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技術 糖タンパク質の糖鎖遊離法

出願人 国立研究開発法人産業技術総合研究所住友ベークライト株式会社
発明者 亀山昭彦豊田雅哲阪口碧
出願日 2017年9月26日 (1年11ヶ月経過) 出願番号 2018-542590
公開日 2019年6月24日 (2ヶ月経過) 公開番号 WO2018-062167
状態 未査定
技術分野 多糖類及びその誘導体
主要キーワード 自動移送 挟持保持 ヘミアセタール性水酸基 セチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド スルーポア シリカモノリス 試薬除去 フィルター状
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図面 (10)

課題・解決手段

糖タンパク質から糖鎖遊離させる方法であって、前記糖タンパク質に、(a)ヒドロキシルアミン類と、(b)塩基性試薬とを含む反応液を接触させて、前記糖タンパク質から遊離した糖鎖と前記反応液との混合液を得る工程を含む方法。

概要

背景

抗体医薬などのバイオ医薬品をはじめ、タンパク質の多くには糖鎖が結合している。バイオ医薬品において糖鎖はその医薬品の活性に影響するのみならず抗原性動態にも影響することが示唆されており、糖鎖の分析はバイオ医薬品開発において重要な課題となっている。また、糖タンパク質の糖鎖は疾患関連バイオマーカーとして利用できるが、マーカーとなり得る糖鎖を見出すためには多検体生体試料に含まれる糖タンパク質の糖鎖を分析する必要がある。

また、厚生労働省の「抗体医薬品品質評価のためのガイダンス」では、抗体医薬品は投与量が多いことや、生産に用いた細胞によっては非ヒト型糖鎖含量が従来の例より多くなる可能性も考えられることから、非ヒト型糖鎖が結合している場合は、その割合を明らかにするとともに、安全性への影響を考慮すべきとされている。そのため、糖鎖分析においては、ヒトに存在しない糖鎖構造、具体的にはNグリコリルノイラミン酸やGalα1−3Gal構造などは見落とさないように注意が必要である。

糖鎖を分析するためには、まず糖タンパク質から糖鎖を遊離させ、脱塩除タンパク質などの後処理を行った後、その糖鎖を質量分析計で分析する、または遊離された糖鎖に蛍光標識を付与し蛍光検出器装備した高速液体クロマトグラフィーキャピラリー電気泳動、もしくはこれらの組み合わせで分析することが一般的である。いずれの場合にも糖タンパク質から糖鎖を遊離することが最初の段階となる。糖鎖とタンパク質の結合は、タンパク質のアスパラギン残基アミノ基にNアセチルグルコサミンがNグリコシド結合で連結するN結合型糖鎖と、セリンおよびスレオニン残基水酸基にNアセチルガラクトサミンがOグリコシド結合で連結するO結合型糖鎖に分けられる。タンパク質から糖鎖を遊離させるためには、それぞれに適した方法が用いられる。

N結合型糖鎖を遊離させるためには、PNGaseFやグリコペプチダーゼAなどの酵素を用いて糖鎖を遊離させることができるが、それぞれに基質特異性が異なるため分析対象生物種に応じて酵素を使い分ける必要がある。また、酵素反応感受性を高めるため一般的には予めタンパク質を変性させたり、プロテアーゼで分解するなどの前処理が施される。

また、酵素を用いることなく化学反応により糖鎖を遊離する方法もある。例えば、特許文献1には、十分に乾燥させた糖タンパク質を無水ヒドラジンに溶解させ、100℃で10時間以上加熱処理するヒドラジン分解法を開示しており、当該方法は主にN型糖鎖を遊離する方法として利用されている。反応後は無水ヒドラジンを減圧留去し、さらに炭酸水素ナトリウム無水酢酸を用いてアセチル化を行う。これはヒドラジンが、糖鎖に結合しているNアセチル基やNグリコリル基も分解してアミノ基へと変換してしまうため、アセチル化することにより元に戻す操作である。したがって、もともとNグリコリル基など他のアシル基が結合していた場合も、全てNアセチル体として分析される。

また、例えば、特許文献2において、ヒドラジン−水和物を用いた糖鎖遊離も報告されている。この方法は、ヒドラジン−水和物はヒドラジンに比べ取り扱いが比較的容易で安価でもあるため、大量に糖タンパク質を処理する場合などに利用される。しかしながら、この方法も反応後のヒドラジン留去、再アセチル化などの後処理はヒドラジン分解法と同様の工程を必要とするものである。

O結合型糖鎖の遊離については、実用性のある酵素が見出されていない。そのためもっぱら化学反応による遊離が利用されている。遊離するための化学反応としては強アルカリ水溶液中で糖鎖をβ脱離させる方法が広く使われている。しかし、遊離された糖鎖はアルカリ存在下では直ぐに分解されてしまうため、通常は水素化ホウ素ナトリウム共存下で反応を行うことにより、遊離された糖鎖を直ちにアルジトールへと還元する方法が用いられる。

遊離されたアルジトールは蛍光標識を付与するための糖鎖側の官能基であるアルデヒド基が還元されてアルコールに変化しているため、蛍光標識を付与することができない。そのため、アルジトールの全ての水酸基をメチル化完全メチル化)した上で質量分析計で分析することが一般的である。

特許文献3は、強アルカリによるβ脱離において、アルデヒド基を温存した状態でO結合型糖鎖を得るために、流路内を流動させながらアルカリ溶液試料溶液とを短時間だけ反応させ、直ちに中和処理するシステムを開示している。

アルデヒド基を温存したままO結合型糖鎖を化学的に遊離する他の方法としては、前述のヒドラジン分解法が知られている。反応後は、ヒドラジン留去、再アセチル化を行い、蛍光標識を付与した後、HPLCなどを用いて分析されている。

ヒドラジン分解法によるO結合型糖鎖遊離は必ず糖鎖の分解を伴うため、分解を少しでも抑制することを目的として、反応系内に添加物を加えたりするなどの工夫も報告されている。また、強アルカリによるβ脱離も同様に必ず分解を伴うため、強アルカリの代わりに弱塩基を用いたβ脱離法も検討され、濃アンモニア水を用いる方法、カルバミン酸アンモニウムを用いる方法(特許文献4)などが報告されている。

概要

糖タンパク質から糖鎖を遊離させる方法であって、前記糖タンパク質に、(a)ヒドロキシルアミン類と、(b)塩基性試薬とを含む反応液を接触させて、前記糖タンパク質から遊離した糖鎖と前記反応液との混合液を得る工程を含む方法。

目的

本発明は、糖タンパク質から糖鎖を遊離させる方法であって、前記糖タンパク質に、(a)ヒドロキシルアミン類と、(b)塩基性試薬とを含む反応液を接触させて、前記糖タンパク質から遊離した糖鎖と前記反応液との混合液を得る工程を含む方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
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請求項1

糖タンパク質から糖鎖遊離させる方法であって、前記糖タンパク質に、(a)ヒドロキシルアミン類と、(b)塩基性試薬とを含む反応液を接触させて、前記糖タンパク質から遊離した糖鎖と前記反応液との混合液を得る工程を含む方法。

請求項2

前記反応液が前記(a)ヒドロキシルアミン類を2〜70%(w/w)含む、請求項1に記載の方法。

請求項3

前記反応液が(c)アミン類を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。

請求項4

前記(c)アミン類が、アンモニア水メチルアミン水溶液ジメチルアミン水溶液エチルアミンジエチルアミンエタノールアミンエチレンジアミンブチルアミンモルホリン、DABCO、アントラニル酸からなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、請求項3に記載の方法。

請求項5

前記糖タンパク質から遊離した糖鎖が糖鎖オキシムを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。

請求項6

前記糖タンパク質に前記反応液を接触させる工程において、前記反応液のpHが、8〜14の範囲内である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項7

前記(a)ヒドロキシルアミン類が、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミンの塩、O置換ヒドロキシルアミン及びO置換ヒドロキシルアミンの塩からなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。

請求項8

前記(b)塩基性試薬が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属の弱酸塩アルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア水溶液に溶解したアルカリ土類金属の塩及び有機塩基からなる群より選択される少なくとも一つである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。

請求項9

前記アルカリ金属の水酸化物が、水酸化リチウム水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであり、前記アルカリ金属の弱酸塩が、重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウムであり、前記アルカリ土類金属の水酸化物が、水酸化カルシウム水酸化バリウム又は水酸化ストロンチウムであり、前記アルカリ土類金属の塩が、酢酸カルシウム塩化カルシウム酢酸バリウム又は酢酸マグネシウムであり、前記有機塩基が、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、2−tert−ブチル−1,1,3,3−テトラメチルグアニジン又はセチルトリメチルアンモニウムヒドロキシドである、請求項8に記載の方法。

請求項10

前記混合液にケトンアルデヒド又は酸無水物を添加し、前記混合液中に残存する(a)ヒドロキシルアミン類をケトキシムアルドキシム又はアミドに変換する工程と、前記混合液を、糖鎖に親和性を有する固相と接触させて、前記固相に前記糖タンパク質から遊離した糖鎖を吸着させる工程と、前記固相から前記糖鎖を溶出させる工程と、を更に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。

請求項11

糖タンパク質が有する糖鎖の分析方法であって、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法により糖タンパク質から糖鎖を遊離する工程と、遊離した糖鎖を標識する工程であって、糖鎖オキシムの標識を含む工程と、を含む、糖鎖の分析方法。

請求項12

糖タンパク質から糖鎖を遊離するためのキットであって、(a)ヒドロキシルアミン類と(b)塩基性試薬とを含むキット。

請求項13

(c)アミン類を更に含む、請求項12に記載のキット。

請求項14

ケトン、アルデヒド又は酸無水物と、糖鎖に親和性を有する固相とを更に含む、請求項12又は13に記載のキット。

請求項15

請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法を行うための説明書を更に含む、請求項12〜14のいずれか一項に記載のキット。

請求項16

糖タンパク質から糖鎖を遊離するためのキットであって、(a)ヒドロキシルアミン類と併用して使用するための(b)塩基性試薬と(c)アミン類とを含むキット。

請求項17

ケトン、アルデヒド又は酸無水物と、糖鎖に親和性を有する固相とを更に含む、請求項16に記載のキット。

請求項18

請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法を行うための説明書を更に含む、請求項16又は17に記載のキット。

請求項19

糖タンパク質を含む試料が収容される容器を保持する容器保持部と、前記容器に試薬を導入する試薬導入部と、を備え、前記試薬導入部が、前記容器に(a)ヒドロキシルアミン類と、(b)塩基性試薬とを含む反応液を導入する反応液導入部を含む、糖タンパク質から糖鎖を遊離させる装置。

請求項20

前記試薬導入部が、前記容器にケトンを導入するケトン導入部、アルデヒドを導入するアルデヒド導入部又は酸無水物を導入する酸無水物導入部を更に含む、請求項19に記載の装置。

請求項21

糖鎖に親和性を有する固相を含む容器を保持する固相保持部を更に備える、請求項19又は20に記載の装置。

技術分野

0001

本発明は、糖タンパク質糖鎖遊離法に関する。本願は、2016年9月27日に、日本に出願された特願2016−187961号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。

背景技術

0002

抗体医薬などのバイオ医薬品をはじめ、タンパク質の多くには糖鎖が結合している。バイオ医薬品において糖鎖はその医薬品の活性に影響するのみならず抗原性動態にも影響することが示唆されており、糖鎖の分析はバイオ医薬品開発において重要な課題となっている。また、糖タンパク質の糖鎖は疾患関連バイオマーカーとして利用できるが、マーカーとなり得る糖鎖を見出すためには多検体生体試料に含まれる糖タンパク質の糖鎖を分析する必要がある。

0003

また、厚生労働省の「抗体医薬品品質評価のためのガイダンス」では、抗体医薬品は投与量が多いことや、生産に用いた細胞によっては非ヒト型糖鎖含量が従来の例より多くなる可能性も考えられることから、非ヒト型糖鎖が結合している場合は、その割合を明らかにするとともに、安全性への影響を考慮すべきとされている。そのため、糖鎖分析においては、ヒトに存在しない糖鎖構造、具体的にはNグリコリルノイラミン酸やGalα1−3Gal構造などは見落とさないように注意が必要である。

0004

糖鎖を分析するためには、まず糖タンパク質から糖鎖を遊離させ、脱塩除タンパク質などの後処理を行った後、その糖鎖を質量分析計で分析する、または遊離された糖鎖に蛍光標識を付与し蛍光検出器装備した高速液体クロマトグラフィーキャピラリー電気泳動、もしくはこれらの組み合わせで分析することが一般的である。いずれの場合にも糖タンパク質から糖鎖を遊離することが最初の段階となる。糖鎖とタンパク質の結合は、タンパク質のアスパラギン残基アミノ基にNアセチルグルコサミンがNグリコシド結合で連結するN結合型糖鎖と、セリンおよびスレオニン残基水酸基にNアセチルガラクトサミンがOグリコシド結合で連結するO結合型糖鎖に分けられる。タンパク質から糖鎖を遊離させるためには、それぞれに適した方法が用いられる。

0005

N結合型糖鎖を遊離させるためには、PNGaseFやグリコペプチダーゼAなどの酵素を用いて糖鎖を遊離させることができるが、それぞれに基質特異性が異なるため分析対象生物種に応じて酵素を使い分ける必要がある。また、酵素反応感受性を高めるため一般的には予めタンパク質を変性させたり、プロテアーゼで分解するなどの前処理が施される。

0006

また、酵素を用いることなく化学反応により糖鎖を遊離する方法もある。例えば、特許文献1には、十分に乾燥させた糖タンパク質を無水ヒドラジンに溶解させ、100℃で10時間以上加熱処理するヒドラジン分解法を開示しており、当該方法は主にN型糖鎖を遊離する方法として利用されている。反応後は無水ヒドラジンを減圧留去し、さらに炭酸水素ナトリウム無水酢酸を用いてアセチル化を行う。これはヒドラジンが、糖鎖に結合しているNアセチル基やNグリコリル基も分解してアミノ基へと変換してしまうため、アセチル化することにより元に戻す操作である。したがって、もともとNグリコリル基など他のアシル基が結合していた場合も、全てNアセチル体として分析される。

0007

また、例えば、特許文献2において、ヒドラジン−水和物を用いた糖鎖遊離も報告されている。この方法は、ヒドラジン−水和物はヒドラジンに比べ取り扱いが比較的容易で安価でもあるため、大量に糖タンパク質を処理する場合などに利用される。しかしながら、この方法も反応後のヒドラジン留去、再アセチル化などの後処理はヒドラジン分解法と同様の工程を必要とするものである。

0008

O結合型糖鎖の遊離については、実用性のある酵素が見出されていない。そのためもっぱら化学反応による遊離が利用されている。遊離するための化学反応としては強アルカリ水溶液中で糖鎖をβ脱離させる方法が広く使われている。しかし、遊離された糖鎖はアルカリ存在下では直ぐに分解されてしまうため、通常は水素化ホウ素ナトリウム共存下で反応を行うことにより、遊離された糖鎖を直ちにアルジトールへと還元する方法が用いられる。

0009

遊離されたアルジトールは蛍光標識を付与するための糖鎖側の官能基であるアルデヒド基が還元されてアルコールに変化しているため、蛍光標識を付与することができない。そのため、アルジトールの全ての水酸基をメチル化完全メチル化)した上で質量分析計で分析することが一般的である。

0010

特許文献3は、強アルカリによるβ脱離において、アルデヒド基を温存した状態でO結合型糖鎖を得るために、流路内を流動させながらアルカリ溶液試料溶液とを短時間だけ反応させ、直ちに中和処理するシステムを開示している。

0011

アルデヒド基を温存したままO結合型糖鎖を化学的に遊離する他の方法としては、前述のヒドラジン分解法が知られている。反応後は、ヒドラジン留去、再アセチル化を行い、蛍光標識を付与した後、HPLCなどを用いて分析されている。

0012

ヒドラジン分解法によるO結合型糖鎖遊離は必ず糖鎖の分解を伴うため、分解を少しでも抑制することを目的として、反応系内に添加物を加えたりするなどの工夫も報告されている。また、強アルカリによるβ脱離も同様に必ず分解を伴うため、強アルカリの代わりに弱塩基を用いたβ脱離法も検討され、濃アンモニア水を用いる方法、カルバミン酸アンモニウムを用いる方法(特許文献4)などが報告されている。

先行技術

0013

特開平3−228000号公報
特開2007−45889号公報
特許第4283272号公報
特開2015−107969号公報

発明が解決しようとする課題

0014

バイオ医薬品の糖鎖不均一性創薬段階から開発段階そして製造に至るまでモニターし制御することは、高品質のバイオ医薬品薬製造において重要な課題となってきている。これまで行われてきたように製品品質管理としてのみ糖鎖を分析するのではなく、開発の各段階で随時、迅速に糖鎖を分析することが求められる。また、種々の疾患に関連した病態マーカーを探索する上でも糖鎖の分析は多検体の試料を迅速に分析することが必要となる。そして、多検体の分析にはコストも極めて大きな負担となる。

0015

前述のように糖鎖を分析するためにはタンパク質から糖鎖を遊離することが最初の段階となるが、従来、糖鎖を遊離するためには前処理を含め、長時間を要していた。例えば、酵素を用いて糖鎖を遊離する場合、予めタンパク質をジチオスレイトールなどの還元剤で処理した後、ヨードアセトアミドなどのアルキル化剤を用いて処理することにより変性させ、さらにトリプシン等のプロテアーゼでペプチドに分解した後に、糖鎖遊離酵素を反応させて糖鎖を遊離するため、医薬品の製造現場で試料を採取したその日に糖鎖を分析することはできなかった。

0016

さらに、糖鎖を遊離させる酵素であるPNGaseFやグリコペプチダーゼAは非常に高価であり多検体の分析を行うためには相当のコスト負担を生じていた。

0017

また、ヒドラジン分解法は完全な無水条件が必要であり、反応系内に少量でも水が混入すると著しい収率の低下を招く。そのため、予め試料を十分に減圧乾燥した上で反応させる必要があった。さらに、反応時間は10時間以上であり、反応後にヒドラジンの留去、再アセチル化まで含めると、全工程が終了するまでに少なくとも2日以上を要する。さらにヒドラジンは発がん性を有する毒物でもあり、また易爆発性化合物でもあるため、その取り扱いには細心の注意を払う必要があった。

0018

さらにヒドラジン分解法では、Nグリコリル基が分解されてしまうため、Nグリコリルノイラミン酸の分析ができないという問題もあった。バイオ医薬や糖鎖疾患マーカーではシアル酸一種であるNグリコリルノイラミン酸の有無が問題となることがあるため、このような目的ではヒドラジン分解法は利用できなかった。

0019

一方で、O結合型糖鎖を遊離する場合には、ヒドラジン分解法でもアルカリβ脱離法でも糖鎖の還元末端のNアセチルガラクトサミンの3位に結合している糖が脱離してしまうという副反応ピーリング反応)を必ず伴う。それを抑制するために弱塩基を利用したβ脱離法を行ってもピーリングは避けられないだけでなく、遊離効率も著しく低下してしまうという問題があった。また、反応時間も16時間以上かかっていた。

0020

また、ピーリングを抑制するために水素化ホウ素ナトリウムを共存させる方法では、標識剤を還元末端に付与することができなくなるため、HPLCなどで高感度に分析することができなかった。

0021

以上の諸問題から、糖鎖を分析するために、安全かつ安価な薬品をもちいて、また特別なシステムを用いることなく短時間の処理時間でN結合型糖鎖とO結合型糖鎖をタンパク質から遊離する方法が求められていた。

課題を解決するための手段

0022

本発明者は鋭意に検討した結果、ヒドロキシルアミン存在下、水溶液中で塩基性触媒を用いてタンパク質から糖鎖が遊離できることを見出し、本発明を完成させた。

0023

すなわち、本発明は以下の態様を含む。
[1]糖タンパク質から糖鎖を遊離させる方法であって、前記糖タンパク質に、(a)ヒドロキシルアミン類と、(b)塩基性試薬とを含む反応液を接触させて、前記糖タンパク質から遊離した糖鎖と前記反応液との混合液を得る工程を含む方法。
[2]前記反応液が前記(a)ヒドロキシルアミン類を2〜70%(w/w)含む、[1]に記載の方法。
[3]前記反応液が(c)アミン類を更に含む、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記(c)アミン類が、アンモニア水、メチルアミン水溶液ジメチルアミン水溶液、エチルアミンジエチルアミンエタノールアミンエチレンジアミンブチルアミンモルホリン、DABCO、アントラニル酸からなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[3]に記載の方法。
[5]前記糖タンパク質から遊離した糖鎖が糖鎖オキシムを含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記糖タンパク質に前記反応液を接触させる工程において、前記反応液のpHが、8〜14の範囲内である、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記(a)ヒドロキシルアミン類が、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミンの塩、O置換ヒドロキシルアミン及びO置換ヒドロキシルアミンの塩からなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記(b)塩基性試薬が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属の弱酸塩アルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア水溶液に溶解したアルカリ土類金属の塩及び有機塩基からなる群より選択される少なくとも一つである、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9]前記アルカリ金属の水酸化物が、水酸化リチウム水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであり、前記アルカリ金属の弱酸塩が、重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウムであり、前記アルカリ土類金属の水酸化物が、水酸化カルシウム水酸化バリウム又は水酸化ストロンチウムであり、前記アルカリ土類金属の塩が、酢酸カルシウム塩化カルシウム酢酸バリウム又は酢酸マグネシウムであり、前記有機塩基が、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、2−tert−ブチル−1,1,3,3−テトラメチルグアニジン又はセチルトリメチルアンモニウムヒドロキシドである、請求項8に記載の方法。
[10]前記混合液にケトンアルデヒド又は酸無水物を添加し、前記混合液中に残存する(a)ヒドロキシルアミン類をケトキシムアルドキシム又はアミドに変換する工程と、前記混合液を、糖鎖に親和性を有する固相と接触させて、前記固相に前記糖タンパク質から遊離した糖鎖を吸着させる工程と、前記固相から前記糖鎖を溶出させる工程と、を更に含む、[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11]糖タンパク質が有する糖鎖の分析方法であって、[1]〜[10]のいずれかに記載の方法により糖タンパク質から糖鎖を遊離する工程と、遊離した糖鎖を標識する工程であって、糖鎖オキシムの標識を含む工程と、を含む、糖鎖の分析方法。
[12]糖タンパク質から糖鎖を遊離するためのキットであって、(a)ヒドロキシルアミン類と(b)塩基性試薬とを含むキット。
[13](c)アミン類を更に含む、[12]に記載のキット。
[14]ケトン、アルデヒド又は酸無水物と、糖鎖に親和性を有する固相とを更に含む、[12]又は[13]に記載のキット。
[15][1]〜[10]のいずれかに記載の方法を行うための説明書を更に含む、[12]〜[14]のいずれかに記載のキット。
[16]糖タンパク質から糖鎖を遊離するためのキットであって、(a)ヒドロキシルアミン類と併用して使用するための(b)塩基性試薬と(c)アミン類とを含むキット。
[17]ケトン、アルデヒド又は酸無水物と、糖鎖に親和性を有する固相とを更に含む、[16]に記載のキット。
[18][1]〜[10]のいずれかに記載の方法を行うための説明書を更に含む、[16]又は[17]に記載のキット。
[19]糖タンパク質を含む試料が収容される容器を保持する容器保持部と、前記容器に試薬を導入する試薬導入部と、を備え、前記試薬導入部が、前記容器に(a)ヒドロキシルアミン類と、(b)塩基性試薬とを含む反応液を導入する反応液導入部を含む、糖タンパク質から糖鎖を遊離させる装置。
[20]前記試薬導入部が、前記容器にケトンを導入するケトン導入部、アルデヒドを導入するアルデヒド導入部又は酸無水物を導入する酸無水物導入部を更に含む、[19]に記載の装置。
[21]糖鎖に親和性を有する固相を含む容器を保持する固相保持部を更に備える、[19]又は[20]に記載の装置。

0024

本発明は、以下の態様を含むということもできる。
〔1〕糖タンパク質から糖鎖を遊離させる方法であって、
前記糖タンパク質に、(a)ヒドロキシルアミン類と、(b)塩基性試薬とを含む反応液を接触させる工程であって、前記(a)ヒドロキシルアミン類が、2〜50%(w/w)で反応液中に含まれる工程、を含む方法に関する。
ここで、本発明の糖タンパク質から糖鎖を遊離させる方法は、一実施の形態において、〔2〕上記〔1〕に記載の方法であって、
前記反応液がさらに(c)アミン類を含むことを特徴とする。
また、本発明の糖タンパク質から糖鎖を遊離させる方法は、一実施の形態において、〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載の方法であって、
前記糖タンパク質から遊離した糖鎖が糖鎖オキシムを含むことを特徴とする。
また、本発明の糖タンパク質から糖鎖を遊離させる方法は、一実施の形態において、〔4〕上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法であって、
前記糖タンパク質に前記反応液を接触させる工程において、前記反応液のpHが、8〜14の範囲内であることを特徴とする。
また、本発明の糖タンパク質から糖鎖を遊離させる方法は、一実施の形態において、
〔5〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法であって、
前記(a)ヒドロキシルアミン類が、ヒドロキシルアミンおよびその塩類、ならびに、O置換ヒドロキシルアミンおよびその塩類からなる群より選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする。
また、本発明の糖タンパク質から糖鎖を遊離させる方法は、一実施の形態において、
〔6〕上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法であって、
前記(b)塩基性試薬が、アルカリ金属水酸化物アルカリ金属弱酸塩アルカリ土類水酸化物、アンモニア水溶液に溶解したアルカリ土類の塩、および、有機塩基からなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする。
また、本発明の糖タンパク質から糖鎖を遊離させる方法は、一実施の形態において、〔7〕上記〔6〕に記載の方法であって、
前記アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属弱酸塩、または、アルカリ土類水酸化物が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、からなる群より選択される少なくとも一つであり、
前記アンモニア水溶液に溶解したアルカリ土類の塩が、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする。
また、本発明の糖タンパク質から糖鎖を遊離させる方法は、一実施の形態において、〔8〕上記〔6〕に記載の方法であって、
前記有機塩基が、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、2−tert−ブチル−1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、セチルトリメチルアンモニウムヒドロキシドからなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする。
また、本発明の糖タンパク質から糖鎖を遊離させる方法は、一実施の形態において、
〔9〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の方法であって、
前記(c)アミン類が、アンモニアメチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、ブチルアミン、モルホリン、DABCO、アントラニル酸からなる群より選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする。
また、本発明は、別の態様において、
〔10〕糖タンパク質が有する糖鎖の分析方法であって、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法により糖タンパク質から糖鎖を遊離する工程と、
遊離した糖鎖を標識する工程であって、糖鎖オキシムの標識を含む工程と
を含む、糖鎖の分析方法に関する。
また、本発明は、別の態様において、
〔11〕糖タンパク質から糖鎖を遊離するためのキットであって、
(a)ヒドロキシルアミン類と(b)塩基性試薬とを含むキット。
また、本発明の糖タンパク質から糖鎖を遊離するためのキットは、一実施の形態において、
〔12〕上記〔11〕に記載のキットであって、
(a)アミン類をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明の糖タンパク質から糖鎖を遊離するためのキットは、一実施の形態において、
〔13〕糖タンパク質から糖鎖を遊離するためのキットであって、
(a)ヒドロキシルアミン類と併用して使用するための(b)塩基性試薬と(c)アミン類とを含むキットであることを特徴とする。

発明の効果

0025

本発明の方法によれば、安全かつ安価な薬品の使用により、糖鎖の分解を抑制しつつ、短時間の処理時間で糖タンパク質から糖鎖を遊離させることができ、また、遊離した糖鎖は、糖鎖オキシムを含む混合物として回収することが可能である。

0026

特に、N結合型糖鎖を糖タンパク質から遊離する方法においては、従来、ヒドラジン分解法では、Nグリコリル基が分解されてしまうため、Nグリコリルノイラミン酸の分析ができなかったが、本方法によれば、Nグリコリル基の分解を抑制しつつ、糖鎖の遊離を行うことができる。

図面の簡単な説明

0027

実施例1において、モノクローナル抗体IgG)から遊離させたN結合型糖鎖のHPLCクロマトグラムを示す。
実施例1において、N結合型糖鎖を遊離する酵素(PNGaseF)を用いた方法によりモノクローナル抗体(IgG)から遊離させたN結合型糖鎖のHPLCクロマトグラムを示す。
実施例2において、ヒト血清由来IgGから遊離させたN結合型糖鎖のHPLCクロマトグラムを示す。
実施例3において、ウシフェツィンから遊離させたO結合型糖鎖のHPLCクロマトグラムを示す。
実施例4において、ウシアポトランスフェリンから遊離させたN結合型糖鎖のHPLCクロマトグラムを示す。
実施例5において、セイヨウワサビペルオキシダーゼから遊離させたN結合型糖鎖のHPLCクロマトグラムを示す。
実施例6において、ウシ顎下腺ムチンから遊離させたO結合型糖鎖のHPLCクロマトグラムを示す。
(a)〜(d)は、実施例9〜11において、ウシフェツインから遊離させたO結合型糖鎖のHPLCクロマトグラムを示す。(a)は実施例10の結果であり、(b)は実施例11の結果であり、(c)は実施例9(アセトン処理)の結果であり、(d)は実施例9(サリチルアルデヒド処理)の結果である。
実施例12において、ウシフェツインから遊離させたO結合型糖鎖のHPLCクロマトグラムを示す。
糖タンパク質から糖鎖を遊離させる装置の一実施形態を説明する模式図である。

0028

本明細書において、「糖タンパク質」とは、タンパク質のアミノ酸配列中に、O結合型糖鎖、または、N結合型糖鎖が少なくとも一つ以上結合しているタンパク質をいう。本発明を適用可能な糖タンパク質は、特に制限されず、天然由来であっても、合成したものでも良い。

0029

「糖鎖」には、O結合型糖鎖、および、N結合型糖鎖が含まれる。O結合型糖鎖は、タンパク質のセリン(Ser)またはスレオニン(Thr)のアミノ酸残基において、各アミノ酸側鎖に含まれる−OH基を介して糖鎖が結合した構造である。また、O結合型糖鎖は、コアの構造により1〜8種に分類される。また、N結合型糖鎖は、タンパク質のアスパラギン残基の側鎖のアミド基窒素原子に結合する糖鎖を指す。N結合型糖鎖はマンノース基点として分岐を形成しているものが含まれ、例えば2本分岐鎖、3本分岐鎖、4本分岐鎖等がある。また、N結合型糖鎖は、その構造により、基本型、高マンノース型、ハイブリッド型複合型などに分類することができる。

0030

本発明においては、O結合型糖鎖およびN結合型糖鎖のいずれの糖鎖も糖タンパク質からの遊離の対象とすることができる。

0031

[糖タンパク質から糖鎖を遊離させる方法]
一実施形態において、本発明は、糖タンパク質から糖鎖を遊離させる方法であって、前記糖タンパク質に、(a)ヒドロキシルアミン類と、(b)塩基性試薬とを含む反応液を接触させて、前記糖タンパク質から遊離した糖鎖と前記反応液との混合液を得る工程を含む方法を提供する。糖タンパク質を、(a)ヒドロキシルアミン類と、(b)塩基性試薬とを含む反応液と接触させることにより、当該糖タンパク質から糖鎖を遊離することができる。

0032

ここで、「糖タンパク質に、(a)ヒドロキシルアミン類と、(b)塩基性試薬とを含む反応液を接触させる」とは、最終的に、糖タンパク質、(a)ヒドロキシルアミン類、及び(b)塩基性試薬が接触した状態になればよく、その混合の順序は問わない。例えば、まず、糖タンパク質に(a)ヒドロキシルアミン類を添加し、その後(b)塩基性試薬を添加してもよい。あるいは、まず、糖タンパク質に(b)塩基性試薬を添加し、その後(a)ヒドロキシルアミン類を添加してもよい。あるいは、まず、(a)ヒドロキシルアミン類と(b)塩基性試薬とを混合し、これに糖タンパク質を添加してもよい。なお、O結合型糖鎖の場合には、糖鎖の分解を抑制するためにヒドロキシルアミン類を先に添加することが好ましい。

0033

ここで、本実施形態に使用できる「(a)ヒドロキシルアミン類」としては、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミンの塩、O置換ヒドロキシルアミン、O置換ヒドロキシルアミンの塩を挙げることができる。具体的には、以下に限定されないが、例えば、ヒドロキシルアミン塩酸塩ヒドロキシルアミン水溶液、ヒドロキシルアミン硫酸塩、ヒドロキシルアミンリン酸塩、Oメチルヒドロキシルアミン塩酸塩、Oエチルヒドロキシルアミン塩酸塩、O−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)ヒドロキシルアミン、ニトロベンジルヒドロキシルアミン塩酸塩、O−ターシャブチルジメチルシリルヒドロキシルアミン、O−トリメチルシリルヒドロキシルアミンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物を挙げることができる。なお、前述する化合物の二つ以上を組み合わせて使用してもよい。好ましい実施の形態において、「(a)ヒドロキシルアミン類」は、ヒドロキシルアミン水溶液である。

0034

反応液中の「(a)ヒドロキシルアミン類」の最終濃度は、例えば2〜70%(w/w)、例えば2〜50%(w/w)の濃度範囲とすることができる。しかしながら、前述の濃度範囲に限定されず、当業者であれば、対象とする糖タンパク質の種類や反応液中の他の成分(アミン類、塩基性試薬、その他の添加剤)、反応条件(時間、温度など)などにより適宜調整することができる。

0035

発明者らは、特に、O結合型糖鎖を遊離させる場合には、「(a)ヒドロキシルアミン類」の最終濃度はできるだけ高いことが好ましいことを明らかにした。したがって、O結合型糖鎖を遊離させる場合には「(a)ヒドロキシルアミン類」の最終濃度は、例えば10〜70%(w/w)、例えば30〜60%(w/w)の濃度範囲であってよく、特に約50%(w/w)が好適である。

0036

なお、N結合型糖鎖を遊離させる場合には、「(a)ヒドロキシルアミン類」の最終濃度は、2〜50%(w/w)とすることができ、好ましくは、10〜20%(w/w)とすることができる。より好ましい実施の形態においては、10%(w/w)である。

0037

「(a)ヒドロキシルアミン類」として、ヒドロキシルアミンを用いる場合、ヒドロキシルアミンの濃度が、2%(w/w)超50%(w/w)以下であると、十分な糖鎖回収量が得られ、ヒドロキシルアミンも安定である傾向にある。

0038

また、本実施形態に使用できる「(b)塩基性試薬」としてはアルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の弱酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア水に溶解したアルカリ土類金属の塩、および、有機塩基からなる群より選択される少なくとも一つの化合物を挙げることができる。

0039

アルカリ金属の水酸化物としては、以下に限定されないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを挙げることができる。

0040

また、アルカリ金属の弱酸塩としては、以下に限定されないが、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムを挙げることができる。

0041

また、アルカリ土類金属の水酸化物としては、以下に限定されないが、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウムを挙げることができる。

0042

また、アンモニア水に溶解したアルカリ土類の塩としては、以下に限定されないが、例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウムを挙げることができる。

0043

これらの中でも、特に、水酸化リチウムが好ましい。

0044

また、有機塩基としては、以下に限定されないが、例えば、DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(1,8−diazabicyclo[5.4.0]undec−7−ene)、TBD:1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカン−5−エン(1,5,7−Triazabicyclo[4.4.0]dec−5−ene)、MTBD:7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(7−Methyl−1,5,7−triazabicyclo[4.4.0]dec−5−ene)、TMG:1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(1,1,3,3−Tetramethylguanidine)、t−BuTMG:2−tert−ブチル−1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(2−tert−Butyl−1,1,3,3−tetramethylguanidine)、DBN:1,5−diazabicyclo[4.3.0]non−5−ene、CTAH:cetyltrimethylammonium hydroxideなどを挙げることができる。なお、前述する化合物の二つ以上を組み合わせて使用してもよい。好ましい実施の形態において、「有機塩基」は、有機強塩基(pKa12以上)であり、具体的には、DBU、TMG、TBD、MTBD、CTAHを挙げることができる。これらDBU、TMG、TBD、MTBD、CTAHを「有機塩基」として用いることで、有機溶媒による洗浄で反応後の塩基の除去が可能となる点において、好ましい。

0045

反応液中の「(b)塩基性試薬」の最終濃度は、例えば、2mM〜2Mの濃度範囲とすることができる。しかしながら、前述の濃度範囲に限定されず、当業者であれば、対象とする糖タンパク質の種類や反応液中の他の成分(ヒドロキシルアミン類、その他の添加剤)、反応条件(時間、温度など)などにより適宜調整することができる。なお、例えば、「(b)塩基性試薬」として、水酸化リチウムを用いる際には、6mM〜1Mとすることができ、好ましくは、100mM〜500mMとすることができる。より好ましい実施の形態においては、100mM〜200mMである。塩基性試薬の濃度が、2mM未満だと反応時間が長時間となるとなる点において好ましくなく、2Mを超えると糖鎖の回収率が低下する点において好ましくない。

0046

本実施形態に係る糖タンパク質から糖鎖を遊離させる方法は、糖タンパク質に対して、(a)ヒドロキシルアミン類と(b)塩基性試薬とを含む反応液を接触させることにより糖タンパク質から糖鎖を遊離させる。このとき、(a)ヒドロキシルアミン類は、当該反応液に対して、2〜70%(w/w)の範囲で含まれている。

0047

このとき、反応液中の(a)ヒドロキシルアミン類と(b)塩基性試薬とのモル比は、1:1〜300:1とすることが好ましく、3:1〜200:1とすることがより好ましい。(a)ヒドロキシルアミン類と(b)塩基性試薬とのモル比を上記範囲とすることにより、遊離した糖鎖の分解反応を抑制することができる。

0048

また、反応液のpHは、8〜14の範囲内とすることができ、10〜13の範囲内とすることがより好ましい。

0049

対象となる糖タンパク質と当該反応液とを接触させる工程において、温度や反応時間の条件は、対象となるタンパク質から糖鎖が遊離できる限りにおいて特に限定されず、対象となる糖タンパク質、ヒドロキシルアミン類、塩基性試薬の種類や濃度等の条件により当業者は適宜設定することができる。なお、温度は、例えば、室温〜80℃とすることができる。なお、Nグリコリル基などは、高温で反応させると分解されやすいため、未知の糖鎖を有する糖タンパク質を対象とする場合は、50℃以下とすることが好ましい。また、反応時間も条件により約5分〜16時間とすることができる。

0050

また、本実施形態に係る糖タンパク質から糖鎖を遊離させる方法は、一実施の形態において、反応液に「(c)アミン類」をさらに加えることができる。本実施形態に使用できる「(c)アミン類」としては、以下に限定されないが、例えば、アンモニア水、メチルアミン水溶液、ジメチルアミン水溶液、エチルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、ブチルアミン、モルホリン、DABCO、アントラニル酸からなる群より選択される少なくとも一つの化合物を挙げることができる。また、なお、前述する化合物の二つ以上を組み合わせて使用してもよい。好ましい実施の形態において、「(c)アミン類」は、アンモニア水、モルホリン、DABCO、アントラニル酸である。アンモニア水、モルホリン、DABCO、アントラニル酸などを「(c)アミン類」として用いることで、ピーリング、異性化やアミドの分解が抑制される点において、好ましい。特に、アンモニアよりもpKaの低いモルホリンやDABCO、アントラニル酸などを用いた場合には、N結合型糖鎖を遊離する際の副反応である異性化が抑えることができる点において好ましい。

0051

反応液中の「(c)アミン類」の最終濃度は、例えば、40mM〜15Mの濃度範囲とすることができる。しかしながら、前述の濃度範囲に限定されず、当業者であれば、対象とする糖タンパク質の種類や反応液中の他の成分(ヒドロキシルアミン類、塩基性試薬、その他の添加剤)、反応条件(時間、温度など)などにより適宜調整することができる。なお、例えば、「(c)アミン類」として、アンモニア水を用いる際には、反応液中のアンモニアの最終濃度を2〜25%(w/w)とすることができ、好ましくは、10〜20%(w/w)とすることができる。より好ましい実施の形態においては、20%(w/w)である。

0052

[糖鎖の分析方法]
一実施形態において、本発明は、糖タンパク質が有する糖鎖の分析方法であって、上述した方法により糖タンパク質から糖鎖を遊離する工程と、遊離した糖鎖を標識する工程と、を含む、糖鎖の分析方法を提供する。

0053

本実施形態の分析方法では、遊離した糖鎖を標識する工程において、糖鎖オキシムも標識される。詳細については後述する。

0054

糖タンパク質から糖鎖を遊離させた後の反応溶液は、公知の方法(例えば、グラファイトカーボン充填した固相抽出カートリッジ)を用いて、脱塩処理を行い、反応溶液中に含まれる糖鎖の分析に用いることができる。

0055

溶液中に遊離している糖鎖の分析方法としては、適宜公知の方法を採用することができる。例えば、下記実施例で採用するように、ピコリンボランと2−アミノベンズアミドを用いた蛍光標識法を用いることができる。

0056

なお、上述した方法により遊離した糖鎖は、アルデヒド型となった一部が糖鎖オキシムを形成する。すなわち、従来の方法においては、遊離後の糖鎖の官能基であるアルデヒド基が還元されてアルジトールへと変換された場合、直接、蛍光標識することができなかった。また、従来の方法において、糖鎖の官能基であるアルデヒド基がヒドラジンによりヒドラゾンへと変換された場合、蛍光標識を付与するためには再アセチル化操作により元の遊離糖鎖に戻す必要があった。

0057

これに対し、上述した方法によれば、直接標識可能な糖鎖オキシムとして遊離した糖鎖を得ることができる。すなわち、本実施形態の方法により糖タンパク質から遊離した糖鎖は糖鎖オキシムを含む。糖鎖オキシムは直接標識することができる。

0058

したがって、上述した方法により得られた遊離糖鎖は、グリコシルアミン、糖鎖オキシム、還元末端にヘミアセタール性水酸基を有する通常の糖鎖の混合物として溶液中に得ることができ、これらをまとめて標識することができる。

0059

ところで、上述したように、発明者らは、特にO結合型糖鎖を遊離させる場合には、(a)ヒドロキシルアミン類の最終濃度はできるだけ高いことが好ましいことを明らかにした。

0060

しかしながら、糖タンパク質と反応液との混合液が、高濃度の(a)ヒドロキシルアミン類を含む場合、糖鎖を遊離後の混合液に未反応の(a)ヒドロキシルアミン類が残存する場合がある。未反応の(a)ヒドロキシルアミン類は、糖鎖の蛍光標識反応阻害してしまうため、除去することが好ましい。

0061

そこで、上述した方法は、未反応の(a)ヒドロキシルアミン類を除去する追加の工程を更に含んでいてもよい。すなわち、上述した方法は、糖タンパク質と反応液との混合液に、ケトン、アルデヒド又は酸無水物を添加し、混合液中に残存する(a)ヒドロキシルアミン類をケトキシム、アルドキシム又はアミドに変換する工程と、前記混合液を、糖鎖に親和性を有する固相と接触させて、前記固相に前記糖タンパク質から遊離した糖鎖を吸着させる工程と、前記固相から前記糖鎖を溶出させる工程と、を更に含んでいてもよい。

0062

(a)ヒドロキシルアミン類にケトンを反応させることによりケトキシムに変換することができる。また、(a)ヒドロキシルアミン類にアルデヒドを反応させることによりアルドキシムに変換することができる。また、(a)ヒドロキシルアミン類に酸無水物を反応させることによりアミドに変換することができる。

0063

ケトンとしては、アセトンメチルエチルケトンメチルイソブチルケトン、4−ヒドロキシブタノン等を使用することができる。また、アルデヒドとしては、サリチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド等を使用することができる。また、酸無水物としては無水酢酸、無水コハク酸等を使用することができる。

0064

続いて、上記の混合液から糖鎖を回収する。具体的には、上記の混合液を糖鎖に親和性を有する固相と接触させて、前記固相に前記糖タンパク質から遊離した糖鎖を吸着させ、続いて、前記固相から前記糖鎖を溶出させることにより、上記の混合液から糖鎖の回収することができる。

0065

以上の操作により、糖タンパク質から遊離した糖鎖から、未反応の(a)ヒドロキシルアミン類を除去することができる。

0066

糖鎖に親和性を有する固相は、特に制限されないが、例えば、グラファイトカーボン、結晶性セルロースシリカモノリスシリカ等の親水性担体等が挙げられ、特にモノリスシリカが好適である。モノリスシリカとは、3次元網目構造を持つフィルター状多孔質連続体シリカであり、従来の粒子状シリカと比較して通液性が良好であり、デッドボリュームが少ない等の長所がある。モノリスシリカは、カラム状の容器に固定されていてもよく、例えばマルチウェルプレートに固定されていてもよい。

0067

モノリスシリカのポアサイズは、互いに連続した細孔(スルーポア)径が1〜100μmであることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましく、1〜30μmであることが更に好ましく、1〜20μmであることが特に好ましい。

0068

ケトン、アルデヒド又は酸無水物を添加した混合液を、親水性担体が固定されたカラム又はマルチウェルプレートに注入し、自然落下、吸引加圧遠心等の方法により通過させたのち、洗浄液で洗浄し、溶出液を添加し糖鎖を溶出させるとよい。

0069

親水性担体にアプライする、ケトン、アルデヒド又は酸無水物を添加した混合液は、90体積%以上の有機溶媒を含むことが好ましく、95体積%以上の有機溶媒を含むことが更に好ましい。有機溶媒としては、アセトニトリルメタノールエタノール2−プロパノールヘキサン酢酸エチル塩化メチレンテトラヒドロフラン等を用いることができるが、アセトニトリルが特に好ましい。

0070

ケトン、アルデヒド又は酸無水物を添加した混合液を親水性担体にアプライした後、親水性担体を洗浄液で洗浄することが好ましい。洗浄液は90体積%以上の有機溶媒と10体積%以下の水を含むことが好ましく、95体積%以上の有機溶媒と5体積%以下の水を含むことが更に好ましい。洗浄液に含まれる有機溶媒としては、アセトニトリル、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ヘキサン、酢酸エチル、塩化メチレン、テトラヒドロフラン等を用いることができるが、アセトニトリルが特に好ましい。組成の異なる洗浄液を用いてもよく、例えば100%アセトニトリルで洗浄した後、アセトニトリル:水=95:5(v/v)の混合液で洗浄してもよい。

0071

洗浄操作後、親水性担体に溶出液を添加し、糖鎖を溶出する。溶出液は10体積%以上の水を含むことが好ましく、50体積%以上の水を含むことがより好ましく、水が特に好ましい。溶出液に含まれる水以外の成分としては、アセトニトリル、及び、メタノール、エタノール、プロパノールブタノールに代表されるアルコールから選ばれる有機溶媒であることが好ましい。溶出した糖鎖は、蛍光標識反応に供することができる。

0072

[キット]
一実施形態において、本発明は、糖タンパク質から糖鎖を遊離するためのキットであって、(a)ヒドロキシルアミン類と(b)塩基性試薬とを含むキットを提供する。また、本実施形態のキットは、一形態の形態において、(a)ヒドロキシルアミン類と(b)塩基性試薬とに加えて、さらに(c)アミン類を含むキットである。また、本実施形態の糖タンパク質から糖鎖を遊離するためのキットは、別の一実施形態において、(a)ヒドロキシルアミン類と併用して使用するための(b)塩基性試薬と(c)アミン類とを含むキットである。

0073

本実施形態のキットは、その他、糖タンパク質から糖鎖を遊離する工程に使用される試薬((a)ヒドロキシルアミン類、(c)アミン類、その他の添加物など)、ケトン、アルデヒド又は酸無水物、糖鎖の精製に使用する担体(糖鎖に親和性を有する固相)、糖鎖の分析に使用する試薬(蛍光試薬など)や検出機器、糖タンパク質から糖鎖を遊離する方法の具体的な手順を記載した説明書等を更に含むことができる。

0074

[装置]
一実施形態において本発明は、糖タンパク質を含む試料が収容される容器を保持する容器保持部と、前記容器に試薬を導入する試薬導入部と、を備え、前記試薬導入部が、前記容器に(a)ヒドロキシルアミン類と、(b)塩基性試薬とを含む反応液を導入する反応液導入部を含む、糖タンパク質から糖鎖を遊離させる装置を提供する。なお、以下に説明する装置の構成はあくまで一例であり、本実施形態の装置はこの構成に拘束されるものではない。

0075

図10は、本実施形態の装置を説明する模式図である。装置100は、糖タンパク質を含む試料110が収容される容器120を保持する容器保持部130と、容器120に試薬を導入する試薬導入部140と、を備え、試薬導入部140が、容器120に(a)ヒドロキシルアミン類と、(b)塩基性試薬とを含む反応液151を導入する反応液導入部141を含む。

0076

容器保持部130は、糖タンパク質を含む試料110が収容される容器120を保持するためのものである。容器保持部130が容器120を保持する態様は特に限定されず、例えば、容器保持部130の保持穴又は保持孔に容器の大部分を嵌入させて保持する態様が挙げられる。このほかにも、容器保持部の係合凸部(係合凹部)に容器の係合凹部(係合凸部)を係合させて保持する態様、容器保持部の挟持部で容器を挟持保持する態様等が挙げられる。

0077

試薬導入部140は、容器保持部130に保持された容器120の内部、又は、後述する固相保持部160に保持された容器170の内部に試薬を導入するためのものである。試薬導入部140は、少なくとも、容器120に(a)ヒドロキシルアミン類と、(b)塩基性試薬とを含む反応液151を導入する反応液導入部141を含む。

0078

試薬導入部140は、容器120にケトンを導入するケトン導入部、アルデヒドを導入するアルデヒド導入部、又は酸無水物を導入する酸無水物導入部を更に含んでいてもよい。

0079

図10の例では、試薬導入部140は、反応液151、ケトン、アルデヒド、又は酸無水物152、標識試薬153を収容したタンク150と、タンク150が収容した各試薬を送液する送液管(142,143,144)と、各試薬の送液を制御する弁(145,146,147)と各試薬を容器120又は容器170の内部に導入する導入部141とを備えている。図10の例では、導入部141は、反応液導入部、ケトン導入部、アルデヒド導入部又は酸無水物導入部、標識試薬導入部を兼ねている。反応液151は、(a)ヒドロキシルアミン類と、(b)塩基性試薬とを含んでいる。

0080

試薬導入部140が容器120又は容器170の内部に試薬を導入する態様は特に限定されず、例えば、送液すべき液体貯留されている送液源(151,152,153)から管状部材を介して容器120又は容器170の内部に送液する態様が挙げられる。このほかにも、管状部材中に採取した液体を反応容器内へ注入する態様等が挙げられる。

0081

反応液導入部、ケトン導入部又はアルデヒド導入部、標識試薬導入部は、別個独立した構成部材として構成されていてもよいし、同一の構成部材として構成されてもよい。

0082

装置100は、糖鎖に親和性を有する固相171を含む容器170を保持する固相保持部160を更に備えていてもよい。固相保持部160の構造は容器保持部130の構造と同様であってよい。また、装置100は、容器170の収容物固液分離する固液分離部180を更に備えていてもよい。装置100が固液分離部180を含む場合、固液分離部180は、容器170中に含まれる収容物から固体と液体とを分離する。ここで、固体は、実質的には固相10及びそれに吸着された糖鎖である。

0083

固液分離部180の具体的な分離形式としては特に限定されず、遠心、減圧、加圧のいずれであってもよい。図10の例では、固液分離部180の分離形式は遠心である。固液分離部180は、容器170を保持するラック181と、ドライブシャフト182と、モーター183とを備えている。

0084

図10の例のように、固液分離部180は、固相保持部160から独立した構成部材として構成されていてもよい。この場合、装置100は、固相保持部160から固液分離部180へ、容器170を自動移送させる容器移送部190を含んでいてもよい。容器移送部190は、容器170を把持及び開放し、かつ移動するように作動するアームと、当該アームの作動を制御するアーム制御部とを含んで構成されていてもよい。

0085

固液分離部180を作動させることで、液体が容器170の下部に回収される。したがって、例えば固相171に吸着した糖鎖を溶出して容器170の下部に回収することができる。

0086

装置100は、容器120又は170の収容物の温度を調節する温度調節部195を更に備えていてもよい。装置100が温度調節部195を含む場合、温度調節部195は、少なくともヒータ機能を有していればよい。温度調節部195は、容器120又は170を、必要な温度に加温することができる。

0087

装置100は、作動しうる構成部分(例えば、導入部141、アーム190、固液分離部180、温度調節部195)の少なくともいずれか、好ましくは全てが自動制御されてもよい。これによって、糖タンパク質からの糖鎖の調製をより迅速に行うことができる。

0088

以下の実施例は、例示のみを意図したものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。

0089

材料や試薬は特に断らない限り、市販されているか、又は当技術分野慣用の手法、公知文献の手順に従って入手又は調製したものである。

0090

[実施例1]
<モノクローナル抗体(IgG1)の糖鎖分析>
(N結合型糖鎖遊離反応)
モノクローナル抗体(IgG1、40μg)を酢酸カルシウムで飽和させた25%アンモニア水溶液30μLに溶解し、50%ヒドロキシルアミン水溶液を20μLを添加して混合した後、ドラフト中、ヒートブロックを用いて80℃にて1時間加熱した。その後、直ちに氷浴中で冷却し1N塩酸で反応液を中和した。

0091

(遊離された糖鎖の分析)
グラファイトカーボンを充填した固相抽出カートリッジ(HyperSep Hypercarb 25mg、サーモサイエンティフィック社製)を用いて中和した反応液を脱塩し、続いてピコリンボランと2−アミノベンズアミドを用いて糖鎖を蛍光標識した。蛍光標識糖鎖はSephadex G−15(GEヘルスケア社製)で精製した後、HPLCにて分析した。図1にそのクロマトグラムを示した。図1中、横軸は溶出時間を示し、縦軸蛍光強度相対値)を示す。

0092

[比較例1]
従来の方法と比較するため酵素(PNGaseF)を用いて糖鎖遊離反応を行った。モノクローナル抗体(IgG1、40μg)を100mMジチオスレイトールと0.5%SDSを含む500mMトリス塩酸緩衝液(pH8.6)40μLに溶解し、80℃で10分間加熱した。その後、室温まで冷却した後、5%Nonidet P−40(40μL)と蒸留水15μLを加え、さらにPNGaseFを5μL(16mU、Takara bio Inc.)添加し37℃にて16時間インキュベートした。その後、直ちに氷浴中で冷却し1N塩酸で反応液を中和した。その後、固相抽出カートリッジSepPak C18(50mg、Waters Corp.)に供し、蒸留水で洗浄した。濾液と洗浄液を合わせて、実施例1に記載した方法により固相抽出カートリッジ(HyperSep Hypercarb 25mg)にて脱塩処理、2−アミノベンズアミドによる蛍光標識、Sephadex G−15(GEヘルスケア社製)による精製を経てHPLCに供した。図2にそのクロマトグラムを示した。図2中、横軸は溶出時間を示し、縦軸は蛍光強度(相対値)を示す。図1および図2に示すように、本実施例の方法により、従来法と同様のクロマトグラムが得られることが明らかとなった。

0093

[実施例2]
<ヒト血清由来IgGの糖鎖分析>
(N結合型糖鎖遊離反応)
ヒト血清由来IgG(200μg)の水溶液20μLをサンプルチューブに入れ、そのチューブに50%ヒドロキシルアミン水溶液を10μL添加し、次いで25%アンモニア水溶液の25μLと5μLの1.2M水酸化リチウムとを加えて混合した後、ドラフト中、ヒートブロックを用いて50℃、1時間加熱した。その後、直ちに氷浴中で冷却し1N塩酸で反応液を中和した。

0094

(遊離された糖鎖の分析)
実施例1と同様の方法により、反応液を脱塩後、糖鎖を蛍光標識してHPLCにて分析した。図3にそのクロマトグラムを示した。図3中、横軸は溶出時間を示し、縦軸は蛍光強度(相対値)を示す。その結果、これまでに報告されている、ヒト血清由来IgGから遊離させた糖鎖の分析結果と同様の結果が得られた。

0095

[実施例3]
<ウシフェツインの糖鎖分析>
(O結合型糖鎖遊離反応)
ウシフェツイン(20μg)を蒸留水38.5μLに溶解し、50%ヒドロキシルアミン10μLとジアザビシクロウンデセン1.5μLを添加し混合した後、ドラフト中、ヒートブロックを用いて60℃にて5分間加熱した。その後、直ちに氷浴中で冷却し1N塩酸で反応液を中和した。

0096

(遊離された糖鎖の分析)
実施例1と同様の方法により、反応液を脱塩後、糖鎖を蛍光標識してHPLCにて分析した。図4にそのクロマトグラムを示した。図4中、横軸は溶出時間を示し、縦軸は蛍光強度(相対値)を示す。その結果、これまでに報告されている、ウシフェツインから遊離させた糖鎖の分析結果と同様の結果が得られた。

0097

[実施例4]
<ウシアポトランスフェリンの糖鎖分析>
(N結合型糖鎖遊離反応)
ウシアポトランスフェリン(200μg)の水溶液20μLをサンプルチューブに入れ、そのチューブに50%ヒドロキシルアミン水溶液を20μL添加し、次いで1.0M水酸化リチウムを10μL加えて混合した後、ドラフト中、ヒートブロックを用いて50℃、1時間加熱した。その後、直ちに氷浴中で冷却し1N塩酸で反応液を中和した。

0098

(遊離された糖鎖の分析)
実施例1と同様の方法により、反応液を脱塩後、糖鎖を蛍光標識してHPLCにて分析した。図5にそのクロマトグラムを示した。図5中、横軸は溶出時間を示し、縦軸は蛍光強度(相対値)を示す。その結果、Nグリコリルノイラミン酸を含有する糖鎖も分析できることが明らかとなった。

0099

[実施例5]
<セイヨウワサビペルオキシダーゼの糖鎖分析>
(N結合型糖鎖遊離反応)
セイヨウワサビペルオキシダーゼ(200μg)を含む水溶液20μLをサンプルチューブに入れ、そのチューブに50%ヒドロキシルアミン水溶液を20μL添加し、次いで1.0M水酸化リチウムを10μL加えて混合した後、ドラフト中、ヒートブロックを用いて50℃、1時間加熱した。その後、直ちに氷浴中で冷却し1N塩酸で反応液を中和した。

0100

(遊離された糖鎖の分析)
実施例1と同様の方法により、反応液を脱塩後、糖鎖を蛍光標識してHPLCにて分析した。図6にそのクロマトグラムを示した。図6中、横軸は溶出時間を示し、縦軸は蛍光強度(相対値)を示す。その結果、還元末端のNアセチルグルコサミンの3位にフコースを有するN結合型糖鎖の分析も可能であることが明らかとなった。

0101

[実施例6]
<ウシ顎下腺ムチンの糖鎖分析>
(O結合型糖鎖遊離反応)
ウシ顎下腺ムチン(50μg)の水溶液20μLと50%ヒドロキシルアミン20μLとジアザビシクロウンデセン10μLを混合した後、ドラフト中、ヒートブロックを用いて60℃にて5分間加熱した。その後、直ちに氷浴中で冷却し1N塩酸で反応液を中和した。

0102

(遊離された糖鎖の分析)
実施例1と同様の方法により、反応液を脱塩後、糖鎖を蛍光標識してHPLCにて分析した。図7にそのクロマトグラムを示した。図7中、横軸は溶出時間を示し、縦軸は蛍光強度(相対値)を示す。その結果、これまでに報告されているものと同様の結果が得られた。

0103

[実施例7]
<各種条件下におけるN結合型糖鎖遊離反応>
(a)ヒドロキシルアミン類、(b)塩基性試薬、および/または、(c)アミン類を含む反応液について、試薬の種類や濃度、温度条件、反応時間などの各種条件を変更した各種試験を行った。各試験例の条件および収量を表1A及び表1Bに示す。なお、試験例1〜6において、糖タンパク質はhuman serumIgG200μgを用い、試験例7〜80においては、モノクローナル抗体M−L001 40μgを用いた。また、各試薬の濃度は終濃度を示し、収量は、HPLCにおける全糖鎖ピーク面積値の合計を表す。また、結果の「A」はPNGaseFを用いた従来法とほぼ同等の結果が得られたことを示し、「B」はPNGaseFを用いた従来法に比べて収量が半分以下の結果が得られたことを示し、「C」は本来の糖鎖に加えて分解した糖鎖のピークが検出された結果を示し、「D」は糖鎖がほとんど分析できなかったことを示す。

0104

0105

0106

(1)試験例1、2は、水酸化リチウムとアンモニアとの併用の影響を確認するために行った。その結果、アンモニアを添加していない試験例2と比較して、水酸化リチウムとアンモニアとを併用した試験例1では、収量が顕著に増加した。
(2)試験例4〜6では、塩基性試薬としてアルカリ土類金属のカルシウム塩または水酸化カルシウムの使用を比較した。その結果、いずれのカルシウム化合物も良好な結果を得ることができ、特に、水酸化カルシウムが最も収量が高かった。なお、水酸化リチウムと比較すると、収量自体は下がっていたが、分解反応の一種である異性化(エピメリゼーション)を抑制することができていた。
(3)試験例8〜14では、ヒドロキシルアミン類の濃度条件を変更して比較を行った。その結果、ヒドロキシルアミンは、0.5%、150mMでは効果を得ることができなかった。一方で、2%、600mMから遊離された糖鎖の安定化の効果を得ることができた。
(4)試験例15〜20では、反応時間の条件を変更して比較を行った。その結果、アンモニアと酢酸カルシウムを用いた80℃の条件下においては、反応時間が2時間程度において、最も好ましい結果が得られたが、2時間を超えると遊離した糖鎖の分解が進行することがわかった。
(5)試験例21〜26では、塩基性試薬(アルカリ触媒)を変更して比較を行った。その結果、弱アルカリでも糖鎖の遊離を行うことができ、各塩基性試薬において好ましい収量および結果を得ることができた。
(6)試験例27〜32では、塩基性試薬のうち各種のアンモニア水に溶解したアルカリ土類金属の塩または水酸化物を用い、比較を行った。その結果、酢酸マグネシウム以外は良好な結果を得ることができた。
(7)試験例33〜38では、アミンを変更して比較を行った。その結果、メチルアミン、ジメチルアミンは、収量が増加する一方で、異性化やアミドの分解(デアミデーション)が促進した。エチレンジアミン、および、エタノールアミンの使用は、異性化を抑制しつつ、収量を増加させることができた。
(8)試験例39〜42では、低pKaを有する各種アミンを用い、比較を行った。その結果、DABCOおよびモルホリンにおいては、良好な収量および結果をえることができた。特に、DABCOは、デアミデーションが全く見られなかった。
(9)試験例43〜48では、KOHの濃度を変更(2mM〜2M)して比較を行った。その結果、KOHの濃度が高い方が好ましい結果を得ることができた。
(10)試験例49、50では、塩基性試薬としてのDBUを用い、水酸化リチウムと比較した。その結果、DBUを用いた方が、水酸化リチウムよりも好ましい収量を得ることができた。
(11)試験例51〜54では、DBU存在下におけるヒドロキシルアミン類の濃度を変更して比較を行った。その結果、ヒドロキシルアミンの濃度が少なくとも10%となるまでは濃度依存的に好ましい収量および結果を得ることができた。
(12)試験例55〜57では、DBU存在下、50℃における反応時間(60分〜240分)の変更について比較した。その結果、1時間が最も好ましく、1時間以上の反応時間では、反応時間が伸びるほど、収量および結果が悪くなった。
(13)試験例58〜61では、室温における反応時間について比較した。その結果、室温では反応速度が低く、酵素を用いた反応の半量程度の収量をえるのに16時間を要した。
(14)試験例62、63では、ヒドロキシルアミン類として、ヒドロキシルアミン塩酸塩の使用についてDMSO中で比較、検討した(表中には、DMSOの表示なし)。その結果、DMSOを溶媒とした場合にはほとんど反応が進行しないことが判明した。
(15)試験例64〜67では、DBU以外の各種有機塩基の使用について比較した。その結果、DBUとアンモニアとの組み合わせ以外は、いずれも非常に良好な収量および結果を得られた。
(16)試験例68〜71では、DBUの濃度の変更について比較した。その結果、DBUは、濃度が高い方が好ましい収量および結果を得ることができた。具体的には、100mM以上のDBUを用いることで優れた効果を得ることができた。
(17)試験例72〜75では、DBU以外の各種有機塩基の使用について比較した。その結果、Proton spongeでは、好ましい収量を得ることができなかった。Proton sponge以外の有機塩基では、好ましい収量および結果を得ることができた。
(18)試験例76〜79では、アミン類非存在下におけるDBUの濃度の変更について比較した。その結果、100mM以上のDBUを用いることで優れた効果を得ることができた。
(19)試験例80では、4%セチルトリメチルアンモニウム水酸化物を検討した。その結果、良好な収量および結果を得ることができた。

0107

[実施例8]
<各種条件下におけるO結合型糖鎖遊離反応>
(a)ヒドロキシルアミン類、(b)塩基性試薬、および/または、(c)アミン類を含む反応液について、試薬の種類や濃度、温度条件、反応時間などの各種条件を変更した各種試験を行った。各試験例の条件および収量を表2A及び表2Bに示す。なお、試験例1〜52においては、糖タンパク質としてウシフェツイン20μgを用いた。また、各試薬の濃度は終濃度を示し、収量は、HPLCにおける全糖鎖ピークの面積値の合計を表す。また、結果の「A」は糖鎖収量が2000以上で、かつピーリング産物が20%以下であったことを示し、「B」はピーリング産物が20%以上または糖鎖収量が1000以上2000以下であったことを示し、「C」は糖鎖収量が200以上1000以下であったことを示し、「D」は糖鎖収量が200以下であったことを示す。

0108

0109

0110

(1)試験例3、4は、アンモニアを塩基性試薬として利用した場合におけるカルシウムの有無の比較を行った。その結果、カルシウムの存在により収量が増加し好ましい結果となった。
(2)試験例5、6は、塩基なしまたはアンモニアよりも弱い塩基を用いて比較を行った。その結果、アンモニアよりも強い塩基性が糖鎖の遊離には必要不可欠であることがわかった。
(3)試験例7〜10は、アルカリの強度の違いによる比較を行った。その結果、いずれの試験例でも好ましい結果を得られた。また、強アルカリ条件下とすることで、収量が増加した。
(4)試験例11〜14では、強アルカリ条件下での温度の変化について比較した。その結果、60〜75℃までは、温度の上昇に伴い、収量が増加し、非常に好ましい結果が得られた。一方、90℃でも好ましい結果は得られたが、収量が若干低下し、ピーリングが増加し始めた。
(5)試験例15〜18では、強アルカリ条件下でのアンモニア濃度の変化について比較した。その結果、強アルカリ条件下においては、O結合型糖鎖の遊離にアンモニアの存在は不要であった。
(6)試験例19では、ヒドロキシルアミンの有無の影響について比較した。その結果、ヒドロキシルアミン不存在の条件では、糖鎖のほとんどがピーリングを引き起こしていた。
(7)試験例20〜26では、アントラニル酸存在下で反応時間を変更した際の影響について比較した。また、21〜26では反応液にDMSOを添加している。その結果、アントラニル酸を添加する場合にはDMSOが必要で、試験例の条件において反応時間30分までは、ピーリングを抑えたO結合型糖鎖の遊離を行うことができた。一方、30分以上ではピーリングが生じ、1時間以上では、ピーリングとは異なる分解物が生じていた。
(8)試験例27、28では、LiOHの代わりに、高濃度KOHの使用を検討した。その結果は、高濃度のKOHでは全くO結合型糖鎖を遊離させることができなかった。
(9)試験例29、30では、アルカリ(KOH、NaOH)の検討を行った。その結果、いずれのアルカリも、遊離したO結合型糖鎖としてジシアリル糖鎖が少なく、LiOHの方が好ましい結果を示した。
(10)試験例31、32では、DABCOの効果の検討を行った。その結果、DABCOの添加により収量は減少するものの、ピーリングを抑制することができた。
(11)試験例33、34では、塩基性試薬としてのDBUとLiOHとの比較を行った。その結果、DBUを使用した試験の方が、収量が良く、また、ジシアリル糖鎖の量も相対的に多い結果となった。
(12)試験例35〜38は、200mMDBU、10%ヒドロキシルアミンを用いた際の反応時間の長さについて比較した。その結果、室温でもO結合型糖鎖の遊離反応は時間の経過ごとに進行した。また、4時間の反応後であっても、ピーリングした糖鎖はほとんどなかった。
(13)試験例40〜44では、他の有機塩基の使用を検討した。その結果、TMG、t−ブチルTMG、TBD、MTBDのいずれもO結合型糖鎖の遊離を行うことができ、特に、TMD、TBD、MTBDの方がより好ましい収量および結果を得ることができた。
(14)試験例45〜47では、DBUの濃度について検討した。その結果、DBUの濃度が高い方が、収量が増加した。
(15)試験例48〜51では、ヒドロキシルアミンの濃度の検討を行った。その結果、ヒドロキシルアミンの量はDBUよりも相対的に多くすることでピーリングを抑えることが可能であった。
(16)試験例52は、塩基性試薬として、4%セチルトリメチルアンモニウム水酸化物を用いた試験結果を示す。良好な収量および結果を得ることができた。

0111

[実施例9]
<モノリスシリカによる試薬除去を組みあわせたウシフェツインのO結合型糖鎖分析>
(50%ヒドロキシルアミンを用いたO型糖鎖遊離反応)
ウシフェツイン(20μg)を50%ヒドロキシルアミン50μLに溶解し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)10μLを添加して混合した後、ドラフト中、ヒートブロックを用いて60℃で20分間加熱した。その後、直ちに氷浴中で冷却し1N塩酸で反応液を中和した。

0112

(50%ヒドロキシルアミンを用いた反応で遊離された糖鎖の回収)
中和した反応液にアセトン200μL又はサリチルアルデヒド200μLをそれぞれ添加し攪拌した。さらに、上記の反応液にアセトニトリル16mLを添加し、あらかじめアセトニトリルで平衡化したモノリスシリカ(シリカモノリススピンカラム、Cleanup column、住友ベークライト社製)に全量アプライし、続いてアセトニトリル1.2mLで洗浄した。続いて、10%酢酸100μLを用いてモノリスシリカから糖鎖を溶出し、900μLの純水と混合した後、実施例1と同様にしてグラファイトカーボンカートリッジによる脱塩処理を行い、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%アセトニトリル1mLで糖鎖を溶出し、減圧乾固した。

0113

(遊離糖鎖の分析)
乾固した糖鎖を10%酢酸25μLに溶解し、ピコリンボランと2−アミノ安息香酸を用いて糖鎖を蛍光標識した。蛍光標識糖鎖は、モノリスシリカ(シリカモノリススピンカラム、Cleanup column、住友ベークライト社製)で過剰の試薬を除去した後、HPLCで分析した。

0114

[実施例10]
<10%ヒドロキシルアミンを用いたO結合型糖鎖遊離反応>
ウシフェツイン(20μg)を10%ヒドロキシルアミン50μLに溶解し、DBU 10μLを添加して混合した後、ドラフト中、ヒートブロックを用いて60℃で20分間加熱した。その後、直ちに氷浴中で冷却し1N塩酸で反応液を中和した。

0115

(遊離糖鎖の回収)
実施例1と同様にして、グラファイトカーボンを充填した固相抽出カートリッジ(HyperSep Hypercarb 25mg、サーモサイエンティフィック社製)を用いて中和した反応液を脱塩処理し、0.1%TFAを含む50%アセトニトリル1mLで糖鎖を溶出し、減圧乾固した。

0116

(遊離糖鎖の分析)
実施例9と同様にして糖鎖を蛍光標識し、HPLCで分析した。

0117

[実施例11]
<50%ヒドロキシルアミンを用いたO結合型糖鎖遊離反応>
ウシフェツイン(20μg)を50%ヒドロキシルアミン50μLに溶解し、DBU 10μLを添加して混合した後、ドラフト中、ヒートブロックを用いて60℃で20分間加熱した。その後、直ちに氷浴中で冷却し1N塩酸で反応液を中和した。

0118

(遊離糖鎖の回収)
実施例1と同様にして、グラファイトカーボンを充填した固相抽出カートリッジ(HyperSep Hypercarb 25mg、サーモサイエンティフィック社製)を用いて中和した反応液を脱塩処理し、0.1%TFAを含む50%アセトニトリル1mLで糖鎖を溶出し、減圧乾固した。

0119

(遊離糖鎖の分析)
実施例9と同様にして糖鎖を蛍光標識し、HPLCで分析した。

0120

図8(a)〜(d)は、実施例9〜11で蛍光標識した糖鎖をHPLCで分析した結果を示すクロマトグラムである。図8(a)〜(d)中、横軸は溶出時間を示し、縦軸は蛍光強度(相対値)を示す。

0121

図8(a)は実施例10の結果であり、図8(b)は実施例11の結果であり、図8(c)は実施例9(アセトン処理)の結果であり、図8(d)は実施例9(サリチルアルデヒド処理)の結果である。その結果、ヒドロキシルアミンを50%の濃度で用い、アセトン又はサリチルアルデヒド処理を実施した上でモノリスシリカによる精製処理を経ることによりピーリングを抑制し、かつより高い収量で糖鎖を分析できることが明らかとなった。

0122

[実施例12]
<モノリスシリカからの糖鎖回収法の検討>
(50%ヒドロキシルアミンを用いたO結合型糖鎖遊離反応)
ウシフェツイン(20μg)を50%ヒドロキシルアミン50 μLに溶解し、DBU 10μLを添加して混合した後、ドラフト中、ヒートブロックを用いて60℃で20分間加熱した。その後、直ちに氷浴中で冷却し1N塩酸で反応液を中和した。

0123

(50%ヒドロキシルアミンを用いた反応で遊離された糖鎖の回収)
中和した反応液にアセトン200μLを添加し攪拌した。さらに、上記の反応液にアセトニトリル20mLを添加し、あらかじめアセトニトリルで平衡化したモノリスシリカ(シリカモノリススピンカラム、Cleanup column、住友ベークライト社製)に全量アプライし、続いてアセトニトリル1.2mLで洗浄した。

0124

(糖鎖の回収及び分析)
続いて、10%酢酸25μLをモノリスシリカに添加し、溶液を回収した。さらに、ピコリンボランと2−アミノ安息香酸の混合液25μLをモノリスシリカに添加後、溶液を回収し、先の溶液と混合して50℃で3時間反応させ、糖鎖を蛍光標識した。蛍光標識糖鎖は、モノリスシリカ(シリカモノリススピンカラム、Cleanup column、住友ベークライト社製)で過剰の試薬を除去した後、HPLCで分析した。

実施例

0125

図9は実施例12で蛍光標識した糖鎖をHPLCで分析した結果を示すクロマトグラムである。図9中、横軸は溶出時間を示し、縦軸は蛍光強度(相対値)を示す。その結果、糖鎖の回収方法を変更しても、目的の糖鎖ピークが得られることが確認された。

0126

本発明の方法によれば、安全かつ安価な薬品の使用により、糖鎖の分解を抑制しつつ、短時間の処理時間で糖タンパク質から糖鎖を遊離させることができ、また、遊離した糖鎖は、糖鎖オキシムを含む混合物として回収することが可能である。

0127

100…装置、110…糖タンパク質、120,170…容器、130…容器保持部、140…試薬導入部、141…導入部(反応液導入部,ケトン導入部,アルデヒド導入部,酸無水物導入部,標識試薬導入部)、142,143,144…送液管、145,146,147…弁、150…タンク、151…反応液、152…ケトン,アルデヒド,酸無水物、153…標識試薬、160…固相保持部、171…固相、180…固液分離部、181…ラック、182…ドライブシャフト、183…モーター、190…容器移送部、195…温度調節部。

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