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技術 酢酸製造方法

出願人 株式会社ダイセル
発明者 清水雅彦齋藤隆二三浦裕幸
出願日 2016年11月17日 (4年0ヶ月経過) 出願番号 2017-515998
公開日 2018年3月8日 (2年8ヶ月経過) 公開番号 WO2017-149856
状態 特許登録済
技術分野 有機低分子化合物及びその製造 触媒を使用する低分子有機合成反応
主要キーワード 抜き取り位置 バッファータンク内 腐食金属 イオン交換樹脂材料 抜き取り量 製品タンク内 補給ライン シール液
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2018年3月8日)のものです。
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図面 (2)

課題・解決手段

本発明の酢酸製造方法では、例えば、酢酸製造装置(X)の蒸留塔(5)以降において、濃度90質量%以上の酢酸と、無水酢酸と、水とを少なくとも含んで無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より高い状態にある酢酸溶液について、水濃度の上昇および/または降温を行うことによって無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にするための無水酢酸低減措置を行う。このような酢酸製造方法は、高純度製品酢酸を得るのに適する。

概要

背景

酢酸工業的製造に利用するのに適した酢酸合成法としては、例えば、メタノールカルボニル化法が知られている。この合成法によると、原料たるメタノールと一酸化炭素とが所定の触媒の存在下で反応し、酢酸が生成する。

メタノールのカルボニル化法を利用した酢酸製造に使用される酢酸製造プラントは、複数のユニットからなり、例えば、反応槽フラッシュ蒸発槽、脱低沸塔、および脱水塔具備する。このような酢酸製造プラントにおいては、各ユニットでの例えば次のような過程を経て、酢酸が製造される。反応槽では、メタノールのカルボニル化反応によって、原料たるメタノールと一酸化炭素から酢酸が連続的に生成する。フラッシュ蒸発槽では、反応槽で生成した酢酸を含む反応液を反応槽から受けていわゆるフラッシュ蒸発処理がなされ、反応液から粗酢酸の蒸気が取り出される。脱低沸塔では、酢酸よりも沸点の低い成分を粗酢酸から除去することを主な目的とする蒸留処理がなされ、当該脱低沸塔からは、酢酸が富化された液状の酢酸流が抜き取られる。脱水塔では、その酢酸流から主に水分を除去するための蒸留処理がなされ、当該脱水塔からは、酢酸が更に富化された液状の酢酸流が抜き取られる。このような酢酸製造技術については、例えば、下記の特許文献1および特許文献2に記載されている。

概要

本発明の酢酸製造方法では、例えば、酢酸製造装置(X)の蒸留塔(5)以降において、濃度90質量%以上の酢酸と、無水酢酸と、水とを少なくとも含んで無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より高い状態にある酢酸溶液について、水濃度の上昇および/または降温を行うことによって無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にするための無水酢酸低減措置を行う。このような酢酸製造方法は、高純度製品酢酸を得るのに適する。

目的

脱低沸塔では、酢酸よりも沸点の低い成分を粗酢酸から除去することを主な目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

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請求項1

濃度90質量%以上の酢酸と、無水酢酸と、水とを少なくとも含んで無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より高い状態にある酢酸溶液について、水濃度の上昇および/または降温を行うことによって無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にするための無水酢酸低減措置を含む、酢酸製造方法。

請求項2

前記無水酢酸低減措置では、無水酢酸の加水分解を促進するための触媒を前記酢酸溶液中に存在させる、請求項1に記載の酢酸製造方法。

請求項3

前記触媒は、ブレンステッド酸ルイス酸腐食金属イオン交換樹脂、またはスルホン酸類を含む、請求項2に記載の酢酸製造方法。

請求項4

前記酢酸溶液中の前記触媒の存在量は0.01〜10000ppmである、請求項2に記載の酢酸製造方法。

請求項5

反応槽と、第1蒸留塔と、第2蒸留塔と、第3蒸留塔とを少なくとも含む酢酸製造装置の前記反応槽において、メタノールおよび一酸化炭素を含む原料混合物からメタノールのカルボニル化反応によって酢酸を生成させるための、反応工程と、前記第1蒸留塔において、前記反応工程で生成した酢酸を含む粗酢酸流蒸留処理し、当該粗酢酸流よりも酢酸の富化された第1酢酸流を得るための、第1蒸留工程と、前記第2蒸留塔において、前記第1酢酸流を蒸留処理し、当該第1酢酸流よりも酢酸の富化された第2酢酸流を得るための、第2蒸留工程と、前記第3蒸留塔において、前記第2酢酸流を蒸留処理し、当該第2酢酸流よりも酢酸の富化された第3酢酸流を得るための、第3蒸留工程とを含み、前記酢酸製造装置における前記第2蒸留塔以降の酢酸流について前記無水酢酸低減措置を行う、請求項1に記載の酢酸製造方法。

請求項6

濃度90質量%以上の酢酸と、無水酢酸と、水とを少なくとも含んで無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液について、水濃度の上昇および/または降温を行うことによって無水酢酸平衡濃度を更に低くするための無水酢酸低減措置を含む、酢酸製造方法。

請求項7

前記無水酢酸低減措置では、無水酢酸の加水分解を促進するための触媒を前記酢酸溶液中に存在させる、請求項6に記載の酢酸製造方法。

請求項8

前記触媒は、ブレンステッド酸、ルイス酸、腐食金属、イオン交換樹脂、またはスルホン酸類を含む、請求項7に記載の酢酸製造方法。

請求項9

前記酢酸溶液中の前記触媒の存在量は0.01〜10000ppmである、請求項7に記載の酢酸製造方法。

請求項10

反応槽と、第1蒸留塔と、第2蒸留塔と、第3蒸留塔とを少なくとも含む酢酸製造装置の前記反応槽において、メタノールおよび一酸化炭素を含む原料混合物からメタノールのカルボニル化反応によって酢酸を生成させるための、反応工程と、前記第1蒸留塔において、前記反応工程で生成した酢酸を含む粗酢酸流を蒸留処理し、当該粗酢酸流よりも酢酸の富化された第1酢酸流を得るための、第1蒸留工程と、前記第2蒸留塔において、前記第1酢酸流を蒸留処理し、当該第1酢酸流よりも酢酸の富化された第2酢酸流を得るための、第2蒸留工程と、前記第3蒸留塔において、前記第2酢酸流を蒸留処理し、当該第2酢酸流よりも酢酸の富化された第3酢酸流を得るための、第3蒸留工程とを含み、前記酢酸製造装置における前記第2蒸留塔以降の酢酸流について前記無水酢酸低減措置を行う、請求項6に記載の酢酸製造方法。

請求項11

濃度90質量%以上の酢酸と、無水酢酸と、水とを少なくとも含んで無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液について、当該状態が維持される限りで、昇温、または、昇温と水濃度の上昇を行うことによって、無水酢酸の加水分解の反応速度を上昇させるための無水酢酸低減措置を含む、酢酸製造方法。

請求項12

前記無水酢酸低減措置では、無水酢酸の加水分解を促進するための触媒を前記酢酸溶液中に存在させる、請求項11に記載の酢酸製造方法。

請求項13

前記触媒は、ブレンステッド酸、ルイス酸、腐食金属、イオン交換樹脂、またはスルホン酸類を含む、請求項12に記載の酢酸製造方法。

請求項14

前記酢酸溶液中の前記触媒の存在量は0.01〜10000ppmである、請求項12に記載の酢酸製造方法。

請求項15

反応槽と、第1蒸留塔と、第2蒸留塔と、第3蒸留塔とを少なくとも含む酢酸製造装置の前記反応槽において、メタノールおよび一酸化炭素を含む原料混合物からメタノールのカルボニル化反応によって酢酸を生成させるための、反応工程と、前記第1蒸留塔において、前記反応工程で生成した酢酸を含む粗酢酸流を蒸留処理し、当該粗酢酸流よりも酢酸の富化された第1酢酸流を得るための、第1蒸留工程と、前記第2蒸留塔において、前記第1酢酸流を蒸留処理し、当該第1酢酸流よりも酢酸の富化された第2酢酸流を得るための、第2蒸留工程と、前記第3蒸留塔において、前記第2酢酸流を蒸留処理し、当該第2酢酸流よりも酢酸の富化された第3酢酸流を得るための、第3蒸留工程とを含み、前記酢酸製造装置における前記第2蒸留塔以降の酢酸流について前記無水酢酸低減措置を行う、請求項11に記載の酢酸製造方法。

技術分野

0001

本発明は、酢酸を製造する方法に関する。また、本願は、2016年3月1日付の日本出願 特願2016−038582号に基づく優先権を主張し、当該出願に記載されている全ての内容を援用するものである。

背景技術

0002

酢酸の工業的製造に利用するのに適した酢酸合成法としては、例えば、メタノールカルボニル化法が知られている。この合成法によると、原料たるメタノールと一酸化炭素とが所定の触媒の存在下で反応し、酢酸が生成する。

0003

メタノールのカルボニル化法を利用した酢酸製造に使用される酢酸製造プラントは、複数のユニットからなり、例えば、反応槽フラッシュ蒸発槽、脱低沸塔、および脱水塔具備する。このような酢酸製造プラントにおいては、各ユニットでの例えば次のような過程を経て、酢酸が製造される。反応槽では、メタノールのカルボニル化反応によって、原料たるメタノールと一酸化炭素から酢酸が連続的に生成する。フラッシュ蒸発槽では、反応槽で生成した酢酸を含む反応液を反応槽から受けていわゆるフラッシュ蒸発処理がなされ、反応液から粗酢酸の蒸気が取り出される。脱低沸塔では、酢酸よりも沸点の低い成分を粗酢酸から除去することを主な目的とする蒸留処理がなされ、当該脱低沸塔からは、酢酸が富化された液状の酢酸流が抜き取られる。脱水塔では、その酢酸流から主に水分を除去するための蒸留処理がなされ、当該脱水塔からは、酢酸が更に富化された液状の酢酸流が抜き取られる。このような酢酸製造技術については、例えば、下記の特許文献1および特許文献2に記載されている。

先行技術

0004

特開平11−315046号公報
特表2001−505199号公報

発明が解決しようとする課題

0005

例えば上述のようなカルボニル化法を利用した酢酸製造においては、得られる製品酢酸に無水酢酸が含まれる場合がある。製品酢酸の高純度化のためには、製品酢酸中の無水酢酸濃度は低い方が好ましい。本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、高純度の製品酢酸を得るのに適した酢酸製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0006

本発明の第1の側面により提供される酢酸製造方法は、製品酢酸を得るまでの過程において、濃度90質量%以上の酢酸と、無水酢酸と、水とを少なくとも含んで無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より高い状態にある酢酸溶液について、水濃度の上昇および/または降温を行うことによって無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にするための措置(無水酢酸低減措置)を含む。本発明において、無水酢酸平衡濃度とは、酢酸溶液のおかれた温度条件圧力条件にて当該酢酸溶液中で無水酢酸の加水分解反応(即ち、無水酢酸と水から酢酸の生ずる反応)とその逆反応平衡状態に至ったときの、当該酢酸溶液の無水酢酸濃度をいう。無水酢酸の加水分解反応は発熱反応であり、前記の逆反応は吸熱反応である。

0007

本方法の無水酢酸低減措置においては、酢酸濃度が90質量%以上であり且つ無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より高い状態にある酢酸溶液について、水濃度の上昇、降温、または、水濃度の上昇と降温が行われる。このような無水酢酸低減措置を経ることによって、高濃度の当該酢酸溶液について、無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態とされる。この状態とされた酢酸溶液では、その無水酢酸濃度が無水酢酸平衡濃度に向かって低減するように無水酢酸の加水分解反応が進むこととなる。製品酢酸を得るまでの過程において以上のような無水酢酸低減措置を含む本方法は、得られる酢酸溶液ないし製品酢酸の無水酢酸濃度を低減するのに適し、従って、高純度の製品酢酸を得るのに適する。

0008

本発明の第2の側面により提供される酢酸製造方法は、製品酢酸を得るまでの過程において、濃度90質量%以上の酢酸と、無水酢酸と、水とを少なくとも含んで無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液について、水濃度の上昇および/または降温を行うことによって無水酢酸平衡濃度を更に低くするための措置(無水酢酸低減措置)を含む。

0009

本方法の無水酢酸低減措置においては、酢酸濃度が90質量%以上であり且つ無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液について、水濃度の上昇、降温、または、水濃度の上昇と降温が行われる。このような無水酢酸低減措置を経ることによって、高濃度の当該酢酸溶液について、無水酢酸平衡濃度が更に低い状態とされる。この状態とされた酢酸溶液では、その無水酢酸濃度が無水酢酸平衡濃度に向かって低減するように無水酢酸の加水分解反応が進みやすくなる。製品酢酸を得るまでの過程において以上のような無水酢酸低減措置を含む本方法は、得られる酢酸溶液ないし製品酢酸の無水酢酸濃度を低減するのに適し、従って、高純度の製品酢酸を得るのに適する。

0010

本発明の第3の側面により提供される酢酸製造方法は、製品酢酸を得るまでの過程において、濃度90質量%以上の酢酸と、無水酢酸と、水とを少なくとも含んで無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液について、当該状態が維持される限りで、昇温、または、昇温と水濃度の上昇を行うことによって、無水酢酸の加水分解の反応速度を上昇させるための措置(無水酢酸低減措置)を含む。

0011

本方法の無水酢酸低減措置においては、酢酸濃度が90質量%以上であり且つ無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液について、その状態を維持しつつ、昇温、または、昇温と水濃度の上昇が行われる。酢酸溶液についての昇温や水濃度の上昇は、反応速度論上、無水酢酸の加水分解における反応速度の上昇にとって有利に作用する。このような無水酢酸低減措置を経ることによって、高濃度の当該酢酸溶液においては、無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態が維持されつつ無水酢酸の加水分解の反応速度が上昇し、無水酢酸濃度が無水酢酸平衡濃度に向かって低減するように無水酢酸の加水分解反応が促進される。製品酢酸を得るまでの過程において以上のような無水酢酸低減措置を含む本方法は、得られる酢酸溶液ないし製品酢酸の無水酢酸濃度を低減するのに適し、従って、高純度の製品酢酸を得るのに適する。

0012

本発明の第1から第3の側面における無水酢酸低減措置では、好ましくは、無水酢酸の加水分解を促進するための触媒を酢酸溶液中に存在させる。そのような触媒は、好ましくは、ブレンステッド酸ルイス酸腐食金属イオン交換樹脂、またはスルホン酸類を含む。酢酸溶液中の触媒の存在量は、好ましくは0.01〜10000ppmである。「ppm」とは「質量ppm」を意味するものとする。これらの構成は、酢酸溶液において、無水酢酸の加水分解反応を進行させて無水酢酸濃度を低減するうえで、好適である。

0013

本発明の第1から第3の側面における無水酢酸低減措置では、酢酸溶液の水濃度は例えば7ppm以上とし、また、酢酸溶液の温度は例えば17℃以上とする。好ましくは、第1から第3の側面における無水酢酸低減措置では、酢酸溶液について、水濃度は2000ppm以上とし且つ180℃以下とするか、水濃度は1000ppm以上とし且つ170℃以下とするか、水濃度は500ppm以上とし且つ120℃以下とするか、水濃度は200ppm以上とし且つ100℃以下とするか、水濃度は80ppm以上とし且つ60℃以下とするか、水濃度は40ppm以上とし且つ50℃以下とするか、或は、水濃度は12ppm以上とし且つ30℃以下とする。これらの構成は、酢酸溶液において、無水酢酸の加水分解反応を進行させて無水酢酸濃度を低減するうえで、好適である。

0014

本発明の第1から第3の側面における無水酢酸低減措置では、無水酢酸低減措置後の酢酸溶液の滞留時間は、例えば1秒以上であり、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、より好ましくは60分以上、より好ましくは900分以上、より好ましくは1300分以上、より好ましくは1400分以上、より好ましくは2800分以上である。本発明において、無水酢酸低減措置後の酢酸溶液の滞留時間とは、酢酸溶液における当該措置を契機とする無水酢酸濃度の低減を進行させるために当該酢酸溶液を例えば酢酸製造装置における配管内や、蒸留塔内バッファータンク内製品タンク内に保持する時間である。これらの構成は、酢酸溶液において、無水酢酸の加水分解反応を進行させて無水酢酸濃度を低減するうえで、好適である。

0015

本発明の第1から第3の側面における酢酸製造方法は、好ましくは、更に、反応工程と、第1蒸留工程と、第2蒸留工程と、第3蒸留工程とを少なくとも含み、且つ、反応槽と、第1蒸留塔と、第2蒸留塔と、第3蒸留塔とを少なくとも含む酢酸製造装置を使用して行われる。反応工程では、反応槽において、メタノールおよび一酸化炭素を含む原料混合物からメタノールのカルボニル化反応によって酢酸を生成させる。第1蒸留工程では、第1蒸留塔において、反応工程で生成した酢酸を含む粗酢酸流を蒸留処理し、当該粗酢酸流よりも酢酸の富化された第1酢酸流を得る。第2蒸留工程では、第2蒸留塔において、第1酢酸流を蒸留処理し、当該第1酢酸流よりも酢酸の富化された第2酢酸流を得る。第3蒸留工程では、第3蒸留塔において、第2酢酸流を蒸留処理し、当該第2酢酸流よりも酢酸の富化された第3酢酸流を得る。そして、酢酸製造装置における第2蒸留塔以降の酢酸流について、上述の無水酢酸低減措置を行う。

0016

本方法を実行するための酢酸製造装置は、反応槽、第1蒸留塔、これより後段の第2蒸留塔、および、これより後段の第3蒸留塔を具備する。酢酸製造装置には、反応槽と第1蒸留塔の間にフラッシュ蒸発槽が配設され得る。酢酸製造装置には、製造される製品酢酸を貯留するための製品タンクも配設され得る。本方法によると、このような酢酸製造装置の第2蒸留塔以降にある酢酸流において、本発明の第1から第3の側面に係る上述の無水酢酸低減措置が行われる。第1および第2蒸留塔での各蒸留処理に加えて、第3蒸留塔での更なる蒸留処理を含む本方法は、得られる製品酢酸において高い純度を実現するのに適する。また、装置内を通流する酢酸流の無水酢酸濃度は、酢酸流のおかれる温度条件および圧力条件ならびに酢酸流の組成に応じて変動し得るところ、本方法では、第2蒸留塔に至って又は第2蒸留塔を経て比較的に精製の程度が進んだ酢酸流ないし酢酸溶液について上述の無水酢酸低減措置が行われる。当該構成は、得られる製品酢酸の無水酢酸濃度を低減するのに適し、従って、高純度の製品酢酸を得るのに適する。

図面の簡単な説明

0017

本発明の一の実施形態たる酢酸製造方法を実行するための酢酸製造装置の全体概略構成を表す。

0018

図1は、本発明の一の実施形態たる酢酸製造方法を実行するための酢酸製造装置Xの全体概略構成を表す。酢酸製造装置Xは、反応槽1と、蒸発槽2と、蒸留塔3と、デカンタ4と、蒸留塔5と、蒸留塔6と、イオン交換樹脂塔7と、スクラバーステム8と、コンデンサ1a,2a,3a,5a,6aと、熱交換器2bと、ライン11〜46とを少なくとも備え、酢酸を連続的に製造可能に構成されている。本実施形態の酢酸製造方法では、反応槽1、蒸発槽2、蒸留塔3、蒸留塔5、蒸留塔6、およびイオン交換樹脂塔7において、以下に説明するように、反応工程、フラッシュ蒸発工程、第1蒸留工程、第2蒸留工程、第3蒸留工程、および吸着除去工程が行われる。

0019

反応槽1は、反応工程を行うためのユニットである。この反応工程は、下記の反応式(1)で示される反応(メタノールのカルボニル化反応)によって酢酸を連続的に生成させるための工程である。酢酸製造装置Xの定常稼働状態において、反応槽1内には、例えば撹拌機によって撹拌され続ける反応混合物が存在する。反応混合物は、原料たるメタノールおよび一酸化炭素と、触媒と、助触媒と、水と、製造目的の酢酸と、各種の副生成物とを含み、液相と気相とが平衡状態にある。

0020

反応混合物中の原料は、液体状のメタノールおよび気体状の一酸化炭素である。メタノールは、図外のメタノール貯留部からライン11を介して反応槽1に対して所定の流量で連続的に供給される。一酸化炭素は、図外の一酸化炭素貯留部からライン12を介して反応槽1に対して所定の流量で連続的に供給される。

0021

反応混合物中の触媒は、メタノールのカルボニル化反応を促進するためのものである。触媒としては、例えばロジウム触媒イリジウム触媒を使用することができる。ロジウム触媒としては、例えば、化学式[Rh(CO)2I2]-で表されるロジウム錯体を使用することができる。イリジウム触媒としては、例えば、化学式[Ir(CO)2I2]-で表されるイリジウム錯体を使用することができる。反応混合物中の触媒の濃度は、反応混合物の液相全体に対して例えば200〜5000ppmである。

0022

助触媒は、上述の触媒の作用を補助するためのヨウ化物である。助触媒としてのヨウ化物としては、例えばヨウ化メチルイオン性ヨウ化物が使用される。ヨウ化メチルは、上述の触媒の触媒作用を促進する作用を示し得る。ヨウ化メチルの濃度は、反応混合物の液相全体に対して例えば1〜20質量%である。イオン性ヨウ化物は、反応液中でヨウ素イオンを生じさせるヨウ化物であり、上述の触媒を安定化させる作用や、副反応を抑制する作用を示し得る。イオン性ヨウ化物としては、例えばヨウ化リチウムヨウ化ナトリウム、およびヨウ化カリウムが挙げられる。反応混合物中のイオン性ヨウ化物の濃度は、反応混合物の液相全体に対して例えば1〜25質量%である。

0023

反応混合物中の水は、メタノールのカルボニル化反応の反応機構上、酢酸を生じさせるのに必要な成分であり、また、反応系の水溶性成分の可溶化のためにも必要な成分である。反応混合物中の水の濃度は、反応混合物の液相全体に対して例えば0.1〜15質量%である。反応混合物中の水濃度は、酢酸の精製過程での水の除去に要するエネルギーを抑制して酢酸製造の効率化を進めるうえでは15質量%以下が好ましい。水濃度を制御するために、反応槽1に対して所定流量の水を連続的に供給してもよい。

0024

反応混合物中の酢酸は、酢酸製造装置Xの稼働前に反応槽1内に予め仕込まれた酢酸、および、メタノールのカルボニル化反応の主生成物として生じる酢酸を含む。このような酢酸は、反応系では溶媒として機能し得る。反応混合物中の酢酸の濃度は、反応混合物の液相全体に対し、例えば50〜90質量%であり、好ましくは60〜80質量%である。

0025

反応混合物に含まれる主な副生成物としては、例えば酢酸メチルが挙げられる。この酢酸メチルは、酢酸とメタノールとの反応によって生じ得る。反応混合物中の酢酸メチルの濃度は、反応混合物の液相全体に対して例えば0.1〜30質量%である。反応混合物に含まれる副生成物としては、ヨウ化水素も挙げられる。このヨウ化水素は、メタノールのカルボニル化反応の反応機構上、上述のような触媒や助触媒が使用される場合に生じる。反応混合物中のヨウ化水素の濃度は、反応混合物の液相全体に対して例えば0.01〜2質量%である。反応混合物には副生成物として無水酢酸も含まれうる。反応混合物中の無水酢酸の濃度は、反応混合物の液相全体に対して、例えば0〜5000ppmであり、例えば0.01〜3000ppmであり、例えば0.1〜1000ppmである。また、副生成物としては、例えば、水素メタン二酸化炭素アセトアルデヒドプロピオン酸、および、ヨウ化ヘキシル等のヨウ化アルキルも、挙げられる。

0026

以上のような反応混合物が存在する反応槽1内において、反応温度は例えば150〜250℃に設定され、全体圧力としての反応圧力は例えば2.0〜3.5MPa(絶対圧)に設定され、一酸化炭素分圧は、例えば0.5〜1.8MPa(絶対圧)、好ましくは0.8〜1.5MPa(絶対圧)に設定される。

0027

装置稼働時の反応槽1内では、酢酸の連続的生成とともに各種の気相成分が発生し続けて蒸気の総体積が増大する傾向にある。反応槽1内の蒸気には、例えば、一酸化炭素、水素、メタン、二酸化炭素、酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、アセトアルデヒド、ジメチルエーテル、および水などが含まれる。この蒸気については、反応槽1内からライン13を介して抜き取ることが可能である。蒸気の抜き取り量の調節によって、反応槽1内の圧力を制御することが可能であり、例えば、反応槽1内の圧力は一定に維持される。反応槽1内から抜き取られた蒸気は、コンデンサ1aへと導入される。

0028

コンデンサ1aは、反応槽1からの蒸気を、冷却して部分的に凝縮させることによって、凝縮分とガス分とに分ける。凝縮分は、例えば、酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、アセトアルデヒド、ジメチルエーテル、および水などを含み、コンデンサ1aからライン14を介して反応槽1へと導入され、リサイクルされる。ガス分は、例えば、一酸化炭素、水素、メタン、および二酸化炭素などを含み、コンデンサ1aからライン15を介してスクラバーシステム8へと供給される。スクラバーシステム8では、コンデンサ1aからのガス分から有用成分(例えば一酸化炭素)が分離回収される。この分離回収には、本実施形態では、ガス分中の有用成分を捕集するための吸収液を使用して行う湿式法が利用される。分離回収には、圧力変動吸着法を利用してもよい。分離回収された有用成分は、例えば、スクラバーシステム8からリサイクルライン(図示略)を介して反応槽1へと導入され、リサイクルされる。スクラバーシステム8での処理およびその後の反応槽1へのリサイクルについては、他のコンデンサからスクラバーシステム8へと供給される後記のガス分についても同様である。

0029

装置稼働時の反応槽1内では、上述のように、酢酸が連続的に生成する。そのような酢酸を含む反応混合物が、連続的に、反応槽1内から所定の流量で抜き取られてライン16を介して次の蒸発槽2へと導入される。

0030

蒸発槽2は、フラッシュ蒸発工程を行うためのユニットである。このフラッシュ蒸発工程は、蒸発槽2に連続的に導入される反応混合物を、部分的に蒸発させることによって蒸気と残液分とに分けるための工程である。反応混合物を加熱することなく減圧することによって蒸発を生じさせてもよいし、反応混合物を加熱しつつ減圧することによって蒸発を生じさせてもよい。フラッシュ蒸発工程において、蒸気の温度は例えば100〜260℃であり、残液分の温度は例えば80〜200℃であり、槽内圧力は例えば50〜1000kPa(絶対圧)である。また、フラッシュ蒸発工程にて分離される蒸気および残液分の割合に関しては、重量比で例えば10/90〜50/50(蒸気/残液分)である。本工程で生じる蒸気は、例えば、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、水、ヨウ化水素、メタノール、アセトアルデヒド、ジメチルエーテル、およびプロピオン酸などを含み、蒸発槽2内からライン17に連続的に抜き取られる。蒸発槽2内から抜き取られた蒸気の一部はコンデンサ2aへと連続的に導入され、当該蒸気の他の一部は粗酢酸流として次の蒸留塔3へと連続的に導入される。粗酢酸流の酢酸濃度は、例えば50〜85質量%であり、好ましくは55〜75質量%である。本工程で生ずる残液分は、反応混合物に含まれていた触媒および助触媒や、本工程では揮発せずに残存する酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、および水などを含み、連続的に蒸発槽2からライン18を介して熱交換器2bへと導入される。

0031

コンデンサ2aは、蒸発槽2からの蒸気を、冷却して部分的に凝縮させることによって、凝縮分とガス分とに分ける。凝縮分は、例えば、酢酸、メタノール、酢酸メチル、ヨウ化メチル、アセトアルデヒド、ジメチルエーテル、および水などを含み、コンデンサ2aからライン19,20を介して反応槽1へと導入され、リサイクルされる。ガス分は、例えば一酸化炭素および水素などを含み、コンデンサ2aからライン21,15を介してスクラバーシステム8へと供給される。上述の反応工程での酢酸の生成反応は発熱反応であるところ、反応混合物に蓄積する熱の一部は、フラッシュ蒸発工程において、反応混合物から生じた蒸気に移行する。この蒸気についてのコンデンサ2aでの冷却によって生じた凝縮分が反応槽1へとリサイクルされる。すなわち、酢酸製造装置Xにおいては、メタノールのカルボニル化反応で生じる熱がコンデンサ2aにて効率よく除去されることとなる。

0032

熱交換器2bは、蒸発槽2からの残液分を冷却する。降温した残液分は、連続的に熱交換器2bからライン22,20を介して反応槽1へと導入され、リサイクルされる。すなわち、酢酸製造装置Xにおいては、メタノールのカルボニル化反応で生じる熱が熱交換器2bにて効率よく除去されることとなる。

0033

蒸留塔3は、第1蒸留工程を行うためのユニットであり、本実施形態ではいわゆる脱低沸塔に位置付けられる。第1蒸留工程は、蒸留塔3に連続的に導入される蒸気を蒸留処理して蒸気中の酢酸を精製するための工程である。また、蒸留塔3は、例えば、棚段塔および充填塔などの精留塔よりなる。蒸留塔3として棚段塔を採用する場合、その理論段は例えば5〜50段であり、還流比理論段数に応じて例えば0.5〜3000である。第1蒸留工程にある蒸留塔3の内部において、塔頂圧力は例えば80〜160kPa(ゲージ圧)に設定され、塔底圧力は、塔頂圧力より高く、例えば85〜180kPa(ゲージ圧)に設定される。第1蒸留工程にある蒸留塔3の内部において、塔頂温度は、例えば、設定塔頂圧力での酢酸の沸点より低い温度であって90〜130℃に設定され、塔底温度は、例えば、設定塔底圧力での酢酸の沸点と同程度または当該沸点より高い温度であって、120〜160℃に設定される。

0034

蒸留塔3に対しては、蒸発槽2からの粗酢酸流(蒸気)が連続的に導入されるところ、そのような蒸留塔3の内頂部からは、オーバーヘッド流としての蒸気がライン23に連続的に抜き取られる。蒸留塔3の塔内底部からは、缶出液がライン24に連続的に抜き取られる。蒸留塔3における塔内頂部と塔内底部との間の高さ位置からは、側流としての第1酢酸流(液体)がライン25に連続的に抜き取られる。

0035

蒸留塔3の塔内頂部から抜き取られる蒸気は、酢酸よりも沸点の低い成分(低沸点成分)を蒸留塔3からの上記の缶出液と比較して多く含み、例えば、酢酸メチル、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、アセトアルデヒド、メタノール、ジメチルエーテル、および水などを含む。この蒸気には酢酸も含まれる。このような蒸気は、ライン23を介してコンデンサ3aへと連続的に導入される。

0036

コンデンサ3aは、蒸留塔3からの蒸気を、冷却して部分的に凝縮させることによって、凝縮分とガス分とに分ける。凝縮分は、例えば、酢酸メチル、メタノール、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、アセトアルデヒド、ジメチルエーテル、水、および酢酸などを含み、コンデンサ3aからライン26を介してデカンタ4へと連続的に導入される。デカンタ4に導入された凝縮分は水相有機相とに分液される。水相には、水と、例えば酢酸メチル、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、アセトアルデヒド、ジメチルエーテル、メタノール、および酢酸などが含まれる。有機相には、例えば、酢酸メチル、アセトアルデヒド、ジメチルエーテル、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、メタノール、および酢酸などが含まれる。本実施形態では、水相の一部はライン27を介して蒸留塔3に還流され、水相の他の一部は、ライン27,20を介して反応槽1に導入されてリサイクルされ、有機相の一部はライン28,20を介して反応槽1に導入されてリサイクルされ、有機相の他の一部はライン28を介してアセトアルデヒド除去用の図外のユニットに導入される。コンデンサ3aでの冷却によって生じた凝縮分がデカンタ4を経由してその一部が反応槽1へとリサイクルされるところ、酢酸製造装置Xにおいては、コンデンサ3aにて効率よく除熱が行われることとなる。一方、コンデンサ3aで生じるガス分は、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、メタン、酢酸、酢酸メチル、メタノール、水、アセトアルデヒド、ジメチルエーテル、ヨウ化メチル、およびヨウ化水素などを含み、コンデンサ3aからライン29,15を介してスクラバーシステム8へと供給される。スクラバーシステム8に至ったガス分中のヨウ化メチル、ヨウ化水素、および他の凝縮性ガス成分は、スクラバーシステム8にて吸収液に吸収される。また、スクラバーシステム8では、吸収液中のヨウ化水素とメタノールまたは酢酸メチルとの反応によってヨウ化メチルが生じる。そして、当該ヨウ化メチル等の有用成分を含有する液分がスクラバーシステム8からリサイクルライン(図示略)を介して反応槽1へと導入ないしリサイクルされて再利用される。

0037

蒸留塔3の塔内底部から抜き取られる缶出液は、酢酸よりも沸点の高い成分(高沸点成分)を蒸留塔3からの上記のオーバーヘッド流と比較して多く含み、例えば、プロピオン酸、無水酢酸、および、飛沫同伴の上述の触媒や助触媒を含む。この缶出液には、酢酸、ヨウ化メチル、酢酸メチル、および水なども含まれる。本実施形態では、このような缶出液の一部は、ライン24を介して蒸発槽2へと連続的に導入されてリサイクルされ、缶出液の他の一部は、ライン24,20を介して反応槽1へと連続的に導入されてリサイクルされる。

0038

蒸留塔3から側流として連続的に抜き取られる第1酢酸流は、蒸留塔3に連続的に導入される粗酢酸流よりも酢酸が富化されている。すなわち、第1酢酸流の酢酸濃度は粗酢酸流の酢酸濃度よりも高い。第1酢酸流の酢酸濃度は、粗酢酸流の酢酸濃度より高い限りにおいて例えば90〜99.9質量%である。また、第1酢酸流は、酢酸に加えて、例えば、酢酸メチル、メタノール、ヨウ化メチル、無水酢酸、水、アセトアルデヒド、ジメチルエーテル、およびヨウ化水素などを含む。本実施形態では、蒸留塔3からの第1酢酸流の抜き取り位置は、蒸留塔3の高さ方向において、蒸留塔3への粗酢酸流の導入位置よりも低い。蒸留塔3からの第1酢酸流は、所定の流量で連続的に、ライン25を介して次の蒸留塔5へと導入される。

0039

蒸留塔5は、第2蒸留工程を行うためのユニットであり、本実施形態ではいわゆる脱水塔に位置付けられる。第2蒸留工程は、蒸留塔5に連続的に導入される第1酢酸流を蒸留処理して酢酸を更に精製するための工程である。また、蒸留塔5は、例えば、棚段塔および充填塔などの精留塔よりなる。蒸留塔5として棚段塔を採用する場合、その理論段は例えば5〜50段であり、還流比は理論段数に応じて例えば0.5〜3000である。第2蒸留工程にある蒸留塔5の内部において、塔頂圧力は例えば150〜250kPa(ゲージ圧)に設定され、塔底圧力は、塔頂圧力より高く、例えば160〜290kPa(ゲージ圧)に設定される。第2蒸留工程にある蒸留塔5の内部において、塔頂温度は、例えば、設定塔頂圧力での水の沸点より高く且つ酢酸の沸点より低い温度であって130〜155℃に設定され、塔底温度は、例えば、設定塔底圧力での酢酸の沸点以上の温度であって150〜180℃に設定される。

0040

蒸留塔5に対しては、蒸留塔3からの第1酢酸流(液体)が連続的に導入されるところ、そのような蒸留塔5の塔内頂部からは、オーバーヘッド流としての蒸気がライン30に連続的に抜き取られる。蒸留塔5の塔内底部からは、缶出液がライン31に連続的に抜き取られる。蒸留塔5における塔内頂部と塔内底部との間の高さ位置からは、側流(液体または気体)がライン32に連続的に抜き取られてもよい。

0041

蒸留塔5の塔内頂部から抜き取られる蒸気は、酢酸よりも沸点の低い成分(低沸点成分)を蒸留塔5からの上記の缶出液と比較して多く含み、例えば、水、酢酸メチル、メタノール、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、ジメチルエーテル、およびアセトアルデヒドなどを含む。このような蒸気は、ライン30を介してコンデンサ5aへと連続的に導入される。

0042

コンデンサ5aは、蒸留塔5からの蒸気を、冷却して部分的に凝縮させることによって、凝縮分とガス分とに分ける。凝縮分は、例えば、水、酢酸メチル、メタノール、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、ジメチルエーテル、およびアセトアルデヒドなどを含む。凝縮分の一部は、コンデンサ5aからライン33を介して蒸留塔5へと連続的に還流される。凝縮分の他の一部は、コンデンサ5aからライン33,34を介して反応槽1へと連続的に導入され、リサイクルされる。これにより、酢酸製造装置Xにおいては、コンデンサ5aにて効率よく除熱が行われることとなる。また、コンデンサ5aで生じるガス分は、例えば、水、酢酸メチル、メタノール、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、ジメチルエーテル、およびアセトアルデヒドなどを含み、コンデンサ5aからライン35,15を介してスクラバーシステム8へと供給される。スクラバーシステム8に至ったガス分中のヨウ化メチル、ヨウ化水素、および他の凝縮性ガス成分は、スクラバーシステム8にて吸収液に吸収され、吸収液中のヨウ化水素とメタノールまたは酢酸メチルとの反応によってヨウ化メチルが生じ、そして、当該ヨウ化メチル等の有用成分を含有する液分がスクラバーシステム8からリサイクルライン(図示略)を介して反応槽1へと導入ないしリサイクルされて再利用される。

0043

蒸留塔5の塔内底部から抜き取られる缶出液は、酢酸よりも沸点の高い成分(高沸点成分)を蒸留塔5からの上記のオーバーヘッド流と比較して多く含み、例えば、プロピオン酸、無水酢酸、並びに、飛沫同伴の上述の触媒や助触媒などを含む。この缶出液には酢酸も含まれる。このような缶出液は、ライン31を介してライン32に至り、第2酢酸流をなして次の蒸留塔6に連続的に導入されることとなる。蒸留塔5からライン32に側流が連続的に抜き取られる場合、その側流と蒸留塔5からの缶出液とは合流して第2酢酸流をなし、次の蒸留塔6に連続的に導入されることとなる。

0044

第2酢酸流は、蒸留塔5に連続的に導入される第1酢酸流よりも酢酸が富化されている。すなわち、第2酢酸流の酢酸濃度は第1酢酸流の酢酸濃度よりも高い。第2酢酸流の酢酸濃度は、第1酢酸流の酢酸濃度より高い限りにおいて例えば99.1〜99.99質量%である。また、第2酢酸流は、酢酸に加えて、例えば、酢酸メチル、ヨウ化メチル、水、無水酢酸、およびヨウ化水素などを含む。本実施形態では、蒸留塔5からの側流の抜き取り位置は、蒸留塔5の高さ方向において、蒸留塔5への第1酢酸流の導入位置よりも低い。

0045

酢酸製造装置Xにおいては、蒸留塔5に導入される第1酢酸流や蒸留塔5から導出される第2酢酸流について腐食性ヨウ素の濃度を例えば100ppb以下に抑制するために、ライン25を介して蒸留塔5に導入される前の第1酢酸流に対し、ライン25に連結される補給ラインたるライン36から、メタノール、酢酸メチル、および水酸化カリウムからなる群より選択される少なくとも一つを供給ないし添加することができる。「ppb」とは「質量ppb」を意味するものとする。当該添加成分は、例えば水溶液の態様で調製される。添加量は、例えば、ライン25を通流する第1酢酸流からサンプリングされる試料組成分析に基づいて決定することができる。腐食性ヨウ素とは、反応槽1での主生成物たる酢酸などに伴って酢酸製造装置Xの上記各ユニットを通流し、強酸として作用して酢酸製造装置Xの腐食を招く成分であるところ、そのような腐食性ヨウ素の低減は、酢酸製造装置Xの腐食を抑制するうえで好ましい。また、腐食性ヨウ素とは、ヨウ化水素をなす状態にあるヨウ素、および、カウンターイオンから解離した状態にあるヨウ素(ヨウ素イオン)をいうものとし、腐食性ヨウ素濃度とは、これらヨウ素の濃度の合計をいうものとする。このような腐食性ヨウ素濃度は、定量対象の腐食性ヨウ素(ヨウ化水素のヨウ素,ヨウ素イオン)を含む液体について、滴定剤として硝酸銀水溶液を使用して行う電量滴定を行うことによって求めることができる。そのような電量滴定には、例えば自動滴定装置商品名「COM−1600」,平産業株式会社製)を使用することができる。腐食性ヨウ素濃度の一部をなすヨウ化水素濃度については、例えば、液中金属イオンの濃度に基づいて求められるヨウ素イオン濃度を腐食性ヨウ素濃度から減ずることによって求めることができる(これは、液中の金属イオンのカウンターイオンがヨウ素イオンであると仮定した場合の導出手法である)。液中の金属イオンは、原料混合物の含有成分に由来する微量の金属イオンや、装置の構成部材の腐食に由来して遊離する微量の金属イオンであって、Fe,Ni,Cr,Co,Mo,Mn,Al,Zn,Zr等である。当該金属イオン濃度は、例えばICP発光分光分析法によって同定することが可能である。

0046

第1酢酸流に対するメタノールの供給によって第1酢酸流中のヨウ化水素は減少する傾向がある。具体的には、第1酢酸流中では、メタノールが供給されると、下記の反応式(2)で示される両化学反応、即ち、メタノールとヨウ化水素からヨウ化メチルと水が生ずる反応およびその逆反応が、平衡状態に至るように、第1酢酸流中のヨウ化水素濃度が低減され得る。第1酢酸流中のヨウ化水素濃度の低減は、第1酢酸流中のヨウ素イオン濃度も低減させる傾向にある。

0047

第1酢酸流に対する酢酸メチルの供給によって第1酢酸流中のヨウ化水素は減少する傾向がある。具体的には、第1酢酸流中では、酢酸メチルが供給されると、下記の反応式(3)で示される両化学反応、即ち、酢酸メチルとヨウ化水素からヨウ化メチルと酢酸が生ずる反応およびその逆反応が、平衡状態に至るように、第1酢酸流中のヨウ化水素濃度が低減され得る。

0048

第1酢酸流に対する水酸化カリウムの供給によって第1酢酸流中のヨウ化水素は減少する傾向がある。具体的には、第1酢酸流中では、水酸化カリウムが供給されると、下記の反応式(4)で示される両化学反応、即ち、水酸化カリウムとヨウ化水素からヨウ化カリウムと水が生ずる反応およびその逆反応が、平衡状態に至るように、第1酢酸流中のヨウ化水素濃度が低減され得る。当該化学平衡は、反応式(4)での右辺側に大きく偏っている。

0049

蒸留塔5への導入前の第1酢酸流に対する以上のような添加措置は、第1酢酸流を蒸留処理する蒸留塔5内において、ヨウ化水素の存在量を低減し、例えば塔頂部でのヨウ化水素の濃縮ひいては腐食性ヨウ素の濃縮を抑制するのに資する。蒸留塔5内の腐食性ヨウ素濃度の抑制は、蒸留塔5内の腐食を抑制するうえで好適である。加えて、上記の添加措置は、蒸留塔3からの第1酢酸流に含まれるヨウ化水素の濃度を低減して蒸留塔5からの第2酢酸流の腐食性ヨウ素濃度を例えば100ppb以下に抑制するうえで、好ましい。第2酢酸流における腐食性ヨウ素濃度の抑制は、酢酸製造装置Xにおける蒸留塔5より後段にある各ユニットについて腐食を抑制するうえで好適である。

0050

酢酸製造装置Xにおいて、ライン25を介して蒸留塔5に導入されて上述のような第2蒸留工程に付される第1酢酸流は、例えば濃度90質量%以上の酢酸、無水酢酸、および水を含む。ライン25を通流する第1酢酸流(酢酸溶液)の無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より高い状態にある場合、蒸留塔5では、第1酢酸流について、水濃度の上昇および/または降温を行うことによって無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にするための措置(第1の無水酢酸低減措置)を行うことができる。無水酢酸平衡濃度とは、酢酸溶液のおかれた温度条件と圧力条件にて当該酢酸溶液中で下記の反応式(5)で示される両化学反応(無水酢酸の加水分解反応とその逆反応)が平衡状態に至ったときの、当該酢酸溶液の無水酢酸濃度をいうものとする。無水酢酸の加水分解反応、即ち、無水酢酸と水から酢酸の生ずる反応は、発熱反応である。前記の逆反応、即ち、酢酸から無水酢酸と水の生ずる反応は、吸熱反応である。

0051

第1の無水酢酸低減措置においては、酢酸濃度が90質量%以上であり且つ無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より高い状態にある酢酸溶液について、水濃度の上昇、降温、または、水濃度の上昇と降温が行われる。このような無水酢酸低減措置を経ることによって、蒸留塔5内にて、高濃度の酢酸溶液は、無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態とされる。この状態とされた酢酸溶液では、その無水酢酸濃度が無水酢酸平衡濃度に向かって低減するように無水酢酸の加水分解反応が進むこととなる。酢酸製造装置Xによって実行される酢酸製造方法において、製品酢酸を得るまでの過程で以上のような第1の無水酢酸低減措置を含むという構成は、本方法によって得られる製品酢酸の無水酢酸濃度を低減するのに適し、従って、高純度の製品酢酸を得るのに適する。

0052

ライン25を通流する第1酢酸流(酢酸溶液)の無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある場合、蒸留塔5では、第1酢酸流について、水濃度の上昇および/または降温を行うことによって無水酢酸平衡濃度を更に低くするための措置(第2の無水酢酸低減措置)を行うことができる。この第2の無水酢酸低減措置においては、酢酸濃度が90質量%以上であり且つ無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液について、水濃度の上昇、降温、または、水濃度の上昇と降温が行われる。このような無水酢酸低減措置を経ることによって、蒸留塔5内にて、高濃度の酢酸溶液は、無水酢酸平衡濃度が更に低い状態とされる。この状態とされた酢酸溶液では、その無水酢酸濃度が無水酢酸平衡濃度に向かって低減するように無水酢酸の加水分解反応が進みやすくなる。酢酸製造装置Xによって実行される酢酸製造方法において、製品酢酸を得るまでの過程で以上のような第2の無水酢酸低減措置を含むという構成は、本方法によって得られる製品酢酸の無水酢酸濃度を低減するのに適し、従って、高純度の製品酢酸を得るのに適する。

0053

ライン25を通流する第1酢酸流(酢酸溶液)の無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある場合、蒸留塔5では、第1酢酸流について、当該状態が維持される限りで、昇温、または、昇温と水濃度の上昇を行うことによって、無水酢酸の加水分解の反応速度を上昇させるための措置(第3の無水酢酸低減措置)を行うことができる。この第3の無水酢酸低減措置においては、酢酸濃度が90質量%以上であり且つ無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液について、その状態を維持しつつ、昇温、または、昇温と水濃度の上昇が行われる。酢酸溶液についての昇温や水濃度の上昇は、反応速度論上、無水酢酸の加水分解における反応速度の上昇にとって有利に作用する。このような無水酢酸低減措置を経ることによって、蒸留塔5内の高濃度の酢酸溶液においては、無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態が維持されつつ無水酢酸の加水分解の反応速度が上昇し、無水酢酸濃度が無水酢酸平衡濃度に向かって低減するように無水酢酸の加水分解反応が促進される。酢酸製造装置Xによって実行される酢酸製造方法において、製品酢酸を得るまでの過程で以上のような第3の無水酢酸低減措置を含むという構成は、本方法によって得られる製品酢酸の無水酢酸濃度を低減するのに適し、従って、高純度の製品酢酸を得るのに適する。

0054

上述の第1から第3の無水酢酸低減措置における水濃度の上昇は、蒸留塔5に導入される第1酢酸流に対し、蒸留塔5に連結されている補給ラインたるライン37から水および/またはメタノールを添加することによって行うことができる。メタノールの添加によると、当該酢酸流において、酢酸とメタノールから酢酸メチルと水が生じる反応を経て水濃度が上昇し得る。酢酸流に対するメタノールの添加は、上記反応式(2)に関して上述したようにヨウ化水素を低減し得る手段であるとともに、水濃度を上昇し得る手段、ひいては無水酢酸濃度を低減し得る手段でもある。本実施形態では、蒸留塔5の高さ方向において、水および/またはメタノールの添加位置(蒸留塔5に対するライン37の連結位置)は、第1酢酸流導入位置(蒸留塔5に対するライン25の連結位置)より低い。脱水塔たる蒸留塔5で蒸留処理されている第1酢酸流の水濃度は蒸留塔5内の下方ほど低いところ、当該添加位置が第1酢酸流導入位置より低いという構成は、第1酢酸流における水および/またはメタノールの添加による水濃度の上昇ひいては上述の無水酢酸低減措置を、効率よく行ううえで好適である。水および/またはメタノールの添加量は、例えば、ライン25を通流する第1酢酸流からサンプリングされる試料の組成分析に基づいて決定することができる。また、蒸留塔5内の第1酢酸流の水濃度の上昇は、蒸留塔5において、塔底での炊きあげを弱くすることによっても行うことができる。蒸留塔における炊きあげは、例えば、蒸留対象の溶液を加熱するためのリボイラーを使用して行うことができる。蒸留塔5の塔底での炊きあげを弱くするほど、蒸留塔5における還流量ないし還流比が低減して脱水塔たる蒸留塔5の分離効率すなわち水分離能が低下し、その結果として、塔内下方領域にある塔底液など酢酸溶液の水濃度が上昇する傾向にある。上述の第1から第3の無水酢酸低減措置によって実現される第1酢酸流(酢酸溶液)の状態において、当該酢酸溶液の水濃度は例えば7〜2500ppmである。当該酢酸溶液の水濃度は、酢酸の精製過程での水の除去に要するエネルギーを抑制して酢酸製造の効率化を図るうえでは、2500ppm以下であるのが好ましい。

0055

上述の第1および第2の無水酢酸低減措置における第1酢酸流の降温は、蒸留塔5の塔内温度を下げることによって行うことができる。例えば、蒸留塔5の塔底温度を下げることによって蒸留塔5内の第1酢酸流の降温を行うことができる。また、上述の第3の無水酢酸低減措置における第1酢酸流の昇温は、蒸留塔5の塔内温度を上げることによって行うことができる。例えば、蒸留塔5の塔底温度を上げることによって蒸留塔5内の第1酢酸流の昇温を行うことができる。上述の第1から第3の無水酢酸低減措置によって実現される第1酢酸流(酢酸溶液)の状態において、当該酢酸溶液の温度は、酢酸の融点以上であって例えば17℃以上であるところ、例えば180℃以下である。蒸留塔5の塔内温度については、塔内圧力の調節や、塔底での炊きあげの強弱の調節によって、制御することができる。

0056

上述の第1から第3の無水酢酸低減措置によって実現される第1酢酸流(酢酸溶液)の状態については、当該酢酸溶液の例えば1〜300ppmである無水酢酸濃度に応じて、好ましくは、水濃度は2000ppm以上とし且つ180℃以下とするか、水濃度は1000ppm以上とし且つ170℃以下とするか、水濃度は500ppm以上とし且つ120℃以下とするか、水濃度は200ppm以上とし且つ100℃以下とするか、水濃度は80ppm以上とし且つ60℃以下とするか、水濃度は40ppm以上とし且つ50℃以下とするか、或は、水濃度は12ppm以上とし且つ30℃以下とする。また、上述の第1から第3の無水酢酸低減措置後の第1酢酸流(酢酸溶液)の滞留時間については、例えば1秒以上であり、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、より好ましくは60分以上、より好ましくは900分以上、より好ましくは1300分以上、より好ましくは1400分以上、より好ましくは2800分以上である。無水酢酸低減措置後の第1酢酸流(酢酸溶液)の滞留時間とは、例えば、稼働中の蒸留塔5において順次に入れ替わりつつも内部に保持される総液量(例えば「m3」の単位で表される)を、蒸留塔5を通過する正味の酢酸流量(例えば「m3/h」の単位で表される)で除して求められる時間とする。第1酢酸流に対する無水酢酸低減措置における水濃度、温度、および滞留時間についての以上の構成は、蒸留塔5内の第1酢酸流(酢酸溶液)において、無水酢酸の加水分解反応を進行させて無水酢酸濃度を低減するうえで、好適である。

0057

上述の第1から第3の無水酢酸低減措置では、好ましくは、無水酢酸の加水分解を促進するための触媒を第1酢酸流(酢酸溶液)中に存在させる。第1から第3の無水酢酸低減措置では、例えば、無水酢酸の加水分解を促進する作用を示し得るブレンステッド酸、ルイス酸、または腐食金属を第1酢酸流中に存在させる。本実施形態では、利用する触媒を含む溶液を補給ラインたるライン37を介して蒸留塔5内の第1酢酸流に添加することが可能である。また、本実施形態では、無水酢酸の加水分解を促進する作用を示し得る触媒が蒸留塔5内に発生・蓄積する場合には当該触媒を利用することが可能である。酢酸製造装置Xの蒸留塔5その他の蒸留塔の内部に発生・蓄積する腐食金属としては、例えば、Fe,Ni,Cr,Mo,Mn,Li,Co,Zr,Zn,Alが挙げられる。酢酸溶液中の触媒の存在量は、好ましくは0.01〜10000ppmである。充分な触媒作用を享受するという観点からは、酢酸溶液中の触媒の存在量は、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、より好ましくは10ppm以上である。上述の第1から第3の無水酢酸低減措置において触媒を利用する場合、酢酸溶液の温度は、例えば180℃以下であり、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、より好ましくは120℃以下、より好ましくは40℃以下である。上述の第1から第3の無水酢酸低減措置において触媒を利用する場合、酢酸溶液の滞留時間は、例えば1秒以上であり、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上である。また、上述の第1から第3の無水酢酸低減措置において触媒を利用する場合、当該触媒は、酢酸製造装置Xによる酢酸精製プロセス過程で除去されるまで、酢酸流中で触媒機能を発揮し得ることとなる。

0058

酢酸製造装置Xにおける蒸留塔5から蒸留塔6までの間でライン31,32を通流する第2酢酸流は、例えば濃度90質量%以上の酢酸、無水酢酸、および水を含む。ライン31,32を通流する第2酢酸流(酢酸溶液)の無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より高い状態にある場合、ライン31,32では、第2酢酸流について、水濃度の上昇および/または降温を行うことによって無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にするための措置(第1の無水酢酸低減措置)を行うことができる。この第1の無水酢酸低減措置においては、酢酸濃度が90質量%以上であり且つ無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より高い状態にある酢酸溶液について、水濃度の上昇、降温、または、水濃度の上昇と降温が行われる。このような無水酢酸低減措置を経ることによって、ライン31,32にて、高濃度の酢酸溶液は、無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態とされる。この状態とされた酢酸溶液では、その無水酢酸濃度が無水酢酸平衡濃度に向かって低減するように無水酢酸の加水分解反応が進むこととなる。酢酸製造装置Xによって実行される酢酸製造方法において、製品酢酸を得るまでの過程で以上のような第1の無水酢酸低減措置を含むという構成は、本方法によって得られる製品酢酸の無水酢酸濃度を低減するのに適し、従って、高純度の製品酢酸を得るのに適する。

0059

ライン31,32を通流する第2酢酸流(酢酸溶液)の無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある場合、ライン31,32では、第2酢酸流について、水濃度の上昇および/または降温を行うことによって無水酢酸平衡濃度を更に低くするための措置(第2の無水酢酸低減措置)を行うことができる。この第2の無水酢酸低減措置においては、酢酸濃度が90質量%以上であり且つ無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液について、水濃度の上昇、降温、または、水濃度の上昇と降温が行われる。このような無水酢酸低減措置を経ることによって、ライン31,32にて、高濃度の酢酸溶液は、無水酢酸平衡濃度が更に低い状態とされる。この状態とされた酢酸溶液では、その無水酢酸濃度が無水酢酸平衡濃度に向かって低減するように無水酢酸の加水分解反応が進みやすくなる。酢酸製造装置Xによって実行される酢酸製造方法において、製品酢酸を得るまでの過程で以上のような第2の無水酢酸低減措置を含むという構成は、本方法によって得られる製品酢酸の無水酢酸濃度を低減するのに適し、従って、高純度の製品酢酸を得るのに適する。

0060

ライン31,32を通流する第2酢酸流(酢酸溶液)の無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある場合、ライン31,32では、第2酢酸流について、当該状態が維持される限りで、昇温、または、昇温と水濃度の上昇を行うことによって、無水酢酸の加水分解の反応速度を上昇させるための措置(第3の無水酢酸低減措置)を行うことができる。無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液では、その状態が維持される限りで無水酢酸濃度は低下する傾向にある。この第3の無水酢酸低減措置では、無水酢酸の加水分解の反応速度を上昇させて当該傾向を促進させるべく、酢酸濃度が90質量%以上であり且つ無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液について、その状態を維持しつつ、昇温、または、昇温と水濃度の上昇が行われる。酢酸溶液についての昇温や水濃度の上昇は、反応速度論上、無水酢酸の加水分解における反応速度の上昇にとって有利に作用する。このような無水酢酸低減措置を経ることによって、ライン31,32を通流する高濃度の酢酸溶液においては、無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態が維持されつつ無水酢酸の加水分解の反応速度が上昇し、無水酢酸濃度が無水酢酸平衡濃度に向かって低減するように無水酢酸の加水分解反応が促進される。酢酸製造装置Xによって実行される酢酸製造方法において、製品酢酸を得るまでの過程で以上のような第3の無水酢酸低減措置を含むという構成は、本方法によって得られる製品酢酸の無水酢酸濃度を低減するのに適し、従って、高純度の製品酢酸を得るのに適する。

0061

第2酢酸流に対する上述の第1から第3の無水酢酸低減措置での水濃度の上昇は、ライン31に連結されている補給ラインたるライン38から水を添加することによって行うことができる。水の添加量は、例えば、ライン31,32を通流する第2酢酸流からサンプリングされる試料の組成分析に基づいて決定することができる。第2酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置によって実現される第2酢酸流(酢酸溶液)の状態において、当該酢酸溶液の水濃度は例えば7〜2500ppmである。当該酢酸溶液の水濃度は、酢酸の精製過程での水の除去に要するエネルギーを抑制して酢酸製造の効率化を図るうえでは、2500ppm以下であるのが好ましい。

0062

第2酢酸流に対する上述の第1および第2の無水酢酸低減措置での降温は、ライン31,32に設けられるクーラー(図示略)またはコンデンサー(図示略)を使用して行うことができる。当該クーラーは、例えば、冷却用途に構成された熱交換器である(後記のクーラーについても同様である)。第2酢酸流に対する第3の無水酢酸低減措置での昇温は、ライン31,32に設けられるヒーター(図示略)を使用して行うことができる。当該ヒーターは、例えば、加熱用途に構成された熱交換器である(後記のヒーターについても同様である)。第2酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置によって実現される第2酢酸流(酢酸溶液)の状態において、当該酢酸溶液の温度は、酢酸の融点以上であって例えば17℃以上であるところ、例えば180℃以下である。

0063

第2酢酸流に対する上述の第1から第3の無水酢酸低減措置によって実現される第2酢酸流(酢酸溶液)の状態については、当該酢酸溶液の例えば1〜300ppmである無水酢酸濃度に応じて、好ましくは、水濃度は2000ppm以上とし且つ180℃以下とするか、水濃度は1000ppm以上とし且つ170℃以下とするか、水濃度は500ppm以上とし且つ120℃以下とするか、水濃度は200ppm以上とし且つ100℃以下とするか、水濃度は80ppm以上とし且つ60℃以下とするか、水濃度は40ppm以上とし且つ50℃以下とするか、或は、水濃度は12ppm以上とし且つ30℃以下とする。また、第2酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置後の第2酢酸流(酢酸溶液)の滞留時間については、例えば1秒以上であり、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、より好ましくは60分以上、より好ましくは900分以上、より好ましくは1300分以上、より好ましくは1400分以上、より好ましくは2800分以上である。無水酢酸低減措置後の第2酢酸流(酢酸溶液)の滞留時間とは、例えば、ライン31,32にて当該措置の行われる箇所(例えばライン38連結箇所)を酢酸溶液が通過してから蒸留塔6に導入されるまでに要する時間をいうものとする。比較的に長い滞留時間は、例えば、ライン32の途中にバッファータンクを配設することによって実現することができる。ライン32の第2酢酸流域の途中にバッファータンクが配設される場合、無水酢酸低減措置後の第2酢酸流の滞留時間には、当該タンク中に酢酸溶液が留まる時間をも含むものとする。第2酢酸流に対する無水酢酸低減措置における水濃度、温度、および滞留時間についての以上の構成は、第2酢酸流(酢酸溶液)において、無水酢酸の加水分解反応を進行させて無水酢酸濃度を低減するうえで、好適である。

0064

第2酢酸流に対する上述の第1から第3の無水酢酸低減措置では、好ましくは、無水酢酸の加水分解を促進するための触媒を第2酢酸流(酢酸溶液)中に存在させる。第2酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置では、例えば、無水酢酸の加水分解を促進する作用を示し得るブレンステッド酸、ルイス酸、または腐食金属を第2酢酸流中に存在させる。本実施形態では、利用する触媒を含む溶液を補給ラインたるライン38を介してライン31,32内の第2酢酸流に添加することが可能である。酢酸溶液中の触媒の存在量は、好ましくは0.01〜10000ppmである。充分な触媒作用を享受するという観点からは、酢酸溶液中の触媒の存在量は、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、より好ましくは10ppm以上である。第2酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置において触媒を利用する場合、酢酸溶液の温度は、例えば180℃以下であり、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、より好ましくは120℃以下、より好ましくは40℃以下である。第2酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置において触媒を利用する場合、酢酸溶液の滞留時間は、例えば1秒以上であり、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上である。また、第2酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置において触媒を利用する場合、当該触媒は、酢酸製造装置Xによる酢酸精製プロセス過程で除去されるまで、酢酸流中で触媒機能を発揮し得ることとなる。

0065

蒸留塔6は、第3蒸留工程を行うためのユニットであり、本実施形態ではいわゆる脱高沸塔に位置付けられる。第3蒸留工程は、蒸留塔6に連続的に導入される第2酢酸流を蒸留処理して酢酸を更に精製するための工程である。蒸留塔6は、例えば、棚段塔および充填塔などの精留塔よりなる。蒸留塔6として棚段塔を採用する場合、その理論段は例えば5〜50段であり、還流比は理論段数に応じて例えば0.5〜3000である。第3蒸留工程にある蒸留塔6の内部において、塔頂圧力は例えば−100〜150kPa(ゲージ圧)に設定され、塔底圧力は、塔頂圧力より高く、例えば−90〜180kPa(ゲージ圧)に設定される。第3蒸留工程にある蒸留塔6の内部において、塔頂温度は、例えば、設定塔頂圧力での水の沸点より高く且つ酢酸の沸点より低い温度であって50〜150℃に設定され、塔底温度は、例えば、設定塔底圧力での酢酸の沸点より高い温度であって70〜180℃に設定される。

0066

蒸留塔6に対しては、ライン32を介して第2酢酸流(液体)が連続的に導入されるところ、そのような蒸留塔6の塔内頂部からは、オーバーヘッド流としての蒸気がライン39に連続的に抜き取られる。蒸留塔6の塔内底部からは、缶出液がライン40に連続的に抜き取られる。蒸留塔6における塔内頂部と塔内底部との間の高さ位置からは、側流(液体または気体)がライン41に連続的に抜き取られる。蒸留塔6から側流として気体が抜き取られる場合、当該側流は、ライン41の通流過程で例えばコンデンサや冷却器を通過することで液体とされる。蒸留塔6の高さ方向において、蒸留塔6に対するライン41の連結位置は、図示されているようにライン32の連結位置より上方である構成に代えて、蒸留塔6に対するライン32の連結位置より下方であってもよいし、蒸留塔6に対するライン32の連結位置と同じであってもよい。

0067

蒸留塔6の塔内頂部から抜き取られる蒸気は、酢酸よりも沸点の低い成分(低沸点成分)を蒸留塔6からの上記の缶出液と比較して多く含み、例えば、ヨウ化水素、酢酸メチル、ヨウ化メチル、水、アセトアルデヒド、ギ酸クロトンアルデヒド等を含む。この蒸気には酢酸も含まれる。このような蒸気は、ライン39を介してコンデンサ6aへと連続的に導入される。

0068

コンデンサ6aは、蒸留塔6からの蒸気を、冷却して部分的に凝縮させることによって、凝縮分とガス分とに分ける。凝縮分は、例えば、酢酸およびヨウ化水素などを含む。凝縮分の少なくとも一部については、コンデンサ6aからライン42を介して蒸留塔6へと連続的に還流される。凝縮分の一部(留出分)については、コンデンサ6aからライン42,43を介して、蒸留塔5へと導入される前のライン25中の第1酢酸流へとリサイクルすることが可能である。また、コンデンサ6aからの留出分の一部については、スクラバーシステム8へと供給して当該システム内で吸収液として使用することが可能である。スクラバーシステム8では、当該留出分中のヨウ化水素等がガス分として分離され、ガス分が装置外に排出され、そして、有用成分を含む液分がスクラバーシステム8からリサイクルライン(図示略)を介して反応槽1へと導入ないしリサイクルされて再利用される。当該有用成分には酢酸やヨウ化メチルが含まれるところ、このヨウ化メチルには、吸収液中のヨウ化水素とメタノールまたは酢酸メチルとの反応によって生じるヨウ化メチルが含まれる。加えて、コンデンサ6aからの留出分の一部については、装置内で稼働する各種ポンプ(図示略)へと図外のラインを介して導いて当該ポンプのシール液として使用してもよい。更に加えて、コンデンサ6aからの留出分の一部については、ライン42に付設される抜き取りラインを介して、定常的に装置外へ抜き取ってもよいし、非定常的に必要時において装置外へ抜き取ってもよい。一方、コンデンサ6aで生じるガス分は、例えば一酸化炭素、水素、二酸化炭素、メタン、窒素、およびヨウ化水素などを含み、コンデンサ6aからライン44,15を介してスクラバーシステム8へと供給される。

0069

蒸留塔6の塔内底部からライン40を介して抜き取られる缶出液は、酢酸よりも沸点の高い成分(高沸点成分)を蒸留塔6からの上記のオーバーヘッド流と比較して多く含み、例えばプロピオン酸などを含む。また、蒸留塔6の塔内底部からライン40を介して抜き取られる缶出液は、酢酸製造装置Xの構成部材の内壁で生じて遊離した腐食性金属や、腐食性ヨウ素に由来するヨウ素と当該腐食性金属との化合物も含む。このような缶出液は、本実施形態では酢酸製造装置X外に排出される。これに代えて、当該缶出液の一部が装置外へ排出され、且つ、当該缶出液の他の一部がライン25にリサイクルされてもよい。

0070

蒸留塔6からライン41に連続的に抜き取られる側流は、第3酢酸流として、次のイオン交換樹脂塔7に連続的に導入されることとなる。この第3酢酸流は、蒸留塔6に連続的に導入される第2酢酸流よりも酢酸が富化されている。すなわち、第3酢酸流の酢酸濃度は第2酢酸流の酢酸濃度よりも高い。第3酢酸流の酢酸濃度は、第2酢酸流の酢酸濃度より高い限りにおいて例えば99.8〜99.999質量%である。本実施形態では、蒸留塔6からの側流の抜き取り位置は、蒸留塔6の高さ方向において、蒸留塔6への第2酢酸流の導入位置よりも高い。他の実施形態では、蒸留塔6からの側流の抜き取り位置は、蒸留塔6の高さ方向において、蒸留塔6への第2酢酸流の導入位置よりも低い。

0071

酢酸製造装置Xにおいては、蒸留塔6内の第2酢酸流の腐食性ヨウ素の濃度を抑制するために、蒸留塔6の塔頂からの留出分の一部を、蒸留塔5に導入される前の第1酢酸流にライン42,43を介してリサイクルすることができる。このような構成においては、蒸留塔6の塔頂からの留出分のうち第1酢酸流へリサイクルされる液流に含まれる腐食性ヨウ素は、蒸留塔5での第2蒸留工程および蒸留塔6での第3蒸留工程を再び経ることになる。すなわち、第1酢酸流へリサイクルされる当該液流に含まれる腐食性ヨウ素は、蒸留塔5を基点とする精製経路と蒸留塔6を基点とする精製経路とを再び経ることになる。本実施形態では、蒸留塔5を基点とする精製経路には、スクラバーシステム8においてヨウ化水素とメタノールまたは酢酸メチルとからヨウ化メチルが生ずる反応によってヨウ化水素が低減されるチャンネルや、腐食性ヨウ素に由来するヨウ素を含有する化学種がスクラバーシステム8を介して装置外に排出するチャンネルが含まれる。本実施形態では、蒸留塔6を基点とする精製経路には、スクラバーシステム8においてヨウ化水素とメタノールまたは酢酸メチルとからヨウ化メチルが生ずる反応によってヨウ化水素が低減されるチャンネルや、腐食性ヨウ素に由来するヨウ素と腐食性金属との上記化合物を蒸留塔6からライン40を介して装置外に排出するチャンネルが含まれる。また、蒸留塔5から反応槽1にリサイクルされる液流に腐食性ヨウ素が含まれる場合には、当該腐食性ヨウ素は、ヨウ化メチルに転化され得るチャンネルを伴う、蒸留塔5,6を基点とする各精製経路を、再び経る機会を得ることになる。以上のような構成は、精製系において蒸留塔5よりも後段に位置する蒸留塔6の内部にある酢酸流(第2酢酸流)においてヨウ化水素とヨウ素イオンの存在量を低減して腐食性ヨウ素濃度を抑制するうえで、好適である。

0072

酢酸製造装置Xにおける蒸留塔6からイオン交換樹脂塔7までの間でライン41を通流する第3酢酸流は、例えば濃度90質量%以上の酢酸、無水酢酸、および水を含む。ライン41を通流する第3酢酸流(酢酸溶液)の無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より高い状態にある場合、ライン41では、第3酢酸流について、水濃度の上昇および/または降温を行うことによって無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にするための措置(第1の無水酢酸低減措置)を行うことができる。この第1の無水酢酸低減措置においては、酢酸濃度が90質量%以上であり且つ無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より高い状態にある酢酸溶液について、水濃度の上昇、降温、または、水濃度の上昇と降温が行われる。このような無水酢酸低減措置を経ることによって、ライン41にて、高濃度の酢酸溶液は、無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態とされる。この状態とされた酢酸溶液では、その無水酢酸濃度が無水酢酸平衡濃度に向かって低減するように無水酢酸の加水分解反応が進むこととなる。酢酸製造装置Xによって実行される酢酸製造方法において、製品酢酸を得るまでの過程で以上のような第1の無水酢酸低減措置を含むという構成は、本方法によって得られる製品酢酸の無水酢酸濃度を低減するのに適し、従って、高純度の製品酢酸を得るのに適する。

0073

ライン41を通流する第3酢酸流(酢酸溶液)の無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある場合、ライン41では、第3酢酸流について、水濃度の上昇および/または降温を行うことによって無水酢酸平衡濃度を更に低くするための措置(第2の無水酢酸低減措置)を行うことができる。この第2の無水酢酸低減措置においては、酢酸濃度が90質量%以上であり且つ無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液について、水濃度の上昇、降温、または、水濃度の上昇と降温が行われる。このような無水酢酸低減措置を経ることによって、ライン41にて、高濃度の酢酸溶液は、無水酢酸平衡濃度が更に低い状態とされる。この状態とされた酢酸溶液では、その無水酢酸濃度が無水酢酸平衡濃度に向かって低減するように無水酢酸の加水分解反応が進みやすくなる。酢酸製造装置Xによって実行される酢酸製造方法において、製品酢酸を得るまでの過程で以上のような第2の無水酢酸低減措置を含むという構成は、本方法によって得られる製品酢酸の無水酢酸濃度を低減するのに適し、従って、高純度の製品酢酸を得るのに適する。

0074

ライン41を通流する第3酢酸流(酢酸溶液)の無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある場合、ライン41では、第3酢酸流について、当該状態が維持される限りで、昇温、または、昇温と水濃度の上昇を行うことによって無水酢酸の加水分解の反応速度を上昇させるための措置(第3の無水酢酸低減措置)を行うことができる。無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液では、その状態が維持される限りで無水酢酸濃度は低下する傾向にある。この第3の無水酢酸低減措置においては、無水酢酸の加水分解の反応速度を上昇させて当該傾向を促進させるべく、酢酸濃度が90質量%以上であり且つ無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液について、その状態を維持しつつ、昇温、または、昇温と水濃度の上昇が行われる。酢酸溶液についての昇温や水濃度の上昇は、反応速度論上、無水酢酸の加水分解における反応速度の上昇にとって有利に作用する。このような無水酢酸低減措置を経ることによって、ライン41を通流する高濃度の酢酸溶液においては、無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態が維持されつつ無水酢酸の加水分解の反応速度が上昇し、無水酢酸濃度が無水酢酸平衡濃度に向かって低減するように無水酢酸の加水分解反応が促進される。酢酸製造装置Xによって実行される酢酸製造方法において、製品酢酸を得るまでの過程で以上のような第3の無水酢酸低減措置を含むという構成は、本方法によって得られる製品酢酸の無水酢酸濃度を低減するのに適し、従って、高純度の製品酢酸を得るのに適する。

0075

第3酢酸流に対する上述の第1から第3の無水酢酸低減措置での水濃度の上昇は、ライン41に連結されている補給ラインたるライン45から水を添加することによって行うことができる。水の添加量は、例えば、ライン41を通流する第3酢酸流からサンプリングされる試料の組成分析に基づいて決定することができる。第3酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置によって実現される第3酢酸流(酢酸溶液)の状態において、当該酢酸溶液の水濃度は例えば7〜2500ppmである。当該酢酸溶液の水濃度は、酢酸の精製過程での水の除去に要するエネルギーを抑制して酢酸製造の効率化を図るうえでは、2500ppm以下であるのが好ましい。

0076

第3酢酸流に対する上述の第1および第2の無水酢酸低減措置での降温は、ライン41に設けられるクーラー(図示略)またはコンデンサー(図示略)を使用して行うことができる。第3酢酸流に対する第3の無水酢酸低減措置での昇温は、ライン41に設けられるヒーター(図示略)を使用して行うことができる。第3酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置によって実現される第3酢酸流(酢酸溶液)の状態において、当該酢酸溶液の温度は、酢酸の融点以上であって例えば17℃以上であるところ、例えば180℃以下である。

0077

第3酢酸流に対する上述の第1から第3の無水酢酸低減措置によって実現される第3酢酸流(酢酸溶液)の状態については、当該酢酸溶液の例えば1〜300ppmである無水酢酸濃度に応じて、好ましくは、水濃度は2000ppm以上とし且つ180℃以下とするか、水濃度は1000ppm以上とし且つ170℃以下とするか、水濃度は500ppm以上とし且つ120℃以下とするか、水濃度は200ppm以上とし且つ100℃以下とするか、水濃度は80ppm以上とし且つ60℃以下とするか、水濃度は40ppm以上とし且つ50℃以下とするか、或は、水濃度は12ppm以上とし且つ30℃以下とする。また、第3酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置後の第3酢酸流(酢酸溶液)の滞留時間については、例えば1秒以上であり、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、より好ましくは60分以上、より好ましくは900分以上、より好ましくは1300分以上、より好ましくは1400分以上、より好ましくは2800分以上である。無水酢酸低減措置後の第3酢酸流(酢酸溶液)の滞留時間とは、例えば、ライン41にて当該措置の行われる箇所(例えばライン45連結箇所)を酢酸溶液が通過してからイオン交換樹脂塔7に導入されるまでに要する時間をいうものとする。比較的に長い滞留時間は、例えば、ライン41の途中にバッファータンクを配設することによって実現することができる。ライン41の第3酢酸流域の途中にバッファータンクが配設される場合、無水酢酸低減措置後の第3酢酸流の滞留時間には、当該タンク中に酢酸溶液が留まる時間をも含むものとする。第3酢酸流に対する無水酢酸低減措置における水濃度、温度、および滞留時間についての以上の構成は、第3酢酸流(酢酸溶液)において、無水酢酸の加水分解反応を進行させて無水酢酸濃度を低減するうえで、好適である。

0078

第3酢酸流に対する上述の第1から第3の無水酢酸低減措置では、好ましくは、無水酢酸の加水分解を促進するための触媒を第3酢酸流(酢酸溶液)中に存在させる。第3酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置では、例えば、無水酢酸の加水分解を促進する作用を示し得るブレンステッド酸、ルイス酸、または腐食金属を第3酢酸流中に存在させる。本実施形態では、利用する触媒を含む溶液を補給ラインたるライン45を介してライン41内の第3酢酸流に添加することが可能である。酢酸溶液中の触媒の存在量は、好ましくは0.01〜10000ppmである。充分な触媒作用を享受するという観点からは、酢酸溶液中の触媒の存在量は、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、より好ましくは10ppm以上である。第3酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置において触媒を利用する場合、酢酸溶液の温度は、例えば180℃以下であり、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、より好ましくは120℃以下、より好ましくは40℃以下である。第3酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置において触媒を利用する場合、酢酸溶液の滞留時間は、例えば1秒以上であり、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上である。また、第3酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置において触媒を利用する場合、当該触媒は、酢酸製造装置Xによる酢酸精製プロセス過程で除去されるまで、酢酸流中で触媒機能を発揮し得ることとなる。

0079

イオン交換樹脂塔7は、吸着除去工程を行うためのユニットである。この吸着除去工程は、イオン交換樹脂塔7に連続的に導入される第3酢酸流に含まれる主にヨウ化アルキル(ヨウ化ヘキシルなど)を吸着除去して酢酸を更に精製するための工程である。イオン交換樹脂塔7においては、ヨウ化アルキルに対する吸着能を有するイオン交換樹脂が塔内に充填されてイオン交換樹脂床をなす。そのようなイオン交換樹脂としては、例えば、交換基たるスルホン酸基カルボキシル基ホスホン酸基等における脱離性プロトンの一部が銀や銅などの金属で置換された陽イオン交換樹脂を挙げることができる。吸着除去工程では、例えばこのようなイオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂塔7の内部を第3酢酸流(液体)が通流し、その通流過程において、第3酢酸流中のヨウ化アルキル等の不純物がイオン交換樹脂に吸着されて第3酢酸流から除去される。吸着除去工程にあるイオン交換樹脂塔7において、内部温度は例えば18〜100℃であり、酢酸流の通液速度は例えば3〜15床容積/hである。

0080

イオン交換樹脂塔7に対しては、蒸留塔6からの第3酢酸流(液体)が連続的に導入されるところ、そのようなイオン交換樹脂塔7の下端部からライン46へと第4酢酸流が連続的に導出される。第4酢酸流の酢酸濃度は第3酢酸流の酢酸濃度よりも高い。すなわち、第4酢酸流は、イオン交換樹脂塔7に連続的に導入される第3酢酸流よりも酢酸が富化されている。第4酢酸流の酢酸濃度は、第3酢酸流の酢酸濃度より高い限りにおいて例えば99.9〜99.999質量%またはそれ以上である。本製造方法においては、この第4酢酸流を図外の製品タンクに貯留することができる。

0081

酢酸製造装置Xにおいては、イオン交換樹脂塔7から取り出される第4酢酸流について更に蒸留処理を行うためのユニットとして、追加の蒸留塔が設けられてもよい。そのような蒸留塔が設けられる場合、当該蒸留塔は、例えば、棚段塔および充填塔などの精留塔よりなる。当該蒸留塔として棚段塔を採用する場合、その理論段は例えば5〜50段であり、還流比は理論段数に応じて例えば0.5〜3000である。蒸留処理を実行中の当該蒸留塔の内部において、塔頂圧力は例えば−195〜150kPa(ゲージ圧)に設定され、塔底圧力は、塔頂圧力より高く、例えば−190〜180kPa(ゲージ圧)に設定される。蒸留処理を実行中の当該蒸留塔の内部において、塔頂温度は、例えば、設定塔頂圧力での水の沸点より高く且つ酢酸の沸点より低い温度であって50〜150℃に設定され、塔底温度は、例えば、設定塔底圧力での酢酸の沸点より高い温度であって70〜180℃に設定される。このような蒸留塔においては、例えば次のようにして、イオン交換樹脂塔7からの第4酢酸流に対する処理を実行することができる。

0082

イオン交換樹脂塔7より後段の上記追加の蒸留塔に対し、イオン交換樹脂塔7からの第4酢酸流がライン46を介して連続的に導入される。当該蒸留塔の塔内頂部からは、微量の低沸点成分を含むオーバーヘッド流としての蒸気が連続的に抜き取られる。この蒸気は、所定のコンデンサにて凝縮分とガス分とに分けられる。凝縮分の一部は当該蒸留塔へと連続的に還流され、凝縮分の他の一部は反応槽1へとリサイクルされ、ガス分はスクラバーシステム8へと供給される。当該蒸留塔の塔内底部からは、微量の高沸点成分を含む缶出液が連続的に抜き取られ、この缶出液は、例えば蒸留塔6へ導入される前のライン32中の第2酢酸流へとリサイクルされる。蒸留塔における塔内頂部と塔内底部との間の高さ位置からは、側流(液体)が第5酢酸流として連続的に抜き取られる。第5酢酸流は、当該追加蒸留塔に連続的に導入される第4酢酸流よりも酢酸が富化されている。本製造方法においては、このような第5酢酸流を図外の製品タンクに貯留することもできる。

0083

イオン交換樹脂塔7からライン46を介して上記追加の蒸留塔に導入されることとなる第4酢酸流は、例えば濃度90質量%以上の酢酸、無水酢酸、および水を含む。そのような第4酢酸流(酢酸溶液)の無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より高い状態にある場合、当該ライン46における追加蒸留塔の上流側では、第4酢酸流について、水濃度の上昇および/または降温を行うことによって無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にするための措置(第1の無水酢酸低減措置)を行うことができる。この第1の無水酢酸低減措置においては、酢酸濃度が90質量%以上であり且つ無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より高い状態にある酢酸溶液について、水濃度の上昇、降温、または、水濃度の上昇と降温が行われる。このような無水酢酸低減措置を経ることによって、ライン46における追加蒸留塔の上流側にて、高濃度の酢酸溶液は、無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態とされる。この状態とされた酢酸溶液では、その無水酢酸濃度が無水酢酸平衡濃度に向かって低減するように無水酢酸の加水分解反応が進むこととなる。酢酸製造装置Xによって実行される酢酸製造方法において、製品酢酸を得るまでの過程で以上のような第1の無水酢酸低減措置を含むという構成は、本方法によって得られる製品酢酸の無水酢酸濃度を低減するのに適し、従って、高純度の製品酢酸を得るのに適する。

0084

イオン交換樹脂塔7からライン46を介して上記追加の蒸留塔に導入されることとなる第4酢酸流(酢酸溶液)の無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある場合、当該ライン46における追加蒸留塔の上流側では、第4酢酸流について、水濃度の上昇および/または降温を行うことによって無水酢酸平衡濃度を更に低くするための措置(第2の無水酢酸低減措置)を行うことができる。この第2の無水酢酸低減措置においては、酢酸濃度が90質量%以上であり且つ無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液について、水濃度の上昇、降温、または、水濃度の上昇と降温が行われる。このような無水酢酸低減措置を経ることによって、ライン46における追加蒸留塔の上流側にて、高濃度の酢酸溶液は、無水酢酸平衡濃度が更に低い状態とされる。この状態とされた酢酸溶液では、その無水酢酸濃度が無水酢酸平衡濃度に向かって低減するように無水酢酸の加水分解反応が進みやすくなる。酢酸製造装置Xによって実行される酢酸製造方法において、製品酢酸を得るまでの過程で以上のような第2の無水酢酸低減措置を含むという構成は、本方法によって得られる製品酢酸の無水酢酸濃度を低減するのに適し、従って、高純度の製品酢酸を得るのに適する。

0085

イオン交換樹脂塔7からライン46を介して上記追加の蒸留塔に導入されることとなる第4酢酸流(酢酸溶液)の無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある場合、当該ライン46における追加蒸留塔の上流側では、第4酢酸流について、当該状態が維持される限りで、昇温、または、昇温と水濃度の上昇を行うことによって、無水酢酸の加水分解の反応速度を上昇させるための措置(第3の無水酢酸低減措置)を行うことができる。無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液では、その状態が維持される限りで無水酢酸濃度は低下する傾向にある。この第3の無水酢酸低減措置においては、無水酢酸の加水分解の反応速度を上昇させて当該傾向を促進させるべく、酢酸濃度が90質量%以上であり且つ無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液について、その状態を維持しつつ、昇温、または、昇温と水濃度の上昇が行われる。酢酸溶液についての昇温や水濃度の上昇は、反応速度論上、無水酢酸の加水分解における反応速度の上昇にとって有利に作用する。このような無水酢酸低減措置を経ることによって、当該ライン46における追加蒸留塔の上流側の高濃度の酢酸溶液においては、無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態が維持されつつ無水酢酸の加水分解の反応速度が上昇し、無水酢酸濃度が無水酢酸平衡濃度に向かって低減するように無水酢酸の加水分解反応が促進される。酢酸製造装置Xによって実行される酢酸製造方法において、製品酢酸を得るまでの過程で以上のような第3の無水酢酸低減措置を含むという構成は、本方法によって得られる製品酢酸の無水酢酸濃度を低減するのに適し、従って、高純度の製品酢酸を得るのに適する。

0086

イオン交換樹脂塔7から追加蒸留塔までの間における第4酢酸流に対する上述の第1から第3の無水酢酸低減措置での水濃度の上昇は、ライン46において追加蒸留塔の上流側に連結されている所定の補給ラインを介して第4酢酸流に水を添加することによって行うことができる。第4酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置によって実現される第4酢酸流(酢酸溶液)の状態において、当該酢酸溶液の水濃度は例えば7〜2500ppmである。当該酢酸溶液の水濃度は、酢酸の精製過程での水の除去に要するエネルギーを抑制して酢酸製造の効率化を図るうえでは、2500ppm以下であるのが好ましい。

0087

第4酢酸流に対する上述の第1および第2の無水酢酸低減措置での降温は、ライン46に設けられるクーラー(図示略)を使用して行うことができる。第4酢酸流に対する第3の無水酢酸低減措置での昇温は、ライン46に設けられるヒーター(図示略)を使用して行うことができる。第4酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置によって実現される第4酢酸流(酢酸溶液)の状態において、当該酢酸溶液の温度は、酢酸の融点以上であって例えば17℃以上であるところ、例えば180℃以下である。

0088

第4酢酸流に対する上述の第1から第3の無水酢酸低減措置によって実現される第4酢酸流(酢酸溶液)の状態については、当該酢酸溶液の例えば1〜300ppmである無水酢酸濃度に応じて、好ましくは、水濃度は2000ppm以上とし且つ180℃以下とするか、水濃度は1000ppm以上とし且つ170℃以下とするか、水濃度は500ppm以上とし且つ120℃以下とするか、水濃度は200ppm以上とし且つ100℃以下とするか、水濃度は80ppm以上とし且つ60℃以下とするか、水濃度は40ppm以上とし且つ50℃以下とするか、或は、水濃度は12ppm以上とし且つ30℃以下とする。また、第4酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置後の第4酢酸流(酢酸溶液)の滞留時間については、例えば1秒以上であり、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、より好ましくは60分以上、より好ましくは900分以上、より好ましくは1300分以上、より好ましくは1400分以上、より好ましくは2800分以上である。無水酢酸低減措置後の第4酢酸流(酢酸溶液)の滞留時間とは、例えば、ライン46にて当該措置の行われる箇所を酢酸溶液が通過してから追加蒸留塔に導入されるまでに要する時間をいうものとする。比較的に長い滞留時間は、例えば、ライン46の途中にバッファータンクを配設することによって実現することができる。ライン46の第4酢酸流域の途中にバッファータンクが配設される場合、無水酢酸低減措置後の第4酢酸流の滞留時間には、当該タンク中に酢酸溶液が留まる時間をも含むものとする。第4酢酸流に対する無水酢酸低減措置における水濃度、温度、および滞留時間についての以上の構成は、第4酢酸流(酢酸溶液)において、無水酢酸の加水分解反応を進行させて無水酢酸濃度を低減するうえで、好適である。

0089

イオン交換樹脂塔7から追加蒸留塔までの間における第4酢酸流に対する上述の第1から第3の無水酢酸低減措置では、好ましくは、無水酢酸の加水分解を促進するための触媒を第4酢酸流(酢酸溶液)中に存在させる。当該第1から第3の無水酢酸低減措置では、例えば、無水酢酸の加水分解を促進する作用を示し得るブレンステッド酸、ルイス酸、腐食金属、イオン交換樹脂、またはスルホン酸類を第4酢酸流中に存在させる。スルホン酸類としては、RSO3H(Rはアルキル基)等およびその塩が挙げられる。本実施形態では、第4酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置の水添加に関して上述した補給ラインを介して、利用する触媒を含む溶液をライン46内の第4酢酸流に添加することが可能である。また、本実施形態では、イオン交換樹脂塔7内のイオン交換樹脂材料における交換基をなすスルホン酸類等を含むイオン交換樹脂片がイオン交換樹脂塔7から第4酢酸流とともにライン46に流れ出る場合には、スルホン酸類等を含む当該イオン交換樹脂片を触媒として利用することもできる。酢酸溶液中の触媒の存在量は、好ましくは0.01〜10000ppmである。充分な触媒作用を享受するという観点からは、酢酸溶液中の触媒の存在量は、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、より好ましくは10ppm以上である。イオン交換樹脂塔7から追加蒸留塔までの間における第4酢酸流に対する上述の第1から第3の無水酢酸低減措置にて触媒を利用する場合、酢酸溶液の温度は、例えば180℃以下であり、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、より好ましくは120℃以下、より好ましくは40℃以下である。第4酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置において触媒を利用する場合、酢酸溶液の滞留時間は、例えば1秒以上であり、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上である。また、第4酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置において触媒を利用する場合、当該触媒は、酢酸製造装置Xによる酢酸精製プロセス過程で除去されるまで、酢酸流中で触媒機能を発揮し得ることとなる。

0090

上述のように、酢酸製造装置Xにおいては、イオン交換樹脂塔7から、或は当該イオン交換樹脂塔7より後段の追加蒸留塔から、図外の製品タンクに所定の酢酸流を貯留することができるところ、製品タンクに導入されることとなる酢酸流は、例えば濃度90質量%以上の酢酸、無水酢酸、および水を含む。そのような酢酸流(酢酸溶液)の無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より高い状態にある場合、製品タンク導入ラインを通流する酢酸流(酢酸溶液)について、水濃度の上昇および/または降温を行うことによって無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にするための措置(第1の無水酢酸低減措置)を行うことができる。この第1の無水酢酸低減措置においては、酢酸濃度が90質量%以上であり且つ無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より高い状態にある酢酸溶液について、水濃度の上昇、降温、または、水濃度の上昇と降温が行われる。このような無水酢酸低減措置を経ることによって、製品タンク導入ラインを通流する酢酸溶液は、無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態とされる。この状態とされた酢酸溶液では、その無水酢酸濃度が無水酢酸平衡濃度に向かって低減するように無水酢酸の加水分解反応が進むこととなる。酢酸製造装置Xによって実行される酢酸製造方法において、製品酢酸を得るまでの過程で以上のような第1の無水酢酸低減措置を含むという構成は、本方法によって得られる製品酢酸の無水酢酸濃度を低減するのに適し、従って、高純度の製品酢酸を得るのに適する。

0091

製品タンクに導入されることとなる酢酸流(酢酸溶液)の無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある場合、製品タンク導入ラインを通流する酢酸溶液について、水濃度の上昇および/または降温を行うことによって無水酢酸平衡濃度を更に低くするための措置(第2の無水酢酸低減措置)を行うことができる。この第2の無水酢酸低減措置においては、酢酸濃度が90質量%以上であり且つ無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液について、水濃度の上昇、降温、または、水濃度の上昇と降温が行われる。このような無水酢酸低減措置を経ることによって、製品タンク導入ラインを通流する高濃度の酢酸溶液は、無水酢酸平衡濃度が更に低い状態とされる。この状態とされた酢酸溶液では、その無水酢酸濃度が無水酢酸平衡濃度に向かって低減するように無水酢酸の加水分解反応が進みやすくなる。酢酸製造装置Xによって実行される酢酸製造方法において、製品酢酸を得るまでの過程で以上のような第2の無水酢酸低減措置を含むという構成は、本方法によって得られる製品酢酸の無水酢酸濃度を低減するのに適し、従って、高純度の製品酢酸を得るのに適する。

0092

製品タンクに導入されることとなる酢酸流(酢酸溶液)の無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある場合、製品タンク導入ラインを通流する酢酸溶液について、当該状態が維持される限りで、昇温、または、昇温と水濃度の上昇を行うことによって、無水酢酸の加水分解の反応速度を上昇させるための措置(第3の無水酢酸低減措置)を行うことができる。この第3の無水酢酸低減措置においては、酢酸濃度が90質量%以上であり且つ無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液について、その状態を維持しつつ、昇温、または、昇温と水濃度の上昇が行われる。酢酸溶液についての昇温や水濃度の上昇は、反応速度論上、無水酢酸の加水分解における反応速度の上昇にとって有利に作用する。このような無水酢酸低減措置を経ることによって、製品タンク導入ラインを通流する高濃度の酢酸溶液においては、無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態が維持されつつ無水酢酸の加水分解の反応速度が上昇し、無水酢酸濃度が無水酢酸平衡濃度に向かって低減するように無水酢酸の加水分解反応が促進される。酢酸製造装置Xによって実行される酢酸製造方法において、製品酢酸を得るまでの過程で以上のような第3の無水酢酸低減措置を含むという構成は、本方法によって得られる製品酢酸の無水酢酸濃度を低減するのに適し、従って、高純度の製品酢酸を得るのに適する。

0093

製品タンク導入ラインを通流する酢酸流に対する上述の第1から第3の無水酢酸低減措置での水濃度の上昇は、所定の補給ラインを介して製品タンク導入ラインを通流する酢酸流に水を添加することによって行うことができる。水の添加量は、例えば、製品タンク導入ラインを通流する酢酸流からサンプリングされる試料の組成分析に基づいて決定することができる。製品タンク導入ライン中の酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置によって実現される酢酸流(酢酸溶液)の状態において、当該酢酸溶液の水濃度は、例えば7〜3000ppmであり、好ましくは50〜2000ppm、より好ましくは100〜1500ppm、より好ましくは200〜1000ppmである。

0094

製品タンク導入ラインを通流する酢酸流に対する上述の第1および第2の無水酢酸低減措置での酢酸流の降温は、製品タンク導入ラインに設けられるクーラーまたはコンデンサーを使用して行うことができる。製品タンク導入ライン中の酢酸流に対する上述の第3の無水酢酸低減措置での酢酸流の昇温は、製品タンク導入ラインに設けられるヒーターを使用して行うことができる。製品タンク導入ライン中の酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置によって実現される酢酸流(酢酸溶液)の状態において、当該酢酸溶液の温度は、酢酸の融点以上であって例えば17℃以上であるところ、例えば180℃以下である。

0095

製品タンク導入ライン中の酢酸流に対する上述の第1から第3の無水酢酸低減措置によって実現される当該酢酸流(酢酸溶液)の状態については、当該酢酸溶液の例えば1〜300ppmである無水酢酸濃度に応じて、好ましくは、水濃度は2000ppm以上とし且つ180℃以下とするか、水濃度は1000ppm以上とし且つ170℃以下とするか、水濃度は500ppm以上とし且つ120℃以下とするか、水濃度は200ppm以上とし且つ100℃以下とするか、水濃度は80ppm以上とし且つ60℃以下とするか、水濃度は40ppm以上とし且つ50℃以下とするか、或は、水濃度は12ppm以上とし且つ30℃以下とする。また、製品タンク導入ライン中の酢酸流に対する第1から第3の無水酢酸低減措置後の酢酸流(酢酸溶液)の滞留時間については、例えば1秒以上であり、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、より好ましくは60分以上、より好ましくは900分以上、より好ましくは1300分以上、より好ましくは1400分以上、より好ましくは2800分以上である。イオン交換樹脂塔7より後段の追加蒸留塔から製品タンクまでの間における上述の第1から第3の無水酢酸低減措置後の酢酸流の滞留時間とは、例えば、製品タンク導入ラインにて当該措置の行われる補給ライン連結箇所を酢酸溶液が通過してから、製品酢酸として酢酸溶液が製品タンクより取り出されるまでの時間をいうものとし、製品タンク内に酢酸溶液が貯留され続ける時間を含む。これらの構成は、製品酢酸として製品タンクから取り出される酢酸溶液において、無水酢酸の加水分解反応を進行させて無水酢酸濃度を低減するうえで、好適である。

0096

本酢酸製造方法によると、以上のような酢酸製造装置Xにおいて、蒸留塔3,5での精製に加え、蒸留塔6とイオン交換樹脂塔7での精製、または、蒸留塔6とイオン交換樹脂塔7と追加蒸留塔での精製を含む、複数の精製工程が、反応槽1で生成する酢酸について連続的に実行される。このような酢酸製造方法は、得られる製品酢酸において高い純度を実現するのに好適である。また、酢酸製造装置X内を通流する酢酸流の無水酢酸濃度は、酢酸流のおかれる温度条件および圧力条件ならびに酢酸流の組成に応じて変動し得るところ、本方法では、蒸留塔3や蒸留塔5を経て比較的に精製の程度が進んだ酢酸流ないし酢酸溶液について上述の第1、第2、または第3の無水酢酸低減措置が行われる。このような構成は、得られる製品酢酸の無水酢酸濃度を低減するのに適し、従って、高純度の製品酢酸を得るのに適する。以上のように、本酢酸製造方法は、高純度の製品酢酸を得るのに適するのである。

0097

以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

0098

〔実施例1〜24〕
表1〜4における実施例1〜24に係る試験前の各欄に示す組成で、実施例1〜24に係る酢酸溶液500mlをそれぞれ調製した。実施例8,21〜24に係る酢酸溶液は、製品酢酸相当の組成を有する。実施例14〜17に係る酢酸溶液は、製品酢酸相当の組成の酢酸溶液に陽イオン交換樹脂たるアンバーリストオルガノ株式会社製)を添加して調製したものである。そして、各実施例に係る酢酸溶液について、反応試験を行った。各実施例に係る酢酸溶液の反応試験における温度条件、圧力条件、および保持時間は、表1〜4に示すとおりである(圧力については、「大気圧」と表すか、或はkPa(ゲージ圧)を単位とする数値で表す)。実施例1〜4の酢酸溶液については、500mlのフラスコ内で、窒素雰囲気下かつ全還流条件下での反応試験を行った。実施例5,6,19,20の酢酸溶液については、オートクレーブ装置の500mlの耐圧容器内で、窒素雰囲気下かつ密閉条件下での反応試験を行った。実施例7〜18,21〜24の酢酸溶液については、500mlのフラスコ内で、窒素雰囲気下かつ密閉条件下での反応試験を行った。反応試験を経た酢酸溶液は、保持時間の終了時(実施例1〜4,7〜18,21〜24)から、又は保持時間終了後のオートクレーブ装置の放圧終了時(実施例5,6,19,20)から、10秒程度でガラス製コンデンサを通過させることによって20℃まで冷却した。冷却後、酢酸溶液について組成分析を行った。これら実施例に関する組成分析の結果を、表1(実施例1〜7)、表2(実施例8〜14)、表3(実施例15〜21)、および表4(実施例22〜24)における試験後の欄に示す。

0099

〔比較例1〜9〕
表4,5における比較例1〜9に係る試験前の各欄に示す組成で、比較例1〜9に係る酢酸溶液500mlをそれぞれ調製した。そして、各比較例に係る酢酸溶液について、反応試験を行った。各比較例に係る酢酸溶液の反応試験における温度条件、圧力条件、および保持時間は、表4,5に示すとおりである(圧力については、「大気圧」と表すか、或はkPa(ゲージ圧)を単位とする数値で表す)。比較例1〜4,7〜9の酢酸溶液については、500mlのフラスコ内で、窒素雰囲気下かつ全還流条件下での反応試験を行った。比較例5,6の酢酸溶液については、オートクレーブ装置の500mlの耐圧容器内で、窒素雰囲気下かつ密閉条件下での反応試験を行った。反応試験を経た酢酸溶液は、保持時間の終了時(比較例1〜4,7〜9)から、又は保持時間終了後のオートクレーブ装置の放圧終了時(比較例5,6)から、10秒程度でガラス製コンデンサを通過させることによって20℃まで冷却した。冷却後、酢酸溶液について組成分析を行った。組成分析の結果を、表4(比較例1〜3)および表5(比較例4〜9)における試験後の欄に示す。

0100

[評価]

0101

実施例1〜24のそれぞれにおける試験前後の組成の比較において、試験後では無水酢酸濃度が低減していることから、実施例1〜24の試験前組成の各酢酸溶液は、それぞれの温度条件および圧力条件の下では、無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度260ppm(実施例1〜17,19,20)または無水酢酸濃度110ppm(実施例18,21〜24)より低い状態にあることが分かる。

0102

例えば実施例1〜3の試験前組成の各酢酸溶液は、118℃かつ大気圧の条件下では、無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度260ppmより低い状態にあることが分かる。そして、試験前組成における水濃度と無水酢酸濃度を同じくするこれら実施例1〜3の比較から、反応試験における保持時間が長いほど、試験後の無水酢酸濃度は低減することが分かる。

0103

実施例3,4の比較においては、試験前組成における水濃度が高い方ほど、無水酢酸濃度が低減する傾向にあることが分かる。また、実施例4〜6の比較においては、反応試験の温度が低いほど、無水酢酸濃度が低減する傾向にあることが分かる。

0104

実施例7,8における試験前組成は、表1,2に示すように、水濃度と無水酢酸濃度を同じくするものの、プロピオン酸、酢酸メチル、ギ酸、ヨウ化水素、ヨウ素イオン、ヨウ化メチル、ヨウ化ヘキシル、およびカリウム分の濃度が有意に異なる。実施例7,8の反応試験の温度条件(40℃)、圧力条件(大気圧)、および保持時間(240分)は同じである。これら実施例7,8の比較から、40℃かつ大気圧の条件下では、実施例7,8の試験前組成の各酢酸溶液の間の組成ないし濃度の差異は、無水酢酸の加水分解の反応速度に有意な影響を与えないと理解できる。

0105

実施例9,10の比較においては、試験前組成における水濃度が高い方ほど、無水酢酸濃度が低減する傾向にあることが分かる。また、これら実施例9,10と実施例7,8との比較からは、反応試験の温度が40℃と比較的に低い場合であっても、当該反応試験において充分な長さの保持時間を確保することによって、無水酢酸濃度を有意に低減可能であることが分かる。

0106

実施例11,12の比較においては、無水酢酸の加水分解反応を促進する金属ないし腐食金属(Fe,Ni,Cr,Mo,Mn,Li)の濃度が高い方ほど、無水酢酸濃度が低減する傾向にあることが分かる。また、実施例13〜17の比較においては、無水酢酸の加水分解反応を促進する陽イオン交換樹脂(アンバーリスト)の濃度が高い方ほど、無水酢酸濃度が低減する傾向にあることが分かる。

0107

実施例18,21,22の結果から、反応試験の温度が28℃(実施例18)または17℃(実施例21,22)と比較的に低く且つ試験前の水濃度が12ppmと比較的に低い場合であっても、当該反応試験において充分な長さの保持時間を確保することによって、無水酢酸濃度を有意に低減可能であることが分かる。反応試験の保持時間が1300分である場合、反応試験の温度がより高温の実施例18の方が、実施例21よりも、無水酢酸濃度の低減の程度が大きい。反応試験の温度が17℃である場合、反応試験の保持時間のより長い実施例22の方が、実施例21よりも、無水酢酸濃度の低減の程度が大きい。これら実施例18,21,22の結果は、反応試験の温度が17℃である場合には、温度条件が28℃である場合よりも、無水酢酸の加水分解反応の進行は遅いものの、無水酢酸平衡濃度は低いことを示差するものである。

0108

実施例19と実施例5との比較においては、反応試験の圧力条件は無水酢酸濃度の低減の程度に有意な影響を与えないことが分かる。また、実施例20の結果から、反応試験の温度が170℃と比較的に高温であっても、試験前の水濃度が充分に高い場合には無水酢酸濃度は低減し得ることが分かる。

0109

実施例23の結果から、反応試験の温度が50℃と比較的に高い場合であっても、試験前組成において無水酢酸濃度110ppmに対して水濃度が少なくとも40ppmであれば、無水酢酸濃度を有意に低減可能であることが分かる。実施例24の結果から、反応試験の温度が60℃と比較的に高い場合であっても、試験前組成において無水酢酸濃度110ppmに対して水濃度が少なくとも80ppmであれば、無水酢酸濃度を有意に低減可能であることが分かる。これら実施例23,24については、反応試験の保持時間が60分(実施例23)または30分(実施例24)を超えても無水酢酸濃度および水濃度が変動しなかったことを確認している。したがって、実施例23,24の試験後組成の各酢酸溶液では、無水酢酸濃度が無水酢酸平衡濃度に至っているものと評価できる。また、水濃度が12ppmであること以外は実施例23と同様の試験前組成の酢酸溶液について、実施例23と同一の温度条件と圧力条件の下では無水酢酸濃度が110ppmから上昇することを確認している。水濃度が12ppmであること以外は実施例24と同様の試験前組成の酢酸溶液について、実施例24と同一の温度条件と圧力条件の下では無水酢酸濃度が110ppmから上昇することを確認している。

0110

一方、比較例1〜9のそれぞれにおける試験前後の組成の比較においては、無水酢酸濃度が増大していることから、比較例1〜9の試験前組成の各酢酸溶液は、それぞれの温度条件および圧力条件の下では、無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度10ppm(比較例1,7〜9)または無水酢酸濃度260ppm(比較例2〜6)より高い状態にあることが分かる。

0111

例えば比較例1と比較例7〜9の試験前組成の各酢酸溶液は、118℃かつ大気圧の条件下では、無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度10ppmより高い状態にあることが分かる。そして、試験前組成における水濃度(500ppm)と無水酢酸濃度(10ppm)を同じくする比較例1と比較例7〜9との比較から、酢酸溶液中に触媒成分を含まない場合(比較例1)の方が酢酸溶液中に触媒成分(Fe,Ni,Cr,Mo,Mn,Li,アンバーリスト)を含む場合(比較例7〜9)よりも、無水酢酸濃度の増大は抑制されることが分かる。

0112

試験前組成における水濃度と無水酢酸濃度を同じくする比較例2,3の比較から、反応試験の保持時間が1分である場合(比較例2)よりも長い30分である場合(比較例3)の方が、無水酢酸濃度は増大することが分かる。反応試験の温度条件、圧力条件、および保持時間ならびに試験前組成の無水酢酸濃度を同じくする比較例3,4の比較から、反応試験開始時の水濃度が100pmである場合(比較例3)よりも低い50ppmである場合(比較例4)の方が、無水酢酸濃度は増大することが分かる。また、試験前組成における水濃度と無水酢酸濃度ならびに反応試験の保持時間を同じくする比較例3,5,6の比較からは、反応試験がより高温で行われるほど、無水酢酸濃度は増大する傾向にあることが分かる。

0113

実施例3と比較例1における試験前組成は、表1,4に示すように、無水酢酸濃度のみが異なる。実施例3と比較例1の反応試験の温度条件(118℃)、圧力条件(大気圧)、および保持時間(30分)は同じである。実施例3における試験前後の組成の比較において、無水酢酸濃度が低減していることから、実施例3の試験前組成の酢酸溶液は、118℃かつ大気圧の条件下では、無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度260ppmより低い状態にあることが分かる。これに対し、比較例1における試験前後の組成の比較において、無水酢酸濃度が増大していることから、比較例1の試験前組成の酢酸溶液は、118℃かつ大気圧の条件下では、無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度10ppmより高い状態にあることが分かる。これら実施例3と比較例1の結果は、酢酸溶液の無水酢酸濃度が比較的に高い場合には高温での保持ないし滞留が有効に作用して無水酢酸濃度は低減する傾向にあるものの、高温滞留後に更に低温領域で触媒の作用を利用しつつ又は利用せずに一定時間保持して無水酢酸濃度を低減させた後に当該酢酸溶液について昇温すると、無水酢酸濃度が増大してしまう場合があることを示唆するものである。

0114

0115

0116

0117

0118

0119

以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列記する。

実施例

0120

〔付記1〕濃度90質量%以上の酢酸と、無水酢酸と、水とを少なくとも含んで無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より高い状態にある酢酸溶液について、水濃度の上昇および/または降温を行うことによって無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にするための無水酢酸低減措置を含む、酢酸製造方法。
〔付記2〕濃度90質量%以上の酢酸と、無水酢酸と、水とを少なくとも含んで無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液について、水濃度の上昇および/または降温を行うことによって無水酢酸平衡濃度を更に低くするための無水酢酸低減措置を含む、酢酸製造方法。
〔付記3〕濃度90質量%以上の酢酸と、無水酢酸と、水とを少なくとも含んで無水酢酸平衡濃度が無水酢酸濃度より低い状態にある酢酸溶液について、当該状態が維持される限りで、昇温、または、昇温と水濃度の上昇を行うことによって、無水酢酸の加水分解の反応速度を上昇させるための無水酢酸低減措置を含む、酢酸製造方法。
〔付記4〕前記無水酢酸低減措置では、無水酢酸の加水分解を促進するための触媒を前記酢酸溶液中に存在させる、付記1から3のいずれか一つに記載の酢酸製造方法。
〔付記5〕前記触媒は、ブレンステッド酸、ルイス酸、腐食金属、イオン交換樹脂、またはスルホン酸類を含む、付記4に記載の酢酸製造方法。
〔付記6〕前記酢酸溶液中の前記触媒の存在量は0.01〜10000ppmである、付記4または5に記載の酢酸製造方法。
〔付記7〕前記無水酢酸低減措置では、前記酢酸溶液について水濃度は2000ppm以上とし且つ180℃以下とする、付記1から6のいずれか一つに記載の酢酸製造方法。
〔付記8〕前記無水酢酸低減措置では、前記酢酸溶液について水濃度は1000ppm以上とし且つ170℃以下とする、付記1から6のいずれか一つに記載の酢酸製造方法。
〔付記9〕前記無水酢酸低減措置では、前記酢酸溶液について水濃度は500ppm以上とし且つ120℃以下とする、付記1から6のいずれか一つに記載の酢酸製造方法。
〔付記10〕前記無水酢酸低減措置では、前記酢酸溶液について水濃度は200ppm以上とし且つ100℃以下とする、付記1から6のいずれか一つに記載の酢酸製造方法。
〔付記11〕前記無水酢酸低減措置では、前記酢酸溶液について水濃度は80ppm以上とし且つ60℃以下とする、付記1から6のいずれか一つに記載の酢酸製造方法。
〔付記12〕前記無水酢酸低減措置では、前記酢酸溶液について水濃度は40ppm以上とし且つ50℃以下とする、付記1から6のいずれか一つに記載の酢酸製造方法。
〔付記13〕前記無水酢酸低減措置では、前記酢酸溶液について水濃度は12ppm以上とし且つ30℃以下とする、付記1から6のいずれか一つに記載の酢酸製造方法。
〔付記14〕前記無水酢酸低減措置後の酢酸溶液の滞留時間は30秒以上とする、付記1から13のいずれか一つに記載の酢酸製造方法。
〔付記15〕前記無水酢酸低減措置後の酢酸溶液の滞留時間は1分以上とする、付記1から13のいずれか一つに記載の酢酸製造方法。
〔付記16〕前記無水酢酸低減措置後の酢酸溶液の滞留時間は5分以上とする、付記1から13のいずれか一つに記載の酢酸製造方法。
〔付記17〕前記無水酢酸低減措置後の酢酸溶液の滞留時間は10分以上とする、付記1から13のいずれか一つに記載の酢酸製造方法。
〔付記18〕前記無水酢酸低減措置後の酢酸溶液の滞留時間は30分以上とする、付記1から13のいずれか一つに記載の酢酸製造方法。
〔付記19〕前記無水酢酸低減措置後の酢酸溶液の滞留時間は60分以上とする、付記1から13のいずれか一つに記載の酢酸製造方法。
〔付記20〕前記無水酢酸低減措置後の酢酸溶液の滞留時間は900分以上とする、付記1から13のいずれか一つに記載の酢酸製造方法。
〔付記21〕前記無水酢酸低減措置後の酢酸溶液の滞留時間は1300分以上とする、付記1から13のいずれか一つに記載の酢酸製造方法。
〔付記22〕前記無水酢酸低減措置後の酢酸溶液の滞留時間は1400分以上とする、付記1から13のいずれか一つに記載の酢酸製造方法。
〔付記23〕前記無水酢酸低減措置後の酢酸溶液の滞留時間は2800分以上とする、付記1から13のいずれか一つに記載の酢酸製造方法。
〔付記24〕反応槽と、第1蒸留塔と、第2蒸留塔と、第3蒸留塔とを少なくとも含む酢酸製造装置の前記反応槽において、メタノールおよび一酸化炭素を含む原料混合物からメタノールのカルボニル化反応によって酢酸を生成させるための、反応工程と、
前記第1蒸留塔において、前記反応工程で生成した酢酸を含む粗酢酸流を蒸留処理し、当該粗酢酸流よりも酢酸の富化された第1酢酸流を得るための、第1蒸留工程と、
前記第2蒸留塔において、前記第1酢酸流を蒸留処理し、当該第1酢酸流よりも酢酸の富化された第2酢酸流を得るための、第2蒸留工程と、
前記第3蒸留塔において、前記第2酢酸流を蒸留処理し、当該第2酢酸流よりも酢酸の富化された第3酢酸流を得るための、第3蒸留工程とを含み、
前記酢酸製造装置における前記第2蒸留塔以降の酢酸流について前記無水酢酸低減措置を行う、付記1から23のいずれか一つに記載の酢酸製造方法。

0121

X酢酸製造装置
1反応槽
2蒸発槽
3蒸留塔(第1蒸留塔)
4デカンタ
5 蒸留塔(第2蒸留塔)
6 蒸留塔(第3蒸留塔)
7イオン交換樹脂塔
8スクラバーシステム

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