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技術 冷延鋼帯の製造方法及び製造設備

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 寺崎雄太秋元浩幸増岡弘之
出願日 2016年7月7日 (4年7ヶ月経過) 出願番号 2016-553611
公開日 2017年7月6日 (3年7ヶ月経過) 公開番号 WO2017-007036
状態 特許登録済
技術分野 薄鋼板の熱処理 化学的方法による金属質材料の清浄、脱脂
主要キーワード 変色面積 混酸液中 ディフラクションパターン 被膜質量 循環設備 原子濃度比 塩酸液 テープ剥離試験後
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年7月6日)のものです。
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図面 (7)

課題・解決手段

化成処理性、過酷な腐食環境での塗装後耐食性、及び表面外観品質のいずれにも優れる冷延鋼帯を長期間安定して連続的に製造することが可能な、冷延鋼帯の製造方法を提供する。 本発明の冷延鋼帯の製造方法は、冷間圧延後、連続焼鈍し鋼帯を、酸化性の第1の酸と非酸化性の第2の酸とを含む混酸液に連続的に浸漬して酸洗する工程と、その後、前記鋼帯を、非酸化性の第3の酸を含む酸液に連続的に浸漬して再酸洗する工程と、を有し、前記混酸液中鉄イオン濃度が上昇するほど、前記混酸液中の前記第1の酸の濃度を低く、前記第2の酸の濃度を高く変更することを特徴とする。

概要

背景

近年、地球環境を保護する観点から、自動車燃費改善が強く求められている。また、衝突時における乗員の安全を確保する観点から、自動車車体高強度化も強く求められている。これらの要求に応えるため、自動車部材素材となる冷延鋼板を高強度化し、薄肉化(軽量化)することで、自動車車体の軽量化と高強度化を同時に達成することが積極的に推し進められている。しかし、自動車部材の多くは、冷延鋼板を成形加工して製造されていることから、その素材となる冷延鋼板には、高い強度に加えて、優れた成形性も求められている。

冷延鋼板の強度を高める方法には種々あるが、成形性を大きく損なわずに高強度化を図る有効な手段としては、Si添加による固溶強化法が挙げられる。しかし、冷延鋼板に多量のSi、特に0.5質量%以上のSiを添加した場合には、スラブ加熱時や、熱間圧延時あるいは冷間圧延後の焼鈍時に、鋼板表面にSiO2やSi−Mn系複合酸化物等のSi含有酸化物が多量に形成されることが知られている。このSi含有酸化物は、化成処理性を著しく低下させるため、Siを多く含む高強度冷延鋼板は、化成処理性に劣る。さらに、Siを多く含む高強度冷延鋼板は、電着塗装後に、塩温水浸漬試験や、湿潤−乾燥を繰り返す複合サイクル腐食試験のような過酷な腐食環境に曝されると、通常の冷延鋼板に比べて塗膜剥離を起こし易く、塗装後耐食性に劣るという問題がある。そのため、Siを多く含有する高強度冷延鋼板を、塗装が必要なボディ用途に用いることは困難であった。

この問題を解決する技術として、特許文献1,2がある。特許文献1,2には、冷間圧延後、連続焼鈍した鋼板を、硝酸塩酸、又は、硝酸と弗酸などの混酸に連続的に浸漬して酸洗する工程と、その後、前記鋼板を、塩酸、硫酸などの非酸化性の酸に連続的に浸漬して再酸洗する工程と、を有する冷延鋼板の製造方法が記載されている。この方法は、酸洗工程で、鋼板表面のSi含有酸化物を除去し、再酸洗工程で、酸洗工程で発生した鉄系酸化物を除去するものであり、これにより、化成処理性、過酷な腐食環境での塗装後耐食性に優れる冷延鋼板を製造可能である。

概要

化成処理性、過酷な腐食環境での塗装後耐食性、及び表面外観品質のいずれにも優れる冷延鋼帯を長期間安定して連続的に製造することが可能な、冷延鋼帯の製造方法を提供する。 本発明の冷延鋼帯の製造方法は、冷間圧延後、連続焼鈍した鋼帯を、酸化性の第1の酸と非酸化性の第2の酸とを含む混酸液に連続的に浸漬して酸洗する工程と、その後、前記鋼帯を、非酸化性の第3の酸を含む酸液に連続的に浸漬して再酸洗する工程と、を有し、前記混酸液中鉄イオン濃度が上昇するほど、前記混酸液中の前記第1の酸の濃度を低く、前記第2の酸の濃度を高く変更することを特徴とする。

目的

本発明は、上記課題に鑑み、化成処理性、過酷な腐食環境での塗装後耐食性、及び表面外観品質のいずれにも優れる冷延鋼帯を長期間安定して連続的に製造することが可能な、冷延鋼帯の製造方法及び製造設備を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

冷間圧延後、連続焼鈍し鋼帯を、酸化性の第1の酸と非酸化性の第2の酸とを含む混酸液に連続的に浸漬して酸洗する工程と、その後、前記鋼帯を、非酸化性の第3の酸を含む酸液に連続的に浸漬して再酸洗する工程と、を有する冷延鋼帯の製造方法であって、前記混酸液中鉄イオン濃度が上昇するほど、前記混酸液中の前記第1の酸の濃度を低く、前記第2の酸の濃度を高く変更することを特徴とする冷延鋼帯の製造方法。

請求項2

前記第1の酸が硝酸である請求項1に記載の冷延鋼帯の製造方法。

請求項3

前記第2の酸及び/又は前記第3の酸が、塩酸硫酸リン酸ピロリン酸ギ酸酢酸クエン酸弗酸、及びシュウ酸から選択される一種以上である請求項1又は2に記載の冷延鋼帯の製造方法。

請求項4

前記第1の酸が硝酸であり、前記第2の酸及び前記第3の酸が塩酸である請求項1に記載の冷延鋼帯の製造方法。

請求項5

前記混酸液中において、前記硝酸の濃度は110g/L超え188g/L以下の範囲に設定し、前記塩酸の濃度は4.5g/L超え12.5g/L以下の範囲に設定する請求項4に記載の冷延鋼帯の製造方法。

請求項6

前記酸洗の後、前記再酸洗の前に、前記鋼帯を水に浸漬させる請求項1〜5のいずれか一項に記載の冷延鋼帯の製造方法。

請求項7

前記酸洗工程及び前記再酸洗工程での合計の酸洗減量を8g/m2以上とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の冷延鋼帯の製造方法。

請求項8

前記鋼帯がSiを0.5〜3.0質量%含有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の冷延鋼帯の製造方法。

請求項9

酸化性の第1の酸、非酸化性の第2の酸、及び非酸化性の第3の酸の原液をそれぞれ収容する第1原液タンク、第2原液タンク、及び第3原液タンクと、前記第1原液タンク、前記第2原液タンク、及び前記第3原液タンクからそれぞれ延びる第1配管、第2配管、及び第3配管と、前記第1配管及び前記第2配管が接続され、前記第1原液タンクから供給される前記第1の酸と、前記第2原液タンクから供給される前記第2の酸とを混合して収容する混酸液用循環タンクと、前記第1配管及び前記第2配管にそれぞれ設けられ、前記第1原液タンクからの前記第1の酸の供給量及び前記第2配管からの前記第2の酸の供給量をそれぞれ調整するための第1の弁及び第2の弁と、前記第3配管が接続され、前記第3原液タンクから供給される前記第3の酸を収容する酸液用循環タンクと、前記第1の酸及び前記第2の酸を含む混酸液を収容する混酸槽と、前記第3の酸を含む酸液を収容する酸槽と、前記混酸液用循環タンクと前記混酸槽とを連結し、前記混酸液を両者間で循環させるための少なくとも2本の第4配管と、前記酸液用循環タンクと前記酸槽とを連結し、前記酸液を両者間で循環させるための少なくとも2本の第5配管と、冷間圧延後、連続焼鈍した鋼帯を搬送して、前記混酸槽、前記酸槽の順に連続的に浸漬させる通板設備と、前記混酸槽中の前記混酸液中の鉄イオン濃度を測定する濃度計と、前記濃度計の出力に基づき前記第1の弁及び前記第2の弁を制御して、前記混酸液中の鉄イオン濃度が上昇するほど、前記第1原液タンクからの前記第1の酸の供給量を少なく、前記第2原液タンクからの前記第2の酸の供給量を多く変更して、前記混酸液中の前記第1の酸の濃度を低く、前記第2の酸の濃度を高く変更する制御部と、を有することを特徴とする冷延鋼帯の製造設備

請求項10

前記混酸槽と前記酸槽との間に位置し、水を収容する水槽を有し、前記通板設備は、前記混酸槽を出た前記鋼帯を、前記水槽に連続的に浸漬させた後、前記酸槽に連続的に浸漬させるよう構成される、請求項9に記載の冷延鋼帯の製造設備。

請求項11

前記第2の酸と前記第3の酸とが同種の酸であり、前記第2原液タンクと前記第3原液タンクとが同一のタンクである請求項9又は10に記載の冷延鋼帯の製造設備。

技術分野

0001

本発明は、冷延鋼帯の製造方法及び製造設備に関する。

背景技術

0002

近年、地球環境を保護する観点から、自動車燃費改善が強く求められている。また、衝突時における乗員の安全を確保する観点から、自動車車体高強度化も強く求められている。これらの要求に応えるため、自動車部材素材となる冷延鋼板を高強度化し、薄肉化(軽量化)することで、自動車車体の軽量化と高強度化を同時に達成することが積極的に推し進められている。しかし、自動車部材の多くは、冷延鋼板を成形加工して製造されていることから、その素材となる冷延鋼板には、高い強度に加えて、優れた成形性も求められている。

0003

冷延鋼板の強度を高める方法には種々あるが、成形性を大きく損なわずに高強度化を図る有効な手段としては、Si添加による固溶強化法が挙げられる。しかし、冷延鋼板に多量のSi、特に0.5質量%以上のSiを添加した場合には、スラブ加熱時や、熱間圧延時あるいは冷間圧延後の焼鈍時に、鋼板表面にSiO2やSi−Mn系複合酸化物等のSi含有酸化物が多量に形成されることが知られている。このSi含有酸化物は、化成処理性を著しく低下させるため、Siを多く含む高強度冷延鋼板は、化成処理性に劣る。さらに、Siを多く含む高強度冷延鋼板は、電着塗装後に、塩温水浸漬試験や、湿潤−乾燥を繰り返す複合サイクル腐食試験のような過酷な腐食環境に曝されると、通常の冷延鋼板に比べて塗膜剥離を起こし易く、塗装後耐食性に劣るという問題がある。そのため、Siを多く含有する高強度冷延鋼板を、塗装が必要なボディ用途に用いることは困難であった。

0004

この問題を解決する技術として、特許文献1,2がある。特許文献1,2には、冷間圧延後、連続焼鈍した鋼板を、硝酸塩酸、又は、硝酸と弗酸などの混酸に連続的に浸漬して酸洗する工程と、その後、前記鋼板を、塩酸、硫酸などの非酸化性の酸に連続的に浸漬して再酸洗する工程と、を有する冷延鋼板の製造方法が記載されている。この方法は、酸洗工程で、鋼板表面のSi含有酸化物を除去し、再酸洗工程で、酸洗工程で発生した鉄系酸化物を除去するものであり、これにより、化成処理性、過酷な腐食環境での塗装後耐食性に優れる冷延鋼板を製造可能である。

先行技術

0005

特開2012−132092号公報
特開2012−188693号公報

発明が解決しようとする課題

0006

しかしながら、本発明者らが検討したところ、上記のような二段階酸洗を実施可能な製造設備に冷延鋼帯を連続的に通板して、冷延鋼帯に上記二段階酸洗を継続的に行うと、時間が経つにつれて、その時に製造される冷延鋼帯の表面外観品質が劣ってくることが判明した。具体的には、時間が経つにつれて、第一段階の酸洗工程直後の冷延鋼帯の表面が何らかの付着物により赤褐色に変色し、この変色は、第二段階の再酸洗工程でも除去されないことがわかった。このような表面外観品質に劣る冷延鋼帯の中には、化成処理性、過酷な腐食環境での塗装後耐食性が劣るものも存在した。

0007

そこで本発明は、上記課題に鑑み、化成処理性、過酷な腐食環境での塗装後耐食性、及び表面外観品質のいずれにも優れる冷延鋼帯を長期間安定して連続的に製造することが可能な、冷延鋼帯の製造方法及び製造設備を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

本発明者らが鋭意検討したところ、冷延鋼帯の表面外観品質と、当該冷延鋼帯が第一段階の混酸による酸洗に供された際の混酸中の鉄イオン濃度(以下、単に「Fe濃度」ともいう。)との間に相関関係があることが見出された。具体的には、混酸中のFe濃度が高いほど、当該混酸で酸洗した冷延鋼帯の表面が赤褐色に変色する傾向があった。

0009

本発明者らがこの原因について調査したところ、酸洗の過程で冷延鋼板から徐々にFeが溶出し、混酸中のFe濃度が上昇するにつれて、酸洗速度が増加することが分かった。その結果、発生する反応熱が混酸循環設備冷却能力以上となり、混酸の液温が上昇する。そして、冷延鋼帯が酸洗槽から大気中に出てくるところで乾燥が促進され、混酸液が残った状態で乾くことで変色が発生することが分かった。したがって、良好な化成処理性及び塗装後耐食性を担保する観点からは一定の酸洗減量を確保することが前提であるが、表面外観品質を劣化させないためには、混酸中のFe濃度に応じて、酸洗速度、すなわち混酸の液温を適切に制御する必要がある。

0010

本発明は、上記の知見によって完成されたものであり、その要旨構成は以下のとおりである。
(1)冷間圧延後、連続焼鈍した鋼帯を、酸化性の第1の酸と非酸化性の第2の酸とを含む混酸液に連続的に浸漬して酸洗する工程と、
その後、前記鋼帯を、非酸化性の第3の酸を含む酸液に連続的に浸漬して再酸洗する工程と、
を有する冷延鋼帯の製造方法であって、
前記混酸液中の鉄イオン濃度が上昇するほど、前記混酸液中の前記第1の酸の濃度を低く、前記第2の酸の濃度を高く変更することを特徴とする冷延鋼帯の製造方法。

0011

(2)前記第1の酸が硝酸である上記(1)に記載の冷延鋼帯の製造方法。

0012

(3)前記第2の酸及び/又は前記第3の酸が、塩酸、硫酸、リン酸ピロリン酸ギ酸酢酸クエン酸、弗酸、及びシュウ酸から選択される一種以上である上記(1)又は(2)に記載の冷延鋼帯の製造方法。

0013

(4)前記第1の酸が硝酸であり、前記第2の酸及び前記第3の酸が塩酸である上記(1)に記載の冷延鋼帯の製造方法。

0014

(5)前記混酸液中において、前記硝酸の濃度は110g/L超え188g/L以下の範囲に設定し、前記塩酸の濃度は4.5g/L超え12.5g/L以下の範囲に設定する上記(4)に記載の冷延鋼帯の製造方法。

0015

(6)前記酸洗の後、前記再酸洗の前に、前記鋼帯を水に浸漬させる上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の冷延鋼帯の製造方法。

0016

(7)前記酸洗工程及び前記再酸洗工程での合計の酸洗減量を8g/m2以上とする上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の冷延鋼帯の製造方法。

0017

(8)前記鋼帯がSiを0.5〜3.0質量%含有する上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の冷延鋼帯の製造方法。

0018

(9)酸化性の第1の酸、非酸化性の第2の酸、及び非酸化性の第3の酸の原液をそれぞれ収容する第1原液タンク、第2原液タンク、及び第3原液タンクと、
前記第1原液タンク、前記第2原液タンク、及び前記第3原液タンクからそれぞれ延びる第1配管、第2配管、及び第3配管と、
前記第1配管及び前記第2配管が接続され、前記第1原液タンクから供給される前記第1の酸と、前記第2原液タンクから供給される前記第2の酸とを混合して収容する混酸液用循環タンクと、
前記第1配管及び前記第2配管にそれぞれ設けられ、前記第1原液タンクからの前記第1の酸の供給量及び前記第2配管からの前記第2の酸の供給量をそれぞれ調整するための第1の弁及び第2の弁と、
前記第3配管が接続され、前記第3原液タンクから供給される前記第3の酸を収容する酸液用循環タンクと、
前記第1の酸及び前記第2の酸を含む混酸液を収容する混酸槽と、
前記第3の酸を含む酸液を収容する酸槽と、
前記混酸液用循環タンクと前記混酸槽とを連結し、前記混酸液を両者間で循環させるための少なくとも2本の第4配管と、
前記酸液用循環タンクと前記酸槽とを連結し、前記酸液を両者間で循環させるための少なくとも2本の第5配管と、
冷間圧延後、連続焼鈍した鋼帯を搬送して、前記混酸槽、前記酸槽の順に連続的に浸漬させる通板設備と、
前記混酸槽中の前記混酸液中の鉄イオン濃度を測定する濃度計と、
前記濃度計の出力に基づき前記第1の弁及び前記第2の弁を制御して、前記混酸液中の鉄イオン濃度が上昇するほど、前記第1原液タンクからの前記第1の酸の供給量を少なく、前記第2原液タンクからの前記第2の酸の供給量を多く変更して、前記混酸液中の前記第1の酸の濃度を低く、前記第2の酸の濃度を高く変更する制御部と、
を有することを特徴とする冷延鋼帯の製造設備。

0019

(10)前記混酸槽と前記酸槽との間に位置し、水を収容する水槽を有し、
前記通板設備は、前記混酸槽を出た前記鋼帯を、前記水槽に連続的に浸漬させた後、前記酸槽に連続的に浸漬させるよう構成される、上記(9)に記載の冷延鋼帯の製造設備。

0020

(11)前記第2の酸と前記第3の酸とが同種の酸であり、前記第2原液タンクと前記第3原液タンクとが同一のタンクである上記(9)又は(10)に記載の冷延鋼帯の製造設備。

発明の効果

0021

本発明の冷延鋼帯の製造方法及び製造設備によれば、化成処理性、過酷な腐食環境での塗装後耐食性、及び表面外観品質のいずれにも優れる冷延鋼帯を長期間安定して連続的に製造することができる。

図面の簡単な説明

0022

本発明の一実施形態における冷延鋼帯の製造設備100の模式図である。
比較例における、(A)被膜表面SEM画像、(B)GD分析結果、(C)塗装後耐食性の評価試験後のサンプルの画像、(D)サンプルの表面の画像である。
発明例1における、(A)被膜表面のSEM画像、(B)GDS分析結果、(C)塗装後耐食性の評価試験後のサンプルの画像、(D)サンプルの表面の画像である。
発明例2における被膜表面のSEM画像であり、(A)Fe濃度=5g/Lのサンプル、(B)Fe濃度=15g/Lのサンプル、(C)Fe濃度=20g/Lのサンプルの画像である。

0023

(冷延鋼帯の製造方法)
本発明の一実施形態による冷延鋼帯の製造方法は、冷間圧延後、連続焼鈍した鋼帯を、酸化性の第1の酸と非酸化性の第2の酸とを含む混酸液に連続的に浸漬して酸洗する工程と、その後、前記鋼帯を、非酸化性の第3の酸を含む酸液に連続的に浸漬して再酸洗する工程と、を有する。

0024

(酸洗工程)
冷延鋼帯に所望の組織と強度、加工性を付与するために行われる連続焼鈍炉を用いた焼鈍工程では、通常、雰囲気ガスとして非酸化性又は還元性ガスが用いられており、露点厳格に管理されている。そのため、合金添加量の少ない一般冷延鋼帯では、鋼帯表面酸化は抑制されている。しかし、0.5質量%以上のSiや、Mnを含有する冷延鋼帯では、焼鈍時の雰囲気ガスの成分や露点を厳格に管理しても、Feと比較して易酸化性であるSiやMn等が酸化して、鋼帯表面にSi酸化物(SiO2)やSi−Mn系複合酸化物などのSi含有酸化物を形成することが避けられない。Si含有酸化物は、鋼帯表面だけでなく、地鉄内部にまで形成されるため、電着塗装下地処理としてなされる化成処理リン酸亜鉛処理)における鋼帯表面のエッチング性阻害し、健全化成処理皮膜の形成に悪影響を及ぼす。しかも近年では、化成処理時に発生するスラッジ量ランニングコストの低減を目的として、化成処理液低温度化が進み、従来と比較して、化成処理液の鋼帯に対する反応性が著しく低い条件で化成処理がなされるようになってきている。このような状況下では、化成処理性の悪化はより顕著に表れる。

0025

そこで、本実施形態の酸洗工程では、冷延鋼帯を酸化性の第1の酸と非酸化性の第2の酸とを含む混酸液に連続的に浸漬して、冷延鋼帯の表面のSi含有酸化物層を除去する。Si含有酸化物層の厚さは、鋼帯成分や焼鈍条件(温度、時間、雰囲気)によって変化するが、通常、鋼帯表面から1μm程度である。

0026

酸化性の第1の酸としては、硝酸を挙げることができる。混酸液中に第1の酸が必要な理由は、Si含有酸化物のうち、Si−Mn系複合酸化物は酸に容易に溶解するが、SiO2は難溶性を示すため、これを除去するには、硝酸のような酸化性の酸で鋼帯表面のSi含有酸化物を地鉄ごと取り除いてやる必要があるからである。

0027

混酸液中の硝酸の濃度は、110g/L超え188g/L以下の範囲に設定することが好ましい。110g/L以下の場合、混酸液中の許容されるFe濃度の上限が低くなり、廃液処理せずに同一の混酸液を用いて連続酸洗処理できる時間が短縮され、188g/Lを超えると、後段の再酸洗工程で鉄系の酸化物を溶解させにくくなるためである。また、硝酸の濃度が高いほど、混酸液中のFe濃度が速く上昇しやすく、すなわち、許容されるFe濃度の上限に早く到達しやすい。その結果、廃液処理せずに同一の混酸液を用いて連続酸洗処理できる時間が短くなる。この観点から、硝酸の濃度は140g/L以下がより好ましく、130g/L以下がより好ましい。

0028

非酸化性の第2の酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、ピロリン酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、弗酸、及びシュウ酸から選択される一種以上とすることができるが、特に塩酸、硫酸、弗酸は好ましく用いることができる。このような非酸化性の酸を用いる理由は、上記酸化性の第1の酸による酸洗に伴って鋼帯表面に沈殿析出してくる鉄系酸化物の生成を抑制するためである。

0029

混酸液中の第2の酸の濃度は4.5g/L超え12.5g/L以下の範囲に設定することが好ましい。4.5g/L以下の場合、後段の再酸洗工程で鉄系酸化物を溶解させにくくなり、12.5g/Lを超えると、単位時間あたりの酸洗減量が低下し鋼帯表層にSiO2の残存が懸念されるからである。より好ましくは、6.5g〜8.5g/Lである。

0030

なお、Si含有酸化物の量に影響を与える条件は、鋼帯の組成と焼鈍条件であり、これらを考慮すれば、Si含有酸化物を除去するために好適な酸洗時間が決まる。そこで、この好適な酸洗時間を確保できるように、硝酸の濃度、通板速度および酸洗設備長を設定すればよい。

0031

(再酸洗工程)
上記酸洗工程により、鋼帯表面から溶解したFeが鉄系酸化物を生成し、これが鋼帯表面に沈殿析出して鋼帯表面を覆うことにより化成処理性が低下する。そこで、本実施形態では、上記酸洗工程の後、冷延鋼帯を、非酸化性の第3の酸を含む酸液に連続的に浸漬して、この鉄系酸化物を除去する。「鉄系酸化物」とは、酸化物を構成する酸素以外の元素のうちで鉄の原子濃度比が30%以上である鉄主体の酸化物のことをいう。この鉄系酸化物は、鋼帯表面上に不均一な厚さで存在しており、数nmの厚さで均一かつ層状に存在する自然酸化皮膜とは異なる酸化物である。なお、この冷延鋼帯の表面に生成した鉄系酸化物は、透過型電子顕微鏡TEM)による観察や電子線回折によるディフラクションパターン回折図形)の解析結果から非晶質であることがわかっている。

0032

非酸化性の第3の酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、ピロリン酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、弗酸、及びシュウ酸から選択される一種以上を挙げることができるが、特に塩酸、硫酸、弗酸は好ましく用いることができる。中でも塩酸は、揮発性の酸であるため、硫酸のように鋼帯表面に硫酸根などの残留物が残存し難いことや、塩化物イオンによる鉄系酸化物の破壊効果が大きいことなどから、好適である。また、塩酸と硫酸を混合した酸を用いてもよい。また、酸洗工程で用いる第2の酸と、本工程で用いる第3の酸とは、同種類の酸であっても、異なる種類の酸であってもよい。しかし、製造設備を共通化できる観点から、同種類の酸であることが好ましい。

0033

酸液中の第3の酸の濃度は4.5g/L超え12.5g/L以下の範囲に設定することが好ましい。4.5g/L以下の場合、鉄系酸化物を溶解させにくくなり、12.5g/Lを超えると、鋼帯表層の酸液の残存によって変色の発生が懸念されるからである。より好ましくは、6.5g〜8.5g/Lである。

0034

再酸洗工程の好適な酸洗時間は、一段目の酸洗で生じた鉄系酸化物を除去するために必要な酸洗減量と、酸組成によって決定される酸洗効率と、酸洗長とから決定される。一般的には酸温度は30〜60℃程度、酸洗時間は10秒程度の酸洗時間とされる。

0035

連続焼鈍後、上記のように酸洗及び再酸洗を施した冷延鋼帯は、その後、調質圧延レベラー加工等の通常の処理工程を経て製品板としての冷延鋼板とすることができる。

0036

前記酸洗工程及び前記再酸洗工程での合計の酸洗減量は8g/m2以上とすることが好ましい。合計の酸洗減量が8g/m2以上あれば、鋼帯表面にSi含有酸化物や鉄系酸化物が残存しにくいため、より高い化成処理性が得られる。

0037

(混酸液中の酸濃度の制御)
ここで、本発明の特徴的構成である、混酸中の酸濃度の制御について説明する。既述のとおり、上記二段階酸洗を実施可能な製造設備に冷延鋼帯を連続的に通板して、冷延鋼帯に上記二段階酸洗を継続的に行うと、時間が経つにつれて、その時に第一段階の酸洗工程直後の冷延鋼帯の表面が何らかの付着物により赤褐色に変色する現象発現した。そして、この現象は、混酸中のFe濃度が高いほど生じやすいことがわかった。つまり、混酸中のFe濃度が高くなるにつれて、その混酸で酸洗処理された直後の冷延鋼帯の表面の変色面積率も上昇することがわかった。

0038

この原因は既述のとおり、混酸中のFe濃度の上昇に伴い、混酸液の温度が上昇することである。そこで本実施形態では、混酸中のFe濃度に応じて、酸洗速度、すなわち混酸の液温を適切に制御する必要がある。具体的には、混酸液中のFe濃度が上昇するほど、混酸液中の第1の酸(例えば硝酸)の濃度を低く、第2の酸(例えば塩酸)の濃度を高く変更する。

0039

本実施形態では、このような酸濃度の制御によって、混酸液の温度を常に、45〜55℃の範囲内に維持することが好ましい。45℃未満となると、単位時間あたりの酸洗減量が低下し鋼帯表層にSiO2の残存が懸念され、55℃を超えると、鋼帯表面の変色が生じ始めるからである。

0040

混酸液中のFe濃度が上昇するほど、混酸液中の第1の酸の濃度を低く、第2の酸の濃度を高く変更する態様は、特に限定されないが、例えば以下の方法をとることができる。

0041

鋼帯の酸洗に使用されていないフレッシュな混酸中のFe濃度はゼロである。このフレッシュな混酸中の第1の酸及び第2の酸の濃度は、上記好適範囲の中間あたりとする。例えば、第1の酸の濃度を132.5g/L、第2の酸の濃度を6.5g/Lと設定することができる。

0042

その後、混酸中のFe濃度の測定を経時的に行う。Fe濃度の測定は常に行っていてもよいし、一定期間ごとに間欠的に測定してもよい。

0043

そして、Fe濃度を何段階かに分類しておき、段階ごとに、第1及び第2の酸の設定濃度を予め決めておき、Fe濃度が次の段階に移ったら第1及び第2の酸の濃度を変更する。例えば、混酸中のFe濃度が15g/Lに達した段階で、第1の酸の濃度を125.0g/L、第2の酸の濃度を7.5g/Lと変更することができる。さらに時間が経過し、混酸中のFe濃度が20g/Lに達した段階で、第1の酸の濃度を110.0g/L、第2の酸の濃度を8.5g/Lと変更することができる。

0044

別の態様として、Fe濃度と第1及び第2の酸の設定濃度との関係式事前に決めておき、混酸中のFe濃度が徐々に上昇するのに合わせて、刻々と第1及び第2の酸の濃度を変更することもできる。

0045

混酸中の酸濃度の変更のタイミングや、各段階での酸濃度の値などは特に限定されず、鋼帯の組成や焼鈍条件等を考慮して、適宜決定すればよい。

0046

本実施形態によれば、酸濃度の制御によって、混酸中のFe濃度が上昇しても、酸洗速度を増加させず、混酸の液温を好適範囲に維持することができる。その結果、化成処理性、過酷な腐食環境での塗装後耐食性、及び表面外観品質のいずれにも優れる冷延鋼帯を長期間安定して連続的に製造することができる。

0047

(冷延鋼帯の製造設備)
次に、上記冷延鋼帯の製造方法を実施可能な、本発明の一実施形態による冷延鋼帯の製造設備100について説明する。製造設備100は、水を収容する水槽10と、第1の酸としての硝酸と第2の酸としての塩酸とを含む混酸液(硝塩酸)を収容する混酸槽12と、水を収容する水槽14と、第3の酸としての塩酸を収容する酸槽16と、水を収容する水槽18とをこの順に有する。

0048

通板設備は、上記5つの槽にそれぞれ浸漬するロール11,13,15,17,19と、各槽の上方に位置する複数のロール20とを含み、冷間圧延後、連続焼鈍した鋼帯Pを搬送して、水槽10、混酸槽12、水槽14、酸槽16、水槽18の順に連続的に浸漬させることができる。

0049

製造設備100は、第1原液タンクとして、硝酸を収容する硝酸用原液タンク20と、第2原液タンク及び第3原液タンクとして、塩酸を収容する塩酸用原液タンク22とを有する。硝酸用原液タンク20からは第1配管24が延び、塩酸用原液タンク22からは第2配管26及び第3配管28が延びる。

0050

混酸液用循環タンク30は、第1配管24及び第2配管26が接続され、硝酸用原液タンク20から供給される硝酸と、塩酸用原液タンク22から供給される塩酸とを混合して収容する。第1配管24には第1の弁32が設けられ、硝酸用原液タンク20からの硝酸の供給量を調整可能である。第2配管26には第2の弁34が設けられ、塩酸用原液タンク22からの塩酸の供給量を調整可能である。

0051

酸液用循環タンク40は、第3配管28が接続され、塩酸用原液タンク22から供給される塩酸を収容する。第3配管にも弁が設けられ、塩酸用原液タンク22からの塩酸の供給量を調整可能である。

0052

2本の第4配管38は、混酸液用循環タンク30と混酸槽12とを連結し、混酸液を両者間で循環させるための配管である。2本の第4配管38にはそれぞれ弁が設けられ、この弁によって、混酸液の循環量を調整可能である。また、混酸液用循環タンク30には熱交換器36が設けられ、反応熱によって上昇した混酸液の温度を、この熱交換器36によって下げることができる。

0053

2本の第5配管42は、酸液用循環タンク40と酸槽16とを連結し、塩酸液を両者間で循環させるための配管である。2本の第5配管42にはそれぞれ弁が設けられ、この弁によって、塩酸液の循環量を調整可能である。また、酸液用循環タンク40には熱交換器44が設けられ、反応熱による塩酸液の温度の上昇を、この熱交換器44によって抑えることができる。

0054

製造設備100は、混酸槽12中の混酸液中のFe濃度を測定するFe濃度計52を有する。酸洗の過程で冷延鋼帯から徐々にFeが溶出し、混酸中のFe濃度は徐々に上昇する。この混酸中のFe濃度の上昇をFe濃度計52で随時検知する。Fe濃度計52としては、例えば、近赤外分光分析を使用し混酸液に1分間ピッチ近赤外線照射し、照射後のスペクトルの変化から混酸液中のFe濃度を算出する分析計を用いることができる。Fe濃度計52に供する混酸液は、図1に示すように混酸槽12からサンプリングしてもよいし、混酸槽12から混酸液用循環タンク30に向かう第4配管38からサンプリングしてもよい。なお、製造設備100は、循環タンク30から混酸をサンプリングして、Fe濃度計52に供することも可能に構成されている。これは、循環タンク30中の混酸液を交換する際に、新たな混酸液のFe濃度を測定するためである。

0055

制御部54は、Fe濃度計52の出力に基づき、第1の弁32及び第2の弁34を制御する。具体的には、混酸液中のFe濃度が上昇するほど、硝酸用原液タンク20からの硝酸の供給量を少なく、塩酸用原液タンク22からの塩酸の供給量を多く変更して、混酸液中の硝酸の濃度を低く、塩酸の濃度を高く変更する。具体的な制御方法は、既述のとおりである。制御部54は、コンピュータ内部の中央演算処理装置(CPU)によって実現できる。

0056

なお、図1では、制御部54によって混酸液中の酸濃度を自動制御する例を示したが、本発明の製造方法はこれに限定されず、Fe濃度計52による測定結果に基づいて、オペレータが第1の弁32及び第2の弁34を調整してもよい。

0057

混酸液用循環タンク30からは廃液用配管46が延び、酸液用循環タンク40からは廃液用配管48が延び、各タンクからの廃液を廃液ピット50に送る。廃液ピットに送られた廃液は、pH処理及びN2処理を経て廃棄される。硝塩酸液中のFe濃度は徐々に上昇するが、許容するFe濃度の上限は25g/L以下の値に設定することが好ましい。硝塩酸液中のFe濃度が25g/Lを超えると、本発明を適用しても化成処理性が低下を抑制しにくくなるからである。そこで、Fe濃度が25g/Lに近づいてきたら、混酸液用循環タンク30から廃液ピット50に硝塩酸を送り、原液タンク20,22からフレッシュな硝酸と塩酸を補充する。硝塩酸液中の許容するFe濃度の上限は、より優れた化成処理性を確保する観点からは、15g/L以下の値に設定することがより好ましい。また、操業の効率の観点から、硝塩酸液中の許容するFe濃度の下限は、10g/L以上に設定することが好ましい。酸液用循環タンク40からの塩酸の廃液は、特に限定されないが、ある一定の使用期間を経過したら、操業中以外のタイミングで行う。

0058

一実施形態として、硝酸用原液タンク20から混酸液用循環タンク30への硝酸の供給量Aは、0.8〜1.6m3/hrとすることができ、塩酸用原液タンク22から混酸液用循環タンク30への塩酸の供給量Bは、0.1〜0.3m3/hrとすることができる。A,Bは硝酸及び塩酸の濃度を変更するタイミングで変化する。また、混酸液用循環タンク30での循環量Cは、25〜90m3/hrとすることができ、混酸液用循環タンク30からの廃液量Dは、0〜5m3/hrとすることができ、塩酸用原液タンク22から酸液用循環タンク40への塩酸の供給量Eは、1.0〜2.0m3/hrとすることができ、酸液用循環タンク40での循環量Fは、25〜90m3/hrとすることができ、酸液用循環タンク40からの廃液量Gは、0〜5m3/hrとすることができる。C,D,E,F,Gは、操業中、特に変更する必要はない。

0059

また、本実施形態のように、水槽14を設けることによって、混酸槽12から鋼帯Pが持ち出した硝塩酸が酸槽16の塩酸中混入することを防ぐことができる。そのため、酸槽16での再酸洗によって確実に鉄系酸化物を除去できるため好ましい。

0060

(冷延鋼帯の成分組成
本発明を適用する冷延鋼帯の成分組成は特に限定されないが、Siを0.5〜3.0質量%含有することが好適である。Siは、加工性を大きく損なうことなく鋼の強度を高めることができるため、鋼の高強度化を達成するには有効な元素であるが、化成処理性や塗装後耐食性に悪影響を及ぼす元素でもある。Siを添加して高強度化を図るためには0.5質量%以上の添加が必要である。また、Siが0.5質量%未満では、化成処理条件の悪化による影響も小さいので、本発明を適用する必要性が低い。一方、Siの含有量が3.0質量%を超えると、鋼が硬質化し、圧延性や通板性(製造性)に悪影響を及ぼしたり、鋼帯自体の延性低下を招いたりする。よって、Siは0.5〜3.0質量%の範囲で添加する。好ましくは0.8〜2.5質量%の範囲である。

0061

Si以外の成分については、通常の冷延鋼帯が有する組成範囲であれば許容することができ、特に制限されるものではない。ただし、本発明を、自動車車体等に用いる引張強さTSが590MPa以上の高強度冷延鋼板に適用する場合には、以下の成分組成を有するものであることが好ましい。

0062

C:0.01〜0.30質量%
Cは、鋼を高強度化するのに有効な元素であり、さらに、TRIP(変態誘起塑性:Transformation Induced Plasticity)効果を有する残留オーステナイトや、ベイナイトマルテンサイトを生成させるのにも有効な元素である。上記効果は0.01質量%以上の添加で得られる。また、Cの添加量が0.30質量%以下であれば、溶接性が大きく低下することもない。よって、Cは0.01〜0.30質量%の範囲で添加するのが好ましい。より好ましくは0.10〜0.20質量%の範囲である。

0063

Mn:1.0〜7.5質量%
Mnは、鋼を固溶強化して高強度化するとともに、焼入性を高め、残留オーステナイトやベイナイト、マルテンサイトの生成を促進する作用を有する元素である。このような効果は、1.0質量%以上の添加で発現する。一方、Mnの過剰な添加は原料コストの上昇を招くが、7.5質量%以下であれば許容できる。よって、Mnは1.0〜7.5質量%の範囲で添加するのが好ましい。より好ましくは2.0〜5.0質量%の範囲である。

0064

P:0.05質量%以下
Pは、固溶強化能の大きい割に深絞り性を害さない元素であり、高強度化を達成するのに有効な元素である。上記効果を得るには0.005質量%以上含有させることが好ましい。一方、Pは、スポット溶接性を害する元素でもあるので、上限は0.05質量%とするのが好ましい。より好ましくは0.02質量%以下である。

0065

S:0.01質量%以下
Sは、鋼中に不可避的に混入してくる不純物元素であり、MnSとして析出し、鋼板の伸びフランジ性を低下させる有害な成分でもある。伸びフランジ性を低下させないためには、Sは0.01質量%以下に制限するのが好ましく、0.005質量%以下がより好ましい。さらに好ましくは0.003質量%以下である。脱硫コストの観点から、工業的には0.0001質量%以上となる。

0066

Al:0.06質量%以下
Alは、製鋼工程で脱酸剤として添加される元素であり、また、伸びフランジ性を低下させる非金属介在物スラグとして分離するのに有効な元素であるので、0.01質量%以上含有させるのが好ましい。しかし、過剰な添加は原料コストの上昇を招くので、Alの上限は0.06質量%とするのが好ましい。より好ましくは0.02〜0.06質量%の範囲である。

0067

本発明を適用する冷延鋼帯は、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。ただし、任意で以下の成分を含んでもよい。

0068

例えば、Ti、Nb及びVは、炭化物や窒化物等の析出物を形成し、鋼の強度を上昇させる他、フェライト成長を抑制して組織を微細化し、成形性、特に伸びフランジ性を向上させる有用な元素である。上記効果は、それぞれの元素とも0.005質量%以上の添加で得られ、0.3質量%を超えると飽和する。そのため、Ti、Nb及びVは、それぞれ0.005〜0.3質量%の範囲で1種又は2種以上を添加するのが好ましい。より好ましくは、それぞれ0.005〜0.2質量%の範囲である。

0069

Mo及びCrは、鋼の焼入れ性を向上し、ベイナイトやマルテンサイトの生成を促進して高強度化に寄与する元素である。上記効果は、それぞれ0.005質量%以上の添加で得られ、0.3質量%超えると飽和する。そのため、Mo及びCrは、それぞれ0.005〜0.3質量%の範囲で添加するのが好ましい。より好ましくは、それぞれ0.005〜0.2質量%の範囲である。

0070

Bは、鋼の焼入れ性を高めるのに有効な元素であるので、0.001質量%以上0.006質量%以下添加することができる。より好ましくは、0.002質量%以下である。Ni及びCuは、鋼の高強度化に有効な元素であり、それぞれ0.001質量%以上2.0質量%以下の範囲で添加することができる。

0071

Nは、鋼の耐時効性を最も劣化させる元素であり、特に、0.008質量%を超えると耐時効性の劣化が顕著となる。そのため、Nは低いほどよく、0.008質量%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.006質量%以下である。工業的には0.001質量%以上となる。

0072

Ca及びREMは、硫化物の形態を球状化する効果があり、伸びフランジ性を改善するのに有効な元素である。上記効果は、0.001質量%以上の添加で得られ、0.1質量%を超えると鋼の清浄度が低下するようになる。よって、Ca及びREMは、それぞれ0.001〜0.1質量%の範囲で添加するのが好ましい。

0073

制御部を有しない以外は図1と同じ製造設備を用いて、以下の発明例・比較例にかかる操業を行った。質量%で、C:0.125%、Si:1.40%、Mn:1.90%、P:0.02%、S:0.002%、残部はFeおよび不可避的不純物の成分組成を有し、連続焼鈍炉で還元雰囲気下で焼鈍された冷延鋼帯を、上記製造設備に通板して、酸洗および再酸洗を行った。

0074

(比較例)
混酸中の硝酸の濃度は132.5g/L、塩酸の濃度は6.5g/Lとした。操業開始時の混酸中のFe濃度は0g/Lであった。操業の過程でFe濃度は徐々に上昇したが、混酸中の硝酸濃度および塩酸濃度不変とした。なお、再酸洗工程での塩酸の濃度は、3g/Lとした。混酸液中のFe濃度が20g/Lとなったときに酸洗され、その後再酸洗された鋼帯からサンプルを採取し、以下の評価に供した。酸洗工程及び再酸洗工程での合計の酸洗減量は5.9g/m2であった。

0075

(発明例1)
操業開始時の混酸中の硝酸の濃度を132.5g/L、塩酸の濃度を6.5g/Lとした。操業開始時の混酸中のFe濃度は0g/Lであった。操業の過程でFe濃度は徐々に上昇したので、混酸中のFe濃度が15g/Lに達した段階で、硝酸の濃度を125.0g/L、塩酸の濃度を7.5g/Lと変更し、さらに、混酸中のFe濃度が20g/Lに達した段階で、硝酸の濃度を110.0g/L、塩酸の濃度を8.5g/Lと変更した。混酸中の硝酸濃度および塩酸濃度の変更はオペレータが行った。なお、再酸洗工程での塩酸の濃度は、6g/Lとした。混酸液中のFe濃度が20g/Lとなったときに酸洗され、その後再酸洗された鋼帯からサンプルを採取し、以下の評価に供した。酸洗工程及び再酸洗工程での合計の酸洗減量は21.3g/m2であった。

0076

<化成処理性の評価>
比較例及び発明例1のサンプルに対して、下記条件で化成処理を施した。リン酸塩被膜化成結晶結晶粒径および被膜質量を測定した。一般的な管理値である結晶粒径5μm以下、被膜質量1.0〜3.0g/m3を好適範囲とした。また、被膜表面を1000倍でSEM観察して、化成結晶の乗っていない箇所の有無を確認した。さらに、GDS分析によりサンプル表層のO,Si,Mn及びFeの深さ方向分布を測定し、表層のSiピークの有無を確認した。

0077

化成処理条件:
サンプルに日本パーカライジング社製の脱脂剤:FC−E2011、表面調整剤PL−X、及び化成処理剤パルボンドPB−L3065を用いて、下記の条件で、被膜付着量が1.7〜3.0g/m2となるよう化成処理を施した。
脱脂工程:処理温度40℃、処理時間120秒
スプレー脱脂表面調整工程:pH9.5、処理温度室温、処理時間20秒
化成処理工程:化成処理液の温度35℃、処理時間120秒

0078

平均結晶粒径は、比較例で6μm、発明例1で4μmであった。被膜質量は、比較例で0.9g/m3、発明例1で2.5g/m3であった。また、被膜表面のSEM画像は、比較例を図2(A)に、発明例1を図3(A)に示す。このように、比較例では、化成結晶の乗っていない箇所が観察されるのに対して、発明例1では化成結晶が均一に観察された。GDS分析結果については、比較例では図2(B)に示すように表層のSiピークが検出され、発明例1では図3(B)に示すように表層のSiピークが検出されなかった。これらの結果から、比較例は化成処理性に劣り、発明例1は化成処理性に優れることがわかった。

0079

<塗装後耐食性の評価>
比較例及び発明例1のサンプルに対して、上記の条件で化成処理を施し、さらに化成処理被膜の表面に、日本ペイント社製の電着塗料:V−50を用いて、膜厚が25μmとなるように電着塗装を施した。この試験片の表面に、カッターで長さ45mmのクロスカット疵を付与した後、この試験片を、塩水噴霧(5質量%NaCl水溶液:35℃、相対湿度:98%)×2時間→乾燥(60℃、相対湿度:30%)×2時間→湿潤(50℃、相対湿度:95%)×2時間、を1サイクルとして、これを90サイクル繰り返す腐食試験に供し、その後、水洗し、乾燥した後、カット疵部についてテープ剥離試験を行った。カット疵部左右を合わせた最大剥離全幅を測定した。この最大剥離全幅が6.0mm以下であれば、塗装後耐食性は良好と評価できる。

0080

テープ剥離試験後の試験片の画像を、比較例は図2(C)に、発明例1は図3(C)に示す。比較例では、最大剥離全幅が7.9mmであり、塗装後耐食性が不良であったのに対して、発明例1では最大剥離全幅が5.6mmと、塗装後耐食性が良好であった。

0081

<表面外観の評価>
サンプルの表面の画像を、比較例は図2(D)に、発明例1は図3(D)に示す。このように、比較例では表面が赤褐色に変色したが、発明例1ではそのような変色は生じず、良好な表面外観であった。

0082

(発明例2)
操業開始時の混酸中のFe濃度は5.0g/Lであった。必要な酸洗減量を確保するための硝酸の濃度及び塩酸の濃度とFe濃度との関係をそれぞれ以下の関係式(1),(2)で設定しておき、開始時の硝酸濃度は132.5g/L、塩酸の濃度は5.5g/Lとした。操業の過程で混酸中のFe濃度が徐々に上昇したので、それに合わせて式(1),(2)に従って硝酸の濃度及び塩酸の濃度を変更した。
硝酸濃度(g/L)=140−1.5×Fe濃度(g/L) ・・・(1)
塩酸濃度(g/L)=4.5+0.2×Fe濃度(g/L) ・・・(2)
なお、再酸洗工程での塩酸の濃度は8g/Lとした。混酸液中のFe濃度が5g/L、15.0g/L、及び20g/Lとなったときに酸洗され、その後再酸洗された鋼帯からサンプルを採取し、以下の評価に供した。酸洗工程及び再酸洗工程での合計の酸洗減量は、Fe濃度=5g/Lのサンプルで11.0g/m2、Fe濃度=15g/Lのサンプルで12.0g/m2、Fe濃度=20g/Lのサンプルで12.0g/m2であった。

0083

採取したサンプルに対して、上記比較例及び発明例1と同様の方法で、化成処理性の評価、塗装後耐食性の評価、及び表面外観の評価を行った。

0084

<化成処理性の評価結果>
被膜表面のSEM画像は、Fe濃度=5g/Lのサンプルを図4(A)に、Fe濃度=15g/Lのサンプルを図4(B)に、Fe濃度=20g/Lのサンプルを図4(C)に示す。いずれの画像においても化成結晶が均一に観察された。また、いずれのサンプルでも、GDS分析において表層のSiピークは検出されなかった。よって、発明例2も化成処理性に優れることがわかった。

0085

<塗装後耐食性の評価結果>
最大剥離全幅は、Fe濃度=5g/Lのサンプルで5.2mm、Fe濃度=15g/Lのサンプルで4.8mm、Fe濃度=20g/Lのサンプルで5.6mmであった。よって、発明例2も発明例1と同様に塗装後耐食性が良好であった。

実施例

0086

<表面外観の評価結果>
Fe濃度=5g/Lのサンプル、Fe濃度=15g/Lのサンプル、及びFe濃度=20g/Lのサンプルの表面を観察した。いずれのサンプル表面でも赤褐色の変色は見られず、良好な表面外観であった。ただし、Fe濃度=20g/Lのサンプルでは、表面の一部にわずかなステインが観察されたのに対して、Fe濃度=5g/Lのサンプル及びFe濃度=15g/Lのサンプルでは、ステインがなく非常に美麗な表面外観であった。このことから、Fe濃度の上限は15g/Lとすることが好ましいことがわかる。

0087

本発明の冷延鋼帯の製造方法及び製造設備によれば、化成処理性、過酷な腐食環境での塗装後耐食性、及び表面外観品質のいずれにも優れる冷延鋼帯を長期間安定して連続的に製造することができる。そのため、本発明により製造した冷延鋼帯は、自動車車体の強度部材家電製品用部材、建築部材等に好適に用いることができる。

0088

100冷延鋼帯の製造設備
10,14,18水槽
12混酸槽(硝塩酸用)
16酸槽(塩酸用)
11,13,15,17,19,20ロール(通板設備)
20硝酸用原液タンク
22 塩酸用原液タンク
24 第1配管
26 第2配管
28 第3配管
30混酸液用循環タンク
32 第1の弁
34 第2の弁
36熱交換器
38 第4配管
40酸液用循環タンク
42 第5配管
44 熱交換器
46,48廃液用配管
50 廃液ピット
52Fe濃度計
54 制御部

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