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課題・解決手段
概要
背景
従来から、織編物等布帛の繊維構造物の防汚性を改善する要求は高く、その防汚性を改善する方法が種々提案されている。一般に、繊維構造物に防汚性を付与する方法としては、繊維構造物に親水性樹脂を付与して洗浄液との親和性を上げて汚れを落とし易くする加工方法や、繊維構造物に撥水撥油樹脂を付与して繊維への汚れの付着を抑制する加工技術が検討されている。
しかしながら、繊維構造物に親水性樹脂を付与する場合、水系汚れが付着するとそれが大きく拡がり易くなるという課題がある。また、繊維構造物に撥水撥油性樹脂を付与する場合では、撥水性により洗浄液との親和性が低下するため、一旦汚れが付着した場合に洗濯除去がされにくく、再汚染などが起こりやすいという課題がある。
このような課題に対して、汚れの付きにくさや落とし易さの両方の性能を満足させるために、親水基を含有した撥水撥油樹脂の繊維への付与が検討されている。
概要
繊維表面の少なくとも1部に防汚性を有する樹脂が固着した繊維構造物であって、透過電子顕微鏡により観察される酸化オスミウムに染色された領域が該樹脂の内部の少なくとも1部に存在し、該領域の少なくとも1つは、円形であり、該領域の最大径は100nm以上、500nm以下であり、さらに繊維表面をエネルギー分散型X線分析装置で測定した際の酸素原子とフッ素原子の質量濃度比(O/F)が3以上である防汚性繊維構造物。水性汚れと油性汚れに対して高い付着抑制性と洗濯による洗濯による汚れ除去性を有する繊維構造物を提供する。
目的
本発明の課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、水性汚れと油性汚れに対して高い付着抑制性と洗濯による汚れ除去性を同時に有する繊維構造物を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 1件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
繊維表面の少なくとも1部に防汚性を有する樹脂が固着した繊維構造物であって、透過電子顕微鏡により観察される酸化オスミウムに染色された領域が該樹脂の内部の少なくとも1部に存在し、該領域の少なくとも1つは、円形であり、該領域の最大径は100nm以上、500nm以下であり、さらに繊維表面をエネルギー分散型X線分析装置で測定した際の酸素原子とフッ素原子の質量濃度比(O/F)が3以上である防汚性繊維構造物。
請求項2
請求項3
請求項4
該親水性成分が、ポリエチレングリコールである請求項3に記載の防汚性繊維構造物。
請求項5
該樹脂のパーフルオロオクタン酸含有量が検出限界未満である請求項1〜4のいずれかに記載の防汚性繊維構造物。
請求項6
請求項7
技術分野
背景技術
0002
従来から、織編物等布帛の繊維構造物の防汚性を改善する要求は高く、その防汚性を改善する方法が種々提案されている。一般に、繊維構造物に防汚性を付与する方法としては、繊維構造物に親水性樹脂を付与して洗浄液との親和性を上げて汚れを落とし易くする加工方法や、繊維構造物に撥水撥油樹脂を付与して繊維への汚れの付着を抑制する加工技術が検討されている。
0003
しかしながら、繊維構造物に親水性樹脂を付与する場合、水系汚れが付着するとそれが大きく拡がり易くなるという課題がある。また、繊維構造物に撥水撥油性樹脂を付与する場合では、撥水性により洗浄液との親和性が低下するため、一旦汚れが付着した場合に洗濯除去がされにくく、再汚染などが起こりやすいという課題がある。
0005
特許文献1には、繊維表面を親水性樹脂で被覆し、その親水性樹脂の上に親水基を有する撥水撥油樹脂の層を形成する加工方法が提案されている。
0007
特許文献3には、単繊維表面に、トリアジン環含有重合性単量体からなる重合体と親水性成分を有するフッ素系撥水剤の混合された被膜を形成する加工方法が提案されている。
先行技術
0008
また、特許文献4には、非ブロックタイプの水分散型イソシアネート架橋剤を用いてフッ素系撥水剤を繊維布帛に付与する加工方法が提案されている。
特開平9−3771号公報
特開2013−72165号公報
特開2008−163475号公報
特開2013−36136号公報
発明が解決しようとする課題
0009
しかしながら、特許文献1や、特許文献2に提案された加工方法では、繊維表面に親水性樹脂を被覆していることから、一旦水系汚れ付着してしまうと汚れが拡散しやすくなるという問題がある。
0010
また、特許文献3に提案された加工方法では、トリアジン環含有重合性単量体からなる重合体を多量に使用していることから、親水性成分を有するフッ素系撥水剤の成分がトリアジン環含有重合性単量体からなる重合体に埋もれてしまい、撥水性および撥油性を発現できないことや、ホルムアルデヒドが発生することによる人体への影響が懸念されるという問題がある。
0011
また、特許文献4に提案された加工方法では、高い撥水性を発現するため、洗濯時の洗浄液との親和性を低下させ、洗濯による汚れ除去性を低下させる傾向があるという問題がある。
課題を解決するための手段
0013
本発明は、上記課題を解決するために、次の構成を有する。すなわち、
繊維表面の少なくとも1部に防汚性を有する樹脂が固着した繊維構造物であって、透過電子顕微鏡(以下、TEM)により観察される酸化オスミウムに染色された領域が該樹脂の内部の少なくとも1部に存在し、該領域の少なくとも1つは、円形であり、該領域の最大径は100nm以上、500nm以下であり、さらに繊維表面をエネルギー分散型X線分析装置で測定した際の酸素原子とフッ素原子の質量濃度比(O/F)が3以上である防汚性繊維構造物、である。
0015
また、本発明の防汚性繊維構造物は、該領域に親水性成分と疎水性成分とが存在していることが好ましい。
0016
また、本発明の防汚性繊維構造物は、該親水性成分が、ポリエチレングリコールであることが好ましい。
0017
また、本発明の防汚性繊維構造物は、該樹脂のパーフルオロオクタン酸(以下、PFOAということがある)含有量が検出限界未満であることが好ましい。
0019
CH2=C(CH3)C(=O)OCH2CH2(CF2)5CF3 (I)
本発明の防汚性繊維構造物は、繊維構造物の押し込み汚れに対する汚れ除去性試験の汚れ除去性が工業洗濯50回後で3級以上であることが好ましい。
発明の効果
0020
本発明によれば、高い防汚性を有する繊維構造物を安定に供給することができる。
0021
本発明の防汚性繊維構造物は、繊維表面の防汚性樹脂の親水基とフッ素基の割合を制御し、防汚性樹脂内部に親水性領域が少なくとも1部に存在し、該親水性領域の少なくとも1つは、最大径100nm以上、500nm以下の円形である樹脂構造にすることにより、洗濯除去が困難な油汚れの繊維への付着を抑制すると共に、洗濯時の洗浄液との親和性を高めるため、洗濯による汚れ除去性を向上することができ、高い汚れ除去性により洗濯時間の短縮や洗剤量の低減が可能となる。
図面の簡単な説明
0024
本発明の防汚性繊維構造物は、繊維表面の少なくとも1部に防汚性を有する樹脂が固着した繊維構造物であって、TEMにより観察される酸化オスミウムに染色された領域が該樹脂の内部の少なくとも1部に存在し、該領域の少なくとも1つは、円形であり、該領域の最大径は100nm以上、500nm以下である。
0025
酸化オスミウムは樹脂中、親水性成分が含有される部分を染色する。本発明の繊維構造物において酸化オスミウムに染色された領域は、樹脂の親水性成分により形成され、樹脂の内部の少なくとも1部に存在する。親水性成分としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられるが、中でもポリエチレングリコールが好ましい。
0026
本発明の防汚性繊維構造物には防汚性樹脂が固着してなるが、固着とは、樹脂が繊維と接し、付着または被膜している状態を表す。
0027
染色領域は円形であることが必要であり、円形とは楕円形、卵形、俵形などの角のない形を表す。円形でない場合には、親水成分の効果を十分に発揮することができず、洗濯時の汚れ落ち性が悪くなるという問題がある。
0028
染色領域は樹脂内部に2つ以上存在することが親水性成分を一定量以上確保して防汚性を優れたものとする観点から好ましく、また、複数の染色領域が散在していることが親水性と疎水性のバランスを保ち、加工上りの防汚性と洗濯耐久性が向上する観点から好ましい。
0029
本発明の防汚性繊維構造物の高い防汚性を発現するためには、樹脂中に親水性成分と疎水性成分とが存在することが好ましく、親水性成分により形成される酸化オスミウムに染色された領域の大きさを最適化することにより、汚れの付きにくさと落とし易さの性能を両立させることができる。親水性成分により繊維と洗浄液との親和性を向上させ、疎水(撥油)性成分により繊維内部への汚れの浸透を抑制することができる。
0030
TEMにより観察される樹脂内部における酸化オスミウムに染色された領域の最大径が100nm以上、500nm以下であることが必要である。酸化オスミウムに染色された領域の最大径が500nmを超えると、撥水性および撥油性が低下し、汚れをはじく汚れ付着防止性(SG性)が低下することになる。また、親水性成分領域が広がりすぎることにより、樹脂と繊維との接着性が低下し、洗濯耐久性の低下を招くことにもなる。また、酸化オスミウムに染色された領域の最大径が100nm未満の場合には、洗濯時の洗濯液との親和性が低下し、汚れを落とす汚れ除去性(SR性)が低下することになる。
0031
最大径を上記範囲とする方法としては、特に限定されるものではないが、親水性成分の含有量を調整することで本発明の防汚性繊維構造物を得ることができる。
0032
ここで、酸化オスミウムによる染色と、樹脂内部における酸化オスミウムに染色された領域の最大径の測定方法について説明する。まず、防汚性繊維構造物を3%酸化オスミウムに浸漬し、常温(20℃)で3日間染色後、水洗、風乾し、エポキシ樹脂でサンプルを包埋する。
0033
その後、ミクロトームを用いて、繊維を、繊維長手方向に対して垂直な方向に、70〜100nm程度の厚みで輪切りにする。試料の切断が困難な場合は、試料を冷却した後に、同様に繊維を輪切りにする。切断した試料片をTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて観察する。TEMの観察条件は、加速電圧100kV、倍率20000倍とする。
0034
上記のとおりに輪切りにした断面図において、繊維表面に固着している樹脂内の酸化オスミウムに染色された領域を任意に5点選択し、それぞれの最大径を測定し、その平均値を算出する。酸化オスミウムに染色された領域が4点以下の場合は、それらの最大径をそれぞれ測定し、その平均値を求める。繊維構造物から任意に選択した10本の繊維から、それぞれ繊維を輪切りにして切り出し、全部で10個の繊維断面について上記のとおりに最大径を算出し、それらの平均値を「TEMにより観察される樹脂内部における酸化オスミウムに染色された領域の最大径」とする。
0035
本発明においては、樹脂には、上記の親水性成分とともに疎水性成分が含有されることが好ましい。疎水性成分としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、炭化水素系樹脂等が挙げられるが、中でも撥水性および撥油性が高いことからフッ素系樹脂が好ましく用いられる。
0036
フッ素系樹脂としては、パーフルオロオクタン酸(PFOA)含有量が検出限界未満であることが好ましく、炭素数6のフッ素系撥水剤(以下、C6フッ素系撥水剤という)が好ましく用いられる。C6フッ素系撥水剤として、好ましくは、CH2=C(CH3)C(=O)OCH2CH2(CF2)5CF3が挙げられる。
0037
本発明に用いる樹脂としては、親水性成分と疎水性成分とが共重合により含まれる樹脂が好ましく用いられる。このような樹脂としては、親水性成分が共重合されたフッ素系撥水剤が好ましく用いられ、親水基を含有することによる撥水度2級以下の低撥水性能を有するものが好ましく用いられる。撥水度が2級以下であることで、繊維と洗浄液の親和性を最小限に保つことができ、洗濯時に洗浄液が弾かれることなく繊維構造物内部に入り込み、汚れと接触し、高い防汚性を発現することができる。撥水度は、JIS L 1092「繊維製品の防水性試験方法」(2009年)に規定されたスプレー法により評価を行った値をいう。また、親水基の含有量を調整することにより、撥水度を2級以下とすることができる。好ましく用いられる親水性成分を含有するフッ素系撥水剤としては、具体的には、市販品である“パラジン“(登録商標)KFS−100(京浜化成(株)製)、“パラレジン”(登録商標)NC−305(大原パラヂウム(株)製)および“パラジン“(登録商標)KFS−150(京浜化成(株)製)などが挙げられる。
0038
本発明の防汚性繊維構造物は、繊維表面をエネルギー分散型X線分析装置で測定した際の酸素原子とフッ素原子の質量濃度比(O/F)が3以上である。酸素原子とフッ素原子の質量濃度比(O/F)が3未満となる場合、疎水性成分が増加するため繊維の撥水性が向上し、洗浄液との親和性が低下してしまう。これにより、洗浄液と汚れの接触が起こりにくくなり、洗濯による汚れ除去性が低下する。
0039
酸素原子とフッ素原子の質量濃度比として好ましくは3.1〜5.0、さらに好ましくは3.2〜4.9、特に好ましくは3.3〜4.0の範囲である。
0040
酸素原子とフッ素原子の質量濃度比の測定方法は、エネルギー分散型X線分析装置を用いて質量濃度を測定する。測定条件としては、低真空モード(30Pa)、加速電位15.0kV、プローブ電流70A、測定倍率100倍で本発明の繊維構造物について測定し、得られたフッ素および酸素原子の質量濃度を用いて酸素原子とフッ素原子の質量濃度の比を算出する。酸素原子とフッ素原子の質量濃度比(O/F)を算出するために、次式を用いた。なお、各質量濃度の測定はn=3回の平均値で評価する。
0041
O/F=酸素原子の質量濃度(質量%)/フッ素原子の質量濃度(質量%)。
0042
本発明の防汚性繊維構造物は、AATCCTM−1966に規定される方法で測定し、級判定を行った撥油度が4級以上であることが、優れた防汚性を発現する上で好ましい。撥油度の上限は7級であることが好ましく、さらには6級であることが好ましい。これらの撥水度および撥油度は、フッ素系樹脂と、親水基の割合を適宜調整することにより達成することができる。
0043
本発明の防汚性繊維構造物は、JIS L 1919(2006年)「汚れ除去性試験」に規定された親油性汚染物質−3の成分を使用したC法に準じた「押し込み汚れに対する汚れ除去性試験」で実施した場合の汚れ除去性が工業洗濯50回後で3級以上であることが好ましい。
0044
本発明の防汚性繊維構造物で用いられる繊維素材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどからなる繊維や、これらに第三成分を共重合してなる芳香族ポリエステル系繊維、L−乳酸を主成分とするもので代表される脂肪族ポリエステル系繊維、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリルを主成分とするアクリル系繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維などの合成繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維、および木綿、絹および羊毛などの天然繊維などが挙げられる。本発明では、これらの繊維を単独または2種以上の混合物として使用することができるが、ポリエステル系繊維またはポリアミド系繊維を主成分にした繊維もしくはポリエステル系繊維またはポリアミド系繊維を主成分にした繊維と木綿、絹および羊毛などの天然繊維との混合物が好ましく使用される。
0045
本発明の防汚性繊維構造物で用いられる繊維は、通常のフラットヤーン以外に、仮撚加工糸、強撚糸、タスラン加工糸、ナノファイバー、太細糸および混繊糸等のフィラメントヤーンであってもよく、ステープルファイバー、トウおよび紡績糸など各種形態の繊維を用いることができる。好ましくは、フィラメントヤーンが用いられる。
0047
また、前記布帛状物または紐状物には、一般的な加工剤を付与しても良い。また、防汚性繊維構造物の素材として内部改質された繊維を用いても良い。前記加工剤として、2−クロロ−6−トリクロロメチルピリジン、2−クロロ−4−トリクロロメチル−6−メトキシピリジン、2−クロロ−4−トリクロロメチル−6−(2−フリルメトキシ)ピリジン、ジ(4−クロロフェニル)ピリジルメタノール、2,3,5−トリクロロ−4−(n−プロピルスルフォニル)ピリジン、2−ピリジルチオール−1−オキシド亜鉛、ジ(2−ピリジルチオール−1−オキシド)等のピリジン系化合物を用いることができる。
0048
また、前記布帛状物または紐状物には、素材として繊維上に防汚性樹脂以外の樹脂が付着している繊維を用いても良い。この場合、繊維上に防汚性樹脂以外の樹脂層が形成され、その後に形成される防汚性樹脂層と二層の樹脂層が繊維上に存在することになる。このような防汚性樹脂以外の樹脂としては、シリコーン系樹脂、ポリエステル樹脂、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂およびビスマレイミドトリアジン樹脂などが挙げられる。
0049
また、架橋改質された繊維を用いても良く、架橋改質に用いる架橋剤としては、セルロース系繊維を構成しているセルロース分子中の水酸基、とりわけ洗濯時のシワ、型くずれ、縮みの原因となる非晶領域にある水酸基と反応し、セルロース分子間および分子内に架橋構造を形成することが可能な化合物が好ましく用いられる。具体的にはホルムアルデヒドや、ジメチロールエチレン尿素、ジメチロールトリアゾン、ジメチロールウロン、ジメチロールグリオキザールモノウレイン、ジメチロールプロピレン尿素、これらのメチロール基の一部または全部をメトキシ化、エトキシ化したもの等の繊維素反応型樹脂、ポリカルボン酸類、イソシアネート類等があげられる。
0050
本発明において、繊維構造物への樹脂の固着は、防汚性樹脂を含む液で繊維構造物を処理することにより達成できる。具体的な処理方法としては、防汚性樹脂を含む処理液に繊維構造物を浸漬した後、拡布の状態で一定の圧力で絞り、好ましくは80〜140℃の温度で乾燥し、その後好ましくは160〜200℃の温度で熱処理するパッド・ドライ・キュア法や、160〜200℃の温度で一気に乾燥させるパッド・キュア法、80〜110℃の温度で蒸熱処理するパッド・スチーム法、または、上記のフッ素化合物を含む処理液の中に繊維構造物を浸漬した状態で、好ましくは30〜130℃まで温度を上げる浴中法などが用いられる。
0051
本発明の防汚性繊維構造物において、高い防汚性を発現するためには、繊維表面に固着させる樹脂において、酸素を含有した親水性成分とフッ素を含有した疎水性成分の割合を最適化することにより、汚れの付きにくさと落とし易さの性能を両立させることが有効である。親水性成分により繊維と洗浄液との親和性を向上させ、疎水性成分により繊維内部への汚れの浸透を抑制することができる。
0052
繊維表面に固着させる樹脂としては、親水性成分と疎水性成分とが含有され、具体的には、前述のとおり例えば、ポリエチレングリコールとフッ素系化合物とを共重合した樹脂が好ましく用いられるが、処理液中に、シリコーン系樹脂、ポリエステル樹脂、イソシアネート化合物およびエポキシ樹脂などを併用して用いることができる。
0053
本発明では、併用する樹脂としてトリアジン環含有樹脂を用いることが、特に好ましい態様である。トリアジン環含有樹脂としては、メラミン樹脂、グアナミン樹脂およびビスマレイミドトリアジン樹脂などが挙げられ、メラミン樹脂が特に好ましく用いられる。
0054
トリアジン環含有樹脂とは、トリアジン環含有化合物を重合成分としてなる樹脂を意味し、トリアジン環含有化合物とはトリアジン環を含有し、重合性官能基を少なくとも2個有する化合物であり、例えば、下記の一般式で示されるトリアジン環含有化合物が挙げられる。
0055
0056
(式中、R0〜R2は、H、OH、C6H5、Cn0H2n0+1(n0=1〜2)、COOCn1H2n1+1(n1=1〜20)、CONR3R4、NR3R4を表す。ただし、R3とR4は、H、OCn3H2n3+1(n3=1〜20)、CH2COOCn3H2n3+1(n3=1〜20)、CH2OH、CH2CH2OH、CONH2、CONHCH2−O−(X−O)n4−R5(X=C2H4、C3H6、C4H8;n4=1〜1500;R5=H、CH3、C3H7)を表す)
上記一般式で表されるトリアジン環含有化合物以外に、上記の化合物のエチレン尿素共重合化合物、ジメチロール尿素共重合化合物、ジメチロールチオ尿素共重合化合物および酸コロイド化合物なども使用することができる。
0058
また、用いられる触媒としては、酢酸、蟻酸、アクリル酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、フタル酸、硫酸、過硫酸、塩酸および燐酸などの酸類およびこれらのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、およびマグネシウム塩などが挙げられ、これらの一種以上を使用することができる。中でも、触媒として、過硫酸アンモニウムと過硫酸カリウムが好ましく用いられる。触媒の量は、モノマーの使用量に対して0.1〜20質量%で使用することが好ましい。
0059
このような重合のための熱処理は、好ましくは50〜180℃の温度で0.1〜30分間の条件で乾熱処理および蒸熱処理するものであるが、蒸熱処理の方が単繊維表面に均一な被膜を形成しやすく、かつ、被膜形成後の風合いが柔軟である。このような蒸熱処理には、好ましくは80〜160℃の飽和水蒸気または過熱水蒸気が用いられ、より好ましくは飽和水蒸気の場合は90〜130℃の飽和水蒸気であり、または110〜160℃の温度の過熱水蒸気であり、いずれも数秒から数分の処理を行う。かかる蒸熱処理を行った後、未反応のモノマーや触媒を除去および染色堅牢度の確保のために、50〜95℃の温度で湯洗いか、ノニオン界面活性剤や炭酸ソーダを使用しての洗浄を行うことが好ましい。トリアジン環含有樹脂の付着量は繊維質量に対して好ましくは0.5〜5質量%であり、より好ましくは1〜3質量%である。
0060
前述の親水性成分を含むフッ素系樹脂と、トリアジン環含有樹脂とを含む層を形成する場合、トリアジン環含有樹脂とフッ素系樹脂の混合溶液を用いて、前記と同様の処理を行うことにより層を形成することができる。フッ素系樹脂とトリアジン環含有樹脂の混合質量比(フッ素系樹脂/トリアジン環含有樹脂)は、1/0.001〜1であることが好ましい。
0061
繊維表面に防汚性樹脂を付着させることで、本発明の防汚性繊維構造物を得ることができるが、高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つためには、樹脂の固着量を制御することが好ましい。具体的に防汚性樹脂の繊維重量あたりの固着率は、固形分換算で好ましくは0.6〜1.0%であり、より好ましくは0.7〜0.9%である。このように好ましい範囲であると、汚れ除去性能を充分に発現することができ、風合いが硬化する可能性もない。
0062
本発明の防汚性繊維構造物は、洗濯による汚れ除去性能および洗濯耐久性を発揮するため、一般衣料品、作業用ユニフォーム、寝装品、医療用衣類、インテリア品および産業資材品等として好適に用いられる。中でも、洗濯で落ちにくいとされる油汚れなどが付着しやすく防汚性能のニーズがある作業用ユニフォームとして好適に用いられる。
0063
また、本発明の防汚性繊維構造物は、高い汚れ除去性により洗濯時間の短縮や洗剤量の低減が可能となる。JIS L 0217 103に基づいた家庭洗濯をしたとき、洗い工程のみでMA値(物理力)が15となる洗濯機(National製 NA−F50Z8)で、洗い工程のMA値が5となる洗濯時間(洗い時間1分30秒)に短縮した場合も押し込み汚れ防汚性試験で3級以上を発現し、工業洗濯の場合も、MA値(物理力)が51となる洗濯機((株)アサヒ製作所製 Ecoromato10)で、MA値が19となる洗濯時間(洗い時間1分)に短縮した場合も押し込み汚れ防汚性試験で3級以上を発現する。その効果により、防汚性繊維構造物を使用した衣料1着(440g)の洗濯57回あたりの温室効果ガス削減量が未加工品対比、工業洗濯で0.47kgCO2‐eqとなり、家庭洗濯では0.23kgCO2‐eqとなる。また、JIS L 0217 103の洗剤量を半分にした条件で家庭洗濯をしたときも、押し込み汚れ防汚性試験で3級以上を発現し、工業洗濯の場合も、洗剤量を半分にした条件で押し込み汚れ防汚性試験で3級以上を発現する。その効果により、防汚性繊維構造物を使用した衣料1着(440g)の洗濯57回あたりの温室効果ガス削減量が未加工品対比、工業洗濯で0.44kgCO2‐eqとなり、家庭洗濯では0.21kgCO2‐eqとなる。
0064
次に、本発明の防汚性繊維構造物について、実施例に基づいて説明する。実施例における各種測定評価は、次のとおりである。
(TEMによる樹脂内部の構造観察)
防汚性繊維構造物を3%酸化オスミウムに浸漬し、常温(20℃)で3日間染色後、水洗、風乾し、エポキシ樹脂でサンプルを包埋した。その後、ミクロトームを用いて、繊維を、繊維長に対して垂直な方向に、70〜100nm程度の厚みで輪切りにした。切断した試料片をTEM(透過型電子顕微鏡)H−7100FA((株)日立製作所製)を用いて観察した。TEMの観察条件は、加速電圧100kV、倍率8000倍とした。
0065
上記のとおりに輪切りにした断面図において、繊維表面に固着している樹脂内の酸化オスミウムに染色された領域を任意に5点選択し、それぞれの最大径を測定し、その平均値を算出した。酸化オスミウムに染色された領域が4点以下の場合は、それらの最大径をそれぞれ測定し、その平均値を求めた。繊維構造物から任意に選択した10本の繊維から、それぞれ繊維を輪切りにして切り出し、全部で10個の繊維断面について上記のとおりに最大径を算出し、それらの平均値を「TEMにより観察される酸化オスミウムに染色された領域の最大径」とした。また、円形の酸化オスミウムに染色された領域が存在しない場合は、−とした。
(フッ素化合物についての酸素とフッ素の質量濃度の測定)
処理をした白色布帛を1cm×1cm程度に切断し、エネルギー分散型X線分析装置を用いて質量濃度を測定した。測定条件としては、低真空モード(30Pa)、加速電位15.0kV、プローブ電流70A、倍率100倍で各試料測定し、得られた酸素原子の質量濃度(質量%)をフッ素の質量濃度(質量%)で除することにより、酸素原子とフッ素原子の質量濃度比を(O/F)を算出した。各質量濃度の測定はn=3回の平均値で評価した。
(撥水度)
JIS L 1092「繊維製品の防水性試験方法」(2009年)に規定される方法により、スプレー法により評価を行い、撥水度について級判定した。級判定についてはn=1回の評価で実施した。級判定における( )表示は生地の裏まで湿潤していることを示す。撥水度の級は1級から5級まで有り、数値が大きいほど、撥水性が高いことを示す。判定基準はJIS L 1092に添付の判定写真により判別する。
(撥油度)
AATCCTM−1966に規定される方法で測定し、撥油度について級判定した。撥油性の級は1級から8級まで有り、数値が大きいほど、撥油性が高いことを示す。判定基準はAATCC TM−1966に添付の判定写真により判別する。級判定についてはn=3回の評価の平均値とした。
(汚れ除去性)
各実施例等で得られた繊維構造物を後述の工業洗濯条件にて50回洗濯した後に、JIS L 1919「繊維製品の防汚性試験方法」(2006年)のC法に規定されている、滴下拭き取り法試験の付いた汚れの落ちやすさ試験により、汚れ除去性の評価を行い、汚れ除去性について、級判定を行った。防汚性の級はJIS汚染色用グレースケールを使用し肉眼判定する。1級から5級まであり、数値が大きいほど、防汚性が高いことを示す。
(汚れ除去性試験時の工業洗濯条件)
汚れ除去性試験時の洗濯耐久性および汚れ除去性の工業洗濯1回は以下の条件・順序で行った。
1.洗い(水温60℃、浴比1:10、時間15分)
洗剤:無リン“ダッシュ”(登録商標) 2.0g/L
メタ珪酸ソーダ2.0g/L
“クレワット”(登録商標)N 1.0g/L
2.脱水(時間1分)
3.濯ぎ1(水温50℃、浴比1:10、時間3分)
4.脱水(時間1分)
5.濯ぎ2(水温35℃、浴比1:10、時間3分)
6.脱水(時間1分)
7.濯ぎ3(常水温、浴比1:10、時間3分)
8.脱水(時間1分)
9.タンブラー乾燥
(押し込み汚れに対する汚れ除去性)
上記の条件による工業洗濯を50回行った後の繊維構造物について、JIS L 1919「繊維製品の防汚性試験方法」(2006年)のC法に準じた押し込み方汚れ除去性能を評価した。JIS L 1919「繊維製品の防汚性試験方法」(2006年)のC法に規定されている親油性汚染物質−3の成分を使用した汚染物質(オイルレッド分率0.1%)を作製し、以下の手順で試験を実施した。
0067
汚染した布帛に布帛と同じ大きさにカットしたPETフィルムをのせ、その上から100gの荷重を30秒かけた。荷重とフィルムを外した後、円形ろ紙を乗せてろ紙の自重で汚れを吸い取った。さらに、ろ紙の位置をずらしてろ紙が汚れていない部分で再度汚れを吸い取った。ろ紙が汚れを吸い取らなくなるまでこの操作を繰り返した。ろ紙が汚染部分に触れない場合はろ紙の両端を持ち、なるべく加重をかけないようにろ紙と汚れを接触させて吸い取った。その後、温度20℃、湿度65%の条件下で24時間放置した。放置後、汚染した布帛を縫い合わせて、約40cm×40cmのサイズにし、洗濯を行った。汚染した布帛が足りない場合は、捨て布を縫い合わせた。JIS L 0805汚染色用グレースケールを用いて肉眼判定でSR性級判定を行った。1級から5級まであり、数値が大きいほど、防汚性が高いことを示す。以上の試験で使用する器材を表1に示す。
0068
0069
(抗菌試験時の工業洗濯条件)
抗菌試験時の洗濯耐久性の工業洗濯50回分は以下の条件・順序で行った。
1.洗い(水温80℃、浴比1:30、時間120分)
洗剤:JAFET標準配合洗剤 120mL (水量90Lに対して)
2.脱水(時間3〜5分)
4.オーバーフロー濯ぎ(常水温、浴比1:30、時間15分)
5.脱水(時間3〜5分)
6.4、5の工程を3回繰り返す(計4回)
7.1〜6の工程を5回繰り返す
8.家庭洗濯機にて5分オーバーフロー濯ぎ(常水温、浴比1:30)
9.脱水(時間3〜5分)
10.タンブラー乾燥(80℃以下)
(抗菌試験方法)
試験方法は統一試験法を採用し、試験菌体はMRSA臨床分離株を用いた。試験方法は、滅菌試料布に上記試験菌のブイヨン懸濁液を注加し、密閉容器中で37℃、18時間培養後の生菌数を計測し、殖菌数に対する菌数を求め、次の基準に従った。
0071
ただし、Aは無加工品の接種直後分散回収した菌数、Bは無加工品の18時間培養後分散回収した菌数、Cは加工品の18時間培養後分散回収した菌数を表す。
(裏抜け防止性)
固形油汚れをフィルム上に1mmの厚さで5×5cmの範囲に塗布し、その上から滅菌ガーゼ(川本産業(株)製、滅菌ガーゼ タイプIII “ケーパイン”(登録商標) No.7164 5.0cm×5.0cm 1枚入)を乗せる。その上に8×8cmの生地サンプルを乗せ、またその上にろ紙((株)三商製)、0.4kPa、5.0×5.0cmの荷重の順で乗せ、37℃で24時間放置後、ろ紙への固形油汚れの裏抜け有無について目視で判断した。
0072
表4において、裏抜けが無い場合を合格(good)、裏抜けがある場合を不合格(failure)とした。
<固形油汚れの成分>
・白色ワセリン(健栄製薬(株)製):99.9質量%
・オイルレッド(和光純薬工業(株)製):0.1質量%
(汚れ除去性が4級となるための最小MA値)
汚れ除去性試験の際に、JIS L 0217 103(1995年改正、洗剤量:1.0g/L)に基づいた家庭洗濯をしたときの汚れ除去性が4級以上となる最短の洗濯時間を測定し、この時の物理量をMA(メカニカルアクション)値で表した。MA値は布の中心と四隅に直径35mmの丸い穴を5つ打ち抜いた25cm×25cmの平織綿布を用いたMAテスト布を入れて洗濯を行い、その5つの穴の縁のほつれた糸の総数を測定しMA値とした。
(洗濯時間短縮による温室効果ガス削減量)
汚れ除去性試験の際に汚れ除去性が4級以上となる洗濯時間を測定した。洗濯機の1時間あたり消費電力を470Whと仮定し、28分の洗濯(洗い・濯ぎ・脱水)中の電力消費が一定であるものと仮定して、汚れ除去性が4級以上となる洗濯時間から消費電力量を試算した。試算した消費電力量からLCA支援ソフトMiLCAのデータベース(東京電力)によって温室効果ガス排出量を算出し、未加工品との差を温室効果ガス削減量とした。
(洗剤量低減による温室効果ガス削減量)
汚れ除去性試験の際に汚れ除去性が4級以上となる洗濯時間を測定した。無リン“ダッシュ”(登録商標)2.0g/L、メタ珪酸ソーダ2.0g/L、“クレワット”(登録商標)N1.0g/Lから削減できた洗剤量を計算し、LCA支援ソフトMiLCAのデータベースより洗濯用合成洗剤(無リン“ダッシュ”(登録商標))、けい酸ナトリウム(メタ珪酸ソーダ)、キレート剤(“クレワット”(登録商標)N)を利用し、温室効果ガス排出量を算出し、洗剤を標準量使用した際の温室効果ガス排出量との差を温室効果ガス削減量とした。
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレートからなる総繊度が84dtexで、72フィラメントの仮撚り加工糸をタテ糸とヨコ糸に使用して、ツイル織物を製織した。得られたツイル織物を95℃の温度で、連続式精錬機で常法に従い精錬し湯水洗し、次いで130℃の温度で乾燥した。次いで、液流染色機を用いて、130℃の温度で蛍光白色に染色し、常法により洗浄し湯水洗し乾燥して、170℃の温度で加熱を行い、白色布帛を製造した。
0073
次いで、パーフルオロオクチルメタクリレートとポリエチレングリコールを重合成分として含む(A)パラジンKFS−100(京浜化成(株)製、フッ素系樹脂、固形分10%)60g/Lと(L)“ベッカミン”(登録商標)M−3(大日本インキ(株)製トリアジン環含有化合物:固形分80%)3.0g/L、(M)キャタリストACX(大日本インキ化学工業(株)製触媒固形分35%)0.5g/Lを溶解して処理液を調整し、これに上記で製造された白色布帛を浸漬してマングルを用いて絞り率90%となるよう絞り、130℃の温度で乾燥し、その後、170℃の温度で加熱処理をした。得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で4−5級となった。繊維上に付着したフッ素系化合物が汚れを弾き、フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が、洗濯時の洗濯液との親和性を維持しつつ、フッ素系化合物と繊維表面の親和性に影響を及ぼさないため、高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例2)
実施例1において、フッ素系樹脂としてパラジンKFS−122に代えて、フルオロアルキル基の炭素数が6以下のフッ素系ビニルモノマーとポリアルキレングリコール含有親水性ビニルモノマーとを重合成分として含む(B)パラレジン”(登録商標)NC−305(大原パラジウム(株)製、フッ素系樹脂、固形分10%)を使用した以外は実施例1と同様にして防汚性繊維構造物を得た。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で3−4級となった。実施例1と同様の原理からである。
(実施例3)
実施例1において、フッ素系樹脂としてパラジンKFS−122に代えて、パーフルオロオクチルメタクリレートとポリエチレングリコールとを重合成分として含む(C)パラジンKFS−150(京浜化成(株)製、フッ素系樹脂、固形分10%)を使用した以外は実施例1と同様にして防汚性繊維構造物を得た。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で3級となった。実施例1と同様の原理から高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例4)
ポリエチレンテレフタレートからなる総繊度が84dtexで、72フィラメントの仮撚り加工糸をタテ糸とヨコ糸に使用して、ツイル織物を製織した。
0074
次いで、抗菌剤として(O)2−ピリジルチオール−1−オキシド亜鉛50gと(P)ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物20gおよび(Q)リグニンスルホン酸ナトリウム30gを水300gと共にスラリー化し、次いでガラスビーズを用いて湿式粉砕処理を施し、平均粒径1μmのコロイド状態の組成物にし、コロイド化した上記抗菌剤を1%owf、蛍光白色の分散染料を2%owf、均染剤を0.5g/L、浴比1:10、pH5の液中に供試布を浸し、130℃、60分間の条件で常法による染色加工を行った。この後、水洗し、170℃、2分間乾燥して抗菌加工布を得た。
0075
その後、フッ素系樹脂としてパーフルオロオクチルメタクリレートとポリエチレングリコールが含まれる(A)パラジンKFS−100(京浜化成(株)製、フッ素系樹脂、固形分10%)60g/Lと(L)“ベッカミン”(登録商標)M−3(大日本インキ(株)製トリアジン環含有化合物:固形分80%)3.0g/L、(M)キャタリストACX(大日本インキ化学工業(株)製触媒固形分35%)0.5g/Lを溶解して処理液を調整し、これに上記で製造された白色布帛を浸漬してマングルを用いて絞り率90%となるよう絞り、130℃の温度で乾燥し、その後、170℃の温度で加熱処理をした。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で4−5級となった。実施例1と同様の原理から高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例5)
ポリエチレンテレフタレートからなる総繊度が84dtexで、72フィラメントの仮撚り加工糸をタテ糸とヨコ糸に使用して、ツイル織物を製織した。得られたツイル織物を95℃の温度で、連続式精錬機で常法に従い精錬し湯水洗し、次いで130℃の温度で乾燥した。次いで、液流染色機を用いて、130℃の温度で蛍光白色に染色し、常法により洗浄し湯水洗し乾燥して、170℃の温度で加熱を行い、白色布帛を製造した。
0076
次いで、抗菌剤として(O)2−ピリジルチオール−1−オキシド亜鉛50g/Lを希釈して処理液を調整し、これに上記で製造された白色布帛を浸漬してマングルを用いて絞り率90%となるよう絞り、120℃の温度で乾燥し、その後、170℃の温度で加熱処理をした。
0077
さらに、フッ素化合物としてパーフルオロオクチルメタクリレートとポリエチレングリコールが含まれる(A)パラジンKFS−100(京浜化成(株)製、フッ素系樹脂、固形分10%)60g/Lと(L)“ベッカミン”(登録商標)M−3(大日本インキ(株)製トリアジン環含有化合物:固形分80%)3.0g/L、(M)キャタリストACX(大日本インキ化学工業(株)製触媒固形分35%)0.5g/Lを溶解して処理液を調整し、これに上記布帛を浸漬してマングルを用いて絞り率90%となるよう絞り、130℃の温度で乾燥し、その後、170℃の温度で加熱処理をした。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で4−5級となった。実施例1と同様の原理から高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例6)
ポリエチレンテレフタレート80%、綿20%からなる34番手の双糸をタテ糸に使用し、ポリエチレンテレフタレートからなる総繊度が84dtexで、72フィラメントの仮撚り加工糸をヨコ糸に使用して、ツイル織物を製織した。得られたツイル織物を通常の染色工程により染色した白色布帛を使用する以外は実施例1と同様にして防汚性繊維構造物を得た。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で4級となった。実施例1と同様の原理から高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例7)
ポリエチレンテレフタレート80%、綿20%からなる34番手の双糸をタテ糸に使用し、ポリエチレンテレフタレートからなる総繊度が84dtexで、72フィラメントの仮撚り加工糸をヨコ糸に使用して、ツイル織物を製織した。得られたツイル織物を通常の染色工程により染色した白色布帛を使用する以外は実施例4と同様にして防汚性繊維構造物を得た。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で4級となった。実施例1と同様の原理から高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例8)
ポリエチレンテレフタレート80%、綿20%からなる34番手の双糸をタテ糸に使用し、ポリエチレンテレフタレートからなる総繊度が84dtexで、72フィラメントの仮撚り加工糸をヨコ糸に使用して、ツイル織物を製織して防汚性繊維構造物を得た。得られたツイル織物を通常の染色工程により染色した白色布帛を使用する以外は実施例5と同様にした。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で4級となった。実施例1と同様の原理から高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例9)
ポリエチレンテレフタレート80%、綿20%からなる34番手の双糸をタテ糸に使用し、ポリエチレンテレフタレートからなる総繊度が84dtexで、72フィラメントの仮撚り加工糸をヨコ糸に使用して、ツイル織物を製織した。得られたツイル織物を通常の染色工程により染色し、白色布帛を製造した。
0078
次いで、架橋剤として(R)ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素樹脂水溶液(固形分20%)100g/Lと、触媒として(S)塩化マグネシウム20g/Lを希釈して処理液を調整し、これに上記で製造された白色布帛を浸漬してマングルを用いて絞り率90%となるよう絞り、100℃の温度で乾燥し、その後、170℃の温度で加熱処理をした。
0079
さらに、フッ素系樹脂としてパーフルオロオクチルメタクリレートとポリエチレングリコールとを重合成分として含む(A)パラジンKFS−100(京浜化成(株)製、フッ素系樹脂、固形分10%)60g/Lと(L)“ベッカミン”(登録商標)M−3(大日本インキ(株)製トリアジン環含有化合物:固形分80%)3.0g/L、(M)キャタリストACX(大日本インキ化学工業(株)製触媒固形分35%)0.5g/Lを溶解して処理液を調整し、これに上記布帛を浸漬してマングルを用いて絞り率90%となるよう絞り、130℃の温度で乾燥し、その後、170℃の温度で加熱処理をした。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で4−5級となった。実施例1と同様の原理から高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例10)
ポリエチレンテレフタレート65%、綿35%からなる34番手の双糸をタテ糸、ヨコ糸に使用して、平織物を製織した。得られた平織物を通常の染色工程により染色した白色布帛を使用する以外は実施例1と同様にして防汚性繊維構造物を得た。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で3級となった。実施例1と同様の原理から高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例11)
ポリエチレンテレフタレート65%、綿35%からなる34番手の双糸をタテ糸、ヨコ糸に使用して、平織物を製織した。得られた平織物を通常の染色工程により染色した白色布帛を使用する以外は実施例4と同様にして防汚性繊維構造物を得た。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で3級となった。実施例1と同様の原理から高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例12)
ポリエチレンテレフタレート65%、綿35%からなる34番手の双糸をタテ糸、ヨコ糸に使用して、平織物を製織した。得られた平織物を通常の染色工程により染色した白色布帛を使用する以外は実施例5と同様にして防汚性繊維構造物を得た。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で3級となった。実施例1と同様の原理から高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例13)
ポリエチレンテレフタレート65重量%、綿35重量%からなる34番手の双糸をタテ糸、ヨコ糸に使用して、平織物を製織した。得られた平織物を通常の染色工程により染色した白色布帛を使用する以外は実施例9と同様にして防汚性繊維構造物を得た。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で4級となった。実施例1と同様の原理から高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例14)
ポリエチレンテレフタレート65重量%、綿35重量%からなる34番手の双糸をタテ糸、ヨコ糸に使用して、平織物を製織した。得られた平織物を通常の染色工程により染色し、白色布帛を製造した。
0080
次いで、フッ素系樹脂としてパーフルオロオクチルメタクリレートとポリエチレングリコールとを重合成分として含む(A)パラジンKFS−100(京浜化成(株)製、フッ素系樹脂、固形分10%)60g/Lと((R)ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素樹脂水溶液(固形分20%)100g/Lと、触媒として(S)塩化マグネシウム20g/Lを希釈して処理液を調整し、これに上記で製造された白色布帛を浸漬してマングルを用いて絞り率90%となるよう絞り、130℃の温度で乾燥し、その後、170℃の温度で加熱処理をして防汚性繊維構造物を得た。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で4級となった。実施例1と同様の原理から高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例15)
ポリエチレンテレフタレート80重量%、ウール20重量%からなる40番手の双糸をタテ糸、ヨコ糸に使用して、サージ織物を製織した。得られたサージ織物を通常の染色工程により染色した白色布帛を使用する以外は実施例1と同様にして防汚性繊維構造物を得た。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で4級となった。実施例1と同様の原理から高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例16)
ポリエチレンテレフタレート80重量%、ウール20重量%からなる40番手の双糸をタテ糸、ヨコ糸に使用して、サージ織物を製織した。得られたサージ織物を通常の染色工程により染色した白色布帛を使用する以外は実施例4と同様にして防汚性繊維構造物を得た。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で4級となった。実施例1と同様の原理から高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例17)
ポリエチレンテレフタレート80重量%、ウール20重量%からなる40番手の双糸をタテ糸、ヨコ糸に使用して、サージ織物を製織した。得られたサージ織物を通常の染色工程より染色した白色布帛を使用する以外は実施例5と同様にして防汚性繊維構造物を得た。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で4級となった。実施例1と同様の原理から高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例18)
ナイロンからなる総繊度が44dtexで、36フィラメントの加工糸を使用して、サテン編物を製編した。得られたサテン編物を通常の染色工程により染色した白色布帛を使用する以外は実施例1と同様にして防汚性繊維構造物を得た。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で4級となった。実施例1と同様の原理から高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例19)
50dのナイロン加工糸に20dのスパンデックスが供給され仮撚加工されており、S撚りが50%、Z撚りが50%の糸使いで天竺編物を製編した。得られた天竺編物を通常の染色工程により染色した白色布帛を使用する以外は実施例1と同様にして防汚性繊維構造物を得た。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で4級となった。実施例1と同様の原理から高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例20)
ポリエチレンテレフタレートからなる総繊度が41番手の紡績糸をタテ糸とヨコ糸に使用して、平織物を製織した。得られたツイル織物を95℃の温度で、連続式精錬機で常法に従い精錬し湯水洗し、次いで130℃の温度で乾燥した。次いで、液流染色機を用いて、130℃の温度で蛍光白色に染色し、常法により洗浄し湯水洗し乾燥して、170℃の温度で加熱を行い、白色布帛を製造した。
0081
次いで、パーフルオロオクチルメタクリレートとポリエチレングリコールを重合成分として含む(A)パラジンKFS−100(京浜化成(株)製、フッ素系樹脂、固形分10%)60g/Lと、(L)“ベッカミン”(登録商標)M−3(大日本インキ(株)製トリアジン環含有化合物:固形分80%)3.0g/L、(N)過硫酸アンモニウム3.0g/Lを溶解して処理液を調整し、これに上記で製造された白色布帛を浸漬してマングルを用いて絞り率90%となるよう絞り、飽和水蒸気の状態で100℃の温度で処理し、130℃の温度で乾燥し、その後、170℃の温度で加熱処理をした。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で4−5級となった。繊維上に付着したフッ素系化合物が汚れを弾き、フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が、洗濯時の洗濯液との親和性を維持しつつ、フッ素系化合物と繊維表面の親和性に影響を及ぼさないため、高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例21)
ポリエチレンテレフタレート65%、綿35%からなる34番手の双糸をタテ糸、ヨコ糸に使用して、平織物を製織した。得られた平織物を通常の染色工程により染色して白色布帛を製造した。
0082
次いで、パーフルオロオクチルメタクリレートとポリエチレングリコールを重合成分として含む(A)パラジンKFS−100(京浜化成(株)製、フッ素系樹脂、固形分10%)60g/Lと、(L)“ベッカミン”(登録商標)M−3(大日本インキ(株)製トリアジン環含有化合物:固形分80%)3.0g/L、(N)過硫酸アンモニウム3.0g/Lを溶解して処理液を調整し、これに上記で製造された白色布帛を浸漬してマングルを用いて絞り率90%となるよう絞り、飽和水蒸気の状態で100℃の温度で処理し、130℃の温度で乾燥し、その後、170℃の温度で加熱処理をした。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で4−5級となった。繊維上に付着したフッ素系化合物が汚れを弾き、フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が、洗濯時の洗濯液との親和性を維持しつつ、フッ素系化合物と繊維表面の親和性に影響を及ぼさないため、高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例22)
ポリエチレンテレフタレートからなる総繊度が41番手の紡績糸をタテ糸とヨコ糸に使用して、平織物を製織した。得られたツイル織物を95℃の温度で、連続式精錬機で常法に従い精錬し湯水洗し、次いで130℃の温度で乾燥した。次いで、液流染色機を用いて、130℃の温度で蛍光白色に染色し、常法により洗浄し湯水洗し乾燥して、170℃の温度で加熱を行い、白色布帛を製造した。
0083
次いで、パーフルオロオクチルメタクリレートとポリエチレングリコールを重合成分として含む(A)パラジンKFS−100(京浜化成(株)製、フッ素系樹脂、固形分10%)60g/Lと、(L)“ベッカミン”(登録商標)M−3(大日本インキ(株)製トリアジン環含有化合物:固形分80%)3.0g/L、(M)キャタリストACX(大日本インキ化学工業(株)製触媒固形分35%)0.5g/Lを溶解して処理液を調整し、これに上記で製造された白色布帛を浸漬してマングルを用いて絞り率90%となるよう絞り、190℃の温度で加熱処理をした。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で4−5級となった。繊維上に付着したフッ素系化合物が汚れを弾き、フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が、洗濯時の洗濯液との親和性を維持しつつ、フッ素系化合物と繊維表面の親和性に影響を及ぼさないため、高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(実施例23)
ポリエチレンテレフタレート65%、綿35%からなる34番手の双糸をタテ糸、ヨコ糸に使用して、平織物を製織した。得られた平織物を通常の染色工程により染色して白色布帛を製造した。
0084
次いで、パーフルオロオクチルメタクリレートとポリエチレングリコールを重合成分として含む(A)パラジンKFS−100(京浜化成(株)製、フッ素系樹脂、固形分10%)60g/Lと、(L)“ベッカミン”(登録商標)M−3(大日本インキ(株)製トリアジン環含有化合物:固形分80%)3.0g/L、(M)キャタリストACX(大日本インキ化学工業(株)製触媒固形分35%)0.5g/Lを溶解して処理液を調整し、これに上記で製造された白色布帛を浸漬してマングルを用いて絞り率90%となるよう絞り、190℃の温度で加熱処理をした。フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の複数の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が確認され、得られた防汚性繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で4−5級となった。繊維上に付着したフッ素系化合物が汚れを弾き、フッ素系化合物に含まれる最大径100nm以上、500nm以下の円形の染色領域を形成するポリエチレングリコールの領域が、洗濯時の洗濯液との親和性を維持しつつ、フッ素系化合物と繊維表面の親和性に影響を及ぼさないため、高い汚れ除去性と洗濯耐久性を併せ持つことができた。
(比較例1)
フッ素系樹脂としてパーフルオロオクチルメタクリレートとポリエチレングリコールとを重合成分として含む(D)パラジンKFS−101(京浜化成(株)製、フッ素系樹脂、固形分10%)60g/Lを使用する以外は実施例1と同様にして防汚性繊維構造物を得た。得られた繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で2−3級となった。繊維上に付着したフッ素系樹脂が汚れを弾くものの、フッ素系樹脂に含まれるポリエチレングリコールによる染色領域が100nm未満であるため、洗濯時の洗濯液との親和性が低く、満足する汚れ除去性は得られなかった。
(比較例2)
フッ素系樹脂としてパーフルオロオクチルメタクリレートとポリエチレングリコールとを重合成分として含む(E)パラジンKFS−102(京浜化成(株)製、フッ素系樹脂、固形分10%)60g/Lを使用する以外は実施例1と同様にして防汚性繊維構造物を得た。得られた繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で2−3級となった。繊維上に付着したフッ素系化合物が汚れを弾くものの、フッ素系樹脂に含まれるポリエチレングリコールによる染色領域が100nm未満であるため、洗濯時の洗濯液との親和性が低く、満足する汚れ除去性は得られなかった。
(比較例3)
フッ素系樹脂としてパーフルオロオクチルメタクリレートとポリエチレングリコールとを重合成分として含む(F)パラジンKFS−200(京浜化成(株)製、フッ素系樹脂、固形分10%)60g/Lを使用する以外は実施例1と同様にして防汚性繊維構造物を得た。得られた繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で2−3級となった。繊維上に付着したフッ素系樹脂が汚れを弾くものの、フッ素系樹脂に含まれるポリエチレングリコールの領域が100nm以下であるため、洗濯時の洗濯液との親和性が低く、満足する汚れ除去性は得られなかった。
(比較例4)
フッ素系樹脂としてパーフルオロオクチルメタクリレートとポリエチレングリコールとを重合成分として含む(G)“アサヒガード”(登録商標)AG−1100(旭硝子(株)製、フッ素系樹脂、固形分20%)30g/Lを使用する以外は実施例1と同様にして防汚性繊維構造物を得た。得られた繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で2−3級となった。繊維上に付着したフッ素系樹脂が汚れを弾くものの、フッ素系樹脂に含まれるポリエチレングリコールの領域が100nm未満であるため、洗濯時の洗濯液との親和性が低く、満足する汚れ除去性は得られなかった。
(比較例5)
フッ素樹脂としてフルオロアルキル基の炭素数が6以下のフッ素系ビニルモノマーを重合成分として含む(H)“ユニダイン”(登録商標) TG−5243(ダイキン工業(株)製、固形分30%)20g/Lを使用する以外は実施例1と同様にして防汚性繊維構造物を得た。得られた繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で2−3級となった。繊維上に付着したフッ素系樹脂が汚れを弾くものの、フッ素系樹脂に含まれるポリエチレングリコールによる染色領域が100nm未満であるため、洗濯時の洗濯液との親和性が低く、汚れ除去性が低くなった。
(比較例6)
フルオロアルキル基の炭素数が6以下のフッ素系ビニルモノマーを重合成分として含むフッ素系樹脂として(I)“ユニダイン”(登録商標) TG−5521(ダイキン工業(株)製、固形分30%)20g/Lを使用する以外は実施例1と同様にして防汚性繊維構造物を得た。得られた繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で2−3級となった。繊維上に付着したフッ素系樹脂が汚れを弾くものの、フッ素系樹脂に含まれるポリエチレングリコールによる染色領域が100nm未満であるため、洗濯時の洗濯液との親和性が低く、満足する汚れ除去性は得られなかった。
(比較例7)
フルオロアルキル基の炭素数が6以下のフッ素系ビニルモノマーを重合成分として含むフッ素系樹脂として(J)“アサヒガード”(登録商標)AG−E092(旭硝子(株)製、フッ素系樹脂、固形20分%)30g/Lを使用する以外は実施例1と同様にして防汚性繊維構造物を得た。得られた繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で2−3級となった。繊維上に付着したフッ素系樹脂が汚れを弾くものの、フッ素系樹脂に含まれるポリエチレングリコールによる染色領域が100nm未満であるため、洗濯時の洗濯液との親和性が低く、満足する汚れ除去性は得られなかった。
(比較例8)
フルオロアルキル基の炭素数が6以下のフッ素系ビニルモノマーを重合成分として含むフッ素系樹脂として(K)“マックスガード”(登録商標) FX−2500T((株)京絹化成製、フッ素系樹脂、固形分30%)20g/Lを使用する以外は実施例1と同様にして防汚性繊維構造物を得た。得られた繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で2級となった。繊維上に付着したフッ素系樹脂が汚れを弾くものの、フッ素系樹脂に含まれるポリエチレングリコールによる染色領域が100nm未満であるため、洗濯時の洗濯液との親和性が低く、満足する汚れ除去性は得られなかった。
(比較例9)
ポリエチレンテレフタレートからなる総繊度が84dtexで、72フィラメントの仮撚り加工糸をタテ糸とヨコ糸に使用して、ツイル織物を製織した。
0085
次いで、抗菌剤として(O)2−ピリジルチオール−1−オキシド亜鉛50gと(P)ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物20gおよび(Q)リグニンスルホン酸ナトリウム30gを水300gと共にスラリー化し、次いでガラスビーズを用いて湿式粉砕処理を施し、平均粒径1μmのコロイド状態の組成物にし、コロイド化した上記抗菌剤を1%owf、蛍光白色の分散染料を2%owf、均染剤を0.5g/l、浴比1:10、pH5の液中に供試布を浸し、130℃、60分間の条件で常法による染色加工を行った。この後、水洗し、170℃、2分間乾燥して抗菌加工布を得た。得られた繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で1級となった。繊維上にフッ素系樹脂が付着していないため、汚れを弾くことなく、満足する汚れ除去性は得られなかった。
(比較例10)
ポリエチレンテレフタレートからなる総繊度が84dtexで、72フィラメントの仮撚り加工糸をタテ糸とヨコ糸に使用して、ツイル織物を製織した。得られたツイル織物を95℃の温度で、連続式精錬機で常法に従い精錬し湯水洗し、次いで130℃の温度で乾燥した。次いで、液流染色機を用いて、130℃の温度で蛍光白色に染色し、常法により洗浄し湯水洗し乾燥して、170℃の温度で加熱を行い、白色布帛を製造した。
0086
次いで、抗菌剤として(O)2−ピリジルチオール−1−オキシド亜鉛50g/Lを希釈して処理液を調整し、これに上記で製造された白色布帛を浸漬してマングルを用いて絞り率90%となるよう絞り、120℃の温度で乾燥し、その後、170℃の温度で加熱処理をした。得られた繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で1級となった。繊維上にフッ素系樹脂が付着していないため、汚れを弾くことなく、満足する汚れ除去性は得られなかった。
(比較例11)
ポリエチレンテレフタレート80重量%、綿20重量%からなる34番手の双糸をタテ糸に使用し、ポリエチレンテレフタレートからなる総繊度が84dtexで、72フィラメントの仮撚り加工糸をヨコ糸に使用して、ツイル織物を製織した。得られたツイル織物を通常の染色工程より白色布帛を製造した。
0087
次いで、架橋剤として(R)ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素樹脂水溶液(固形分20%)100g/Lと触媒として(S)塩化マグネシウム20g/Lを希釈して処理液を調整し、これに上記で製造された白色布帛を浸漬してマングルを用いて絞り率90%となるよう絞り、100℃の温度で乾燥し、その後、170℃の温度で加熱処理をした。得られた繊維構造物の工業洗濯50回後の押し込み法汚れ除去性は汚染用グレースケール判定で1級となった。繊維上にフッ素系樹脂が付着していないため、汚れを弾くことなく、満足する汚れ除去性は得られなかった。
0088
以上の実施例1〜23、比較例1〜11では以下のフッ素系樹脂を用い、フッ素系樹脂の付着量が固形分換算で繊維重量あたり0.77%となるように濃度を調整した。比較例で用いられるフッ素系樹脂は、フッ素系樹脂に含まれる親水性側鎖のポリエチレングリコールの量が不適切である。
(A)パラジンKFS−100(京浜化成(株)製、フッ素系樹脂、固形分10%、PEG含有)
(B)パラレジンNC−305(大原パラヂウム(株)製、フッ素系樹脂、固形分10%、PEG含有)
(C)パラジンKFS−150(京浜化成(株)製、フッ素系樹脂、固形分10%、PEG含有)
(D)パラジンKFS−101(京浜化成(株)製、フッ素系樹脂、固形分10%、PEG含有)
(E)パラジンKFS−102(京浜化成(株)製、フッ素系樹脂、固形分10%、PEG含有)
(F)パラジンKFS−200(京浜化成(株)製、フッ素系樹脂、固形分10%、PEG含有)
(G)“アサヒガード”(登録商標)AG−1100(旭硝子(株)製、フッ素系樹脂、固形分20%、PEG含有)
(H)“ユニダイン”(登録商標) TG−5243(ダイキン工業(株)製、固形分30%、PEG非含有)
(I)“ユニダイン”(登録商標) TG−5521(ダイキン工業(株)製、固形分30%、PEG非含有)
(J)“アサヒガード”(登録商標)AG−E092(旭硝子(株)製、フッ素系樹脂、固形20分%、PEG非含有)
(K)“マックスガード” (登録商標) FX−2500T((株)京絹化成製、フッ素系樹脂、固形分30%、PEG非含有)
また、フッ素化合物の架橋剤として(L)を触媒として(M)を用いた。
(L)“ベッカミン”(登録商標)M−3(大日本インキ化学工業(株)製トリアジン環含有化合物:固形分80%)
(M)キャタリストACX(大日本インキ化学工業(株)製 触媒 固形分35%)
(N)過硫酸アンモニウム
また、抗菌性を付与するために以下の(N)〜(P)の薬剤を用いた。
(O)2−ピリジルチオール−1−オキシド亜鉛
(P)ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物
(Q)リグニンスルホン酸ナトリウム
また、天然素材混の合成繊維布帛に洗濯耐久性を付与するために以下の(R)〜(S)の薬剤を用いた。
(R)ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素
(S)塩化マグネシウム
以上の実施例1〜23、比較例1〜11の処理液組成(A)〜(S)と繊維素材を表2に示す。
0089
0091
0092
0093
実施例
0094
表3から明らかなように、本発明の繊維構造物である実施例1〜23においては、親水性成分の最大径が100〜500nmであり、押し込み汚れに対する汚れ除去性に優れているのに対して、本発明の防汚性繊維構造物とは異なる比較例1〜11においては、親水性成分による染色領域の最大径が100nm未満であり、実施例に比べて押し込み汚れに対する汚れ除去性が劣っている。
0095
本発明の防汚性繊維構造物は、水性汚れと油性汚れに対して高い付着抑制性と洗濯による汚れ除去性を同時に有するため、一般衣料品、作業用ユニフォーム、寝装品、医療用衣類、インテリア品および産業資材品等として好適に用いられる。中でも、洗濯で落ちにくいとされる油汚れなどが付着しやすく防汚性能のニーズがある作業用ユニフォームとして好適に用いられる。
0096
1:繊維
2:酸化オスミウムによる染色相
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