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技術 胎盤を構成する細胞への分化能を有する哺乳動物の未分化前駆細胞及びその製造方法

出願人 国立大学法人東北大学
発明者 岡江寛明有馬隆博
出願日 2016年3月10日 (2年9ヶ月経過) 出願番号 2017-505404
公開日 2017年8月3日 (1年4ヶ月経過) 公開番号 WO2016-143866
状態 特許登録済
技術分野 微生物、その培養処理
主要キーワード M機器 未分化能 食肉類 未分化前駆細胞 用磁石 ELF ROCK阻害剤 中和液
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年8月3日)のものです。
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図面 (14)

課題・解決手段

本発明が解決すべき課題は、胎盤を構成する細胞への分化能を有する哺乳動物未分化前駆細胞であって、未分化の状態を維持したまま継代培養することができるものを提供することである。本発明は胎盤を構成する細胞への分化能を有する哺乳動物の未分化前駆細胞であって、ZNF750及びELF5が共に陽性である、細胞を提供する。

概要

背景

胎盤組織は、栄養膜組織トロホブラスト)が主要な構成成分である。栄養膜細胞における分化制御機構解明には栄養膜幹細胞(TS細胞)が非常に有益であると考えられる。しかし、そのようなTS細胞は樹立されていない。

本発明者らはヒトTS細胞を分離し、これを報告している(非特許文献1)。しかし、ヒトTS細胞を分離(初代培養)することはできたものの、これを継代培養すると胎盤を構成する細胞に分化してしまい、未分化の状態を維持することができなかった。従って、係るTS細胞を株化することができていなかった。分化制御機構の解明等のための試験には、株化したTS細胞が非常に有用であるため、その開発が所望されている。

また、本発明者ら以外でも胎盤組織中の未分化な細胞の探索と分離は試みられている。非特許文献2では栄養膜細胞へ分化する前駆細胞(TBPC)が記載されている。この中で、胎盤組織中にOct4を発現する細胞の存在が確認されているとともに、胎盤組織から得た細胞懸濁液をFGF2およびSB431542を含む培地で培養することを経て得られたTBPCはOct4およびZO-1を発現する。しかしながら当該TBPCは8-10回の継代後は分化してしまうと記載されており、この点ではTBPCは未分化状態を維持できる細胞株ということはできない。トリプシン処理によって継代可能な細胞株が得られることも記載されているが、この処理で得られる細胞は前述のOct4及びZO-1は発現していないこともまた記載されていることから、この処理で得られる細胞が当該TBPCと同様の細胞と表現できるかについては議論のある結果と言える。特にZO-1は上皮マーカーであるため、胎盤組織中の前駆細胞である細胞性栄養膜細胞(CT細胞)に由来する細胞株の場合は、CT細胞が上皮系細胞であることからもZO-1が発現していると推察されるため、TBPCは上皮系の細胞ではないことが予想される。加えて細胞形態の観点から、例えば非特許文献2の図2に示される通り、上皮系の細胞であれば観察される隣接細胞間の接着が見られないことからも、TBPCが非上皮系の細胞に由来するものであることが示唆される。胎盤由来の未分化状態の細胞(幹細胞又は前駆細胞と表現されるものを含む)を記載する文献では、同様に当該細胞がOct4を発現していることをもって特徴づけている(たとえば特許文献1、2)。

非特許文献3では、ELF5がヒト胎盤栄養膜細胞で発現し、妊娠初期であるほど高発現であることに注目するとより初期胎盤段階のTS細胞株を得るのに資するとの記載を含む。但し、この文献はTS細胞株取得に向けては、高増殖性で、ELF5およびCDX2が二重陽性のCT細胞を得ることが有望であると記載している。ちなみに、非特許文献2のTBPC細胞は、ELF5は発現していないことが記載されている。

このようにさまざまなTS細胞株取得の試みはなされているが、候補となる細胞のマーカー発現、その分化を観察した結果等を記載するに留まり、TS細胞株はいまだ樹立されていない。

概要

本発明が解決すべき課題は、胎盤を構成する細胞への分化能を有する哺乳動物未分化前駆細胞であって、未分化の状態を維持したまま継代培養することができるものを提供することである。本発明は胎盤を構成する細胞への分化能を有する哺乳動物の未分化前駆細胞であって、ZNF750及びELF5が共に陽性である、細胞を提供する。

目的

本発明が解決すべき課題は、胎盤を構成する細胞への分化能を有する哺乳動物の未分化前駆細胞であって、未分化の状態を維持したまま継代培養することができるものを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

胎盤を構成する細胞への分化能を有する哺乳動物未分化前駆細胞であって、ZNF750及びELF5が共に陽性である、細胞。

請求項2

CDX2が陰性である、請求項1に記載の細胞。

請求項3

Oct4及び/又はNanogが陰性である、請求項1又は2に記載の細胞。

請求項4

CD49fが陽性である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞。

請求項5

霊長類の細胞である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞。

請求項6

胎盤を構成する細胞が、合胞体栄養膜細胞又は絨毛外栄養膜細胞である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の細胞。

請求項7

継代培養後も未分化の状態が維持されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞。

請求項8

以下の工程を含む、胎盤を構成する細胞への分化能を有する哺乳動物の未分化前駆細胞の製造方法:(1)哺乳動物の胎盤組織から得た細胞懸濁液から、CD49f抗体陽性細胞回収する工程;(2)上記工程(1)により得られた細胞懸濁液を、成長因子およびROCK阻害剤を含む培地で培養する工程。

請求項9

成長因子がEGFであり、かつROCK阻害剤がtrans-N-(4-ピリジル)-4-(1-アミノエチル)-シクロヘキサンカルボキサミド又はその塩である、請求項8に記載の方法。

請求項10

上記工程(2)において培地が、さらに4-[4-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-5-(2-ピリジル)-1H-イミダゾール-2-イル]ベンズアミド又はその塩および6-[[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(4-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]ニコチノニトリルを含む、請求項8又は9に記載の方法。

請求項11

請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法により得られる、胎盤を構成する細胞への分化能を有する哺乳動物の未分化前駆細胞。

技術分野

0001

本発明は、胎盤を構成する細胞への分化能を有する哺乳動物未分化前駆細胞及びその製造方法に関する。

背景技術

0002

胎盤組織は、栄養膜組織トロホブラスト)が主要な構成成分である。栄養膜細胞における分化制御機構解明には栄養膜幹細胞(TS細胞)が非常に有益であると考えられる。しかし、そのようなTS細胞は樹立されていない。

0003

本発明者らはヒトTS細胞を分離し、これを報告している(非特許文献1)。しかし、ヒトTS細胞を分離(初代培養)することはできたものの、これを継代培養すると胎盤を構成する細胞に分化してしまい、未分化の状態を維持することができなかった。従って、係るTS細胞を株化することができていなかった。分化制御機構の解明等のための試験には、株化したTS細胞が非常に有用であるため、その開発が所望されている。

0004

また、本発明者ら以外でも胎盤組織中の未分化な細胞の探索と分離は試みられている。非特許文献2では栄養膜細胞へ分化する前駆細胞(TBPC)が記載されている。この中で、胎盤組織中にOct4を発現する細胞の存在が確認されているとともに、胎盤組織から得た細胞懸濁液をFGF2およびSB431542を含む培地で培養することを経て得られたTBPCはOct4およびZO-1を発現する。しかしながら当該TBPCは8-10回の継代後は分化してしまうと記載されており、この点ではTBPCは未分化状態を維持できる細胞株ということはできない。トリプシン処理によって継代可能な細胞株が得られることも記載されているが、この処理で得られる細胞は前述のOct4及びZO-1は発現していないこともまた記載されていることから、この処理で得られる細胞が当該TBPCと同様の細胞と表現できるかについては議論のある結果と言える。特にZO-1は上皮マーカーであるため、胎盤組織中の前駆細胞である細胞性栄養膜細胞(CT細胞)に由来する細胞株の場合は、CT細胞が上皮系細胞であることからもZO-1が発現していると推察されるため、TBPCは上皮系の細胞ではないことが予想される。加えて細胞形態の観点から、例えば非特許文献2の図2に示される通り、上皮系の細胞であれば観察される隣接細胞間の接着が見られないことからも、TBPCが非上皮系の細胞に由来するものであることが示唆される。胎盤由来の未分化状態の細胞(幹細胞又は前駆細胞と表現されるものを含む)を記載する文献では、同様に当該細胞がOct4を発現していることをもって特徴づけている(たとえば特許文献1、2)。

0005

非特許文献3では、ELF5がヒト胎盤栄養膜細胞で発現し、妊娠初期であるほど高発現であることに注目するとより初期胎盤段階のTS細胞株を得るのに資するとの記載を含む。但し、この文献はTS細胞株取得に向けては、高増殖性で、ELF5およびCDX2が二重陽性のCT細胞を得ることが有望であると記載している。ちなみに、非特許文献2のTBPC細胞は、ELF5は発現していないことが記載されている。

0006

このようにさまざまなTS細胞株取得の試みはなされているが、候補となる細胞のマーカー発現、その分化を観察した結果等を記載するに留まり、TS細胞株はいまだ樹立されていない。

0007

特開2005-151907
特表2004-529621

先行技術

0008

ほか(2005)日本産科婦人科學會雜誌 57,755
Genbacev et al (2011) Stem Cells 29, 1427-1436.
Hembergr et al (2010) Hum Mol Genet 19, 2456-2467.

発明が解決しようとする課題

0009

本発明が解決すべき課題は、胎盤を構成する細胞への分化能を有する哺乳動物の未分化前駆細胞であって、未分化の状態を維持したまま継代培養することができるものを提供することである。

課題を解決するための手段

0010

かかる状況の下、本発明者らは鋭意研究した結果、哺乳動物の胎盤組織から得た細胞懸濁液に対し所定の処理をすることにより、未分化の状態を維持したまま継代培養することのできる未分化前駆細胞を得ることができることを見出した。そして、本発明者らは、かかる未分化前駆細胞の遺伝子発現解析したところ遺伝子ZNF750及びELF5が共に陽性であるという、従来の報告されていない特徴を見出したほか、従来報告されているマーカー遺伝子発現パターンとは一致しない特徴があることも明らかにした。本発明はかかる新規の知見に基づくものである。

0011

従って、本発明は、以下の項を提供する:
項1.胎盤を構成する細胞への分化能を有する哺乳動物の未分化前駆細胞であって、ZNF750及びELF5が共に陽性である、細胞。

0012

項2.CDX2が陰性である、項1に記載の細胞。

0013

項3.Oct4及び/又はNanogが陰性である、項1又は2に記載の細胞。

0014

項4.CD49fが陽性である、項1〜3のいずれか1項に記載の細胞。

0015

項5.霊長類の細胞である、項1〜4のいずれか1項に記載の細胞。

0016

項6.胎盤を構成する細胞が、合胞体栄養膜細胞又は絨毛外栄養膜細胞である、項1〜5のいずれか1項に記載の細胞。

0017

項7.継代培養後も未分化の状態が維持されている、項1〜6のいずれか1項に記載の細胞。

0018

項8.以下の工程を含む、胎盤を構成する細胞への分化能を有する哺乳動物の未分化前駆細胞の製造方法:
(1)哺乳動物の胎盤組織から得た細胞懸濁液から、CD49f抗体陽性細胞回収する工程;
(2)上記工程(1)により得られた細胞懸濁液を、成長因子およびROCK阻害剤を含む培地で培養する工程。

0019

項9.成長因子がEGFであり、かつROCK阻害剤がtrans-N-(4-ピリジル)-4-(1-アミノエチル)-シクロヘキサンカルボキサミド又はその塩である、項8に記載の方法。

0020

項10.上記工程(2)において培地が、さらに4-[4-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-5-(2-ピリジル)-1H-イミダゾール-2-イル]ベンズアミド又はその塩および6-[[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(4-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]ニコチノニトリルを含む、項8又は9に記載の方法。

0021

項11.項8〜10のいずれか1項に記載の方法により得られる、胎盤を構成する細胞への分化能を有する哺乳動物の未分化前駆細胞。

発明の効果

0022

本発明にかかる未分化前駆細胞は、未分化の状態を維持したまま継代培養することができ、かつ所定の条件では胎盤を構成する細胞への分化能も示すという特徴を有する。従って、胎盤を構成する細胞における分化制御機構を解明するための試験に非常に有用である。

図面の簡単な説明

0023

実施例の、[2]で得られたCS細胞の顕微鏡写真を示す。
実施例の、[3]で測定した遺伝子発現のグラフを示す。
実施例の、[4]で分化誘導した細胞の顕微鏡写真を示す。
実施例の、[5]で測定した遺伝子発現のグラフを示す。
実施例の、[6]で測定したCS細胞とES細胞との遺伝子発現のグラフを示す。
ZNF750の塩基配列を示す。
ELF5の塩基配列を示す。
CDX2の塩基配列を示す。
Oct4の塩基配列を示す。
Nanogの塩基配列を示す。
CD45の塩基配列を示す。
CD49fの塩基配列を示す。
CD49fの塩基配列を示す。

0024

未分化前駆細胞
本発明は、胎盤を構成する細胞への分化能を有する哺乳動物の未分化前駆細胞であって、ZNF750及びELF5が共に陽性である、細胞を提供する。

0025

本発明において、「胎盤を構成する細胞」としては、例えば、合胞体栄養膜(ST)細胞、絨毛外栄養膜(EVT)細胞等が挙げられる。本発明の未分化前駆細胞は、胎盤を構成するこれらの細胞への分化能を有する。

0026

また、本明細書において、CT細胞とは、胎盤組織中の前駆細胞である細胞性栄養膜細胞を意味する。CT細胞は、TS細胞(栄養膜幹細胞)を包含する概念である。また、本明細書において、CS細胞とは、CT細胞から誘導される細胞であって一定条件下での継代培養後も未分化状態が維持されるような細胞を示す。

0027

本願明細書において、ある遺伝子が陽性であるとは、当該遺伝子が発現していることを意味する。より具体的には、例えば、本発明において、ある遺伝子のRNAが細胞当たり1コピー以上存在する場合に当該遺伝子を陽性とし、細胞当たり1コピー未満の場合、陰性とすることができる。遺伝子の発現レベルは、常套的方法により測定すればよい。発現レベルの測定方法としては、次世代シークエンサを用いた方法、PCR法(Q-PCR法等)などが挙げられるが、なかでも次世代シークエンサを用いた方法が好適である。例えば、ある遺伝子についてRPKM値(per kilobase of exon per million mapped sequence reads)が1以上の場合に陽性とし、RPKM値が1未満の場合に陰性とすることができる。RPKM値は次世代シークエンサを用いて得ることができる値であり、転写物tのRPKMは下記の式で求めることができる:
RPKM=109×Xt/(ltN)
[式中、Xtは転写物tにマッピングされたショートリードの本数を示す。ltは転写物tの長さ(bp)を示す。Nはマッピングされたショートリードの総数を示す]。

0028

哺乳動物としては、例えば、霊長類、げっ歯類食肉類、等が挙げられ、好ましくは霊長類である。また、霊長類としては、例えば、ヒト、チンパンジーアカゲザルマーモセット等が挙げられ、好ましくはヒトである。本発明の未分化前駆細胞はこれらの哺乳動物の細胞に由来し、好ましくは、胎盤を構成する細胞に由来する。

0029

本発明の未分化前駆細胞は、ZNF750及びELF5の遺伝子発現が陽性であることを特徴とする。ここで、ZNF750としては、GenBankアクセッション番号BC109037で示されるもの(配列番号1)が挙げられる。また、ELF5としては、GenBankアクセッション番号AK075197で示されるもの(配列番号2)が挙げられる。これらの塩基配列を図6及び7に示す。

0030

また、本発明の未分化前駆細胞のうち、CDX2の遺伝子発現が陰性であるものが好ましい。ここで、CDX2としては、GenBankアクセッション番号BC014461で示されるもの(配列番号3)が挙げられる。その塩基配列を図8に示す。また本発明者らが従来分離したTS細胞は、CDX2陽性であった。従って、本発明のうち、CDX2遺伝子発現が陰性である未分化前駆細胞は、この点からも従来のものと異なることは明らかであり、またかかる細胞が未分化能を維持することも従来の知見から予想し得ることではない。

0031

さらに、本発明の未分化前駆細胞においては、Oct4及びNanogの少なくとも一方が陰性であることが好ましく、これらの両方が陰性であることがより好ましい。Oct4は未分化マーカーとして知られているものであり、GenBankアクセッション番号Z11898で示されるもの(配列番号4)が挙げられる。Nanogも未分化マーカーとして知られており、GenBankアクセッション番号AB093576で示されるもの(配列番号5)が挙げられる。これらの塩基配列を図9及び10に示す。尚、さらに、本発明の未分化前駆細胞においては、CD49fが陽性であることが好ましい。また、本発明の未分化前駆細胞は、CD45が陰性であってもよい。CD45としては、GenBankアクセッション番号AY567999で示されるもの(配列番号6)が挙げられる。CD49fとしては、GenBankアクセッション番号AB208842で示されるもの(配列番号7)が挙げられる。これらの塩基配列を図11及び12に示す。

0032

本発明の未分化前駆細胞は、継代培養をした後も未分化状態を維持することができるという特徴を有する。本発明の未分化前駆細胞には、少なくとも1回以上(例えば、1〜10回、2〜5回等、または少なくとも8回以上、少なくとも10回以上等)の継代培養後も未分化状態が維持されているものも包含される。また、本発明の未分化前駆細胞には、継代培養後に未分化状態が維持されるという特徴を有しているものであれば、実際に継代培養を経ていないものも包含される。従って、実際には継代培養を経ていない細胞であって、当該細胞を少なくとも1回以上(例えば、1〜10回、2〜5回等、または少なくとも8回以上、少なくとも10回以上等)継代培養した場合に、未分化状態が維持されるものも本発明の未分化前駆細胞に含まれ得る。また、本発明の未分化前駆細胞は、例えば、後述する製造方法により得られたものが包含される。

0033

未分化前駆細胞の製造方法
本発明は、以下の工程を含む、胎盤を構成する細胞への分化能を有する哺乳動物の未分化前駆細胞の製造方法を提供する:
(1)哺乳動物の胎盤組織から得た細胞懸濁液から、CD49f抗体陽性細胞を回収する工程;
(2)上記工程(1)により得られた細胞懸濁液を、成長因子およびROCK阻害剤を含む培地で培養する工程。

0034

哺乳動物の胎盤組織から細胞懸濁液を得る方法は特に限定されず、自体公知機械的及び/又は酵素的処理を適宜使用することができる。例えば、胎盤組織を細かく刻み、任意選択生理食塩水等で洗浄したものを、細胞分散液漬けること等により行うことができる。

0035

細胞分散液としては、蛋白分解酵素液、細胞接着剥離液と呼ばれるものを用いてもよい。また、細胞分散液の具体的な例としては、製品名Accumax、TrypLE等で市販されているものが挙げられる。これらの細胞分散液は1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。上記細胞分散液に対し、赤血球を除去する工程を施してもよい。赤血球を除去する方法としては、ポリビニルピロリドンでコートされたケイ酸コロイド粒子(Percoll(登録商標)として市販されているもの等)での処理等が挙げられる。

0036

次に、上記細胞懸濁液からCD49f抗体陽性細胞を回収する。CD49f抗体陽性細胞の回収方法としては、自体公知の方法に準じて行うことができる。

0037

本発明においては、CD49f抗体陽性細胞の回収工程の後又は前に、CD45抗体陽性細胞を除去する工程を行ってもよい。としては、CD45抗体陽性細胞の除去も、自体公知の方法に準じて行うことができる。

0038

本発明においては、CD49f抗体陽性細胞の回収工程を経た細胞懸濁液を、成長因子およびROCK阻害剤を含む培地で培養する。当該培養工程により、本発明の細胞の特徴である、経代培養後も未分化状態が維持されるという性質を獲得する。

0039

本工程に用いる培地としては、特に限定されないが、例えば、製品名DMEMMEM、RPMI1640等を挙げることができる。当該培地には、血清、成長因子、ピルビン酸塩アミノ酸抗生物質等を適宜添加することができる。

0040

培養温度は特に限定されないが、例えば、32〜40℃、好ましくは36〜38℃の範囲で適宜設定できる。培養時間は特に限定されないが、例えば、12〜240時間、好ましくは48〜96時間の範囲で適宜設定できる。

0041

成長因子としては、特に限定されないが、例えば、上皮成長因子(EGF)、インスリントランスフォーミング成長因子(TGF)等が挙げられる。培地への成長因子の添加量は特に限定されないが、例えば、0.1〜1000ng/ml、好ましくは10〜100ng/mlの範囲で適宜設定できる。

0042

またROCK(Rho結合キナーゼ阻害剤としては、特に限定されないが、例えば、trans-N-(4-ピリジル)-4-(1-アミノエチル)-シクロヘキサンカルボキサミド、1−(5−イソキノリニルスルホニルホモピペラジン(1-(5-Isoquinolinylsulfonyl)homopiperazine)またはこれらの塩等が挙げられる。

0043

trans-N-(4-ピリジル)-4-(1-アミノエチル)-シクロヘキサンカルボキサミド又はその塩の市販品としては、和光純薬より商品名Y27632として販売されている(R)-(+)- trans-N-(4-ピリジル)-4-(1-アミノエチル)-シクロヘキサンカルボキサミド((R)-(+)- trans-N-(4-pyridyl)-4-(1-aminoethyl)-cyclohexanecarboxamide)の二塩酸塩((R)-(+)- trans-N-(4-pyridyl)-4-(1-aminoethyl)-cyclohexanecarboxamide・2HCl・H2O)等が挙げられる。培地へのROCK阻害剤の添加量は特に限定されないが、例えば、0.1〜50μM、好ましくは1〜10μMの範囲で適宜設定できる。

0044

また、上記培養工程において、培地に、さらに4-[4-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-5-(2-ピリジル)-1H-イミダゾール-2-イル]ベンズアミド又はその塩、および/又は6-[[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(4-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]ニコチノニトリルを添加してもよい。
4-[4-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-5-(2-ピリジル)-1H-イミダゾール-2-イル]ベンズアミド又はその塩の市販品としては、商品名SB431542として販売されているもの等があげられる。また、6-[[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(4-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]ニコチノニトリルの市販品としては、商品名CHIR99021として販売されているもの等が挙げられる。

0045

実施例
[1]ヒト胎盤からのCT細胞の単離
まず下記試薬及び手法によりヒト胎盤からCT細胞を単離した:
[試薬類]
・Accumax(Innovative cell technology,製品番号:AM105)
・TrypLE(Life technology, 製品番号:12605036)
・DMEM(Life technology, 製品番号:11995-065)
・血清(Life technology, 製品番号:16141-079)
PBS(Wako, 製品番号:166-23555)
・抗CD49f-PE抗体(MACS, 製品番号:130-100-096)
・PE Selection Kit(EasySep, 製品番号:ST-18551)
細胞分離用磁石(EasySep, 製品番号:ST-18000)
・細胞分散液:AccumaxとTrypLEを1:1で混合
中和液: 10%ウシ血清を含むDMEM
・PBS-EDTA:1 mM EDTAおよび2%ウシ血清を含むPBS

0046

[手法]
1.ヒト胎盤(5〜15週)を細かく刻み、生理食塩水で2-3回洗う
2.細胞分散液20 mlを添加する
3. 37℃で20分間振とうする
4.中和液5 mlを加える
5. 400 gで3分遠心し、上清を除去する
6. 中和液5 mlを加え、ピペットで分散させる
7. 70μmフィルターを通し、分散した細胞を回収する
8. 3-7の操作を2回(計3回)繰り返す
9. 回収した細胞を1本のチューブにまとめ、400 gで3分遠心し、上清を除去する
10.PBS-EDTAを1 x 108細胞/mlとなるように加える
11. 抗CD49f-PE抗体を1 x 108細胞につき100μl加える
12. PE selection cocktailを1 x 108細胞につき100μl加える
13. Magnetic particleを1 x 108細胞につき50μl加える
14. PBS-EDTAを加えて液量を5 mlとする
15.細胞分離用磁石を用い、細胞を回収する
16. 14-15の操作を2回(計3回)繰り返す
17. CD49f陽性細胞(純度90-95%)が106-107細胞得られる。
上記手法により得られたCD49f陽性細胞を以下の実施例においてCT細胞と示す。

0047

[2]CS細胞株の樹立・培養方法
上記[1]で得られたCT細胞を用い、下記の試薬及び手法によってCS細胞株を樹立、培養した:
[試薬類]
・DMEM(Life technology,製品番号:11995-065)
・血清(Life technology, 製品番号:16141-079)
・NEAA(Life technology, 製品番号:11140-050)
・Sodium pyruvate(Life technology, 製品番号:11360-070)
・2-Mercaptoethanol(Life technology, 製品番号:21985-023)
・PBS(Wako, 製品番号:166-23555)
・TrypLE(Life technology, 製品番号:12605036)
・EGF(Wako, 製品番号:053-07871)
・Y27632(Wako, 製品番号:253-00513)
・CHIR99021(Wako, 製品番号:039-20831)
・SB435142 (Wako, 製品番号:194-15521)
・35 mmディッシュ(Nunc, 製品番号:153066)。

0048

[増殖培地の作製]
1. 以下を混合し、基礎培地を作製する(1 L用)
DMEM800 ml
血清200 ml
NEAA 10 ml
Sodium pyruvate 10 ml
2-Mercaptoethanol 1.8 ml
2.使用直前に、EGF(終濃度:100 ng/ml)、Y27632(終濃度:5μM)、SB431542(終濃度:5μM)、CHIR99021(終濃度:3μM)を基礎培地に加え、増殖培地として使用する。

0049

[手法]
1. 単離したCT細胞に、増殖培地を5 x 105細胞/mlとなるように加える
2. 35 mmディッシュに細胞懸濁液2 mlを加え、インキュベーター(37℃, 5 % CO2)で培養する
3. 2日毎に培地交換を行い、細胞が70〜80%コンフルエントになるまで培養する
4.プレートをPBSで洗い、1 mlのTrypLEを加えて、37℃で10分静置する
5. 増殖培地5 mlを加える
6. 400 gで3分遠心し、上清を除去する
7. 増殖培地6 mlを加え(3倍希釈)、ピペッティングにより細胞を分散させる
8. 35 mmディッシュに細胞懸濁液を2 mlずつ加え、培養を続ける。

0050

上記で得られたCS細胞を11代、55日間継代培養した細胞の顕微鏡写真(顕微鏡(KEYENCE,製品番号:BZ-X710))を図1に示す。[4]で後述する多核化した分化細胞であるST細胞とは形態が全く異なることが分かる。

0051

[3]遺伝子発現のリアルタイムPCR測定
前記[1]で単離したCT細胞、上記[2]に記載の方法で得、継代培養したCS細胞及び前記[1]記載の方法においてCT単離に使用したヒト胎盤(8週)について、ELF5、HLA-G及びCGBの発現量を下記に記載の試薬、機器を用い、下記方法に従いリアルタイムPCRにより測定した。
[試薬・機器類]
・PrimeScriptTMII 1st strandcDNASynthesis Kit(Takara,製品番号:6210A)
サーマルサイクラーTProfessional(BM機器, 製品番号:070-000)
・SYBR(R) Premix Ex TaqTM II(Takara, 製品番号:RR820S)
・StepOnePlusTMリアルタイムPCRシステム(Life technology, 製品番号:StepOnePlus-01)
プライマー(下表)

0052

0053

[方法]
1. RNeasy mini kitを用いて、細胞よりRNAを抽出・精製する
2.アニーリング反応液を以下のように調製する
Oligo dT (50μM) 0.5μl
dNTPs (10 mM) 0.5μl
精製RNA (1μg/ml) 1μl
H2O 3μl
3.サーマルサイクラーを用い、65℃で5分アニーリング反応を行う
4. 上記液に以下を加える
5 × PrimeScriptTM Buffer 2μl
PrimeScriptTM Reverse Transcriptase 1μl
RNaseInhibitor 0.5μl
H2O 1.5μl
5. サーマルサイクラーを用い[42℃ 60分 → 95℃ 5分]で逆転写反応を行う
6.リアルタイムPCR用の反応液を以下のように調製する
逆転写反応液(10倍希釈) 2μl
SYBR(R) Premix Ex Taq II 10μl
Forwardプライマー(10μM) 1μl
Reverseプライマー(10μM) 1μl
H2O 6μl
7. リアルタイムPCRシステムを用いて以下の反応を行う
(1)[95℃ 30秒]
(2)[95℃ 5秒 → 62℃ 30秒]を40サイクル

0054

結果を図2に示す。図2から明らかなように、上記[2]で得られたCS細胞株は、HLA-G及びCGBといった分化マーカーが発現していないことを含め、CT細胞と同様のマーカー発現プロファイルを示した。このことはCS細胞株がCT細胞の特徴および機能を維持したまま株化できていることを示している。また、図1の写真からも明らかなように、CS細胞株は継代培養を繰り返した後も未分化の状態が維持されており、上皮系由来である場合に観察される隣接細胞間の接着も観察された。

0055

[4]CT細胞株の分化誘導方法
[2]で得られたCS細胞に対し、以下の試薬及び方法により、分化誘導を行った:
[試薬類]
・DMEM(Life technology,製品番号:11995-065)
・血清(Life technology, 製品番号:16141-079)
・NEAA(Life technology, 製品番号:11140-050)
・Sodium pyruvate(Life technology, 製品番号:11360-070)
・2-Mercaptoethanol(Life technology, 製品番号:21985-023)
・Y27632(Wako, 製品番号:253-00513)
・Forskolin(Wako, 製品番号:067-02191)
・35 mmディッシュ(Nunc, 製品番号:153066)。

0056

[分化培地の作製]
1. 以下を混合し、基礎培地を作製する(1 L用)。

0057

DMEM800 ml
血清200 ml
NEAA 10 ml
Sodium pyruvate 10 ml
2-Mercaptoethanol 1.8 ml
2.EVT分化誘導には、使用直前にY27632(終濃度:5 μM)を基礎培地に加え、EVT分化培地として使用する
3. ST分化誘導には、使用直前にY27632(終濃度:5μM)およびForskolin(終濃度:1μM)を基礎培地に加え、ST分化培地として使用する。

0058

[手法]
1.増殖培地で培養しているCT細胞より、培地を吸引除去する
2.プレートをPBSで洗う
3.分化培地2 mlを加え、5日間培養する。

0059

分化誘導した細胞の顕微鏡写真(顕微鏡(KEYENCE,製品番号:BZ-X710))を図3に示す。図3から明らかなように、[2]で得られたCS細胞は、STへの分化能も、EVTへの分化能も有している。

0060

[5]CS細胞の未分化維持と分化能
前記[3]でリアルタイムPCR測定したCS細胞、前記[2]で得られたヒトCS細胞を[4]でY27632及びForskolinの存在下で培養したもの(分化(ST))、前記[2]で得られたヒトCS細胞を[4]でY27632の存在下で培養したもの(分化(EVT))、及び前記[1]記載の方法においてCT単離に使用したヒト胎盤(8週)について、ELF5、HLA-G及びCGBの発現量をリアルタイムPCRにより測定した。測定方法は、前記[3]に記載の方法に準じて行った。結果を図4に示す。

0061

図4から明らかなように、CS細胞はHLA-G及びCGBといった分化マーカーが発現していないのに対し、分化(ST)は、分化マーカであるCGBが発現しており、分化(EVT)は、分化マーカであるHLA-Gが発現している。従って、遺伝子発現の点からも、[2]で得られたCS細胞が分化能を有していることが分かる。
[6]CS細胞とES細胞の発現比較
前記[2]で得られたCS細胞及びES細胞(H1株)について、下記試薬、機器及び方法で遺伝子の発現解析を行いRPKM値を算出した:
遺伝子の発現解析方法
[試薬・機器類]
・RNeasy mini kit(Qiagen,製品番号:74104)
・TruSeq RNA Sample Prep Kit(Illumina, 製品番号:RS-122-2001)
・次世代シークエンサー(IlluminaのHiSeq2500を使用)
・次世代シークエンサー解析ソフトStrand NGS(Digital Biology)。

0062

[手法]
1. RNeasy mini kitを用いて、細胞よりRNAを抽出・精製する
2. TruSeq RNA Sample Prep Kitを用い次世代シークエンサー用ライブラリーを作製する
3. 次世代シークエンサーを用い、シークエンス解析を行う
4. 次世代シークエンサー解析ソフトStrand NGSを用い、遺伝子の発現量(RPKM値:Readsper million mapped reads)を計算する。

実施例

0063

結果を図5に示す。図5から明らかなように、CS細胞は、ZNF750及びELF5が共に陽性である。ES細胞とも異なる細胞であることも明らか(互いに区別できる)となった。また、本発明の細胞はELF5が高発現である一方でCDX2はほとんど発現していないこと、また多くの文献で記載されてきたOct4の発現については驚くべきことにほとんど発現していないこと、という従来報告されてきた細胞とは異なる独自の特徴があることが明らかになった。

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