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技術 ピアサープラグ及びその製造方法

出願人 新日鐵住金株式会社
発明者 日高康善東田泰斗山成雄一山本侑志宮井達哉
出願日 2016年8月12日 (4年4ヶ月経過) 出願番号 2017-541475
公開日 2018年3月22日 (2年9ヶ月経過) 公開番号 WO2017-051632
状態 不明
技術分野
  • -
主要キーワード 結合用穴 オーステナイト変態温度 スケール皮膜 変形状況 リーリング 穿孔効率 プラグ表面 砲弾形
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (10)

課題・解決手段

寿命を長くしたピアサープラグ及びその製造方法を提供する。ピアサープラグ1は、先端部2と、先端部2と同じ素材で形成され、先端部2と連続する胴部3とを備える。胴部3は、バーを取り付けるための穴が形成された筒部5を含む。先端部2は筒部5よりも硬い。

概要

背景

継目無鋼管は、加熱されたビレット穿孔圧延機ピアサー)による穿孔圧延を施すことで製造される。特開平7−96305号公報及び実開平3−18901号公報には、穿孔圧延に用いるピアサープラグが開示されている。ピアサープラグは非常に過酷な環境で使用される。

特開2003−171733号公報、特開平10−291008号公報、特許第2683861号公報及び特許第3635531号公報には、素材表面酸化皮膜を設けることで、素材損耗を抑制したピアサープラグが開示されている。特開2013−248619号公報、特許第4279350号公報及び特許第5169982号公報には、素材表面に溶射皮膜を設けることで、素材の損耗を抑制したピアサープラグが開示されている。これらの皮膜はいずれも、穿孔に用いることで、磨耗や剥離により消耗する。皮膜が消耗したピアサープラグは、使用を中断して、皮膜を再び形成することで、再使用できる。ただし、穿孔圧延によるプラグ母材(素材)の変形量及び損耗量が所定の許容値を超えていたプラグは再使用できない。ピアサープラグは、穿孔圧延に用いられることにより、特に先端部に変形及び損耗(以下、あわせて変形という)が生じやすい。

特許第5464300号公報には、先端部に肉盛層を設け、肉盛層よりも後方に溶射皮膜を設けたピアサープラグが開示されている。このピアサープラグは、高強度の肉盛層によってプラグ母材(素材)の変形を抑制している。また、特開平10−156410号公報には、胴部を3Cr(クロム)−1Ni(ニッケル)系の低合金鋼で形成し、先端部をNb(ニオブ合金で形成することで、先端部の高温強度を高めて、先端部の変形を抑制したピアサープラグが開示されている。特公平5−85242号公報には、耐熱合金から構成された先端部と、先端部を相対回転可能に装着された本体とを備えることで、変形を生じにくくしたピアサープラグが開示されている。

概要

寿命を長くしたピアサープラグ及びその製造方法を提供する。ピアサープラグ1は、先端部2と、先端部2と同じ素材で形成され、先端部2と連続する胴部3とを備える。胴部3は、バーを取り付けるための穴が形成された筒部5を含む。先端部2は筒部5よりも硬い。

目的

本発明の目的は、先端部と胴部とが同じ素材であるピアサープラグであって、ピアサープラグの変形を抑制し、かつ割れも抑制し、寿命を長くしたピアサープラグ及びその製造方法を提供する

効果

実績

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請求項1

先端部と、前記先端部と同じ素材で形成され、前記先端部と連続する胴部とを備え、前記胴部は、バーを取り付けるための穴が形成された筒部を含み、前記先端部は前記筒部よりも硬い、ピアサープラグ

請求項2

請求項1に記載のピアサープラグであって、前記ピアサープラグの表面に形成された皮膜をさらに備える、ピアサープラグ。

請求項3

先端部と、前記先端部と同じ素材で形成され、前記先端部と連続する胴部とを備えるピアサープラグを準備する工程と、前記先端部の温度がオーステナイト変態温度以上になりかつ前記胴部においてバーを取り付けるための穴が形成された筒部の温度が前記オーステナイト変態温度未満になるように前記ピアサープラグを加熱する工程とを含む、ピアサープラグの製造方法。

請求項4

請求項3に記載のピアサープラグの製造方法であって、前記加熱する工程に先だって、前記ピアサープラグの表面に皮膜を形成する工程をさらに含む、ピアサープラグの製造方法。

技術分野

0001

本発明は、ピアサープラグ及びその製造方法に関し、特に継目無鋼管を製造するための穿孔圧延に用いるピアサープラグ及びその製造方法に関する。

背景技術

0002

継目無鋼管は、加熱されたビレット穿孔圧延機(ピアサー)による穿孔圧延を施すことで製造される。特開平7−96305号公報及び実開平3−18901号公報には、穿孔圧延に用いるピアサープラグが開示されている。ピアサープラグは非常に過酷な環境で使用される。

0003

特開2003−171733号公報、特開平10−291008号公報、特許第2683861号公報及び特許第3635531号公報には、素材表面酸化皮膜を設けることで、素材損耗を抑制したピアサープラグが開示されている。特開2013−248619号公報、特許第4279350号公報及び特許第5169982号公報には、素材表面に溶射皮膜を設けることで、素材の損耗を抑制したピアサープラグが開示されている。これらの皮膜はいずれも、穿孔に用いることで、磨耗や剥離により消耗する。皮膜が消耗したピアサープラグは、使用を中断して、皮膜を再び形成することで、再使用できる。ただし、穿孔圧延によるプラグ母材(素材)の変形量及び損耗量が所定の許容値を超えていたプラグは再使用できない。ピアサープラグは、穿孔圧延に用いられることにより、特に先端部に変形及び損耗(以下、あわせて変形という)が生じやすい。

0004

特許第5464300号公報には、先端部に肉盛層を設け、肉盛層よりも後方に溶射皮膜を設けたピアサープラグが開示されている。このピアサープラグは、高強度の肉盛層によってプラグ母材(素材)の変形を抑制している。また、特開平10−156410号公報には、胴部を3Cr(クロム)−1Ni(ニッケル)系の低合金鋼で形成し、先端部をNb(ニオブ合金で形成することで、先端部の高温強度を高めて、先端部の変形を抑制したピアサープラグが開示されている。特公平5−85242号公報には、耐熱合金から構成された先端部と、先端部を相対回転可能に装着された本体とを備えることで、変形を生じにくくしたピアサープラグが開示されている。

0005

以上のように、ピアサープラグの変形を抑制するため、ピアサープラグの先端部表面の硬さを増加させることは行われてきた。しかしながら、従来提案されているピアサープラグは、先端部に肉盛部を形成した構造や、胴部とは異なる素材で作られた先端部を胴部に取り付けた構造であるため、製造工程が煩雑であり、製造コストもかかる。

0006

一方で、ピアサープラグ全体を硬い素材とすると、素材の靭性が低下することで、穿孔圧延時に割れを生じることがある。ここで、本発明者はプラグの割れの発生状況を詳細に観察した結果、穿孔圧延時の割れは、主にピアサープラグとバー(芯金)とを結合させるためにピアサープラグに設けられる結合用の穴を起点として生じることを見出した。

0007

本発明の目的は、先端部と胴部とが同じ素材であるピアサープラグであって、ピアサープラグの変形を抑制し、かつ割れも抑制し、寿命を長くしたピアサープラグ及びその製造方法を提供することである。

0008

本発明の一実施形態によるピアサープラグは、先端部と、先端部と同じ素材で形成され、先端部と連続する胴部とを備える。胴部は、バーを取り付けるための穴が形成された筒部を含む。先端部は筒部よりも硬い。

0009

本発明の一実施形態によるピアサープラグの製造方法は、先端部と、先端部と同じ素材で形成され、先端部と連続する胴部とを備えるピアサープラグを準備する工程と、先端部の温度がオーステナイト変態温度以上になりかつ胴部においてバーを取り付けるための穴が形成された筒部の温度がオーステナイト変態温度未満になるように前記ピアサープラグを加熱する工程とを含む。

0010

本発明によれば、ピアサープラグの寿命を長くすることができる。

図面の簡単な説明

0011

図1は、本発明の一実施形態によるピアサープラグの縦断面図である。
図2は、図1と異なる形状の他のピアサープラグの縦断面図である。
図3は、ピアサープラグを備えた穿孔圧延機の構成を示す模式図である。
図4は、本発明の一実施形態による製造方法を示すフローチャートである。
図5は、加熱装置の模式図である。
図6は、図5に示す加熱装置とは別の加熱装置の模式図である。
図7は、ヒートパターンの一例を示したグラフである。
図8は、プラグ変形量とパス数との関係を示したグラフである。
図9は、番号1〜15のピアサープラグにおける先端部のビッカース硬さを示したグラフである。

0012

本発明の一実施形態の概要を説明する。
ピアサープラグは、先端部と、先端部と同じ素材で形成され、先端部と連続する胴部とを備える。胴部は、バーを取り付けるための穴が形成された筒部を含む。先端部は筒部よりも硬い。

0013

このピアサープラグは、先端部が筒部よりも硬く、かつ筒部が先端部よりも靭性が高いものになっている。そのため、ピアサープラグは、穿孔圧延に用いられたとき、先端部の変形が抑制され、かつ筒部の割れが抑制される。その結果、ピアサープラグは、より多くの回数の穿孔圧延に用いられることができ、寿命が長くなる。

0014

このピアサープラグは、ピアサープラグの表面に形成された皮膜をさらに備える。

0015

ピアサープラグの製造方法は、先端部と、先端部と同じ素材で形成され、先端部と連続する胴部とを備えるピアサープラグを準備する工程と、先端部の温度がオーステナイト変態温度以上になりかつ胴部においてバーを取り付けるための穴が形成された筒部の温度がオーステナイト変態温度未満になるように前記ピアサープラグを加熱する工程とを含む。

0016

この方法で製造されたピアサープラグは、先端部が筒部よりも硬く、かつ筒部が先端部よりも靭性が高いものになっている。そのため、このピアサープラグは、穿孔圧延に用いられたとき、先端部の変形が抑制され、かつ筒部の割れが抑制される。その結果、このピアサープラグは、より多くの回数の穿孔圧延に用いられることができ、寿命が長くなる。

0017

ピアサープラグの製造方法は、前記加熱する工程に先だって、ピアサープラグの表面に皮膜を形成する工程をさらに含む。

0018

この方法で製造されるピアサープラグは、皮膜により圧延部の変形が抑制される。

0019

[ピアサープラグ]
以下、本発明の一実施形態によるピアサープラグについて詳細に説明する。
ピアサープラグ(以下、単にプラグという)は継目無鋼管の製造に用いる穿孔圧延機(ピアサー)で繰り返し使用される。プラグに用いられる素材は、加熱処理により硬度が向上する鋼、すなわち焼きが入る鋼であれば特に限定されない。また、プラグは、鍛造して形成されることが好ましいが、特にこれに限定されない。

0020

プラグに用いられる素材となる鋼は、Fe(鉄)及び不純物に加えて、特徴的な元素を以下の範囲で含むことが好ましい。なお、これらの元素以外を含んでもよい。以降、元素に関する%は、質量%を意味する。

0021

C:0.08〜0.5%
炭素(C)は高温強度向上に対する有効成分である。C含有量が0.08%以下では効果がない。また、C含有量が0.5%を超えると、硬度が高くなりすぎる。また、炭化物析出状態の制御がしにくくなる。したがって、C含有量は0.08〜0.5%とする。C含有量は、好ましくは0.3%以下であり、さらに好ましくは0.2%以下である。C含有量は、好ましくは0.09%以上であり、さらに好ましくは0.1%以上である。

0022

Si:0.1〜1.0%
シリコン(Si)は脱酸素に有効な成分である。Si含有量が0.1%以下では効果が小さい。Si含有量が1.0%を超えると素材の靭性が劣化し始める。したがって、Si含有量は0.1〜1.0%とする。Si含有量は、好ましくは0.9%以下であり、さらに好ましくは0.8%以下である。Si含有量は、好ましくは0.2%以上であり、さらに好ましくは0.3%以上である。

0023

Mn:0.2〜1.5%
マンガン(Mn)は高温におけるオーステナイトを安定化する。すなわち、δフェライトの生成を抑制して靭性低下を抑制する。その効果はMn含有量が0.2%以上で得られる。しかし、Mn含有量が1.5%を超えると硬度が高くなりすぎ、穿孔後に焼き割れが生じやすくなる。したがって、Mn含有量は0.2〜1.5%とする。Mn含有量は、好ましくは1.4%以下であり、さらに好ましくは1.3%以下である。Mn含有量は、好ましくは0.3%以上であり、さらに好ましくは0.4%以上である。

0024

素材は、以下の選択元素を含有しても良い。すなわち、以下の元素は、いずれも素材に含有されていなくても良い。また、一部だけが含有されていても良い。

0025

Ni:0〜2.0%
ニッケル(Ni)はプラグ表層部に形成される焼き入れ相の靭性を改善する効果がある。その効果はNi含有量が2.0%でほぼ飽和する。それ以上の添加はコスト増加要因となる。したがって、Ni含有量は0〜2.0%とする。Ni含有量は、好ましくは1.9%以下であり、さらに好ましくは1.8%以下である。Ni含有量は、好ましくは0.2%以上であり、さらに好ましくは0.3%以上である。

0026

Mo:0〜4.0%、W:0〜4.0%
モリブデン(Mo)及びタングステン(W)は置換可能な元素である。これらの元素は高温強度の改善に有効であり、かつAc1点を上昇させて穿孔後に表面に焼きが入る部分を低減する効果がある。しかし、総和が8.0%を超えると、高温でもフェライト残留し、強度及び靭性が低下する。したがって、総和は8.0%以下とする。Mo含有量は、好ましくは3.9%以下であり、さらに好ましくは3.8%以下である。Mo含有量は、好ましくは0.75%以上であり、さらに好ましくは0.8%以上である。W含有量は、好ましくは3.9%以下であり、さらに好ましくは3.8%以下である。W含有量は、好ましくは0.75%以上であり、さらに好ましくは0.8%以上である。

0027

Cu:0〜0.5%
銅(Cu)はオーステナイト安定化元素であり、穿孔時に高温に保持されてオーステナイトとなったプラグ表層部の靱性を改善する効果がある。したがって、Cu含有量は0〜0.5%とする。

0028

B:0〜0.2%、Nb:0〜1.0%、V:0〜1.0%、Cr:0〜10.0%、
Ti:0〜1.0%
ボロン(B)が少しでも含有されれば、粒界の強度を増加させる効果がある。しかし、B含有量が0.2%を超えると、逆に脆化相が析出し靭性が劣化する。したがって、B含有量は0〜0.2%とする。ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、クロム(Cr)及びチタン(Ti)は少しでも含有すれば、結晶粒微細化する効果がある。したがって、Nb、V及びTiの元素の含有量の各々は0〜1.0%とし、Cr含有量は0〜10.0%とする。

0029

その他、脱硫などの目的で、カルシウム(Ca)、希土類元素REM)を必要に応じて微量添加することができる。

0030

プラグ1は、図1に示すように、例えば砲弾形状である。プラグ1は、先端部2と、胴部3とを備える。プラグ1の横断面は、先端部2、胴部3ともに円形状である。先端部2及び胴部3は表面が連続する。先端部2及び胴部3は同じ素材で形成されており、1つのパーツである。以下、プラグ1において、先端部2側を前方とし、胴部3側を後方とする。胴部3はバーと接続するために設けられた後端面(裏面)に開口した結合用穴4を有する。結合用穴4の前端(穴の底)は、例えば、プラグ1の全長(先端部2の前端から胴部3の後端までの寸法)のうち、中央又はそれよりも後方の部位に位置する。プラグ1の後方部分(胴部3の後方部分)は、結合用穴4によって筒状になっている。プラグ1の長手方向(軸方向)において、内部に結合用穴4が形成されている部分を筒部5という。プラグ1の長手方向における結合用穴4の前端から後端(開口端)までの長さ、つまり結合用穴4の深さをD[mm]として、筒部5の前端は、結合用穴4の前端から前方に0.1×D[mm]の位置とする。すなわち、筒部5は、プラグ1の長手方向において、結合用穴4の前端から0.1×D[mm]前方の位置とプラグ1の後端との間の部分を指す。なお、図1に示すプラグ1は、胴部3よりも後方に位置する逃げ部をさらに備えてもよい。プラグ1は、図2に示すように、先端部2が凸型に突出して形成されている形状であってもよい。図2に示すプラグ1は、胴部3よりも後方に位置する逃げ部10をさらに備える。

0031

プラグ1は、図3に示すように、穿孔圧延機13において、結合用穴4にバー15(芯金)の先端を取り付け、穿孔圧延に用いられる。プラグ1は一対の傾斜ロール14,14の間であってかつパスラインPL上に配置される。穿孔圧延時、プラグ1は、その先端部2から中実のビレット16が押し込まれるため、高温に晒されるとともに、高い圧力を受ける。

0032

別の観点から、プラグ1は、図1又は図2に示すように、圧延部11とリーリング部12とに区分される。圧延部11は先端部2の全体及び胴部3のうち先端部2に連続する前方の部位であり、リーリング部12は胴部3の圧延部11よりも後方の部位である。圧延部11は穿孔圧延において、肉厚圧下の大部分を受け持つ部位である。リーリング部12は、穿孔圧延において、中空素管シェルともいう)の肉厚を仕上げる部位である。

0033

プラグ1は、皮膜8をさらに備える。皮膜8は、例えば、溶射により形成された鉄及び鉄酸化物を主成分とする溶射皮膜または酸化熱処理により形成されたスケール皮膜である。皮膜8は、プラグ1の表面に形成され、例えばプラグ表面の全体(芯金結合用の穴が設けられる後端面を除く)を覆う。なお、皮膜8は、プラグ表面の少なくとも圧延部11上に形成されればよいが、プラグの後端面を除く全表面に形成されることが好ましい。また、皮膜8は、その厚さを部位毎に異ならせることが好ましく、胴部3表面に形成される皮膜8の厚さよりも先端部2表面に形成される皮膜8を厚くすることが好ましい。

0034

先端部2は筒部5よりも硬い。プラグ1において、先端部2のビッカース硬さは、300Hv以上であるのに対して、筒部5のビッカース硬さは、好ましくは220〜260Hvであるが、220Hv以下でも良い。なお、本実施形態において、ビッカース硬さは、プラグ1を長手方向に切断した断面から、JIS Z 2244(2009)に基づき、1kgfの試験力で測定した値である。また、筒部5は、JIS Z 2242(2005)に基づくフルサイズ試験片を用いたシャルピー衝撃試験において、20℃における衝撃値が従前のプラグと同程度の20J/cm2以上である。

0035

以上のように、プラグ1は、先端部2を筒部5よりも硬くしたことで、穿孔圧延による先端部2の変形を抑制することができる。具体的には、穿孔圧延に用いられたプラグ1は、例えば、先端部2の変形による全長の減少量(プラグ変形量ともいう)を従前の約50%に抑えることができる。さらに、プラグ1は、従前と変わらない穿孔効率でビレットを穿孔圧延することができる。

0036

筒部5を先端部2と同様に硬くすると、筒部5の靭性が低下して穿孔圧延により筒部5に割れが生じる。本実施形態のプラグ1は、先端部2及び胴部3を同じ素材で形成したプラグにおいて、先端部2のみを硬くすることで、硬さを向上させた先端部2と所望の靱性を有する筒部5とを備えることができる。その結果、プラグ1は、筒部5の割れの発生を抑制しながら、先端部2の変形を抑制することができ、繰り返し使用する際の寿命を長くすることができる。

0037

[製造方法]
次に、本発明の一実施形態によるプラグ1の製造方法について詳細に説明する。なお、プラグ1の説明と重複する説明は省略する。

0038

製造方法は、例えば、図4に示すように、プラグを準備する工程S1と、プラグ上に皮膜を形成する工程S2と、プラグを加熱する工程S3と、プラグを冷却する工程S4とを含む。工程S1において、プラグは先端部2及び胴部3を備える。先端部2及び胴部3は同一の素材で形成される。したがって、工程S1で準備されるプラグは、先端部2及び胴部3(筒部5)の硬さが同じであり、靱性も同じである。工程S1で準備されるプラグの硬さは、好ましくはビッカース硬さで220〜260Hvであるが、220Hv以下でも良い。

0039

工程S2では、プラグ上に皮膜8を形成する。皮膜8を形成する方法は、周知の方法である。皮膜8はアーク溶接により形成される溶射皮膜であることが好ましい。皮膜8は、例えば、鉄及び鉄酸化物を主成分とする溶射皮膜である。なお、工程S2は、工程S3の後に実施されてもよく、工程S4の後に実施されてもよく、実施されなくてもよい。また、工程S2は、溶射皮膜に代えて、酸化熱処理によりスケール皮膜を形成してよい。皮膜8は、少なくとも圧延部11上に形成されればよいが、プラグ表面の全体(後端面を除く)に形成されることが好ましい。皮膜8が溶射皮膜の場合は、工程S3における加熱前に皮膜形成することが好ましい。

0040

工程S3では、プラグの先端部2を加熱する。工程S3において、先端部2の温度がオーステナイト変態温度(Ac3点)以上になり、筒部5の温度がAc3点未満になるように加熱する。ここで、加熱される温度をAc3点未満とすべき筒部5は、前述の通り、結合用穴4の前端から0.1×D[mm]前方の位置とプラグの後端との間の部分である。換言すると、プラグの後端と結合用穴4の前端から0.1×D[mm]前方の位置との間の領域は、Ac3点未満になるように加熱される。加熱処理は、例えば、図5に示すように、先端部2の外周に高周波コイル6を取り付け、Ar雰囲気加熱装置内にプラグを配置し、コイル6を用いて先端部2を1000〜1200℃で高周波加熱する。加熱時間は焼きが入る時間であればよく、高周波加熱の場合、Ac3点以上の温度に数秒以上加熱すれば十分であるが、工業的な安定性を考慮すると20秒以上が好ましく、1分以上がより好ましい。加熱時間は20分以内が好ましく、10分以内がより好ましい。特に、加熱処理を不活性ガス雰囲気以外(例えば大気中)で実施する場合、加熱時間は10分以内が好ましく、5分以内がより好ましい。長時間加熱すると、皮膜8の性状が変化するおそれがあるからである。例えば、大気中であれば、皮膜8の酸化が進むおそれがある。上記した加熱処理により、先端部2の温度をAc3点以上まで上げ、筒部5の温度をAc3点未満にすることができる。なお、プラグを加熱する装置は、高周波コイル6に限らない。

0041

図6に、高周波コイル6を使用せずにプラグを加熱する装置の例を示す。図6に示す加熱装置7は、ヒータ71,72を備える。ヒータ71は、加熱装置7の上部に配置されている。ヒータ72は、加熱装置7の下部に配置されている。

0042

工程S3の実施に際し、加熱装置7内にプラグが装入される。加熱装置7内には、複数のプラグが装入されることが好ましい。このとき、プラグとヒータ72との間には遮蔽物8が設置される。すなわち、ヒータ72の上方に遮蔽物8が配置され、遮蔽物8上にプラグが載置される。遮蔽物8は、ヒータ72からプラグへの伝熱を抑制する部材である。遮蔽物8の形状は、例えば、格子状や板状である。遮蔽物8は、酸化物被覆されていてもよい。

0043

加熱装置7内のプラグは、ヒータ71,72によって加熱される。ヒータ71,72の加熱温度設定温度)は、同一とすることができる。加熱装置7内は、Ar等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。プラグの先端部2の温度がAc3点以上の所定温度に達した時点で、加熱装置7からプラグが取り出される。遮蔽物8によってプラグの下部への伝熱はプラグの上部への伝熱よりも小さくなっているため、筒部5の温度は先端部2の温度よりも低い。加熱装置7からプラグを取り出す時点で、筒部5の温度はAc3点まで達しておらず、Ac3点未満となっている。

0044

加熱装置7によるプラグの加熱は、遮蔽物8を用いずに行うこともできる。この場合は、プラグの上方に位置するヒータ71の加熱温度よりも、プラグの下方に位置するヒータ72の加熱温度を小さくする。これにより、プラグの上部への伝熱を大きく、プラグの下部への伝熱を小さくすることができる。よって、遮蔽物8を用いた場合と同様に、先端部2の温度がAc3点以上になる一方で筒部5の温度がAc3点未満となるように、プラグを加熱することができる。

0045

加熱装置7内のプラグについて、例えば、先端部2及び筒部5の各々に熱電対を取り付けて先端部2及び筒部5の温度を測定することができる。これにより、筒部5の温度がAc3点未満である一方、先端部2の温度がAc3点以上の所定温度に達したことを検知し、好ましいタイミングでプラグを加熱装置7から取り出すことができる。なお、工程S3の実施の都度、先端部2及び筒部5の温度を測定する必要はない。温度の測定を一度行えば適切な加熱時間を得ることができるため、同種のプラグに関しては、当該加熱時間で工程S3を実施すればよい。

0046

工程S4では、工程S3で加熱されたプラグを冷却する。例えば、コイル6の通電を止め、加熱装置の扉を開放して、プラグを400℃以下、通常は室温まで冷却する。これによって、プラグ1が製造される。冷却速度は焼きが入る速度であればよく、放冷程度かそれ以上であればよい。

0047

以上のように、この製造方法で製造されたプラグ1は、先端部2をAc3点以上に加熱することで、先端部2の硬さを向上させることができる。さらに、プラグ1は、筒部5の温度をAc3点未満に抑えることで、加熱による筒部5の靱性の低下を抑制することができる。その結果、プラグ1は、硬さを向上させた先端部2と所望の靱性を有する筒部5とを備えることができ、寿命を長くすることができる。また、穿孔圧延に用いたときにおいて、先端部2の変形に起因する皮膜8の剥離を抑制することができる。

0048

プラグ1の製造方法は、上述のものに限られない。筒部5のみに焼き戻しを行うことにより、先端部2が筒部5よりも硬いプラグ1を製造してもよい。例えば、全体(先端部2及び胴部3)が300Hv以上のビッカース硬さを有するプラグを準備して筒部5のみを焼き戻すことにより、先端部2のビッカース硬さが300Hv以上であって、筒部5のビッカース硬さが220〜260Hvのプラグ1を製造することができる。

0049

表1に示す化学組成を有する鋼から、複数のプラグを製造した。これらのプラグを番号1〜16のプラグとして準備した。なお、表1において、元素の含有量はいずれも質量%である。さらに、化学組成において、残部はFe及び不純物である。

0050

0051

番号1〜17のプラグ各々は、先端部2及び胴部3上に皮膜8を形成した。皮膜8は鉄線材(普通鋼製の線材)を用いたアーク溶接による溶射皮膜である。番号1〜15各々では、皮膜8を備えたプラグを、図5に示す加熱装置で加熱し、その後コイル6の通電を止め、加熱装置の扉を開放して放冷し、プラグ1を製造した。番号1〜15各々の加熱装置による加熱時間及び加熱温度を、表2に示す。番号1のプラグにおける先端部2のヒートパターンを、図7に示す。具体的には、番号1のプラグは、コイル6を用いて120秒で1000℃に加熱され、その後、1000℃で600秒保持された。さらに、プラグは、1000℃から100秒かけて750℃に冷却され、750℃から250秒かけて600℃に冷却され、600℃から250秒かけて500℃に冷却され、500℃から400秒かけて400℃に冷却された。また、番号16のプラグ1は、加熱していない比較例である。表2において、番号16は、未加熱として加熱温度及び加熱時間に「−」を付した。番号17のプラグ1は、プラグ全体を加熱できるコイルによって熱処理した比較例である。番号17の加熱温度及び加熱時間は、表2に示す通り1200℃及び1200秒である。

0052

0053

[穿孔圧延試験
本実施例である番号1〜15のプラグ1のうち番号1〜3のプラグ1及び比較例である番号16のプラグ1各々を用いて、SUS304からなるビレットを穿孔圧延する試験を5回ずつ行い、1回の穿孔圧延が終了する度にプラグ変形量を測定した。換言すると、それぞれのプラグを5回繰り返して穿孔圧延試験に使用し、毎回変形量を測定した。また、プラグ1の胴部3、特に筒部5に割れが発生していないか観察した。なお、試験にはいずれも同じ化学組成を有するビレットを用いた。

0054

[プラグの変形状況及び皮膜の剥離状況の観察]
穿孔圧延試験に5回用いた番号1及び16のプラグ1を、軸方向(長手方向)に切断し、切断面における先端部2の変形状況及び皮膜8の剥離状況を観察した。

0055

硬さ試験
番号1〜17のプラグ1各々の先端部2及び筒部5の断面に対して、ビッカース硬さを測定した。ビッカース硬さの測定は、JIS Z 2244(2009)に基づいて実施した。測定時の試験力は、1kgfにした。

0056

[試験結果]
番号1〜3及び16のプラグ1は、図8に示すように、1回目の穿孔圧延において、変形量が同程度であった。2回目以降の穿孔圧延において、番号1〜3のプラグ1は、番号16のプラグ1よりも変形量を抑えることができた。特に、3回目以降の穿孔圧延において、番号1〜3のプラグ1は、番号16のプラグ1よりも変形量を50%程度少なく抑えることができた。また、番号1〜3及び16のプラグ1はいずれも割れは発生していなか
った。

0057

切断面における番号1及び16のプラグ1の観察の結果、番号1のプラグ1は、変形に起因する皮膜8の隔離が認められなかった。一方、番号16のプラグ1は、先端部2が横に膨れて変形しており、膨れた部位で皮膜8が剥離していた。

0058

番号1〜15のプラグ1はいずれも、図9に示すように、先端部2のビッカース硬さが300Hv以上であった。さらに、これらのプラグ1において、加熱温度が高いプラグ1ほど、ビッカース硬さが大きい値を示す傾向があった。一方、番号16のプラグ1は、先端部2のビッカース硬さが250Hvであった。また、番号1〜16のプラグ1はいずれも、筒部5のビッカース硬さが220〜260Hvの範囲であった。

0059

番号17のプラグ1は、筒部5のビッカース硬さが350Hvであった。番号17のプラグ1を用いた穿孔圧延では、1回目の穿孔圧延後に、プラグ1の筒部5で割れを確認した。

実施例

0060

以上、本発明の一実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。

0061

本発明は、継目無鋼管の製造に利用できる。

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