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技術 レーザー加工方法、加工物の製造方法、及びレーザー加工装置

出願人 国立大学法人九州大学
発明者 林照剛黒河周平
出願日 2017年8月10日 (4年6ヶ月経過) 出願番号 2018-534382
公開日 2019年6月20日 (2年7ヶ月経過) 公開番号 WO2018-034237
状態 特許登録済
技術分野 レーザ(2)
主要キーワード パルス間隔τ 巨視的性質 複合パルス 吸光係数α 有限期間 熱的効果 拡張方向 格子温度
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重要な関連分野

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図面 (20)

課題・解決手段

レーザー加工方法は、光吸収コア形成工程(S1)と加工コア形成工程(S3)とを含む。光吸収コア形成工程(S1)は、第1パルス(P1)を含む第1レーザービーム(B1)を被加工物(TA)に照射して、被加工物(TA)に光吸収コア(C1)を形成する。加工コア形成工程(S3)は、第2レーザービーム(B2)を光吸収コア(C1)に照射して、被加工物(TA)に加工コア(C2)を形成する。光吸収コア(C1)は、被加工物(TA)のうち、第1パルス(P1)の照射されていない領域の光吸収率よりも大きな光吸収率を有する領域である。加工コア(C2)は、被加工物(TA)のうち、第2レーザービーム(B2)の照射されていない領域の密度と異なる密度を有する領域である。

概要

背景

近年、フェムト秒レーザーは、様々な微細加工に利用されている。

例えば、非特許文献1は、フェムト秒レーザーを銅の表面に照射して、銅の表面に微細周期構造を形成した例を開示する。例えば、フェムト秒レーザーによって摺動部品に微細周期構造を形成して摩擦を低減できる。また、非特許文献1は、フェムト秒レーザーを金に照射して、金に微細穴開け加工を実行した例を開示する。さらに、非特許文献2は、フェムト秒レーザーを透明材料に照射し、多光子吸収誘引することによって多層構造を形成する例を開示する。

概要

レーザー加工方法は、光吸収コア形成工程(S1)と加工コア形成工程(S3)とを含む。光吸収コア形成工程(S1)は、第1パルス(P1)を含む第1レーザービーム(B1)を被加工物(TA)に照射して、被加工物(TA)に光吸収コア(C1)を形成する。加工コア形成工程(S3)は、第2レーザービーム(B2)を光吸収コア(C1)に照射して、被加工物(TA)に加工コア(C2)を形成する。光吸収コア(C1)は、被加工物(TA)のうち、第1パルス(P1)の照射されていない領域の光吸収率よりも大きな光吸収率を有する領域である。加工コア(C2)は、被加工物(TA)のうち、第2レーザービーム(B2)の照射されていない領域の密度と異なる密度を有する領域である。

目的

本発明の目的は、比較的低い光子エネルギー及び比較的低いフルエンスを有するレーザービームによって被加工物を加工できるレーザー加工方法、加工物の製造方法、及びレーザー加工装置を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

第1パルスを含む第1レーザービーム対象物照射して、前記対象物に光吸収コアを形成する光吸収コア形成工程と、第2レーザービームを前記光吸収コアに照射して、前記対象物である被加工物、又は、前記対象物が接触している被加工物に、加工コアを形成する加工コア形成工程とを含み、前記光吸収コアは、前記対象物のうち、前記第1パルスの照射されていない領域の光吸収率よりも大きな光吸収率を有する領域であり、前記加工コアは、前記被加工物のうち、前記第2レーザービームの照射されていない領域の密度と異なる密度を有する領域であり、前記第1パルスのピークフルエンスは、前記被加工物の被加工閾値よりも小さく、前記第2レーザービームのフルエンスの最大値は、前記被加工閾値よりも小さく、前記被加工閾値は、前記被加工物のうち、前記加工コアが形成されている領域と異なる領域を加工可能なフルエンスの下限値を示す、レーザー加工方法

請求項2

前記第2レーザービームによって前記加工コアを拡張する加工コア拡張工程をさらに含む、請求項1に記載のレーザー加工方法。

請求項3

前記被加工物上に前記対象物が形成されており、前記対象物の光吸収率は、前記被加工物の光吸収率よりも大きく、前記加工コア形成工程では、前記対象物に形成された前記光吸収コアを介して前記被加工物に前記第2レーザービームを照射して、前記被加工物に前記加工コアを形成する、請求項1又は請求項2に記載のレーザー加工方法。

請求項4

前記第2レーザービームは、第2パルスを含み、前記第2パルスの半値全幅は、前記第1パルスの半値全幅より大きく、前記第1パルスと前記第2パルスとが重なるように、前記第1パルス及び前記第2パルスを制御する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーザー加工方法。

請求項5

前記第1レーザービームを生成する第1ビーム生成工程と、前記第2レーザービームを生成する第2ビーム生成工程と、前記第1レーザービームと前記第2レーザービームとを同期させる同期工程とをさらに含み、前記光吸収コア形成工程では、前記対象物である前記被加工物に前記第1パルスを照射して、前記被加工物に前記光吸収コアを形成し、前記加工コア形成工程では、前記被加工物に形成された前記光吸収コアに前記第2パルスを照射して、前記被加工物に前記加工コアを形成し、前記第1パルスのピークフルエンスは、第1閾値以上であり、前記第1閾値は、前記第1パルスに基づく多光子吸収によって前記被加工物のバンドギャップを超えるためのフルエンスの下限値を示し、前記第2パルスのピークフルエンスは、第2閾値以上であり、前記第2閾値は、前記第2パルスに基づく多光子吸収によって前記被加工物のバンドギャップを超えるためのフルエンスの下限値を示し、前記同期工程では、前記第2パルスのフルエンスが第3閾値以上になる期間に前記第1パルスが位置するように、前記第1パルスと前記第2パルスとを制御し、前記第3閾値は、前記第1パルスのピークフルエンスに依存する可変値であり、前記光吸収コアを加工可能なフルエンスの下限値を示す、請求項4に記載のレーザー加工方法。

請求項6

前記第1パルスのピークフルエンスは、前記第1パルスに基づくN光子吸収によって前記被加工物のバンドギャップを超えるフルエンスを示し、前記「N」は、2以上の整数を示し、前記第2パルスのピークフルエンスは、前記第2パルスに基づくM光子吸収によって前記被加工物のバンドギャップを超えるフルエンスを示し、前記「M」は、2以上の整数を示す、請求項5に記載のレーザー加工方法。

請求項7

前記第1パルスのピークが前記第2パルスのピークよりも前の時間に位置するように、前記第1パルスと前記第2パルスとを制御する、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載のレーザー加工方法。

請求項8

前記第1パルスのピークから前記第2パルスのピークまでの期間は、1ナノ秒以下である、請求項4から請求項7のいずれか1項に記載のレーザー加工方法。

請求項9

前記第2レーザービームは、一定レベルのフルエンスを有する連続波であり、前記第1パルスが前記第2レーザービームに重なるように、前記第1パルスを照射する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーザー加工方法。

請求項10

被加工物を加工して、前記被加工物から加工物を製造する方法であって、第1パルスを含む第1レーザービームを対象物に照射して、前記対象物に光吸収コアを形成する光吸収コア形成工程と、第2レーザービームを前記光吸収コアに照射して、前記対象物である前記被加工物、又は、前記対象物が接触している前記被加工物に、加工コアを形成する加工コア形成工程とを含み、前記光吸収コアは、前記対象物のうち、前記第1パルスの照射されていない領域の光吸収率よりも大きな光吸収率を有する領域であり、前記加工コアは、前記被加工物のうち、前記第2レーザービームの照射されていない領域の密度と異なる密度を有する領域であり、前記第1パルスのピークフルエンスは、前記被加工物の被加工閾値よりも小さく、前記第2レーザービームのフルエンスの最大値は、前記被加工閾値よりも小さく、前記被加工閾値は、前記被加工物のうち、前記加工コアが形成されている領域と異なる領域を加工可能なフルエンスの下限値を示す、加工物の製造方法。

請求項11

第1パルスを含む第1レーザービームと、第2レーザービームとを生成するレーザービーム生成部と、前記第1レーザービームを対象物に照射して、前記対象物に光吸収コアを形成する照射部とを備え、前記照射部は、前記第2レーザービームを前記光吸収コアに照射して、前記対象物である被加工物、又は、前記対象物が接触している被加工物に、加工コアを形成し、前記光吸収コアは、前記対象物のうち、前記第1パルスの照射されていない領域の光吸収率よりも大きな光吸収率を有する領域であり、前記加工コアは、前記被加工物のうち、前記第2レーザービームの照射されていない領域の密度と異なる密度を有する領域であり、前記第1パルスのピークフルエンスは、前記被加工物の被加工閾値よりも小さく、前記第2レーザービームのフルエンスの最大値は、前記被加工閾値よりも小さく、前記被加工閾値は、前記被加工物のうち、前記加工コアが形成されている領域と異なる領域を加工可能なフルエンスの下限値を示す、レーザー加工装置

技術分野

0001

本発明は、レーザー加工方法加工物の製造方法、及びレーザー加工装置に関する。

背景技術

0002

近年、フェムト秒レーザーは、様々な微細加工に利用されている。

0003

例えば、非特許文献1は、フェムト秒レーザーを銅の表面に照射して、銅の表面に微細周期構造を形成した例を開示する。例えば、フェムト秒レーザーによって摺動部品に微細周期構造を形成して摩擦を低減できる。また、非特許文献1は、フェムト秒レーザーを金に照射して、金に微細穴開け加工を実行した例を開示する。さらに、非特許文献2は、フェムト秒レーザーを透明材料に照射し、多光子吸収誘引することによって多層構造を形成する例を開示する。

先行技術

0004

田雅之、橋田昌樹、「フェムト秒レーザー加工」、Journal of Plasma and Fusion Research、2005年、Vol.81、p.195−201
三澤弘明、「多光子吸収による3次元フォトニック結晶の作製」、表面科学、2001年、Vol.22、No.11、p.729−734

発明が解決しようとする課題

0005

しかしながら、非特許文献1及び非特許文献2に記載された技術では、比較的高い光子エネルギー及び比較的高いフルエンスを有するフェムト秒レーザーが必要になる。

0006

本発明の目的は、比較的低い光子エネルギー及び比較的低いフルエンスを有するレーザービームによって被加工物を加工できるレーザー加工方法、加工物の製造方法、及びレーザー加工装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

0007

本発明の第1の観点によれば、レーザー加工方法は、光吸収コア形成工程と、加工コア形成工程とを含む。光吸収コア形成工程は、第1パルスを含む第1レーザービームを対象物に照射して、前記対象物に光吸収コアを形成する。加工コア形成工程は、第2レーザービームを前記光吸収コアに照射して、前記対象物である被加工物、又は、前記対象物が接触している被加工物に、加工コアを形成する。前記光吸収コアは、前記対象物のうち、前記第1パルスの照射されていない領域の光吸収率よりも大きな光吸収率を有する領域である。前記加工コアは、前記被加工物のうち、前記第2レーザービームの照射されていない領域の密度と異なる密度を有する領域である。前記第1パルスのピークフルエンスは、前記被加工物の被加工閾値よりも小さい。前記第2レーザービームのフルエンスの最大値は、前記被加工閾値よりも小さい。前記被加工閾値は、前記被加工物のうち、前記加工コアが形成されている領域と異なる領域を加工可能なフルエンスの下限値を示す。

0008

本発明のレーザー加工方法は、加工コア拡張工程をさらに含むことが好ましい。加工コア拡張工程は、前記第2レーザービームによって前記加工コアを拡張することが好ましい。

0009

本発明のレーザー加工方法において、前記被加工物上に前記対象物が形成されていることが好ましい。前記対象物の光吸収率は、前記被加工物の光吸収率よりも大きいことが好ましい。前記加工コア形成工程では、前記対象物に形成された前記光吸収コアを介して前記被加工物に前記第2レーザービームを照射して、前記被加工物に前記加工コアを形成することが好ましい。

0010

本発明のレーザー加工方法において、前記第2レーザービームは、第2パルスを含むことが好ましい。前記第2パルスの半値全幅は、前記第1パルスの半値全幅より大きいことが好ましい。前記第1パルスと前記第2パルスとが重なるように、前記第1パルス及び前記第2パルスを制御することが好ましい。

0011

本発明のレーザー加工方法は、第1ビーム生成工程と、第2ビーム生成工程と、同期工程とをさらに含むことが好ましい。第1ビーム生成工程は、前記第1レーザービームを生成することが好ましい。第2ビーム生成工程は、前記第2レーザービームを生成することが好ましい。同期工程は、前記第1レーザービームと前記第2レーザービームとを同期させることが好ましい。前記光吸収コア形成工程では、前記対象物である前記被加工物に前記第1パルスを照射して、前記被加工物に前記光吸収コアを形成することが好ましい。前記加工コア形成工程では、前記被加工物に形成された前記光吸収コアに前記第2パルスを照射して、前記被加工物に前記加工コアを形成することが好ましい。前記第1パルスのピークフルエンスは、第1閾値以上であることが好ましい。前記第1閾値は、前記第1パルスに基づく多光子吸収によって前記被加工物のバンドギャップを超えるためのフルエンスの下限値を示すことが好ましい。前記第2パルスのピークフルエンスは、第2閾値以上であることが好ましい。前記第2閾値は、前記第2パルスに基づく多光子吸収によって前記被加工物のバンドギャップを超えるためのフルエンスの下限値を示すことが好ましい。前記同期工程では、前記第2パルスのフルエンスが第3閾値以上になる期間に前記第1パルスが位置するように、前記第1パルスと前記第2パルスとを制御することが好ましい。前記第3閾値は、前記第1パルスのピークフルエンスに依存する可変値であり、前記光吸収コアを加工可能なフルエンスの下限値を示すことが好ましい。

0012

本発明のレーザー加工方法において、前記第1パルスのピークフルエンスは、前記第1パルスに基づくN光子吸収によって前記被加工物のバンドギャップを超えるフルエンスを示すことが好ましい。前記「N」は、2以上の整数を示すことが好ましい。前記第2パルスのピークフルエンスは、前記第2パルスに基づくM光子吸収によって前記被加工物のバンドギャップを超えるフルエンスを示すことが好ましい。前記「M」は、2以上の整数を示すことが好ましい。

0013

本発明のレーザー加工方法において、前記第1パルスのピークが前記第2パルスのピークよりも前の時間に位置するように、前記第1パルスと前記第2パルスとを制御することが好ましい。

0014

本発明のレーザー加工方法において、前記第1パルスのピークから前記第2パルスのピークまでの期間は、1ナノ秒以下であることが好ましい。

0015

本発明のレーザー加工方法において、前記第2レーザービームは、一定レベルのフルエンスを有する連続波であることが好ましい。前記第1パルスが前記第2レーザービームに重なるように、前記第1パルスを照射することが好ましい。

0016

本発明の第2の観点によれば、加工物の製造方法は、被加工物を加工して、前記被加工物から加工物を製造する方法である。加工物の製造方法は、光吸収コア形成工程と、加工コア形成工程とを含む。光吸収コア形成工程は、第1パルスを含む第1レーザービームを対象物に照射して、前記対象物に光吸収コアを形成する。加工コア形成工程は、第2レーザービームを前記光吸収コアに照射して、前記対象物である被加工物、又は、前記対象物が接触している被加工物に、加工コアを形成する。前記光吸収コアは、前記対象物のうち、前記第1パルスの照射されていない領域の光吸収率よりも大きな光吸収率を有する領域である。前記加工コアは、前記被加工物のうち、前記第2レーザービームの照射されていない領域の密度と異なる密度を有する領域である。前記第1パルスのピークフルエンスは、前記被加工物の被加工閾値よりも小さい。前記第2レーザービームのフルエンスの最大値は、前記被加工閾値よりも小さい。前記被加工閾値は、前記被加工物のうち、前記加工コアが形成されている領域と異なる領域を加工可能なフルエンスの下限値を示す。

0017

本発明の第3の観点によれば、レーザー加工装置は、レーザービーム生成部と、照射部とを備える。レーザービーム生成部は、第1パルスを含む第1レーザービームと、第2レーザービームとを生成する。照射部は、前記第1レーザービームを対象物に照射して、前記対象物に光吸収コアを形成する。前記照射部は、前記第2レーザービームを前記光吸収コアに照射して、前記対象物である被加工物、又は、前記対象物が接触している被加工物に、加工コアを形成する。前記光吸収コアは、前記対象物のうち、前記第1パルスの照射されていない領域の光吸収率よりも大きな光吸収率を有する領域である。前記加工コアは、前記被加工物のうち、前記第2レーザービームの照射されていない領域の密度と異なる密度を有する領域である。前記第1パルスのピークフルエンスは、前記被加工物の被加工閾値よりも小さい。前記第2レーザービームのフルエンスの最大値は、前記被加工閾値よりも小さい。前記被加工閾値は、前記被加工物のうち、前記加工コアが形成されている領域と異なる領域を加工可能なフルエンスの下限値を示す。

発明の効果

0018

本発明によれば、比較的低い光子エネルギー及び比較的低いフルエンスを有するレーザービームによって被加工物を加工できる。

図面の簡単な説明

0019

(a)比較例に係るレーザービームを示す図である。(b)本発明の実施形態1に係るレーザー加工方法を示す図である。
実施形態1に係るレーザー加工方法の原理を示す図である。
実施形態1に係るレーザー加工装置を示す図である。
実施形態1に係るレーザー加工方法を示すフローチャートである。
本発明の実施形態2に係るレーザー加工装置を示す図である。
実施形態2に係る複合パルスを示す図である。
実施形態2に係るレーザー加工方法を示すフローチャートである。
実施形態2に係る複合レーザービームを示す図である。
本発明の実施形態3に係るレーザー加工方法を示すフローチャートである。
実施形態3に係る複合レーザービームを示す図である。
本発明の実施形態4に係るレーザー加工方法を示す図である。
実施形態4に係るレーザー加工方法を示すフローチャートである。
本発明の実施形態5に係るレーザー加工方法を示すフローチャートである。
本発明の実施例1に係る加工痕を示す図である。
本発明の実施例2に係る加工閾値(第3閾値)を示す図である。
本発明の実施例3に係る第1パルスのピークフルエンスと第2パルスの加工閾値(第3閾値)との関係を示す図である。
(a)は、比較例1に係るパルスの照射結果を示す図である。(b)は、比較例2に係るパルスの照射結果を示す図である。
(a)は、比較例3に係るパルスの照射結果を示す図である。(b)は、比較例4に係るパルスの照射結果を示す図である。
(a)は、比較例5に係るパルスの照射結果を示す図である。(b)は、比較例6に係るパルスの照射結果を示す図である。
(a)は、比較例7に係るパルスの照射結果を示す図である。(b)は、本発明の実施例4に係るパルスの照射結果を示す図である。
(a)は、比較例8に係るパルスの照射結果を示す図である。(b)は、本発明の実施例5に係るパルスの照射結果を示す図である。

0020

以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。

0021

(実施形態1)
図1図4を参照して、本発明の実施形態1に係るレーザー加工装置1及びレーザー加工方法について説明する。まず、図1を参照して、比較例と比較しつつ、実施形態1に係るレーザー加工方法について説明する。図1(a)は、比較例に係るレーザービームBBを示す図である。図1(b)は、実施形態1に係るレーザー加工方法を示す図である。

0022

図1(a)に示すように、比較例では、レーザービームBBが、被加工物TAに照射される。被加工物TAは、例えば、ワイドバンドギャップ材料である。レーザービームBBは、例えば、フェムト秒レーザービームである。レーザービームBBはパルスPを含む。パルスPの光子エネルギーは、被加工物TAのバンドギャップBGより小さい。

0023

ワイドバンドギャップ材料のような被加工物TAに、比較的低い光子エネルギーを有するパルスPを照射する場合、被加工物TAの格子吸収による加熱の効果が加工に影響を及ぼさないときには、パルスPのピークフルエンスが、少なくとも閾値Fmp以上でないと、照射時間を長くしても被加工物TAは加工されない。閾値Fmpは、パルスPに基づく多光子吸収によって被加工物TAのバンドギャップBGを超えるためのフルエンスの下限値を示す。

0024

これに対して、実施形態1に係るレーザー加工方法では、図1(b)に示すように、複合レーザービームBA1を被加工物TAに照射して被加工物TAを加工する。被加工物TAは加工対象である。複合レーザービームBA1は、第1レーザービームB1と、第2レーザービームB2とを含む。

0025

第1レーザービームB1は第1パルスP1を含む。第1パルスP1の光子エネルギーEp1は、被加工物TAのバンドギャップBGより小さい。第1パルスP1のピークフルエンスPF1は、第1閾値Fm1以上である。第1閾値Fm1は、第1パルスP1に基づく多光子吸収によって被加工物TAのバンドギャップBGを超えるためのフルエンスの下限値を示す。第1閾値Fm1は、第1パルスP1の光子エネルギーEp1に依存する。例えば、第1パルスP1の光子エネルギーEp1が大きいと、第1閾値Fm1が小さい。

0026

第1パルスP1が被加工物TAに照射されると、第1パルスP1のピークフルエンスPF1が第1閾値Fm1以上であるため、第1レーザービームB1の集光点では、集光点以外の領域よりも光吸収率が高い光吸収コアC1が形成される。つまり、被加工物TAに光吸収コアC1が形成される。実施形態1では、被加工物TAは、光吸収コアC1を形成する「対象物」に相当する。

0027

具体的には、光吸収コアC1は、被加工物TAのうち、第1レーザービームB1(具体的には第1パルスP1)の照射されていない領域の光吸収率よりも大きな光吸収率を有する領域である。物質の光吸収率とは、物質に垂直に入射した光の強度I0に対して物質が吸収した光の強度I1の割合(I1/I0)のことである。例えば、光吸収率は、ランベルトベールの法則に従う吸光係数αによって表される。吸光係数αは、物質に垂直に入射した光の強度I0、物質を透過した光の強度I2、及び物質の厚みxを用いて、次式で表される。
α=(−1/x)log10(I2/I0)

0028

更に具体的には、光吸収コアC1は、被加工物TAのうち、過渡的な光吸収率の変化を伴う領域である。「過渡的な光吸収率の変化」は、光吸収による被加工物TA(例えば、被加工物TAの表面)の価電子密度の変化に起因する光吸収率の変化を示す。

0029

光吸収コアC1を「励起」の観点から定義すると、光吸収コアC1とは、第1パルスP1による電子系の励起によって形成される励起層のことである。具体的には、光吸収コアC1は、第1パルスP1による電子系の励起によって形成される非コヒーレントな励起層である。

0030

光吸収コアC1の電子温度は、光吸収コアC1の形成前の被加工物TAの電子温度よりも高い。また、光吸収コアC1は、新たな第1パルスP1を照射しない限り、光吸収コアC1の電子温度がピークになった後に減衰する。ただし、光吸収コアC1での被加工物TAの密度は略一定であり、電子温度に依存しない。また、光吸収コアC1での被加工物TAの密度は、光吸収コアC1の形成前の被加工物TAの密度と略等しい。さらに、光吸収コアC1では、電子状態変化が格子の状態変化よりも優勢である。

0031

第2レーザービームB2は第2パルスP2を含む。第2パルスP2の光子エネルギーEp2は、被加工物TAのバンドギャップBGより小さい。第2パルスP2のピークフルエンスPF2は、第2閾値Fm2以上である。第2閾値Fm2は、第2パルスP2に基づく多光子吸収によって被加工物TAのバンドギャップBGを超えるためのフルエンスの下限値を示す。第2閾値Fm2は、第2パルスP2の光子エネルギーEp2に依存する。例えば、第2パルスP2の光子エネルギーEp2が小さいと、第2閾値Fm2が大きい。

0032

第2パルスP2が光吸収コアC1に照射されると、光吸収コアC1の光吸収率が高いため、比較的低い光子エネルギーEp2及び比較的低いフルエンスを有する第2パルスP2によって光吸収コアC1の加工が開始される。つまり、比較的低い光子エネルギーEp2及び比較的低いフルエンスを有する第2パルスP2によって、被加工物TAを加工できる。なお、被加工物TAに対して、第2パルスP2の照射前に第1パルスP1を照射して、光吸収コアC1を形成してもよいし、第2パルスP2の照射中に第1パルスP1を照射して、光吸収コアC1を形成してもよい。

0033

そして、光吸収コアC1の加工が開始されると、被加工物TAに加工コアC2が形成される。加工コアC2は、光吸収コアC1を中心に被加工物TAが変質した領域である。「変質」は、被加工物TAの物性が変化することを示す。「物性」とは、被加工物TAの示す巨視的性質のことである。「物性」は、例えば、被加工物TAの熱的性質及び/又は機械的性質である。物性の変化した加工コアC2は加工され易いため、加工コアC2に第2パルスP2が照射されていると、被加工物TAの加工が更に進行する。ただし、「物性」は、加工コアC2の消滅後には、元の物性に戻る。

0034

具体的には、加工コアC2は、被加工物TAのうち、第2レーザービームB2(具体的には第2パルスP2)の照射されていない領域の密度と異なる密度を有する領域である。従って、加工コアC2での被加工物TAの密度は、加工コアC2の形成前の被加工物TAの密度と異なる。例えば、加工コアC2での被加工物TAの密度は、加工コアC2の形成前の被加工物TAの密度より小さい。なお、密度は、被加工物TAの「物性」の一例である。また、加工コアC2は、被加工物TAのうち、第2レーザービームB2(具体的には第2パルスP2)の照射されていない領域の光吸収率よりも大きな光吸収率を有する。

0035

更に具体的には、加工コアC2は、被加工物TAのうち、ピコ秒から「ナノ秒又はマイクロ秒」にわたる時間オーダーにおける非過渡的な光吸収率の変化を伴う状態変化を示す領域である。「非過渡的な光吸収率の変化」は、光吸収による被加工物TAの密度変化を伴う光吸収率の変化を示す。ただし、加工コアC2の消滅後には、密度は、加工コアC2の形成前の密度に戻る。「状態変化」は、例えば、固相から液相への状態変化、及び/又は、アモルファス化領域の形成による状態変化を示す。ただし、このような状態変化は、有限期間の状態変化であり、加工コアC2の消滅後には、元の状態に戻る。ただし、加工コアC2は加工されたままである。

0036

加工コアC2の格子温度は、加工コアC2の形成前の被加工物TAの格子温度よりも高い。また、第2パルスP2の強度の減少に伴って格子温度が低下するため、加工コアC2は減衰する。ただし、加工コアC2への一定強度以上の光の照射が持続する限り、加工コアC2の減衰が抑制される。例えば、第2パルスP2のフルエンスが第2閾値Fm2以上の期間では、加工コアC2の減衰が抑制される。さらに、加工コアC2では、格子の状態変化が電子の状態変化よりも優勢である。従って、加工コアC2では、熱拡散を伴う加工が行われる。

0037

また、第1パルスP1の照射終了後でも、第2パルスP2が加工コアC2に照射されていると、第2パルスP2のエネルギーが加工コアC2に流入し、継続して加工コアC2が加工される。その結果、加工コアC2が拡張され、比較的低い光子エネルギーEp2及び比較的低いフルエンスを有する第2パルスP2によって、被加工物TAの加工を効果的に実現できる。

0038

さらに、第1パルスP1及び第2パルスP2が、加工コアC2に繰り返し照射されると、被加工物TAの加工を更に効果的に実現できる。加工コアC2には光吸収コアC1が繰り返し形成されるだけでなく、加工コアC2は、加工コアC2以外の領域と比較して、加工され易いためである。

0039

また、第1パルスP1は光吸収コアC1を形成するためのパルスであり、被加工物TAを加工するためのパルスではない。従って、第1パルスP1の光子エネルギーEp1及びフルエンスは比較的低くても十分である。

0040

引き続き図1(b)を参照して、光吸収コアC1と加工コアC2とを比較して説明する。光吸収コアC1の存続期間は、加工コアC2の存続期間よりも短い。光吸収コアC1は、例えば、光吸収コアC1の形成時から1ナノ秒以下の期間、存続する。光吸収コアC1の形成時は、例えば、第1パルスP1の照射時である。

0041

従って、光吸収コアC1の形成時から1ナノ秒以下の期間に第2パルスP2が位置するように、光吸収コアC1に第2パルスP2を照射する。ただし、光吸収コアC1の形成時から500ピコ秒以下の期間に第2パルスP2が位置するように、光吸収コアC1に第2パルスP2を照射することが好ましい。また、光吸収コアC1の形成時から100ピコ秒以下の期間に第2パルスP2が位置するように、光吸収コアC1に第2パルスP2を照射することが更に好ましい。さらに、光吸収コアC1の形成時から10ピコ秒以下の期間に第2パルスP2が位置するように、光吸収コアC1に第2パルスP2を照射することが更に好ましい。さらに、光吸収コアC1の形成時から1ピコ秒以下の期間に第2パルスP2が位置するように、光吸収コアC1に第2パルスP2を照射することが更に好ましい。光吸収コアC1の電子温度が高い程、光吸収率が高いため、加工コアC2が形成され易いからである。

0042

なお、光吸収コアC1の存続期間は、1ピコ秒より短いこともあり得るし、500ピコ秒より短いこともあり得るし、100ピコ秒より短いこともあり得るし、10ピコ秒より短いこともあり得るし、1ピコ秒より短いこともあり得る。光吸収コアC1の存続期間は、第1パルスP1の光子エネルギーEp1及びフルエンス並びに被加工物TAの光吸収率に依存するからである。なお、光吸収コアC1の存続期間中に第2パルスP2が光吸収コアC1に照射される限り、本発明は適用可能である。

0043

また、光吸収コアC1の形成時から1ピコ秒以上経過すると、電子のエネルギーが格子に伝達され、格子温度が上昇し始める。そして、第2パルスP2が光吸収コアC1に照射されることを条件に、光吸収コアC1の形成時から100ピコ秒以上経過すると、加工コアC2が形成される。加工コアC2は、ピコ秒から、ナノ秒又はマイクロ秒にわたる時間オーダーで存続する。

0044

引き続き図1(b)を参照して、被加工物TAの被加工閾値Fdと関連して、第1パルスP1及び第2パルスP2のフルエンスを説明する。被加工閾値Fdは、被加工物TAのうち、加工コアC2が形成されている領域と異なる領域を加工可能なフルエンスの下限値を示す。換言すれば、被加工閾値Fdは、光吸収コアC1に基づく加工コアC2を形成することなく被加工物TAを加工可能なフルエンスの下限値を示す。更に換言すれば、被加工閾値Fdは、被加工物TAの非励起時の加工閾値であり、励起層である光吸収コアC1を形成することなく被加工物TAを加工可能なフルエンスの下限値を示す。

0045

第1レーザービームB1のフルエンスの最大値、つまり、第1パルスP1のピークフルエンスPF1は、被加工物TAの被加工閾値Fdよりも小さい。従って、第1パルスP1のみを被加工物TAに照射しただけでは、被加工物TAは加工されない。また、第2レーザービームB2のフルエンスの最大値、つまり、第2パルスP2のピークフルエンスPF2は、被加工閾値Fdよりも小さい。従って、第2パルスP2のみを被加工物TAに照射しただけでは、被加工物TAは加工されない。

0046

以上、図1(b)を参照して説明したように、実施形態1によれば、光吸収コアC1及び加工コアC2を形成している。そして、第1パルスP1は、光吸収コアC1を形成できる程度の光子エネルギーEp1及びフルエンスを有していれば十分である。従って、比較的低い光子エネルギーEp1及び比較的低いフルエンスを有する第1パルスP1によって容易に光吸収コアC1を形成できる。さらに、光吸収コアC1は高い光吸収率を有しているため、比較的低い光子エネルギーEp2及び比較的低いフルエンスを有する第2パルスP2によって容易に加工コアC2を形成できる。さらに、加工コアC2は加工され易いため、比較的低い光子エネルギーEp2及び比較的低いフルエンスを有する第2パルスP2によって容易に加工コアC2を加工できる。

0047

その結果、実施形態1によれば、比較的低い光子エネルギー及び比較的低いフルエンスを有する第1パルスP1と第2パルスP2とを使用して、比較的高い被加工閾値Fdを有する被加工物TA(例えば、ワイドバンドギャップ材料)を加工できる。特に、高出力レーザーが不要であるため、レーザー加工装置1のコストを低減できるとともに、光学系の調整が容易である。

0048

なお、フルエンスとは、単位面積当たりのエネルギー量のことである。フルエンスは、照度に略比例する。フルエンスを定義する際の「単位面積」は、パルスPに関しては、パルスPの断面の単位面積を示し、第1パルスP1(第1レーザービームB1)に関しては、第1パルスP1の断面の単位面積を示し、第2パルスP2(第2レーザービームB2)に関しては、第2パルスP2の断面の単位面積を示す。

0049

また、パルスPのピークフルエンスとは、パルスPのフルエンス分布のうち最大のフルエンスのことであり、第1パルスP1のピークフルエンスPF1とは、第1パルスP1のフルエンス分布のうち最大のフルエンスのことであり、第2パルスP2のピークフルエンスPF2とは、第2パルスP2のフルエンス分布のうち最大のフルエンスのことである。

0050

次に、図2を参照して、レーザー加工方法の原理を説明する。図2は、実施形態1に係るレーザー加工方法の原理を示す図である。図2に示すように、レーザー加工方法では、複合レーザービームBA1を被加工物TAに照射する。つまり、第1パルスP1及び第2パルスP2が被加工物TAに照射される。

0051

第1パルスP1のピークフルエンスPF1は、第1閾値Fm1以上である。第1閾値Fm1は、第1パルスP1に基づく多光子吸収によって被加工物TAのバンドギャップBGを超えるためのフルエンスの下限値を示す。従って、第1パルスP1が被加工物TAに照射されると、第1パルスP1の光子エネルギーEp1に基づく多光子吸収によって価電子帯VBの電子eが伝導帯CBに励起される。その結果、被加工物TAに光吸収コアC1が形成される。

0052

第2パルスP2が光吸収コアC1に照射されて、第2パルスP2が伝導帯CBの電子eに照射されると、第2パルスP2の光子エネルギーEp2によってアバランシェイオン化誘起される。アバランシェイオン化によって、伝導帯CBの電子eが急激に増加する。アバランシェイオン化とは、自由電子電界加速され、衝突電離を引き起こす過程が繰り返し発生して、自由電子が増加することである。

0053

具体的には、第1パルスP1によって励起された電子e(以下、「種電子」と記載する。)に第2パルスP2が照射され、種電子が光子エネルギーEp2を吸収する。種電子は、光子エネルギーEp2に基づく多光子吸収によって、伝導帯CBにおいて更に高いエネルギー準位まで励起される。

0054

一方、第2パルスP2のピークフルエンスPF2は、第2閾値Fm2以上である。第2閾値Fm2は、第2パルスP2に基づく多光子吸収によって被加工物TAのバンドギャップBGを超えるためのフルエンスの下限値を示す。従って、種電子が、バンドギャップBG以上のエネルギーを吸収する。そして、種電子が、バンドギャップBG以上のエネルギーを吸収して高いエネルギー準位に励起し、伝導帯CBにおいて安定したエネルギー準位まで遷移するときに、バンドギャップBG以上のエネルギーを放出する。放出されたエネルギーは価電子帯VBの電子eに吸収されるため、価電子帯VBの電子eが伝導帯CBに励起される。

0055

このように、伝導帯CBの1個の種電子が伝導帯CBに残りつつ、更に1個の電子eが伝導帯CBに励起されるため、伝導帯CBには、電子eが1個増える。増えた電子eは、種電子と同様に機能する。つまり、伝導帯CBにおいて、種電子が1個から2個に増加する。さらに、2個の種電子の各々が、バンドギャップBG以上のエネルギーを吸収・放出することで、更に2個の電子eが伝導帯CBに増える。同様にして、伝導帯CBの電子eが指数関数的に増加する。

0056

換言すれば、第1パルスP1によって生成された伝導帯CBの種電子が、第2パルスP2からバンドギャップBG以上のエネルギーを吸収して加速され、被加工物TAの原子衝突し、原子内の電子eにバンドギャップBG以上のエネルギーを与える。そして、原子内の電子eは、種電子からバンドギャップBG以上のエネルギーを吸収し、伝導帯CBに励起されて、原子から分離する。つまり、衝突電離が発生する。さらに、原子に衝突した種電子だけでなく、原子から分離した電子eが種電子と同様に機能し、衝突電離が繰り返され、伝導帯CBの電子eが急激に増加する。

0057

急激に増加した伝導帯CBの電子eが、伝導帯CBから価電子帯VBに遷移し、エネルギーを放出する。放出されたエネルギーによって、光吸収コアC1の原子が飛散又は除去されて、光吸収コアC1の加工が開始され、加工コアC2が形成される。つまり、第1パルスP1で光吸収コアC1を形成し、光吸収コアC1が消滅する前に第2パルスP2によってアバランシェイオン化を誘起し、伝導帯CBの電子eを急激に増加させて加工コアC2を形成する。そして、加工され易い加工コアC2を第2パルスP2によって加工する。従って、実施形態1によれば、比較的低い光子エネルギーEp1及び比較的低いフルエンスを有する第1パルスP1と、比較的低い光子エネルギーEp2及び比較的低いフルエンスを有する第2パルスP2とを利用して、被加工物TA(例えば、ワイドバンドギャップ材料)を加工できる。なお、加工コアC2は、第2パルスP2の半値全幅に相当する期間中又はパルス幅に相当する期間中存続する。

0058

光吸収コアC1を加工して形成される加工コアC2に、第1パルスP1及び第2パルスP2を続けて照射する場合にも、加工コアC2に光吸収コアC1と同様の現象が起こる。その結果、加工コアC2が更に加工され易くなるため、比較的低い光子エネルギーEp1及び比較的低いフルエンスを有する第1パルスP1と、比較的低い光子エネルギーEp2及び比較的低いフルエンスを有する第2パルスP2とを利用して、被加工物TA(例えば、ワイドバンドギャップ材料)を効果的に加工できる。

0059

実施形態1では、被加工物TAは、例えば、ワイドバンドギャップ材料である。ワイドバンドギャップ材料とは、シリコンよりも広いバンドギャップを有する材料のことである。ワイドバンドギャップ材料は、例えば、シリコンの1.5倍以上のバンドギャップを有する。ワイドバンドギャップ材料は、例えば、シリコンの2倍以上のバンドギャップを有する。ワイドバンドギャップ材料は、ワイドギャップ材料と記載される場合もある。

0060

ワイドバンドギャップ材料は、例えば、透明材料である。例えば、透明材料の色彩は、透明色無色透明色)又は半透明色(有色透明色)である。ワイドバンドギャップ材料は、例えば、絶縁体である。例えば、絶縁体は、合成石英サファイア、又はガラスである。ワイドバンドギャップ材料は、例えば、ワイドバンドギャップ半導体である。ワイドバンドギャップ半導体は、例えば、ダイヤモンド窒化ガリウム(GaN)、又は炭化ケイ素(SiC)である。炭化ケイ素は、例えば、4H−SiC、6H−SiC、又は3C−SiCである。ワイドバンドギャップ半導体は、例えば、紫外光を照射しないと、バンドギャップを超えない半導体である。ワイドバンドギャップ半導体は、ワイドギャップ半導体と記載される場合もある。なお、被加工物TAの種類は特に限定されない。例えば、被加工物TAは、ワイドバンドギャップ材料以外の材料でもよい。例えば、被加工物TAは、不透明な材料でもよいし、電気伝導体でもよいし、ワイドバンドギャップ半導体以外の半導体でもよい。半導体は、例えば、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)、又はガリウムヒ素GaAs)である。

0061

また、第1パルスP1のピークフルエンスPF1は、第1パルスP1に基づくN光子吸収によって被加工物TAのバンドギャップを超えるフルエンスを示すことが好ましい。「N」は、2以上の整数を示す。具体的には、第1パルスP1の光子エネルギーEp1の値をβ1[eV]、被加工物TAのバンドギャップBGの値をγ[eV]としたときに、「N」は、条件「値(β1×N)>値γ」を満足する2以上の整数を示す。この条件を満足する限り、「N」の上限は特に限定されない。また、光子エネルギーEp1は第1パルスP1の波長反比例する。従って、「N」は、第1パルスP1の波長と被加工物TAの材質とに依存する2以上の整数である。

0062

さらに、第2パルスP2のピークフルエンスPF2は、第2パルスP2に基づくM光子吸収によって被加工物TAのバンドギャップを超えるフルエンスを示すことが好ましい。「M」は、2以上の整数を示す。具体的には、第2パルスP2の光子エネルギーEp2の値をβ2[eV]、被加工物TAのバンドギャップBGの値をγ[eV]としたときに、「M」は、条件「値(β2×M)>値γ」を満足する2以上の整数を示す。この条件を満足する限り、「M」の上限は特に限定されない。また、光子エネルギーEp2は第2パルスP2の波長に反比例する。従って、「M」は、第2パルスP2の波長と被加工物TAの材質とに依存する2以上の整数である。

0063

なお、第1パルスP1の半値全幅は、第1パルスP1の強度が最大強度の1/2になるときの第1パルスP1の幅を示す。第2パルスP2の半値全幅は、第2パルスP2の強度が最大強度の1/2になるときの第2パルスP2の幅を示す。第1パルスP1のパルス幅は、第1パルスP1の強度が最大強度Imの1/e2になるときの第1パルスP1の幅を示す。第2パルスP2のパルス幅は、第2パルスP2の強度が最大強度Imの1/e2になるときの第2パルスP2の幅を示す。「e」はネイピア数を示す。

0064

次に、図3を参照して、実施形態1に係るレーザー加工装置1について説明する。図3は、レーザー加工装置1を示す図である。図3に示すように、レーザー加工装置1は、レーザービーム生成部2と、照射部3と、ステージ5とを備える。ステージ5に被加工物TAが設置される。ステージ5を移動することで、被加工物TAを移動して、被加工物TAへの複合レーザービームBA1の照射位置を移動できる。

0065

レーザービーム生成部2は、第1パルスP1を含む第1レーザービームB1と、第2パルスP2を含む第2レーザービームB2とを生成及び出力する。照射部3は、第1レーザービームB1と第2レーザービームB2とを複合レーザービームBA1として出力し、複合レーザービームBA1を被加工物TAに照射する。具体的には、照射部3は、第1パルスP1と第2パルスP2とを複合パルスCPとして出力し、複合パルスCPを被加工物TAに照射する。照射部3は、第1パルスP1及び第2パルスP2を、集光したり、進行方向を変えたりする光学系と、光学系を制御する電気系と、電気系を制御するコンピューターとを含む。

0066

なお、光吸収コアC1に第2パルスP2が照射される限り、第1パルスP1と第2パルスP2とが時間軸上で重なっていてもよいし、第2パルスP2が第1パルスP1に対して遅延していてもよい。この場合、レーザービーム生成部2又は照射部3が、第1パルスP1及び第2パルスP2の時間軸上の位置を制御する。また、第2レーザービームB2は、第2パルスP2を含むことなく、一定レベルLのフルエンスを有する連続波(Continuous Wave)であってもよい。

0067

次に、図3及び図4を参照して、実施形態1に係るレーザー加工方法について説明する。図4は、レーザー加工方法を示すフローチャートである。図4に示すように、レーザー加工方法は、光吸収コア形成工程S1と、加工コア形成工程S3と、加工コア拡張工程S5とを含む。レーザー加工装置1は、レーザー加工方法を実行する。

0068

図3及び図4に示すように、光吸収コア形成工程S1において、照射部3は、第1レーザービームB1(具体的には第1パルスP1)を被加工物TAに照射して、被加工物TAに光吸収コアC1を形成する。

0069

加工コア形成工程S3において、照射部3は、第2レーザービームB2(具体的には第2パルスP2)を光吸収コアC1に照射して、被加工物TAに加工コアC2を形成する。そして、第2パルスP2によって加工コアC2が加工される。

0070

加工コア拡張工程S5において、照射部3は、第2レーザービームB2(具体的には第2パルスP2)によって加工コアC2を拡張する。そして、拡張された加工コアC2が、第2パルスP2によって加工されるため、加工領域を拡張できる。

0071

加工コア拡張の第1例では、第2パルスP2の半値全幅又はパルス幅が比較的大きい場合は、新たな第2パルスP2を照射することなく、照射中の第2パルスP2によって加工コアC2を第1方向D1(図1(b))に沿って拡張できる。第1方向D1は、被加工物TAの表面に沿った方向を示す。

0072

加工コア拡張の第2例では、レーザービーム生成部2が間隔をあけて複数の第2パルスP2を生成及び出力する。そして、各第2パルスP2の照射位置を徐々に移動させながら加工コアC2に各第2パルスP2を照射することによって、加工コアC2を第1方向D1に沿って拡張できる。なお、ステージ5によって被加工物TAを移動して、第2パルスP2の照射位置を移動してもよいし、照射部3が第2パルスP2の照射位置を移動してもよい。

0073

加工コア拡張の第3例では、レーザービーム生成部2が間隔をあけて複数の第2パルスP2を生成及び出力する。そして、各第2パルスP2の照射位置を略同一にして加工コアC2に各第2パルスP2を照射することによって、加工コアC2を第2方向D2(図1(b))に沿って拡張できる。第2方向D2は、被加工物TAの表面に交差する方向(例えば、直交する方向)を示す。

0074

加工コア拡張の第2例及び第3例において、レーザービーム生成部2が間隔をあけて複数の第1パルスP1を生成及び出力してもよい。そして、各第1パルスP1を加工コアC2に照射することによって、第1パルスP1ごとに光吸収コアC1を形成してもよい。特に、第2例では、第1パルスP1の照射位置を制御することで、光吸収コアC1の位置を制御できる。その結果、実施形態1では、加工コアC2の拡張方向を精度良く制御できる。なぜなら、加工コアC2は、光吸収コアC1を中心に形成されるからである。なお、ステージ5によって被加工物TAを移動して、第1パルスP1の照射位置を移動してもよいし、照射部3が第1パルスP1の照射位置を移動してもよい。また、互いに隣り合う第1パルスP1の時間間隔X1と、互いに隣り合う第2パルスP2の時間間隔X2とは、異なっていてもよいし、同じでもよい。例えば、時間間隔X1は、時間間隔X2のQ倍である。「Q」は2以上の整数である。

0075

以上、図3及び図4を参照して説明したように、実施形態1によれば、比較的低い光子エネルギーEp2及び比較的低いフルエンスを有する第2パルスP2によって、加工コアC2を拡張して加工領域を拡張できる。

0076

(実施形態2)
図5図8を参照して、本発明の実施形態2に係るレーザー加工装置1及びレーザー加工方法について説明する。実施形態2が、第1レーザービームB1を発振する第1レーザー発振器A1と第2レーザービームB2を発振する第2レーザー発振器A2とを有する点で、実施形態2は実施形態1と異なる。以下、実施形態2が実施形態1と異なる点を主に説明する。

0077

まず、図5及び図6を参照して、実施形態2に係るレーザー加工装置1について説明する。図5は、レーザー加工装置1を示す図である。図5に示すように、レーザー加工装置1は、レーザービーム生成部2と、照射部3と、ステージ5とを備える。レーザービーム生成部2は、第1レーザー発振器A1(第1レーザー発振部)と、第2レーザー発振器A2(第2レーザー発振部)とを含む。

0078

第1レーザー発振器A1は、第1パルスP1を含む第1レーザービームB1を生成及び出力する。具体的には、第1レーザー発振器A1は、複数の第1パルスP1を所定間隔Tで生成及び出力する。第1レーザービームB1は実施形態1に係る第1レーザービームB1と同様である。第2レーザー発振器A2は、第2パルスP2を含む第2レーザービームB2を生成及び出力する。具体的には、第2レーザー発振器A2は、複数の第2パルスP2を所定間隔Tで生成及び出力する。第2レーザービームB2は実施形態1に係る第2レーザービームB2と同様である。

0079

照射部3は、第1レーザービームB1と第2レーザービームB2とを同期させ、複合レーザービームBA1として出力し、複合レーザービームBA1を被加工物TAに照射する。従って、照射部3は同期部として機能する。具体的には、照射部3は、第1パルスP1と第2パルスP2とを同期させ、複合パルスCPとして出力し、複合パルスCPを被加工物TAに照射する。「同期」は、第1パルスP1と第2パルスP2とが重なることを示す。照射部3は、第1パルスP1及び第2パルスP2を、集光したり、進行方向を変えたりする光学系と、光学系を制御する電気系と、電気系を制御するコンピューターとを含む。

0080

図6は、複合パルスCPを示す図である。図6では、横軸は時間を示し、縦軸はフルエンスを示す。図6に示すように、複合パルスCPは、第1パルスP1と、第2パルスP2とを含む。第2パルスP2の半値全幅は第1パルスP1の半値全幅より大きく、第2パルスP2のパルス幅は第1パルスP1のパルス幅より大きい。そして、第1パルスP1は、第2パルスP2に重なっている。つまり、第1パルスP1は、第2パルスP2が存在する期間内に位置している。

0081

第1パルスP1(例えば、第1パルスP1のピーク)は、第2パルスP2のフルエンスが第3閾値Fm3以上になる期間ΔTに位置することが好ましい。第2パルスP2のフルエンスが第3閾値Fm3になる時間は、時間t1及び時間t2である。従って、期間ΔTは、時間t1から時間t2までの期間を示し、時間t1及び時間t2を含む。時間t1は時間t2よりも前の時間である。

0082

第2パルスP2のピークフルエンスPF2は、第3閾値Fm3以上である。第3閾値Fm3は、第1パルスP1のピークフルエンスPF1に依存する可変値であり、電子系の励起によって形成される励起層を加工可能なフルエンスの下限値を示す。励起層は光吸収コアC1を示す。第3閾値Fm3は第2閾値Fm2以上であることが好ましい。なお、第1パルスP1のピークフルエンスPF1は、第1閾値Fm1以上であり、第2パルスP2のピークフルエンスPF2は、第2閾値Fm2以上である。第1閾値Fm1及び第2閾値Fm2は、それぞれ、実施形態1に係る第1閾値Fm1及び第2閾値Fm2と同じである。

0083

以下、第3閾値Fm3を「加工閾値Fm3」と記載する場合がある。第3閾値Fm3は被加工閾値Fdより小さい。被加工閾値Fdは実施形態1に係る被加工閾値Fdと同じである。

0084

第1パルスP1が期間ΔTに位置することが好ましい理由は、次の通りである。すなわち、期間ΔTでは、第2パルスP2のフルエンスは、電子系の励起によって形成される励起層、つまり、光吸収コアC1を加工可能なフルエンスの下限値以上である。従って、期間ΔTに第1パルスP1が位置すると、第1パルスP1によって形成された光吸収コアC1が減衰する前に、つまり、電子系の励起の効果が十分に維持されている時に、第2パルスP2によって瞬時にアバランシェイオン化が開始される。その結果、比較的低い光子エネルギーEp2及び比較的低いフルエンスを有する第2パルスP2(第2レーザービームB2)によって、被加工物TAの光吸収コアC1を効率的かつ効果的に加工できて、加工コアC2を効率的かつ効果的に形成できる。

0085

さらに、第1パルスP1のピークは、第2パルスP2のピークよりも前の時間に位置することが更に好ましい。つまり、第1パルスP1のピークは、第2パルスP2のピークが位置する時間t3よりも前の時間に位置することが更に好ましい。

0086

具体的には、第1パルスP1のピークは、期間Δtに位置することが最も好ましい。期間Δtは、第2パルスP2のフルエンスが第3閾値Fm3以上になる時間t1から、第2パルスP2のピークが位置する時間t3までの期間を示す。期間Δtは、時間t1を含み、時間t3を含まないことが更に好ましい。

0087

第1パルスP1のピークが第2パルスP2のピークよりも前の時間に位置することが好ましい理由は、次の通りである。すなわち、第2パルスP2のフルエンスが下降している期間に第1パルスP1が位置する場合と比較すると、第2パルスP2のフルエンスが上昇している期間Δtに第1パルスP1が位置すると、第2パルスP2によるアバランシェイオン化が更に促進される。その結果、比較的低い光子エネルギーEp2及び比較的低いフルエンスを有する第2パルスP2(第2レーザービームB2)によって、被加工物TAの光吸収コアC1を更に効率的かつ更に効果的に加工できて、加工コアC2を更に効率的かつ更に効果的に形成できる。

0088

第1パルスP1のピークから第2パルスP2のピークまでの期間は、1ナノ秒以下であることが好ましい。電子系の励起の効果、つまり、光吸収コアC1は、第1パルスP1の照射時から少なくとも1ナノ秒までは残存するからである。そして、光吸収コアC1が残存する期間に、第2パルスP2を照射することによって、比較的低い光子エネルギーEp2及び比較的低いフルエンスを有する第2パルスP2(第2レーザービームB2)によって、被加工物TAの光吸収コアC1を加工できて、加工コアC2を形成できる。

0089

第1パルスP1のピークから第2パルスP2のピークまでの期間は、400ピコ秒以下であることが更に好ましい。さらに、第1パルスP1のピークから第2パルスP2のピークまでの期間は、数10ピコ秒以下であることが更に好ましい。0秒以上数10ピコ秒以下の範囲では、光吸収コアC1の減衰が比較的小さいからである。

0090

さらに、第1パルスP1のピークから第2パルスP2のピークまでの期間は、10ピコ秒以下であることが更に好ましい。光吸収コアC1の減衰が更に小さいからである。換言すれば、第1パルスP1によって励起された電子の間接遷移が起こる前に、第2パルスP2のピークが到来することが好ましい。電子の間接遷移によって徐々に伝導帯の電子が減少するからである。電子の間接遷移とは、励起電子運動エネルギーを格子にわたして脱励起状態になることである。

0091

次に、図5図7を参照して、レーザー加工方法について説明する。図7は、実施形態2に係るレーザー加工方法を示すフローチャートである。図7に示すように、レーザー加工方法は、第1ビーム生成工程S11と、第2ビーム生成工程S13と、同期工程S15と、照射工程S17とを含む。レーザー加工装置1は、レーザー加工方法を実行する。

0092

図5及び図7に示すように、第1ビーム生成工程S11において、第1レーザー発振器A1は、第1パルスP1を含む第1レーザービームB1を生成する。

0093

第2ビーム生成工程S13において、第2レーザー発振器A2は、第2パルスP2を含む第2レーザービームB2を生成する。

0094

同期工程S15において、照射部3は、第1レーザービームB1と第2レーザービームB2とを同期させ、複合レーザービームBA1として出力する。つまり、照射部3は、第1パルスP1と第2パルスP2とが重なるように、第1パルスP1及び第2パルスP2を制御する。

0095

具体的には、図6に示すように、同期工程S15では、照射部3は、第2パルスP2のフルエンスが第3閾値Fm3以上になる期間ΔTに第1パルスP1(例えば、第1パルスP1のピーク)が位置するように、第1パルスP1と第2パルスP2とを制御することが好ましい。さらに、同期工程S15では、照射部3は、第1パルスP1のピークが第2パルスP2のピークよりも前の時間に位置するように、第1パルスP1と第2パルスP2とを制御することが更に好ましい。

0096

照射工程S17において、照射部3は、第1パルスP1及び第2パルスを含む複合パルスCP、つまり、複合レーザービームBA1を被加工物TAに照射する。従って、照射工程S17では、図4に示す光吸収コア形成工程S1と加工コア形成工程S3とが実行される。その結果、実施形態1と同様に、被加工物TAに光吸収コアC1が形成されて、更に被加工物TAに加工コアC2が形成される(図1(b))。また、第1レーザー発振器A1が複数の第1パルスP1を生成し、第2レーザー発振器A2が複数の第2パルスP2を生成するため、図4に示す加工コア拡張工程S5と同様に、加工コアC2が拡張される。

0097

以上、図5図7を参照して説明したように、実施形態2によれば、光吸収コアC1及び加工コアC2を形成している。従って、実施形態2では、実施形態1と同様に、比較的低い光子エネルギー及び比較的低いフルエンスを有する複合レーザービームBA1によって被加工物TAを加工できる。

0098

すなわち、実施形態2によれば、第1パルスIPの照射によって形成された光吸収コアC1で、光吸収率のような材料特性が変化し、加工が容易になる。従って、比較的低い光子エネルギーEp2(例えば、可視光又は近赤外光の光子エネルギー)及び比較的低いフルエンス(例えば、比較的低い電界強度)を有する第2パルスP2を用いて、加工コアC2を形成及び加工できる。その結果、被加工物TAを精度良く加工できる。例えば、被加工物TAの加工領域の精密な制御を実現できる。また、例えば、被加工物TAのうち所望の加工領域と異なる領域(加工領域外の領域)に損傷を与えることを抑制できる。さらに、例えば、レーザー加工装置1の導入コスト及びランニングコストを低減できる。

0099

特に、光吸収コアC1及び加工コアC2では加工閾値が低下するため、例えば、ワイドバンドギャップ材料のような一般的には加工が困難な被加工物TAであっても、比較的低い光子エネルギーEp2及び比較的低いフルエンスを有する第2パルスP2を用いて、ワイドバンドギャップ材料のような被加工物TAを容易に加工できる。加えて、被加工物TAに損傷を与えることを抑制できる。

0100

なお、一般的には、ワイドバンドギャップ材料を加工する際は、比較的高い光子エネルギーを有するレーザービーム(例えば、紫外光)又は比較的高いフルエンス(例えば、比較的高い電界強度)を有するレーザービームを利用する。従って、被加工物の加工領域の精密な制御を実現できない可能性がある。例えば、被加工物のうち所望の加工領域と異なる領域(加工領域外の領域)に損傷を与える可能性がある。また、例えば、装置の導入コスト及びランニングコストが増加する可能性がある。

0101

また、実施形態2では、比較的低い光子エネルギーEp1及び比較的低いフルエンスを有する第1パルスP1を用いて、被加工物TAの表面に光吸収コアC1を形成できる。その結果、被加工物TAを更に精度良く加工できる。例えば、被加工物TAの加工領域の更に精密な制御を実現できる。また、例えば、被加工物TAのうち所望の加工領域と異なる領域(加工領域外の領域)に損傷を与えることを更に抑制できる。さらに、例えば、レーザー加工装置1の導入コスト及びランニングコストを更に低減できる。その他、実施形態2では、実施形態1と同様の効果を有する。

0102

次に、第1パルスP1と第2パルスP2とを比較する。例えば、第2パルスP2の光子エネルギーEp2は、第1パルスP1の光子エネルギーEp1以下であることが好ましい(Ep2≦Ep1)。例えば、第2パルスP2の光子エネルギーEp2は、第1パルスP1の光子エネルギーEp1より小さいことが更に好ましい(Ep2<Ep1)。例えば、第1パルスP1のピークフルエンスPF1は、第2パルスP2のピークフルエンスPF2以下であることが好ましい(PF1≦PF2)。例えば、第1パルスP1のピークフルエンスPF1は、第2パルスP2のピークフルエンスPF2より小さいことが更に好ましい(PF1<PF2)。例えば、第1レーザー発振器A1の出力は、第2レーザー発振器A2の出力以下であることが好ましい。例えば、第1レーザー発振器A1の出力は、第2レーザー発振器A2の出力より小さいことが更に好ましい。出力は、例えば、ジュール又はワットで表される。

0103

例えば、第1パルスP1は、フェムト秒のオーダーの半値全幅を有するとともに、第2パルスP2は、ピコ秒のオーダーの半値全幅を有することが好ましい。例えば、第1パルスP1は、フェムト秒のオーダーの半値全幅を有するとともに、第2パルスP2は、ナノ秒のオーダーの半値全幅を有することが好ましい。例えば、第1パルスP1は、フェムト秒のオーダーの半値全幅を有するとともに、第2パルスP2は、ナノ秒のオーダーより長いオーダーの半値全幅を有することが好ましい。例えば、第1パルスP1は、ピコ秒のオーダーの半値全幅を有するとともに、第2パルスP2は、ピコ秒のオーダーの半値全幅を有することが好ましい。例えば、第1パルスP1は、ピコ秒のオーダーの半値全幅を有するとともに、第2パルスP2は、ナノ秒のオーダーの半値全幅を有することが好ましい。

0104

例えば、第1パルスP1は、可視光領域の波長、近紫外光領域の波長、又は紫外光領域の波長を有することが好ましい。例えば、第2パルスP2は、可視光領域の波長、又は近赤外光領域の波長を有することが好ましい。

0105

次に、図5及び図8を参照して、複合レーザービームBA1について説明する。図8は、複合レーザービームBA1を示す図である。図8では、横軸は時間を示し、縦軸はフルエンスを示す。図8に示すように、複合レーザービームBA1は、複数の複合パルスCPを含む。図5及び図8に示すように、照射部3は、複数の複合パルスCPを所定間隔Tで出力する。従って、最初の複合パルスCPの照射で光吸収コアC1及び加工コアC2が形成され、最初の複合パルスCPに後続する複合パルスCPによって更に光吸収コアC1及び加工コアC2が形成される。その結果、加工コアC2が徐々に拡張される。この場合、各複合パルスCPの照射位置を徐々に移動させながら第1方向D1(図1(b))に沿って加工コアC2を拡張してもよいし、各複合パルスCPの照射位置を略同一にして第2方向D2(図1(b))に沿って加工コアC2を拡張してもよい。

0106

加工コアC2は、比較的低い光子エネルギーEp2及び比較的低いフルエンスを有する第2パルスP2によって容易に加工できる。従って、実施形態2によれば、継続的に複合パルスCPを照射することによって、加工コアC2を拡張し、被加工物TA(例えば、ワイドバンドギャップ材料)を効果的に加工できる。

0107

(変形例1)
本発明の実施形態2の変形例1では、レーザー加工装置1の照射部3は、第1レーザー発振器A1及び/又は第2レーザー発振器A2を制御して、第1レーザー発振器A1が生成及び出力する第1レーザービームB1と第2レーザー発振器A2が生成及び出力する第2レーザービームB2とを同期させる。変形例1のその他の構成及び原理は、実施形態2と同様である。従って、変形例1では、実施形態2と同様の効果を有する。

0108

(変形例2)
本発明の実施形態2の変形例2では、レーザー加工装置は、1つのレーザー発振器を備える。そして、1つのレーザー発振器が生成及び出力するレーザービームを2つに分岐して、第1レーザービームB1と第2レーザービームB2とを生成する。変形例2のその他の構成及び原理は、実施形態2と同様である。従って、変形例2では、実施形態2と同様の効果を有する。

0109

例えば、レーザー発振器として、YAGレーザーを使用できる。例えば、YAGレーザーの基本波の波長は1064nmであり、第2高調波の波長は532nm(グリーンレーザー)であり、第3高調波の波長は355nm(近紫外光レーザー)である。例えば、レーザー発振器として、チタンサファイアレーザーを使用できる。例えば、チタンサファイアレーザーの基本波の波長は800nmであり、第2高調波の波長は400nmである。

0110

例えば、第2高調波又は第3高調波を第1レーザービームB1として利用し、基本波を第2レーザービームB2として利用する。例えば、第3高調波を第1レーザービームB1として利用し、第2高調波を第2レーザービームB2として利用する。

0111

(実施形態3)
図5図9、及び図10を参照して、本発明の実施形態3に係るレーザー加工装置及びレーザー加工方法について説明する。実施形態3に係るレーザー加工装置の構成は、図5を参照して説明した実施形態2に係るレーザー加工装置1の構成と同様である。従って、以下、実施形態3に係るレーザー加工装置を「レーザー加工装置1」と記載する。ただし、実施形態3では、第2レーザー発振器A2が一定レベルのフルエンスを有する連続波を発振する点で、第2パルスP2を繰り返し発振する実施形態2と異なる。以下、実施形態3が実施形態2と異なる点を主に説明する。

0112

図9は、実施形態3に係るレーザー加工方法を示すフローチャートである。図10は、実施形態3に係る複合レーザービームBA2を示す図である。図10では、横軸は時間を示し、縦軸はフルエンスを示す。

0113

図9に示すように、レーザー加工方法は、第1ビーム生成工程S21と、第2ビーム生成工程S23と、照射工程S25とを含む。レーザー加工装置1は、レーザー加工方法を実行する。

0114

図5図9、及び図10に示すように、第1ビーム生成工程S21において、第1レーザー発振器A1は、第1レーザービームB1を生成する。第1レーザービームB1は、実施形態2に係る第1レーザービームB1と同様である。具体的には、第1レーザー発振器A1は、複数の第1パルスP1(複数のパルス)を所定間隔Tで生成及び出力する。

0115

第1パルスP1のピークフルエンスPF1は、第1閾値Fm1以上である。第1閾値Fm1は、実施形態2に係る第1閾値Fm1と同じである。その他、第1ビーム生成工程S21は、実施形態2に係る第1ビーム生成工程S11と同様である。

0116

第2ビーム生成工程S23において、第2レーザー発振器A2は、第2レーザービームCWを生成する。第2レーザービームCWは、一定レベルLのフルエンスを有する連続波(Continuous Wave)である。

0117

第2レーザービームCWの一定レベルLは、第2閾値Fm2以上である。第2閾値Fm2は、第2レーザービームCWに基づく多光子吸収によって被加工物TAのバンドギャップを超えるためのフルエンスの下限値を示す。また、一定レベルLは、第2レーザービームCWに基づくM光子吸収によって被加工物TAのバンドギャップを超えるフルエンスを示すことが好ましい。「M」は、2以上の整数を示す。その他、「M」は、第2パルスP2における「M」と同様である。一定レベルLは、第3閾値Fm3以上であることが好ましい。第3閾値Fm3は、実施形態2に係る第3閾値Fm3と同じである。さらに、一定レベルLは、被加工閾値Fdよりも小さい。被加工閾値Fdは実施形態2に係る被加工閾値Fdと同じである。一定レベルLは、第2レーザービームCWのフルエンスの最大値に相当する。

0118

照射工程S25において、照射部3は、第1レーザービームB1及び第2レーザービームCWを含む複合レーザービームBA2を被加工物TAに照射する。具体的には、照射工程S25では、照射部3は、第1パルスP1が第2レーザービームCWに重なるように、第1パルスP1を照射する。従って、照射工程S25では、図4に示す光吸収コア形成工程S1と加工コア形成工程S3とが実行される。その結果、実施形態1と同様に、被加工物TAに光吸収コアC1が形成されて、更に被加工物TAに加工コアC2が形成される(図1(b))。また、第1レーザー発振器A1が複数の第1パルスP1を生成し、第2レーザー発振器A2が第2レーザービームCWを生成するため、図4に示す加工コア拡張工程S5と同様に、加工コアC2が拡張される。

0119

例えば、第1パルスP1は、可視光領域の波長、近紫外光領域の波長、又は紫外光領域の波長を有することが好ましい。例えば、第2レーザービームCWは、可視光領域の波長、又は近赤外光領域の波長を有することが好ましい。

0120

以上、図5図9、及び図10を参照して説明したように、実施形態3によれば、光吸収コアC1及び加工コアC2を形成している。従って、実施形態3では、実施形態2と同様に、比較的低い光子エネルギー及び比較的低いフルエンスを有する複合レーザービームBA2によって被加工物(例えば、ワイドバンドギャップ材料)を加工できる。その他、実施形態3では、実施形態2と同様の効果を有する。

0121

また、実施形態3によれば、連続波である第2レーザービームCWを照射することによって、加工コアC2を拡張し、被加工物TA(例えば、ワイドバンドギャップ材料)を効果的に加工できる。

0122

さらに、実施形態3によれば、実施形態2のような同期工程S15(図7)が不要であるため、第1レーザービームB1及び第2レーザービームCWの制御が容易である。また、レーザー加工装置1のコストを低減できる。

0123

以上、図1図10を参照して説明した実施形態1〜実施形態3では、光吸収コアC1及び加工コアC2が、被加工物TAの内部に形成された。ただし、光吸収コアC1及び加工コアC2が、被加工物TAの表面に形成されてもよい。また、第1パルスP1は最初だけ照射されてもよい。さらに、実施形態2では、複合パルスCPが少なくとも1つ存在すれば、複合レーザービームBA1に、第1パルスP1と第2パルスP2とが重なっていない第2パルスP2だけが含まれていてもよい。さらに、実施形態3では、第1パルスP1の間隔を任意に設定できる。例えば、第1パルスP1と第1パルスP1との間隔は、複数の第1パルスP1において、一定であってもよいし、異なっていてもよい。

0124

(実施形態4)
図3図11、及び図12を参照して、本発明の実施形態4に係るレーザー加工装置及びレーザー加工方法について説明する。実施形態4に係るレーザー加工装置の構成は、図3を参照して説明した実施形態1に係るレーザー加工装置1の構成と同様である。従って、以下、実施形態4に係るレーザー加工装置を「レーザー加工装置1」と記載する。ただし、実施形態4では、光吸収コアC1を被加工物TAの隣接領域に形成する点で、光吸収コアC1を被加工物TAに形成する実施形態1と異なる。以下、実施形態4が実施形態1と異なる点を主に説明する。

0125

まず、図3及び図11を参照して、実施形態4に係るレーザー加工方法について説明する。図11は、レーザー加工方法を示す図である。図11に示すように、被加工物TA上に(具体的には、被加工物TAの表面に)特定層Obが形成されている。従って、特定層Obは被加工物TAに接触している。特定層Obは、例えば、膜である。特定層Obは、例えば、カーボン膜である。特定層Obの光吸収率は、被加工物TAの光吸収率よりも大きい。従って、特定層Obの光吸収率が被加工物TAの光吸収率よりも大きい限りにおいて、特定層Obの素材は特に限定されない。特定層Obは、例えば、無機物質又は有機物質である。無機物質は、1種類の原子から構成されていてもよいし、無機化合物であってもよい。有機物質は、1種類の原子から構成されていてもよいし、有機化合物であってもよい。また、例えば、特定層Obの厚みは、被加工物TAの厚みよりも小さい。特定層Obの厚みは、例えば、数ナノメートル以上数十ナノメートル以下である。

0126

図3及び図11に示すように、照射部3は、複合レーザービームBA1を特定層Obに照射する。複合レーザービームBA1は、第1レーザービームB1と、第2レーザービームB2とを含む。第1レーザービームB1は第1パルスP1を含む。

0127

第1パルスP1の光子エネルギーEp1は、特定層Obのバンドギャップより小さい。第1パルスP1のピークフルエンスPF1は、第4閾値Fm4以上である。第4閾値Fm4は、第1パルスP1に基づく多光子吸収によって特定層Obのバンドギャップを超えるためのフルエンスの下限値を示す。第4閾値Fm4は、第1パルスP1の光子エネルギーEp1に依存する。例えば、第1パルスP1の光子エネルギーEp1が大きいと、第4閾値Fm4が小さい。その他、第1パルスP1の特性は、実施形態1に係る第1パルスP1の特性と同様である。

0128

第1パルスP1が特定層Obに照射されると、第1パルスP1のピークフルエンスPF1が第4閾値Fm4以上であるため、第1レーザービームB1の集光点では、集光点以外の領域よりも光吸収率が高い光吸収コアC1が形成される。つまり、特定層Obに光吸収コアC1が形成される。実施形態4では、特定層Obは、光吸収コアC1を形成する「対象物」に相当する。

0129

具体的には、光吸収コアC1は、特定層Obのうち、第1レーザービームB1(具体的には第1パルスP1)の照射されていない領域の光吸収率よりも大きな光吸収率を有する領域である。また、光吸収コアC1の光吸収率は、被加工物TAの光吸収率よりも大きい。

0130

更に具体的には、光吸収コアC1は、特定層Obのうち、過渡的な光吸収率の変化を伴う領域である。「過渡的な光吸収率の変化」は、光吸収による特定層Obの価電子密度の変化に起因する光吸収率の変化を示す。

0131

光吸収コアC1の電子温度は、光吸収コアC1の形成前の特定層Obの電子温度よりも高い。また、光吸収コアC1は、新たな第1パルスP1を照射しない限り、光吸収コアC1の電子温度がピークになった後に減衰する。ただし、光吸収コアC1での特定層obの密度は略一定であり、電子温度に依存しない。また、光吸収コアC1での被加工物TAの密度は、光吸収コアC1の形成前の特定層Obの密度と略等しい。さらに、光吸収コアC1では、電子の状態変化が格子の状態変化よりも優勢である。

0132

また、「励起」の観点からは、光吸収コアC1は、実施形態1に係る光吸収コアC1と同様に定義される。その他、光吸収コアC1の特性は、実施形態1に係る光吸収コアC1の特性と同様である。また、光吸収コアC1が生成される原理は、実施形態1に係る光吸収コアC1が生成される原理と同様である。

0133

特定層Obに光吸収コアC1が形成されると、光吸収コアC1の影響を受けて、被加工物TAのうち光吸収コアC1に隣接している領域の光吸収率が上昇する。例えば、光吸収コアC1の高い電子温度の影響を受けて、被加工物TAのうち光吸収コアC1に隣接している領域の電子温度が上昇する。その結果、被加工物TAのうち、光吸収コアC1に隣接している領域の光吸収率が上昇する。

0134

第2レーザービームB2は第2パルスP2を含む。第2パルスP2は、例えば、実施形態1に係る第2パルスP2と同様である。

0135

第2パルスP2が光吸収コアC1を介して被加工物TAに照射されると、比較的低い光子エネルギーEp2及び比較的低いフルエンスを有する第2パルスP2によって、被加工物TAのうち光吸収コアC1に隣接している領域に加工コアC2が形成される。なぜなら、光吸収コアC1に隣接している領域の光吸収率が上昇しているからである。

0136

加工コアC2は、光吸収コアC1を起源として被加工物TAが変質した層である。「変質」は、被加工物TAの物性が変化することを示す。ただし、「物性」は、加工コアC2の消滅後には、元の物性に戻る。「物性」は、実施形態1で説明した「物性」と同様である。物性の変化した加工コアC2は加工され易いため、加工コアC2に第2パルスP2が照射されていると、被加工物TAの加工が更に進行する。その他、加工コアC2の特性は、実施形態1に係る加工コアC2の特性と同様である。

0137

なお、光吸収コアC1への第2パルスP2の照射タイミングは、実施形態1と同様である。従って、光吸収コアC1の存続期間中に第2パルスP2が光吸収コアC1に照射される限り、本発明は適用可能である。また、第1パルスP1は光吸収コアC1を形成するためのパルスであり、被加工物TAを加工するためのパルスではない。従って、第1パルスP1の光子エネルギーEp1及びフルエンスは比較的低くても十分である。

0138

以上、図11を参照して説明したように、実施形態4によれば、光吸収コアC1及び加工コアC2を形成している。その結果、実施形態1と同様に、比較的低い光子エネルギー及び比較的低いフルエンスを有する第1パルスP1と第2パルスP2とを使用して、比較的高い被加工閾値Fdを有する被加工物TA(例えば、ワイドバンドギャップ材料)を加工できる。その他、実施形態4では、実施形態1と同様の効果を有する。

0139

また、実施形態4によれば、被加工物TA上に特定層Obを形成する。そして、特定層Obの光吸収率は被加工物TAの光吸収率よりも大きい。従って、比較的低い光子エネルギーEp1及び比較的低いフルエンスを有する第1パルスP1によって容易に光吸収コアC1を形成できる。そして、特定層Obに形成された光吸収コアC1を起源として、比較的低い光子エネルギーEp2及び比較的低いフルエンスを有する第2パルスP2によって、光吸収コアC1に隣接している被加工物TAに容易に加工コアC2を形成できる。

0140

その結果、第2パルスP2が比較的低い光子エネルギーEp2及び比較的低いフルエンスを有する場合でも、第2パルスP2を加工コアC2に照射することによって、被加工閾値Fdが高く加工の困難な被加工物TA(例えば、合成石英)を加工できる。特に、実施形態4は、光吸収コアC1が形成され難い被加工物TAの加工に好適である。

0141

さらに、実施形態4によれば、加工の困難な被加工物TAであっても、被加工物TAに特定層Obを形成するだけで、比較的低い光子エネルギー及び比較的低いフルエンスを有する第1パルスP1と第2パルスP2とを使用して、被加工物TAを加工できる。特に、高出力レーザーが不要であるため、レーザー加工装置1のコストを低減できるとともに、光学系の調整が容易である。

0142

次に、図3及び図12を参照して、実施形態4に係るレーザー加工方法について説明する。図12は、レーザー加工方法を示すフローチャートである。図12に示すように、レーザー加工方法は、特定層形成工程S31と、光吸収コア形成工程S33と、加工コア形成工程S35と、加工コア拡張工程S37とを含む。レーザー加工装置1は、レーザー加工方法を実行する。

0143

図12に示すように、特定層形成工程S31において、特定層形成装置(不図示)が、被加工物TA上に特定層Obを形成する。例えば、特定層形成装置は、成膜装置であり、特定層Obとしての膜を被加工物TA上に形成する。

0144

図3及び図12に示すように、光吸収コア形成工程S33において、照射部3は、第1レーザービームB1(具体的には第1パルスP1)を特定層Obに照射して、特定層Obに光吸収コアC1を形成する。

0145

加工コア形成工程S35において、照射部3は、第2レーザービームB2(具体的には第2パルスP2)を特定層Obに形成された光吸収コアC1に照射して、被加工物TAに加工コアC2を形成する。つまり、照射部3は、第2レーザービームB2(具体的には第2パルスP2)を、光吸収コアC1を介して被加工物TAに照射して、被加工物TAに加工コアC2を形成する。そして、第2パルスP2によって加工コアC2が加工される。

0146

加工コア拡張工程S37において、照射部3は、第2レーザービームB2(具体的には第2パルスP2)によって加工コアC2を拡張する。そして、拡張された加工コアC2が、第2パルスP2によって加工されるため、加工領域を拡張できる。なお、実施形態4でも、実施形態1に係る加工コア拡張の第1例〜第3例を適用可能である。また、被加工物TAの加工完了後に、特定層Obを除去してもよいし、特定層Obを除去しなくてもよい。

0147

(実施形態5)
図5及び図13を参照して、本発明の実施形態5に係るレーザー加工装置及びレーザー加工方法について説明する。実施形態5に係るレーザー加工装置の構成は、図5を参照して説明した実施形態2に係るレーザー加工装置1の構成と同様である。従って、以下、実施形態5に係るレーザー加工装置を「レーザー加工装置1」と記載する。ただし、実施形態5では、光吸収コアC1を被加工物TAの隣接領域に形成する点で、光吸収コアC1を被加工物TAに形成する実施形態2と異なる。また、実施形態5は、光吸収コアC1を被加工物TAの隣接領域に形成する点で実施形態4と共通する。以下、実施形態5が実施形態2及び実施形態4と異なる点を主に説明する。

0148

図13は、実施形態5に係るレーザー加工方法を示すフローチャートである。図13に示すように、レーザー加工方法は、特定層形成工程S41と、第1ビーム生成工程S43と、第2ビーム生成工程S45と、同期工程S47と、照射工程S49とを含む。レーザー加工装置1は、レーザー加工方法を実行する。

0149

図13に示すように、特定層形成工程S41において、特定層形成装置(不図示)が、被加工物TA上に特定層Obを形成する。
第1ビーム生成工程S43において、第1レーザー発振器A1は、第1パルスP1を含む第1レーザービームB1を生成する。
第2ビーム生成工程S45において、第2レーザー発振器A2は、第2パルスP2を含む第2レーザービームB2を生成する。
同期工程S47において、照射部3は、第1レーザービームB1と第2レーザービームB2とを同期させ、複合レーザービームBA1として出力する。

0150

照射工程S49において、照射部3は、第1パルスP1及び第2パルスを含む複合パルスCP、つまり、複合レーザービームBA1(図8)を特定層Ob及び被加工物TAに照射する。具体的には、第1パルスP1が特定層Obに照射され、第2パルスP2が特定層Obを介して被加工物TAに照射される。従って、照射工程S49では、図12に示す光吸収コア形成工程S33と加工コア形成工程S35とが実行される。その結果、実施形態4と同様に、特定層Obに光吸収コアC1が形成されて、更に被加工物TAに加工コアC2が形成される(図11)。また、第1レーザー発振器A1が複数の第1パルスP1を生成し、第2レーザー発振器A2が複数の第2パルスP2を生成するため、図12に示す加工コア拡張工程S37と同様に、加工コアC2が拡張される。

0151

以上、図13を参照して説明したように、実施形態5によれば、光吸収コアC1及び加工コアC2を形成している。その結果、実施形態4と同様に、比較的低い光子エネルギー及び比較的低いフルエンスを有する第1パルスP1と第2パルスP2とを使用して、比較的高い被加工閾値Fdを有する被加工物TAを加工できる。

0152

また、実施形態5によれば、光吸収率の大きい特定層Obに第1パルスP1を照射するため、実施形態4と同様に、比較的低い光子エネルギーEp1及び比較的低いフルエンスを有する第1パルスP1によって特定層Obに容易に光吸収コアC1を形成できる。また、実施形態4と同様に、特定層Obに形成された光吸収コアC1を起源として、比較的低い光子エネルギーEp2及び比較的低いフルエンスを有する第2パルスP2によって、光吸収コアC1に隣接している被加工物TAに容易に加工コアC2を形成できる。その他、実施形態5では、実施形態4と同様の効果を有する。

0153

(変形例)
実施形態5の変形例として、第2ビーム生成工程S45において、第2レーザー発振器A2は、第2レーザービームB2に代えて、実施形態3に係る第2レーザービームCWを生成してもよい。この場合は、同期工程S47が省略される。また、照射工程S49では、第1レーザービームB1及び第2レーザービームCWを含む複合レーザービームBA2(図10)が特定層Ob及び被加工物TAに照射される。変形例でも、実施形態5と同様に、比較的低い光子エネルギー及び比較的低いフルエンスを有する第1レーザービームB1及び第2レーザービームCWによって被加工物TAを加工できる。

0154

次に、本発明が実施例に基づき具体的に説明されるが、本発明は以下の実施例によって限定されない。

0155

[実施例1〜実施例3]
本発明の実施例1〜実施例3では、ワイドバンドギャップ材料として(表1)に示す「4H−SiC」を被加工物TAとして採用した。被加工物TAは基板であった。被加工物TAである「4H−SiC」のSi面とC面とのうちSi面(0001)を研磨して、後述のダブルパルスビームを照射した。

0156

0157

レーザー発振器は、チタンサファイアレーザーであった。レーザー発振器が生成するオリジナルレーザー光OPの中心波長は794nmであった。オリジナルレーザー光OPに含まれるパルスの半値全幅は80fsであった。繰り返し周波数は10Hzであった。中心波長が794nmであるため、オリジナルレーザー光OPの光子エネルギーは1.56eVであった。オリジナルレーザー光OPの光子エネルギーは、被加工物TAのバンドギャップ(=3.26eV)より小さかった。

0158

オリジナルレーザー光OPに基づいて、第1パルスと第2パルスとを生成した。第1パルスは、実施形態2の第1パルスP1と同様の機能を有し、第2パルスは、実施形態2の第2パルスP2と同様の機能有した。第2パルスは第1パルスに対してパルス間隔τだけ遅延していた。第1パルスと第2パルスとはダブルパルスビームを構成した。

0159

第1パルスの光子エネルギーは被加工物TAのバンドギャップより小さく、第2パルスの光子エネルギーは被加工物TAのバンドギャップより小さかった。被加工物TAの被加工閾値Fdは990[mJ/cm2]であった。第1パルス及び第2パルスの各々のピークフルエンスは、800[mJ/cm2]であった。第1パルス及び第2パルスの各々は、近赤外光であった。

0160

そして、実施例1〜実施例3では、第1パルスによって,光吸収コアC1が形成され、低光子エネルギービームに対する光吸収率が上昇する時、形成された光吸収コアC1の持続時間を検証するため、被加工物TAに対して、第1パルスを照射後にタイミングを変えて、第2パルスを照射して加工を行い、加工閾値(第3閾値)Fm3を計測した。

0161

比較例として、バンドギャップが3.26[eV]の被加工物TAに光子エネルギー1.56[eV]、波長794nmのビームを照射する場合、多光子吸収による加工が顕在化しないフルエンス(照度)のレーザーを照射した場合、繰り返しレーザー照射を行っても、被加工物TA表面は加工されなかった。

0162

(実施例1)
図14は、本発明の実施例1に係る加工痕11を示す図である。図14に示すように、写真10a〜写真10cは、AFMによる観測結果を示した。被加工物TAに第1パルスを出射し、光吸収コアC1を形成した直後に、第2パルスを照射した場合に、加工痕11が形成された。具体的には、写真10aには、パルス間隔τが1psの第1パルス及び第2パルスを照射したときの加工痕11が現れた。写真10bには、パルス間隔τが10psの第1パルス及び第2パルスを照射したときの加工痕11が現れた。写真10cには、パルス間隔τが100psの第1パルス及び第2パルスを照射したときの加工痕11が現れた。実施例1では、低い光子エネルギー及び低いフルエンスを有する第1パルス及び第2パルスによって、ワイドバンドギャップ材料である被加工物TAを加工できた。

0163

以上、図14を参照して説明したように、実施例1では、写真10a〜写真10cに示すように、パルス間隔τが大きくなるほど、加工痕11が小さくなった。従って、第1パルスの照射時からの経過時間に伴って、光吸収コアC1が減衰することを確認できた。ただし、写真10a及び写真10bの加工痕11が比較的大きく、更に、写真10aの加工痕11の大きさと写真10bの加工痕11の大きさが同程度であるため、パルス間隔τが10ps以下であると、光吸収コアC1の減衰が比較的小さいことを確認できた。つまり、パルス間隔τが10ps以下であると、被加工物TAを効果的に加工できた。

0164

(実施例2)
図15は、本発明の実施例2に係る加工閾値Fm3を示す図である。図15では、横軸はパルス間隔τを示し、縦軸はフルエンスを示す。図15に示す実施例2では、第1パルスを照射後に、パルス間隔τを代えて、低光子エネルギーの第2パルスを照射した際の被加工物TAの加工閾値Fm3の変化を示した。

0165

図15に示すように、比較例に係る第1被加工閾値Fd1が1100[mJ/cm2]であり、比較例に係る第2被加工閾値Fd2が990[mJ/cm2]であった。第1被加工閾値Fd1及び第2被加工閾値Fd2は、ピーク強度が1600[mJ/cm2]の高強度電界ビームを照射した時の被加工物TAの加工閾値を示した。具体的には、第1被加工閾値Fd1は、被加工物TAに励起層(光吸収コアC1)が形成されていない時に被加工物TAをアブレーション加工可能なフルエンスの下限値を示した。アブレーションとは、プラズマ化した原子のクラスター又はプラズマ化した原子が飛散することである。第2被加工閾値Fd2は、被加工物TAに励起層(光吸収コアC1)が形成されていない時に被加工物TAをアニーリング加工可能なフルエンスの下限値を示した。アニーリングとは、非熱的効果によって表面近傍から原子が除去されことである。

0166

実施例2に係る加工閾値Fm3は、比較例に係る第1被加工閾値Fd1より小さく、比較例に係る第2被加工閾値Fd2より小さかった。

0167

以上、図15を参照して説明したように、実施例2では、パルス間隔τが10ps以下までは、加工閾値Fm3が一定であった。従って、パルス間隔τが10ps以下までは、光吸収コアC1の減衰が比較的小さいことを確認できた。

0168

(実施例3)
本発明の実施例3として、第1パルスのピークフルエンスPF1を変えたときの第2パルスに基づく加工閾値Fm3を計測した。パルス間隔τは1psであった。

0169

図16は、実施例3に係る第1パルスのピークフルエンスPF1と第2パルスの加工閾値Fm3との関係を示す図である。図16では、四角形マークは、第2パルスに基づく加工閾値Fm3を示し、菱形のマークは、第2パルスに基づく加工閾値Fm3と第1パルスのピークフルエンスPF1との和を示す。

0170

図16に示すように、第2パルスに基づく加工閾値Fm3は、第1パルスのピークフルエンスPF1に略比例した。比例定数は負であった。つまり、第1パルスのピークフルエンスPF1を大きくする程、加工閾値Fm3が小さくなった。換言すれば、第1パルスのピークフルエンスPF1を大きくして、第1パルスに基づく励起による種電子を多く生成するほど、第2パルスに基づく加工閾値Fm3が小さくなることを確認できた。

0171

[実施例4、実施例5]
本発明の実施例4及び実施例5並びに比較例1〜比較例8では、ワイドバンドギャップ材料として、合成石英(SiO2)を被加工物TAとして採用した。被加工物TAは基板であった。また、実施例4、5、及び比較例5〜8では、特定層Obとしてカーボン膜を採用した。具体的には、成膜装置によってカーボンを被加工物TAである合成石英の基板に蒸着させて、合成石英の基板上にカーボン膜を形成した。膜厚は約30nmであった。

0172

実施例4、5、及び比較例1〜8では、レーザー発振器は、チタンサファイアレーザーであった。レーザー発振器が生成するオリジナルレーザー光OPの中心波長は794nmであった。オリジナルレーザー光OPに含まれるパルスの半値全幅は85fsであった。パルスのパルス幅(1/e2)は、実測値で30.0μmであった。パルス幅は、被加工物TAの表面又は特定層Obの表面でのパルス幅を示した。

0173

まず、図17(a)〜図18(b)を参照して、比較例1〜4について説明する。比較例1〜4では、1つのパルス又は2つのパルスを、特定層Obの形成されていない被加工物TAに照射した。そして、被加工物TAを微分干渉顕微鏡によって観察した。

0174

比較例1では、1つのパルスを1回だけ被加工物TAに照射した。また、1つのパルスのパルスエネルギーは、5.95μJ〜6.65μJであった。1つのパルスのピークフルエンスは、1645mJ/cm2であった。
比較例2では、2つのパルスを100msの間隔で1回だけ被加工物TAに照射した。1つのパルスのパルスエネルギーは比較例1と同じであり、1つのパルスのフルエンスは比較例1と同じであった。
比較例3では、1つのパルスを1回だけ被加工物TAに照射した。また、1つのパルスのパルスエネルギーは比較例1の2倍であり、1つのパルスのフルエンスは比較例1の2倍であった。
比較例4では、2つのパルスを400fsの間隔で1回だけ被加工物TAに照射した。1つのパルスのパルスエネルギーは比較例1と同じであり、1つのパルスのフルエンスは比較例1と同じであった。

0175

(比較例1)
図17(a)は、比較例1に係るパルスの照射結果を示す図である。図17(a)に示すように、被加工物TAに加工痕は観察されなかった。従って、パルスのピークフルエンスは、被加工閾値Fdよりも小さかった。また、1つのパルスを1回だけ照射したため、加工コアC2が被加工物TAに形成されていないことは明らかだった。

0176

(比較例2)
図17(b)は、比較例2に係るパルスの照射結果を示す図である。図17(b)に示すように、被加工物TAに加工痕は観察されなかった。従って、パルス間隔(100ms)の長い2つのパルスを1回だけ照射したが、光吸収コアC1及び加工コアC2が被加工物TAに形成されなかったと推定できた。

0177

(比較例3)
図18(a)は、比較例3に係るパルスの照射結果を示す図である。図18(a)に示すように、被加工物TAに加工痕13が観察された。加工痕13は、略円形の白いスポットとして観察された。従って、パルスのフルエンスは、被加工閾値Fdよりも大きかった。加工痕13は、非線形光学効果に起因する光吸収加工であると推定できた。また、1つのパルスを1回だけ照射したため、加工コアC2が被加工物TAに形成されていないことは明らかだった。

0178

(比較例4)
図18(b)は、比較例4に係るパルスの照射結果を示す図である。図18(b)に示すように、被加工物TAに加工痕は観察されなかった。従って、パルス間隔(400fs)の短い2つのパルスを1回だけ照射したが、光吸収コアC1及び加工コアC2が被加工物TAに形成されなかったと推定できた。

0179

比較例3及び比較例4を比較すると、特定層Obの形成されていない被加工物TAを加工するためには、高いパルスエネルギーのパルスの照射が不可欠であることが確認できた。

0180

次に、図19(a)〜図20(b)を参照して、実施例4及び比較例5〜7について説明する。実施例4及び比較例5〜7では、1つのパルス又は2つのパルスを、特定層Obの形成された被加工物TAに照射した。そして、被加工物TAを微分干渉顕微鏡によって観察した。

0181

比較例5では、パルスの条件は、比較例1と同じであった。
比較例6では、パルスの条件は、比較例2と同じであった。
比較例7では、パルスの条件は、比較例3と同じであった。
実施例4では、パルスの条件は、比較例4と同じであった。

0182

(比較例5)
図19(a)は、比較例5に係るパルスの照射結果を示す図である。図19(a)に示すように、特定層Obに加工痕15が観察された。比較例5のパルスの条件は比較例1のパルスの条件と同じであるため、被加工物TAが加工されていなことを推定できた。つまり、加工が、特定層Obに留まり、被加工物TAまで到達していないことが推定できた。また、特定層Obに加工痕15が形成されているため、特定層Obに光吸収コアC1が形成されていると推定できた。一方、1つのパルスを1回だけ照射したため、加工コアC2が被加工物TAに形成されていないことは明らかだった。

0183

(比較例6)
図19(b)は、比較例6に係るパルスの照射結果を示す図である。図19(b)に示すように、特定層Obに加工痕17が観察された。しかしながら、加工痕17の形態が、比較例5の加工痕15の形態と同様であったため、被加工物TAは加工されていないと推定できた。つまり、加工は、特定層Obに留まり、被加工物TAまで到達していないことが推定できた。また、特定層Obに加工痕17が形成されているため、特定層Obに光吸収コアC1が形成されていると推定できた。また、パルス間隔(100ms)の長い2つのパルスを1回だけ照射したが、加工コアC2が被加工物TAに形成されていないと推定できた。なぜなら、被加工物TAが加工されていなかったためである。

0184

(比較例7)
図20(a)は、比較例7に係るパルスの照射結果を示す図である。図20(a)に示すように、加工痕19が観察された。加工痕19の形態は、比較例5の加工痕15及び比較例6の加工痕17の形態と異なっていた。具体的には、加工痕19の中心部分が、その周辺と比較して変化していた。そして、加工痕19の中心部分は、加工が被加工物TAまで到達していることを示していた。つまり、加工痕19の中心部分は、被加工物TAが加工されていることを示していた。また、比較例7のパルスの条件は比較例3のパルスの条件と同じであるため、加工痕19が、被加工物TAに形成されていることは明らかだった。

0185

(実施例4)
図20(b)は、実施例4に係るパルスの照射結果を示す図である。図20(b)に示すように、加工痕21が観察された。加工痕21の形態は、比較例7の加工痕19の形態と同様であった。つまり、加工痕21の中心部分が、その周辺と比較して変化していた。そして、加工痕21の中心部分は、加工が被加工物TAまで到達していることを示していた。つまり、加工痕21は、被加工物TAが加工されていることを示していると推定できた。また、2つのパルスの各々条件は、比較例5のパルスの条件と同じであるため、特定層Obに光吸収コアC1が形成されていることは明らかだった。加えて、2つのパルスの条件が比較例4の2つのパルスの条件と同じであるにも拘わらず、被加工物TAに到達している加工痕21が観察されたので、被加工物TAに加工コアC2が形成されて被加工物TAが加工されたと推定できた。

0186

また、実施例4では、比較例3及び比較例7と比較して、パルスエネルギーが半分であり、非線形光学効果が小さい。従って、加工痕21は、非線形光学効果による光吸収加工でないことは明らかだった。なお、実施例4の2つのパルスのうち、1つ目のパルスが実施形態4の第1パルスP1に相当し、2つ目のパルスが実施形態4の第2パルスP2に相当する。

0187

次に、図21(a)及び図21(b)を参照して、実施例5及び比較例8について説明する。実施例5及び比較例8では、2つのパルスを、特定層Obの形成された被加工物TAに照射した。そして、被加工物TAを微分干渉顕微鏡によって観察した。

0188

比較例8では、2つのパルスを300psの間隔で1回だけ被加工物TAに照射した。1つのパルスのパルスエネルギーは比較例1の2倍であり、1つのパルスのフルエンスは比較例1の2倍であった。
実施例5では、2つのパルスを400fsの間隔で1回だけ被加工物TAに照射した。1つのパルスのパルスエネルギーは比較例8と同じであり、1つのパルスのフルエンスは比較例8と同じであった。「400fs」の間隔があれば、2つのパルスが干渉しないことは確認済みであった。また、「400fs」の間隔であれば、1つ目のパルスによる光吸収コアC1の電子温度がピーク近傍のときに、2つ目のパルスが照射されることは確認済みであった。

0189

(比較例8)
図21(a)は、比較例8に係るパルスの照射結果を示す図である。図21(a)に示すように、加工痕23が観察された。加工痕23の形態は、実施例4の加工痕21の形態と異なっていた。従って、加工痕23は、特定層Obが加工されていることを示しており、被加工物TAは加工されていないと推定できた。また、加工痕23は、略円形状領域(薄い灰色部分)と、略円形状領域の周囲の略円環状領域濃い灰色部分)とを含んでいた。略円環状領域は、1つ目のパルスによる特定層Obの加工領域であり、略円形状領域は、2つ目のパルスによる特定層Obの加工領域であると推定できた。

0190

(実施例5)
図21(b)は、実施例5に係るパルスの照射結果を示す図である。図21(b)に示すように、加工痕25が観察された。加工痕25の形態は、実施例4の加工痕21の形態と同様であった。加えて、実施例5では、1つのパルスのパルスエネルギーは、実施例4の1つのパルスのパルスエネルギーの2倍であった。従って、加工痕25は、被加工物TAが加工されていることを示していると推定できた。また、実施例5では、実施例4と同様に、特定層Obに光吸収コアC1が形成され、被加工物TAに加工コアC2が形成されて被加工物TAが加工されたと推定できた。

0191

以上、実施例5では、加工が被加工物TAまで到達して、被加工物TAが加工されていることを観察できた。具体的には、加工痕25の中心部分は、加工が被加工物TAまで到達していることを示していた。これに対して、比較例8では、特定層Obのみが加工され、加工が被加工物TAまで到達していないことを観察できた。具体的には、加工痕23の略円環状領域及び略円形状領域のいずれも、加工が、特定層Obに留まり、被加工物TAまで到達していないことを示していた。なお、実施例5と比較例8との相違点は、パルス間隔だけであった。従って、比較例8では、1つ目のパルスによって光吸収コアC1が形成されたが、光吸収コアC1が消滅した後に2つ目のパルスが照射されたことが確認できた。

0192

なお、実施例1〜実施例5では、1つ目のパルスに対して2つ目のパルスが遅延しているが、1つ目のパルスと2つ目のパルスとが重なっている場合でも同様の結果(被加工物TAへの加工痕の形成)を得ることができると推定された。光吸収コアC1に2つ目のパルスが照射される限り、1つ目のパルス及び2つ目のパルスの照射タイミングが加工コアC2の形成に影響しないと推定できたからである。また、1つ目のパルスと2つ目のパルスとが重なるように制御する実験も可能である。しかし、1つ目のパルスと2つ目のパルスとが重なるように制御する実験では、どのパルスで光吸収コアC1が形成され、どのパルスで加工コアC2が形成されたかを確認することが困難である。そこで、1つ目のパルスに対して2つ目のパルスを遅延させて実験した。

0193

以上、図面を参照しながら本発明の実施形態及び実施例について説明した。但し、本発明は、上記の実施形態及び実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記(1)、(2))。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の個数等は、図面作成都合から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。

0194

(1)本発明の一実施形態に係る加工物の製造方法は、実施形態1、実施形態2、実施形態4、又は実施形態5に係るレーザー加工方法を実行することによって、第1レーザービームB1及び第2レーザービームB2を被加工物TA(又は特定層Ob及び被加工物TA)に照射して被加工物TAを加工し、被加工物TAから加工物を製造する。

実施例

0195

(2)本発明の一実施形態に係る加工物の製造方法は、実施形態3又は実施形態5の変形例に係るレーザー加工方法を実行することによって、第1レーザービームB1及び第2レーザービームCWを被加工物TA(又は特定層Ob及び被加工物TA)に照射して被加工物TAを加工し、被加工物TAから加工物を製造する。

0196

本発明は、レーザー加工方法、加工物の製造方法、及びレーザー加工装置に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。

0197

1レーザー加工装置
2レーザービーム生成部
3照射部
5ステージ
A1 第1レーザー発振器
A2 第2レーザー発振器
C1光吸収コア
C2 加工コア

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