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技術 脱硫剤、溶銑脱硫方法および溶銑の製造方法

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 中井由枝菊池直樹正木秀弥市川彰井戸洋晴三木祐司
出願日 2016年7月15日 (4年7ヶ月経過) 出願番号 2016-570900
公開日 2017年7月27日 (3年7ヶ月経過) 公開番号 WO2017-018263
状態 特許登録済
技術分野 銑鉄の精製;鋳鉄の製造;転炉法以外の製鋼
主要キーワード 水平接線 溶出元素 試験水準 投射法 カルシウムカーバイド キャリアガス供給装置 機械攪拌式 定常回転数
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (5)

課題・解決手段

脱硫効率に優れ、脱硫処理に掛かるコストを低減できる、溶銑脱硫方法および溶銑の製造方法を提供すること。溶銑脱硫に用いられる脱硫剤であって、細孔径が0.5μm以上10μm以下となる細孔の容積の和である全細孔容積が0.1mL/g以上の生石灰を含む。

概要

背景

高炉から出銑された溶銑には、通常、鋼の品質に悪影響を及ぼす硫黄(S)が高濃度で含まれている。このため、製鋼工程では、要求される品質に応じて、種々の溶銑予備処理および溶鋼脱硫が行われている。このうち、溶銑の炉外脱硫(「溶銑脱硫」ともいう)としては、溶銑中脱硫剤を吹き込むことで脱硫を行うインジェクション脱硫法や、攪拌羽根によって攪拌された溶銑に脱硫剤を添加することで脱硫を行う機械攪拌式脱硫法などの方法が知られている。また、このような溶銑脱硫方法では、いずれの方法においても、精錬剤として安価な生石灰を主成分とする脱硫剤が多く用いられ、(1)式に示す反応式にしたがって脱硫反応が進行する。
CaO+S →CaS+O ・・・(1)

こうした脱硫処理では、生石灰の滓化促進による反応効率の向上を目的として、蛍石(CaF2)やアルミナ系媒溶剤などの媒溶剤を用いる方法が知られている。例えば、媒溶剤を混合した脱硫剤としては、95wt%CaO−5wt%CaF2が広く使用されている。しかしながら、これらの媒溶剤は、一般に高価であるため、脱硫剤中の媒溶剤の配合率を増やすことは、脱硫剤に掛かるコストの増大を招く。また、脱硫剤中の媒溶剤の配合率を高める場合には、脱硫剤中のCaO濃度が低下するため、脱硫剤の反応効率が低下することが懸念される。これに対して、媒溶剤の配合率を高めた生石灰主体の脱硫剤とカルシウムカーバイド系又はソーダ系の脱硫剤とを併用することや、媒溶剤の配合率を高めた生石灰主体の脱硫剤にCaCO3を添加すること(例えば、特許文献1)で、脱硫剤の反応効率を向上させる方法がある。しかし、近年のフッ素の環境への影響が懸念されている状況を鑑みると、蛍石を用いない脱硫剤が望まれる。このため、蛍石を用いずとも脱硫効率の高い脱硫剤や、生石灰そのものの脱硫能を向上させる技術が求められている。

生石灰や蛍石を用いない脱硫剤としては、例えば、カルシウムカーバイド系、ソーダ系の脱硫剤が実用化されているが、いずれも長所と短所がある。カルシウムカーバイド系の脱硫剤は、強力な脱硫能力を有しているが、脱硫処理により生じるスラグの後処理においてアセチレンガスが発生するなどの問題点がある。また、カルシウムカーバイド系の脱硫剤は、高価であることに加え、危険物でもあるために取扱いが難しい。ソーダ系の脱硫剤は、比較的安価ではあるものの、高アルカリ性であるため、炉や容器などの耐火物への影響が大きい。また、ソーダ系の脱硫剤は、排ガス中にNaが含まれるため、その除去処理が必要となる。さらに、ソーダ系の脱硫剤は、スラグ中のNa2O含有量が高くなるため、セメントなどへの再利用に制約が生じる。このため、環境への影響から、フッ素と同様に望ましい脱硫剤とはいえない。さらに、カルシウムカーバイド系およびソーダ系以外の脱硫剤を用いた脱硫方法として、脱硫剤として金属Mgを使用する方法もよく知られている。金属Mgは、溶銑中のSと容易に反応してMgSを生成するが、沸点が1100℃と低いため、1250℃〜1500℃の溶銑中では激しく気化し、溶銑を飛散させる危険性がある。また、金属Mgを用いた脱硫処理では、発生するMg蒸気が十分に脱硫反応に寄与せずに大気中に放散されてしまうため、効率が悪い。さらに、金属Mgは、非常に高価であるため、脱硫処理に掛かるコストの増大を招く。

生石灰そのものの脱硫能を向上させる技術としては、石灰性状の観点から脱硫剤の脱硫効率を向上させる取り組みが行われている。例えば、特許文献2,3には、インジェクション脱硫法による溶銑脱硫において、石灰性状として密度比表面積および細孔径容量などを制御する方法が開示されている。特許文献2,3によれば、これらの石灰性状を制御することにより、溶銑中に吹き込まれる脱硫剤の浮上速度を制御(低速化)することができ、溶銑と脱硫剤との反応を促進させることができる。しかし、特許文献2,3では、溶銑脱硫の方法としてインジェクション脱硫法を対象としており、機械攪拌式脱硫法における最適な石灰性状とはなっていない。さらに、特許文献2では、対象となる脱硫剤の粒径が、200μm以下と小さいものである。このような微細な脱硫剤を用いる場合には、反応界面積を確保することが容易となるが、機械撹拌式脱硫法においては、添加歩留確保の観点から、粒径の大きな脱硫剤を用いることが重要であり、そのような粒径の大きな脱硫剤を用いて反応界面積を確保する方法についてはなんら述べられていない。

機械攪拌式脱硫法では、通常、溶銑の浴面に添加される粉状の脱硫剤が溶銑中に巻き込まれ、脱硫剤と溶銑中のSとが反応する。このように、浴面に対して脱硫剤を上添加する方法(上添加法ともいう)の場合、脱硫剤の凝集が進行することで、反応界面積が小さくなるため、脱硫効率が低くなることが問題であった。このような上添加法では、脱硫処理後のスラグは数mm〜数10mmの凝集粒となる。これに対して、機械攪拌式脱硫法での反応効率を向上させる方法として、粉状の脱硫剤を浴面に投射する方法(投射法ともいう)が知られている。投射法は、上添加法に比べ溶銑中へ巻き込まれる際の脱硫剤の凝集が抑制されるため、実質的な反応界面積が大きくなり、脱硫能を向上させることができる。しかし、このような投射法においても、投射された脱硫剤の凝集は依然として進行するため、脱硫剤そのものの反応界面積を十分に活用できていなかった。

投射法におけるこの課題に対して、特許文献4,5には、キャリアガスを用いて脱硫剤を投射する方法が開示されている。特許文献4,5では、キャリアガスを用いることにより、脱硫剤そのものの溶銑中への侵入を促進することで、脱硫剤の凝集を抑制することができる。しかし、特許文献4,5に記載の投射法では、生石灰の性状については何ら考慮されていないため、石灰性状の観点から生石灰の脱硫効率をさらに向上させる技術が求められている。

概要

脱硫効率に優れ、脱硫処理に掛かるコストを低減できる、溶銑脱硫方法および溶銑の製造方法を提供すること。溶銑脱硫に用いられる脱硫剤であって、細孔径が0.5μm以上10μm以下となる細孔の容積の和である全細孔容積が0.1mL/g以上の生石灰を含む。

目的

本発明は、上記の課題に着目してなされたものであり、脱硫効率に優れ、脱硫処理に掛かるコストを低減できる脱硫剤、溶銑脱硫方法および溶銑の製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

溶銑脱硫に用いられる脱硫剤であって、細孔径が0.5μm以上10μm以下となる細孔の容積の和である全細孔容積が0.1mL/g以上の生石灰を含むことを特徴とする脱硫剤。

請求項2

前記生石灰は、平均粒径が210μm以上500μm以下の粉状のものであり、機械攪拌式溶銑脱硫法に用いられることを特徴とする請求項1に記載の脱硫剤。

請求項3

前記生石灰は、平均粒径が230μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の脱硫剤。

請求項4

実質的にフッ素カリウムおよびナトリウムの少なくともいずれか一つが含まれないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の脱硫剤。

請求項5

前記生石灰のみからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の脱硫剤。

請求項6

機械攪拌式脱硫装置にて溶銑脱硫処理する際に、細孔径が0.5μm以上10μm以下となる細孔の容積の和である全細孔容積が0.1mL/g以上であり、平均粒径が210μm以上500μm以下の粉状の生石灰を含む脱硫剤を用いることを特徴とする溶銑脱硫方法

請求項7

前記生石灰は、平均粒径が230μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項6に記載の溶銑脱硫方法。

請求項8

前記機械攪拌式脱硫装置は、前記溶銑を攪拌する攪拌羽根と、前記溶銑の上方より前記溶銑の浴面に前記脱硫剤をキャリアガスと共に吹き付ける上吹きランスとを備え、前記溶銑の脱硫処理をする際に、前記攪拌羽根を用いて前記溶銑を攪拌し、前記溶銑が攪拌された状態で、前記上吹きランスを用いて前記浴面に前記脱硫剤を吹き付けることを特徴とする請求項6または7に記載の溶銑脱硫方法。

請求項9

前記脱硫剤を前記浴面に吹き付ける際に、前記脱硫剤が吹き付けられる位置の前記浴面の水平方向の流速を、1.1m/s以上11.5m/s以下とすることを特徴とする請求項8に記載の溶銑脱硫方法。

請求項10

請求項6〜9のいずれか1項に記載の溶銑脱硫方法を用いることを特徴とする溶銑の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、脱硫剤溶銑脱硫方法および溶銑の製造方法に関する。

背景技術

0002

高炉から出銑された溶銑には、通常、鋼の品質に悪影響を及ぼす硫黄(S)が高濃度で含まれている。このため、製鋼工程では、要求される品質に応じて、種々の溶銑予備処理および溶鋼脱硫が行われている。このうち、溶銑の炉外脱硫(「溶銑脱硫」ともいう)としては、溶銑中に脱硫剤を吹き込むことで脱硫を行うインジェクション脱硫法や、攪拌羽根によって攪拌された溶銑に脱硫剤を添加することで脱硫を行う機械攪拌式脱硫法などの方法が知られている。また、このような溶銑脱硫方法では、いずれの方法においても、精錬剤として安価な生石灰を主成分とする脱硫剤が多く用いられ、(1)式に示す反応式にしたがって脱硫反応が進行する。
CaO+S →CaS+O ・・・(1)

0003

こうした脱硫処理では、生石灰の滓化促進による反応効率の向上を目的として、蛍石(CaF2)やアルミナ系媒溶剤などの媒溶剤を用いる方法が知られている。例えば、媒溶剤を混合した脱硫剤としては、95wt%CaO−5wt%CaF2が広く使用されている。しかしながら、これらの媒溶剤は、一般に高価であるため、脱硫剤中の媒溶剤の配合率を増やすことは、脱硫剤に掛かるコストの増大を招く。また、脱硫剤中の媒溶剤の配合率を高める場合には、脱硫剤中のCaO濃度が低下するため、脱硫剤の反応効率が低下することが懸念される。これに対して、媒溶剤の配合率を高めた生石灰主体の脱硫剤とカルシウムカーバイド系又はソーダ系の脱硫剤とを併用することや、媒溶剤の配合率を高めた生石灰主体の脱硫剤にCaCO3を添加すること(例えば、特許文献1)で、脱硫剤の反応効率を向上させる方法がある。しかし、近年のフッ素の環境への影響が懸念されている状況を鑑みると、蛍石を用いない脱硫剤が望まれる。このため、蛍石を用いずとも脱硫効率の高い脱硫剤や、生石灰そのものの脱硫能を向上させる技術が求められている。

0004

生石灰や蛍石を用いない脱硫剤としては、例えば、カルシウムカーバイド系、ソーダ系の脱硫剤が実用化されているが、いずれも長所と短所がある。カルシウムカーバイド系の脱硫剤は、強力な脱硫能力を有しているが、脱硫処理により生じるスラグの後処理においてアセチレンガスが発生するなどの問題点がある。また、カルシウムカーバイド系の脱硫剤は、高価であることに加え、危険物でもあるために取扱いが難しい。ソーダ系の脱硫剤は、比較的安価ではあるものの、高アルカリ性であるため、炉や容器などの耐火物への影響が大きい。また、ソーダ系の脱硫剤は、排ガス中にNaが含まれるため、その除去処理が必要となる。さらに、ソーダ系の脱硫剤は、スラグ中のNa2O含有量が高くなるため、セメントなどへの再利用に制約が生じる。このため、環境への影響から、フッ素と同様に望ましい脱硫剤とはいえない。さらに、カルシウムカーバイド系およびソーダ系以外の脱硫剤を用いた脱硫方法として、脱硫剤として金属Mgを使用する方法もよく知られている。金属Mgは、溶銑中のSと容易に反応してMgSを生成するが、沸点が1100℃と低いため、1250℃〜1500℃の溶銑中では激しく気化し、溶銑を飛散させる危険性がある。また、金属Mgを用いた脱硫処理では、発生するMg蒸気が十分に脱硫反応に寄与せずに大気中に放散されてしまうため、効率が悪い。さらに、金属Mgは、非常に高価であるため、脱硫処理に掛かるコストの増大を招く。

0005

生石灰そのものの脱硫能を向上させる技術としては、石灰性状の観点から脱硫剤の脱硫効率を向上させる取り組みが行われている。例えば、特許文献2,3には、インジェクション脱硫法による溶銑脱硫において、石灰性状として密度比表面積および細孔径容量などを制御する方法が開示されている。特許文献2,3によれば、これらの石灰性状を制御することにより、溶銑中に吹き込まれる脱硫剤の浮上速度を制御(低速化)することができ、溶銑と脱硫剤との反応を促進させることができる。しかし、特許文献2,3では、溶銑脱硫の方法としてインジェクション脱硫法を対象としており、機械攪拌式脱硫法における最適な石灰性状とはなっていない。さらに、特許文献2では、対象となる脱硫剤の粒径が、200μm以下と小さいものである。このような微細な脱硫剤を用いる場合には、反応界面積を確保することが容易となるが、機械撹拌式脱硫法においては、添加歩留確保の観点から、粒径の大きな脱硫剤を用いることが重要であり、そのような粒径の大きな脱硫剤を用いて反応界面積を確保する方法についてはなんら述べられていない。

0006

機械攪拌式脱硫法では、通常、溶銑の浴面に添加される粉状の脱硫剤が溶銑中に巻き込まれ、脱硫剤と溶銑中のSとが反応する。このように、浴面に対して脱硫剤を上添加する方法(上添加法ともいう)の場合、脱硫剤の凝集が進行することで、反応界面積が小さくなるため、脱硫効率が低くなることが問題であった。このような上添加法では、脱硫処理後のスラグは数mm〜数10mmの凝集粒となる。これに対して、機械攪拌式脱硫法での反応効率を向上させる方法として、粉状の脱硫剤を浴面に投射する方法(投射法ともいう)が知られている。投射法は、上添加法に比べ溶銑中へ巻き込まれる際の脱硫剤の凝集が抑制されるため、実質的な反応界面積が大きくなり、脱硫能を向上させることができる。しかし、このような投射法においても、投射された脱硫剤の凝集は依然として進行するため、脱硫剤そのものの反応界面積を十分に活用できていなかった。

0007

投射法におけるこの課題に対して、特許文献4,5には、キャリアガスを用いて脱硫剤を投射する方法が開示されている。特許文献4,5では、キャリアガスを用いることにより、脱硫剤そのものの溶銑中への侵入を促進することで、脱硫剤の凝集を抑制することができる。しかし、特許文献4,5に記載の投射法では、生石灰の性状については何ら考慮されていないため、石灰性状の観点から生石灰の脱硫効率をさらに向上させる技術が求められている。

先行技術

0008

特開平8−268717号公報
特許第5101988号公報
特開昭62-56509号公報
特許第5045031号公報
特許第5195737号公報

発明が解決しようとする課題

0009

そこで、本発明は、上記の課題に着目してなされたものであり、脱硫効率に優れ、脱硫処理に掛かるコストを低減できる脱硫剤、溶銑脱硫方法および溶銑の製造方法を提供することを目的としている。

課題を解決するための手段

0010

本発明の一態様によれば、溶銑脱硫に用いられる脱硫剤であって、細孔径が0.5μm以上10μm以下となる細孔の容積の和である全細孔容積が0.1mL/g以上の生石灰を含むことを特徴とする脱硫剤が提供される。
本発明の一態様によれば、機械攪拌式脱硫装置にて溶銑を脱硫処理する際に、細孔径が0.5μm以上10μm以下となる細孔の容積の和である全細孔容積が0.1mL/g以上であり、平均粒径が210μm以上500μm以下の粉状の生石灰を含む脱硫剤を用いることを特徴とする溶銑脱硫方法が提供される。
本発明の一態様によれば、上記溶銑脱硫方法を用いることを特徴とする溶銑の製造方法が提供される。

発明の効果

0011

本発明の一態様によれば、脱硫効率に優れ、脱硫処理に掛かるコストの低減をできる脱硫剤、溶銑脱硫方法および溶銑の製造方法が提供される。

図面の簡単な説明

0012

本発明の一実施形態に係る機械攪拌式溶銑脱硫装置を示す模式図である。
第1の試験における、生石灰の全細孔容積と脱硫率との関係を示すグラフである。
第1の試験における、生石灰の平均粒径と脱硫率との関係を示すグラフである。
第2の試験における、浴面の水平方向の流速と脱硫率との関係を示すグラフである。

0013

以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の細部について記載される。しかしながら、かかる特定の細部がなくても1つ以上の実施態様が実施できることは明らかであろう。他にも、図面を簡潔にするために、周知の構造および装置が略図で示されている。
はじめに、本発明者らが本発明に至った経緯について説明する。本発明者らは、機械攪拌式脱硫法において、脱硫剤の特性(主に石灰性状)の観点から、各特性による脱硫効率への影響について鋭意研究を行った。その結果、比表面積、活性度などの様々な特性のうち、生石灰の細孔径分布および粒径の影響が大きく、特に細孔径の範囲が0.5μm以上10μm以下の細孔の全細孔容積が大きく影響することを知見した。図1に第1の試験に用いた機械攪拌式脱硫装置1、表1に第1の試験を実施した装置および試験方法の条件をそれぞれ示す。

0014

0015

図1に示すように、機械攪拌式脱硫装置1は、溶銑鍋2に収容された溶銑3を脱硫処理する精錬装置である。溶銑鍋2は、台車4に載せられた状態で、処理位置に配される。第1の試験では、溶銑鍋2の鍋径を4mとし、溶銑3の重量を300t/chとし、溶銑3の温度を1280℃以上1330℃以下とし、脱硫処理前の溶銑3のS濃度([S])を0.025wt%以上0.035wt%以下とした。なお、ch(チャージ)は、機械攪拌式脱硫装置1によって溶銑鍋2毎に行われる脱硫処理の回数を示す単位であり、300t/chとは一度の脱硫処理において処理される溶銑3の重量(溶銑鍋2に収容される溶銑3の重量)が300tであることを示す。

0016

機械攪拌式脱硫装置1は、攪拌羽根(インペラ)5と、投射手段6と、上添加手段7とを備える。攪拌羽根5は、耐火物製攪拌子であり、鉛直方向(図1紙面に対する上下方向)の上端が軸に接続され、この軸を中心とする中心軸に垂直な方向に突出する4枚の羽根を有する。また、攪拌羽根5の軸の上端側は、不図示の回転装置昇降装置に接続される。攪拌羽根5は、軸が回転装置からの回転駆動を受けることで、軸を中心として回転する。また、攪拌羽根5は、昇降装置の昇降動作によって鉛直方向に昇降可能に構成される。第1の試験では、攪拌羽根5の直径を1.45mとし、攪拌羽根5を130rpmの回転数で回転させて脱硫処理を行った。投射手段6は、ホッパー8と、ロータリーフィーダ9と、ランス10とを有する。ホッパー8には、脱硫剤が収容される。ロータリーフィーダ9は、ホッパー8に収容された脱硫剤を所定の切出し速度で切出し、ランス10へと供給する。ランス10は、65Aのランスであり、溶銑3の浴面上方に、鉛直方向に延在して配される。ランス10は、ロータリーフィーダ9から切出される脱硫剤を、不図示のキャリアガス供給装置から供給されるキャリアガスである窒素と共に噴射することで、溶銑3の浴面に脱硫剤を吹き付ける。上添加手段7は、ホッパー11と、ロータリーフィーダ12と、投入シュート13とを有する。ホッパー11には、脱硫剤が収容される。ロータリーフィーダ12は、ホッパー11に収容された脱硫剤を所定の切出し速度で切出し、投入シュート13へと供給する。投入シュート13は、下端が溶銑3の浴面上方に配され、ロータリーフィーダ12から供給される脱硫剤を先端から自由落下させることで溶銑3の浴面へ投入する。第1の試験では、投射手段6を用いた投射法または上添加手段7を用いた上添加法のいずれかの添加方法で脱硫剤を溶銑3に添加し、脱硫処理を行った。なお、投射法にて脱硫処理を行う場合、窒素ガスの流量を0Nm3/min〜7Nm3/minとし、脱硫剤を200kg/minの添加速度で添加した。一方、上添加法にて脱硫処理を行う場合、脱硫剤を1000kg/minの添加速度で添加した。

0017

また、第1の試験では、脱硫剤を粉状の生石灰のみとし、生石灰に不可避的に含有される成分以外の添加剤は添加せずに脱硫処理を行い、投射法または上添加法にて5kg/t(溶銑1トン当たりに対する添加量)の脱硫剤を添加した。さらに、生石灰の全細孔容積と脱硫率(処理前のS濃度に対する処理前後でのS濃度の変化量の割合)との関係、および生石灰の粒径と脱硫率との関係を調査するため、生石灰の全細孔容積または生石灰の粒径をそれぞれ変化させた条件で脱硫処理を行った。

0018

生石灰の全細孔容積は、測定される細孔径分布から算出される。細孔径分布の測定方法は、以下の通りである。まず、前処理として、生石灰を120℃で4時間、恒温乾燥した。次いで、Micromerities社製のオートポアIV9520を用いて、水銀圧入法により、乾燥させた生石灰の細孔直径が約0.0036μm〜200μmの細孔分布を求め、累積細孔容積曲線を算出した。さらに、算出された累積細孔容積曲線から、直径0.5μm〜10μmの細孔の全細孔容積を求めた。細孔径は、Washburnの式((2)式)を用いて算出した。なお、(2)式において、Pは圧力、Dは細孔直径、σは水銀の表面張力(=480dynes/cm)、θは水銀と試料との接触角(=140degrees)をそれぞれ示す。
P×D =−4×σ×cosθ ・・・(2)

0019

さらに、粒径とは平均粒径であり、脱硫剤をい分けることで所定の平均粒径とした。脱硫剤の平均粒径の測定方法は、以下の通りである。まず、メーカー出荷時、もしくは、ホッパー8への積み込み時に、500gの脱硫剤を採取する。次いで、採取した脱硫剤を、45μm以下、45μm〜75μm、75μm〜100μm、100μm〜125μm、125μm〜150μm、150μm〜300μm、300μm〜500μm、500μm〜1000μm、1000μm以上、の9段階に篩い分けした。さらに、篩い分けした脱硫剤について、(3)式の重量比率で計算することで、平均粒径を算出した。なお、(3)式において、Daは平均粒径(mm)、diはそれぞれの粒径範囲における平均粒子径篩目中央値)(mm)、wiはそれぞれの篩上の脱硫剤の重量(kg)を示す。

0020

0021

第1の試験の結果として、投射法または上添加法を用いた場合における、細孔径が0.5μm以上10μm以下の細孔の容積の和である全細孔容積と脱硫率との関係を図2に示す。なお、図2に示す条件では、脱硫剤の粒径は1mm以下とした。図2に示すように、投射法および上添加法のいずれの場合においても、細孔径が0.5μm以上10μm以下の全細孔容積が0.1mL/g以上となることで、著しく脱硫率が増加し、80%以上の高い脱硫率が得られることが確認された。また、上添加法に比べ、投射法を用いることで、脱硫率の向上代が大きくなることが確認された。

0022

次に、投射法または上添加法を用いた場合における、脱硫剤の平均粒径と脱硫率との関係を図3に示す。なお、図3に示す条件では、細孔径が0.5μm以上10μm以下の全細孔容積を0.2mL/gとした。図3に示すように、脱硫剤の平均粒径が210μm以上、500μm以下の範囲で、脱硫率が著しく増加することが確認できた。さらに、上記の範囲において、脱硫剤の平均粒径が230μm以上となることで、脱硫率がより増加することが確認できた。また、上添加法に比べ、投射法を用いることで、脱硫率の向上代が大きくなることが確認された。

0023

ここで、機械攪拌式脱硫法における脱硫剤の添加方法には、上添加法および投射法の少なくとも一方が一般的に用いられる。このような添加方法の場合、添加した脱硫剤が溶銑中へすべて侵入するインジェクション脱硫法とは異なり、小径の脱硫剤を溶銑中へ歩留り良く添加することが困難となる。このため、機械攪拌式脱硫法では、歩留り向上のためには、添加する脱硫剤の粒径が重要となる。一般的に粒径の小さい脱硫剤を用い、この脱硫剤が溶銑中へ侵入することが出来た場合には、溶銑との反応界面積を確保することが可能となることから、脱硫反応効率向上のためには有利となる。しかし、粒径の小さな脱硫剤は、小径になるほど溶銑中への侵入が困難となることから、添加されても反応に寄与しない可能性が高くなる。一方、添加する脱硫剤の粒径を大きくした場合、溶銑中への侵入には有利となり歩留りが向上するが、反応界面積は低下するため、脱硫反応の観点からは不利になる。このため、溶銑への歩留りを確保しつつ、反応を促進するためには、脱硫剤の適切な粒径を確保することと、反応効率を高めることとを両立させることが重要である。

0024

これに対して、本発明者らは、第1の試験の結果から、脱硫剤として生石灰を用いた機械攪拌式脱硫法における脱硫効率向上のためには、細孔径が0.5μm以上10μm以下の細孔の存在が重要であり、それら細孔の全細孔容積が0.1mL/g以上である脱硫剤を用いることが重要であることを知見した。さらに、この脱硫剤としては、平均粒径が210μm以上500μm以下のものを用いることで、溶鉄へ添加する際の歩留り向上のための適切な粒径を確保できることを知見した。このように、細孔に加えて平均粒径を制御することで、脱硫効率をより向上させることができる。さらに、機械攪拌式脱硫法においてこの条件の脱硫剤を用いる場合、溶銑3への脱硫剤の添加方法を、投射法とすることで上添加法に比べてより高い脱硫率が得られることを知見した。これらの第1の試験の結果から、以下の現象が考察される。溶銑脱硫が行われる温度では生石灰は固体であり、溶銑3の浴面に添加された生石灰が上記細孔径サイズを有する場合には、生石灰表面の細孔に溶銑3が浸入することで、物理的に溶銑3と生石灰との濡れ性が改善される。これにより、生石灰の溶銑3中への侵入が促進され、脱硫効率が向上すると考えられる。なお、引用文献2,3にも類似した生石灰の性状・特性が示されているが、引用文献2,3の場合、機械攪拌式脱硫における溶銑3の浴面への脱硫剤の添加とは異なるため、上記の現象と全く異なる原理となる。このため、本発明者らが知見した上記の脱硫剤については、引用文献2,3に記載された平均細孔径からは想到できないものとなる。

0025

次に、本発明者らは、投射法において攪拌条件が脱硫率へ与える影響を調査するため、第2の試験として、種々の攪拌条件にて脱硫処理を行った。第2の試験では、脱硫剤を第1の試験と同様に粉状の生石灰のみとし、細孔径が0.5μm以上10μm以下の全細孔容積が0.1mL/g以上、且つ粒径が2mm以下の生石灰を用いた。なお、脱硫剤の添加量は、5kg/tの一定量とし、石灰に不可避的に含有される以外にお添加剤は添加せずに脱硫処理を行った。また、第2の試験では、図1に示す機械攪拌式脱硫装置1を用いて脱硫処理を行った。なお、第2の試験では、脱硫剤を添加する際には投射手段6のみを用い、脱硫剤の添加条件は第1の試験と同様とした。さらに、第2の試験では、脱硫剤を吹き付ける溶銑3の浴面位置や、攪拌羽根5の回転数を変化させることで、これらの攪拌条件が脱硫率に与える影響を調査した。

0026

攪拌条件としては、攪拌羽根5の回転数、脱硫剤の吹き付け位置の違いにより、脱硫率が異なる結果となったが、それらは、脱硫剤を吹き付ける位置の溶銑3の浴面の水平方向の流速で整理することができた。ここで、水平方向の流速とは、脱硫剤を溶銑3の浴面に吹き付ける位置での、機械攪拌で生じる旋回流水平接線方向の流速である。
第2の試験の結果として、浴面の水平方向の流速と脱硫率との関係を図4に示す。図4に示すように、脱硫剤を吹き付ける位置の浴面の水平方向の流速が1.1m/s以上11.9m/s以下の場合、脱硫反応がより促進されていることが確認できた。脱硫剤をキャリアガスと共に溶銑3の浴面に吹き付ける場合、固体の生石灰が溶銑3の中に侵入する条件として、溶銑3側の速度も重要な要素となることが考えられる。脱硫剤を吹き付ける位置の浴面の水平方向の流速が1.1m/sより遅い場合、溶銑3の中へ添加された脱硫剤が攪拌羽根5により生成した渦中へ移動することができずに、すぐに浴面へ浮上してしまい、脱硫剤と溶銑3とでの反応が促進されない。一方、脱硫剤を吹き付ける位置の浴面の水平方向の流速が11.9m/sよりも速い場合、脱硫剤の垂直方向の速度が溶銑3の水平方向の速度に負けてしまい、一部の脱硫剤が飛散している様子が観察された。このことから、粉状の脱硫剤を吹き付ける位置の浴面の水平方向の流速が1.1m/s以上11.5m/s以下の場合、細孔径容量を調整した効果が発揮され、より効率よく溶銑3の中へ脱硫剤を巻込むことが可能となったと考えられる。
なお、上述の一連の試験では、上記の細孔容積や粒径の条件を満たす生石灰のみを生石灰源として実験を行ったが、これらの細孔容積や粒径の条件を満たさない生石灰を一部混合して脱硫剤としても構わない。この場合は、本発明の細孔径容量の条件を満たす生石灰の混合率に応じた効果が得られる。

0027

<脱硫剤、溶銑脱硫方法および溶銑の製造方法>
次に、上記知見に基づいた、本発明の一実施形態に係る脱硫剤、溶銑脱硫方法および溶銑の製造方法について説明する。本実施形態では、上記第1および第2の試験と同様に、図1に示す機械攪拌式脱硫装置1を用いて溶銑3の脱硫処理を行う。なお、機械攪拌式脱硫装置1は、溶銑鍋2の上部開口部を覆う蓋(不図示)や、この蓋に設けられ排気装置(不図示)に接続される排気ダクト(不図示)を有する。脱硫処理中に生じるガスダストは、この排気ダクトを通じて排気装置へと排出される。

0028

本実施形態に係る溶銑脱硫方法では、まず、溶銑3が収容された溶銑鍋2が台車4に載せられ、溶銑鍋2に対して攪拌羽根5が所定の位置となるまで台車4が移動する。次いで、昇降装置によって攪拌羽根5が下降することで、攪拌羽根5が溶銑3に浸漬する。そして、溶銑3に浸漬すると同時に、攪拌羽根5は、回転装置によって回転し、所定の回転数となるまで回転数が上げられる。このとき、排気装置によって、発生するガスやダストが、排気ダクトから排出される。さらに、攪拌羽根5が定常回転数に達した後、投射手段6または上添加手段7によって、溶銑3に脱硫剤が添加される。

0029

脱硫剤は、細孔径が0.5μm以上10μm以下となる細孔の容積の和である全細孔容積が0.1mL/g以上、且つ平均粒径が210μm以上500μm以下の生石灰とする。なお、生石灰の粒径の最小値は、添加時の飛散などを考慮すると、40μm以上とすることが好ましい。また、生石灰は、キルン炉メルツ炉、ベッケンバッハ炉などの、どのような炉で焼成されたものでも良い。投射手段6が用いられる場合には、ロータリーフィーダ9によって切出された脱硫剤が、窒素などのキャリアガスとともにランス10から溶銑3の浴面へと吹き込まれることで、溶銑3に添加される。この際、溶銑3の浴面の水平方向の流速が1.1m/s以上11.9m/s以下となる位置に脱硫剤が吹き込まれることが好ましい。浴面の流速が上記範囲となる位置は、攪拌羽根5の回転数や脱硫剤の吹き付け位置などの攪拌条件から予め算出される。一方、上添加手段7が用いられる場合には、ロータリーフィーダ9によって切出された脱硫剤が投入シュート13を介して、溶銑3の浴面に上添加される。

0030

脱硫剤が添加された後、所定の時間が経過するまで攪拌羽根5による溶銑3の攪拌が行われる。その後、回転装置によって攪拌羽根5の回転が停止するまで回転数が減少し、回転が停止した後に昇降装置にて攪拌羽根5が上昇する。次いで、脱硫処理によって生じたスラグが浮上して溶銑3の浴面を覆い、静止した状態となることで、脱硫処理が終了する。これにより、所望のS濃度の溶銑3が製造される。

0031

<変形例>
以上で、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態の種々の変形例とともに本発明の別の実施形態も明らかである。従って、特許請求の範囲は、本発明の範囲および要旨に含まれるこれらの変形例または実施形態も網羅すると解すべきである

0032

例えば、上記実施形態では、脱硫剤として細孔径が0.5μm以上10μm以下の全細孔容積が0.1mL/g以上、且つ平均粒径が210μm以上500μm以下の生石灰のみを用いるとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、脱硫剤は、全細孔容積および粒径が上記範囲内となる生石灰と、全細孔容積および粒径が上記範囲外となる生石灰とを混合したものであってよい。また、脱硫剤には、全細孔容積および粒径が上記範囲内となる生石灰に加えて、アルミナ系などの媒溶剤が添加されてもよい。この場合、生石灰が上記範囲外となる生石灰に比べて、生石灰の脱硫能が向上しているため、媒溶剤の添加量が少ない場合でも同等以上の脱硫効率を得ることができる。なお、本発明に係る脱硫剤は、フッ素、ナトリウムおよびカリウムのうち少なくとも1つの溶出元素を有する媒溶剤を含まない。

0033

また、上記実施形態では、脱硫処理をする際には精錬剤として脱硫剤のみが用いられる構成としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、脱硫反応をさらに促進させる精錬剤として、金属Alを含有するアルミドロス粉末や金属Alなどの脱酸剤が添加されてもよい。この場合、脱酸剤は、脱硫剤とは異なるホッパーに収容され、このホッパーから切出された後に、投入シュート13を介して溶銑3に添加されてもよい。また、例えば、精錬剤として、蛍石やソーダ灰などの媒溶剤が添加されてもよい。この場合、媒溶剤は、事前に脱硫剤と混合した状態で添加されてもよいし、脱硫剤とは異なるホッパーに収容され、このホッパーから切出された後に、投入シュート13を介して溶銑3に添加されてもよい。

0034

さらに、上記実施形態では、投射手段6にはランス10が1本設けられる構成としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、2本以上のランス10が設けられてもよい。
さらに、上記実施形態では、脱硫剤は機械攪拌式溶銑脱硫法に用いられる構成としたが、本発明はかかる例に限定されない。脱硫剤として、細孔径が0.5μm以上10μm以下となる細孔の容積の和である全細孔容積が0.1mL/g以上の生石灰を用いる場合には、図2に示すように、反応界面積が大きくなることで脱硫率が顕著に増加する。この効果は、機械攪拌式溶銑脱硫法だけでなく、例えば、インジェクション脱硫法といった、溶銑を脱硫処理する他の脱硫法においても有効なものとなる。このため、本発明に係る脱硫剤は、機械攪拌式溶銑脱硫法以外の脱硫処理の方法に用いられてもよい。

0035

<実施形態の効果>
(1)本発明の一態様に係る脱硫剤は、溶銑脱硫に用いられる脱硫剤であって、細孔径が0.5μm以上10μm以下となる細孔の容積の和である全細孔容積が0.1mL/g以上の生石灰を含む。
上記(1)の構成によれば、生石灰の全細孔容積を上記範囲とすることにより、生石灰による脱硫効率を向上させることができる。これにより、脱硫処理時間の短縮による生産効率の向上、温度ロスの低減および処理コストの低減、ならびに脱硫処理に伴い発生するダストおよびスラグの発生量低減が可能となる。また、反応効率の高いCaO系以外の脱硫剤に比べ、精錬剤に掛かるコストを低減でき、取扱いも容易となる。さらに、機械攪拌式脱硫法における上添加法および投射法の両方の添加手段に対して適用することができる。

0036

(2)上記(1)の構成において、生石灰は、平均粒径が210μm以上500μm以下の粉状のものであり、機械攪拌式溶銑脱硫法に用いられる。
上記(2)の構成によれば、生石灰の平均粒径を上記範囲とすることで、生石灰による脱硫効率をより向上させることができる。また、脱硫剤を機械攪拌式溶銑脱硫法に用いることで、上記構成の生石灰による脱硫効率向上効果をより効果的に得ることができる。

0037

(3)上記(2)の構成において、生石灰は、平均粒径が230μm以上500μm以下である。
上記(3)の構成によれば、上記(2)の構成に比べ、脱硫効率をより向上させることができる。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかの構成において、実質的にフッ素、カリウムおよびナトリウムの少なくともいずれか一つが含まれない。ここで、フッ素、カリウムおよびナトリウムの少なくともいずれか一つの元素が実質的に含まれない状態とは、少なくともいずれか一つの元素が、不可避的な微量の混入を除いて、意図的な添加により含まれていないことをいう。

0038

上記(4)の構成によれば、高価な媒溶剤の使用量が削減され、脱硫処理における精錬剤に掛かるコストを低減することができる。また、フッ素などの環境への影響が懸念される成分を含まないため、脱硫処理後のスラグを有効的に活用することができる。さらに、ナトリウムを含まないため、排ガス中からのNa除去処理の必要がなく、耐火物コストを低減することができる。さらに、反応効率の高いCaO系以外の脱硫剤に比べ、精錬剤に掛かるコストを低減でき、取扱いも容易となる。

0039

(5)上記(1)〜(3)のいずれかの構成において、生石灰のみからなる。なお、脱硫剤には、CaOの他に、生石灰に不可避的に含有される成分が含まれてもよい。
上記(5)の構成によれば、媒溶剤やCaO系以外の脱硫剤を用いることがないため、精錬剤に掛かるコストを大幅に低減することができる。また、ナトリウムやカリウム等の溶出元素を有する媒溶剤を含まないため、高価な媒溶剤の使用量が削減され、脱硫処理における精錬剤に掛かるコストを低減することができる。さらに、フッ素などの環境への影響が懸念される成分を含まないため、脱硫処理後のスラグを有効的に活用することができる。さらに、ナトリウムを含まないため、排ガス中からのNa除去処理の必要がなく、耐火物コストを低減することができる。

0040

(6)本発明に一態様に係る溶銑脱硫方法は、機械攪拌式脱硫装置1にて溶銑3を脱硫処理する際に、細孔径が0.5μm以上10μm以下となる細孔の容積の和である全細孔容積が0.1mL/g以上であり、平均粒径が210μm以上500μm以下の粉状の生石灰を含む脱硫剤を用いる。
上記(6)の構成によれば、上記(1)および(2)の構成と同様な効果を得ることができる。
(7)上記(6)の構成において、生石灰は、平均粒径が230μm以上500μm以下である。
上記(7)の構成によれば、上記(3)の構成と同様な効果を得ることができる。

0041

(8)上記(6)または(7)の構成において、機械攪拌式脱硫装置1は、溶銑3を攪拌する攪拌羽根5と、溶銑3の上方より溶銑3の浴面に脱硫剤をキャリアガスと共に吹き付ける上吹きランス10とを備え、溶銑3の脱硫処理をする際に、攪拌羽根5を用いて溶銑を攪拌し、溶銑3が攪拌された状態で、上吹きランス10を用いて浴面に脱硫剤を吹き付ける。
上記(8)の構成によれば、上添加法を用いて脱硫剤を添加する場合に比べ、生石灰の脱硫効率の向上効果をより大きくすることができる。

0042

(9)上記(8)の構成において、脱硫剤を浴面に吹き付ける際に、脱硫剤が吹き付けられる位置の浴面の水平方向の流速を、1.1m/s以上11.5m/s以下とする。
上記(9)の構成によれば、投射法によって脱硫剤を添加する場合において、脱硫効率をさらに向上させることができる。
(10)本発明の一態様に係る溶銑の製造方法は、上記(6)〜(9)のいずれかの構成に記載の溶銑脱硫方法を用いる。
上記(10)の構成によれば、上記(6)〜(9)の構成と同様な効果を得ることができる。

0043

次に、本発明者らが行った実施例について説明する。実施例1では、図1に示す機械攪拌式脱硫装置1を用いて、上記実施形態に係る溶銑脱硫方法を用いて溶銑3の脱硫処理を行った。
実施例1では、脱硫処理が行われる溶銑3には、高炉から出銑した後、高炉鋳床および受銑容器である溶銑鍋における2段階の脱珪処理を行ったものを用いた。脱硫処理前の溶銑3の組成は、事前の脱珪により[Si]=0.05wt%〜0.10wt%、[C]=4.3wt%〜4.6wt%、[Mn]=0.22wt%〜0.41wt%、[P]=0.10wt%〜0.13wt%、および[S]=0.025wt%〜0.035wt%であった。脱硫処理前の溶銑3の温度は、1280℃〜1330℃であった。

0044

また、実施例1では、生石灰の全細孔容積、粒径および比率を、上記実施形態の範囲内で変化させた脱硫剤を用いた複数の条件で脱硫処理を行った。さらに、実施例1では、脱硫剤の添加量を5kg/tの一定量とし、脱硫剤を添加する際には、投射手段6による投射法または上添加手段7による上添加法のいずれかの方法を用いた複数の条件で脱硫処理を行った。脱硫剤の添加条件および攪拌条件は、表1に示す第1の試験と同様とした。なお、脱硫剤のいずれの添加方法においても、脱硫剤が添加される浴面の位置は同じ位置とした。そして、脱硫処理の前後に測定された溶銑3のS濃度から脱硫率を算出することで、脱硫効率を評価した。

0045

さらに、実施例1では、比較例として、インジェクション脱硫法を用いた条件、生石灰の全細孔容積の和および平均粒径が上記実施形態の範囲と異なる条件で脱硫処理を行い、実施例と同様に脱硫効率を評価した。
表2に、実施例1における試験水準と脱硫効率の評価結果を示す。表2において、生石灰の比率(%)は、脱硫剤である生石灰のうち、細孔径が0.5μm以上10μm以下、且つ粒径が2mm以下となる生石灰の比率を示す。また、表2において、0.5−10μm細孔全容積(mL/g)は、細孔径が0.5μm以上10μm以下の細孔の容積の和である全細孔容積を示す。なお、用いた生石灰の平均細孔径は、0.1μm〜0.3μmであった。

0046

0047

表2に示すように、脱硫剤である生石灰の特性を上記実施形態の条件とした実施例1—1〜1−17では、脱硫剤の添加方法の違いに関わらず、75%以上の高い脱硫率が得られることを確認した。また、実施例1−1〜1−8の上添加法を用いた条件に対して、実施例1−9〜1−15の投射法を用いた条件の方が、脱硫率が高くなる傾向が確認された。
一方、細孔全容積の和または粒径のいずれかが上記実施形態の条件と異なる比較例1−1〜1−12では、脱硫率が70%以下となり、実施例1−1〜1−17に比べて低位となることが確認された。

0048

次に、実施例2では、脱硫剤の添加方法を投射法とした場合において、攪拌条件の脱硫効率へ与える影響を調査した。実施例2では、実施例1−1〜1−15と同様に投射法を用いて脱硫剤を添加し、脱硫剤である生石灰の全細孔容積の和、粒径および攪拌条件を変えた複数の条件で脱硫処理を行った。表3に、実施例2における試験水準と脱硫効率の評価結果を示す。なお、攪拌羽根5の回転数や脱硫剤の吹き付け位置などの違いとなる攪拌条件の違いは、各条件から算出される溶銑3の浴面の水平方向流速で整理した。

0049

実施例

0050

表3に示すように、脱硫剤を吹き付ける位置の溶銑3の浴面の水平方向の流速が、1.1m/s以上11.5m/s以下の範囲となる、実施例2−3〜2−9,2−15〜2−19の条件では、脱硫率が97%以上と、他の条件に比べてより高くなることが確認された。

0051

1機械攪拌式脱硫装置
2溶銑鍋
3溶銑
4台車
5攪拌羽根
6投射手段
7 上添加手段
8ホッパー
9ロータリーフィーダ
10ランス
11 ホッパー
12 ロータリーフィーダ
13 投入シュート

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