図面 (/)

技術 抗体結合蛍光体集積ナノ粒子、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の製造方法および免疫染色キット

出願人 コニカミノルタ株式会社
発明者 高橋優相宮拓司
出願日 2016年2月2日 (5年9ヶ月経過) 出願番号 2016-574744
公開日 2017年11月24日 (3年11ヶ月経過) 公開番号 WO2016-129444
状態 特許登録済
技術分野 生物学的材料の調査,分析
主要キーワード 視野一杯 アボガドロ定数 遷移態様 蓄光物質 還元対象 粒子観察 ポリスチレンナノ粒子 染色対象
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年11月24日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (6)

課題・解決手段

[課題]本発明は、分子凝集による免疫染色の染色効率低下を抑制することができる抗体結合蛍光体集積ナノ粒子、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の製造方法および免疫染色試薬キットの提供を課題とする。[解決手段]抗体と蛍光体集積ナノ粒子とが、当該抗体のジスルフィド結合(−S−S−)を還元することによって生成したSH基と、当該蛍光体集積ナノ粒子の表面にある結合基との反応によって結合している、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子であって、2−イミノチオランを使用してジスルフィド結合をSH基に還元したストレプトアビジンが、前記蛍光体集積ナノ粒子の表面の単位面積内にある所定数の結合基に対して結合しうる数をnモルと表した場合、前記抗体が前記所定数の結合基に対して結合している数が2nモル以上である、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子とする。

概要

背景

従来、医学診断の1つとして病理診断が行なわれている。病理医人体から採取した組織片に対して行った生体検査の結果を示すデータから病気を診断し、治療手術の要不要を臨床医に伝える。患者の状態と病理診断によって、内科医師薬物治療方針外科系の医師は手術を行うか否かを決定する。

前記診断のためのデータを提供するために、臓器摘出針生検によって得た組織検体を厚さ数ミクロン程度に薄切して組織切片組織標本)を作成し、組織切片に対して所定の染色処理を行った後、様々な所見を得るために光学顕微鏡蛍光顕微鏡を用いて観察することが広く行われている。多くの場合、組織切片は、採取した組織を固定するため脱水し、パラフィンブロック化した後、数μmの厚さに薄切りし、パラフィンを取り除いて作製される。ここで、組織切片は光を殆ど吸収および散乱せず無色透明に近いため、上記観察に先立って、組織切片の細胞形態を観察するための形態観察染色(ヘマトキシリンおよびエオジンの2つの色素を用いるヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色))が標準的に行われる。他の形態観察染色としては、例えば細胞診用いられるパパニコロウ染色(Pap染色)等が挙げられる。

さらに、被験者が対象疾患に罹患しているか否かを判断するためのデータを提供するために、被験者の組織切片等について免疫染色が行われている。この免疫染色では、例えば、前記罹患の有無によって発現量が増減する生体内分子抗原)に蛍光標識した抗体を特異的に結合させ、蛍光シグナルの量から疾患に関連する抗原の量を定量することが行われる。これにより、被験者が対象の疾患に罹患しているか否かを診断するためのデータが提供される。ここで、蛍光色素粒子に内包または粒子表面に固定して集積したナノ粒子蛍光体集積ナノ粒子)を抗体に直接的または間接的に結合させて抗原を蛍光標識する技術が知られている。

たとえば、特許文献1では、内包する蛍光色素を異ならせることで励起波長および蛍光波長が異なる蛍光物質内包シリカナノ粒子を2種以上調製し、1Mジチオスレイトール(DTT)を用いて1次抗体としての2種以上の抗体(例;抗ER抗体、抗ER2抗体)をそれぞれ還元SH基導入)した後、還元後の各抗体(抗ER抗体、抗ER2抗体)をマレイミド修飾した各蛍光シリカナノ粒子の表面に結合させ、同一切片上で異なる検出タンパク質を同時に染色することが可能としている例が開示されている。

また、特許文献2には、蛍光体集積ナノ粒子が共有結合した1次抗体を組織切片上の抗原に結合させることで前記抗原を蛍光染色する方法(1次抗体法)、組織切片上の抗原に1次抗体を結合させた状態で、蛍光体集積ナノ粒子と共有結合を介して連結された2次抗体を前記1次抗体に結合させて抗原を蛍光染色する方法(2次抗体法)、ビオチン(またはアビジン)を付加した蛍光体集積ナノ粒子と、アビジン(またはビオチン)を付加した2次抗体とをそれぞれ調製し、組織切片上の抗原に対して1次抗体を結合させた後、該1次抗体に対して前記2次抗体を結合させ、さらに、該2次抗体に対してストレプトアビジン−ビオチン結合を介して蛍光体集積ナノ粒子を動的に結合させて前記抗原を蛍光標識する方法(ビオチン−アビジン法)が記載されている。

概要

[課題]本発明は、分子凝集による免疫染色の染色効率低下を抑制することができる抗体結合蛍光体集積ナノ粒子、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の製造方法および免疫染色試薬キットの提供を課題とする。[解決手段]抗体と蛍光体集積ナノ粒子とが、当該抗体のジスルフィド結合(−S−S−)を還元することによって生成したSH基と、当該蛍光体集積ナノ粒子の表面にある結合基との反応によって結合している、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子であって、2−イミノチオランを使用してジスルフィド結合をSH基に還元したストレプトアビジンが、前記蛍光体集積ナノ粒子の表面の単位面積内にある所定数の結合基に対して結合しうる数をnモルと表した場合、前記抗体が前記所定数の結合基に対して結合している数が2nモル以上である、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子とする。

目的

さらに、被験者が対象疾患に罹患しているか否かを判断するためのデータを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
3件
牽制数
2件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

抗体と蛍光体集積ナノ粒子とが、当該抗体のジスルフィド結合(−S−S−)を還元することによって生成したSH基と、当該蛍光体集積ナノ粒子の表面にある結合基との反応によって結合している抗体結合蛍光体集積ナノ粒子であって、2−イミノチオランを使用してジスルフィド結合をSH基に還元したストレプトアビジンが、前記蛍光体集積ナノ粒子の表面の単位面積内にある所定数の結合基に対して結合しうる数をnモルと表した場合、前記抗体が前記所定数の結合基に対して結合している数が2nモル以上である、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子。

請求項2

前記結合基がマレイミド基アルデヒド基またはブロモアセトアミド基からなる群から選択された1種または2種以上である、請求項1に記載の抗体結合蛍光体集積ナノ粒子。

請求項3

前記抗体が、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオールグルタチオン(γ-L-グルタミル-L-システイニルグリシン)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩システイン、2−メルカプトエチルアミンからなる群から選択された1種または2種以上の還元剤によって処理されたものである、請求項1または2に記載の抗体結合蛍光体集積ナノ粒子。

請求項4

前記抗体が免疫染色で用いられる2次抗体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗体結合蛍光体集積ナノ粒子。

請求項5

請求項1〜4のいずれか一項の抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の製造方法であって、SH基の数/抗体数が1以上〜5以下となるように前記抗体のジスルフィド結合部分を還元剤により還元する工程、該還元後の抗体を、結合基を有する蛍光体集積ナノ粒子に結合させる工程を含む、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の製造方法。

請求項6

前記還元に用いられる還元剤が、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グルタチオン(γ-L-グルタミル-L-システイニルグリシン)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩、システイン、2−メルカプトエチルアミンからなる群から選択された1種または2種以上である、請求項5に記載の抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の製造方法。

請求項7

組織切片上の抗原に結合する1次抗体を含む抗体試薬と、請求項4の抗体結合蛍光体集積ナノ粒子を含んだ標識試薬と、を備えた免疫染色試薬キット

請求項8

請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗体結合蛍光体集積ナノ粒子、または請求項7に記載の免疫染色試薬キットを用い、前記抗体結合蛍光体集積ナノ粒子を抗原に固定して蛍光染色する免疫染色反応工程を含む、免疫染色法

請求項9

染色対象病理診断の対象となる疾病に関連する抗原である、請求項8に記載の免疫染色法。

請求項10

前記抗原が2種以上であり、請求項1〜5のいずれか一項に記載の抗体結合蛍光体集積ナノ粒子は、抗体および蛍光波長が異なる2種以上の蛍光体集積ナノ粒子であり、2種以上の抗原を染め分け多重免疫染色に用いられる、請求項8に記載の免疫染色法。

技術分野

0001

本発明は、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の製造方法および免疫染色キットに関する。

背景技術

0002

従来、医学診断の1つとして病理診断が行なわれている。病理医人体から採取した組織片に対して行った生体検査の結果を示すデータから病気を診断し、治療手術の要不要を臨床医に伝える。患者の状態と病理診断によって、内科医師薬物治療方針外科系の医師は手術を行うか否かを決定する。

0003

前記診断のためのデータを提供するために、臓器摘出針生検によって得た組織検体を厚さ数ミクロン程度に薄切して組織切片組織標本)を作成し、組織切片に対して所定の染色処理を行った後、様々な所見を得るために光学顕微鏡蛍光顕微鏡を用いて観察することが広く行われている。多くの場合、組織切片は、採取した組織を固定するため脱水し、パラフィンブロック化した後、数μmの厚さに薄切りし、パラフィンを取り除いて作製される。ここで、組織切片は光を殆ど吸収および散乱せず無色透明に近いため、上記観察に先立って、組織切片の細胞形態を観察するための形態観察染色(ヘマトキシリンおよびエオジンの2つの色素を用いるヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色))が標準的に行われる。他の形態観察染色としては、例えば細胞診用いられるパパニコロウ染色(Pap染色)等が挙げられる。

0004

さらに、被験者が対象疾患に罹患しているか否かを判断するためのデータを提供するために、被験者の組織切片等について免疫染色が行われている。この免疫染色では、例えば、前記罹患の有無によって発現量が増減する生体内分子抗原)に蛍光標識した抗体を特異的に結合させ、蛍光シグナルの量から疾患に関連する抗原の量を定量することが行われる。これにより、被験者が対象の疾患に罹患しているか否かを診断するためのデータが提供される。ここで、蛍光色素粒子に内包または粒子表面に固定して集積したナノ粒子(蛍光体集積ナノ粒子)を抗体に直接的または間接的に結合させて抗原を蛍光標識する技術が知られている。

0005

たとえば、特許文献1では、内包する蛍光色素を異ならせることで励起波長および蛍光波長が異なる蛍光物質内包シリカナノ粒子を2種以上調製し、1Mジチオスレイトール(DTT)を用いて1次抗体としての2種以上の抗体(例;抗ER抗体、抗ER2抗体)をそれぞれ還元SH基導入)した後、還元後の各抗体(抗ER抗体、抗ER2抗体)をマレイミド修飾した各蛍光シリカナノ粒子の表面に結合させ、同一切片上で異なる検出タンパク質を同時に染色することが可能としている例が開示されている。

0006

また、特許文献2には、蛍光体集積ナノ粒子が共有結合した1次抗体を組織切片上の抗原に結合させることで前記抗原を蛍光染色する方法(1次抗体法)、組織切片上の抗原に1次抗体を結合させた状態で、蛍光体集積ナノ粒子と共有結合を介して連結された2次抗体を前記1次抗体に結合させて抗原を蛍光染色する方法(2次抗体法)、ビオチン(またはアビジン)を付加した蛍光体集積ナノ粒子と、アビジン(またはビオチン)を付加した2次抗体とをそれぞれ調製し、組織切片上の抗原に対して1次抗体を結合させた後、該1次抗体に対して前記2次抗体を結合させ、さらに、該2次抗体に対してストレプトアビジン−ビオチン結合を介して蛍光体集積ナノ粒子を動的に結合させて前記抗原を蛍光標識する方法(ビオチン−アビジン法)が記載されている。

先行技術

0007

国際公開2012/029342号
特開2014−174018号公報

発明が解決しようとする課題

0008

ビオチン−アビジン反応による結合は抗原−抗体反応による結合よりも結合力が強いため、ビオチン(またはアビジン)結合蛍光体集積ナノ粒子を利用する特許文献2に記載されたような免疫染色法は、抗体結合蛍光体ナノ粒子を利用する特許文献1に記載されたような免疫染色法よりも染色性に優れている。しかしながら、特許文献2の免疫染色法は、抗原が2種類以上存在し、各抗原を異なる波長の蛍光色素で染め分け多重免疫染色を行う場合、その全ての種類の抗原の免疫染色において用いることはできない。すなわち、抗原の種類に応じて1次抗体と2次抗体とがそれぞれの抗原へ適正に固定されたとしても、2次抗体と蛍光体集積ナノ粒子との間の連結部分に一律にビオチン−アビジン結合を用いると、抗原の種類に対応して互いに異なる蛍光波長の蛍光体集積ナノ粒子を固定するということができず、2種以上の抗原を染め分けることはできない。

0009

そのため、多重免疫染色においては、結合性に優れるビオチン−アビジン結合は、多くとも1種類の抗原の免疫染色だけにしか利用することはできず、他の抗原の免疫染色には、特許文献1に記載されているように、抗体を直接結合させた蛍光体集積ナノ粒子を使用する必要がある。免疫染色法であれば、該抗体が抗原の種類に応じて特異的に結合して抗原の種類別にそれぞれ波長の異なる蛍光体集積ナノ粒子を固定させることができる、各種抗原を染め分けることができる。

0010

しかしながら、特許文献1に記載されているような抗体を直接結合させた蛍光体集積ナノ粒子には、免疫染色の染色効率や蛍光シグナルの強度(つまり感度)に改善の余地があり、また保存中に凝集を生じるなどの問題があった。ここで「感度が低い」とは、同じ蛍光体集積ナノ粒子濃度、反応時間(つまり、同一条件)で反応させて免疫染色しても、輝点数が少なくなるということを意味している。

0011

本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、免疫染色の染色効率を向上させ、分子凝集を抑制することができる抗体結合蛍光体集積ナノ粒子、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の製造方法および免疫染色キットの提供をすることを目的とする。

課題を解決するための手段

0012

本発明者らは、特許文献1の発明において蛍光シグナルが弱く凝集が起こる原因がジチオスレイトール(DTT)を用いて強力に還元していることにあることを見出した。特許文献1の発明のように、DTTを用いて1次抗体を強力に還元すると、1次抗体の分子中に多くのチオール基が生成してしまう。その結果、図3図4に示すように、抗体のSH基と蛍光体集積ナノ粒子の表面にあるマレイミド基との結合が多:多となり、抗体分子中にSH基数が少数(例えば1つだけ)存在する場合に比べると、上記結合で消費されるフリーのマレイミド基の数が多くなって、蛍光体集積ナノ粒子に結合できる抗体数が非常に少なくなる。その上、貯蔵中に、図3に示すように、蛍光体集積ナノ粒子と抗体とが上記結合により巨大化して分子凝集および沈殿を引き起こしやすい。

0013

本発明者らは、抗体分子中のジスルフィド結合(−S−S−)部分を還元する際に、還元の程度を調節することにより抗体1分子中に導入するSH基の数を極力減らすように調節することで、上記凝集(図3参照)が抑えられることを見出して本発明に至った。

0014

すなわち、上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映した抗体結合蛍光体集積ナノ粒子は、抗体と蛍光体集積ナノ粒子とが、当該抗体のジスルフィド結合(−S−S−)を還元することによって生成したSH基と、当該蛍光体集積ナノ粒子の表面にある結合基との反応によって結合している、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子であって、
2−イミノチオランを使用してジスルフィド結合をSH基に還元したストレプトアビジンが、前記蛍光体集積ナノ粒子の表面の単位面積内にある所定数の結合基に対して結合しうる数をnモルと表した場合、
前記抗体が前記所定数の結合基に対して結合している数が2nモル以上である、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子である。

0015

上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映した抗体結合蛍光体集積ナノ粒子を製造する方法は、
SH基の数/抗体数が1以上〜5以下となるように前記抗体のジスルフィド結合部分を還元剤により還元する工程、
該還元後の抗体を、結合基を有する蛍光体集積ナノ粒子に結合させる工程を含む、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の製造方法である。

0016

上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映した免疫染色試薬キットは、組織切片上の抗原に結合する1次抗体を含む抗体試薬と、前記蛍光体集積ナノ粒子を含んだ標識試薬と、を備えた免疫染色試薬キットである。

0017

上述した目的のうち少なくとも一つを実現するための、本発明の一側面を反映した免疫染色法は、上記抗体結合蛍光体集積ナノ粒子、または上記の免疫染色試薬キットを用い、前記抗体結合蛍光体集積ナノ粒子を抗原に固定して蛍光染色する免疫染色反応工程を含む、免疫染色法である。

発明の効果

0018

本発明によれば、免疫染色の効率が向上し、貯蔵中の分子凝集も抑制することができる抗体結合蛍光体集積ナノ粒子、蛍光体集積ナノ粒子の製造方法および免疫染色試薬キットが提供される。また、本発明によれば、抗体が結合した蛍光体集積ナノ粒子の抗体部分を、抗原または該抗原に結合した1次抗体に特異的に結合させて抗原を蛍光染色するものであり、前記抗体部分と結合可能な内因性の他の分子は存在しないことから、免疫染色で得られる輝点として非特異的な輝点の出現を抑えることができるという副次的な効果が得られる(アビジンが結合した蛍光体集積ナノ粒子を用いた場合に生じる、抗原を標識するためのビオチンではなく内因性のビオチンに多少は結合してしまうという問題を回避することが可能である)。

図面の簡単な説明

0019

図1は、本発明に係る抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の一例を示した図である。この抗体結合蛍光体集積ナノ粒子は、例えば、何ら処理していない抗体分子の中に存在するジスルフィド結合(−S−S−)に対して還元処理を施す際に、SH基の数/抗体数が1〜5(図1の例では1)となるように記抗体のジスルフィド結合部分を還元剤により還元し、該還元後の抗体を、結合基(例;マレイミド基)を有する蛍光体集積ナノ粒子に結合させることで得られるものである。
本発明に係る免疫染色法の主な2つの態様を示したものである。図2の左側は、1次抗体法を示している。1次抗体法では、組織切片上の抗原に対して抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の1次抗体部分が直接結合して抗原が蛍光標識される。図2の右側は、2次抗体法を示している。2次抗体法では、組織切片上の抗原に対して1次抗体が結合した後、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の2次抗体部分が1次抗体に結合して抗原が蛍光標識される。
図3は、従来技術に係る抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の分散液中の状態を示した図である。抗体分子のジスルフィド結合(−S−S−)の多くが還元されてSH基に変換されており、1つの抗体分子のSH基が複数の蛍光体集積ナノ粒子の結合基と結合をしてしまうため、抗体分子が架橋剤のように機能して蛍光体集積ナノ粒子が連結され凝集沈降してしまい、凝集した抗体と蛍光体集積ナノ粒子のいずれもが免疫染色に寄与できなくなる。
図4は、図3の一部を表したものであり、結合基がマレイミド基の場合を示している。同一の蛍光体集積ナノ粒子の表面に存在する複数の結合基(例;マレイミド基等)が一つの抗体分子中に存在する複数のSH基に結合すると、本来はSH基とマレイミド基とが1:1でも結合できるところ、2:2で結合している分、結合基のリソースが奪われていることを示している。
図5は、従来のビオチンーアビジン法により2以上の抗原について多重免疫染色を行った場合に生じる問題を説明した図である。図5に示すように、ビオチン−ストレプトアビジン結合を介して2次抗体a、bと蛍光波長の異なる蛍光体集積ナノ粒子A、Bとを結合させようとすると、蛍光体集積ナノ粒子A(またはB)が抗原aにもbにも結合しうるので、抗原の種類別に染め分けることはできない。

0020

以下、本発明に係る抗体結合蛍光体集積ナノ粒子、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の製造方法および免疫染色キットについて、図1図5を参照しながら説明する。

0021

本発明に係る抗体結合蛍光集積ナノ粒子は、抗体と蛍光体集積ナノ粒子とが、当該抗体のジスルフィド結合(−S−S−)を還元することによって生成したSH基と、当該蛍光体集積ナノ粒子の表面にある結合基(例;マレイミド基)との反応によって結合している、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子であって、2−イミノチオランを使用してジスルフィド結合をSH基に還元したストレプトアビジンが、前記蛍光体集積ナノ粒子の表面の単位面積内にある所定数の結合基に対して結合しうる数をnモルと表した場合、前記抗体が前記所定数の結合基に対して結合している数が2nモル以上であるものである。

0022

《蛍光体集積ナノ粒子》
蛍光体集積ナノ粒子は蛍光体を集積したナノメートルオーダーの粒子である。このような蛍光体集積ナノ粒子を用いることで、蛍光体自体と比較して、1粒子当たりの発する蛍光の量、すなわち所定の生体分子標記する輝点の輝度を高めることができる。

0023

[蛍光体]
本明細書において「蛍光体」とは、外部からのX線紫外線または可視光線照射を受けて励起し、励起状態から基底状態に到る過程において光を発光する物質一般を指す。したがって、本発明にいう「蛍光体」は、励起状態から基底状態に戻るときの遷移態様の如何を問うものでなく、励起一重項からの失活に伴う発光である狭義の蛍光を発する物質であってもよいし、三重項からの失活に伴う発光である燐光を発する物質であってもよい。

0024

また、本発明にいう「蛍光体」は、励起光遮断してからの発光寿命によって限定されるものでもない。したがって、硫化亜鉛アルミン酸ストロンチウム等の蓄光物質として知られている物質であってもよい。このような蛍光体は、有機蛍光体(蛍光色素)および無機蛍光体に大別することができる。

0025

[有機蛍光体]
蛍光体としての使用可能な有機蛍光体の例としては、フルオレセイン色素分子ローダミン系色素分子、Alexa Fluor(登録商標インビトロジェン社製)系色素分子、BODIPY(登録商標、インビトロジェン社製)系色素分子、カスケード(登録商標、インビトロジェン社)系色素分子、クマリン系色素分子、NBD(登録商標)系色素分子、ピレン系色素分子、Texas Red(登録商標)系色素分子、シアニン系色素分子、ペリレン系色素分子、オキサジン系色素分子等、有機蛍光色素として知られている物質を挙げることができる。

0026

具体的には、5−カルボキシ−フルオレセイン、6−カルボキシ−フルオレセイン、5,6−ジカルボキシ−フルオレセイン、6−カルボキシ−2’,4,4’,5’,7,7’−ヘキサクロロフルオレセイン、6−カルボキシ−2’,4,7,7’−テトラクロロフルオレセイン、6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン、ナフトフルオレセイン、5−カルボキシ−ローダミン、6−カルボキシ−ローダミン、5,6−ジカルボキシ−ローダミン、ローダミン 6G、テトラメチルローダミン、X−ローダミン、及びAlexa Fluor 350、Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 500、Alexa Fluor 514、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 610、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 635、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700、Alexa Fluor 750、BODIPYFL、BODIPYTMR、BODIPY 493/503、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665(以上インビトロジェン社製)、メトキシクマリン、エオジン、NBD、ピレン、Cy5、Cy5.5、Cy7等を挙げることができる。単独でも複数種を混合したものを用いてもよい。

0027

[無機蛍光体]
蛍光体として使用可能な無機蛍光体の例としては、II−VI族化合物、III−V族化合物、又はIV族元素を成分として含有する量子ドット(それぞれ、「II−VI族量子ドット」、「III−V族量子ドット」、「IV族量子ドット」ともいう。)のいずれかを挙げることができる。単独でも複数種を混合したものを用いてもよい。量子ドットは、市販されているものでもよい。具体的には、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTe、InP、InN、InAs、InGaP、GaP、GaAs、Si、Geが挙げられるが、これらに限定されない。

0028

上記量子ドットをコアとし、その上にシェルを設けた量子ドットを用いることもできる。以下、シェルを有する量子ドットの表記法として、コアがCdSe、シェルがZnSの場合、CdSe/ZnSと表記する。例えば、CdSe/ZnS、CdS/ZnS、InP/ZnS、InGaP/ZnS、Si/SiO2、Si/ZnS、Ge/GeO2、Ge/ZnS等を用いることができるが、これらに限定されない。

0029

量子ドットは必要に応じて、有機ポリマー等により表面処理が施されているものを用いてもよい。例えば、表面カルボキシ基を有するCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)、表面アミノ基を有するCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)等が挙げられる。

0030

《蛍光体集積ナノ粒子の製造方法》
蛍光体集積ナノ粒子自体の製造方法は、特に制限されず、公知の方法により製造することができる。一般的には、樹脂またはシリカ母体として蛍光体をまとめ上げる(当該母体の内部または表面に蛍光体を固定化する)製造方法を用いることができる。

0031

[有機蛍光体の場合]
有機蛍光体を用いた蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、蛍光体である蛍光色素を樹脂からなる母体の内部または表面に固定した、直径がナノメートルオーダーの樹脂粒子を形成させる方法を挙げることができる。この蛍光体集積ナノ粒子の調製方法は特に限定されるものではないが、例えば、蛍光体集積ナノ粒子の母体をなす樹脂(熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂)を合成するための(コ)モノマーを(共)重合させながら、蛍光体を添加し、当該(共)重合体の内部または表面に当該蛍光体を取り込ませる方法を用いることができる。

0032

上記の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレンポリアクリロニトリルポリフラン、または、これに類する樹脂を好適に用いることができる。上記の熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリキシレンポリ乳酸グリシジルメタクリレートポリメラミン、ポリウレア、ポリベンゾグアナミンポリアミドフェノール樹脂多糖類またはこれに類する樹脂を好適に用いることができる。熱硬化性樹脂、特にメラミン樹脂は、キシレン等の有機溶媒を用いる脱水、透徹封入などの処理によっても、色素樹脂に内包させた色素の溶出を抑制することができる点で好ましい。

0033

例えば、有機の蛍光色素(蛍光体)を内包したポリスチレンナノ粒子は、米国特許4326008(1982)に記載されている重合性官能基をもつ有機色素を用いた共重合法や、米国特許5326692(1992)に記載されているポリスチレンナノ粒子への蛍光有機色素含浸法を用いて作製することができ、蛍光体集積ナノ粒子として用いることができる。

0034

一方で、有機蛍光体をシリカからなる母体の内部または表面に固定化したシリカナノ粒子を製造することもできる。そのような製造方法としては、ラングミュア8巻 2921ページ(1992)に記載されているFITC内包シリカナノ粒子の合成方法を参考にすることができる。FITCの代わりに所望の蛍光色素を用いることで種々の蛍光色素を内包したシリカナノ粒子を合成することができ、蛍光体集積ナノ粒子として用いることができる。

0035

[無機蛍光体の場合]
無機蛍光体を用いた蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、蛍光体である量子ドットをシリカからなる母体の内部または表面に固定した、シリカナノ粒子を形成させる方法が挙げられる。この製造方法は、ニュージャーナルオブケミストリー33巻 561ページ(2009)に記載されているCdTe内包シリカナノ粒子の合成を参考にすることができる。

0036

また、上記とは異なる蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、シリカビーズシランカップリング剤で処理して末端アミノ化し、カルボキシ基末端を有する蛍光体としての半導体微粒子をシリカビーズの表面にアミド結合により結合することで集積し、蛍光体集積ナノ粒子とする方法も挙げられる。

0037

さらに別の蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、逆ミセル法と、ガラスの前駆体として分子の末端に半導体ナノ粒子への吸着性が良い有機官能基を有する有機アルコキシシランアルコキシドの混合物を用いたゾルゲル法とを組み合わせることにより、半導体ナノ粒子を内部に分散固定したガラス状の粒子を形成し、蛍光体集積ナノ粒子とする例が挙げられる。

0038

さらに別の蛍光体集積ナノ粒子の製造方法として、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(EDC)の存在化で、アミノ基末端の半導体ナノ粒子と、カルボキシ基末端の半導体ナノ粒子を混合し、半導体ナノ粒子間をアミド結合で介して結合することで半導体ナノ粒子を集積し、蛍光体集積ナノ粒子を製造する例が挙げられる。

0039

さらに、無機蛍光体を樹脂からなる母体の内部または表面に固定化して蛍光体集積ナノ粒子を製造することもできる。たとえば、量子ドットを内包したポリマーナノ粒子は、ネイチャーバイオテクノロジー19巻631ページ(2001)に記載されているポリスチレンナノ粒子への量子ドットの含浸法を用いて作製することができる。

0040

[蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径
蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径は、蛍光シグナルの強度の観点から、150nm以上〜800nm以下が好ましく、150nm以上〜500nm以下がより好ましい。

0041

蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径は、公知の測定方法により調べることができる。例えば、透過型電子顕微鏡TEM)により蛍光体集積ナノ粒子の粒子観察を行い、そこから粒子径分布数平均粒子径として求める方法、動的光散乱法により半導体ナノ粒子の粒子径分布を測定し、その数平均粒子径として求める方法等が挙げられる。この他にも、例えば、ガス吸着法、光散乱法、X線小角散乱法(SAXS)、あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して平均粒子径を計測する方法により測定できる。TEMを用いる場合、粒子径分布が広い場合には、視野内に入った粒子が全粒子を代表しているか否かに注意払う必要がある。吸着法は、N2吸着等によりBET表面積を評価するものである。

0042

表面修飾
蛍光体集積ナノ粒子の表面は任意に親水性高分子で修飾されていてもよい。該親水性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコールフィコールポリビニルアルコールスチレン無水マレイン酸交互共重合体ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、ポリビニルピロリドンポリビニルメチルエーテルポリビニルメチルオキサゾリンポリエチルオキサゾリンポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレートヒドロキシメチルセルロースヒドロキシエチルセルロース、ポリアスパルトアミド、合成ポリアミノ酸などが挙げられる。

0043

《抗体》
本発明で用いられる抗体は、用途に応じて選択される、例えば疾病悪性腫瘍等)に関連する抗原(例;HER2等)に対する抗体(1次抗体)、または該1次抗体と抗原抗体反応により結合する2次抗体〜n次抗体を意味する(以下「所定の抗体」と称することもある。)。これら抗体のいずれかに対して、後述するように還元処理がなされる。ここで、「抗体」という用語は、任意の抗体断片または誘導体を含む意味で用いられ、例えば、Fab、Fab'2、CDRヒト化抗体多機能抗体、単鎖抗体(ScFv)などを含む。

0044

《抗原》
上記抗原としては、例えば、タンパク質ポリペプチドオリゴペプチド等)、アミノ酸修飾アミノ酸も含む。)であるが、該タンパク質またはアミノ酸と、糖質オリゴ糖、多糖類、糖鎖等)、脂質、またはこれらの修飾分子との複合体なども含まれる。具体的には、例えば上記病理診断の対象となる疾病に関連する抗原(腫瘍マーカーシグナル伝達物質ホルモンなど)であり、特に限定されない。抗原として、例えば、がんの増殖制御因子転移制御因子,増殖制御因子受容体および転移制御因子受容体等のがんに関連する抗原の他に、TNF−α(Tumor Necrosis Factor α),IL−6(Interleukin−6)受容体などの炎症性サイトカイン、RSV蛋白質等のウィルス関連分子なども「抗原」に含まれる。

0045

この他にも、例えば、がん関連遺伝子由来のタンパク質である、HER2、TOP2A、HER3、EGFR、P53、METが挙げられる。さらに、上記抗原となりうるものであって各種癌関連遺伝子由来の蛋白質として知られているものとして、以下のものが挙げられる。また、上記抗原となりうるものであってチロシンキナーゼ関連遺伝子由来の蛋白質としては、ALK、FLT3、AXL、FLT4(VEGFR3、DDR1、FMSCSF1R)、DDR2、EGFR(ERBB1)、HER4(ERBB4)、EML4−ALK、IGF1R、EPHA1、INSR、EPHA2、IRR(INSRR)、EPHA3、KIT、EPHA4、LTK、EPHA5、MER(MERTK)、EPHA6、MET、EPHA7、MUSK、EPHA8、NPM1−ALK、EPHB1、PDGFRα(PDGFRA)、EPHB2、PDGFRβ(PDGFRB)EPHB3、RET、EPHB4、RON(MST1R)、FGFR1、ROS(ROS1)、FGFR2、TIE2(TEK)、FGFR3、TRKA(NTRK1)、FGFR4、TRKB(NTRK2)、FLT1(VEGFR1)、TRKC(NTRK3)が挙げられる。また、上記抗原となりうるものであって乳がん関連の遺伝子由来の蛋白質としては、ATM、BRCA1、BRCA2、BRCA3、CCND1、E−Cadherin、ERBB2、ETV6、FGFR1、HRAS、KRAS、NRAS、NTRK3、p53、PTENが挙げられる。さらに、上記抗原となりうるものであってカルチノイド腫瘍に関連する遺伝子由来の蛋白質としては、BCL2、BRD4、CCND1、CDKN1A、CDKN2A、CTNNB1、HES1、MAP2、MEN1、NF1、NOTCH1、NUT、RAFSDHD、VEGFAが挙げられる。また、上記抗原となりうるものであって大腸がん関連遺伝子由来の蛋白質として、APCMSH6、AXIN2、MYH、BMPR1A、p53、DCC、PMS2、KRAS2(or Ki−ras)、PTEN、MLH1、SMAD4、MSH2、STK11、MSH6が挙げられる。さらに、上記抗原となりうるものであって肺がん関連の遺伝子由来の蛋白質としては、ALK、PTEN、CCND1、RASSF1A、CDKN2A、RB1、EGFR、RET、EML4、ROS1、KRAS2、TP53、MYCが挙げられる。また、上記抗原となりうるものであって肝臓がん関連の遺伝子由来の蛋白質としては、Axin1、MALAT1、b−catenin、p16 INK4A、c−ERBB−2、p53、CTNNB1、RB1、Cyclin D1、SMAD2、EGFR、SMAD4、IGFR2、TCF1、KRASが挙げられる。上記抗原となりうるものであって腎臓がん関連遺伝子由来の蛋白質として、Alpha、PRCC、ASPSCR1、PSF、CLTC、TFE3、p54nrb/NONO、TFEBが挙げられる。上記抗原となりうるものであって甲状腺がん関連遺伝子由来の蛋白質としては、AKAP10、NTRK1、AKAP9、RET、BRAF、TFG、ELE1、TPM3、H4/D10S170、TPRが挙げられる。上記抗原となりうるものであって卵巣がん関連遺伝子由来の蛋白質として、AKT2、MDM2、BCL2、MYC、BRCA1、NCOA4、CDKN2A、p53、ERBB2、PIK3CA、GATA4、RB、HRAS、RET、KRAS、RNASET2が挙げられる。さらに、上記抗原となりうるものであって前立腺がん関連遺伝子由来の蛋白質として、AR、KLK3、BRCA2、MYC、CDKN1B、NKX3.1、EZH2、p53、GSTP1、PTENが挙げられる。また、上記抗原となりうるものであって骨腫瘍関連遺伝子由来の蛋白質としては、CDH11、COL12A1、CNBP、OMD、COL1A1、THRAP3、COL4A5、USP6が挙げられる。また、免疫系由来のタンパク質として、PD−L1、PD−1、B7.1が挙げられる。

0046

《蛍光体集積ナノ粒子の表面の結合基修飾》
蛍光体集積ナノ粒子と抗体との結合は、還元後の抗体が有するSH基と蛍光体集積ナノ粒子表面にある官能基との結合反応により達成されるので、蛍光体集積ナノ粒子の表面には、SH基と結合可能な官能基(結合基)を有している必要がある。

0047

結合基としては、SH基と結合反応可能な、マレイミド基、アルデヒド基ブロモアセトアミド基(ヨードアセトアミド基、ブロモアセトアミド基)等を挙げることができるが、SH基と結合反応が可能な官能基であればこれらに限定されない。このうちマレイミド基は、SH基との反応性がよく、また蛍光体集積ナノ粒子に導入するための試薬入手、利用しやすいことから好ましい。

0048

蛍光体集積ナノ粒子の表面に結合基を導入する方法としては、特に限定されず、例えば、樹脂を母体とする蛍光体集積ナノ粒子を製造する際に、結合基を側鎖に有するモノマーを主鎖部分で重合することで蛍光体集積ナノ粒子に結合基を導入する方法、または、結合基を有するリンカーを蛍光体集積ナノ粒子の表面に結合させて導入する方法を例示することができる。

0049

後者のリンカーを用いる方法は、具体的には、上述した親水性高分子の一端部に結合基を有し、他端部に官能基(結合基と同一の基を含む)を有する二官能性リンカー分子を用意し、該官能基と蛍光体集積ナノ粒子表面に導入した結合基以外の官能基とを結合させる方法である。この結合の組合せとしては、アミノ基−NHS基アジ基−炭素間三重結合を有する基、等の組合せを挙げることができる。

0050

(蛍光体集積ナノ粒子に結合基を直接導入する方法)
蛍光体集積ナノ粒子に結合基を直接導入する方法の別の例としては、例えば、ポリスチレンを母体とする蛍光体集積ナノ粒子を製造し、そのポリスチレン部分にマレイミド基を導入する場合、特開2007−23120に記載されているように、ポリスチレン鎖フェニル基クロロメチル化した状態で、N−ヒドロキシメチルマレイミドOH基クロロメチル基との間でCl交換エーテル化反応をさせてマレイミド基を導入する方法がある。

0051

蛍光体集積ナノ粒子の表面または該表面に付加された前述の親水性高分子がOH基を有する場合には、N−ヒドロキシメチルマレイミドのOH基と脱水縮合エーテル化反応によりマレイミド基を蛍光体集積ナノ粒子の表面に導入することができる。この反応には酸性あるいは塩基性の公知のエーテル化触媒を使用することができる。例えば、塩基性の触媒としては、アルカリ金属アルカリ土類金属水酸化物酸化物炭酸塩重炭酸塩等を使用することができ、これらのうち1種又は2種類以上混合して使用することができる。酸性の触媒としては、硫酸塩酸硝酸リン酸等の無機酸やp−トルエンスルホン酸トリクロロ酢酸酢酸等の有機酸が使用することができ、これらの化合物水和物の形態でもよい。また、ハイドロタルサイト類固体触媒も使用することができる。

0052

(導入された結合基の確認)
SH基と結合可能な官能基(結合基)が蛍光体集積ナノ粒子の表面に導入されたか否かおよびその量は、例えばFT—IRにより結合に該当する波長ピーク面積を計測する方法、または、結合基を定量するキットや測定方法を用いて調べることができる。例えば、マレイミド基(結合基)を定量する場合、「AmpliteTM蛍光マレイミド定量キット」(コスモバイオ社製)を使用して定量することができる。アルデヒド基(結合基)を定量する場合は、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(2,4-dinitrophenylhydrazine;DNPH)法で定量する方法を挙げることができる。この方法は、蛍光体集積ナノ粒子表面のアルデヒド基とDNPHとを反応させてDNPH誘導体を形成し、該DNPH誘導体を高速液体クロマトグラフィーHPLC)に供してカラムに吸着および溶出させて、DNPH誘導体に該当する溶出液フラクション吸光度(Abs.360nm)の吸収量からアルデヒド基を分析・定量する方法である。ハロアセトアミド基(ヨードアセトアミド基、ブロモアセトアミド基)の場合には、実際にSH基と反応させて副生されるハロゲンを公知の方法で定量することで導入量を調べることができる。

0053

(蛍光体集積ナノ粒子表面の結合基の密度
蛍光体集積ナノ粒子の表面(1mm2)当たりに存在する結合基(マレイミド基等)のモル数は、抗体のSH基と反応できる所定数の結合基を有していれば特に制限されないが、2×10-14モル〜5×10-13モルであることが好ましい。なお、蛍光体集積ナノ粒子の総表面積については、前述したように測定した平均粒子径(nm)を半径(r)として4πr2により算出し、上記定量した結合基の数(モル数)とから、結合基の数(モル数)/粒子表面積1mm2として算出することができる。

0054

《抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の製造方法》
本発明に係る抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の製造方法は、蛍光体集積ナノ粒子の製造方法であって、SH基の数/抗体数が1以上〜5以下となるように前記抗体のジスルフィド結合部分を還元剤により還元する還元工程、該還元後の抗体を、結合基を有する蛍光体集積ナノ粒子に結合させる結合工程とを含むことを特徴としている。なお、SH基の数/抗体数が1となる場合とは、例えば、抗体フラグメント等を使用している場合に、抗体フラグメント分子内に存在する1つのジスルフィド結合(−S−S−結合)が還元され、抗体フラグメントが2つに分かれて各分子が一つSH基を持つ抗体フラグメントになる場合等を意味する。

0055

[還元工程](ジスルフィド結合の還元)
還元工程の還元は、pH6〜8程度の中性付近緩衝能を有するpH緩衝液(例;リン酸緩衝液PBSを含む)等)中に25〜100mMトラツリージェント(2−イミノチオラン塩酸塩)を溶解させたときに得られる還元力よりも弱い還元力で行われる抗体の還元であって、還元後の抗体と2−イミノチオランにより還元されたSAとの、蛍光体集積ナノ粒子表面の単位面積(例;1mm2)内にある所定数の結合基に結合可能なモル量の比(抗体/SA比)が2以上となる還元を意味する。なお、上記濃度範囲(25〜100mM)のトラウツリージェントを使用すれば、ほぼ同程度の還元がなされる。

0056

上記還元をする場合、後述する還元反応の温度、還元反応のpHおよび/または還元剤と抗体の各濃度等の各条件を調節して、1つの抗体分子に導入するSH基の数(SH基の数/抗体数)を極力少数(例えば1〜5)となるように調整することで行われる。このように抗体1分子に導入されるSH基の数を極力少なくすることで、蛍光体集積ナノ粒子表面の単位面積無いに存在する一定量の結合基(例;マレイミド基等)に対してより多く抗体を結合させることができる。なお、還元されやすい抗体分子中のジスルフィド結合部分は可変領域ではなくFC領域部分であるので還元後も抗体の抗原結合能が維持されやすいと考えられる(PIERCE / TaKaRa、[online]、タカラバイオ、[平成26年10月1日検索]、インターネット<URL:http://www.takara-bio.co.jp/goods/info/pdf/pierce#western.pdf>)。

0057

(還元剤)
還元剤の種類によってジスルフィド結合(S—S結合)の還元量が大きく変化することから、上記還元を行うための好適な還元剤としては、例えば、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオールグルタチオン(γ-L-グルタミル-L-システイニルグリシン)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩およびシステイン、2−メルカプトエチルアミンからなる群から選択された1種または2種以上を挙げることができる。前述した2−イミノチオランを用いた還元よりも弱い還元力の所定の還元を実現することができれば、例示した還元剤の種類や還元条件(還元剤の濃度等)に限らず他の還元剤や還元条件を適用してもよい。

0058

(pH緩衝液)
還元工程の還元は、使用する還元剤が還元力を発揮しうる中性領域のpH緩衝液中で実施することが望ましい。使用可能なpH緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液(PBSを含む)、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)緩衝液グリシン緩衝液を挙げることができる。

0059

(還元pH)
還元時のpH(還元pH)がアルカリ側になるにつれて抗体分子に含まれるジスルフィド結合(S—S結合)の還元量が増加していくことから、還元pHを還元剤の還元能が発揮できるpH範囲内で、抗体1分子中にSH基が極力少く導入されるように調節する必要がある。還元pHとしては、還元剤にもよるが、pH6.5〜7.5に調整する例が挙げられる。還元pHは、2−メルカプトエタノールを使用する場合はpH7.0〜8.5、3−メルカプト−1,2−プロパンジオールを使用する場合はpH3.5〜7.0、グルタチオン(γ-L-グルタミル-L-システイニルグリシン)を使用する場合はpH7.0〜8.5、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩を使用する場合はpH7.0〜8.5、およびシステインを使用する場合はpH7.5〜9.0、2−メルカプトエチルアミンを使用する場合はpH6.5〜8.0とする例が挙げられる。

0060

反応温度・反応時間)
還元反応の温度条件として4℃〜40℃、好ましくは35℃〜37℃の範囲を選択することができる。還元反応の反応時間は温度条件によって異なるが、4℃〜8℃の場合、8時間〜36時間、好ましくは12時間〜24時間の範囲を選択し、35℃〜37℃の場合、20分〜240分、好ましくは30分〜180分の範囲を選択し、かつ、単に反応溶液を室温放置して処理する方法等が例示できる。

0061

(抗体と還元剤の濃度)
上記還元剤を用いる場合、還元処理の温度や時間のみならず、還元対象の抗体と還元剤とのモル比も重要である。前述のpH、温度及び反応時間で上記還元剤により還元処理を行なう場合、還元前の抗体の1モルに対し、還元剤のモル濃度は100,000,000,000〜10,000,000,000,000モルとするのが好ましい。

0062

また、反応液中の抗体の終濃度としては、例えば1pmol/L〜100pmol/L、好ましくは1〜10pmol/Lとする例が挙げられる。また、反応液中に含める還元剤の終濃度の範囲としては、2−メルカプトエタノールの場合は終濃度0.01M〜0.2M、3−メルカプト−1,2−プロパンジオールの場合は終濃度0.01M〜0.4M、グルタチオン(γ-L-グルタミル-L-システイニルグリシン)の場合は終濃度0.01M〜0.2M、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩の場合は終濃度0.03M〜0.15M、システインの場合は終濃度0.05M〜0.15M、2−メルカプトエチルアミンの場合は終濃度を0.01M〜0.3Mとするのが好ましい。

0063

(抗体分子中のチオール基の定量)
抗体分子中のSH基の定量は、例えば、公知のSH基定量試薬(例: 5,5'−Dithiobis(2−nitrobenzoic acid)同仁品コード:D029製品名:DTNB)等のSH基定量キットを使用する方法等の公知の方法により行うことができる。

0064

[結合工程](還元後の抗体と蛍光体集積ナノ粒子との結合)
結合工程は、前述の結合基(マレイミド基等)で表面修飾した蛍光体集積ナノ粒子と、上記還元後のSH基を有する抗体(例;抗HER2抗体)とをpH緩衝液中で混合し、両分子を結合させる工程である。なお、結合工程に続いて任意に後述する洗浄工程を行ってもよい。

0065

結合反応における抗体と蛍光体集積ナノ粒子のモル比は、反応効率を高める観点から、蛍光体集積ナノ粒子1モルに対して、還元後のSH基を有する抗体を100,000モル〜100,000,000モル用いることが好ましい。結合反応の温度と時間は、結合反応を十分に行う観点から、室温(1〜40℃)で1時間〜12時間放置することが好ましい。なお、結合反応の停止は、反応液にメルカプトエタノール等の還元剤を30〜50nmol程度添加することで行うことができる。

0066

(pH緩衝液)
結合工程に使用するpH緩衝液として、前述したpH緩衝液を使用することができる。また、結合反応に使用するpH緩衝液はキレート剤を含有することが望ましい。金属イオンが反応液中に存在すると、金属イオンが抗体分子のSH基と反応してしまい、抗体のSH基と蛍光体集積ナノ粒子表面の結合基との反応が阻害されてしまうからである。使用可能なキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミペンタアセテート酸(DTPA)、N,N−ジカルボキシメチルグルタミン酸ナトリウム塩(GLDA)、N’−(2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン−N,N,N’−三酢酸(HEDTA)、グリコールエーテルジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(GEDTA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸(HIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)などが例示される。緩衝液中のキレート剤の濃度は結合反応に影響がでなければ制限なく、例えば1〜10mM程度でよい。

0067

[洗浄工程]
結合工程の後に任意に洗浄工程を設けることができる。結合工程後の反応溶液に対して遠心分離処理(例;10000g,60分間)を行い、沈降したペレット状の抗体結合蛍光体集積ナノ粒子を前述のpH緩衝液に分散させて再度遠心処理を行う、という一連の操作を1回の洗浄として、この操作を2〜3回繰り返す工程である。なお、このときのpH緩衝液としては前述のキレート剤を含むpH緩衝液(EDTAを含むPBS等)が好ましい。

0068

(粒子表面の単位面積内にある抗体数の計測)
抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の単位面積内(以下の例では1mm2)当たりの粒子表面に結合している抗体の数は、例えば、以下(1),(2)により調べることができる。(1)蛍光体集積ナノ粒子の表面に結合した抗体(例;抗HER抗体)は、それ自体はタンパク質である。そのため、BCA法等を原理としたタンパク質定量キット(例;「バイオ・ラッドプロテインアッセイ」(バイオ・ラッド(Bio-Rad)社製)等)を用いて、夾雑タンパク質を除く精製処理ゲル濾過、遠心処理等)を行った後の抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の分散液中のタンパク質の定量を行うことで、蛍光体集積ナノ粒子の表面に結合した抗体の全重量(mg)を計測することができる。

0069

そして、該抗体の分子量は既知であるため、抗体の全重量(mg)/抗体の分子量(例;抗HER2抗体の場合であれば138,000Da)の式から、分散液中の蛍光体集積ナノ粒子の表面に結合した抗体のモル数を算出することができる。さらに、該モル数とアボガドロ定数とから蛍光体集積ナノ粒子の表面に結合した抗体の個数を算出することができる。
(2)一方、上述したようにSEM等の電子顕微鏡で計測した蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径の半値を半径(r)として、球の表面積公式:4πr2から1粒子当たりの蛍光体集積ナノ粒子の表面積(平均)を算出することができる。そして、上記抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の分散液中に存在する粒子を計測する手段(パーティクルカウンタ(例;「Liquid Particle Counter」(リオン社製))や後述する方法)により、該分散液内に存在する蛍光体集積ナノ粒子の粒子数を計測する。1粒子当たりの表面積(平均)×上記粒子数から、上記分散液中の蛍光体集積ナノ粒子の全表面積を算出することができる。そして、上記の抗体のモル数(または個数)/全表面積の式から、粒子表面1mm2当たりの抗体のモル数(または個数)を算出することができる。

0070

[粒子を計測する手段]
例えば、光散乱式の液中パーティクルカウンタ(Liquid Particle Counterリオン社製等)を用いて測定することができる。あるいは、分散液中の蛍光体集積ナノ粒子を回収して乾燥重量を測定し、その乾燥重量を粒子1個の重量で除することで、その分散液中の色素粒子総数を算出することもできる。粒子1個の重量は、粒子の比重(母体の密度、たとえば1とみなすことができるものとする)に、粒子の平均粒子体積を乗じることで算出することができる。粒子の平均粒子体積は、電子顕微鏡で確認した色素粒子の粒子径から算出することができる。

0071

[ストレプトアビジンを用いた基準について]
前述した濃度範囲であれば2−イミノチオランを用いてストレプトアビジンを還元する際の還元条件が前述した還元工程の還元条件の範囲で変化しても、還元後のSH基を有するストレプトアビジンが蛍光体集積ナノ粒子の表面にある所定数の結合基(SH基と結合可能な官能基でマレイミド基等)に結合可能なモル量(以下SAモル量(またはSAの個数))は略一定の範囲となるため、このSAモル量(またはSAの個数)を基準として、還元処理した抗体分子が所定数の結合基に対して結合したモル量(または個数)をSAモル量(または個数)の相対値として表すことができる。

0072

例えば、蛍光体集積ナノ粒子の表面に結合基としてマレイミド基を一様に導入し、該粒子1mm2内に存在するマレイミド基を「所定数の結合基」とした場合、上述した方法により、この所定数の結合基に対して結合した還元後の抗体のモル量(または個数)を調べるとともに、この所定数の結合基に対して結合可能な還元後のストレプトアビジンのモル量(または個数)を調べて、前者を後者に対する相対値(抗体/SA)として表すことができる。

0073

ここで、本発明に係る抗体結合蛍光体集積ナノ粒子は、抗体/SAの比が2以上のものであり、この抗体/SA≧2の比は、前述したように2−イミノチオランによる還元処理よりも弱い還元力の還元であって、抗体1分子あたりのSH基の数が1〜5となる還元により達成される。このような還元により、抗体1分子当たりのSH基の数を極力減らして、蛍光体集積ナノ粒子の表面に存在する所定数の結合基に対して、より多く抗体を結合させることができる。

0074

《免疫染色試薬キット》
本発明に係る免疫染色試薬キットは、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子を含む標識試薬を含むことを特徴とする。抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の抗体部分が1次抗体でなく2〜n次抗体である場合には、任意に1次〜n−1次抗体の溶液(抗体試薬)をさらに含んでいてもよい。

0075

標識試薬中の抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の濃度は、特に制限されないが、免疫染色の際の終濃度以上であることが好ましく、例えば、0.05nM〜5mMに設定される。

0076

標識試薬の保存条件としては、標識試薬中に抗体が含まれることから、抗体の保存条件と同一の条件で保存するのが好ましく、例えば、−20℃〜4℃の低温で保存するのが好ましい。凍結融解を繰り返さない目的で標識試薬を複数の容器に分けて保存することが望ましい。また、蛍光体集積ナノ粒子が半導体粒子である場合には、半導体部分が光を受けると有機質分解能を発揮し抗体が分解されてしまう観点から、遮光保存することが好ましい。

0077

また、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の分散媒はアルカリまたは酸による抗体部分の分解を防止する観点から、PBS等の中性付近のpH緩衝液が好ましい。
《免疫染色法》
本発明に係る免疫染色法は、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子を抗原に固定して蛍光染色する免疫染色反応工程を含むものであり、免疫染色反応工程を含む下記一連の工程を経て実施されることが好ましい。

0078

《組織切片の調製》
組織切片は、一般に市販されているものを購入してもよいが、例えば抗原について前述したところの各種のガンが疑われる被験者(ヒト、イヌネコ等)の組織について一般的な病理組織診断に用いる公知の方法で調製することができる。この場合、まず被験者の組織切片をホルマリン等により固定し、アルコール脱水処理した後、キシレン処理を行い、高温のパラフィン中に浸してパラフィン包埋を行うことで組織切片を作製することができる。

0079

(1)脱パラフィン処理工程
キシレンに組織切片を浸漬させてパラフィンを除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は3分以上30分以下であることが好ましい。また、必要により浸漬途中でキシレンを交換してもよい。

0080

ついで、エタノールに組織切片を浸漬させてキシレンを除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は3分以上30分以下であることが好ましい。また、必要により浸漬途中でエタノールを交換してもよい。

0081

次に、水(例;蒸留水)に組織切片を浸漬させてエタノールを除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は3分以上30分以下であることが好ましい。また、必要により浸漬途中で水を交換してもよい。

0082

(2)賦活化処理工程
組織化学染色として免疫組織化学染色を行う場合、公知の方法にならい、目的とする生体分子の賦活化処理を行うことが好ましい。賦活化条件に特に定めはないが、賦活液としては、0.01Mクエン酸緩衝液(pH6.0)、1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液(pH8.0)、5%尿素、0.1Mトリス塩酸緩衝液等を用いることができる。加熱機器としては、オートクレーブマイクロウェーブ圧力鍋ウォーターバス等を用いることができる。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。賦活化処理の加熱処理の温度は50〜130℃、加熱処理の時間は5〜30分で行うことができる。

0083

ついで容器に入れたPBSに賦活処理後の切片を浸漬させて洗浄を行う。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は3分以上30分以下であることが好ましい。また必要により浸漬途中でPBSを交換してもよい。

0084

(3)免疫染色反応工程
免疫染色反応工程は、組織切片上の抗原(病理診断の対象となる疾病に関連する抗原など)に対して抗体結合蛍光体集積ナノ粒子を固定させて抗原を蛍光標識する工程である。抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の抗体部分が1次抗体である場合には、該抗体部分と抗原との結合を介して蛍光体集積ナノ粒子を前記抗原に固定して抗原を蛍光標識する工程であり、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の抗体部分が2〜n次抗体である場合には、組織切片上の抗原に1〜(n−1)次抗体を結合させた後、該抗原に結合した1〜(n−1)次抗体に対して2〜n次抗体を結合させて蛍光体集積ナノ粒子を抗原に固定して抗原を蛍光標識する工程である。

0085

具体的には、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子をpH緩衝液に分散させた液(分散濃度例;0.05nM〜0.5nM)を組織切片に載せて前記抗原と抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の1次抗体部分を結合させるか、または、上記抗体試薬を組織切片に載せて抗原と1〜(n−1)次抗体とを結合させた後、上記手順と同様にして、該1〜(n−1)次抗体に抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の2〜n次抗体部分を結合させて抗原を蛍光標識する例が挙げられる。免疫染色反応工程の反応としては、例えば、上記抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の分散液を組織切片上に載せて4℃で1晩反応させる例が挙げられる。

0086

抗体結合蛍光体集積ナノ粒子は抗体部分を有するので、分散媒として用いるpH緩衝液にあらかじめブロッキング剤を1重量%以下の範囲で含有させてブロッキング処理を省略してもよい。このようなブロッキング剤としては、ウシ血清アルブミンBSA)、カゼイン(αカゼイン、βカゼイン、γカゼイン)、ゼラチン等の生物由来物質が挙げられる。

0087

(多重染色の場合)
前記抗原が2種以上であり、これらをそれぞれ染め分ける多重染色を行う場合には、前述の抗体結合蛍光体集積ナノ粒子として、抗体および蛍光波長が異なる2種以上の蛍光体集積ナノ粒子を用いればよい。つまり、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の表面に結合させる抗体と、使用する蛍光体の蛍光波長とを、組織切片上の抗原の種類に応じて変更されているものを使用すればよい。

0088

また、2種以上の蛍光体集積ナノ粒子は、検出のしやすさの観点から、その発光波長帯域が互いに重ならないものであることが望ましい。このような2種以上の蛍光体集積ナノ粒子を用いる場合、蛍光体集積ナノ粒子を作製する際に、発光波長の帯域が互いに重ならない2種以上の蛍光体を用いて作製すればよい。

0089

また、使用する抗体については、2種以上の抗原のそれぞれにユニークなエピトープを認識するような抗体を各蛍光体集積ナノ粒子について選択する必要がある。

0090

(4)洗浄工程
免疫染色反応工程の後に、PBSにより組織切片を洗浄する洗浄工程を行って未反応の蛍光体集積ナノ粒子を除くことが好ましい。この洗浄工程としては、例えば、室温(1〜30℃)に調節されたPBSに組織切片を浸漬させて0.5〜1時間放置する洗浄工程を行うことができる。ここで、上記浸漬中にPBS等を交換してもよい。

0091

(5)形態観察用処理工程
免疫染色反応工程の後に、組織切片に対してヘマトキシリン・エオシン染色(HE染色)等の染色を行って、組織切片の細胞の形状や細胞の各部の位置情報を得るための形態観察用処理工程を任意に行うことができる。この染色にともなって組織切片を観察用に透徹、封入すること等の処理を行ってもよい。HE染色は、例えば、免疫染色した切片をマイヤーヘマトキシリン液で5分間染色してヘマトキシリン染色を行い、その後、該組織試料を45℃の流水で3分間洗浄し、次に、1%エオシン液で5分間染色してエオシン染色を行う。

0092

(6)観察工程
明視野観察
明視野観察は、組織切片の細胞または組織内の染色対象とする細胞器官分布情報を取得するために行われる。明視野観察の一般的な方法として、例えば、上記したように免疫染色の後にヘマトキシリン・エオシン染色(HE染色)を行った組織切片を光学顕微鏡で観察を行う。なお、形態観察染色に用いられるエオジンは、明視野において観察できるだけでなく、所定の波長の励起光を照射した時に自家蛍光も発するので、適切な波長および出力の励起光を染色された組織試料に照射することで、蛍光顕微鏡によっても観察できる。

0093

一方、その他の染色としてHER2タンパク質を検出対象の抗原として組織化学染色(DAB染色等)を行った場合の明視野観察においては、適切な照明光の照射下で、光学顕微鏡の4倍対物レンズを使用して、検体組織内癌細胞のHER2タンパク陽性染色像、陽性染色の強度、陽性細胞率を観察する。次に対物レンズを10倍に切り替え陽性所見細胞膜細胞質局在するかを確認し、必要に応じてさらに対物レンズ20倍で検索する。

0094

蛍光観察
染色した上記切片に対し蛍光顕微鏡を用いて、広視野顕微鏡画像から蛍光の輝点の数又は発光輝度を計測する。用いた蛍光物質吸収極大波長及び蛍光波長に対応した励起光源及び蛍光検出用光学フィルターを選択する。輝点数又は発光輝度の計測は、市販の画像解析ソフト、例えば、株式会社ジーオングストローム社製の全輝点自動計測ソフトG−Countを用いて行うことができる。なお、顕微鏡を使用した画像解析自体は周知であり、例えば、特開平9−197290に開示される手法を用いることができる。顕微鏡画像の視野は、3mm2以上であることが好ましく、30mm2以上であることがさらに好ましく、300mm2以上であることがさらに好ましい。顕微鏡画像から計測された輝点数、及び/又は発光輝度に基づいて、目的とする特定の遺伝子由来のタンパク質(前述)の発現量等を評価する。

0095

(多重染色の場合)
一方、免疫染色反応工程で2種以上の抗体結合蛍光体集積ナノ粒子を用いて多重染色を行った場合については、抗原の種類に応じて使用した抗体結合蛍光体集積ナノ粒子を、その種類ごとに励起および発光させ、抗原種別に蛍光の輝点の数や発光輝度の計測等を行う。ここで、蛍光波長の帯域が一部重複する2種以上の蛍光体集積ナノ粒子を用いて免疫染色反応工程を行った場合、重複する帯域をカットする蛍光フィルターを用いて、抗原の種類ごとに観察等を行うことが望ましい。

0096

なお、取得した2種以上の蛍光免疫染色画像を合成して解析に用いてもよい。

0097

(抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の評価)
免疫染色の検出対象のタンパク質が発現している病理組織切片を用意し、これに対して(1)抗体結合蛍光体集積ナノ粒子を用いて上述した免疫染色および蛍光観察を行った際に所定の観察視野内に計測される特異的な輝点の数、(2)抗体結合蛍光体集積ナノ粒子を含む標識試薬を所定条件保管した後(凝集確認試験後)に目視で確認される粒子の凝集・沈降の有無、によって抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の染色性能を評価することができる。

0098

検出対象のタンパク質をHER2タンパク質として評価する場合、例えば、(1)HER2の発現がされているIHC法スコア=3の病理組織切片(下記表1参照)を用意して、上述した免疫染色および蛍光観察を行い、該蛍光観察で1視野当たり(組織切片の視野一杯にして撮像した画像で縦132μm×横176μmの矩形内)にHER2抗原に基づく特異的な輝点数が3000以上得られていること、および、(2)製造直後の抗体結合蛍光集積ナノ粒子を含む標識試薬を1週間4℃で保存した後に目視で観察した際に粒子の凝集沈降がないことを満たす場合に、評価対象の抗体結合蛍光集積ナノ粒子が凝集、沈降および抗体の変性せずに、ビオチン−アビジン法の場合(例;後述する比較例1)と同程度の染色能力を有すると判断することができる。なお、特異的な輝点かどうかは、例えばDAB法等の他の染色法により同一の病理切片を染色してHER2抗原の発現位置を特定し、この発現位置と一致しているか否かで特異的な輝点かどうかを判断することができる。

0099

また、IHC法とは、「HER2検査ガイド第三版」(2009年9月トラスツズマブ病理部会作成)に記載の方法であり、IHC法スコアとは「HER2検査ガイド第三版」に記載の評価基準である(下記表1参照)。

0100

0101

以下、本発明に係る抗体結合蛍光体集積ナノ粒子、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の製造方法および免疫染色試薬キットについての作用、効果を説明する。

0102

(1)本発明に係る抗体結合蛍光体集積ナノ粒子は、上述した抗体と蛍光体集積ナノ粒子とが、当該抗体のジスルフィド結合(−S−S−)を還元することによって生成したSH基と、当該蛍光体集積ナノ粒子の表面にある結合基(例;マレイミド基等)との反応によって結合している抗体結合蛍光体集積ナノ粒子であって、2−イミノチオランを使用してジスルフィド結合をSH基に還元したストレプトアビジンが、前記蛍光体集積ナノ粒子の表面の単位面積内(例;1mm2)にある所定数の結合基に対して結合しうる数をnモルと表した場合、前記抗体が前記所定数の結合基に対して結合している数が2nモル以上のものであることから、蛍光体集積ナノ粒子の表面に十分な量の抗体が結合されており、2nモル未満の従来技術に係る粒子とは異なり、免疫染色した際に組織切片上の抗原との抗原抗体反応の反応性が高まり、免疫染色をした際に特異的な輝点が免疫染色として問題ない精度で得られる。

0103

そのため、従来技術に係る粒子(2nモル未満のもの)では不可能であった多重免疫染色が可能となる。すなわち、抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の表面に結合させる抗体と、使用する蛍光体の蛍光波長とを組織切片上の抗体の種類に応じて変更して抗体結合蛍光体集積ナノ粒子を製造し、各粒子を用いて免疫染色を行えば、各種抗原に対して蛍光波長の異なる蛍光体集積ナノ粒子が結合し、色分けした免疫染色(多重免疫染色)をすることができる。

0104

(2) 前記結合基がマレイミド基であれば、抗体のSH基と反応して安定な共有結合を形成することができる。また、前記結合基が、マレイミド基、アルデヒド基またはブロモアセトアミド基からなる群から選択された1種または2種以上であれば、抗体のSH基と反応して安定な共有結合を形成することができる観点から好ましい。

0105

(3)上記抗体が、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グルタチオン(γ-L-グルタミル-L-システイニルグリシン)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩およびシステイン、2−メルカプトエチルアミンからなる群から選択された1種または2種以上の還元剤によって処理されたものであれば、(1)で述べた免疫染色における反応性を好適に高めることができる。

0106

(4)上記抗体が2次抗体であれば、2次抗体は1次抗体に複数箇所で結合するため、一つの1次抗体に対して複数の2次抗体、すなわち複数(種)の蛍光体集積ナノ粒子で標識することができる。したがって、2次抗体を使用することで増感効果染色色素色合成効果が得られる。

0107

(5)本発明に係る抗体結合蛍光体集積ナノ粒子を製造方法は、SH基の数/抗体数が極力少数(好適には、例えば1〜5)となるように前記抗体のジスルフィド結合部分を還元剤により還元する工程、該還元後の抗体を、結合基を有する蛍光体集積ナノ粒子に結合させる工程を含むものである。上記還元工程により、図1に示すように、抗体1分子に導入されるSH基の数が低く抑えられるので、蛍光体集積ナノ粒子の表面にある所定数の結合基に対してより多くの抗体を結合させることができる。ここで、抗体1分子中のSH基数が1に近い程、より多くの抗体を蛍光体集積ナノ粒子の表面に結合させることができる。

0108

(6)前記酸化還元に用いられる還元剤が、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グルタチオン(γ-L-グルタミル-L-システイニルグリシン)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩、システイン、2−メルカプトエチルアミンからなる群から選択された1種または2種以上であれば、上記還元工程を好適に行うことができる。

0109

(7)組織切片上の抗原に結合する1次抗体を含む抗体試薬と、上記抗体結合蛍光体集積ナノ粒子を含んだ標識試薬と、を備えた免疫染色試薬キットでれば、製造から一定期間過ぎても目視観察で凝集を生じず、上記効果を有する免疫染色キットが提供される。

0110

(8) 上記記載の抗体結合蛍光体集積ナノ粒子、または免疫染色試薬キットを用い、前記抗体結合蛍光体集積ナノ粒子を抗原に固定して蛍光染色する免疫染色反応工程を含む、免疫染色法とでれば、十分に特異的な輝点が得られる。

0111

(9) ここで、染色対象が病理診断の対象となる抗原であれば、従来より高い精度で、病理診断対象の疾病((悪性腫瘍等)を検出することができる点で好ましい。

0112

(10) 前記抗原が2種以上であり、上記抗体結合蛍光体集積ナノ粒子が、抗体および蛍光波長が異なる2種以上の蛍光体集積ナノ粒子であり、2種以上の抗原を染め分ける多重免疫染色に用いられる免疫染色法であれば、抗原を染め分けする多重染色であっても染色効率が高く維持される。

0113

[製造例1](TAMRA内包シリカナノ粒子の合成)
下記工程(1-1)〜(1-4)の方法により、蛍光色素であるTAMRA(登録商標)(5−カルボキシテトラメチルローダミン)(以下単に「TAMRA」と示す)を内包したTAMRA内包シリカナノ粒子(蛍光体集積ナノ粒子)を作成した。

0114

工程(1-1):TAMRAのN−ヒドロキシスクシンイミドエステル誘導体(TAMRA−NHSエステル)2mgと、テトラエトキシシラン400μL(1.796mmol)とを混合した。

0115

工程(1-2):上記反応液とは別に、エタノール40mLと14%アンモニア水10mLとを混合して混合液を調製した。

0116

工程(1-3):工程(1-2)で調製した混合液を室温下で撹拌しているところに、工程(1-1)で調製した混合液を添加した。添加開始から室温で12時間撹拌を行った。

0117

工程(1-4):反応混合物を10000gで60分間遠心分離を行い、上澄みを除去した。エタノールを加え、沈降物を分散させた後、再度上記遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純粋による洗浄を一回ずつ行った。

0118

得られたTAMRA内包シリカナノ粒子を走査型顕微鏡(SEM;日立社製S−800型)により観察を行ったところ、TAMRA内包シリカナノ粒子の平均粒子径は100nm、平均粒子径の変動係数は15%であった。

0119

[実施例1]
以下に示すように、製造例1で製造したTAMRA内包シリカナノ粒子(蛍光体集積ナノ粒子)に対してマレイミド基を導入し、抗HER2抗体にSH基を導入した後、該TAMRA内包シリカナノ粒子と抗HER2抗体とを結合させることで抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子(1次抗体結合蛍光体集積ナノ粒子)を製造した。そして、この免疫染色試薬キットを用いてHER2抗原が発現している病理組織切片(IHC法スコア=3の病理組織切片)を載せた検体スライド組織アレイスライド)について免疫染色、輝点についての評価等を行った。

0120

《TAMRA内包シリカナノ粒子のマレイミド基修飾》
以下の工程(2-1)〜(2-7)により、マレイミド基修飾したTAMRA内包シリカナノ粒子を調製した。

0121

工程(2-1):製造例1で得られたTAMRA内包シリカナノ粒子1mgを純水5mLに分散させた。次に、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製、LS−3150またはKBE-903;下記式(1)参照)水分散液100μLを上記粒子の分散液に添加した後、室温で12時間撹拌して反応させ、TAMRA内包シリカナノ粒子の表面にアミノ基を導入した。

0122

工程(2-2):反応液を10000gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した。

0123

工程(2-3):エタノールを加えて沈降物を分散させた後、上記遠心分離を再度行った。
同様の手順でエタノールと純水による洗浄を1回ずつ行った。得られたアミノ基修飾したTAMRA内包シリカナノ粒子のFT−IR測定を行ったところ、アミノ基に由来するスペクトル吸収観測でき、アミノ基修飾ができたことを確認できた。

0124

工程(2-4):工程(2-3)で得られたアミノ基修飾したTAMRA内包シリカナノ粒子を、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を2mM含有したリン酸緩衝液生理的食塩水(PBS)を用いて3nMに調整した。

0125

0126

工程(2-5):工程(2-4)の調整後の溶液に対して終濃度10mMとなるようにSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、succinimidyl−[(N−maleimidopropionamid)−dodecaethyleneglycol]ester)を混合し、室温で1時間反応させた。

0127

工程(2-6):反応液を10000gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した。

0128

工程(2-7):EDTAを2mM含有したPBSを加えて沈降物を分散させた後、上記遠心分離を再度行った。同様の手順による洗浄を3回行った。最後に500μLのPBSに沈降物を再度分散させて、マレイミド基で修飾されたTAMRA内包シリカナノ粒子の分散液500μLを得た。

0129

[還元工程](抗HER2抗体の還元処理(SH基導入処理))
工程(3-1):抗HER2抗体(ベンタナ社製「抗HER2ウサギモノクロナール抗体(4B5)」分子量148,000g/mol)100μgをPBS100μLに溶解させた。この抗体溶液に1Mの2−メルカプトエタノールを0.002mL(0.2×10-5モル)添加して、pH8.5、室温で30分間反応させて抗体の還元を行った。

0130

工程(3-2):工程(3-1)後の反応液をゲル濾過カラムに供して、過剰の2−メルカプトエタノールを除去し、SH基を有する抗HER2抗体の溶液を得た。

0131

工程(3-3):SH基の定量
還元した抗体1μL(1μg分)を分取してSH基定量キットレドックスアッセイチオール定量キット(商品コード:TH01D、メーカーメタロジェニクス)によりSH基の量(モル数)を計測した。さらに同量の抗体1μLを別に分取してBCA法を行うことで分取した抗HER2抗体の質量を定量した。この質量と抗HER2抗体の分子量とから分取した抗体のモル数を算出した。さらにSH基のモル数/抗体のモル数により「SH基の数/抗体」を算出した。このSH基の数/抗体は1.5であった。

0132

[結合工程](SH基を有する抗HER2抗体とマレイミド基修飾したTAMRA内包シリカナノ粒子との結合)
工程(4-1):工程(2-7)を経て得られたマレイミド基修飾したTAMRA内包シリカナノ粒子0.01μgと、工程(3-2)を経て得られたSH基を有する抗HER2抗体10μgとをPBS1mL中で混合し、室温で1時間、両分子を結合する反応を行った。

0133

工程(4-2):10mMの2−メルカプトエタノール4μLを工程(4−1)後の反応液に添加して結合反応を停止させた。

0134

工程(4-3):工程(4-2)からの溶液を10000gで60分間遠心分離処理を行い、上澄みを除去した。その後、EDTAを2mM含有したPBSを加えて沈降物を分散させた後、上記遠心分離を再度行った。同様の手順による洗浄を3回行った。最後に500μLのPBSにより分散させて、抗HER2抗体が結合したTAMRA内包シリカナノ粒子(抗体結合蛍光体集積ナノ粒子)を得た。

0135

《粒子表面(1mm2)当たりの抗体のモル数、個数の計測》
抗HER2抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子の分散液0.01mLについて、BCA法により定量した。この定量した抗HER2抗体の全量(2.33mg含有)を、抗HER2抗体の分子量148000ダルトンで除することにより、分散液中に集団として存在する色素粒子の表面にある抗HER2抗体のモル数1.57×10-8(mol)を算出した。そして、抗HER2抗体のモル数とアボガドロ定数とから、1.57×10-8(mol)×6.02×1023(個/mol)を計算し、粒子表面にある抗HER2抗体の個数を9.46×1015と算出した。さらに、粒子カウンター(Liquid Particle Counterリオン社製等)等で調べたところ測定対象とした粒子の数は3153000000000であった。よって粒子表面の抗HER2抗体の量は1粒子あたり3000個(5回測定平均:3045、3028、2987、3022、2960)となる。同様にして合成された5種類の粒子の平均値も3000であった。

0136

《粒子表面(1mm2)当たりの抗体数の計測》
また、製造例1で調べたTAMRA内包シリカナノ粒子の平均粒子径100nmから半径(r)=50nmとし、球表面積の公式:4πr2から1粒子の表面積3.14×10-14(mm2/粒子)を算出し、上記1粒子当たりの抗HER2抗体の数(3000個/粒子)を1粒子当たりの表面積:3.14×1014(mm2/粒子)で除して、粒子表面1mm2当たりの抗HER2抗体の数=9.555×1016(個/mm2)を算出した。

0137

[抗体/SA]
また、該抗体数のモル数(または個数)を後述する比較例1の蛍光体集積ナノ粒子1粒子の単位面積(1mm2)あたりに存在するSAのモル数(または個数)に対する相対値(以下「抗体/SA相対値」という)として表したところ、2.0であった(表1参照)。

0138

(凝集確認試験)
製造した抗HER2抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子をPBS100μLに1μg分散させた分散液を、室温で1週間放置した後、目視確認により凝集の有無を調べた結果、凝集や沈降は確認されなかった(表2参照)。表2では、凝集・沈降が目視確認された場合は「×」、凝集・沈降が目視確認されなかった場合は「○」と示している。

0139

≪免疫染色≫(免疫組織化学(IHC)法)
上記抗HER2抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子の分散液(標識試薬)を含む免疫染色試薬のキットを用いて、以下に説明するように免疫染色を行った。

0140

免疫染色では、パソロジー研究所製のHER2ポジコンスライド(PS−09001、HER2 3+、2+、1+、0のもの)を用いた。

0141

免疫染色に先立ってDAB染色により上述した各組織切片のHER2染色濃度を観察して、HER2高発現(HER2 3+)、HER2中発現(HER2 2+)、HER2低発現(HER2 +)、HER2陰性(HER2 −)であることを確認し、このうち141119−1のロットの組織アレイスライドについて免疫染色を行った。なお、上記「HER2 3+」、「HER2 2+」、「HER2 +」および「HER2 −」は、それぞれ上記表1のIHC法判定基準のスコア「3+」「1+」および「0」に該当する。

0142

[脱パラフィン処理工程]
工程(1A):組織アレイスライドをキシレンに30分浸漬させて組織切片中のパラフィンを除去してキシレンで置換した。途中3回キシレンを交換した。

0143

工程(1B):工程(1A)を経た組織アレイスライドをエタノールに30分浸漬させて組織切片中のキシレンをエタノールで置換した。途中3回エタノールを交換した。

0144

工程(1C):工程(1B)を経た組織アレイスライドを蒸留水に30分浸漬させて、組織切片中のエタノールを蒸留水で置換した。途中3回蒸留水を交換した。

0145

[賦活化処理工程]
工程(2A):工程(1C)を経た組織アレイスライドを10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)に30分浸漬させて、組織切片中の水をクエン酸緩衝液で置換した。

0146

工程(2B):工程(2A)を経た組織アレイスライドをオートクレーブ処理(121℃で10分間)した。

0147

工程(2C):工程(2B)を経た組織アレイスライドの組織切片をPBSに30分浸漬させた。

0148

工程(2D):工程(2C)を経た組織アレイスライドの組織切片全体に対して、BSAを1重量%含有するPBSを滴下して室温で1時間放置した。

0149

[免疫染色反応工程]
工程(3A):BSAを1重量%含有するPBSでもって、上記抗HER2抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子を0.05nMに希釈した。次に、該希釈により得られた抗HER2抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子の分散液を、工程(2D)を経た組織アレイスライドの組織切片全体に滴下して室温で3時間放置した。

0150

[洗浄工程]
工程(4A):工程(3A)を経た組織アレイスライドの組織切片をそれぞれ30分PBSに浸漬させた。

0151

[形態観察用処理工程]
工程(5A):工程(4A)を経た組織アレイスライドの組織切片を4%中性パラホルムアルデヒド溶液で10分間固定処理した後、ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)を行った。HE染色は、免疫染色した組織切片をマイヤーヘマトキシリン液で5分間染色してヘマトキシリン染色を行った。その後、該切片を45℃の流水で3分間洗浄した。次に、1%エオジン液で5分間染色してエオジン染色を行った。その後、純エタノールに5分間漬ける操作4回行い、洗浄・脱水を行った。続いてキシレンに5分間漬ける操作を4回行い、透徹を行った。

0152

工程(5B):工程(5A)を経た組織アレイスライドの組織切片全体に対して「Aquatex(登録商標)」(製品番号108562、Merck Millipore社製)を滴下した後、カバーガラスを載せて室温で30分以上放置することで前記組織切片を封入した。

0153

[観察工程]
上記一連の工程を経た組織切片に対して所定の励起光を照射して蛍光を発するようにした。その状態の組織切片を蛍光顕微鏡(BX−53,オリンパス社製)により観察および撮像を行った。また、輝点計測は、ImageJ FindMaxima法により計測した。

0154

上記励起光は、光学フィルターに通すことで545〜565nmに設定した。また、観察する蛍光の波長(nm)の範囲についても、光学フィルターに通すことで570〜590nmに設定した。

0155

顕微鏡観察画像取得時の励起波長条件は、550nmの励起では視野中心付近照射エネルギーが900W/cm2となるようにした。画像取得時の露光時間は画像の輝度が飽和しないように任意に設定(例えば4000μ秒に設定)して撮像した。次に、蛍光顕微鏡等を用いて撮像した顕微鏡画像を用いて、輝度が所定の閾値を超えた部分を輝点として計測し、1細胞当たりの蛍光体集積ナノ粒子の数や蛍光シグナルの強度を算出した。

0156

上記観察の結果、HER2に特異的な輝点数は3800であった(表2参照)。

0157

[実施例2]
実施例1で使用した1Mの2−メルカプトエタノールの代わりに「3−メルカプト−1,2−プロパンジオール」(製品番号139-16452、メーカー和光純薬)を用いたこと以外は、実施例1と同様に抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子の製造、凝集確認試験および免疫染色等を行った。その結果、「抗体/SA」の相対値は3.5であり、粒子の凝集や沈降は見られなかった。また、HER2に特異的な輝点数は5600であった(表2参照)。

0158

[実施例3]
実施例1で使用した1Mの2−メルカプトエタノールの代わりに「グルタチオン(γ-L-グルタミル-L-システイニルグリシン)」(製品番号G0074、メーカー東京化成)を用いたこと以外は、実施例1と同様に抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子の製造、凝集確認試験および免疫染色等を行った。その結果、「抗体/SA」の相対値は4.2であり、粒子の凝集や沈降は見られなかった。また、HER2に特異的な輝点数は5400であった(表2参照)。

0159

[実施例4]
実施例1で使用した1Mの2−メルカプトエタノールの代わりに「トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩」(製品番号322-91081HTMLCONTROL Forms.HTML:Hidden.1 HTMLCONTROL Forms.HTML:Hidden.1 、メーカー和光純薬)を用いたこと以外は、実施例1と同様に抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子の製造、凝集確認試験および免疫染色等を行った。その結果、「抗体/SA」の相対値は3.8であり、粒子の凝集や沈降は見られなかった。また、HER2に特異的な輝点数は5500であった(表2参照)。

0160

[実施例5]
実施例1で使用した1Mのメルカプトエタノールの代わりに「システイン」(製品番号013-05133HTMLCONTROL Forms.HTML:Hidden.1 HTMLCONTROL Forms.HTML:Hidden.1 、メーカー和光純薬)を用いたこと以外は、実施例1と同様に抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子の製造、凝集確認試験および免疫染色等を行った。その結果、「抗体/SA」の相対値は3.5であり、粒子の凝集や沈降は見られなかった。また、HER2に特異的な輝点数は4800であった(表2参照)。

0161

[実施例6]
実施例1で使用した1Mのメルカプトエタノールの代わりに「2−メルカプトエチルアミン」(製品番号20408HTMLCONTROL Forms.HTML:Hidden.1 HTMLCONTROL Forms.HTML:Hidden.1 、メーカーThermo SCIENTIFIC)を用いたこと以外は、実施例1と同様に抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子の製造、凝集確認試験および免疫染色等を行った。その結果、「抗体/SA」の相対値は4.8であり、粒子の凝集や沈降は見られなかった。また、HER2に特異的な輝点数は6000であった(表2参照)
[比較例1](ビオチン−アビジン法による免疫染色)
実施例1において、抗HER2抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子を製造する代わりに、以下のように、ストレプトアビジン(SA)を結合したSA結合TAMRA内包シリカナノ粒子およびビオチンを結合した抗HER2抗体(1次抗体)を製造し、得られたビオチン結合抗HER2抗体を組織切片上の抗原(HER2)に結合させた後、ストレプトアビジン−ビオチン結合を介してその抗HER2抗体にTAMRA内包シリカナノ粒子を結合させた。それ以外は実施例1と同様に凝集確認試験および免疫染色等を行った。その結果、粒子の凝集や沈降が発生し、輝点数は6200であった(表2参照)。なお、「抗体/SA」の値は本比較例1を基準としているので1.0となっている。

0162

(SA結合TAMRA内包シリカナノ粒子の製造)
工程(1'-1):製造例1で製造したTAMRA内包シリカナノ粒子0.1mgをエタノール1.5mL中に分散し、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製、LS−3150またはKBE-903)2μLを加えて8時間反応させて粒子表面のアミノ化処理を行った。

0163

工程(1'-2):アミノ化処理したTAMRA内包シリカナノ粒子を、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を2mM含有したPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)を用いて3nMに調整し、この溶液に最終濃度10mMとなるようにSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、スクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)-ドデカエチレングリコール]エステル)を混合し、1時間反応させた。

0164

工程(1'-3):この混合液を10000Gで20分間遠心分離処理を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させた後、上記遠心分離処理を再度行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで末端にマレイミド基が付いたTAMRA内包シリカナノ粒子を得た。

0165

(SAのチオール基導入処理)
工程(1'-4):一方、ストレプトアビジン(和光純薬社製)0.0384mgをPBSに分散した分散液38.4μLと、64 mg/mLとした2−イミノチオラン塩酸塩(「2-Iminothiolane・HCl」、サーモサイエンティフィック社製、Traut's Reagent)4.5μLと混合して、混合液を室温で1時間撹拌してストレプトアビジンのチオール基付加処理を行った。この後、この反応液をゲルろ過カラムに供してマレイミド基が付いたTAMRA内包シリカナノ粒子に結合可能なストレプトアビジン溶液を得た。なお、終濃度は40mM程度である。

0166

(SH基を付加したSAとマレイミド基修飾したTAMRA内包シリカナノ粒子の結合)
工程(1'-5):EDTAを2mM含有したPBSを用いて上記マレイミド基で修飾したTAMRA内包シリカナノ粒子を0.67nMで含有する分散液を調製し、該分散液40μLと、SH基を導入した上記ストレプトアビジン全量(0.04mg相当)740μLとを混合し、室温で1時間反応させた。

0167

工程(1'-6):上記反応液に10mMメルカプトエタノール4μLを添加し、上記反応を停止した。得られた溶液を遠心フィルターで濃縮後、精製用ゲルろ過カラムを用いて未反応ストレプトアビジン等を除去し、ストレプトアビジン(SA)結合TAMRA内包シリカナノ粒子を得た。

0168

《粒子表面(1mm2)当たりのストレプトアビジン数の計測》
SA結合TAMRA内包シリカナノ粒子の分散液0.01mLについて、BCA法によりストレプトアビジンの量(g)を定量した。定量により得られたSA量(g)を、SAの分子量52000ダルトン(=g/mol)で除することにより、分散液中に集団として存在する粒子の表面にあるストレプトアビジンのモル数7.69×10-10(mol)を算出した。そして、SAのモル数とアボガドロ定数とから、7.69×10-10(mol)×6.02×1023(個/mol)を計算し、色素粒子の表面にあるSAの個数を4.63×1014と算出した。さらに、粒子カウンター(Liquid Particle Counterリオン社製等)等で調べたところ測定対象とした色素粒子の数は315300000000であった。よって粒子表面のSAの量は1粒子あたり1500個(5回測定平均:1521、1514、1490、1502、1495)となる。同様にして別途5回製造したいずれのSA結合TAMRA内包シリカナノ粒子についての平均値(SA(個)/粒子)も1500であった。

0169

また、製造例1で調べたTAMRA内包シリカナノ粒子の平均粒子径100nmから半径(r)=50nmとし、球表面積の公式:4πr2から粒子表面積3.14×10-14(mm2/粒子)を算出し、上記1粒子当たりのSA数(1500個/粒子)を1粒子当たりの表面積:3.14×1014(mm2/粒子)で除して、1mm2当たりのSA数=4.77×1016(個/mm2)を算出した。

0170

ビオチン化抗HER2抗体の製造》
トラスツズマブとして医薬品の形態でロッシュ社が製造している粉末状のハーセプチン(登録商標)を使用し、これに対して、「Biotin Labeling kit−SH」(同仁化学)を用いてビオチン化を行うことにより、ビオチン化したトラスツズマブ(抗HER2抗体)を得た。

0171

《免疫染色》
実施例1の[免疫染色反応工程]に代えて、下記工程Aを行った。

0172

[工程A]
実施例1の賦活化処理工程後、組織アレイスライドをPBSで洗浄した後、10%ヤギ血清(ニチレイ社製)を添加し、室温下1時間放置した。この組織アレイスライドをPBSで洗浄した後、上記ビオチン化した抗HER2抗体の溶液(濃度0.05nM)を組織アレイスライドの組織切片全体に滴下して室温下30分間放置した。その後、組織アレイスライドをPBSで洗浄後、SA結合TAMRA内包シリカナノ粒子の分散液(粒子濃度0.05nM)を上記組織切片全体に滴下し、室温下2時間反応させた。

0173

[比較例2]
実施例1で使用した1Mの2−メルカプトエタノールの代わりに「Traut's Reagent」(製品番号I6256-100MG、メーカーSigma−Aldrich)を用いたこと以外は、実施例1と同様に抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子の製造、凝集確認試験および免疫染色等を行った。その結果、「抗体/SA」の相対値は0.8であり、粒子の凝集や沈降が見られた。また、HER2に特異的な輝点数は500であった(表2参照)。

0174

[比較例3]
実施例1で使用した1Mの2−メルカプトエタノールの代わりに「Biotin Labeling Kit - SH」(製品番号LK10、メーカー同人堂化学社)を用いたこと以外は、実施例1と同様に抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子の製造、凝集確認試験および免疫染色等を行った。その結果、「抗体/SA」の相対値は1.2であり、粒子の凝集や沈降が見られた。また、HER2に特異的な輝点数は1600であった(表2参照)。

0175

[比較例4]
実施例1で使用した1Mの2−メルカプトエタノールの代わりに、1Mの「(+/−)−ジチオスレイトール」(製品番号041-08971、メーカー和光純薬)を用いたこと以外は、実施例1と同様に抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子の製造、凝集確認試験および免疫染色等を行った。その結果、「抗体/SA」の相対値は1.8であり、粒子の凝集や沈降が見られた。また、HER2に特異的な輝点数は2500であった(表2参照)。

0176

0177

蛍光色素内包樹脂粒子を用いたHER2染色結果(1次抗体結合型
(結果・考察)
本発明の製造方法に従って製造した抗HER2抗体結合TAMRA内包ナノ粒子を用いた1次抗体結合型の免疫染色を行った場合、計測されたHER2に特異的な輝点数は3800〜6000であり(実施例1〜6)、従来の製造方法に従って製造した抗HER2抗体結合TAMRA内包ナノ粒子を用いた場合(比較例2〜4)の輝点数500〜2500よりも著しく多く、SA結合TAMRA内包ナノ粒子を用いた場合(比較例1)の輝点数6200に近い輝点数が計測された(表2参照)。ここで、比較例1では、ストレプトアビジン(SA)結合TAMRA内包ナノ粒子を免疫染色に使用しており、そのSAが内因性ビオチンに結合する可能性があるため、上記輝点数6200の中には非特異的な輝点が含まれていると考えられる。したがって、それを考慮すると、実施例1〜6の抗HER2抗体結合TAMRA内包ナノ粒子は、十分に特異的な輝点数が得られており、免疫染色用として十分な染色能力を有するものであるといえる。

0178

「発明が解決しようとする課題」として前述したように、多重免疫染色を行うためには、ビオチン−アビジン結合を利用して抗原に間接的に蛍光体ナノ粒子を結合させる(つまりSA結合蛍光体ナノ粒子を使用する)免疫染色だけでなく、抗原−抗体結合を利用して抗原に直接的または間接的に蛍光体ナノ粒子を結合させる(つまり1次抗体結合蛍光体ナノ粒子または2次抗体結合蛍光体ナノ粒子を使用する)免疫染色が必要である。上記の結果から、本発明(実施例1〜6)の抗HER2抗体結合TAMRA内包ナノ粒子を使用すれば、SA結合蛍光体ナノ粒子に匹敵する十分な数の、かつ抗原に特異的な輝点数が得られており、従来の抗HER2抗体結合TAMRA内包ナノ粒子(比較例2〜4)を使用したのでは困難であった多重染色が可能となることが理解される。

0179

なお、本発明に基づく1次抗体結合型の免疫染色法である上記実施例1〜6の結果は、本発明に基づく2次抗体結合型の免疫染色法である後記実施例7〜12の結果(表3参照)に近いものであるが、従来技術に基づく2次抗体結合型の免疫染色法である後記比較例5〜7の結果よりも優れている。一般的に、2次抗体結合型の免疫染色法は、1次抗体結合型の免疫染色法よりも染色性に優れる傾向にあるが、本発明に従えば、1次抗体結合型であっても、従来の2次抗体結合型より染色性に優れた免疫染色を行うことが可能であることが分かる。

0180

[実施例7]
実施例1において、抗HER2抗体(ベンタナ社製「抗HER2ウサギモノクロナール抗体(4B5)」)に代えて、該抗体に結合可能な2次抗体として抗ウサギIgG抗体(ニチレイ社製ビオチン標識抗ウサギIgG抗体)を使用して、抗ウサギIgG抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子(2次抗体結合蛍光体集積ナノ粒子)を製造した。さらに、実施例1の免疫染色反応工程に代えて、以下の免疫染色反応工程を行った。それ以外は実施例1と同様に免疫染色、凝集確認試験等を行った。その結果、「抗体/SA」の相対値は2.1であり、粒子の凝集や沈降は見られなかった。また、HER2に特異的な輝点数は4000であった(表3参照)。

0181

[免疫染色反応工程]
工程(3'A):実施例1の[賦活化処理工程]後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後、10%ヤギ血清(ニチレイ社製)を添加し、室温下1時間放置した。この組織アレイスライドをPBSで洗浄した。

0182

工程(3'B):その後、抗HER2抗体の溶液(濃度0.05nM)を組織アレイスライドの組織切片全体に滴下して室温下30分間放置した。この組織アレイスライドをPBSで洗浄した。

0183

工程(3'C):1mMでBSAを含むPBSに対して抗体結合蛍光体集積ナノ粒子を0.2nMで分散させて標識試薬を調製した。次に、該標識試薬100μLを組織切片上に載せて室温下で30分間放置した。

0184

[実施例8]
実施例7で使用した1Mの2−メルカプトエタノールの代わりに「3−メルカプト−1,2−プロパンジオール」(製品番号139-16452、メーカー和光純薬)を用いたこと以外は、実施例7と同様に抗ウサギIgG抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子の製造、凝集確認試験および免疫染色等を行った。その結果、「抗体/SA」の相対値は3.8であり、粒子の凝集や沈降は見られなかった。また、HER2に特異的な輝点数は5800であった(表3参照)。

0185

[実施例9]
実施例7で使用した1Mの2−メルカプトエタノールの代わりに「グルタチオン(γ-L-グルタミル-L-システイニルグリシン)」(製品番号G0074、メーカー東京化成)を用いたこと以外は、実施例7と同様に抗ウサギIgG抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子の製造、凝集確認試験および免疫染色等を行った。その結果、「抗体/SA」の相対値は4.6であり、粒子の凝集や沈降は見られなかった。また、HER2に特異的な輝点数は5900であった(表3参照)。

0186

[実施例10]
実施例7で使用した1Mの2−メルカプトエタノールの代わりに「トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩」(製品番号322-91081HTMLCONTROL Forms.HTML:Hidden.1 HTMLCONTROL Forms.HTML:Hidden.1 、メーカー和光純薬)を用いたこと以外は、実施例7と同様に抗ウサギIgG抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子の製造、凝集確認試験および免疫染色等を行った。その結果、「抗体/SA」の相対値は4.0であり、粒子の凝集や沈降は見られなかった。また、HER2に特異的な輝点数は5600であった(表3参照)。

0187

[実施例11]
実施例7で使用した1Mの2−メルカプトエタノールの代わりに「システイン」(製品番号013-05133HTMLCONTROL Forms.HTML:Hidden.1 HTMLCONTROL Forms.HTML:Hidden.1 、メーカー和光純薬)を用いたこと以外は、実施例7と同様に抗ウサギIgG抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子の製造、凝集確認試験および免疫染色等を行った。その結果、「抗体/SA」の相対値は3.4であり、粒子の凝集や沈降は見られなかった。また、HER2に特異的な輝点数は5000であった(表3参照)。

0188

[実施例12]
実施例7で使用した1Mの2−メルカプトエタノールの代わりに「「2−メルカプトエチルアミン」(製品番号20408HTMLCONTROL Forms.HTML:Hidden.1 HTMLCONTROL Forms.HTML:Hidden.1 、メーカーThermo SCIENTIFIC)を用いたこと以外は、実施例7と同様に抗ウサギIgG抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子の製造、凝集確認試験および免疫染色等を行った。その結果、「抗体/SA」の相対値は4.9であり、粒子の凝集や沈降は見られなかった。また、HER2に特異的な輝点数は6200であった(表3参照)。

0189

[比較例5]
実施例7で使用した1Mの2−メルカプトエタノールの代わりに「Traut's Reagent」(製品番号I6256-100MG、メーカーSigma−Aldrich)を用いたこと以外は、実施例7と同様に2次抗体が結合した抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子の製造、凝集確認試験および免疫染色等を行った。その結果、「抗体/SA」の相対値は1.0であり、粒子の凝集や沈降が見られた。また、HER2に特異的な輝点数は600であった(表3参照)。

0190

[比較例6]
実施例7で使用した1Mの2−メルカプトエタノールの代わりに「Biotin Labeling Kit - SH」(製品番号LK10、メーカー同人堂化学社)用いたこと以外は、実施例7と同様に抗ウサギIgG抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子の製造、凝集確認試験および免疫染色等を行った。その結果、「抗体/SA」の相対値は1.5であり、粒子の凝集や沈降が見られた。また、HER2に特異的な輝点数は1400であった(表3参照)。

0191

[比較例7]
実施例7で使用した1Mの2−メルカプトエタノールの代わりに1Mの「(+/−)−ジチオスレイトール」(製品番号041-08971、メーカー和光純薬)を用いたこと以外は、実施例7と同様に抗ウサギIgG抗体結合TAMRA内包シリカナノ粒子の製造、凝集確認試験および免疫染色等を行った(表3参照)。その結果、「抗体/SA」の相対値は1.7であり、粒子の凝集や沈降が見られた。また、HER2に特異的な輝点数は2300であった(表3参照)。

0192

0193

蛍光色素内包樹脂粒子を用いたHER2染色結果(2次抗体結合型)
(結果・考察)
1次抗体(抗HER2ウサギ抗体)と、本発明の製造方法に従って製造した2次抗体(抗ウサギIgG抗体)結合TAMRA内包ナノ粒子とを用いる2次抗体結合型の免疫染色を行った結果、計測されたHER2に特異的な輝点数は4000〜6000であり(実施例7〜12)、従来の製造方法に従って製造した抗HER2抗体結合TAMRA内包ナノ粒子を用いた場合(比較例5〜7)の輝点数600〜2300よりも著しく多く、SA結合TAMRA内包ナノ粒子を用いた場合(比較例1)の輝点数6200に近い輝点数が計測された(表3参照)。また、このような2次抗体結合型の実施例7〜12の結果は、前記1次抗体結合型の実施例1〜6の結果(輝点数3800〜6100、表2参照)よりもやや高かった。この結果から、2次抗体を結合したTAMRA内包ナノ粒子を用いる2次抗体結合型の免疫染色であっても問題なく免疫染色が可能であることが分かり、多重免疫染色に適用できることも推認することができる。

実施例

0194

以上、本発明の実施の形態および実施例を説明してきたが、本発明はこれらの実施の形態、実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない限り、設計変更許容される。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

関連する公募課題一覧

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ