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技術 回転電機システムと回転電機の駆動装置、その駆動方法及び車両

出願人 株式会社東芝
発明者 堀内陽介桜田新哉
出願日 2016年9月1日 (4年5ヶ月経過) 出願番号 2017-539702
公開日 2018年3月29日 (2年10ヶ月経過) 公開番号 WO2017-163450
状態 特許登録済
技術分野 同期機の永久磁石界磁 交流電動機の制御一般
主要キーワード 外磁場 セル組織 理論最大値 各元素濃度 Cuリッチ相 ピニング力 発光プラズマ バッテリ消費電力
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図面 (10)

課題・解決手段

実施形態に係るシステムにおいて、回転電機は、永久磁石を用いてロータ磁極を形成してなる永久磁石型である。インバータは、スイッチングにより交流電圧を生成して回転電機に駆動電力として出力する。制御装置は、回転電機における界磁成分電流を検出し、この検出電流から回転電機のロータ速度推定し、この推定ロータ速度目標速度との差に基づいて回転電機における界磁成分電圧を求め、この界磁成分電圧に基づいてインバータのスイッチングを制御してロータ速度を目標速度に追従させる。永久磁石は、鉄を25ないし40原子%含むR−Co系(Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素)である。また、制御装置は、永久磁石の素材によるロータ速度に応じた負の界磁成分電流特性に基づいて前記界磁成分電圧を増減弱め界磁制御を行う。

概要

背景

自動車鉄道車両等にあっては、モータ発電機などに永久磁石型回転電機を用いており、その永久磁石には効率を高めるためにNd−Fe−B系磁石が採用されている。このNd−Fe−B系磁石は、高い磁束密度を有するので、Nd−Fe−B系焼結磁石を回転電機に用いることにより高いトルクを得ることができる。

上記自動車や鉄道車両に用いられるモータでは、低速回転から高速回転までの可変速駆動が行われる。これに対して、従来のNd−Fe−B系焼結磁石によるモータでは、低速回転側において高いトルクが得られるが、高速回転側において誘導電圧逆起電力)が発生することにより出力が低下してしまう。

すなわち、Nd−Fe−B系焼結磁石等の永久磁石は、鎖交磁束が常に一定の強さで発生している。このとき、永久磁石による誘導電圧は回転速度に比例して高くなる。このため、高速回転ではモータの電圧電源電圧上限に達してしまい、出力に必要な電流が流れなくなる。その結果、出力が大幅に低下し、さらには高速回転の範囲で駆動できなくなる。

高速回転における誘導電圧の影響を抑制する方法としては、例えば弱め界磁制御法が挙げられる。弱め界磁制御法とは、逆磁界を発生させて磁束密度を低下させ、鎖交磁束数を低下させる方法である。しかしながら、Nd−Fe−B系焼結磁石のような高い磁束密度を有する永久磁石では、高速回転時において十分に磁束密度を下げることができない。

このように、高い磁束密度を有する永久磁石を用いた回転電機では、高速回転において弱め界磁制御法を用いても、十分な効果が得られなかった。

概要

実施形態に係るシステムにおいて、回転電機は、永久磁石を用いてロータ磁極を形成してなる永久磁石型である。インバータは、スイッチングにより交流電圧を生成して回転電機に駆動電力として出力する。制御装置は、回転電機における界磁成分電流を検出し、この検出電流から回転電機のロータ速度推定し、この推定ロータ速度目標速度との差に基づいて回転電機における界磁成分電圧を求め、この界磁成分電圧に基づいてインバータのスイッチングを制御してロータ速度を目標速度に追従させる。永久磁石は、鉄を25ないし40原子%含むR−Co系(Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素)である。また、制御装置は、永久磁石の素材によるロータ速度に応じた負の界磁成分電流特性に基づいて前記界磁成分電圧を増減し弱め界磁制御を行う。

目的

本発明で解決しようとするべき課題は、低速回転から高速回転までの可変速駆動を行う永久磁石型による回転電機及び車両において、出力の低下を抑制することである

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

永久磁石を用いてロータ磁極を形成してなる永久磁石型回転電機と、スイッチングにより交流電圧を生成して当該交流電圧を前記回転電機に駆動電力として出力するインバータと、前記回転電機における界磁成分電流を検出し、この検出電流から前記回転電機のロータ速度推定し、この推定ロータ速度目標速度との差に基づいて前記回転電機における界磁成分電圧を求め、この界磁成分電圧に基づいて前記インバータのスイッチングを制御して前記ロータ速度を前記目標速度に追従させる制御手段とを具備し、前記永久磁石は、鉄を25ないし40原子%含むR−Co系(Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素)永久磁石であり、前記制御手段は、前記永久磁石の素材による前記ロータ速度に応じた負の界磁成分電流特性に基づいて前記界磁成分電圧を増減弱め界磁制御を行う回転電機システム

請求項2

前記永久磁石は、希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素R、ジルコニウムチタン、及びハフニウムから選ばれる少なくとも1種の元素M、鉄、銅、及びコバルトからなる組成を有し、前記組成のうち、前記元素Rは10.8ないし12.5原子%、前記元素Mは0.88ないし3.5原子%、前記銅は3.5ないし13.5原子%である請求項1に記載の回転電機システム。

請求項3

前記永久磁石は、残留磁化が1.16T以上であり、M−H曲線上の保磁力Hcjが1000kA/m以上であり、B−H曲線上のリコイル透磁率が1.1以上である請求項1または2に記載の回転電機システム。

請求項4

前記永久磁石は、前記B−H曲線上の保磁力Hcbが800kA/m以下であり、前記保磁力Hcjに対する、磁化が残留磁化の90%のときの磁場Hk90の比が70以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回転電機システム。

請求項5

前記回転電機の回転子の磁極は、前記永久磁石とはリコイル透磁率の異なる永久磁石を、磁気回路上で直列及び/または並列に配置して形成される請求項1乃至4のいずれか1項記載の回転電機システム。

請求項6

永久磁石を用いてロータの磁極を形成してなる永久磁石型の回転電機を駆動する回転電機の駆動装置において、スイッチングにより交流電圧を生成して当該交流電圧を前記回転電機に駆動電力として出力するインバータと、前記回転電機における界磁成分電流を検出し、この検出電流から前記回転電機のロータ速度を推定し、この推定ロータ速度と目標速度との差に基づいて前記回転電機における界磁成分電圧を求め、この界磁成分電圧に基づいて前記インバータのスイッチングを制御して前記ロータ速度を前記目標速度に追従させる制御手段とを具備し、前記永久磁石が、鉄を25ないし40原子%含むR−Co系(Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素)永久磁石であるとき、前記制御手段は、前記永久磁石の素材による前記ロータ速度に応じた負の界磁成分電流特性に基づいて前記界磁成分電圧を増減し弱め界磁制御を行う回転電機の駆動装置。

請求項7

永久磁石を用いてロータの磁極を形成してなる永久磁石型の回転電機を駆動する回転電機の駆動方法において、スイッチングにより交流電圧を生成して当該交流電圧を前記回転電機に駆動電力として出力し、前記回転電機における界磁成分電流を検出し、この検出電流から前記回転電機のロータ速度を推定し、この推定ロータ速度と目標速度との差に基づいて前記回転電機における界磁成分電圧を求め、この界磁成分電圧に基づいて前記スイッチングを制御して前記ロータ速度を前記目標速度に追従させる制御を行い、さらに、前記永久磁石が、鉄を25ないし40原子%含むR−Co系(Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素)永久磁石であるときの前記ロータ速度に応じた負の界磁成分電流特性に基づいて前記界磁成分電圧を増減し弱め界磁制御を行う回転電機の駆動方法。

請求項8

請求項1乃至5のいずれか1項に記載の回転電機システムを具備する車両。

請求項9

前記回転電機は、駆動系と接続されている請求項8に記載の車両。

技術分野

0001

実施形態は、永久磁石型における回転電機システム回転電機駆動装置、その駆動方法及び車両に関する。

背景技術

0002

自動車鉄道車両等にあっては、モータ発電機などに永久磁石型の回転電機を用いており、その永久磁石には効率を高めるためにNd−Fe−B系磁石が採用されている。このNd−Fe−B系磁石は、高い磁束密度を有するので、Nd−Fe−B系焼結磁石を回転電機に用いることにより高いトルクを得ることができる。

0003

上記自動車や鉄道車両に用いられるモータでは、低速回転から高速回転までの可変速駆動が行われる。これに対して、従来のNd−Fe−B系焼結磁石によるモータでは、低速回転側において高いトルクが得られるが、高速回転側において誘導電圧逆起電力)が発生することにより出力が低下してしまう。

0004

すなわち、Nd−Fe−B系焼結磁石等の永久磁石は、鎖交磁束が常に一定の強さで発生している。このとき、永久磁石による誘導電圧は回転速度に比例して高くなる。このため、高速回転ではモータの電圧電源電圧上限に達してしまい、出力に必要な電流が流れなくなる。その結果、出力が大幅に低下し、さらには高速回転の範囲で駆動できなくなる。

0005

高速回転における誘導電圧の影響を抑制する方法としては、例えば弱め界磁制御法が挙げられる。弱め界磁制御法とは、逆磁界を発生させて磁束密度を低下させ、鎖交磁束数を低下させる方法である。しかしながら、Nd−Fe−B系焼結磁石のような高い磁束密度を有する永久磁石では、高速回転時において十分に磁束密度を下げることができない。

0006

このように、高い磁束密度を有する永久磁石を用いた回転電機では、高速回転において弱め界磁制御法を用いても、十分な効果が得られなかった。

0007

特開2012−175738号公報

先行技術

0008

IEEJ Transactions Industry Applications, 2013, Vol.133, NO.9, pp.943-951

発明が解決しようとする課題

0009

本発明で解決しようとするべき課題は、低速回転から高速回転までの可変速駆動を行う永久磁石型による回転電機及び車両において、出力の低下を抑制することである。

課題を解決するための手段

0010

実施形態の永久磁石型による回転電機システムは、回転電機と、インバータと、制御手段とを備える。回転電機は、永久磁石を用いてロータ磁極を形成してなる永久磁石型である。インバータは、スイッチングにより交流電圧を生成して当該交流電圧を前記回転電機に駆動電力として出力する。制御手段は、前記回転電機における界磁成分電流を検出し、この検出電流から前記回転電機のロータ速度推定し、この推定ロータ速度目標速度との差に基づいて前記回転電機における界磁成分電圧を求め、この界磁成分電圧に基づいて前記インバータのスイッチングを制御して前記ロータ速度を前記目標速度に追従させる。前記永久磁石は、鉄を25ないし40原子%含むR−Co系(Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素)永久磁石である。また、前記制御手段は、前記永久磁石の素材による前記ロータ速度に応じた負の界磁成分電流特性に基づいて前記界磁成分電圧を増減し弱め界磁制御を行う。

発明の効果

0011

本実施形態の構成によれば、低速回転から高速回転までの可変速駆動を行う永久磁石型による回転電機及び車両において、出力の低下を抑制することのできる回転電機システムを提供することができる。

図面の簡単な説明

0012

本実施形態に係る回転電機システムの全体構成を示す図である。
本実施形態に係る回転電機システムの回転電機の構造を示す図である。
本実施形態のシステムに用いる制御装置の制御の流れを示すフローチャートである。
本実施形態の回転電機に用いる永久磁石の磁気特性例を示す図である。
比較例の永久磁石の磁気特性例を示す図である。
TEM−EDXによる明視野像の一例を示す図である。
STEM−EDXによるSmのマッピング像を示す図である。
STEM−EDXによる酸素のマッピング像を示す図である。
本実施形態に係る回転電機システムを備えるハイブリッド型自動車の駆動系構造を示す図である。

0013

以下、実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面は模式的なものであり、例えば厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略する。

0014

図1Aは、本実施形態に係る回転電機システムの全体構成を示す図であり、図1Bは本実施形態に係る回転電機システムの回転電機の構造を示している。
本実施形態に係る回転電機システムは、図1Aに示すように、永久磁石型の回転電機11とこの回転電機11を駆動する駆動装置21とバッテリ31を備える。

0015

上記回転電機11は、図1Bに示すように、永久磁石111を用いて磁極112を形成し、この磁極112を回転子鉄心113の内部に配置して回転子(ロータ)114を形成する。また、回転子114の外周にエアギャップを介して固定子ステータ)115を配置する。固定子115には電機子鉄心116と電機子巻線117を設ける。電機子巻線117は磁界を形成して回転子114の磁極112を構成する永久磁石111の磁束幅を可逆的に変化させる。

0016

ここで、上記回転子114の鉄心113の内部に配置される永久磁石111には、通常の高効率用永久磁石と比較して、リコイル透磁率が大きい永久磁石を用いる。この永久磁石111の磁束密度(磁束量)は変化させることが可能であるものとする。永久磁石111はその磁化方向がQ軸方向と直交するため、Q軸電流の影響を受けず、D軸電流により磁化することができる。固定子115に設けられた電機子巻線117に駆動装置21からの駆動電流を流すことによって、その磁界が直接に永久磁石111に作用する構造となっている。

0017

上記回転電機11を駆動する駆動装置21は、インバータ211と制御装置212と電流センサ213とを備える。
上記インバータ211は、バッテリ31からの直流電圧をスイッチングすることにより交流電圧を生成し、当該交流電圧を回転電機11の駆動電力として電機子巻線117に印加する。

0018

上記制御装置212は、基本的に図2に示す処理を実行する。すなわち、回転電機11における界磁成分およびトルク成分の電流を回転電機11に設けた電流センサ213で検出し(ステップS1)、これらの検出電流から回転子114の回転速度を推定する(ステップS2)。ここで、指示入力される目標速度と推定した回転速度との偏差を求め(ステップS3)、この偏差に基づいて回転電機11における界磁成分電圧及びトルク成分電圧を求め(ステップS4)、これらの界磁成分電圧及びトルク成分電圧に基づいてインバータ211のスイッチングを制御する(ステップS5)。上記ステップS1〜S5の処理を繰り返し実行することで、回転速度を目標速度に追従させる。

0019

上記永久磁石111には、希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素R、ジルコニウムチタン、及びハフニウムから選ばれる少なくとも1種の元素M、鉄、銅、及びコバルトからなる組成を有し、鉄を25乃至40原子%含む素材が用いられる。詳細な組成物構造については後述する。

0020

これに対して、上記制御装置212は、ステップS3において、上記永久磁石111の素材によるリコイル透磁率特性に基づいて、推定した回転速度の上昇に伴い増加し、下降に伴い減少する負の界磁成分電流(弱め界磁電流)を求め(ステップS31)、上記目標速度に相当する界磁成分電流の目標値に加える(ステップS32)。このように、本実施形態では、界磁成分電流の目標値を弱め界磁電流によって修正することにより、いわゆる弱め界磁制御を行う。

0021

なお、上記負の界磁成分電流については、予め上記リコイル透磁率特性に基づいてテーブル化しておくとよい。

0022

以上のように、本実施形態では、永久磁石111の素材が、通常の高効率用永久磁石と比較して、リコイル透磁率が大きく、低速から高速まで広範囲可変速運転が可能であり、低速から高速までの全運転範囲高効率化することができるので、インバータ211のパワー素子への負荷を低減することができる。

0023

以下に、上記回転電機に用いて好適なリコイル透磁率が大きい特性を有する永久磁石について説明する。

0024

図3は本実施形態に適用される永久磁石の磁気特性例を示す図であり、図4は比較例の永久磁石の磁気特性例を示す図である。なお、図3および図4において、横軸は磁場Hを表し、縦軸は磁束密度Bまたは磁化Mを表す。

0025

図3に示す曲線1aは本実施形態の永久磁石のM−H曲線を示し、曲線1bは本実施形態の永久磁石のB−H曲線を示す。本実施形態の永久磁石は、B−H曲線において高磁化を有する。また、弱め界磁制御法により逆磁界を加えたとき、B−H曲線上の動作点aから動作点bに変化する際の磁化減少幅が大きい。すなわち、本実施形態の永久磁石ではB−H曲線上のリコイル透磁率が高い。

0026

リコイル透磁率は以下のように定義される。着磁機やパルス磁界により焼結体磁石を着磁させる。この磁石に対し磁化測定を行い、B−H曲線を得る。このB−H曲線に対して線形フィットを行うことにより傾きを求める。この傾きをリコイル透磁率とする。

0027

また、本実施形態の永久磁石は、B−H曲線上においてクニック点が生じない特性を有する。クニック点とは、外部磁場により磁束密度を低下させたときに傾きが変化して急激に磁束密度が減少する変化点のことである。

0028

図4に示す曲線2aはネオジム焼結磁石のM−H曲線を示し、曲線2bはネオジム焼結磁石のB−H曲線を示す。ネオジム焼結磁石の場合、図4に示すように動作点aから動作点bに変化する際の磁化減少幅が本実施形態の永久磁石よりも小さい。すなわち、ネオジム焼結磁石では、弱め界磁制御法を用いても磁束密度を下げることが困難である。弱め界磁では、弱め界磁電流による磁束で磁石磁束打ち消す。しかし、弱め界磁電流による磁束および磁石磁束のそれぞれの空間波形が互いに異なる。このため、空間基本波成分の磁束を打ち消すことができても、空間高調波成分は打ち消されず、場合によっては拡大する。

0029

空間高調波成分は、高速回転時における鉄損および磁石渦電流損の原因となっている。さらに、磁石渦電流損によって磁石温度が上昇し、熱減磁が生じやすくなる。特に、埋め込み磁石型では、磁石磁束が矩形波に近く、多くの空間高調波を含む。また、ギャップ長が短いためにスロットリップル成分の空間高調波が大きいため、問題が大きい。打ち消せずに残った低次の空間高調波がスロットリップルで変調されて高次の空間高調波となっていることが理由の一つと考えられる。

0030

磁束密度を低くする方法としては、例えばボンド磁石を用いることが考えられる。図4の曲線3aはネオジムボンド磁石のM−H曲線を示す図であり、曲線3bはネオジムボンド磁石のB−H曲線を示す図である。ネオジムボンド磁石は、図4に示すようにネオジム焼結磁石よりも動作点aから動作点bに変化する際の磁化減少幅が大きい、すなわちリコイル透磁率が高い。しかしながら、残留磁化が低く、保磁力Hcjが小さくなるため、当該磁石を具備するモータで低速から高速までの可変速駆動を行う場合、低速回転において高いトルクを得ることが困難となる。

0031

ネオジムボンド磁石の他にも、リコイル透磁率の高い磁石としては、例えば不完全着磁状態のAl−Ni−Co系磁石が挙げられる。しかしながら、不完全着磁状態のAl−Ni−Co系磁石もネオジムボンド磁石と同様に残留磁化が小さいため、低速回転で高いトルクを得ることが困難である。また、ネオジム磁石サマリウム磁石は磁化が高く、高トルクが得られるが、これらの磁石のリコイル透磁率は一般的に1程度であり、リコイル透磁率が大きな特性を得ることが難しい。

0032

これに対し、本実施形態の永久磁石において、残留磁化は1.16以上であり、M−H曲線上の保磁力Hcjは1000kA/m以上であり、リコイル透磁率は1.15以上である。残留磁化は1.2以上であることがより好ましい。保磁力は1200kA/m以上であることがより好ましい。リコイル透磁率は1.2以上であることがより好ましい。このように、本実施形態の永久磁石は、高磁化および高保磁力に加え、高いリコイル透磁率を有する。よって、低速から高速までの可変速駆動を行う回転電機において、出力の低下を抑制することができる。

0033

上記回転電機では、具体的には、磁極を回転子鉄心内に配置して回転子を設け、回転子の外周にエアギャップを介して固定子を配置する。さらに、固定子に電機子巻き線を設ける。上記電機子巻き線が作る磁界により回転子の磁極を構成する永久磁石の磁束量を可逆的に変化させる。ここで、従来の回転電機では、回転子において高磁化と高リコイル透磁率の特性を得るために、磁極を回転子鉄心内に複数個配置している。しかしながら、2種以上の磁石を必要とするため構造が複雑になり、また、製造工程数も増えるという問題がある。

0034

これに対し、本実施形態の永久磁石は、一つの磁石で高磁化と、高いリコイル透磁率との両方の特性を有しているため、モータや発電機などの回転電機の構造を簡略にすることができ、製造工程数の増加を抑制することができる。

0035

さらに、上記特性を有する永久磁石の例について説明する。本実施形態の永久磁石は、鉄を25ないし40原子%含むR−Co系(Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素)で表される組成を備える焼結体を具備する。具体的には、組成式:RpFeqMrCutCo100−p−q−r−t(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1つの元素、MはZr、Ti、およびHfからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素、pは10.8≦p≦12.5原子%を満足する数、qは25≦q≦40原子%を満足する数、rは0.88≦r≦3.5原子%を満足する数、tは3.5≦t≦13.5原子%を満足する数である)で表される組成を備える焼結体を具備する。

0036

上記組成式におけるRは、磁石材料に大きな磁気異方性をもたらすことができる元素である。R元素としては、例えばイットリウム(Y)を含む希土類元素から選ばれる1つまたは複数の元素などを用いることができ、例えばサマリウム(Sm)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)等を用いることができ、特に、Smを用いることが好ましい。例えば、R元素としてSmを含む複数の元素を用いる場合、Sm濃度をR元素として適用可能な元素全体の50原子%以上とすることにより、磁石材料の性能、例えば保磁力を高めることができる。なお、R元素として適用可能な元素の70原子%以上、さらには90原子%以上をSmとするとさらに好ましい。

0037

R元素として適用可能な元素の濃度を、例えば10.8原子%以上12.5原子%以下とすることにより保磁力を大きくすることができる。R元素として適用可能な元素の濃度が10.8原子%未満の場合、多量のα−Feが析出して保磁力が小さくなり、R元素として適用可能な元素の濃度が12.5原子%を超える場合、飽和磁化が低下する。R元素として適用可能な元素の濃度は、10.9原子%以上12.1原子%以下、さらには11.0原子%以上12.0原子%以下であることがより好ましい。

0038

上記組成式におけるMは、高いFe濃度の組成で大きな保磁力を発現させることができる元素である。M元素としては、例えばチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、およびハフニウム(Hf)からなる群より選ばれる1つまたは複数の元素が用いられる。M元素の含有量rが4.3原子%を超えると、M元素を過剰に含有する異相が生成しやすくなり、保磁力、磁化ともに低下しやすくなる。また、M元素の含有量rが0.88原子%未満であるとFe濃度を高める効果が小さくなりやすい。つまり、M元素の含有量rは、0.88原子%以上3.5原子%以下であることが好ましい。元素Mの含有量rは、1.14原子%以上3.4原子%以下であることがより好ましく、さらに1.49原子%よりも大きく2.24原子%以下、さらには1.55原子%以上2.23原子%以下であることが好ましい。

0039

M元素は、少なくともZrを含むことが好ましい。特に、M元素の50原子%以上をZrとすることによって、永久磁石の保磁力を高めることができる。一方、M元素の中でHfはとりわけ高価であるため、Hfを使用する場合においても、その使用量は少ないことが好ましい。例えば、Hfの含有量は、M元素の20原子%未満であることが好ましい。

0040

Cuは、磁石材料において高い保磁力を発現させることができる元素である。Cuの含有量は、例えば3.5原子%以上13.5原子%以下であることが好ましい。これよりも多量に配合すると磁化の低下が著しく、またこれよりも少量であると高い保磁力と良好な角型比を得ることが困難となる。Cuの含有量tは、3.9原子%以上10.0原子%以下であることがより好ましく、さらに4.1原子%以上5.8原子%以下であることが好ましい。

0041

Feは、主として磁石材料の磁化を担う元素である。Feを多量に配合することにより磁石材料の飽和磁化を高めることができるが、過剰に配合するとα−Feの析出や相分離により所望の結晶相が得られにくくなり、保磁力を低下させるおそれがある。よって、Feの含有量qは、25原子%以上40原子%以下であることが好ましい。Feの含有量qは、26原子%以上36原子%以下であることがより好ましく、さらに30原子%以上33原子%以下であることが好ましい。

0042

Coは、磁石材料の磁化を担うとともに高い保磁力を発現させることができる元素である。また、Coを多く配合すると高いキュリー温度が得られ、磁石特性熱安定性を高めることができる。Coの配合量が少ないとこれらの効果が小さくなる。しかしながら、Coを過剰に添加すると、相対的にFeの割合が減り、磁化の低下を招くおそれがある。また、Coの20原子%以下をNi、V、Cr、Mn、Al、Si、Ga、Nb、Ta、Wからなる群より選ばれる1つまたは複数の元素で置換することにより磁石特性、例えば保磁力を高めることができる。

0043

本実施形態の永久磁石は、六方晶系のTh2Zn17型結晶相(2−17型結晶相)を有する主相と、主相を構成する結晶粒の間に設けられた粒界相と、を含む2次元金属組織を具備する。さらに、主相は、2−17型結晶相を有するセル相と、六方晶系のCaCu5型結晶相(1−5型結晶相)を有するCuリッチ相と、プレートレット相と、を含む。

0044

Cuリッチ相は、セル相を囲むように形成されることが好ましい。上記構造をセル構造ともいう。また、Cuリッチ相にはセル相を分断するセル壁相も含まれる。Th2Zn17型結晶相のc軸磁化容易軸と平行に存在していることが好ましい。なお、平行とは、平行方向から±10度以内の状態(略平行)を含んでいてもよい。

0045

Cuリッチ相は、Cu濃度が高い相である。Cuリッチ相のCu濃度は、Th2Zn17型結晶相のCu濃度よりも高い。例えば、Cuリッチ相のCu濃度は、Th2Zn17型結晶相のCu濃度の1.2倍以上であることが好ましい。Cuリッチ相は、例えばTh2Zn17型結晶相におけるc軸を含む断面において、線状または板状に存在する。Cuリッチ相の構造としては、特に限定されないが、例えば六方晶系のCaCu5型結晶相(1−5型結晶相)等が挙げられる。また、永久磁石は、相の異なる複数のCuリッチ相を有していてもよい。

0046

Cuリッチ相の磁壁エネルギーは、Th2Zn17型結晶相の磁壁エネルギーよりも高く、この磁壁エネルギーの差が磁壁移動障壁となる。つまり、Cuリッチ相がピニングサイトとして機能することにより、複数のセル相間での磁壁移動を抑制することができる。特に、セル構造を形成することにより、磁壁移動の抑制効果が高まる。これを磁壁ピニング効果ともいう。よって、セル相を囲むようにCuリッチ相が形成されることがより好ましい。このような構造の永久磁石をピニング型の永久磁石ともいう。

0047

25原子%以上のFeを含むSm−Co系磁石において、Cuリッチ相のCu濃度は、10原子%以上60原子%以下であることが好ましい。Cuリッチ相のCu濃度を高めることにより保磁力や角型比を高くすることができる。Fe濃度が高い領域においてはCuリッチ相のCu濃度にばらつきが発生しやすくなり、例えば磁壁ピニング効果が大きいCuリッチ相と磁壁ピニング効果が小さいCuリッチ相とが生じ、保磁力および角型比が低下する。

0048

ピニングサイトを外れた磁壁が移動すると、移動した分だけ磁化が反転してしまうため、磁化が低下する。外磁場を印加した際に、ある一定の磁場で一斉に磁壁がピニングサイトを外れれば、磁場の印加により磁化が低下しにくくなり、良好な角型比が得られる。換言すると、磁場を印加した際に保磁力よりも低い磁場でピニングサイトを外れ、磁壁が移動してしまうと、移動した分だけ磁化が減少し、角型比の悪化につながると考えられる。

0049

プレートレット相は、Th2Zn17型結晶相よりもZr等の元素Mの濃度が高いMリッチプレートレット相であり、Th2Zn17型結晶相のc軸と垂直に形成される。例えば、プレートレット相のZr濃度がTh2Zn17型結晶相よりも高い場合、該プレートレット相をZrリッチプレートレット相ともいう。

0050

上記に示すように、本実施形態の永久磁石は、希土類元素を少なくとも含む組成を有する。上記磁石は、キュリー点が高いため、高温で良好なモータ特性を実現することが可能である。また、ネオジム磁石がニュークリエーション型の永久磁石であるのに対し、上記磁石はピニング型の永久磁石である。ネオジム磁石では逆軸が発生すると一斉に磁壁が反転する。一方、本実施形態の永久磁石ではCuリッチ相により磁壁移動が抑制され、ピニングサイトを外れることにより磁壁の移動(磁化反転)が進む。換言すると、Th2Zn17型結晶相、Cuリッチ相、およびプレートレット相によって構成されるセル構造のサイズや各相の組成により磁壁移動を抑制することができる。

0051

セル構造は、R元素の濃度が高いと緻密になり、低いと粗くなる。また、同一組成の焼結体で比較すると、セル構造が緻密である試料ではセル壁相の体積分率が高くなり、粗い試料では低くなる。また、セル壁相におけるCu濃度を比較すると、セル構造が緻密なほどCu濃度が低くなる。

0052

Cuリッチ相は磁壁のピニング力に影響し、Cu濃度が低いとピニング力が弱く、保磁力が小さくなる。一方、セル組織が粗くCuリッチ相におけるCu濃度が高い場合、Cuリッチ相一つ一つのピニング力が高いため保磁力は大きくなる。2種以上の異なる特性を一つの焼結体で実現することができれば、一つの磁石で磁壁が移動しやすい(磁化反転しやすい)場所と磁化反転が起こりにくい場所が存在し、保磁力の分布を生じさせることができる。その結果、磁化曲線の傾きが急峻となり、リコイル透磁率が大きくなる。さらに、保磁力が大きいためクニック点は高磁場側に存在し、大きな磁界を印加しても不可逆減磁が生じない。

0053

上記磁石を実現するにはR元素の濃度の制御が重要である。本実施形態の永久磁石では、酸化現象を利用することでR元素の濃度を制御する。本実施形態の永久磁石において、焼結体は、焼結体の表面に露出するように設けられた希土類元素の酸化物を含む相を有することが好ましい。希土類元素の酸化物を含む相の厚さは、50μm以上800μm以下である。

0054

本実施形態の永久磁石は、R元素がリッチな領域とR元素がプアな領域とを有する。例えばR−Coの粉末酸化することによりR元素の酸化物が形成される。その際、主相のR元素が消費されるため、結果として主相のR元素の濃度が減少する。そのため、酸化の影響が少ない中心部よりも表面部の保磁力が大きくなる。すなわち、単一の磁石で保磁力の分布が形成される。このような磁石では表面部の酸素濃度が中心部よりも高くなる。表面部の酸素濃度が中心部の2倍以上のとき、リコイル透磁率が高くなる効果が顕著になる。

0055

表面部の酸素濃度は下記のように定義される。切断面に中心部付近を含むように焼結体試料を切断する。次に、切断面において試料表面から100μm以内の深さに位置する領域において、20μm×20μmの測定領域でのEDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:EDX)面分析を行う。この測定を1サンプルに対し任意の5箇所で行い、この平均値を表面部の酸素濃度Osurfaceと定義する。

0056

中心部の酸素濃度は下記のように定義される。上記切断面において試料表面から少なくとも500μm以上焼結体の内部に位置する領域において、20μm×20μmの領域のEDX面分析を行う。この測定を1サンプルに対し任意の箇所で5回行い、この平均値を中心部の酸素濃度Ocenterと定義する。

0057

中心部の酸素濃度Ocenterに対する表面部の酸素濃度Osurfaceの比(Osurface/Ocenter)が2以上であるR元素の酸化物を含む相の厚さが50μm以上のとき、リコイル透磁率の向上が顕著となる。ただし、厚さが800μmを超えると残留磁化の低下、過剰なSmプア領域の生成による保磁力の低下の影響が大きくなる。より好ましいR元素の酸化物を含む相の厚さは100μm以上500μm以下である。

0058

上記永久磁石は低保磁力成分を含むためリコイル透磁率が大きい。また、B−H曲線上の保磁力Hcbが800kA/m以下である。しかし、高保磁力成分も含むため、図1に示すようにB−H曲線上のクニック点は1000kA/mを超える高磁場側においても生じず、減磁が起きにくい。B−H曲線においてクニック点が生じさせないためにはM−H曲線上の保磁力Hcjが1000kA/m以上であることが好ましい。さらに、本実施形態の永久磁石において、保磁力Hcjに対する、磁化が残留磁化の90%のときの磁場Hk90の比が70以下である。このように、本実施形態の永久磁石は、良好な角型比を有する。

0059

永久磁石の組成は、例えばICP(高周波誘導結合プラズマ: Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法、SEM−EDX(走査電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法:SEM-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)、TEM−EDX(透過電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法:Transmission Electron Microscope-EDX)等により測定される。各相の体積比率は、電子顕微鏡光学顕微鏡による観察とX線回折等とを併用して総合的に判断されるが、永久磁石の断面を撮影した電子顕微鏡写真面積分析法により求めることができる。永久磁石の断面は、試料の最大面積を有する表面の実質的に中央部の断面を用いるものとする。

0060

また、Th2Zn17型結晶相、Cuリッチ相等の金属組織は、例えば以下のように認定される。まず、走査透過型電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope:STEM)によるサンプルの観察を行う。このとき、SEMによりサンプルを観察することにより、粒界相の場所を特定し、収束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)を用いて粒界相が視野に入るようにサンプルを加工することにより観察効率を高めることができる。上記サンプルは、時効処理後のサンプルである。この際、 サンプルは未着磁品であることが好ましい。

0061

次に、セル相、Cuリッチ相等の各元素の濃度を例えばSTEMを利用したエネルギー分散型X線分光法(STEM-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:STEM−EDX)を用いて測定する。

0062

STEM−EDXにより各元素の濃度を測定する際、サンプルの表面の1mm以上内部から測定用の試料を切り出す。また、磁化容易軸(c軸)に平行な面に対し、100k倍の観察倍率で観察する。このようにして得られるSTEM明視野像(反射電子像)の一例を図5に示す。また、同視野でのSmのマッピング像を図6に示し、酸素のマッピング像を図7に示す。

0063

図6において、領域A11は主相を含む領域である。また、相対的に白い領域がSmの濃度が高い領域であり、図7において相対的に白い領域が酸素濃度が高い領域である。このとき、図6および図7を重ね合わせたときにSmの濃度および酸素濃度が共に高い領域がR元素の酸化物を含む相(領域A12)に相当する。さらに、領域A11と領域A12との間にSmの濃度および酸素濃度が低い領域A13を有する。このことから、焼結体において、R元素が高い領域およびR元素が低い領域の両方が形成されていることがわかる。なお、図6のマッピング像と図7のマッピング像とを比較すると白い領域の濃淡が異なっているが、これは画像処理上の問題であって、濃淡が各元素の相対濃度を必ずしも表すわけではない。

0064

なお、各相の元素の濃度測定には、三次元アトムプローブ(3-Dimension Atom Probe:3DAP)を用いてもよい。3DAPを用いた分析法とは、電圧を印加することにより観察試料電界蒸発させ、電界蒸発されたイオン二次元検出器により検出することにより原子配列を特定する分析法である。二次元検出器に到達するまでの飛行時間からイオン種が同定され、個々に検出されたイオンを深さ方向に連続的に検出し、検出された順番にイオンを並べる(再構築する)ことにより、三次元の原子分布が得られる。TEM−EDXの濃度測定と比べて、各結晶相内の各元素濃度をより正確に測定することができる。

0065

3DAPによる各相内の元素濃度の測定は、以下に示す手順にしたがって実施する。まず、試料をダイシングにより薄片化し、そこからFIBにてピックアップアトムプローブ(AP)用針状試料を作製する。

0066

3DAPによる測定は、焼結体の内部に対して行う。焼結体内部の測定とは、以下の通りである。まず、最大の面積を有する面における最長の辺の中央部において、辺に垂直(曲線の場合は中央部の接線と垂直)に切断した断面の表面部と内部とで組成を測定する。測定箇所は、上記断面において各辺の1/2の位置を始点として、辺に対し垂直に内側に向けて端部まで引いた第1の基準線と、各角部の中央を始点として角部の内角の角度の1/2の位置で内側に向けて端部まで引いた第2の基準線とを設け、これら第1の基準線および第2の基準線の始点から基準線の長さの1%の位置を表面部、40%の位置を内部と定義する。なお、角部が面取り等で曲率を有する場合、隣り合う辺を延長した交点を辺の端部(角部の中央)とする。この場合、測定箇所は交点からではなく、基準線と接した部分からの位置とする。

0067

測定箇所を以上のようにすることによって、例えば断面が四角形の場合、基準線は第1の基準線および第2の基準線でそれぞれ4本の合計8本となり、測定箇所は表面部および内部でそれぞれ8箇所となる。本実施形態において、表面部および内部でそれぞれ8箇所全てが上記した組成範囲内であることが好ましいが、少なくとも表面部および内部でそれぞれ4箇所以上が上記した組成範囲内となればよい。この場合、1本の基準線での表面部および内部の関係を規定するものではない。このように規定される焼結体内部の観察面研磨して平滑にした後に観察を行う。例えば、濃度測定におけるTEM−EDXの観察箇所は、各相内の任意の20点とし、これら各点での測定値から最大値最小値を除いた測定値の平均値を求め、この平均値を各元素の濃度とする。3DAPの測定もこれに準ずる。

0068

上述した3DAPを用いたCuリッチ相内の濃度の測定結果において、Cuリッチ相におけるCuの濃度プロファイルは、よりシャープであることが好ましい。具体的には、Cuの濃度プロファイルの半値幅FWHM:Full Width at Half Maximum)が5nm以下であることが好ましく、このような場合により高い保磁力を得ることができる。これはCuリッチ相内のCuの分布がシャープな場合、セル相とCuリッチ相との間の磁壁エネルギー差が急激に生じ、磁壁がよりピニングされやすくなるためである。

0069

Cuリッチ相におけるCuの濃度プロファイルの半値幅(FWHM)は、以下のようにして求められる。上述した方法に基づいて3DAPのCuプロファイルからCu濃度が最も高い値(PCu)を求め、この値の半分の値(PCu/2)となるところのピークの幅、すなわち半値幅(FWHM)を求める。このような測定を10個のピークに対して行い、それらの値の平均値をCuプロファイルの半値幅(FWHM)と定義する。Cuプロファイルの半値幅(FWHM)が3nm以下である場合に、さらに保磁力を高める効果が向上し、2nm以下の場合により一層優れた保磁力の向上効果を得ることができる。

0070

角型比は、以下のように定義される。まず、直流B−Hトレーサーにより室温における直流磁化特性を測定する。次に、測定結果から得られたB−H曲線より磁石の基本特性である残留磁化Mrと保磁力Hcjおよび最大エネルギー積(BH)maxを求める。このとき、Mrを用いて理論最大値(BH)maxが下記式(1)により求められる。

0071

(BH)max(理論値)=Mr2/4μ0・・・(1)
角型比は、測定で得られる(BH)maxと(BH)max(理論値)の比により評価され、下記式(2)により求められる。
(BH)max(実測値)/(BH)max(理論値)×100・・・(2)
次に、永久磁石の製造方法例について説明する。まず、永久磁石の合成に必要な所定の元素を含む合金粉末を調製する。次に、電磁石の中に設置した金型内に合金粉末を充填し、磁場を印加しながら加圧成形することにより結晶軸配向させた圧粉体を製造する。

0072

例えば、アーク溶解法高周波溶解法による溶湯鋳造して得られた合金インゴット粉砕することにより合金粉末を調製することができる。合金粉末は、組成が異なる複数の粉末を混ぜ合わせて所望の組成としてもよい。また、メカニカルアロイング法メカニカルグラインディング法、ガスアトマイズ法還元拡散法などを用いて合金粉末を調製してもよい。ストリップキャスト法を用いた合金粉末の作製では、フレーク状の合金薄帯を作製し、その後合金薄帯を粉砕することにより合金粉末を調製する。例えば、周速0.1m/秒以上20m/秒以下で回転する冷却ロール合金溶湯傾注することにより、厚さ1mm以下に連続的に凝固させた薄帯を作製することができる。周速が0.1m/秒未満の場合、薄帯において組成のばらつきが生じやすい。また、周速が20m/秒を超える場合、結晶粒が微細化しすぎてしまう等、磁気特性が低下する場合がある。冷却ロールの周速は0.3m/秒以上15m/秒以下、さらに好ましくは0.5m/秒以上12m/秒以下である。

0073

さらに、上記合金粉末または粉砕前の合金の材料に対して熱処理を施すことにより該材料を均質化することが可能である。例えば、ジェットミルボールミルなどを用いて材料を粉砕することができる。なお、不活性ガス雰囲気もしくは有機溶媒中で材料を粉砕することにより粉末の酸化を防止することができる。

0074

粉砕後の粉末において、平均粒径が2μm以上5μm以下であり、かつ粒径が2μm以上10μm以下の粉末の割合が粉末全体の80%以上であると配向度が高くなり、また、保磁力が大きくなる。これを実現するためにはジェットミルによる粉砕が好ましい。

0075

例えば、ボールミルで粉砕する場合、粉末の平均粒径が2μm以上5μm以下であったとしても、粒径がサブミクロンレベル微粉末が多量に含まれる。この微粉末が凝集するとプレス時の磁場配向中に磁化容易軸方向にTbCu7相における結晶のc軸が揃いにくくなり、配向度が悪くなりやすい。また、このような微粉末は、焼結体中の酸化物の量を増大させ、保磁力を低下させるおそれがある。特に、Fe濃度が25原子%以上の場合、粉砕後の粉末において、10μm以上の粒径の粉末の割合が粉末全体の10%以下であることが望ましい。Fe濃度が25原子%以上の場合、原材料となるインゴット中における異相の量が増大する。この異相では、粉末の量が増大するだけでなく、粒径も大きくなる傾向にあり、粒径が20μm以上になることがある。

0076

このようなインゴットを粉砕した際に例えば15μm以上の粒径の粉末がそのまま異相の粉末となることがある。このような異相粗粉末を含んだ粉砕粉を磁場中でプレスし、焼結体とすると、異相が残存し、保磁力の低下、磁化の低下、角型性の低下等を引き起こす。角型性が低下すると着磁が難しくなる。特に、ロータなどへのアセンブリ後の着磁が困難となる。このように、10μm以上の粒径の粉末を全体の10%以下とすることにより25原子%以上のFeを含む高いFe濃度組成において角型比の低下を抑制しつつ保磁力を大きくすることができる。

0077

本実施形態の永久磁石の製造方法では、加圧成形により得られた圧粉成形体に対し酸化処理を行う。酸化処理を行うことにより、焼結前に圧粉成形体の表面に酸素分子吸着させることができる。酸化処理は最終品に対して行っても効果が少ない。これは最終品では試料表面のみしか酸化されないためである。R元素の酸化物を含む相の厚さは少なくとも50μm以上必要である。50μm以上とするためには焼結を行う前に酸化処理を行うことが必要となる。ただし、必要以上に酸化させてしまうと磁石全体が酸化し、磁化や保磁力が低下する等の悪影響を及ぼす。

0078

本実施形態の永久磁石の製造方法では、20%以上50%以下の湿度を有する大気からなる雰囲気中において、15℃以上35℃以下の温度、2時間以上24時間未満の時間で圧粉成形体を放置することにより酸化処理を行う。

0079

20%以下の湿度、15℃以下の温度、2時間未満の時間、および不活性ガスからなる雰囲気の少なくとも一つを満たす条件で酸化処理を行う場合、酸素分子が焼結体に十分に吸着されない。このとき、R元素の酸化物を含む相の厚さが50μm以下となり、リコイル透磁率が1.1未満になる。また、50%以上の湿度、35℃以上の温度、および24時間よりも大きい時間の少なくとも一つを含む条件で酸化処理を行う場合、酸素分子が焼結体に過剰に吸着される。このとき、R元素の酸化物を含む相の厚さが800μmを超え、磁化および保磁力の減少が著しくなる。酸化処理において、湿度は23%以上45%以下であることがより好ましい。温度は20℃以上30℃以下であることがより好ましい。時間は6時間以上12時間未満であることがより好ましい。

0080

次に、焼結を行う。焼結では、上記圧粉体に対し、1180℃以上1220℃以下の温度で、1時間以上15時間以下保持することにより熱処理を行う。例えば、保持温度が1180℃未満の場合、生成される焼結体の密度が低くなりやすい。また、1220℃よりも高い場合、粉末中のSm等のR元素が過剰に蒸発する等で磁気特性が低下する場合がある。より好ましい保持温度は1190℃以上1210℃以下である。一方、保持時間が1時間未満の場合、密度が不均一になりやすいため磁化が低下しやすく、さらに、焼結体の結晶粒径が小さくなり、かつ粒界相比率が高くなることにより、磁化が低下しやすい。

0081

また、熱処理時間が15時間を越えると粉末中のR元素の蒸発が過剰となり、磁気特性が低下するおそれがある。より好ましい保持時間は2時間以上13時間以下であり、さらに好ましくは3時間以上10時間以下である。なお、真空中またはアルゴンガス中で熱処理を行うことにより酸化を抑制することができる。また、保持温度近くになるまで、例えば1100℃以上1200℃以下になるまで真空を維持し、その後Ar雰囲気に切り替え等温保持することにより焼結体密度を向上させることができる。

0082

本実施形態の永久磁石の製造方法では、R元素の酸化物を含む相を形成する場合には、酸化処理により酸素分子を吸着させた圧粉成形体を焼結することにより、50μm以上の厚さのR元素の酸化物を含む相を形成することができる。従来、圧粉成形体を形成した後にできる限り早く焼結を行う、または不活性ガス雰囲気で圧粉成形体を保管する。これに対し、本実施形態の永久磁石では、酸化処理により酸素分子を吸着させた圧粉成形体を焼結することにより、R元素の酸化物を含む相を形成する。

0083

上記製造方法により、中心部よりも表面部においてR元素の酸化物を含む相を必要な範囲で形成することができる。また、R元素の酸化物を含む相の厚さを50μm以上800μm以下にすることができる。

0084

次に、高質化処理を行う。高質化処理では、焼結時の熱処理温度よりも10℃以上低い温度で、かつ溶体化処理時の熱処理温度よりも10℃以上高い温度で、2時間以上12時間以下保持することにより熱処理を行う。焼結時の熱処理温度よりも10℃以上低い温度で熱処理を行わない場合、焼結中に生成した液相由来の異相を十分に除去できない。この異相の配向性は低いことが多く、当該異相が存在すると結晶粒の結晶方位が磁化容易軸に対してずれやすくなり、角型比が低下するだけでなく磁化も低下しやすい。また、溶体化処理では、温度が低く、元素拡散速度の観点から焼結中に生じた異相を十分に除去することは困難である。また、粒成長速度も遅く、十分な結晶粒径を得ることができない可能性があり、角型比の改善が望めない。これに対し、溶体化処理時の保持温度よりも10℃以上高くして高質化処理を行うことにより、上記異相を十分に除去し、主相を構成する結晶粒を大きくすることができる。

0085

高質化処理時の保持温度は、例えば1130℃以上1190℃以下であることが好ましい。1130℃未満の場合および1190℃を超える場合、角型比が低下する場合がある。また、熱処理時間が2時間未満の場合、拡散が不十分であり、異相が十分に除去されず、角型比改善の効果が小さい。また、12時間を超える場合、Sm等のR元素が蒸発して良好な磁気特性が得られないおそれがある。なお、高質化処理における熱処理時間は4時間以上10時間以下であることがより好ましく、さらに6時間以上8時間以下であることが好ましい。また、酸化防止のために真空中やアルゴンガス等の不活性雰囲気中で高質化処理を行うことが好ましい。

0086

このとき、高質化処理におけるチャンバ内の圧力を正圧にすることにより、異相の生成を抑制する効果が高まる。よって、R元素の過剰な蒸発を抑制することができるため保磁力の低下を抑制することができる。チャンバ内の圧力は、例えば0.15MPa以上15MPa以下、さらには0.2MPa以上10MPa以下、さらには1.0MPa以上5.0MPa以下であることが好ましい。

0087

次に、溶体化処理を行う。溶体化処理は、相分離組織の前駆体となるTbCu7型結晶相(1−7型結晶相)を形成する処理である。溶体化処理では、1090℃以上1170℃未満の温度で、3時間以上28時間以下保持することにより熱処理を行う。

0088

溶体化処理時における保持温度が1090℃未満の場合および1170℃以上の場合、溶体化処理後の試料中に存在するTbCu7型結晶相の割合が小さく、磁気特性が低下するおそれがある。保持温度は、好ましくは1100℃以上1165℃以下である。また、溶体化処理時における保持時間が3時間未満の場合、構成相が不均一になりやすく、保磁力が低下しやすくなり、金属組織の結晶粒径が小さくなりやすく、粒界相比率が高くなり磁化が低下しやすい。また、溶体化処理時における保持時間が28時間を超える場合、焼結体中のR元素が蒸発する等で磁気特性が低下するおそれがある。保持時間は、好ましくは4時間以上24時間以下であり、さらに好ましくは10時間以上18時間以下である。なお、真空中やアルゴンガス等の不活性雰囲気中で溶体化処理を行うことにより粉末の酸化を抑制することができる。

0089

次に、急冷後の焼結体に時効処理を行う。時効処理とは、金属組織を制御して磁石の保磁力を高める処理であり、磁石の金属組織を複数の相に相分離させることを目的としている。

0090

時効処理では、760℃以上850℃以下の温度まで昇温させた後、その到達温度で20時間以上60時間以下保持(第1の保持)する。次に、0.2℃/分以上2.0℃/分以下の冷却速度で350℃以上650℃以下の温度まで徐冷を行った後、その到達温度で0.5時間以上8時間以下保持(第2の保持)することにより、熱処理を行う。その後、室温まで冷却する。以上により焼結体磁石を得ることができる。

0091

第1の保持において、保持温度が850℃よりも高い場合、セル相が粗大になり、角型比が低下しやすい。また、保持温度が760℃未満の場合、セル構造が十分に得られず、保磁力の発現が困難となる。第1の保持における保持温度は、例えば780℃以上840℃以下であることがより好ましい。また、第1の保持において、保持時間が20時間未満の場合、セル構造が不十分となり、保磁力の発現が困難となる。また、保持時間が60時間よりも長い場合、セル壁相が過剰に厚くなり、角型比が劣化する可能性がある。第1の保持における保持時間は、例えば25時間以上40時間以下であることがより好ましい。

0092

徐冷時の冷却速度が0.2℃/分未満の場合、セル壁相が過剰に厚くなり、磁化が減少しやすい。また、2.0℃/分を超える場合、セル相とセル壁相とのCu濃度の差が十分に得られず、保磁力が低下し易い。徐冷時の冷却速度は、例えば0.4℃/分以上1.5℃/分以下、さらには0.5℃/分以上1.3℃/分以下であることがより好ましい。また、350℃未満まで徐冷する場合、上述したような低温異相が生成され易い。また、650℃を超える温度まで徐冷する場合、Cuリッチ相でのCu濃度が十分に高くならず、十分な保磁力が得られないことがある。また、第2の保持における保持時間が8時間を超える場合、低温異相が生成し、十分な磁気特性が得られない可能性がある。

0093

なお、時効処理において、徐冷時に所定の温度で一定時間保持し、さらにそこから徐冷を行ってもよい。また、上記時効処理を本時効処理として、本時効処理の前に第1の保持における保持温度よりも低い温度で、かつ第1の保持における保持時間よりも短い時間で保持することにより予備時効処理を行ってもよい。上記徐冷時の保持や予備時効処理により、より角型比を高めることができる。

0094

上記構成による永久磁石は、各種モータや発電機などの回転電機に使用することができる。また、可変磁束モータ固定磁石可変磁石として使用することも可能である。特に、本実施形態の永久磁石型回転電機を可変磁束モータに適用して、例えばハイブリッド型自動車等の車両に組み込むことも可能である。可変磁束モータの構成やドライブシステムには、例えば特開2008−29148号公報や特開2008−43172号公報に開示されている技術を適用することができる。

0095

図8は本実施形態にかかる回転電機システムを採用した車両であるハイブリッド型自動車の駆動系の構成を示すブロック図である。図8において、自動車100にはエンジン102が搭載されている。このエンジン102は、変速機103及び差動ギヤ104を介して後輪105(前輪の場合または両方の場合もある)の車軸106を駆動するように構成されている。

0096

上記自動車100には、エンジン102に対して、本実施形態に係る回転電機である永久磁石型同期電動機107が併設されており、この電動機107のロータ回転軸はエンジン102の駆動軸直結または連結されている。これにより、電動機107とエンジン102は選択的にまたは併用して駆動軸(回転軸)の回転を駆動制御することができる。

0097

上記電動機107は、インバータ108及び制御装置109による駆動装置10Aを通じてバッテリ10Bと接続されている。すなわち、バッテリ10Bの出力をインバータ108によってスイッチング出力し、制御装置109で目標回転速度に応じてインバータ108のスイッチングを制御する。

0098

ここで、上記電動機107は、本実施形態に係る回転電機であることから、永久磁石の素材が、通常の高効率用永久磁石と比較して、リコイル透磁率が大きく、低速から高速まで広範囲で可変速運転が可能であり、低速から高速までの全運転範囲で高効率化することができる。このため、インバータ108のパワー素子への負荷を低減することができる。特に、弱め界磁制御における電流量飛躍的に軽減できるため、バッテリ消費電力も低減され、より高効率な駆動系を実現することができる。

0099

なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

0100

以下、上記特性を有する永久磁石の実施例について具体的に説明する。

0101

(実施例1、実施例2)
永久磁石に用いられる各原料を所定の比率で量して混合した後、Arガス雰囲気アーク溶解して合金インゴットを作製した。上記合金インゴットを1160℃で19時間保持して熱処理を行った後、合金インゴットに対して粗粉砕とジェットミルによる粉砕とを実施し、磁石の原料粉末としての合金粉末を調製した。得られた合金粉末を磁界中でプレス成形して圧縮成形体を作製した。

0102

次に、表2に示すように、30%の湿度、23℃の温度、2.5時間の時間で圧縮成形体を放置することにより酸化処理を行った。さらに、合金粉末の圧縮成形体を焼結炉チャンバ内に配置し、チャンバ内を真空状態にした後に1175℃まで昇温させ到達温度で30分間保持し、その後にArガスを導入し、Ar雰囲気中で1200℃まで昇温させ、到達温度で6時間保持して焼結を行った。次に、Ar雰囲気中にて、チャンバ内の圧力を0.5MPaにして、1185℃で3時間保持することにより高質化処理を行った。次に、5.0℃/分の冷却速度で1170℃まで徐冷を行い、到達温度で12時間保持して溶体化処理を行い、その後室温まで冷却を行った。なお、溶体化処理後の冷却速度を180℃/分とした。

0103

次に、溶体化処理後の焼結体を、750℃まで昇温し、到達温度で1時間保持した後に350℃まで1.5℃/分の冷却速度で徐冷を行った。次に、時効処理として、835℃まで昇温し、到達温度で35時間保持した。その後、1.0℃/分の冷却速度で400℃まで徐冷を行い、到達温度で1時間保持した。その後、室温まで炉冷することにより、磁石を得た。

0104

また、誘導結合発光プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)法により磁石の組成分析を実施した。なお、ICP法による組成分析を以下の手順により行った。まず、記述の測定箇所から採取した試料を乳鉢で粉砕し、粉砕した試料を一定量はかり取り、石英ビーカに入れた。さらに、ビーカに混酸硝酸塩酸を含む酸)を入れ、ホットプレート上で140℃程度に加熱し、ビーカ中の試料を完全に溶解させた。さらに放冷した後、PFAメスフラスコに移して定容し、試料溶液とした。

0105

さらに、ICP発光分光分析装置を用いて検量線法により上記試料溶液の含有成分の定量を行った。ICP発光分光分析装置としては、エスアイアイナノテクノロジー製、SPS4000を用いた。得られた磁石の組成は表1に示す通りである。また、中心部の酸素濃度Ocenter、表面部の酸素濃度Osurface、R元素の酸化物を含む相の厚さ、リコイル透磁率、保磁力Hcj、および残留磁化を測定した。その結果を表3に示す。なお、各実施例および比較例において測定装置として、日立ハイテク製HD2300を使用した。

0106

(実施例3、実施例4、実施例5)
各原料を所定の比率で秤量して混合した後、Arガス雰囲気中で高周波溶解して合金インゴットを作製した。合金インゴットに対し粗粉砕を実施した後に1160℃、2時間の熱処理を施し、急冷することにより室温まで冷却した。さらに粗粉砕とジェットミルによる粉砕とを実施し、磁石の原料粉末としての合金粉末を調製した。さらに上記合金粉末を磁界中でプレス成形して圧縮成形体を作製した。

0107

次に、表2に示すように、36%の湿度、18℃の温度、20時間の時間で圧縮成形体を放置することにより酸化処理を行った。さらに、合金粉末の圧縮成形体を焼結炉のチャンバ内に配置し、チャンバ内を8.8×10−3Paの真空状態にした後に1175℃まで昇温させ、到達温度で60分間保持した後、チャンバ内にArガスを導入した。Ar雰囲気中としたチャンバ内の温度を1195℃まで昇温し、到達温度で5時間保持して焼結を行った。次に、Ar雰囲気中にて、チャンバ内の圧力を0.2MPaにして、1160℃で2時間保持することにより高質化処理を行った。次に、1130℃まで5.0℃/分の冷却速度で徐冷を行い、到達温度で20時間保持して溶体化処理を行い、その後室温まで冷却を行った。なお、溶体化処理後の冷却速度を150℃/分とした。

0108

次に、溶体化処理後の焼結体を、700℃まで昇温し、到達温度で0.5時間保持した後、続けて時効処理として、850℃まで昇温し、到達温度で50時間保持した。その後0.75℃/分の冷却速度で450℃まで徐冷し、到達温度で4時間保持した。その後、0.5℃/分の冷却速度で380℃まで徐冷し、到達温度で1時間保持した。その後、室温まで炉冷することにより、磁石を得た。

0109

さらに、上記ICP発光分光分析装置を用いて検量線法により上記試料溶液の含有成分の定量を行った。得られた磁石の組成は表1に示す通りである。また、他の実施例と同様に中心部の酸素濃度Ocenter、表面部の酸素濃度Osurface、R元素の酸化物を含む相の厚さ、リコイル透磁率、保磁力Hcj、および残留磁化を測定した。その結果を表3に示す。

0110

(実施例6、実施例7)
各原料を所定の比率で秤量して混合した後、Arガス雰囲気中で高周波溶解して合金インゴットを作製した。合金インゴットに対し粗粉砕を実施した後に1170℃、10時間の熱処理を施し、急冷することにより室温まで冷却した。さらに粗粉砕とジェットミルによる粉砕とを実施し、磁石の原料粉末としての合金粉末を調製した。さらに上記合金粉末を磁界中でプレス成形して圧縮成形体を作製した。

0111

次に、表2に示すように、24%の湿度、28℃の温度、12時間の時間で圧縮成形体を放置することにより酸化処理を行った。次に、圧縮成形体を焼結炉のチャンバ内に配置し、チャンバ内を7.5×10−3Paの真空状態にした後に1165℃まで昇温させ、到達温度で10分間保持した後、チャンバ内にArガスを導入した。Ar雰囲気中としたチャンバ内の温度を1185℃まで昇温し、到達温度で5時間保持して焼結を行った。次に、Ar雰囲気中にて、チャンバ内の圧力を0.7MPaにして、1160℃で10時間保持することにより高質化処理を行った。次に、1115℃まで5.0℃/分の冷却速度で徐冷を行い、到達温度で12時間保持して溶体化処理を行い、その後室温まで冷却を行った。なお、溶体化処理後の冷却速度を220℃/分とした。

0112

次に、溶体化処理後の焼結体を、660℃まで昇温し、到達温度で1時間保持した後、続けて時効処理として、840℃まで昇温し、到達温度で50時間保持した。その後0.6℃/分の冷却速度で500℃まで徐冷し、到達温度で1時間保持した。その後、0.5℃/分の冷却速度で400℃まで徐冷し、到達温度で1時間保持した。その後、室温まで炉冷することにより、磁石を得た。

0113

他の実施例と同様に上記各磁石の組成をICP法により確認した。得られた磁石の組成は表1に示す通りである。また、他の実施例と同様に中心部の酸素濃度Ocenter、表面部の酸素濃度Osurface、R元素の酸化物を含む相の厚さ、リコイル透磁率、保磁力Hcj、および残留磁化を測定した。その結果を表3に示す。

0114

(実施例8)
各原料を所定の比率で秤量して混合した後、Arガス雰囲気中で高周波溶解して合金インゴットを作製した。上記合金インゴットに対し粗粉砕を実施した後に1160℃、12時間の熱処理を施し、急冷することにより室温まで冷却した。さらに、粗粉砕とジェットミルによる粉砕とを磁石の原料粉末としての合金粉末を調製した。さらに上記合金粉末を磁界中でプレス成形して圧縮成形体を作製した。

0115

次に、表2に示すように、26%の湿度、23℃の温度、8時間の時間で圧縮成形体を放置することにより酸化処理を行った。さらに、合金粉末の圧縮成形体を焼結炉のチャンバ内に配置し、チャンバ内を7.5×10−3Paの真空状態にした後に1165℃まで昇温させ、到達温度で60分間保持した後、チャンバ内にArガスを導入した。Ar雰囲気中としたチャンバ内の温度を1195℃まで昇温し、到達温度で5時間保持して焼結を行った。次に、Ar雰囲気中にて、チャンバ内の圧力を0.5MPaにして、1170℃で6時間保持することにより高質化処理を行った。次に、5.0℃/分の冷却速度で1140℃まで徐冷を行い、到達温度で8時間保持して溶体化処理を行い、その後室温まで冷却を行った。なお、溶体化処理後の冷却速度を190℃/分とした。

0116

次に、溶体化処理後の焼結体を、690℃まで昇温し、到達温度で2時間保持した後、続けて時効処理として、830℃まで昇温し、到達温度で45時間保持した。その後0.7℃/分の冷却速度で600℃まで徐冷を行い、到達温度で2時間保持した。その後、0.5℃/分の冷却速度で400℃まで徐冷を行い、到達温度で1時間保持した。その後、室温まで炉冷することにより、磁石を得た。

0117

他の実施例と同様に上記各磁石の組成をICP法により確認した。得られた磁石の組成は表1に示す通りである。また、他の実施例と同様に中心部の酸素濃度Ocenter、表面部の酸素濃度Osurface、R元素の酸化物を含む相の厚さ、リコイル透磁率、保磁力Hcj、および残留磁化を測定した。その結果を表3に示す。

0118

(実施例9ないし実施例14)
実施例8と同組成の合金粉末を原料に用い、同様の方法で磁界中でプレス成形して圧縮成形体を作製した。

0119

次に酸化処理を行った。表2に示すように、実施例9では、26%の湿度、23℃の温度、4時間の時間で圧縮成形体を放置することにより酸化処理を行った。実施例10では、26%の湿度、23℃の温度、22時間の時間で圧縮成形体を放置することにより酸化処理を行った。実施例11では、26%の湿度、17℃の温度、8時間の時間で圧縮成形体を放置することにより酸化処理を行った。実施例12では、26%の湿度、32℃の温度、8時間の時間で圧縮成形体を放置することにより酸化処理を行った。実施例13では、22%の湿度、23℃の温度、8時間の時間で圧縮成形体を放置することにより酸化処理を行った。実施例14では、44%の湿度、22℃の温度、8時間の時間で圧縮成形体を放置することにより酸化処理を行った。

0120

次に、合金粉末の圧縮成形体を焼結炉のチャンバ内に配置し、実施例8と同じ条件で焼結までの工程を行い、その後、実施例8と同じ条件で高質化処理、溶体化処理、時効処理を行うことにより、磁石を得た。

0121

他の実施例と同様に上記各磁石の組成をICP法により確認した。得られた磁石の組成は表1に示す通りである。また、他の実施例と同様に中心部の酸素濃度Ocenter、表面部の酸素濃度Osurface、R元素の酸化物を含む相の厚さ、リコイル透磁率、保磁力Hcj、および残留磁化を測定した。その結果を表3に示す。

0122

(比較例1)
表1に示す組成を有する磁石を、実施例1と同一の方法で作製した。実施例と同様に中心部の酸素濃度Ocenter、表面部の酸素濃度Osurface、酸化物領域の厚さ、保磁力Hcj、および残留磁化を測定した。その結果を表3に示す。なお、リコイル透磁率については保磁力が1000kA/m未満であり、B−H曲線にクニック点が生じたため、測定できなかった。比較例4、6、8も同様である。

0123

(比較例2)
表1に示す組成を有する磁石を、実施例4と同一の方法で作製した。実施例と同様に中心部の酸素濃度Ocenter、表面部の酸素濃度Osurface、R元素の酸化物を含む相の厚さ、リコイル透磁率、保磁力Hcj、および残留磁化を測定した。その結果を表3に示す。

0124

(比較例3ないし比較例8)
実施例8と同組成の合金粉末を原料に用い、同様の方法で磁界中でプレス成形して圧縮成形体を作製した。

0125

次に酸化処理を行った。表2に示すように、比較例3では、26%の湿度、23℃の温度、0.5時間の時間で圧縮成形体を放置することにより酸化処理を行った。比較例4では、26%の湿度、23℃の温度、36時間の時間で圧縮成形体を放置することにより酸化処理を行った。比較例5では、26%の湿度、10℃の温度、8時間の時間で圧縮成形体を放置することにより酸化処理を行った。比較例6では、26%の湿度、46℃の温度、8時間の時間で圧縮成形体を放置することにより酸化処理を行った。比較例7では、15%の湿度、23℃の温度、8時間の時間で圧縮成形体を放置することにより酸化処理を行った。比較例8では、80%の湿度、23℃の温度、8時間の時間で圧縮成形体を放置することにより酸化処理を行った。

0126

次に、合金粉末の圧縮成形体を焼結炉のチャンバ内に配置し、実施例8と同じ条件で焼結までの工程を行い、その後、実施例8と同じ条件で高質化処理、溶体化処理、時効処理を行うことにより、磁石を得た。

0127

実施例と同様に上記各磁石の組成をICP法により確認した。得られた磁石の組成は表1に示す通りである。また、他の実施例と同様に中心部の酸素濃度Ocenter、表面部の酸素濃度Osurface、R元素の酸化物を含む相の厚さ、リコイル透磁率、保磁力Hcj、および残留磁化を測定した。その結果を表3に示す。

0128

表1ないし表3から明らかなように、実施例1ないし実施例14の永久磁石では、例えばSm濃度が高い比較例1やZr濃度が高い比較例2の永久磁石と比較して、高いリコイル透磁率、高保磁力、および高磁化を発現している。このことから、永久磁石を構成する各元素の量を調整することにより、磁石特性を高めることができることがわかる。

0129

実施例8ないし実施例14の永久磁石では、例えば酸化処理の時間が2時間未満の比較例3の永久磁石および酸化処理の時間が24時間を超える比較例4の永久磁石と比較して、高いリコイル透磁率、高保磁力、および高磁化を発現している。このことから、所定の時間で酸化処理を行うことにより、磁石特性を高めることができることがわかる。

0130

実施例8ないし実施例14の永久磁石では、例えば酸化処理の温度が15℃未満の比較例5の永久磁石および酸化処理の温度が35℃を超える比較例6の永久磁石と比較して、高いリコイル透磁率、高保磁力、および高磁化を発現している。このことから、所定の湿度で酸化処理を行うことにより、磁石特性を高めることができることがわかる。

0131

実施例8ないし実施例14の永久磁石では、例えば酸化処理の湿度が20%未満の比較例7の永久磁石および放置湿度が50%を超える比較例8の永久磁石と比較して、高いリコイル透磁率、高保磁力、および高磁化を発現している。このことから、所定の温度で酸化処理を行うことにより、磁石特性を高めることができることがわかる。

0132

以上のように、実施例1ないし実施例14の永久磁石では、主相において、中心部の酸素濃度Ocenter、表面部の酸素濃度Osurface、R元素の酸化物を含む相の厚さを制御することにより、高いリコイル透磁率、高保磁力、および高磁化を発現している。このことから、実施例1ないし実施例14の永久磁石は、磁石特性に優れていることがわかる。

0133

また、モータなどの回転電機システムに高速回転での弱め界磁制御法を用いた場合、弱め界磁制御法による電流が不要となり、損失の低減、効率の向上が可能となる。

0134

また、回転電機システムを自動車などの車両に用いることにより、出力の低下を抑制し、効率の向上が可能となる。

実施例

0135

その他、本実施形態は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。

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