるポリエステルを用いる方法がある。これらのうち、特にポリエステル層(A層)のIVを0.65以上とする場合には、熱劣化を抑えられ、かつカルボキシル基末端基数を低減できるという点で、目標より低めの固有粘度で一旦チップ化し、その後固相重合を行うことにより得られるポリエステルを用いる方法を用いるのが好ましい。

0040

本発明のフィルムにおいて、ポリエステル層(A層)を構成する結晶性ポリエステルの融点TmAは230℃以上280℃以下であることが好ましい。ここでいう融点TmAとはDSC(示差走査熱量測定)により得られる、昇温過程(昇温速度:20℃/min)における融点TmAであり、上述と同様にJIS K−7121(1987)に基づいた方法により、25℃からポリエステルの融点+50℃まで20℃/分の昇温速度で加熱し(1stRUN)、その状態で5分間保持し、次いで25℃以下となるよう急冷し、再度室温から20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温を行って得られた2ndRunの結晶融解ピークにおけるピークトップの温度でもって結晶性ポリエステルの融点TmAとする。より好ましくは融点TmAが235℃以上275℃以下、更に好ましくは240℃以上265℃以下である。融点TmAが230℃に満たないと、フィルムの耐熱性に劣ったりすることがあり好ましくなく、また、融点TmAが280℃を越えると、押出加工が困難となる場合があるため好ましくない。本発明のフィルムにおいて、ポリエステル層(A層)を構成する結晶性ポリエステルの融点TmAを230℃以上280℃以下とすることにより、耐熱性を有するフィルムとすることができる。なお、複数の結晶融解ピークトップが現れる場合は、最も高いピークトップ温度が上記範囲内であることが好ましい。

0041

本発明のフィルムにおいて、ポリエステル層(A層)を構成する結晶性ポリエステルのカルボキシル基末端基数は40等量/t以下であることが好ましい。より好ましくは30等量/t以下、さらに好ましくは20等量/t以下である。40等量/tを超えると、構造制御したとしても、カルボキシル基末端基由来プロトンによる触媒作用が強く、加水分解や熱分解が促進され通常のフィルムより劣化が進行しやすくなる場合がある。なお、カルボキシル基末端基数を40等量/t以下とするには、1)ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分とのエステル化反応をさせ、溶融重合によって所定の溶融粘度になった時点で吐出、ストランド化、カッティングを行い、チップ化したのち、固相重合する方法、2)緩衝剤エステル交換反応またはエステル化反応終了後から重縮合反応初期(固有粘度が0.3未満)までの間に添加する方法、等の組み合わせ等により得られたポリエステルを用いることにより得ることができる。また、緩衝剤や末端封止剤を成形時に添加することによっても得ることができる。

0042

ここで、上記ポリエステルと組み合わせて耐加水分解剤を添加することもできる。耐加水分解剤とはポリエステルのカルボキシル基または水酸基末端基と反応して結合し、カルボキシル基末端基由来のプロトンの触媒活性消失させる化合物のことであり、具体的には、オキサゾリン基エポキシ基カルボジイミド基イソシアネート基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。耐加水分解剤を用いる場合は、A層に対して0.01重量%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.1重量%以上である。上記ポリエステルと組み合わせて耐加水分解剤を添加することによって、ポリエステルの劣化を抑制することができ、機械特性、耐熱性をより高めることが可能となる。なお、耐加水分解剤の含有量の上限は過剰な耐加水分解剤が難燃性を低下させる場合があるという点からポリエステル層に対して2重量%以下が好ましく、より好ましくは1重量%、さらに好ましくは0.8%重量%以下である。

0043

本発明のフィルムにおいて、A層中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤紫外線吸収剤有機易滑剤、顔料染料、有機または無機微粒子、充填材、帯電防止剤核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。

0044

本発明のフィルムにおいて、B層の主たる成分である熱可塑性エラストマーとは、融点以上に加熱すると熱可塑性性質を示す一方、常温ではゴム弾性の性質を示すポリマーである。具体的には、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマーポリオレフィン系エラストマーポリアミド系エラストマーなどが挙げられる。

0045

本発明のフィルムのB層に用いる熱可塑性エラストマーとしても、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどが挙げられる。

0046

ポリエステル系エラストマーとしては、芳香族ポリエステル脂肪族ポリエステルとのブロック共重合体、および、芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエーテルとのブロック共重合体が挙げられるが、その中でも芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエーテルとのブロック共重合体であることが好ましい。

0047

ポリエステル系エラストマー中の芳香族ポリエステルとしては、ポリブチレンテレフタレート系樹脂および/またはポリエチレンテレフタレート系樹脂であることが好ましい。ここで、ポリブチレンテレフタレート系樹脂とは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、またはテレフタル酸とイソフタル酸を組合せたものを用い、ジオール成分として1,4−ブタンジオールを用いたポリエステルをいうものとするが、このジカルボン酸成分の一部(50モル%未満)を他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置き換えたり、ジオール成分の一部(50モル%未満)をブタンジオール成分以外の低分子ジオール成分で置き換えたりしたポリエステルであってもよい。また、ポリエチレンテレフタレート系樹脂とは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、またはテレフタル酸とイソフタル酸を組合せたジカルボン酸成分を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを用いたポリエステルをいうものとするが、このジカルボン酸成分の一部(50モル%未満)を他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置き換えたり、ジオール成分の一部(50モル%未満)をエチレングリコール成分以外の低分子ジオール成分で置き換えたりしたポリエステルであってもよい。

0048

また、ポリエステル系エラストマー中の脂肪族ポリエーテルとしては、ポリアルキレングリコール系樹脂であることが好ましく、その種類として、ポリエチレングリコール系樹脂ポリプロピレングリコール系樹脂ポリブチレングリコール系樹脂、ポリテトラメチレングリコール系樹脂、ポリへキシレングリコール、ポリへプチレングリコール系樹脂、ポリオクチレングリコール系樹脂、ポリドデシレングリコール系樹脂、また、これらの共重合物などが挙げられるがその限りではない。そのなかでも、ポリテトラメチレングリコール系樹脂および/またはポリエチレングリコール系樹脂であることがさらに好ましい。ここで、ポリアルキレングリコール系樹脂とは、ポリアルキレングリコールを主たる成分とする脂肪族ポリエーテルをいうものとするが、ポリエーテル部分の一部(50質量%未満)を、アルキレングリコール成分以外のジオキシ成分で置き換えた脂肪族ポリエーテルであってもよい。また、ポリテトラメチレングリコール系樹脂とは、ポリテトラメチレングリコールを主たる成分とするポリアルキレングリコールをいうものとするが、脂肪族ポリエーテル部分の一部(50質量%未満)を、テトラメチレングリコール成分以外のジオキシ成分で置き換えた脂肪族ポリエーテルであってもよい。さらに、ポリエチレングリコール系樹脂とは、ポリエチレングリコールを主たる成分とするポリアルキレングリコールをいうものとするが、脂肪族ポリエーテル部分の一部(50質量%未満)を、エチレングリコール成分以外のジオキシ成分で置き換えた脂肪族ポリエーテルであってもよい。その他、ポリエチレングリコール系樹脂、ポリプロピレングリコール系樹脂、ポリブチレングリコール系樹脂、ポリテトラメチレングリコール系樹脂、ポリへキシレングリコール、ポリへプチレングリコール系樹脂、ポリオクチレングリコール系樹脂、ポリドデシレングリコール系樹脂等の脂肪族ポリエーテル系樹脂についても同様に、脂肪族ポリエーテル部分の一部(50質量%未満)を、脂肪族ポリエーテル成分以外のジオキシ成分で置き換えた脂肪族ポリエーテルであってもよい。ここで、「主たる」とは、脂肪族ポリエーテル部分全体を100質量%とした際、50質量%以上を占める場合をいうものとする。

0049

ポリエステル系エラストマーとして市販されているものとしては、東レ・デュポン社製の“ハイトレル(登録商標)”、東洋紡社製の“ペルプレン(登録商標)”、三菱化学社製の“プリマロイ(登録商標)”、ベルポリエステルプロダクツ社製の“PRIT”、“OKY”などが挙げられる。

0050

本発明のフィルムのB層の熱可塑性エラストマーにおいて、ポリスチレン系エラストマーとしては、ポリスチレンとポリブタジエンとのブロック共重合体、ポリスチレンと水素添加ポリブタジエンとのブロック共重合体、ポリスチレンとポリイソプレンとのブロック共重合体、ポリスチレンと水素添加ポリイソプレンとのブロック共重合体、ポリスチレンとポリイソブチレンとのブロック共重合体を挙げることができる。また、本発明のポリスチレン系エラストマーは、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基アルコキシシリル基シラノール基シリルエーテル基ヒドロキシル基、及びエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基変性されていてもよい。

0051

ポリスチレン系エラストマーとして、具体的には、SBSスチレンブタジエンスチレンコポリマー)、SEBS(スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンコポリマー)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー)、SEPS(スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンコポリマー)などが挙げられる。

0052

ポリスチレン系エラストマーとして市販されているものとしては、クレイトンポリマージャパン社製の“クレイトン(登録商標)”、JSR社製の“ダイナロン(登録商標)”、旭化成社製の“タフテック(登録商標)”、“S.O.E.”、“タフプレン(登録商標)”、“アサプレン(登録商標)”、クラレ社製の“セプトン(登録商標)”、アロン化成社製のAR−FLシリーズなどが挙げられる。

0053

本発明のフィルムのB層の熱可塑性エラストマーにおいて、ポリオレフィン系エラストマーの第1の態様は、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる群より選ばれる1つと、ポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン、ポリイソブチレン、及びα−オレフィンからなる群より選ばれる1つとの共重合体である。共重合の形態は、ブロック共重合グラフト共重合のいずれでもよいが、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる群より選ばれる1つと、α−オレフィンからなる共重合体の場合のみ、共重合の形態はランダム共重合であってもよい。前記α−オレフィンとは、分子鎖の片末端二重結合を有するオレフィンのことであり、1−オクテンなどが好ましく用いられる。

0054

本発明のフィルムのB層の熱可塑性エラストマーにおいて、ポリオレフィン系エラストマーの第2の態様は、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる群より選ばれる1つと、エチレン‐プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体水素添加スチレンブタジエン共重合体からなる群より選ばれる1つとのブレンド物である。このとき、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体は、部分的もしくは完全に架橋されていてもよい。

0055

また、本発明のフィルムのB層の熱可塑性エラストマーにおいて、ポリオレフィン系エラストマーは、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基で変性されていてもよい。

0056

ポリオレフィン系エラストマーとして市販されているものとしては、三井化学社製の“ミラストマー(登録商標)”、住友化学社製“エスレックス(登録商標)”、三菱化学社製の“サーモラン(登録商標)”、“ゼラス(登録商標)”、ダウケミカル社製“エンゲージ(登録商標)”などが挙げられる。

0057

本発明のフィルムのB層の熱可塑性エラストマーにおいて、ポリアミド系エラストマーとしては、ポリアミドと脂肪族ポリエステルとのブロック共重合体、ポリアミドと脂肪族ポリエーテルとのブロック共重合体を挙げることができる。

0058

ポリアミド系エラストマーとして市販されているものとしては、宇部興産社製の“UBESTA(登録商標)”、ダイセルエボニック社製の“ダイアミド(登録商標)”、“ベスタミド(登録商標)E”、アルケマ社製の“PEBAX(登録商標)などが挙げられる。

0059

本発明のフィルムのB層において、熱可塑性エラストマーは、1種単独であっても、2種以上を組み合わせてもよい。上記熱可塑性エラストマーのうち、ポリエステル系エラストマーを主たる成分とすることが、A層との積層性およびA層とB層との接着性をより高められるという点でより好ましい。

0060

本発明のフィルムにおいて、B層を構成する熱可塑性エラストマーの融点TmBは140℃以上240℃以下であることが好ましい。ここでいう融点TmBとはDSCにより得られる、昇温過程(昇温速度:20℃/min)における融点TmBであり、JIS K−7121(1987)に基づいた方法により、25℃から熱可塑性エラストマーの融点+50℃まで20℃/分の昇温速度で加熱し(1stRUN)、その状態で5分間保持し、次いで−100℃以下となるよう急冷し、再度室温から20℃/分の昇温速度で270℃まで昇温を行って得られた2ndRunの結晶融解ピークにおけるピークトップの温度でもって熱可塑性エラストマーの融点TmBとする。より好ましくは融点TmBが145℃以上235℃以下、更に好ましくは150℃以上230℃以下である。融点TmBが145℃に満たないと、結晶性ポリエステルとの積層が困難となったり、得られたフィルムの耐熱性に劣ったりすることがあり好ましくなく、また、融点TmBが240℃を越えると、制振性が低下したりする場合があるため好ましくない。本発明のフィルムにおいて、B層を構成する熱可塑性エラストマーの融点TmBを140℃以上240℃以下とすることにより、良好な積層性、耐熱性、制振性を有するフィルムとすることができる。なお、複数の結晶融解ピークトップがあらわれる場合は、最も高いピークトップ温度が上記範囲内であることが好ましい。

0061

本発明のフィルムにおいて、B層が充填材を含み、その充填材の含有率がB層を構成する樹脂組成物全体に対して1重量%以上50重量%以下であるのが好ましい。より好ましくは10重量%以上45重量%以下、更に好ましくは20重量%以上40重量%以下である。ここでいう充填材としては、例えば、金、銀、銅、白金パラジウムレニウムバナジウムオスミウムコバルト、鉄、亜鉛ルテニウムプラセオジウムクロムニッケルアルミニウム、スズ、亜鉛、チタンタンタルジルコニウムアンチモンインジウムイットリウムランタニウム等の金属、酸化亜鉛酸化チタン酸化セシウム酸化アンチモン酸化スズ、インジウム・スズ酸化物酸化イットリウム、酸化ランタニウム 、酸化ジルコニウム酸化アルミニウム酸化マグネシウム酸化ケイ素等の金属酸化物、フッ化リチウム、フッ化マグネシウムフッ化アルミニウム氷晶石等の金属フッ化物リン酸カルシウム等の金属リン酸塩炭酸カルシウム等の炭酸塩硫酸バリウム等の硫酸塩、窒化ホウ素窒化炭素などの窒化物タルクマイカカオリンなどのケイ酸塩、その他カーボンフラーレンカーボンファイバーカーボンナノチューブなどの炭素系化合物等が挙げられる。また、これらの充填材は2種類以上用いてもよい。本発明のフィルムにおいて、充填材を1重量%以上とすることでより、制振性を高めることが可能となり、さらには熱伝導率を高めることが可能となる。また50重量%以下とすることで後述する製造方法にてフィルムを製造する際に、良好な製膜性を得ることができる。

0062

本発明のフィルムのB層に用いられる充填材は、アスペクト比2以上の針状粒子、または板状粒子であるのが好ましい。ここでいう針状粒子とは、図1に示すように一次粒子1を外接直方体2で囲み、その外接直方体2の最も長い一辺を長さ(l)、最も短い一辺を厚さ(t)、残りの一辺を幅(b)と定義した場合に、長さ(l)と厚さ(t)の比l/tが2以上であり、同時に、長さ(l)と幅(b)の比l/bが2よりも大きい粒子である。ここでいう板状粒子とは、一次粒子1を図1に示すような外接直方体2で囲み、その外接直方体2の最も長い一辺を長さ(l)、最も短い一辺を厚さ(t)、残りの一辺を幅(b)と定義した場合に、長さ(l)と厚さ(t)の比l/tが2以上であり、同時に、長さ(l)と幅(b)の比l/bが1以上2以下の粒子である。また、ここでいうアスペクト比とは、針状粒子あるいは板状粒子の長さ(l)と厚さ(t)の比l/tである。アスペクト比はより好ましくは3以上、更に好ましくは5以上である。本発明のフィルムにおいて、B層に、針状粒子、あるいは板状粒子を含有することでフィルムにより寸法安定性を高めた上で制振性を付与することができ、さらに熱伝導率をより高めることが可能となる。

0063

本発明のフィルムにおいて、充填材が針状粒子または板状粒子である場合、その長径(一次粒子を外接直方体で囲んだときの外接直方体の最も長い一辺を長さ)は好ましくは0.1μm以上20μm以下、更に好ましくは1μm以上10μm以下、更に好ましくは2μm以上8μm以下である。0.1μm未満になると、界面積が多くなりすぎて熱伝導性が低下するため好ましくなく、20μmを超えるとフィルムの製膜性が低下し、特に後述する延伸工程での延伸性が低下し生産性が悪くなる。本発明のフィルムにおいて、針状粒子あるいは板状粒子の長径を0.1μm以上20μm以下とすることによって、制振性、熱伝導性と製膜性を両立することができる。

0064

本発明のフィルムにおいて、B層中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機微粒子、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。

0065

本発明のフィルムは前記結晶性ポリエステルを主たる成分とするA層と前記熱可塑性エラストマーを主たる成分とするB層が積層された構造をとるのが好ましい。本積層構造とすることで、結晶性ポリエステルからなるA層が耐熱性、寸法安定性を付与しつつ、熱可塑性エラストマーからなる層が制振性を付与することが可能となり、フィルムのヤング率を高めつつ、損失正接を高めることが可能となる。本発明のフィルムの積層構成は(i)A層/B層からなる二層構成、(ii)A層/B層/A層、またはB層/A層/B層からなる3層構成、(iii)A層/B層/・・・・/B層、B層/A層/・・・・/A層、A層/B層/・・・・/A層、B層/A層/・・・・/B層などの、A層とB層が交互に積層された多層積層構成、(iv)A層/B層/その他の層、その他の層/A層/B層、A層/その他の層/B層などの構成、およびこれらの組み合わせの構成が挙げられる。その中でも、本発明のフィルムは、特に結晶性ポリエステルを主たる成分とするA層と熱可塑性エラストマーを主たる成分とするB層が交互に合計9層以上積層されてなることが好ましい。本発明のフィルムにおいて、上記構成として層数を9層以上の層が交互に積層されたフィルムとすることによって、層数が9層未満のフィルムと対比して、均質に各々の熱可塑性エラストマーが配されるため、製膜性や機械物性を安定化させることが可能である。また、層数が増加するに従い、フィルムの厚み方向に結晶性ポリエステルを主たる成分とするA層が複数配置されることによって、フィルムの寸法安定性や耐熱性をより向上させることが可能となる。また、干渉反射機能、偏光反射を発現させるといった特異な光学特性の付与も可能となる。

0066

本発明のフィルムを構成するA層とB層のうち、B層が少なくとも片側表層にあるのが好ましい態様として挙げられる。その場合、熱可塑性エラストマーを主たる成分とするB層がクッション性を有するため、ガラス、金属、繊維強化プラスチックからなる群から選ばれる1種以上の材料からなるシート材料と一体化させた場合に、密着性が良好となり、より制振性を高めることが可能となる。

0067

本発明のフィルムを構成するA層とB層のうち、A層が少なくとも片側表層にあるのも好ましい態様として挙げられる。その場合、表面の結晶性ポリエステルを主たる成分とするA層が表面硬度、耐薬品性、フィルムの滑り性を付与することが可能となり、通常のフィルムと同じ取扱性とすることができ、本フィルムに後述する各種機能層帯電防止層、他素材との密着層耐紫外線性を有するための耐紫外線層、難燃性付与のための難燃層耐衝撃性耐擦過性を高めるためのハードコート層など)を形成する際の加工性や加工した層の安定した機能を発現させることが可能となる。

0068

本発明のフィルムはA層を構成する樹脂組成物の融点TmAとB層を構成する樹脂組成物の融点TmBの間に微少吸熱ピークを有するのが好ましい。ここでいう、微小吸熱ピークとは示差走査熱量測定(DSC)において、昇温過程(昇温速度:20℃/min)において確認される微小な吸熱ピークのことである。本ピークを有することは、B層は融点以上で一旦熱処理されることにより分子鎖が緩和し、損失正接を高められた状態であり、フィルムのtanδa,tanδbを高めることが出来る。またA層は、後述する延伸時の残留応力の解消と配向結晶化が完了させることが出来、配向パラメーターが1.5以上の層(領域I)を形成することが可能となる。これにより、配向パラメーターが1.5以上の層(領域I)を有しつつ、フィルムのtanδa、tanδbを高めることが出来る結果、寸法安定性、耐熱性と制振性とを両立することが可能となる。さらには形状追従性を兼ね備えたものとすることも可能となる。

0069

本発明のフィルムにおいて、A層を構成する樹脂組成物の融点TmAとB層を構成する樹脂組成物の融点TmBの間に微少吸熱ピークを有する場合、その微少吸熱ピーク温度Tmetaは、B層の熱可塑性エラストマーの融点TmB+10℃以上、A層の結晶性ポリエステルの融点TmA—10℃以下であるのが好ましい。より好ましくはTmB+15℃以上TmA—15℃以下である。ここでいうTmetaとは示差走査熱量測定(以下、DSCと略称することもある。)により得られる、昇温過程(昇温速度:20℃/min)における値である。具体的には、JIS K−7121(1999)に基づいた方法により、25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)して得られた1stRUNの示差走査熱量測定チャートにおけるA層の結晶融解ピーク前の微少吸熱ピーク温度でもってTmetaとする。微小吸熱ピークTmetaの温度範囲をTmB+10℃以上TmA—10℃以下とすることにより、A層の配向性を落とすことなく、B層が十分緩和されるため、配向パラメーターが1.5以上の層(領域I)を有しつつ、フィルムのtanδa、tanδbをより高めることが出来る結果、寸法安定性、耐熱性と制振性、さらには形状追従性をより高いレベルで満足させることが可能となる。

0070

本発明のフィルムの総厚みは10μm以上300μm以下であるのが好ましく、さらに好ましくは20μm以上200μm以下、最も好ましくは30μm以上150μm以下である。フィルムの総厚みが10μm未満の場合、フィルムの制振性が悪くなったりする。また、300μmより厚い場合、例えば、本発明のフィルムをガラス、金属、繊維強化プラスチックからなる群から選ばれる1種以上の材料からなるシート材料と一体化させた場合に、その一体化させたシートの全体厚みが厚くなり過ぎる場合がある。

0071

本発明のフィルムにおいて、結晶性ポリエステルを主たる成分とするA層の層厚みをTA(μm)、熱可塑性エラストマーを主たる成分とするB層の層厚みをTB(μm)としたとき、両者の比TB/TAが1/4〜15/1以下であることが好ましい。なお、A層、B層がフィルム中に複数ある場合は、それぞれの厚みの和で以て、厚みTA,TBとする。より好ましくは1/1〜以上10/1以下である。更に好ましくは3/1以上8/1以下である。TB/TAが1/4に満たないと、制振性、形状追従性が低下することがある。また、TB/TAが15/1を越えると、フィルムの耐熱性や寸法安定性が低下する傾向にある。本発明のフィルムにおいて、TB/TAを1/4以上15/1以下とすることで、制振性、形状追従性、耐熱性、寸法安定性をすべて満足させたフィルムとすることが可能となる。

0072

本発明のフィルムにおいて、B層中の充填材の含有量をWb(質量%)および、空隙率をV(体積%)とした場合にV/Wbが1以下であることが好ましい。ここでいう空隙率とは、B層の断面SEM走査型電子顕微鏡)画像内において、フィルムの断面積の中に占める空隙の面積の割合でもって空隙率V(体積%)とした。V/Wbは、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.6以下、特に好ましくは0.5以下である。V/Wbが1を超えると、フィルム中に熱伝導率が低い空気が多く占めることとなる結果、フィルムの透明性や、熱伝導性が低下する。V/Wbの下限は0である。本発明のフィルムにおいて、V/Wbを1以下とすることで、高い透明性、熱伝導性を得ることができる。なお、V/Wbを1以下にする方法としては後述する製造方法において、B層に粒子を含有させた状態で、後述する方法にて少なくとも1軸方向に延伸した後にB層の熱可塑性エラストマーの融点TmB以上、A層の結晶性ポリエステルの融点TmA以下の温度で熱処理することなどが挙げられる。

0073

本発明のフィルムにおいて、フィルム面内でヤング率が最も小さい方向(方向b)のフィルムのヤング率をEbとしたとき、Ebが0.2GPa以上2.5GPa以下であることが好ましい。なお、ここでいうヤング率は、フィルムのヤング率をフィルム面内に10°毎に方向を変えて測定し、そのヤング率が最も小さい方向(方向b)のヤング率をEbとする。Ebは、より好ましくは0.4GPa以上2GPa、更に好ましくは0.5GPa以上1.8GPa以下、特に好ましくは0.7GPa以上1.5GPa以下である。ヤング率Ebを0.2GPa以上とすることで、高い耐熱性と寸法安定性を付与することが可能となる。また、2.5GPa以下とすることによって制振性や形状追従性を付与することが可能となる。

0074

本発明のフィルムは、方向bとはフィルム面内で垂直な方向(方向a)のフィルムのヤング率をEaとしたときに、EaとEbの比Ea/Ebが1/1〜3/1の範囲にあることが好ましい。より好ましくは1/1〜1/2、更に好ましくは1/1〜1/1.5である。Ea/Ebを1/1〜3/1とすることで、フィルム面内方向いずれの方向においても寸法安定性に優れ、また、破断しにくいフィルムとすることができる。

0075

本発明のフィルムは、方向bの破断伸度が50%以上であるのが好ましい。より好ましくは100%以上、更に好ましくは120%以上である。破断伸度が50%に満たないと、制振性が低下したり、複雑な形状と貼り合わせた際の形状追従性が悪くなる場合がある。本発明のフィルムにおいて、破断伸度を50%以上とすることによって、高い制振性に加えて形状追従性を両立することが出来る。なお、破断伸度の上限は特に制限されるものではないが、寸法安定性、耐熱性と制振性、形状追従性との両立という観点からは、実質500%以下である

0076

本発明のフィルムは、方向bの100%伸長時応力が、100MPa以下であるのが好ましい。更に好ましくは60MPa以下、更に好ましくは50MPa以下である。伸張時応力が100MPaを超えると、分子鎖が緊張した状況であったり、剛直となるため、制振性が低下したり、複雑な形状と貼り合わせた際の形状追従性が悪くなる場合がある。本発明のフィルムにおいて、100%伸張時応力を100MPa以下とすることで、高い制振性に加えて形状追従性を両立することが出来る。なお、伸張時応力の下限は特に制限されるものではないが、寸法安定性、耐熱性と制振性、形状追従性との両立という観点からは、実質1MPa以上である。

0077

本発明のフィルムは、熱伝導率が0.15W/mK以上であるのが好ましい。より好ましくは0.18W/mK以上、さらに好ましくは0.20W/mK以上である。本値を満たすことによって、特にモーター絶縁材料(例えば風力発電用絶縁シートハイブリッドモーター用シート、エアコンモーター用シートなど)、太陽電池バックシート、電子部品用に用いられる電気絶縁材料(例えば、電子部品用粘着テープ、フレキシブルプリント基板、メンブレンスイッチなど)等に好適に用いることができる。

0078

本発明のフィルムは表面比抵抗が1013Ω/□以上であるのが好ましい。本値を満たすことによって、特にモーター絶縁材料(例えば風力発電用絶縁シート、ハイブリッドモーター用シート、エアコンモーター用シートなど)、太陽電池バックシート、電子部品用に用いられる電気絶縁材料(例えば、電子部品用粘着テープ、フレキシブルプリント基板、メンブレンスイッチなど)等に好適に用いることができる。

0079

本発明のフィルムには、ポリエステル層、帯電防止層、他素材との貼り合わせのための粘着層、密着層、耐紫外線性を有するための耐紫外線層、難燃性付与のための難燃層、耐衝撃性や耐擦過性を高めるためのハードコート層など、用いる用途に応じて、任意の層を形成することができる。この中でも本発明のフィルムは他部材と貼り合わせて使用することが多いことから、粘着層を設けた積層シートとするのが特に好ましい。

0080

また本発明のフィルムは、ガラス、金属、繊維強化プラスチックからなる群から選ばれる1種以上の材料と一体化されてなる積層構造体とすることも好ましい。このような積層構造体とすることで、風力発電機、自動車、鉄道、航空機の構造体として用いることも可能となる。

0081

また本発明のフィルムは、織布、不織布からなる群から選ばれる1種以上の材料と一体化されてなる積層構造体とすることも好ましい。このような積層構造体とすることで、医療用に好適に用いることが可能となる。

0082

織布、不織布からなる群から選ばれる1種以上の材料を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂ポリスホキシド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂ポリエーテル系樹脂ポリエーテルケトン系樹脂ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。

0083

本発明の積層構造体において、上記ガラス、金属、繊維強化プラスチックからなる群から選ばれる1種以上の材料、および/または織布、不織布からなる群から選ばれる1種以上の材料は、本発明のフィルムの片側に設けられてもよいし、両側に設けられてもよい。また複数の材料を合わせて用いることも好ましい態様である。目的、用途に合わせて適宜選択される。

0084

次に、本発明のフィルムの製造方法について、その一例を説明するが、本発明は、かかる例のみに限定されるものではない。

0085

本発明のフィルムの製造方法において、その原料となる結晶性ポリエステルは、上述のジカルボン酸構成成分、ジオール構成成分とからエステル化反応またはエステル交換反応を経て重縮合反応を行って固有粘度を0.4以上とすることによって得られる。

0086

また、エステル交換反応を行う際には、酢酸マグネシウム酢酸カルシウム酢酸マンガン酢酸コバルト、酢酸カルシウムなど公知のエステル交換反応触媒を用いることができる。また、重合触媒である三酸化アンチモンなどを添加してもよい。エステル化反応時には水酸化カリウムなどのアルカリ金属を数ppm添加しておくとジエチレングリコールの副生が抑制され、耐熱性や耐加水分解性も改善される。

0087

また重縮合反応触媒としては、二酸化ゲルマニウムエチレングリコール溶液、三酸化アンチモン、チタンアルコキシドチタンキレート化合物などを用いることができる。

0088

その他の添加物としては、例えば、静電印加特性を付与する目的で酢酸マグネシウム、助触媒として酢酸カルシウムなどを挙げることができ、本発明の効果を妨げない範囲で添加することができる。また、フィルムの滑り性を付与するために各種粒子を添加、あるいは触媒を利用した内部析出粒子を含有させてもよい。

0089

また、本発明のフィルムのB層に用いられる熱可塑性エラストマーは、市販のものを用いることも可能であるが、ポリエステル系エラストマーの場合は上記結晶性ポリエステルと同様の方法で得ることも可能である。

0090

本発明のフィルムの製造方法において、熱可塑性エラストマーに充填材を含有させる場合、その方法は、予め熱可塑性エラストマーと充填材をベント二軸混練押出機タンデム型押出機を用いて溶融混練する方法が好ましい。ここで、充填材を含有させる際に熱履歴を受けるため、少なからず熱可塑性エラストマーが劣化する。そのため、B層の充填材の含有量に比べて添加量の多い高濃度マスターペレットを作製し、それを熱可塑性エラストマーと混合して希釈し、所定のB層の充填材の含有率とするのが、延伸性、機械特性、耐熱性などの観点から好ましい。

0091

このとき、高濃度マスターペレット中の充填材の濃度は好ましくは20質量%以上80質量%以下が好ましい。更に好ましくは25質量%以上70質量%以下、更に好ましくは30質量%以上60質量%以下、特に好ましくは40質量%以上60質量%以下である。20質量%に満たない場合、B層へ添加するマスターペレットの量が多くなり、その結果B層に劣化した熱可塑性エラストマーの量が多くなって延伸性、機械特性、耐熱性などが低下する場合がある。また80質量%を越える場合は、マスターペレット化が困難となったり、マスターペレットを熱可塑性エラストマーに混合した場合に均一に混合するのが難しくなったりする場合がある。

0092

次に、このようにして得られた結晶性ポリエステルと熱可塑性エラストマー、および充填材を含有した熱可塑性エラストマーを用いて、積層フィルムを作製する方法を説明する。

0093

二つの異なる材料をそれぞれ二台の押出機投入し、溶融して口金から冷却したキャストドラム上に共押出してシート状に加工する方法(共押出法)、単膜で作製したシートに被覆層原料を押出機に投入して溶融押出して口金から押出しながらラミネートする方法(溶融ラミネート法)、A層と積層するB層をそれぞれ別々に作製し、加熱されたロール群などにより熱圧着する方法(熱ラミネート法)、接着剤を介して貼り合わせる方法(接着法)、その他、B層用の材料を溶媒に溶解させ、その溶液をあらかじめ作製していたA層上に塗布する方法(コーティング法)、およびこれらを組み合わせた方法等を使用することができる。これらの中でも、生産性が高く、かつ得られる積層フィルムの層間の密着性がより高いという点で、共押出法が好ましい。特に、本発明の積層フィルムが多層積層フィルムである場合、その積層構造は、例えば特開2007−307893号公報の〔0053〕〜〔0063〕段落に記載の内容と同様の方法により実現することができる。

0094

共押出法にて積層フィルムを得る場合、結晶性ポリエステルおよび熱可塑性エラストマーは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で乾燥された後、別々の押出機に供給される。押出機内において、加熱溶融された樹脂は、ギアポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルター等を介して異物や変性した樹脂などを取り除かれる。これらの樹脂は積層装置送り込まれ、積層された後、ダイから冷却したキャストドラム上に共押出してキャスティングシートを得る。積層装置としては、マルチマニホールドダイフィードブロックスタティックミキサー等を用いることができる。特に、本発明のフィルムが多層積層構成である場合、その構成を効率よく得るためには、9個以上の微細スリットを有するフィードブロックを用いることが好ましい。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため、熱劣化による異物が少なく、積層数が極端に多い場合でも、高精度な積層が可能となる。また、幅方向積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。また、この装置では、各層の厚みをスリットの形状(長さ、幅)で調整できるため、任意の層厚みを達成することが可能である。

0095

積層させた後、Tダイ口金に導入して拡幅後、シート状に押出した溶融積層体を、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて、キャスティングシートを得る。その際には、ワイヤー状テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力により、吐出されたシートを冷却体に密着させ、急冷固化させることが好ましい。また、吐出されたシートを冷却体に密着させる方法としては、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出す方法、ニップロールを用いる方法も好ましく行われる。

0096

このようにして得られたキャスティングシートを、二軸延伸することにより、本発明のフィルムを得ることができる。その延伸する温度は、結晶性ポリエステルのガラス転移温度TgA以上の温度にて二軸延伸する。二軸延伸する方法としては、長手方向と幅方向の延伸とを分離して行う逐次二軸延伸方法の他に、長手方向と幅方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸方法のどちらであっても構わない。延伸条件の一例は、1)同時二軸延伸の場合はA層の結晶性ポリエステルのガラス転移温度TgA以上TgA+15℃以下の範囲の温度、2)逐次二軸延伸の場合は、第1軸目の延伸をA層の結晶性ポリエステルのガラス転移温度TgA以上TgA+15℃以下(より好ましくはTgA+10℃以下)の温度とし、第二軸目の延伸をTgA+5℃以上TgA+25℃以下の範囲の温度で延伸することが挙げられる。

0097

延伸倍率は、同時二軸延伸、逐次二軸延伸共に、長手方向と幅方向それぞれ1.5倍以上4倍以下とする。より好ましくは2.0倍以上3.5倍以下、更に好ましくは2.5倍以上3.5倍以下である。また、長手方向の延伸倍率と幅方向の延伸倍率を合わせた面積延伸倍率は4倍以上20倍以下、より好ましくは6倍以上18倍以下、更に好ましくは8倍以上16倍以下である。面積延伸倍率が4倍未満であると、得られるフィルムの結晶性ポリエステル(A)の配向性が低く、得られるフィルムの機械強度や耐熱性が低下することがある。また面積延伸倍率が20倍を越えると延伸時に破れを生じ易くなったりする傾向がある。

0098

得られた二軸延伸フィルム結晶配向を完了させて、平面性と寸法安定性を付与するために、A層の結晶性ポリエステルのTgA以上融点TmA未満の温度Thで1秒間以上30秒間以下の熱処理を行ない、均一に徐冷後、室温まで冷却する。本発明のフィルムの製造方法において熱処理温度Thは、より好ましくは、B層の熱可塑性エラストマーの融点TmB以上、A層の結晶性ポリエステルの融点TmA以下,更に好ましくは、B層の熱可塑性エラストマーの融点TmB+10℃以上、A層の結晶性ポリエステルの融点TmA—10℃以下の温度で熱処理するのが好ましい。本条件で熱処理することにより、耐熱性や寸法安定性を付与できるだけでなく、延伸工程によって配向したB層の熱可塑性エラストマーの配向をキャンセルして、ランダム化させることが可能となり、それにより制振性をより高めることができる。また形状追従性を高めることも可能である。

0099

また、上記熱処理工程中では、必要に応じて幅方向あるいは長手方向に3〜12%の弛緩処理を施してもよい。続いて必要に応じて、他素材との密着性をさらに高めるためにコロナ放電処理などを行い、それを巻き取ることにより、フィルムを得ることができる。

0100

本発明のフィルムと、ガラス、金属、繊維強化プラスチックからなる群から選ばれる1種以上の材料と一体化された積層構造体は、以下の方法によって得ることができる。その方法としては上述のフィルムと積層する材料を加熱されたロール群などにより熱圧着する方法(熱ラミネート法)、接着剤を介して貼り合わせる方法(接着法)、およびこれらを組み合わせた方法等が使用することができる。

0101

本発明のフィルムと、織布、不織布からなる群から選ばれる1種以上の材料と一体化された積層構造体は、以下の方法によって得ることができる。その方法としては上述のフィルムと積層する材料を加熱されたロール群などにより熱圧着する方法(熱ラミネート法)、接着剤を介して貼り合わせる方法(接着法)、およびこれらを組み合わせた方法等が使用することができる。

0102

本発明によれば、耐熱性や寸法安定性に優れ、シリコンの汚染の懸念がなく、かつ制振性に優れるフィルムを提供することができる。かかるフィルムは、銅貼り積層板、太陽電池用バックシート、粘着テープ、フレキシブルプリント基板、メンブレンスイッチ、面状発熱体、もしくはフラットケーブルなどの電気絶縁材料、コンデンサ用材料、筐体材料、自動車・鉄道・航空機用制振材料、建築用制振材料をはじめとした制振性と耐熱性が重視されるような用途、風力発電ブレードや航空機の構造体保護用材料、医療用材料、フレキシブルデバイスに好適に使用することができる。特には本発明のフィルムは、ガラス、金属、繊維強化プラスチックからなる群から選ばれる1種以上の材料からなるシート材料、織布、不織布からなる群から選ばれる1種以上の材料と一体化されて用いられることも好ましく行われる。かかるフィルムを用いることで、より静粛な電子機器、自動車、鉄道、航空機、及び発電効率や耐久性の高い風力発電機を提供することができる。さらには、かかるフィルムを用いることで、ゴワ付きや音が抑制され、装着感が良く、加工時の寸法安定性の良い医療用材料を提供することが可能となる。

0103

[特性の評価方法
以下に、本発明の説明に使用した各特性の評価方法について説明する。

0104

A.積層構成(積層数、層厚みなど):
フィルムの積層数は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルを、透過型電子顕微鏡TEM)を用いて観察することにより求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H−7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVの条件でフィルムの断面写真撮影し、層構成および各層厚みを測定した。なお、場合によっては、コントラストを高くするために、RuO4やOsO4などを使用した染色技術を用いた。また、1枚の画像に取り込められるすべての層の中で最も厚みの薄い層(薄膜層)の厚みにあわせて、薄膜層厚みが50nm未満の場合は10万倍、薄膜層厚みが50nm以上500nm未満である場合は4万倍、500nm以上である場合は1万倍の拡大倍率にて観察を実施した。
得られたTEM写真画像を、スキャナ(キヤノン(株)製CanoScan D1230U)を用いて画像サイズ720dpiで取り込んだ。画像をビットマップファイル(BMP)もしくは、圧縮画像ファイル(JPEG)でパーソナルコンピューターに保存し、次に、画像処理ソフトImage-Pro Plus ver.4(販売元:プラネトロン(株))を用いて、このファイルを開き、画像解析を行った。画像解析処理は、垂直シックプロファイルモードで、厚み方向位置と幅方向の2本のライン間で挟まれた領域の平均明るさとの関係を、数値データとして読み取った。表計算ソフト(Excel 2000)を用いて、位置(nm)と明るさのデータに対してサンプリングステップ2(間引き2)でデータ採用した後に、5点移動平均数値処理を施した。さらに、この得られた周期的に明るさが変化するデータを微分し、VBA(Visual Basic for Applications)プログラムにより、その微分曲線極大値極小値を読み込み、隣り合う明るさが極大の領域と極小の領域の間隔を1層の層厚みとして層厚みを算出した。この操作を写真毎に行い、全ての層の積層数を算出し、A層の層厚みTA,B層の層厚みTBを得た。

0105

B.結晶性ポリエステルのガラス転移温度TgA、融点TmA、結晶融解熱量ΔHmA、熱可塑性エラストマーの融点TmB:
原料となる結晶性ポリエステルの熱特性は、結晶性ポリエステルを、JIS K7122(1987)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッションSSC/5200”を用いて、下記の要領にて、測定を実施した。

0106

(1)1stRUN測定
サンプルパンに結晶性ポリエステルのサンプルを5mgずつ量し、昇温速度は20℃/minで樹脂を25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱し、その状態で5分間保持し、次いで25℃以下となるよう急冷した。

0107

(2)2ndRUN
1stRUN測定が完了した後、直ちに引き続いて、再度室温から20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温を行って測定を行った。得られた2ndRUNの示差走査熱量測定チャートにおいて、ガラス転移温度はガラス転移階段状の変化部分において、JIS K7121(1987)の「9.3ガラス転移温度の求め方(1)中間点ガラス転移温度Tmg」記載の方法で結晶性ポリエステルのガラス転移温度TgAを求めた(各ベースライン延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線とガラス転移の階段状の変化部分の曲線とが交わる点から求めた)。また、2ndRunの結晶融解ピークにおけるピークトップの温度でもって結晶性ポリエステルの融点TmAとした。

0108

また、原料となる熱可塑性エラストマーの熱特性(ガラス転移温度TgB,融点TmB)は、熱可塑性エラストマーを用いて、上記の方法と同様の方法で25℃から熱可塑性エラストマーの融点+50℃まで20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)、その状態で5分間保持し、次いで−100℃以下となるよう急冷し、再度室温から20℃/分の昇温速度で270℃まで昇温を行って得られた2ndRunの結晶融解ピークにおけるピークトップの温度でもって熱可塑性エラストマーの融点TmBとした。また、結晶融解熱量ΔHmA,ΔHmBは、結晶融解ピークの熱量をJISK7122(1987)の「9.転移熱の求め方」に基づいて求めた。

0109

C.ヤング率Ea,Eb、破断伸度、100%伸張時応力:
フィルムの破断伸度はASTM−D882(1997年版)に基づいて、サンプルを1cm×20cmの大きさに切り出し、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/minにて引っ張ったときの破断伸度を測定した。また、得られた荷重歪曲線からヤング率を求めた。なお、測定は各サンプルについて5回ずつ行い、それらの平均値で評価を行った。ヤング率が最大となる方向(方向a)を決定する際には、いずれかの方向を0°とし、フィルム面内に−90°から90°まで10°毎に方向を変えて同様に測定することで、ヤング率が最小となる方向(方向b)を決定し、ヤング率Eb,破断伸度を求めた。そして続いて、方向bと同一の面内で直交する方向(方向a)のヤング率Ea、破断伸度、100%伸張時応力を求めた。

0110

D.配向パラメーター:
ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルを、RENISHAW社製inVIA顕微ラマン分光光度計にて、対物レンズ:100倍、ビーム径:1μm、光源YAGレーザー二次高調波波長532nm)、レーザーパワー:100mW,回折格子:Single 3000gr/mm、スリット:65μm、検出器:CCD/RENISHAW 1024×256、の条件にて、以下の通り測定を行った。なお、複数の樹脂が混合されている場合など、異方性に対し強い感度を有するピークが複数存在する場合などは、最もピーク強度が高いピークを用いて配向パラメーターを求めた。

0111

[層を構成する主たる成分が芳香族ポリエステル系樹脂の場合]
以下の(a1)〜(a3)の方法により求めた。
(a1)フィルム面内方向に対し平行な方向の偏光を照射した場合、および垂直な方向の偏光を照射した場合、それぞれにおいてラマンバンドを求める。
(a2)得られたラマンバンドのうち、1615cm−1近傍のC=C伸縮振動のピーク強度をそれぞれ求め、平行方向の偏光を照射した場合のピーク強度をI(平行)、垂直方向の偏光を照射した場合のピーク強度をI(垂直)とする。
(a3)I(平行)とI(垂直)の比I(平行)/I(垂直)にて配向パラメーターとする。

0112

[層を構成する主たる成分が脂肪族ポリエステル系樹脂の場合]
以下の(b1)〜(b3)の方法により得ることが出来る。
(b1)フィルム面内方向に対し平行な方向の偏光を照射した場合、および垂直な方向の偏光を照射した場合、それぞれにおいてラマンバンドを求める。
(b2)得られたラマンバンドのうち、波数1730cm−1近傍のC=O伸縮振動のピーク強度をそれぞれ求め、平行方向の偏光を照射した場合のピーク強度をI(平行)、垂直方向の偏光を照射した場合のピーク強度をI(垂直)とする。
(b3)I(垂直)とI(平行)の比I(垂直)/I(平行)にて配向パラメーターとする。

0113

[層を構成する主たる成分がポリエチレン系樹脂の場合]
以下の(c1)〜(c3)の方法により求めた。
(c1)フィルム面内方向に対し平行な方向の偏光を照射した場合にラマンバンドを求める。
(c2)得られたラマンバンドのうち、1130cm−1近傍の対称C−C伸縮振動のピーク強度、および1060cm−1近傍の非対称C−C伸縮振動のピーク強度をそれぞれもとめ、対称C−C伸縮振動のピーク強度をI(対称)、非対称C−C振動のピーク強度をI(非対称)とする。
(c3)I(対称)とI(非対称)の比I(対称)/I(非対称)にて配向パラメーターとする。

0114

[層を構成する主たる成分がポリプロピレン系樹脂の場合]
以下の(d1)〜(d3)の方法により求めた。
(d1)フィルム面内方向に対し平行な方向の偏光を照射した場合にラマンバンドを求める。
(d2)得られたラマンバンドのうち、810cm−1近傍のC−C伸縮振動のピーク強度、および840cm−1近傍のC−H伸縮振動のピーク強度をそれぞれもとめ、C−C伸縮振動のピーク強度をI(C−C)、C−H伸縮振動のピーク強度をI(C—H)とする。
(d3)I(C−C)とI(C−H)の比I(C−C)/I(C−H)にて配向パラメーターとする。

0115

[層を構成する主たる成分がポリアミド系樹脂の場合]
以下の(e1)〜(e3)の方法により求めた。
(e1)フィルム面内方向に対し平行な方向の偏光を照射した場合、および垂直な方向の偏光を照射した場合、それぞれにおいてラマンバンドを求める。
(e2)得られたラマンバンドのうち、1650cm−1近傍のC=O伸縮振動のピーク強度をそれぞれ求め、平行方向の偏光を照射した場合のピーク強度をI(平行)、垂直方向の偏光を照射した場合のピーク強度をI(垂直)とする。
(e3)I(垂直)とI(平行)の比I(垂直)/I(平行)にて配向パラメーターとする。

0116

上記測定をフィルムの一方の表面側から0.6μmずつ厚み方向に位置を変えながら測定し、フィルム厚み方向での配向パラメーターが1.5以上の領域(領域I)の厚みの和TI(μm)と、1.5未満の領域(領域II)の厚みの和TII(μm)を求めた。なお、測定は方向aに平行な断面、方向bに平行な断面、それぞれについてフィルム面方向に位置を5カ所変えて行い、その平均値でもって、配向パラメーターが1.5以上の領域(領域I)の厚みの和TI(μm)と、1.5未満の領域(領域II)の厚みの和TII(μm)とした。

0117

E.損失正接tanδa,tanδb、tanδB(制振性):
フィルムの損失正接tanδa,tanδbは、方向a,方向bそれぞれの方向について、幅10mmの短冊状にフィルムを切り出し、JIS−K7244(1999年版)に従って、セイコーインスツルメンツ社製の動的粘弾性測定装置DMS6100”を用いて求めた。引張モード、駆動周波数は10Hz、チャック間距離は10mm、昇温速度は2℃/minの測定条件にて、フィルムの温度依存性を測定した。この測定結果から、損失正接の温度分散から25℃での損失正接の値tanδa,tanδbを求めた。

0118

また、積層構造体の損失正接tanδBについては、積層構造体中のフィルムの方向bの方向について、上記と同様に積層構造体の損失正接の温度依存性の測定を行い、この測定結果から、損失正接の温度分散から25℃での損失正接の値tanδBを求めた。

0119

F.B層中の充填材の含有量Wb:
B層を削りだし、以下の方法で充填材の含有量Wbを求めた。
B層の質量w1(g)を測定した。次いで、ヘキサフルオロ−2−イソプロパノール中に溶解させ、遠心分離により不溶成分のうち、充填材を分取した。得られた充填材をヘキサフルオロ−2−イソプロパノールにて洗浄、遠心分離した。なお、洗浄作業は、遠心分離後の洗浄液エタノールを添加しても白濁しなくなるまで繰り返した。充填材の質量w2(g)を求め、下記式(1)から充填材の含有量Wb1を測定した。
充填材の含有量Wb(質量%)=(w2/w1)×100 (1)

0120

G.熱伝導率:
フィルムにレーザー光吸収用スプレーファインケミカルジャパン(株)製ブラックガードスプレーFC−153)を塗布し乾燥させた後、10mm角正方形サンプルを切り出し、XeフラッシュアナライザーであるNETZSCH社製LFA447Nanoflashを用い、測定温度25℃でフィルム厚み方向の熱拡散率α(m2/s)を測定した。なお、測定は4回実施し、その平均値で以て熱拡散率とした、下記式(2)にて熱伝導率を求めた。
熱伝導率(W/mK)=α(m2/s)×比熱(J/kg・K)×密度(Kg/m3) (2)
なお、比熱は、フィルムを用いて、JIS K 7123(1987年版)に基づいて求められた値を用いた。また、密度は、フィルムを30mm×40mmの大きさに切取った試料を用いて、電子比重計ミラージュ貿易(株)製SD−120L)を用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気にて密度の測定を3回行い、得られた値の平均値を用いた。

0121

H.耐熱性:
フィルムの方向a、方向bそれぞれについて平行方向にサンプルを1cm×20cmの大きさに切り出し、その短冊状サンプルを150℃の熱風オーブン中にて30分間熱処理し、冷却後、上記C項の手順に従って、破断伸度を求めた。得られた破断伸度の値とC項で得られた破断伸度(熱処理前の破断伸度)を用いて以下の式(3)により伸度保持率を計算した。
伸度保持率(%)=熱処理前の破断伸度/熱処理後の破断伸度×100 (3)
得られた伸度保持率を用いて以下の通り判定した。
A:伸度保持率が80%以上
B:伸度保持率50%以上80%未満
C:伸度保持率が30%以上50%未満
D:伸度保持率が30%未満、またはフィルム形状を保てない場合。
AまたはBまたはCの場合、耐熱性が良好であり、Aの場合が最も優れている。

0122

また、積層構造体の耐熱性については、積層構造体中のフィルムの方向a,方向bのそれぞれの方向について、上記と同様に積層構造体の耐熱性の測定を行い、伸度保持率を計算した。
A:伸度保持率が80%以上
B:伸度保持率50%以上80%未満
C:伸度保持率が30%以上50%未満
D:伸度保持率が30%未満、またはフィルム形状を保てない場合。
AまたはBまたはCの場合、耐熱性が良好であり、Aの場合が最も優れている。

0123

I.寸法安定性:
フィルムを幅1cm、長さ15cmの短冊状に切りだし、長さ方向の両端からそれぞれ2.5cm内側に幅方向と平行な線を引き、2本の平行線間の距離L0を正確に測定した。次いでその短冊状サンプルを150℃の熱風オーブン中にて30分間熱処理し、冷却後、2本の平行線間の距離L1を正確に測定した。処理前の寸法と処理後の寸法から下記式(4)にて熱収縮率(%)を求めた。
熱収縮率(%)=(L0−L1)/L0×100 (4)
なお、測定は短冊の長さ方向が方向aに平行な場合、方向b方向に平行な場合、それぞれについて各10サンプル測定を実施し、それぞれの平均値でもって方向aの熱収縮率、方向bの熱収縮率とした。

0124

得られた方向a、方向bの熱収縮率の平均でもって、本フィルムの熱収縮率とし、以下のように判定した。熱収縮率が
1%以下の場合:S
1%を越えて2%以下の場合:A
2%を越えて3%以下の場合:B
3%を越えて5%以下の場合:C
5%を超える場合、またはフィルム形状を保てない場合:D
とした。SまたはAまたはBまたはCの場合、寸法安定性が良好であり、Sが最も優れている。

0125

また、積層構造体の寸法安定性については、積層構造体中のフィルムの方向a,方向bのそれぞれの方向について、上記と同様に積層構造体の寸法安定性の測定を行い、得られた方向a、方向bの熱収縮率の平均でもって、本積層構造体の熱収縮率とし、以下のように判定した。熱収縮率が
1%以下の場合:S
1%を越えて2%以下の場合:A
2%を越えて3%以下の場合:B
3%を越えて5%以下の場合:C
5%を超える場合、または形状を保てない場合:D
とした。SまたはAまたはBまたはCの場合、寸法安定性が良好であり、Sが最も優れている。

0126

J.積層性:
フィルムの外観目視で観察し、以下の通り判定した。
A:フローマークが確認されない
B:ごく僅かにフローマークが確認される
C:明確なフローマークが確認される。
AまたはBの場合、積層性が良好であり、Aの場合が最も優れている。

0127

K.層間密着性
フィルムの表面をJIS−K5600−5−6(1999年版)に従い、クロスカット試験を実施し、試験後にフィルムに残る以下の通り判定した。試験は10回実施し、その平均値を用いて判定した。
A:残存数が70個/100個以上である
B:残存数が30個/100個以上、70個/100個未満残る
C:残存数が30個/100個未満
AまたはBの場合、層間密着性が良好であり、Aの場合が最も優れている。

0128

L.表面比抵抗:
フィルムの表面比抵抗はデジタル超高抵抗微小電流計R8340((株)アドバンテスト製)で測定を実施した。測定はフィルムの両面各面において、面内において任意の10カ所で測定を実施し、その平均値をそれぞれ求めた。得られた平均値が低い方の値でもって表面比抵抗とした。また、測定試料は23℃、65%Rhの室内で一晩放置したものを用いて測定を実施した。得られた値を用いて以下の通り判定した。Aが実用範囲である。
A:表面比抵抗が1013Ω/□以上
C:表面比抵抗が1013Ω/□未満。

0129

以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれら実施例に限定されるものではない。

0130

(原料)
・結晶性ポリエステル:
PET−1:酸成分としてテレフタル酸ジメチルを、ジオール成分としてエチレングリコールを用い、酸化ゲルマニウム(重合触媒)を得られるポリエステルペレットに対してゲルマニウム原子換算で300ppmとなるように添加し、重縮合反応を行い、固有粘度0.54ポリエチレンテレフタレートペレットを得た。得られたポリエチレンテレフタレートを160℃で6時間乾燥、結晶化させたのち、220℃、真空度0.3Torr、8時間の固相重合を行い、固有粘度0.80のポリエチレンテレフタレートを得た。なおこの樹脂のガラス転移温度TgAは83℃、融点TmA255℃、結晶融解熱量はΔHmA35J/gであった。
・熱可塑性エラストマー:
(A1)
ポリエステル系エラストマー(東レ・デュポン社製、商品名“ハイトレル(登録商標)”2501;ポリブチレンテレフタレート系樹脂とポリテトラメチレングリコール系樹脂のブロック共重合体、融点TmBが160℃)。
(A2)
ポリエステル系エラストマー(東レ・デュポン社製、商品名“ハイトレル(登録商標)”5557;ポリブチレンテレフタレート系樹脂とポリテトラメチレングリコール系樹脂のブロック共重合体、融点TmBが208℃)。
(A3)
ポリエステル系エラストマー(東レ・デュポン社製、商品名“ハイトレル(登録商標)”6347;ポリブチレンテレフタレート系樹脂とポリテトラメチレングリコール系樹脂のブロック共重合体、融点TmBが215℃)。
(A4)
ポリオレフィン系エラストマー(ダウ・ケミカル社製、商品名“エンゲージ(登録商標)”8402;ポリエチレンと1−オクテンのランダム共重合体、融点TmBが72℃)
(A5)
ポリアミド系エラストマー(Arkema社製、商品名“PEBAX(登録商標)”5533SP01;ポリアミド12とポリテトラメチレングリコール系樹脂のブロック共重合体、融点TmBが159℃)

0131

・粒子
タルク:GH−7(林化成(株)製)を使用した。長径5.8μm、アスペクト比10の板状粒子である。

0132

(参考例1−1)
熱可塑性エラストマーとしてA1を50質量部、およびタルク50質量部を温度265℃に加熱されたニーディングパドル混練部を1箇所設けた同方向回転タイプのベント式二軸混練押出機(日本製鋼所社製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に供給し、溶融混練後、ストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてタルクを50重量%含有するマスターペレット(MB−1)を作製した。

0133

(実施例1−1)
2台の単軸押出機を備えた製膜装置を用い、A層原料として180℃の温度で3時間真空乾燥した結晶性ポリエステルPET−1を第一の押出機に投入して280℃で溶融させた。B層原料としてまた120℃で6時間真空乾燥したポリエステル系エラストマーA1を第二の押出機に投入して、240℃で溶融させた。次いで、第一の押出機から供給されるA層原料を第二の押出機から供給されるB層原料の両側にそれぞれギアポンプにて計量しながら、厚み比率が、1:8:1となるよう合流させて、Tダイ口金に導入した。次いで、Tダイ口金内より、シート状に押出した積層体を、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて、厚み方向に交互に3層積層された積層構造を有するキャスティングシートを得た。

0134

続いて、該キャスティングシートを87℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度の加熱ロールを用いて長手方向(縦方向)に3倍延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップ把持しながらテンター内の80℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に100℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に3倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーン1で220℃の温度で20秒間の熱処理を施し、さらに熱処理ゾーン2で150℃の熱処理を行い、熱処理ゾーン3で100℃の温度で熱処理を行った。なお、熱処理に際し、熱処理ゾーン1−熱処理ゾーン2間で4%の弛緩処理を行った。次いで、均一に徐冷後、巻き取って、厚さ50μmの二軸延伸フィルムを得た。

0135

得られたフィルムの特性を評価した結果を表1−1に示す。積層性、平面性、制振性、耐熱性、寸法安定性に優れたフィルムであることが分かった。
また、得られたフィルムと阿波製紙社製のポリエステル不織布“PURELY(商標登録)”(厚み30μm)を、金属ロールシリコーンゴムロールとからなる熱ラミネート加工機を用いて、金属ロール側を200℃、シリコーンロール側を150℃の設定として、金属ロール側をポリエステル不織布、シリコーンロール側をフィルムとなるように重ね合わせて、線圧5kgf/cm、速度2m/minで貼り合わせて積層構造体を得た。得られた積層構造体の特性を評価した結果を表1−1に示す。制振性、耐熱性、寸法安定性に優れた積層構造体であることがわかった。

0136

(実施例1−1〜1−34)
A層、B層の押出機に投入する原料、および積層数、層厚み比、延伸条件を表1−1〜1−4の通りとした以外は実施例1と同様に厚さ50μmのフィルムを得た。なお、実施例1−14、1−24〜1−27は第一の押出機から供給されるA層原料と第二の押出機から供給されるB層原料を、それぞれギアポンプにて計量しながら、スリット数9個の積層装置にて合流させて、Tダイ口金に導入した。なお、積層体とする方法は、特開2007−307893号公報〔0053〕〜〔0056〕段の記載に従って行った。ここでは、スリットの長さおよび間隔は全て一定とした。得られた積層体は、A層が5層、B層が4層であり、厚み方向に交互に積層された積層構造を有しており、両表層はA層からなる。また、実施例1−15,1−28〜1−31については、同様にスリット数51個の積層装置にて合流させて、Tダイ口金に導入し、得られた積層体は、A層が26層、B層が25層であり、厚み方向に交互に積層された積層構造を有しており、両表層はA層からなる。
得られたフィルムの特性を評価した結果を表1−1〜1−4に示す。積層性、平面性、制振性、耐熱性、寸法安定性優れたフィルムであることが分かった。

0137

また得られたフィルムを用いて実施例1−1と同様に積層構造体を得た。得られた積層構造体の特性を評価した結果を表1−1〜1−4に示す。制振性、耐熱性、寸法安定性に優れた積層構造体であることがわかった。

0138

(実施例2−1〜2−34)
両表層はB層からなる構成とし、積層数、層厚み比、延伸条件を表2−1〜2−4の通りとした以外は実施例1−1と同様に厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表2−1〜2−4に示す。積層性、平面性、制振性、耐熱性、寸法安定性に優れたフィルムであることが分かった。

0139

また得られたフィルムを用いて実施例1−1と同様に積層構造体を得た。得られた積層構造体の特性を評価した結果を表2−1〜2−4に示す。制振性、耐熱性、寸法安定性に優れた積層構造体であることがわかった。

0140

(比較例1−1、2−1)
積層数、層厚み比、延伸条件を表1−4および表2−4の通りとした以外は実施例1−1および実施例2−1と同様に厚さ50μmのポリエステルフィルムを得ようとしたが、フィルム破れが発生し、フィルムを得ることができなかった。

0141

(比較例1−2,2−2)
積層数、層厚み比、延伸条件を表1−4および表2−4の通りとした以外は実施例1−1および実施例2−1と同様に厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表1−4および表2−4に示す。実施例1−1および実施例2−1と比べて制振性が劣るものであった。

0142

また得られたフィルムを用いて実施例1−1と同様に積層構造体を得た。得られた積層構造体の特性を評価した結果を表1−4および2−4に示す。実施例1−1および実施例2−1と比べて制振性が劣るものであった。

0143

(比較例1−3,2−3)
積層数、層厚み比、延伸条件を表1−4および表2−4の通りとした以外は実施例1−1および実施例2−1と同様に厚さ50μmのキャスティングシートを得た。得られたシートの特性を評価した結果を表1−4および表2−4に示す。実施例1−1および実施例2−1と比べて耐熱性が劣るものであった。

0144

また得られたフィルムを用いて実施例1−1と同様に積層構造体を得た。得られた積層構造体の特性を評価した結果を表1−4および2−4に示す。実施例1−1および実施例2−1と比べて耐熱性が劣るものであった。

0145

(比較例3)
B層を形成しない(A層のみ)とした以外は表1−5の通りとして実施例1−1と同様に厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した結果を表1−5に示す。実施例と比べて制振性、が劣るものであった。

0146

また得られたフィルムを用いて実施例1−1と同様に積層構造体を得た。得られた積層構造体の特性を評価した結果を表1−4および2−4に示す。実施例1−1および実施例2−1と比べて制振性が劣るものであった。

0147

(比較例4〜8)
A層を形成しない(B層のみ)とした以外は表1−5の通りとして実施例1−1と同様に厚さ50μmのキャストティングシートを得た。得られたシートの特性を評価した結果を表1−5に示す。実施例と比べて寸法安定性に劣るものであった。

0148

また得られたフィルムを用いて実施例1−1と同様に積層構造体の作製を行ったが、加工時のフィルムの変形が大きすぎて、またはフィルムが溶融してロール粘着して、積層構造体を得ることができなかった。

0149

0150

0151

0152

0153

0154

0155

0156

実施例

0157

0158

本発明では、耐熱性や寸法安定性に優れ、シリコンの汚染の懸念のない、かつ制振性に優れるフィルムを提供することができる。かかるフィルムは、銅貼り積層板、太陽電池用バックシート、粘着テープ、フレキシブルプリント基板、メンブレンスイッチ、面状発熱体、もしくはフラットケーブルなどの電気絶縁材料、コンデンサ用材料、筐体材料、自動車用材料、鉄道用材料、航空機用材料、建築材料をはじめとした制振性と耐熱性が重視されるような用途、風力発電ブレードや航空機の構造体保護用材料、医療用材料、フレキシブルデバイスに好適に使用することができる。特には本発明のフィルムは、ガラス、金属、繊維強化プラスチックからなる群から選ばれる1種以上の材料からなるシート材料と一体化されて用いられることも好ましく行われる。かかるフィルム、該フィルムに粘着層を設けた積層シートや、該フィルムとガラス、金属、繊維強化プラスチックからなる群から選ばれる1種以上の材料と一体化されてなる積層構造体を用いることで、より静粛な電子機器、自動車、鉄道、航空機、及び発電効率や耐久性の高い風力発電機を提供することができる。さらには、かかるフィルムに織布、不織布からなる群から選ばれる1種以上の材料と一体化することで、ゴワ付きや音が抑制され、装着感が良く、寸法安定性の良い医療用材料を提供することが可能となる。

0159

1一次粒子
2 外接直方体

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