図面 (/)
課題・解決手段
請求項1
基板と、前記基板の一方の主面側に配置された蛍光体層と、前記基板と前記蛍光体層との間に介在して前記基板と前記蛍光体層とを金属接合するための接合部と、を備え、前記蛍光体層は、少なくとも一種類の蛍光体を含むシート状の複数の個片が、面状に配列されることにより形成されている色変換素子。
請求項2
前記複数の個片は、同一形状である請求項1に記載の色変換素子。
請求項3
前記複数の個片は、リング状に配置されている請求項1または2に記載の色変換素子。
請求項4
請求項5
前記基板の他方の主面には、硬質膜が積層されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の色変換素子。
請求項6
前記基板の熱膨張係数は、前記蛍光体層の熱膨張係数と同等以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の色変換素子。
技術分野
背景技術
先行技術
0003
特開2015−230760号公報
発明が解決しようとする課題
0004
ところで、色変換素子の製造時においては、板状の蛍光体層を基板に金属接合する場合がある。このとき、金属接合時の熱が蛍光体層と基板とに伝わるが、両者の熱膨張係数の差によって、色変換素子に反りが生じたり、金属接合部にクラック又は剥離が発生したりと、不具合が発生するおそれがあった。
0005
そこで本発明の目的は、金属接合を起因とした不具合の発生を抑制することである。
課題を解決するための手段
0006
本発明の一態様に係る色変換素子は、基板と、基板の一方の主面側に配置された蛍光体層と、基板と蛍光体層との間に介在して基板と蛍光体層とを金属接合するための接合部と、を備え、蛍光体層は、少なくとも一種類の蛍光体を含むシート状の複数の個片が、面状に配列されることにより形成されている。
発明の効果
0007
本発明によれば、金属接合を起因とした不具合の発生を抑制することができる。
図面の簡単な説明
0008
図1は、実施の形態に係る色変換素子の概略構成を示す模式図である。
図2は、図1におけるII−II線を含む切断面を見た断面図である。
図3は、実施の形態に係る色変換素子の製造時の状態を示す正面図である。
図4は、図3におけるIV−IV線を含む切断面を見た断面図である。
図5は、実施の形態に係る色変換素子の製造時の状態を示す正面図である。
図6は、変形例1に係る色変換素子の概略構成を示す断面図である。
図7は、変形例2に係る色変換素子の概略構成を示す断面図である。
図8は、変形例4に係る色変換素子の概略構成を示す模式図である。
実施例
0009
以下では、本発明の実施の形態に係る色変換素子について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。従って、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態等は、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
0010
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
0011
以下、実施の形態について説明する。
0013
色変換素子1は、プロジェクタ等の投影装置に用いられる蛍光体ホイールである。投影装置には、光源部として、青紫〜青色(430〜490nm)の波長のレーザー光を色変換素子1に対して放射する半導体レーザー素子が設けられている。色変換素子1は、光源部から照射されたレーザー光を励起光として、白色光を放射する。以下、色変換素子1について具体的に説明する。
0015
基板2は、平面視形状が例えば円形状の基板であり、その中央部に貫通孔21が形成されている。貫通孔21に対して、投影装置内にある回転軸が取り付けられることで、基板2が回転駆動するようになっている。
0016
基板2は、蛍光体層3よりも熱伝導率の高い基板である。これにより、蛍光体層3から伝導した熱を基板2から効率的に放熱できるようになっている。具体的には、基板2は、Al、Al2O3、AlN、Fe、Tiなどの金属材料から形成されている。なお、基板2は、蛍光体層3よりも熱伝導率が高いのであれば、金属材料以外から形成されていてもよい。金属材料以外の材料としては、Si、セラミック、サファイア、グラファイトなどが挙げられる。各材料からなる基板2の熱膨張係数は、基板2をなす材料がAlであると12ppm/K、Al2O3であると7ppm/K、AlNであると4.6ppm/K、Feであると12ppm/K、Tiであると8.4ppm/K、Siであると3ppm/K、グラファイトであると2.3ppm/Kである。
0017
蛍光体層3は、接合部4を介して基板2の1つの主面22側に配置されている。蛍光体層3は、例えば、レーザー光によって励起されて蛍光を発する蛍光体の粒子(蛍光体粒子32)を分散状態で備えており、レーザー光の照射により蛍光体粒子32が蛍光を発する。このため、蛍光体層3の外方の主面が発光面となる。また、蛍光体層3の熱膨張係数は、7ppm/K以上10ppm/K以下である。
0018
蛍光体層3は、全体として平面視形状がリング状に形成されている。この蛍光体層3は、シート状の個片31が複数、リング状に配列されることにより形成されている。複数の個片31は、同一形状であり、同一種類である。具体的には、個片31は平面視台形状に形成されている。隣り合う個片31同士は、隙間なく配置されている。個片31には、少なくとも一種類の蛍光体粒子32が含まれている。
0019
本実施の形態の場合、個片31は、白色光を放射するものであり、レーザー光の照射によって赤色を発光する赤色蛍光体、黄色を発光する黄色蛍光体、緑色を発光する緑色蛍光体の3種類の蛍光体粒子が適切な割合で含まれている。
0020
蛍光体粒子32の種類及び特性は特に限定されるものではないが、比較的高い出力のレーザー光が励起光となるため、熱耐性が高いものが望ましい。また、蛍光体粒子32を分散状態で保持する基材の種類は特に限定されるものではないが、励起光の波長及び蛍光体粒子32から発光する光の波長に対して透明性の高い基材であることが望ましい。具体的には、ガラス又はセラミックなどからなる基材が挙げられる。なお、蛍光体層3は、1種類の蛍光体による多結晶体又は単結晶体であってもよい。
0021
また、各個片31における背面(接合部4に対向する主面)には、レーザー光と、蛍光体粒子32から放射された光とを反射する反射層(図示省略)が積層されている。反射層は、レーザー光と、蛍光体粒子32から放射された光とに対して反射率の高い材料により形成されている。具体的に、反射率の高い材料としては、Ag、Alなどの金属材料である。反射層は、例えばスパッタリング、メッキなどの周知の成膜方法によって、各個片31の背面に金属材料を成膜することにより形成されている。
0022
接合部4は、蛍光体層3と基板2との間に介在して、蛍光体層3と基板2とを金属接合するための接合層である。接合部4は、金属接合可能な金属材料により形成されている。金属接合可能な金属材料とは、例えばAuSn系、AuGe系、SnAgCu系のはんだ材料、Agナノ粒子などが挙げられる。
0023
ここで、色変換素子1の組み立て前の状態について説明する。
0025
図3及び図4に示すように、色変換素子1の製造時においては、接合部4となるはんだ材料4aが予め基板2に対して一体化されている。はんだ材料4aは、複数の個片31が設置される領域に対応するように、連続したリング状に形成されている。
0026
図5は、実施の形態に係る色変換素子の製造時の状態を示す正面図である。具体的には、図5は、複数の個片31の設置時の状態を示している。なお、図5では、設置前の複数の個片31を放射状に図示しているが、実際には複数の個片31は、所定の場所にまとめて貯留されており、そこから一つずつ基板2上の所定位置に搬送されるようになっている。そして、全ての個片31が所定位置に配置されると、図1に示すようにリング状の蛍光体層3をなす。
0027
その後、加熱によりはんだ材料4aを溶かすことで、蛍光体層3と基板2とが金属接合される。金属接合時においては、蛍光体層3及び基板2にも熱が伝わって両者が熱変形する。熱変形量は、蛍光体層3及び基板2の熱膨張係数に依存するため、両者の熱変形量に違いが生じることとなり、それを起因とした応力が蛍光体層3に作用する。しかしながら、蛍光体層3は複数の個片31の集合体であるので、複数の個片31のそれぞれに対して応力を分散させることができる。これにより、色変換素子1の反り量を小さくすることができる。また、残留応力があると、接合部4にクラック又は剥離が発生することにもなるが、応力が分散されていることで残留応力も小さくなるので、接合部4のクラック又は剥離も抑制することができる。
0028
[投影装置の動作]
次に、投影装置の動作について説明する。
0029
投影装置の光源からレーザー光が照射される際には、色変換素子1は回転駆動しながら蛍光体層3でレーザー光を受光する。蛍光体層3では、一部のレーザー光が直接蛍光体粒子32に当たる。また、蛍光体粒子32に直接当たらなかった一部のレーザー光は、反射層で反射され、蛍光体粒子32に当たる。蛍光体粒子32に到達したレーザー光は、蛍光体粒子32によって白色光に変換されて、放射される。蛍光体粒子32から放射された白色光の一部は、蛍光体層3から直接外方に放出される。また、蛍光体粒子32から放射された光のその他の一部は、反射層で反射されることで、蛍光体層3から外方へ放出される。
0030
ここで、レーザー光を受光する際には、蛍光体層3及び基板2が加熱されるので、両者は熱変形するが、このとき生じる応力も複数の個片31によって分散される。したがって、レーザー光の受光時おいても、色変換素子1の反り量及び接合部4のクラック又は剥離を抑制することができる。
0031
[効果など]
以上のように、本実施の形態によれば、色変換素子1は、基板2と、基板2の一方の主面22側に配置された蛍光体層3と、基板2と蛍光体層3との間に介在して基板2と蛍光体層3とを金属接合するための接合部4と、を備える。蛍光体層3は、少なくとも一種類の蛍光体(蛍光体粒子32)を含むシート状の個片31が複数、面状に配列されることにより形成されている。
0032
この構成によれば、蛍光体層3が、面状に配列された複数の個片31によって形成されているので、加熱時に作用する応力を分散させることができる。これにより、金属接合時あるいはレーザー光受光時における色変換素子1の反り量と、接合部4のクラック又は剥離とを抑制することができる。したがって、金属接合を起因とした不具合の発生を抑制することができる。
0033
また、複数の個片31は同一形状である。
0034
この構成によれば、複数の個片31が同一形状であるので、各個片の製造を共通化することができる。したがって、製造効率を高めることができる。
0035
なお、上記実施の形態では、個片31が平面視台形状である場合を例示したが、個片31はシート状であればその形状は如何様でもよい。個片31のその他の平面視形状としては、矩形状、三角形状、その他の多角形状などが挙げられる。
0036
また、上記実施の形態では、蛍光体層3が全体として白色光を放射する個片31から形成されている場合を例示した。しかしながら、蛍光体層が複数色の光を発する場合においては、蛍光体層3における各色を放射する部位が、同一種類の個片によって形成されていればよい。例えば、赤色蛍光体層、緑色蛍光体層及び青色蛍光体層の3層が面状に配列された蛍光体層の場合を想定する。赤色蛍光体層は、赤色蛍光体を含む同一種類の複数の個片によって形成される。青色蛍光体層は、青色蛍光体を含む同一種類の複数の個片によって形成される。緑色蛍光体層は、緑色蛍光体を含む同一種類の複数の個片によって形成される。
0037
また、複数の個片31はリング状に配置されている。
0038
ここで、全体として一体的に形成された蛍光体層の場合、その平面視形状がリング状であると、応力集中に弱く、上記した不具合が生じやすい。しかしながら、本実施の形態のように、複数の個片31がリング状に配置されることで形成された蛍光体層3であれば、応力を分散させることができるので、高い応力緩和効果を得ることができる。
0039
[変形例1]
次に、変形例1について説明する。
0040
図6は、変形例1に係る色変換素子の概略構成を示す断面図であり、具体的には図2に対応した図である。なお、以降の説明においては、実施の形態に係る色変換素子1と同等の部分には同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
0041
上記実施の形態では、接合部4がはんだ材料4aからなる金属接合部である場合を例示して説明した。しかし、この変形例1では、固相の金属接合部からなる接合部4bについて説明する。
0042
具体的には、変形例1に係る色変換素子1Bの接合部4bは、金属ナノ粒子が焼結されることで形成されている。金属ナノ粒子としては、例えば銀ナノ粒子などが挙げられる。銀ナノ粒子を用いる場合においては、入手も容易であり、放熱性も優れている。なお、銅ナノ粒子も同様の効果が期待できる。そして、接合部4bに金属ナノ粒子を用いることにより、接合部4b内に気泡Bが形成される。このように、金属ナノ粒子を用いることで接合部4bをポーラス構造とすることができる。ポーラス構造の形成は、金属ナノ粒子硬化時の温度プロファイル条件、ペースト構成材料などを調整することにより可能である。そして、接合部4bがポーラス構造であるので、加熱時に生じる応力をより緩和することができる。また、はんだ材料42aからなる接合部42よりも、接合部4bの厚みを大きくすることができるため、応力緩和効果をさらに高めることができる。
0043
また、金属ナノ粒子は、焼結されることにより反射率が高められているので、反射層としても機能することができる。つまり、実施の形態に係る色変換素子1の各個片31にあった反射層を省略することができるので、製造効率を高めることができる。
0044
[変形例2]
次に、変形例2について説明する。
0046
上記実施の形態では、基板2における主面22とは反対側の面が露出している場合を例示した。しかし、この変形例2では、基板2における主面22とは反対側の面(他方の主面23)が被膜されている場合を例示する。
0047
具体的には、基板2の他方の主面23には、全体にわたって硬質膜5が被膜されている。硬質膜5は、基板2よりも硬度の高い膜である。例えば、基板2がAl製である場合には、硬質膜5は、アルマイト、DLC(Diamond-like Carbon)、セラミックスなどから形成される。このように、基板2の他方の主面23に対して硬質膜5が積層されているので、硬質膜5によって基板2の変形が抑えられる。したがって、色変換素子1の反り量を抑制することができる。
0048
また、基板2の他方の主面23に対して硬質膜5が成膜されていると、成膜後においては硬質膜5の表面には凹凸が形成されることになる。これにより、表面積を大きくすることができ、基板2の放熱性を高めることができる。
0049
[変形例3]
上記実施の形態では、基板2と蛍光体層3との熱膨張係数の関係については特に言及しなかった。この変形例3では、基板2と蛍光体層3との熱膨張係数の好適な関係について説明する。好適な関係とは、基板2の熱膨張係数が、蛍光体層3の熱膨張係数と同等以下となる関係である。例えば、蛍光体層3の熱膨張係数が8ppm/Kである場合には、基板2の熱膨張係数は8ppm/K以下であればよい。具体的には、熱膨張係数が8ppm/K以下の材料(Al2O3:7ppm/K、AlN:4.6ppm/K、Si:3ppm/K、グラファイト:2.3ppm/K)から形成された基板2が用いられる。
0050
このような関係を満たす基板2が用いられるので、基板2は蛍光体層3の同等以下の熱変形量となる。これにより、基板2の熱変形量を抑えることができ、色変換素子1自体の反り量も抑えることができる。
0051
[変形例4]
上記実施の形態では、色変換素子1が投影装置に適用された場合を例示して説明したが、色変換素子は照明装置に用いることも可能である。その場合、色変換素子は回転しないために、ホイール状でなくともよい。以下、照明装置に用いられる色変換素子の一例について説明する。
0052
図8は、変形例4に係る照明装置100の概略構成を示す模式図である。
0054
光源部101は、レーザー光を発生させ、導光部材102を介して色変換素子1Dにレーザー光を供給する装置である。例えば、光源部101は、青紫〜青色(430〜490nm)の波長のレーザー光を放射する半導体レーザー素子である。導光部材102は、光源部101が放射したレーザー光を色変換素子1Dまで導く導光部材であり、例えば光ファイバーなどである。
0055
色変換素子1Dの基板2dは、平面視矩形状であり、その一つの主面には、接合部4dを介して蛍光体層3dが全面を覆うように積層されている。蛍光体層3dは、複数の個片31dが、基板2の平面視形状と同じように面状に配列されることにより形成されている。複数の個片31dは同一形状である。具体的には個片31dは平面視矩形状に形成されている。
0056
このように変形例3に係る照明装置100においても、蛍光体層3dが、面状に配列された複数の個片31dによって形成されているので、加熱時に作用する応力を分散させることができる。これにより、金属接合時あるいはレーザー光受光時における色変換素子1Dの反り量と、接合部4dのクラック又は剥離とを抑制することができる。したがって、金属接合を起因とした不具合の発生を抑制することができる。
0057
[その他の実施の形態]
以上、本発明に係る照明装置について、上記実施の形態及び変形例1〜3に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態及び変形例1〜3に限定されるものではない。
0059
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、実施の形態及び変形例1〜3における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
0060
1、1B、1C、1D色変換素子
2、2d基板
3、3d蛍光体層
4、4b、4d接合部
5硬質膜
22 主面(一方の主面)
23 主面(他方の主面)
31、31d個片
32蛍光体粒子(蛍光体)