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技術 強化繊維束及びそれを用いた炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体、並びに強化繊維束の製造方法

出願人 三井化学株式会社フォルモサプラスティクスコーポレーション
発明者 永井直伊崎健晴清水正樹石川淳一菊地一明張怡娟顔凱宸林銘源
出願日 2016年1月14日 (4年11ヶ月経過) 出願番号 2016-569504
公開日 2017年8月10日 (3年4ヶ月経過) 公開番号 WO2016-114352
状態 特許登録済
技術分野 高分子組成物 強化プラスチック材料 繊維製品の化学的、物理的処理 繊維製品への有機化合物の付着処理
主要キーワード 含浸状況 回収用タンク 骨格含有量 炭素繊維含有 曲げ試験装置 表裏対 スチールローラ UD材
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図面 (11)

課題・解決手段

重合体鎖に結合するカルボン酸金属塩を少なくとも含む変性ポリオレフィン(A1)、及び該変性ポリオレフィン(A1)中のカルボキシレート基モルに対して下記一般式(1)で表されるアミン化合物(B)0.1〜5,000モルを含むエマルションで処理された炭素繊維束からなる強化繊維束、及びそれを用いた炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体、並びに強化繊維束の製造方法が開示される。 R−NH2 ・・・(1)(一般式(1)において、Rは水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基を示す)

概要

背景

強化繊維プラスチック複合させた炭素繊維複合材料(CFRP)は、比強度非弾性率が格段に優れることから軽量構造材料として様々な分野で実用化され、あるいは実用化の試みが進んでいる。例えば熱硬化性樹脂を用いたCFRPは、航空機機体材料として本格的に採用されている。ただし、特殊な成形法オートクレーブ成形法やRTM法)が必要なので生産性があまり高くない。したがって、例えば自動車への熱硬化性樹脂を用いたCFRPの適用は、高級車に限られている。そこで最近では、量産車への適用を推し進めるべく、スタンピング成形等の高速成形が可能であり、マテリアルリサイクルも行い易い熱可塑性樹脂、特にポリプロピレン系のマトリックス樹脂を用いたCFRPが注目され始めている。

一般に、ポリプロピレン(PP)に代表されるポリオレフィン炭素繊維との接着性に乏しい。そこで、例えばポリプロピレン系のマトリックス樹脂を用いたCFRPにおいては、無水マレイン酸等でグラフト変性した酸変性PPが水中に分散したエマルションを用いて、接着性を向上させる方法が開示されている(特許文献1及び特許文献2)。しかし、この方法では、エマルション中の界面活性剤の量が少ない等の条件下では、強化繊維束を調製する過程変性PPの凝集が原因と考えられる異物がエマルション中に発生し、繊維表面に酸変性PP水分散体サイジング剤)を連続付与する工程に不具合が発生する場合がある。また、この異物が原因で、繊維表面とマトリックス樹脂に十分な接着性を付与できない場合がある。

一方、炭素繊維表面とマトリックス樹脂との界面の強度を向上させる為に、例えば、酸変性PP等の水分散性ポリマー粒子が分散したエマルション中にポリビニルアルコール等の特定のアルコールを添加する方法(特許文献3)、ポリイミン樹脂を添加する方法(特許文献4)が提案されている。しかし、産業界からは特性の更なる改良が求められている。

概要

重合体鎖に結合するカルボン酸金属塩を少なくとも含む変性ポリオレフィン(A1)、及び該変性ポリオレフィン(A1)中のカルボキシレート基モルに対して下記一般式(1)で表されるアミン化合物(B)0.1〜5,000モルを含むエマルションで処理された炭素繊維束からなる強化繊維束、及びそれを用いた炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体、並びに強化繊維束の製造方法が開示される。 R−NH2 ・・・(1)(一般式(1)において、Rは水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基を示す)

目的

本発明の目的は、炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体における繊維束補強材)とマトリックス樹脂との接着性を向上し、より少ない繊維量であっても十分な補強効果発現する強化繊維束及びそれを用いた炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体、並びに強化繊維束の製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

重合体鎖に結合するカルボン酸金属塩を少なくとも含む変性ポリオレフィン(A1)、及び該変性ポリオレフィン(A1)中のカルボキシレート基モルに対して下記一般式(1)で表されるアミン化合物(B)0.1〜5,000モルを含むエマルションで処理された炭素繊維束からなる強化繊維束。R−NH2・・・(1)(一般式(1)において、Rは水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基を示す)

請求項2

エマルションに炭素繊維束を浸漬し、その後乾燥して得られる請求項1記載の強化繊維束。

請求項3

変性ポリオレフィン(A1)の質量割合が、エマルション中0.001〜10質量%である請求項1記載の強化繊維束。

請求項4

エマルションが、変性ポリオレフィン(A1)に加えて、未変性ポリオレフィン(A2)をさらに含む請求項1記載の強化繊維束。

請求項5

強化繊維束に占める変性ポリオレフィン(A1)の付着量、また未変性ポリオレフィン(A2)を含む場合は強化繊維束に占める変性ポリオレフィン(A1)と未変性ポリオレフィン(A2)の合計付着量が、0.1〜5.0質量%である請求項1記載の強化繊維束。

請求項6

請求項1記載の強化繊維束を、マトリックス樹脂(C)と複合させた成形体であって、該成形体に占める強化繊維束の体積割合が10〜70%である炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体。

請求項7

マトリックス樹脂(C)が、変性ポリオレフィン(C1)及び/又は未変性ポリオレフィン(C2)である請求項6記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体。

請求項8

未変性ポリオレフィン(C2)が、示差走査熱量測定DSC)で測定した融点Tmが120〜165℃であるポリプロピレン(C2−1)及び密度が890〜960kg/m3であるポリエチレン(C2−2)から選ばれる一種以上である請求項7記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体。

請求項9

マトリックス樹脂(C)に占める変性ポリオレフィン(C1)の含有量が、0〜50質量%である請求項7記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体。

請求項10

一方向性材、一方向性積層材、又はランダムスタンパブルシートの形態である請求項6記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体。

請求項11

重合体鎖に結合するカルボン酸金属塩を少なくとも含む変性ポリオレフィン(A1)、及び該変性ポリオレフィン(A1)中のカルボキシレート基1モルに対して下記一般式(1)で表されるアミン化合物(B)0.1〜5,000モルを含むエマルションに炭素繊維束を浸漬し、その後乾燥することを特徴とする強化繊維束の製造方法。R−NH2・・・(1)(一般式(1)において、Rは水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基を示す)

技術分野

0001

本発明は、熱可塑性樹脂補強材として用いられる強化繊維束及びそれを用いた炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体、並びに強化繊維束の製造方法に関する。

背景技術

0002

強化繊維プラスチック複合させた炭素繊維複合材料(CFRP)は、比強度非弾性率が格段に優れることから軽量構造材料として様々な分野で実用化され、あるいは実用化の試みが進んでいる。例えば熱硬化性樹脂を用いたCFRPは、航空機機体材料として本格的に採用されている。ただし、特殊な成形法オートクレーブ成形法やRTM法)が必要なので生産性があまり高くない。したがって、例えば自動車への熱硬化性樹脂を用いたCFRPの適用は、高級車に限られている。そこで最近では、量産車への適用を推し進めるべく、スタンピング成形等の高速成形が可能であり、マテリアルリサイクルも行い易い熱可塑性樹脂、特にポリプロピレン系のマトリックス樹脂を用いたCFRPが注目され始めている。

0003

一般に、ポリプロピレン(PP)に代表されるポリオレフィン炭素繊維との接着性に乏しい。そこで、例えばポリプロピレン系のマトリックス樹脂を用いたCFRPにおいては、無水マレイン酸等でグラフト変性した酸変性PPが水中に分散したエマルションを用いて、接着性を向上させる方法が開示されている(特許文献1及び特許文献2)。しかし、この方法では、エマルション中の界面活性剤の量が少ない等の条件下では、強化繊維束を調製する過程変性PPの凝集が原因と考えられる異物がエマルション中に発生し、繊維表面に酸変性PP水分散体サイジング剤)を連続付与する工程に不具合が発生する場合がある。また、この異物が原因で、繊維表面とマトリックス樹脂に十分な接着性を付与できない場合がある。

0004

一方、炭素繊維表面とマトリックス樹脂との界面の強度を向上させる為に、例えば、酸変性PP等の水分散性ポリマー粒子が分散したエマルション中にポリビニルアルコール等の特定のアルコールを添加する方法(特許文献3)、ポリイミン樹脂を添加する方法(特許文献4)が提案されている。しかし、産業界からは特性の更なる改良が求められている。

先行技術

0005

特開平6−107442号公報
国際公開第2006/101269号
特開2013−177705号公報
特開2012−184377号公報

発明が解決しようとする課題

0006

本発明は、以上の従来技術の課題を解決する為になされたものである。すなわち本発明の目的は、炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体における繊維束(補強材)とマトリックス樹脂との接着性を向上し、より少ない繊維量であっても十分な補強効果発現する強化繊維束及びそれを用いた炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体、並びに強化繊維束の製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0007

本発明者らは、上記課題を解決する為に鋭意検討した結果、強化繊維束を調製する為の処理(サイジング処理等)に用いる変性ポリオレフィン(A1)含有エマルション中に、特定のアミン化合物(B)を共存させることが非常に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明の要旨は以下の通りである。

0008

[1]重合体鎖に結合するカルボン酸金属塩を少なくとも含む変性ポリオレフィン(A1)、及び該変性ポリオレフィン(A1)中のカルボキシレート基モルに対して下記一般式(1)で表されるアミン化合物(B)0.1〜5,000モルを含むエマルションで処理された炭素繊維束からなる強化繊維束。
R−NH2 ・・・(1)
(一般式(1)において、Rは水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基を示す)

0009

[2]エマルションに炭素繊維束を浸漬し、その後乾燥して得られる[1]記載の強化繊維束。
[3]変性ポリオレフィン(A1)の質量割合が、エマルション中0.001〜10質量%である[1]記載の強化繊維束。
[4]エマルションが、変性ポリオレフィン(A1)に加えて、未変性ポリオレフィン(A2)をさらに含む[1]記載の強化繊維束。
[5]強化繊維束に占める変性ポリオレフィン(A1)の付着量、また未変性ポリオレフィン(A2)を含む場合は強化繊維束に占める変性ポリオレフィン(A1)と未変性ポリオレフィン(A2)の合計付着量が、0.1〜5.0質量%である[1]記載の強化繊維束。

0010

[6][1]記載の強化繊維束を、マトリックス樹脂(C)と複合させた成形体であって、該成形体に占める強化繊維束の体積割合が10〜70%である炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体。
[7]マトリックス樹脂(C)が、変性ポリオレフィン(C1)及び/又は未変性ポリオレフィン(C2)である[6]記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体。
[8]未変性ポリオレフィン(C2)が、示差走査熱量測定DSC)で測定した融点Tmが120〜165℃であるポリプロピレン(C2−1)及び密度が890〜960kg/m3であるポリエチレン(C2−2)から選ばれる一種以上である[7]記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体。
[9]マトリックス樹脂(C)に占める変性ポリオレフィン(C1)の含有量が、0〜50質量%である[7]記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体。
[10]一方向性材、一方向性積層材、又はランダムスタンパブルシートの形態である[6]記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体。

0011

[11]重合体鎖に結合するカルボン酸金属塩を少なくとも含む変性ポリオレフィン(A1)、及び該変性ポリオレフィン(A1)中のカルボキシレート基1モルに対して下記一般式(1)で表されるアミン化合物(B)0.1〜5,000モルを含むエマルションに炭素繊維束を浸漬し、その後乾燥することを特徴とする強化繊維束の製造方法。
R−NH2 ・・・(1)
(一般式(1)において、Rは水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基を示す)

発明の効果

0012

本発明によれば、サイジング剤としての変性ポリオレフィン(A1)が繊維表面に均一に付着するので、炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体における繊維とマトリックス樹脂との接着性を向上できる。その結果、より少ない繊維量でも十分な補強効果が発現する。本発明の強化繊維束を用いた炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体は、例えば、自動車部品航空機部品等の特に剛性耐久性が要求される部品構造用複合材料の用途に非常に有用である。

図面の簡単な説明

0013

実施例6で得た一方向性材のSEM写真である。
実施例6で得たランダムスタンパブルシートのSEM写真である。
比較例4で得た一方向性材のSEM写真である。
比較例5で得た一方向性材のSEM写真である。
実施例8において5時間連続浸漬し、その後乾燥した強化繊維束の表面部のSEM写真である。
実施例9において18時間連続浸漬し、その後乾燥した強化繊維束の表面部のSEM写真である。
実施例10において48時間連続浸漬し、その後乾燥した強化繊維束の表面部のSEM写真である。
比較例7において、1時間連続浸漬し、その後乾燥した強化繊維束の表面部のSEM写真である。
実施例8〜10、比較例7で用いたサイジングバスを示す模式図である。
実施例11で得た一方向性材のSEM写真である。

0014

[炭素繊維束]
本発明の強化繊維束は、特定の成分を含むエマルションで処理された炭素繊維束からなる。処理前の炭素繊維束としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系、石油石炭ピッチ系、レーヨン系リグニン系の炭素繊維束が挙げられる。中でも、工業規模での生産性及び機械特性の点から、PAN系炭素繊維が特に好ましい。炭素繊維束の単糸平均直径は特に限定されないが、機械特性及び表面外観の点から、好ましくは1〜20μm、より好ましくは4〜10μmである。炭素繊維束の単糸数も特に限定されないが、生産性及び特性の点から、好ましくは100〜100,000本、より好ましくは1,000〜50,000本である。

0015

処理前の炭素繊維束は、繊維とマトリックス樹脂との接着性を高める目的で、繊維表面に含酸素官能基が導入されていることが好ましい。含酸素官能基の導入量は、例えば、X線光電子分光法により測定される繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度比[O/C]により特定できる。この表面酸素濃度比は、好ましくは0.05〜0.5、より好ましくは0.08〜0.4、特に好ましくは0.1〜0.3である。表面酸素濃度比が0.05以上であれば、炭素繊維表面の官能基量が確保でき、マトリックス樹脂により強固に接着できる。一方、表面酸素濃度比が0.5以下であれば、炭素繊維の取扱い性や生産性のバランスがとれる。

0016

[変性ポリオレフィン(A1)]
本発明に用いる変性ポリオレフィン(A1)は、重合体鎖に結合するカルボン酸金属塩を少なくとも含む変性ポリオレフィンである。この変性ポリオレフィン(A1)は、具体的には、カルボン酸金属塩を構成する下記式(2)で表されるカルボキシレート基を有する。このカルボキシレート基の総量は、樹脂グラム当り、好ましくは0.05〜5ミリモル当量、より好ましくは0.1〜4ミルモル当量、特に好ましくは0.3〜3ミリモル当量である。なお、式(2)においてQ+はアルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンまたはその類縁体を示す。アルカリ金属イオンとしては、具体的にはリチウムイオンナトリウムイオンカリウムイオンおよびルビジウムイオンを例示することができる。これらの中ではカリウムイオンが好ましい。また、アンモニムイオンまたはその類縁体としては、アンモニウムイオンそのもの、第1級アンモニムイオン、第2級アンモニムイオン、第3級アンモニウムイオンおよび第4級アンモニウムイオンを例示することができる。これらの中では、アンモニウムイオン(NH4+)、第4級アンモニウムイオン(NR1R2R3R4+;R1〜R4は相互に同一でも異なっていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基)が好ましい。

0017

0018

変性ポリオレフィン(A1)の原料原料ポリオレフィン(A0))としては、例えば、エチレン起因の骨格含量が50モル%を超えるエチレン系重合体およびプロピレン起因の骨格含量が50モル%を超えるプロピレン系重合体を制限なく使用することができる。エチレン系重合体としては、例えば、エチレン単独重合体、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィン共重合体を挙げることができる。プロピレン系重合体としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレンおよび/又は炭素数4〜10のα−オレフィンの共重合体を挙げることができる。好適な原料ポリオレフィン(A0)の具体例としては、ホモポリプロピレンホモポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体などが挙げられる。

0019

変性ポリオレフィン(A1)は、例えば、以上のような原料ポリオレフィン(A0)の重合体鎖にカルボン酸基カルボン酸無水物基又はカルボン酸エステル基グラフト導入し、且つその基をカチオンとの塩の状態に変換した変性樹脂である。なお、以下の説明では、重合体鎖に導入されたカルボン酸基、カルボン酸無水物基又はカルボン酸エステル基を総称してグラフトカルボン酸基と呼ぶ場合がある。変性ポリオレフィン(A1)の調製の為には、例えば、カルボン酸基、カルボン酸無水物基又はカルボン酸エステル基を有する単量体変性剤として使用できる。これら単量体の各官能基は、中和又はケン化されていても良いし、されていなくても良い。このような単量体としては、エチレン系不飽和カルボン酸及びその無水物並びにそのエステルが好ましい。ただし、エチレン系不飽和カルボン酸以外の不飽和ビニル基を有するカルボン酸系単量体使用可能である。

0020

変性ポリオレフィン(A1)の製造に用いるエチレン系不飽和カルボン酸の具体例としては、(メタアクリル酸マレイン酸フマール酸テトラヒドロフタル酸イタコン酸シトラコン酸クロトン酸イソクロトン酸が挙げられる。その無水物の具体例としては、ナジック酸(エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)、無水マレイン酸、無水シトラコン酸が挙げられる。そのエステルの具体例としては、エチレン系不飽和カルボン酸のメチルエチル又はプロピルモノエステル又はジエステルが挙げられる。これら単量体は2種類以上を併用しても良い。中でも、エチレン系不飽和カルボン酸無水物が好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。

0021

以上のような単量体を、例えばエチレン系樹脂プロピレン系樹脂等の原料ポリオレフィン(A0)の重合体鎖にグラフトさせることにより、その重合体鎖に所望のグラフトカルボン酸基を導入できる。具体的な方法としては、例えば有機溶剤中で原料ポリオレフィン(A0)と前記単量体とを重合開始剤の存在下でグラフト反応させ、その後脱溶剤する方法;原料ポリオレフィン(A0)を加熱溶融し、その溶融物と前記単量体と重合開始剤とを混合・撹拌してグラフト反応させる方法;原料ポリオレフィン(A0)と前記単量体と重合開始剤の混合物押出機に供給し、加熱混練しながらグラフト反応させる方法;が挙げられる。

0022

これら方法に用いる重合開始剤は特に限定されず、公知の重合開始剤が制限なく使用できる。その具体例としては、ベンゾイルパーオキサイドジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシベンゾエートヘキシン−3、1,4−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピルベンゼンが挙げられる。重合開始剤は2種類以上を併用しても良い。有機溶剤も特に限定されず、その具体例としては、キシレントルエン等の芳香族炭化水素ヘキサンヘプタン等の脂肪族炭化水素シクロヘキサン等の脂環式炭化水素メチルエチルケトンメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;が挙げられる。有機溶剤は2種類以上を混合して用いても良い。中でも、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素が好ましく、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素がより好ましい。

0023

以上のようにしてカルボン酸基、カルボン酸無水物基又はカルボン酸エステル基が導入された原料ポリオレフィン(A0)を所望により中和又はケン化することにより、重合体鎖に結合するカルボン酸金属塩を少なくとも含む変性ポリオレフィン(A1)が得られる。具体的には、例えば、そのポリオレフィンを含むエマルションを調製する際に、必要に応じて中和又はケン化を行えば良い。変性ポリオレフィン(A1)には、変性条件によっては変性されないポリオレフィンを含む場合があるが、本発明ではこのような未変性のポリオレフィンを含めた変性体を変性ポリオレフィンとして定義する。

0024

また本発明においては、変性ポリオレフィン(A1)に加えて、所望によりグラフトカルボン酸基とそのカルボン酸金属塩を共に含まない未変性ポリオレフィン(A2)を併用しても良い。未変性ポリオレフィン(A2)を併用する場合、変性ポリオレフィン(A2)の含有量は、変性ポリオレフィン(A1)と未変性ポリオレフィン(A2)の合計量に対して1〜50質量%、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。この範囲に収めることによって、本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体の機械強度の向上につなげられる。未変性ポリオレフィン(A2)としては、既に述べた、変性ポリオレフィン(A1)を調製するための原料ポリオレフィン(A0)を制限なく使用できる。未変性ポリオレフィン(A2)は、変性ポリオレフィン(A1)を調製するための原料ポリオレフィン(A0)そのものであってもよいし、原料ポリオレフィン(A0)とは異なるポリオレフィンであってもよいが、好ましくは未変性ポリオレフィン(A1)と原料ポリオレフィン(A0)とはお互いに異なる性状を持つ。

0025

本発明の好ましい態様においては、未変性ポリオレフィン(A2)としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体(エチレン起因骨格含有量;3〜95モル%)、プロピレン・1−ブテン共重合体(1−ブテン起因骨格含有量;5〜95モル%)、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体(エチレン起因骨格含有量;10〜25モル%、1−ブテン起因骨格含有量;1〜30モル%)、エチレン・酢酸ビニル共重合体酢酸ビニル起因骨格含有量;25〜50質量%)およびこれら重合体から選ばれる異なる二種以上のブレンド体が挙げられる。

0026

[アミン化合物(B)]
本発明に用いるアミン化合物(B)は、下記一般式(1)で表される第1級アミン化合物である。

0027

R−NH2 ・・・(1)
(一般式(1)において、Rは水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基を示す)

0028

Rが、炭素原子数が11以上の炭化水素基であると、後述するようにエマルジョンに浸漬後の炭素繊維の乾燥工程においてアミン化合物が十分に除去できない場合があるので好ましくない。この炭化水素基は、芳香族炭化水素であっても良いし、脂肪族炭化水素基であっても良いし、脂環族炭化水素基であっても良いが、サイジング処理の際の作業者労働環境衛生視点から脂肪族炭化水素基または脂環族炭化水素基が好ましい。

0029

好ましいアミン化合物(B)の具体例としては、アンモニアアンモニア水)、メチルアミンエチルアミンn−ブチルアミンイソブチルアミン、sec−ブチルアミン、n−ペンチルアミンイソアミルアミンn−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、へプチルアミンオクチルアミンデシルアミンが挙げられる。中でも、乾燥工程時の除去し易さ及び入手容易の点から、アンモニア(アンモニア水)が好ましい。

0030

[エマルション]
本発明に用いるエマルションは、以上説明した変性ポリオレフィン(A1)及びアミン化合物(B)を少なくとも含み、分散質(主に変性ポリオレフィン(A1))が分散媒(水等)中に分散してなる液体である。代表的には、アミン化合物(B)を含む水溶液中に粒子状の変性ポリオレフィン(A1)が分散した形態のエマルションである。

0031

エマルション中の変性ポリオレフィン(A1)の質量割合は、0.001〜10質量%であり、好ましくは0.01〜5質量%である。また、エマルション中のアミン化合物(B)の量は、変性ポリオレフィン(A1)中のカルボキシレート基1モルに対して0.1〜5,000モルであり、好ましくは0.5〜3,000モル、より好ましくは1〜1,000モルである。このような特定量のアミン化合物(B)を用いることにより、エマルション中の変性ポリオレフィン(A1)の凝集が効果的に抑制される。

0032

エマルションには、本発明を損なわない範囲内で界面活性剤(D)を添加しても良い。界面活性剤(D)の使用によって、エマルション中のポリマー粒子の凝集をより効果的に防止できる。ただし、エマルション中の界面活性剤(D)の量は、変性ポリオレフィン(A1)100質量部に対して好ましくは5質量部以下である。5質量部を超えると接着性が低下する場合がある。

0033

界面活性剤(D)の種類は特に限定されない。例えば、親水性部分がイオン性カチオン性アニオン性・双性)の界面活性剤、非イオン性の界面活性剤(ノニオン系界面活性剤)の何れも使用できる。中でも、熱可塑性樹脂の分解を促進させる金属やハロゲン等の対イオンを含まないノニオン系界面活性剤が好ましい。ノニオン系界面活性剤は、変性ポリオレフィン(A1)が炭素繊維に付着する際に、界面活性剤も同時に付着し、開繊工程での炭素繊維束の開繊性を向上させる。特に、少なくとも20℃で液状のノニオン系界面活性剤が、炭素繊維束の開繊性の向上に有効である。

0034

界面活性剤(D)と共に、エマルションの表面張力を低下させる機能を持つ化合物を併用することも凝集防止の点から好ましい。そのような化合物の具体例としては、低級脂肪族アルコール、脂環族アルコール、グリコール、ポリビニルアルコールが挙げられる。この化合物の量は、界面活性剤と同程度で良い。

0035

[炭素繊維束の処理]
本発明においては、以上説明したエマルションを用いて炭素繊維束の処理を行う。この処理は、少なくとも変性ポリオレフィン(A1)を繊維表面(及び好ましくは繊維内部)に付着させる処理であり、代表的にはサイジング処理である。エマルション中には変性ポリオレフィン(A1)に対して特定量のアミン化合物(B)が共存しているので、変性ポリオレフィン(A1)の凝集が効果的に抑制され、繊維表面に変性ポリオレフィン(A1)が均一に付着し、その結果接着性が向上する。強化繊維束に占める変性ポリオレフィン(A1)および必要に応じて用いられる未変性ポリオレフィン(A2)の合計付着量は、好ましくは0.1〜5.0質量%、より好ましくは0.5〜2.0質量%である。

0036

特にこの処理は、エマルションに炭素繊維束を浸漬し、その後乾燥することにより行うことが好ましい。

0037

具体的な方法としては、例えばスプレー法ローラー浸漬法ローラー転写法が挙げられる。これら方法を組み合わせて用いても良い。中でも、生産性や均一性の点からローラー浸漬法が好ましい。特に、エマルション浴中に設けられた浸漬ローラーを介して開繊と絞りを繰り返し、炭素繊維束の内部にまでエマルションを浸漬させることが好ましい。炭素繊維束に対する変性ポリオレフィン(A1)および必要に応じて用いられる未変性ポリオレフィン(A2)の合計付着量の調整は、例えばエマルション中の変性ポリオレフィン(A1)や未変性ポリオレフィン(A2)の質量割合や絞りローラーの調整によって行うことができる。

0038

その後、炭素繊維束の乾燥工程によって、必要に応じて水分やアミン化合物(B)等の低沸点成分を除去する。これにより、少なくとも変性ポリオレフィン(A1)が繊維表面(及び好ましくは繊維内部)に付着した強化繊維束が得られる。水分やアミン化合物(B)等の低沸点成分は完全に除去することが好ましいが、場合によっては一部が残存していても構わない。乾燥方法は特に限定されず、熱処理風乾遠心分離等の方法を使用できる。中でも、コストの点から熱処理が好ましい。加熱手段としては、例えば熱風熱板、ローラー、赤外線ヒーターを使用できる。乾燥処理の温度は、炭素繊維束の表面温度50〜200℃の範囲で、水分及びアルコール成分を除去するのが好ましい。

0039

[炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体]
以上説明した本発明の強化繊維束は、熱可塑性樹脂成形体強化材として非常に有用である。すなわち、本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体は、本発明の強化繊維束をマトリックス樹脂(C)と複合させた成形体である。この成形体に占める強化繊維束の体積割合は10〜70%であり、好ましくは25〜55%である。本発明の強化繊維束はマトリックス樹脂との接着性が良好なので、より少ない繊維量でも十分な補強効果が発現する。

0040

マトリックス樹脂(C)は特に限定されず、公知の樹脂を使用できる。マトリックス樹脂(C)の具体例としては、ポリオレフィン系樹脂ポリアミド樹脂ポリエステル樹脂ポリカーボネート樹脂ポリアセタール樹脂ポリエーテルケトン樹脂ポリエーテルエーテルケトン樹脂ポリスルホン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。中でも、高速成形性軽量性成形品力学特性マテリアルリサイクル性の点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、特に変性ポリオレフィン(C1)および/又は未変性ポリオレフィン(C2)が好ましい。未変性ポリオレフィン(C2)を併用する場合、変性ポリオレフィン(C1)の配合量は、未変性ポリオレフィン(C2)100質量部当り、無水マレイン酸グラフト変性率が0.1〜7質量%である変性ポリオレフィン(C1)を、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部配合すると、繊維と樹脂の接着強度がさらに向上する。なお、変性ポリオレフィン(C1)の調製方法は、前記した変性ポリオレフィン(A1)の調製方法に準じて行うことができる。

0041

本発明においては、マトリックス樹脂(C)として、プロピレン単独重合体やプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体の如き未変性ポリプロピレン(C2)及び/又は変性ポリプロピレン(C1)を用いることが好適な態様の一つである。特に、未変性ポリオレフィン(C2)が、示差走査熱量測定(DSC)で測定した融点Tmが120〜165℃であるポリプロピレン(C2−1)及び密度が890〜960kg/m3であるポリエチレン(C2−2)から選ばれる一種以上であることが好ましい。マトリックス樹脂(C)に占める変性ポリオレフィン(C1)の含有量は0〜50質量%であることが好ましい。

0042

強化繊維束は、マトリックス樹脂(C)と複合させる前に必要に応じて開繊させることが好ましい。この開繊により、マトリックス樹脂(C)が強化繊維束に十分含浸し、強度等の物性のムラが少ない高品位な成形体が得られる。

0043

炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体の形態としては、例えば、一方向性材、一方向性積層材、ランダムスタンパブルシート(疑似等方性材)が挙げられる。また、クロスプライ積層材、長繊維含有ペレット又は織物材の形態であっても良い。

0044

(一方向性材(UD材))
一方向性材(UD材)とは、代表的には、開繊された繊維束を一方に引き揃えた状態の繊維を含む成形体である。例えば、開繊された繊維束を引き揃えた後、溶融したマトリックス樹脂(C)と接触させることにより、一方向性炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体が得られる。なお、複数の一方向性材(一方向性炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体)を積層して一体化した積層体としても良い。

0045

(一方向性積層材)
一方向性積層材とは、代表的には、複数の一方向性材を同方向(0°)nに任意の枚数(n)を積層した一方向性積層体等の積層体である。

0046

(ランダムスタンパブルシート)
ランダムスタンパブルシート(疑似等方性材)とは、ある大きさ(例えば繊維長の5倍以上の大きさ)で見れば等方的な物性を示し、スタンプ成形あるいはプレス成形で複雑な形状に成形することができるシートである。代表的には、一方向性材を小片(例えば10×10mm〜100×100mm)に切断したものを任意の方向に配置し、積層し、圧縮して得られるシート状の成形体である。ランダムスタンパブルシートとしては、例えば、繊維の配向による機械物性の異方性を極力小さくしたものや、繊維束を5〜50mmの長さに切断したものにマトリックス樹脂を含浸させたものや、マトリックス樹脂から成形されたフィルムに挟んでシート状にしたものが挙げられる。

0047

(クロスプライ積層材)
クロスプライ積層材は、複数の一方向性炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体を異なる2つの方向で積層して一体化した積層体で、例えば、0°/90°/0°/90°/90°/0°/90°/0°という表裏対象構造になるよう積層した((0°/90°)n)sの積層体、異なる4つの方向で0°/45°/90°/135°/135°/90°/45°/0°という表裏対象構造になるよう積層した((0°/45°/90°/135°)n)sの積層体、異なる2つの方向で0°/90°/0°/90°/0°/90°/0°/90°/0°のような非対象の積層体、これら積層材の表面に更に織物を積層した積層体が挙げられる。

0048

一方向性炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形体を製造する具体的な方法は、特に限定されない。例えば、溶融押出ラミネート法、プルトリュージョン法によれば、マトリックス樹脂(C)が繊維に十分含浸した成形体が得られる。一方、マトリックス樹脂(C)の含浸を抑えたもの、すなわち半含浸の層を有する成形体を製造する場合は、例えばマトリックス樹脂(C)からなるシートの上に強化繊維束を一方向に引き揃えて、必要に応じて加熱プレスすれば良い。

0049

(長繊維含有ペレット)
長繊維含有ペレットは、各種成形法に用いる為の成形材料としてのペレットの形態の成形体である。例えば、強化繊維束を押出成形機中又は含浸ダイス中で変性ポリオレフィン(A1)を含浸させてストランドを得、このストランドを所望の長さに切断することにより、炭素繊維と熱可塑性樹脂からなる芯鞘型の長繊維含有ペレットを得ることができる。

0050

長繊維含有ペレットの長さは、好ましくは3〜100mm、より好ましくは5〜50mmである。このペレットを用いて、例えば射出成形又はプレス成形を行うことにより所望の成形品が得られる。また近年のダイレクト成形法と呼ばれる方法、すなわち成形機にマトリックス樹脂と連続繊維を供給し、成形機内部で長繊維の切断とマトリックス樹脂への分散を同時に行い、これをそのまま射出成形又はプレス成形する方法も用いることができる。

0051

さらに、一方向性材、一方向性積層材、ランダムスタンパブルシート(疑似等方性材)、クロスプライ積層材又は織物材をプレス成形又は切削加工して得られる成形品も有用である。

0052

以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例で使用した各材料は以下の通りである。

0053

[炭素繊維束]
実施例1〜4、比較例1:市販の炭素繊維(フォルモサプラスチック社製、商品名TC−36S(12K)、[O/C]=0.22)
実施例5および7、比較例2、3および6:市販の炭素繊維(フォルモサプラスチック社製、商品名TC−35(12K)、[O/C]=0.25)
実施例8〜10、比較例7:市販の炭素繊維(フォルモサプラスチック社製、商品名TC−35R(12K)、[O/C]=0.30)

0054

[エマルション用の原料樹脂類]
無水マレイン酸変性ポリプロピレン
後述する製造例1で調製した無水マレイン酸変性ポリプロピレンを用いた。
無水マレイン酸変性ポリエチレン系樹脂
後述する製造例2で調製した無水マレイン酸変性ポリエチレンを用いた。
未変性ポリプロピレン系樹脂
後述する製造例3で調製したプロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体を用いた。
未変性ポリエチレン系樹脂
密度0.87g/cm3、MFR(230℃)5.4g/10分のエチレン・プロピレンランダム共重合体EPR略称:三井化学株式会社製タフマーP、エチレン起因骨格含量=82モル%)を用いた。

0055

[アミン化合物(B)]
アンモニア水(純正化学社製アンモニア濃度28質量%)

0056

[マトリックス樹脂(C)]
実施例1〜4、比較例1〜3:市販の未変性プロピレン樹脂プライムポリマー社製、商品名プライムポリプロJ105G、MFR(230℃、2.16kg荷重)=9.0g/10分、融点=162℃)、及び、市販の酸変性プロピレン樹脂(三井化学社製、登録商標アドマーQE800、MFR(230℃、2.16kg荷重)=9.0g/10分)の混合物(質量比;J105/QE800=95/5または90/10、のいずれか一方または両方)
実施例5:市販の未変性プロピレン樹脂(プライムポリマー社製、商品名プライムポリプロJ106MG、MFR(230℃、2.16kg荷重)=15.0g/10分、融点=162℃)〕、及び、市販の酸変性プロピレン樹脂(三井化学社製、登録商標アドマーQE800、MFR(230℃、2.16kg荷重)=9.0g/10分)の混合物(質量比;J106MG/QE800=90/10)

0057

〔製造例1〕
(無水マレイン酸変性ポリプロピレンの調製)
ポリプロピレン(プライムポリマー社製、商品名J106G、MFR(230℃、2.16kg)=15g/10分)100質量部に対して、ジアルキルパーオキサイド(日油社製、パーヘキサ(登録商標)25B)1質量部、粉末化した無水マレイン酸(日油社製、CRYSTALMAN(登録商標))3質量部を予備混合した。この混合物を190℃に温度調節した30mmφの二軸押出機に供給して、200rpmにて溶融混練して得たストランドを水槽で冷却して無水マレイン酸変性ポリプロピレン得た。未変性の残留無水マレイン酸を除去するために、この無水マレイン酸変性ポリプロピレンを40℃で2時間真空乾燥した。得られた無水マレイン酸変性ポリプロピレンのマレイン酸含量は4.5質量%であった。

0058

なお、グラフト率測定法は次の通りである;重合体200mgとクロロホルム4800mgを10mlのサンプル瓶に入れて50℃で30分加熱し完全に溶解させた。材質NaCl、光路長0.5mmの液体セルにクロロホルムを入れ、バックグラウンドとした。次に溶解した重合体溶液を液体セルにいれて、光度計(日本分光社製、装置名FT−IR460plus)を用い、積算回数32回にて赤外線吸収スペクトルを測定した。無水マレイン酸のグラフト率に関して、無水マレイン酸をクロロホルムに溶解した溶液カルボニル基の吸収を測定し検量線を作成した。そして試料のカルボニル基の吸収ピーク(1780cm−1付近極大ピーク、1750〜1813cm−1)の面積から、先に作成した検量線に基づき、重合体中の酸成分含有量を算出し、これをグラフト率(質量%)とした。

0059

〔製造例2〕
(無水マレイン酸変性ポリエチレン系樹脂の調製)
エチレン・プロピレン共重合体(エチレン起因骨格含量=95モル%、密度=920kg/m3)500gをガラス製反応器仕込み窒素雰囲気下160℃にて溶融した。次いで、無水マレイン酸15g及びジ−t−ブチルペルオキシド1.5gを上記反応系(温度160℃)に5時間かけて連続供給した。その後、さらに1時間加熱反応させた後、溶融状態のまま10mmHg真空中で0.5時間脱気処理して揮発分を除去した。その後冷却し、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン系樹脂を得た。このポリマーにおける無水マレイン酸グラフト量を測定した結果、グラフト量は2.7質量%であった。

0060

〔製造例3〕
(未変性ポリプロピレン系樹脂の調製)
WO2006/098452明細書の重合例4に記載された方法によって、プロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体を得た。プロピレン起因骨格含量=66モル%、エチレン起因骨格含量=11モル%、1−ブテン起因骨格含量=23モル%、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)=6.5g/10分であった。

0061

[実施例1]
(エマルションの調製)
製造例1で得られた無水マレイン酸変性ポリプロピレン10質量部と製造例3で得られたプロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体100質量部、界面活性剤(D)としてのオレイン酸カリウム3質量部を混合した。この混合物を2軸スクリュー押出機(池鉄工社製、装置名PCM−30、L/D=40)を用いて、特開平10−131048号公報の実施例に記載された方法に準拠してエマルションを調製した。得られたエマルション(水分散体)の固形分濃度は45質量%、酸価は11.5mgKOH/固形分1g換算値)であった。

0062

次いで、このエマルション2.3質量部、アンモニア水(アンモニア濃度28質量%)5質量部、蒸留水92.7質量部を混合することによって、成分(A)及び(B)を含むエマルションを得た。このエマルション中の、無水マレイン酸変性ポリプロピレンから誘導されたカルボン酸カリウム塩を含有する変性ポリプロピレンの濃度は0.09質量%、プロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体の濃度は0.91質量%、アンモニア(NH3)の濃度は1.4質量%であった。

0063

(炭素繊維束の処理)
このエマルションを、ローラー含浸法を用いて市販の炭素繊維(フォルモサプラスチック社製、商品名TC−36S(12K))からなる炭素繊維束に付着させた。次いで、オンラインで130℃、2分乾燥して低沸点成分を除去し、本発明の強化繊維束を得た。次いで、この強化繊維束と、マトリックス樹脂(C)として、市販の未変性プロピレン樹脂(プライムポリマー社製、商品名プライムポリプロJ105G)及び市販の酸変性プロピレン樹脂(三井化学社製、登録商標アドマーQE800)の混合物(質量比95/5または90/10)を用いて、本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体を作製した。

0064

[実施例2〜4及び比較例1]
エマルション中のアンモニア(NH3)の濃度が表1に示す値になるように配合組成を変更したこと以外は、実施例1と同様にしてエマルションを調製し、強化繊維束を作製し、本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体を作製した。

0065

[実施例5]
エマルション中のアンモニア(NH3)の濃度が2.8質量%になるように配合組成を調製し、このエマルションを、ローラー含浸法を用いて市販の炭素繊維(フォルモサプラスチック社製、商品名TC−35(12K))からなる炭素繊維束に付着させた。次いで、オンラインで130℃、2分乾燥して低沸点成分を除去し、強化繊維束を作製した。次いで、この強化繊維束と、マトリックス樹脂(C)として、市販の未変性プロピレン樹脂(プライムポリマー社製、商品名プライムポリプロJ106MG)及び市販の酸変性プロピレン樹脂(三井化学社製、登録商標アドマーQE800)の混合物(質量比90/10)を用いて、本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体を作製した。

0066

[比較例2]
市販の炭素繊維束(フォルモサプラスチック社製、商品名TC−35(12K)にエポキシ系サイジング剤が付着した標準銘柄)と、マトリックス樹脂(C)として市販の未変性プロピレン樹脂(プライムポリマー社製、商品名プライムポリプロJ105G)及び市販の酸変性プロピレン樹脂(三井化学社製、登録商標アドマーQE800)の混合物(質量比90/10)を用いて、炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体を作製した。

0067

[比較例3]
ポリビニルアルコール(PVA)(Chang Chun Plastics社製、商品名BP−05G)の濃度が0.7質量%の水溶液を、ローラー含浸法を用いて市販の炭素繊維(フォルモサプラスチック社製、商品名TC−35(12K))に付着させた。次いで、オンラインで140℃、1分乾燥して水分を除去し、PVAが0.4質量%付着した強化繊維束を得た。この強化繊維束と、マトリックス樹脂(C)として、市販の未変性プロピレン樹脂(プライムポリマー社製、商品名プライムポリプロJ105G)及び市販の酸変性プロピレン樹脂(三井化学社製、登録商標アドマーQE800)の混合物(質量比90/10)を用いて、炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体を作製した。

0068

実施例1〜5及び比較例1〜3の評価結果を表1に示す。なお、各測定は以下の方法で行った。

0069

<成分(A1)と成分(A2)の合計付着量>
約5gの強化繊維束を120℃で3時間乾燥し、その質量W1(g)を測定した。次いで、強化繊維束を窒素雰囲気中450℃で15分間加熱し、その後室温まで冷却し、質量W2(g)を測定した。付着量は下式で算出した。
付着量(%)=[(W1−W2)/W2]×100

0070

界面せん断強度
本発明の強化繊維束とマトリックス樹脂との界面剪断せん断強度フラグメンテーション法)の評価は以下の方法で測定した。マトリックス樹脂(C)からなる100μm厚の樹脂フィルム(20cm×20cm角)を2枚作製した。そして一方の樹脂フィルム上に、強化繊維束から取り出した20cm長の単繊維1本を直線状に配置し、他方の樹脂フィルムを単繊維を挟むように重ねて配置した。これを200℃で3分間、4MPaの圧力で加圧プレスし、単繊維が樹脂に埋め込まれたサンプルを作製した。このサンプルをさらに切出して、単繊維が中央に埋没した厚さ0.2mm、幅5mm、長さ30mmの試験片を得た。さらに同じ方法で合計5個の試験片を作製した。

0071

これら5個の試験片に対して、通常の引張試験治具を用いて試験長14mm、歪速度0.3mm/minの条件で引張試験を行い、繊維の破断が起こらなくなった時の平均破断繊維長(l)を透過型光学顕微鏡を用いて測定した。フラグメンテーション法による界面せん断強度(τ)(MPa)は下式より求めた。

0072

τ=(σf・d)/2Lc、 Lc=(4/3)・L

0073

ここで、Lcは臨界繊維長、Lは最終的な繊維の破断長さ(μm)の平均値、σfは繊維の引張り強さ(MPa)、dは繊維の直径(μm)である。(参考文献:大沢ら、繊維学会誌Vol.33,No.1(1977))

0074

σfは繊維の引張強度分布ワイブル分布に従うとして次の方法で求めた。即ち、単繊維を用い、試料長が5mm、25mm、50mmで得られた平均引張強度から最小2乗法により、試料長と平均引張強度との関係式を求め、試料長Lcの時の平均引張強度を算出した。

0075

0076

[実施例6]
(一方向性材)
実施例5で得た強化繊維束を用い、特開2013−227695号公報に記載の装置に樹脂を溶融させる押出機を組み合わせた装置により、一方向性材のシートを以下の手順で作製した。その際のマトリックス樹脂(C)としては、実施例5で用いたものと同じ樹脂を用いた。具体的には、特開2013−227695号公報に記載の開繊装置により強化繊維束を開繊し、加熱した強化繊維束と押出機により溶融させたマトリックス樹脂(C)をTダイにより膜状とし、離型紙に挟み、加圧ローラーにて加熱、加圧することでマトリックス樹脂(C)を強化繊維束に含浸させ、その後冷却、固化して一方向性材のシートを得た。押出機及びTダイの温度は250℃、加圧ロールの温度は275℃とした。

0077

得られた一方向性材のシートの厚さは130μm、繊維体積分率Vfは0.4であった。その含浸状況を確認する為に、SEM(走査型電子顕微鏡)(日本電子(株)製、装置名JSM7001F、加速電圧10kV、反射電子像)を用いて観察を行った。具体的には一方向性材をエポキシ樹脂包埋し、研磨機により表面を研磨して平滑な断面を作製し、SEM観察を行った。図1は、そのSEM写真(500倍)であり、白色部分が強化繊維束のフィラメント黒色部分がマトリックス樹脂(C)である。このSEM写真から明らかなように、強化繊維束にマトリックス樹脂(C)が非常に良く含浸しており、未含浸部分ボイドは観察されなかった。

0078

なお上記の繊維体積分率に関し、炭素繊維強化プラスチック繊維含有率試験方法は、JIS K7075に記載されているが、ここでは次の方法で求めた。サンプルのシートを50mm×50mmの正方形切り出し、質量Wc(g)を測定した。この切り出したサンプルを480℃で1時間加熱し、樹脂を熱劣化させ取り除き、炭素繊維のみの質量Wf(g)を測定し、次の式によって繊維堆積分率Vfを求めた。

0079

繊維体積分率Vf=(Wf/Wc)×ρc/ρf

0080

ここで、ρcはサンプルの密度(g/cm3)、ρfはサンプルに用いられている炭素繊維の密度(g/cm3)である。

0081

(一方向性積層材)
さらに、この一方向性材のシートを0°方向に8層積層し、これを平板金型を装着したプレス装置((株)神金属工業所製、装置名NSF−37HHC)内に配置した。そして、200℃、5MPaで3分間加圧圧縮し、その後加圧状態のまま直ちに冷却し、1.0mm厚の一方向性積層材を得た。

0082

得られた一方向性積層材を切り出して4つの試験片(250mm×15mm)を作製し、引張試験機(Zwick社製、装置名Z100)を用いて2mm/分の速度で引張試験を行い、弾性率及び破断強度を測定し(ASTMD3039に準拠)、4つの試験片の平均値をとった。その結果、弾性率は96.6GPa、破断強度は935MPaであった。さらに、ショートスパン曲げ試験装置((株)島津製作所製、装置名 島津オートグラフAG−5KNX)を用い、層間せん断応力ILSS)を測定した(ASTM D2344に準拠)。その結果、ILSSは28.9MPaであった。

0083

(ランダムスタンパブルシート)
また、前記一方向性材のシートを30〜50mm×30〜50mmの小片に切断し、これら小片をランダムな方向に且つ何れの箇所においても8〜9層重なるように配置した積層体(ランダム配向体)を、一方向性積層材作製時に用いた装置と同じ装置を用いて200℃、10MPaで3分間加圧圧縮し、その後加圧状態のまま直ちに冷却し、1.0mm厚のシートのランダムスタンパブルシートを得た。

0084

得られたランダムスタンパブルシートに対して、一方向性積層材に対して行った引張試験と同じ引張試験を行った。その結果、弾性率は22.6GPa、破断強度は138MPaであった。また、前記一方向性材のシートの場合と同じようにしてSEM観察を行った。図2は、そのSEM写真(150倍)である。このSEM写真から明らかなように、同じ方向に繊維が並んだ層が、任意の繊維配向で8層積層されていた。

0085

[比較例4]
(一方向性材)
比較例2で使用した市販の炭素繊維束(フォルモサプラスチック社製、商品名TC−35(12K)にエポキシ系サイジング剤が付着した標準銘柄)を用いたこと以外は、実施例6と同様にして一方向性材のシートを作製し、SEM観察を行った。図3は、そのSEM写真(500倍)である。このSEM写真から明らかなように、強化繊維束のフィラメントとマトリクス樹脂(C)との界面で剥離している部分が存在していた。

0086

(一方向性積層材)
さらに、この一方向性材のシートを用い、実施例6と同様にして一方向性積層材を作製し、層間せん断応力(ILSS)を測定した。そのILSSは17.3MPaであった。

0087

[比較例5]
(一方向性材)
比較例3で得た強化繊維束を用いたこと以外は、実施例6と同様にして一方向性材のシートを作製し、SEM観察を行った。図4は、そのSEM写真(500倍)である。このSEM写真から明らかなように、強化繊維束に対するマトリックス樹脂(C)の未含浸部分(白色部分)が存在していた。

0088

(一方向性積層材)
さらに、この一方向性材のシートを用い、実施例6と同様にして一方向性積層材を作製し、層間せん断応力(ILSS)を測定した。そのILSSは19.5MPaであった。

0089

実施例6及び比較例4〜5の評価結果を表2に示す。

0090

0091

[実施例7]
(エマルションの調製)
製造例2で得られた無水マレイン酸変性ポリエチレン10質量部とエチレン・プロピレンランダム共重合体(三井化学株式会社製タフマーP)100質量部、界面活性剤(D)としてのオレイン酸カリウム1.5質量部を混合し、実施例1と同様な方法によって、成分(A)および成分(B)を含むエマルションを得た。得られたエマルション(水分散体)の固形分濃度は45質量%、酸価は5.0mgKOH/固形分1g換算値)であった。

0092

次いで、このエマルション2.3質量部、アンモニア水(アンモニア濃度28質量%)10質量部、蒸留水88質量部を混合することによって、成分(A)及び(B)を含むエマルションを得た。このエマルション中の、無水マレイン酸変性ポリエチレンから誘導されたカルボン酸カリウム塩を含有する変性ポリエチレンの濃度は0.09質量%、EPRの濃度は0.91質量%、アンモニア(NH3)の濃度は2.8質量%であった。

0093

(炭素繊維束の処理)
このエマルションを、ローラー含浸法を用いて市販の炭素繊維(フォルモサプラスチック社製、商品名TC−35(12K))からなる炭素繊維束に付着させた。次いで、オンラインで130℃、2分乾燥して低沸点成分を除去し、本発明の強化繊維束を得た。次いで、この強化繊維束と、マトリックス樹脂(C)として、市販の未変性ポリエチレン(プライムポリマー社製、商品名プライムポリプロ1300J)、及び無水マレイン酸を2.0質量%グラフトした変性ポリエチレン(ASTMD1238に準じて190℃で測定したメルトフローレートが1.8g/10分)の混合物(質量比98.75/1.25)を用いて、本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体を作製した。評価結果を表3に示す。

0094

[比較例6]
エマルション中のアンモニア(NH3)の濃度がゼロになるように配合組成を変更したこと以外は、実施例7と同様にしてエマルションを調製し、強化繊維束を作製し、炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体を作製した。評価結果を表3に示す。

0095

0096

[実施例8]
フォルモサプラスチック社製の炭素繊維束(商品名TC35R−12K)4本を、図9に示すサイジングバス中に、実施例1で用いたカルボン酸カリウム塩含有変性ポリプロピレン/プロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体(質量比率;1/9)とアンモニアが各々1.5質量%および1.0質量%となるように調製したサイジング液(エマルション)中に、繊維束が互いに接触しないように、線速が7m/分のスピードで連続的に浸漬(浸漬時間;5秒)させ、ゴムローラー1およびスチールローラー2からなるニップロール線圧;205N/m)を通過させ、その後130℃で2分間乾燥することによって、連続的に乾燥炭素繊維束を得た。なお、本連続浸漬・乾燥装置には、浸漬によって減少するサイジング剤が別途準備されたサイジング剤予備タンクに設置された供給用ポンプ7よって連続的に浸漬槽5中に供給される機構を持っている。

0097

この連続浸漬実験を、炭素繊維束供給開始後、最長で48時間実施した。所定時間ごとに4本の乾燥炭素繊維束の任意の9か所を選定して、成分(A)の付着量と、その変動係数、繊維束表面のSEM写真を測定した。成分(A)付着量測定は前記方法の通り。また、SEM写真は、日本電子(株)製(JEOL JSM−5600)を用い加速電圧20kVの条件で測定した(倍率1000倍)。測定サンプルは、SEM測定前に真空スパッタリングによって金蒸着されたものを用いた。

0098

浸漬槽への炭素繊維束供給後3時間目において、成分(A)の付着量の変動係数は3時間目で大きくなった。また5時間目のSEM写真(図5)によれば、炭素繊維表面に突起状の異物が多量観測された。なお、実施例8で用いたサイジング液について、別途測定した表面張力(KRUSS社製の表面張力測定器K100を使用。リング法による測定)は、44.2mN/mであった。

0099

[実施例9]
実施例8において、アンモニア濃度を表4の値に変更した以外は実施例8と同様な連続浸漬実験を行った。浸漬槽への炭素繊維束供給後12時間目までは、成分(A)の付着量とその変動係数は安定推移したが18時間目で変動係数が倍増した。18時間目のSEM写真(図6)によれば、炭素繊維表面に突起状の異物がわずかに観測されることが分かった。なお、実施例9で用いたサイジング液について、別途測定した表面張力(KRUSS社製の表面張力測定器K100を使用した。リング法による測定)は、43.4mN/mであった。

0100

[実施例10]
実施例8において、アンモニア濃度を表4の値に変更した以外は実施例8と同様な連続浸漬実験を行った。浸漬槽への炭素繊維束供給後24時間目までは、成分(A)の付着量とその変動係数は安定推移することが確認された。48時間目のSEM写真(図7)では、炭素繊維表面に突起状の異物が全く観測されないことが分かった。なお、実施例10で用いたサイジング液について、別途測定した表面張力(KRUSS社製の表面張力測定器K100を使用。リング法による測定)は、43.2mN/mであった。

0101

[比較例7]
実施例8において、アンモニアを用いなかった以外は実施例8と同様な連続浸漬実験を行った。浸漬槽への炭素繊維束供給後1時間目で凝集塊が生成し、成分(A)付着量の変動係数が急増することが確認された。1時間目のSEM写真(図6)によれば、炭素繊維表面にヒゲ状の異物が多量観測されることが分かった。なお、比較例7で用いたサイジング液について、別途測定した表面張力(KRUSS社製の表面張力測定器K100を使用。リング法による測定)は、50.0mN/mであった。

0102

0103

実施例8〜10および比較例7の結果から明らかなように、サイジング液中に公知の重合体鎖にカルボン酸カリウム塩を含有する変性ポリオレフィン樹脂に、アンモニアを添加することによって、炭素繊維にサイジング剤が安定的に付着することが分かる。この原因は、サイジング液の表面張力が低下することによって微細構造の炭素繊維表面へのサイジング剤分子浸透を容易ならしめることが考えられる。また、アンモニア添加によってサイジング剤を含む分散液の粒子安定度が増すことも本願発明の効果を発現する一因と考えられる。

0104

[実施例11]
(一方向性材)
実施例10で得た強化繊維束を用い、特開2013−227695号公報に記載の装置に樹脂を溶融させる押出機を組み合わせた装置により、一方向性材のシートを以下の手順で作製した。その際のマトリックス樹脂(C)としては、実施例5で用いたものと同じ樹脂を用いた。具体的には、特開2013−227695号公報に記載の開繊装置により強化繊維束を開繊し、加熱した強化繊維束と押出機により溶融させたマトリックス樹脂(C)をTダイにより膜状とし、離型紙に挟み、加圧ローラーにて加熱、加圧することでマトリックス樹脂(C)を強化繊維束に含浸させ、その後冷却、固化して一方向性材のシートを得た。押出機及びTダイの温度は260℃、加圧ロールの温度は270℃とした。

0105

得られた一方向性材のシートの厚さは150μm、繊維体積分率Vfは0.356であった。その含浸状況を確認する為に、SEM(走査型電子顕微鏡)(日本電子(株)製、装置名JSM7001F、加速電圧10kV、反射電子像)を用いて観察を行った。具体的には一方向性材をエポキシ樹脂に包埋し、研磨機により表面を研磨して平滑な断面を作製し、SEM観察を行った。図10は、そのSEM写真(500倍)であり、白色部分が強化繊維束のフィラメント、黒色部分がマトリックス樹脂(C)である。このSEM写真から明らかなように、強化繊維束にマトリックス樹脂(C)が非常に良く含浸しており、未含浸部分やボイドは観察されなかった。

0106

(一方向性積層材)
さらに、この一方向性材のシートを0°方向に7層積層し、これを平板の金型を装着したプレス装置((株)神藤金属工業所製、装置名NSF−37HHC)内に配置した。そして、230℃、5MPaで5分間加圧圧縮し、その後加圧状態のまま直ちに冷却し、1.0mm厚の一方向性積層材を得た。

実施例

0107

得られた一方向性積層材を切り出して4つの試験片(250mm×15mm)を作製し、引張試験機(Zwick社製、装置名Z100)を用いて2mm/分の速度で引張試験を行い、弾性率及び破断強度を測定し(ASTMD3039に準拠)、4つの試験片の平均値をとった。その結果、弾性率は83.0GPa、破断強度は1180MPaであった。さらに、ショートスパン曲げ試験装置((株)島津製作所製、装置名 島津オートグラフAG−5KNX)を用い、層間せん断応力(ILSS)を測定した(ASTM D2344に準拠)。その結果、ILSSは27.2MPaであった。

0108

1ゴムローラー
2スチールローラー
液垂れ回収プレート
4 液垂れ回収用タンク
5エマルションの入った浸漬槽
6炭素繊維の走行方向
7 エマルション供給用ポンプ

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