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課題・解決手段
概要
背景
四肢の一部を切断した患者にとって、義肢は、日常生活で必須のものである。一般に、義肢は、切断端を直接包みこみ支持固定するソケットと、関節に相当する継手、手や足に相当する手先具及び足部で構成されている。また、上腕切断者に用いられる上腕義手の場合、断端への支持固定には、義手を吊り下げるための懸垂用部材(ハーネス)が用いられている。
しかしながら、ハーネスを用いて支持固定する方式の上腕義手には、頚部痛や反対側の肩に関節痛が発生するという問題がある(非特許文献1参照)。また、この方式の義手には、上腕切断により減少した上肢の重量が補完されないため、体幹が傾斜して肩関節痛や腰痛を発症するというリスクもある。
これらの二次的障害を改善するため、従来、ライナーにより断端を支持固定する方式の上腕義手が処方されている。ライナー式の上腕義手の場合、シリコーン樹脂などで形成されたライナーを断端に直接装着し、懸垂機構にはハーネスの代わりにロックピンを用いる。このライナー式の上腕義手を用いることにより、ハーネスの違和感を解消することが可能となる。
また、従来、スリットを有するテーパー状略円筒体からなる内ソケットを、テーパー状略円筒体からなる外ソケットに挿入して使用する二重構造の義足用ソケット部も提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の義足用ソケット部では、内ソケットを構成するテーパー状略円筒体の全長にわたってスリットが設けられており、これによりテーパー状略円筒体が拡径及び縮径可能となっている。
概要
装着が容易でかつ抜けにくく、二次的障害も予防することが可能な上腕義手用ソケット及び上腕義手を提供する。上腕断端に連結される上腕義手用のソケットを、断端部が挿入されるインナーソケット(1)と、このインナーソケット(1)を覆うアウターソケット(2)とを備える二重構造とする。そして、インナーソケット(1)に螺旋状のスリット(1a)を形成し、断端部の形状変化に追従して、インナーソケット(1)が伸縮及び/又は縮径・拡径する構成にする。
目的
本発明は、装着が容易でかつ抜けにくく、二次的障害も予防することが可能な上腕義手用ソケット及び上腕義手を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
- - 件
- 牽制数
- - 件
この技術が所属する分野
技術分野
背景技術
0002
四肢の一部を切断した患者にとって、義肢は、日常生活で必須のものである。一般に、義肢は、切断端を直接包みこみ支持固定するソケットと、関節に相当する継手、手や足に相当する手先具及び足部で構成されている。また、上腕切断者に用いられる上腕義手の場合、断端への支持固定には、義手を吊り下げるための懸垂用部材(ハーネス)が用いられている。
0003
しかしながら、ハーネスを用いて支持固定する方式の上腕義手には、頚部痛や反対側の肩に関節痛が発生するという問題がある(非特許文献1参照)。また、この方式の義手には、上腕切断により減少した上肢の重量が補完されないため、体幹が傾斜して肩関節痛や腰痛を発症するというリスクもある。
0004
これらの二次的障害を改善するため、従来、ライナーにより断端を支持固定する方式の上腕義手が処方されている。ライナー式の上腕義手の場合、シリコーン樹脂などで形成されたライナーを断端に直接装着し、懸垂機構にはハーネスの代わりにロックピンを用いる。このライナー式の上腕義手を用いることにより、ハーネスの違和感を解消することが可能となる。
0005
また、従来、スリットを有するテーパー状略円筒体からなる内ソケットを、テーパー状略円筒体からなる外ソケットに挿入して使用する二重構造の義足用ソケット部も提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の義足用ソケット部では、内ソケットを構成するテーパー状略円筒体の全長にわたってスリットが設けられており、これによりテーパー状略円筒体が拡径及び縮径可能となっている。
0006
特開2011−143227号公報
先行技術
0007
Witso E et al.、「Improved comfort and function of arm prosthesis after implantation of a humerus-T prosthesis in transhumeral amputees」、Prosthet. Orthot. Int、No.30、pp.270−278、2006年
発明が解決しようとする課題
0008
ソケットは、切断端を支持固定し、断端部の動きを手先具や足部へと伝える役割をする部分であり、義肢装着及び使用のためにはソケットと断端との適合が必要である。このため、ソケットを作製する際は、義肢装具士が患者の断端に直接石膏ギプスという包帯状の石膏を巻き付けて採型を行い、これにより作製された陰性モデルを用いてソケットを作製する。
0009
しかしながら、義手装着時は、義手の重量により断端が懸垂又は伸長するため、採型時とは断端部の形状が異なる。具体的には、採型時には、断端部には断端自体の重量の他には力はかかっていないが、実際に義手を使用するときには断端部に、肘継手や手先部などの義手を構成する他の部材の重量がかかるため、断端部は下方に延びる。このため、従来の上腕義手には、装着している間にソケットにゆるみが生じて抜けやすくなるという問題や、ソケットが回旋してその周囲に発赤や水疱といった皮膚障害などの二次的障害が生じるという問題がある。
0010
一方、断端の形状変化を加味し、断端を牽引して懸垂又は伸長させた状態で採型してソケットを作製した場合、断端が懸垂又は伸長していない状態のときに装着が困難になる。このようなソケットの適合困難の問題は、断端の皮膚障害や肩に近い部分(近位部)で発生する頚部痛や肩関節痛の原因となる。
0011
また、特許文献1に記載のソケット部では、フィット性を上げるために内ソケットにスリットを設けているが、実際の断端の形状は、刻々と変化するものであるため、特許文献1に記載のソケット部のように、リング状部材を組み合わせた構造にした場合、局部的に圧がかかって血流障害が起こる可能性がある。更に、特許文献1に記載のソケット部は、義足用のものであり、義手とは力のかかり方や装着時の状態が異なるため、特許文献1に記載のソケット部の構造をそのまま義手に適用しても、安定した装着状態を得ることは難しい。
0012
このような理由から、義手を、書字や更衣などの日常生活に必要な両手動作を行う際の補助手として使用していく上で、皮膚障害や頚部痛、肩関節痛といった二次的障害を回避し、装着しやすく、抜けにくい、装着性と適合性が良好なソケット開発が求められている。
0013
そこで、本発明は、装着が容易でかつ抜けにくく、二次的障害も予防することが可能な上腕義手用ソケット及び上腕義手を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0014
本発明に係る義手用ソケットは、上腕断端に連結される上腕義手用のソケットであって、断端部が挿入されるインナーソケットと、前記インナーソケットを覆うアウターソケットとを有し、前記インナーソケットには螺旋状にスリットが形成されている。 前記インナーソケットは、例えば繊維強化プラスチックにより形成することができる。 また、前記インナーソケットは、前記断端部の形状に応じて又は前記断端部の経時的形状変化に追従して、径及び/又は長さが変化するようになっている。 更に、前記インナーソケットのスリットは、例えば60〜80°の螺旋角度で形成することができる。 一方、前記インナーソケットと前記アウターソケットは、樹脂製ベルトを介して連結されていてもよい。
0015
本発明に係る義手は、前述したソケットを備える上腕義手である。
発明の効果
0016
本発明によれば、インナーソケットとアウターソケットの二重構造とし、インナーソケットに螺旋状のスリットを形成しているため、装着が容易でかつ抜けにくく、二次的障害も予防することが可能な上腕義手用ソケット及び上腕義手を実現することができる。
図面の簡単な説明
0017
A及びBは本発明の第1の実施形態の義手用ソケットの構成を模式的に示す斜視図であり、Aはインナーソケットの装着時の状態を示し、Bはアウターソケットを装着した状態を示す。
インナーソケット1の伸長時の状態を示す図である。
A及びBはインナーソケットの他の構成例を示す図であり、Aは正面図であり、Bは側面図である。
図1Aに示すインナーソケット1と図3に示すインナーソケット11の伸長度合いを比較した図である。
A〜Dはアウターソケットの他の構成例を示す図であり、Aは正面図、Bは背面図、Cは右側面図、Dは左側面図である。
本発明の第2の実施形態の義手の構成を模式的に示す斜視図である。
0018
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
0019
(第1の実施形態) 先ず、本発明の第1実施形態に係る義手用ソケットについて説明する。本実施形態の義手用ソケットは、上腕切断者の断端に連結される上腕義手用のソケットであり、上腕断端部を支持固定し、身体の動きを手先具などに伝えるものである。
0020
[全体構成]図1A,Bは本実施形態の義手用ソケットの構成を模式的に示す斜視図であり、図1Aはインナーソケットの装着時の状態を示し、図1Bはアウターソケットを装着した状態を示す。図1A及び図1Bに示すように、本実施形態の義手用ソケットは、断端部が挿入されるインナーソケット1と、インナーソケット1を覆うアウターソケット2の二重構造となっている。そして、インナーソケット1とアウターソケット2とは、樹脂製ベルトなどによって連結されている。
0021
[インナーソケット1]図2はインナーソケット1の伸長時の状態を示す図である。インナーソケット1は、断端部と直接又はライナーやインサートを介して接触するものであり、断端を牽引して懸垂又は伸長させた状態で採型して作製されている。また、インナーソケット1の側面には、螺旋状にスリット(切れ目)1aが形成されており、これにより断端部の形状や経時的変化などに応じて径及び/又は長さが変化するようになっている。具体的には、図1Aに示すように短縮時にはスリット1aが相互に接触しているが、図2に示す伸長時にはスリット1aの間隔が広がり、断端部の形状又は経時的形状変化に追従する。
0022
インナーソケット1のスリット1aは、伸長性向上の観点から、60〜80°の螺旋角度で形成されていることが好ましい。同様に伸長性向上の観点から、スリット1aのピッチは、1〜3cm程度、幅は5mm以下とすることが好ましい。なお、インナーソケット1に形成されるスリット1aの螺旋角度、ピッチ、幅などは、前述した範囲に限定されるものではなく、断端の形状や長さに応じて適宜選択することができる。
0023
図3A,Bはインナーソケットの他の構成例を示す図であり、図3Aは正面図であり、図3Bは側面図である。また、図4は図1Aに示すインナーソケット1と図3に示すインナーソケット11の伸長度合いを比較した図である。図3に示すインナーソケット11は、図1に示すインナーソケット1よりも螺旋角度を大きくし、更に、ピッチを狭くしてスリット11aの本数を増やしたものである。これらのインナーソケット1,11を伸長させて比較したところ、図4に示すように、螺旋角度が大きいインナーソケット11の方が、伸長性に優れていることが確認された。
0024
インナーソケット1の材質は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、繊維や補強材などが添加された各種強化プラスチックなど、従来使用されている材料で形成することができる。これらの材料の中でも、強度の面から、炭素繊維、ガラス繊維及びナイロン繊維などで形成した織物(クロス)と、アクリル樹脂やウレタン樹脂などのマトリックス樹脂で構成される繊維強化プラスチックが好ましい。
0025
インナーソケット1のスリット1aは、先ず、スリットなしのものを成形し、その後、螺旋状に切れ目を入れることで形成してもよいが、型にスリットに対応する凸部を設けておき、成形時にスリット1aを形成してもよい。なお、インナーソケット1,11の肘継手側の先端には、ソケットにライナー又はインサートを固定するため、ロックピンなどの接続部材が取り付けられていてもよい。
0026
[アウターソケット2] アウターソケット2は、インナーソケット1の全体を覆い、断端及びインナーソケットを保護すると共に、断端に追従して伸縮などしたインナーソケット1の形状を維持し、肘継手及び手先具を連結するためのものである。このアウターソケット2は、インナーソケット1を装着した状態で断端を懸垂又は伸長し、採型して作製される。
0027
アウターソケット2の材質も、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、繊維や補強材などが添加された各種強化プラスチックなど、従来使用されている材料で形成することができる。また、アウターソケット2は、前述したインナーソケット1と同じ材料で形成されていてもよいが、異なる材料で形成することもできる。
0028
ただし、断端形状が変化している間は、アウターソケット2は、成形後の調整しやすさの観点から、比較的融点が低い熱可塑性樹脂で形成することが好ましい。一方、断端形状が安定した後は、アウターソケット2は、強度の面から、炭素繊維、ガラス繊維及びナイロン繊維などで形成した織物(クロス)と、アクリル樹脂やウレタン樹脂などのマトリックス樹脂で構成される繊維強化プラスチックで形成することが好ましい。
0029
アウターソケット2は、患者の肩部を覆う形状となっており、これによりソケットの断端に対する回旋が制限される。なお、アウターソケット2は、図1Bに示す形状に限定されるものではなく、肩の一部を覆う形状でもよい。図5A〜Dはアウターソケットの他の構成例を示す図であり、図5Aは正面図、図5Bは背面図、図5Cは右側面図、図5Dは左側面図である。図5A〜Dに示すように、アウターソケット21は、上腕骨骨頭、鳥口突起、肩甲骨棘下の背面のみ接触し、側面部分は開口している。
0030
合併損傷があり対側の肩関節や頚部の外傷後の患者は、できるかぎり義肢装着による疼痛を軽減させる必要があるが、アウターソケットをこのような形状にすることで、ソケットの回旋を制限し、断端部の皮膚とソケットその間の摩擦やかぶれなどの皮膚障害の発生も低減することができる。
0031
アウターソケット2の肘継手側の先端には、肘継手などを接続するための接続部材が取り付けられていてもよい。この接続部材により本実施形態のソケットと肘継手とが接続される。
0032
[樹脂製ベルト3] 樹脂製ベルト3は、インナーソケット1とアウターソケット2とを連結するものであり、例えばインナーソケット1の肘継手寄りの部分(遠位部)の外面に取り付けられている。また、アウターソケット2には、樹脂製ベルト3を挿通させる孔と、樹脂製ベルト3を固定するための固定部材が設けられている。そして、インナーソケット1の上に、アウターソケット2を装着した後、孔に樹脂製ベルト3を通し、固定部材で固定することにより、インナーソケット1とアウターソケット2とを連結する。
0033
以上詳述したように、本実施形態の義手用ソケットは、インナーソケットが螺旋状のスリットが形成されたスパイラル形状(スパイラルソケット)であるため、ソケット自体が伸長し、断端の形状変化に追従可能となっている。これにより、ソケット適合困難の際に生じる皮膚障害・頚部痛・肩痛といった二次的障害を予防することができる。
0034
本実施形態の義手用ソケットは、インナーソケットとアウターソケットの二重構造となっているため、脱着が容易であると共に、装着時は抜けにくくなっている。また、本実施形態の義手用ソケットは、接触式であるため、ハーネスを簡略化することが可能であり、ハーネスによる頚部痛や反対側の肩痛を軽減できる。なお、長断端の場合は、ハーネスを必要としないこともある。
0035
本実施形態の義手用ソケットのインナーソケットは、断端形状に応じてその長さが延長短縮すると共に、内径が短縮拡大するため、装着が容易でかつ抜けにくく、種々の断端形状に対応することが可能である。更に、このインナーソケットは、局所に圧力がかかりにくいため、二次的障害を予防する効果もある。
0036
通常、上腕切断者の断端形状は、近位になるに従い周径が大きくなる逆円錐状となるが、上腕部の筋肉を切除した患者の場合、遠位部に比べて近位部の周径が小さいため、従来のソケットでは、隙間ができ、弛みや摩擦により皮膚障害などの二次的障害が発生しやすい。これに対して、本実施形態の義手用ソケットは、断端の形状に応じてインナーソケットが変形するため、上腕筋切除の患者のように従来のソケットの適用が難しい患者でも、皮膚障害などの発生もなく、良好な状態で使用することができる。
0037
更に、受傷後間もない時期の患者は、断端の周径が日々変化するため、ソケット適合が困難であり、従来、頚部痛や肩関節痛、皮膚障害によって義手装着訓練が進まない傾向にあったが、本実施形態のソケットを用いることにより、義肢装着訓練を早めることが可能となる。早期の義肢装着訓練は、切断患者の難治な合併症である幻肢痛を改善できる可能性もある。
0038
(第2の実施形態) 次に、本発明の第2実施形態に係る義手について説明する。図6は本実施形態の義手の構成を模式的に示す斜視図である。本実施形態の義手は、上腕切断部に連結される上腕義手であり、図6に示すように、ソケット10に、肘継手20を介して、前腕支持部30及び手先具40が連結されている。
0039
本実施形態の義手は、ソケット10に、前述した第1の実施形態のソケットを用いている。即ち、ソケット10は、螺旋状のスリットを備えたインナーソケットとそれを覆うアウターソケットとの二重構造となっている。なお、肘継手20、前腕支持部30及び手先具40には、公知の部材を使用することができる。
0040
本実施形態の義手は、螺旋状のスリットを備えたインナーソケットとそれを覆うアウターソケットとの二重構造のソケットを使用しているため、装着が容易でかつ抜けにくく、二次的障害を予防することも可能である。また、本実施形態の義手は、通常の上腕切断者だけでなく、上腕部の筋肉を切除した患者などにも良好に適用することができる。
0041
本実施形態の義手を装着した患者は、作業療法士や理学療法士指導の下で訓練を行うことで、日常生活の両手動作の補助手として、書字動作で紙をおさえることや、更衣時に服をおさえること、財布からお金を取り出す時に財布を取り出すことなどが可能となる。このように、本実施形態の義手を用いることにより、従来よりも義手の使用が容易になり、書字や更衣といった日常生活動作の改善及びQOL(生活の質)の向上に寄与することができる。
0042
また、本実施形態の義手は、筋電義手として用いることもできる。「筋電義手」は、腕の残存する部位に電極を付け、筋肉を動かした時に生じる電位変化(筋電位)を検出して、義手を動作させるものである。一般に、上腕切断症例の筋電義手には、吸着式ソケットが用いられており、短断端の場合ハーネスが必要となる。また、従来の筋電義手では、患者の上腕部に電極を付けて上腕二頭筋や上腕三頭筋の筋電位を検出している。
0043
一方、本実施形態の義手は、インナーソケットとそれを覆うアウターソケットとの二重構造のソケットを使用しているため、その構造上、上腕二頭筋や上腕三頭筋の筋電位を検出することが難しい。そこで、本実施形態の義手を筋電義手として用いる場合は、アウターソケット内側に電極を配置し、三角筋、大胸筋及び棘下筋などの肩周囲の筋電位を使用する。本実施形態の義手は、肩周囲の筋電位を良好に検出でき、従来の筋電義手と同等又はそれ以上の動作性能を得ることが可能である。
0044
以下、実施例により、本発明の効果について具体的に説明する。
0045
(第1実施例) 前述した第1の実施形態のソケットを、右上腕切断患者(40代男性)の装飾義手に適用した。本患者は、断端の創部が瘢痕形成しており、頚椎症に伴う頚部痛や左肩痛も認められた。そこで、義手用ソケットを本発明の第1の実施形態のソケットに変更したところ、本患者は、頚部痛や左肩痛が軽減し、皮膚障害も改善された。その結果、本患者は就労が可能となった。
0046
(第2実施例) 前述した第1の実施形態のソケットを、右上腕切断の患者(20代男性)の作業義手に適用した。本患者は、右の腕神経叢損傷により右上肢完全麻痺であった。この患者は、本発明の第1の実施形態のソケットを、問題なく脱着することができ、装着後も、断端部に水泡形成や循環障害に伴う色素沈着などの皮膚障害の発生は認められなかった。
0047
また、本患者は、断端が成熟過程にあり、3週間で断端周径が1cm以上変化した。このような場合、既存の義手用ソケットでは再作製が必要となるが、本発明の第1の実施形態のソケットは、再作製せずにそのまま使用を継続することができた。
0048
(第3実施例) 前述した第1の実施形態のソケットを、左上腕切断の患者(30代男性)の筋電義手に適用した。本患者は、短断端であり、頚部痛や右肩痛が認められた。この患者の場合、従来のソケットを使用するとハーネスが必要となるが、本発明の第1の実施形態のソケットを用いることでハーネスが不要となり、右肩への負荷を軽減することができた。その結果、本患者は頚部痛や右肩痛が改善された。
0049
また、アウターソケットの内側に2対の電極を取り付け、三角筋、大胸筋及び棘下筋などの筋電位を検出したところ、良好に感知することができた。
0050
(第4実施例) 前述した第1の実施形態のソケットを、左上腕切断患者(70代男性)の装飾義手に適用した。本患者は、上腕部の悪性軟部腫瘍による切断であったため、通常は残存するソケット近位の筋(上腕二頭筋)が切除されていた。この患者は、近位部の周径が小さいため、従来の義手用ソケットではゆるみや摩擦が生じ、これが皮膚障害の原因になると考えられた。
0051
このため、本患者には、最初から義手用ソケットに本発明の第1の実施形態のソケットを適用した。その結果、この患者は、皮膚トラブルの発生もなく、長期間に亘って良好な状態で義手を使用することができた。これは、本発明の第1の実施形態のソケットが断端の形状に追随して変形可能であるため、ゆるみや摩擦が生じにくかったためと考えられる。
実施例
0052
以上の結果から、本発明のソケットを用いることにより、装着が容易でかつ抜けにくく、二次的障害も予防することが可能な上腕義手を実現できることが確認された。
0053
1,11インナーソケット、1a,11aスリット、2,21アウターソケット、3樹脂製ベルト、10ソケット、20肘継手、30前腕支持部、40 手先具