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技術 免疫グロブリンに親和性を有するタンパク質、およびそれを用いたアフィニティ分離剤、液体クロマトグラフィー用カラム

出願人 三菱ケミカル株式会社
発明者 與田祥也三沢悟中田理紗
出願日 2016年2月2日 (5年4ヶ月経過) 出願番号 2016-573393
公開日 2017年12月21日 (3年5ヶ月経過) 公開番号 WO2016-125811
状態 特許登録済
技術分野 微生物、その培養処理 ペプチド又は蛋白質 固体収着剤及びろ過助剤 突然変異または遺伝子工学 吸着剤による液体の処理一般
主要キーワード OK株 連結エレメント 特性指標 多孔質アクリル 芽胞形成能 多孔質セルロース 結合エレメント タンパク質構成アミノ酸
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課題・解決手段

本発明の課題は、セリンプロテアーゼまたはサーモリシン耐性を有し、免疫グロブリン結合活性を有する、アフィニティリガンドとして好適に用いることができるタンパク質を提供することにある。本発明の一実施形態は、プロテインAのE、DおよびAドメインアミノ酸配列のいずれかに由来するドメインを2つ以上有するタンパク質であって、該ドメインの少なくとも一つのアミノ酸配列において、1以上のリジンを含み、C末端のリジンが欠失または置換されている免疫グロブリンに親和性を有するタンパク質、または、プロテインAのB、CおよびZドメインのいずれかに由来するドメインを2つ以上有するタンパク質であって、該ドメインの少なくとも一つのアミノ酸配列において、1以上のリジンを含み、4位のリジンおよびC末端のリジンが欠失または置換されている免疫グロブリンに親和性を有するタンパク質である。

概要

背景

抗体は、抗原と呼ばれる物質に特異的に結合する機能、および、他の生体分子細胞協同して抗原性を有する因子無毒化・除去する機能を有する。抗体という名は、このような抗原に結合するという機能を重視した名前であり、物質としては「免疫グロブリン」と呼ばれる。

近年、遺伝子工学タンパク質工学、および、細胞工学発展に伴い、抗体医薬と呼ばれる、抗体の有する機能を利用した医薬品の開発が盛んに行われている。抗体医薬は、従来の医薬と比べて、標的分子に対してより特異的に働くために、副作用をより軽減させ、かつ、高い治療効果が得られることが期待されており、実際に様々な病態の改善に寄与している。

一方、抗体医薬は、生体に大量に投与されることから、他の組換えタンパク質医薬品と比べた場合に、その純度品質に与える影響は大きいと言われている。よって、純度の高い抗体を製造するために、抗体に対して特異的に結合する分子リガンドとする吸着材料を利用する、アフィニティクロマトグラフィー等の手法が一般的に用いられている。

抗体医薬として開発されているのは、基本的にモノクローナルIgG抗体であり、組換え培養細胞技術等を用いて大量に生産され、IgG抗体にアフィニティを有するタンパク質を利用して精製されている。

IgG抗体にアフィニティを有する免疫グロブリン結合性タンパク質として、プロテインAがよく知られている。プロテインAは、グラム陽性細菌スタフィロコッカスアウレウス(Staphylococcus aureus)によって生産される細胞壁タンパク質の1種であり、シグナル配列S、5つの免疫グロブリン結合性ドメイン(Eドメイン、Dドメイン、Aドメイン、Bドメイン、Cドメイン)、および、細胞壁結合ドメインであるXM領域から構成されている(非特許文献1)。抗体医薬製造工程における初期精製工程(キャプチャー工程)には、プロテインAがリガンドとして水不溶性担体固定化された、アフィニティクロマトグラフィー用カラムが一般的に利用されている。

このアフィニティクロマトグラフィー用カラムの性能を改良するために、近年、リガンドであるプロテインAに関する種々の開発がなされ、タンパク質工学的に改変を加えた組換えプロテインAを用いることが試みられている。

たとえば、組換えプロテインAとしては、免疫グロブリン結合活性がないXM領域を除去したプロテインA(rProtein A Sepharose(登録商標)、GEヘルスケアジャパン社製)や、特許文献1に開示されるBドメインに変異を導入した改変ドメインであるZドメインを有するプロテインAなどが知られている。

Zドメインは、Bドメインに対して29位のグリシンアラニン置換する変異を導入した改変ドメインであり、Bドメインよりもアルカリ耐性が高いことが知られている。このようにリガンド機能向上のために、アルカリ耐性を高めた組換えプロテインAや抗体の弱酸性溶出を可能にする組換えプロテインAが開発されている。

特許文献2には、アルカリ耐性を高めるために、プロテインAのC、B、ZドメインのN末端3〜5つの連続したアミノ酸欠失を含むアフィニティークロマトグラフィーリガンドが開示されている。

特許文献3には、アルカリ定性を高めるために、プロテインAのドメインCユニットの3位〜6位のAsn−Lys−Phe−Asnが欠失した配列を有するアフィニティークロマトグラフィーリガンドが開示されている。

特許文献4には、アルカリ耐性を高めるために、プロテインAのB、Zドメインの3位と6位のアスパラギンを他のアミノ酸に置換した免疫グロブリン結合タンパク質が開示されている。
特許文献5には、弱酸性で抗体の脱離を可能にするために、プロテインAのE、D、A、B、Cドメインにおいてリジンおよびシステイン残基を含まない配列とした抗体認識結合タンパク質が開示されている。

概要

本発明の課題は、セリンプロテアーゼまたはサーモリシン耐性を有し、免疫グロブリン結合活性を有する、アフィニティリガンドとして好適に用いることができるタンパク質を提供することにある。本発明の一実施形態は、プロテインAのE、DおよびAドメインのアミノ酸配列のいずれかに由来するドメインを2つ以上有するタンパク質であって、該ドメインの少なくとも一つのアミノ酸配列において、1以上のリジンを含み、C末端のリジンが欠失または置換されている免疫グロブリンに親和性を有するタンパク質、または、プロテインAのB、CおよびZドメインのいずれかに由来するドメインを2つ以上有するタンパク質であって、該ドメインの少なくとも一つのアミノ酸配列において、1以上のリジンを含み、4位のリジンおよびC末端のリジンが欠失または置換されている免疫グロブリンに親和性を有するタンパク質である。

目的

本発明の課題は、プロテアーゼに耐性を有し、十分な免疫グロブリン結合活性を有する、アフィニティリガンドとして好適に用いることができるタンパク質を提供する

効果

実績

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請求項1

列番号1〜3に記載のプロテインAのE、DおよびAドメインのいずれかに由来するドメインを2つ以上有するタンパク質であって、該ドメインの少なくとも一つのドメインのアミノ酸配列において、1以上のリジンを含み、C末端のリジンが欠失または置換されていることを特徴とする、免疫グロブリンに親和性を有するタンパク質。

請求項2

配列番号4〜6に記載のプロテインAのB、CおよびZドメインのいずれかに由来するドメインを2つ以上有するタンパク質であって、該ドメインの少なくとも一つのドメインのアミノ酸配列において、1以上のリジンを含み、4位のリジンおよびC末端のリジンが欠失または置換されていることを特徴とする、免疫グロブリンに親和性を有するタンパク質。

請求項3

配列番号4〜6に記載のプロテインAのB、CおよびZドメインのいずれかに由来するドメインを2つ以上有するタンパク質であって、該ドメインの少なくとも一つのドメインのアミノ酸配列において、1以上のリジンを含み、各ドメインのC末端のリジンおよび各ドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列を連結箇所配列とした場合、少なくとも一つの該連結箇所配列のC末端のリジンおよび4位のリジンが欠失または置換されていることを特徴とする、免疫グロブリンに親和性を有するタンパク質。

請求項4

前記欠失または置換されている4位のリジンおよびC末端のリジンのうち、該4位のリジンおよび/または該C末端のリジンが欠失している、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタンパク質。

請求項5

各ドメインのC末端のリジンおよび各ドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列を連結箇所配列とした場合、少なくとも一つの該連結箇所配列は1以上のアミノ酸からなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のタンパク質。

請求項6

前記欠失または置換されている4位のリジンおよびC末端のリジンのうち、該4位のリジンおよび/または該C末端のリジンを親水性アミノ酸で置換したものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質。

請求項7

各ドメインのC末端のリジンおよび各ドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列を連結箇所配列とした場合、すべての連結箇所配列において、リジンが欠失または置換されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のタンパク質。

請求項8

各ドメインのC末端のリジンおよび各ドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列を連結箇所配列とした場合、少なくとも一つの該連結箇所配列はリジンを含まないものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のタンパク質。

請求項9

各ドメインのC末端のリジンおよび各ドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列を連結箇所配列とした場合、少なくとも一つの該連結箇所配列はアルギニンを含まないものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のタンパク質。

請求項10

配列番号3〜6に記載のプロテインAのA、B、CおよびZドメインのいずれかに由来するドメインを2つ以上有するタンパク質であって、各ドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列を連結エレメントとした場合、少なくとも一つの連結エレメントは、1以上のアミノ酸からなり、かつ、疎水性アミノ酸以外のアミノ酸により構成される変異連結エレメントであることを特徴とする、免疫グロブリンに親和性を有するタンパク質。

請求項11

前記変異連結エレメントが、A、B、またはCドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列からなり、少なくとも一つの変異連結エレメントのアミノ酸配列における1位のアラニンおよび/または5位のフェニルアラニンを欠失したものである、請求項10に記載のタンパク質。

請求項12

前記変異連結エレメントが、Zドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列からなり、少なくとも一つの変異連結エレメントのアミノ酸配列における1位のバリンおよび/または5位のフェニルアラニンを欠失したものである、請求項10に記載のタンパク質。

請求項13

前記変異連結エレメントが、A、B、またはCドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列からなり、少なくとも一つの変異連結エレメントのアミノ酸配列における1位のアラニンおよび/または5位のフェニルアラニンを疎水性アミノ酸以外のアミノ酸で置換したものである、請求項10または11に記載のタンパク質。

請求項14

前記変異連結エレメントが、Zドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列からなり、少なくとも一つの変異連結エレメントのアミノ酸配列における1位のバリンおよび/または5位のフェニルアラニンを疎水性アミノ酸以外のアミノ酸で置換したものである、請求項10または12に記載のタンパク質。

請求項15

前記変異連結エレメントで置換する疎水性アミノ酸以外のアミノ酸が、親水性アミノ酸である、請求項13または14に記載のタンパク質。

請求項16

少なくとも一つのドメインのアミノ酸配列におけるC末端のリジンを欠失または置換したものである、請求項10〜15のいずれか1項に記載のタンパク質。

請求項17

C末端側に前記変異連結エレメントを結合するドメインにおいて、該ドメインのアミノ酸配列におけるC末端のリジンを欠失または置換したものである、請求項16に記載のタンパク質。

請求項18

少なくとも一つの変異連結エレメントはリジンを含まないものである、請求項10〜17のいずれか1項に記載のタンパク質。

請求項19

少なくとも一つの変異連結エレメントはアルギニンを含まないものである、請求項10〜18のいずれか1項に記載のタンパク質。

請求項20

少なくとも一つの変異連結エレメントが2以上のアミノ酸からなる、請求項10〜19のいずれか1項に記載のタンパク質。

請求項21

すべての連結エレメントが変異連結エレメントである、請求項10〜20のいずれか1項に記載のタンパク質。

請求項22

ドメインを3つ以上有する、請求項1〜21のいずれか1項に記載のタンパク質。

請求項23

前記タンパク質に含まれるドメインのすべてが、配列番号1〜6に記載のプロテインAのE、D、A、B、CおよびZドメインのアミノ酸配列のいずれか1種類に由来する、請求項1〜22のいずれか1項に記載のタンパク質。

請求項24

請求項1〜23のいずれか1項に記載のタンパク質をアフィニティリガンドとして、水不溶性基材からなる担体固定化したことを特徴とする、アフィニティ分離剤

請求項25

請求項24に記載のアフィニティ分離剤を含み、少なくとも1つの該アフィニティ分離剤が充填される容器を備えることを特徴とする、液体クロマトグラフィー用カラム

技術分野

0001

本発明は、免疫グロブリンに特異的に結合するタンパク質、および該タンパク質を免疫グロブリン結合性アフィニティリガンドとするアフィニティ分離剤、さらには液体クロマトグラフィー用カラムに関するものである。

背景技術

0002

抗体は、抗原と呼ばれる物質に特異的に結合する機能、および、他の生体分子細胞協同して抗原性を有する因子無毒化・除去する機能を有する。抗体という名は、このような抗原に結合するという機能を重視した名前であり、物質としては「免疫グロブリン」と呼ばれる。

0003

近年、遺伝子工学タンパク質工学、および、細胞工学発展に伴い、抗体医薬と呼ばれる、抗体の有する機能を利用した医薬品の開発が盛んに行われている。抗体医薬は、従来の医薬と比べて、標的分子に対してより特異的に働くために、副作用をより軽減させ、かつ、高い治療効果が得られることが期待されており、実際に様々な病態の改善に寄与している。

0004

一方、抗体医薬は、生体に大量に投与されることから、他の組換えタンパク質医薬品と比べた場合に、その純度品質に与える影響は大きいと言われている。よって、純度の高い抗体を製造するために、抗体に対して特異的に結合する分子リガンドとする吸着材料を利用する、アフィニティクロマトグラフィー等の手法が一般的に用いられている。

0005

抗体医薬として開発されているのは、基本的にモノクローナルIgG抗体であり、組換え培養細胞技術等を用いて大量に生産され、IgG抗体にアフィニティを有するタンパク質を利用して精製されている。

0006

IgG抗体にアフィニティを有する免疫グロブリン結合性タンパク質として、プロテインAがよく知られている。プロテインAは、グラム陽性細菌スタフィロコッカスアウレウス(Staphylococcus aureus)によって生産される細胞壁タンパク質の1種であり、シグナル配列S、5つの免疫グロブリン結合性ドメイン(Eドメイン、Dドメイン、Aドメイン、Bドメイン、Cドメイン)、および、細胞壁結合ドメインであるXM領域から構成されている(非特許文献1)。抗体医薬製造工程における初期精製工程(キャプチャー工程)には、プロテインAがリガンドとして水不溶性担体固定化された、アフィニティクロマトグラフィー用カラムが一般的に利用されている。

0007

このアフィニティクロマトグラフィー用カラムの性能を改良するために、近年、リガンドであるプロテインAに関する種々の開発がなされ、タンパク質工学的に改変を加えた組換えプロテインAを用いることが試みられている。

0008

たとえば、組換えプロテインAとしては、免疫グロブリン結合活性がないXM領域を除去したプロテインA(rProtein A Sepharose(登録商標)、GEヘルスケアジャパン社製)や、特許文献1に開示されるBドメインに変異を導入した改変ドメインであるZドメインを有するプロテインAなどが知られている。

0009

Zドメインは、Bドメインに対して29位のグリシンアラニン置換する変異を導入した改変ドメインであり、Bドメインよりもアルカリ耐性が高いことが知られている。このようにリガンド機能向上のために、アルカリ耐性を高めた組換えプロテインAや抗体の弱酸性溶出を可能にする組換えプロテインAが開発されている。

0010

特許文献2には、アルカリ耐性を高めるために、プロテインAのC、B、ZドメインのN末端3〜5つの連続したアミノ酸欠失を含むアフィニティークロマトグラフィーリガンドが開示されている。

0011

特許文献3には、アルカリ定性を高めるために、プロテインAのドメインCユニットの3位〜6位のAsn−Lys−Phe−Asnが欠失した配列を有するアフィニティークロマトグラフィーリガンドが開示されている。

0012

特許文献4には、アルカリ耐性を高めるために、プロテインAのB、Zドメインの3位と6位のアスパラギンを他のアミノ酸に置換した免疫グロブリン結合タンパク質が開示されている。
特許文献5には、弱酸性で抗体の脱離を可能にするために、プロテインAのE、D、A、B、Cドメインにおいてリジンおよびシステイン残基を含まない配列とした抗体認識結合タンパク質が開示されている。

0013

米国特許第5143844号明細書
日本国特開2012−254981号公報
日本国特表2010−504754号公報
日本国特表2005−538693号公報
日本国特開2013−256484号公報

先行技術

0014

Hober S.et.al,J.Chromatogr.B.,2007,Vol.848,p.40−47

発明が解決しようとする課題

0015

本発明者らの検討により、組換えプロテインAを製造する際に用いる宿主微生物が産生するプロテアーゼや、組換え培養細胞で生産されたIgG抗体を精製する場合の培養細胞が産生するプロテアーゼの作用により、リガンドであるプロテインAが切断されて免疫グロブリン結合活性を大幅に低下するという問題があることを初めて見出した。

0016

特に、組換えプロテインAを培養液から精製する工程においてpHを高くしてイオン交換樹脂吸着あるいは通液する際、また、精製前あるいは精製後に濃縮脱塩などの工程を行う際、さらに、組換えプロテインAを固定化した分離剤により免疫グロブリンを含む培養液から免疫グロブリンを精製する工程を行う際に、プロテアーゼによる切断が顕著に問題となることが明らかになった。

0017

上記プロテアーゼの一つにセリンプロテアーゼがある。特許文献1〜4に開示される組換えプロテインAでは、セリンプロテアーゼ耐性がなく、アフィニティクロマトグラフィー用カラムのリガンドとして用いることに問題がある。

0018

また、本発明者らの検討に拠れば、特許文献5に開示されるリジン及びシステインを含まない組換えプロテインAは、免疫グロブリン結合活性が十分でなく、特に多量体化したときには野生型に比べて免疫グロブリン結合活性が低く、そもそもアフィニティクロマトグラフィー用カラムのリガンドとしての機能を十分に果たすことができないという課題があることが新たに見出された。

0019

また、上記問題を生じさせる他のプロテアーゼとしてはサーモリシンがある。サーモリシンは、バチルス属細菌由来金属プロテアーゼであり、比較的温度の高い環境やpHの高い環境で活性が高くなる。特許文献1、3〜5に開示される組換えプロテインAでは、サーモリシン耐性がないためインタクトな形でタンパク質を回収することができず、アフィニティクロマトグラフィー用カラムのリガンドとして用いることに問題がある。

0020

また、本発明者らの検討に拠れば、特許文献2に開示される組換えプロテインAはサーモリシン耐性があるものを含むが、免疫グロブリン結合活性が低下してしまい、そもそもアフィニティクロマトグラフィー用カラムのリガンドとしての機能を十分に果たすことができないという課題があることが新たに見出された。

0021

そこで、本発明の課題は、プロテアーゼに耐性を有し、十分な免疫グロブリン結合活性を有する、アフィニティリガンドとして好適に用いることができるタンパク質を提供することにある。

0022

特に、本発明の第1の課題は、プロテアーゼの中でも、特にセリンプロテアーゼに耐性を有し、十分な免疫グロブリン結合活性を有する、アフィニティリガンドとして好適に用いることができるタンパク質を提供することにある。

0023

また、本発明の第2の課題は、プロテアーゼの中でも、特にサーモリシンに耐性を有し、十分な免疫グロブリン結合活性を有する、アフィニティリガンドとして好適に用いることができるタンパク質を提供することにある。

課題を解決するための手段

0024

本発明者らは、上記第1の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、プロテインAの特定のドメインのアミノ酸配列において、ドメインとドメインとを連結する領域にリジンを含まない場合にセリンプロテアーゼ耐性が向上することを見出し、本発明を完成させた。

0025

また、本発明者らは、上記第2の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、プロテインAの特定のドメインのアミノ酸配列において、ドメインとドメインとを連結する領域に疎水性アミノ酸を含まない場合にサーモリシン耐性が向上することを見出し、本発明を完成させた。

0026

すなわち、上記課題は以下の構成により達成される。
[1]配列番号1〜3に記載のプロテインAのE、DおよびAドメインのいずれかに由来するドメインを2つ以上有するタンパク質であって、該ドメインの少なくとも一つのアミノ酸配列において、1以上のリジンを含み、C末端のリジンが欠失または置換されていることを特徴とする、免疫グロブリンに親和性を有するタンパク質。
[2]−(1)配列番号4〜6に記載のプロテインAのB、CおよびZドメインのいずれかに由来するドメインを2つ以上有するタンパク質であって、該ドメインの少なくとも一つのアミノ酸配列において、1以上のリジンを含み、4位のリジンおよびC末端のリジンが欠失または置換されていることを特徴とする、免疫グロブリンに親和性を有するタンパク質。
[2]−(2)配列番号4〜6に記載のプロテインAのB、CおよびZドメインのいずれかに由来するドメインを2つ以上有するタンパク質であって、該ドメインの少なくとも一つのアミノ酸配列において、1以上のリジンを含み、各ドメインのC末端のリジンおよび各ドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列を連結箇所配列(第1連結エレメント)とした場合、少なくとも一つの該連結箇所配列(第1連結エレメント)のC末端のリジンおよび4位のリジンが欠失または置換されていることを特徴とする、免疫グロブリンに親和性を有するタンパク質。
[3]前記欠失または置換されている4位のリジンおよびC末端のリジンのうち、該4位のリジンおよび/または該C末端のリジンが欠失している、[1]または[2]に記載のタンパク質。
[4]各ドメインのC末端のリジンおよび各ドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列を連結箇所配列(第1連結エレメント)とした場合、少なくとも一つの該連結箇所配列(第1連結エレメント)は1以上のアミノ酸からなる、[1]〜[3]のいずれかに記載のタンパク質。
[5]前記欠失または置換されている4位のリジンおよびC末端のリジンのうち、該4位のリジンおよび/または該C末端のリジンを親水性アミノ酸で置換したものである、[1]〜[4]のいずれかに記載のタンパク質。
[6]ドメインを3つ以上有する、[1]〜[5]のいずれかに記載のタンパク質。
[7]各ドメインのC末端のリジンおよび各ドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列を連結箇所配列(第1連結エレメント)とした場合、すべての連結箇所配列(第1連結エレメント)において、リジンが欠失または置換されている、[1]〜[6]のいずれかに記載のタンパク質。
[8]前記タンパク質に含まれるドメインのすべてが、配列番号1〜6に記載のプロテインAのE、D、A、B、CおよびZドメインのアミノ酸配列のいずれか1種類に由来する、[1]〜[7]のいずれかに記載のタンパク質。
[9]各ドメインのC末端のリジンおよび各ドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列を連結箇所配列(第1連結エレメント)とした場合、該連結箇所配列(第1連結エレメント)はリジンを含まないものである、[1]〜[8]のいずれかに記載のタンパク質。
[10]各ドメインのC末端のリジンおよび各ドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列を連結箇所配列(第1連結エレメント)とした場合、該連結箇所配列(第1連結エレメント)はアルギニンを含まないものである、[1]〜[9]のいずれかに記載のタンパク質。
[11][1]〜[10]のいずれかに記載のタンパク質をアフィニティリガンドとして、水不溶性基材からなる担体に固定化したことを特徴とする、アフィニティ分離剤。
[12][11]に記載のアフィニティ分離剤を含み、少なくとも一つの容器を備えることを特徴とする、液体クロマトグラフィー用カラム。

0027

[13]配列番号3〜6に記載のプロテインAのA、B、CおよびZドメインのいずれかに由来するドメインを2つ以上有するタンパク質であって、各ドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列を連結エレメント(第2連結エレメント)とした場合、少なくとも一つの連結エレメント(第2連結エレメント)は、1以上のアミノ酸からなり、かつ、疎水性アミノ酸以外のアミノ酸により構成される変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)であることを特徴とする、免疫グロブリンに親和性を有するタンパク質。
[14]前記変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)が、A、B、またはCドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列からなり、1位のアラニンおよび/または5位のフェニルアラニンを欠失したものである[13]に記載のタンパク質。
[15]前記変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)が、Zドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列からなり、1位のバリンおよび/または5位のフェニルアラニンを欠失したものである[13]に記載のタンパク質。
[16]前記変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)が、A、B、またはCドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列からなり、1位のアラニンおよび/または5位のフェニルアラニンを疎水性アミノ酸以外のアミノ酸で置換したものである[13]または[14]に記載のタンパク質。
[17]前記変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)が、Zドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列からなり、1位のバリンおよび/または5位のフェニルアラニンを疎水性アミノ酸以外のアミノ酸で置換したものである[13]または[15]に記載のタンパク質。
[18]前記変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)で置換する疎水性アミノ酸以外のアミノ酸が、親水性アミノ酸である[16]または[17]に記載のタンパク質。
[19]前記変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)が2以上のアミノ酸からなる[13]〜[18]のいずれかに記載のタンパク質。
[20]ドメインを3つ以上有する[13]〜[19]のいずれか1項に記載のタンパク質。
[21]すべての連結エレメント(第2連結エレメント)が変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)である[13]〜[20]のいずれかに記載のタンパク質。
[22]前記タンパク質に含まれるドメインのすべてが、配列番号3〜6に記載のプロテインAのA、B、CおよびZドメインのアミノ酸配列のいずれか1種類に由来する[13]〜[21]のいずれかに記載のタンパク質。
[23]少なくとも一つのドメインのアミノ酸配列におけるC末端のリジンを欠失または置換したものである[13]〜[22]のいずれかに記載のタンパク質。
[24]C末端側に前記変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)を結合するドメインにおいて、該ドメインのアミノ酸配列におけるC末端のリジンを欠失または置換したものである[23]に記載のタンパク質。
[25]前記変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)はリジンを含まないものである[13]〜[24]のいずれかに記載のタンパク質。
[26]前記変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)はアルギニンを含まないものである[13]〜[25]のいずれかに記載のタンパク質。
[27][13]〜[26]のいずれかに記載のタンパク質をコードするDNAを含むベクターを用いて、ブレビバチルス属細菌形質転換し、培養を行うことによってタンパク質を製造する、[13]〜[26]のいずれかに記載のタンパク質の製造方法。
[28][13]〜[26]のいずれかに記載のタンパク質をアフィニティリガンドとして、水不溶性の基材からなる担体に固定化したことを特徴とする、アフィニティ分離剤。
[29][28]に記載のアフィニティ分離剤を含み、少なくとも1つの該アフィニティ分離剤が充填される容器を備えることを特徴とする、液体クロマトグラフィー用カラム。

発明の効果

0028

本発明の実施形態により、特定のプロテアーゼに耐性を有し、十分な免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質を提供することができる。このような本発明のタンパク質を用いることにより、免疫グロブリン結合活性に優れたアフィニティリガンドや耐久性に優れたアフィニティ分離剤を製造することができる。

0029

特に、本発明の第1の実施形態により、プロテアーゼ、特にセリンプロテアーゼに耐性を有し、十分な免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質を提供することができる。このような本発明のタンパク質を用いることにより、免疫グロブリン結合活性に優れたアフィニティリガンドや耐久性に優れたアフィニティ分離剤を製造することができる。

0030

また、本発明の第2の実施形態により、プロテアーゼ、特にサーモリシンに耐性を有し、免疫グロブリンとの結合能力を有するタンパク質を提供することができる。このような本発明のタンパク質を用いることにより、免疫グロブリンとの結合能力に優れたアフィニティリガンドや耐久性に優れたアフィニティ分離剤を製造することができる。

図面の簡単な説明

0031

図1は、スタフィロコッカス(Staphylococcus)のプロテインAのE、D、A、B、C、およびZドメインのアミノ酸配列比較表である。なお、「−(ハイフン)」はCドメインのアミノ酸残基と同じであることを示し、「/(斜線)」はアミノ酸欠失を示す。
図2は、4量体のタンパク質をリガンドとして担体に固定化した場合であって、非固定化ドメインは形成されない場合の模式図である。
図3(A)〜(C)は、4量体のタンパク質をリガンドとして担体に固定化した場合であって、非固定化ドメインが1つ以上存在する場合の模式図である。
図4(A)、図4(B)は、4量体のタンパク質をリガンドとして担体に固定化した場合であって、非固定化ドメインが1つ以上存在する場合の模式図である。
図5(A)、図5(B)は、4量体のタンパク質をリガンドとして担体に固定化した場合であって、固定化用タグを導入して担体との結合を形成しており、すべてのドメインが非固定化ドメインとなる場合の模式図である。

0032

以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、本発明の実施形態は、特定のプロテアーゼに耐性を有し、十分な免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質に関するものである。
本発明の第1の実施形態は、プロテアーゼ、特にセリンプロテアーゼに耐性を有し、十分な免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質に関するものである。
また、本発明の第2の実施形態は、プロテアーゼ、特にサーモリシンに耐性を有し、免疫グロブリンとの結合能力を有するタンパク質に関するものである。

0033

なお、本明細書において、「タンパク質」という用語は、ポリペプチド構造を有するあらゆる分子を含むものであって、断片化された、または、ペプチド結合によって連結されたポリペプチド鎖も、「タンパク質」という用語に包含される。

0034

また、「ドメイン」とは、タンパク質の高次構造上の単位であり、数十から数百のアミノ酸残基配列から構成され、なんらかの物理化学的または生物化学的な機能を発現するに十分なタンパク質の単位をいう。

0035

[本発明の第1の実施形態]
<タンパク質>
本発明の第1の実施形態における第1の態様のタンパク質は、配列番号1〜3に記載のプロテインAのE、D、およびAドメインのいずれかに由来するドメインを2つ以上有し、該ドメインの少なくとも一つのドメインのアミノ酸配列において、1以上のリジンを含み、C末端のリジンが欠失または置換されていることを特徴とする。

0036

本発明の第1の実施形態における第2の態様のタンパク質は、配列番号4〜6に記載のプロテインAのB、C、およびZドメインのいずれかに由来するドメインを2つ以上有し、該ドメインの少なくとも一つのドメインのアミノ酸配列において、1以上のリジンを含み、4位のリジンおよびC末端のリジンが欠失または置換されていることを特徴とする。

0037

本発明の第1の実施形態における第3の態様のタンパク質は、配列番号4〜6に記載のプロテインAのB、C、およびZドメインのいずれかに由来するドメインを2つ以上有し、該ドメインの少なくとも一つのドメインのアミノ酸配列において1以上のリジンを含み、各ドメインのC末端のリジンおよび各ドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列を連結箇所配列(第1連結エレメント)とした場合、少なくとも一つの該連結箇所配列(第1連結エレメント)のC末端のリジンおよび4位のリジンが欠失または置換されていることを特徴とする。

0038

以下、本明細書においては、本発明の第1の実施形態における第1の態様、第2の態様、および第3の態様のタンパク質を総称して、本発明の第1の実施形態のタンパク質とする。

0039

プロテインAは、免疫グロブリン結合性ドメインが5個つながった形で構成されるタンパク質である。複数の微生物がプロテインAを発現するが、プロテインAを発現する微生物として、例えば、スタフィロコッカス(Staphylococcus)が挙げられる。

0040

配列番号1〜6に記載のプロテインAのE、D、A、B、C、およびZドメインは、免疫グロブリンの相補性決定領域(CDR)以外の領域に結合することができる免疫グロブリン結合性タンパク質であり、いずれのドメインも、免疫グロブリンのFc領域Fab領域、および、Fab領域中の特にFv領域の、各々の領域に対して結合する。

0041

図1の配列比較表に示すように、プロテインA由来の、E、D、A、B、C、およびZドメインは、互いに相同性の高いアミノ酸配列を有しており、60%以上のアミノ酸配列同一性を有している。なお、ハイフン(−)はCドメインのアミノ酸残基とおなじであることを示す。

0042

「プロテインAのE、D、A、B、C、およびZドメインのいずれかに由来するドメイン」とは、野生型の各ドメインのアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有するドメインを指し、Fc領域への結合能を有しているタンパク質をコードする限り、野生型の各ドメインのアミノ酸配列に後述する変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)以外の変異が入っていてもよい。

0043

つまり、プロテインAのE、D、A、B、C、およびZドメインのいずれかのアミノ酸配列は、変異を導入する前のアミノ酸配列(野生型アミノ酸配列)であり、「プロテインAのE、D、A、B、C、およびZドメインのいずれかに由来するドメイン」のアミノ酸配列はE、D、A、B、C、およびZドメインの野生型アミノ酸配列そのもの、または野生型アミノ酸配列に後述する変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)を含む、ならびに/もしくは、部分的なアミノ酸の置換、挿入、欠失、および、化学修飾により改変されたものを指す。

0044

ここで、プロテインAのZドメインは、BドメインにA1VとG29Aという変異を導入して得られたものであり、天然のプロテインAには存在しないドメインであるが、本明細書においては、配列番号6に示したアミノ酸配列をZドメインの野生型アミノ酸配列と称する。

0045

本明細書では、アミノ酸配列中の特定アミノ酸の位置は、野生型アミノ酸配列のN末端を1位として順次番号を付して特定する。通常、各ドメインのアミノ酸配列のN末端を1位とする。プロテインAのB、C、およびZドメインのN末端から4番目のアミノ酸である4位はリジンである。ここで、図1に示す通りEドメインは、他のドメインと相同性の高い領域を基準にして、1位および2位のアミノ酸残基が欠失しているものとして取り扱う。また、図1に示す通りDドメインは、他のドメインと相同性の高い領域を基準にして、N末端から3番目〜5番目のアミノ酸残基が挿入されているものとして取り扱う。

0046

明細書中では、アミノ酸について、その正式名称で記載しないときは、慣用一文字略号で表す。また、アミノ酸を置換する変異の表記について、置換位置の番号の前に、野生型、または、非変異型のアミノ酸を付し、置換位置の番号の後に、変異したアミノ酸を付して表記する。例えば、29位のグリシン(Gly)をアラニン(Ala)に置換する変異は、G29Aと記載する。

0047

本発明の第1の実施形態のタンパク質は、上述した「プロテインAのE、D、A、B、C、およびZドメインのいずれかに由来するドメイン」を単ドメインとして2つ以上有する多量体タンパク質(複ドメイン型タンパク質)である。好ましくは3つ以上であり、より好ましくは4つ以上であって、好ましくは10以下、より好ましくは8つ以下、さらに好ましくは6つ以下である。

0048

これらの多量体タンパク質は、単一の免疫グロブリン結合性ドメインの連結体であるホモダイマーホモトリマー等のホモポリマーであってもよいし、種類の異なる免疫グロブリン結合性ドメインの連結体であるヘテロダイマーヘテロトリマー等のヘテロポリマーであってもよい。好ましくは、本発明の第1の実施形態のタンパク質に含まれるドメインのすべてが、配列番号1〜6に記載のプロテインAのE、D、A、B、CおよびZドメインのいずれか1種類に由来するホモポリマーである。

0049

本発明の第1の実施形態におけるタンパク質は、2つ以上のドメインのC末端とN末端が連結し、連結箇所配列(第1連結エレメント)を構成している。ここで、本明細書において「連結箇所配列(第1連結エレメント)」とは、各ドメインのアミノ酸配列におけるC末端のリジンおよびそれに連結するN末端の1位から5位までの配列を指す。

0050

つまり、2つのドメインが連結する箇所の、C末端側の1アミノ酸残基とN末端側の5アミノ酸残基との計6アミノ酸残基の配列が連結箇所配列(第1連結エレメント)となる。ここで、N末端側のアミノ酸配列はB、C、Zで保存されているアミノ酸配列を基準とし、当該配列の5アミノ酸残基を指すものとする。

0051

よって、図1に示す通り、Eドメインは基準となるN末端側の配列のうち、N末端から2アミノ酸残基が欠失した配列をしていることから、Eドメインを含む場合には、連結箇所配列(第1連結エレメント)は、C末端側の1アミノ酸残基とN末端側の3アミノ酸残基との計4アミノ酸残基の配列を指すものとする。

0052

また、図1に示す通り、Dドメインは基準となるN末端側の配列に( )で示す3アミノ酸残基を挿入した配列をしていることから、本タンパク質がDドメインを含む場合には、ドメイン間の連結部分にC末端側の1アミノ酸残基とN末端側の8アミノ酸残基との計9アミノ酸残基を含むこととなる。ただし、DドメインのN末端側に挿入されている、「AQQ」の3アミノ酸残基は本発明の効果に特に影響しないと考えられることから、本明細書においてはB、C、Zで保存されているアミノ酸配列を基準とし、連結箇所配列(第1連結エレメント)に含まれるDドメインのN末端の1位から5位のアミノ酸配列は、下記に示す5アミノ酸残基を指すものとする。

0053

量体タンパク質においてはn−1個の連結箇所配列(第1連結エレメント)が存在する。
図1に示した通り、プロテインAのE、D、A、B、CおよびZドメインのいずれについても、C末端はリジン(K)である。よって、上述の連結箇所配列(第1連結エレメント)には、必ずリジン(K)を含むこととなる。

0054

また、以下に示す配列が、プロテインAのE、D、A、B、C、およびZドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列である。Eドメインは1および2位のアミノ酸残基が存在せず3つのアミノ酸からなり、リジン(K)を含まない。D、A、B、C、およびZドメインのいずれの配列も5つのアミノ酸からなり、D、Aドメインはリジン(K)を含まず、B、C、およびZドメインは4位にリジン(K)を含んでいる。

0055

ドメインE A Q H
ドメインD A D N N F
ドメインA A D N N F
ドメインB A D N K F
ドメインC A D N K F
ドメインZ V D N K F

0056

本発明の第1の実施形態における第1および第3の態様のタンパク質においては、少なくとも一つの連結箇所配列(第1連結エレメント)は部分的なアミノ酸の置換、挿入、欠失、および、化学修飾により改変された変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)であり、野生型アミノ酸配列に存在するリジンを含まないアミノ酸配列であることを特徴としている。変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)は、リジン(K)を含まないことが好ましく、リジン(K)およびアルギニン(R)以外のアミノ酸により構成される配列であることがより好ましく、1以上のアミノ酸からなることが好ましい。

0057

一方、本発明の第1の実施形態における第2の態様のタンパク質においては、少なくとも一つのB、C、およびZドメインのアミノ酸配列において、4位のリジンおよびC末端のリジンが欠失または置換されていることを特徴としている。よって、該ドメインが複数連結していることにより、第3の態様の変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)を構成することとなる。加えて、タンパク質の最もN末端側またはC末端側に位置するドメインが該ドメインである場合には、末端部分は変異連結箇所配列を形成しないが、後述するアフィニティリガンドが担体に固定化されて得られるアフィニティ分離剤において、タンパク質の該ドメインのN末端側またはC末端側を担体に固定化することにより、タンパク質と担体との結合、および固定化されたドメインとその他のドメインとの結合を安定に維持することができる。

0058

ここで、本発明の第1の実施形態において「変異」とは、野生型アミノ酸配列に対して行われる部分的なアミノ酸の置換、挿入、欠失、および、化学修飾による改変を意味し、「変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)」とは野生型アミノ酸配列の連結箇所配列(第1連結エレメント)に、特定の「変異」が挿入された配列を言う。また、「変異ドメイン」とは各ドメインの野生型アミノ酸配列に、特定の「変異」が挿入されたドメインを言う。

0059

本発明の第1の実施形態における第1および第3の態様のタンパク質に含まれる連結箇所配列(第1連結エレメント)のうち少なくとも一つが変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)であればよいが、3量体以上のタンパク質の場合には2つ以上が変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)であることが好ましく、n量体タンパク質の場合にはn−1個が変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)あること、つまり全ての連結箇所配列(第1連結エレメント)が変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)であることがより好ましい。
よって、本発明の第1の実施形態のタンパク質では、すべての連結箇所配列(第1連結エレメント)において、リジンが欠失または置換されていることが好ましい。

0060

後述するアフィニティ分離剤において、担体に固定化されたリガンドがプロテアーゼによる切断を受けないためには、本発明の第1の実施形態のタンパク質における、最もN末端側のドメインの4位のリジン、または最もC末端側のC末端のリジンが欠失または置換されていることが好ましい。

0061

よって、本発明の第1の実施形態における第2の態様のタンパク質に含まれるドメインのうち、少なくとも一つが4位のリジンおよびC末端のリジンが欠失または置換されたドメイン(変異ドメイン)であればよいが、タンパク質の最もN末端側のドメインまたは最もC末端側のドメインが変異ドメインであることが好ましく、後述する固定化ドメインが変異ドメインであることが好ましい。また、3量体以上のタンパク質の場合には固定化ドメインおよびそれに連結する2つ以上が変異ドメインであることが好ましく、n量体タンパク質の場合には固定化ドメインおよびそれに連結するn−2個以上のドメインが変異ドメインであることが好ましく、全てのドメインが変異ドメインであることが最も好ましい。

0062

連結箇所配列(第1連結エレメント)は各ドメインのアミノ酸配列におけるC末端の1アミノ酸残基および1位から5位までの配列からなるが、この配列に対して置換、挿入、欠失、および、化学修飾により改変を行い、好ましくは1以上のアミノ酸からなり、好ましくはリジン(K)およびアルギニン(R)以外のアミノ酸により構成される配列である。

0063

本発明者らの検討により、トリプシンプラスミンなどのセリンプロテアーゼによって切断を受けやすい箇所が、連結箇所配列(第1連結エレメント)中の野生型アミノ酸配列で存在する特定の位置のリジン(K)のC末端側であることが明らかになった。このことより、連結箇所配列(第1連結エレメント)に存在する特定のリジン(K)を含まないようなアミノ酸で構成される変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)とすると、セリンプロテアーゼによるタンパク質の切断を顕著に抑制可能であることを見出した。

0064

具体的には、野生型アミノ酸配列の連結箇所配列(第1連結エレメント)におけるKを、欠失および/または置換することにより変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)とすることができる。好ましくはK以外のアミノ酸により構成される変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)とすることであり、より好ましくはKおよびR以外のアミノ酸により構成される変異連結エレメントとすることである。

0065

加えて、本発明者らの検討によれば、野生型アミノ酸配列の連結箇所配列(第1連結エレメント)以外に存在するKおよびRはセリンプロテアーゼによる切断を受けにくいため本発明の第1の実施形態のタンパク質の各ドメインに存在していてもよいだけでなく、本発明の第1の実施形態のタンパク質が十分な免疫グロブリン結合活性を有するためには、少なくとも一つのドメインにおいて1以上のリジンを含んでいる必要があることを見出した。

0066

連結箇所配列(第1連結エレメント)以外に存在するリジンは、野生型アミノ酸配列におけるリジンが保存されていることが好ましく、好ましくは2つ以上が保存されていることであり、より好ましくは3つ以上が保存されていることであり、最も好ましくは4つのリジンが野生型アミノ酸配列と同じ位置で含まれることが好ましい。保存されるKとしては、35位のリジンが保存されているのが最も好ましい。

0067

連結箇所配列(第1連結エレメント)以外に存在するリジンが十分な免疫グロブリン結合活性を有するために必要である理由は明らかになっていないが、野生型プロテインAの抗体認識部位近傍のリジンは抗体と静電的な相互作用をしていると考えられている。このことより、野生型プロテインAの抗体認識部位の働きを損なわない範囲で、置換、挿入などの変異により野生型アミノ酸配列に存在しないリジンを含んでいても構わないが、野生型アミノ酸配列に存在しないリジンを含まないことが好ましい。
以下に、変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)の具体的な例について説明する。

0068

連結箇所配列(第1連結エレメント)のアミノ酸の一部を欠失させて変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)とする場合には、変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)は1以上のアミノ酸からなることを必須とする。本発明者らの検討に拠れば、連結箇所配列(第1連結エレメント)に含まれる6つ全てのアミノ酸を欠失させた場合には、目的とする免疫グロブリンへの結合能力が著しく低下し、当該タンパク質をアフィニティリガンドとして用いると免疫グロブリンとの結合能力が不十分であることが明らかとなった。

0069

一般に免疫グロブリンは各ドメインよりも大きく、結合した免疫グロブリン同士の立体障害により各ドメインと結合可能な数は限られている。そのため、各ドメインと免疫グロブリンが結合した際に、連結箇所配列(第1連結エレメント)が存在せず隣接するドメインが近すぎると、免疫グロブリンが結合可能な空間が不足し、1ドメイン当たりの免疫グロブリン結合数が低下することによるものと推察される。変異連結箇所配列(第1連結エレメント)は好ましくは1以上、より好ましくは2以上のアミノ酸からなると、目的とする免疫グロブリンへの結合能力がより高くなる傾向があり好ましい。

0070

本発明の第1の実施形態における第1の態様のタンパク質では、連結箇所配列(第1連結エレメント)がプロテインAのいずれかのドメインのC末端のリジン(K)とE、D、およびAドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列からなっている。そのため、野生型アミノ酸配列の連結箇所配列(第1連結エレメント)には、Kが1つ含まれている。よって、変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)は、連結するドメインのC末端のリジン(K)を欠失したものであることが好ましい。

0071

例えば、プロテインAのAドメインが2つ連結してできる連結箇所配列(第1連結エレメント)を変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)とする場合には、C末端のリジン(K)を欠失させたアラニン(A)、アスパラギン酸(D)、アスパラギン(N)、アスパラギン(N)、フェニルアラニン(F)の5つのアミノ酸からなる配列や、C末端のKに加えて1位のAおよび5位のFを欠失させ、D、N、Nの3つのアミノ酸からなる配列などが好ましい例として挙げられる。

0072

本発明の第1の実施形態における第2、3の態様のタンパク質では、連結箇所配列(第1連結エレメント)がプロテインAのいずれかのドメインのC末端のリジン(K)とB、C、およびZドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列からなっている。そのため、野生型アミノ酸配列の連結箇所配列(第1連結エレメント)には、C末端と4位の2つのKが含まれている。よって、変異連結箇所配列(第1連結エレメント)は、連結するドメインのC末端のリジン(K)および4位のリジン(K)を欠失したものであることが好ましい。

0073

例えば、プロテインAのBドメインが2つ連結してできる連結箇所配列(第1連結エレメント)を変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)とする場合には、C末端のリジン(K)および4位のリジン(K)の2つのアミノ酸を欠失させたアラニン(A)、アスパラギン酸(D)、アスパラギン(N)、フェニルアラニン(F)の4つのアミノ酸からなる配列や、C末端のKおよび4位のKに加えて1位のVおよび5位のFを欠失させ、D、Nの2つのアミノ酸からなる配列などが好ましい例として挙げられる。また、連結箇所配列(第1連結エレメント)に含まれるKのどちらか一方を後述する方法で置換する場合には、C末端のKのみを欠失させたり、4位のKのみを欠失させてもよい。

0074

アミノ酸の置換は、元のアミノ酸を削除し、同じ位置に別のアミノ酸を追加する変異のことを意味する。追加される別のアミノ酸は特に限定されるものではなく、例えば、天然のタンパク質構成アミノ酸、タンパク質非構成アミノ酸非天然アミノ酸が挙げられる。この中でも、遺伝子工学的生産の観点から、天然型アミノ酸を好適に用いることができる。

0075

ただし、連結箇所配列(第1連結エレメント)のアミノ酸を置換して変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)とする場合には、変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)にはリジン(K)を含まないような配列とする必要がある。更にアルギニン(R)も含まないような配列であれば、アルギニンを認識するプロテアーゼに対する耐性も向上し好ましい。

0076

従って、置換により導入されるアミノ酸としては、リジン(K)およびアルギニン(R)以外のアミノ酸であれば特に限定されないが、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、ヒスチジン(H)などの親水性アミノ酸;システイン(C)、グリシン(G)、メチオニン(M)、セリン(S)、トレオニン(T)、チロシン(Y)などの中性アミノ酸のいずれかであることが好ましい。この中でも、親水性アミノ酸のいずれかであることがより好ましい。

0077

さらには、アルカリ性条件下での安定性が向上する観点で、アスパラギン酸(D)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、ヒスチジン(H)が好ましい。

0078

本発明の第1の実施形態における第1の態様のタンパク質では、野生型アミノ酸配列の連結箇所配列(第1連結エレメント)には、Kが1つ含まれており、変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)は、連結するドメインのC末端のリジン(K)を置換したものであることが好ましい。

0079

例えば、プロテインAのAドメインが2つ連結してできる連結箇所配列(第1連結エレメント)を変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)とする場合には、C末端のリジン(K)を、リジン(K)およびアルギニン(R)以外のアミノ酸で置換したものであることが好ましい。

0080

具体的には、C末端のリジン(K)をアスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)やヒスチジン(H)で置換した配列や、C末端のKに加えて1位のAおよび5位のFを、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)やヒスチジン(H)で置換した配列などが好ましい例として挙げられる。

0081

本発明の第1の実施形態における第2の態様のタンパク質では、野生型アミノ酸配列の連結箇所配列(第1連結エレメント)には、C末端と4位の2つのKが含まれおり、変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)は、連結するドメインのC末端のリジン(K)および4位のリジン(K)を置換したものであることが好ましい。

0082

例えば、プロテインAのBドメインが2つ連結してできる連結箇所配列(第1連結エレメント)を変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)とする場合には、C末端のリジン(K)および4位のリジン(K)を、リジン(K)およびアルギニン(R)以外のアミノ酸で置換したものであることが好ましい。具体的には、C末端のリジン(K)および4位のリジン(K)をアスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)やヒスチジン(H)で置換した配列や、C末端のKおよび4位のKに加えて1位のVおよび5位のFを、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)やヒスチジン(H)で置換した配列などが好ましい例として挙げられる。

0083

また、連結箇所配列(第1連結エレメント)に含まれるどちらか一方のKを前述した方法で欠失する場合には、C末端のKのみを置換したり、4位のKのみを置換してもよい。

0084

変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)には、野生型アミノ酸配列に含まれる5つのアミノ酸に加えて、追加のアミノ酸配列が挿入されていてもよい。

0085

本発明の第1の実施形態におけるタンパク質においては、C末端のリジン(K)および/または4位のリジン(K)を欠失または置換して変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)とすれば、セリンプロテアーゼに対する耐性を高めることができる。さらに本発明の第1の実施形態のタンパク質では、末端のKおよび/または4位のKが欠失して、4つのアミノ酸からなる変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)とすると、トリプシンやプラスミンなどのセリンプロテアーゼ耐性をさらに高めることができ好ましい。

0086

さらに、理由は定かではないが、野生型アミノ酸配列の連結箇所配列(第1連結エレメント)中のKに加えて他のいくつかのアミノ酸を欠失させて、好ましくは3つ、より好ましくは2つのアミノ酸からなる変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)とすると、セリンプロテアーゼ耐性がさらに高まる傾向があるため好ましい。これは、連結箇所配列(第1連結エレメント)が短くなることで、プロテアーゼとの物理的な接触が抑制されることによるものと推察される。

0087

本発明の第1の実施形態におけるタンパク質はセリンプロテアーゼに対する耐性に加えて、他のプロテアーゼに対する耐性を有していてもよい。例えば、変異連結箇所配列(変異第1連結エレメント)が、疎水性アミノ酸以外のアミノ酸から構成される場合には、サーモリシンに対する耐性を有するため好ましい。

0088

変異結合箇所配列(変異第1連結エレメント)以外に導入されるアミノ酸配列の改変は、特に限定されるものではなく、野生型アミノ酸配列を有するタンパク質に比べて、同等またはそれ以上に、免疫グロブリンのFab領域に対する親和性が低下し、かつ免疫グロブリンに親和性を有していればよい。

0089

変異結合箇所配列(変異第1連結エレメント)以外の部分のアミノ酸配列は、プロテインAのE、D、A、B、C、およびZドメインのいずれかの野生型アミノ酸配列と、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上の配列同一性を有し、その結果、本発明の第1の実施形態におけるタンパク質がFc領域への結合能を有していればよい。

0090

変異を導入して得られるタンパク質の各ドメインは、プロテインAのE、D、A、B、CおよびZドメインのいずれかの野生型アミノ酸配列と、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上のアミノ酸の配列同一性を示す。

0091

上述のタンパク質の具体例として、配列番号48〜57に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。

0092

本発明の第1の実施形態におけるタンパク質はプロテアーゼ、特にセリンプロテアーゼに耐性を有することを特徴とする。セリンプロテアーゼとは、トリプシン、プラスミンなどが例として挙げられ、通常、大腸菌などの微生物やCHO細胞などの培養細胞で生成、蓄積されるプロテアーゼである。

0093

例えば、本発明の第1の実施形態におけるタンパク質を作製する場合には、通常、後述するように、大腸菌などの微生物を宿主とする形質転換体を利用し、形質転換体の細胞内また細胞外にタンパク質を蓄積させて、回収する。目的とするタンパク質を蓄積・回収する際には、宿主となる微生物が生産するプロテアーゼの影響を受けることがある。

0094

また、本発明の第1の実施形態におけるタンパク質を免疫グロブリン結合性アフィニティリガンドとしてアフィニティ分離剤を作製し、免疫グロブリンを精製するために使用する場合には、該アフィニティ分離剤に通過させる免疫グロブリン産生したCHO細胞などの培養上清中に含まれるプロテアーゼの影響を受けることがある。

0095

本発明者らの検討に拠れば、野生型アミノ酸配列を有する多量体タンパク質では、該多量体タンパク質を蓄積・回収した場合に、培養途中、及び回収後の精製・濃縮等の工程でプロテアーゼの影響により切断を受け、目的の多量体タンパク質を得られないことが分かった。

0096

また、野生型アミノ酸配列を有する多量体タンパク質をリガンドとしてアフィニティ分離剤を作製した場合、免疫グロブリン精製用に使用する時にリガンドである多量体タンパク質がプロテアーゼの影響により切断を受け、免疫グロブリン結合性を十分に発揮しないことが明らかになった。これは、プロテアーゼの中でも大腸菌などの微生物やCHO細胞などの培養細胞などが生産するセリンプロテアーゼの影響によるものであり、各ドメインのアミノ酸配列の中でも特定の部分で切断を受けていることが、初めて明らかとなった。

0097

これらの検討結果を考慮して、連結箇所配列(第1連結エレメント)に特定の改変を加えた本発明の第1の実施形態におけるタンパク質は、培養途中、及び回収後の精製・濃縮等の工程においてセリンプロテアーゼによる切断を受けることがなく、蓄積・回収を行うことができる。

0098

また、本発明の第1の実施形態における多量体タンパク質をリガンドとしてアフィニティ分離剤を作製した場合、セリンプロテアーゼの影響を受けることなく、十分な免疫グロブリン結合性を発揮し、目的の免疫グロブリンを精製することが可能である。

0099

免疫グロブリンの精製工程などで用いた場合にプロテアーゼの影響を受けることなくリガンドが安定に機能することができるという効果を顕著に奏する点で、本発明の第1の実施形態におけるタンパク質は、担体に結合しない非固定化ドメインを1つ以上含むことが好ましく、より好ましくは2つ以上、n量体のタンパク質の場合にはn−1個以上が非固定化ドメインであることが好ましく、最も好ましくはn個の全てが非固定化ドメインである。

0100

本発明の第1の実施形態におけるタンパク質が、後段で詳述する非固定化ドメインを含むためには、少なくとも一つ以上のドメインのアミノ酸配列において、アミノ酸の置換や挿入などにより固定化に有用なアミノ酸残基を導入したり、固定化に有用なアミノ酸を欠失させたり、固定化用タグを導入したりすることによって、作製することができる。
本発明の第1の実施形態におけるタンパク質が非固定化ドメインを含むことにより、配向性を調整して担体に固定化することができ、より高い免疫グロブリン結合性を発揮することができるため好ましい。

0101

また、本発明の第1の実施形態におけるアフィニティ分離剤は、繰り返し使用した場合であってもとしても、リガンドの免疫グロブリン結合性が低下することなく、効率的に免疫グロブリンを精製することが可能である。

0102

そのため、本発明の第1の実施形態におけるタンパク質は免疫グロブリンのFc領域への結合活性が十分高くアフィニティリガンドとして好適に用いることができるだけでなく、リガンドとして安定して繰り返し使用することが可能であり、工業的に有利である。

0103

ここで、本明細書においてセリンプロテアーゼ耐性があるかどうかは、次の方法で確認する。2mg/mLのリガンド溶液10μLに1〜10mg/mLのセリンプロテアーゼ溶液を2μL添加した溶液を、37℃、15時間加熱した際に、切断されていないリガンドが多いほど好ましい。セリンプロテアーゼ溶液の濃度は、プロテアーゼの種類によって適宜設定すればよく、例えば、トリプシンは1mg/mLとすることが好ましく、プラスミンは10mg/mLとすることが好ましい。

0104

セリンプロテアーゼ耐性があるものとしては、切断されていないリガンドを80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上保持していることである。なお、切断されているかどうかは、一般に用いられる電気泳動法(SDS−PAGE)により確認する。

0105

[本発明の第2の実施形態]
<タンパク質>
本発明の第2の実施形態におけるタンパク質は、配列番号3〜6に記載のプロテインAのA、B、C、およびZドメインのいずれかに由来するドメインを2つ以上有し、各ドメインを連結する連結エレメント(第2連結エレメント)のうち少なくとも一つは、1以上のアミノ酸からなり、かつ疎水性アミノ酸以外のアミノ酸により構成される変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)であることを特徴とする。

0106

プロテインAは、免疫グロブリン結合性ドメインが5個つながった形で構成されるタンパク質である。複数の微生物がプロテインAを発現するが、プロテインAを発現する微生物として、例えば、スタフィロコッカス(Staphylococcus)が挙げられる。

0107

配列番号3〜6に記載のプロテインAのA、B、C、およびZドメインは、免疫グロブリンの相補性決定領域(CDR)以外の領域に結合することができる免疫グロブリン結合性タンパク質であり、いずれのドメインも、免疫グロブリンのFc領域、Fab領域、および、Fab領域中の特にFv領域の、各々の領域に対して結合する。

0108

図1の配列比較表に示すように、プロテインA由来の、A、B、C、およびZドメインは、互いに相同性の高いアミノ酸配列を有しており、80%以上のアミノ酸配列同一性を有している。なお、ハイフン(−)はCドメインのアミノ酸残基と同じであることを示す。

0109

「プロテインAのA、B、C、およびZドメインのいずれかに由来するドメイン」とは、野生型の各ドメインのアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有するドメインを指し、Fc領域への結合能を有しているタンパク質をコードする限り、野生型の各ドメインのアミノ酸配列に後述する変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)以外の変異が入っていてもよい。

0110

つまり、プロテインAのA、B、C、およびZドメインのいずれかのアミノ酸配列は、変異を導入する前のアミノ酸配列(野生型アミノ酸配列)であり、「プロテインAのA、B、C、およびZドメインのいずれかに由来するドメイン」のアミノ酸配列は、A、B、C、およびZドメインの野生型アミノ酸配列そのもの、または野生型アミノ酸配列に後述する変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)を含む、ならびに/もしくは、部分的なアミノ酸の置換、挿入、欠失、および、化学修飾により改変されたものを指す。

0111

ここで、プロテインAのZドメインは、BドメインにA1VとG29Aという変異を導入して得られたものであり、天然のプロテインAには存在しないドメインであるが、本明細書においては、配列番号6に示したアミノ酸配列をZドメインの野生型アミノ酸配列と称する。

0112

本発明の第2の実施形態におけるタンパク質は、上述した「プロテインAのA、B、C、およびZドメインのいずれかに由来するドメイン」を単ドメインとして2つ以上有する多量体タンパク質(複ドメイン型タンパク質)である。好ましくは3つ以上であり、より好ましくは4つ以上であって、好ましくは10以下、より好ましくは8つ以下、さらに好ましくは6つ以下である。

0113

これらの多量体タンパク質は、単一の免疫グロブリン結合性ドメインの連結体であるホモダイマー、ホモトリマー等のホモポリマーであってもよいし、種類の異なる免疫グロブリン結合性ドメインの連結体であるヘテロダイマー、ヘテロトリマー等のヘテロポリマーであってもよい。好ましくは、本発明の第2の実施形態におけるタンパク質に含まれるドメインのすべてが、配列番号3〜6に記載のプロテインAのA、B、CおよびZドメインのアミノ酸配列のいずれか1種類に由来するホモポリマーである。

0114

本発明の第2の実施形態におけるタンパク質は、2つ以上のドメインのC末端とN末端が連結し、連結エレメント(第2連結エレメント)を構成する。ここで、本発明の第2の実施形態において「連結エレメント(第2連結エレメント)」とは、各ドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列を指す。

0115

つまり、N末端側に他のドメインを連結するドメインにおいては、当該ドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列が連結エレメント(第2連結エレメント)となる。よって、n量体タンパク質においてはn−1個の連結エレメント(第2連結エレメント)が存在する。

0116

以下に示す配列が、プロテインAのA、B、C、およびZドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列である。いずれの配列も5つのアミノ酸からなり、疎水性アミノ酸であるアラニン(A)および/またはフェニルアラニン(F)を含んでいる。

0117

ドメインA A D N N F
ドメインB A D N K F
ドメインC A D N K F
ドメインZ V D N K F

0118

本発明の第2の実施形態におけるタンパク質においては、少なくとも一つの連結エレメント(第2連結エレメント)は部分的なアミノ酸の置換、挿入、欠失、および、化学修飾により改変された変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)であることを特徴としている。変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)とは、1以上のアミノ酸からなり、かつ疎水性アミノ酸以外のアミノ酸により構成される配列である。

0119

本発明の第2の実施形態におけるタンパク質に含まれる連結エレメント(第2連結エレメント)のうち少なくとも一つが変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)であればよいが、3量体以上のタンパク質の場合には2つ以上が変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)であることが好ましく、n量体タンパク質の場合にはn−1個が変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)であること、つまり全ての連結エレメント(第2連結エレメント)が変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)であることがより好ましい。

0120

連結エレメント(第2連結エレメント)は各ドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列からなるが、この配列に対して置換、挿入、欠失、および、化学修飾により改変を行い、1以上のアミノ酸からなり、かつ疎水性アミノ酸以外のアミノ酸により構成される配列が変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)である。

0121

本発明者らの検討により、サーモリシンによって切断を受けやすい箇所が、連結エレメント(第2連結エレメント)中の疎水性アミノ酸のN末端側であることが明らかになった。このことより、連結エレメント(第2連結エレメント)を疎水性アミノ酸以外のアミノ酸により構成される変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)とすると、サーモリシンによるタンパク質の切断を顕著に抑制可能であることを見出した。

0122

具体的には、野生型アミノ酸配列の連結エレメント(第2連結エレメント)におけるAおよびFを、欠失および/または置換することにより、変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)とすることが好ましい。

0123

ここで、本明細書における「疎水性アミノ酸」とはアラニン(A)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、トリプトファン(W)、バリン(V)を指し、「疎水性アミノ酸以外のアミノ酸」とは、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、ヒスチジン(H)、リジン(K)などの親水性アミノ酸;システイン(C)、グリシン(G)、メチオニン(M)、セリン(S)、トレオニン(T)、チロシン(Y)などの天然型中性的なアミノ酸や;アセチルリジン、アジド−Z−リジン、グルタミン酸5−メチル、アスパラギン酸5−メチルなどの非天然型の中性的なアミノ酸を指す。
以下に、変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)の具体的な例について説明する。

0124

連結エレメント(第2連結エレメント)のアミノ酸の一部を欠失させて変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)とする場合には、変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)は1以上のアミノ酸からなることを必須とする。本発明者らの検討に拠れば、連結エレメント(第2連結エレメント)に含まれる5つ全てのアミノ酸を欠失させた場合には、目的とする免疫グロブリンへの結合能力が著しく低下し、当該タンパク質をアフィニティリガンドとして用いると免疫グロブリンとの結合能力が不十分であることが明らかとなった。特に、アフィニティ分離剤として使用する精製条件によってその差が顕著に表れる。

0125

一般に免疫グロブリンは各ドメインよりも大きく、結合した免疫グロブリン同士の立体障害により各ドメインと結合可能な数は限られている。そのため、各ドメインと免疫グロブリンが結合した際に、連結エレメント(第2連結エレメント)が存在せず隣接するドメインが近すぎると、免疫グロブリンが結合可能な空間が不足し、1ドメイン当たりの免疫グロブリン結合数が低下することによるものと推察される。変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)は種々の精製条件において免疫グロブリンとの結合能力に優れるとの理由から1以上のアミノ酸からなることを必須とし、2以上のアミノ酸からなると、目的とする免疫グロブリンへの結合能力がより高くなる傾向があり好ましい。

0126

変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)がプロテインAのA、B、およびCドメインのいずれかに由来するドメインに含まれる場合には、変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)は、A、B、またはCドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列からなり、1位のアラニンおよび/または5位のフェニルアラニンを欠失したものであることが好ましい。

0127

例えば、1位のアラニン(A)および5位のフェニルアラニン(F)の2つのアミノ酸を欠失させたアスパラギン酸(D)、アスパラギン(N)、リジン(K)の3つのアミノ酸からなる配列や、1位のAおよび5位のFに加えて4位のKを欠失させ、D、Nの2つのアミノ酸からなる配列などが好ましい例として挙げられる。また、連結エレメント(第2連結エレメント)に含まれる疎水性アミノ酸を後述する方法で置換する場合には、1位のAのみを欠失させたり、5位のFのみを欠失させてもよい。

0128

変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)がプロテインAのZドメインに由来するドメインに含まれる場合には、変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)は、Zドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列からなり、1位のバリンおよび/または5位のフェニルアラニンを欠失したものであることが好ましい。

0129

例えば、1位のバリン(V)および5位のフェニルアラニン(F)の2つのアミノ酸を欠失させたアスパラギン酸(D)、アスパラギン(N)、リジン(K)の3つのアミノ酸からなる配列や、1位のVおよび5位のFに加えて4位のKを欠失させ、D、Nの2つのアミノ酸からなる配列などが好ましい例として挙げられる。また、連結エレメント(第2連結エレメント)に含まれる疎水性アミノ酸の一部を後述する方法で置換する場合には、1位のVのみを欠失させたり、5位のFのみを欠失させてもよい。

0130

アミノ酸の置換は、元のアミノ酸を削除し、同じ位置に別のアミノ酸を追加する変異のことを意味する。追加される別のアミノ酸は特に限定されるものではなく、例えば、天然のタンパク質構成アミノ酸、タンパク質非構成アミノ酸、非天然アミノ酸が挙げられる。この中でも、遺伝子工学的生産の観点から、天然型アミノ酸を好適に用いることができる。

0131

ただし、連結エレメント(第2連結エレメント)のアミノ酸を置換して変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)とする場合には、変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)には疎水性アミノ酸を含まないような配列とする必要がある。従って、置換により導入されるアミノ酸としては、疎水性アミノ酸以外のアミノ酸であれば特に限定されないが、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、ヒスチジン(H)、リジン(K)などの親水性アミノ酸;システイン(C)、グリシン(G)、メチオニン(M)、セリン(S)、トレオニン(T)、チロシン(Y)などの中性的なアミノ酸のいずれかであることが好ましい。この中でも、親水性アミノ酸のいずれかであることがより好ましい。

0132

さらには、アルカリ性条件下での安定性が向上する観点で、アルギニン(R)、アスパラギン酸(D)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、ヒスチジン(H)、リジン(K)が好ましい。
また、その他のプロテアーゼ、例えば後述するセリンプロテアーゼ、への耐性が向上する観点で、アスパラギン酸(D)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、ヒスチジン(H)が好ましい。

0133

変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)がプロテインAのA、B、およびCドメインのいずれかに由来するドメインに含まれる場合には、前記変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)は、A,B,またはCドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列からなり、1位のアラニンおよび/または5位のフェニルアラニンを、疎水性アミノ酸以外のアミノ酸で置換したものであることが好ましい。

0134

例えば、1位のアラニン(A)および5位のフェニルアラニン(F)の2つのアミノ酸を疎水性アミノ酸以外のアミノ酸で置換した配列や、1位のAおよび5位のFに加えて4位のKを、Kを除く疎水性アミノ酸以外のアミノ酸で置換した配列などが好ましい例として挙げられる。また、連結エレメント(第2連結エレメント)に含まれる疎水性アミノ酸の一部を前述した方法で欠失する場合には、1位のAのみを置換したり、5位のFのみを置換してもよい。

0135

変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)がプロテインAのZドメインに由来するドメインに含まれる場合には、変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)は、Zドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列からなり、1位のバリンおよび/または5位のフェニルアラニンを、疎水性アミノ酸以外のアミノ酸で置換したものであることが好ましい。

0136

例えば、1位のバリン(V)および5位のフェニルアラニン(F)の2つのアミノ酸を疎水性アミノ酸以外のアミノ酸で置換した配列や、1位のVおよび5位のFに加えて4位のKを、Kを除く疎水性アミノ酸以外のアミノ酸で置換した配列などが好ましい例として挙げられる。また、連結エレメント(第2連結エレメント)に含まれる疎水性アミノ酸の一部を前述した方法で欠失する場合には、1位のVのみを置換したり、5位のFのみを置換してもよい。

0137

変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)には、野生型アミノ酸配列に含まれる5つのアミノ酸に加えて、追加のアミノ酸配列が挿入されていてもよい。例えば、連結エレメント(第2連結エレメント)に含まれる疎水性アミノ酸の一部を前述した方法で置換した配列に、更に疎水性アミノ酸以外のアミノ酸を挿入し、6以上のアミノ酸からなる変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)とすることも出来る。

0138

また、連結エレメント(第2連結エレメント)に含まれる疎水性アミノ酸の一部を前述した方法で欠失した配列から、更に一部または全部のアミノ酸を欠失し、疎水性アミノ酸以外のアミノ酸からなる任意の変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)を挿入することも出来る。また、リジン残基アセチル化プロリン残基ヒドロキシル化などの化学修飾なども、抗体との結合性などに影響のない範囲で可能である。

0139

ただし、得られるタンパク質の立体構造が大きく変化すると、目的とする免疫グロブリンへの親和性及び結合能に変化を与える可能性があることから、野生型アミノ酸配列の連結エレメント(第2連結エレメント)にさらに追加のアミノ酸配列を挿入しないことが好ましい。

0140

置換、挿入などにより変異を導入された変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)を構成するアミノ酸としては、疎水性アミノ酸以外のアミノ酸であれば特に限定されないが、好ましくはアルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、ヒスチジン(H)、リジン(K)などの親水性アミノ酸であり、より好ましくはアスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、ヒスチジン(H)である。

0141

変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)以外に導入されるアミノ酸配列の改変は、特に限定されるものではなく、野生型アミノ酸配列を有するタンパク質に比べて、同等またはそれ以上に免疫グロブリンに親和性及び結合能を有していればよい。

0142

変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)以外の部分のアミノ酸配列は、プロテインAのA、B、C、およびZドメインのいずれかの野生型アミノ酸配列と、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上の配列同一性を有し、その結果、本発明の第2の実施形態におけるタンパク質がFc領域への結合能を有していればよい。

0143

変異を導入して得られるタンパク質の各ドメインは、プロテインAのA、B、CおよびZドメインのいずれかの野生型アミノ酸配列と、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上のアミノ酸の配列同一性を示す。

0144

免疫グロブリンへの親和性及び結合能以外に有用なリガンドの特性指標として、耐アルカリ性や弱酸性溶出性が挙げられる。これらを改良するために、変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)以外のアミノ酸配列の改変をすることは、本発明においては両立可能であり、好ましい形態といえる。

0145

耐アルカリ性とは、0.1N NaOHや0.5N NaOHなどのアルカリ溶液に浸漬した際に、免疫グロブリンとの親和性及び結合能を高く維持していることをいう。これにより、耐アルカリ性を有するタンパク質をアフィニティリガンドとして用いて分離剤とした際に、アルカリ溶液での洗浄を繰り返しても高い分離精製能を維持することができる。なお、CドメインおよびZドメインはもともと高い耐アルカリ性を有していることが知られており、耐アルカリ性においては好ましい配列である。

0146

また弱酸性溶出性とは、アフィニティリガンドを固定化した分離剤にて免疫グロブリンを吸着精製する際に、通常、酸性で溶出する免疫グロブリンを、より高いpHのマイルドな条件で溶出可能であることをいう。これにより、溶出する際にタンパク質の凝集といった変性を抑えることが可能である。特許文献5や国際公開第2010/118699号などに記載されている弱酸性溶出性を付与する変異は、本発明においては両立可能であり好ましい形態といえる。

0147

上述のタンパク質の具体例として、配列番号105〜115に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。

0148

本発明の第2の実施形態におけるタンパク質はプロテアーゼ、特にサーモリシンに耐性を有することを特徴とする。本発明の第2の実施形態におけるタンパク質を作製する場合に、通常、後述するように、微生物を宿主とする形質転換体を利用し、形質転換体の細胞内または細胞外にタンパク質を蓄積させて、回収する。目的とするタンパク質を蓄積・回収する際には、宿主となる微生物が生産するプロテアーゼの影響を受けることがある。

0149

本発明者らの検討に拠れば、野生型アミノ酸配列を有する多量体タンパク質を上記の方法により蓄積・回収した場合に、培養途中、及び回収後の精製・濃縮等の工程でプロテアーゼの影響により切断を受け、目的の多量体タンパク質を得られないことが分かった。これは、プロテアーゼの中でもバチルス属細菌などが生産するサーモリシンの影響によるものであり、各ドメインのアミノ酸配列の中でも特定の部分で切断を受けていることが、初めて明らかとなった。

0150

これらの検討結果を考慮して、連結エレメント(第2連結エレメント)に特定の改変を加えた本発明の第2の実施形態におけるタンパク質は、培養途中、及び回収後の精製・濃縮等の工程においてサーモリシンによる切断を受けることがなく、蓄積・回収を行うことができる。そのため、本発明の第2の実施形態におけるタンパク質は免疫グロブリンのFc領域への結合活性が十分高くアフィニティリガンドとして好適に用いることができるだけでなく、高効率で生産可能であり、工業的に有利である。

0151

ここで、本明細書においてサーモリシン耐性があるかどうかは、次の方法で確認する。2mg/mLのリガンド溶液10μLに1mg/mLのサーモリシン溶液を2μL添加した溶液を、37℃、15分間加熱した際に、切断されていないリガンドが多いほど好ましい。例えば切断されていないリガンドを80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上保持していることが好ましい。なお、切断されているかどうかは、一般に用いられる電気泳動法(SDS−PAGE)により確認する。

0152

本発明の第2の実施形態におけるタンパク質は、変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)を有することによりサーモリシンに対する耐性を有するが、さらに他のプロテアーゼに対する耐性を有するアミノ酸配列であることが好ましい。他のプロテアーゼとしては、例えばトリプシンやプラスミン等のセリンプロテアーゼが挙げられる。

0153

本発明の第2の実施形態におけるタンパク質をリガンドとして用いたアフィニティ分離剤を用いて組換え培養細胞で生産されたIgG抗体を精製する場合にあっては、該培養細胞が産生するセリンプロテアーゼによってリガンドが切断され、十分な免疫グロブリン結合性を発揮できない可能性がある。よって、本発明の第2の実施形態におけるタンパク質が、さらにセリンプロテアーゼに対する耐性を有するアミノ酸配列であることが好ましい。

0154

上記の理由により、少なくとも一つのドメインのアミノ酸配列におけるC末端のリジンを欠失または置換したものであることが好ましい。本発明者らの検討により、トリプシンやプラスミンなどのセリンプロテアーゼによって切断を受けやすい箇所が、各ドメインの野生型アミノ酸配列で存在するC末端リジン(K)のC末端側であることが明らかになった。このことより、各ドメインの連結エレメント(第2連結エレメント)が結合するC末端リジン(K)を欠失または置換により含まないようなアミノ酸配列で構成されるとすると、セリンプロテアーゼによるタンパク質の切断を顕著に抑制可能であることを見出した。

0155

より好ましくは、C末端側に前記変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)を結合するドメインにおいて、該ドメインのアミノ酸配列におけるC末端のリジンを欠失または置換したものである。

0156

さらに好ましくは、変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)にもリジンを含まないものである。先に示した通り、B、C、Zドメインの野生型アミノ酸配列では、連結エレメント(第2連結エレメント)中の4位にリジンを含んでいる。

0157

本発明者らの検討により、連結エレメント(第2連結エレメント)中のリジンについても比較的セリンプロテアーゼによる切断を受けやすいことが明らかとなったので、変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)においては、リジン(K)を欠失または置換することにより含まないようなアミノ酸配列とすることが好ましい。さらに好ましくは、変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)はアルギニン(R)を含まないものである。
以下に、セリンプロテアーゼ耐性を有する変異連結エレメントの具体的な例について説明する。

0158

各ドメインのC末端リジン(K)および/または連結エレメント(第2連結エレメント)のアミノ酸の一部を欠失させる場合が挙げられる。連結エレメント(第2連結エレメント)がAドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列からなっている場合には、各ドメインのC末端のKのみを欠失させればよい。

0159

一方で、連結エレメント(第2連結エレメント)がB、C、およびZドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列からなっている場合には、C末端と4位の2つのKが含まれており、少なくともC末端のKを欠失させることが好ましく、さらに連結エレメント(第2連結エレメント)中のKも欠失させることがより好ましい。

0160

例えば、プロテインAのBドメインが2つ連結してできる連結エレメント(第2連結エレメント)が疎水性アミノ酸の欠失により作製された変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)である場合、さらにC末端のリジン(K)を欠失させたアスパラギン酸(D)、アスパラギン(N)、リジン(K)の3つのアミノ酸からなる配列や、さらにC末端のリジン(K)および4位のリジン(K)の2つのアミノ酸を欠失させたアスパラギン酸(D)、アスパラギン(N)の2つのアミノ酸からなる配列が、好ましい例として挙げられる。

0161

また、C末端のKおよび連結エレメント(第2連結エレメント)に含まれるKのどちらか一方を後述する方法で置換する場合には、C末端のKのみを欠失させたり、4位のKのみを欠失させてもよい。

0162

各ドメインのC末端リジン(K)および/または連結エレメント(第2連結エレメント)のアミノ酸の一部を置換する場合には、元のアミノ酸を削除し、同じ位置に別のアミノ酸を追加することが挙げられる。追加される別のアミノ酸は特に限定されるものではなく、例えば、天然のタンパク質構成アミノ酸、タンパク質非構成アミノ酸、非天然アミノ酸が挙げられる。この中でも、遺伝子工学的生産の観点から、天然型アミノ酸を好適に用いることができる。

0163

ただし、連結エレメント(第2連結エレメント)のアミノ酸を置換して変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)とする場合には、疎水性アミノ酸以外のアミノ酸で構成されることが必要であり、変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)にはリジン(K)を含まないような配列とすることが好ましい。更にアルギニン(R)も含まないような配列であれば、アルギニンを認識するプロテアーゼに対する耐性も向上し好ましい。

0164

従って、置換により導入されるアミノ酸としては、疎水性アミノ酸、リジン(K)およびアルギニン(R)以外のアミノ酸であれば特に限定されないが、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、ヒスチジン(H)などの親水性アミノ酸;システイン(C)、グリシン(G)、メチオニン(M)、セリン(S)、トレオニン(T)、チロシン(Y)などの中性アミノ酸のいずれかであることが好ましい。この中でも、上記の親水性アミノ酸のいずれかであることがより好ましい。さらには、アルカリ性条件下での安定性が向上する観点で、アスパラギン酸(D)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、ヒスチジン(H)が好ましい。

0165

連結エレメント(第2連結エレメント)がAドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列からなっている場合には、各ドメインのC末端のKのみを置換すればよい。一方で、連結エレメント(第2連結エレメント)がB、C、およびZドメインのアミノ酸配列における1位から5位までの配列からなっている場合には、C末端と4位の2つのKが含まれており、少なくともC末端のKを置換することが好ましく、さらに連結エレメント(第2連結エレメント)中のKも置換することがより好ましい。

0166

例えば、プロテインAのBドメインが2つ連結してできる連結エレメント(第2連結エレメント)が疎水性アミノ酸の置換により作製された変異連結エレメント(変異第2連結エレメント)である場合、さらにC末端のリジン(K)を疎水性アミノ酸、リジン(K)およびアルギニン(R)以外のアミノ酸で置換したものであることが好ましく、さらにC末端のリジン(K)および4位のリジン(K)の2つのアミノ酸を疎水性アミノ酸、リジン(K)およびアルギニン(R)以外のアミノ酸で置換したものであることがより好ましい。具体的には、1位のVおよび5位のFに加えてC末端のKおよび4位のKを、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)やヒスチジン(H)で置換した配列などが好ましい例として挙げられる。

0167

また、C末端のKおよび連結エレメント(第2連結エレメント)に含まれるどちらか一方のKを前述した方法で欠失する場合には、C末端のKのみを置換したり、4位のKのみを置換してもよい。

0168

上記の変異を加入することにより、本発明の第2の実施形態におけるタンパク質はセリンプロテアーゼに耐性を有することが可能となる。セリンプロテアーゼとは、トリプシン、プラスミンなどが例として挙げられ、通常、大腸菌などの微生物やCHO細胞などの培養細胞で生成、蓄積されるプロテアーゼである。

0169

本発明の第2の実施形態におけるタンパク質を免疫グロブリン結合性アフィニティリガンドとしてアフィニティ分離剤を作製し、免疫グロブリンを精製するために使用する場合には、該アフィニティ分離剤に通過させる抗体産生したCHO細胞などの培養上清中に含まれるプロテアーゼの影響を受けることがある。

0170

本発明者らの検討に拠れば、セリンプロテアーゼの影響により、各ドメインのアミノ酸配列の中でも特定の部分で切断を受けていることが、初めて明らかとなった。これらの検討結果を考慮して、セリンプロテアーゼに耐性を有するアミノ酸配列に改変された本発明の第2の実施形態におけるタンパク質をリガンドとしてアフィニティ分離剤を作製した場合、セリンプロテアーゼの影響を受けることなく、十分な免疫グロブリン結合性を発揮し、目的の免疫グロブリンを精製することが可能である。

0171

また、本発明の第2の実施形態におけるアフィニティ分離剤は、繰り返し使用した場合であっても、リガンドの免疫グロブリン結合性が低下することなく、効率的に免疫グロブリンを精製することが可能である。

0172

そのため、本発明の第2の実施形態におけるタンパク質は免疫グロブリンのFc領域への結合活性が十分高くアフィニティリガンドとして好適に用いることができるだけでなく、リガンドとして安定して繰り返し使用することが可能であり、工業的に有利である。

0173

ここで、本明細書においてセリンプロテアーゼ耐性があるかどうかは、次の方法で確認する。2mg/mLのリガンド溶液10μLに1〜10mg/mLのセリンプロテアーゼ溶液を2μL添加した溶液を、37℃、15時間加熱した際に、切断されていないリガンドが多いほど好ましい。セリンプロテアーゼ溶液の濃度は、プロテアーゼの種類によって適宜設定すればよく、例えば、トリプシンは1mg/mLとすることが好ましく、プラスミンは10mg/mLとすることが好ましい。

0174

セリンプロテアーゼ耐性があるものとしては、切断されていないリガンドを80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上保持していることが好ましい。なお、切断されているかどうかは、一般に用いられる電気泳動法(SDS−PAGE)により確認する。

0175

<タンパク質の製造方法>
本発明の第1の実施形態及び第2の実施形態のタンパク質(本発明のタンパク質)の製造方法について以下に説明する。
本発明のタンパク質は、上記のタンパク質をコードする塩基配列を有するDNAを作製し、該DNAを翻訳して製造することができる。具体的には、該DNAを含むベクターを用いて、宿主となる微生物を形質転換した形質転換体、または該DNAを用いた無細胞タンパク質合成系を利用して製造することができる。

0176

本発明のタンパク質をコードする塩基配列を有するDNAは、通常用いられる公知の方法、例えば、ポリメラーゼチェーンリアクション(以下、PCRと略す)法を利用して取得できる。また、公知の化学合成法で合成することも可能であり、さらに、ゲノムDNAライブラリーから得ることもできる。当該DNAを構成する塩基配列は、コドン縮重コドンで置換されていてもよく、翻訳されたときに同一のアミノ酸をコードしている限り、本来の塩基配列と同一である必要性は無い。

0177

本発明のタンパク質をコードするDNAに部位特異的に変異を導入する方法としては、以下のように、遺伝子組換え技術PCR法等を用いて行うことができる。

0178

すなわち、遺伝子組換え技術による変異の導入は、例えば、本発明のタンパク質をコードする遺伝子中において、変異導入希望する目的の部位の両側に適当な制限酵素認識配列が存在する場合に、それら制限酵素認識配列部分を前記制限酵素で切断し、変異導入を希望する部位を含む領域を除去した後、化学合成等によって目的の部位のみに変異導入したDNA断片を挿入するカセット変異法によって行うことができる。

0179

また、PCRによる部位特異的変異の導入は、例えば、タンパク質をコードする二本鎖プラスミド鋳型として、+および−鎖に相補的な変異を含む2種の合成オリゴプライマーを用いてPCRを行うダブルプライマー法により、行うことができる。

0180

また、本発明の単量体タンパク質(1つのドメイン)をコードするDNAを、意図する数だけ直列に連結することにより、多量体タンパク質をコードするDNAを作製することもできる。例えば、多量体タンパク質をコードするDNAの連結方法は、DNA配列に適当な制限酵素部位を導入し、制限酵素で断片化した2本鎖DNAをDNAリガーゼで連結することができる。制限酵素部位は1種類でもよいが、複数の異なる種類の制限酵素部位を導入することもできる。

0181

多量体タンパク質をコードするDNAを作製する方法は、これら連結する方法に限らない。例えば、プロテインAをコードするDNA(例えば、国際公開第2006/004067号)に上記の変異導入法を適用することで作製することも可能である。

0182

また、多量体タンパク質をコードするDNAにおいて、各々の単量体タンパク質をコードする塩基配列が同一の場合には、宿主にて相同組換えを誘発する可能性があるので、好ましくは連結されている単量体タンパク質をコードするDNAの塩基配列間の配列同一性が90%以下、より好ましくは85%以下であることが好ましい。

0183

ベクターは、前述したタンパク質、または、その部分アミノ酸配列をコードする塩基配列を含むDNA、およびその塩基配列に作動可能に連結された宿主で機能しうるプロモーターを含む。通常は、前述したタンパク質をコードする遺伝子を含むDNAを、適当なベクターに連結もしくは挿入することにより得ることができる。

0184

遺伝子を挿入するためのベクターは、宿主中で自律複製可能なものであれば特に限定されず、プラスミドDNAやファージDNAをベクターとして用いることができる。例えば、大腸菌を宿主として用いる場合には、pQE系ベクター(キアゲン社製)、pET系ベクター(メルク社製)、および、pGEX系ベクター(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)のベクターなどが挙げられる。

0185

ベクターとしては、形質転換の宿主としてブレビバチルス属細菌を使用する場合には、例えば、枯草菌ベクターとして公知であるpUB110、または、pHY500(日本国特開平2−31682号公報)、pNY700(日本国特開平4−278091号公報)、pNU211R2L5(日本国特開平7−170984号公報)、pHT210(日本国特開平6−133782号公報)、または、大腸菌とブレビバチルス属細菌とのシャトルベクターであるpNCMO2(日本国特開2002−238569号公報)などが挙げられる。

0186

宿主となる細胞へ本発明のタンパク質をコードするDNAを含むベクターを導入することにより形質転換体を得ることができる。宿主へのベクターの形質転換の方法としては、例えばカルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法スフェロプラスト法、酢酸リチウム法、アグロバクテリウム染法パーティクルガン法、または、ポリエチレングリコール法などが挙げられるが、これに限定されるものではない。

0187

また、ベクターを宿主で維持する方法としては、例えば、細胞内でゲノム染色体)から独立してベクターの自律複製により維持する方法や、作製した遺伝子をゲノム(染色体)に組み込み、ゲノムの複製に依存して維持する方法などが挙げられる。

0188

宿主となる細胞については、特に限定されるものではないが、安価に大量生産する上では、好ましくは、大腸菌、枯草菌、ブレビバチルス属、スタフィロコッカス属ストレプトコッカス属、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)等のバクテリア真正細菌)を好適に使用しうる。より好ましくは、枯草菌、ブレビバチルス属、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)等のグラム陽性菌がよい。さらに好ましくは、プロテインAの大量生産への適応例(国際公開第2006/004067号)が公知である、ブレビバチルス属細菌がよい。

0189

ブレビバチルス属細菌としては、限定されないが、Brevibacillus agri、B.borstelensis、B.brevis、B.centrosporus、B.choshinensis、B.formosus、B.invocatus、B.laterosporus、B.limnophilus、B.parabrevis、B.reuszeri、B.thermoruberが例示される。

0190

好ましくは、ブレビバチルス・ブレビス47株(JCM6285)、ブレビバチルス・ブレビス47K株(FERM BP−2308)、ブレビバチルス・ブレビス47−5Q株(JCM8970)、ブレビバチルス・チョウシネンシスHPD31株(FERM BP−1087)およびブレビバチルス・チョウシネンシスHPD31−OK株(FERM BP−4573)が例示される。

0191

生産量の向上などの目的に応じて、上記ブレビバチルス属細菌のプロテアーゼ欠損株、高発現株、または、芽胞形成能欠失株のような変異株(または、誘導株)を使用してもよい。具体的に挙げれば、ブレビバチルス・チョウシネンシスHPD31由来のプロテアーゼ変異株であるブレビバチルス・チョウシネンシスHPD31−OK(日本国特開平6−296485号公報)や、芽胞形成能を有しないブレビバチルス・チョウシネンシスHPD31−SP3(国際公開第2005/045005号公報)が使用できる。

0192

本発明のタンパク質は、形質転換体、または上記のDNAを用いた無細胞タンパク質合成系を利用して製造することができる。

0193

形質転換体を使用してタンパク質を製造する場合、タンパク質は、形質転換体の細胞内(ぺリプラズム領域内を含む)、または、培養溶液(細胞外)に蓄積させて回収することができる。細胞内に蓄積すると、発現タンパク質酸化を防ぐことができ、培地成分との副反応もない点で有利であり、ペリプラズム領域内に蓄積すると、細胞内プロテアーゼによる分解を抑えることができる点で有利である。

0194

一方、形質転換体の細胞外にタンパク質を分泌すると、菌体破砕や抽出の工程が不要となるため、製造コストが抑えられる点で有利である。一方で、プロテアーゼも分泌する宿主の場合、培養途中で目的とするタンパク質が分解される可能性がある。

0195

具体的方法として、タンパク質が培養細胞内(ぺリプラズム領域内を含む)に蓄積される場合には、例えば、培養液から遠心分離、ろ過などの方法により菌体を採取し、次いで、この菌体を超音波破砕法、フレンチプレス法などにより破砕し、および/または、界面活性剤等を添加して可溶化することにより、細胞内に蓄積生産されたタンパク質を回収することができる。このときプロテアーゼも溶出してくると、目的とするタンパク質が分解される可能性がある。

0196

組換えタンパク質が分泌生産される場合には、培養終了後に、遠心分離、ろ過などの一般的な分離方法で、培養細胞と分泌生産されたタンパク質を含む上清を分離することにより生産された組換えタンパク質を回収することができる。

0197

本発明のタンパク質を無細胞タンパク質合成系により製造する場合、無細胞タンパク質合成系としては、細胞抽出液を使用してインビトロでタンパク質を合成する系であれば特に限定されず、例えば、原核細胞由来、植物細胞由来高等動物細胞由来の合成系などを使用することができる。

0198

本発明のタンパク質は、前記した形質転換体を培地で培養し、他のタンパク質との融合タンパク質の形態で発現させ、該培養物から該融合タンパク質を採取し、該融合タンパク質を適切なプロテアーゼによって切断し、所望のタンパク質を採取することにより製造することもできる。

0199

前記した形質転換体を培地で培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。得られた形質転換体の培養に用いる培地は、該タンパク質を高効率、高収量で生産できるものであれば特に制限は無い。

0200

具体的には、グルコース蔗糖グリセロールポリペプトン肉エキス酵母エキスカザミノ酸などの炭素源窒素源を使用することが出来る。その他、カリウム塩ナトリウム塩リン酸塩マグネシウム塩マンガン塩亜鉛塩鉄塩等の無機塩類が必要に応じて添加される。栄養要求性宿主細胞を用いる場合は、生育に要求される栄養物質を添加すればよい。また、必要であればペニシリンエリスロマイシンクロラムフェニコールネオマイシンカナマイシンなどの抗生物質が添加されてもよい。

0201

大腸菌を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、特に限定されないが、例えば、LB培地トリプトン1%、酵母エキス0.5%、NaCl1%)、または、2xYT培地(トリプトン1.6%、酵母エキス1.0%、NaCl0.5%)等が挙げられる。

0202

ブレビバチルス属細菌を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、特に限定されないが、例えば、TM培地(ペプトン1%、肉エキス0.5%、酵母エキス0.2%、グルコース1%;pH7.0)、または、2SL培地(ペプトン4%、酵母エキス0.5%、グルコース2%;pH7.2)等が挙げられる。

0203

さらに、菌体内外に存在する宿主由来のプロテアーゼによる当該目的タンパク質の分解、低分子化を抑えるために、公知の各種プロテアーゼ阻害剤、すなわちPhenylmethane sulfonyl fluoride(PMSF)、Benzamidine、4−(2−aminoethyl)−benzenesulfonyl fluoride(AEBSF)、Antipain、Chymostatin、Leupeptin、Pepstatin A、Phosphoramidon、Aprotinin、Ethylenediaminetetra acetic acid(EDTA)、および/または、その他市販されているプロテアーゼ阻害剤を適当な濃度で添加してもよい。

0204

さらに、本発明のタンパク質を正しくフォールディングさせるために、例えば、GroEL/ES、Hsp70/DnaK、Hsp90、Hsp104/ClpBなどの分子シャペロンを利用してもよい。分子シャペロンは、例えば、共発現、または、融合タンパク質化などの手法で、本発明のタンパク質と共存させることができる。タンパク質の正しいフォールディングを目的とする場合には、正しいフォールディングを助長する添加剤を培地中に加える、および、低温にて培養するなどの手法も可能であるが、これらに限定されるものではない。

0205

組換えタンパク質は、培養温度は15〜42℃、好ましくは20〜37℃で、通気攪拌条件好気的に数時間〜数日培養することにより製造することができる。場合によっては、通気を遮断嫌気的に培養してもよい。

0206

組換えタンパク質の精製はアフィニティクロマトグラフィー、陽イオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィーゲル濾過クロマトグラフィー等を単独でまたは適宜組み合わせることによって行うことができる。

0207

得られた精製物質が目的のタンパク質であることの確認は、通常の方法、例えばSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、N末端アミノ酸配列分析ウエスタンブロッティング酵素免疫測定法ELISA)等により行うことができる。

0208

<アフィニティ分離剤>
本発明のタンパク質をアフィニティリガンドとして、水不溶性の基材からなる担体に固定化することにより、本発明のアフィニティ分離剤を得ることができる。ここで、「アフィニティリガンド」とは、抗原と免疫グロブリンの結合に代表される、特異的な分子間の親和力に基づいて、ある分子の集合から目的の分子を選択的に捕集(結合)する物質(官能基)を指す用語であり、本明細書においては、免疫グロブリンに対して特異的に結合するタンパク質を指す。本明細書においては、単に「リガンド」と表記した場合も、「アフィニティリガンド」と同意である。

0209

本発明に用いる水不溶性の基材からなる担体としては、ガラスビーズシリカゲルなどの無機担体架橋ポリビニルアルコール架橋ポリアクリレート架橋ポリアクリルアミド架橋ポリスチレンなどの合成高分子や;結晶性セルロース架橋セルロース架橋アガロース架橋デキストランなどの多糖類からなる有機担体;さらにはこれらの組み合わせによって得られる有機−有機、有機−無機などの複合担体などが挙げられる。

0210

市販品としては、多孔質セルロースゲルであるGCL2000(生化学工業株式会社製)、アリデキストランメチレンビスアクリルアミド共有結合で架橋したSephacryl(登録商標)S−1000(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)、アクリレート系の担体であるToyopearl(登録商標)(東ソー株式会社製)、アガロース系の架橋担体であるSepharose(登録商標)CL4B(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)、および、セルロース系の架橋担体であるCellufine(登録商標)(JNC株式会社製)などを例示することができる。ただし、本発明における水不溶性担体は、例示したこれらの担体のみに限定されるものではない。

0211

また、本発明に用いる水不溶性担体は、本発明のアフィニティ分離剤の使用目的および方法からみて、表面積が大きいことが好ましく、適当な大きさの細孔を多数有する多孔質であることが好ましい。担体の形態としては、ビーズ状、モノリス状、繊維状、膜状(中空糸を含む)などいずれも可能であり、任意の形態を選ぶことができる。

0212

リガンドの固定化方法については、例えば、リガンドに存在するアミノ基、カルボキシル基ヒドロキシル基カルボアミド基、ポリエチレンオキシ基、または、チオール基を利用した、従来のカップリング法で担体に結合してよい。

0213

カップリング法としては、担体を臭化シアンエピクロロヒドリンジグリシジルエーテルトシルクロライドトレシルクライドヒドラジン、および、過ヨウ素酸ナトリウムなどと反応させて担体を活性化し(あるいは担体表面に反応性官能基を導入し)、リガンドとして固定化する化合物カップリング反応を行い固定化する方法、また、担体とリガンドとして固定化する化合物が存在する系にカルボジイミドのような縮合試薬、または、グルタルアルデヒドのように分子中に複数の官能基を持つ試薬を加えて縮合、架橋することによる固定化方法が挙げられる。

0214

また、リガンドと担体の間に複数の原子からなるスペーサー分子を導入してもよいし、担体にリガンドを直接固定化してもよい。したがって、固定化のために、本発明のタンパク質に対して、化学修飾してもよいし、固定化に有用なアミノ酸残基を加えてもよい。

0215

固定化に有用なアミノ酸残基を付加した場合、付加したアミノ酸残基を固定化用タグと称する。固定化用タグはアミノ酸残基を1以上の任意の数だけ付加でき、付加する位置はリガンドのN末端側および/またはC末端側が挙げられる。固定化に有用なアミノ酸としては、側鎖に固定化の化学反応に有用な官能基を有しているアミノ酸が挙げられ、例えば、側鎖にアミノ基を含むリジン(K)や、側鎖にチオール基を含むシステイン(C)が挙げられる。

0216

一方、担体にリガンドを直接固定化する方法としては、リガンドのアミノ酸配列の任意の箇所に、固定化に有用なアミノ酸を置換・挿入することが挙げられる。

0217

本発明の本質は、本発明においてタンパク質に付与した効果が、該タンパク質をリガンドとして固定化した分離剤(マトリックス)においても同様に付与されることにあり、固定化のためにいかように修飾・改変しても、本発明の範囲に含まれる。

0218

本発明のアフィニティ分離剤におけるリガンドと担体の固定化様式としては、多点固定と単点固定が挙げられる。多点固定とはリガンド本体および/または固定化タグが2点以上で担体と化学結合して固定化している様式をいい、単点固定とはリガンド本体または固定化タグが1点で担体と化学結合して固定化している様式をいう。

0219

リガンドが担体に結合して固定化された場合、リガンドに含まれる2以上のドメインは、それぞれ固定化ドメインと非固定化ドメインに区別される。ここでいう固定化ドメインとは、担体と多点あるいは単点で結合しているドメインであり、非固定化ドメインとは担体と結合していないドメインである。

0220

本発明のアフィニティ分離剤においては、抗体の精製工程などで用いた場合にプロテアーゼの影響を受けることなくリガンドが安定に機能することができるという効果を顕著に奏する点で、リガンドは非固定化ドメインを1つ以上含むことが好ましく、好ましくは2つ以上、n量体のリガンドの場合にはn−1個以上が非固定化ドメインであることが好ましく、最も好ましくはn個の全てが非固定化ドメインである。

0221

担体に固定化されたリガンドにおける固定化ドメイン−非固定化ドメインのパターンとしては、以下の4つが挙げられる。
(1)リガンド中のすべてのドメインが固定化ドメインである場合
(2)リガンド中のN末端および/またはC末端側のドメインが1つ以上固定化ドメインである場合
(3)リガンド中の両末端以外のドメインが1つ以上固定化ドメインである場合
(4)リガンドのN末端および/またはC末端に固定化用タグを導入し、固定化ドメインが存在しない場合

0222

以下、4量体のタンパク質をリガンドとして担体に固定化した場合の模式図である図2〜5を例にして説明するが、2量体以上のタンパク質であれば同様に考えられる。なお、図2〜5において、4量体に含まれる4つのドメインを、ぞれぞれa〜dと示し、第1および第2連結エレメントに相当するアミノ酸配列を、a〜dを繋ぐ実線で示した。なお、a〜dのアミノ酸配列は同一であっても、異なっていてもよく、aとdはそれぞれC末端側またはN末端側のどちらの場合でも同様に考えることができる。

0223

上記(1)の場合には、非固定化ドメインは形成されない。例えば図2に模式的に示される場合であり、a〜dのすべてのドメインが担体に結合しているため、アフィニティ分離剤を精製工程で使用する際にプロテアーゼの影響で連結エレメントが切断されても、リガンドは担体に結合したまま機能することができる。

0224

上記(2)の場合には、非固定化ドメインが1つ以上存在する場合であり、図3(A)〜(C)に模式的に示される。図3(A)では、リガンドのN末端またはC末端から2つのドメイン(a,b)が担体に結合する固定化ドメインであり、反対側の末端の2つのドメイン(c,d)が担体に結合しない非固定化ドメインである。この場合、aとbの連結エレメントが切断されてもリガンドは機能することができるが、bとcまたはcとdの連結エレメントが切断されるとcとdは担体から脱離してリガンドとしての機能を果たさなくなるため好ましくない。

0225

図3(B)では、リガンドのN末端またはC末端のドメイン(a)が担体に結合する固定化ドメインであり、それに連結する3つのドメイン(b,c,d)が担体に結合しない非固定化ドメインである。この場合、aとb、bとcまたはcとdの何れの連結エレメントが切断されても、b〜dは担体から脱離してリガンドとしての機能を果たさなくなるため好ましくない。なかでもaとbの連結エレメントのように固定化ドメインと非固定化ドメインとの連結エレメントが切断されると、該非固定化ドメインに連続して結合するドメインも機能しなくなるため特に問題となる。

0226

図3(C)では、リガンドのN末端およびC末端のドメイン(a,d)が担体に結合する固定化ドメインであり、その間の2つのドメイン(b,c)が担体に結合しない非固定化ドメインである。この場合、aとb、bとcまたはcとdの何れか2つ以上の連結エレメントが切断されれば、b,cは担体から脱離してリガンドとしての機能を果たさなくなるため好ましくない。

0227

上記(3)の場合には、非固定化ドメインが1つ以上存在する場合であり、図4(A)、図4(B)に模式的に示される。図4(A)では、リガンドのN末端とC末端の中間に存在する1つのドメイン(c(bでも同様))が担体に結合する固定化ドメインであり、両末端の2つのドメイン(a,d)とそれに連結する1つのドメイン(b(cでも同様))が担体に結合しない非固定化ドメインである。この場合、aとb、bとcまたはcとdの何れの連結エレメントが切断されても、a,b,dは担体から脱離してリガンドとしての機能を果たさなくなるため好ましくない。なかでもbとc、cとdの連結エレメントのように固定化ドメインと非固定化ドメインとの連結エレメントが切断されるのが特に問題となる。

0228

図4(B)では、リガンドのN末端とC末端の中間に存在する2つのドメイン(b,c)が担体に結合する固定化ドメインであり、両末端の2つのドメイン(a,d)が担体に結合しない非固定化ドメインである。この場合、bとcの連結エレメントが切断されてもリガンドは機能することができるが、aとbまたはcとdの連結エレメントが切断されるとcとdは担体から脱離してリガンドとしての機能を果たさなくなるため好ましくない。

0229

上記(4)の場合には、固定化用タグを導入して担体との結合を形成しており、すべてのドメインが非固定化ドメインとなる場合であって、図5(A)、図5(B)に模式的に示される。図5(A)では、リガンドのN末端またはC末端のドメイン(a)の末端配列に固定化用タグを導入して担体に結合させている。この場合、aとb、bとcまたはcとdの何れの連結エレメントが切断されてもb〜dは担体から脱離してリガンドとしての機能を果たさなくなる好ましくない。固定化タグを有するaを固定化ドメインとして考えると、aとbとの連結エレメントの切断が上述した図3(B)と同様に特に問題となる。加えて、aの末端配列がプロテアーゼで切断されるとすべてのドメインが脱離してリガンドとして機能しなくなるため特に問題となる。このため、aの固定化用タグを連結する末端(C末端またはN末端)配列において、プロテアーゼ耐性を付与するための変異が導入されている必要がある。

0230

図5(B)では、リガンドのN末端およびC末端のドメイン(a,d)の末端配列に固定化用タグを導入して担体に結合させている。この場合も、固定化タグを有するa,dを固定化ドメインとして考えると、上述した図3(C)と同様の問題がある。加えて、aおよびdの末端配列がプロテアーゼで切断されるとすべてのドメインが脱離してリガンドとして機能しなくなるため特に問題となる。このため、a,dの固定化用タグを連結する末端(C末端およびN末端)配列において、プロテアーゼ耐性を付与するための変異が導入されている必要がある。

0231

上述のことより、本発明の第1の実施形態における第1、第3の態様、及び第2の実施形態のタンパク質における変異結合エレメント位置としては、好ましくは固定化ドメインと非固定化ドメインの間や、非固定化ドメインと非固定化ドメインの間に有することである。より好ましくは少なくとも固定化ドメインと非固定化ドメインの間に有することであり、さらに好ましくは非固定化ドメインと非固定化ドメインの間にも有することである。

0232

また、リガンドに固定化用タグを導入している場合には、固定化用タグを有するドメインを固定化ドメインとして、上記の範囲で好ましい形態を考えればよい。

0233

発明の第1の実施形態における第2の態様のタンパク質における、4位のリジンおよびC末端のリジンが欠失または置換されたドメイン(変異ドメイン)の位置としては、少なくとも固定化ドメインが変異ドメインであることが好ましく、それに加えて固定化ドメインに直接連結する非固定化ドメインも変異ドメインであることがより好ましく、連続して連結する非固定化ドメインのうち固定化ドメインにより近いものが変異ドメインであることがさらに好ましい。

0234

一方、固定化ドメインから最も離れた非固定化ドメインは他のドメインに連結しない側の末端はプロテアーゼの影響を受けても特に問題ないので、変異ドメインでなくてもよい。ただし、最も離れた非固定化ドメインが変異ドメインであれば、他のドメインとの連結箇所がプロテアーゼによる影響を受けることがないので好ましい。また、リガンドに固定化用タグを導入している場合には、固定化用タグを有するドメインを固定化ドメインとして、上記の範囲で好ましい形態を考えればよい。

0235

リガンド中の担体と結合を形成する部位は特に限定されないが、好ましくはリガンド配列の末端である。末端で固定化することによりリガンドの自由度が高くなり、免疫グロブリンと結合可能な領域を広く保つことで、免疫グロブリンとの結合能を高く保つことが出来る。リガンドの末端であれば、N末端でもC末端でもどちらでもよい。

0236

本発明のアフィニティ分離剤は、免疫グロブリンのFc領域を含むタンパク質に結合するものであることが好ましい。アフィニティ分離剤が結合する、免疫グロブリンのFc領域を含むタンパク質としては、例えば、免疫グロブリンのFc領域を含む抗体、抗体誘導体断片抗体、および、断片抗体誘導体が挙げられる。これらのタンパク質を、アフィニティーカラムクロマトグラフィ精製法により分離精製することが可能となる。

0237

なお、これらのタンパク質は一般にチャイニーズハムスター卵巣由来CHO細胞やマウス骨髄腫細胞Sp2/0細胞、NS0細胞、メタノール資化性ピキア酵母パン酵母コウジカビなどを用いて作製されるが、それらの培養液中にプロテアーゼが存在した場合、本発明のアフィニティ分離剤はそのプロテアーゼによる劣化を最小限に抑えることができるため好ましい。

0238

ここで「免疫グロブリンのFc領域を含む抗体」としては、例えば、IgGが挙げられる。「抗体誘導体」とはIgG誘導体のことを指し、例えば、ヒトIgGの一部のドメインを他生物種のIgG抗体のドメインに置き換えて融合させたキメラ抗体や、ヒトIgGのCDR部分を他生物種抗体のCDR部分に置き換えて融合させたヒト型化抗体が挙げられる。

0239

「断片抗体」としては、例えば、ヒトIgGのFab領域のみからなるタンパク質が挙げられる。「断片抗体誘導体」としては、例えば、ヒトIgGのFv領域とFc領域とを融合させた人工抗体が挙げられる。なお、これらの抗体、抗体誘導体、断片抗体、および、断片抗体誘導体を総称する名称として「抗体様分子」という表現を、明細書中で使用する。

0240

本発明のアフィニティ分離剤を使用して、免疫グロブリンのFc領域を含むタンパク質を分離することができる。具体的には本発明のアフィニティ分離剤を含み、少なくとも一つの該アフィニティ分離剤が充填される容器を備える液体クロマトグラフィー用カラムとすることができる。

0241

Fc領域を含むタンパク質(上述の抗体、抗体誘導体、断片抗体、および、断片抗体誘導体)の分離は、すでに市販品として存在するプロテインAカラムを用いたアフィニティーカラム・クロマトグラフィ精製法に準じる手順により達成することができる(参考文献1:Roque A.C.A.他著、「J.Chromatogr.A」、2007年、1160巻、44−55頁)。

0242

すなわち、抗体、抗体誘導体、断片抗体、および、断片抗体誘導体を含有する緩衝液を中性となるように調整した後、該溶液を本発明の液体クロマトグラフィー用カラムに通過させ、抗体、抗体誘導体、断片抗体、および、断片抗体誘導体を吸着させる。次いで、液体クロマトグラフィー用カラムに純粋な緩衝液を適量通過させ、カラム内部を洗浄する。

0243

この時点では所望の抗体、抗体誘導体、断片抗体、および、断片抗体誘導体はカラム内の本発明のアフィニティ分離剤に吸着されている。次いで、適切なpHに調整した酸性緩衝液(該マトリックスからの解離を促進する物質を含む場合もある)をカラムに通液し、所望の抗体、抗体誘導体、断片抗体、および、断片抗体誘導体を溶出することにより、高純度な精製が達成される。

0244

本発明のアフィニティ分離剤は、リガンド化合物や担体の基材が完全に機能を損なわない程度の、適当な強酸性、または、強アルカリ性の純粋な緩衝液(適当な変性剤、または、有機溶剤を含む溶液の場合もある)を通過させて洗浄することにより、再利用が可能である。

0245

一般的には、プロテインAを構成する各々のドメインは、Fab領域よりもFc領域に対してより強く結合する(参考文献1)。したがって、本発明のタンパク質の「免疫グロブリンに対する親和性」は、本質的にはFc領域に対する親和性を指す表現であり、Fab領域に対する結合力のみが変化しても、免疫グロブリンに対する親和性の強さは大きく変化しない。本発明のタンパク質は、プロテインAの免疫グロブリン結合ドメインが有する、Fab領域への2次的な親和性が低下しており、免疫グロブリンとの相互作用における2次的な結合の影響を排除できるという効果を奏する。

0246

一方で、Fc領域への親和性は維持されているので、免疫グロブリン全体に対する親和性は維持されている。本発明のタンパク質が有する免疫グロブリンに対する親和性は、ヒト免疫グロブリンG製剤に対する親和性を後述のBiacoreシステムにより測定した時に、親和定数(KA)が106(M−1)以上であることが好ましく、107(M−1)以上であることがより好ましい。

0247

本発明のタンパク質の、免疫グロブリンに対する親和性は、例えば、表面プラズモン共鳴原理を用いたBiacore(登録商標)システム(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)などのバイオセンサーによって測定することができるが、測定方法はこれに限定されるものではない。

0248

測定条件としては、プロテインAが免疫グロブリンのFc領域に結合した時の結合シグナルが検出できればよく、温度20〜40℃(一定温度)にて、pH6〜8の中性条件にて測定することで簡単に評価することができる。

0249

本発明のタンパク質が親和性を示す対象としては、例えば、Fab領域、および、Fc領域を不足なく含有する免疫グロブリン分子、および、その誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明のタンパク質は、Fc領域側の一部分を含むタンパク質に対しても親和性を有し、結合対象は、Fc領域を完全に含むタンパク質である必要はない。抗体の立体構造はすでに既知であるので、タンパク質工学的に本発明のタンパク質が結合する領域の立体構造を保持した上で、Fab領域やFc領域にさらなる改変(断片化など)を施すことは可能であり、本発明のタンパク質はそれらの派生物にも結合しうる。

0250

また、本発明のタンパク質を固定化したアフィニティ分離剤の免疫グロブリンに対する結合能は、例えば、過剰の免疫グロブリン溶液中に浸漬した分離剤がどれくらいの免疫グロブリンを吸着可能か評価する静的吸着容量や、分離剤を充填したカラムに免疫グロブリン溶液を通液したときに破過する液量を評価する動的吸着容量などで比較評価可能であるが、これに限定されるものではない。

0251

以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。

0252

<本発明の実施形態1の実施例>
[作製例]
1)野生型プロテインA発現プラスミドの作製
5’側にcatatg(NdeI)、3’側にctcgag(XhoI)を付加した野生型Cドメイン2量体(WT)をコードするDNA配列(配列番号7)を化学合成した。得られたDNA断片を制限酵素NdeIおよびXhoI(ともにThermo Scientific社製)を用いて消化後、精製・回収を行った。
なお、配列番号7はスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)由来のDNA配列をもとに大腸菌発現用にコドン最適化を行って決定した。

0253

タンパク質発現ベクターとして、T7プロモーターを持ち、マルチクローニングサイト下流に6xHisタグおよび終止コドンを持つベクターpET22b(メルク社製)を選択した。pET22bを制限酵素NdeIおよびXhoI(ともにThermo Scientific社製)を用いて消化後、精製・回収を行った。
制限酵素処理した配列番号7のDNA断片とpET22bベクターを、DNAリガーゼ(LigaFast Rapid DNA Ligation System、Promega社製)を用いて連結し、WT発現ベクター構築した。
WT発現ベクターを用いて大腸菌JM109(TaKaRa社製)の形質転換を行い、定法によりプラスミドDNAを増幅および抽出した。

0254

2)プロテインA変異体(Mut)発現プラスミド作製
野生型Cドメイン2量体のアミノ酸配列の一部に欠失および/または置換の変異を有するタンパク質Mut1〜Mut13をコードするDNA配列(配列番号34〜46)を含む発現ベクターの作製を行った。Mut1〜13発現ベクターは、表1に示す鋳型と合成オリゴヌクレオチドプライマーセット(配列番号8〜33)の組み合わせによりクイックチェンジ法(QuikChange Lightning Site−Directed Mutagenesis Kit、Agilent Technologies社製)を用いて作製した。クイックチェンジ法はAgilent Technologies社のプロトコルに従い実施した。

0255

0256

得られたMut1〜13発現ベクターはJM109(TaKaRa社製)を形質転換することによって定法により増幅および抽出した。
得られたMut1〜13発現ベクターのDNA配列の解析DNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzer (Applied Biosystems社製)を用いて行った。発現ベクターのシークエンシングPCR反応はBig Dye Terminator v.1.1 Cycle Sequenceing Kit(Applied Biosystems社製)を用いて、付属プロトコルに従って行った。得られたシークエンシングPCR産物は定法により精製し、DNA配列解析に用いた。
本実施によって得られたMut1〜13発現ベクターのうち、発現タンパク質をコードするDNA配列は配列番号34〜46で示される通りであった。

0257

3)タンパク質の発現
Rosetta(DE3)(メルク社製)を、上記1)および2)で得られたWT、Mut1〜13発現ベクターで形質転換し、目的タンパク質であるWT、Mut1〜13をそれぞれ発現する形質転換体を得た。形質転換法はメルク社プロトコルに従った。
目的タンパク質を発現する形質転換体を50mg/Lカルベニシリンを含むLB培地に植菌し、30℃で終夜培養して前培養液を得た。得られた前培養液10mLを500mL LB培地(50mg/Lカルベニシリン含有)に植菌し、30℃、130rpmでOD600≒0.6〜0.8になるまで培養した。イソプロピル1−チオ−β−D−ガラクシド(IPTG)を終濃度0.1mMとなるように添加し、さらに培養を4時間継続した。培養終了後、遠心にて集菌した。

0258

4)タンパク質の回収
上記3)で集菌した菌体を50mLの懸濁バッファー(50mM imidazole pH8.0、500mM NaCl)に懸濁し、超音波破砕した。遠心分離して、上清画分沈殿画分とに分画した。上清画分を懸濁バッファーで平衡化したHisTrap HP 5mLカラム(GEヘルスケア・ジャパン社製)に供し、平衡化バッファーで洗浄後、溶出バッファー(175mM imidazole pH8.0、500mM NaCl)を用いて目的タンパク質を溶出した。溶出された目的タンパク質を透析にて脱塩水に置換した。目的タンパク質はAmicon−Ultra 10K(メルクミリポア社製)を用いて約30〜40mg/mLの濃度まで遠心濃縮した。濃縮後の目的タンパク質はPBSバッファーを用いて2mg/mLに調製した。

0259

精製終了後の目的タンパク質をTricine SDS−PAGE(e・パジェルR15S;ATTO社製)に供し、分子量約14000Daの位置にシングルバンドを確認した。WT発現ベクターを用いて得られた目的タンパク質は配列番号47のアミノ酸配列を有するタンパク質であり、Mut1〜13発現ベクターを用いて得られた目的タンパク質は、それぞれ、配列番号48〜60のアミノ酸配列を有するタンパク質であった。
WTの連結箇所配列(第1連結エレメント)近傍の配列、およびMut1〜13の変異連結エレメント近傍の配列を表2に示す。Cドメインの2量体のうち、D58で示される位置のアミノ酸が1つ目のドメインのC末端であり、D1’で示される位置のアミノ酸が2つ目のドメインのN末端である。また「/(斜線)」はアミノ酸の欠失を表す。

0260

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