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図面 (20)

光照射によって水に不溶な状態から可溶な状態に変化する高分子化合物を提供する。この高分子化合物は、下記の化学式(5)で表される。

化36

ただし、AおよびBは単結合または官能基であり、R3、R4、およびR9は水素またはアルキル基であり、R6およびR7は水素またはアルキル基等である。

概要

背景

外部からの刺激によって物性が変化する材料の応用が、バイオ医療などの分野で盛んに検討されている。細胞タンパク質などを扱うバイオデバイスの部材として、水系で物性が大きく変化する材料が求められている。ヒトiPS由来細胞活用が本格的に検討され、培養細胞個別操作するニーズが急速に高まる昨今、μmスケール局所作用が可能である光で物性を制御できる材料の有用性は計り知れない。

これまでに、光によって水和性が増加する高分子材料報告されている。しかしながら、これらの高分子材料は、細胞培養に適さない温度やpHで物性が変化するか、物性変化が不十分であった。また、光酸発生基を有し、大きな光物性変化を示す高分子材料の報告もある。しかし、この高分子材料は、水への不溶と可溶を光で制御するまでに至っていない。さらに、この高分子材料は、光開裂反応による低分子成分遊離や、強い酸発生を伴うなど、細胞系への適用を制限する問題もあった。一方、光によって架橋する材料がフォトリソグラフィなどに活用されている。しかし、この材料の多くは高温加熱処理を要する。

概要

光照射によって水に不溶な状態から可溶な状態に変化する高分子化合物を提供する。この高分子化合物は、下記の化学式(5)で表される。 ただし、AおよびBは単結合または官能基であり、R3、R4、およびR9は水素またはアルキル基であり、R6およびR7は水素またはアルキル基等である。

目的

本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高温処理が不要で、低分子成分をほとんど遊離させることなく、光照射によって水に不溶な状態から可溶な状態に変化する高分子化合物を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

主鎖と側鎖とを有する高分子化合物であって、前記側鎖が芳香環を備え、前記芳香環が、結合していた水素原子ニトロ基置換された第一炭素原子と、結合していた水素原子がアルデヒド基または下記の化学式(1)で表される官能基で置換された第二炭素原子とを備え、前記第一炭素原子と前記第二炭素原子が、同じベンゼン環内で隣り合っている高分子化合物。

請求項2

請求項1において、下記の化学式(2)で表される高分子化合物。ただし、Aは、単結合または官能基であり、R1は、アルデヒド基または上記の化学式(1)で表される官能基であり、R1とNO2は、隣り合った炭素原子にそれぞれ結合しており、R2は、水素アルキル基、下記の化学式(3)で表される官能基、および下記の化学式(4)で表される官能基の中から選ばれる少なくとも一種であり(R6およびR7は水素、アルキル基、または芳香環であり、R8はアルキル基である)、R3およびR4は、水素またはアルキル基であり、Gは、ベンゼン環の水素と置換されてもよい3個以下のアルキル基であり、wおよびzは、モル百分率を示し、0<w≦100、0≦z<100である。

請求項3

下記の化学式(5)で表される高分子化合物。ただし、AおよびBは、単結合または官能基であり、R3、R4、およびR9は、水素またはアルキル基であり、R6およびR7は、水素、アルキル基、または芳香環であり、x、y、およびzは、モル百分率を示し、0≦x<100、0≦y<100、0≦z<100(ただしx=y=0を除く)である。

請求項4

基材と、前記基材の表面に設けられた請求項1から3のいずれかに記載の高分子化合物を含有する層とを有する複合材

請求項5

光源と、請求項4に記載の複合材とを有する光駆動アクチュエータ

請求項6

請求項4に記載の複合材の前記高分子化合物を含有する層の表面で細胞を培養する培養工程と、前記培養工程の後、前記高分子化合物を含有する層の表面の少なくとも一部の領域に光を照射する光照射工程と、前記光照射工程で光を照射した領域に存在する細胞を除去する除去工程と、を有する細胞操作方法。

請求項7

請求項6において、前記除去工程で、前記高分子化合物を含有する層の一部を水に溶かして、前記培養した細胞の一部を除去する細胞操作方法。

請求項8

下記の化学式(6)で表される化合物

請求項9

下記の化学式(7)で表される化合物。

技術分野

0001

本発明は、光照射によって物性が変化する高分子化合物と、この高分子化合物を用いた細胞操作方法に関するものである。

背景技術

0002

外部からの刺激によって物性が変化する材料の応用が、バイオ医療などの分野で盛んに検討されている。細胞タンパク質などを扱うバイオデバイスの部材として、水系で物性が大きく変化する材料が求められている。ヒトiPS由来細胞活用が本格的に検討され、培養細胞個別操作するニーズが急速に高まる昨今、μmスケール局所作用が可能である光で物性を制御できる材料の有用性は計り知れない。

0003

これまでに、光によって水和性が増加する高分子材料報告されている。しかしながら、これらの高分子材料は、細胞培養に適さない温度やpHで物性が変化するか、物性変化が不十分であった。また、光酸発生基を有し、大きな光物性変化を示す高分子材料の報告もある。しかし、この高分子材料は、水への不溶と可溶を光で制御するまでに至っていない。さらに、この高分子材料は、光開裂反応による低分子成分遊離や、強い酸発生を伴うなど、細胞系への適用を制限する問題もあった。一方、光によって架橋する材料がフォトリソグラフィなどに活用されている。しかし、この材料の多くは高温加熱処理を要する。

先行技術

0004

T.Nishi, F.Tabusa, T.Tanaka, T.Shimizu, K.Nakagawa,Chemical and Pharmaceutical Bulletin,1985,vol.33,No.3,p.1140-1147

発明が解決しようとする課題

0005

本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高温処理が不要で、低分子成分をほとんど遊離させることなく、光照射によって水に不溶な状態から可溶な状態に変化する高分子化合物を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0006

本発明の高分子化合物は、主鎖と側鎖とを有し、側鎖が芳香環を備え、芳香環が、結合していた水素原子ニトロ基置換された第一炭素原子と、結合していた水素原子がアルデヒド基または下記の化学式(1)で表される官能基で置換された第二炭素原子とを備え、第一炭素原子と第二炭素原子が、同じベンゼン環内で隣り合っている。

0007

本発明の高分子化合物は、下記の化学式(2)で表される。



ただし、Aは、単結合または官能基であり、R1は、アルデヒド基または上記の化学式(1)で表される官能基であり、R1とNO2は、隣り合った炭素原子にそれぞれ結合しており、R2は、水素アルキル基、下記の化学式(3)で表される官能基、および下記の化学式(4)で表される官能基の中から選ばれる少なくとも一種であり(R6およびR7は水素、アルキル基、または芳香環であり、R8はアルキル基である)、






R3およびR4は、水素またはアルキル基であり、Gは、ベンゼン環の水素と置換されてもよい3個以下のアルキル基であり、wおよびzは、モル百分率を示し、0<w≦100、0≦z<100である。

0008

本発明の高分子化合物は、下記の化学式(5)で表される。



ただし、AおよびBは、単結合または官能基であり、R3、R4、およびR9は、水素またはアルキル基であり、R6およびR7は、水素、アルキル基、または芳香環であり、x、y、およびzは、モル百分率を示し、0≦x<100、0≦y<100、0≦z<100(ただしx=y=0を除く)である。

0009

本発明の複合材は、基材と、基材の表面に設けられた本発明の高分子化合物を含有する層とを有する。

0010

本発明の光駆動アクチュエータは、光源と、本発明の複合材とを有する。

0011

本発明の細胞操作方法は、本発明の複合材の高分子化合物を含有する層の表面で細胞を培養する培養工程と、培養工程の後、高分子化合物層の表面の少なくとも一部に光を照射する光照射工程と、光照射工程で光を照射した領域に存在する細胞を除去する除去工程とを有する。

0012

本発明の化合物は、下記の化学式(6)で表される。

0013

本発明の他の化合物は、下記の化学式(7)で表される。

発明の効果

0014

本発明によれば、光照射によって水に不溶な状態から可溶な状態になるなどの物性が変化する高分子化合物が得られる。

図面の簡単な説明

0015

本実施形態の高分子化合物の構造変化を示す模式図。
本実施形態の高分子化合物の光応答架橋を示す模式図。
実施例14〜実施例21で用いた本実施形態の高分子化合物の化学式。
(a)実施例14の光応答膨潤を説明するための模式図、(b)光応答膨潤後の複合材底面の画像。
(a)実施例15の光応答剥離を説明するための模式図、(b)光応答剥離後の複合材底面の画像。
(a)実施例16の光応答剥離を説明するための模式図、(b)光応答剥離後の複合材底面の画像。
(a)実施例17の光応答剥離を説明するための模式図、(b)光応答剥離後の複合材底面の画像。
(a)実施例18の光応答溶解抑制を説明するための模式図、(b)光応答溶解抑制後の複合材底面の画像。
(a)実施例19の光応答架橋と架橋体の光応答溶解を説明するための模式図、(b)光応答架橋後の複合材底面の画像、(c)架橋体の光応答溶解後の複合材底面の画像。
(a)実施例20の光応答剥離膨潤を説明するための模式図、(b)光応答剥離膨潤後の複合材底面の画像。
(a)実施例21の光架橋細胞パターニングを説明するための模式図、(b)光架橋細胞パターニング後の複合材底面の画像。
実施例22〜実施例33で用いた本実施形態の高分子化合物の化学式。
(a)実施例22の光応答溶解を説明するための模式図、(b)光応答溶解後の複合材底面の画像。
(a)実施例23の光応答架橋と架橋体の光応答溶解を説明するための模式図、(b)光応答架橋後の複合材底面の画像、(c)架橋体の光応答溶解後の複合材底面の画像。
(a)実施例24の光応答剥離膨潤を説明するための模式図、(b)光応答剥離膨潤後の複合材底面の画像。
(a)実施例25の光応答剥離を説明するための模式図、(b)光応答剥離後の複合材底面の画像。
(a)実施例26の光応答溶解を説明するための模式図、(b)光応答溶解後の複合材底面の画像。
(a)実施例27の光応答剥離を説明するための模式図、(b)光応答剥離後の複合材底面の画像。
本実施形態の高分子化合物の水溶液波長700nmにおける濁度温度依存性で、(a)ポリマー12に関するグラフ、(b)ポリマー14に関するグラフ。
(a)実施例29の光応答剥離を説明するための模式図、(b)紫外光照射前の複合材底面の画像、(c)紫外光照射中の複合材底面の画像、(d)紫外光照射直後の複合材底面の画像、(e)培地吹付け後の複合材底面の画像。
(a)実施例30の光応答剥離を説明するための模式図、(b)紫外光照射前の複合材底面の画像、(c)紫外光照射後の複合材底面の画像。
(a)実施例31の光応答剥離を説明するための模式図、(b)紫外光照射前の複合材上のiPS細胞コロニーの画像、(c)紫外光照射後の複合材上のiPS細胞コロニーの画像。
(a)実施例32の光応答剥離を説明するための模式図、(b)紫外光照射前の複合材上のiPS細胞コロニーの画像、(c)紫外光照射中の複合材上のiPS細胞コロニーの画像、(d)紫外光照射直後の複合材上のiPS細胞コロニーの画像、(e)紫外光照射後に複合材上に培地を吹き付けた後のiPS細胞コロニーの画像。
(a)実施例33の光応答剥離を説明するための模式図、(b)紫外光照射前の複合材上の細胞の画像、(c)紫外光照射後の複合材上の細胞の画像。
pNBANIPAAmコート層からの光応答剥離および一般的な酵素的剥離によって回収された細胞の生存率を示すグラフ。
BTBを含むNBAコポリマー水溶液の光応答pH変化を示す画像で、(a)光照射前の水溶液の画像、(b)下半分への光照射後の水溶液の画像、(c)全体への光照射後の水溶液の画像。
いくつかのpH条件で測定されたpNBANIPAAm水溶液の各温度での濁度の光応答性を示すグラフ。
いくつかのNBA導入率条件で測定されたpNBANIPAAm水溶液の各温度での濁度の光応答性を示すグラフ。
0または20mol%のNTBAAmモノマー成分を含むpNBANIPAAm(NBA導入率:10mol%)水溶液の各温度での濁度の光応答性を示すグラフ。
pNBANIPAAm溶液光誘起溶解を示す画像で、(a)pH4.0での画像、(b)pH5.0での画像、(c)pH7.4での画像。
pNBANIPAAmを介してPS基材表面に固定されたPE微粒子の光選択リリースを示す(a)断面模式図、(b)底面画像
pNBANIPAAmを介してPS基材表面に固定された蛍光標識BSAの光選択リリースを示す(a)断面模式図、(b)底面画像。
細胞接着阻害表面上のNBAコポリマーコート膜を用いた培養細胞のパターニングと光選択剥離を示す画像で、(a)形成された培養パターンの画像、(b)選択的光照射中の画像、(c)表面への培地吹付け後の画像。
NBAコポリマーを用いたひも細胞組織体形成過程を示す模式図。
部分的に基材表面上に固定されたHepG2細胞からなるひも状組織体の画像。
イオノマイシンの培養細胞への作用を説明するための模式図。
(a)NBAコポリマーによるイオノマイシンの固定と光リリースを説明するための模式図、(b)NIH/3T3細胞へのパターン照射によって引き起こされた局所細胞死の画像。

0016

以下、本発明の高分子化合物、複合材、光駆動アクチュエータ、および細胞操作方法について、実施形態と実施例に基づいて説明する。重複説明は適宜省略する。なお、2つの数値の間に「〜」を記載して数値範囲を表す場合、この2つの数値も数値範囲に含まれる。

0017

本発明の実施形態に係る高分子化合物は、主鎖と側鎖とを有し、側鎖が芳香環を備えている。芳香環は、結合していた水素原子がニトロ基で置換された第一炭素原子と、結合していた水素原子がアルデヒド基または下記の化学式(1)で表される官能基で置換された第二炭素原子とを備えている。第一炭素原子と第二炭素原子は、同じベンゼン環内で隣り合っている。

0018

本実施形態の高分子化合物は、光照射によって溶媒溶解性、例えば水溶解性が大きく変化する。このため、操作対象物、例えば細胞を本実施形態の高分子化合物を含有する層の表面に固定したり、操作対象物をこの層の表面から除去したりする操作が、マイクロメータースケールからマクロなスケールまで、光照射によって自在に行える。ヒトiPS細胞の活用が活発に検討される昨今、培養基材上での有用細胞の選抜や不要細胞の除去などの新規な細胞操作のニーズが急速に高まっている。特に、中性付近での水に対する溶解性を光照射によって制御できる本実施形態の高分子化合物は、このようなニーズに応える材料として極めて有用である。

0019

本実施形態の高分子化合物は、光照射によって溶媒可溶性発現する。このため、この高分子化合物を含有する層を介して基材に固定された操作対象物を、光とその溶媒を用いて容易に除去できる。また、本実施形態の高分子化合物を用いれば、低分子化合物とは異なり、多くの接着剤と同様に、強い凝集力によって操作対象物を強く接着することが期待できる。光照射によって水に不溶な状態から可溶な状態に変化する本実施形態の高分子化合物は、水を用いる操作ができるため、有機溶媒を用いる操作と比べて環境負荷が小さい。また、光照射によって水系で物性が変化する材料は、細胞培養をはじめとするバイオ系の制御に用いることができる。このため、基材からの細胞剥離を光で作動したり、光で細胞をパターニングしたりするなどの細胞操作が容易となる。

0020

本実施形態の高分子化合物として、下記の化学式(2)で表されるランダム共重合体の高分子化合物が挙げられる。



ただし、Aは、単結合または官能基であり、R1は、アルデヒド基または上記の化学式(1)で表される官能基であり、R1とNO2は、隣り合った炭素原子にそれぞれ結合しており、R2は、水素、アルキル基、下記の化学式(3)で表される官能基、および下記の化学式(4)で表される官能基の中から選ばれる少なくとも一種であり(R6およびR7は水素、アルキル基、または芳香環であり、R8はアルキル基である)、






R3およびR4は、水素またはアルキル基であり、Gは、ベンゼン環の水素と置換されてもよい3個以下のアルキル基であり、wおよびzは、モル百分率を示し、0<w≦100、0≦z<100である。なお、この高分子化合物への光照射による溶媒溶解性の変化が失われないのであれば、この高分子化合物は他の成分を含んでいてもよい。

0021

より具体例な本実施形態の高分子化合物として、下記の化学式(5)で表されるランダム共重合体の高分子化合物が挙げられる。



ただし、AおよびBは、単結合または官能基であり、R3、R4、およびR9は、水素またはアルキル基であり、R6およびR7は、水素、アルキル基、または芳香環であり、x、y、およびzは、モル百分率を示し、0≦x<100、0≦y<100、0≦z<100(ただしx=y=0を除く)である。なお、この高分子化合物への光照射による溶媒溶解性の変化が失われないのであれば、この高分子化合物は他の成分を含んでいてもよい。

0022

主鎖とベンゼン環とをつないでいるAおよびBの構造には特に制限がない。AおよびBとしては、単結合、またはエステル結合エーテル結合アミド結合チオエーテル結合チオエステル結合ウレタン結合、もしくはアルキレン基を備える官能基が挙げられる。すなわち、主鎖とベンゼン環が、単結合で直接結合されていてもよいし、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、ウレタン結合、またはアルキレン基を介して結合されていてもよいし、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、ウレタン結合、またはアルキレン基を備える他の官能基を介して結合されていてもよい。

0023

本実施形態の高分子化合物は、以下の方法で製造できる。まず、メタクリロイルクロリド等の重合性の酸クロリドまたはアルキルクロリドと、水酸基またはアミノ基を有する芳香環を含む化合物を反応させて重合性モノマーを合成する。この化合物は、2−ニトロベンズアルデヒド(以下「NBA」と記載することがある)部位またはアセタール保護された2−ニトロベンズアルデヒド(以下「ANBA」と記載することがある)部位も備えている。つぎに、この重合性モノマーを重合または共重合させて、本実施形態の高分子化合物が得られる。

0024

この重合性モノマーとして、下記の化学式(6)で表される化合物または下記の化学式(7)で表される化合物が挙げられる。これらの化合物のように、アセタール化されたアルデヒド基を有する化合物を用いて、本実施形態のNBAまたはANBAを含む高分子化合物を製造することが、収率などの点で好ましい。

0025

また、酸クロリドまたはアルキルクロリドを有する反応性高分子と、NBA部位またはANBA部位と、水酸基またはアミノ基とを有する芳香環を含む化合物を反応させても、本実施形態の高分子化合物が製造できる。水酸基とNBAを有する化合物は、市販品がそのまま利用できる。アミノ基とNBAを有する化合物は、市販のp−トルイジンニトロ化によりメチル基オルト位にニトロ基を導入した後、酸化によりメチル基をアルデヒド基に変換して得られる。アミノ基とNBAを有する化合物は、市販の5−アミノ−2−ニトロ安息香酸のアミノ基をアセチル化保護した状態で、カルボキシル基還元して得ることもできる。

0026

図1は、本実施形態の高分子化合物の構造変化を模式的に示している。ニトロ基が結合している第一炭素原子と、アルデヒド基または上記の化学式(1)で表される官能基が結合している第二炭素原子が、同じベンゼン環内で隣り合っている。このため、水や他の溶媒中で、本実施形態の高分子化合物に波長300nm以上410nm以下の光を照射すると、図1に示すように、NBAは高いプロトン解離能を有する2−ニトロソ安息香酸に変化し、ANBAはエチレングリコールフェニルエステル構造に変化する。

0027

そして、pHが4を超えると、2−ニトロソ安息香酸からプロトンが解離して負電荷を帯びる。こうして、N−イソプロピルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、もしくはN,N−ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系モノマーから得られる高分子化合物、またはビニルエーテル系モノマーを(共)重合して得られる高分子化合物などの適度な水和性を有する高分子化合物は、光の照射によって水に不溶な状態から可溶な状態に変化する。

0028

図2は、本実施形態の高分子化合物の光応答架橋を模式的に示している。空気中または貧溶媒中など、固相状態の本実施形態の高分子化合物に光照射した場合、図2に示すように、少なくとも一部のNBA基またはANBA基から生じるニトロソ基平衡二量化などによって、高分子間の架橋がもたらされる。このため、固相状態の本実施形態の高分子化合物に光を照射すると溶媒溶解性が低下する。

0029

本発明の実施形態に係る複合材は、基材と、基材の表面に設けられた本実施形態の高分子化合物を含有する層を備えている。本実施形態の複合材は、光の照射によって表面の物性を変化させることができる。より具体的には、複合材の表面に存在する高分子化合物の水などの溶媒への溶解性、または高分子化合物の架橋反応を、光照射によって誘起することができる。複合材の基材側から本実施形態の高分子化合物を含有する層に光を照射できるので、基材は光を透過する材料から構成されていることが好ましい。基材としては、ポリスチレンポリメチルペンテンポリカーボネートシクロオレフィンポリマー等のプラスチック基板もしくはフィルムガラス石英シリコーン樹脂、または透析膜などのセルロース系膜材料が挙げられる。

0030

また、本実施形態の高分子化合物と光に応答しない高分子化合物を混合した複合層を、本実施形態の複合材の高分子化合物を含有する層として用いることもできる。この複合層の上にゲルなどからなる層状物をさらに担持した材料では、光を照射する本実施形態の高分子化合物の領域の物性変化に応じて、担持された層状物の剥離の促進と剥離の抑制が制御できる。本実施形態の複合材は、表面の細胞接着性を光の照射によって変化させることが可能である。

0031

したがって、本実施形態の複合材を細胞の培養基材として用いれば、複合材の表面の全部または一部の領域に光を照射することによって細胞接着性が制御でき、培養細胞を選択的に剥離あるいは捕捉するなどの細胞分別操作が可能となる。特に、本実施形態の複合材によれば、接着細胞やコロニーの個別剥離はもちろん、細胞内の特定部位(例えば偽足)のみを剥離することが可能である。このため、本実施形態の高分子化合物は、純化選択取得を含む細胞の選別操作に加え、個々の細胞接着状態の詳細な解析のための有用かつ強力な実現手段となることが強く期待される。

0032

本発明の実施形態に係る細胞操作方法は、本実施形態の複合材の高分子化合物を含有する層の表面で細胞を培養する培養工程と、培養工程の後、高分子化合物を含有する層の表面の少なくとも一部に光を照射する光照射工程と、光照射工程で光を照射した領域に存在する細胞を除去する除去工程とを備えている。光照射工程では、基材側から光を照射することができる。除去工程では、高分子化合物を含有する層を水に溶かして、培養した細胞の一部を除去することができる。

0033

本実施形態の高分子化合物が乾燥しているときや貧溶媒中に存在するときなど、固相状態の本実施形態の高分子化合物に光照射することによって、溶媒耐性を有する架橋構造が容易に形成される。このため、本実施形態の高分子化合物を含有する層の表面に、架橋ポリマーなどの別の材料をスピンコートで担持させることができる。

0034

本実施形態の高分子化合物の光架橋反応を一部にとどめて光応答基を残存させ、水や他の溶媒中で本実施形態の高分子化合物に光照射して可溶性を誘起させることもできる。このため、本実施形態の高分子化合物を含有する層の上に溶媒中で膨潤するゲルを担持させれば、暗所では高分子化合物を含有する層の表面にゲル層が安定して固定されるが、光照射によって速やかに、高分子化合物を含有する層からゲル層を膨潤剥離させることができる。その際のゲル層の浮き上がりは大きな動きを伴うため、一方向の光駆動アクチュエータとして用いることができる。すなわち、本発明の実施形態に係る光駆動アクチュエータは、光源と、本実施形態の複合材を備えている。

0035

以下の実施例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。また、特記しない限り、比は質量比を、%は質量%をそれぞれ意味する。

0036

実施例1:化合物1の合成(下記反応式(I))

0037

5−ヒドロキシ−2−ニトロベンズアルデヒド(1当量)、エチレングリコール(1.5当量)、およびp−トルエンスルホン酸一水和物触媒量)のベンゼン懸濁液を、ディーン・スターク装置を用いて数時間加熱還流した。冷後、減圧下で溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムメルク7734、酢酸エチルヘキサン=1:4〜3:7(容量比))にて分離精製した。化合物1を80〜95%の収率で得た。なお、非特許文献1記載の方法によっても化合物1が合成できる。

0038

実施例2:化合物2の合成(下記反応式(II))

0039

メタクリロイルクロリド(1当量)、化合物1(1.1当量)、およびトリエチルアミン(1.2当量)のジクロロメタン溶液を、室温で数時間から一昼夜撹拌した後、反応液希塩酸にて処理した。その後、ジクロロメタンで抽出し、濃縮した残渣をシリカゲルカラム(メルク7734、酢酸エチル:ヘキサン=3:7(容量比))にて精製した。化合物2(上記の化学式(6)で表される化合物)を90%以上の収率で得た。
1H-NMR(CDCl3): 8.02 (1H, d, J = 8.8 Hz), 7.57 (1H, d, J = 2.6 Hz), 7.29 (1H, dd, J = 8.8, 2.6 Hz), 6.54 (1H, s), 6.39 (1H, m), 5.84 (1H, m), 4.04 (4H, m), 2.07 (3H, dd, J = 1.5, 1.0 Hz)

0040

実施例3:化合物3の合成(下記反応式(III))

0041

化合物2、メタクリル酸メチル、およびアゾイソブチロニトリル無水テトラヒドロフラン溶液を、窒素気流下、65℃で一昼夜撹拌した。冷後、エーテル滴下して生じた析出物を濾取した。テトラヒドロフランエーテル溶液を用いて再沈殿させ化合物3を得た。具体的には、化合物2:メタクリル酸メチル:アゾイソブチロニトリルが、約50:50:1〜2(モル比)になるように量した後、重合反応および精製により化合物3を60〜70%の収率で得た。1H−NMRスペクトルから、化合物3の組成比y:zを49:51と概算した。
1H-NMR(d-acetone): 8.04 (1H, bs), 7.58 (1H, bs), 7.45 (1H, bs), 6.42 (1H, bs), 3.97 (4H, m, OCH2OCH2O), 3.65 (3H, m), 2.67-1.71 (4H, m), 1.71-0.77 (6H, m)

0042

実施例4:化合物4の合成(下記反応式(IV))

0043

化合物3のクロロホルム溶液に希塩酸または濃塩酸を加え、40〜70℃で数時間から数日間撹拌した。濃縮後、エーテルに滴下して生じた析出物を濾取した。テトラヒドロフラン−エーテル溶液を用いて再沈殿させ化合物4を得た。1H−NMR(CDCl3)スペクトルで、アルデヒド基を保護していたアセタール由来する3.97ppmおよび6.42ppmのピーク消失したこと、ならびにアルデヒド基に由来する10.36ppmのピークが出現したことから、化合物4の生成を確認した。また、本実施例における化合物4の組成比x:y:zは、ニトロベンズアルデヒド基の芳香環に由来する7〜8ppmおよび10ppm付近のピークの積分値と、メトキシ基に由来する3.6ppm付近のピークの積分値から、x:y:z=49:0:51と概算した。

0044

実施例5:化合物5の合成(下記反応式(V))

0045

化合物2、N,N−ジメチルアクリルアミド、およびアゾイソブチロニトリルの無水テトラヒドロフラン溶液を、窒素気流下、65℃で一昼夜撹拌した。冷後、エーテルに滴下して生じた析出物を濾取した。テトラヒドロフラン−エーテル溶液を用いて再沈殿させ化合物5を得た。具体的には、化合物2:N,N−ジメチルアクリルアミド:アゾイソブチロニトリルが、約10:90:1(モル比)になるように秤量した後、重合反応および精製により化合物5を51%の収率で得た。1H−NMRスペクトルから、化合物5の組成比y:zを14:86と概算した。
1H-NMR(CDCl3): 7.97 (1H, bs), 7.47 (1H, bs), 7.23 (1H, bs), 6.39 (1H, bs), 4.02 (4H, bs, OCH2CH2O), 3.25-0.86 (60H, m)

0046

実施例6:化合物6の合成(下記反応式(VI))

0047

化合物5のクロロホルムまたはテトラヒドロフラン溶液に濃塩酸を加え、60℃で数時間〜数日間撹拌した。エーテル希釈により生じた析出物を、テトラヒドロフラン−エーテルを用いて再沈殿させ化合物6を得た。1H−NMR(CDCl3)スペクトルで、アルデヒド基を保護していたアセタールに由来する4ppm付近のピークと、アルデヒド基に由来する10ppm付近のピークの積分値より、化合物6の組成比x:y:zを32:11:57と算出した。

0048

実施例7:化合物7の合成(下記反応式(VII))

0049

氷冷した3−クロロプロピルアミン塩酸塩(1.5当量)およびトリエチルアミン(3当量)の無水ジクロロメタン溶液に、メタクリロイルクロリド(1当量)の無水ジクロロメタン溶液を窒素気流下で滴下し、室温にて一昼夜撹拌した。希塩酸処理後、ジクロロメタン抽出を行い、濃縮により得た残渣をシリカゲルカラム(メルク7734、酢酸エチル:ヘキサン=3:2(容量比))にて精製した。化合物7を50〜60%の収率で得た。
1H-NMR(CDCl3): 6.08 (1H, bs), 5.69 (1H, bs), 5.34 (1H, bs), 3.61 (2H, t, J = 6.3 Hz), 3.46 (2H, dt, J = 6.0, 6.6 Hz), 2.05 (2H, tt, J = 6.6, 6.3 Hz), 1.97 (3H, bs)

0050

実施例8:化合物8の合成(下記反応式(VIII))

0051

化合物7(1.1当量)、化合物1(1当量)、および無水炭酸カリウム(1.2当量)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液を、120℃で数時間撹拌した後、氷水で処理した。エーテル抽出後、濃縮により得た残渣をシリカゲルカラム(メルク7734、酢酸エチル:ヘキサン=9:1(容量比))にて精製した。化合物8(上記の化学式(7)で表される化合物)を50〜60%の収率で得た。
1H-NMR(CDCl3): 8.03 (1H, d, J = 9.0 Hz), 7.29 (1H, d, J = 2.8 Hz), 6.91 (1H, dd, J = 9.0, 2.8 Hz), 6.55 (1H, s), 6.12 (1H, bs), 5.70 (1H, bs), 5.35 (1H, m), 4.15 (2H, t, J = 5.9 Hz), 4.05 (4H, m), 3.54 (2H, m), 2.10 (2H, m), 1.98 (3H, bs)

0052

実施例9:化合物9の合成(下記反応式(IX))

0053

化合物8:N,N−ジメチルアクリルアミド:アゾイソブチロニトリルが25:75:1(モル比)で含まれる無水テトラヒドロフラン溶液を、窒素気流下、65℃で一昼夜撹拌した。冷後、エーテルに滴下することで生じた析出物を濾取した。テトラヒドロフラン−エーテル溶液を用いて再沈殿させ化合物9を得た。1H−NMR(CDCl3)スペクトルで、化合物8に由来する6〜8ppmのピークと、1〜4ppmに出現するその他のピークの積分値から、化合物9の組成比y:zを22:78と概算した。

0054

実施例10:化合物10の合成(下記反応式(X))

0055

化合物9のクロロホルム溶液に希塩酸を加え、60℃で3日間撹拌した。エーテル希釈により生じた析出物を、テトラヒドロフラン−エーテルを用いて再沈殿させ化合物10を得た。1H−NMR(CDCl3)スペクトルで、アルデヒド基を保護しているアセタールに由来する4ppmのピークと、芳香族およびNH基に由来する7〜8ppmのピークの積分値から、化合物10の組成比x:y:zを17:5:78と概算した。

0056

実施例11:化合物11の合成(下記反応式(XI))

0057

化合物8:N−イソプロピルアクリルアミド:アゾイソブチロニトリルが25:75:1(モル比)で含まれる無水テトラヒドロフラン溶液を、窒素気流下、65℃で一昼夜撹拌した。冷後、エーテルに滴下することで生じた析出物を濾取した。テトラヒドロフラン−エーテル溶液を用いて再沈殿させ化合物11を得た。1H−NMR(CDCl3)スペクトルで、化合物8の芳香族に由来する7〜8ppmのピークと、1〜4ppmに出現するその他のピークの積分値から、化合物11の組成比y:zを25:75と概算した。化合物11の組成比は、原料仕込み比とほぼ一致していた。

0058

実施例12:化合物12の合成(下記反応式(XII))

0059

化合物11のクロロホルム溶液に希塩酸を加え、60℃で3日間撹拌した。エーテル希釈により生じた析出物を、テトラヒドロフラン−エーテルを用いて再沈殿させ化合物12を得た。1H−NMR(CDCl3)スペクトルで、アルデヒド基を保護しているアセタールに由来する4ppmのピークが消失したことから、化合物12の組成比x:y:zを25:0:75と概算した。すなわち、化合物12は、化合物11のアセタール保護されたアルデヒド基のほとんどが、アルデヒド基に変化した化合物であった。

0060

実施例13:化合物13の合成(下記反応式(XIII))

0061

塩化メタクリイド(1.1当量)、5−ヒドロキシ−2−ニトロベンズアルデヒド(1当量)、およびトリエチルアミン(1.2当量)の無水ジクロロメタン溶液を、一昼夜撹拌後、反応液を希塩酸で処理した。ジクロロメタン抽出後、濃縮により得た残渣をシリカゲルカラム(メルク7734、酢酸エチル:ヘキサン=3:7(容量比))で精製した。化合物13を87%以上の収率で得た。
1H-NMR(CDCl3): 10.45 (1H, s), 8.22 (1H, d, J = 8.8 Hz), 7.71 (1H, d, J = 2.6 Hz), 7.55 (1H, dd, J = 8.8, 2.6 Hz), 6.41 (1H, s), 5.88 (1H, m), 2.08 (3H, dd, J = 1.4, 1.0 Hz)

0062

実施例14:化合物4(x=33、y=16、z=51)の光応答膨潤
実施例4と同様の方法で、図3に示すポリマー1(化合物4でx=33、y=16、z=51)を調製した。親水処理化ポリスチレン基板上に、ポリマー1の2%2,2,2-trifluoroethanol(TFE)溶液をスピンコートし、85℃で1時間加熱して複合材を得た。この複合材をpH7.4のリン酸緩衝溶液PBS)に浸漬した状態で、図4(a)に示すように、ポリスチレン基板側から、波長365nm、強度120mW/cm2の光を所定パターンドット状にポリマー1に10秒間照射すると、直ちに光を照射した領域のポリマー1が膨潤した。図4(b)は、光応答膨潤後に、倒立顕微鏡で複合材を底面から観察した画像である。

0063

実施例15:化合物4(x=49、y=0、z=51)の光応答剥離
ポリアクリル酸(PAAc)の0.05%メタノール溶液を、組織培養用ポリスチレン基板にスピンコートし、85℃で2時間加熱して、PAAc修飾ポリスチレン基材を調製した。また、実施例4と同様の方法で、図3に示すポリマー2(化合物4でx=49、y=0、z=51)を調製した。2,2,2,3,3,3-hexafluoroisopropanol(HFIP)とTFEの混合溶媒にポリマー2を0.2%溶解させた溶液をこの基材上にスピンコートし、85℃で30分間加熱して複合材を得た。この複合材を0.05mN水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した状態で、図5(a)に示すように、ポリスチレン基板側から、波長365nm、強度66mW/cm2の光を所定パターンのドット状にポリマー2に30秒間照射した。その後、複合材の表面をピペッティングすると、光を照射した領域からポリマー2が剥離した。

0064

実施例16:化合物4(x=0、y=49、z=51)の光応答剥離
PAAcの0.1%メタノール溶液を、組織培養用ポリスチレン基板にスピンコートし、85℃で2時間加熱して、PAAc修飾ポリスチレン基材を調製した。また、実施例4と同様の方法で、図3に示すポリマー3(化合物4でx=0、y=49、z=51)を調製した。HFIP77%とTFE23%の混合溶媒にポリマー3を0.41%溶解させた溶液をこの基材上にスピンコートし、85℃で2時間加熱して複合材を得た。この複合材をpH7.4のPBSに浸漬した状態で、図6(a)に示すように、ポリスチレン基板側から、波長365nm、強度120mW/cm2の光を所定パターンのドット状にポリマー3に2分間照射した。その後、複合材の表面をピペッティングすると、光を照射した領域からポリマー3が剥離した。

0065

実施例17:化合物4(x=0、y=49、z=51)と部分加水分解PMMAの複合層からのヒドロキシプロピルセルロースゲル層の光応答剥離
図3に示すポリマー3の2%TFE溶液と、部分加水分解PMMAの0.2%TFE溶液を1:5で混合した混合溶液を、ポリスチレン基板にスピンコートして、ポリマー3と部分加水分解PMMAの複合層を表面に備える複合材を得た。ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を2%、tetramethoxymethyl glycoluril(TMMGU)を0.015%、H2SO4を3mmol/kgを含むメタノール溶液を、この複合材の複合層にスピンコートし、85℃で2時間加熱することによって架橋HPC層を形成した。

0066

図7(a)に示すように、架橋HPC層を形成したこの材料のポリスチレン基板側から、波長365nm、強度66mW/cm2の光を所定パターンの反転ドット状に複合層に4分間照射した。その後、エタノールと水を7:3で混合した混合液にこの材料を浸漬すると、光を照射しなかったドット状の領域では架橋HPC層が複合層から自発的に剥離した。これに対して、光を照射した反転ドット状の領域では、架橋HPC層の複合層からの剥離が抑制された。

0067

実施例18:化合物6(x=0、y=20、z=80)の光応答溶解抑制
実施例6と同様の方法で、図3に示すポリマー4(化合物6でx=0、y=20、z=80)を調製した。ポリスチレン基板上に、ポリマー4の1%TFE溶液をスピンコートし、85℃で30分間加熱して複合材を得た。図8(a)に示すように、空気中でこの複合材のポリスチレン基板側から、波長365nm、強度66mW/cm2の光を所定パターンのドット状にポリマー4に30秒間照射した。その後、エタノールと水を7:3で混合した混合液に複合材を浸漬した。光を照射しなかった領域では、ポリマー4が混合液に溶解して複合材から除去されたのに対して、光を照射した領域では、ポリマー4の架橋反応によって混合液への溶解が抑制され、複合材にポリマー4の架橋物が残存した。

0068

実施例19:化合物6(x=0、y=14、z=86)の光応答架橋と架橋体の光応答溶解
実施例6と同様の方法で、図3に示すポリマー5(化合物6でx=0、y=14、z=86)を調製した。ポリスチレン基板上に、ポリマー5の1%TFE溶液をスピンコートして複合材を得た。図9(a)に示すように、空気中でこの複合材のポリスチレン基板側から、波長365nm、強度66mW/cm2の光を所定パターンのドット状にポリマー5に20秒間照射した。

0069

その後、エタノールと水を7:3で混合した混合液に複合材を浸漬すると、光を照射しなかった領域では、ポリマー5が混合液に溶解して複合材から除去されたのに対して、光を照射した領域では、ポリマー5の架橋反応によって混合液への溶解が抑制され、複合材にポリマー5の架橋物が残存した。さらに、波長360〜440nm、強度400mW/cm2の光を所定パターンのドット状の局所のポリマー5に1分間照射した。その結果、追加の光を照射した局所領域では、ポリマー5の架橋物が混合液に溶解して複合材から除去された。

0070

実施例20:化合物6(x=32、y=11、z=57)の光応答剥離膨潤
PAAcの0.05%メタノール溶液を、組織培養用ポリスチレン基板にスピンコートし、85℃で2時間加熱して、PAAc修飾ポリスチレン基材を調製した。また、実施例6と同様の方法で、図3に示すポリマー6(化合物6でx=32、y=11、z=57)を調製した。ポリマー6の0.5%TFE溶液をこの基材上にスピンコートして複合材を得た。この複合材を5mNのNaOH水溶液に浸漬した状態で、図10(a)に示すように、ポリスチレン基板側から、波長360〜440nm、強度400mW/cm2の光を所定パターンのドット状にポリマー6に10秒間照射した。光を照射した領域ではポリマー6がPAAc層から直ちに剥離膨潤した。

0071

実施例21:化合物6(x=0、y=23、z=77)の光架橋細胞パターニング
実施例6と同様の方法で、図3に示すポリマー7(化合物6でx=0、y=23、z=77)を調製した。また、HPCを0.2%、TMMGUを0.0015%、H2SO4を0.5mmol/kgそれぞれ含むメタノール溶液を、組織培養用ポリスチレン基板にスピンコートし、85℃で2時間加熱して細胞接着阻害性の架橋HPC層を形成し、HPCゲル修飾ポリスチレン基材を調製した。さらに、TFEとn−ブタノールを7:3で混合した混合溶媒にポリマー7を0.7%溶解した溶液を、この架橋HPC層上にスピンコートして複合材を得た。

0072

図11(a)に示すように、空気中でこの複合材のポリスチレン基板側から、波長365nm、強度120mW/cm2の光を所定パターンのドット状にポリマー7に1分間照射した。エタノールと水を7:3で混合した混合液を、複合材の表面に吹き付けて2分間静置し、軽く揺すってからこの混合液を吸引除去した。その後、複合材を水で2回洗浄したところ、光を照射しなかった領域では架橋HPC層からポリマー7が除去された。一方、光を照射した領域では、ポリマー7の架橋物が架橋HPC層上に残存した。そして、培地に分散させたNIH/3T3細胞を複合材に播種し、翌日まで培養したところ、光を照射した領域に残存していたポリマー7の架橋物の表面に細胞が接着した。

0073

実施例22:化合物10(x=17、y=5、z=78)の光応答溶解
実施例10と同様の方法で、図12に示すポリマー9(化合物10でx=17、y=5、z=78)を調製した。ポリスチレン基板上に、ポリマー9の1%TFE溶液をスピンコートし、85℃で2時間加熱して複合材を得た。図13(a)に示すように、培地中でこの複合材のポリスチレン基板側から、波長365nm、強度120mW/cm2の光を所定パターンのドット状にポリマー9に2秒間照射すると、光を照射した領域のポリマー9が培地に溶解した。

0074

実施例23:化合物10(x=17、y=5、z=78)の光応答架橋と架橋体の光応答溶解
図12に示すポリマー9の1%TFE溶液を、組織培養用ポリスチレン基板にスピンコートし、85℃で15分間加熱して複合材を得た。図14(a)に示すように、空気中でこの複合材のポリスチレン基板側から、波長365nm、強度66mW/cm2の光を所定パターンのドット状にポリマー9に5秒間照射して、水でリンスした。その後、複合材をpH7.4のPBSに浸漬したところ、光を照射しなかった領域ではポリマー9が徐々にPBSに溶解した。一方、光を照射した領域では、ポリマー9の架橋物がポリスチレン基板上に残存した。さらに、PBS中でこの複合材のポリスチレン基板側から、波長365nm、強度120mW/cm2の光を、残存したポリマー9の一部(長方形状)に1秒間照射すると、光を照射した領域のポリマー9はPBSに溶解した。

0075

実施例24:化合物10(x=17、y=5、z=78)からのHPC層の光応答剥離膨潤
図12に示すポリマー9の1%TFE溶液をポリスチレン基板にスピンコートし、85℃で2時間加熱して複合材を得た。この複合材のポリマー9の層の表面全体に、波長365nm、強度28mW/cm2の光を10秒間照射し、水でリンスした後に乾燥した。さらに、HPCを3.6%、TMMGUを0.044%、H2SO4を4.4mmol/kgそれぞれ含むメタノール溶液を、複合材のポリマー9の層にスピンコートし、85℃で2時間加熱することによって架橋HPC層を形成した。図15(a)に示すように、pH7.4のPBS中で複合材のポリスチレン基板側から、波長365nm、強度120mW/cm2の光を所定パターンの六角形状にポリマー9に5秒間照射した。光を照射した領域ではポリマー9がポリスチレン基板から直ちに剥離膨潤した。

0076

実施例25:化合物10(x=17、y=5、z=78)からの細胞の光応答剥離
図12に示すポリマー9の1%TFE溶液をポリスチレン基板にスピンコートし、85℃で2時間加熱して複合材を得た。培地に分散させたNIH/3T3細胞をこの複合材に播種した。半日培養したところ、図16(a)に示すように、ポリマー9の層の表面全面に細胞が接着伸展した。複合材のポリスチレン基板側から、波長365nm、強度120mW/cm2の光を局所的にポリマー9に1分間照射したところ、光を照射した領域では伸展していた細胞が丸く変化した。1時間後、複合材の表面全体に培地を軽く吹き付けると、光を照射した領域では細胞がポリマー9から剥離した。

0077

実施例26:化合物12(x=25、y=0、z=75)の光応答溶解
実施例12と同様の方法で、図12に示すポリマー11(化合物12でx=25、y=0、z=75)を調製した。ポリマー11を1.5%含むTFE溶液をポリスチレン基板にスピンコートし、85℃で2.5時間加熱して複合材を得た。図17(a)に示すように、PBS中でこの複合材のポリスチレン基板側から、波長365nm、強度120mW/cm2の光を、所定パターンのドット状にポリマー11に2秒間照射すると、光を照射した領域のポリマー11はPBSに溶解した。

0078

実施例27:化合物12(x=25、y=0、z=75)と細胞の光応答剥離
ポリマー11を1.5%含むTFE溶液をポリスチレン基板にスピンコートし、85℃で2.5時間加熱して複合材を得た。培地に分散させたNIH/3T3細胞をこの複合材に播種した。半日培養したところ、図18(a)に示すように、ポリマー11の層の表面全面に細胞が接着伸展した。複合材のポリスチレン基板側から、波長365nm、強度66mW/cm2の光を、局所的な長方形状にポリマー11に10秒間照射した。30分後、複合材の表面全体に培地を軽く吹き付けると、光を照射した領域では、細胞とポリマー11が一体となった状態でポリスチレン基板から剥離した。

0079

実施例28:化合物12(x=10、y=0、z=90とx=4、y=0、z=96)水溶液の濁度の温度依存性
実施例12と同様の方法で、図12に示すポリマー12(化合物12でx=10、y=0、z=90)とポリマー14(化合物12でx=4、y=0、z=96)を調製した。ポリマー12とポリマー14をそれぞれ0.01%含む2種類のリン酸緩衝水溶液(いずれもpH7.41)を調製した。これら2種類の水溶液の波長700nmにおける濁度(光路長1cm)の温度依存性を、波長365nmの紫外光の照射前後で測定した。なお、紫外光照射後の各水溶液は、十分量の紫外光を照射したものである。その結果を図19に示す。紫外光照射前の濁度を■で、紫外光照射後の濁度を●で表している。

0080

紫外光照射前のポリマー12の水溶液およびポリマー14の水溶液の下限臨界溶液温度(LCST)は、それぞれ10℃および20℃であった。なお、LCSTは、その温度以下でポリマーが水溶するときの温度である。一方、紫外光照射後のポリマー12の水溶液およびポリマー14の水溶液では、測定した60℃以下の温度範囲においてLCSTが観察されなかった。このことから、pH7.41において、ポリマー12は少なくとも10℃以上60℃以下の範囲で、ポリマー14は少なくとも20℃以上60℃以下の範囲で、紫外光照射によって水に不溶な状態から水に可溶な状態に変化することが確認できた。

0081

実施例29:化合物12(x=10、y=0、z=90)と細胞の光応答剥離
ポリマー12を0.9%含むTFE溶液88%とn−BuOH12%の混合溶液を、ポリスチレン基板にスピンコートし、85℃で2時間加熱して複合材を得た。この複合材を37℃の水に1時間浸漬した後、培地に分散させたNIH/3T3細胞をこの複合材に播種した。半日培養したところ、図20(a)に示すように、ポリマー12の層の表面全体で細胞が接着伸展した。

0082

そして、複合材上の一部の細胞に、波長365nm、強度120mW/cm2の光をポリスチレン基板側から3秒間照射した。その直後に複合材の表面全体に培地を軽く吹き付けると、光を照射した領域のみの接着伸展していた細胞が、ポリマー12と一体となった状態でポリスチレン基板から剥離し回収できた。同様の条件で多数の細胞を回収し、トリパンブルーで染色したところ、光を照射した領域から回収した細胞の98%が生存していた。

0083

実施例30:化合物12(x=10、y=0、z=90)とpNIPAAmの複合層からの細胞の光応答剥離
ポリマー12を0.91%、および無修飾Poly(N-isopropylacrylamide)(pNIPAAm)を0.36%含むTFE溶液を、ポリスチレン基板にスピンコートし、85℃で2.5時間加熱して、ポリマー12とpNIPAAmの複合層を表面に備える複合材を得た。MDCK細胞を培地に分散してこの複合材に播種した。半日培養したところ、図21(a)に示すように、この複合層の表面全体で細胞が接着伸展した。複合材上の細胞の一部の領域に、波長365nm、強度120mW/cm2の光をポリスチレン基板側から3秒間照射した。光を照射した領域では複合層が培地に溶解し、溶解した複合層上に接着伸展していた細胞が個別に剥離した。本発明の高分子化合物を用いて細胞1個単位で操作できることが実証された。

0084

実施例31:化合物12(x=10、y=0、z=90)とpNIPAAmの複合層と細胞コロニーの光応答剥離
ポリマー12を1.5%、および無修飾pNIPAAmを0.44%含むTFE溶液91%とn−BuOH9%の混合溶液を、ポリスチレン基板にスピンコートし、85℃で2時間加熱して、ポリマー12とpNIPAAmの複合層を表面に備える複合材を得た。室温に保った状態で、この複合材の表面に膜調整剤(コーニング社、マトリゲル)をコートし、さらにヒトiPS細胞の集塊を播種した。

0085

2日間培養したところ、複合材の表面全体でヒトiPS細胞のコロニーが接着伸展した。コロニーの一つが接着していた複合層の領域に、波長365nm、強度120mW/cm2の光をポリスチレン基板側から3秒間照射した。図22(a)に示すように、光を照射した領域では、複合層がポリスチレン基板から剥離し、接着伸展していたコロニーが顕著に収縮した。

0086

実施例32:化合物12(x=7、y=0、z=93)と細胞コロニーの光応答剥離
実施例12と同様の方法で、図12に示すポリマー13(化合物12でx=7、y=0、z=93)を調製した。ポリマー13の0.88%TFE溶液をポリスチレン基板にスピンコートし、85℃で2.5時間加熱して複合材を得た。室温に保った状態で、この複合材の表面に膜調整剤(コーニング社、マトリゲル)をコートし、さらにヒトiPS細胞の集塊を播種した。

0087

6日間培養したところ、複合材の表面全体でヒトiPS細胞のコロニーが接着伸展した。コロニーの一つが接着していたポリマー13の領域に、波長365nm、強度120mW/cm2の光をポリスチレン基板側から3秒間照射した。図23(a)に示すように、光を照射した領域では、ポリマー13の層がポリスチレン基板から剥離し、接着伸展していたコロニーが顕著に収縮した。さらに、複合材の表面に培地を軽く吹き付けると、接着伸展していたコロニーとポリマー13が一体となった状態で、ポリスチレン基板から分離・除去された。

0088

実施例33:化合物12(x=10、y=0、z=90)とpNIPAAmの複合層からの細胞内特定部位の選択的な光応答剥離
ポリマー12を0.81%、および無修飾pNIPAAmを0.56%含むTFE溶液を、ポリスチレン基板にスピンコートし、85℃で2.5時間加熱して、ポリマー12とpNIPAAmの複合層を表面に備える複合材を得た。NIH/3T3細胞を培地に分散してこの複合材に播種した。半日培養したところ、図24(a)に示すように、この複合層の表面全体で細胞が接着伸展した。いくつかの細胞の偽足先端が存在していた複合層の領域に、波長365nm、強度120mW/cm2の光をポリスチレン基板側から3秒間照射した。光を照射した領域の複合層の表面のみから偽足の先端が外れ、偽足が収縮した。本発明の高分子化合物を用いて個別細胞の特定部位を独立して操作できることが実証された。

0089

実施例34:化合物15および化合物16の合成(下記反応式(XIV))

0090

適度に疎水的なモノマー成分として、NBA基を有する重合性モノマーである化合物14を用いて、N−tert−ブチルアクリルアミド(NTBAAm)を含むNBAポリマー(化合物15および化合物16)を、以下の通り合成した。まず、化合物14:N−イソプロピルアクリルアミド:N−tert−ブチルアクリルアミド:アゾイソブチロニトリルを下記の表1に記載した原料モル比(x:y:z:AIBN)で含む無水テトラヒドロフラン溶液を、窒素気流下、65℃で一昼夜撹拌した。冷後、エーテルに滴下することで生じた析出物をテトラヒドロフラン−エーテル溶液を用いて再沈殿させ、化合物15を得た。

0091

0092

化合物15の組成比は、1H−NMR(CDCl3)スペクトルで、6〜8ppm付近に出現する芳香族、NH基、およびベンジル位の水素原子に由来するピークと、1〜4ppm付近に出現するその他のピークの積分値より概算した。なお、実施例34−6では、化合物15の組成比は、N−イソプロピルアクリルアミドのイソプロピル基メチン水素ピーク(4ppm)を基準に概算した。

0093

化合物15のクロロホルム、テトラヒドロフラン、または1,4−ジオキサン溶液に塩酸を加え、60℃で3日間撹拌した。エーテル希釈により生じた析出物を、テトラヒドロフラン−エーテルによって再沈殿して化合物16を得た。化合物16の脱保護化率は、1H−NMR(CDCl3またはCD3COCD3)スペクトルで、4ppmに出現するアルデヒド基を保護しているアセタールに由来するピークの消失、および7〜8ppm付近に出現する芳香族由来のピークが単一であることを確認した場合は100%とした。一方、4ppmに出現するアルデヒド基を保護しているアセタールに由来するピークの残存、および7〜8ppm付近に出現する芳香族由来のピークを2種類確認した場合は、11ppm付近に出現するアルデヒド基由来のピークを基準に化合物16の脱保護化率を概算した。

0094

実施例35:pNBANIPAAmコート層からの光応答剥離によって回収された細胞の生存率
エーテル基を介してNBA基を導入率4mol%で修飾したpNIPAAm(図12の化合物14。以下、エーテル基を介してNBA基を導入したpNIPAAmを「pNBANIPAAm」ということがある)を基板にコートした。そのコート層にNIH/3T3細胞を播種し、37℃で2日間培養した。そして、基板の底面側から、中心波長365nm、強度40mW/cm2の光を10秒間照射し、表面に培地を軽く吹き付けることによって細胞を回収した。1mMのEDTAを含むpH7.4のリン酸緩衝溶液で、単細胞にまで分散した後、トリパンブルーで染色した。染色細胞非染色細胞個数カウントして、NIH/3T3細胞の生存率を96%と見積もった(図25のグラフの左)。

0095

また、0.05w/v%トリプシン−0.53mMのEDTA溶液を通常の培養ディッシュに37℃で2分間作用させた後に回収したNIH/3T3細胞について、同様の方法で生存率を見積もったところ98%だった(図25のグラフの右)。pNBANIPAAmの光応答溶解によって剥離された細胞の生存率は、一般的な酵素的剥離によって回収された細胞の生存率とほとんど差がないことがわかった。

0096

実施例36:NBAコポリマー水溶液の光応答pH変化
光路長1cmの四面透過光セルキュベット)内で、NBA基の導入率が10mol%のpNBANIPAAmの0.01%水溶液に微量のBTBを加えた。約1%の0.01NのNaOH水溶液をさらに添加して、図26(a)に示すような弱塩基性の青色水溶液を調製した。そして、キュベット内の水溶液の下半分に中心波長365nmの紫外光を照射した。図26(b)に示すように、光照射された領域で速やかに黄色に変化した。

0097

さらに、水溶液全体に光照射したところ、図26(c)に示すように、キュベット内全体が黄色に変化した。つまり、光照射によって水溶液のpH低下が引き起こされた。この結果から、ポリマー側鎖のNBA基の光反応によって、弱酸であるo−ニトロソ安息香酸基が生成してプロトンを放出しpHが低下したこと、およびこのプロトン放出によってポリマーがイオン化したことがわかった。

0098

実施例37:光応答脱水和特性のpH依存性
NBA基の導入率が10mol%のpNBANIPAAmの1%水溶液と、各種pHの緩衝液または塩酸水溶液とを、pNBANIPAAmの0.01%水溶液となるようにキュベット内で混合した。この水溶液の温度を0℃から60℃まで徐々に上昇させながら、波長700nmの光の吸光度が0となる水溶液の光学密度を測定して濁度とした。その後、再び水溶液を0℃に冷却し、スペクトル変化飽和するまで、中心波長365nmの紫外光を水溶液に照射した。そして、再び水溶液の温度を徐々に上昇させながら、各温度での水溶液の濁度を測定した。この結果を図27に示す。

0099

図27に示すように、pH1.7〜7.4では、紫外光照射前の水溶液の転移温度(11〜15℃)が、pNIPAAmホモポリマー水溶液の転移温度31℃よりかなり低かった。なお、転移温度が高いほど、ポリマーの溶解性が高い。この結果から、NBAの導入によって、pNIPAAmの溶解性が低下することがわかった。一方、紫外光照射後の水溶液では、pH7.4の水溶液の転移温度が60℃以下で観察されなかった。これに対して、pH4.0の水溶液の転移温度は33℃付近に、pH1.7の水溶液の転移温度は21℃付近にそれぞれ観察された。この結果から、pNBANIPAAmへの光照射によって、弱酸であるo−ニトロソ安息香酸が生成したことが示された。

0100

実施例38:光応答脱水和特性のNBA導入率依存
実施例37と同様にして、NBA基の導入率が0mol%、4mol%、7mol%、および10mol%の4種類のpNBANIPAAmを0.01%含むpH7.4のリン酸緩衝溶液の700nmにおける濁度を0℃から60℃で測定した。その結果を図28に示す。図28に示すように、NBA基の導入率の増加にともなって、紫外光照射前の水溶液の転移温度が低下した。つまり、NBA基の導入率の増加にともなって、ポリマーの溶解性が低くなった。一方、紫外光照射後の転移温度は、NBA基の導入率の増加にともなって著しく上昇した。

0101

実施例39:光応答脱水和特性のNTBAAm導入率依存
実施例37と同様にして、NBA基の導入率が10mol%のpNBANIPAAmで、NTBAAmを含まないpNIPAAmの0.01%リン酸緩衝溶液(pH7.4)、およびNTBAAmを20mol%含むpNIPAAmの0.01%リン酸緩衝溶液(pH7.4)の700nmにおける濁度を0℃から60℃で測定した。その結果を図29に示す。図29に示すように、NTBAAmを含むpNIPAAm水溶液の紫外光照射前の転移温度は、NTBAAmを含まないpNIPAAm水溶液の紫外光照射前の転移温度より低下した。つまり、NTBAAmの導入により、pNIPAAmポリマーの暗所安定性が高くなった。一方、紫外光照射後の転移温度は、NTBAAmの有無に関わらず著しく上昇した。

0102

実施例40:pNBANIPAAmコート膜の光応答溶解
pH4.0、pH5.0、およびpH7.4の各pH緩衝液(25℃)中で、NBA基の導入率が10mol%のpNBANIPAAmをコートした層に、直径100μmの微小水玉模様のパターンに沿って紫外光を照射し、光応答溶解特性を観察した。その結果を図30に示す。図30(a)に示すように、pH4.0では十分量の紫外光を照射してもポリマー膜が溶解しなかった。図30(b)および図30(c)に示すように、pH5.0およびpH7.4では、紫外光照射に応答してポリマー膜が速やかに溶解した。なお、このpNBANIPAAmコート膜は、37℃、pH7.4の緩衝溶液に浸漬した状態で1ヶ月間不溶状態保った。その後、このpNBANIPAAmコート膜に光照射を行うと、鋭敏に溶解することが観察された。

0103

実施例41:pNBANIPAAmに固定されたポリエチレン微粒子の光リリース制御
NBA基の導入率が10mol%のpNBANIPAAmのTFE溶液に微量のポリエチレン微粒子を分散させた分散液をポリスチレン基材にキャストした。pNBANIPAAmを介してポリエチレン微粒子がポリスチレン基材表面に固定された試料を得た。顕微鏡で観察しながら、pH7.4のリン酸緩衝溶液中で、所定の微粒子凝集体が存在する領域に、波長365nmの光を基材底面から照射した。pNBANIPAAmが溶解して、光が照射された微粒子のみが選択的に浮上することが観察された。この結果を図31に示す。この結果から、手操作で基材から剥離できないような微小物体を、光制御で基材から剥離できることが実証された。

0104

実施例42:pNBANIPAAmに固定化された蛍光標識ウシ血清アルブミンの光リリース制御
NBA基の導入率が7mol%のpNBANIPAAmをポリスチレン基材上にコートした。ローダミンで蛍光標識されたウシ血清アルブミン(RBSA)のリン酸緩衝溶液(pH7.4)をこのpNBANIPAAm膜上に載せた。そして、37℃で30分間静置して、pNBANIPAAmの薄層を介して、RBSAが基材表面に固定された試料を得た。基材底面側からこの試料に微小の文字パターンの光を照射して、照射前後の蛍光分布共焦点レーザー走査顕微鏡で観察した。図32(a)は、RBSAが光リリースされる様子を模式的に示している。図32(b)は、光照射前(左)と光照射後(右)のそれぞれの蛍光分布像である。図32(b)に示すように、光照射域のみから蛍光が消失した。すなわち、基材表面に固定されたRBSAが、局所光照射によって選択的に基材表面からリリースされた。

0105

実施例43:細胞接着阻害表面上のNBAコポリマーコート膜を用いた培養細胞のパターニングと光選択剥離
5mol%のメタクリル酸を含むpNIPAAmを0.20%、および両末端グリシジル基を有するポリエチレングリコールを0.039%含む塩基性メタノール溶液をポリスチレン基材表面にスピンコートした。そして、80℃で2時間加熱することにより、細胞接着阻害表面を作製した。10mol%のNBA基および20mol%のNTBAAmを含むNIPAAmを1.3%、ならびに無修飾pNIPAAmを0.23%含むTFE溶液をこの細胞接着阻害表面にスピンコートし、85℃で1.5時間加熱した。

0106

その後、pH7.4のリン酸緩衝水溶液を載せ、ドットパターン反転パターンに沿って波長365nm、強度30mW/cm2の光を6秒間照射して、光照射域のブレンドポリマーを溶解し、ドットパターン状のブレンドポリマー層を得た。MDCK細胞を培地に分散した分散液をこのブレンドポリマー層上に播種し、半日培養した。この結果を図33に示す。

0107

図33(a)に示すように、ドットパターン状のブレンドポリマー層上のみで細胞が接着伸展していることを確認した。そして、図33(b)に示すように、これらのドット領域の特定の約半数の箇所(横方向のストライプ状)に、波長365nm、強度30mW/cm2の光を40秒間照射した。その後、表面に培地を軽く吹き付けると、図33(c)に示すように、光照射されたストライプ状のドット領域のみから、細胞が選択的に剥離した。この結果から、光操作によって、細胞のパターニングと、細胞の選択的な剥離回収がそこからできることが実証された。

0108

実施例44:NBAコポリマーを用いたひも状細胞組織体の形成
肝実質細胞やそれに由来する株化細胞の培養系を用いて、薬物等の肝代謝や肝毒性を評価する試みがなされている。しかし、一般的な培養方法では肝特異的機能がほとんど発現しないことが問題になっている。このため、機能低下を改善する手法として、細胞同士が凝集した組織体としての培養が検討されている。しかし、細胞集塊内部への酸素や栄養分の供給の難しさが課題となっている。そこで、組織体と基材の隙間を培地が流れる構造として、培養基材上に固定されたひも状の組織体構造を、NBA修飾ポリマー光特性を応用して構築することを試みた。この構造の形成過程を図34に模式的に示す。

0109

まず、ヒドロキシプロピルセルロースを0.30%、両末端にカルボキシル基を有するポリエチレングリコールを0.042%含む酸性メタノール溶液をポリスチレン基材表面にスピンコートした。そして、これを85℃で3時間加熱して、細胞接着阻害表面を作製した。その後、15mol%のNBA基と20mol%のNTBAAmを含むpNIPAAmの1.6%TFE溶液をこの細胞接着阻害表面にスピンコートした。これを85℃で1時間加熱した後、フィブロネクチンコートした。

0110

pH7.4のリン酸緩衝水溶液中で、このフィブロネクチンコートにストライプ状のパターンで光照射して、光照射域から光応答ポリマー層溶解除去した。そこにヒト肝実質細胞由来の株化細胞であるHepG2細胞を播種して、ストライプ状に残存した光応答ポリマー層上にパターン状に接着させた。2日間培養後、局所光照射によってHepG2細胞が接着した光応答ポリマー層の一部を残して基材表面から剥離し、基材から浮き上がったひも状の組織体が形成できることを確認した。この画像を図35に示す。

0111

実施例45:NBAコポリマーを用いた培養機材からの光応答イオノマイシン供給
細胞培養系において、カルシウムイオンがmMオーダーの濃度で培地に含まれる。しかし、細胞膜に存在するカルシウムイオンポンプの働きによって、細胞培養系の細胞内では、カルシウムイオンがnMオーダーの非常に低い濃度に保たれている。細胞培養系の細胞にイオノマイシンを添加すると、イオノマイシンが細胞膜に取り込まれて細胞膜のカルシウム透過を誘起する。細胞膜のカルシウム透過が著しい場合には、細胞死が引き起こされる。この機構図36に模式的に示す。

0112

生理活性を有する化合物の光放出制御技術の例として、イオノマイシンを安定に固定化し、かつ任意のタイミングで任意の箇所に供給できる基材を調製した。10mol%のNBA基と50mol%のNTBAAmを含むpNIPAAmと、イオノマイシンを含むTFE溶液を、ポリスチレン基材表面にスピンコートした。この上にNIH/3T3細胞を播種し、半日培養した。その後、通常培地中で波長365nmの紫外光を局所照射すると、その照射領域のみで細胞死が引き起こされた。イオノマイシンの固定と光リリースの機構を図37(a)に模式的に示す。また、この局所的細胞死を示す画像を図37(b)に示す。

実施例

0113

一方、光照射前に通常培地からカルシウムイオンを含まない培地に置換した場合には、光照射後に細胞死が誘起されなかった。この結果は、光照射によって引き起こされた細胞死が、イオノマイシンによってもたらされた細胞へのカルシウムイオンの流入であることを示している。また、NTBAAm含有量が20mol%のポリマーを用いた場合では、ポリマーのイオノマイシンの保持が不十分だった。このため、暗所でも、イオノマイシンがポリマーから培養系に放出され、細胞が全体的にダメージを受けることが観察された。さらに、NBA基のモノマー成分以外のモノマーがNTBAAmであるポリマーを用いた場合では、光照射によってもイオノマイシンは放出されず、細胞のダメージが誘起されなかった。

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