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課題・解決手段
概要
背景
家禽類の生産性能の向上(飼料要求率の改善を含む。)に関する文献として例えば特許文献1〜4を挙げることができる。
特許文献1には、直接給与微生物をシトロバクター(Citrobacter)属菌種に由来するフィターゼと組み合わせて含む、飼料添加用組成物が記載されている。
特許文献2には、直接給与生菌をプロテアーゼ及びフィターゼと混合することを含む飼料添加用組成物が記載されている。
特許文献3には、直接給与生菌をプロテアーゼ、キシラナーゼ、アミラーゼ、及びフィターゼと組み合わせて含む飼料添加用組成物が記載されている。
特許文献1〜3では、直接給与微生物のうちバチルス属細菌として、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)が例示されている。
特許文献4には、肉用家禽類の成長方法に関し、肉用家禽類に家禽類飼料としてトウモロコシ−ダイズミール飼料を給与し、トウモロコシ−ダイズミール飼料が、上記肉用家禽類の体重増加の促進に有効な量のバチルス・リケニフォルミスPWD−1ケラチナーゼをさらに含むようにしたことを特徴とする肉用家禽類の成長方法が記載されている。
非特許文献1には、Guangxi Yellow chickenにバチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)ZJU0616を種々の濃度で給与したときの成長能力(growth performance)、飼料要求率(feed conversion ratio)、生存率(survival rate)などに対する効果が記載されており、濃度が2.0×106cfu/g飼料及び5.0×106cfu/g飼料のとき対照と比べて飼料要求率が有意に低くなり、かつ生存率が高くなったことが記載されている。
非特許文献2には、ブロイラーの成長能力と腸内菌叢に対するバチルス・コアギュランスの効能について記載されており、0.005%及び0.04%のB.コアギュランスが21〜42日にわたり、また全42日にわたりFCRを有意に改善したことが記載されている。
概要
この出願の発明は、家禽類の飼育においてバチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)を家禽類の生産後期に給与することを含むことを特徴とする、家禽類の飼育方法または飼料要求率(FCR)改善方法、ならびに、バチルス・コアギュランスCP3425(国際寄託番号NITEBP−01693)またはその派生株もしくは変異株を含む家禽類のFCR改善用飼料添加組成物を提供する。
目的
本発明は、バチルス属細菌を用いて家禽類の飼料要求率及び体重増加率を従来技術に比して改善することを目的とする
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
請求項2
家禽類の飼育においてバチルス・コアギュランス(Bacilluscoagulans)を家禽類の生産後期に給与することを含むことを特徴とする、家禽類の飼料要求率(FCR)を改善する方法。
請求項3
バチルス・コアギュランスを5.0×102cfu/g飼料またはそれ以上給与する、請求項1または2に記載の方法。
請求項4
バチルス・コアギュランスを後期(Finisher)飼料または仕上げ(Withdrawal)飼料に加えて給与する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
請求項5
家禽類が、食肉用家禽類である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
請求項6
バチルス・コアギュランスを他の生菌剤と併せて給与する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
請求項7
生菌剤が、バチルス・ズブチルス(Bacillussubtilis)である、請求項6に記載の方法。
請求項8
請求項9
バチルス・ズブチルスあるいはバチルス・ズブチルスC−3102株またはその派生株もしくは変異株を生産後期以前から継続的に給与する、請求項7または8に記載の方法。
請求項10
請求項11
バチルス・コアギュランスが、バチルス・コアギュランスCP3425(国際寄託番号NITEBP−01693)またはその派生株もしくは変異株である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
請求項12
請求項13
バチルス・コアギュランスCP3425(国際寄託番号NITEBP−01693)またはその派生株もしくは変異株を含むことを特徴とする、家禽類の飼料要求率(FCR)改善用飼料添加組成物。
請求項14
バチルス・ズブチルスをさらに含む、請求項13に記載の飼料添加組成物。
請求項15
バチルス・ズブチルスが、バチルス・ズブチルスC−3102株(国際寄託番号FERMBP−1096)またはその派生株もしくは変異株である、請求項14に記載の飼料添加組成物。
請求項16
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法で使用される、請求項13〜15のいずれか1項に記載の飼料添加組成物。
技術分野
背景技術
0003
家禽類の生産性能の向上(飼料要求率の改善を含む。)に関する文献として例えば特許文献1〜4を挙げることができる。
0007
特許文献1〜3では、直接給与微生物のうちバチルス属細菌として、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)が例示されている。
0008
特許文献4には、肉用家禽類の成長方法に関し、肉用家禽類に家禽類飼料としてトウモロコシ−ダイズミール飼料を給与し、トウモロコシ−ダイズミール飼料が、上記肉用家禽類の体重増加の促進に有効な量のバチルス・リケニフォルミスPWD−1ケラチナーゼをさらに含むようにしたことを特徴とする肉用家禽類の成長方法が記載されている。
0009
非特許文献1には、Guangxi Yellow chickenにバチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)ZJU0616を種々の濃度で給与したときの成長能力(growth performance)、飼料要求率(feed conversion ratio)、生存率(survival rate)などに対する効果が記載されており、濃度が2.0×106cfu/g飼料及び5.0×106cfu/g飼料のとき対照と比べて飼料要求率が有意に低くなり、かつ生存率が高くなったことが記載されている。
0010
非特許文献2には、ブロイラーの成長能力と腸内菌叢に対するバチルス・コアギュランスの効能について記載されており、0.005%及び0.04%のB.コアギュランスが21〜42日にわたり、また全42日にわたりFCRを有意に改善したことが記載されている。
0011
特表2014−509846号公報
特表2014−508519号公報
特表2014−507946号公報
特表2006−506982号公報
先行技術
0012
X. Zhou et al., Poultry Science 2010, 89: 588−593
S.Y. Lin et al., Journal of Animal and Veterinary Advances 2011, 10(1): 111−114
0013
本発明は、バチルス属細菌を用いて家禽類の飼料要求率及び体重増加率を従来技術に比して改善することを目的とする。
0014
本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、ある種のバチルス属細菌の1種または2種を組み合わせて家禽類に給与することによって有意に高い飼料要求率および体重増加率を達成することを見出した。
0015
したがって、本発明は、以下の特徴を含む。
0017
(2)家禽類の飼育においてバチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)を家禽類の生産後期に給与することを含むことを特徴とする、家禽類の飼料要求率(FCR)を改善する方法。
0018
(3)バチルス・コアギュランスを5.0×102cfu/g飼料またはそれ以上給与する、上記(1)または(2)に記載の方法。
0019
(4)バチルス・コアギュランスを後期(Finisher)飼料または仕上げ(Withdrawal)飼料に加えて給与する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
0020
(5)家禽類が、食肉用家禽類である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
0021
(6)バチルス・コアギュランスを他の生菌剤と併せて給与する、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
0022
(7)生菌剤が、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)である、上記(6)に記載の方法。
0024
(9)バチルス・ズブチルスあるいはバチルス・ズブチルスC−3102株またはその派生株もしくは変異株を生産後期以前から継続的に給与する、上記(7)または(8)に記載の方法。
0026
(11)バチルス・コアギュランスが、バチルス・コアギュランスCP3425(国際寄託番号NITEBP−01693)またはその派生株もしくは変異株である、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の方法。
0027
(12)バチルス・コアギュランスが、バチルス・コアギュランスを給与しない対照と比べてFCRを1〜10%もしくはそれ以上改善する能力を有する、上記(1)〜(11)のいずれかに記載の方法。
0028
(13)バチルス・コアギュランスCP3425(国際寄託番号NITEBP−01693)またはその派生株もしくは変異株を含むことを特徴とする、家禽類の飼料要求率(FCR)改善用飼料添加組成物。
0029
(14)バチルス・ズブチルスをさらに含む、上記(13)に記載の飼料添加組成物。
0030
(15)バチルス・ズブチルスが、バチルス・ズブチルスC−3102株(国際寄託番号FERM BP−1096)またはその派生株もしくは変異株である、上記(14)に記載の飼料添加組成物。
0031
(16)上記(1)〜(12)のいずれかに記載の方法で使用される、上記(13)〜(15)のいずれかに記載の飼料添加組成物。
図面の簡単な説明
0032
この図は、実施例(後述)でニワトリ(ブロイラー)に対し0日齢から42日齢までの間で、異なる給与条件でサンプルを給与するための手順を示す。DOT0、DOT19、DOT35およびDOT42はそれぞれ日齢0日、19日、35日、42日を表す。飼料(Diets)は、ニワトリの日齢に応じて変更する3種類の飼料、すなわちStarter、GrowerおよびFinisherを表し、飼料のみからなる試験対照である。T2、T3、T4、T5、T6は、図2に示す処理を表す。重量測定(Weight)は、表示の日齢で各ニワトリの体重および消費飼料の重量を測定したことを示す。
この図は、実施例(後述)で行った試験においてFCRおよび体重増加率の効果を調べるための処理条件(T1〜T6)を示す。T4、T5およびT6が本発明である。
この図は、図1に示した手順で、および、T1〜T6の処理条件(図2)で試験を行ったときのニワトリの経日的なWeight Gain(体重増加)の変化を示すグラフである。
この図は、図1に示した手順で、および、T1〜T6の処理条件(図2)で試験を行ったときのニワトリの経日的なFCRの変化を示すグラフである。
この図は、図1に示した手順で、および、T1〜T6の処理条件で試験を行ったときの日齢19日、35日、42日での飼料摂取量(kg)、FCR、体重増加(Weight Gain、kg)およびD35−42のFCR変化量(Variation of FCR in D35−42)の測定結果を示す。データの統計的な評価等は次のように行った。最小有意差検定(Tukey HSD)を用いる平均の比較とANOVAを用いる一般的線形法によってデータの統計的な評価を行った。
0033
本発明をさらに具体的に説明する。
1.家禽類の飼育方法およびFCR改善方法
本発明は、家禽類の飼育においてバチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)を家禽類の生産後期に給与することを含むことを特徴とする、家禽類の飼育方法を提供する。
0034
本発明はまた、家禽類の飼育においてバチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)を家禽類の生産後期に給与することを含むことを特徴とする、家禽類の飼料要求率(FCR)を改善する方法を提供する。
0035
本明細書中で使用する「飼料要求率(FCR)」とは、一般に、動物の体重増加と消費飼料の量との比、すなわち体重増加(kg)/飼料摂取(kg)、あるいは体重を1kg増加させるために動物に給餌する飼料量を指す。たとえばFCR2は、2kgの飼料量が必要であることを示す。したがって、FCRの値が小さいほど飼料利用率がよいことを示している。FCRは、家禽類の種類や飼育環境によって大きく異なることが知られている。また、FCRは単純に飼料量を表しているので、数値が大きい場合には、FCRの改善率が小さくとも、飼料の削減量は大きくなる。通常は、FCR値を0.01、好ましくは、0.1以上改善すれば経済効果は非常に大きく、改善率としては、FCR値にもよるが、1%以上、好ましくは、5%以上、さらに好ましくは、7%以上あれば、非常に大きな改善効果と認められる。
0036
本明細書中で使用する「家禽類」は、人が飼育する商用のトリを指し、好ましくは、ブロイラー、ターキー、ガチョウ、キジ、アヒル(ペキンダック等)などの食用に供するための(すなわち、食肉用の)トリである。
0037
家禽類の飼育日数は、生後0日(誕生)から出荷日までの日数であり、家禽類の種類によって異なるし、また出荷時期により変動するが、非限定的に、約25日〜約170日である。具体的には、飼育日数は、例えば、ブロイラーでは約35日〜約60日であり、ターキーでは約140日〜約170日であり、ペキンダックでは約40〜約50日であり、ガチョウでは約25日〜約30日であり、ならびに、キジでは約120日である。
0038
家禽類の飼料(Diets)は、家禽類の飼育期間の例えば約3〜4週間ごとに栄養組成を変えることが通常行われている。家禽類のなかでブロイラーやターキーでは、生後0日から給与される飼料が、Starter飼料、Grower飼料、およびFinisher飼料に区分されており、これらの飼料の栄養組成および飼料を与える時期は異なっている。飼育期間の日齢に応じた家禽類の飼料の栄養組成は、例えばNational Research Council(NRC1994、米国)のNutrient Requirements of Poultry、Animal Nutrient Handbook(2014、米国)のSection 12: Poultry Nutrition and Feeding, pp. 410−425、E.A. Saleh et al., J. Appl. Poultry Res. 6: 290−297, 1997などに記載されており、本発明において使用しうる。
0039
具体的には、ブロイラーの場合、例えば、0〜3週齢でStarter飼料(エネルギー3200kcal/kg、タンパク22%)、4〜5週齢でGrower飼料(エネルギー3200kcal/kg、タンパク20%)、6〜7週齢でFinisher飼料(エネルギー3200kcal/kg、タンパク18%)である。
0040
また、ターキーの場合、例えば、0〜4週齢(雄および雌)でStarter飼料(エネルギー2800kcal/kg、タンパク28%)、4〜8週齢(雄および雌)でGrower飼料(エネルギー2900kcal/kg、タンパク26%)、8〜12週齢(雄)、8〜11週齢(雌)で別のGrower飼料(エネルギー3000kcal/kg、タンパク22%)、12〜16週齢(雄)、11〜14週齢(雌)でさらに別のGrower飼料(エネルギー3100kcal/kg、タンパク19%)、16〜20週齢(雄)、14〜17週齢(雌)でFinisher飼料(エネルギー3200kcal/kg、タンパク16.5%)、20〜24週齢(雄)、17〜20週齢(雌)で別のFinisher飼料(エネルギー3300kcal/kg、タンパク14%)である。
0041
なお、上記のブロイラーおよびターキーの飼料の例は、NRC1994(米国、上記)に基づいている。
0042
栄養は、タンパク/アミノ酸源として、ダイズミール、コットンシードミール、リンシードミール、アルファルファミール、コーングルテンミールなどの植物源、フィッシュミール、動物副産物のようなミート産物などの動物源、などが挙げられ、炭水化物源として、イエローコーンなどが挙げられ、その他として、油脂、ミネラル類、ビタミン類などを含む。
0043
家禽類の飼料は、市販されているので、それらを飼育の間に使用することができる。
0044
家禽類の飼育では、一定の区画の囲い(pen)のなか、自動調節された温度下で、上記のような飼育期間に応じて栄養組成が異なる飼料を毎日与えながら飼育する。飼育の間には、水を自由に飲めるようにすることが必要である。
0045
後述の実施例では、家禽類としてブロイラーを例示するが、その飼育において、0〜19日齢までの期間にStarter飼料を与え、19〜35日齢までの期間にGrower飼料を与え、そして、約35〜42日齢までの期間にFinisher飼料を与えた。
0046
本発明の方法(飼育および飼料要求率改善)では、家禽類の飼育においてバチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)を家禽類の生産後期に給与することを特徴とする。
0047
本明細書中で使用する「生産後期」について、ブロイラーの飼育においては、栄養を十分に与えても飼料要求率が悪くなるという現象が知られており、一般にこのような現象は、日齢(場合により、「週齢」で表現されてもよい。)が進んだ家禽類に見られる。本明細書では、このような現象が起きる時期から出荷までの期間を「生産後期」と称する。生産後期の一例は、飼料「Finisher」が給与される期間であってよい。例えば、ブロイラーの飼育での生産後期は、例えば約35日齢から出荷(例えば42日齢)までの期間(図1参照)または約42日齢から出荷(例えば56日齢)までの期間である。あるいは、他の食用家禽類の生産においては、出荷前約30〜60日から出荷までの期間を生産後期としうる。ターキーの場合、生産後期は、例えば16週齢〜24週齢(112日齢〜168日齢)の期間であり、キジ(pheasant)の場合、生産後期は、例えば9週齢〜17週齢(63日齢〜119日齢)の期間である。
0048
本発明の方法では、バチルス・コアギュランスの給与時期として、少なくとも生産後期に給与すれば十分な効果が得られる(例えば図4および図5中のT5およびT6参照)が、生産後期以前から、あるいは初生雛の段階から、給与(図4および図5のT4参照)していてもよい。
0049
本発明では、1.0×103cfu/g飼料〜4.0×103cfu/g飼料程度の低い濃度のバチルス・コアギュランスの給与であっても、かつ、生産後期の給与のみで優れた飼料利用率を提供することに特徴がある(後述の実施例の「8.結果」参照)。
0050
給与に際して、バチルス・コアギュランスを、家禽類用飼料として通常用いられる飼料、あるいは一般に生産後期に給与する飼料として知られる例えば「Finisher」(後期)飼料(または「Withdrawal」(仕上げ)飼料ともいう。)、に混ぜて家禽類に給与する。
0051
家禽類用飼料の成分は、通常使用されるものであれば特に制限されないものとし、例えば、ダイズミール、魚粉、肉粉、小麦全粒粉、ナタネ、カノーラなどのタンパク源、トウモロコシ、カラスムギ、オオムギ、モロコシ、コムギ、ライコムギ、ライムギ、コメなどの炭水化物源、その他、ビタミン、ミネラル、油脂(油および脂肪)、などの添加物などである。
0052
給与量について、飼料へのバチルス・コアギュランスの添加量は、約5.0×102cfu/g飼料もしくはそれ以上、例えば約(1.0〜4.0)×103cfu/g飼料もしくはそれ以上であり、好ましくは約3.0×103cfu/g飼料もしくはそれ以上、または約4.0×103cfu/g飼料もしくはそれ以上であり、上限は特に制限するものではないが例えば約1.0×107cfu/g飼料〜約1.0×109cfu/g飼料程度であり得る。
0053
バチルス・コアギュランスの培養は、文献等に記載の条件で行うことができる。例示的な培養方法は以下のとおりである。
0054
バチルス・コアギュランスは、炭素源、窒素源、無機物等を含む液体培地(pH7.2〜7.4)中で好気的条件下、37〜38℃で緩やかに攪拌しながら約12時間〜約3日、もしくはそれ以上の時間培養したのち、遠心分離によって菌体を回収することによって得ることができる(例えば、H K Wang et al., Food Technol. Biotechnol. 51(1):78-83(2013)参照)。炭素源としては、資化可能な炭素源、例えばグルコース、フラクトース、スクロース、澱粉、糖蜜などが挙げられる。また窒素源としては、例えばペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン水解物、硫安などを挙げることができる。更に必要に応じて無機成分として、燐酸塩、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、鉄、マンガン等の塩類、ビタミン、アミノ酸、消泡剤、界面活性剤等を添加することもできる。
0056
バチルス・コアギュランスについては、本発明の効果、すなわち家禽類の生産後期に給与することによって家禽類の飼料要求率(FCR)を改善する効果を提供するものであればいずれの菌株も包含する。そのような菌株は、以下のものに限定されないが、例えばBacillus coagulans CP3425株またはその派生株もしくは変異株である。
0057
Bacillus coagulans CP3425株は、ブダペスト条約下の国際寄託機関である独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(郵便番号292−0818日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 122号室)に2013年8月13日に寄託され、国際寄託番号NITEBP−01693が付与されている。
0058
上記の派生株もしくは変異株は、親株を、ニトロソグアニジン、ニトロソウレア、エタンスルホン酸メチル、それらの誘導体などの化学変異原の存在下に培養するか、培養親株に、紫外線、X線などの高エネルギー線を照射するなどの方法によって得ることができる。得られた株の中から、家禽類の生産後期に給与することによって家禽類の飼料要求率(FCR)を改善する効果を提供するものを選抜する。
0059
本発明はさらに、別の実施形態において、上記バチルス・コアギュランスに、他の生菌剤と併せて給与させることを含む。
0060
他の生菌剤には、好ましくは、ラクトバチルス属細菌、バチルス属細菌などの生菌剤が含まれる。より好ましくは、バチルス属細菌である。
0061
バチルス属細菌は、バチルス・ズブチルス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・セレウスなどであり、好ましくはバチルス・ズブチルスである。
0062
ラクトバチルス属細菌は、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・デルブリュック、ラクトバチルス・ブーフナー、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・ファーメンタムなどである。
0063
バチルス属細菌やラクトバチルス属細菌は、炭素源、窒素源、無機物等を含む液体培地又は固体培地等を用いることができる。炭素源としては、資化可能な炭素源、例えばグルコース、フラクトース、スクロース、澱粉、糖蜜などが挙げられる。また窒素源としては、例えばペプトン、肉エキス、カゼイン水解物、硫安などを挙げることができる。更に必要に応じて無機成分として、燐酸塩、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、鉄、マンガン等の塩類、ビタミン、アミノ酸、消泡剤、界面活性剤等を添加することもできる。培養は好気的条件下で行うのが好ましく、培地の初発pHは5〜9、好ましくはpH6〜8、培養温度は20〜50℃、好ましくは35〜40℃とし、培養時間は、例えば12時間〜7日である。培養後、遠心分離などの分離法によって菌体を回収することによって得ることができる。回収された菌体は、培養物、濃縮物、乾燥物、液状、粒状、粉末状、ペレット状、棒状、球状などの任意の形態としうる。
0064
バチルス・ズブチルスの好適例は、バチルス・ズブチルスC−3102株またはその派生株もしくは変異株である。
0065
Bacillus subtilis C−3102株(国際寄託番号FERM BP−1096)は、1985年12月25日に、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1(寄託時;日本国茨城県筑波郡谷田部町東1丁目1番地3)の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(寄託時;通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所)に寄託番号 微工研寄第8584号として原寄託し、1986年6月28日に、同機関にて寄託番号FERM BP−1096(移管時;微工研条寄第1096号)として国際寄託に移管された。この菌株はまた、特開昭63(1988年)−209580号公報、特開昭62(1987年)−232343号公報などにも記載されている。
0066
上記の派生株もしくは変異株は、上記の作製方法にしたがって同様に得ることができる。
0067
本発明はさらに、別の実施形態において、上記生菌剤、上記バチルス属細菌、上記バチルス・ズブチルス、またはバチルス・ズブチルスC−3102株を家禽類の生産後期以前から継続的に給与することを含む。或いは、上記生菌剤、上記バチルス属細菌、上記バチルス・ズブチルス、またはバチルス・ズブチルスC−3102株を初生雛から給与することを含む。なお、バチルス・ズブチルスC−3102株の給与に関しては、市販品である「CALSPORINTM」(アサヒカルピスウェルネス社、東京、日本国)などを使用できる。
0068
給与量について、飼料への上記生菌剤、上記バチルス属細菌、上記バチルス・ズブチルス、または上記バチルス・ズブチルスC−3102株の添加量は、約3.0×105cfu/g飼料もしくはそれ以上、例えば約(3.0〜10.0)×105cfu/g飼料もしくはそれ以上であり、好ましくは約5.0×105cfu/g飼料もしくはそれ以上であり、上限は特に制限するものではないが例えば約1.0×107cfu/g飼料〜約1.0×109cfu/g飼料程度であり得る。
0069
本発明の好適な例は、上記のバチルス・コアギュランスが、バチルス・コアギュランスCP3425(国際寄託番号NITEBP−01693)またはその派生株もしくは変異株と、上記のバチルス・ズブチルスC−3102株またはその派生株もしくは変異株とを家禽類に給与することである。
0070
図5の結果から、本発明で使用されるバチルス・コアギュランスは、バチルス・コアギュランスを給与しない対照と比べてFCRを1〜10%もしくはそれ以上改善する能力を有する。
2.飼料添加組成物(Feed Additive Composition)
本発明はさらに、上記のバチルス・コアギュランスCP3425(国際寄託番号NITEBP−01693)またはその派生株もしくは変異株を含むことを特徴とする家禽類の飼料要求率(FCR)改善用飼料添加組成物を提供する。
0071
本発明の一実施形態において、上記の飼料添加組成物にはさらにバチルス・ズブチルスを含むことが好ましい。ここで、バチルス・ズブチルスはそれ自体、家禽類のFCR改善作用を有するものである。
0072
好ましいバチルス・ズブチルスは、上記のバチルス・ズブチルスC−3102株(国際寄託番号FERM BP−1096)またはその派生株もしくは変異株である。
0073
本発明の別の実施形態において、上記飼料添加組成物は、上記(1)に記載した本発明の方法で使用されうる。
0074
本発明の飼料添加組成物は、固体状または液体状のいずれの形態でもよい。固体状の形態には、例えば粉末、顆粒、ペレット、などが含まれる。また、液体状の形態には、例えば懸濁液などが含まれる。このような形態に仕上げるために、家禽類用として承認されている物質を含む、担体、賦形剤、補助剤などを適宜含有させることによって上記の組成物形態としうる。
0075
上記の飼料添加組成物には、有効成分としてバチルス・コアギュランスCP3425(国際寄託番号NITEBP−01693)またはその派生株もしくは変異株を含有させる。その含有量は、非限定的に、例えば約1.0×104cfu/g組成物〜1.0×1012cfu/g組成物またはそれ以上である。
0076
さらにまた、上記の飼料添加組成物中のバチルス・ズブチルスの含有量は、非限定的に、例えば約1.0×103cfu/組成物(g)〜1.0×1012cfu/組成物(g)またはそれ以上である。
0077
本発明の飼料添加組成物は、上記(1)に記載したような飼料に添加して、家禽類に摂取させるために使用される。好ましい添加量は、飼料に対し0.001重量%〜1重量%の範囲であるが、この範囲に限定されないものとする。
0078
以下の実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、それらの実施例によって制限されないものとする。
<Bacillus coagulans CP3425を給与したブロイラーの性能比較試験>
1.実験の目的
この実験では、42日齢まで飼育された雄ブロイラーの給餌変更、体重増加に及ぼすBacillus coagulans CP3425の効果を評価することを目的とした。
2.処理の説明
実験で使用した動物は、48実験ユニット(囲い)のなかの1実験ユニットあたり20羽の雄ブロイラーからなる。8つのブロック内での処理を複製的に行い、各ブロック内で6つの処理(図2)をランダムに行った。処理及びブロックの実験ユニットへの割付けについてのランダム化については、Southern Poultry Research, Inc.(米国)が行った。また、実験ユニットのダイアグラムと処理の割付けはソースデータに含めた。すべての実験ユニットが連続的に番号付けられ、実験ユニットカード上で識別できるようにした。
3.材料と方法
期日:開始日2014年12月11日
終了日2015年1月22日
動物:総数960羽、1日齢のCobb X Cobb雄ブロイラー
20羽/実験ユニット、8実験ユニット/処理、0.83ft2/羽
敷きわら: 厚さ約4インチに敷いた新しい木削りくず片
飼料:飼料中に抗コクシジウム症薬又はAGPは添加されなかった
試験物質: Bacillus subtilis C−3102
Bacillus coagulans CP3425
4.実験手法
図1に手法を示した。
処理(T):
T1:陰性対照
T2:菌株:Bacillus subtilis C−3102 3.0×105cfu/g飼料、給与期間:0〜42日
T3: 菌株:Bacillus subtilis C−3102 6.0×105cfu/g飼料、給与期間:0〜42日
T4: 菌株:Bacillus coagulans CP3425 4.0×103cfu/g飼料、給与期間:0〜42日
T5: 菌株:Bacillus coagulans CP3425 3.3×104cfu/g飼料、給与期間:35〜42日
T6: 菌株:Bacillus subtilis C−3102 3.0×105cfu/g飼料、給与期間:0〜42日;ならびに、Bacillus coagulans CP3425 3.3×104cfu/g飼料、給与期間:35〜42日目
また、図2にT1〜T6について示した。
5.実験ユニットフロアの説明と管理
実験ユニットフロアの鶏ハウスは、温度管理された建物であり、明確なフロアとしっかりした側壁を有している。
0079
実験に使用した鶏ハウスを等サイズの実験ユニットに分割し、ユニットを中央の島に沿って配置した。鶏を48個の実験ユニットフロアに入れた。各実験ユニットは4.5ft×4.5ft=20ft2(1.86m2)の面積を有し、約4インチの厚さに木削りくず片を敷いた。機器を置いた面を引き算したあとの敷設密度は0.83ft2/鶏であった。各実験ユニットは高さ2.5フィートの側壁を有し、1枚の鶏ネットを張って鶏の移動を防止した。
0082
全実験の間、標準の実験ユニットフロア管理基準を使用した。動物と建物設備は、1日2回、試験担当管理者とブロイラーハウス作業者による検査を受け、一般的な健康状態、定常飼料と水の供給、及び温度を観察し記録し、死んだ鶏をすべて取り除き、予期しない事象を認識するようにした。実験の間に死んだ鶏はDaily Mortality Recordに記録し、替わりの補充はしなかった。実験ユニット、死亡日、性別、体重、及び診断結果を記録した。
6.鶏
ブロイラー(Day of hatch male Cobb 500)をCobb−Vantress hatchery,Cleveland,GA(米国)から入手した。総数960羽の鶏を収容した。全試験動物と余分の鶏を動物処分書式に記録した。ブロイラーは収容前にはコクシジウム症ワクチン投与を受けていなかった。実験ユニットあたり12羽の鶏を収容した。実験ユニットの鶏の体重を、0日目、19日目、35日目、及び42日目にそれぞれ記録した。
7.飼料
飼料はすべSPR CENTRE(UK)の製品を使用した。また、飼料には抗コクシジウム症薬又はAGPを加えなかった。飼料はすべてクランブル/ペレットの形状で与えた。
0083
実験ユニットの全飼料の重量を測った。初期飼料(Starter)を、0日目から19日目まで給与した、19日目に消費されずに残った飼料の重量を測り廃棄した。成長期飼料(Grower)を35日目まで給与した。35日目に、消費されずに残った成長期飼料の重量を測り廃棄した。後期飼料(Finisher)を42日目まで給与した。42日目に、消費されずに残った後期飼料の重量を測り廃棄した。
8.結果
結果を図3、図4及び図5に示した。
0084
結果をまとめると次のようになる。
0085
(1)Bacillus coagulans CP3425株は通期(全期間)給与によりFCRを改善した。
0086
(2)Bacillus coagulans CP3425株はD35−42(生産後期)の給与によりFCRを改善した。
0087
(3)Bacillus coagulans CP3425株は他のBacillus属生菌剤(Bacillus subtilis C−3102株)を組み合わせることによりD35−42(生産後期)のFCRを改善した。
0088
上記の実験の結果から、図5中のD35−42間(生産後期)のFCRの変化量はDay35のFCRとDay42のFCRの差を表しており、この期間(すなわち、「生産後期」)におけるFCRの変化量がより小さい、すなわちFCR上昇が抑制される処理法が、家禽類の肉生産成績の向上に寄与することが判明した。上記6つの処理法(T1〜T6)の中で、T5の変化量が最も小さく、そして、T6、T4、T3、T1=T2の順番に変化量が大きくなった。特にT5およびT6は、B.コアギュランスを生産後期にのみ給与する処理法であり、FCR上昇抑制を高め、肉生産成績の向上に寄与することが今回初めて明らかになった。ここでT5はB.コアギュランスを家禽類の飼育の生産後期にのみ給与する処理法であり、T6は、B.コアギュランス(生産後期にのみ給与)とB.ズブチルス(通期給与)を併用する処理法である。
実施例
0089
さらにまた、上記の実験で使用したB.コアギュランスCP3425株、ならびに、B.コアギュランスCP3425株とB.ズブチルスC−3102株の組合せは、T4、T5およびT6での結果が示すとおり、家禽類の飼育においてFCRを有意に改善する効果を有していることが判明した。
0090
食肉用家禽類の飼育においてFCRを有意に改善するため、産業上の有用性が高い。
寄託菌
0091
「バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)C−3102株」は、1985年12月25日に、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1つくばセンター中央第6(郵便番号305−8566)[寄託時;日本国茨城県筑波郡谷田部町東1丁目1番地3(郵便番号305)]の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託番号微工研菌寄第8584号として国内寄託し、1986年6月28日に、同機関にて寄託番号FERM BP−1096(移管時;微工研条寄第1096号)としてブダペスト条約下の国際寄託に移管された。この寄託菌株は、現在、独立行政法人製品評価技術基盤機構のNITE特許生物寄託センター(NITE−IPOD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 120号室(郵便番号292−0818)にて保管されている。
0092
「Bacillus coagulans CP3425株」は、ブダペスト条約下の国際寄託機関である独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(上記)に2013年8月13日に寄託され、国際寄託番号NITEBP−01693が付与されている。