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技術 ウイルス抵抗性タバコおよびその作出方法

出願人 日本たばこ産業株式会社
発明者 高倉由光新城亮宇田川久史古賀一治
出願日 2017年8月25日 (2年10ヶ月経過) 出願番号 2018-535779
公開日 2019年6月24日 (1年0ヶ月経過) 公開番号 WO2018-038249
状態 不明
技術分野
  • -
主要キーワード 抑制度合 固形粉体 重イオンビーム 収穫後乾燥 黄色種 CASシステム 分離系統 紙巻たばこ
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (2)

課題・解決手段

ウイルスに対して抵抗性を有するタバコを提供するため、本発明に係るタバコは、ウイルスに対して非機能的翻訳開始因子eIF(iso)4Eタンパク質生産するか、または翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子の発現が抑制されており、さらに、ウイルスに対して非機能的な翻訳開始因子eIF4E2タンパク質を生産するか、または翻訳開始因子eIF4E2遺伝子の発現が抑制されている。

概要

背景

Potyvirus属は植物ウイルスの中で最大のグループであり、様々な植物を宿主とする。Potato virus Y(以下、PVY)は、Potyvirus属のウイルスであり、アブラムシを通じて非永続的に伝搬し、ナス科植物の多様な種に感染する。タバコ(Nicotiana tabacum)においては、PVYは、その系統および感染するタバコ品種によって、葉肉の濃緑淡、葉脈および壊疽、葉の黄化、ならびに生育抑制等の症状を引き起こし、その結果葉たばこ品質ならびに収量の低下をもたらし、世界中の葉たばこ生産に大きな被害を及ぼす。特に葉脈および茎の壊疽症状が生じると、その後葉の黄化および褐変から、植物体自体が枯死に到る場合が多く、葉たばこの品質および収量に与える影響が大きい(非特許文献1)。またPVYに感染し品質が低下した葉たばこを原料に使用した場合、生産されるたばこ製品の品質も大きく低下する。

一方、Tobacco bushy top virus(以下、TBTV)は、Umbravirus属に属するウイルスであり、アフリカおよびアジアに発生しているタバコブッシートップ病の原因ウイルスである。このウイルスは、自然界ではアブラムシによって永続的に伝搬され、タバコに生育停滞および葉のモットリング症状を引き起こし、品質および収量の低下をもたらす。タバコブッシートップ病は、特にアフリカ諸国における重要病害となっている。

タバコでは、PVYに対する抵抗性を示す既存遺伝資源Virgin A mutant(以下、VAM)が知られており、積極的にタバコ育種プログラム活用されてきた。しかし最近、VAMの抵抗性を打破するPVYの新系統であるVAM-Breaking系統(PVY-Breaking系統、またはPVY−Bと表記することもある)が世界中で報告された。よって、現在、このVAM-Breaking系統に対する抵抗性タバコが強く求められている。過去、放射線照射によって、VAM-Breaking系統への抵抗性を獲得したタバコが報告されたが(非特許文献2)、原因遺伝子の同定には至っていない。また、例えばNicotiana africana等のタバコ野生種の中にPVY-Breaking系統に抵抗性を示すものがあることは知られており、タバコ(Nicotiana tabacum)への応用が進んでいるが、実用化には至っていない。

一方、タバコブッシートップ病に対する抵抗性源の探索が、43種類のタバコ品種およびNicotiana属野生種を使って実施された。その結果、タバコ品種の中には抵抗性を示すものはなかったが、数種の野生種で症状を示さなかったことが報告されている(非特許文献3)。しかし、その抵抗性の遺伝様式は明らかにされておらず、さらに野生種から栽培種であるN. tabacumに抵抗性を導入した場合、品質および収量に悪影響を与える形質も同時に導入されることが予想されるため、実用化には未だ長い道のりがある。

およそ200種類ある既知の植物ウイルス抵抗性遺伝子の約半分は劣性遺伝をする(非特許文献4)。これらはウイルス増殖および細胞間移行等に必要な宿主因子であると考えられる。ここ10年の研究から、これらの因子の一部が明らかとなってきた。例えばeIF4EおよびeIF4G等の翻訳開始因子、DEAD-box RNA helicase-like protein(非特許文献5)、システインリッチなVPg-interacting protein(非特許文献6)、およびTranslation elongation factor(非特許文献7)等が、劣性のウイルス抵抗性遺伝因子として同定された。勿論これらが全てではなく、他にも多数の候補があると考えられ(非特許文献4)、例えば、植物ウイルスの師管輸送に関連する様々な植物因子(非特許文献8)が挙げられる。

ウイルスは自分自身ゲノムからタンパク質を合成する際、宿主の翻訳開始機構を利用する。2002年に、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)におけるTurnip mosaic virus(TuMV)に対する劣性の抵抗性遺伝因子が、翻訳開始因子であるeIF(iso)4Eの変異であることが示された(非特許文献9)。それ以来、既知のPotyvirus属のウイルスに対する劣性抵抗性へのeIF4E遺伝子ファミリー関与が幾つかの植物で検討されてきた。そして、実際にeIF4EまたはeIF(iso)4Eの変異によって、劣性のウイルス抵抗性が獲得されたことが示されている。

例えば、特許文献1では、eIF4Eをサイレンシングすることによってウイルス抵抗性を植物に付与する方法が記載されている。また、特許文献2では、トウガラシeIF4Eの機能抑制によるウイルス抵抗性付与の方法に関する記載があり、具体的には特定のアミノ酸に変異を生じたeIF4E(eIF(iso)4Eは含まれない)をコードする遺伝子の過剰発現によるウイルス抵抗性付与の方法が述べられている。また特許文献3では、eIF4E遺伝子またはeIF(iso)4E遺伝子のスプライシング変異により、ウイルスが作用しないeIF4EまたはeIF(iso)4Eを持つ変異体が述べられている。変異はeIF4EもしくはeIF(iso)4Eの非コード領域、またはスプライシングエレメントエキソンイントロン境界部位の±10塩基の領域)の少なくとも1塩基に挿入、欠失、または置換を生じるものであり、望ましくはイントロン、より望ましくは第1イントロンが対象である。さらに特許文献4には、eIF4EおよびeIF(iso)4Eの両変異の組合せによるトウガラシ葉脈斑紋病(Pepper veinal mottle virus、PVMV)に対する抵抗性植物選抜に関する方法、具体的には、eIF4EおよびeIF(iso)4Eが全く発現せず、かつ変異eIF4Eが発現する植物を選別する方法が述べられている。

さらに例えば、コショウのPVYに対する劣性抵抗性の原因遺伝子はeIF4Eであることが示されている(非特許文献10)。また、Clover yellow vein virusはeIF(iso)4E欠損シロイヌナズナでは増殖するが、eIF4E欠損シロイヌナズナでは増殖しないこと、そして、これとは逆に、TuMVはeIF4E欠損シロイヌナズナでは増殖するが、eIF(iso)4E欠損シロイヌナズナでは増殖しないことが示されている(非特許文献11)。さらにPVMVに対する抵抗性を獲得するには、eIF4EおよびeIF(iso)4Eの両方が同時に機能喪失していなければならない(非特許文献12)。近年の翻訳開始因子および植物ウイルス抵抗性を総説したものとして、例えば、非特許文献13および非特許文献14等がある。

Potyvirus属以外のウイルスと翻訳開始因子との関連性も、限定的ではあるが指摘されている。例えば、Cucumber mosaic virus(CMV)は、Cucumovirus属ウイルスであり、eIF4EまたはeIF4Gが破壊されたシロイヌナズナでは、CMVの細胞間移行に関与する3a proteinの生産が阻害される(非特許文献15)。また、Rice yellow mottle virus(RYMV)はSobemovirus属ウイルスであり、eIF(iso)4Gが突然変異したイネはこのウイルスに抵抗性となる(非特許文献16)。

タバコと同じナス科植物のトマトにおいては、トマト変異体パネル網羅的解析に基づいて、Potyvirus抵抗性と翻訳開始因子eIF4Eとの関係が研究されている。その中で、eIF4E遺伝子ファミリーの一つであるeIF4E1の機能抑制が、PVYおよびPepper mottle virus(PepMoV)に対する抵抗性を付与する一方、Tobacco etch virus(TEV)に対しては抵抗性を付与しないことが示された(非特許文献17)。また、eIF4E2、eIF(iso)4E、eIF4G、およびeIF(iso)4Gの機能抑制はこれらのPotyvirus属のウイルスに抵抗性を付与しないことも同時に示された。また、RNAi(RNA干渉)を用いてeIF4E1とeIF4E2とを同時に機能抑制すると、PVY、PepMoVおよびTEVを含む7種類のPotyvirus属のウイルスに抵抗性になることが示された(非特許文献18)。しかしながら一方で、興味深いことに、eIF(iso)4EのRNAiではこれらのどのウイルスに対しても抵抗性にはならないことが示された(非特許文献17)。また、トマトのeIF(iso)4EはPotyvirus属以外のウイルス抵抗性との関連性もないことも併せて示された(非特許文献18)。

eIF(iso)4EはeIF4Eファミリーカテゴライズされるが、植物では一般に、eIF4EとeIF(iso)4EとのDNA配列同一性は60%に満たない。また、eIF(iso)4EはeIF4Eとは異なる翻訳複合体を形成する。具体的には、eIF(iso)4EはeIF(iso)4GとともにeIF(iso)4Fという翻訳複合体を形成し、eIF4EはeIF4GとともにeIF4Fという翻訳複合体を形成する。

タバコ(N. tabacum)においては、eIF4E1またはeIF(iso)4Eの発現量を低下させた報告がある(非特許文献19)。この報告ではアンチセンス技術を用いてタバコのeIF4E1またはeIF(iso)4Eの転写を抑制している。そして、eIF4E1の転写物の量が対照の30〜40%まで抑制されたタバコ、およびeIF(iso)4Eの転写物の量が対照の60%にまで抑制されたタバコを作出したこと、ならびに両者を交配した後代ではeIF4E1の転写物の量が対照の26%、eIF(iso)4Eの転写物の量が対照の31%にまで低減していたことが記載されているものの、ウイルス抵抗性との関連性は全く述べられていない。また、PVYのHC−Proタンパク質がタバコのeIF(iso)4Eと相互作用する可能性が、Nicotiana benthamianaを使ったアッセイ系から示唆されているものの(非特許文献20)、抵抗性との関連性は指摘されていなかった。

最近、タバコにおいて、PVY抵抗性のVAMタバコおよびPVY感受性のタバコの転写物の網羅的解析から、VAMタバコにおいて特異的に転写量の低い遺伝子の中にeIF4Eがあることが見出され、この遺伝子に変異が生じたタバコはPVY抵抗性になることが示された(非特許文献21、非特許文献22)。タバコ(N. tabacum)は、Nicotiana sylvestris(S)由来のゲノムとNicotiana tomentosiformis(T)由来のゲノムとを有する複二倍体であり、それゆえN. sylvestris(S)由来の遺伝子とN. tomentosiformis(T)由来の遺伝子が基本的には1組ずつ存在するが、非特許文献22ではS由来のeIF4Eの機能抑制が、PVY抵抗性をもたらすことが記載されている。

さらに最近、タバコにおいて、翻訳開始因子の1つであるeIF(iso)4E遺伝子の機能抑制によって、PVY−BおよびTobacco Bushy Top Virus(TBTV)に抵抗性になることが示された(特許文献5)。より具体的には、T由来のeIF(iso)4E遺伝子の機能抑制によってPVY−B抵抗性になり、S由来のeIF(iso)4E遺伝子の機能抑制によってTBTVに抵抗性になることが示された(特許文献5)。

上述のようにタバコ(N. tabacum)は複二倍体であり、通常の二倍体植物に比べて遺伝子の数が2倍で、N. sylvestris由来の遺伝子とN. tomentosiformis由来の遺伝子が、基本的には常に1組ずつ存在する。そのため、他の二倍体の植物と比べて遺伝様式が複雑である。シロイヌナズナにおいてはeIF4Eが3種類、およびeIF(iso)4Eが1種類存在するとされており(非特許文献13)、タバコではシロイヌナズナで見られる翻訳開始因子は全て組になって存在すると考えられる。eIF4Eと機能的に類似するcap-binding proteinまで含めると、タバコのeIF4Eファミリーは、少なくとも12個存在することが分っている(非特許文献22)。さらにeIF4GおよびeIF(iso)4Gまで含めると、その数はさらに多くなる。したがって、これらの中から機能抑制によって所望のウイルスの抵抗性に関与する因子を見出すことは、多大な労力を必要とする。また、翻訳開始因子を機能抑制させたタバコを作出し、それらを組み合わせて交配することにより、異なる複数の翻訳開始因子が機能抑制されたタバコを作出し、それらのウイルス抵抗性を調査し、所望のウイルスの抵抗性に関与する因子の組合せを見出すことは、さらに多大な労力を必要とする。

概要

ウイルスに対して抵抗性を有するタバコを提供するため、本発明に係るタバコは、ウイルスに対して非機能的な翻訳開始因子eIF(iso)4Eタンパク質を生産するか、または翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子の発現が抑制されており、さらに、ウイルスに対して非機能的な翻訳開始因子eIF4E2タンパク質を生産するか、または翻訳開始因子eIF4E2遺伝子の発現が抑制されている。

目的

本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、PVYまたはPVY−Bに対してより強い抵抗性を有する新たな抵抗性タバコを提供する

効果

実績

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請求項1

ウイルスに対して非機能的翻訳開始因子eIF(iso)4Eタンパク質生産するか、または翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子の発現が抑制されており、さらに、ウイルスに対して非機能的な翻訳開始因子eIF4E2タンパク質を生産するか、または翻訳開始因子eIF4E2遺伝子の発現が抑制されており、上記翻訳開始因子eIF(iso)4Eは、eIF(iso)4E−SおよびeIF(iso)4E−Tの少なくとも一方であり、上記翻訳開始因子eIF4E2は、eIF4E2−SおよびeIF4E2−Tの少なくとも一方であることを特徴とする、ウイルス抵抗性タバコ

請求項2

上記翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子に変異を有しており、それによって、ウイルスに対して非機能的な上記翻訳開始因子eIF(iso)4Eタンパク質を生産するか、または上記翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子の発現が抑制されていることを特徴とする、請求項1に記載のウイルス抵抗性タバコ。

請求項3

上記翻訳開始因子eIF4E2遺伝子に変異を有しており、それによって、ウイルスに対して非機能的な上記翻訳開始因子eIF4E2タンパク質を生産するか、または上記翻訳開始因子eIF4E2遺伝子の発現が抑制されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のウイルス抵抗性タバコ。

請求項4

上記変異はナンセンス変異であることを特徴とする、請求項2または3に記載のウイルス抵抗性タバコ。

請求項5

上記翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子における上記変異は、(a1)配列番号8に示すアミノ酸配列からなる翻訳開始因子eIF(iso)4E−Sタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF(iso)4E−S遺伝子のエキソン、もしくは(a2)配列番号8に示すアミノ酸配列と92%以上の配列同一性を有する機能的な翻訳開始因子eIF(iso)4E−Sタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF(iso)4E−S遺伝子のエキソン、におけるナンセンス変異である、eIF(iso)4E−S遺伝子における変異;または(b1)配列番号11に示すアミノ酸配列からなる翻訳開始因子eIF(iso)4E−Tタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF(iso)4E−T遺伝子のエキソン、もしくは(b2)配列番号11に示すアミノ酸配列と92%以上の配列同一性を有する機能的な翻訳開始因子eIF(iso)4E−Tタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF(iso)4E−T遺伝子のエキソン、におけるナンセンス変異である、eIF(iso)4E−T遺伝子における変異;またはeIF(iso)4E−S遺伝子における上記変異およびeIF(iso)4E−T遺伝子における上記変異の両方;であることを特徴とする、請求項2に記載のウイルス抵抗性タバコ。

請求項6

上記翻訳開始因子eIF4E2遺伝子における上記変異は、(c1)配列番号2に示すアミノ酸配列からなる翻訳開始因子eIF4E2−Sタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF4E2−S遺伝子のエキソン、もしくは(c2)配列番号2に示すアミノ酸配列と88%以上の配列同一性を有する機能的な翻訳開始因子eIF4E2−Sタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF4E2−S遺伝子のエキソン、におけるナンセンス変異である、eIF4E2−S遺伝子における変異;または(d1)配列番号5に示すアミノ酸配列からなる翻訳開始因子eIF4E2−Tタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF4E2−T遺伝子のエキソン、もしくは(d2)配列番号5に示すアミノ酸配列と88%以上の配列同一性を有する機能的な翻訳開始因子eIF4E2−Tタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF4E2−T遺伝子のエキソン、におけるナンセンス変異である、eIF4E2−T遺伝子における変異;またはeIF4E2−S遺伝子における上記変異およびeIF4E2−T遺伝子における上記変異の両方;であることを特徴とする、請求項3に記載のウイルス抵抗性タバコ。

請求項7

上記ナンセンス変異が、下記(1)〜(4)に示す1つ以上の変異であることを特徴とする、請求項4〜6の何れか一項に記載のウイルス抵抗性タバコ:(1)コドンCAAのCがTに置換、(2)コドンCGAのCがTに置換、(3)コドンCAGのCがTに置換、(4)コドンTGGのG(2つのGのうちの何れか一方または両方)がAに置換。

請求項8

上記翻訳開始因子eIF4E2遺伝子における上記変異は、eIF4E2−S遺伝子における変異を含むことを特徴とする、請求項3または6に記載のウイルス抵抗性タバコ。

請求項9

上記翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子における上記変異は、eIF(iso)4E−T遺伝子における変異を含むことを特徴とする、請求項2または5に記載のウイルス抵抗性タバコ。

請求項10

上記ウイルスは、Potyvirus属のウイルスであることを特徴とする、請求項1〜9の何れか一項に記載のウイルス抵抗性タバコ。

請求項11

上記Potyvirus属のウイルスは、Potato virus Yの一系統であって、タバコのVirgin A mutantのウイルス抵抗性を打破する系統、およびPotato virus Yの少なくとも一方であることを特徴とする、請求項10に記載のウイルス抵抗性タバコ。

請求項12

さらにUmbravirus属のウイルスに対して抵抗性を有することを特徴とする、請求項10または11に記載のウイルス抵抗性タバコ。

請求項13

上記Umbravirus属のウイルスは、Tobacco bushy top virusであることを特徴とする、請求項12に記載のウイルス抵抗性タバコ。

請求項14

ウイルスに対して非機能的な翻訳開始因子eIF(iso)4Eタンパク質を生産するか、またはeIF(iso)4E遺伝子の発現を抑制する変異をeIF(iso)4E遺伝子に導入すること、およびウイルスに対して非機能的な翻訳開始因子eIF4E2タンパク質を生産するか、またはeIF4E2遺伝子の発現を抑制する変異をeIF4E2遺伝子に導入することによって、ウイルスに対して抵抗性を有するタバコを作出することを含み、上記翻訳開始因子eIF(iso)4Eは、eIF(iso)4E−SおよびeIF(iso)4E−Tの少なくとも一方であり、上記翻訳開始因子eIF4E2は、eIF4E2−SおよびeIF4E2−Tの少なくとも一方であることを特徴とする、ウイルス抵抗性タバコ作出方法

請求項15

上記変異はナンセンス変異であることを特徴とする、請求項14に記載のウイルス抵抗性タバコ作出方法。

請求項16

エチルメタンスルホン酸によって上記変異を生じさせることを特徴とする、請求項14または15に記載のウイルス抵抗性タバコ作出方法。

請求項17

上記翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子における変異は、(a1)配列番号8に示すアミノ酸配列からなる翻訳開始因子eIF(iso)4E−Sタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF(iso)4E−S遺伝子のエキソン、もしくは(a2)配列番号8に示すアミノ酸配列と92%以上の配列同一性を有する機能的な翻訳開始因子eIF(iso)4E−Sタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF(iso)4E−S遺伝子のエキソン、におけるナンセンス変異である、eIF(iso)4E−S遺伝子における変異;または(b1)配列番号11に示すアミノ酸配列からなる翻訳開始因子eIF(iso)4E−Tタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF(iso)4E−T遺伝子のエキソン、もしくは(b2)配列番号11に示すアミノ酸配列と92%以上の配列同一性を有する機能的な翻訳開始因子eIF(iso)4E−Tタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF(iso)4E−T遺伝子のエキソン、におけるナンセンス変異である、eIF(iso)4E−T遺伝子における変異;またはeIF(iso)4E−S遺伝子における上記変異およびeIF(iso)4E−T遺伝子における上記変異の両方;であることを特徴とする、請求項14〜16の何れか一項に記載のウイルス抵抗性タバコ作出方法。

請求項18

上記翻訳開始因子eIF4E2遺伝子における変異は、(c1)配列番号2に示すアミノ酸配列からなる翻訳開始因子eIF4E2−Sタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF4E2−S遺伝子のエキソン、もしくは(c2)配列番号2に示すアミノ酸配列と88%以上の配列同一性を有する機能的な翻訳開始因子eIF4E2−Sタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF4E2−S遺伝子のエキソン、におけるナンセンス変異である、eIF4E2−S遺伝子における変異;または(d1)配列番号5に示すアミノ酸配列からなる翻訳開始因子eIF4E2−Tタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF4E2−T遺伝子のエキソン、もしくは(d2)配列番号5に示すアミノ酸配列と88%以上の配列同一性を有する機能的な翻訳開始因子eIF4E2−Tタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF4E2−T遺伝子のエキソン、におけるナンセンス変異である、eIF4E2−T遺伝子における変異;またはeIF4E2−S遺伝子における上記変異およびeIF4E2−T遺伝子における上記変異の両方;であることを特徴とする、請求項14〜17の何れか一項に記載のウイルス抵抗性タバコ作出方法。

請求項19

上記ナンセンス変異が、下記(1)〜(4)に示す1つ以上の変異であることを特徴とする、請求項17または18に記載のウイルス抵抗性タバコ作出方法:(1)コドンCAAのCがTに置換、(2)コドンCGAのCがTに置換、(3)コドンCAGのCがTに置換、(4)コドンTGGのG(2つのGのうちの何れか一方または両方)がAに置換。

請求項20

翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子の発現量を野生型と比較して少なくさせる因子を導入すること、および翻訳開始因子eIF4E2遺伝子の発現量を野生型と比較して少なくさせる因子を導入することによって、ウイルスに対して抵抗性を有するタバコを作出することを含み、上記翻訳開始因子eIF(iso)4Eは、eIF(iso)4E−SおよびeIF(iso)4E−Tの少なくとも一方であり、上記翻訳開始因子eIF4E2は、eIF4E2−SおよびeIF4E2−Tの少なくとも一方であることを特徴とする、ウイルス抵抗性タバコ作出方法。

請求項21

上記ウイルスは、Potyvirus属のウイルスであることを特徴とする、請求項14〜20の何れか一項に記載のウイルス抵抗性タバコ作出方法。

請求項22

上記Potyvirus属のウイルスは、Potato virus Yの一系統であって、タバコのVirgin A mutantのウイルス抵抗性を打破する系統、およびPotato virus Yの少なくとも一方であることを特徴とする、請求項21に記載のウイルス抵抗性タバコ作出方法。

請求項23

請求項14〜22の何れか一項に記載のウイルス抵抗性タバコ作出方法において作出されたウイルス抵抗性タバコまたはその後代自家受粉または他家受粉させることを特徴とする、ウイルス抵抗性タバコの育種後代の作出方法。

請求項24

タバコの翻訳開始因子eIF4E2遺伝子における変異を検出するためのポリヌクレオチドであって、当該変異は、ウイルスに対して非機能的なeIF4E2タンパク質を生産するか、またはeIF4E2遺伝子の発現を抑制する変異である、第一の検出用ポリヌクレオチドと、タバコの翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子における変異を検出するためのポリヌクレオチドであって、当該変異は、ウイルスに対して非機能的なeIF(iso)4Eタンパク質を生産するか、またはeIF(iso)4E遺伝子の発現を抑制する変異である、第二の検出用ポリヌクレオチドと、を含む、検出用ポリヌクレオチドの組み合わせ物

請求項25

タバコにおいて、ゲノムDNAにおける上記変異の有無を、請求項24に記載の検出用ポリヌクレオチドの組み合わせ物を利用して検査する検査工程と、上記検査工程において上記変異が検出されたタバコをウイルス抵抗性タバコとして選抜する選抜工程とを含むことを特徴とする、ウイルス抵抗性タバコ選抜方法

請求項26

翻訳開始因子eIF4E2遺伝子における変異を含む連続した塩基配列またはその相補配列からなるポリヌクレオチドを含んでおり、当該変異は、ウイルスに対して非機能的なeIF4E2タンパク質を生産するか、またはeIF4E2遺伝子の発現を抑制する変異である、第一の判定用DNAマーカーと、翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子における変異を含む連続した塩基配列またはその相補配列からなるポリヌクレオチドを含んでおり、当該変異は、ウイルスに対して非機能的なeIF(iso)4Eタンパク質を生産するか、またはeIF(iso)4E遺伝子の発現を抑制する変異である、第二の判定用DNAマーカーと、を含む、ウイルスに対するタバコの抵抗性の判定用DNAマーカー。

請求項27

請求項1〜13の何れか一項に記載のウイルス抵抗性タバコの葉たばこ

請求項28

請求項27に記載の葉たばこを原料として含むことを特徴とする、たばこ製品

技術分野

0001

本発明は、ウイルス抵抗性タバコおよびその作出方法に関するものである。

背景技術

0002

Potyvirus属は植物ウイルスの中で最大のグループであり、様々な植物を宿主とする。Potato virus Y(以下、PVY)は、Potyvirus属のウイルスであり、アブラムシを通じて非永続的に伝搬し、ナス科植物の多様な種に感染する。タバコ(Nicotiana tabacum)においては、PVYは、その系統および感染するタバコ品種によって、葉肉の濃緑淡、葉脈および壊疽、葉の黄化、ならびに生育抑制等の症状を引き起こし、その結果葉たばこ品質ならびに収量の低下をもたらし、世界中の葉たばこ生産に大きな被害を及ぼす。特に葉脈および茎の壊疽症状が生じると、その後葉の黄化および褐変から、植物体自体が枯死に到る場合が多く、葉たばこの品質および収量に与える影響が大きい(非特許文献1)。またPVYに感染し品質が低下した葉たばこを原料に使用した場合、生産されるたばこ製品の品質も大きく低下する。

0003

一方、Tobacco bushy top virus(以下、TBTV)は、Umbravirus属に属するウイルスであり、アフリカおよびアジアに発生しているタバコブッシートップ病の原因ウイルスである。このウイルスは、自然界ではアブラムシによって永続的に伝搬され、タバコに生育停滞および葉のモットリング症状を引き起こし、品質および収量の低下をもたらす。タバコブッシートップ病は、特にアフリカ諸国における重要病害となっている。

0004

タバコでは、PVYに対する抵抗性を示す既存遺伝資源Virgin A mutant(以下、VAM)が知られており、積極的にタバコ育種プログラム活用されてきた。しかし最近、VAMの抵抗性を打破するPVYの新系統であるVAM-Breaking系統(PVY-Breaking系統、またはPVY−Bと表記することもある)が世界中で報告された。よって、現在、このVAM-Breaking系統に対する抵抗性タバコが強く求められている。過去、放射線照射によって、VAM-Breaking系統への抵抗性を獲得したタバコが報告されたが(非特許文献2)、原因遺伝子の同定には至っていない。また、例えばNicotiana africana等のタバコ野生種の中にPVY-Breaking系統に抵抗性を示すものがあることは知られており、タバコ(Nicotiana tabacum)への応用が進んでいるが、実用化には至っていない。

0005

一方、タバコブッシートップ病に対する抵抗性源の探索が、43種類のタバコ品種およびNicotiana属野生種を使って実施された。その結果、タバコ品種の中には抵抗性を示すものはなかったが、数種の野生種で症状を示さなかったことが報告されている(非特許文献3)。しかし、その抵抗性の遺伝様式は明らかにされておらず、さらに野生種から栽培種であるN. tabacumに抵抗性を導入した場合、品質および収量に悪影響を与える形質も同時に導入されることが予想されるため、実用化には未だ長い道のりがある。

0006

およそ200種類ある既知の植物ウイルス抵抗性遺伝子の約半分は劣性遺伝をする(非特許文献4)。これらはウイルス増殖および細胞間移行等に必要な宿主因子であると考えられる。ここ10年の研究から、これらの因子の一部が明らかとなってきた。例えばeIF4EおよびeIF4G等の翻訳開始因子、DEAD-box RNA helicase-like protein(非特許文献5)、システインリッチなVPg-interacting protein(非特許文献6)、およびTranslation elongation factor(非特許文献7)等が、劣性のウイルス抵抗性遺伝因子として同定された。勿論これらが全てではなく、他にも多数の候補があると考えられ(非特許文献4)、例えば、植物ウイルスの師管輸送に関連する様々な植物因子(非特許文献8)が挙げられる。

0007

ウイルスは自分自身ゲノムからタンパク質を合成する際、宿主の翻訳開始機構を利用する。2002年に、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)におけるTurnip mosaic virus(TuMV)に対する劣性の抵抗性遺伝因子が、翻訳開始因子であるeIF(iso)4Eの変異であることが示された(非特許文献9)。それ以来、既知のPotyvirus属のウイルスに対する劣性抵抗性へのeIF4E遺伝子ファミリー関与が幾つかの植物で検討されてきた。そして、実際にeIF4EまたはeIF(iso)4Eの変異によって、劣性のウイルス抵抗性が獲得されたことが示されている。

0008

例えば、特許文献1では、eIF4Eをサイレンシングすることによってウイルス抵抗性を植物に付与する方法が記載されている。また、特許文献2では、トウガラシeIF4Eの機能抑制によるウイルス抵抗性付与の方法に関する記載があり、具体的には特定のアミノ酸に変異を生じたeIF4E(eIF(iso)4Eは含まれない)をコードする遺伝子の過剰発現によるウイルス抵抗性付与の方法が述べられている。また特許文献3では、eIF4E遺伝子またはeIF(iso)4E遺伝子のスプライシング変異により、ウイルスが作用しないeIF4EまたはeIF(iso)4Eを持つ変異体が述べられている。変異はeIF4EもしくはeIF(iso)4Eの非コード領域、またはスプライシングエレメントエキソンイントロン境界部位の±10塩基の領域)の少なくとも1塩基に挿入、欠失、または置換を生じるものであり、望ましくはイントロン、より望ましくは第1イントロンが対象である。さらに特許文献4には、eIF4EおよびeIF(iso)4Eの両変異の組合せによるトウガラシ葉脈斑紋病(Pepper veinal mottle virus、PVMV)に対する抵抗性植物選抜に関する方法、具体的には、eIF4EおよびeIF(iso)4Eが全く発現せず、かつ変異eIF4Eが発現する植物を選別する方法が述べられている。

0009

さらに例えば、コショウのPVYに対する劣性抵抗性の原因遺伝子はeIF4Eであることが示されている(非特許文献10)。また、Clover yellow vein virusはeIF(iso)4E欠損シロイヌナズナでは増殖するが、eIF4E欠損シロイヌナズナでは増殖しないこと、そして、これとは逆に、TuMVはeIF4E欠損シロイヌナズナでは増殖するが、eIF(iso)4E欠損シロイヌナズナでは増殖しないことが示されている(非特許文献11)。さらにPVMVに対する抵抗性を獲得するには、eIF4EおよびeIF(iso)4Eの両方が同時に機能喪失していなければならない(非特許文献12)。近年の翻訳開始因子および植物ウイルス抵抗性を総説したものとして、例えば、非特許文献13および非特許文献14等がある。

0010

Potyvirus属以外のウイルスと翻訳開始因子との関連性も、限定的ではあるが指摘されている。例えば、Cucumber mosaic virus(CMV)は、Cucumovirus属ウイルスであり、eIF4EまたはeIF4Gが破壊されたシロイヌナズナでは、CMVの細胞間移行に関与する3a proteinの生産が阻害される(非特許文献15)。また、Rice yellow mottle virus(RYMV)はSobemovirus属ウイルスであり、eIF(iso)4Gが突然変異したイネはこのウイルスに抵抗性となる(非特許文献16)。

0011

タバコと同じナス科植物のトマトにおいては、トマト変異体パネル網羅的解析に基づいて、Potyvirus抵抗性と翻訳開始因子eIF4Eとの関係が研究されている。その中で、eIF4E遺伝子ファミリーの一つであるeIF4E1の機能抑制が、PVYおよびPepper mottle virus(PepMoV)に対する抵抗性を付与する一方、Tobacco etch virus(TEV)に対しては抵抗性を付与しないことが示された(非特許文献17)。また、eIF4E2、eIF(iso)4E、eIF4G、およびeIF(iso)4Gの機能抑制はこれらのPotyvirus属のウイルスに抵抗性を付与しないことも同時に示された。また、RNAi(RNA干渉)を用いてeIF4E1とeIF4E2とを同時に機能抑制すると、PVY、PepMoVおよびTEVを含む7種類のPotyvirus属のウイルスに抵抗性になることが示された(非特許文献18)。しかしながら一方で、興味深いことに、eIF(iso)4EのRNAiではこれらのどのウイルスに対しても抵抗性にはならないことが示された(非特許文献17)。また、トマトのeIF(iso)4EはPotyvirus属以外のウイルス抵抗性との関連性もないことも併せて示された(非特許文献18)。

0012

eIF(iso)4EはeIF4Eファミリーカテゴライズされるが、植物では一般に、eIF4EとeIF(iso)4EとのDNA配列同一性は60%に満たない。また、eIF(iso)4EはeIF4Eとは異なる翻訳複合体を形成する。具体的には、eIF(iso)4EはeIF(iso)4GとともにeIF(iso)4Fという翻訳複合体を形成し、eIF4EはeIF4GとともにeIF4Fという翻訳複合体を形成する。

0013

タバコ(N. tabacum)においては、eIF4E1またはeIF(iso)4Eの発現量を低下させた報告がある(非特許文献19)。この報告ではアンチセンス技術を用いてタバコのeIF4E1またはeIF(iso)4Eの転写を抑制している。そして、eIF4E1の転写物の量が対照の30〜40%まで抑制されたタバコ、およびeIF(iso)4Eの転写物の量が対照の60%にまで抑制されたタバコを作出したこと、ならびに両者を交配した後代ではeIF4E1の転写物の量が対照の26%、eIF(iso)4Eの転写物の量が対照の31%にまで低減していたことが記載されているものの、ウイルス抵抗性との関連性は全く述べられていない。また、PVYのHC−Proタンパク質がタバコのeIF(iso)4Eと相互作用する可能性が、Nicotiana benthamianaを使ったアッセイ系から示唆されているものの(非特許文献20)、抵抗性との関連性は指摘されていなかった。

0014

最近、タバコにおいて、PVY抵抗性のVAMタバコおよびPVY感受性のタバコの転写物の網羅的解析から、VAMタバコにおいて特異的に転写量の低い遺伝子の中にeIF4Eがあることが見出され、この遺伝子に変異が生じたタバコはPVY抵抗性になることが示された(非特許文献21、非特許文献22)。タバコ(N. tabacum)は、Nicotiana sylvestris(S)由来のゲノムとNicotiana tomentosiformis(T)由来のゲノムとを有する複二倍体であり、それゆえN. sylvestris(S)由来の遺伝子とN. tomentosiformis(T)由来の遺伝子が基本的には1組ずつ存在するが、非特許文献22ではS由来のeIF4Eの機能抑制が、PVY抵抗性をもたらすことが記載されている。

0015

さらに最近、タバコにおいて、翻訳開始因子の1つであるeIF(iso)4E遺伝子の機能抑制によって、PVY−BおよびTobacco Bushy Top Virus(TBTV)に抵抗性になることが示された(特許文献5)。より具体的には、T由来のeIF(iso)4E遺伝子の機能抑制によってPVY−B抵抗性になり、S由来のeIF(iso)4E遺伝子の機能抑制によってTBTVに抵抗性になることが示された(特許文献5)。

0016

上述のようにタバコ(N. tabacum)は複二倍体であり、通常の二倍体植物に比べて遺伝子の数が2倍で、N. sylvestris由来の遺伝子とN. tomentosiformis由来の遺伝子が、基本的には常に1組ずつ存在する。そのため、他の二倍体の植物と比べて遺伝様式が複雑である。シロイヌナズナにおいてはeIF4Eが3種類、およびeIF(iso)4Eが1種類存在するとされており(非特許文献13)、タバコではシロイヌナズナで見られる翻訳開始因子は全て組になって存在すると考えられる。eIF4Eと機能的に類似するcap-binding proteinまで含めると、タバコのeIF4Eファミリーは、少なくとも12個存在することが分っている(非特許文献22)。さらにeIF4GおよびeIF(iso)4Gまで含めると、その数はさらに多くなる。したがって、これらの中から機能抑制によって所望のウイルスの抵抗性に関与する因子を見出すことは、多大な労力を必要とする。また、翻訳開始因子を機能抑制させたタバコを作出し、それらを組み合わせて交配することにより、異なる複数の翻訳開始因子が機能抑制されたタバコを作出し、それらのウイルス抵抗性を調査し、所望のウイルスの抵抗性に関与する因子の組合せを見出すことは、さらに多大な労力を必要とする。

0017

米国特許出願公開第2006/294618号明細書
米国特許第7772462号明細書
米国特許出願公開第2013/117879号明細書
国際公開第2005/118850号
国際公開第2015/199242号

先行技術

0018

Henderson R. G. and Troutman J. L. (1963) A severe virus disease of tobacco in Montgomery county, Virginia. Plant Disease Reporter 47-3: 187-189.
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発明が解決しようとする課題

0019

PVY−Bに対して抵抗性を有するタバコは知られているが、上述のように、わずか数例に過ぎず、それらの抵抗性の持続性も未だ不明である。したがって、潜在的な遺伝的脆弱性を回避するためにも、PVY-Breaking系統を含むウイルスに対する別の新しい抵抗性タバコを開発することが必要である。同様に、PVYに関しても、遺伝的脆弱性を回避するために、新しい抵抗性タバコを開発することが必要である。

0020

そこで、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、PVYまたはPVY−Bに対してより強い抵抗性を有する新たな抵抗性タバコを提供することにある。

課題を解決するための手段

0021

本発明に係るウイルス抵抗性タバコの一態様は、ウイルスに対して非機能的な翻訳開始因子eIF(iso)4Eタンパク質を生産するか、または翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子の発現が抑制されており、さらに、ウイルスに対して非機能的な翻訳開始因子eIF4E2タンパク質を生産するか、または翻訳開始因子eIF4E2遺伝子の発現が抑制されており、上記翻訳開始因子eIF(iso)4Eは、eIF(iso)4E−SおよびeIF(iso)4E−Tの少なくとも一方であり、上記翻訳開始因子eIF4E2は、eIF4E2−SおよびeIF4E2−Tの少なくとも一方である。

0022

本発明に係るウイルス抵抗性タバコ作出方法の一態様は、ウイルスに対して非機能的な翻訳開始因子eIF(iso)4Eタンパク質を生産するか、またはeIF(iso)4E遺伝子の発現を抑制する変異をeIF(iso)4E遺伝子に導入すること、および
ウイルスに対して非機能的な翻訳開始因子eIF4E2タンパク質を生産するか、またはeIF4E2遺伝子の発現を抑制する変異をeIF4E2遺伝子に導入することによって、ウイルスに対して抵抗性を有するタバコを作出することを含み、
上記翻訳開始因子eIF(iso)4Eは、eIF(iso)4E−SおよびeIF(iso)4E−Tの少なくとも一方であり、
上記翻訳開始因子eIF4E2は、eIF4E2−SおよびeIF4E2−Tの少なくとも一方である。

0023

本発明に係るウイルス抵抗性タバコ作出方法の別の一態様は、翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子の発現量を野生型と比較して少なくさせる因子を導入すること、および
翻訳開始因子eIF4E2遺伝子の発現量を野生型と比較して少なくさせる因子を導入することによって、ウイルスに対して抵抗性を有するタバコを作出することを含み、
上記翻訳開始因子eIF(iso)4Eは、eIF(iso)4E−SおよびeIF(iso)4E−Tの少なくとも一方であり、
上記翻訳開始因子eIF4E2は、eIF4E2−SおよびeIF4E2−Tの少なくとも一方である。

0024

本発明に係るウイルス抵抗性タバコの育種後代の作出方法の一態様は、上述のウイルス抵抗性タバコ作出方法において作出されたウイルス抵抗性タバコまたはその後代を自家受粉または他家受粉させるものである。

0025

本発明に係る検出用ポリヌクレオチド組み合わせ物の一態様は、タバコの翻訳開始因子eIF4E2遺伝子における変異を検出するためのポリヌクレオチドであって、当該変異は、ウイルスに対して非機能的なeIF4E2タンパク質を生産するか、またはeIF4E2遺伝子の発現を抑制する変異である、第一の検出用ポリヌクレオチドと、タバコの翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子における変異を検出するためのポリヌクレオチドであって、当該変異は、ウイルスに対して非機能的なeIF(iso)4Eタンパク質を生産するか、またはeIF(iso)4E遺伝子の発現を抑制する変異である、第二の検出用ポリヌクレオチドと、を含む。

0026

本発明に係るウイルス抵抗性タバコ選抜方法の一態様は、タバコにおいて、ゲノムDNAにおける上記変異の有無を、上述の検出用ポリヌクレオチドの組み合わせ物を利用して検査する検査工程と、上記検査工程において上記変異が検出されたタバコをウイルス抵抗性タバコとして選抜する選抜工程とを含む。

0027

本発明に係る判定用DNAマーカーの組み合わせ物の一態様は、翻訳開始因子eIF4E2遺伝子における変異を含む連続した塩基配列またはその相補配列からなるポリヌクレオチドを含んでおり、当該変異は、ウイルスに対して非機能的なeIF4E2タンパク質を生産するか、またはeIF4E2遺伝子の発現を抑制する変異である、第一の判定用DNAマーカーと、
翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子における変異を含む連続した塩基配列またはその相補配列からなるポリヌクレオチドを含んでおり、当該変異は、ウイルスに対して非機能的なeIF(iso)4Eタンパク質を生産するか、またはeIF(iso)4E遺伝子の発現を抑制する変異である、第二の判定用DNAマーカーと、を含む、ウイルスに対するタバコの抵抗性の判定用DNAマーカーである。

0028

本発明に係る葉たばこの一態様は、上記ウイルス抵抗性タバコの葉たばこである。

0029

本発明に係るたばこ製品の一態様は、上記葉たばこを原料として含むものである。

発明の効果

0030

本発明によれば、ウイルスに抵抗性を有する新たなウイルス抵抗性タバコを提供することができる。

図面の簡単な説明

0031

タバコ品種TN90にeIF(iso)4E遺伝子のRNAiコンストラクトを導入した組換えタバコにおける、定量PCRによるS型並びにT型のeIF(iso)4E遺伝子の発現解析の結果を示す図である。図1では、対照の転写物の量の平均値を1とした場合の相対発現量を示している。
タバコ品種SR1にeIF4E2遺伝子またはeIF(iso)4E遺伝子のRNAiコンストラクトを導入した組換えタバコにおける、定量PCRによるeIF4E2遺伝子およびeIF(iso)4E遺伝子の遺伝子発現解析の結果を示す図である。図2では、対照の転写物の量の平均値を1とした場合の相対発現量を示している。棒線標準誤差を示す。

0032

本願発明者らは、タバコの翻訳開始因子eIF4E2およびeIF(iso)4Eの2種類の遺伝子の機能を抑制することで、複合ウイルス抵抗性を付与する方法を見出した。当該方法により作出されたタバコは、Potyvirus属ウイルスであるPVY(potato virus Y)およびPVY−B(PVYのVAM-breaking strain)、さらにUmbravirus属ウイルスであるTBTV(tobacco bushy top virus)に対して抵抗性となった。具体的にはeIF4E2−Sが欠失したタバコ品種TN90に、後述するeIF(iso)4E−T遺伝子およびeIF(iso)4E−Sの両方の遺伝子の転写を抑制するRNAiコンストラクトを導入した組換えタバコを作出し、ウイルスアッセイを実施したところ、PVY、PVY−B、TBTVの3つのウイルス全てに対して抵抗性となった。さらにこの組換えタバコは、eIF4E2−Sが機能抑制されたタバコよりもPVYに対して強い抵抗性を示し、eIF(iso)4E−SおよびeIF(iso)4E−Tの両方が機能破壊されたタバコよりもPVY−Bに対して強い抵抗性を示した。一方、eIF4E2−SおよびeIF(iso)4E−Tが機能破壊されたタバコ変異体を作出し、ウイルスアッセイを行ったところ、eIF4E2−Sが機能抑制されたタバコよりもPVYに対して強い抵抗性を示し、eIF(iso)4E−Tが機能破壊されたタバコ、ならびにeIF(iso)4E−SおよびeIF(iso)4E−Tの両方が機能破壊されたタバコよりもPVY−Bに対して強い抵抗性を示した。さらに、eIF4E2−S、eIF(iso)4E−SおよびeIF(iso)4E−Tの3つが機能破壊されたタバコ変異体を作出し、ウイルスアッセイを行ったところ、eIF4E2−Sが機能抑制されたタバコよりもPVYに対して強い抵抗性を示し、eIF(iso)4E−SおよびeIF(iso)4E−Tの両方が機能破壊されたタバコよりもPVY−Bに対して強い抵抗性を示した。

0033

PVYに関しては、VAMの抵抗性の原因が翻訳開始因子eIF4E2−S遺伝子の欠失であることが示され、また、PVY−BおよびTBTVに関してはeIF(iso)4E遺伝子の機能破壊による抵抗性が報告されているが、3つのウイルス全てに抵抗性のタバコは知られていなかった。

0034

eIF4E2およびeIF(iso)4E両方の機能が抑制されたタバコは、PVY、PVY−BおよびTBTV全てに抵抗性となり、実用性がさらに高まった。なお、eIF4E2−SおよびeIF(iso)4E両方の機能が抑制されたタバコがPVYおよびPVY−Bに対して、それぞれ既存の抵抗性タバコ、すなわち、eIF4E2−S機能抑制タバコ、並びにeIF(iso)4E機能抑制タバコよりも抵抗性が増強されたことは想定の範囲外であり、予期せぬ相乗効果であった。

0035

以下、本発明に係るウイルス抵抗性タバコの実施形態について説明する。なお、本明細書において、特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意図する。

0036

〔1.ウイルス抵抗性タバコおよびその作出方法〕
本実施形態におけるウイルス抵抗性タバコは、ウイルスに対して非機能的な翻訳開始因子eIF(iso)4Eタンパク質を生産するか、または翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子の発現が抑制されており、さらに、ウイルスに対して非機能的な翻訳開始因子eIF4E2タンパク質を生産するか、または翻訳開始因子eIF4E2遺伝子の発現が抑制されている、ウイルス抵抗性タバコである。

0037

本明細書において、「ウイルス抵抗性」とは、罹病性タバコ品種と比較して、ウイルス感染により、タバコに発生する症状が遅延するか、もしくは軽微となるか、または発生しないことを指す。タバコに発生する症状としては、生育停滞、葉脈壊疽、茎壊疽、葉脈透過、およびモットリング等が挙げられる。あるいは、「ウイルス抵抗性」とは、罹病性タバコ品種と比較して、ウイルスの増殖が抑制される、またはウイルスの細胞間移行が抑制されることを指す。

0038

また、「タバコ」には、タバコの植物全体、植物組織(例えば、葉、茎、花、根、生殖器官およびそれらの一部など)、および種子、ならびに乾燥した葉、茎、花、根および種子等が含まれ得る。

0039

Nicotiana属植物であるNicotiana tabacumは複二倍体であり、祖先種であるNicotiana sylvestris由来のゲノム(S型ゲノム)およびNicotiana tomentosiformis由来のゲノム(T型ゲノム)の両方を有する。そのため、N. tabacumは、塩基配列が異なる2組のeIF(iso)4E遺伝子および塩基配列が異なる2組のeIF4E2遺伝子を有する。そのため、「非機能的な翻訳開始因子eIF(iso)4Eタンパク質を生産する」とは、非機能的な翻訳開始因子eIF(iso)4E−Sタンパク質を生産すること、非機能的な翻訳開始因子eIF(iso)4E−Tタンパク質を生産すること、またはその両方であることが意図される。同様に、「翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子の発現が抑制されている」とは、翻訳開始因子eIF(iso)4E−S遺伝子の発現が抑制されていること、翻訳開始因子eIF(iso)4E−T遺伝子の発現が抑制されていること、またはその両方であることが意図される。また、「非機能的な翻訳開始因子eIF4E2タンパク質を生産する」とは、非機能的な翻訳開始因子eIF4E2−Sタンパク質を生産すること、非機能的な翻訳開始因子eIF4E2−Tタンパク質を生産すること、またはその両方であることが意図される。同様に、「翻訳開始因子eIF4E2遺伝子の発現が抑制されている」とは、翻訳開始因子eIF4E2−S遺伝子の発現が抑制されていること、翻訳開始因子eIF4E2−T遺伝子の発現が抑制されていること、またはその両方であることが意図される。すなわち、本明細書において、特に断りのない限り、単に「eIF(iso)4E」という場合には、eIF(iso)4E−SもしくはeIF(iso)4E−Tまたはその両方を指すことを意図している。同様に、特に断りのない限り、単に「eIF4E2」という場合には、eIF4E2−SもしくはeIF4E2−Tまたはその両方を指すことを意図している。また、各遺伝子のうち、eIF(iso)4E−SおよびeIF4E2−Sを、単に「S型」と称する場合もあり、eIF(iso)4E−TおよびeIF4E2−Tを、単に「T型」と称する場合もある。

0040

したがって、各遺伝子のS型およびT型に関し、非機能的なタンパク質を生産するか、または遺伝子の発現が抑制されているものを小文字「s」および「t」で表し、そうでない正常なものを大文字「S」および「T」で表す場合、本実施形態におけるウイルス抵抗性タバコには、
(1)eIF4E2-ssTT/eIF(iso)4E-ssTT
(2)eIF4E2-ssTT/eIF(iso)4E-SStt
(3)eIF4E2-ssTT/eIF(iso)4E-sstt
(4)eIF4E2-SStt/eIF(iso)4E-ssTT
(5)eIF4E2-SStt/eIF(iso)4E-SStt
(6)eIF4E2-SStt/eIF(iso)4E-sstt
(7)eIF4E2-sstt/eIF(iso)4E-ssTT
(8)eIF4E2-sstt/eIF(iso)4E-SStt
(9)eIF4E2-sstt/eIF(iso)4E-sstt
の9通りの組み合わせが存在するが、いずれも本発明の範疇に含まれる。

0041

本明細書では、N. tabacumに含まれるものに限らず、N. sylvestris由来のゲノムを有するNicotiana属植物における当該N. sylvestris由来のゲノムにコードされているeIF(iso)4EおよびeIF4E2を、それぞれ「eIF(iso)4E−S」および「eIF4E2−S」と称する。同様に、N. tomentosiformis由来のゲノムを有するNicotiana属植物における当該N. tomentosiformis由来のゲノムにコードされているeIF(iso)4EおよびeIF4E2を、それぞれ「eIF(iso)4E−T」および「eIF4E2−T」と称する。

0042

したがって、本明細書において、「タバコ」とは、N. tabacumだけでなく、N. sylvestris由来のゲノムおよびN. tomentosiformis由来のゲノムの少なくとも一方を有するNicotiana属の他の種も包含する。このようなNicotiana属の他の種としては、N. sylvestris、およびTomentosae節に含まれるNicotiana属植物、例えば、N. tomentosa、N. tomentosiformis、N. kawakamii、N. otophora、N. setchellii、およびN. Glutinosaが挙げられる。

0043

「ウイルスに対して非機能的なeIF(iso)4Eタンパク質」とは、ウイルスが自己増殖または細胞間移行の際に利用できない(少なくとも部分的に利用が阻害される)eIF(iso)4Eタンパク質を指し、タバコにおいて正常なeIF(iso)4Eタンパク質の機能(翻訳開始因子としての機能)を果たしていない場合、および、タバコにおいては正常なeIF(iso)4Eタンパク質の機能を果たしているが、ウイルスが利用できない場合の両方を包含する。「ウイルスに対して非機能的なeIF4E2タンパク質」についても同様のことを意図している。これらのタンパク質は、例えば、細胞内において生産され得る。

0044

ウイルスに対して非機能的となっているか否かは、ウイルスアッセイによって確認することができる。ウイルスアッセイは、病徴調査によって、あるいはウイルスタンパクまたはウイルスゲノムの検出または測定等によって行うことができる。ウイルスタンパクの検出および測定には、例えばウイルスタンパクに対する抗体を使ったELISA法およびウェスタンブロット法が用いられ得る。当該抗体およびELISAキットについては市販のものを利用することもできる。例えばPVYおよびPVY−Bに対しては、agdia(登録商標)社のPVY PathoScreen Kit(登録商標)等を用いることができる。また、ウイルスRNAゲノムの検出および測定には、例えば、逆転写定量PCR法が用いられ得る。具体的には、公共データベースから例えばPVYのゲノム配列入手し、適宜定量PCR用のプライマーおよびプローブ配列を設計し、植物サンプルから抽出したRNAを逆転写したcDNAサンプルを鋳型にPCRを行えばよい。病徴調査によって、対象とするタバコが、翻訳開始因子に変異のないタバコに比べて、病徴が遅れる、病徴が軽微、あるいは病徴が見られなければ、ウイルスに対して非機能的である。あるいは、ウイルスタンパクまたはウイルスゲノムの検出または測定等によって、対象とするタバコが、翻訳開始因子に変異のないタバコに比べて、当該ウイルスタンパクまたはウイルスゲノムの量が、好ましくは半分以下、より好ましくは1/3以下、さらに好ましくは1/4以下、最も好ましくは1/5以下であれば、ウイルスに対して非機能的である。

0045

「eIF(iso)4E遺伝子の発現量」は、eIF(iso)4EのmRNAへの転写の量(転写レベルあるいは転写物の量)およびeIF(iso)4Eタンパク質への翻訳の量(翻訳レベルあるいは翻訳産物の量)の何れであってもよいし、両方であってもよい。そのため、「eIF(iso)4Eの発現が抑制されている」とは、野生型と比較して転写が抑制されている場合も、野生型と比較して翻訳が抑制されている場合も、野生型と比較して転写および翻訳の両方が抑制されている場合も包含する。なお、「転写が抑制されている」には、転写物が分解される場合も包含される。すなわち、「eIF(iso)4Eの発現が抑制されている」には、例えば転写産物が分解されることにより、野生型と比較してeIF(iso)4E遺伝子の発現量が抑えられていることも包含する。「eIF4E2遺伝子の発現量」および「eIF4E2の発現が抑制されている」についても同様のことを意図している。これらの遺伝子の発現は、例えば、細胞内におけるものが意図される。

0046

ウイルス抵抗性タバコが抵抗性を示すウイルスは、特に限定されないが、例えば、タバコに感染するAlfamovirus属ウイルス(例えばAlfalfa mosaic virus)、Curtovirus属ウイルス(例えばBeet curly top virus)、Begomovirus属ウイルス(例えばTobacco leaf curl virus)、Cucumovirus属ウイルス(例えばCucumber mosaic virus、およびPeanut stunt virus)、Ilarvirus属ウイルス(例えばTobacco streak virus)、Potyvirus属ウイルス(例えばPotato virus Y(PVY)、Tobacco etch virus、Tobacco vein mottling virus、およびTobacco vein banding mosaic virus)、Tobamovirus属ウイルス(例えばTobacco mosaic virus)、Tobravirus属ウイルス(例えばTobacco rattle virus)、Necrovirus属ウイルス(例えばTobacco necrosis virus)、Varicosavirus属ウイルス(例えばTobacco stunt virus)、Nepovirus属ウイルス(例えばTobacco ringspot virus)、Umbravirus属ウイルス(例えばTobacco bushy top virus、およびTobacco mottle virus)、Polerovirus属ウイルス(例えばTobacco vein distorting virus)、Mastrevirus属ウイルス(例えばTobacco yellow dwarf virus)、およびTospovirus属ウイルス(例えばTomato spotted wilt virus)等のウイルスが挙げられる。本発明に係るウイルス抵抗性タバコは、1種類のウイルスに対して抵抗性を有する態様でもあり得るし、複数種のウイルスに対して抵抗性を有する態様でもあり得る。本発明に係るウイルス抵抗性タバコは、Potyvirus属のウイルスに対して顕著な抵抗性を有している態様であり得る。なかでもPotato virus Y(PVY)のPVY-O系統、PVY-C系統、PVY-Z系統、PVY-N(NTNおよびNWを含む)系統、特にタバコのVirgin A mutantのウイルス抵抗性、あるいはeIF4E2-Sが欠失または機能抑制されたタバコ系統のウイルス抵抗性を打破するPVY系統(VAM−Breaking系統)に対して抵抗性を有し得る。また、本発明に係るウイルス抵抗性タバコは、Umbravirus属のウイルスに対して顕著な抵抗性を有していてもよく、なかでもTobacco bushy top virus(TBTV)に対して抵抗性を有し得る。

0047

(eIF4E2遺伝子)
野生型のeIF4E2−S遺伝子のcDNA配列の一例を配列番号1(GenBankアクセッション番号:KF155696)に示す。配列番号1において、オープンリーディングフレームは、112番目から771番目の塩基である。また、野生型のeIF4E2−Sタンパク質のアミノ酸配列およびゲノムの塩基配列のそれぞれの一例を、配列番号2および3に示す。配列番号3において、翻訳開始コドンは第241番目から243番目の塩基であり、翻訳終止コドンは第5307番目から5309番目の塩基である。また、エキソンは、131番目から491番目の塩基(第1エキソン)、3031番目から3196番目の塩基(第2エキソン)、3309番目から3434番目の塩基(第3エキソン)、5106番目から5171番目の塩基(第4エキソン)、および5259番目から5540番目の塩基(第5エキソン)である。

0048

野生型のeIF4E2−T遺伝子のcDNA配列の一例を配列番号4(GenBankアクセッション番号:KM202068)に示す。配列番号4において、オープンリーディングフレームは、61番目から717番目の塩基である。また、野生型のeIF4E2−Tタンパク質のアミノ酸配列およびゲノムの塩基配列のそれぞれの一例を、配列番号5および6に示す。配列番号6において、翻訳開始コドンは第1765番目から1767番目の塩基であり、翻訳終止コドンは第7112番目から7114番目の塩基である。また、エキソンは、1705番目から2012番目の塩基(第1エキソン)、4639番目から4804番目の塩基(第2エキソン)、4915番目から5040番目の塩基(第3エキソン)、6927番目から6992番目の塩基(第4エキソン)、および7064番目から7114番目の塩基(第5エキソン)である。

0049

なお、GenBankアクセッション番号KM202068のeIF4E2−T遺伝子とGenBankアクセッション番号KF155696のeIF4E2−S遺伝子とは、タンパク質コード領域のDNAの配列同一性が93.2%(657塩基中612塩基が一致)である。またアミノ酸配列の同一性は87.7%(219アミノ酸中192アミノ酸が一致)、類似性は97%である。

0050

同一機能を有する植物の遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列は、遺伝子によっては栽培品種間において1%から数%程度の差異があり得、栽培品種と近縁野生種間においては数%から10%程度の差異があり得る。本明細書において、変異を生じる前の野生型のeIF4E2遺伝子には、配列番号1または配列番号4に示す塩基配列からなるcDNAに対応するmRNAが生成される遺伝子、および、配列番号2または配列番号5に示すアミノ酸配列からなるeIF4E2タンパク質をコードする遺伝子が包含される。さらに、本明細書において、変異を生じる前の野生型のeIF4E2遺伝子には、配列番号1または配列番号4に示す塩基配列からなるcDNAに対応するmRNAと、94%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは99%以上の配列同一性を有するmRNAが生成されるものであり、かつ機能的なeIF4E2タンパク質をコードする遺伝子も包含される。さらに、本明細書において、野生型のeIF4E2遺伝子には、配列番号2または配列番号5に示すアミノ酸配列と88%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の配列同一性を有する機能的なeIF4E2タンパク質をコードする遺伝子も包含される。さらに、本明細書において、野生型のeIF4E2遺伝子には、配列番号1または配列番号4に示す塩基配列において1〜50個、1〜40個、1〜30個、1〜20個、1〜15個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、1〜5個、1〜3個、1〜2個、または1個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加された塩基配列に対応するmRNAが生成されるものであり、かつ機能的なeIF4E2タンパク質をコードする遺伝子も包含される。さらに、本明細書において、野生型のeIF4E2遺伝子には、配列番号2または配列番号5に示すアミノ酸配列において1〜20個、1〜15個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、または1個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有する機能的なeIF4E2タンパク質をコードする遺伝子も包含される。

0051

例えば本明細書において、変異を生じる前の野生型のeIF4E2−T遺伝子には、mRNA配列がGenBankアクセッション番号KM202068の配列となる遺伝子も包含される。この配列はタバコ系統T021658のeIF4E2−T遺伝子に由来する配列であり、KM202068のタンパク質コード領域に対応するDNA配列と、タバコ品種K326のeIF4E2−TのゲノムDNA配列のエキソン配列との配列同一性は99.2%(657塩基中652塩基が一致)である。約1%の違い(657塩基中5塩基の違い)はタバコ系統/品種間の差異によるものと考えられる。

0052

なお、本明細書において、「塩基配列の同一性」とは、複数の塩基配列において、全く同じ塩基の並びがどの程度の比率で存在するかを指す。同様に、「アミノ酸配列の同一性」とは、複数のアミノ酸配列において、全く同じアミノ酸の並びがどの程度の比率で存在するかを指す。さらに、本明細書において、「アミノ酸配列の類似性」とは、複数のアミノ酸配列において、全く同じアミノ酸、または性質の似たアミノ酸の並びがどの程度の比率で存在するかを指す。性質の似たアミノ酸の例として例えば、正電荷をもつ残基を有するリシンアルギニン、およびヒスチジン負電荷をもつ残基を有するアスパラギン酸、およびグルタミン酸非極性すなわち疎水性の残基を有するアラニンバリンロイシンイソロイシンメチオニントリプトファンフェニルアラニン、およびプロリン極性だが電荷のないグリシンセリントレオニンシステインチロシンアスパラギン、およびグルタミン;が挙げられる。

0053

「塩基配列の同一性」、「アミノ酸配列の同一性」、または「アミノ酸配列の類似性」に関しては、当業者通常用いる配列解析相同性検索)プログラムBLAST(文献:Altschul et al. (1990) Basic local alignment search tool. J Mol Biol. 215:403-410.)等、または市販の核酸・アミノ酸解析ソフトを用いて、計算することができる。BLAST検索は、GenBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/)またはDNA Data Bank of Japan(http://www.ddbj.nig.ac.jp/index-j.html)等のウェブサイトにおいて実施可能である。その際、各種の検索パラメーターの変更が可能であるが、通常はデフォルト値を用いる。

0054

また、本明細書において、「変異」とは、DNAにおける点変異、欠失、挿入、重複転座および逆位を指し、特に記載がない場合は、野生型の塩基配列に対する差異を指す。

0055

上述した野生種のeIF4E2遺伝子の塩基配列は、配列番号1または配列番号4に示す塩基配列を用いて、GenBankに登録されているN. sylvestris、N. tomentosiformis、またはN. otophoraのゲノム(Whole genome shotgun contigs)をBLASTプログラム等によって相同性検索することによって得られる。あるいは、Nicotiana属植物に由来する植物種のeIF4E2遺伝子の塩基配列は、例えば、本明細書に示されたeIF4E2の遺伝子配列に基づき設計されたプライマー配列を用いて、当該植物種のゲノムDNAから、PCR法によってeIF4E2遺伝子を増幅し、塩基配列を決定することによって得ることができる。相同性検索としてはBLASTプログラムを用いてもよいし、市販の核酸・アミノ酸配列解析ソフトを用いてもよい。

0056

また、配列番号1または配列番号4に示す塩基配列をプローブとして用いて、タバコ野生種のゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーから、ストリンジェントな条件でハイブリダイゼーション実験を行うことによって、タバコ野生種のeIF4E2遺伝子の塩基配列を取得することが可能である。

0057

(eIF(iso)4E遺伝子)
野生型のeIF(iso)4E−S遺伝子のcDNA配列の一例を配列番号7(GenBankアクセッション番号:AY699609)に示す。配列番号7において、オープンリーディングフレームは、70番目から672番目の塩基である。また、野生型のeIF(iso)4E−Sタンパク質のアミノ酸配列およびゲノムの塩基配列のそれぞれの一例を、配列番号8および9に示す。配列番号9において、翻訳開始コドンは第201番目から203番目の塩基であり、翻訳終止コドンは第4938番目から4940番目の塩基である。また、エキソンは、132番目から397番目の塩基(第1エキソン)、1730番目から1898番目の塩基(第2エキソン)、2029番目から2154番目の塩基(第3エキソン)、4723番目から4785番目の塩基(第4エキソン)、および4893番目から5096番目の塩基(第5エキソン)である。

0058

野生型のeIF(iso)4E−T遺伝子のcDNA配列の一例を配列番号10(GenBankアクセッション番号:EB683576)に示す。配列番号10において、オープンリーディングフレームは、37番目から624番目の塩基である。また、野生型のeIF(iso)4E−Tタンパク質のアミノ酸配列およびゲノムの塩基配列のそれぞれの一例を、配列番号11および12に示す。配列番号12において、翻訳開始コドンは第201番目から203番目の塩基であり、翻訳終止コドンは第3418番目から3420番目の塩基である。また、エキソンは、164番目から382番目の塩基(第1エキソン)、1620番目から1788番目の塩基(第2エキソン)、1919番目から2044番目の塩基(第3エキソン)、3205番目から3267番目の塩基(第4エキソン)、および3373番目から3593番目の塩基(第5エキソン)である。

0059

同一機能を有する植物の遺伝子のタンパク質コード領域の塩基配列は、遺伝子によっては栽培品種間において1%から数%程度の差異があり得、栽培品種と近縁野生種間においては数%から10%程度の差異があり得る。本明細書において、変異を生じる前の野生型のeIF(iso)4E遺伝子には、配列番号7または配列番号10に示す塩基配列からなるcDNAに対応するmRNAが生成される遺伝子、および、配列番号8または配列番号11に示すアミノ酸配列からなるeIF(iso)4Eタンパク質をコードする遺伝子が包含される。さらに、本明細書において、変異を生じる前の野生型のeIF(iso)4E遺伝子には、配列番号7または配列番号10に示す塩基配列からなるcDNAに対応するmRNAと、92%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは99%以上の配列同一性を有するmRNAが生成されるものであり、かつ機能的なeIF(iso)4Eタンパク質をコードする遺伝子も包含される。さらに、本明細書において、野生型のeIF(iso)4E遺伝子には、配列番号8または配列番号11に示すアミノ酸配列と92%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは99%以上の配列同一性を有する機能的なeIF(iso)4Eタンパク質をコードする遺伝子も包含される。さらに、本明細書において、野生型のeIF(iso)4E遺伝子には、配列番号7または配列番号10に示す塩基配列において1〜50個、1〜40個、1〜30個、1〜20個、1〜15個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、1〜5個、1〜3個、1〜2個、または1個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加された塩基配列に対応するmRNAが生成されるものであり、かつ機能的なeIF(iso)4Eタンパク質をコードする遺伝子も包含される。さらに、本明細書において、野生型のeIF(iso)4E遺伝子には、配列番号8または配列番号11に示すアミノ酸配列において1〜20個、1〜15個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、または1個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有する機能的なeIF(iso)4Eタンパク質をコードする遺伝子も包含される。

0060

例えば本明細書において、変異を生じる前の野生型のeIF(iso)4E−T遺伝子には、cDNA配列がGenBankアクセッション番号FN666434の配列となる遺伝子も包含される。この配列はタバコ品種SamsunNN由来のeIF(iso)4E−T遺伝子に由来する配列であり、タバコ品種K326由来のeIF(iso)4E−TのcDNA配列EB683576との配列同一性は97%である。これら2つの遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列の同一性は97%、類似性は99%である。

0061

上述したNicotiana属植物のeIF(iso)4E遺伝子のcDNA配列は、配列番号7または配列番号10に示す塩基配列と90%以上の配列同一性を有すると考えられる。実際、配列番号7に示す塩基配列はN. sylvestrisのeIF(iso)4E遺伝子のcDNA配列と100%の配列同一性を示す(イントロンは除く)。配列番号10に示す塩基配列はN. tomentosiformisのeIF(iso)4EのcDNA配列と99%の配列同一性を示す(イントロンは除く)。配列番号7に示す塩基配列および配列番号10に示す塩基配列はN. otophoraのeIF(iso)4Eのゲノム配列におけるイントロンを除く部分とそれぞれ98%および99%の配列同一性を示す。

0062

上述した野生種のeIF(iso)4E遺伝子の塩基配列は、配列番号7または配列番号10に示す塩基配列を用いて、GenBankに登録されているN. sylvestris、N. tomentosiformis、またはN. otophoraのゲノム(Whole genome shotgun contigs)をBLASTプログラム等によって相同性検索することによって得られる。あるいは、Nicotiana属植物に由来する植物種のeIF(iso)4E遺伝子の塩基配列は、例えば本明細書に示されたeIF(iso)4E遺伝子の塩基配列に基づき設計されたプライマー配列を用いて、当該植物種のゲノムDNAから、PCR法によってeIF(iso)4E遺伝子を増幅し、塩基配列を決定することによって得ることができる。相同性検索としてはBLASTプログラムを用いてもよいし、市販の核酸・アミノ酸配列解析ソフトを用いてもよい。

0063

また、配列番号7または配列番号10に示す塩基配列をプローブとして用いて、タバコ野生種のゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーから、ストリンジェントな条件でハイブリダイゼーション実験を行うことによって、タバコ野生種のeIF(iso)4E遺伝子の塩基配列を取得することが可能である。

0064

(ウイルス抵抗性タバコの第一の態様)
ウイルス抵抗性タバコの一態様では、翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子に変異を有していることにより、ウイルスに対して非機能的な翻訳開始因子eIF(iso)4Eタンパク質を生産するか、または翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子の発現が抑制されている。

0065

または、翻訳開始因子eIF4E2遺伝子に変異を有していることにより、ウイルスに対して非機能的な翻訳開始因子eIF4E2タンパク質を生産するか、または翻訳開始因子eIF4E2遺伝子の発現が抑制されている。

0066

または、翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子および翻訳開始因子eIF4E2遺伝子の両方に変異を有している。

0067

本発明に係るウイルス抵抗性タバコがeIF(iso)4E遺伝子のコード領域に変異を有している場合、eIF(iso)4Eタンパク質のアミノ酸配列の変異を引き起こし得る。同様に、本発明に係るウイルス抵抗性タバコがeIF4E2遺伝子のコード領域に変異を有している場合、eIF4E2タンパク質のアミノ酸配列の変異を引き起こし得る。アミノ酸配列の変異としては、置換、欠失および挿入等が挙げられる。変異がアミノ酸の置換である場合、置換されるアミノ酸および置換後のアミノ酸は、対象遺伝子のタンパク質をウイルスに対して非機能的なものにする限り特に限定されないが、例えば、非保存的置換(non-conservative substitutions)であることが好ましい。非保存的置換としては、アミノ酸を電荷または疎水性が異なる別のアミノ酸に置換すること(塩基性アミノ酸から酸性アミノ酸への置換、または極性アミノ酸から非極性アミノ酸への置換等)、および、あるアミノ酸を側鎖のかさが異なる別のアミノ酸に置換することが挙げられる。これらのうちウイルスに対して非機能的なものとする変異が本発明の意図する範囲内のものである。ウイルスに対して非機能的であるか否かはウイルスアッセイによって確認することができる。また、コード領域に変異を有している場合、フレームシフト変異またはナンセンス変異ストップコドンになる変異)であってもよい。ナンセンス変異の場合、nonsense-mediatedmRNAdecay(文献:Brogna and Wen 2009, Nat. Structural Mol. Biol. 16: 107-113)が生じ、転写物が分解されることがある。この場合、ナンセンス変異の位置は、第1エキソン、第2エキソン、および/または第3エキソンにあることが好ましく、第1エキソンおよび/または第2エキソンにあることがより好ましい。フレームシフト変異またはナンセンス変異の場合、当該変異の位置は遺伝子の5’末端側半分程度より5’末端側であることが好ましい。具体的には第1エキソン、第2エキソン、および/または第3エキソンに変異があることが好ましい。5’末端に近いほど、タンパク質における正常な部分が短くなるため、ウイルスに対して非機能的になる可能性が高くなる。

0068

本発明に係るウイルス抵抗性タバコが非コード領域に変異を有している場合、コードされるeIF(iso)4Eタンパク質およびeIF4E2タンパク質のアミノ酸配列に影響を及ぼさないが、DNAもしくはmRNAの二次構造を変更させる、転写もしくは翻訳機構のための結合部位を変更させる、またはtRNA結合効率を減少させ得る。それによって、転写レベルを減少させたり、翻訳レベルを減少させたりし得る。

0069

あるいは、対象とする遺伝子の翻訳開始コドンATGのGがAに変異した場合、正しい翻訳開始が行われず、正しい目的タンパク質が翻訳されない。さらに、5’末端側の非コード領域に変異を有している場合において、その変異によって正しいフレームとは異なるフレームにATG(開始コドン)が生じる場合、その誤ったフレームから翻訳が開始される可能性がある。このような場合においても正常な目的タンパク質は生産されない。例えば変異原が後述のエチルメタンスルホン酸EMS)の場合において、GTGのGがAに変異した場合またはACGのCがTに変異した場合、新たなATGが生じる。この場合においてフレームがずれた場合、正しい目的タンパク質が翻訳されない。

0070

各遺伝子のイントロンの5’末端のGTのG、あるいは3’末端のAGのGが、Aに変異した場合、正しい位置でイントロンが除去されず、正しいタンパク質が翻訳されない。

0071

eIF(iso)4E遺伝子またはeIF4E2遺伝子の転写が抑制されている場合、eIF(iso)4E遺伝子またはeIF4E2遺伝子の転写物の量は、野生型と比較して、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。また、eIF(iso)4E遺伝子またはeIF4E2遺伝子の翻訳が抑制されている場合、eIF(iso)4E遺伝子またはeIF4E2遺伝子の翻訳産物の量は、野生型と比較して、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。

0072

また、eIF(iso)4E遺伝子の変異によって、eIF(iso)4E遺伝子におけるRNAのスプライシングが正常に機能しない場合もあり得る。あるいは、eIF4E2遺伝子の変異によって、eIF4E2遺伝子におけるRNAのスプライシングが正常に機能しない場合もあり得る。例えば、イントロンの5’末端側のGTを含む前後10塩基、好ましくは5塩基、より好ましくは1塩基、またはイントロンの3’末端側のAGを含む前後10塩基、好ましくは5塩基、より好ましくは1塩基に、変異が生じている場合、イントロンの切り出しがうまくいかず、異常なmRNAが生じて、ウイルスに対して非機能的なeIF(iso)4Eタンパク質もしくはeIF4E2タンパク質を生産するか、またはeIF(iso)4E遺伝子もしくはeIF4E2遺伝子の翻訳が抑制され得る。

0073

対象遺伝子に変異を生じさせる方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。

0074

変異原としては、例えば、エチルメタンスルホン酸(EMS)、アジ化ナトリウムエチジウムブロマイド、および亜硝酸等の化学薬剤を用いることができるが、タバコのゲノムDNAに変異を生じさせる化学薬剤であればこれらに限定されない。また、変異原として、例えば、γ線重イオンビームX線中性子線、またはUV等が挙げられるが、タバコのゲノムDNAに変異を生じさせる放射線等であればこれらに限定されない。変異原として好ましくはEMSである。

0075

変異原処理されるタバコの組織または器官としては、種子、根、葉、および花等が挙げられ、植物体を再生できれば特にその種類は限定されないが、好ましくは種子である。変異誘発集団に関して、変異誘発性の化学薬剤または放射線の用量は、致死性または生殖不稔性に至る閾値レベルよりも低い変異頻度が得られるように、それぞれのタイプの植物組織に関して経験的に決定される。

0076

また、変異原としてトランスポゾン可動性遺伝因子)を用いることもできる。トランスポゾンがタバコゲノム上で転移し、対象遺伝子の機能を抑制することができる。このようなトランスポゾンの好ましい例として、タバコのレトロトランスポゾンtnt1が挙げられる。あるいは、他の植物のトランスポゾンをタバコに導入して使用することもできる。そのようなトランスポゾンとして、例えば、トウモロコシのトランスポゾンAc/Ds、Spm/dSpm、およびMu、イネのトランスポゾンnDart、ならびにキンギョソウのトランスポゾンtam等が挙げられるが、これらに限定されない。

0077

さらに、アグロバクテリウムTiプラスミドの中にあるT−DNAをタバコにat randomに挿入して、eIF(iso)4E遺伝子またはeIF4E2遺伝子の機能を抑制することも可能である。したがって、T−DNAを挿入したタバコ変異体集団(パネル)を作製し、その中からeIF(iso)4E遺伝子またはeIF4E2遺伝子の塩基配列を指標に、その機能が抑制された個体を選抜することが可能である。

0078

対象とする遺伝子にホモに変異を有するウイルス抵抗性タバコの作出方法の一例では、上述のようにタバコを変異原で処理し、タバコゲノム全体に変異を生じさせたタバコ変異体集団(パネル)を作製し、ゲノムDNAを抽出する。遺伝子特異的プライマーを利用して、パネルのゲノムDNAそれぞれから、またはそれらをプールしたものから、対象とする遺伝子を増幅し、その産物の塩基配列を決定し、変異の入った系統を選抜する。変異の種類は、好ましくはアミノ酸変異を伴う変異またはナンセンス変異であり、より好ましくはナンセンス変異である。選抜された系統の種子をまいて育成した植物からDNAを抽出し、対象とする遺伝子についてホモ接合変異の入った個体を選抜する。このようにして得られた、目的遺伝子にホモ接合変異が生じている系統について、ウイルスアッセイを行って抵抗性を確認する。この際、定量PCR等を用いて目的遺伝子の発現解析を行い、転写量が低減したことを確認してもよい。

0079

したがって、ウイルス抵抗性タバコ作出方法の一態様において、タバコゲノム全体に変異を生じさせたタバコ変異体集団(パネル)を作製する工程、ゲノムDNAを抽出する工程、対象遺伝子の塩基配列を決定する工程、ホモ接合変異の入った系統を選抜する工程、およびウイルスアッセイを行って抵抗性を確認する工程のうちの少なくとも1つの工程を含んでいてもよい。

0080

さらに、対象遺伝子以外のDNAの箇所に入った変異を取り除く目的で、変異処理をした系統を、変異処理をしていない系統と任意のタイミングで掛け合わせてもよい。

0081

タバコ変異体からのゲノムDNAの抽出は、公知の方法に基づいて行えばよく、市販の抽出キットを用いてもよい。また、ゲノムDNAは、粗精製物であってもよいし、いくつかの精製工程を経た精製品であってもよい。

0082

ポリヌクレオチドの増幅は、例えばPCR法によって行うことができるが、他の公知の遺伝子増幅方法、例えば、LCR(ligase chain reaction)法またはLAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法等によって行ってもよい。

0083

各ポリヌクレオチドを増幅するためのプライマー配列は、例えば、次のようにして設計できる。eIF(iso)4E−S遺伝子の塩基配列とeIF(iso)4E−T遺伝子の塩基配列との相同性解析結果から、S型特異的な領域およびT型特異的な領域を見つけ、その領域にプライマーを設計すればよい。当該プライマーを用いることにより、S型およびT型が混在するタバコゲノムから、S型およびT型の遺伝子をそれぞれ特異的に増幅することができる。eIF4E2遺伝子についても同様である。設計する部位としては、S型またはT型特異的な領域から選択することができるが、好ましくはイントロン、5’非翻訳領域または3’非翻訳領域である。プライマーの長さは、好ましくは15塩基〜30塩基、特に好ましくは17塩基〜25塩基である。また、変異箇所を含む所定塩基数の配列を増幅するためのプライマーとして機能し得る限り、その配列において1またはそれ以上の置換、欠失、および/または付加を含んでいてもよい。また、プライマーは必要に応じて蛍光物質または放射性物質等で標識されていてもよい。

0084

増幅する各ポリヌクレオチドの長さは、後述する各種検出方法利用可能な長さであれば特に限定されないが、例えば、20塩基〜5000塩基、より好ましくは50塩基〜2000塩基、さらに好ましくは100塩基〜700塩基、よりさらに好ましくは100塩基〜500塩基である。

0085

以下、変異を検出する方法として代表的なものを挙げるが、これらに限定されない。
(1)市販のシーケンサー等を利用し、各ポリヌクレオチドの塩基配列を直接読み取ることによって変異の有無を検出する方法。
(2)SSCP(Single Strand Conformation Polymorphism:一本鎖高次構造多型)法を用いて変異の有無を検出する方法。

0086

上記方法によって変異の検出されたタバコ変異体から、対象の遺伝子に特異的なプライマーを利用して、増幅された(PCR)産物の塩基配列を確認することで、変異が、ホモ接合変異かヘテロ接合変異かが判明し得る。

0087

EMS処理の場合、多くのDNAの変異はC→TおよびG→Aである。そのため、EMS処理によって変異するとストップコドンになる(すなわち、ナンセンス変異の候補になる)コドンは、CAA(最初のCがTに置換)、CGA(最初のCがTに置換)、TGG(2つ目のG、または3つ目のGがAに置換)、およびCAG(最初のCがTに置換)の4種類である。

0088

例えば、配列番号3に示すeIF4E2−S遺伝子のゲノム配列の場合、(1)389番目のGがAに置換、(2)390番目のGがAに置換、(3)398番目のGがAに置換、(4)399番目のGがAに置換、(5)427番目のCがTに置換、(6)437番目のGがAに置換、(7)438番目のGがAに置換、(8)488番目のGがAに置換、(9)489番目のGがAに置換、(10)3114番目のGがAに置換、(11)3115番目のGがAに置換、(12)3147番目のGがAに置換、(13)3148番目のGがAに置換、(14)3186番目のGがAに置換、(15)3187番目のGがAに置換、(16)3330番目のCがTに置換、(17)3375番目のCがTに置換、(18)3403番目のGがAに置換、(19)3404番目のGがAに置換、(20)3432番目のCがTに置換、(21)5121番目のCがTに置換、(22)5125番目のGがAに置換、(23)5126番目のGがAに置換されれば、終止コドン(TAA、TAG、またはTGA)となる。そのため、ウイルス抵抗性タバコの好ましい一例では、変異は、配列番号3に示すeIF4E2−S遺伝子のゲノム配列における上記(1)〜(23)に示す1つ以上の変異である。これらのうち好ましくは、(1)〜(22)の何れかに変異が起きる場合、より好ましくは、(1)〜(20)の何れかに変異が起きる場合である。

0089

また、配列番号6に示すeIF4E2−T遺伝子のゲノム配列の場合、(1)1913番目のGがAに置換、(2)1914番目のGがAに置換、(3)1922番目のGがAに置換、(4)1923番目のGがAに置換、(5)1948番目のCがTに置換、(6)1958番目のGがAに置換、(7)1959番目のGがAに置換、(8)2009番目のGがAに置換、(9)2010番目のGがAに置換、(10)4722番目のGがAに置換、(11)4723番目のGがAに置換、(12)4755番目のGがAに置換、(13)4756番目のGがAに置換、(14)4794番目のGがAに置換、(15)4795番目のGがAに置換、(16)4936番目のCがTに置換、(17)4981番目のCがTに置換、(18)5009番目のGがAに置換、(19)5010番目のGがAに置換、(20)5038番目のCがTに置換、(21)6942番目のCがTに置換、(22)6946番目のGがAに置換、(23)6947番目のGがAに置換されれば、終止コドン(TAA、TAG、またはTGA)となる。そのため、ウイルス抵抗性タバコの好ましい一例では、変異は、配列番号6に示すeIF4E2−T遺伝子のゲノム配列における上記(1)〜(23)に示す1つ以上の変異である。これらのうち好ましくは、(1)〜(22)の何れかに変異が起きる場合、より好ましくは、(1)〜(20)の何れかに変異が起きる場合である。

0090

また、配列番号9に示すeIF(iso)4E−S遺伝子のゲノム配列の場合、(1)270番目のCがTに置換、(2)295番目のGがAに置換、(3)296番目のGがAに置換、(4)304番目のGがAに置換、(5)305番目のGがAに置換、(6)315番目のCがTに置換、(7)330番目のCがTに置換、(8)343番目のGがAに置換、(9)344番目のGがAに置換、(10)357番目のCがTに置換、(11)394番目のGがAに置換、(12)395番目のGがAに置換、(13)1740番目のCがTに置換、(14)1813番目のGがAに置換、(15)1814番目のGがAに置換、(16)1846番目のGがAに置換、(17)1847番目のGがAに置換、(18)1888番目のGがAに置換、(19)1889番目のGがAに置換、(20)2050番目のCがTに置換、(21)2104番目のCがTに置換、(22)2123番目のGがAに置換、(23)2124番目のGがAに置換、(24)2152番目のCがTに置換、(25)4742番目のGがAに置換、(26)4743番目のGがAに置換、または(27)4926番目のCがTに置換されれば、終止コドン(TAA、TAG、またはTGA)となる。そのため、ウイルス抵抗性タバコの好ましい一例では、変異は、配列番号9に示すeIF(iso)4E−S遺伝子のゲノム配列における上記(1)〜(27)に示す1つ以上の変異である。これらのうち好ましくは、(1)〜(26)の何れかに変異が起きる場合、より好ましくは、(1)〜(24)の何れかに変異が起きる場合である。

0091

また、配列番号12に示すeIF(iso)4E−T遺伝子のゲノム配列の場合、(1)264番目のCがTに置換、(2)289番目のGがAに置換、(3)290番目のGがAに置換、(4)298番目のGがAに置換、(5)299番目のGがAに置換、(6)315番目のCがTに置換、(7)328番目のGがAに置換、(8)329番目のGがAに置換、(9)342番目のCがTに置換、(10)379番目のGがAに置換、(11)380番目のGがAに置換、(12)1630番目のCがTに置換、(13)1703番目のGがAに置換、(14)1704番目のGがAに置換、(15)1736番目のGがAに置換、(16)1737番目のGがAに置換、(17)1778番目のGがAに置換、(18)1779番目のGがAに置換、(19)1940番目のCがTに置換、(20)1994番目のCがTに置換、(21)2013番目のGがAに置換、(22)2014番目のGがAに置換、(23)2042番目のCがTに置換、(24)3224番目のGがAに置換、(25)3225番目のGがAに置換、または(26)3406番目のCがTに置換されれば、終止コドン(TAA、TAG、またはTGA)となる。そのため、ウイルス抵抗性タバコの好ましい一例では、変異は、配列番号12に示すeIF(iso)4E−T遺伝子のゲノム配列における上記(1)〜(26)に示す1つ以上の変異である。これらのうち好ましくは、(1)〜(25)の何れかに変異が起きる場合、より好ましくは、(1)〜(23)の何れかに変異が起きる場合である。

0092

あるいは、変異は、(a)配列番号2または配列番号5に示すアミノ酸配列からなるeIF4E2タンパク質をコードする野生型のeIF4E2遺伝子のエキソン、(b)配列番号2または配列番号5に示すアミノ酸配列と88%以上の配列同一性を有する機能的なeIF4E2タンパク質をコードする野生型のeIF4E2遺伝子のエキソン、(c)配列番号8または配列番号11に示すアミノ酸配列からなるeIF(iso)4Eタンパク質をコードする野生型のeIF(iso)4E遺伝子のエキソン、または(d)配列番号8または配列番号11に示すアミノ酸配列と92%以上の配列同一性を有する機能的なeIF(iso)4Eタンパク質をコードする野生型のeIF(iso)4E遺伝子のエキソンにおけるものであってもよく、また、これらエキソンにおける下記(1)〜(4)に示す1つ以上の変異であってもよい;(1)コドンCAAのCがTに置換、(2)コドンCGAのCがTに置換、(3)コドンCAGのCがTに置換、(4)コドンTGGのG(2つのGのうちの何れか一方または両方)がAに置換。

0093

対象とする遺伝子に変異を生じさせる別の手段として、遺伝子編集技術を用いることもできる。遺伝子編集技術とは、ゲノムの任意の領域に変異を導入する技術である。このような技術としては、例えば、TALEN(Transcription activator-like effector nuclease)、CRISPR(Clustered regularly interspaced short palindromic repeat)/CAS、ODM(Oligonucleotide Directed Mutagenesis)、およびZFN(Zinc Finger Nuclease)等が挙げられる。

0094

ODMおよびZFNの定義は、文献:Lusser et al. (2012) Nature Biotechnology 30: 231-239に記載されている。また、ODMについては、例えば、文献:Zhu et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 8768-8773、および文献:Oh and May (2001) Current Opinion in Biotechnology 12:169-172.に植物への適用が記載されている。ZFNについては、文献:Durai et al. (2005) Nucleic AcidsRes 33: 5978-5990に植物への適用が記載されている。これらに記載された方法に従えば、対象とする遺伝子に変異を導入することが可能である。

0095

TALENについては次のとおりである。植物病原菌由来のDNA結合タンパクTranscription activator-like (TAL) effectorは、34アミノ酸が繰り返された構造部分を有し、この繰り返し構造の1つ1つがそれぞれDNAの1つの塩基を認識する。DNAには4種の塩基(A、T、G、C)があるが、TAL effectorの繰り返し構造の13番目および14番目の2つのアミノ酸によって、DNA配列の結合特異性が決定される。すなわち、各繰り返し構造の13〜14番目のアミノ酸を選択することによって、人工的にTAL effectorを所望のDNA領域に結合させることができる。このTAL effectorに、二量体のときDNA切断活性を示す酵素FokIと融合させたものをTAL effector nuclease(TALEN)という。このTALENを2つ近傍に結合させるように設計すると、FokIが二量体を形成し、2つのTALENの間のDNAを切断する。切断が起こった後、DNAの修復が行われるが、その際、切断部位が多少削れたり、新たに付加が入ったりすることがある。TALENは植物でも機能することが分っている(文献:Zhang et al. (2013) Plant Physiology 161: 20-27)。

0096

例えば、好ましくはタンパク質コード領域において、対象とする遺伝子に特異的な、好ましくは15塩基〜25塩基、より好ましくは18塩基〜22塩基のヌクレオチド配列を設計する。さらにそこから好ましくは9塩基〜15塩基離れた場所に同様にヌクレオチド配列を設計する。これら2つのヌクレオチドに挟まれた部分が後に切断されることになる。

0097

設計したヌクレオチド配列が対象とする遺伝子特異的か否かを判断するために、設計したヌクレオチド配列を、例えばN. tabacumまたはN. sylvestrisもしくはN. tomentosiformisの公知の配列データベースに対して相同性検索することによって、配列そのものの他に、その配列を含め相同性の高い領域があるか否かを調べてもよい。配列データベースとしては、例えば、GenBank、EMBL(The European Molecular Biology Loboratory)、またはDDBJ(DNA Data Bank of Japan)等を利用することができる。配列分析アルゴリズムとしては、例えば、BLAST等を利用することができる。また、データベースの配列の種類としては、Nucleotide Collection(nr/nt)、Expressed Sequence Tags(EST)、Genomic survey sequences(GSS)、およびWhole genome shotgun contigs(WGS)等があるが、これらに限定されない。

0098

設計した特異的ヌクレオチド配列を基に、TALEの遺伝子配列を設計する。複数の繰り返し構造の結合には、例えば、GoldenGateTALEN Kit(Addgene社)を用いることができるが、これに限定されない。TALEとFokIとを融合させる際には、例えば、適当なリンカー配列を配置してもよい。なお、FokI配列は公知データベースに収載されている。TALE/FokI融合遺伝子をタバコで発現させるためのプロモーターは高発現するものが好ましく、カリフラワーモザイクウイルス35S RNA遺伝子のプロモーター、アクチン遺伝子のプロモーター、およびユビキチン遺伝子のプロモーター等の構成的発現プロモーター;Rubisco small subunit遺伝子のプロモーター、PPD遺伝子プロモーター等の緑色組織特異的プロモーター;ならびにその他の器官または時期特異的プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。発現量を上げるために所望のイントロンをプロモーターとTALE/FokIとの間に配置してもよい。さらに発現量を上げるために、TALE/FokIのコドンを植物(タバコ)のコドンに最適化してもよい。植物コドンは、例えばCodon Usage Database(http://www.kazusa.or.jp/codon/)等の公知のデータベースに記載されている。

0099

TALEN発現カセットを植物に導入するためのベクターには、上記の他に、その発現カセットが導入された植物細胞を選抜するための薬剤耐性遺伝子選抜マーカー)の発現カセットが組み込まれていてもよい。薬剤耐性遺伝子としては、タバコ細胞を選抜可能な薬剤耐性遺伝子であればよく、例えばカナマイシン抵抗性遺伝子(ネオマイシンフォスフォトランスフェラーゼ:NPT−II)、およびハイグロマイシン抵抗性遺伝子(ハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼ:HPT)等が挙げられるが、これらに限定されない。またプロモーターは構成的発現をするものであれば特に限定されない。

0100

さらに、TALEN発現カセットを安定的に植物に導入する際にアグロバクテリウムを利用する場合は、TALEN発現カセットおよび選抜マーカー発現カセットがT−DNAに存在することが必要である。この場合、T−DNAの境界配列としてライトボーダー(RB)配列およびレフトボーダー(LB)配列がT−DNAの両端に配置される。

0101

TALEN発現カセットを植物に導入するためのベクターであって、タバコに遺伝子を導入できるものとしては、例えば、pBI系、pSB系(文献:Komari et al. 2006 Methodsin Mol. Biol. 343: 15-41.)、pLC系(文献:米国特許第8298819号明細書)、およびpGreen(文献:Hellens et al. 2000 Plant Mol. Biol. 42: 819-832.)等が挙げられるがこれらに限定されない。

0102

TALEN発現カセットを植物に導入する方法は特に限定されず、上述のアグロバクテリウムを使用する方法、パーティクルガン法、PEG法、エレクトロポレーション法、またはアグロインフィルトレーション法等、当業者が通常使用する方法を用いればよい。また、導入されるタバコの組織または器官としては、植物体を再生できれば特にその種類は限定されず、例えば、種子、根、葉、および花等が挙げられる。

0103

形質転換植物の選抜および育成は、当業者であれば容易に実施することが可能である。選抜に用いる薬剤としては、これらに限定されるわけではないが、カナマイシン、およびハイグロマイシン等が挙げられる。薬剤の濃度は、例えば20mg/mL〜200mg/mLとすることができ、好ましくは50mg/mL〜100mg/mLである。植物培養物の育成用の培地は通常用いられるものでよく、無機塩の種類としてMSおよびLS等が挙げられ、これに例えば、ショ糖寒天、または植物ホルモン等を添加する。これらの使用濃度は、当業者が通常用いるプロトコールに従えばよい。

0104

遺伝子導入を行う組織または器官として、上述に加えて、プロトプラストを使用ことができる。プロトプラストは細胞壁分解酵素を用いて常法に従い調製することができる。また、遺伝子導入法として、上述の安定形転換法に加えて、トランジェント法を用いることも可能である。トランジェントアッセイは、エレクトロポレーション法、またはPEG法等の常法を用いて実施すればよい。また別のトランジェントアッセイ法として、Agro-infiltration、およびウイルスベクター等が挙げられる。ウイルスベクターとしては、ALSV(Apple latent spherical virus)またはTRV(Tobacco rattle virus)等を用いることができるが、これらに限定されない。

0105

遺伝子を導入した細胞から再生した個体、または組織もしくは器官において、対象とする遺伝子に変異が生じたか否かは、標的とした領域を挟む形で、プライマーを設計し、所望の植物組織からDNAを抽出し、PCR等によって当該領域を増幅し、その産物の塩基配列を調べることによって確認することができる。

0106

遺伝子発現を解析する方法は、特に限定されず、ノーザンハイブリダイゼーション法または定量PCR法等の公知の方法で行えばよい。ハイブリダイゼーションに使用するプローブは、対象遺伝子のcDNAの塩基配列もしくはその一部、またはこれらに1もしくは複数の塩基の置換、欠失もしくは挿入がある塩基配列とすることができ、プローブの長さは例えば20塩基〜配列全長とすることができる。

0107

上記発現解析を行うためのRNAの抽出は、グアニジン塩酸法またはSDS−フェノール法等、公知の方法で行えばよく、市販のキットを用いてもよい。また、総RNAからさらにmRNA(polyA+RNA)を精製してもよい。

0108

定量PCRを実施するためのcDNAの合成は、逆転写酵素オリゴdTプライマーまたは遺伝子特異的プライマーとを用いた公知の方法で行うことができ、市販のキットを用いてもよい。

0109

また、定量PCRのためのプライマーは、対象遺伝子のcDNAの塩基配列に基づき設計することができる。プライマーの長さとしては好ましくは15塩基〜30塩基、特に好ましくは17塩基〜25塩基である。一組のプライマーセットが標的とする増幅配列の長さは、特に限定されず、例えば40塩基〜配列全長とすることができ、好ましくは50塩基〜500塩基である。

0110

蛍光PCR装置を用いた定量PCRを実施する際には、上記プライマーに加え、標的配列の中にプローブ配列を設定する。標的配列の長さは、好ましくは40塩基〜200塩基、さらに好ましくは50塩基〜150塩基である。プライマーおよびプローブを標識するレポーター色素としてFAM、HEX、TET、およびCyanine5が挙げられ、クエンチャー色素としてTAMRA、およびBHQ1等が挙げられるが、これらに限定されず、当業者が適宜選択して組合せることができる。定量PCRの内部標準として用いる遺伝子は、構成的発現遺伝子であれば特に限定されないが、好ましい遺伝子として、elongation factor遺伝子およびアクチン遺伝子等が挙げられる。

0111

CRISPR/CASについては次のとおりである。CRISPR/CASシステムは、DNA配列を認識するガイドRNAと、CASヌクレアーゼを使用する遺伝子編集技術であり、植物においても機能することが知られている(文献:Belhaj et al. (2013) Plant Methods9:39)。この技術は、ゲノム上の所望の配列を有するDNAを切断する技術であり、標的ゲノム配列の欠失、付加および挿入に関しては、TALENと同様に、宿主のDNA修復系のミスに頼るものである。

0112

CAS9を植物で発現させるためのプロモーターとしては、高発現するものが好ましく、例えば、上述の35S RNA遺伝子のプロモーター、ユビキチン遺伝子のプロモーター、およびPPDK遺伝子プロモーター等が挙げられるが、これらに限定されない。発現量を上げるために所望のイントロンをプロモーターとCAS9との間に配置してもよい。なお、CAS9の塩基配列は公知である。さらに発現量を上げるために、CAS9のコドンを植物(タバコ)のコドンに最適化してもよい。また、CAS9に核局在シグナルNLS(Nuclear localize Signal)を付加してもよい。

0113

所望のゲノム配列および相補的なガイドRNAを設計する。例えば、好ましくはタンパク質コード領域において、対象となる遺伝子に特異的な、好ましくは19塩基〜22塩基のヌクレオチド配列を決定する。この際、その配列の3’末端側にはprotospacer-adjacent motif(PAM)と呼ばれるNGG配列が存在する必要がある。また、後述のプロモーターの種類がU6の場合、転写開始点(ガイドRNAの5’末端)はG、U3プロモーターの場合はAであることが必要である。

0114

ガイドRNAの配列が対象とする遺伝子特異的か否かを判断するために、設計した配列を、例えばN. tabacumまたはN. sylvestrisもしくはN. tomentosiformisの配列データベースに対して相同性検索し、配列そのものの他に、その配列を含め相同性の高い領域があるか否かを調べることができる。配列データベースおよび分析アルゴリズムについては、上述と同様である。

0115

ガイドRNAを設計後、その3’末端側にsgRNA scaffold配列を融合、sgRNA(ガイド(g)RNA+gRNA scaffold)とし、このsgRNAを発現するためのコンストラクトを作製する。その際、プロモーターとして、RNAポリメラーゼIIIのU6またはU3等のプロモーターが使用できる。適当なベクターを用いて完成したコンストラクトをタバコに導入し、組換え体を選抜、再生する。なお、より確実に変異を生じさせるために、対象遺伝子内部に複数のガイドRNAを設計し、それらを発現するコンストラクトを同時にタバコに導入することもできる。この場合は、1つのT−DNA上に複数のガイドRNA発現カセットおよびCAS9発現カセットを同時に配置させてもよい。

0116

なお、ガイドRNAおよびCAS9を発現させるカセットを植物に導入するためのベクター、ならびにタバコ形質転換の方法は、上述のTALENにおける説明と同様である。

0117

遺伝子導入を行う組織または器官として、上述に加えて、プロトプラストを使用することができる。プロトプラストは細胞壁分解酵素を用いて常法に従い調製することができる。また、遺伝子導入法として、上述の安定形質転換法に加えトランジェント法を用いることも可能である。トランジェントアッセイについては、上述のTALENにおける説明と同様である。

0118

遺伝子を導入した細胞から再生した個体、または組織もしくは器官において、対象遺伝子に変異が生じたか否かは、上述のTALENにおける説明と同様の方法で確認することできる。

0119

ウイルスアッセイ方法としては、ウイルス溶液カーボランダム等の固形粉体とを組み合わせた機械接種法、および、ウイルスを保毒させたアブラムシを用いる虫媒接種法等が挙げられるが、これらに限定されない。また、用いるウイルスは、特に限定されず、ウイルス抵抗性タバコが抵抗性を示すウイルスとして上記に列挙したウイルスを用いることができる。

0120

eIF(iso)4E遺伝子およびeIF4E2遺伝子の両方に変異を有するウイルス抵抗性タバコの作出方法は特に制限されず、eIF(iso)4E遺伝子に変異を有するウイルス抵抗性タバコとeIF4E2遺伝子に変異を有するウイルス抵抗性タバコとの交配を利用した方法、eIF(iso)4E遺伝子に変異を有するウイルス抵抗性タバコに対して、eIF4E2遺伝子に変異を導入する方法、eIF(iso)4E遺伝子に変異を有するウイルス抵抗性タバコに対して、eIF4E2遺伝子の発現量を低下させる因子を導入する方法、eIF4E2遺伝子に変異を有するウイルス抵抗性タバコに対して、eIF(iso)4E遺伝子に変異を導入する方法、およびeIF4E2遺伝子に変異を有するウイルス抵抗性タバコに対して、eIF(iso)4E遺伝子の発現量を低下させる因子を導入する方法等が挙げられる。

0121

また、S型のeIF(iso)4E遺伝子、T型のeIF(iso)4E遺伝子、またはその両方の遺伝子の機能が抑制されたタバコ変異体としては、特許文献5に記載された変異体を用いることができる。

0122

なお、本実施形態において「ウイルス抵抗性タバコ」には、上記のようにして作出および選抜された当代のタバコだけでなく、その子孫(後代)のタバコも包含される。

0123

(ウイルス抵抗性タバコの第二の態様)
ウイルス抵抗性タバコの一態様では、翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子の発現量を野生型と比較して少なくさせる因子がタバコに導入されていることにより、翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子の発現が抑制されている。

0124

または、翻訳開始因子eIF4E2遺伝子の発現量を野生型と比較して少なくさせる因子がタバコに導入されていることにより、翻訳開始因子eIF4E2遺伝子の発現が抑制されている。

0125

または、翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子の発現量を野生型と比較して少なくさせる因子および翻訳開始因子eIF4E2遺伝子の発現量を野生型と比較して少なくさせる因子の両方が導入されている。

0126

対象遺伝子の発現量を野生型と比較して少なくさせる方法としては、従来公知の方法が利用可能であり、例えば、アンチセンス、コサプレッション、RNA干渉(RNAi)、microRNA、VIGS(Virus induced gene silencing)、リボザイム相同組換え、およびドミナントネガティブ遺伝子産物の発現等を利用した方法が挙げられる。

0127

「発現量を野生型と比較して少なくさせる」とは、野生型と比較して少なくなる限り制限はないが、野生型の発現量を100%とした場合に、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下まで減少していることを意図している。ここで、「野生型」とは、対象とする遺伝子の発現を抑制させる因子が導入されておらず、かつ、対象とする遺伝子に変異を有していないタバコを指す。

0128

なお、本実施形態において、「ウイルス抵抗性タバコ」には、上記の因子等を導入した当代のタバコだけでなく、その子孫(後代)のタバコも包含される。

0129

対象遺伝子の発現を抑制する方法として好ましくは、RNAiである。具体的には、対象となる遺伝子(eIF(iso)4E遺伝子またはeIF4E2遺伝子)の塩基配列またはその一部をトリガーとして用いたRNAiコンストラクトを作製し、植物で発現するプロモーターと接続し、ベクターを用いてこれをタバコに導入する。そして、RNAiコンストラクトを発現させて、対象遺伝子の発現を抑制させたウイルス抵抗性タバコを得る。したがって、一態様におけるウイルス抵抗性タバコは、対象遺伝子の発現を抑制するためのRNAiコンストラクトを保持し得る。

0130

トリガーの長さは、例えば21塩基〜配列全長とすることができるが、好ましくは50塩基以上、より好ましくは100塩基以上である。トリガー配列には、1または複数の塩基の置換、欠失または挿入があってもよい。

0131

トリガーの配列として、S型の遺伝子とT型の遺伝子とで配列の同一性が高い部分を用いることにより、一種類のRNAiコンストラクトにより、S型の遺伝子およびT型の遺伝子の両方の遺伝子の発現を抑制することが可能である。すなわち、例えば、eIF(iso)4E−S遺伝子の配列をトリガーとしたRNAiコンストラクトを導入した場合に、当該トリガーの配列がeIF(iso)4E−T遺伝子の配列と配列の同一性が高ければ、eIF(iso)4E−S遺伝子の発現のみならず、eIF(iso)4E−T遺伝子の発現も抑制することができる。eIF4E2遺伝子についても同様である。

0132

RNAiでは、トリガー配列を1つがセンス方向、もう1つがアンチセンス方向となるように機能的に連結させて、トリガー配列が逆位反復となる様なRNAiコンストラクトを作製する。その際、両トリガーの間にスペーサー配列を入れることが好ましい。そのようなスペーサー配列としては、タバコのゲノムに含まれない配列、またはイントロン配列等の成熟mRNAに含まれない領域が好ましい。このような配列としては、例えば、βグルクロニダーゼ(GUS)遺伝子ならびにpyruvate dehydrogenase kinase(pdk)およびカタラーゼ(cat)遺伝子等のイントロン配列が挙げられるが、これらに限定されない。

0133

RNAiコンストラクトを植物の中で転写させるためのプロモーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルス35S RNA遺伝子のプロモーター、アクチン遺伝子のプロモーター、およびユビキチン遺伝子のプロモーター等の構成的発現プロモーター;Rubisco small subunit遺伝子のプロモーター、およびPPDK遺伝子プロモーター等の緑色組織特異的プロモーター;ならびにその他の器官または時期特異的プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。上記プロモーターとして好ましくは、ウイルスの感染する組織で発現するプロモーターである。

0134

また、ターミネーターとしては、カリフラワーモザイクウイルス35S RNAまたは19S RNA遺伝子のターミネーター、およびノパリンシンターゼ遺伝子のターミネーター等が挙げられるが、植物で機能するものであれば、これらに限定されない。

0135

RNAi発現カセットを植物に導入するためのベクターには、上記の他に、その発現カセットが導入された植物細胞を選抜するための薬剤耐性遺伝子の発現カセットが組み込まれていてもよい。薬剤耐性遺伝子としては、タバコ細胞を選抜可能な薬剤の耐性遺伝子であればよく、例えばカナマイシン抵抗性遺伝子(ネオマイシンフォスフォトランスフェラーゼ:NPT−II)、およびハイグロマイシン抵抗性遺伝子(ハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼ:HPT)等が挙げられるが、これらに限定されない。またプロモーターも構成的発現をするものであれば特に限定されない。

0136

さらに、RNAi発現カセットを安定的に植物に導入する際にアグロバクテリウムを利用する場合は、RNAi発現カセットおよび選抜マーカー発現カセットが、T−DNAに存在することが必要である。この場合、T−DNAの境界配列として、ライトボーダー(RB)配列およびレフトボーダー(LB)配列がT−DNAの両端にそれぞれ配置される。

0137

また、遺伝子発現を視覚的に予測するために、蛍光タンパク質の発現カセットをT−DNAの中に配置してもよい。蛍光タンパク質としては、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)および黄色蛍光タンパク質(YFP)等が挙げられるが、これらに限定されない。蛍光タンパク質として好ましくは、GFPである。蛍光はイメージアナライザーで観察することができる。

0138

RNAi発現カセットを植物に導入するためのベクターであって、タバコに遺伝子を導入できるものとしては、例えば、pBI系、pSB系(文献:Komari et al. 2006 Methodsin Mol. Biol. 343: 15-41.)、pLC系(文献:米国特許第8298819号明細書)、pGreen(文献:Hellens et al. 2000 Plant Mol. Biol. 42: 819-832.)、pHellsgate(文献:Wesley et al. 2001 Plant J 27: 581-590.)、およびpSP231(文献:国際公開第2011/102394号公報)等が挙げられるが、これらに限定されない。

0139

RNAi発現カセットを植物に導入する方法は特に限定されず、上述のアグロバクテリウムを使用する方法、パーティクルガン法、PEG法、エレクトロポレーション法、またはアグロインフィルトレーション法等、当業者が通常使用する方法を用いればよい。また、導入されるタバコの組織または器官としては、植物体を再生できれば特にその種類は限定されず、例えば、種子、根、葉、および花等が挙げられる。

0140

形質転換植物の選抜および育成は、当業者であれば容易に実施することが可能である。選抜に用いる薬剤としては、これらに限定されるわけではないが、カナマイシン、およびハイグロマイシン等が挙げられる。薬剤の濃度は、例えば20mg/mL〜200mg/mLとすることができ、好ましくは50mg/mL〜100mg/mLである。植物培養物の育成用の培地は通常用いられるものでよく、無機塩の種類としてMSおよびLS等が挙げられ、これに例えば、ショ糖、寒天、または植物ホルモン等を添加する。これらの使用濃度は、当業者が通常用いるプロトコールに従えばよい。

0141

遺伝子発現を解析する方法およびウイルスアッセイ方法については、上述のとおりである。

0142

なお、ウイルス抵抗性タバコが、上述の第一の態様と上述の第二の態様との組み合わせでもよいことは、当業者であれば容易に理解できる。すなわち、対象となる遺伝子のうちの何れかにおいては、変異を有していることにより、ウイルスに対して非機能的なタンパク質を生産するか、または遺伝子の発現が抑制されており、他の対象遺伝子については、対象遺伝子の発現量を野生型と比較して少なくさせる因子がタバコに導入されていることにより、対象遺伝子の発現が抑制されているような態様であってもよい。

0143

また、対象となる遺伝子のうちのいずれかの遺伝子の機能が欠失していると考えられるタバコ品種、系統または在来種を利用して上述の第一の態様または上述の第二の態様と組み合わせるものであってもよい。そのようなタバコ品種、系統または在来種の例としては、例えば、S型のeIF4E2遺伝子の機能が欠失していると考えられるタバコ品種、系統、在来種として、非限定的に、Virgin A Mutant、Perevi、SCR、Bursana、Kerti、Havana 211、遠州、縄1、TN86、TN90、TN97、K326PVY、NC291、およびNC745等が挙げられる。また、非特許文献Yamamoto, Y. (1992) Studies on Breeding of Tobacco VarietiesResistant to Veinal Necrosis Disease by Potato Virus Y Strain T. Bulletin of the Leaf Tobacco Research Laboratory, 1-87.に記載のタバコ植物であって、S型のeIF4E2遺伝子自体が欠失、あるいは同遺伝子内部に塩基の欠失、塩基の置換または塩基の挿入があるタバコが挙げられる。なおここでいう遺伝子とはタンパク質をコードする領域の他、プロモーター、イントロンまたはターミネーターをも含む。遺伝子自体の欠失、遺伝子内部の欠失、置換または挿入の有無は、対象としている遺伝子の塩基配列を基に、例えば遺伝子全長または一部分を増幅するようなプライマーを設計し、調査対象のタバコのDNAを鋳型にPCRを行うことにより判別することが可能である。例えば、産物が増幅されなければ遺伝子自体が欠失していると判別でき、産物が増幅された場合には、その塩基配列を解読することによって、容易に塩基の欠失、置換または挿入の有無を判別することが可能である。

0144

葉たばこ生産において、複数のウイルスに同時に抵抗性となるような遺伝資源は極めて重要であるが、これまで、PVY、PVY−BおよびTBTV全てに抵抗性であるタバコは知られていなかった。本実施形態におけるウイルス抵抗性タバコの一態様では、PVY、PVY−BおよびTBTV全てに抵抗性を有するウイルス抵抗性タバコを提供できる。

0145

〔2.ウイルス抵抗性タバコの育種後代の作出方法〕
本発明はまた、ウイルス抵抗性タバコの育種後代の作出方法を提供する。

0146

当該方法の一態様では、上述のウイルス抵抗性タバコ作出方法において作出されたウイルス抵抗性タバコまたはその後代を、自家受粉または他家受粉させる。ここで受粉は自然状態で行われてもよいし、人為的に行われてもよい。一実施形態において、当該後代は、上述のウイルス抵抗性タバコ作出方法において作出された当代のウイルス抵抗性タバコを自家受粉または他家受粉させる、あるいはそのようにして得られた後代からさらに繰り返し自家受粉または他家受粉させて得ることができる。

0147

他家受粉において上述のウイルス抵抗性タバコまたはその後代と掛け合わせるのは、各遺伝子に同じ変異を有しているウイルス抵抗性タバコであってもよいし、各遺伝子に異なる変異を有しているウイルス抵抗性タバコであってもよいし、各遺伝子に変異を有していないタバコであってもよいし、各遺伝子に変異を有しているがウイルス抵抗性ではないタバコであってもよい。

0148

当該方法の一態様では、雑種世代(F1、F2、・・・)、変異体の自殖世代(M1、M2、・・・)、戻し交配(BC1、BC2、・・・)世代等の育種後代のタバコが得られうる。なお、これらのタバコは雄性不稔(MS)形質を有していてもよい。

0149

本発明はまた、上述のウイルス抵抗性タバコ作出方法において作出されたウイルス抵抗性タバコまたはその後代を自家受粉または他家受粉させる、ウイルス抵抗性タバコ育種方法を提供する。当該方法の一態様として、例えば、これに限定されるわけではないが、上述のウイルス抵抗性タバコ作出方法において作出された、eIF(iso)4E遺伝子およびeIF4E2遺伝子上に変異が生じたウイルス抵抗性タバコ個体を得た後、タバコ品種あるいはタバコ系統と交配し、雑種第一代F1を作出する。ここに当該品種あるいは系統をさらに戻し交配し、BC1F1を作出する。当該変異を有する個体を選抜しながら、当該品種あるいは系統との交配(戻し交配)をさらに繰り返し、BCXF1(Xは例えば3〜8)を作出する。その後、当該BCXF1を自殖し、BCXF2世代において、当該変異をホモで有する個体を選抜し、遺伝的背景を固定するためにさらに自殖を繰り返し(BCXF3、BCXF4、・・・)、新しいウイルス抵抗性タバコを育種する。なお、各世代における個体の選抜は後述のDNAマーカーを利用してもよい。

0150

〔3.DNAマーカーおよびその利用〕
本発明では、eIF4E2遺伝子(eIF4E2−S遺伝子またはeIF4E2−T遺伝子)上に生じた変異を利用してDNAマーカーを開発することができ、それをマーカー育種に活用することができる。「DNAマーカー」とは、品種間または個体間におけるDNAの塩基配列の違い(変異または多型)、またはその違いを検出するためのツールであり、品種または個体を識別するための目印となる塩基配列の違い(変異または多型)、またはその違いを検出するためのツールのことを指す。eIF4E2遺伝子における変異が確定し、その変異によってウイルスに抵抗性となることが確認された場合、その変異が生じたタバコ変異体を、当該ウイルス抵抗性の育種母本として利用することができる。その際、既に抵抗性に係る原因変異が分っているため、原因変異の識別に利用可能なマーカーをeIF4E2遺伝子上に設計することができる。当該変異とウイルス抵抗性との関係が遺伝的分離によって切れることがないため、精密なマーカー育種が可能となる。この変異の有無を検出すれば、交配等を繰り返した際に、一回一回ウイルス抵抗性を確認する必要がない。

0151

また、eIF4E2遺伝子に関するDNAマーカーは、eIF(iso)4E遺伝子に関する同様のDNAマーカーとともに利用されてもよい。両遺伝子のマーカーを組み合わせて利用することにより、育種における時間および労力を削減することができる。

0152

タバコからのゲノムDNAの抽出は、常法に基づけばよく、市販の抽出キットを用いてもよいが、特に限定されない。また、ゲノムDNAは、粗精製物であってもよいし、いくつかの精製工程を経た精製品であってもよい。変異の有無を検出する技術としては、例えばRFLPまたは一本鎖DNAをプローブに用いた核酸(「ポリヌクレオチド」ともいう)のハイブリダイゼーションを応用した技術、およびPCR等のようにポリヌクレオチドの増幅を伴う技術等があるが、変異を検出できるものであれば、特に限定されない。

0153

ポリヌクレオチドを増幅する場合、例えばPCR法によって行うことができるが、他の公知の遺伝子増幅方法、例えば、LCR法、SDA(Strand Displacement Amplification)法、またはLAMP法等によって行ってもよい。増幅する各ポリヌクレオチドの長さは、後述する各種検出方法が利用可能な長さであれば特に限定されないが、例えば、40塩基〜5000塩基であることが好ましく、100塩基〜1000塩基であることがより好ましく、100塩基〜700塩基であることがさらに好ましく、100塩基〜500塩基であることがよりさらに好ましい。

0154

各ポリヌクレオチドを増幅するためのプライマー配列は、変異箇所を挟むか、もしくは含むように設計することが好ましいが、プライマー配列を設計する位置は特に限定されない。変異箇所を挟むようにプライマー配列を設計する場合、例えば、eIF4E2遺伝子内に位置するように設計してもよい。プライマーの長さは、好ましくは15塩基〜30塩基、特に好ましくは17塩基〜25塩基である。また、変異箇所を含む所定塩基数の配列を増幅するためのプライマーとして機能し得る限り、その配列において1またはそれ以上の置換、欠失、および/または付加を含んでいてもよい。また、プライマーは必要に応じて蛍光物質または放射性物質等で標識されていてもよい。

0155

検出される変異は、ウイルスに対して非機能的なeIF4E2タンパク質を生産させるか、またはeIF4E2遺伝子の発現を抑制する変異である。その具体例は、〔1.ウイルス抵抗性タバコ〕欄に記載のとおりである。

0156

以下、変異を検出する方法として代表的なものを挙げるが、こられに限定されない。

0157

(1)市販のシーケンサー等を利用し、増幅したポリヌクレオチドの塩基配列を直接読み取ることによって変異の有無を検出する方法。

0158

(2)SSCP(Single Strand Conformation Polymorphism)法を用いて、増幅したポリヌクレオチド上の変異の有無を検出する方法。

0159

(3)増幅したポリヌクレオチドに対して、変異箇所の配列(変異前の配列または変異後の配列)を特異的に認識する制限酵素による処理後に、切断の有無により判定する方法(CAPS(Cleaved Amplified Polymorphic Sequence)法)。その他、意図的に設計したミスマッチプライマーを含むプライマーセットによって制限酵素認識部位を作製するdCAPS(derived CAPS)法を用いてもよい。なお、当業者であれば多大な労力を要することなく、プライマー配列を設計し、PCRを行い、所望の変異を検出することが可能である。例えば、プライマー配列の設計はウェブを介して行うことができる(文献:Neff et al. (2002) Web-based primer design for single nucleotide polymorphism analysis. TRENDS in Genetics 18: 613-615)。

0160

なお、プライマーの3’末端付近にミスマッチを入れた場合、proofreading活性を持つDNAポリメラーゼを使用してPCRを行うと、ミスマッチが修正され、制限酵素で切断されなくなる可能性がある。したがって、dCAPS法において、ミスマッチプライマーを用いる場合、proofreading活性を持たないDNAポリメラーゼが好ましい。限定されるわけではないが、そのようなDNAポリメラーゼとしてTaKaRa TaqTM(タカラバイオ社)が挙げられる。またプライマーの3’末端付近に制限酵素切断部位を入れた場合、切断の有無は、プライマーの長さ分の違いとして検出される。

0161

(4)変異部分に特異的にハイブリダイズするプローブを設計し、ハイブリダイズさせることで変異の有無を確認する方法。

0162

解析手法は、特に限定はされないが、例えば、TaqMan(登録商標)プローブ法を用いたPCR、またはTOF−MSを利用した測定技術であるMassARRAY(登録商標)解析等を用いることができる。

0163

(5)変異箇所の配列(変異前の配列および/または変異後の配列)を一部に含ませてプライマー配列を設計し、PCR法等によって増幅させることにより、増幅の有無によって変異の有無を検出する方法(アリル特異的PCR法)。コントロールとして、例えば変異前の塩基配列に特異的な塩基配列からなる核酸プライマーを用いることができる。

0164

なお、プライマーの3’末端付近に目的変異の塩基を入れる場合、その位置は、末端、もしくは末端から数塩基の間が好ましい。また、プライマーの3’末端付近に目的の変異を入れた場合においても、変異型の配列に加え、変異のない野生型の配列も併せて増幅することがある。このような場合、目的のミスマッチ以外のミスマッチを、変異型検出用プライマーと野生型検出用プライマーとで同じ位置に導入して、PCRを行い、変異型または野生型特異的な増幅を得てもよい。

0165

また、必要に応じて、目的とする遺伝子用のプライマーの他に、PCRの内部標準となる遺伝子用のプライマーを、PCR反応液に加えてもよい。

0166

なお、上記に例示した変異以外の変異を検出する場合においても、当業者であれば多大な労力を要することなく、プライマー配列を設計し、PCRを行い、所望の変異を検出することが可能である。

0167

なお、遺伝子変異の検出技術は、以下の文献に詳細に記載されている:日本特許のウェブサイト。また、遺伝子変異の検出および解析手法は、以下の文献に詳細に記載されている:日本特許庁のウェブサイト。あるいは、文献:Agarwal et al. (2008) Advances in molecular marker techniques and their applications in plant sciences. Plant Cell Rep. 27:617-631.、Neff et al. (1998) dCAPS, a simple technique for the genetic analysis ofsingle nucleotide polymorphisms: experimental applications in Arabidopsis thaliana genetics. Plant J. 14: 387-392.を参照してもよい。

0168

したがって、本発明は、eIF4E2遺伝子における変異を検出するためポリヌクレオチドを提供する。当該変異は、ウイルスに対して非機能的なeIF4E2タンパク質を生産させるか、またはeIF4E2遺伝子の発現を抑制する変異である。その具体例は、〔1.ウイルス抵抗性タバコ〕欄に記載のとおりである。

0169

また、上記検出用ポリヌクレオチドの一形態は、核酸プライマーまたは核酸プライマーのセットである。核酸プライマーのセットは、上記変異を挟む核酸プライマーのセットであってもよいし、上記変異を含む連続した塩基配列またはその相補配列からなるポリヌクレオチドを含む核酸プライマーのセットであってもよい。上記検出用ポリヌクレオチドの別の一形態は、上記変異を含む連続した塩基配列またはその相補配列にハイブリダイズする核酸プローブである。

0170

また、eIF4E2遺伝子に関する上述の検出用ポリヌクレオチドは、eIF(iso)4E遺伝子に関する同様の検出用ポリヌクレオチドと組み合わせて用いることができる。eIF4E2遺伝子に関する検出用ポリヌクレオチドと、eIF(iso)4E遺伝子に関する検出用ポリヌクレオチドとを組み合わせて用いることにより、両遺伝子の変異の検出を同時に行うことができ、育種における時間および労力を削減することができる。なお、eIF(iso)4E遺伝子に関する検出用ポリヌクレオチドとしては、特許文献5に記載の検出用ポリヌクレオチドを用いればよい。

0171

なお、組み合わせ物の形態は特に制限されず、予め混合された状態で提供されるものであってもよく、または互いに別々の容器にて提供され、使用者直前に組み合わせて用いるキットの形態であってもよい。

0172

本発明はまた、タバコのゲノムDNAにおいて、eIF(iso)4E遺伝子およびeIF4E2遺伝子に上記変異が生じていることを、ウイルス抵抗性の指標とすることを特徴とする、ウイルスに対するタバコの抵抗性の判定方法を提供する。

0173

本発明はまた、上記判定方法を用いて、ウイルスに対して抵抗性のタバコを選抜する選抜工程を包含することを特徴とする、ウイルス抵抗性タバコの育種方法を提供する。

0174

本発明はまた、タバコにおいて、ゲノムDNAにおける上記変異の有無を、上記検出用ポリヌクレオチドを利用して検査する検査工程と、当該検査工程において上記変異が検出されたタバコをウイルス抵抗性タバコとして選抜する選抜工程とを含むことを特徴とする、ウイルス抵抗性タバコ選抜方法を提供する。検出用ポリヌクレオチドを利用した検査方法の詳細は、上述のとおりである。

0175

本発明はまた、eIF(iso)4E遺伝子における上記変異を含む連続した塩基配列またはその相補配列からなるポリヌクレオチド、およびeIF4E2遺伝子における上記変異を含む連続した塩基配列またはその相補配列からなるポリヌクレオチド、を含むことを特徴とする、ウイルスに対するタバコの抵抗性の判定用DNAマーカーを提供する。

0176

〔4.葉たばこおよびたばこ製品〕
本発明のウイルス抵抗性タバコを栽培して生産される葉たばこは、当該ウイルス(例えば、Virgin A mutantのウイルス抵抗性を打破するPVY系統)が引き起こす病気罹患しない。そのため、特に当該病気が発生する環境下で栽培された場合において、ウイルス抵抗性でないタバコを栽培して生産される葉たばこと比較して、品質低下が軽減され高品質である。その結果、より高品質のたばこ製品を生産することができる。

0177

「葉たばこ」とは、タバコ植物の生葉収穫後乾燥させたもので、たばこ製品の製造のための原料となるものを指す。「たばこ製品」とは、紙巻たばこフィルタ付、フィルタなし)(CIGARETTE)、シガー(CIGAR)、シガリロ(CIGARILLO)、スヌース(SNUS)、嗅ぎタバコ(SNUFF)、チューイングたばこ、および電子タバコ等を指す。

0178

したがって、本発明は、上記ウイルス抵抗性タバコから生産される葉たばこを提供する。また、本発明は、上記ウイルス抵抗性タバコの収穫後の生葉を乾燥させる工程を含む葉たばこの生産方法を提供する。

0179

本発明はまた、上記葉たばこを原料として含むたばこ製品を提供する。

0180

〔5.まとめ〕
以上のように、本発明に係るウイルス抵抗性タバコの一態様は、ウイルスに対して非機能的な翻訳開始因子eIF(iso)4Eタンパク質を生産するか、または翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子の発現が抑制されており、さらに、ウイルスに対して非機能的な翻訳開始因子eIF4E2タンパク質を生産するか、または翻訳開始因子eIF4E2遺伝子の発現が抑制されており、上記翻訳開始因子eIF(iso)4Eは、eIF(iso)4E−SおよびeIF(iso)4E−Tの少なくとも一方であり、上記翻訳開始因子eIF4E2は、eIF4E2−SおよびeIF4E2−Tの少なくとも一方である。

0181

また、本発明に係るウイルス抵抗性タバコの一態様では、上記翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子に変異を有しており、それによって、ウイルスに対して非機能的な上記翻訳開始因子eIF(iso)4Eタンパク質を生産するか、または上記翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子の発現が抑制されていてもよい。

0182

また、本発明に係るウイルス抵抗性タバコの一態様では、上記翻訳開始因子eIF4E2遺伝子に変異を有しており、それによって、ウイルスに対して非機能的な上記翻訳開始因子eIF4E2タンパク質を生産するか、または上記翻訳開始因子eIF4E2遺伝子の発現が抑制されていてもよい。

0183

また、本発明に係るウイルス抵抗性タバコの一態様では、上記変異はナンセンス変異であることが好ましい。

0184

また、本発明に係るウイルス抵抗性タバコの一態様では、上記翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子における上記変異は、
(a1)配列番号8に示すアミノ酸配列からなる翻訳開始因子eIF(iso)4E−Sタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF(iso)4E−S遺伝子のエキソン、もしくは
(a2)配列番号8に示すアミノ酸配列と92%以上の配列同一性を有する機能的な翻訳開始因子eIF(iso)4E−Sタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF(iso)4E−S遺伝子のエキソン、
におけるナンセンス変異である、eIF(iso)4E−S遺伝子における変異;または
(b1)配列番号11に示すアミノ酸配列からなる翻訳開始因子eIF(iso)4E−Tタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF(iso)4E−T遺伝子のエキソン、もしくは
(b2)配列番号11に示すアミノ酸配列と92%以上の配列同一性を有する機能的な翻訳開始因子eIF(iso)4E−Tタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF(iso)4E−T遺伝子のエキソン、
におけるナンセンス変異である、eIF(iso)4E−T遺伝子における変異;または
eIF(iso)4E−S遺伝子における上記変異およびeIF(iso)4E−T遺伝子における上記変異の両方;
であってもよい。

0185

また、本発明に係るウイルス抵抗性タバコの一態様では、翻訳開始因子eIF4E2遺伝子における上記変異は、
(c1)配列番号2に示すアミノ酸配列からなる翻訳開始因子eIF4E2−Sタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF4E2−S遺伝子のエキソン、もしくは
(c2)配列番号2に示すアミノ酸配列と88%以上の配列同一性を有する機能的な翻訳開始因子eIF4E2−Sタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF4E2−S遺伝子のエキソン、
におけるナンセンス変異である、eIF4E2−S遺伝子における変異;または
(d1)配列番号5に示すアミノ酸配列からなる翻訳開始因子eIF4E2−Tタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF4E2−T遺伝子のエキソン、もしくは
(d2)配列番号5に示すアミノ酸配列と88%以上の配列同一性を有する機能的な翻訳開始因子eIF4E2−Tタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF4E2−T遺伝子のエキソン、
におけるナンセンス変異である、eIF4E2−T遺伝子における変異;または
eIF4E2−S遺伝子における上記変異およびeIF4E2−T遺伝子における上記変異の両方;
であってもよい。

0186

また、本発明に係るウイルス抵抗性タバコの一態様では、上記ナンセンス変異が、下記(1)〜(4)に示す1つ以上の変異であることが好ましい:(1)コドンCAAのCがTに置換、(2)コドンCGAのCがTに置換、(3)コドンCAGのCがTに置換、(4)コドンTGGのG(2つのGのうちの何れか一方または両方)がAに置換。

0187

また、本発明に係るウイルス抵抗性タバコの一態様では、翻訳開始因子eIF4E2遺伝子における上記変異は、eIF4E2−S遺伝子における変異を含むことが好ましい。

0188

また、本発明に係るウイルス抵抗性タバコの一態様では、翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子における上記変異は、eIF(iso)4E−T遺伝子における変異を含むことが好ましい。

0189

また、本発明に係るウイルス抵抗性タバコの一態様では、上記ウイルスは、Potyvirus属のウイルスであってもよい。

0190

また、本発明に係るウイルス抵抗性タバコの一態様では、上記Potyvirus属のウイルスは、Potato virus Yの一系統であって、タバコのVirgin A mutantのウイルス抵抗性を打破する系統、およびPotato virus Yの少なくとも一方であってもよい。

0191

また、本発明に係るウイルス抵抗性タバコの一態様では、さらにUmbravirus属のウイルスに対して抵抗性を有していてもよい。

0192

また、本発明に係るウイルス抵抗性タバコの一態様では、上記Umbravirus属のウイルスは、Tobacco bushy top virusであってもよい。

0193

本発明に係るウイルス抵抗性タバコ作出方法の一態様は、ウイルスに対して非機能的な翻訳開始因子eIF(iso)4Eタンパク質を生産するか、またはeIF(iso)4E遺伝子の発現を抑制する変異をeIF(iso)4E遺伝子に導入すること、および
ウイルスに対して非機能的な翻訳開始因子eIF4E2タンパク質を生産するか、またはeIF4E2遺伝子の発現を抑制する変異をeIF4E2遺伝子に導入することによって、ウイルスに対して抵抗性を有するタバコを作出することを含み、
上記翻訳開始因子eIF(iso)4Eは、eIF(iso)4E−SおよびeIF(iso)4E−Tの少なくとも一方であり、
上記翻訳開始因子eIF4E2は、eIF4E2−SおよびeIF4E2−Tの少なくとも一方である。

0194

また、本発明に係るウイルス抵抗性タバコ作出方法の一態様では、上記変異はナンセンス変異であってもよい。

0195

また、本発明に係るウイルス抵抗性タバコ作出方法の一態様では、エチルメタンスルホン酸によって上記変異を生じさせるものであってもよい。

0196

また、本発明に係るウイルス抵抗性タバコ作出方法の一態様では、上記翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子における変異は、
(a1)配列番号8に示すアミノ酸配列からなる翻訳開始因子eIF(iso)4E−Sタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF(iso)4E−S遺伝子のエキソン、もしくは
(a2)配列番号8に示すアミノ酸配列と92%以上の配列同一性を有する機能的な翻訳開始因子eIF(iso)4E−Sタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF(iso)4E−S遺伝子のエキソン、
におけるナンセンス変異である、eIF(iso)4E−S遺伝子における変異;または
(b1)配列番号11に示すアミノ酸配列からなる翻訳開始因子eIF(iso)4E−Tタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF(iso)4E−T遺伝子のエキソン、もしくは
(b2)配列番号11に示すアミノ酸配列と92%以上の配列同一性を有する機能的な翻訳開始因子eIF(iso)4E−Tタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF(iso)4E−T遺伝子のエキソン、
におけるナンセンス変異である、eIF(iso)4E−T遺伝子における変異;または
eIF(iso)4E−S遺伝子における上記変異およびeIF(iso)4E−T遺伝子における上記変異の両方;
であってもよい。

0197

また、本発明に係るウイルス抵抗性タバコ作出方法の一態様では、上記翻訳開始因子eIF4E2遺伝子における変異は、
(c1)配列番号2に示すアミノ酸配列からなる翻訳開始因子eIF4E2−Sタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF4E2−S遺伝子のエキソン、もしくは
(c2)配列番号2に示すアミノ酸配列と88%以上の配列同一性を有する機能的な翻訳開始因子eIF4E2−Sタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF4E2−S遺伝子のエキソン、
におけるナンセンス変異である、eIF4E2−S遺伝子における変異;または
(d1)配列番号5に示すアミノ酸配列からなる翻訳開始因子eIF4E2−Tタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF4E2−T遺伝子のエキソン、もしくは
(d2)配列番号5に示すアミノ酸配列と88%以上の配列同一性を有する機能的な翻訳開始因子eIF4E2−Tタンパク質をコードする野生型の翻訳開始因子eIF4E2−T遺伝子のエキソン、
におけるナンセンス変異である、eIF4E2−T遺伝子における変異;または
eIF4E2−S遺伝子における上記変異およびeIF4E2−T遺伝子における上記変異の両方;
であってもよい。

0198

また、本発明に係るウイルス抵抗性タバコ作出方法の一態様では、上記ナンセンス変異が、下記(1)〜(4)に示す1つ以上の変異であってもよい:(1)コドンCAAのCがTに置換、(2)コドンCGAのCがTに置換、(3)コドンCAGのCがTに置換、(4)コドンTGGのG(2つのGのうちの何れか一方または両方)がAに置換。

0199

本発明に係るウイルス抵抗性タバコ作出方法の別の一態様は、翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子の発現量を野生型と比較して少なくさせる因子を導入すること、および
翻訳開始因子eIF4E2遺伝子の発現量を野生型と比較して少なくさせる因子を導入することによって、ウイルスに対して抵抗性を有するタバコを作出することを含み、
上記翻訳開始因子eIF(iso)4Eは、eIF(iso)4E−SおよびeIF(iso)4E−Tの少なくとも一方であり、
上記翻訳開始因子eIF4E2は、eIF4E2−SおよびeIF4E2−Tの少なくとも一方である。

0200

また、本発明に係るウイルス抵抗性タバコ作出方法の一態様では、上記ウイルスは、Potyvirus属のウイルスであってもよい。

0201

また、本発明に係るウイルス抵抗性タバコ作出方法の一態様では、上記Potyvirus属のウイルスは、Potato virus Yの一系統であって、タバコのVirgin A mutantのウイルス抵抗性を打破する系統、およびPotato virus Yの少なくとも一方であってもよい。

0202

本発明に係るウイルス抵抗性タバコの育種後代の作出方法の一態様は、上述のウイルス抵抗性タバコ作出方法において作出されたウイルス抵抗性タバコまたはその後代を自家受粉または他家受粉させるものである。

0203

本発明に係る検出用ポリヌクレオチドの組み合わせ物の一態様は、タバコの翻訳開始因子eIF4E2遺伝子における変異を検出するためのポリヌクレオチドであって、当該変異は、ウイルスに対して非機能的なeIF4E2タンパク質を生産するか、またはeIF4E2遺伝子の発現を抑制する変異である、第一の検出用ポリヌクレオチドと、タバコの翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子における変異を検出するためのポリヌクレオチドであって、当該変異は、ウイルスに対して非機能的なeIF(iso)4Eタンパク質を生産するか、またはeIF(iso)4E遺伝子の発現を抑制する変異である、第二の検出用ポリヌクレオチドと、を含む。

0204

本発明に係るウイルス抵抗性タバコ選抜方法の一態様は、タバコにおいて、ゲノムDNAにおける上記変異の有無を、上述の検出用ポリヌクレオチドの組み合わせ物を利用して検査する検査工程と、上記検査工程において上記変異が検出されたタバコをウイルス抵抗性タバコとして選抜する選抜工程とを含む。

0205

本発明に係る判定用DNAマーカーの組み合わせ物の一態様は、翻訳開始因子eIF4E2遺伝子における変異を含む連続した塩基配列またはその相補配列からなるポリヌクレオチドを含んでおり、当該変異は、ウイルスに対して非機能的なeIF4E2タンパク質を生産するか、またはeIF4E2遺伝子の発現を抑制する変異である、第一の判定用DNAマーカーと、
翻訳開始因子eIF(iso)4E遺伝子における変異を含む連続した塩基配列またはその相補配列からなるポリヌクレオチドを含んでおり、当該変異は、ウイルスに対して非機能的なeIF(iso)4Eタンパク質を生産するか、またはeIF(iso)4E遺伝子の発現を抑制する変異である、第二の判定用DNAマーカーと、を含む、ウイルスに対するタバコの抵抗性の判定用DNAマーカーである。

0206

本発明に係る葉たばこの一態様は、上記ウイルス抵抗性タバコの葉たばこである。

0207

本発明に係るたばこ製品の一態様は、上記葉たばこを原料として含むものである。

0208

以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。

0209

〔実施例1〕
(遺伝子配列の取得)
[eIF4E2遺伝子]
GenBankデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed)で検索を行い、タバコ(N. tabacum)の翻訳開始因子として、GenBankアクセッション番号がEB451717であるeIF4EのmRNA塩基配列、KF155696であるeIF4EのmRNA塩基配列、およびKM202068であるeIF4EのmRNA塩基配列を取得した。これらeIF4EをeIF4E2と命名した。これらとeIF4E1(アクセッション番号:AY702653、非特許文献19)との相同性は70%から74%であった。GenBankデータベースのN. tomentosiformisおよびN. sylvestrisのWGS(Whole-genome shotgun contigs)を用いたBLAST解析から、アクセッション番号がEB451717のeIF4E2およびKF155696のeIF4E2はN. sylvestris由来であり、KM202068のeIF4E2はN. tomentosiformis由来であることを確認した。EB451717(タンパク質コード領域の配列は第87番目から746番目の塩基)とKF155696(タンパク質コード領域の配列は第112番目から771番目の塩基)とのタンパク質コード領域におけるDNA配列の同一性は99.8%(660塩基中659塩基の一致)であり、コードされるタンパク質のアミノ酸配列の同一性は100%であった。DNA配列における一塩基の違いは、それぞれのDNAの由来となる品種の違いによるものと考えられる。これらの配列をそれぞれ、eIF4E2−S(GenBankアクセッション番号:EB451717、KF155696)およびeIF4E2−T(GenBankアクセッション番号:KM202068)と命名した。eIF4E2−S遺伝子の機能を破壊したタバコは、PVYに抵抗性になることが示されている(非特許文献22)。

0210

eIF4E2−S(KF155696)の塩基配列を配列番号1に示し、コードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号2に示し、さらにeIF4E2−S遺伝子のゲノム配列を配列番号3に示した。ゲノム配列は品種K326由来の配列で、アクセション番号AWOJ01222271の第7001番目の塩基から第13000番目の塩基からなる。また、eIF4E2−Tの塩基配列を配列番号4に示し、コードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号5に示し、さらにeIF4E2−T遺伝子のゲノム配列を配列番号6に示した。配列番号6は、KM202068の配列をクエリに、GenBankデータベースのN. tabacumのWGSに対してBLAST解析を行うことによって取得した。具体的には、アクセッション番号AWOJ01182781(品種K326由来のゲノムDNA配列)の相補配列のうち30001番目から38039番目の配列である。このゲノム配列におけるエキソン配列とKM202068のタンパク質コード領域のDNA配列との同一性は99.2%(657塩基中652塩基が一致)であった。KM202068は系統T021658由来であり、AWOJ01182781は品種K326由来であるので、この約1%の違い(657塩基中5塩基の違い)はタバコ系統/品種間の差異によるものと考えられた。eIF4E2−S遺伝子とeIF4E2−T遺伝子のタンパク質コード領域におけるDNAの配列同一性は93.2%(657塩基中612塩基が一致)であった。またアミノ酸配列の同一性は87.7%(219アミノ酸中192アミノ酸が一致)、類似性は97.3%(219アミノ酸中213アミノ酸が一致または類似)であった。配列同一性等の解析には、核酸・アミノ酸配列解析ソフトGENETYX(登録商標)(ver.12)(ゼネティックス社)を用いた。

0211

[eIF(iso)4E遺伝子]
GeneBankデータベースで検索を行い、アクセッション番号がAY699609であるタバコ(N. tabacum)の翻訳開始因子eIF(iso)4EのmRNA塩基配列を取得し、配列番号7に示した。またこの遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号8に示した。GenBankデータベースのWGSを用いたBLAST解析から、このeIF(iso)4Eは、N. sylvestris由来であることが判明したので、この遺伝子をeIF(iso)4E−Sと命名した。この配列をクエリにして、GenBankデータベースのN. tabacumのWGSコンティグを検索した結果、タンパク質コード領域において100%の配列同一性を示す、タバコ品種K326由来のゲノム配列が取得された(アクセッション番号はAWOJ01412288)。この配列のうち、eIF(iso)4E−S遺伝子部分の配列(eIF(iso)4E−S遺伝子のゲノム配列)を、配列番号9に示した。

0212

また、N. tomentosiformis由来のゲノムにコードされているN. tabacumのeIF(iso)4E−Tとして、GenBankアクセッション番号がEB683576(配列番号10に示した)、およびFN666434の2つを同定した。前者はタバコ品種K326由来のeIF(iso)4E−T遺伝子の配列、後者はタバコ品種SamsunNN由来のeIF(iso)4E−T遺伝子の配列であり、両者の配列同一性は97%であった。これら2つの遺伝子のコードするタンパク質のアミノ酸配列の同一性は97%、類似性は99%であった。この配列の違いは由来する品種間の差異によるものと考えられた。また、eIF(iso)4E−S(AY699609)とeIF(iso)4E−T(EB683576)とのDNAの配列同一性は91%であった。さらに、eIF(iso)4E−Sのアミノ酸配列(配列番号8)とeIF(iso)4E−Tのアミノ酸配列(配列番号11)との同一性は91%、類似性は96%であった。eIF(iso)4E−T(EB683576)のmRNA配列を用いて、GenBankデータベースのN. tabacumのWGSコンティグを検索した結果、タンパク質コード領域において100%の配列同一性を示す、タバコ品種K326由来のゲノム配列が取得された(アクセッション番号はAWOJ01054542)。この配列のうち、eIF(iso)4E−T遺伝子部分の配列(eIF(iso)4E−T遺伝子のゲノム配列)を、配列番号12に示した。

0213

(RNAiコンストラクトの構築
eIF4E2ならびにeIF(iso)4Eの発現抑制タバコを作出するため、これら遺伝子の内部配列をトリガーとするRNAiコンストラクトを構築した。

0214

eIF4E2のトリガー配列(EB451717由来の339塩基、配列番号13)ならびにeIF(iso)4Eのトリガー配列(AY699609由来の313塩基、配列番号14)を特異的に増幅するプライマーを作製した(表1)。それぞれの遺伝子のFWプライマーの5’末端には後述のクローニングに使用するためのCACC配列が付加されている。なおeIF4E2用のトリガーおよびeIF(iso)4E用のトリガーは共にS型の遺伝子の配列を基に設計したが、これらのトリガー配列はそれぞれの遺伝子のT型に対して90%以上の配列同一性を有しているので、S型の遺伝子およびT型の遺伝子両方の遺伝子の転写物の量を減少させる効果があることと考えた。

0215

0216

MagDEA(登録商標)RNA100(GC)(Precision System Science社)を使用して、タバコ幼苗からRNAを抽出し、精製した。次いで、PrimeScriptTMRTreagent kit(タカラバイオ株式会社)を使用して、精製したRNAからcDNAを合成した。このcDNAを鋳型にして、表1に示す遺伝子特異的プライマーを用いて、eIF4E2およびeIF(iso)4Eの遺伝子断片を増幅した。具体的には、20μLの反応液の中に鋳型DNAを10ng、プライマーを各5pmoles含み、酵素はPrimeSTAR Max DNA Polymerase(タカラバイオ社)を使用し、1サイクル:98℃ 10秒、55℃ 15秒、72℃ 15秒の反応を35回行った。PCR産物(eIF4E2は約320bp、eIF(iso)4Eは約310bp)を、MiniElutePCRPurification kit(Qiagen社)を用いて精製した後、ベクターpENTRTM/D−TOPO(登録商標)(LifeTechnologies社)にクローニングした。インサートの塩基配列を確認した後、Gate
Way(登録商標) LR Clonase(登録商標)II Enzyme mix(Life Technologies社)を用いて、RNAiベクターpSP231(文献:国際公開第2011/102394号公報を参照)にインサートをクローニングした。pSP231は、pHellsgate 12(文献:Wesley et al., 2001, Plant J., 27, 581-590参照)のSacI部位にGFP(Green-fluorescentprotein遺伝子)発現カセットを挿入したベクターであり、トリガー配列の逆位反復配列がpdk/catイントロンを挟む型のRNAi配列を、カリフラワーモザイクウイルス35SRNA遺伝子プロモーターでドライブする形のバイナリーベクターである。pSP231へのクローニング後、RNAiトリガー配列とその向きを確認し、最終的なRNAiコンストラクトとした。

0217

作製したRNAiコンストラクトを、アグロバクテリウムLBA4404株にエレクトロポレーション法により導入した。

0218

(タバコ形質転換)
タバコの形質転換は常法(リーフディスク法)で行った。タバコ品種として、Petit HavanaSR1、およびTN90を用いた。SR1はPVYおよびPVY−B感受性の品種であり、TN90はeIF4E2−S遺伝子が欠失したPVY抵抗性(PVY−B感受性)の品種である。

0219

タバコ子葉四隅カットし、カットされた葉をアグロバクテリウム溶液に10分間浸漬させた。余分な液を拭ってから葉をLS固形培地(3%ショ糖、0.8%寒天を含む)上に置いた。25℃、3日間、暗黒下で培養することで、組換えグロバクリムをタバコに感染させ、各翻訳開始因子のRNAiコンストラクトをSR1に導入した。また翻訳開始因子eIF(iso)4EのRNAiコンストラクトをTN90に導入した。葉切片を、250mg/LのCefotaximeと、植物ホルモンである2−イソペンテニルアデニン(2iP)(10mg/L)およびIAA(0.3mg/L)とを含むLS固形培地上に4日間置いて、アグロバクテリウムを除菌した。組換え体の選抜は、上記の濃度でCefotaximeおよび植物ホルモンを含むLS培地にさらに50mg/Lのカナマイシンを含んだ培地上で行った。選抜された組換え体から再分化したシュート発根培地(1.5%ショ糖、0.3%ゲランガム、ならびに上記濃度のCefotaximeおよびカナマイシンを含むLS固形培地)に置いて発根させた。得られた組換えタバコを温室で育成した。

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