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図面 (5)

課題・解決手段

下記工程(1)および(2)によりCorinおよび/またはLrtm1陽性細胞を含む細胞集団を製造し、得られた細胞集団から、Corinに結合する物質および/またはLrtm1に結合する物質を用いてCorinおよび/またはLrtm1陽性細胞を収集し、該Corinおよび/またはLrtm1陽性細胞を1又は複数の神経栄養因子を含む培養液中で浮遊培養することによりドーパミン産生神経前駆細胞を製造する。(1)多能性幹細胞を、フィーダー細胞非存在下で、Sonic hedgehog (SHH)シグナル刺激剤、及び未分化維持因子を含む未分化維持培地細胞外基質の存在下で、接着培養する工程、および(2)工程(1)で得られた細胞集団を、1以上の分化誘導因子を含む培養液中で培養する工程。

概要

背景

パーキンソン病は、中脳黒質ドーパミン産生神経細胞脱落によって起きる神経変性疾患であり、現在、世界中で約400万人の罹患者がいる。パーキンソン病の治療として、L-DOPAまたはドーパミンアゴニストによる薬物治療定位脳手術による凝固術または深部電気刺激治療および胎児中脳移植などが行われている。

胎児中脳移植はその供給源組織倫理的な問題があるとともに、感染の危険性も高い。そこで、胚性幹細胞ES細胞)や人工多能性幹細胞iPS細胞)などの多能性幹細胞から分化誘導した神経細胞を用いた治療法が提案されている(非特許文献1)。しかし、分化誘導した神経細胞を移植した際に、良性腫瘍を形成する可能性および目的とするドーパミン産生神経細胞以外の細胞が原因と考えられるジスキネジアが指摘されており、生着し尚且つ安全な細胞を選択して移植することが求められている。

ドーパミン産生神経前駆細胞の製造方法として、ドーパミン産生神経細胞またはドーパミン産生神経前駆細胞のマーカーとなる遺伝子により移植に適した細胞を選別する工程を含む方法が提案されているが(特許文献1)、生物由来成分の含有によるロット差の影響を少なくし、産生効率を上げるために、更なる改良が求められている。

概要

下記工程(1)および(2)によりCorinおよび/またはLrtm1陽性細胞を含む細胞集団を製造し、得られた細胞集団から、Corinに結合する物質および/またはLrtm1に結合する物質を用いてCorinおよび/またはLrtm1陽性細胞を収集し、該Corinおよび/またはLrtm1陽性細胞を1又は複数の神経栄養因子を含む培養液中で浮遊培養することによりドーパミン産生神経前駆細胞を製造する。(1)多能性幹細胞を、フィーダー細胞非存在下で、Sonic hedgehog (SHH)シグナル刺激剤、及び未分化維持因子を含む未分化維持培地細胞外基質の存在下で、接着培養する工程、および(2)工程(1)で得られた細胞集団を、1以上の分化誘導因子を含む培養液中で培養する工程。

目的

しかし、分化誘導した神経細胞を移植した際に、良性腫瘍を形成する可能性および目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

下記工程(1)および(2)を含む、Corinおよび/またはLrtm1陽性細胞を含む細胞集団の製造方法;(1)多能性幹細胞を、フィーダー細胞非存在下で、Sonic hedgehog (SHH)シグナル刺激剤及び未分化維持因子を含む未分化維持培地中、細胞外基質の存在下で、接着培養する工程、および(2)工程(1)で得られた細胞を、1以上の分化誘導因子を含む培地中で培養する工程。

請求項2

SHHシグナル刺激剤が、SAG(N-Methyl-N’-(3-pyridinylbenzyl)-N’-(3-chlorobenzo[b]thiophene-2-carbonyl)-1,4-diaminocyclohexane)、shhタンパク質もしくはそのフラグメント、Purmorphamine又はこれらの組合せである、請求項1に記載の製造方法。

請求項3

工程(1)における未分化維持培地が、更にTGFβ阻害剤又はBMP阻害剤を含む培地である、請求項1又は2に記載の製造方法。

請求項4

TGFβ阻害剤が、A83-01であり、BMP阻害剤がLDN193189である、請求項3に記載の製造方法。

請求項5

未分化維持因子が、少なくともFGFシグナル伝達経路作用物質を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。

請求項6

FGFシグナル伝達経路作用物質が、bFGFである、請求項5に記載の製造方法。

請求項7

前記工程(1)において、多能性幹細胞を、48時間を超えない期間培養する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。

請求項8

分化誘導因子が、BMP阻害剤、TGFβ阻害剤、SHHシグナル刺激剤、FGF8およびGSK3β阻害剤から成る群より選択される1又は複数の因子である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。

請求項9

工程(2)が、細胞外基質上にて接着培養する工程である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。

請求項10

細胞外基質が、ラミニンまたはその断片である、請求項9に記載の製造方法。

請求項11

細胞外基質が、ラミニン511E8である、請求項10に記載の製造方法。

請求項12

工程(2)が次の工程を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法;(a)工程(1)で得られる細胞を、細胞外基質の存在下で、BMP阻害剤およびTGFβ阻害剤を含む培地中で接着培養する工程、(b)前記工程(a)で得られた細胞を、BMP阻害剤、TGFβ阻害剤、SHHシグナル刺激剤およびFGF8を含む培地中で、細胞外基質存在下で接着培養する工程、(c)前記工程(b)で得られた細胞を、BMP阻害剤、TGFβ阻害剤、SHHシグナル刺激剤、FGF8およびGSK3β阻害剤を含む培地中で、細胞外基質存在下で接着培養する工程、および(d)前記工程(c)で得られた細胞を、BMP阻害剤およびGSK3β阻害剤を含む培地中で細胞外基質存在下で接着培養する工程。

請求項13

工程(a)における培地が、更にROCK阻害剤を含む、請求項12に記載の製造方法。

請求項14

工程(2)で得られる細胞集団中に含まれるCorinおよび/またはLrtm1陽性細胞の割合が、10%以上である請求項1〜13のいずれか一項に記載の製造方法。

請求項15

以下の工程:(3)請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造方法により得られる細胞集団から、Corinに結合する物質および/またはLrtm1に結合する物質を用いてCorinおよび/またはLrtm1陽性細胞を収集する工程、及び(4)工程(3)で得られるCorinおよび/またはLrtm1陽性細胞を、1又は複数の神経栄養因子を含む培地中で浮遊培養する工程、を含む、ドーパミン産生神経前駆細胞の製造方法。

請求項16

Corinに結合する物質またはLrtm1に結合する物質が、CorinまたはLrtm1に結合する抗体またはアプタマーである、請求項15に記載の製造方法。

請求項17

神経栄養因子が、BDNFおよびGDNFである、請求項15または16に記載の製造方法。

請求項18

神経栄養因子を含む培地が、B27サプリメントアスコルビン酸およびcAMPアナログをさらに含む、請求項15〜17のいずれか一項に記載の製造方法。

請求項19

cAMPアナログが、Dibutyryl cyclicAMPである、請求項18に記載の製造方法。

請求項20

神経栄養因子を含む培地中での浮遊培養が、少なくとも7日間行われる、請求項15〜19のいずれか一項に記載の製造方法。

請求項21

請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造方法により得られるCorinおよび/またはLrtm1陽性細胞の含有率が10%以上である細胞集団。

請求項22

請求項15〜20のいずれか一項に記載の製造方法により得られるドーパミン産生神経前駆細胞。

請求項23

請求項15〜20のいずれか一項に記載の製造方法により得られるドーパミン産生神経前駆細胞を含むパーキンソン病治療剤

技術分野

0001

本発明は、ドーパミン産生神経前駆細胞の製造方法並びにドーパミン産生神経前駆細胞へと分化させうるCorinおよび/またはLrtm1陽性細胞を含む細胞集団の製造方法に関する。

背景技術

0002

パーキンソン病は、中脳黒質のドーパミン産生神経細胞脱落によって起きる神経変性疾患であり、現在、世界中で約400万人の罹患者がいる。パーキンソン病の治療として、L-DOPAまたはドーパミンアゴニストによる薬物治療定位脳手術による凝固術または深部電気刺激治療および胎児中脳移植などが行われている。

0003

胎児中脳移植はその供給源組織倫理的な問題があるとともに、感染の危険性も高い。そこで、胚性幹細胞ES細胞)や人工多能性幹細胞iPS細胞)などの多能性幹細胞から分化誘導した神経細胞を用いた治療法が提案されている(非特許文献1)。しかし、分化誘導した神経細胞を移植した際に、良性腫瘍を形成する可能性および目的とするドーパミン産生神経細胞以外の細胞が原因と考えられるジスキネジアが指摘されており、生着し尚且つ安全な細胞を選択して移植することが求められている。

0004

ドーパミン産生神経前駆細胞の製造方法として、ドーパミン産生神経細胞またはドーパミン産生神経前駆細胞のマーカーとなる遺伝子により移植に適した細胞を選別する工程を含む方法が提案されているが(特許文献1)、生物由来成分の含有によるロット差の影響を少なくし、産生効率を上げるために、更なる改良が求められている。

0005

国際公開第2015/34012号パンフレット

先行技術

0006

Wernig M, et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2008, 105: 5856-5861

発明が解決しようとする課題

0007

本発明の目的は、パーキンソン病治療剤として適したドーパミン産生神経前駆細胞を製造することである。したがって、本発明の課題は、ドーパミン産生神経前駆細胞の製造方法等を提供することである。

課題を解決するための手段

0008

本発明者らは、上記の課題を解決すべく検討を行った結果、細胞表面膜タンパク質のCorinおよび/またはLrtm1に着目し、これを発現する細胞を含む細胞集団を効率よく製造する方法を見出した。さらに、該細胞集団からCorinおよび/またはLrtm1を指標として細胞を抽出し、さらに培養を継続した後にドーパミン産生神経前駆細胞が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。

0009

すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 下記工程(1)および(2)を含む、Corinおよび/またはLrtm1陽性細胞を含む細胞集団の製造方法;
(1)多能性幹細胞を、フィーダー細胞非存在下で、Sonic hedgehog (SHH)シグナル刺激剤及び未分化維持因子を含む未分化維持培地中、細胞外基質の存在下で、接着培養する工程、および
(2)工程(1)で得られた細胞を、1以上の分化誘導因子を含む培地中で培養する工程。
[2] SHHシグナル刺激剤が、SAG(N-Methyl-N’-(3-pyridinylbenzyl)-N’-(3-chlorobenzo[b]thiophene-2-carbonyl)-1,4-diaminocyclohexane)、shhタンパク質もしくはそのフラグメント、Purmorphamine又はこれらの組合せである、[1]に記載の製造方法。
[3] 工程(1)における未分化維持培地が、更にTGF(Transforming growth factor)β阻害剤又はBMP(Bone Morphogenetic Protein)阻害剤を含む培地である、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] TGFβ阻害剤が、A83-01であり、BMP阻害剤がLDN193189である、[3]に記載の製造方法。
[5] 未分化維持因子が、少なくともFGF(Fibroblast growth factor)シグナル伝達経路作用物質を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] FGFシグナル伝達経路作用物質が、bFGFである、[5]に記載の製造方法。
[7] 前記工程(1)において、多能性幹細胞を、48時間を超えない期間培養する、[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8] 分化誘導因子が、BMP阻害剤、TGFβ阻害剤、SHHシグナル刺激剤、FGF8およびGSK(Glycogen synthase kinase)3β阻害剤から成る群より選択される1又は複数の因子である、[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9] 工程(2)が、細胞外基質上にて接着培養する工程である、[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10] 細胞外基質が、ラミニンまたはその断片である、[9]に記載の製造方法。
[11] 細胞外基質が、ラミニン511E8である、[9]に記載の製造方法。
[12] 工程(2)が次の工程を含む、[1]〜[11]のいずれかに記載の方法;
(a)工程(1)で得られる細胞を、細胞外基質の存在下で、BMP阻害剤およびTGFβ阻害剤を含む培地中で接着培養する工程、
(b)前記工程(a)で得られた細胞を、BMP阻害剤、TGFβ阻害剤、SHHシグナル刺激剤およびFGF8を含む培地中で、細胞外基質存在下で接着培養する工程、
(c)前記工程(b)で得られた細胞を、BMP阻害剤、TGFβ阻害剤、SHHシグナル刺激剤、FGF8およびGSK3β阻害剤を含む培地中で、細胞外基質存在下で接着培養する工程、および(d)前記工程(c)で得られた細胞を、BMP阻害剤およびGSK3β阻害剤を含む培地中で細胞外基質存在下で接着培養する工程。
[13] 工程(a)における培地が、更にROCK阻害剤を含む、[12]に記載の製造方法。
[14] ROCK阻害剤がY-27632である、[13]に記載の製造方法。
[15] 工程(2)におけるBMP阻害剤がLDN193189である、[12]〜[14]のいずれかに記載の製造方法。
[16] 工程(2)におけるTGFβ阻害剤がA83-01である、[12]〜[15]のいずれかに記載の製造方法。
[17] 工程(2)におけるSHHシグナル刺激剤がPurmorphamineである、[12]〜[16]のいずれかに記載の製造方法。
[18] GSK3β阻害剤がCHIR99021である、[12]〜[17]のいずれかに記載の製造方法。
[19] 工程(2)が少なくとも10日間行われる、[1]〜[18]のいずれかに記載の製造方法。
[20] 工程(2)が、12日間〜21日間行われる、[19]に記載の製造方法。
[21] 工程(2)が、12日間〜14日間行われる、[19]に記載の製造方法。
[22] 工程(2)で得られる細胞集団中に含まれるCorinおよび/またはLrtm1陽性細胞の割合が、10%以上である[1]〜[21]のいずれかに記載の製造方法。
[23] 以下の工程:
(3)[1]〜[22]のいずれかに記載の製造方法により得られる細胞集団から、Corinに結合する物質および/またはLrtm1に結合する物質を用いてCorinおよび/またはLrtm1陽性細胞を収集する工程、及び
(4)工程(3)で得られるCorinおよび/またはLrtm1陽性細胞を、1又は複数の神経栄養因子を含む培地中で浮遊培養する工程、
を含む、ドーパミン産生神経前駆細胞の製造方法。
[24] Corinに結合する物質またはLrtm1に結合する物質が、CorinまたはLrtm1に結合する抗体またはアプタマーである、[23]に記載の製造方法。
[25] 神経栄養因子が、BDNFおよびGDNFである、[23]または[24]に記載の製造方法。
[26] 神経栄養因子を含む培地が、B27サプリメントアスコルビン酸およびcAMPアナログをさらに含む、[23]〜[25]のいずれかに記載の製造方法。
[27] cAMPアナログが、Dibutyryl cyclicAMPである、[26]に記載の製造方法。
[28] 工程(4)における培地が、更にROCK阻害剤を含む、[23]〜[27]のいずれかに記載の製造方法。
[29] ROCK阻害剤がY-27632である、[28]に記載の製造方法。
[30] 工程(4)が、少なくとも7日間行われる、[23]〜[29]のいずれかに記載の製造方法。
[31] 工程(4)が、14日間〜30日間行われる、[30]に記載の製造方法。
[32] 工程(4)が、14日間〜16日間行われる、[30]に記載の製造方法。
[33] [1]〜[22]のいずれかに記載の製造方法により得られるCorinおよび/またはLrtm1陽性細胞の含有率が10%以上である細胞集団。
[34] [23]〜[32]のいずれかに記載の製造方法により得られるドーパミン産生神経前駆細胞。
[35] [23]〜[32]のいずれかに記載の製造方法により得られるドーパミン産生神経前駆細胞を含むパーキンソン病治療剤。

発明の効果

0010

本発明によれば、パーキンソン病治療剤などに有用なドーパミン産生神経前駆細胞を効率よく得ることができる。

図面の簡単な説明

0011

図1は、ドーパミン産生細胞の製造プロトコールの一例を示す。図中、「Y」はY-27632を示す。
図2は、実施例1において、SAG(300nM)存在下又は非存在下に培養したday12の細胞における、フローサイトメトリーの結果、すなわち、Corin陽性細胞率(全細胞数に占めるCorin陽性細胞の割合)を示したグラフである。
図3は、実施例1において、day28の細胞に対してFoxA2, Nurr1(何れも中脳マーカー)の染色を行い、ドーパミン神経前駆細胞へ分化しているかどうかを確認した結果を示す図(写真)である。核の存在を示すDAPI陽性細胞を100%として、Foxa2は99.0%、Nurr1は14.6%であった。
図4は、実施例3において、SAG(300nM)存在下又は非存在下に培養したday12の細胞における、フローサイトメトリーの結果、すなわち、Corin陽性細胞率を示したグラフである。
図5は、実施例1において、day28の細胞をラット(6-OHDA投与ラット)の脳内移植した後4週目での移植片の様子を示す。移植片のTH(中脳マーカー),HuNu(ヒト細胞核)の染色を行い、ドーパミン神経前駆細胞へ分化しているかどうかを確認した結果を示す図(写真)である。AはSAG(300nM)存在下の細胞の移植片であり、移植細胞(ヒト細胞核)の存在を示すHuNu陽性細胞を100%として、THは平均9.24%(個体(1)6.1%、個体(2)12.37%)であった。BはSAG非存在下の細胞の移植片であり、HuNu陽性細胞を100%として、THは平均9.7%(個体(3)6.27%、個体(4)13.13%)であった。

0012

I.定義
<多能性幹細胞>
本発明で使用可能な多能性幹細胞は、生体に存在するすべての細胞に分化可能である多能性を有し、かつ、増殖能をも併せもつ幹細胞であり、それには、特に限定されないが、例えば胚性(ES)細胞、核移植により得られるクローン胚由来の胚性幹(ntES)細胞、精子幹細胞(「GS細胞」)、胚性生殖細胞(「EG細胞」)、人工多能性幹(iPS)細胞、培養線維芽細胞骨髄幹細胞由来の多能性細胞(Muse細胞)などが含まれる。好ましい多能性幹細胞は、ES細胞、ntES細胞、およびiPS細胞である。

0013

(A)胚性幹細胞
ES細胞は、ヒトやマウスなどの哺乳動物初期胚(例えば胚盤胞)の内部細胞塊から樹立された、多能性と自己複製による増殖能を有する幹細胞である。
ES細胞は、受精卵の8細胞期、桑実胚後のである胚盤胞の内部細胞塊に由来する胚由来の幹細胞であり、成体を構成するあらゆる細胞に分化する能力、いわゆる分化多能性と、自己複製による増殖能とを有している。ES細胞は、マウスで1981年に発見され(M.J. Evans and M.H. Kaufman (1981), Nature 292:154-156)、その後、ヒト、サルなどの霊長類でもES細胞株が樹立された (J.A. Thomson et al. (1998), Science 282:1145-1147; J.A. Thomson et al. (1995), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:7844-7848;J.A. Thomson et al. (1996), Biol. Reprod., 55:254-259; J.A. Thomson and V.S. Marshall (1998), Curr. Top. Dev. Biol., 38:133-165)。

0014

ES細胞は、対象動物の受精卵の胚盤胞から内部細胞塊を取出し、内部細胞塊を線維芽細胞フィーダー上で培養することによって樹立することができる。また、継代培養による細胞の維持は、白血病抑制因子(leukemia inhibitory factor (LIF))、塩基性線維芽細胞成長因子(basicfibroblast growth factor (bFGF))などの物質を添加した培地を用いて行うことができる。ヒトおよびサルのES細胞の樹立と維持の方法については、例えばUSP5,843,780; Thomson JA, et al. (1995), Proc Natl. Acad. Sci. U S A. 92:7844-7848; Thomson JA, et al. (1998), Science. 282:1145-1147; H. Suemori et al. (2006), Biochem. Biophys. Res. Commun., 345:926-932; M. Ueno et al. (2006), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:9554-9559; H. Suemori et al. (2001), Dev. Dyn., 222:273-279;H. Kawasaki et al. (2002), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99:1580-1585;Klimanskaya I, et al. (2006), Nature. 444:481-485などに記載されている。
ES細胞作製のための培地として、例えば0.1mM2-メルカプトエタノール、0.1mM非必須アミノ酸、2mM L-グルタミン酸、20%KSRおよび4ng/ml bFGFを補充したDMEM/F-12培地を使用し、37℃、2% CO2/98% 空気の湿潤雰囲気下でヒトES細胞を維持することができる(O. Fumitaka et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26:215-224)。また、ES細胞は、3〜4日おきに継代する必要があり、このとき、継代は、例えば1mM CaCl2および20% KSRを含有するPBS中の0.25%トリプシンおよび0.1mg/mlコラゲナーゼIVを用いて行うことができる。
ES細胞の選択は、一般に、アルカリホスファターゼ、Oct-3/4、Nanogなどの遺伝子マーカーの発現を指標にしてReal-TimePCR法で行うことができる。特に、ヒトES細胞の選択では、OCT-3/4、NANOG、ECADなどの遺伝子マーカーの発現を指標とすることができる(E. Kroon et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26:443-452)。
ヒトES細胞株は、例えばWA01(H1)およびWA09(H9)は、WiCell Reserch Instituteから、KhES-1、KhES-2およびKhES-3は、京都大学再生医科学研究所(京都、日本)から入手可能である。

0015

(B)精子幹細胞
精子幹細胞は、精巣由来の多能性幹細胞であり、精子形成のための起源となる細胞である。この細胞は、ES細胞と同様に、種々の系列の細胞に分化誘導可能であり、例えばマウス胚盤胞に移植するとキメラマウス作出できるなどの性質をもつ(M. Kanatsu-Shinohara et al. (2003) Biol. Reprod., 69:612-616; K. Shinohara et al. (2004), Cell, 119:1001-1012)。神経膠細胞系由来神経栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF))を含む培地で自己複製可能であるし、またES細胞と同様の培養条件下で継代を繰り返すことによって、精子幹細胞を得ることができる(竹林正則ら(2008),実験医学,26巻,5号(増刊),41〜46頁,土社(東京、日本))。

0016

(C)胚性生殖細胞
胚性生殖細胞は、胎生期の始原生殖細胞から樹立される、ES細胞と同様な多能性をもつ細胞であり、LIF、bFGF、幹細胞因子(stem cell factor)などの物質の存在下で始原生殖細胞を培養することによって樹立しうる(Y. Matsui et al. (1992), Cell, 70:841-847; J.L. Resnick et al. (1992), Nature, 359:550-551)。

0017

(D)人工多能性幹細胞
人工多能性幹(iPS)細胞は、特定の初期化因子を、DNA又はタンパク質の形態で体細胞に導入することによって作製することができる、ES細胞とほぼ同等の特性、例えば分化多能性と自己複製による増殖能、を有する体細胞由来の人工の幹細胞である(K. Takahashi and S. Yamanaka (2006) Cell, 126:663-676; K. Takahashi et al. (2007), Cell, 131:861-872; J. Yu et al. (2007), Science, 318:1917-1920; Nakagawa, M.ら,Nat. Biotechnol. 26:101-106 (2008);国際公開WO 2007/069666;Okita, K., et al.Stem Cells 31, 458-66 (2013))。初期化因子は、ES細胞に特異的に発現している遺伝子、その遺伝子産物もしくはnon-coding RNAまたはES細胞の未分化維持に重要な役割を果たす遺伝子、その遺伝子産物もしくはnon-coding RNA、あるいは低分子化合物によって構成されてもよい。初期化因子に含まれる遺伝子として、例えば、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、Klf2、c-Myc、N-Myc、L-Myc、Nanog、Lin28、Fbx15、ERas、ECAT15-2、Tcl1、beta-catenin、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3、ドミナントネガティブ体p53, shRNA等のp53遺伝子の抑制因子、EBNA1またはGlis1等が例示され、これらの初期化因子は、単独で用いても良く、組み合わせて用いても良い。初期化因子の組み合わせとしては、WO2007/069666、WO2008/118820、WO2009/007852、WO2009/032194、WO2009/058413、WO2009/057831、WO2009/075119、WO2009/079007、WO2009/091659、WO2009/101084、WO2009/101407、WO2009/102983、WO2009/114949、WO2009/117439、WO2009/126250、WO2009/126251、WO2009/126655、WO2009/157593、WO2010/009015、WO2010/033906、WO2010/033920、WO2010/042800、WO2010/050626、WO 2010/056831、WO2010/068955、WO2010/098419、WO2010/102267、WO 2010/111409、WO 2010/111422、WO2010/115050、WO2010/124290、WO2010/147395、WO2010/147612、WO2011/16588、WO2013/176233、Huangfu D, et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26: 795-797、Shi Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 2: 525-528、Eminli S, et al. (2008), Stem Cells. 26:2467-2474、Huangfu D, et al. (2008), Nat Biotechnol. 26:1269-1275、Shi Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 3, 568-574、Zhao Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 3:475-479、Marson A, (2008), Cell Stem Cell, 3, 132-135、Feng B, et al. (2009), Nat Cell Biol. 11:197-203、R.L. Judson et al., (2009), Nat. Biotech., 27:459-461、Lyssiotis CA, et al. (2009), Proc Natl Acad Sci U S A. 106:8912-8917、KimJB, et al. (2009), Nature. 461:649-643、Ichida JK, et al. (2009), Cell Stem Cell. 5:491-503、Heng JC, et al. (2010), Cell Stem Cell. 6:167-74、Han J, et al. (2010), Nature. 463:1096-100、Mali P, et al. (2010), Stem Cells. 28:713-720、Maekawa M, et al. (2011), Nature. 474:225-9.に記載の組み合わせが例示される。
上記初期化因子には、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤[例えば、バルプロ酸(VPA)、トリコスタチンA、酪酸ナトリウム、MC 1293、M344等の低分子阻害剤、HDACに対するsiRNAおよびshRNA(例、HDAC1 siRNA Smartpool (Millipore)、HuSH 29mer shRNA Constructs against HDAC1 (OriGene)等)等の核酸発現阻害剤など]、MEK阻害剤(例えば、PD184352、PD98059、U0126、SL327およびPD0325901)、Glycogen synthase kinase-3阻害剤(例えば、BioおよびCHIR99021)、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、5-azacytidine)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、BIX-01294 等の低分子阻害剤、Suv39hl、Suv39h2、SetDBlおよびG9aに対するsiRNAおよびshRNA等の核酸性発現阻害剤など)、L-channel calcium agonist (例えばBayk8644)、酪酸、TGFβ阻害剤またはALK5阻害剤(例えば、LY364947、SB431542、616453およびA83-01)、p53阻害剤(例えばp53に対するドミナントネガティブ体、siRNAおよびshRNA)、ARID3A阻害剤(例えば、ARID3Aに対するsiRNAおよびshRNA)、miR-291-3p、miR-294、miR-295およびmir-302などのmiRNA、Wnt Signaling(例えばsoluble Wnt3a)、神経ペプチドY、プロスタグランジン類(例えば、プロスタグランジンE2およびプロスタグランジンJ2)、hTERT、SV40LTUTF1、IRX6、GLISl、PITX2、DMRTBl等の樹立効率を高めることを目的として用いられる因子も含まれており、本明細書においては、これらの樹立効率の改善目的にて用いられた因子についても初期化因子と別段の区別をしないものとする。また、これら一種または二種以上を適宜選択して使用してもよい。
初期化因子は、タンパク質の形態の場合、例えばリポフェクション細胞膜透過性ペプチド(例えば、HIV由来のTATおよびポリアルギニン)との融合、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入してもよい。
一方、DNAの形態の場合、例えば、ウイルスプラスミド人工染色体などのベクター、リポフェクション、リポソーム、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入することができる。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクターレンチウイルスベクター(以上、Cell, 126, pp.663-676, 2006; Cell, 131, pp.861-872, 2007; Science, 318, pp.1917-1920, 2007)、アデノウイルスベクター(Science, 322, 945-949, 2008)、アデノ随伴ウイルスベクターセンダイウイルスベクター(WO 2010/008054)などが例示される。また、人工染色体ベクターとしては、例えばヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC、PAC)などが含まれる。プラスミドとしては、哺乳動物細胞用プラスミドを使用しうる(Science, 322:949-953, 2008)。ベクターには、核初期化物質が発現可能なように、プロモーターエンハンサーリボゾーム結合配列ターミネーターポリアデニル化イトなどの制御配列を含むことができるし、さらに、必要に応じて、薬剤耐性遺伝子(例えばカナマイシン耐性遺伝子アンピシリン耐性遺伝子ピューロマイシン耐性遺伝子など)、チミジンキナーゼ遺伝子ジフテリアトキシン遺伝子などの選択マーカー配列緑色蛍光タンパク質(GFP)、βグルクロニダーゼ(GUS)、FLAGなどのレポーター遺伝子配列などを含むことができる。また、上記ベクターには、体細胞への導入後、初期化因子をコードする遺伝子もしくはプロモーターとそれに結合する初期化因子をコードする遺伝子を共に切除するために、それらの前後にLoxP配列を有してもよい。
また、RNAの形態の場合、例えばリポフェクション、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入しても良く、分解を抑制するため、5-メチルシチジンおよびpseudouridine (TriLink Biotechnologies)を取り込ませたRNAを用いても良い(Warren L, (2010) Cell Stem Cell. 7:618-630)。
iPS細胞誘導のための培地としては、例えば、10〜15%FBSを含有するDMEM、DMEM/F12又はDME培地(これらの培地にはさらに、LIF、penicillin/streptomycin、puromycin、L-グルタミン、非必須アミノ酸類、2-メルカプトエタノールなどを適宜含むことができる。)または市販の培地[例えば、マウスES細胞培養用培地(TX-WES培地トロンボX社)、霊長類ES細胞培養用培地(霊長類ES/iPS細胞用培地、リプセル社)、無血清培地(mTeSR、Stemcell Technology社)]などが含まれる。
培養法の例としては、たとえば、37℃、5%CO2存在下にて、10%FBS含有DMEM又はDMEM/F12培地上で体細胞と初期化因子とを接触させ約4〜7日間培養し、その後、細胞をフィーダー細胞(たとえば、マイトマイシンC処理STO細胞、SNL細胞等)上にまきなおし、体細胞と初期化因子の接触から約10日後からbFGF含有霊長類ES細胞培養用培地で培養し、該接触から約30〜約45日又はそれ以上ののちにiPS様コロニーを生じさせることができる。
あるいは、37℃、5% CO2存在下にて、フィーダー細胞(たとえば、マイトマイシンC処理STO細胞、SNL細胞等)上で10%FBS含有DMEM培地(これにはさらに、LIF、ペニシリン/ストレプトマイシンピューロマイシン、L-グルタミン、非必須アミノ酸類、2-メルカプトエタノールなどを適宜含むことができる。)で培養し、約25〜約30日又はそれ以上ののちにES様コロニーを生じさせることができる。望ましくは、フィーダー細胞の代わりに、初期化される体細胞そのものを用いる(Takahashi K, et al. (2009),PLoS One. 4:e8067またはWO2010/137746)、もしくは細胞外基質(例えば、Laminin-5(WO2009/123349)およびマトリゲル(BD社))を用いる方法が例示される。
この他にも、血清を含有しない培地を用いて培養する方法も例示される(Sun N, et al. (2009), Proc Natl Acad Sci U S A. 106:15720-15725)。さらに、樹立効率を上げるため、低酸素条件(0.1%以上、15%以下の酸素濃度)によりiPS細胞を樹立しても良い(Yoshida Y, et al. (2009), Cell Stem Cell. 5:237-241またはWO2010/013845)。
上記培養の間には、培養開始2日目以降から毎日1回新鮮な培地と培地交換を行う。また、核初期化に使用する体細胞の細胞数は、限定されないが、培養ディッシュ100cm2あたり約5×103〜約5×106細胞の範囲である。
iPS細胞は、形成したコロニーの形状により選択することが可能である。一方、体細胞が初期化された場合に発現する遺伝子(例えば、Oct3/4、Nanog)と連動して発現する薬剤耐性遺伝子をマーカー遺伝子として導入した場合は、対応する薬剤を含む培地(選択培地)で培養を行うことにより樹立したiPS細胞を選択することができる。また、マーカー遺伝子が蛍光タンパク質遺伝子の場合は蛍光顕微鏡で観察することによって、発光酵素遺伝子の場合は発光基質を加えることによって、また発色酵素遺伝子の場合は発色基質を加えることによって、iPS細胞を選択することができる。

0018

明細書中で使用する「体細胞」なる用語は、卵子卵母細胞、ES細胞などの生殖系列細胞または分化全能性細胞を除くあらゆる動物細胞(好ましくは、ヒトを含む哺乳動物細胞)をいう。体細胞には、非限定的に、胎児(仔)の体細胞、新生児(仔)の体細胞、および成熟した健全なもしくは疾患性の体細胞のいずれも包含されるし、また、初代培養細胞、継代細胞、および株化細胞のいずれも包含される。具体的には、体細胞は、例えば(1)神経幹細胞造血幹細胞間葉系幹細胞歯髄幹細胞等の組織幹細胞体性幹細胞)、(2)組織前駆細胞、(3)リンパ球上皮細胞内皮細胞筋肉細胞、線維芽細胞(皮膚細胞等)、毛細胞肝細胞胃粘膜細胞、腸細胞脾細胞膵細胞(外分泌細胞等)、脳細胞、肺細胞腎細胞および脂肪細胞等の分化した細胞などが例示される。
また、iPS細胞を移植用細胞の材料として用いる場合、拒絶反応が起こらないという観点から、移植先の個体のHLA遺伝子型が同一もしくは実質的に同一である体細胞を用いることが望ましい。ここで、「実質的に同一」とは、移植した細胞に対して免疫抑制剤により免疫反応が抑制できる程度にHLA遺伝子型が一致していることであり、例えば、HLA-A、HLA-BおよびHLA-DRの3遺伝子座あるいはHLA-Cを加えた4遺伝子座が一致するHLA型を有する体細胞である。

0019

(E)核移植により得られたクローン胚由来のES細胞
nt ES細胞は、核移植技術によって作製されたクローン胚由来のES細胞であり、受精卵由来のES細胞とほぼ同じ特性を有している(T. Wakayama et al. (2001), Science, 292:740-743; S. Wakayama et al. (2005), Biol. Reprod., 72:932-936; J. Byrne et al. (2007), Nature, 450:497-502)。すなわち、未受精卵の核を体細胞の核と置換することによって得られたクローン胚由来の胚盤胞の内部細胞塊から樹立されたES細胞がntES(nuclear transfer ES)細胞である。nt ES細胞の作製のためには、核移植技術(J.B.Cibelli et al. (1998), Nature Biotechnol., 16:642-646)とES細胞作製技術(上記)との組み合わせが利用される(若山清香ら(2008),実験医学,26巻,5号(増刊), 47〜52頁)。核移植においては、哺乳動物の除核した未受精卵に、体細胞の核を注入し、数時間培養することで初期化することができる。

0020

(F) Multilineage-differentiating Stress Enduring cells(Muse細胞)
Muse細胞は、WO2011/007900に記載された方法にて製造された多能性幹細胞であり、詳細には、線維芽細胞または骨髄間質細胞を長時間トリプシン処理、好ましくは8時間または16時間トリプシン処理した後、浮遊培養することで得られる多能性を有した細胞であり、SSEA-3およびCD105が陽性である。

0021

<ドーパミン産生神経前駆細胞>
本発明において、ドーパミン産生神経前駆細胞とは、特に断りがなければ、ドーパミン産生神経細胞またはドーパミン作動性ニューロンなどを含んでもよいものとする。また、ドーパミン産生神経前駆細胞は、他の細胞種が含まれている細胞集団であってもよく、好ましくはセロトニン神経細胞を含まない細胞集団である。ドーパミン産生神経前駆細胞は、Foxa2、Nurr1、Lmx1a、Pitx3および/またはTH陽性細胞を含有する細胞集団であることが望ましい。本発明において、ヒトFoxa2としては、NCBIアクセッション番号NM_021784またはNM_153675で示されるポリヌクレオチドおよびこれらがコードするタンパク質が挙げられる。本発明において、ヒトNurr1としては、NCBIアクセッション番号NM_006186で示されるポリヌクレオチドおよびこれらがコードするタンパク質が挙げられる。本発明において、ヒトTHとしては、NCBIアクセッション番号NM_000360、NM_199292またはNM_199293で示されるポリヌクレオチドおよびこれらがコードするタンパク質が挙げられる。ヒトLmx1aとしては、NCBIアクセッション番号NM_001174069またはNM_177398で示されるポリヌクレオチドおよびこれらがコードするタンパク質が挙げられる。ヒトPitx3としては、NCBIアクセッション番号NM_005029で示されるポリヌクレオチドおよびこれらがコードするタンパク質が挙げられる。

0022

<SHHシグナル刺激剤>
本発明において、SHH(Sonic hedgehog;ソニックヘッジホッグ)シグナル刺激剤とは、SHHが受容体であるPatched (Ptch1)に結合して引き起こされるSmoothened (Smo)の脱抑制およびさらに続くGli2の活性化を引き起こす物質として定義され、例えば、Hedgehogファミリーに属するタンパク質、具体的にはSHHもしくはIHH(Indian Hedgehog;インディアン・ヘッジホッグ)、SHH受容体、SHH受容体アゴニスト、Hh-Ag1.5 (Li, X., et al., Nature Biotechnology, 23, 215〜 221 (2005).)、Smoothened Agonist, SAG (N-Methyl-N’-(3-pyridinylbenzyl)-N’-(3-chlorobenzo[b]thiophene-2-carbonyl)-1,4-diaminocyclohexane;N-メチル-N'-(3-ピリジニルベンジル)-N'-(3-クロロベンゾ[b]チオフェン-2-カルボニル)-1,4-ジアミノシクロヘキサン)、20a-hydroxycholesterol、Purmorphamine(PMA;9-シクロヘキシル-N-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-2-(1-ナグタレニルオキシ)-9H-プリン-6-アミン)およびこれらの誘導体などが例示される(Stanton BZ, PengLF., Mol Biosyst. 6:44-54, 2010)。SHHシグナル刺激剤として、これら一種または二種以上を適宜選択して使用してもよい。
本発明で使用されるSHHシグナル刺激剤として、好ましくは、SHHタンパク質(Genbankアクセッション番号:NM_000193、NP_000184)、Purmorphamine、SAGが挙げられる。

0023

<未分化維持因子>
未分化維持因子は、多能性幹細胞の分化を抑制する作用を有する物質であれば特に限定はない。当業者汎用されている未分化維持因子としては、プライムド多能性幹細胞(Primed pluripotent stem cells)(例えば、ヒトES細胞やヒトiPS細胞)の場合、FGFシグナル伝達経路作用物質、TGFβ阻害剤、insulin等を挙げることができる。FGFシグナル伝達経路作用物質として具体的には、線維芽細胞増殖因子(例えば、bFGF、FGF4やFGF8)が挙げられる。また、TGFβ阻害剤としては、TGFβシグナル伝達経路作用物質、Nodal/Activinシグナル伝達経路作用物質が挙げられる。TGFβシグナル伝達経路作用物質としては、例えばTGFβ1、TGFβ2が挙げられる。Nodal/Activinシグナル伝達経路作用物質としては、例えばNodal、ActivinA、ActivinBが挙げられる。未分化維持因子として、これら一種または二種以上を適宜選択して使用してもよい。ヒト多能性幹細胞(ヒトES細胞、ヒトiPS細胞)を培養する場合、前記工程(1)における培地は、好ましくは未分化維持因子として、少なくともbFGFを含む。

0024

本発明に用いる未分化維持因子は、通常、哺乳動物の未分化維持因子である。
本明細書において、哺乳動物としては、げっ歯類有蹄類ネコ目、霊長類等が包含される。げっ歯類には、マウス、ラット、ハムスターモルモット等が包含される。有蹄類には、ブタウシヤギウマヒツジ等が包含される。ネコ目には、イヌ、ネコ等が包含される。本発明における「霊長類」とは、霊長目に属するほ乳類動物をいい、霊長類としては、キツネザルロリスツバイなどの原猿亜目と、サル、類人猿、ヒトなどの真猿亜目を挙げることができる。
未分化維持因子は、哺乳動物の種間で交差反応性を有し得るので、培養対象の多能性幹細胞の未分化状態を維持可能な限り、いずれの哺乳動物の未分化維持因子を用いてもよいが、好適には培養する細胞と同一種の哺乳動物の未分化維持因子が用いられる。例えば、ヒト多能性幹細胞の培養には、ヒト未分化維持因子(例、bFGF、FGF4、FGF8、EGF、Nodal、ActivinA、ActivinB、TGFβ1、TGFβ2等)が用いられる。ここで「ヒトタンパク質X」と言う場合には、タンパク質Xが、ヒト生体内で天然に発現するタンパク質Xのアミノ酸配列を有することを意味する。
本発明に用いる未分化維持因子は、好ましくは単離されている。「単離」とは、目的とする成分や細胞以外の因子を除去する操作がなされ、天然に存在する状態を脱していることを意味する。従って、「単離されたタンパク質X」には、培養対象の細胞や組織から産生され細胞や組織及び培地中に含まれている内在性のタンパク質Xは包含されない。「単離されたタンパク質X」の純度総タンパク質重量に占めるタンパク質Xの重量の百分率)は、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは99%以上、更に好ましくは100%である。従って、一態様において、本発明は、単離された未分化維持因子を提供する工程を含む。また、一態様において、工程(1)に用いる培地中へ、単離された未分化維持因子を外来性(又は外因性)に添加する工程を含む。あるいは、前記工程(1)に用いる培地に予め未分化維持因子が添加されていてもよい。
工程(1)において用いられる培地中の未分化維持因子の濃度は、培養する多能性幹細胞の未分化状態を維持可能な濃度であり、当業者であれば、適宜設定することができる。例えば、具体的には、未分化維持因子として、フィーダー細胞非存在下でbFGFを用いる場合、その濃度は、通常4ng〜500ng/mL程度、好ましくは10ng〜200ng/mL程度、より好ましくは30ng〜150ng/mL程度である。

0025

<培地>
本発明において細胞の培養に用いられる培地は、動物細胞の培養に通常用いられる培地を基礎培地として調製又は市販品として購入することができ、基礎培地としては、例えば、BME培地、BGJb培地、CMRL 1066培地、GlasgowMEM(GMEM)培地、Improved MEM Zinc Option培地、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle MEM培地、αMEM培地、DMEM培地、F-12培地、DMEM/F12培地、IMDM/F12培地、ハム培地、RPMI1640培地、Fischer’s培地、Neurobasal培地又はこれらの混合培地など、動物細胞の培養に用いることのできる培地を挙げることができる。これらの基礎培地から、本発明の製造方法の各工程において使用される培地を調製することができる。
本発明において「未分化維持因子を含む培地」(未分化維持培地)として用いられる培地は、フィーダーフリー無血清であり、例えば、基礎培地に未分化維持因子及び後述の血清代替物及び適宜栄養源等を添加することにより、調製することができる。具体的には、例えばDMEM/F12培地にbFGF、KSR、non essential amino acid (NEAA)、L-グルタミン及び2−メルカプトエタノールを添加することにより、調製することができる。
また、未分化維持に適する培地として市販されている、後述の、未分化維持因子を含むフィーダーフリー培地を未分化維持培地として使用することもできる。
本発明における「無血清培地」とは、無調整又は未精製の血清を含まない培地を意味する。本発明では、精製された血液由来成分動物組織由来成分(例えば、増殖因子)が混入している培地も、無調整又は未精製の血清を含まない限り無血清培地に含まれる。
無血清培地は、血清代替物を含有していてもよい。血清代替物としては、例えば、アルブミントランスフェリン脂肪酸コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール又は3’チオールグリセロール、あるいはこれらの均等物などを適宜含有するものを挙げることができる。かかる血清代替物は、例えば、WO98/30679に記載の方法により調製することができる。血清代替物としては市販品を利用してもよい。かかる市販の血清代替物としては、例えば、Knockout Serum Replacement(ライフテクノロジー(Life Technologies、現ThermoFisher Scientific)社製;以下、KSRと記すこともある。)、Chemically-defined Lipid concentrated(Life Technologies社製)、GlutaMax(Life Technologies社製)、B27(Life Technologies社製)、N2サプリメント(Life Technologies社製)、ITSサプリメント(Life Technologies社製)が挙げられる。
無血清培地は、適宜、脂肪酸又は脂質、アミノ酸(例えば、非必須アミノ酸)、ビタミン、増殖因子、サイトカイン抗酸化剤、2-メルカプトエタノール、ピルビン酸緩衝剤無機塩類等を含有してもよい。
調製の煩雑さを回避するために、かかる無血清培地として、市販のKSR(Life Technologies社製)を適量(例えば、約0.5%から約30%、好ましくは約1%から約20%)添加した無血清培地(例えば、GMEM培地に約8% KSR、Chemically-defined Lipid concentratedを添加した培地)、又はNeurobasal培地に市販のB27(Life Technologies社製)を適量(例えば、約0.1〜5%)添加した無血清培地を使用してもよい。また、KSR同等品として特表2001-508302に開示された培地が挙げられる。

0026

培養は、好ましくは無血清培地中で行われる。無血清培地として、好ましくはKSR、又はB27を含む無血清培地、又は、ゼノフリー条件の培地中で行われる。ここで「ゼノフリー」とは、培養対象の細胞の生物種とは異なる生物種由来の成分が排除された条件を意味する。

0027

本発明において、フィーダー細胞とは、幹細胞を培養するときに共存させる当該幹細胞以外の細胞のことである。フィーダー細胞としては、例えば、マウス線維芽細胞(MEF等)、ヒト線維芽細胞、SNL細胞、STO細胞等が挙げられる。フィーダー細胞は、増殖抑制処理されたフィーダー細胞でもよく、ここで、増殖抑制処理としては、増殖抑制剤(例えば、マイトマイシンC)処理又はガンマ線照射もしくはUV照射等による処理が挙げられる。ただし、本発明ではフィーダー細胞非存在下(フィーダーフリー)で培養を行うことが好ましい。

0028

本発明において、フィーダー細胞非存在下(フィーダーフリー)とは、フィーダー細胞非存在下にて培養することである。フィーダー細胞非存在下とは、例えば、前記のようなフィーダー細胞を添加していない条件、または、フィーダー細胞を実質的に含まない(例えば、全細胞数に対するフィーダー細胞数の割合が3%以下、好ましくは0.5%以下)の条件が挙げられる。
未分化維持培地として使用可能なフィーダーフリー培地として、多くの合成培地が開発・市販されており、例えばEssential 8(Life Technologies社製)が挙げられる。Essential 8培地は、DMEM/F12培地に、添加剤として、L-ascorbic acid-2-phosphate magnesium (64 mg/l), sodium selenium(14 μg/1), insulin(19.4mg /l), NaHCO3(543 mg/l), transferrin (10.7 mg/l), bFGF (100 ng/mL)、及び、TGFβ阻害剤(TGFβ1(2 ng/mL) または Nodal (100 ng/mL))を含む(Nature Methods, 8, 424-429 (2011))。市販の未分化維持因子を含むフィーダーフリー培地、すなわち未分化維持培地として使用可能なフィーダーフリー培地として、S-medium(DSファーバイオメディカル社製)、StemPro(Life Technologies社製)、hESF9(Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Sep 9;105(36):13409-14)、mTeSR1 (STEMCELLTechnologies社製)、mTeSR2 (STEMCELL Technologies社製)、TeSR-E8(STEMCELL Technologies社製)、又はStemFit(味の素社製)が挙げられる。上記工程(1)ではこれらを用いることにより、簡便に本発明を実施することが出来る。

0029

<細胞外基質>
本発明において、細胞外基質とは、細胞の外に存在する超分子構造体であり、天然由来であっても、人工物組換え体)であってもよい。例えば、コラーゲン、プロテオグリカンフィブロネクチンヒアルロン酸テネイシンエンクチンエラスチンフィブリリンおよびラミニンといった物質またはこれらの断片が挙げられる。これらの細胞外基質は、組み合わせて用いられてもよく、例えば、BD Matrigel(商標)などの細胞からの調製物であってもよい。好ましくは、ラミニンまたはその断片である。本発明においてラミニンとは、α鎖β鎖γ鎖をそれぞれ1本ずつ持つヘテロ三量体構造を有するタンパク質であり、サブユニット鎖の組成が異なるアイソフォームが存在する細胞外マトリックスタンパク質である。ラミニンは、5種のα鎖、4種のβ鎖および3種のγ鎖のヘテロ三量体の組合せで約15種類のアイソフォームを有する。特に限定されないが、例えば、α鎖は、α1、α2、α3、α4またはα5であり、β鎖は、β1、β2、β3またはβ4であり、ならびにγ鎖は、γ1、γ2またはγ3が例示される。本発明において用いられるラミニンは、より好ましくは、α5、β1およびγ1からなるラミニン511である(Nat Biotechnol 28, 611-615 (2010))。
本発明では、ラミニンは断片であってもよく、インテグリン結合活性を有している断片であれば、特に限定されないが、例えば、エラスターゼにて消化して得られる断片であるE8フラグメント(EMBO J., 3:1463-1468, 1984、J. Cell Biol., 105:589-598, 1987)であってもよい。従って、本発明では、好ましくは、ラミニン511をエラスターゼで消化して得られる、WO2011/043405に記載されたラミニン511E8(好ましくはヒトラミニン511E8)が例示される。尚、本発明で用いられるラミニン511E8等のラミニンE8フラグメントは、ラミニンのエラスターゼ消化産物であることを要するものではなく、組換え体であってもよい。またラミニン511E8は市販されており、例えばニッピ株式会社等から購入可能である。
未同定成分の混入を回避する観点から、本発明において用いられるラミニン又はラミニン断片は、好ましくは単離されている。

0030

<分化誘導因子>
分化誘導因子としては、多能性幹細胞からCorinおよび/またはLrtm1陽性細胞、またはドーパミン産生神経前駆細胞へ分化誘導する物質であれば特に限定はないが、具体的には、BMP阻害剤、TGFβ阻害剤、SHHシグナル刺激剤、FGF8およびGSK3β阻害剤を例示することができる。

0031

<BMP阻害剤>
本発明において、BMP阻害剤とは、BMPに起因するシグナル伝達阻害する物質であれば特に限定は無く、核酸、タンパク質、低分子有機化合物のいずれであってもよい。ここでBMPとしては、BMP2、BMP4、BMP7及びGDF7が挙げられる。BMP阻害剤として、BMPに直接作用する物質(例えば抗体、アプタマー等)、BMPをコードする遺伝子の発現を抑制する物質(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA等)、BMP受容体(BMPR)とBMPの結合を阻害する物質、BMP受容体によるシグナル伝達に起因する生理活性を阻害する物質を挙げることができる。BMPRとして、ALK2又はALK3を挙げることができる。BMPシグナル伝達経路阻害物質として、当業者に周知の化合物を使用することができ、Chordin、Noggin、Follistatin、などのタンパク質性阻害剤、Dorsomorphin (すなわち、6-[4-(2-piperidin-1-yl-ethoxy)phenyl]-3-pyridin-4-yl-pyrazolo[1,5-a]pyrimidine)、その誘導体(P. B. Yu et al. (2007),Circulation, 116:II_60; P.B. Yu et al. (2008), Nat. Chem. Biol., 4:33-41; J. Hao et al. (2008),PLoS ONE, 3(8):e2904)およびLDN193189(すなわち、4-(6-(4-(piperazin-1-yl)phenyl)pyrazolo[1,5-a]pyrimidin-3-yl)quinoline;4-[6-(4-ピペラジン-1-イルフェニル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル]キノリン)が例示される。ここでLDN193189は、BMPR(ALK2/3)阻害剤(以下、BMPR阻害剤)として周知であり、例えば塩酸塩の形態で市販されている。DorsomorphinおよびLDN193189は、それぞれSigma-Aldrich社およびStemgent社から入手可能である。BMP阻害剤として、これら一種または二種以上を適宜選択して使用してもよい。本発明で使用されるBMP阻害剤は、好ましくは、LDN193189であり得る。
培地中におけるLDN193189の濃度は、BMPを阻害する濃度であれば特に限定されないが、例えば、1nM、10nM、50nM、100nM、500nM、750nM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、15μM、20μM、25μM、30μM、40μM、50μMであるがこれらに限定されない。好ましくは、100nMである。

0032

<TGFβ阻害剤>
本発明において、TGFβ阻害剤とは、TGFβのTGFβの受容体への結合からSMADへと続くシグナル伝達を阻害する物質であり、起因するシグナル伝達経路を阻害する物質であれば特に限定は無く、核酸、タンパク質、低分子有機化合物のいずれであってもよい。当該物質として例えば、TGFβに直接作用する物質(例えば、タンパク質、抗体、アプタマー等)、TGFβをコードする遺伝子の発現を抑制する物質(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA等)、TGFβ受容体とTGFβの結合を阻害する物質、TGFβ受容体によるシグナル伝達に起因する生理活性を阻害する物質(例えば、TGFβ受容体の阻害剤、Smadの阻害剤等)を挙げることができる。受容体であるALKファミリーへの結合を阻害する物質、またはALKファミリーによるSMADのリン酸化を阻害する物質が挙げられ、例えば、Lefty-1(NCBI Accession No.として、マウス:NM_010094、ヒト:NM_020997が例示される)、Lefty-2(NCBI Accession No.として、マウス:NM_177099、ヒト:NM_003240およびNM_001172425が例示される)、SB431542、SB202190(以上、R.K.Lindemann et al., Mol. Cancer, 2003, 2:20)、SB505124 (GlaxoSmithKline)、NPC30345、SD093、SD908、SD208 (Scios)、LY2109761、LY364947、 LY580276 (Lilly Research Laboratories)、A83-01(WO2009/146408) およびこれらの誘導体などが例示される。本発明で使用されるTGFβ阻害剤として、好ましくはSB431542(4-(5-ベンゾール[1,3]ジオキソール-5-イル-4-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル)-ベンズアミド)又はA-83-01(3-(6-メチル-2-ピリジニル)-N-フェニル-4-(4-キノリニル)-1H-ピラゾール-1-カルボチオアミド)が挙げられ、これらは、TGFβ受容体(ALK5)及びActivin受容体(ALK4/7)の阻害剤として公知である。TGFβ阻害剤として、これら一種または二種以上を適宜選択して使用してもよい。本発明で使用されるTGFβ阻害剤は、更に好ましくは、A83-01であり得る。
培地中におけるA83-01の濃度は、ALK5を阻害する濃度であれば特に限定されないが、例えば、1nM、10nM、50nM、100nM、500nM、750nM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、15μM、20μM、25μM、30μM、40μM、50μMであるがこれらに限定されない。好ましくは、500nMから5μMであり、より好ましくは、500nMである。

0033

尚、SB431542やLDN193189等のTGFβ阻害活性は、当業者に周知の方法、例えばSmadのリン酸化をウェスタンブロッティング法で検出することで決定できる(Mol Cancer Ther. (2004) 3, 737-45.)。
Purmorphamine、SAG等のSHH刺激剤の活性は、当業者に周知の方法、例えばGli1遺伝子の発現に着目したレポータージーンアッセイにて決定することができる(Oncogene (2007) 26, 5163-5168)。

0034

<GSK3β阻害剤>
本発明において、GSK3β阻害剤とは、GSK3βタンパク質のキナーゼ活性(例えば、βカテニンに対するリン酸化能)を阻害する物質として定義され、既に多数のものが知られているが、例えば、インジルビン誘導体であるBIO(別名、GSK3β阻害剤IX;6-ブロモインジルビン3'-オキシム)、マレイミド誘導体であるSB216763(3-(2,4-ジクロロフェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、フェニルαブロモメチルケトン化合物であるGSK3β阻害剤VII(4-ジブロモアセトフェノン)、細胞膜透過型リン酸化ペプチドであるL803-mts(別名、GSK3βペプチド阻害剤;Myr-N-GKEAPPAPPQpSP-NH2(配列番号1))および高い選択性を有するCHIR99021(6-[2-[4-(2,4-Dichlorophenyl)-5-(4-methyl-1H-imidazol-2-yl)pyrimidin-2-ylamino]ethylamino]pyridine-3-carbonitrile)が挙げられる。GSK3β阻害剤として、これら一種または二種以上を適宜選択して使用してもよい。これらの化合物は、例えばCalbiochem社やBiomol社等から市販されており容易に利用することが可能であるが、他の入手先から入手してもよく、あるいはまた自ら作製してもよい。本発明で使用されるGSK3β阻害剤は、好ましくは、CHIR99021であり得る。
培地中におけるCHIR99021の濃度は、例えば、1nM、10nM、50nM、100nM、500nM、750nM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、15μM、20μM、25μM、30μM、40μM、50μMであるがこれらに限定されない。好ましくは、1μMである。

0035

<FGF8>
本発明において、FGF8とは、特に限定されないが、ヒトFGF8の場合、FGF8a、FGF8b、FGF8eまたはFGF8fの4つのスプライシングフォームが例示され、より好ましくは、FGF8bである。FGF8は、例えばWako社やR&D systems社等から市販されており容易に利用することが可能であるが、当業者に公知の方法によって細胞へ強制発現させることによって得てもよい。
培地中におけるFGF8の濃度は、例えば、1ng/mL、5ng/mL、10ng/mL、50ng/mL、100ng/mL、150ng/mL、200ng/mL、250ng/mL、500ng/mL、1000ng/mL、2000ng/mL、5000ng/mLであるがこれらに限定されない。好ましくは、100ng/mLである。

0036

<Corin陽性細胞および/またはLrtm1陽性細胞>
Corin陽性細胞および/またはLrtm1陽性細胞とは、Corinタンパク質および/またはLrtm1タンパク質が、抗Corin抗体または抗Lrtm1抗体により認識できる量発現している細胞である。すなわち、下記の「細胞を選択する方法」で細胞を認識可能な量のCorinタンパク質、又はLtrm1タンパク質を細胞表面上に発現している細胞が挙げられる。

0037

<細胞を選択する方法>
本発明において、細胞集団よりCorin陽性細胞および/またはLrtm1陽性細胞を選択するために、CorinまたはLrtm1に特異的に結合する物質を用いて行うことができる。CorinまたはLrtm1に結合する物質は、抗体、アプタマーを用いることができ、好ましくは、抗体もしくはその抗原結合断片である。
本発明において、抗体はポリクローナルまたはモノクローナル抗体であってよい。これらの抗体は、当業者に周知の技術を用いて作成することが可能である(Current protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987) Publish.John Wiley and Sons.Section 11.12-11.13)。具体的には、抗体がポリクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌または哺乳類細胞株等で発現し精製したCorinまたはLrtm1がコードするタンパク質、部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドあるいは糖脂質を精製して、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、上述の免疫された非ヒト動物から得られた脾臓細胞骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987) Publish.John Wiley and Sons.Section 11.4-11.11)。抗体の抗原結合断片としては、抗体の一部(たとえばFab断片)または合成抗体断片(たとえば、一本鎖Fv断片「ScFv」)が例示される。FabおよびF(ab)2断片などの抗体の断片もまた、遺伝子工学的に周知の方法によって作製することができる。例えば、Corinに対する抗体はWO2004/065599、WO2006/009241に記載の作製法により、Lrtm1に対する抗体はWO2013/015457に記載の作製法により得ることができる。
ヒトCorinは、NCBIのアクセッション番号NM_006587によりその配列を得ることができる。同様に、ヒトLrtm1は、NM_020678によりその配列を得ることができる。
CorinまたはLrtm1を発現する細胞を認識または分離することを目的として、当該結合する物質は、例えば、蛍光標識放射性標識化学発光標識酵素ビオチンまたはストレプトアビジン等の検出可能な物質またはプロテインAプロテインG、ビーズまたは磁気ビーズ等の単離抽出を可能とさせる物質と結合または接合されていてもよい。
当該結合する物質はまた、間接的に標識してもよい。当業者に公知の様々な方法を使用して行い得るが、例えば、当該抗体に特異的に結合する予め標識された抗体(二次抗体)を用いる方法が挙げられる。
ドーパミン産生神経前駆細胞を検出する方法として、フローサイトメーターまたはプロテインチップ等を用いることが含まれる。
ドーパミン産生神経前駆細胞を抽出する方法には、当該結合する物質へ粒子を接合させ沈降させる方法、磁気ビーズを用いて磁性により細胞を選別する方法(例えば、MACS)、蛍光標識を用いてセルソーターを用いる方法、または抗体等が固定化された担体(例えば、細胞濃縮カラム)を用いる方法等が例示される。
本発明において、CorinまたはLrtm1に特異的に結合するアプタマーは、当業者に周知の技術を用いて作成することが可能である(SELEX(systematic evolution of ligand by exponential enrichment)法:Ellington, A.D. & Szostak, J.W.(1990)Nature,346,818-822., Tuerk, C. & Gold, L.(1990)Science,249,505-510.)。

0038

<神経栄養因子>
本発明において、神経栄養因子とは、運動ニューロン生存と機能維持に重要な役割を果たしている膜受容体へのリガンドであり、例えば、Nerve Growth Factor (NGF)、Brain-derived Neurotrophic Factor (BDNF)、Neurotrophin 3 (NT-3)、Neurotrophin 4/5 (NT-4/5)、Neurotrophin 6 (NT-6)、basicFGF、acidic FGF、FGF-5、Epidermal Growth Factor (EGF)、Hepatocyte Growth Factor (HGF)、Insulin、Insulin Like Growth Factor 1 (IGF 1)、Insulin Like Growth Factor 2 (IGF 2)、Glia cell line-derived Neurotrophic Factor (GDNF)、TGF-β2、TGF-β3、Interleukin 6 (IL-6)、Ciliary Neurotrophic Factor (CNTF)およびLIFなどが挙げられる。また、これらの一種又は二種以上を適宜選択して用いてもよい。本発明において好ましい神経栄養因子は、GDNF、およびBDNFから成るグループより選択される因子である。神経栄養因子は、例えばWako社やR&D systems社等から市販されており容易に利用することが可能であるが、当業者に公知の方法によって細胞へ強制発現させることによって得てもよい。
培地中におけるGDNF1の濃度は、例えば、0.1ng/mL、0.5ng/mL、1ng/mL、5ng/mL、10ng/mL、15ng/mL、20ng/mL、25ng/mL、30ng/mL、40ng/mL、50ng/mL、100ng/mL、200ng/mL、500ng/mLであるがこれらに限定されない。好ましくは、10ng/mLである。培地中におけるBDNF1の濃度は、例えば、0.1ng/mL、0.5ng/mL、1ng/mL、5ng/mL、10ng/mL、15ng/mL、20ng/mL、25ng/mL、30ng/mL、40ng/mL、50ng/mL、100ng/mL、200ng/mL、500ng/mLであるがこれらに限定されない。好ましくは、20ng/mLである。

0039

<ROCK阻害剤>
本発明において、ROCK阻害剤とは、Rhoキナーゼ(ROCK)の機能を抑制できるものである限り特に限定されず、例えば、Y-27632(例えば、Ishizaki et al., Mol. Pharmacol. 57, 976-983 (2000);Narumiya et al., MethodsEnzymol. 325,273-284 (2000)参照)、Fasudil/HA1077(例えば、Uenata et al., Nature 389: 990-994 (1997)参照)、H-1152(例えば、Sasaki et al., Pharmacol. Ther. 93: 225-232 (2002)参照)、Wf-536(例えば、Nakajima et al., Cancer ChemotherPharmacol. 52(4): 319-324 (2003)参照)およびそれらの誘導体、ならびにROCKに対するアンチセンス核酸、RNA干渉誘導性核酸(例えば、siRNA)、ドミナントネガティブ変異体、及びそれらの発現ベクターが挙げられる。また、ROCK阻害剤としては他の低分子化合物も知られているので、本発明においてはこのような化合物またはそれらの誘導体も使用できる(例えば、米国特許出願公開第20050209261号、同第20050192304号、同第20040014755号、同第20040002508号、同第20040002507号、同第20030125344号、同第20030087919号、及び国際公開第2003/062227号、同第2003/059913号、同第2003/062225号、同第2002/076976号、同第2004/039796号参照)。本発明では、1種または2種以上のROCK阻害剤が使用され得る。本発明で使用されるROCK阻害剤は、好ましくは、Y-27632であり得る。
Y-27632の濃度は、例えば、100nM、500nM、750nM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、15μM、20μM、25μM、30μM、40μM、50μMであるがこれらに限定されない。好ましくは、10μMである。

0040

尚、本明細書において、「物質Xを含む培地」、「物質Xの存在下」とは、外来性(exogenous)の物質Xが添加された培地または外来性の物質Xを含む培地、又は外来性の物質Xの存在下を意味する。すなわち、当該培地中に存在する細胞または組織が当該物質Xを内在的(endogenous)に発現、分泌もしくは産生する場合、内在的な物質Xは外来性の物質Xとは区別され、外来性の物質Xを含んでいない培地は内在的な物質Xを含んでいても「物質Xを含む培地」の範疇には該当しないと解する。

0041

II.Corinおよび/またはLrtm1陽性細胞を含む細胞集団の製造方法
本発明は、下記工程(1)および(2)を含む、Corinおよび/またはLrtm1陽性細胞を含む細胞集団の製造方法を提供する;
(1)多能性幹細胞を、フィーダー細胞非存在下で、SHHシグナル刺激剤、及び未分化維持因子を含む未分化維持培地中、接着培養する工程、および
(2)工程(1)で得られた細胞集団を、1以上の分化誘導因子を含む培地中で培養する工程。

0042

<工程(1)>
前記工程(1)における好ましい多能性幹細胞として、人工多能性幹細胞又は胚性幹細胞(ES細胞、iPS細胞)、より好ましくはヒト人工多能性幹細胞又はヒト胚性幹細胞(ES細胞、iPS細胞)が挙げられる。ここで人工多能性幹細胞の製造方法には特に限定はなく、上述のとおり当業者に周知の方法で製造することができるが、人工多能性幹細胞の作製工程(すなわち、体細胞を初期化し多能性幹細胞を樹立する工程)もフィーダーフリーで行うことが望ましい。ここで胚性幹細胞(ES細胞、iPS細胞)を取得する方法には特に限定はなく、上述のとおり当業者に周知の方法で製造することができるが、胚性幹細胞(ES細胞、iPS細胞)の作製工程もフィーダーフリーで行うことが望ましい。

0043

多能性幹細胞の維持培養拡大培養は、接着培養でも浮遊培養でも実施することができるが、好ましくは接着培養で実施される。多能性幹細胞の維持培養・拡大培養は、フィーダー存在下で実施してもよいしフィーダーフリーで実施してもよいが、好ましくはフィーダーフリーで実施される。多能性幹細胞の維持培養及び拡大培養におけるフィーダー細胞非存在下(フィーダーフリー)とは、フィーダー細胞を実質的に含まない(例えば、全細胞数に対するフィーダー細胞数の割合が3%以下の)条件を意味する。好ましくは、フィーダー細胞を含まない条件において、多能性幹細胞の維持培養及び拡大培養が実施される。多能性幹細胞の維持培養・拡大培養を行う際、ROCK阻害剤の存在下で実施することができる。

0044

工程(1)で用いられる多能性幹細胞の維持培養・拡大培養は、未分化維持培地中で、当業者に周知の方法で実施することができる。
工程(1)で用いられる未分化維持培地は、基礎培地に未分化維持因子が添加され、多能性幹細胞が多能性を維持したまま生存可能な培地であれば特に限定は無く、当該未分化維持因子及び基礎培地については前述のとおりである。工程(1)で用いられる未分化維持培地として、具体的には、既に未分化維持因子が添加された市販の多能性幹細胞用培地を用いることができ、未分化維持因子として、好ましくはbFGF又はTGFβ等が挙げられる。未分化維持培地としては、例えば、Essential 8(Life Technologies社製)、S-medium(DSファーマバイオメディカル社製)、StemPro(Life Technologies社製)、hESF9(Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Sep 9;105(36):13409-14)、mTeSR1 (STEMCELLTechnologies社製)、mTeSR2 (STEMCELL Technologies社製)、TeSR-E8(STEMCELL Technologies社製)、StemFit(味の素社製)が挙げられ、好ましくは、Essential 8又はStemFitが挙げられる。また、未分化維持培地に、適宜前述のROCK阻害剤を添加して用いることができる。

0045

工程(1)におけるフィーダー細胞非存在下(フィーダーフリー)とは、フィーダー細胞を実質的に含まない(例えば、全細胞数に対するフィーダー細胞数の割合が3%以下)条件を意味する。好ましくは、フィーダー細胞を含まない条件において、工程(1)が実施される。

0046

工程(1)における多能性幹細胞の培養は、浮遊培養及び接着培養の何れの条件で行われてもよいが、好ましくは、接着培養により行われる。
接着培養を行う際に用いられる培養器は、「接着培養する」ことが可能なものであれば特に限定されないが、細胞接着性の培養器が好ましい。細胞接着性の培養器としては、培養器の表面が、細胞との接着性を向上させる目的で人工的に処理された培養器が挙げられ、具体的には前述した内部がコーティング剤被覆された培養器が挙げられる。コーティング剤としては、例えば、ラミニン[ラミニンα5β1γ1(以下、ラミニン511)、ラミニンα1β1γ1(以下、ラミニン111)等及びラミニン断片(ラミニン511E8等)を含む]、エンタクチン、コラーゲン、ゼラチンビトロネクチン(Vitronectin)、シンマックスコーニング社)、マトリゲル等の細胞外マトリクス等、又は、ポリリジンポリオルニチン等の高分子等が挙げられる。また、正電荷処理等の表面加工された培養容器を使用することもできる。好ましくは、ラミニンが挙げられ、より好ましくは、ラミニン511E-8が挙げられる。ラミニン511E-8は、市販品を購入する事ができる(例:iMatrix-511、ニッピ)。

0047

工程(1)において用いられる培地は、SHH刺激剤を含む。工程(1)において、多能性幹細胞をSHH刺激剤で処理してから、工程(2)において分化誘導因子存在下の接着培養に付すことにより、高効率でCorin発現細胞を製造することができる。
SHH刺激剤の濃度は、上述の効果を達成可能な範囲で適宜設定することが可能である。例えば、Shhタンパク質は、通常20〜1000 ng/ml、好ましくは50〜300 ng/mlの濃度で使用される。SAGは、通常、1〜2000nM、好ましくは10〜700nM、より好ましくは30〜600nM、更に好ましくは30〜300nMの濃度で使用される。PMAは、通常0.002〜20μM、好ましくは0.02〜2μMの濃度で使用される。また、一態様において、SHH刺激剤は、前記濃度のSAGと同等のSHH刺激作用を有する量で適宜使用することができる。

0048

工程(1)において用いられる培地は、血清培地であっても無血清培地であってもよいが、化学的未決定な成分の混入を回避する観点から、好ましくは、無血清培地である。
工程(1)において用いられる培地は、化学的に未決定な成分の混入を回避する観点から、含有成分が化学的に決定された培地であってもよい。

0049

工程(1)におけるフィーダーフリー条件での多能性幹細胞の培養においては、フィーダー細胞に代わる足場を多能性幹細胞に提供するため、適切なマトリクスを足場として用いてもよい。足場であるマトリクスにより、表面をコーティングした細胞容器中で、多能性幹細胞を接着培養する。
足場として用いることのできるマトリクスとしては、ラミニン(Nat Biotechnol 28, 611-615 (2010))、ラミニン断片(Nat Commun 3, 1236 (2012))、基底膜標品(Nat Biotechnol 19, 971-974 (2001))、ゼラチン、コラーゲン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、エンタクチン、ビトロネクチン(Vitronectin)等が挙げられる。
好ましくは、工程(1)におけるフィーダーフリー条件での多能性幹細胞の培養においては、単離されたラミニン511又はラミニン511のE8フラグメント(更に好ましくは、ラミニン511のE8フラグメント)により、表面をコーティングした細胞容器中で、多能性幹細胞を接着培養する。

0050

工程(1)における多能性幹細胞の培養時間は、工程(2)において形成される細胞集団の質を向上させる効果が達成可能な範囲であれば特に限定されないが、通常0.5〜48時間である。工程(1)における多能性幹細胞の培養時間は、好ましくは1時間以上、2時間以上、6時間以上、12時間以上、18時間以上、又は24時間以上である。工程(1)における多能性幹細胞の培養時間は、好ましくは36時間以内、又は28時間以内である。一態様において、工程(1)における多能性幹細胞の培養時間の範囲は、好ましくは2〜48時間、より好ましくは6〜48時間、更に好ましくは12〜36時間、より更に好ましくは18〜28時間(例、24時間)である。即ち、工程(2)開始の0.5〜48時間(好ましくは、18〜28時間)前に第一工程を開始し、工程(1)を完了した後引き続き工程(2)が行われる。更なる態様において、工程(1)における多能性幹細胞の培養時間の範囲は、好ましくは18〜48時間、18〜36時間、18〜28時間、又は24〜28時間である。SHHシグナル刺激剤で細胞を処理した後、他方で引き続き細胞を処理する場合、それぞれの処理時間が、上述の培養時間の範囲内となるようにすることができる。通常、工程(1)はROCK阻害剤を添加することなく行われる。

0051

工程(1)における培養温度CO2濃度等の培養条件は適宜設定できる。培養温度は、例えば約30℃から約40℃、好ましくは約37℃である。またCO2濃度は、例えば約1%から約10%、好ましくは約5%である。

0052

好ましい一態様において、ヒト多能性幹細胞(例、ヒトiPS細胞)を、フィーダー細胞非存在下で、bFGF及びSHHシグナル刺激剤を含有する無血清培地中で、接着培養する。当該接着培養は、好ましくは、ラミニン511、ラミニン511のE8フラグメント又はビトロネクチンで表面をコーティングした細胞容器中で実施される。当該接着培養は、好ましくは、フィーダーフリー培地としてEssential 8、TeSR培地、mTeSR培地、mTeSR-E8培地、又はStemFit培地、更に好ましくはEssential 8又はStemFit培地を用いて実施される。

0053

好ましい一態様において、ヒト多能性幹細胞(例、ヒトiPS細胞)を、フィーダー細胞非存在下で、bFGF及びSHHシグナル刺激剤を含有する無血清培地中で、浮遊培養する。当該浮遊培養では、ヒト多能性幹細胞は、ヒト多能性幹細胞の凝集体を形成してもよい。

0054

好ましい態様において、工程(1)により得られる細胞は多能性様性質(pluripotent-like state)が維持された細胞であり、工程(1)を通じて多能性様性質が維持される。多能性様性質とは、多能性を含む、多能性幹細胞に共通する多能性幹細胞に特有形質の少なくとも一部を維持している状態を意味する。多能性様性質には厳密な多能性は要求されない。具体的には、多能性性質(pluripotent state)の指標となるマーカーの全て又は一部を発現している状態が、「多能性様性質」に含まれる。多能性様性質のマーカーとしては、Oct3/4陽性、アルカリフォスファターゼ陽性などが挙げられる。一態様において、多能性様性質が維持された細胞は、Oct3/4陽性である。Nanogの発現量がES細胞もしくはiPS細胞に比べて低い場合であっても「多能性様性質を示す細胞」に該当する。
一態様において、工程(1)により得られる細胞は、Corinおよび/またはLrtm1陽性細胞、ドーパミン産生神経前駆細胞、又はドーパミン神経細胞へ分化する能力を有する幹細胞である。一態様において、工程(1)により得られる細胞は、少なくともCorinおよび/またはLrtm1陽性細胞、ドーパミン産生神経前駆細胞、又はドーパミン神経細胞へ分化する能力を有する、Oct3/4陽性の幹細胞である。

0055

好ましい態様において、ヒト多能性幹細胞(例、iPS細胞)を、フィーダー細胞非存在下で、SHHシグナル刺激剤、並びにbFGFを含有する無血清培地で、接着培養する。
上記の当該接着培養は、好ましくは、ラミニン511又はラミニン511のE8フラグメントで表面をコーティングした細胞容器中で実施される。SHHシグナル刺激剤は、好ましくはShhタンパク質、SAG又はPurmorphamine(PMA)、より好ましくはSAGである。TGFβ阻害剤(例、Lefty、SB431542、A-83-01)もしくはBMP阻害剤(例、LDN193189)と、SHHシグナル刺激剤(例、Shhタンパク質、SAG、PMA)とを組み合わせて用いてもよい。具体的にはSAG及びA-83-01、SAG及びLDN193189の組合せが挙げられる。培養時間は、0.5〜48時間(好ましくは、18〜48時間、18〜36時間、18〜28時間、又は24〜28時間)である。

0056

工程(1)は、例えば、多能性幹細胞を、フィーダー細胞非存在下で、未分化維持因子を含む培地(未分化維持培地)中で、維持培養しておき、この培地中へSHHシグナル刺激剤を添加するか、又はSHHシグナル刺激剤を含む未分化維持培地へ培地交換し、培養を継続することにより実施される。
例えば、ヒト多能性幹細胞(例、ヒトiPS細胞)を、フィーダー細胞非存在下で、bFGFを含む無血清培地中で維持培養する。当該維持培養は、好ましくは接着培養により行われる。当該接着培養は、好ましくは、ビトロネクチン、ラミニン511又はラミニン511のE8フラグメントで表面をコーティングした細胞容器中で実施される。そして、工程(1)において、この培地中へSHHシグナル刺激剤を添加し、培養を継続する。SHHシグナル刺激剤は、好ましくはShhタンパク質、SAG又はPMAである。ここで、TGFβ阻害剤(例、Lefty、SB431542、A-83-01)もしくはBMP阻害剤(例、LDN193189)を、SHHシグナル刺激剤(例、Shhタンパク質、SAG、PMA)と組み合わせて用いてもよい。添加後、0.5〜48時間(好ましくは、18〜48時間、18〜28時間、又は約24時間)培養を継続する。

0057

<工程(2)>
本発明において、前記工程(2)は多能性幹細胞をCorinおよび/またはLrtm1陽性細胞に分化誘導することのできる分化誘導因子を含む培地を用いて行うことができるが、次の多段階の工程によって行われることが望ましい;
(a)多能性幹細胞を細胞外基質上でBMP阻害剤およびTGFβ阻害剤を含む培地中で接着培養する工程、
(b)前記工程(a)で得られた細胞をBMP阻害剤、TGFβ阻害剤、SHHシグナル刺激剤およびFGF8を含む培地中で細胞外基質上にて接着培養する工程、
(c)前記工程(b)で得られた細胞をBMP阻害剤、TGFβ阻害剤、SHHシグナル刺激剤、FGF8およびGSK3β阻害剤を含む培地中で細胞外基質上にて接着培養する工程、
(d)前記工程(c)で得られた細胞をBMP阻害剤およびGSK3β阻害剤を含む培地中で細胞外基質上にて接着培養する工程。

0058

本発明において、工程(2)で用いる培地は、動物細胞の培養に用いられる培地、具体的には多能性幹細胞等の未分化細胞から細胞を分化させる場合に使用する、当業者に周知の培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えば、Glasgow's Minimal Essential Medium(GMEM)培地、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium (EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM)培地、Ham's F12培地、RPMI1640培地、Fischer's培地、Neurobasal Medium(Life Technologies社製)およびこれらの混合培地などが包含される。好ましくは、GMEM培地である。培地には、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清でもよい。必要に応じて、培地は、例えば、アルブミン、トランスフェリン、Knockout Serum Replacement(KSR)(血清代替物)、N2サプリメント(Invitrogen)、B27サプリメント(Invitrogen)、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3'-チオールグリセロールなどの1つ以上の血清代替物を含んでもよいし、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、GlutaMax(Life Technologies社製)、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の物質も含有し得る。好ましい培地は、KSR、2-メルカプトエタノール、非必須アミノ酸およびピルビン酸を含有するGMEM培地である。
Corinおよび/またはLrtm1陽性細胞を含む細胞集団へ分化させるために、これらの培地へ適宜上述のBMP阻害剤、TGFβ阻害剤、SHHシグナル刺激剤、FGF8およびGSK3β阻害剤から成る群より選択される試薬を加えて培養することができる。
工程(2)、例えば工程(2)が上記(a)、(b)、(c)及び(d)の工程によって行われる場合においては工程(2)中工程(b)及び工程(c)において用いられるSHHシグナル刺激剤としては、上述したいずれのSHHシグナル刺激剤を、一種または二種以上適宜選択して用いてもよいが、好ましくはPurmorphamineが用いられる。
培地中におけるPurmorphamineの濃度は、Gli2を活性化する濃度であれば特に限定されないが、例えば、1nM、10nM、50nM、100nM、500nM、750nM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、15μM、20μM、25μM、30μM、40μM、50μMであるがこれらに限定されない。好ましくは、2μMである。

0059

工程(2)において、細胞外基質の存在下、好ましくは細胞外基質上にて接着培養するとは、細胞外基質によりコーティング処理された培養容器を用いて培養することによって行い得る。コーティング処理は、細胞外基質を含有する溶液を培養容器に入れた後、当該溶液を適宜除くことによって行い得る。
通常は、工程(2)中工程(a)は更にROCK阻害剤を含む培地で行われる。すなわち、工程(a)は、「多能性幹細胞を細胞外基質上でROCK阻害剤、BMP阻害剤およびTGFβ阻害剤を含む培地中で接着培養する工程」であってもよい。
培養条件について、培養温度は、特に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われ、CO2濃度は、好ましくは約2〜5%である。
培養期間は、Corinおよび/またはLrtm1陽性細胞が出現する期間であれば、特に限定されないが、工程(2)の終了後に得られる細胞集団中に含まれるCorinおよび/またはLrtm1陽性細胞の割合が、10%以上となるように培養を行うことが好ましく、工程(2)は、少なくとも10日間行われることが望ましい。より好ましくは、12日間から21日間であり、さらに好ましくは、12日間から14日間である。
また工程(2)内の工程(a)では、1日以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、7日以上、またはそれ以上の日数が挙げられる。好ましくは、1日である。同様に、工程(b)では、1日以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、7日以上、またはそれ以上の日数が挙げられる。好ましくは、2日である。同様に、工程(c)では、1日以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、7日以上、またはそれ以上の日数が挙げられる。好ましくは、4日である。同様に、工程(d)では、1日以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、7日以上、またはそれ以上の日数が挙げられる。好ましくは、5日である。
多能性幹細胞は、細胞を解離させて用いてもよく、細胞を解離させる方法としては、例えば、力学的に解離する方法、プロテアーゼ活性コラゲナーゼ活性を有する解離溶液(例えば、Accutase(商標)およびAccumax(商標)など)またはコラゲナーゼ活性のみを有する解離溶液を用いた解離方法が挙げられる。好ましくは、トリプシンまたはその代替物(TrypLECTS(Life Technologies)が例示される)を用いてヒト多能性幹細胞を解離する方法が用いられる。細胞を解離させた場合、ROCK阻害剤を適宜、解離後に添加して培養することが望ましい。ROCK阻害剤を添加する場合、少なくとも1日間添加して培養すればよく、より好ましくは1日間である。

0060

III.ドーパミン産生神経前駆細胞の製造方法
<工程(3)>
工程(3)のCorinおよび/またはLrtm1陽性細胞を収集する工程は、上述した<細胞を選択する方法>に基づいて行うことができる。

0061

<工程(4)>
工程(4)で用いる培地は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えば、Glasgow's Minimal Essential Medium(GMEM)培地、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium (EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM)培地、Ham's F12培地、RPMI1640培地、Fischer's培地、Neurobasal Medium(Life Technologies社製)およびこれらの混合培地などが包含される。好ましくは、Neurobasal Mediumである。培地には、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清でもよい。必要に応じて、培地は、例えば、アルブミン、トランスフェリン、Knockout Serum Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)、N2サプリメント(Invitrogen)、B27サプリメント(Invitrogen)、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3'-チオールグリセロールなどの1つ以上の血清代替物を含んでもよいし、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、GlutaMax(Life Technologies社製)、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類、核酸(例えば、Dibutyryl cyclicAMP(dbcAMP))などの1つ以上の物質も含有し得る。好ましい培地は、B27サプリメント、アスコルビン酸およびdbcAMPを含有するNeurobasal Mediumである。この培地へ適宜神経栄養因子を加えて培養することができる。
工程(4)における、浮遊培養とは、細胞を培養容器へ非接着の状態で培養することであり、特に限定はされないが、細胞との接着性を向上させる目的で人工的に処理(例えば、細胞外マトリックス等によるコーティング処理)されていない培養容器、若しくは、人工的に接着を抑制する処理(例えば、ポリヒドロキシエチルメタクリル酸(poly-HEMA)、非イオン性界面活性ポリオール(Pluronic F-127等)またはリン脂質類似構造物(例えば、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン構成単位とする水溶性ポリマー(Lipidure))によるコーティング処理した培養容器を使用して行うことができる。
培養条件について、培養温度は、特に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われ、CO2濃度は、好ましくは約2〜5%である。
培養期間は、Nurr1またはFoxa2陽性細胞が出現する期間であれば、特に限定されないが、工程(iii)は、少なくとも7日間行われることが望ましい。より好ましくは、7日間から30日間であり、さらに好ましくは、14日間から21日間、または14日間から16日間であり、最も好ましくは、16日間である。
工程(3)に続いて工程(4)を行う場合、ROCK阻害剤を適宜添加して培養することが望ましい。ROCK阻害剤を添加する場合、少なくとも1日間添加して培養すればよく、より好ましくは1日間である。

0062

IV.医薬
<パーキンソン病治療剤>
本発明で得られたドーパミン産生神経前駆細胞は、製剤としてパーキンソン病患者に投与することができる。得られたドーパミン産生神経前駆細胞を生理食塩水等に懸濁させ、患者線条体領域に移植することによって行われる。従って、本発明では、上記の方法で多能性幹細胞より得られたドーパミン産生神経前駆細胞を含むパーキンソン病治療剤を提供する。
本発明において、パーキンソン病治療剤に含まれるドーパミン産生神経前駆細胞の細胞数は、移植片が投与後に生着できれば特に限定されないが、例えば、15×104個以上含まれ得る。また、症状や体躯の大きさに合わせて適宜増減して調製されてもよい。
ドーパミン産生神経前駆細胞の疾患部位への移植は、例えば、Nature Neuroscience,2,1137(1999)もしくはN Engl J Med. ;344:710-9(2001)に記載されるような手法によって行うことができる。

0063

キット
本発明での他の実施態様において、多能性幹細胞からドーパミン産生神経前駆細胞を作製するキットが含まれる。当該キットには、上述したドーパミン産生神経前駆細胞を作製する各工程に使用する培地、添加剤または培養容器等が含まれる。例えば、抗Corin抗体及び/又は抗Lrtm1抗体、工程(1)に用いられるSHHシグナル刺激剤(例えば、SAG)、工程(2)に用いられる、BMP阻害剤(例えば、LDN193189)、TGFβ阻害剤(例えば、A83-01)、SHHシグナル刺激剤(例えば、Purmorphamine)、FGF8、GSK3β阻害剤(例えば、CHIR99021)、細胞外基質(例えばラミニン511E8)、および神経栄養因子(例えば、BDNF及びGDNF)を含むキットが挙げられる。本キットには、さらに製造工程の手順を記載した書面や説明書を含んでもよい。

0064

以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。

0065

実施例1
細胞および培養
ドーパミン産生細胞製造のプロトコールを図1に示した。
ヒトiPS細胞であるQHJ-I01は、Oct3/4、Sox2、Klf4、L-MYC、LIN28およびp53のドミナントネガティブ体(Okita, K., et al.Stem Cells 31, 458-66 (2013);WO2013/176233)をヒトPBMCエピソーマルベクターにより導入して得られた細胞として京都大学の山中教授らより受領した。
iPS細胞は、Miyazaki T et al., Nat Commun.3:1236, 2012に記載に準拠した方法で培養した。すなわち簡潔には、Laminin511E8でコーティングされた6 well plate上にてFGF2(bFGF)を含む未分化維持培地により維持培養した。
分化誘導開始、すなわち分化培地への交換の24時間前に、SHHシグナル刺激剤であるSAG(Enzo Life Sciences,Inc, 300nM)を含む未分化維持培地、StemFit:AK-03N(Ajinomoto)へと交換し、iPS細胞を含む細胞集団を得た。
SAG存在下で24時間培養した後の前記iPS細胞を含む細胞集団を、TrypLECTS(Life Technologies)を用いて解離し、別途用意したLaminin511E8(iMatrix-511、Nippi)でコーティングした6 well plateに1wellあたり5×106個で播種し、培地を分化培地〔10μM Y-27632(WAKO)、0.1μM LDN193189(STEMGENT)および0.5μM A83-01(WAKO)を含有する基本培地A〔8%KSR(Invitrogen)、1mM Sodium pyruvate(Invitrogen)、0.1mMMEMnon essential amino acid(Invitrogen)および0.1mM 2-Mercaptoethanol(WAKO)を含有するGMEM(Invitrogen)〕に交換した。翌日(day1)、0.1μM LDN193189、0.5μM A83-01、2μM Purmorphamine(WAKO)および100ng/mL FGF8(WAKO)を含有する基本培地Aへ培地を交換した。2日後(day3)、0.1μM LDN193189、0.5μM A83-01、2μM Purmorphamine、100ng/mL FGF8および3μM CHIR99021(WAKO)を含有する基本培地Aへ培地を交換した。4日後(day7)、0.1μM LDN193189および3μM CHIR99021を含有する基本培地Aへ培地を交換した。0.1μM LDN193189および3μM CHIR99021を含有する基本培地Aへ培地を交換した。これらの期間、培地交換は1日に一度行った。分化誘導開始後12日目(day12)に、抗Corin抗体を用いたフローサイトメトリー解析を実施した(図1)。
尚、抗Corin抗体は以下の方法で作製した。カニクイザルCorin遺伝子のうち、細胞外領域の一部(79-453アミノ酸)をコードする遺伝子配列を293E細胞に導入して、Corinタンパク質の細胞外領域断片を発現させて回収した。回収したタンパク質をマウスに免疫したのち、リンパ球細胞を取り出してミエローマ細胞フュージョンさせた。フュージョンさせた細胞集団より、Corinに反応性を持つクローンを選択した。このクローンの培養上清を抗Corinモノクローナル抗体として蛍光ラベルを施した後に用いた。
0.1μM LDN193189および3μM CHIR99021を含有する基本培地Aでの培養から5日後、すなわち分化誘導開始後12日目(day12)、TrypLE CTSを用いて細胞を解離し、2%FBS、10μM Y-27632(WAKO)、20 mM D-glucoseおよび50μg/ml Penicillin/Streptomycinを含有するCa2+Mg2+-free HBSS(Invitrogen)へ懸濁させた。上記の抗Corin抗体を添加し、4℃で20分間インキュベートし、FACS(BD)を用いてソーティングを行いCorin陽性細胞を回収し、細胞数を計測した。Corin陽性率を測定した結果を図2に示す。左側の棒グラフはSAG非存在下で未分化維持培養(プレコンディショニング)した場合の対象細胞を示し、右側の棒グラフは、300nMのSAG存在下で未分化維持培養(プレコンディショニング)した場合のCorin陽性率を示す。
その結果、分化誘導前に未分化維持培地中でSAGによる処理を行うことによってCorin陽性細胞割合が向上することが見出された。
回収したCorin陽性細胞をPrimeSurface 96Uプレート(住友ベークライト)に20000個/wellにて移し、基本培地B(B27 Supplement without vitamin A(Invitrogen)、20ng/mL BDNF、 10ng/mLGDNF、200mM Ascorbic acidおよび0.4mM dbcAMP(Sigma)を添加したNeurobasal medium(Invitrogen))を用いて浮遊培養した。この時、最初の培地は、30μMのY-27632を添加した培地を用いたが、3日に一度、半量ずつ交換した際には、Y-27632を添加しない培地を用いた。ソーティングから16日後(day28)まで浮遊培養を実施してFoxA2, Nurr1(何れも中脳マーカー)の染色を行い、ドパミン神経前駆細胞へ分化しているかどうかを確認した。その結果、図3に示すとおり、得られた細胞はFoxA2及びNurr1を発現していることがわかった。この際、核の存在を示すDAPI陽性細胞を100%として、Foxa2は99.0%、Nurr1は14.6%であった。

0066

実施例2
実施例1と同様に、添加するSAGの濃度を変更した実験、及びSAGと同時にA83-01もしくはLDN193189を添加した実験を行い、Corin陽性率を測定した。検討条件及びそれぞれの条件下でのCorin陽性率を表1に示した。



以上の結果から、SAG、又はSAGに加えてA83-1もしくはLDN193189を添加した場合、コントロールと比べてSAGの添加濃度に依存的にCorin陽性率が向上することがわかった。一方、A83-1及び/又はLDN193189のみを添加した場合には、効果を示さなかった。

0067

実施例3
別方法で調製したiPS細胞による製造
ヒトiPS細胞であるLPF11は、Oct3/4, Sox2, Klf4,L-MYCをヒトPBMCにセンダイウイルスベクター(Cytotune2.0L、ID Pharma社製)により導入して、京都大学の公開プロトコル(ヒトiPS細胞の樹立・維持培養、CiRA_Ff-iPSC_protocol_JP_v140310、http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/research/protocol.html)記載の方法に従って、StemFit培地(味の素社製)、Laminin511-E8(ニッピ社製)を用いて樹立した。
このiPS細胞を使用して、実施例1と同じ方法で、培養及び分化誘導を行い、12日目(day12)に、抗Corin抗体を用いてCorin陽性細胞の全細胞数に対する割合を測定した。Corin陽性率を測定した結果を図4に示す。左側の棒グラフはSAG非存在下で未分化維持培養(プレコンディショニング)した場合のCorin陽性率を示し、右側の棒グラフは、300nMのSAG存在下で未分化維持培養(プレコンディショニング)した場合のCorin陽性率を示す。
その結果、実施例1の場合と同様、iPS細胞の種類によらず、分化誘導前に未分化維持培地中でSAGによる処理を行うことによってCorin陽性細胞の割合が向上することが見出された。

実施例

0068

実施例4
動物への細胞移植
実施例1で調製した、細胞(day28に相当)が移植に適しているか検討をおこなった。この時、培地は、3日に一度、半量ずつ交換した。
Day28の細胞を、TH(ドーパミン産生神経細胞マーカー)、Foxa2およびNurr1(いずれも中脳マーカー)に対して免疫染色を行ったところ、図3に示すとおり、得られた細胞はFoxA2及びNurr1を発現していることがわかった。この際、核の存在を示すDAPI陽性細胞を100%として、Foxa2は99.0%、Nurr1は14.6%であった。
得られた細胞4×105個の細胞を含む複数の細胞塊を2μl(生理食塩水)に懸濁させ、パーキンソン病モデルラット(6-OHDA片側投与ラット)の線条体に22ゲージ注射針を用いて投与し、4週後の移植片の様子を観察した(図5)。移植片の解析では、TH陽性の線維、および細胞体が確認できた(図5AおよびB)。このとき、SAG処理、非処理の細胞移植片において、HuNu陽性細胞数(ヒト細胞核、移植細胞の生着数を示す)あたりのTH陽性細胞数の割合に差が見られず、同等の染色像を示した(図5AおよびB)。
以上の結果より、実施例1で製造した細胞(day28)はSAG処理、非処理ともに移植片の生着およびドーパミン産生細胞への成熟を確認でき、パーキンソン病の治療のために使用する細胞として適していることが示唆された。

0069

本発明は、再生医療、特にパーキンソン病の治療に有用である。

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