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技術 炭素繊維及び炭素繊維の製造方法

出願人 帝人株式会社
発明者 鈴木慶宜中島章成
出願日 2016年3月29日 (4年6ヶ月経過) 出願番号 2017-510026
公開日 2017年12月28日 (2年9ヶ月経過) 公開番号 WO2016-158955
状態 不明
技術分野
  • -
主要キーワード 電界エネルギ 磁界処理 表面処理工程前 導電性繊維束 接続導波管 半値幅β 黒鉛状炭素 耐炎繊維
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (15)

課題・解決手段

より高い引張強度を有する炭素繊維を提供する。炭素繊維は、下記の式(1)の関係を満たすと共に式(2)〜式(5)の何れかの関係を満たす。 La≧1 (1) 170≦TM≦230の場合、La≦−0.5+0.01×TM (2) 230<TM≦240の場合、La≦−37.3+0.17×TM(3) 240<TM≦300の場合、La≦−2.5+0.025×TM(4) 300<TM の場合、La≦2+0.01×TM (5) ただし、「La」はX線回折により測定される繊維軸に対して平行方向の結晶サイズ[nm]であり、「TM」は引張弾性率[GPa]である。

概要

背景

炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系繊維レーヨン系繊維セルロース系繊維及びピッチ系繊維等から製造された前駆体繊維焼成して製造される。例えば、ポリアクリロニトリル系繊維から製造された前駆体繊維を利用して炭素繊維を製造する場合、酸素を含む雰囲気中(耐炎化炉内)で前駆体繊維を加熱する耐炎化工程、耐炎化工程を経た繊維(以下、「耐炎繊維」という。)を不活性雰囲気中(炭素化炉)で加熱する炭素化工程が行われる。なお、上記加熱は、耐炎化炉及び炭素化炉を繊維が通過(走行)することで行われる。

炭素化工程における加熱は例えば電気ヒータを利用している。つまり、炉内雰囲気を電気ヒータで加熱して、この加熱された炉内を耐炎繊維が通過することで、耐炎繊維を間接的に加熱している。

炭素化工程における温度条件や繊維の延伸条件等を調整して、引張特性圧縮特性等の種々の特性を有する炭素繊維を提供している(例えば、特許文献1,2)。

概要

より高い引張強度を有する炭素繊維を提供する。炭素繊維は、下記の式(1)の関係を満たすと共に式(2)〜式(5)の何れかの関係を満たす。 La≧1 (1) 170≦TM≦230の場合、La≦−0.5+0.01×TM (2) 230<TM≦240の場合、La≦−37.3+0.17×TM(3) 240<TM≦300の場合、La≦−2.5+0.025×TM(4) 300<TM の場合、La≦2+0.01×TM (5) ただし、「La」はX線回折により測定される繊維軸に対して平行方向の結晶サイズ[nm]であり、「TM」は引張弾性率[GPa]である。

目的

本発明は、上記した課題に鑑み、より高い引張強度を有する炭素繊維及び当該炭素繊維の製造方法を提供する

効果

実績

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請求項1

下記の式(1)の関係を満たすと共に式(2)〜式(5)の何れかの関係を満たす炭素繊維。La≧1(1)170≦TM≦230の場合、La≦−0.5+0.01×TM(2)230<TM≦240の場合、La≦−37.3+0.17×TM(3)240<TM≦300の場合、La≦−2.5+0.025×TM(4)300<TMの場合、La≦2+0.01×TM(5)ただし、「La」はX線回折により測定される繊維軸に対して平行方向の結晶サイズ[nm]であり、「TM」は引張弾性率[GPa]である。

請求項2

下記の式(6)及び(7)の関係を満たす請求項1に記載の炭素繊維。Lc≧1(6)Lc≦0.4+e^(0.006×TM)(7)ただし、「Lc」はX線回折により測定される繊維軸に対して垂直方向の結晶サイズ[nm]であり、「e」は自然対数の底である。

請求項3

請求項1又は2に記載の炭素繊維を製造する製造方法において、マイクロ波磁界加熱及びプラズマ加熱の少なくとも一方を利用して炭素化する炭素繊維の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、炭素化工程を経て製造される炭素繊維に関する。

背景技術

0002

炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系繊維レーヨン系繊維セルロース系繊維及びピッチ系繊維等から製造された前駆体繊維焼成して製造される。例えば、ポリアクリロニトリル系繊維から製造された前駆体繊維を利用して炭素繊維を製造する場合、酸素を含む雰囲気中(耐炎化炉内)で前駆体繊維を加熱する耐炎化工程、耐炎化工程を経た繊維(以下、「耐炎繊維」という。)を不活性雰囲気中(炭素化炉)で加熱する炭素化工程が行われる。なお、上記加熱は、耐炎化炉及び炭素化炉を繊維が通過(走行)することで行われる。

0003

炭素化工程における加熱は例えば電気ヒータを利用している。つまり、炉内雰囲気を電気ヒータで加熱して、この加熱された炉内を耐炎繊維が通過することで、耐炎繊維を間接的に加熱している。

0004

炭素化工程における温度条件や繊維の延伸条件等を調整して、引張特性圧縮特性等の種々の特性を有する炭素繊維を提供している(例えば、特許文献1,2)。

先行技術

0005

特開平10−25627号公報
特開2002−54031号公報

発明が解決しようとする課題

0006

しかしながら、特許文献1,2に記載のように、炭素化工程の温度条件や延伸条件を調整しても高引張強度高伸度)特性を有する炭素繊維が得られていない。

0007

本発明は、上記した課題に鑑み、より高い引張強度を有する炭素繊維及び当該炭素繊維の製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る炭素繊維は、下記の式(1)の関係を満たすと共に式(2)〜式(5)の何れかの関係を満たす。
La≧1 (1)
170≦TM≦230の場合、La≦−0.5+0.01×TM (2)
230<TM≦240の場合、La≦−37.3+0.17×TM(3)
240<TM≦300の場合、La≦−2.5+0.025×TM(4)
300<TM の場合、La≦2+0.01×TM (5)
ただし、「La」はX線回折により測定される繊維軸に対して平行方向の結晶サイズ[nm]であり、「TM」は引張弾性率[GPa]である。
また、別形態に係る炭素繊維は、下記の式(6)及び(7)の関係を満たす。
Lc≧1 (6)
Lc≦0.4+e^(0.006×TM) (7)
ただし、「Lc」はX線回折により測定される繊維軸に対して垂直方向の結晶サイズ[nm]であり、「e」は自然対数の底である。
本発明の一態様に係る炭素繊維の製造方法は、上記の炭素繊維を製造する製造方法において、マイクロ波磁界加熱及びプラズマ加熱の少なくとも一方を利用して炭素化する。

発明の効果

0009

本発明の一態様に係る炭素繊維は上記構成を有することで、高い引張強度が得られる。
本発明の一態様に係る炭素繊維の製造方法により高い引張強度を有する炭素繊維を製造できる。

図面の簡単な説明

0010

炭素繊維の製造工程を示す概略図である。
マイクロ波定在波を同一平面上に表した図である。
炭素繊維の結晶サイズLaと引張弾性率TMとの関係を示す。
炭素繊維の結晶サイズLcと引張弾性率TMとの関係を示す。
実施例と比較例における引張弾性率TMと引張強度TSとの関係を示す図である。
実施例と比較例における引張弾性率TMと伸度Eとの関係を示す図である。
実施例と比較例における引張弾性率TMと面間隔d002との関係を示す図である。
実施例と比較例における引張弾性率TMと密度Dとの関係を示す図である。
磁界処理回数と面間隔d002との関係を示す図である。
磁界処理回数と面間隔d10との関係を示す図である。
磁界処理回数と結晶サイズLaとの関係を示す図である。
磁界処理回数と結晶サイズLcとの関係を示す図である。
磁界処理回数と引張弾性率TMとの関係を示す図である。
磁界処理回数と引張強度TSとの関係を示す図である。

0011

<<概要>>
発明者らは、炭素繊維の結晶構造、特に結晶サイズに着目して検討を重ね、炭素化(複数の炭素化工程を有する場合は最終の炭素化工程での炭素化である。)をマイクロ波やプラズマ等のエネルギを与えて加熱する方法を利用して行うことで、従来のヒータ加熱を利用して炭素化を行うよりも炭素繊維の結晶サイズを小さくできることを見出し、この結晶サイズの小さい炭素繊維は優れた引張強度を有することが判明した。
ここで、マイクロ波加熱及びプラズマ加熱とは、耐炎繊維(炭素化工程が一工程の場合、当該工程が行われる前の繊維である。)や炭素化途中繊維(炭素化工程が複数工程の場合、最終工程が行われる前の繊維である。)等の対象繊維に対してマイクロ波やプラズマ等の熱に変換されるエネルギを与えて加熱することをいい、対象繊維に直接マイクロ波やプラズマを照射したり、マイクロ波やプラズマが存在する炭素化炉内を対象繊維を走行させたり等することで行われる。
なお、ヒータ加熱とは、対象繊維が通過する炭素化炉の熱源ヒータを用い、ヒータにより加熱された雰囲気内を対象繊維が通過することで当該対象繊維を加熱する加熱方法であり、「従来法」とする。
以下、結晶サイズに特徴を有する炭素繊維及びその炭素繊維の製造方法について説明する。

0012

1.炭素繊維
一実施形態に係る炭素繊維は、下記の式(1)の関係を満たすと共に式(2)〜式(5)の何れかの関係を満たす。
La≧1 (1)
170≦TM≦230の場合、La≦−0.5+0.01×TM (2)
230<TM≦240の場合、La≦−37.3+0.17×TM(3)
240<TM≦300の場合、La≦−2.5+0.025×TM(4)
300<TM の場合、La≦2+0.01×TM (5)
ただし、「La」はX線回折により測定される繊維軸に対して平行方向の結晶サイズ[nm]であり、「TM」は引張弾性率[GPa]である。
炭素繊維は、上記の引張弾性率TMと結晶サイズLaとの関係を満たすことで、ヒータ加熱で製造した同じ結晶サイズの炭素繊維よりも高い引張強度TS(伸度E)が得られる。
ここで、結晶サイズLaが1よりも小さくなると、引張弾性率TMや引張強度TSが低くなる。なお、結晶サイズLaが12より大きくなると、引張強度TS(伸度E)が低くなる傾向がみられる。
別実施形態に係る炭素繊維は、下記の式(6)及び(7)の関係を満たす。
Lc≧1 (6)
Lc≦0.4+e^(0.006×TM) (7)
ただし、「Lc」はX線回折により測定される繊維軸に対して垂直方向の結晶サイズ[nm]であり、「e」は自然対数の底である。

0013

炭素繊維は、上記の引張弾性率TMと結晶サイズLcとの関係を満たすことで、ヒータ加熱で製造した同じ結晶サイズの炭素繊維よりも高い引張強度TS(伸度E)が得られる。
ここで、結晶サイズLcが1よりも小さくなると、引張弾性率TMや引張強度TSが低くなる傾向がみられる。結晶サイズLcが20より大きくなると、隣り合う結晶同士が合体しやすくなり、引張強度TS(伸度E)が低くなる傾向がみられる。

0014

結晶サイズLc,Laの測定は、例えば株式会社リガク製X線回折装置RINT2000を用い、繊維をセットした試料台を取り付けて透過法にて実施できる。X線には、加速電圧40(kV)、電流30(mA)で発生させたCuKα線を使用できる。試料の向きは、結晶サイズLcの測定の際には繊維束繊維軸方向赤道面に対して垂直な状態とし、結晶サイズLaの測定の際には繊維束の繊維軸方向を赤道面に対して平行な状態とする。また、それぞれ回折角2θが10(°)から60(°)の範囲の回折パターンをとり、回折パターンの10(°)、20(°)、35(°)、60(°)付近を通る曲線ベースラインとして行う。
結晶サイズLcは、上記の方法により得られた面指数(002)の回折ピーク半値幅β002から、下式(11)を用いて算出することができる。
結晶サイズLc(nm)=0.9λ/(β002cosθ002) (11)
〔式中、λ:X線の波長、β002:面指数(002)の回折ピークの半値幅、θ002:面指数(002)の回折角を示す。〕
結晶サイズLaは、上記の方法により得られた面指数(10)の回折ピークの半値幅β10から、下式(12)を用いて算出することができる。
結晶サイズLa(nm)=0.9λ/(β10cosθ10) (12)
〔式中、λ:X線の波長、β10:面指数(10)の回折ピークの半値幅、θ10:面指数(10)の回折角を示す。〕
なお、後述する炭素網面の面間隔d002は、Braggの式に従い下式(13)を用いて算出することができる。
面間隔d002(nm)=λ/(2sinθ002) (13)
〔式中、λ:X線の波長、θ002:面指数(002)の回折角を示す。〕
引張弾性率TMは、JIS R 7606に準拠して測定している。なお、引張強度TS及び伸度Eは、JIS R 7606に準拠して測定している。

0015

2.製造方法
「1.炭素繊維」で説明した結晶サイズの小さい炭素繊維の製造方法について説明する。
ここでは、前駆体繊維がアクリロニトリル系繊維であり、対象繊維が後述の耐炎繊維(導電性を有する導電性繊維)である場合を例にとって説明する。

0016

(1)炭素繊維の製造工程
図1は、炭素繊維の製造工程を示す概略図である。
炭素繊維は、前駆体繊維であるプリカーサを用いて製造される。1本のプリカーサは、複数本、例えば、12,000本のフィラメントが束になったものである。場合によっては、前駆体繊維束炭素繊維束ということもある。
プリカーサ1aは、アクリロニトリルを90質量%以上含有する単量体重合した紡糸溶液湿式紡糸法又は乾湿式紡糸法において紡糸した後、水洗・乾燥・延伸して得られる。なお、共重合する単量体としては、アクリル酸アルキルメタクリル酸アルキルアクリル酸アクリルアミドイタコン酸マレイン酸等が利用される。
通常、プリカーサ1aを製造する速さと、プリカーサ1aを炭素化して炭素繊維を製造する速さが異なる。このため、製造されたプリカーサ1aは、一旦、カートンに収容されたり、ボビンに巻き取られたりする。

0017

プリカーサ1aは、図1に示すように、例えばボビン30から引き出され、下流側に向かって走行する。その途中で、各種の処理がなされて、炭素繊維としてボビン39に巻き取られる。
炭素繊維は、図1に示すように、プリカーサ1aを耐炎化する耐炎化工程と、耐炎化された繊維(以下、「耐炎繊維」という。)1bを延伸させながら炭素化する炭素化工程と、炭素化された繊維(以下、「炭素化後繊維」ともいう。)1dの表面を改善する表面処理工程と、表面が改善された繊維1eに樹脂を付着させるサイジング工程と、樹脂が付着した繊維1fを乾燥させる乾燥工程とを経て製造される。

0018

乾燥された繊維1gは、炭素繊維1gとしてボビン39に巻き取られる。なお、各工程を終えた繊維を、例えば耐炎繊維1bのように、区別しているが、単に「繊維」として説明する際の符号は、「1」を用いる。
ここで、プリカーサ1aを耐炎化する処理を耐炎化処理、耐炎繊維1bを炭素化する処理を炭素化処理、炭素化後繊維1dの表面を改善する処理を表面処理、表面が改善された繊維1eに樹脂を付着させる処理をサイジング処理、樹脂が付着した繊維1fを乾燥させる処理を乾燥処理とそれぞれいう。以下、各工程及び各処理について説明する。

0019

(1−1)耐炎化工程(耐炎化処理)
耐炎化工程は、炉内が200[℃]〜350[℃]の酸化性雰囲気に設定された耐炎化炉3を利用して行う。具体的には、耐炎化は、空気雰囲気中の耐炎化炉3内をプリカーサ1aが1回又は複数回通過することで行われる。なお、酸化性雰囲気は、酸素、二酸化窒素等を含んでいてもよい。
耐炎化工程中のプリカーサ1aは、製造する炭素繊維に合わせて所定の張力で延伸される。耐炎化工程での延伸倍率は、例えば、0.7〜1.3の範囲内である。プリカーサ1aの延伸は複数のローラにより行われる。例えば、延伸は、耐炎化炉3の入口の2個のローラ5,7や出口の3個のローラ9,11,13により行われる。

0020

(1−2)炭素化工程(炭素化処理)
炭素化工程は、耐炎繊維1bを加熱する(エネルギを与える)ことで熱分解反応を生じさせて炭素化を行う工程である。炭素化は、耐炎繊維1bが第1の炭素化炉15を通過し、さらに、第1の炭素化炉15を通過した繊維1cが第2の炭素化炉17を通過することで行われる。

0021

ここで、第1の炭素化炉15で行われる炭素化を「第1の炭素化」とし、第1の炭素化炉15で行われる処理を「第1の炭素化処理」とし、第1の炭素化炉15で行われる工程を「第1の炭素化工程」とし、第1の炭素化処理や第1の炭素化工程を終えた(第1の炭素化炉15を出た)繊維1cを「第1の炭素化処理後の繊維」や「炭素化途中繊維」とする。
同様に、第2の炭素化炉17で行われる炭素化を「第2の炭素化」とし、第2の炭素化炉17で行われる処理を「第2の炭素化処理」とし、第2の炭素化炉17で行われる工程を「第2の炭素化工程」とし、第2の炭素化処理や第2の炭素化工程を終えた(第2の炭素化炉17を出た)繊維1dを「第2の炭素化処理後の繊維」又は「炭素化後繊維」とする。

0022

第1の炭素化は、例えば、電気ヒータ、マイクロ波、プラズマ等を利用して加熱できる。第2の炭素化では、電気ヒータを利用せず、マイクロ波磁界加熱やプラズマ加熱を利用して炭素化する。つまり、炭素化工程が複数ある場合、最終工程の炭素化にマイクロ波磁界加熱やプラズマ加熱を利用する。なお、マイクロ波磁界加熱とは、マイクロ波のうち磁界エネルギを主に使用する加熱をいう。

0023

第2の炭素化では、不活性ガス雰囲気中で、第1の炭素化炉15内での張力とは異なる張力下で加熱することが好ましい。具体的には、第2の炭素化工程での張力は、第1の炭素化工程での張力の1.0倍〜5.0倍の範囲内が好ましい。なお、不活性ガスは、例えば、窒素アルゴン等が利用される。
ここでは、第1の炭素化炉15と第2の炭素化炉17とは互いに独立した形態で設けられ、各炭素化炉15,17の間には繊維の張力を調整する調整手段を設けることができる。具体的には、第1の炭素化炉15の外であって入口側にはローラ19が、第1の炭素化炉15と第2の炭素化炉17との間にはローラ21が、第2の炭素化炉17の外であって出口側にはローラ23がそれぞれ設けられている。
なお、第2の炭素化工程については、後で詳細に説明する。

0024

(1−3)表面処理工程(表面処理)
表面処理工程は、炭素化後繊維1dが表面処理装置25内を通過することで行われる。表面処理装置25の外であって出口側にはローラ26が設けられている。なお、表面処理することで、炭素繊維1gを利用して複合材料とした場合、炭素繊維1gとマトリックス樹脂との親和性や接着性が向上する。
表面処理は、一般に炭素化後繊維1dの表面を酸化することにより行われる。表面処理として、例えば、液相中又は気相中の処理がある。
液相中での処理は、酸化剤に炭素化後繊維1dを浸漬することによる化学酸化や、炭素化後繊維1dが浸漬する電解液中で通電することによる陽極電解酸化等が工業的に用いられる。気相中での処理は、炭素化後繊維1dを酸化性気体の中を通過させたり、放電等によって発生した活性種を吹き付けたりすることにより行なうことができる。

0025

(1−4)サイジング工程(サイジング処理)
サイジング工程は、表面処理された繊維1eが樹脂液29内を通過することで行われる。樹脂液29は、樹脂浴27に貯留されている。なお、サイジング工程により、表面処理された繊維1eの収束性が高まる。
サイジング工程において、表面処理された繊維1eは、樹脂浴27の内部や樹脂浴27の周辺に配された複数のローラ31,33等により走行方向を変更しながら樹脂液29内を通過する。樹脂液29は、例えば、エポキシ樹脂ウレタン樹脂フェノール樹脂ビニルエステル樹脂不飽和ポリエステル樹脂等を溶剤に溶解させた液やエマルション液が利用される。

0026

(1−5)乾燥工程(乾燥処理)
乾燥工程は、樹脂が付着した繊維1fが乾燥炉35内を通過することで行われる。なお、乾燥した繊維1gは、乾燥炉35の外であって下流側のローラ37を介してボビン39に巻き取られる(巻取工程である。)。

0027

(2)第2の炭素化工程
(2−1)マイクロ波磁界加熱
マイクロ波磁界加熱を利用する場合について説明する。
第2の炭素化工程は、第1の炭素化炉15を通過した第1の炭素化処理後の繊維1cに対して、第2の炭素化炉17内において、マイクロ波磁界加熱により加熱する。第2の炭素化工程では、第1の炭素化処理後の繊維1cの炭素化を一層進行させる工程である。

0028

マイクロ波加熱装置としては、例えば、マイクロ波発振器により接続導波管を介して断面が矩形マイクロ波加熱炉伝送モードがTE10のマイクロ波を伝搬させることで被加熱物(第1の炭素化処理後の繊維1c)を加熱する構造に形成されたものが使用できる。
導波管の端部に短絡負荷を設け、マイクロ波を反射させることにより、図2に示すような定在波を発生させることができる。なお、図2は、マイクロ波の定在波を同一平面上に表した図である。すなわち、定在波中の電界と磁界は、通常、x、y平面上を伝播するとされているが、これを同一平面上に表したものが図2である。図2において、実線で示す40は例えばx平面を伝播する電界の分布を、破線で示す41は例えばy平面を伝播する磁界の分布をそれぞれ示す。太線で示す42は、磁界の分布において磁界エネルギが電界エネルギよりも大きくなる(磁界エネルギ>電界エネルギ)部分を示し、加熱に利用される。
以下、加熱に利用される磁界エネルギの符号も「42」を用いる。本実施形態では、加熱に利用される磁界エネルギ42に第1の炭素化処理後の繊維1cを通すことにより、炭素化を行うものである。
第2の炭素化においてマイクロ波磁界加熱を利用して製造した炭素繊維が、後述の表1中の実施例1〜3及び実施例6〜8である。

0029

(2−2)プラズマ加熱
プラズマ加熱を利用する場合について説明する。
第2の炭素化炉17は、第2の炭素化炉本体の上部から内部へとプラズマを照射するプラズマ照射装置と、第2の炭素化炉本体の内部を不活性雰囲気にするための導入管排気管とを備える。なお、ここでは、不活性ガスとして窒素が利用されている。また、プラズマ照射装置は、例えばスロットアンテナ方式を利用することで表面波プラズマを発生させている。
第2の炭素化においてプラズマ加熱を利用して製造した炭素繊維が、後述の表1中の実施例4,5である。

0030

〔実施例1〕
炭素化途中繊維を炭素化して炭素繊維を製造した。炭素化途中繊維は、3,000本の繊維からなる体積抵抗率18[Ω・cm]の導電性繊維束であり、第1の炭素化処理後の繊維である。
上記炭素化途中繊維をマイクロ波磁界加熱により炭素化した。第2の炭素化炉で利用するマイクロ波の出力は1.0[kW]とした。照射時間は32.4[秒]とした。このときの第2の炭素化炉内は窒素雰囲気下で1.0[kPa]に保った。
得られた炭素繊維の引張強度TS、引張弾性率TM、伸度E、面間隔d002、結晶サイズLc、結晶サイズLaを表1に示した。
ここでの結晶サイズLc,Laの測定は、株式会社リガク製X線回折装置RINT2000を用いて透過法にて行った。X線には、加速電圧40(kV)、電流30(mA)で発生させたCuKα線を使用した。試料の向きは、結晶サイズLcの測定の際には繊維束の繊維軸方向を赤道面に対して垂直な状態とし、結晶サイズLaの測定の際には繊維束の繊維軸方向を赤道面に対して平行な状態とした。また、それぞれ回折角2θが10(°)から60(°)の範囲の回折パターンをとり、回折パターンの10(°)、20(°)、35(°)、60(°)付近を通る曲線をベースラインとして行った。
結晶サイズLcは、上記の方法により得られた回折ピークの半値幅β002から、式(11)を用いて算出した。結晶サイズLaは、上記の方法により得られた回折ピークの半値幅β10から、式(12)を用いて算出した。面間隔d002は式(13)を用いて算出した。引張弾性率TM、引張強度TS及び伸度Eは、JIS R 7606に準拠して測定した。

0031

〔実施例2〕
実施例1と同様の炭素化途中繊維をマイクロ波磁界加熱により炭素化した。マイクロ波の出力は1.0[kW]とした。照射時間は10.8[秒]とした。このときの第2の炭素化炉内は窒素雰囲気下で1.3[kPa]に保った。
得られた炭素繊維の引張強度TS、引張弾性率TM、伸度E、面間隔d002、結晶サイズLc、結晶サイズLaを表1に示した。なお、測定は実施例1と同じである。

0032

〔実施例3〕
実施例1と同様の炭素化途中繊維をマイクロ波磁界加熱により炭素化した。マイクロ波の出力は2.5[kW]とした。照射時間は10.8[秒]とした。このときの第2の炭素化炉内は窒素雰囲気下で1.5[kPa]に保った。
得られた炭素繊維の引張強度TS、引張弾性率TM、伸度E、面間隔d002、結晶サイズLc、結晶サイズLaを表1に示した。なお、測定は実施例1と同じである。

0033

〔実施例4〕
実施例1と同様の炭素化途中繊維をプラズマ加熱により炭素化した。プラズマを発生させるためのマイクロ波の出力は0.5[kW]とした。なお、マイクロ波の発生にはマグネトロンタイプの発振装置を利用した。プラズマの照射時間は80[秒]とした。このときの第2の炭素化炉内は窒素雰囲気下で3.5[kPa]に保った。
得られた炭素繊維の引張強度TS、引張弾性率TM、伸度E、面間隔d002、結晶サイズLc、結晶サイズLaを表1に示した。なお、測定は実施例1と同じである。

0034

〔実施例5〕
実施例1と同様の炭素化途中繊維をプラズマ加熱により炭素化した。マイクロ波の出力は1.5[kW]とした。プラズマの照射時間は50[秒]とした。このときの第2の炭素化炉内は窒素雰囲気下で3.4[kPa]に保った。
得られた炭素繊維の引張強度TS、引張弾性率TM、伸度E、面間隔d002、結晶サイズLc、結晶サイズLaを表1に示した。なお、測定は実施例1と同じである。

0035

〔実施例6〕
炭素化途中繊維として、表1に示すように、引張強度TSが4400[MPa]、引張弾性率TMが240[GPa]、面間隔d002が0.355[nm]、結晶サイズLcが1.8[nm]、結晶サイズLaが3.6[nm]の繊維を用いた。
この繊維をマイクロ波磁界加熱により炭素化した。マイクロ波の出力は3[kW]とした。照射時間は320[秒]とした。このときの第2の炭素化炉内は窒素雰囲気下で100[kPa]に保った。
得られた炭素繊維の引張強度TS、引張弾性率TM、伸度E、面間隔d002、結晶サイズLc、結晶サイズLaを表1に示した。なお、測定は実施例1と同じである。

0036

〔実施例7〕
炭素化途中繊維として実施例6で使用した繊維を用いた。この繊維をマイクロ波磁界加熱により炭素化した。マイクロ波の出力は4[kW]とした。照射時間は320[秒]とした。このときの第2の炭素化炉内は窒素雰囲気下で100[kPa]に保った。
得られた炭素繊維の引張強度TS、引張弾性率TM、伸度E、面間隔d002、結晶サイズLc、結晶サイズLaを表1に示した。なお、測定は実施例1と同じである。

0037

〔実施例8〕
炭素化途中繊維として、表1に示すように、引張強度TSが5900[MPa]、引張弾性率TMが290[GPa]、面間隔d002が0.350[nm]、結晶サイズLcが2.6[nm]、結晶サイズLaが5.2[nm]の繊維を用いた。
この繊維を炭素化炉でマイクロ波磁界加熱により炭素化した。マイクロ波の出力は5[kW]とした。照射時間は320[秒]とした。このときの第2の炭素化炉内は窒素雰囲気下で100[kPa]に保った。
得られた炭素繊維の引張強度TS、引張弾性率TM、伸度E、面間隔d002、結晶サイズLc、結晶サイズLaを表1及び表5に示した。なお、測定は実施例1と同じである。

0038

〔比較例〕
実施品を評価するための炭素繊維を、従来のヒータ加熱により窒素雰囲気中で炭素化した。得られた炭素繊維の引張弾性率TM、結晶サイズLc、結晶サイズLaを表2に示した。ここで、特に実施例6〜8と比較するために、引張弾性率TMの近い又は同じ引張弾性率TMを有する例として、比較例6,13,14について以下に説明する。

0039

〔比較例6〕
炭素化途中繊維として実施例1で使用した繊維を用いた。この繊維を炭素化炉でヒータ加熱により炭素化した。第2の炭素化炉内の温度は1400[℃]とし、加熱時間は240[秒]とした。このときの第2の炭素化炉内は窒素雰囲気下で100[kPa]に保った。
得られた炭素繊維についての加熱条件や加熱後の繊維の特性を表3にそれぞれ示した。なお、測定は実施例1と同じである。

0040

〔比較例13〕
炭素化途中繊維として実施例6及び実施例7で使用した繊維を用いた。この繊維をヒータ加熱により炭素化した。第2の炭素化炉内の温度は2200[℃]とし、加熱時間は450[秒]とした。このときの第2の炭素化炉は窒素雰囲気下で100[kPa]に保った。
得られた炭素繊維についての加熱条件や加熱後の繊維の特性を表4にそれぞれ示した。なお、測定は実施例1と同じである。

0041

〔比較例14〕
炭素化途中繊維として表5に示すように実施例8で使用した繊維を用いた。この繊維をヒータ加熱により炭素化した。第2の炭素化炉内の温度は2400[℃]とし、加熱時間は600[秒]とした。このときの第2の炭素化炉内は、窒素雰囲気下で100[kPa]に保った。
得られた炭素繊維についての加熱条件や加熱後の繊維の特性を表5にそれぞれ示した。なお、測定は実施例1と同じである。

0042

表1は、第2の炭素化工程においてプラズマ加熱又はマイクロ波磁界加熱を利用して製造された炭素繊維を実施例としてその概要を示した。

0043

表2は、引張特性を評価するために、従来法で製造された炭素繊維を比較例としてその概要を示した。

0044

引張特性を評価するために、同じ又は近い引張弾性率TMの実施例と比較例とに着目した。具体的には、引張弾性率TMが240[GPa]、350[GPa]、430[GPa]の3種類である。
表3は、実施例6の炭素繊維と比較例6の炭素繊維の概要を比較して示した。
表4は、実施例7の炭素繊維と比較例13の炭素繊維の概要を比較して示した。
表5は、実施例8の炭素繊維と比較例14の炭素繊維の概要を比較して示した。

0045

0046

0047

0048

4.引張特性
以下、結晶サイズ、引張特性(伸度を含む。)について説明する。
(1)結晶サイズLc,Laと引張弾性率TM
図3は、実施例1〜8及び比較例1〜14における炭素繊維の結晶サイズLaと引張弾性率TMとの関係を示す。図4は、実施例1〜8及び比較例1〜14における炭素繊維の結晶サイズLcと引張弾性率TMとの関係を示す。なお、図3及び図4中の例えば「実1」は実施例1のことを示し、例えば「比1」は比較例1のことを示す。
図3及び図4により、近似する又は同じ引張弾性率TMを有する場合、実施例1〜8の炭素繊維の結晶サイズLc,Laは比較例1〜14の炭素繊維の結晶サイズLc,Laよりも小さいことが分かった。換言すると、近似する又は同じ結晶サイズLc,Laの場合、実施例1〜8の炭素繊維の引張弾性率TMが比較例1〜14の炭素繊維の引張弾性率TMよりも高いことが分かった。特に、図3に示す結晶サイズLaにおいてこの傾向は顕著であった。このことから、従来法では、結晶サイズLaが小さく且つ引張弾性率TMが高い炭素繊維を製造することができないと考えられる。

0049

図3において比較例1〜8と実施例1〜14との間に境界があり、実施例1〜8の範囲は引張弾性率TMに対応して以下のように表すことができ、この式が上記の式(2)〜式(5)である。
170≦TM≦230の場合、La≦−0.5+0.01×TM (2)
230<TM≦240の場合、La≦−37.3+0.17×TM(3)
240<TM≦300の場合、La≦−2.5+0.025×TM(4)
300<TM の場合、La≦2+0.01×TM (5)
つまり、上記の関係を満たす炭素繊維は、後述のように、高い引張強度TS(伸度E)を有する。

0050

図4において比較例1〜8と実施例1〜14との間に境界があり、実施例1〜8の範囲は引張弾性率TMに対応して、以下のように表すことができ、これらが上記の式(7)である。
Lc≦0.4+e^(0.006×TM) (7)
なお、上記の「e」は自然対数の底である。

0051

(2)引張強度(伸度)
図5は実施例6〜8と比較例6,13,14における引張弾性率TMと引張強度TSとの関係を示す図である。図6は実施例6〜8と比較例6,13,14における引張弾性率TMと伸度Eとの関係を示す図である。
実施例6〜8における引張強度TS及び伸度Eは、図5及び図6に示すように、比較例6,13,14よりも高くなっていた。以下、詳細に比較する。

0052

(2−1)実施例6と比較例6(表3)
引張弾性率TMが240[GPa]の場合、比較例6では引張強度TSが4400[MPa]、伸度Eが1.8[%]であった。実施例6では引張弾性率TMが250[GPa]で比較例6より若干高く、引張強度TSが5200[MPa]、伸度Eが2.1[%]であった。このように実施例6の方が比較例6よりも優れた引張強度TSと伸度Eを示した。
(2−2)実施例7と比較例13(表4)
引張弾性率TMが350[GPa]の場合、比較例13では引張強度TSが3300[MPa]、伸度Eが0.9[%]であった。実施例7では引張弾性率TMが320[GPa]で比較例13よりも若干低く、引張強度TSが6500[MPa]、伸度Eが2.0[%]であった。このように実施例7の方が比較例13よりも優れた引張強度TSと伸度Eを示した。

0053

(2−3)実施例8と比較例14(表5)
引張弾性率TMが430[GPa]の場合、比較例14では引張強度TSが4600[MPa]、伸度Eが1.1[%]であった。実施例8では、引張弾性率TMが同じで、引張強度TSが5900[MPa]、伸度Eが1.4[%]であった。このように実施例8の方が比較例14よりも優れた引張強度TSと伸度Eを示した。
(2−4)まとめ
以上のように、特定範囲の結晶サイズLc,Laと特定範囲の引張弾性率TMとを有する炭素繊維は、従来法では得ることのできない高い引張強度TS及び伸度Eを有した。

0054

(3)炭素網面の面間隔及び密度
図7は実施例6〜8と比較例6,13,14における引張弾性率TMと面間隔d002との関係を示す図である。図8は実施例6〜8と比較例6,13,14における引張弾性率TMと密度Dとの関係を示す図である。
実施例6〜8の面間隔d002は、図7に示すように、従来法の比較例6,13,14よりも大きかった。また、実施例6〜8の密度Dは、図8に示すように、比較例6,13,14よりも小さかった。なお、密度Dが小さくなると、引張弾性率TMや引張強度TSが同じであっても比弾性比強度が向上する。以下、詳細に比較する。

0055

(3−1)実施例6と比較例6(表3)
引張弾性率TMが240[GPa]の場合、比較例6では面間隔d002が0.355[nm]、密度Dが1.77[g/cm3]であった。実施例6では引張弾性率TMが250[GPa]で比較例6より若干高いが、面間隔d002が0.360[nm]、密度Dが1.77[g/cm3]であった。
このように実施例6の引張弾性率TMが比較例6より高いにも関わらず、実施例6の面間隔d002が比較例6よりも大きかった。なお、一般的には、面間隔d002が大きくなれば、密度は小さくなる傾向にある。
実施例6の密度Dは比較例6の密度Dと同じである。一般的に、引張弾性率が低くなれば密度Dも小さくなる傾向にある。ここでの引張弾性率TMは実施例6の方が比較例6よりも高い。このことを考慮すると、実施例6の密度は、引張弾性率TMが同じであって従来法により製造された炭素繊維の密度よりも実質的に小さいと言える。

0056

(3−2)実施例7と比較例13(表4)
引張弾性率TMが350[GPa]の場合、比較例13では面間隔d002が0.351[nm]、密度Dが1.80[g/cm3]であった。実施例7では引張弾性率TMが320[GPa]で比較例13より若干低いが、面間隔d002が0.352[nm]、密度Dが1.78[g/cm3]であった。このように実施例7の面間隔d002が比較例13よりも大きく、実施例7の密度Dが比較例13よりも小さかった。

0057

(3−3)実施例8と比較例14(表5)
引張弾性率TMが430[GPa]の場合、比較例14では面間隔d002が0.349[nm]、密度Dが1.80[g/cm3]であった。実施例8では面間隔d002が0.350[nm]、密度Dが1.79[g/cm3]であった。このように実施例8の面間隔d002が比較例14よりも大きく、実施例8の密度Dが比較例14よりも小さかった。

0058

(4)対象繊維
実施例6、実施例7及び比較例13は、表3,4に示すように、対象繊維として同一のものを使用した。なお、この対象繊維は表3に示す従来法により製造された比較例6の炭素繊維である。対象繊維は、表3及び表4に示すように、結晶サイズLcが1.8[nm]であり、結晶サイズLaが3.6[nm]であった。
実施例6では、結晶サイズLcが1.5[nm]であり、結晶サイズLaが1.5[nm]であった。実施例7では、結晶サイズLcが2.5[nm]であり、結晶サイズLaが3.2[nm]であった。
実施例6の炭素繊維の結晶サイズLa(1.5)と実施例7の炭素繊維の結晶サイズLa(3.2)は、対象繊維の結晶サイズLa(3.6)よりも小さかった。
このように、少なくともマイクロ波磁界加熱を利用すると、従来法で製造した炭素繊維を対象繊維として使用しても、結晶サイズLaの小さな新たな構造の炭素繊維を得ることができる。

0059

これに対して、比較例13では、結晶サイズLcが3.6[nm]であり、結晶サイズLaが9.1[nm]であり、両結晶サイズLc,Laとも対象繊維の結晶サイズLc,Laよりも大きかった。
このように、炭素繊維を対象繊維として利用して従来法で炭素化すると、対象繊維の結晶サイズLc,Laよりも小さい構造の炭素繊維を得ることは困難である。

0060

5.マイクロ波加熱の回数
マイクロ波磁界加熱の処理回数(この回数を「磁界処理回数」ともいう。)が結晶サイズ及び引張特性に及ぼす効果について説明する。
図9は磁界処理回数と面間隔d002との関係を示す図であり、図10は磁界処理回数と黒鉛状炭素a軸方向の結晶面の面間隔d10との関係を示す図であり、図11は磁界処理回数と結晶サイズLaとの関係を示す図であり、図12は磁界処理回数と結晶サイズLcとの関係を示す図であり、図13は磁界処理回数と引張弾性率TMとの関係を示す図であり、図14は磁界処理回数と引張強度TSとの関係を示す図である。
なお、磁界処理の条件は、マイクロ波の出力が3[kW]で、対象繊維を0.1[m/分]で炉内を走行させ、照射時間は30[秒]であった。

0061

図9図11及び図12に示すように、処理回数が増えるに従って、面間隔d002、結晶サイズLa,Lcが大きくなる傾向にあった。なお、図10に示すように、面間隔d10は処理回数に関係なく略一定であった。
結晶サイズLa,Lcの増加に伴い、図13及び図14に示すように、引張弾性率TM及び引張強度TSが増加する傾向にあった。
以上のことから、マイクロ波加熱を繰り返すことで、結晶サイズLa,Lcが大きくなり、結果的に引張特性も向上すると考えられる。なお、処理回数は、マイクロ波の出力及び照射時間の条件はすべて同じであった。

0062

6.炭素化工程での切断について(参考例)
従来の電気ヒータを用いて耐炎繊維や炭素化途中繊維を炭素化する場合、炭素化炉全体を加熱する必要があるため耐炎繊維や炭素化途中繊維への加熱効率が低かった(低加熱効率)り、炭素化炉内の熱が耐炎繊維や炭素化途中繊維に外側から内側へと徐々に伝わるため炭素化に時間を要した(長時間化)りする。

0063

このような電気ヒータを用いた際の低加熱効率や炭素化の長時間化を改善する方法として、耐炎繊維を直接加熱する方法、例えば、マイクロ波を利用したマイクロ波電界加熱(例えば、特公昭47−24186号公報)がある。

0064

しかしながら、この技術は、導波管と赤熱した導電性繊維との間、又は前駆体繊維の炭素化反応により副生したタール成分石英管に付着した後、炭素化された炭素質と赤熱した導電性繊維の間で激しく放電するため、導電性繊維が切れるという問題がある。
この問題に対して、マイクロ波磁界加熱により炭素化することで導電性繊維等の導電体を切断することなく炭素化できることが判明した。
以下、導電性繊維等の導電体を切断することなく炭素化できる、炭素化方法及び炭素化体の製造方法を参考例として説明する。なお、本方法は、導電性繊維だけでなく、導電性フィルム等の導電体の炭素化してなる炭素フィルム等にも適用できる

0065

(1)概要
本例に係る炭素化方法は、導電体を炭素化する炭素化方法において、前記炭素化は、マイクロ波磁界加熱により行われる。このため、マイクロ波の電界の影響を受けにくくなり、導電性繊維等の導電体を切断することなく炭素化することができる。

0066

また、前記マイクロ波磁界加熱は、定在波中の磁界エネルギ>電界エネルギ(図2参照)により行われる。これにより、導電性繊維等の導電体を切断することなく、より効率よく炭素化することができる。

0067

また、前記導電体の体積抵抗率が100,000[Ω・cm]以下である。これにより、導電性繊維等の導電体を切断することなく、より効率よく炭素化することができる。

0068

また、導電体を炭素化する炭素化工程を含む炭素化体の製造方法において、前記炭素化工程は、前記の炭素化方法により行われる。これにより、導電性繊維等の導電体を切断することなく、効率よく炭素繊維等の炭素化体を製造することができる。
参考例に係る方法の特徴は、炭素化方法(炭素化工程)であり、耐炎化工程等の他の工程は、「2.製造方法」の項目で説明した通りである。このため、ここでは、炭素化方法(炭素化工程)について図1及び図2を用いて説明する。

0069

(2)炭素化工程(炭素化処理)
炭素化工程は、耐炎繊維1bを加熱することで熱分解反応を生じさせて炭素化を行う工程である。炭素化は、耐炎繊維1bが第1の炭素化炉15を通過し、さらに、第1の炭素化炉15を通過した繊維1cが第2の炭素化炉17を通過することで行われる。
ここで、上記のように、第1の炭素化炉15で行われる炭素化を「第1の炭素化」とし、第1の炭素化炉15で行われる処理を「第1の炭素化処理」とし、第1の炭素化炉15で行われる工程を「第1の炭素化工程」とし、第1の炭素化処理や第1の炭素化工程を終えた(第1の炭素化炉15を出た)繊維1cを「第1の炭素化処理後の繊維」とする。

0070

同様に、上記のように、第2の炭素化炉17で行われる炭素化を「第2の炭素化」とし、第2の炭素化炉17で行われる処理を「第2の炭素化処理」とし、第2の炭素化炉17で行われる工程を「第2の炭素化工程」とし、第2の炭素化処理や第2の炭素化工程を終えた(第2の炭素化炉17を出た)繊維1dを「第2の炭素化処理後の繊維」又は「炭素化後繊維」という。

0071

参考例の一態様に係る導電性繊維を炭素化する炭素化方法は、「第2の炭素化」に係る方法をいう。また、「導電性繊維」とは、第1の炭素化処理を終えた(第1の炭素化炉15を出た)繊維1c、すなわち第1の炭素化処理後の繊維をいう。
なお、第1の炭素化処理は、耐炎繊維1bを導電化するための処理とも言える。
導電性繊維の体積抵抗率は、100,000[Ω・cm]以下であることが好ましく、特に好ましくは1,000[Ω・cm]以下、最も好ましくは10[Ω・cm]以下である。なお、導電性繊維の体積抵抗率の下限には、特に制限はない。

0072

第1の炭素化は、体積抵抗率が100,000[Ω・cm]以下の繊維とする工程、換言すると、第1の炭素化は、例えばマイクロ波電界加熱を利用しても切断しない繊維を炭素化する工程である。第2の炭素化は、マイクロ波電界加熱を利用すると切断する(切断しやすくなる)繊維を炭素化する工程である。

0073

(3−1)第1の炭素化工程
第1の炭素化工程は、加熱することで熱分解し、耐炎繊維1bを延伸させて、配向を整えて炭素化し易い構造を形成する。
第1の炭素化工程は、不活性ガス雰囲気の第1の炭素化炉15内を走行する耐炎繊維1bに対して、加熱が途中で弱くなるように熱に転換されるエネルギを与えている。なお、不活性ガスは、例えば、窒素、アルゴン等が利用される。
第1の炭素化炉15は、ここでは、マイクロ波(主に電界エネルギ)を利用した加熱手段を有し、耐炎繊維1bが受けるマイクロ波の強度を変更できる構成を有している。一例として、第1の炭素化炉15は、第1炉本体と、マイクロ波を第1炉本体内で発生させる発振器であるマグネトロンと、第1炉本体内における耐炎繊維1bの走行領域印加するマイクロ波の電界強度を調整する調整機構とを備える。

0074

(3−2)第2の炭素化工程
第2の炭素化工程は、第1の炭素化炉15を通過した第1の炭素化処理後の繊維1c(導電性繊維)に対して、第2の炭素化炉17内において、マイクロ波磁界加熱により加熱する。第2の炭素化工程では、第1の炭素化処理後の繊維1cの炭素化を一層進行させる工程である。

0075

マイクロ波加熱装置としては、例えば、マイクロ波発振器により接続導波管を介して断面が矩形のマイクロ波加熱炉に伝送モードがTE10のマイクロ波を伝搬させることで被加熱物(導電性繊維)を加熱する構造に形成されたものが使用できる。このマイクロ波加熱装置の例としては、「2.製造方法」の項目で説明した通りである。なお、結晶サイズLcは、式(11)により算出することできる。
<参考例>

0076

以下、参考例について具体的に説明する。ここでは、導電性繊維(第1の炭素化炉15を出た繊維)1cを炭素化後繊維1dにまで炭素化した場合について説明する。
まず、下記に示す材料を準備もしくは作製した。

0077

<導電性繊維1>
導電性繊維1として、24,000本の繊維からなる体積抵抗率1.5×10-3[Ω・cm]の繊維束を準備した。

0078

〔参考例1〕
導電性繊維1を、第2の炭素化炉17でマイクロ波磁界加熱により炭素化した。第2の炭素化炉17で利用するマイクロ波は、周波数が2400[MHz]〜2500[MHz]の範囲内にあり、マグネトロンタイプの発振装置を利用した。マイクロ波の出力は、1.0[kW]とした。マイクロ波の照射時間は、30[秒]とした。第2の炭素化炉17内は、窒素雰囲気下で、10[kPa]に保った。

0079

〔参考例2〕
マイクロ波の出力を1.5[kW]に変更した以外は、参考例1と同様にして、導電性繊維1を炭素化した。

0080

〔参考例3〕
マイクロ波の出力を2.0[kW]に変更した以外は、参考例1と同様にして、導電性繊維1を炭素化した。

0081

〔参考例4〕
マイクロ波の出力を2.5[kW]に変更した以外は、参考例1と同様にして、導電性繊維1を炭素化した。

0082

〔参考例5〕
マイクロ波の出力を3.0[kW]に変更した以外は、参考例1と同様にして、導電性繊維1を炭素化した。

0083

〔比較例21〕
マイクロ波磁界加熱に代えて、マイクロ波電界加熱を行った以外は、参考例1と同様にして、導電性繊維1を炭素化した。

0084

〔繊維束の切断〕
このようにして得られた参考例1〜5及び比較例21の炭素繊維について、繊維束の切断(第2の炭素化炉で加熱する際の繊維束の切断)の有無を評価した。これらの結果を下記の表6に示した。

0085

0086

表6の結果から、マイクロ波磁界加熱により炭素化した参考例1〜5は、繊維束の切断が見られなかった。これに対して、マイクロ波電界加熱により炭素化した比較例21は、繊維束の切断が見られた。
この理由は明らかではないが、マイクロ波電界加熱により炭素化した比較例21では、導波管と赤熱した繊維との間で激しく放電が生じるため、繊維束が切れるのに対して、マイクロ波磁界加熱により炭素化した参考例1〜5では、放電が生じないためと考えられる。

0087

<導電性繊維2>
導電性繊維2として、3,000本の繊維からなる体積抵抗率18[Ω・cm]の繊維束を準備した。

0088

〔参考例6〜8〕
導電性繊維2を、第2の炭素化炉17でマイクロ波磁界加熱により炭素化した。第2の炭素化炉17で利用するマイクロ波は、周波数が2400[MHz]〜2500[MHz]の範囲内にそれぞれあり、マグネトロンタイプの発振装置を利用した。第2の炭素化炉17内は、窒素雰囲気下で、1[kPa]〜1.5[kPa]に保った。マイクロ波の出力、圧力、マイクロ波の照射時間は、下記の表7に示す通りとした。

0089

参考例6〜8で得られた炭素繊維について、繊維束の切断の有無、引張強度TS、引張弾性率TM、伸びS、密度D、結晶サイズLcを測定した。これらの結果を、下記の表7に併せて示した。なお、参考例6〜8は表1中の実施例1〜3と同じである。

0090

0091

表7の結果から、マイクロ波磁界加熱により炭素化した参考例6〜8は、繊維束の切断が見られなかった。
<<変形例>>
以上、実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態に限られない。例えば、以下で説明する変形例と実施形態の何れかを適宜組み合わせてもよいし、複数の変形例を適宜組み合わせてもよい。

0092

1.炭素繊維
「2.製造方法」の項目では、フィラメント数が12,000本の炭素繊維の製造方法について説明したが、フィラメント数が3,000本、6,000本、24,000本等の他の本数の前駆体繊維の炭素化及び炭素繊維の製造方法にも適用できる。
「2.製造方法」の項目では、炭素化工程を含んだ炭素繊維の製造方法について説明したが、例えば、表面処理工程前に、さらに黒鉛化処理を行ってもよい。つまり、「2.製造方法」の項目では、主に汎用品(弾性率240[GPa])の炭素繊維の製造方法について説明したが、炭素化工程は、高弾性品、中弾性高強度品等高性能品の炭素繊維用の前駆体繊維の炭素化にも利用できる。当然に、高性能品の炭素繊維の製造方法にも利用できる。また、黒鉛化処理を、マイクロ波磁界加熱により行ってもよい。

実施例

0093

2.炭素化
すべてマイクロ波磁界加熱により、第1の炭素化及び第2の炭素化を行ってもよい。

0094

1 繊維
1aプリカーサ
1b耐炎繊維
1c 第1の炭素化処理後の繊維
15 第1の炭素化炉
17 第2の炭素化炉
21ローラ
23 ローラ

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