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課題・解決手段
一次コイルへの通電時間を長くすることなく安定した燃焼を維持できる点火制御を実現可能な内燃機関用点火装置に好適な構造で、大型化およびコスト増を抑制できる点火コイルを提供する。燃焼サイクルの所定のタイミングで通電を開始した後に電流を遮断することで磁束量が減少する磁束変化を生じさせる主一次コイル(110)と、前記磁束変化発生以降の任意のタイミングで通電することにより前記磁束変化の方向と同方向の追加磁束を生じさせる副一次コイル(120)とを、一次コイル用ボビン(130)へ積層状に設けることで、前記主一次コイル(100)をコンパクト且つ廉価に構成した点火コイル(10)は、前記副一次コイル(120)による追加磁束の発生タイミングや継続時間を調整することで、二次コイル(200)に発生させる放電エネルギーを内燃機関に好適な放電パターンと成し、内燃機関の安定した燃焼を維持できるようにする。
概要
背景
車両搭載の内燃機関として、燃費改善のために直噴エンジンや高EGRエンジンが採用されている。しかし、これらのエンジンは着火性があまり良くないため、点火装置には高エネルギー型のものが必要になる。そこで、古典的な電流遮断原理により発生する点火コイル二次側出力に、さらにもう一つの点火コイルの出力を加算的に重畳する位相放電型の点火装置が提案されている(特許文献1)。 この特許文献1に記載の点火装置は、主点火コイルの一次電流を遮断することでその二次側に発生する数kVの高電圧により、点火プラグの放電間隙に絶縁破壊を起こして点火コイルの二次側から放電電流を流し始めた後に、主点火コイルと並列に接続された副点火コイルの一次電流を遮断し、その二次側に発生する数kVの直流電圧を加算的に重畳する。このことにより、比較的長い時間に亙って点火プラグに大きな放電エネルギーを与えることができるため、燃料への着火性が向上し、延いては燃費も向上する。
概要
一次コイルへの通電時間を長くすることなく安定した燃焼を維持できる点火制御を実現可能な内燃機関用点火装置に好適な構造で、大型化およびコスト増を抑制できる点火コイルを提供する。燃焼サイクルの所定のタイミングで通電を開始した後に電流を遮断することで磁束量が減少する磁束変化を生じさせる主一次コイル(110)と、前記磁束変化発生以降の任意のタイミングで通電することにより前記磁束変化の方向と同方向の追加磁束を生じさせる副一次コイル(120)とを、一次コイル用ボビン(130)へ積層状に設けることで、前記主一次コイル(100)をコンパクト且つ廉価に構成した点火コイル(10)は、前記副一次コイル(120)による追加磁束の発生タイミングや継続時間を調整することで、二次コイル(200)に発生させる放電エネルギーを内燃機関に好適な放電パターンと成し、内燃機関の安定した燃焼を維持できるようにする。
目的
本発明は、一次コイルへの通電時間を長くすることなく安定した燃焼を維持できる点火制御を実現可能な内燃機関用点火装置に好適な構造で、大型化およびコスト増を抑制できる点火コイルの提供を目的とする
効果
実績
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この技術が所属する分野
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請求項1
直流電源からの通電により正方向の通電磁束が生じ、電流を遮断することにより逆方向の遮断磁束が生じる主一次コイルと、前記直流電源からの通電により前記遮断磁束と同方向の追加磁束が生じる副一次コイルと、前記主一次コイルおよび副一次コイルの磁界が作用して磁気誘導を生ずる強磁性の鉄心と、内燃機関の気筒毎に設けられる点火プラグと一端側が接続され、前記主一次コイルと前記副一次コイルに各々生じた磁束が前記鉄心を介して作用することにより、放電エネルギーが発生する二次コイルと、を備えることを特徴とする内燃機関用点火装置の点火コイル。
請求項2
前記主一次コイルと前記副一次コイルは、内空部をセンター鉄心が貫通する一次コイル用ボビンの胴部へ、絶縁手段を介して積層状に設けるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火装置の点火コイル。
請求項3
前記一次コイル用ボビンの胴部にマグネットワイヤを巻回して主一次コイルと成し、該主一次コイルの外表面を絶縁シートで覆うことにより絶縁手段とし、該絶縁シートの外表面よりマグネットワイヤを巻回することで副一次コイルと成すことにより、前記主一次コイルの外層に前記副一次コイルを形成するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の内燃機関用点火装置の点火コイル。
請求項4
前記一次コイル用ボビンの胴部にマグネットワイヤを巻回して副一次コイルと成し、該副一次コイルの外表面を絶縁シートで覆うことにより絶縁手段とし、該絶縁手段の外表面よりマグネットワイヤを巻回することで主一次コイルと成すことにより、前記副一次コイルの外層に前記主一次コイルを形成するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の内燃機関用点火装置の点火コイル。
請求項5
前記主一次コイルの通電側端子と前記副一次コイルの通電側端子を一次コイル用ボビンの同一側から引き出し、前記主一次コイルの巻回方向と前記副一次コイルの巻回方向を逆にすることで、前記遮断磁束と前記追加磁束が同方向となるようにしたことを特徴とする請求項2から請求項4の何れか1項に記載の内燃機関用点火装置の点火コイル。
請求項6
前記主一次コイルの巻回方向と前記副一次コイルの巻回方向を同じにし、前記主一次コイルの通電側端子と前記副一次コイルの通電側端子をそれぞれ一次コイル用ボビンの異なる側より引き出すことで、前記遮断磁束と前記追加磁束が同方向となるようにしたことを特徴とする請求項2から請求項4の何れか1項に記載の内燃機関用点火装置の点火コイル。
請求項7
前記主一次コイルと前記副一次コイルは、内空部をセンター鉄心が貫通する一次コイル用ボビンの胴部の異なる位置へ、絶縁手段を介して並列状に設けるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火装置の点火コイル。
請求項8
前記一次コイル用ボビンは、主一次コイル用ボビンと副一次コイル用ボビンに分割し、前記主一次コイル用ボビンの胴部にマグネットワイヤを巻回することで主一次コイルを構成し、前記副一次コイル用ボビンの胴部にマグネットワイヤを巻回することで副一次コイルを構成し、前記主一次コイル用ボビンと前記副一次コイル用ボビンの各内空部にセンター鉄心を貫通させることで、主一次コイルと副一次コイルをセンター鉄心の長尺方向に並列配置し、主一次コイル用ボビンと副一次コイル用ボビンの各端部が主一次コイルと副一次コイルを隔てる絶縁手段となるようにしたことを特徴とする請求項7に記載の内燃機関用点火装置の点火コイル。
請求項9
前記センター鉄心に主一次コイル用ボビンと副一次コイル用ボビンがそれぞれ嵌挿された前記主一次コイルと前記副一次コイルは、その巻回方向を逆向きとし、前記主一次コイルの通電側端子と前記副一次コイルの通電側端子を主一次コイル用ボビンと副一次コイル用ボビンの同一側から引き出すことで、前記遮断磁束と前記追加磁束が同方向となるようにしたことを特徴とする請求項8に記載の内燃機関用点火装置の点火コイル。
請求項10
前記センター鉄心に主一次コイル用ボビンと副一次コイル用ボビンがそれぞれ嵌挿された前記主一次コイルと前記副一次コイルは、その巻回方向を同一方向とし、前記主一次コイルの通電側端子と前記副一次コイルの通電側端子をそれぞれ主一次コイル用ボビンと副一次コイル用ボビンの逆側から引き出すことで、前記遮断磁束と前記追加磁束が同方向となるようにしたことを特徴とする請求項8に記載の内燃機関用点火装置の点火コイル。
技術分野
0001
本発明は、自動車両に搭載される内燃機関用点火装置の点火コイルに関する。特に、点火コイルの二次側に発生させる放電エネルギーを重畳的に増大させて、良好な放電特性を得ることが可能な一次コイル構造を採用した点火コイルである。
背景技術
0002
車両搭載の内燃機関として、燃費改善のために直噴エンジンや高EGRエンジンが採用されている。しかし、これらのエンジンは着火性があまり良くないため、点火装置には高エネルギー型のものが必要になる。そこで、古典的な電流遮断原理により発生する点火コイル二次側出力に、さらにもう一つの点火コイルの出力を加算的に重畳する位相放電型の点火装置が提案されている(特許文献1)。 この特許文献1に記載の点火装置は、主点火コイルの一次電流を遮断することでその二次側に発生する数kVの高電圧により、点火プラグの放電間隙に絶縁破壊を起こして点火コイルの二次側から放電電流を流し始めた後に、主点火コイルと並列に接続された副点火コイルの一次電流を遮断し、その二次側に発生する数kVの直流電圧を加算的に重畳する。このことにより、比較的長い時間に亙って点火プラグに大きな放電エネルギーを与えることができるため、燃料への着火性が向上し、延いては燃費も向上する。
先行技術
0003
特開2012−140924号公報
発明が解決しようとする課題
0004
しかしながら、特許文献1に記載された点火装置のような方式では、2つの点火コイルを用いる必要があるため、コストアップになる。また、2つの点火装置を内蔵する点火装置は大型となり、搭載スペースの確保が問題となる。しかも、2つの点火コイルを組み付ける工程が必要となり、作業効率が悪くなってしまう。 更に、特許文献1に記載された点火装置は、これらの構造的な問題に加えて、点火制御技術としての問題もある。すなわち、特許文献1に記載の点火装置では、点火プラグの放電時間を長くするために、2つの点火コイルの点火位相を大きくする必要があることから、点火プラグの放電時間が長くなってしまう上に、2つの点火コイルに十分なエネルギーを蓄積する時間も長くなるため、燃焼速度を速くすることができないのである。このため、特許文献1に記載された点火装置では、安定した燃焼を維持してエンジン出力の安定化を図れる反面、必要なタイミングで高出力が得られるように回転数を上げることができないという点火制御技術上の問題が生ずる。 そこで、本発明は、一次コイルへの通電時間を長くすることなく安定した燃焼を維持できる点火制御を実現可能な内燃機関用点火装置に好適な構造で、大型化およびコスト増を抑制できる点火コイルの提供を目的とする。
課題を解決するための手段
0005
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、直流電源からの通電により正方向の通電磁束が生じ、電流を遮断することにより逆方向の遮断磁束が生じる主一次コイルと、前記直流電源からの通電により前記遮断磁束と同方向の追加磁束が生じる副一次コイルと、前記主一次コイルおよび副一次コイルの磁界が作用して磁気誘導を生ずる強磁性の鉄心と、内燃機関の気筒毎に設けられる点火プラグと一端側が接続され、前記主一次コイルと前記副一次コイルに各々生じた磁束が前記鉄心を介して作用することにより、放電エネルギーが発生する二次コイルと、を備えることを特徴とする。 また、請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載の内燃機関用点火装置の点火コイルにおいて、前記主一次コイルと前記副一次コイルは、内空部をセンター鉄心が貫通する一次コイル用ボビンの胴部へ、絶縁手段を介して積層状に設けるようにしたことを特徴とする。 また、請求項3に係る発明は、前記請求項2に記載の内燃機関用点火装置の点火コイルにおいて、前記一次コイル用ボビンの胴部にマグネットワイヤを巻回して主一次コイルと成し、該主一次コイルの外表面を絶縁シートで覆うことにより絶縁手段とし、該絶縁シートの外表面よりマグネットワイヤを巻回することで副一次コイルと成すことにより、前記主一次コイルの外層に前記副一次コイルを形成するようにしたことを特徴とする。 また、請求項4に係る発明は、前記請求項2に記載の内燃機関用点火装置の点火コイルにおいて、前記一次コイル用ボビンの胴部にマグネットワイヤを巻回して副一次コイルと成し、該副一次コイルの外表面を絶縁シートで覆うことにより絶縁手段とし、該絶縁手段の外表面よりマグネットワイヤを巻回することで主一次コイルと成すことにより、前記副一次コイルの外層に前記主一次コイルを形成するようにしたことを特徴とする。 また、請求項5に係る発明は、前記請求項2から請求項4の何れか1項に記載の内燃機関用点火装置の点火コイルにおいて、前記主一次コイルの通電側端子と前記副一次コイルの通電側端子を一次コイル用ボビンの同一側から引き出し、前記主一次コイルの巻回方向と前記副一次コイルの巻回方向を逆にすることで、前記遮断磁束と前記追加磁束が同方向となるようにしたことを特徴とする。 また、請求項6に係る発明は、前記請求項2から請求項4の何れか1項に記載の内燃機関用点火装置の点火コイルにおいて、前記主一次コイルの巻回方向と前記副一次コイルの巻回方向を同じにし、前記主一次コイルの通電側端子と前記副一次コイルの通電側端子をそれぞれ一次コイル用ボビンの異なる側より引き出すことで、前記遮断磁束と前記追加磁束が同方向となるようにしたことを特徴とする。 また、請求項7に係る発明は、前記請求項1に記載の内燃機関用点火装置の点火コイルにおいて、前記主一次コイルと前記副一次コイルは、内空部をセンター鉄心が貫通する一次コイル用ボビンの胴部の異なる位置へ、絶縁手段を介して並列状に設けるようにしたことを特徴とする。 また、請求項8に係る発明は、前記請求項7に記載の内燃機関用点火装置の点火コイルにおいて、前記一次コイル用ボビンは、主一次コイル用ボビンと副一次コイル用ボビンに分割し、前記主一次コイル用ボビンの胴部にマグネットワイヤを巻回することで主一次コイルを構成し、前記副一次コイル用ボビンの胴部にマグネットワイヤを巻回することで副一次コイルを構成し、前記主一次コイル用ボビンと前記副一次コイル用ボビンの各内空部にセンター鉄心を貫通させることで、主一次コイルと副一次コイルをセンター鉄心の長尺方向に並列配置し、主一次コイル用ボビンと副一次コイル用ボビンの各端部が主一次コイルと副一次コイルを隔てる絶縁手段となるようにしたことを特徴とする。 また、請求項9に係る発明は、前記請求項8に記載の内燃機関用点火装置の点火コイルにおいて、前記センター鉄心に主一次コイル用ボビンと副一次コイル用ボビンがそれぞれ嵌挿された前記主一次コイルと前記副一次コイルは、その巻回方向を逆向きとし、前記主一次コイルの通電側端子と前記副一次コイルの通電側端子を主一次コイル用ボビンと副一次コイル用ボビンの同一側から引き出すことで、前記遮断磁束と前記追加磁束が同方向となるようにしたことを特徴とする。 また、請求項10に係る発明は、前記請求項8に記載の内燃機関用点火装置の点火コイルにおいて、前記センター鉄心に主一次コイル用ボビンと副一次コイル用ボビンがそれぞれ嵌挿された前記主一次コイルと前記副一次コイルは、その巻回方向を同一方向とし、前記主一次コイルの通電側端子と前記副一次コイルの通電側端子をそれぞれ主一次コイル用ボビンと副一次コイル用ボビンの逆側から引き出すことで、前記遮断磁束と前記追加磁束が同方向となるようにしたことを特徴とする。
発明の効果
0006
本発明に係る内燃機関用点火装置の点火コイルによれば、副一次コイルを設けることで点火コイルが著しく大型化することはなく、コストアップの抑制にも効果がある。しかも、内燃機関用点火装置によって、主一次コイルへの通電を遮断する遮断タイミング以降に所定の重畳時間だけ副一次コイルに通電するような点火制御を行えば、一次コイルへの通電時間を長くせずに、二次コイルに発生する放電エネルギーを重畳的に増加させて、安定した燃焼を維持できる。
図面の簡単な説明
0007
図1は、本発明に係る内燃機関用点火装置の点火コイルの構成説明図である。図2は、図1に示す点火コイルを実装した内燃機関用点火装置の概略構成図である。図3は、本発明に係る内燃機関用点火装置の点火コイルに適用できる第1構成例の一次コイルを組み立てる工程の概略を示す組立工程図である。図4は、図3に示す第1構成例の一次コイルにおける磁束変化を示す説明図である。図5は、図2の内燃機関用点火装置における放電波形図である。図6は、本発明に係る内燃機関用点火装置の点火コイルに適用できる第2構成例の一次コイルを組み立てる工程の概略を示す組立工程図である。図7は、本発明に係る内燃機関用点火装置の点火コイルに適用できる第3構成例の一次コイルを組み立てる工程の概略を示す組立工程図である。図8の(1a),(1b),(1c)は、本発明に係る内燃機関用点火装置の点火コイルに適用できる第4構成例の一次コイルを組み立てる工程の概略を示す組立工程図であり、(2a),(2b),(2c)は、本発明に係る内燃機関用点火装置の点火コイルに適用できる第5構成例の一次コイルを組み立てる工程の概略を示す組立工程図である。図9は、本発明に係る内燃機関用点火装置の点火コイルに適用できる第6構成例の一次コイルを組み立てる工程の概略を示す組立工程図である。図10は、本発明に係る内燃機関用点火装置の点火コイルに適用できる第7構成例の一次コイルを組み立てる工程の概略を示す組立工程図である。
実施例
0008
次に、本発明に係る内燃機関用点火装置の点火コイルの実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1(a)は点火コイル10の外観を示し、図1(b)はコイル部分のみを縦断して内部を示したものである。 この点火コイル10は、少なくとも、通電と遮断によって磁界が生じる一次コイル100と、この一次コイルの磁界が作用して磁気誘導を生ずる強磁性の鉄心300と、一次コイルに生じた磁界が鉄心300を介して作用することにより、放電エネルギーが発生する二次コイル200と、を備える。 一次コイル100は、主一次コイル110と副一次コイル120から成る。主一次コイル110は、一次コイル用ボビン130にエナメル線等のマグネットワイヤを巻回(例えば、114ターン)して構成し、主一次コイル110の外表面に内層絶縁シート141を装着し、この内層絶縁シート141の外側にマグネットワイヤを巻回(例えば、20〜30ターン)して副一次コイル120を構成する。なお、副一次コイル120の外表面には外層絶縁シート142を装着してある。 二次コイル200は、二次コイル用ボビン210にマグネットワイヤを巻回(例えば、9348ターン)して構成したもので、二次コイル用ボビン210の内空部210a内に、前記一次コイル用ボビン130が収容される。 鉄心300は、一次コイル用ボビン130の内空部130aに挿通されるセンター鉄心310と、二次コイル用ボビン210の外側に配置される環状鉄心320とから成り、センター鉄心310と環状鉄心320とによって閉磁路が形成される。また、センター鉄心310と環状鉄心320との間には、永久磁石330を設け、鉄心300に磁気逆バイアスをかける。 このように構成した点火コイル10は、主一次コイル110への通電・遮断と、副一次コイル120への通電・遮断を、それぞれ個別に行うことができる。その結果、主一次コイル110および副一次コイル120の巻回方向および通電の向きに応じて、発生する磁界を適宜に設定することができる。図2に示すのは、上述した点火コイル10を用いて構成した内燃機関用点火装置1である。この内燃機関点火装置1は、内燃機関の気筒毎に設けられる1つの点火プラグ2に放電火花を発生させる点火コイルユニット11と、この点火コイルユニット11の動作制御を行う点火制御手段3aとで構成される。 なお、本実施形態に示す点火制御手段3aは、自動車の内燃機関を統括的に制御する内燃機関制御装置であるエンジンコントロールユニット3に含まれるものであり、エンジンコントロールユニット3からの点火信号(後に詳述する)によって点火コイルユニット11の動作が適宜に制御される。 点火コイルユニット11は、例えば、点火コイル10、主IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)12a、副IGBT12bを所要形状のケース13に収納して一体構造としたユニットである。このケース13の適所には、高圧端子13aとコネクタ13bを設けてあり、高圧端子13aを介して点火プラグ2を接続すると共に、コネクタ13bを介してエンジンコントロールユニット3および車両バッテリー等の直流電源4と接続する。 点火コイル10は、上述したように、エンジンコントロールユニット3からの通電・遮断制御によって主一次コイル110と副一次コイル120に生ずる磁束を二次コイル200に作用させるものである。主一次コイル110と副一次コイル120の一方端は、車両バッテリー等の直流電源4と接続され、共通の電源電圧VB+(例えば、+12V)が印加される。 主一次コイル110の他方端は、主IGBT12aを介して接地点GNDに接続される。この主IGBT12aは、大電力の高速スイッチングが可能な半導体素子であり、点火制御手段3aからの主一次コイル点火信号Saに基づいて、主一次コイル110への通電・遮断を切り替える。 副一次コイル120の他方端は、副IGBT12bを介して接地点GNDに接続される。この副IGBT12bは、大電力の高速スイッチングが可能な半導体素子であり、点火制御手段3aからの副一次コイル重畳信号Sbに基づいて、副一次コイル120への通電・遮断を切り替える。 ここで、主一次コイル110と副一次コイル120は、直流電源4から通電されたときに生じる磁束の向きが逆方向になるよう、巻回方向もしくは給電位置を異ならしめておく必要がある。この条件を満たすような一次コイルの第1構成例である一次コイル100Aを、図3に基づいて説明する。 一次コイル用ボビン130は、例えば、略四角柱状の胴部131の両端に、それぞれ第1鍔部132aと第2鍔部132bを設けた構造で、胴部131の外表面へマグネットワイヤが巻回される。また、一次コイルを形成するための巻回方向は、便宜上、第1鍔部132aから第2鍔部132bに向かう方向を基準として、右ねじ巻き若しくは左ねじ巻きという。 まず、一次コイル用ボビン130にマグネットワイヤを所要回数(例えば、114ターン)ほど右ねじ巻きすることで、主一次コイル110を形成する(図3(a),(b)を参照)。このとき、主一次コイル110の巻き始め側と巻き終わり側には、それぞれ所要長さのリード線を引き出しておく。便宜上、第1鍔部132a側を巻き始め側リード線111、第2鍔部132b側を巻き終わり側リード線112とよぶ。 次いで、主一次コイル110の外表面を絶縁手段としての内層絶縁シート141で覆い、その外表面よりマグネットワイヤを所要回数(例えば、20〜30ターン)ほど左ねじ巻きすることで、副一次コイル120を形成する(図3(b),(c),(d)を参照)。このとき、副一次コイル120の第1鍔部132a側には巻き始め側リード線121を引き出し、第2鍔部132b側には巻き終わり側リード線122を引き出しておく。 上記のようにして、主一次コイル110と副一次コイル120を積層構造とした後、副一次コイル120の外表面に外層絶縁シート142を装着することで一次コイル100Aとなり、一次コイル用ボビン130の内空部130aにセンター鉄心310を挿通させる(図3(e),(f)を参照)。 この第1構成例の一次コイル100Aでは、主一次コイル110の巻き始め側リード線111と副一次コイル120の巻き始め側リード線121を共通の直流電源(VB+)に接続し、主一次コイル110の巻き終わり側リード線112は主IGBT12aに接続し、副一次コイル120の巻き終わり側リード線122は副IGBT12bに接続する。 すなわち、一次コイル100Aにおいては、主一次コイル110および副一次コイル120のどちらも第1鍔部132a側(巻き始め側)から給電することで、主一次コイル110を流れる電流の向き(第1鍔部132aから第2鍔部132bに向かって右向き)と副一次コイル120を流れる電流の向き(第1鍔部132aから第2鍔部132bに向かって左向き=第2鍔部132bから第1鍔部132aに向かって右向き)が逆向きとなるようにしておく。 上記のように構成した一次コイル100Aにおいて、主一次コイル110に通電開始したとき、主一次コイル110への通電を遮断したとき、主一次コイル110の通電遮断に続けて副一次コイル120へ通電したときの発生磁束を、模式的に示したのが図4である。 まず、主IGBT12aがオンとなって、主一次コイル110に一次電流I1aが流れると、通電磁束が発生し(図4(a)を参照)、その向きの磁束に応じた磁界がセンター鉄心310に作用する。仮に、通電磁束の向きを正方向(図4中、下から上向き)とすると、IGBT12aがオフとなって一次電流I1aが遮断されたとき、逆方向(図4中、上から下向き)の遮断磁束が発生する(図4(b)を参照)。この遮断磁束が二次コイル200に作用することで、点火プラグ2の放電ギャップに絶縁破壊を起こす放電エネルギーが発生するのである。 さらに、主一次コイル110への通電を遮断する遮断タイミング以降に副IGBT12bがオンになって、副一次コイル120に重畳電流I1bが流れると、遮断磁束と同じ向きの重畳磁束が発生する(図4(c)を参照)。すなわち、遮断磁束と重畳磁束が鉄心300を介して二次コイル200に作用することで、二次コイル200に発生する放電エネルギーを重畳的に増加させることができるのである。 なお、主一次コイル110への通電を遮断したときの磁束変化によって副一次コイル120に発生する電圧が電源電圧(例えば、+12V)よりも小さくなるように、副一次コイル120の巻数を設定しておく必要がある。これは、主一次コイル110への通電を遮断したときに副一次コイル120に発生する電圧が、直流電源4の電圧よりも大きい場合、副IGBT12bがオンになっても、重畳磁束を発生させるような重畳電流I1bを流すことができないからである。 また、副IGBT12bがオフになって副一次コイル120への通電を遮断したとき、その逆起電力が主一次コイル110に作用するため、通常の一次電流とは逆向きの電流を流そうとする逆方向の電圧が主IGBT12aのエミッタ−コレクタ間に印加されることとなり、主IGBT12aが故障したり、主IGBT12aの劣化を早めたりする可能性がある。そこで、主IGBT12aと並列にバイパス線路14を設けると共に、このバイパス線路14の接地点側から点火コイル10側に向かって順方向となる整流手段15(例えば、主IGBT12aのコレクタ側にカソードを、主IGBT12aのエミッタ側にアノードをそれぞれ接続したダイオード)を設けている。 次に、点火制御手段3aにより生成される主一次コイル点火信号Saおよび副一次コイル重畳信号Sbによる点火コイルユニット11の動作を、図5の波形図に基づいて説明する。 遮断磁束に重畳磁束を追加するまでもなく、主一次コイル110のみで適切な放電特性を得られている運転状況の場合、点火制御手段3aはノーマル放電制御を行う。 まず、放電サイクルの適宜なタイミングで主一次コイル点火信号Saの信号レベルをLからHに変化させて、主IGBT12aをオンにし、一次電流I1aを流し始める。一次電流通電時間Taが経過したタイミングで主一次コイル点火信号Saの信号レベルをHからLに変化させて、主IGBT12aをオフにし、一次電流I1aを遮断して、二次コイル200側に二次電流I2を流す。この間、副一次コイル重畳信号Sbの信号レベルはLを保持し、副IGBT12bがオフのままで、副一次コイル120に重畳電流I1bが流れることはないので、重畳磁束が二次コイル200に作用することはない。放電開始の最初期に大きな放電エネルギーが必要な運転状況の場合、点火制御手段3aは、高電流タイプの重畳放電制御を行う。 上述したノーマル放電制御と同様に一次電流I1aを流し始めた後、一次電流通電時間Taが経過したタイミングで主一次コイル点火信号Saの信号レベルをHからLに変化させて、主IGBT12aをオフにすると同時に、副一次コイル重畳信号Sbの信号レベルをLからHに変化させて、副IGBT12bをオンにし、一次電流I1bを流す。これにより、主一次コイル110への通電遮断により生じる遮断磁束が最大となる放電開始直後のタイミングで、副一次コイル120への通電により生じる重畳磁束が追加されることとなり、初期の二次電流I2が高電流となる。その後、点火プラグ2の放電に必要十分な時間を勘案して定めた重畳電流通電時間Tbが経過したタイミングで副一次コイル重畳信号Sbの信号レベルをHからLに変化させて、副IGBT12bをオフにし、重畳電流I1bを遮断する。 放電開始から比較的長時間にわたって一定以上の放電エネルギーを持続させる必要がある運転状況の場合、点火制御手段3aは、長放電タイプの重畳放電制御を行う。 上述したノーマル放電制御と同様に一次電流I1aを流し始めた後、一次電流通電時間Taが経過して主IGBT12aをオフにし、一次電流I1aを遮断して、二次コイル200側に二次電流I2を流すが、副一次コイル重畳信号Sbの信号レベルはLのままである。その後、二次電流I2が所定値以上を保持している時間を勘案して定めた重畳開始遅延時間Δtが経過したタイミングで、副一次コイル重畳信号Sbの信号レベルをLからHに変化させて、副IGBT12bをオンにし、一次電流I1bを流す。これにより、二次電流I2が再び高くなって、二次電流I2が所定値よりも低くなる(点火プラグ2の放電に必要なエネルギーが失われる)までの時間を延ばすことができ、点火プラグ2の放電期間を長く保持できる。その後、点火プラグ2の放電に必要十分な時間を勘案して定めた重畳電流通電時間Tbが経過したタイミングで副一次コイル重畳信号Sbの信号レベルをHからLに変化させて、副IGBT12bをオフにし、重畳電流I1bを遮断する。 以上のように、本実施形態の点火コイル10を用いた内燃機関用点火装置1においては、点火制御手段3aの機能を備えるエンジンコントロールユニット3が、車両の運転状況に基づいて副一次コイル120の通電開始タイミングや通電時間を決定し、それに応じた副一次コイル重畳信号Sbを生成して副IGBT12bのオン・オフを切り替えることで、主一次コイル110による遮断磁束と副一次コイル120による重畳磁束を適宜なタイミングで生じさせ、そのときの運転状況に好適な放電特性が得られる点火制御を実現するのである。 なお、運転状況の判定に用いる情報としては、エンジンの回転数、二次電流値、点火コイル10の温度などで、気筒の燃焼に関与する情報であれば、何を用いても構わない。 また、上述した内燃機関用点火装置1に好適な構造の点火コイル10は、主一次コイル110の外層に副一次コイル120を設ける工程を増やすだけで構成できる一次コイル100を用いるので、製造工程が著しく複雑になることはなく、コストアップの抑制が可能である。 しかも、主一次コイル110の外層に設ける副一次コイル120は、数十ターン(例えば、10〜30ターン)程度で良いことから、副一次コイル120を設けることで点火コイル10自体が著しく大型化することはない。よって、既存の一次コイル用ボビン130を流用して一次コイル100を作製できれば、二次コイル200および鉄心300との互換性を保持できることから、コストアップの抑制に一層効果がある。 加えて、主一次コイル110と副一次コイル120の給電を、共に第1鍔部132a側の巻き始め側リード線111,121から行うので、電源端子への接続が容易になるという利点もある。なお、図示の一次コイル用ボビン130は簡略化して示したが、巻き始め側リード線111,121を半田付けした電源接続用の端子、巻き終わり側リード線112を半田付けした主IGBT接続用の端子、巻き終わり側リード線122を半田付けした副IGBT接続用の端子等をそれぞれ所要の位置に固定する端子固定構造や、二次コイル200の二次コイル用ボビン210との係脱構造等を一次コイル用ボビン130に設けても良い。 さらに、本発明に係る点火コイル10は、一次コイル100の機能を様々な構造で実現できることから、設計の自由度が高いという利点もある。上述した第1構成例の一次コイル100Aでは、主一次コイル110を内層の右ねじ巻きに、副一次コイル120を外層の左ねじ巻きにするものとしたが、このような構造に限定されるものではない。 例えば、図6に示す第2構成例の一次コイル100Bでは、副一次コイル120を内層の右ねじ巻きに、主一次コイル110を外層の左ねじ巻きにした。 この一次コイル100Bでは、副一次コイル120の巻き始め側リード線121と主一次コイル110の巻き始め側リード線111を共通の直流電源(VB+)に接続し、副一次コイル120の巻き終わり側リード線122は副IGBT12bに接続し、主一次コイル110の巻き終わり側リード線112は主IGBT12aに接続する。 すなわち、一次コイル100Bにおいては、図6(f)に示すように、主一次コイル110および副一次コイル120へ共に第1鍔部132a側から給電することで、主一次コイル110を流れる電流の向き(第1鍔部132aから第2鍔部132bに向かって左向き=第2鍔部132bから第1鍔部132aに向かって右向き)と副一次コイル120を流れる電流の向き(第1鍔部132aから第2鍔部132bに向かって右向き)が反対となり、主一次コイル110への電流を遮断したときに生じる遮断磁束の向き(第1鍔部132aから第2鍔部132bへ向かう方向)を、副一次コイル120に生ずる重畳磁束の向きと同じにすることができる。 よって、この第2構成例の一次コイル100Bを用いた点火コイル10を内燃機関用点火装置1に適用した場合でも、そのときの運転状況に好適な放電特性が得られる点火制御を実現できる。無論、第2構成例の一次コイル100Bを用いた点火コイル10においても、副一次コイル120を設けることで点火コイル10自体が著しく大型化することはなく、コストアップの抑制にも効果がある。 また、上述した第1構成例の一次コイル100Aと第2構成例の一次コイル100Bは、何れも主一次コイル110と副一次コイル120の巻回方向を異ならせると共に、同じ側のリード線を直流電源(VB+)に接続するものとしたが、この構造に限定されるものではない。 例えば、図7に示す第3構成例の一次コイル100Cでは、内層の主一次コイル110と外層の副一次コイル120を、どちらも右ねじ巻きにした。 この一次コイル100Cでは、主一次コイル110の巻き始め側リード線111と、副一次コイル120の巻き終わり側リード線122を共通の直流電源(VB+)に接続し、副一次コイル120の巻き始め側リード線121は副IGBT12bに接続し、主一次コイル110の巻き終わり側リード線112は主IGBT12aに接続する。 すなわち、一次コイル100Cにおいては、図7(f)に示すように、主一次コイル110には第1鍔部132a側から給電し、副一次コイル120には第2鍔部132b側から給電することで、主一次コイル110を流れる電流の向き(第1鍔部132aから第2鍔部132bへ向かって右向き)と副一次コイル120を流れる電流の向き(第2鍔部132bから第1鍔部132aに向かって右向き)が反対となり、主一次コイル110への電流を遮断したときに生じる遮断磁束の向き(第2鍔部132bから第1鍔部132aへの向き)を、副一次コイル120に生ずる重畳磁束の向きと同じにすることができる。 よって、この第3構成例の一次コイル100Cを用いた点火コイル10を内燃機関用点火装置1に適用した場合でも、そのときの運転状況に好適な放電特性が得られる点火制御を実現できる。無論、第3構成例の一次コイル100Cを用いた点火コイル10においても、副一次コイル120を設けることで点火コイル10自体が著しく大型化することはなく、コストアップの抑制にも効果がある。また、主一次コイル110と副一次コイル120の巻回方向が同じであることから、単方向の巻回機能しかない自動巻線機を使って一次コイル100Cを作製する場合でも、効率よく巻回作業を行える。 上述した第1〜第3構成例の一次コイル100A〜100Cは、何れも主一次コイル110と副一次コイル120を外層又は内層にする積層構造にしたが、この構造に限定されるものではない。 例えば、図8(1a)〜(1c)に示す第4構成例の一次コイル100Dでは、一次コイル用ボビン130′の胴部131′の異なる位置へ、主一次コイル110と副一次コイル120を並列状に設けている。 この一次コイル100Dで用いる一次コイル用ボビン130′は、その両端部である第1鍔部132aと第2鍔部132bの間に区画鍔部132cを設けることで、マグネットワイヤを巻回する胴部131′を主一次コイル巻回領域131aと副一次コイル巻回領域131bに分割してある。 そして、主一次コイル巻回領域131aには第1鍔部132aから区画鍔部132cに向かって左ねじ巻き方向にマグネットワイヤを巻回して主一次コイル110を構成し、副一次コイル巻回領域131bには区画鍔部132cから第2鍔部132bに向かって左ねじ巻き方向にマグネットワイヤを巻回することで副一次コイル120を構成する。絶縁手段として機能する区画鍔部132bを介して並列状に設けられた主一次コイル110と副一次コイル120は、それぞれの外表面に外層絶縁シート143a,143bが装着され、一次コイル100Dとなる。 このように、巻回方向が同じである主一次コイル110と副一次コイル120を並列配置した一次コイル100Dでは、主一次コイル110の巻き始め側リード線111を主IGBT12aに接続し、主一次コイル110の巻き終わり側リード線112と副一次コイル120の巻き始め側リード線121を共通の直流電源(VB+)に接続し、副一次コイル120の巻き終わり側リード線122を副IGBT12bに接続する。 すなわち、一次コイル100Dにおいては、図8(1c)に示すように、主一次コイル110および副一次コイル120に各々異なる側(主一次コイル110にとっては巻き終わり側となり、副一次コイル120にとっては巻き始め側となる区画鍔部132c側)から給電することで、主一次コイル110を流れる電流の向き(区画鍔部132cから第1鍔部132aへ向かって左向き=第1鍔部132aから区画鍔部132cへ向かって右向き)と副一次コイル120を流れる電流の向き(区画鍔部132cから第2鍔部132bへ向かって左向き=第2鍔部132bから区画鍔部132cへ向かって右向き)が反対となり、主一次コイル110への電流を遮断したときに生じる遮断磁束の向き(第2鍔部132bから第1鍔部132aへの向き)を、副一次コイル120に生ずる重畳磁束の向きと同じにすることができる。 なお、第1鍔部132a側に副一次コイル巻回領域131bを設け、第2鍔部132b側に主一次コイル巻回領域131aを設けて、主一次コイル110と副一次コイル120が区画鍔部132cに対して逆となるようにした場合でも、主一次コイル110と副一次コイル120へそれぞれ異なる側から給電すれば、主一次コイル110への電流を遮断したときに生じる遮断磁束の向きを、副一次コイル120に生ずる重畳磁束の向きと同じにすることができる。しかしながら、第1鍔部132a側に主一次コイル巻回領域131aを設け、第2鍔部132b側に副一次コイル巻回領域131bを設けた一次コイル100Dにおいては、区画鍔部132cに直流電源接続用のリード線を集約できるという利点がある。 以上のように、この第4構成例の一次コイル100Dを用いた点火コイル10を内燃機関用点火装置1に適用した場合でも、そのときの運転状況に好適な放電特性が得られる点火制御を実現できる。無論、第4構成例の一次コイル100Dを用いた点火コイル10においても、副一次コイル120を設けることで点火コイル10自体が著しく大型化することはなく、コストアップの抑制にも効果がある。また、主一次コイル110と副一次コイル120の巻回方向が同じであることから、単方向の巻回機能しかない自動巻線機を使って一次コイル100Dを作製する場合でも、効率よく巻回作業を行える。 上述した第4構成例の一次コイル100Dは、主一次コイル110と副一次コイル120の巻回方向を同じ向きとしたが、この構造に限定されるものではない。 例えば、図8(2a)〜(2c)に示す第5構成例の一次コイル100Eでは、第1鍔部132aから区画鍔部132cに向かって左ねじ巻き方向に巻回して主一次コイル110を構成し、区画鍔部132cから第2鍔部132bに向かって右ねじ巻き方向に巻回して副一次コイル120を構成した。 この一次コイル100Eでは、主一次コイル110の巻き始め側リード線111を主IGBT12aに接続し、主一次コイル110の巻き終わり側リード線112を直流電源(VB+)に接続し、副一次コイル120の巻き始め側リード線121を副IGBT12bに接続し、副一次コイル120の巻き終わり側リード線122を直流電源(VB+)に接続する。 すなわち、一次コイル100Eにおいては、図8(2c)に示すように、主一次コイル110には巻き終わり側である区画鍔部132c側から給電し、副一次コイル120には巻き終わり側である第2鍔部132b側から給電することで、主一次コイル110を流れる電流の向き(区画鍔部132cから第1鍔部132aへ向かって左向き=第1鍔部132aから区画鍔部132cへ向かって右向き)と副一次コイル120を流れる電流の向き(第2鍔部132bから区画鍔部132cへ向かって右向き)が反対となり、主一次コイル110への電流を遮断したときに生じる遮断磁束の向き(第2鍔部132bから第1鍔部132aへの向き)を、副一次コイル120に生ずる重畳磁束の向きと同じにすることができる。 よって、この第5構成例の一次コイル100Eを用いた点火コイル10を内燃機関用点火装置1に適用した場合でも、そのときの運転状況に好適な放電特性が得られる点火制御を実現できる。無論、第5構成例の一次コイル100Eを用いた点火コイル10においても、副一次コイル120を設けることで点火コイル10自体が著しく大型化することはなく、コストアップの抑制にも効果がある。 上述した第4,第5構成例の一次コイル100D,100Eは、一つの一次コイル用ボビン130′に主一次コイル巻回領域131aと副一次コイル巻回領域131bを区画形成して、主一次コイル110と副一次コイル120を一体的に設けるものとしたが、この構造に限定されるものではない。 例えば、図9に示す第6構成例の一次コイル100Fでは、一次コイル用ボビンを主一次コイル用ボビン150と副一次コイル用ボビン160とに分割構成し、主一次コイル110と副一次コイル120を別体とする。すなわち、主一次コイル用ボビン150の胴部151の外周面へ、第1鍔部152aから第2鍔部152bに向かってマグネットワイヤを右ねじ巻き方向に巻回することで主一次コイル110を構成し、副一次コイル用ボビン160の胴部161の外周面へ、第1鍔部162aから第2鍔部162bに向かってマグネットワイヤを右ねじ巻き方向に巻回することで副一次コイル120を構成した。なお、主一次コイル110と副一次コイル120は、それぞれの外表面に外層絶縁シート143a,143bが装着される。 また、主一次コイル用ボビン150の第1鍔部152aと副一次コイル用ボビン160の第2鍔部162bとには、図示を省略した連結手段を設けてある。この連結手段によって主一次コイル用ボビン150と副一次コイル用ボビン160とを連結すると、主一次コイル用ボビン150の内空部150aと副一次コイル用ボビン160の内空部160aとが連通して、センター鉄心310を挿通することが可能な貫通空部が形成され、主一次コイル110と副一次コイル120が絶縁手段(主一次コイル用ボビン150の第1鍔部152aと副一次コイル用ボビン160の第2鍔部162b)を介して並列状に設けられた一次コイル100Fとなる。 この一次コイル100Fでは、副一次コイル120の巻き終わり側リード線122と主一次コイル110の巻き始め側リード線111を共通の直流電源(VB+)に接続し、副一次コイル120の巻き始め側リード線121は副IGBT12bに接続し、主一次コイル110の巻き終わり側リード線112は主IGBT12aに接続する。 すなわち、一次コイル100Fにおいては、図9(d)に示すように、主一次コイル110と副一次コイル120へそれぞれ異なる側から給電することで、主一次コイル110を流れる電流の向き(第1鍔部152aから第2鍔部152bに向かって右向き)と副一次コイル120を流れる電流の向き(第2鍔部162bから第1鍔部162aに向かって右向き)が反対となり、主一次コイル110への電流を遮断したときに生じる遮断磁束の向き(主一次コイル用ボビン150の第2鍔部152bから副一次コイル用ボビンの第1鍔部162aへ向かう方向)を、副一次コイル120に生ずる重畳磁束の向きと同じにすることができる。 なお、主一次コイル用ボビン150の第2鍔部152bと副一次コイル用ボビン160の第1鍔部162abに連結手段を設けて、主一次コイル用ボビン150と副一次コイル用ボビン160を連結する向きを逆にした場合でも、主一次コイル110と副一次コイル120へそれぞれ異なる側から給電すれば、主一次コイル110への電流を遮断したときに生じる遮断磁束の向きを、副一次コイル120に生ずる重畳磁束の向きと同じにすることができる。しかしながら、主一次コイル用ボビン150の第1鍔部152aと副一次コイル用ボビン160の第2鍔部162bに連結手段を設けて一体化した一次コイル100Fにおいては、連結部分に直流電源接続用のリード線を集約できるという利点がある。 以上のように、この第6構成例の一次コイル100Fを用いた点火コイル10を内燃機関用点火装置1に適用した場合でも、そのときの運転状況に好適な放電特性が得られる点火制御を実現できる。無論、第6構成例の一次コイル100Fを用いた点火コイル10においても、副一次コイル120を設けることで点火コイル10自体が著しく大型化することはなく、コストアップの抑制にも効果がある。また、主一次コイル用ボビン150と副一次コイル用ボビン160を別体とすることにより、主一次コイル110と副一次コイル120を別々の製造ラインで作製できるので、生産性を高めることが可能となる。 上述した第6構成例の一次コイル100Fは、主一次コイル110と副一次コイル120の巻回方向を同じ向きとしたが、この構造に限定されるものではない。 例えば、図10に示す第7構成例の一次コイル100Gでは、主一次コイル用ボビン150の第1鍔部152aから第2鍔部152bに向かって右ねじ巻き方向に巻回して主一次コイル110を構成し、副一次コイル用ボビン160の第1鍔部162aから第2鍔部162bに向かって左ねじ巻き方向に巻回して副一次コイル120を構成した。そして、主一次コイル用ボビン150の第1鍔部152aと副一次コイル用ボビン160の第2鍔部162bに連結手段を設けて、主一次コイル110と副一次コイル120を一体化する。 この一次コイル100Gでは、主一次コイル110の巻き始め側リード線111を直流電源(VB+)に接続し、主一次コイル110の巻き終わり側リード線112を主IGBT12aに接続し、と副一次コイル120の巻き始め側リード線121を直流電源(VB+)に接続し、副一次コイル120の巻き終わり側リード線122を副IGBT12bに接続する。 すなわち、一次コイル100Gにおいては、図10(d)に示すように、主一次コイル110には第1鍔部152a側から給電し、副一次コイル120には第1鍔部162a側から給電することで、主一次コイル110を流れる電流の向き(第1鍔部152aから第2鍔部152bへ向かって右向き)と副一次コイル120を流れる電流の向き(第1鍔部162aから第2鍔部162bへ向かって左向き=第2鍔部162bから第1鍔部162aへ向かって右向き)が反対となり、主一次コイル110への電流を遮断したときに生じる遮断磁束の向き(主一次コイル用ボビン150の第2鍔部152bから副一次コイル用ボビン160の第1鍔部162aへ向かう方向)を、副一次コイル120に生ずる重畳磁束の向きと同じにすることができる。 よって、この第7構成例の一次コイル100Gを用いた点火コイル10を内燃機関用点火装置1に適用した場合でも、そのときの運転状況に好適な放電特性が得られる点火制御を実現できる。無論、第7構成例の一次コイル100Eを用いた点火コイル10においても、副一次コイル120を設けることで点火コイル10自体が著しく大型化することはなく、コストアップの抑制にも効果がある。 以上、本発明に係る内燃機関用点火装置の実施形態を添付図面に基づいて説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない範囲で、公知既存の等価な技術手段を転用することにより実施しても構わない。
0009
1内燃機関用点火装置10点火コイル100一次コイル110 主一次コイル 120 副一次コイル 200二次コイル300鉄心11点火コイルユニット12a 主IGBT12b 副IGBT 2点火プラグ3エンジンコントロールユニット3a点火制御手段 4 直流電源