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技術 型、型の製造方法、反射防止膜および反射防止膜の製造方法

出願人 シャープ株式会社
発明者 山田美穂箕浦潔中原隆裕
出願日 2015年11月13日 (4年1ヶ月経過) 出願番号 2016-560192
公開日 2017年11月9日 (2年1ヶ月経過) 公開番号 WO2016-080314
状態 特許登録済
技術分野 表面反応による電解被覆 光学要素の表面処理 積層体(2) プラスチック等の成形用の型 プラスチック等の注型成形、圧縮成形 その他の表面処理 エッチングと化学研磨(つや出し)
主要キーワード pHメータ 相対拡散 隣接間距離 拡散反射光強度 切削痕 開口部径 残存層 亜結晶粒界
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重要な関連分野

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図面 (20)

課題・解決手段

型(100)の製造方法は、Al−Mg−Si系のアルミニウム合金で形成された円筒状のアルミニウム基材(12)であって、機械的な鏡面加工が施されたアルミニウム基材(12)を用意する工程と、アルミニウム基材(12)の表面をアルカリ性エッチング液によって梨地処理する工程と、その後で、アルミニウム基材(12)の表面に無機材料層(16)を形成し、無機材料層(16)の上にアルミニウム膜(18)を形成することによって、型基材(10)を作製する工程と、型基材(10)のアルミニウム膜(18)の表面に対して、陽極酸化エッチングとを交互に繰り返し、複数のミクロな凹部(14p)を有する反転されたモスアイ構造を形成する工程とを包含する。

概要

背景

テレビ携帯電話などに用いられる表示装置カメラレンズなどの光学素子には、通常、表面反射を低減して光の透過量を高めるために反射防止技術が施されている。例えば、空気とガラスとの界面を光が入射する場合のように屈折率が異なる媒体の界面を光が通過する場合、フレネル反射などによって光の透過量が低減し、視認性が低下するからである。

近年、反射防止技術として、凹凸周期可視光(λ=380nm〜780nm)の波長以下に制御されたミクロ凹凸パターン基板表面に形成する方法が注目されている(特許文献1から3を参照)。反射防止機能発現する凹凸パターンを構成する凸部の2次元的な大きさは10nm以上500nm未満である。ここで、凸部の「2次元的な大きさ」とは、表面の法線方向から見たときの凸部の面積円相当径を指し、例えば、凸部が円錐形の場合、凸部の2次元的な大きさは、円錐の底面の直径に相当する。凹部の「2次元的な大きさ」も同様である。

この方法は、いわゆるモスアイ(Moth−eye、蛾の目)構造の原理を利用したものであり、基板に入射した光に対する屈折率を凹凸の深さ方向に沿って入射媒体の屈折率から基板の屈折率まで連続的に変化させることによって反射を防止したい波長域の反射を抑えている。

モスアイ構造は、広い波長域にわたって入射角依存性の小さい反射防止作用を発揮できるほか、多くの材料に適用でき、凹凸パターンを基板に直接形成できるなどの利点を有している。その結果、低コスト高性能反射防止膜(または反射防止表面)を提供できる。

本出願人は、モスアイ構造を有する反射防止膜(または反射防止表面)の製造方法として、アルミニウム陽極酸化することによって得られる陽極酸化ポーラスアルミナ層を用いる方法を開発してきた(特許文献2および3)。

陽極酸化ポーラスアルミナ膜を利用することによって、モスアイ構造を表面に形成するための型(以下、「モスアイ用型」という。)を容易に製造することができる。特に、特許文献2および3に記載されているように、アルミニウムの陽極酸化膜の表面をそのまま型として利用すると、製造コストを低減する効果が大きい。モスアイ構造を形成することができるモスアイ用型の表面の構造を「反転されたモスアイ構造」ということにする。

また、特許文献1から4に記載されているように、モスアイ構造(ミクロ構造)に加えて、モスアイ構造よりも大きな凹凸構造マクロ構造)を設けることによって、反射防止膜(反射防止表面)にアンチグレア(防眩)機能を付与することができる。アンチグレア機能を発揮する凹凸構造(「アンチグレア構造」ということがある。)を構成する凸部または凹部の2次元的な大きさは200nm以上100μm未満である。また、アンチグレア構造を形成することができる型の表面の構造を「反転されたアンチグレア構造」ということにする。特許文献1から4の開示内容の全てを参考のために本明細書に援用する。

なお、本明細書においては、モスアイ構造(または反転されたモスアイ構造)を構成する凹凸をミクロな凹凸と呼び、アンチグレア構造(または反転されたアンチグレア構造)を構成する凹凸をマクロな凹凸と呼ぶことにする。マクロな凹凸の2次元的な大きさの範囲は、ミクロな凹凸の2次元的な大きさの範囲と部分的に重なっているが、アンチグレア機能を有する反射防止膜(反射防止表面)において、アンチグレア構造を構成する凹凸構造は、反射防止機能を発現するモスアイ構造を構成する凹凸構造よりも大きい。

概要

型(100)の製造方法は、Al−Mg−Si系のアルミニウム合金で形成された円筒状のアルミニウム基材(12)であって、機械的な鏡面加工が施されたアルミニウム基材(12)を用意する工程と、アルミニウム基材(12)の表面をアルカリ性エッチング液によって梨地処理する工程と、その後で、アルミニウム基材(12)の表面に無機材料層(16)を形成し、無機材料層(16)の上にアルミニウム膜(18)を形成することによって、型基材(10)を作製する工程と、型基材(10)のアルミニウム膜(18)の表面に対して、陽極酸化とエッチングとを交互に繰り返し、複数のミクロな凹部(14p)を有する反転されたモスアイ構造を形成する工程とを包含する。

目的

本発明は、適度なアンチグレア機能と適度な鏡面反射性とを有する反射防止膜(または反射防止表面)を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

(a)Al−Mg−Si系のアルミニウム合金で形成された円筒状のアルミニウム基材であって、機械的な鏡面加工が施されたアルミニウム基材を用意する工程と、(b)前記アルミニウム基材の表面をアルカリ性エッチング液によって梨地処理する工程と、(c)前記工程(b)の後で、前記アルミニウム基材の前記表面に無機材料層を形成し、前記無機材料層の上にアルミニウム膜を形成することによって、型基材を作製する工程と、(d)前記工程(c)の後で、前記アルミニウム膜の表面を陽極酸化することによって、複数のミクロな凹部を有するポーラスアルミナ層を形成する工程と、(e)前記工程(d)の後に、前記ポーラスアルミナ層を、エッチング液に接触させることによって、前記ポーラスアルミナ層の前記複数のミクロな凹部を拡大させる工程と、(f)前記工程(e)の後に、さらに陽極酸化することによって、前記複数のミクロな凹部を成長させる工程とを包含する、型の製造方法。

請求項2

前記工程(b)によって、前記アルミニウム基材の前記表面の算術平均粗さRaは50nm以上200nm以下となる、請求項1に記載の型の製造方法。

請求項3

前記アルカリ性のエッチング液は、無機塩基または有機塩基を0.03mass%以上含む、請求項1または2に記載の型の製造方法。

請求項4

前記アルカリ性のエッチング液のpHは9.5以上11以下である、請求項1から3のいずれかに記載の型の製造方法。

請求項5

前記アルカリ性のエッチング液は、アミノ基を有する有機化合物を含む、請求項1から4のいずれかに記載の型の製造方法。

請求項6

前記アルカリ性のエッチング液は、水酸化カリウムを含む、請求項1から5のいずれかに記載の型の製造方法。

請求項7

前記工程(b)において、前記アルミニウム基材の表面から少なくとも1.4μmが除去される、請求項1から6のいずれかに記載の型の製造方法。

請求項8

前記工程(b)は、前記アルミニウム基材の前記表面を、前記アルカリ性のエッチング液に45分間以上接触させることにより行う、請求項1から7のいずれかに記載の型の製造方法。

請求項9

前記工程(b)は、脱脂工程を兼ねる、請求項1から8のいずれかに記載の型の製造方法。

請求項10

前記アルミニウム基材は、マンドレル法によって形成されたアルミニウム基材である、請求項1から9のいずれかに記載の型の製造方法。

請求項11

請求項1から10のいずれかに記載の型の製造方法によって製造された型。

請求項12

表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさが200nm以上30μm以下の複数のマクロな凸部と、表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさが10nm以上500nm未満の複数のミクロな凹部とを有する、表面構造を備えたポーラスアルミナ層を有する型。

請求項13

請求項11または12に記載の型を用意する工程と、被加工物を用意する工程と、前記型と前記被加工物の表面との間に光硬化樹脂を付与した状態で、前記光硬化樹脂に光を照射することによって前記光硬化樹脂を硬化させる工程と、前記型を硬化させられた光硬化樹脂で形成された反射防止膜から剥離する工程とを包含する、反射防止膜の製造方法。

請求項14

請求項13に記載の反射防止膜の製造方法によって製造された反射防止膜。

請求項15

ヘイズ値が約7以上約24以下である、請求項14に記載の反射防止膜。

技術分野

0001

本発明は、型、型の製造方法、型を用いて製造される反射防止膜、および反射防止膜の製造方法に関する。ここでいう「型」は、種々の加工方法スタンピングキャスティング)に用いられる型を包含し、スタンパということもある。また、印刷ナノプリントを含む)にも用いられ得る。

背景技術

0002

テレビ携帯電話などに用いられる表示装置カメラレンズなどの光学素子には、通常、表面反射を低減して光の透過量を高めるために反射防止技術が施されている。例えば、空気とガラスとの界面を光が入射する場合のように屈折率が異なる媒体の界面を光が通過する場合、フレネル反射などによって光の透過量が低減し、視認性が低下するからである。

0003

近年、反射防止技術として、凹凸周期可視光(λ=380nm〜780nm)の波長以下に制御されたミクロ凹凸パターン基板表面に形成する方法が注目されている(特許文献1から3を参照)。反射防止機能発現する凹凸パターンを構成する凸部の2次元的な大きさは10nm以上500nm未満である。ここで、凸部の「2次元的な大きさ」とは、表面の法線方向から見たときの凸部の面積円相当径を指し、例えば、凸部が円錐形の場合、凸部の2次元的な大きさは、円錐の底面の直径に相当する。凹部の「2次元的な大きさ」も同様である。

0004

この方法は、いわゆるモスアイ(Moth−eye、蛾の目)構造の原理を利用したものであり、基板に入射した光に対する屈折率を凹凸の深さ方向に沿って入射媒体の屈折率から基板の屈折率まで連続的に変化させることによって反射を防止したい波長域の反射を抑えている。

0005

モスアイ構造は、広い波長域にわたって入射角依存性の小さい反射防止作用を発揮できるほか、多くの材料に適用でき、凹凸パターンを基板に直接形成できるなどの利点を有している。その結果、低コスト高性能の反射防止膜(または反射防止表面)を提供できる。

0006

本出願人は、モスアイ構造を有する反射防止膜(または反射防止表面)の製造方法として、アルミニウム陽極酸化することによって得られる陽極酸化ポーラスアルミナ層を用いる方法を開発してきた(特許文献2および3)。

0007

陽極酸化ポーラスアルミナ膜を利用することによって、モスアイ構造を表面に形成するための型(以下、「モスアイ用型」という。)を容易に製造することができる。特に、特許文献2および3に記載されているように、アルミニウムの陽極酸化膜の表面をそのまま型として利用すると、製造コストを低減する効果が大きい。モスアイ構造を形成することができるモスアイ用型の表面の構造を「反転されたモスアイ構造」ということにする。

0008

また、特許文献1から4に記載されているように、モスアイ構造(ミクロ構造)に加えて、モスアイ構造よりも大きな凹凸構造マクロ構造)を設けることによって、反射防止膜(反射防止表面)にアンチグレア(防眩)機能を付与することができる。アンチグレア機能を発揮する凹凸構造(「アンチグレア構造」ということがある。)を構成する凸部または凹部の2次元的な大きさは200nm以上100μm未満である。また、アンチグレア構造を形成することができる型の表面の構造を「反転されたアンチグレア構造」ということにする。特許文献1から4の開示内容の全てを参考のために本明細書に援用する。

0009

なお、本明細書においては、モスアイ構造(または反転されたモスアイ構造)を構成する凹凸をミクロな凹凸と呼び、アンチグレア構造(または反転されたアンチグレア構造)を構成する凹凸をマクロな凹凸と呼ぶことにする。マクロな凹凸の2次元的な大きさの範囲は、ミクロな凹凸の2次元的な大きさの範囲と部分的に重なっているが、アンチグレア機能を有する反射防止膜(反射防止表面)において、アンチグレア構造を構成する凹凸構造は、反射防止機能を発現するモスアイ構造を構成する凹凸構造よりも大きい。

先行技術

0010

特表2001−517319号公報
特表2003−531962号公報
国際公開第2011/055757号
国際公開第2013/146656号

発明が解決しようとする課題

0011

しかしながら、適度なアンチグレア機能を有する反射防止膜(または反射防止表面)を形成するための型を効率よく製造する方法は確立されたとは言い難い。

0012

例えば、特許文献1に記載のサンドブラスト法は、アンチグレア機能を付与する所望のマクロな凹凸構造を再現性良く形成することが難しい。また、特許文献3に記載の陰極電解法では、アンチグレア機能を十分に発揮できるマクロな凹凸構造を形成できないことがある。

0013

さらに、特許文献4に記載されている電着によって形成された樹脂層平坦部のない連続的なマクロな凹凸構造を反映した表面は、画像がぼやけるという問題がある。近年、表示装置の高精細化が進むにつれて、画像のぼやけが抑制された適度なアンチグレア機能を有する反射防止膜が求められている。

0014

本発明は、適度なアンチグレア機能と適度な鏡面反射性とを有する反射防止膜(または反射防止表面)を提供すること、そのような反射防止膜を製造する方法を提供すること、そのような反射防止膜を形成するための型を提供すること、およびそのような型を効率よく製造できる方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0015

本発明の実施形態による型の製造方法は、(a)Al−Mg−Si系のアルミニウム合金で形成された円筒状のアルミニウム基材であって、機械的な鏡面加工が施されたアルミニウム基材を用意する工程と、(b)前記アルミニウム基材の表面をフッ化水素アンモニウムとの塩を含む水溶液によって梨地処理する工程と、(c)前記工程(b)の後で、前記アルミニウム基材の前記表面に無機材料層を形成し、前記無機材料層の上にアルミニウム膜を形成することによって、型基材を作製する工程と、(d)前記工程(c)の後で、前記アルミニウム膜の表面を陽極酸化することによって、複数のミクロな凹部を有するポーラスアルミナ層を形成する工程と、(e)前記工程(d)の後に、前記ポーラスアルミナ層を、エッチング液に接触させることによって、前記ポーラスアルミナ層の前記複数のミクロな凹部を拡大させる工程と、(f)前記工程(e)の後に、さらに陽極酸化することによって、前記複数のミクロな凹部を成長させる工程とを包含する。

0016

ある実施形態において、前記アルミニウム基材は、冷間引抜き加工が施されたアルミニウム基材である。前記アルミニウム基材は、熱間押出し法によって形成されたアルミニウム基材である。熱間押出し法は、マンドレル法であっても、ボートホール法であってもよい。冷間引抜き加工は省略され得る。冷間引抜き加工を行わない場合には、マンドレル法で形成されたアルミニウム基材を用いることが好ましい。

0017

ある実施形態において、前記型の製造方法は、前記工程(b)の前に、脱脂工程および水洗工程をさらに包含する。

0018

ある実施形態において、前記工程(b)は、前記水洗工程の後、15分を経過する前に行われる。

0019

ある実施形態において、前記型の製造方法は、前記工程(b)の前に、アルカリ性のエッチング液を用いて、前記アルミニウム基材の前記表面をエッチングする基材表面エッチング工程をさらに包含する。

0020

ある実施形態において、前記基材表面エッチング工程は、前記脱脂工程を兼ねる。

0021

ある実施形態において、前記アルカリ性のエッチング液は、無機塩基または有機塩基を0.03mass%以上含む。

0022

ある実施形態において、前記アルカリ性のエッチング液のpHは、10以上12以下である。

0023

ある実施形態において、前記アルカリ性のエッチング液は、水酸化カリウムを含む。

0024

ある実施形態において、前記アルカリ性のエッチング液は、アミノ基を有する有機化合物を含む。

0025

ある実施形態において、前記基材表面エッチング工程および前記工程(b)によって、前記アルミニウム基材の前記表面の算術平均粗さRaは50nm以上300nm以下となる。

0026

ある実施形態において、前記基材表面エッチング工程において、前記アルミニウム基材の表面から少なくとも1.4μmが除去される。

0027

ある実施形態において、前記工程(b)の前に、前処理のための陽極酸化工程およびエッチング工程をさらに包含する。

0028

ある実施形態において、前記前処理のための前記陽極酸化工程は、電解液として硫酸水溶液を用いる。

0029

ある実施形態において、前記前処理のための前記エッチング工程は、エッチング液として燐酸水溶液を用いる。

0030

ある実施形態において、前記工程(b)における、前記フッ化水素とアンモニウムとの塩は、フッ化水素アンモニウムである。ある実施形態において、フッ化水素とアンモニウムとの塩を含む水溶液は、4mass%以上のフッ化水素アンモニウムを含む。前記工程(b)は、例えば、約10℃で行われる。このとき、梨地処理の時間は、2分30秒以上8分以下の範囲にあることが好ましい。

0031

本発明の実施形態による型は、上記のいずれかに記載の型の製造方法によって製造された型である。

0032

本発明の他の実施形態による型は、表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさが200nm以上30μm以下の複数の凸部と、表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさが10nm以上500nm未満の複数のミクロな凹部とを有する、表面構造を備えたポーラスアルミナ層を有する。

0033

本発明の実施形態による反射防止膜の製造方法は、上記のいずれかの型を用意する工程と、被加工物を用意する工程と、前記型と前記被加工物の表面との間に光硬化樹脂を付与した状態で、前記光硬化樹脂に光を照射することによって前記光硬化樹脂を硬化させる工程と、前記型を硬化させられた光硬化樹脂で形成された反射防止膜から剥離する工程とを包含する。

0034

本発明の実施形態による反射防止膜は、上記の反射防止膜の製造方法によって製造された反射防止膜である。

0035

本発明の他の実施形態による反射防止膜は、表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさが200nm以上30μm以下の複数の凹部と、表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさが10nm以上500nm未満の複数のミクロな凸部とを有する表面構造を備え、入射角を5°とし、受光角横軸にとり、拡散反射光強度最大値を80%として規格化した、相対拡散反射率(%)の常用対数縦軸にとった配光分布曲線の傾きが不連続に変化する点が、受光角が0°超10°以下の範囲内にあり、かつ、前記相拡散反射率(%)が1%以上10%以下の範囲内に存在する。

0036

ある実施形態において、前記反射防止膜のヘイズ値が約7以上約24以下である。

0037

本発明の他の実施形態による型の製造方法は、(a)Al−Mg−Si系のアルミニウム合金で形成された円筒状のアルミニウム基材であって、機械的な鏡面加工が施されたアルミニウム基材を用意する工程と、(b)前記アルミニウム基材の表面をアルカリ性のエッチング液によって梨地処理する工程と、(c)前記工程(b)の後で、前記アルミニウム基材の前記表面に無機材料層を形成し、前記無機材料層の上にアルミニウム膜を形成することによって、型基材を作製する工程と、(d)前記工程(c)の後で、前記アルミニウム膜の表面を陽極酸化することによって、複数のミクロな凹部を有するポーラスアルミナ層を形成する工程と、(e)前記工程(d)の後に、前記ポーラスアルミナ層を、エッチング液に接触させることによって、前記ポーラスアルミナ層の前記複数のミクロな凹部を拡大させる工程と、(f)前記工程(e)の後に、さらに陽極酸化することによって、前記複数のミクロな凹部を成長させる工程とを包含する。

0038

ある実施形態において、前記工程(b)によって、前記アルミニウム基材の前記表面の算術平均粗さRaは50nm以上200nm以下となる。

0039

ある実施形態において、前記アルカリ性のエッチング液は、無機塩基または有機塩基を0.03mass%以上含む。例えば、前記アルカリ性のエッチング液は、有機塩基を0.96mass%以上含む。

0040

ある実施形態において、前記アルカリ性のエッチング液のpHは9.5以上11以下である。

0041

ある実施形態において、前記アルカリ性のエッチング液は、水酸化カリウムを含む。

0042

ある実施形態において、前記アルカリ性のエッチング液は、アミノ基を有する有機化合物を含む。

0043

ある実施形態において、前記工程(b)において、前記アルミニウム基材の表面から少なくとも1.4μmが除去される。

0044

ある実施形態において、前記工程(b)は、前記アルミニウム基材の前記表面を、前記アルカリ性のエッチング液に45分間以上接触させることにより行う。

0045

ある実施形態において、前記工程(b)は、脱脂工程を兼ねる。

0046

ある実施形態において、前記アルミニウム基材は、マンドレル法によって形成されたアルミニウム基材である。

0047

本発明のさらに他の実施形態による型は、上記のいずれかに記載の型の製造方法によって製造された型である。

0048

本発明のさらに他の実施形態による型は、表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさが200nm以上30μm以下の複数のマクロな凸部と、表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさが10nm以上500nm未満の複数のミクロな凹部とを有する、表面構造を備えたポーラスアルミナ層を有する型である。

0049

本発明の他の実施形態による反射防止膜の製造方法は、上記のいずれかの型を用意する工程と、被加工物を用意する工程と、前記型と前記被加工物の表面との間に光硬化樹脂を付与した状態で、前記光硬化樹脂に光を照射することによって前記光硬化樹脂を硬化させる工程と、前記型を硬化させられた光硬化樹脂で形成された反射防止膜から剥離する工程とを包含する。

0050

本発明のさらに他の実施形態による反射防止膜は、上記の反射防止膜の製造方法によって製造された反射防止膜である。

0051

ある実施形態において、前記反射防止膜のヘイズ値が約7以上約24以下である。

発明の効果

0052

本発明の実施形態によると、適度なアンチグレア機能と適度な鏡面反射性とを有する反射防止膜(または反射防止表面)を形成するための型およびそのような型を効率よく製造できる方法が提供される。本発明の実施形態による型は、適度なアンチグレア機能および適度な鏡面反射性と優れた反射防止機能とを備える反射防止膜(反射防止表面)を形成することができる。本発明の実施形態による反射防止膜は、適度なアンチグレア機能および適度な鏡面反射性と、優れた反射防止機能とを発現する表面構造を有している。

図面の簡単な説明

0053

(a)〜(d)は、本発明による実施形態1のモスアイ用型100の製造方法を説明するための模式的な断面図であり、(a)は、モスアイ用型100のアルミニウム基材12の模式的な断面図であり、(b)は、反転されたアンチグレア構造を有するアルミニウム基材12の表面構造を模式的に示す断面図であり、(c)は、アルミニウム基材12の表面に無機材料層16およびアルミニウム膜18を形成した型基材10の模式的な断面図であり、(d)は、反転されたアンチグレア構造と、反転されたアンチグレア構造に重畳された反転されたモスアイ構造とを有するモスアイ用型100の模式的な断面図である。
本発明による実施形態1のモスアイ用型100の製造方法を説明するフローチャートである。
(a)は、梨地処理によって形成された反転されたアンチグレア構造を有するアルミニウム基材12の表面のレーザー顕微鏡像(顕微鏡像中のフルスケール15μm)であり、(b)は、梨地処理によって形成された反転されたアンチグレア構造を有するアルミニウム基材12の表面を垂直方向から観察したときのSEM像(SEM像中のフルスケール10μm)であり、(c)は、反転されたアンチグレア構造の模式的な平面図であり、(d)は、反転されたアンチグレア構造の模式的な斜視図である。
(a)は、型基材10のアルミニウム膜18の表面を垂直方向から観察したときのSEM像(SEM像中のフルスケール10μm)であり、(b)は、モスアイ用型100の反転されたモスアイ構造を有するポーラスアルミナ層14の表面を垂直方向から観察したときのSEM像(SEM像中のフルスケール10μm)である。
(a)および(b)は、本発明による実施形態2のモスアイ用型100の製造方法を説明するための模式的な断面図であり、(a)は、反転されたアンチグレア構造を有するアルミニウム基材12の表面構造を模式的に示す断面図であり、(b)は、アルミニウム基材12の表面に無機材料層16およびアルミニウム膜18を形成した型基材10の模式的な断面図であり、(c)は、アルカリ性のエッチング液による梨地処理によって形成された反転されたアンチグレア構造を有するアルミニウム基材12の表面のレーザー顕微鏡像である。
モスアイ用型100を用いた反射防止膜の製造方法を説明するための図である。
(a)および(b)は、本発明の実施形態によるアンチグレア機能を有する反射防止膜のSEM像であり、(a)は反射防止膜の表面を垂直方向から観察したときのSEM像(SEM像中のフルスケール10μm)であり、(b)は反射防止膜の断面および表面を斜め方向から観察したときのSEM像(SEM像中のフルスケール3μm)である。
(a)〜(c)は、本発明の実施形態によるアンチグレア機能を有する反射防止膜の模式図であり、(a)は反射防止膜の表面を垂直方向から観察したときの模式図であり、(b)は反射防止膜の表面を斜め方向から観察したときの模式図であり、(c)は反射防止膜の断面の模式図である。
(a)は、アンチグレア機能を有する反射防止膜による拡散反射光の配光分布の測定結果を示すグラフであり、(b)は拡散反射光の配光分布の測定系を示す模式図である。
(a)〜(c)は、フッ化水素アンモニウムを含む水溶液で梨地処理を行ったアルミニウム基材の表面のSEM像(5000倍、SEM像中のフルスケール10μm)である。
梨地処理(処理温度35℃)の時間が異なるアルミニウム基材(冷間引抜き加工された型基材)を型として用いて作製した試料フィルムの拡散反射光の配光分布を示す図である。
アンチグレア機能と鏡面反射性とを評価したモデル計算結果を示す図である。
梨地処理(処理温度10℃)の時間が異なるアルミニウム基材(冷間引抜き加工された型基材)を型として用いて作製した試料フィルムの拡散反射光の配光分布を示す図である。
(a)および(b)は、梨地処理の前処理としての陽極酸化およびエッチングを行ったアルミニウム基材(冷間引抜き加工されていない型基材)の表面のSEM像を示す図であり、(a)は電解液として蓚酸水溶液を用いた場合、(b)は電解液として硫酸水溶液を用いた場合を示す。
(a)〜(d)は、梨地処理の前処理として硫酸水溶液を用いて陽極酸化した後の燐酸水溶液を用いたエッチングの時間が異なる試料の表面のSEM像である。
梨地処理の前処理として陽極酸化(硫酸水溶液)およびエッチングを行った後、処理の時間を異ならせて梨地処理を行ったアルミニウム基材を型として用いて作製されたフィルムの拡散反射光の配光分布を示す図である。
(a)は、冷間引抜き加工が施されたアルミニウム基材を用いて作製された型基材のアルミニウム基材に37秒間梨地処理を行った後の表面のSEM像であり、(b)は、冷間引抜き加工が施されていないアルミニウム基材を用いて作製された型基材のアルミニウム基材に、前処理としての陽極酸化(硫酸水溶液)およびエッチングを行った後、120秒間梨地処理を行った後の表面のSEM像である。
(a)および(b)は、従来のアンチグレア構造を形成するためのマクロな凹凸構造と、行方向のドットピッチPxとの大きさの関係を模式的に示す図である。
(a)従来のアンチグレア構造を形成するためのマクロな凹凸の構造を模式的に示す断面図であり、(b)は、マクロな凹凸に重畳された反転されたモスアイ構造を示す模式的な断面図であり、(c)は、反転されたモスアイ構造を拡大した模式的な断面図である。

実施例

0054

以下、図面を参照して、本発明の実施形態による型および型の製造方法を説明する。

0055

まず、図16を参照して、従来のアンチグレア構造を構成するマクロな凹凸構造と、行方向のドットピッチPxとの大きさの関係を説明する。図16(a)および(b)は、従来のアンチグレア構造を構成するマクロな凹凸構造と、行方向のドットピッチPxとの大きさの関係を模式的に示す図であり、図16(a)は、マクロな凹凸構造がドットピッチPxよりも大きい場合を示し、図16(b)は、マクロな凹凸構造がドットピッチPxよりも小さい場合を示している。ここで、ドットとは、典型的なカラー液晶表示パネルにおける画素を構成するR、G、Bの各ドットを指す。すなわち、カラー液晶表示パネルにおける画素は、行方向に配列された3つのドット(Rドット、GドットおよびBドット)で構成されている場合、行方向の画素ピッチは、行方向のドットピッチPxの3倍となる。なお、列方向の画素ピッチは、列方向のドットピッチPyと等しい。

0056

図16(a)および(b)に模式的に示すように、従来のアンチグレア構造を構成するマクロな凹凸構造を有する表面28sは、平坦部を有しない連続した波形表面形状を有する。このような連続した波形の表面形状を有するマクロな凹凸構造は、隣接するマクロな凹部間距離の平均値(平均隣接間距離ADint)または凹部の2次元的な大きさADpで特徴付けられる。ここでは、マクロな凹部に着目するが、凸部に着目しても同様に特徴づけることができる。

0057

図16(a)に示すように、凹部の平均隣接間距離ADint(凹部の2次元的な大きさADpと等しいと考える)が、例えば行方向のドットピッチPx(画素が3つのドット(R、G、B)で構成されている場合、行方向の画素ピッチはドットピッチの3倍)よりも大きいと、十分なアンチグレア機能を得ることができない。アンチグレア機能を十分に発揮させるためには、図16(b)に示すように、凹部の平均隣接間距離ADint(凹部の2次元的な大きさADp)が互いにほぼ等しく、かつ、ドットピッチよりも小さいことが好ましい。なお、凹部の2次元的な大きさとは、表面の法線方向から見たときの2次元的な広がりをいい、凹部は典型的には円錐形であり、表面の法線方向から見たときの形状は、ほぼ円形である。このとき、2次元的な大きさは、円の直径に相当する。また、凸部が十分に高い密度で形成されていれば、互いに隣接する2つの凹部の平均隣接間距離ADintは、凹部の2次元的な大きさADpとほぼ等しい。画素ピッチは、比較的解像度の低いディスプレイ、例えば、100ppiのディスプレイでは、254μmである。このディスプレイに用いられる反射防止膜の場合の平均隣接間距離ADintは、約85μm(254/3)以下であることが好ましい。

0058

このような平坦部のない連続した波形の表面28sを有するアンチグレア構造に、モスアイ構造を重畳させた反射防止膜の製造方法は、例えば、特許文献4に記載されている。図17を参照して、特許文献4に記載されているアンチグレア機能を有する反射防止膜を形成するためのモスアイ用型の製造方法を説明する。

0059

図17(a)は、アンチグレア構造を形成するための反転されたアンチグレア構造を模式的に示す断面図であり、図17(b)は、反転されたアンチグレア構造に重畳された反転されたモスアイ構造を示す模式的な断面図であり、図17(c)は、反転されたモスアイ構造を拡大した模式的な断面図である。

0060

図17(a)に示す、上述の平坦部のない連続した波形の表面28sを有するアンチグレア構造を形成するための、反転されたアンチグレア構造を有する表面18csは、円筒状の金属基材外周面上に、艶消し剤を含む電着樹脂絶縁層を形成し、絶縁層上にアルミニウム膜18cを形成することによって得られる。すなわち、艶消し剤を含む電着樹脂で形成された絶縁層の表面は、平坦部のない連続した波形の表面形状を有し、絶縁層の上に形成されたアルミニウム膜18cの表面18csは、絶縁層の表面の形状を反映して、平坦部のない連続した波形の表面形状を有することになる。なお、アルミニウム膜18cの表面18csの形状は反転されたアンチグレア構造を構成するので、アルミニウム膜18cの表面18csのマクロな凹凸は、アンチグレア構造を構成する表面28sのマクロな凹凸とは逆の関係にある。

0061

次に、図17(b)に示すように、反転されたアンチグレア構造を有するアルミニウム膜18cの表面に対して、陽極酸化とエッチングとを交互に繰り返すことによって、ミクロな凹部14pを有する陽極酸化ポーラスアルミナ層14cを形成する。このようにして、反転されたアンチグレア構造に反転されたモスアイ構造が重畳された表面を有するモスアイ用型200が得られる。

0062

ポーラスアルミナ層14cは、図17(c)に模式的に示すように、ミクロな凹部14pが密に充填されている。ミクロな凹部14pは概ね円錐状であり、階段状の側面を有してもよい。ミクロな凹部14pの2次元的な大きさ(開口部径:Dp)は10nm以上500nm未満で、深さ(Ddepth)は10nm以上1000nm(1μm)未満程度であることが好ましい。また、ミクロな凹部14pの底部はっている(最底部は点になっている)ことが好ましい。さらに、ミクロな凹部14pは密に充填されていることが好ましく、ポーラスアルミナ層14cの法線方向から見たときのミクロな凹部14pの形状を円と仮定とすると、隣接する円は互いに重なり合い、隣接するミクロな凹部14pの間に鞍部が形成されることが好ましい。なお、略円錐状のミクロな凹部14pが鞍部を形成するように隣接しているときは、ミクロな凹部14pの2次元的な大きさDpは平均隣接間距離Dintと等しいとする。したがって、反射防止膜を製造するためのモスアイ用型のポーラスアルミナ層14cは、Dp=Dintが10nm以上500nm未満で、Ddepthが10nm以上1000nm(1μm)未満程度のミクロな凹部14pが密に不規則に配列した構造を有していることが好ましい。ミクロな凹部の配列は、完全にランダムである必要はなく、光の干渉回折が実質的に起こらない程度に不規則であればよい。なお、ミクロな凹部14pの開口部の形状は厳密には円ではないので、Dpは表面のSEM像から求めることが好ましい。ポーラスアルミナ層14cの厚さtpは約1μm以下である。ポーラスアルミナ層14cが有する反転されたモスアイ構造についての上記の説明は、本発明の実施形態によるモスアイ用型についても妥当する。

0063

特許文献4に記載された型の製造方法で製造された型を用いて形成された反射防止膜は、画像がぼやけるという問題がある(後に、図10Bを参照して説明する。)。これは、特許文献4に記載の方法で製造された型が有する反転されたアンチグレア構造は、比較的大きなADintおよびADpを有するためである。したがって、特許文献4に記載の製造方法では、例えば、300ppiを超える高精細のディスプレイ用に好適に用いられるアンチグレア構造を形成することは難しかった。

0064

以下に説明する本発明の実施形態によると、適度なアンチグレア機能(例えばヘイズ値が約7以上約24以下)と、適度な鏡面反射性とを有するアンチグレア構造と、優れた反射防止効果を発揮するモスアイ構造とを有する反射防止膜(または反射防止表面)が提供される。また、本発明の実施形態によると、そのような反射防止膜を形成するための型が提供され、さらには、そのような型を効率よく製造する方法が提供される。なお、本発明の実施形態による型の製造方法によって製造される型は、例示するものに限られず、小さなヘイズ値(例えば約1以上約5以下)の拡散反射性能を有する反射防止膜を形成するためにも用いられ得る。

0065

(実施形態1)
まず、図1図4Aを参照して、本発明による実施形態1の型の製造方法およびそのような製造方法によって製造される型の構造を説明する。

0066

図1(a)〜(d)は、本発明による実施形態1のモスアイ用型100の製造方法を説明するための模式的な断面図であり、図2は、本発明による実施形態1のモスアイ用型100の製造方法を説明するフローチャートである。

0067

本発明による実施形態1のモスアイ用型100の製造方法は、図2に示すように、下記の工程(A)〜(F)を包含する。

0068

(A)Al−Mg−Si系のアルミニウム合金で形成された円筒状のアルミニウム基材であって、機械的な鏡面加工が施されたアルミニウム基材を用意する工程
(B)アルミニウム基材の表面をフッ化水素とアンモニウムとの塩を含む水溶液によって梨地処理する工程
(C)工程(B)の後で、アルミニウム基材の表面に無機材料層を形成し、無機材料層の上にアルミニウム膜を形成することによって、型基材を作製する工程
(D)工程(C)の後で、アルミニウム膜の表面を陽極酸化することによって、複数のミクロな凹部を有するポーラスアルミナ層を形成する工程
(E)工程(D)の後に、ポーラスアルミナ層を、エッチング液に接触させることによって、ポーラスアルミナ層の複数のミクロな凹部を拡大させる工程
(F)工程(E)の後に、さらに陽極酸化することによって、複数のミクロな凹部を成長させる工程

0069

本明細書において、型基材とは、型の製造工程において、陽極酸化およびエッチングされる対象をいう。また、アルミニウム基材とは、自己支持が可能なバルク状のアルミニウムをいう。

0070

次に、図1(a)〜(d)を参照する。図1(a)は、モスアイ用型100のアルミニウム基材12の模式的な断面図であり、図1(b)は、反転されたアンチグレア構造を有するアルミニウム基材12の表面構造を模式的に示す断面図であり、図1(c)は、アルミニウム基材12の表面に無機材料層16およびアルミニウム膜18を形成した型基材10の模式的な断面図であり、図1(d)は、反転されたアンチグレア構造と、反転されたアンチグレア構造に重畳された反転されたモスアイ構造とを有するモスアイ用型100の模式的な断面図である。

0071

図1には、モスアイ用型100の一部を拡大して示すが、本発明による実施形態1のモスアイ用型100は、円筒状(ロール状)である。本出願人による国際公開第2011/105206号に開示されているように、円筒状のモスアイ用型を用いると、ロール・ツー・ロール方式により反射防止膜を効率良く製造することができる。参考のために、国際公開第2011/105206号の開示内容の全てを本明細書に援用する。

0072

まず、図1(a)に示すように、Al−Mg−Si系のアルミニウム合金で形成された円筒状のアルミニウム基材12であって、機械的な鏡面加工が施されたアルミニウム基材12を用意する。

0073

機械的な鏡面加工としては、バイト切削が好ましい。アルミニウム基材12の表面に、例えば砥粒が残っていると、砥粒が存在する部分において、アルミニウム膜18とアルミニウム基材12との間で導通しやすくなる。砥粒以外にも、凹凸が存在するところでは、アルミニウム膜18とアルミニウム基材12との間で局所的に導通しやすくなる。アルミニウム膜18とアルミニウム基材12との間で局所的に導通すると、アルミニウム基材12内の不純物とアルミニウム膜18との間で局所的に電池反応が起こる可能性がある。

0074

後に実験例を示して説明するように、アルミニウム基材12の材質によって、後の化学的な梨地処理の効果が異なり、上述のマクロな凹凸構造を得るために、Al−Mg−Si系のアルミニウム合金(例えば、JIS A6063)で形成されたアルミニウム基材12を用いる。

0075

円筒状のアルミニウム基材12は、典型的には、熱間押出し法によって形成される。熱間押出し法には、マンドレル法とボートホール法があるが、マンドレル法で形成されたアルミニウム基材12を用いることが好ましい。ボートホール法で形成された円筒状のアルミニウム基材12には外周面に継ぎ目ウェルドライン)が形成され、継ぎ目がモスアイ用型100に反映される。したがって、モスアイ用型100に求められる精度によっては、マンドレル法で形成されたアルミニウム基材12を用いることが好ましい。

0076

なお、ボートホール法で形成されたアルミニウム基材12に対して、冷間引抜き加工を施すことにより、継ぎ目の問題を解消することができる。もちろん、マンドレル法で形成されたアルミニウム基材12に対しても、冷間引抜き加工を施してもよい。

0077

次に、アルミニウム基材12の表面をフッ化水素とアンモニウムとの塩を含む水溶液を用いて梨地処理することによって、図1(b)に示すように、アルミニウム基材12の表面12sに反転されたアンチグレア構造が形成される。梨地処理によって形成される反転されたアンチグレア構造は、複数のマクロな凸部12pと複数のマクロな凹部12gとを有する。マクロな凸部12pは、マクロな凹部12gによって実質的に包囲されており、マクロな凹部12gは、マクロな凸部12pの外周を規定する溝のように存在している。

0078

フッ化水素とアンモニウムとの塩を含む水溶液は、ピッティングコロージョン点食)を引き起こす。フッ化水素とアンモニウムとの塩としては、フッ化アンモニウム(正塩または中性塩)と、フッ化水素アンモニウム(水素塩または酸性塩)とがある。フッ化水素とアンモニウムとの塩を含む水溶液は、フッ化水素の水溶液に比べて、人体や環境に与える悪影響が少ないという利点を有している。フッ化水素とアンモニウムとの塩として、フッ化水素アンモニウムを用いる場合、フッ化水素アンモニウムの濃度は、例えば、4mass%以上である。フッ化水素アンモニウムに加えて、りん酸二水素アンモニウムおよび/または硫酸アンモニウムを加えてもよい。ここでは、以下の実験例を含め、アルミニウムを梨地処理するためのエッチング液として、フッ化水素アンモニウムに少量のりん酸二水素アンモニウムおよび硫酸アンモニウムを添加したものを用いた。このエッチング液を簡単のためにフッ化水素アンモニウムを含む水溶液という。このようなエッチング液は、日本シー・ビー・ケミカル株式会社のケミクリーナーを用いて調製することができる。フッ化水素アンモニウムを含む水溶液による梨地処理の時間は、例えば、処理温度が35℃のとき、15秒以上180秒以下である。フッ化アンモニウムを含む水溶液は、フッ化水素アンモニウムを含む水溶液よりもアルミニウムのエッチング力が弱いので、濃度、処理温度、時間を適宜調整することによって、フッ化水素アンモニウムを含む水溶液を用いた場合と同等の効果を得ることができる。

0079

なお、フッ化水素とアンモニウムとの塩を含む水溶液による梨地処理の前に、必要に応じて、脱脂工程および水洗工程を行う。また、梨地処理は、水洗工程の後、15分を経過する前に行うことが好ましい。また、異なる処理液を用いる工程の間に、必要に応じて、水洗を行うことが好ましい。

0080

なお、冷間引抜き加工を施すことなく、バイト切削による鏡面加工を行ったアルミニウム基材12に梨地処理を施すと、アルミニウム基材12の表面に切削痕が形成されることがあった。アルミニウム基材12の表面に形成された切削痕は、アルミニウム基材12の上に形成されたアルミニウム膜18にも反映された。本明細書では、アルミニウム基材12の表面だけでなく、アルミニウム基材12の上に形成されたアルミニウム膜18に形成された、切削に起因した痕も、「切削痕」ということにする。

0081

梨地処理の前に、前処理のための陽極酸化工程およびエッチング工程を行うことによって、切削痕を低減させることができる。すなわち、アルミニウム基材12の表面を一旦陽極酸化し、形成された陽極酸化膜をエッチングにより除去することによって、切削痕を低減させることができる。この前処理のための陽極酸化工程では、電解液として硫酸水溶液を用いることが好ましく、前処理のためのエッチング工程では、エッチング液として燐酸水溶液を用いることが好ましい。もちろん、冷間引抜き加工を施した後にバイト切削による鏡面加工を行ったアルミニウム基材12についても、前処理のための陽極酸化工程およびエッチング工程を行うことによって、アルミニウム基材12の表面に切削痕が発生することをさらに確実に抑制することができる。

0082

なお、上記の切削痕は、バイト切削による鏡面加工によって、アルミニウム基材12の表面に形成された加工変質層に起因した、エッチングのむらであると考えられる。したがって、梨地処理によって切削痕が形成されるという問題は、バイト切削に限られず、加工変質層の形成を伴う鏡面加工が施されたアルミニウム基材12を用いる場合に共通の問題であり、上記の前処理のための陽極酸化工程およびエッチング工程を行うことによって解決することができる。鏡面加工の内、切削加工と、研削加工などの機械研磨(Mechanical Polishing:MP)と、化学研磨と機械研磨とを併用する化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)は、加工変質層の形成を伴う。機械研磨は、例えば、バフ研磨ベルト研磨ブラスト研磨を含む。なお、化学研磨に代えて、電解研磨を機械研磨と併用した場合においても、同様に加工変質層の形成を伴う。本明細書において、「機械的な鏡面加工」は、MPおよびCMPだけでなく、電解研磨と機械研磨とを併用した加工も包含する。

0083

梨地処理の前に、アルカリ性のエッチング液を用いて、アルミニウム基材12の表面をエッチングする工程(以下、「基材表面エッチング工程」ということがある。)をさらに行ってもよい。アルカリ性のエッチング液を用いた基材表面エッチング工程によって、切削痕の原因となり得る、アルミニウム基材12の加工変質層の少なくとも一部を除去することができる。

0084

アルカリ性のエッチング液は、例えば、無機塩基(無機アルカリ)または有機塩基(有機アルカリ)を含む。無機塩基は、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム水酸化カルシウム水酸化マグネシウム等を含む。有機塩基は、例えば、アミノ基を有する化合物を含む。有機塩基は、例えば、2−アミノエタノールエタノールアミン)、1級アルカノールアミンジメチルビス(2−ヒドロキシエチル等を含む。アルカリ性のエッチング液のpHは、例えば、10以上12以下である。アルカリ性のエッチング液は、上記に限られず、例えば公知のアルカリ性の洗浄液を用いてもよい。

0085

上記の基材表面エッチング工程は、例えば、前処理のための陽極酸化工程およびエッチング工程の前に行ってもよい。上記の基材表面エッチング工程は、例えば、前処理のための陽極酸化工程およびエッチング工程に代えて、行ってもよい。上記の基材表面エッチング工程は、アルカリ性のエッチング液を用いるので、脱脂工程を兼ねることができる。

0086

基材表面エッチング工程を、前処理のための陽極酸化工程およびエッチング工程に代えて行うことで、工程数を減らすことができる。基材表面エッチング工程が脱脂工程を兼ねる場合も工程数を減らすことができる。より少ない工程で、むらの少ない表面を有するアルミニウム基材を得ることができる。適度なアンチグレア機能を有する反射防止膜を形成するための型を効率よく製造することができる。適度なアンチグレア機能を有する反射防止膜の製造歩留りが向上し得る。

0087

次に、図1(c)に示すように、アルミニウム基材12の表面に無機材料層16を形成し、無機材料層16の上にアルミニウム膜18を形成することによって、型基材10を作製する。

0088

アルミニウム膜18の表面には、アルミニウム基材12の表面を梨地処理することによって形成された反転されたアンチグレア構造を反映した構造が形成されている。ここでは、アルミニウム膜18に形成された構造も反転されたアンチグレア構造という。アルミニウム膜18の表面に形成された反転されたアンチグレア構造は、アルミニウム基材12の表面に形成された反転されたアンチグレア構造と実質的に同じ構造を有している。したがって、アルミニウム膜18の表面に形成された反転されたアンチグレア構造は、複数のマクロな凸部18pと複数のマクロな凹部18gとを有する。マクロな凸部18pは、マクロな凹部18gによって実質的に包囲されており、マクロな凹部18gは、マクロな凸部18pの外周を規定する溝のように存在している。

0089

無機材料層16の材料としては、例えば酸化タンタル(Ta2O5)または二酸化シリコン(SiO2)を用いることができる。無機材料層16は、例えばスパッタ法により形成することができる。無機材料層16として、酸化タンタル層を用いる場合、酸化タンタル層の厚さは、例えば、200nmである。

0090

無機材料層16の厚さは、100nm以上500nm未満であることが好ましい。無機材料層16の厚さが100nm未満であると、アルミニウム膜18に欠陥(主にボイド、すなわち結晶粒間間隙)が生じることがある。また、無機材料層16の厚さが500nm以上であると、アルミニウム基材12の表面状態によって、アルミニウム基材12とアルミニウム膜18との間が絶縁されやすくなる。アルミニウム基材12側からアルミニウム膜18に電流を供給することによってアルミニウム膜18の陽極酸化を行うためには、アルミニウム基材12とアルミニウム膜18との間に電流が流れる必要がある。円筒状のアルミニウム基材12の内面から電流を供給する構成を採用すると、アルミニウム膜18に電極を設ける必要がないので、アルミニウム膜18を全面にわたって陽極酸化できるとともに、陽極酸化の進行に伴って電流が供給され難くなるという問題も起こらず、アルミニウム膜18を全面にわたって均一に陽極酸化することができる。

0091

また、厚い無機材料層16を形成するためには、一般的には成膜時間を長くする必要がある。成膜時間が長くなると、アルミニウム基材12の表面温度が不必要に上昇し、その結果、アルミニウム膜18の膜質が悪化し、欠陥(主にボイド)が生じることがある。無機材料層16の厚さが500nm未満であれば、このような不具合の発生を抑制することもできる。

0092

アルミニウム膜18は、例えば、特許文献3に記載されているように、純度が99.99mass%以上のアルミニウムで形成された膜(以下、「高純度アルミニウム膜」ということがある。)である。アルミニウム膜18は、例えば、真空蒸着法またはスパッタ法を用いて形成される。アルミニウム膜18の厚さは、約500nm以上約1500nm以下の範囲にあることが好ましく、例えば、約1μmである。

0093

また、アルミニウム膜18として、高純度アルミニウム膜に代えて、国際公開第2013/0183576号に記載されている、アルミニウム合金膜を用いてもよい。国際公開第2013/0183576号に記載のアルミニウム合金膜は、アルミニウムと、アルミニウム以外の金属元素と、窒素とを含む。本明細書において、「アルミニウム膜」は、高純度純アルミニウム膜だけでなく、国際公開第2013/0183576号に記載のアルミニウム合金膜を含むものとする。参考のために、国際公開第2013/0183576号の開示内容の全てを本明細書に援用する。

0094

上記アルミニウム合金膜を用いると、反射率が80%以上の鏡面を得ることができる。アルミニウム合金膜を構成する結晶粒の、アルミニウム合金膜の法線方向から見たときの平均粒径は、例えば、100nm以下であり、アルミニウム合金膜の最大表面粗さRmaxは60nm以下である。アルミニウム合金膜に含まれる窒素の含有率は、例えば、0.5mass%以上5.7mass%以下である。アルミニウム合金膜に含まれるアルミニウム以外の金属元素の標準電極電位とアルミニウムの標準電極電位との差の絶対値は0.64V以下であり、アルミニウム合金膜中の金属元素の含有率は、1.0mass%以上1.9mass%以下であることが好ましい。金属元素は、例えば、TiまたはNdである。但し、金属元素はこれに限られず、金属元素の標準電極電位とアルミニウムの標準電極電位との差の絶対値が0.64V以下である他の金属元素(例えば、Mn、Mg、Zr、VおよびPb)であってもよい。さらに、金属元素は、Mo、NbまたはHfであってもよい。アルミニウム合金膜は、これらの金属元素を2種類以上含んでもよい。アルミニウム合金膜は、例えば、DCマグネトロンスパッタ法で形成される。アルミニウム合金膜の厚さも約500nm以上約1500nm以下の範囲にあることが好ましく、例えば、約1μmである。

0095

ここで、図3(a)〜(d)を参照して、反転されたアンチグレア構造を詳細に説明する。図3(a)は、梨地処理によって形成された反転されたアンチグレア構造を有するアルミニウム基材12の表面のレーザー顕微鏡像(顕微鏡像中のフルスケール15μm)であり、図3(b)は、梨地処理によって形成された反転されたアンチグレア構造を有するアルミニウム基材12の表面を垂直方向から観察したときのSEM像(SEM像中のフルスケール10μm)である。図3(a)は、後述の実験例の陽極酸化温度10℃、陽極酸化時間5minの条件で梨地処理を行ったアルミニウム基材12の表面を観察したものであり、図3(b)は、後述の実験例の陽極酸化温度10℃、陽極酸化時間3minの条件で梨地処理を行ったアルミニウム基材12の表面を観察したものである。図3(c)は、反転されたアンチグレア構造の模式的な平面図であり、図3(d)は、反転されたアンチグレア構造の模式的な斜視図である。

0096

図3(a)〜(d)に示すように、梨地処理によって形成される反転されたアンチグレア構造は、複数のマクロな凸部18pと複数のマクロな凹部18gとを有する。マクロな凸部18pは、マクロな凹部18gによって実質的に包囲されており、マクロな凹部18gは、マクロな凸部18pの外周を規定する溝のように存在している。

0097

複数のマクロな凸部18pは、表面の法線方向から見たとき、概ね多角形外形を有しているが、配置に規則性は見られない。マクロな凸部18pの表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさ(面積円相当径)は、約200nm以上30μm以下である。図3(a)の顕微鏡像および図3(b)のSEM像からは、マクロな凸部18pの表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさは、約1μm以上約5μm以下と見積もれる。また、マクロな凸部18pの上面は、実質的に平坦である。

0098

マクロな凸部18pを実質的に包囲するマクロな凹部(溝)18gの幅は、マクロな凸部18pの2次元的な大きさの10分の1〜5分の1程度の大きさである。隣接するマクロな凹部18g間距離の平均値(平均隣接間距離ADint)は、マクロな凸部18pの表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさの平均値とほぼ等しいと考えることができる。ここで、マクロな凹部18gはマクロな凸部18pを実質的に包囲するように形成されているので、隣接するマクロな凹部18gは、マクロな凸部18pの2次元的な大きさを規定する方向における断面において隣接するマクロな凹部18gを意味することにする。したがって、平均隣接間距離ADintは、マクロな凸部18pの2次元的な大きさの平均値とマクロな凹部18gの幅の平均値との和にほぼ等しい。なお、マクロな凹部18gの深さADdepthは、例えば20nm以上500nm以下であるが、20nm以上5μm未満であればよい。

0099

反転されたアンチグレア構造を形成した後、陽極酸化とエッチングとを交互に繰り返し、反転されたモスアイ構造を形成することによって、図1(d)に示すモスアイ用型100が得られる。すなわち、反転されたモスアイ構造を形成するプロセスは、アルミニウム膜18の表面を陽極酸化することによって、複数のミクロな凹部14pを有するポーラスアルミナ層14を形成する工程と、その後に、ポーラスアルミナ層14を、エッチング液に接触させることによって、ポーラスアルミナ層14の複数のミクロな凹部14pを拡大させる工程と、その後に、さらに陽極酸化することによって、複数のミクロな凹部14pを成長させる工程とを包含する。陽極酸化に用いる電解液は、例えば、蓚酸酒石酸燐酸硫酸クロム酸クエン酸リンゴ酸からなる群から選択される酸を含む水溶液である。エッチング液として、蟻酸酢酸、クエン酸などの有機酸や硫酸の水溶液、クロム酸燐酸混合水溶液、または水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリの水溶液を用いることができる。

0100

陽極酸化とエッチングとを繰り返す一連の工程は、陽極酸化工程で終わることが好ましい。陽極酸化工程で終わる(その後のエッチング工程を行わない)ことによって、ミクロな凹部14pの底部を小さくすることができる。このような反転されたモスアイ構造を形成する方法は、例えば、本出願人による国際公開第2006/059686号に開示されている。参考のために、国際公開第2006/059686号の開示内容の全てを本明細書に援用する。

0101

例えば、陽極酸化工程(電解液:蓚酸水溶液(濃度0.3mass%、液温10℃)、印加電圧:80V、印加時間:55秒間)とエッチング工程(エッチング液:燐酸水溶液(10mass%、30℃)、エッチング時間:20分間)とを交互に複数回(例えば5回:陽極酸化を5回とエッチングを4回)繰り返すことによって、図1(d)に示すように、ミクロな凹部14pを有するポーラスアルミナ層14を有するモスアイ用型100が得られる。ここで例示した条件で形成されたポーラスアルミナ層14は、図17(c)を参照して説明したように、Dp=Dintが10nm以上500nm未満で、Ddepthが10nm以上1000nm(1μm)未満程度のミクロな凹部14pが密に不規則に配列した構造を有している。ミクロな凹部14pは略円錐状であり、鞍部を形成するように隣接している。

0102

ミクロな凹部14pで構成される反転されたモスアイ構造は、アンチグレア構造に重畳されて形成される。したがって、図1(d)に模式的に示したように、アンチグレア構造を構成するマクロな凸部18pに形成されたミクロな凹部14pと、マクロな凹部18gに形成されたミクロな凹部14pとが存在する。マクロな凹部18gに形成されたミクロな凹部14pの方が、マクロな凸部18pに形成されたミクロな凹部14pよりも深い。

0103

なお、ミクロな凹部14pの下には、バリア層が形成されており、ポーラスアルミナ層14は、ミクロな凹部14pを有するポーラス層と、ポーラス層の下(アルミニウム膜側)に存在するバリア層(凹部14pの底部)とから構成されている。隣接するミクロな凹部14pの間隔(中心間距離)は、バリア層の厚さのほぼ2倍に相当し、陽極酸化時の電圧にほぼ比例することが知られている。また、ポーラスアルミナ層14の下には、アルミニウム膜18のうち、陽極酸化されなかったアルミニウム残存層18rが存在している。

0104

図4A(a)に、型基材10のアルミニウム膜18の表面を垂直方向から観察したときのSEM像(SEM像中のフルスケール10μm)を示し、図4A(b)に、モスアイ用型100の反転されたモスアイ構造を有するポーラスアルミナ層14の表面を垂直方向から観察したときのSEM像(SEM像中のフルスケール10μm)を示す。図4A(a)の型基材10は、図3(b)に示したアルミニウム基材12と同じ条件の梨地処理によって形成された反転されたアンチグレア構造を有するアルミニウム基材12上に、厚さが約200nmの酸化タンタル層および、厚さが約800nmでTiおよびNを含むアルミニウム膜(アルミニウム合金膜)18を形成した型基材10である。アルミニウム膜18のTi含有率は約1.0mass%で、N含有率は約1.2mass%以上約2.0mass%以下であり、残りはAlおよび不可避不純物である。図4A(b)のモスアイ用型100は、図4A(a)に示した型基材10と同じ条件で作製された型基材10を用いて、先に例示した条件で、陽極酸化とエッチングとを交互(陽極酸化を5回とエッチングを4回)に繰り返すことによって作製されたモスアイ用型100である。

0105

図4A(a)と図3(b)とを比較すると明らかなように、アルミニウム膜18の表面に、アルミニウム基材12の表面の反転されたアンチグレア構造が反映された構造が形成されている。さらに、図4A(b)と図4A(a)とを比較すると明らかなように、モスアイ用型100のポーラスアルミナ層14は、反転されたアンチグレア構造に反転されたモスアイ構造が重畳された表面構造を有している。

0106

このように、本発明による実施形態1のモスアイ用型100の製造方法によると、アンチグレア機能を有する反射防止膜を形成することが可能なモスアイ用型100を製造することができる。モスアイ用型100を用いて形成される反射防止膜が有するアンチグレア機能については、実験例を示して後に詳述する。

0107

(実施形態2)
本発明による実施形態2の型の製造方法は、工程(B)において、実施形態1の型の製造方法と異なる。実施形態2の型の製造方法は、実施形態1の型の製造方法の工程(B)に代えて、アルミニウム基材の表面をアルカリ性のエッチング液によって梨地処理する工程(工程(B’))を包含する。すなわち、実施形態2においては、フッ化水素とアンモニウムとの塩を含む水溶液に代えて、アルカリ性のエッチング液を用いて、アルミニウム基材の表面を梨地処理する。

0108

アルミニウム基材の表面をアルカリ性のエッチング液によって梨地処理する工程において、アルミニウム基材の加工変質層の少なくとも一部を除去することができる。梨地処理と別の工程として、アルミニウム基材の表面をエッチングする工程、または、前処理のための陽極酸化工程およびエッチング工程を行う必要がない。また、アルミニウム基材の表面をアルカリ性のエッチング液によって梨地処理する工程は、脱脂工程を兼ねることができる。実施形態2の型の製造方法によると、製造工程を増やすことなく、適度なアンチグレア機能を有する反射防止膜を形成するための型を製造することができる。

0109

実施形態2の型の製造方法およびそのような製造方法によって製造される型の構造について、図4B(a)〜(c)を参照して説明する。実施形態2の型の製造方法は、工程(B’)を除いて、図1図4Aを参照して説明した実施形態1の型の製造方法と同じであってよい。図1図4Aを参照して説明した、実施形態1の型の製造方法およびそのような製造方法によって製造される型の構造と実質的に同じ部分については、説明を省略する。

0110

図4B(a)は、反転されたアンチグレア構造を有するアルミニウム基材12の表面構造を模式的に示す断面図であり、図4B(b)は、アルミニウム基材12の表面に無機材料層16およびアルミニウム膜18を形成した型基材10の模式的な断面図であり、図4B(c)は、アルカリ性のエッチング液による梨地処理によって形成された反転されたアンチグレア構造を有するアルミニウム基材12の表面のレーザー顕微鏡像である。

0111

アルミニウム基材12の表面を、アルカリ性のエッチング液を用いて梨地処理することによって、図4B(a)〜(c)に示すように、アルミニウム基材12の表面12sに反転されたアンチグレア構造が形成される。マクロな凹部12gは、表面の法線方向から見たとき、例えば曲線で閉じられた領域(例えばほぼ円を含む)である。マクロな凹部12gの形状は、例えばほぼ半球であってもよい。マクロな凹部12gの、表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさ(面積円相当径)は、例えば500nm以上20μm以下である。互いに異なる2次元的な大きさを有する複数のマクロな凹部12gによって、反転されたアンチグレア構造が形成されている。

0112

本発明による実施形態1の型の製造方法におけるフッ化水素とアンモニウムとの塩を含む水溶液を用いて梨地処理を行うと、図3(a)〜(d)を参照して上述したように、概ね多角形の外形を有するマクロな凹部12g、18gが形成された。マクロな凹部12gが複数のほぼ直線で閉じられた領域であるのは、アルミニウム基材12の結晶粒界に対応して、マクロな凹部12gが形成されたことに起因すると考えられる。

0113

結晶粒界とは、多結晶体(例えば金属)において、互いに隣接する結晶粒間に存在する界面である。本明細書中、アルミニウム基材の結晶粒には、結晶粒(grain)および亜結晶粒(subgrain)を含むものとし、アルミニウム基材の結晶粒界には、結晶粒界(grain boundary)および亜結晶粒界(subgrain boundary)を含むものとする。本明細書中、アルミニウム基材の結晶粒には、大きさがおよそ数十μmからおよそ数mmであるものを含む。

0114

これに対して、実施形態2の型の製造方法におけるアルカリ性のエッチング液を用いて梨地処理を行うと、例えば曲線で閉じられた領域を有するマクロな凹部12gが形成された。アルカリ性のエッチング液を用いると、アルミニウム基材12の結晶粒界にあまり影響されずにマクロな凹部12gが形成され得ると考えられる。

0115

一般に、酸性のエッチング液を用いると、エッチングされるアルミニウム基材の結晶粒界に対応して、マクロな凹部が形成される傾向があるのに対し、アルカリ性のエッチング液を用いると、エッチングされるアルミニウム基材の結晶粒および結晶粒界にあまり影響されずにマクロな凹部が形成される傾向があった。アルカリ性のエッチング液を用いて梨地処理を行うと、アルミニウム基材12の結晶粒および結晶粒界に起因したエッチングのむらの発生が抑制され得ると考えられる。アルカリ性のエッチング液による梨地処理を経て製造した型により形成された膜は、結晶粒および結晶粒界に起因したむらの発生が抑制され得る。従って、実施形態2の型の製造方法は、反射防止膜を形成する型の製造に好適に用いられることがある。

0116

ただし、後で実験例を示して説明するように、アルカリ性のエッチング液の種類によっては、アルミニウム基材の表面に、マクロな凹部よりも大きな凹凸形状(模様ということがある)が形成されることもあった。後で述べるように、例えば、アルカリ性のエッチング液のpHや、アルカリ性のエッチング液に含まれる塩基の濃度を適宜調整することで、マクロな凹部よりも大きな凹凸形状の発生を抑制することができる。

0117

本明細書において、アルミニウム基材の表面を梨地処理する工程とは、アルミニウム基材の表面に反転されたアンチグレア構造を形成する工程をいう。後に実験例を示して説明するように、適度なアンチグレア機能を有する反射防止膜を形成するためには、アルミニウム基材の表面をアルカリ性のエッチング液によって梨地処理する工程によって、アルミニウム基材の表面の算術平均粗さRaが例えば50nm以上200nm以下となることが好ましい。

0118

アルカリ性のエッチング液は、例えば、無機塩基(無機アルカリ)または有機塩基(有機アルカリ)を含む。無機塩基は、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等を含む。有機塩基は、例えば、アミノ基を有する化合物を含む。有機塩基は、例えば、2−アミノエタノール(エタノールアミン)、1級アルカノールアミン、ジメチルビス(2−ヒドロキシ)エチル等を含む。アルカリ性のエッチング液は、上記に限られず、例えば公知のアルカリ性の洗浄液を用いてもよい。公知のアルカリ性の洗浄液を用いることで、梨地処理工程の手間および/またはコストの増加を抑制することができる。

0119

なお、本発明の実施形態による型の製造方法は、アルカリ性のエッチング液を用いたものに限られず、酸性のエッチング液を用いてもよい。例えば、アルミニウム基材の組成および/または加工方法等の条件によっては、酸性のエッチング液を用いても、アルミニウム基材の結晶粒および結晶粒界が目立ちにくいことがある。また、酸性のエッチング液に含まれる酸の種類および/または酸の濃度等の条件を適宜調整することにより、アルミニウム基材の結晶粒および結晶粒界に起因したエッチングのむらの発生を抑制することも可能である。

0120

(反射防止膜の製造方法およびそのような製造方法によって製造される型の構造)
続いて、図5を参照して、実施形態1または実施形態2の型の製造方法により製造されたモスアイ用型100を用いた反射防止膜の製造方法を説明する。図5は、ロール・ツー・ロール方式により反射防止膜を製造する方法を説明するための模式的な断面図である。

0121

まず、円筒状のモスアイ用型100を用意する。なお、円筒状のモスアイ用型100は、上述の製造方法で製造される。

0122

図5に示すように、紫外線硬化樹脂32’が表面に付与された被加工物42を、モスアイ用型100に押し付けた状態で、紫外線硬化樹脂32’に紫外線(UV)を照射することによって紫外線硬化樹脂32’を硬化する。紫外線硬化樹脂32’としては、例えばアクリル系樹脂を用いることができる。被加工物42は、例えば、TAC(トリアセチルセルロース)フィルムである。被加工物42は、図示しない巻き出しローラから巻き出され、その後、表面に、例えばスリットコータ等により紫外線硬化樹脂32’が付与される。被加工物42は、図5に示すように、支持ローラ46および48によって支持されている。支持ローラ46および48は、回転機構を有し、被加工物42を搬送する。また、円筒状のモスアイ用型100は、被加工物42の搬送速度に対応する回転速度で、図5に矢印で示す方向に回転される。

0123

その後、被加工物42からモスアイ用型100を分離することによって、モスアイ用型100の凹凸構造(反転されたモスアイ構造)が転写された硬化物層32が被加工物42の表面に形成される。表面に硬化物層32が形成された被加工物42は、図示しない巻き取りローラにより巻き取られる。

0124

図6(a)および(b)に、上述のようにして製造された反射防止膜のSEM像を示す。図6(a)および(b)は、本発明の実施形態によるアンチグレア機能を有する反射防止膜のSEM像であり、図6(a)は反射防止膜の表面を垂直方向から観察したときのSEM像(SEM像中のフルスケール10μm)であり、図6(b)は反射防止膜の断面および表面を斜め方向から観察したときのSEM像(SEM像中のフルスケール3μm)である。

0125

図6(a)および(b)からわかるように、アンチグレア構造にモスアイ構造が重畳して形成されている。アンチグレア構造は、梨地処理によって形成されたマクロな凸部18pおよびマクロな凹部18gがそれぞれ反転されたマクロな凹部およびマクロな凸部によって構成される。ここで例示するアンチグレア構造を構成するマクロな凹部の表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさは、約1μm以上約5μm以下であり、アンチグレア構造を構成するマクロな凸部の2次元的な大きさの10分の1〜5分の1程度の大きさである。また、アンチグレア構造を構成するマクロな凸部の高さは、約200nm以上約500nm以下である。モスアイ構造を構成するミクロな凸部については、2次元的な大きさおよび隣接間距離(Dp=Dintに対応)は約200nmで、高さ(Ddepthに対応)は約200nmである。

0126

図7(a)〜(c)を参照して、本発明の実施形態によるアンチグレア機能を有する反射防止膜32の構造を説明する。図7(a)〜(c)は、本発明の実施形態によるアンチグレア機能を有する反射防止膜32の模式図であり、図7(a)は反射防止膜32の表面を垂直方向から観察したときの模式図であり、図7(b)は反射防止膜32の表面を斜め方向から観察したときの模式図であり、図7(c)は反射防止膜32の断面の模式図である。

0127

図7(a)〜(c)において、モスアイ構造を構成する複数のミクロな凸部は、ミクロな凸部32pおよび32gを含んでいる。ミクロな凸部32pは、アンチグレア構造を構成するマクロな凹部に形成されており、ミクロな凸部32gは、アンチグレア構造を構成するマクロな凸部に形成されている。したがって、ミクロな凸部32gは、ミクロな凸部32pよりも高く、マクロな凸部に形成されたミクロな凸部32pを実質的に包囲するように配置されている。これは、モスアイ用型100を製造する過程で、梨地処理によって形成された反転されたアンチグレア構造において、マクロな凸部18pがマクロな凹部18gによって実質的に包囲されていたことに対応している。図6(a)および(b)の顕微鏡像を見ると、多数のミクロな凸部を包囲するように、それらよりも高いミクロな凸部が形成されていることが認められる。

0128

次に、図8を参照して、本発明の実施形態によるアンチグレア機能を有する反射防止膜の拡散反射特性を説明する。図8(a)は、アンチグレア機能を有する反射防止膜による拡散反射光の配光分布の測定結果を示すグラフであり、図8(b)は拡散反射光の配光分布の測定系を示す模式図である。なお、拡散反射光は、散乱光を特に排除するものではない。

0129

図8(a)において、EX.1は、本発明の実施形態によるアンチグレア機能を有する反射防止膜の拡散反射光の配光分布を示す。この反射防止膜は、後述の実験例と同様にフッ化水素アンモニウムを含む水溶液(フッ化水素アンモニウムの濃度は4mass%)で、10℃、4分間、梨地処理を行ったアルミニウム基材12を型として用いて形成したアンチグレア膜である。CNV.1は、図17を参照して上述した、艶消し剤を含む電着樹脂を用いて形成した、平坦部のない連続した波形の表面を有するアンチグレア構造を備える反射防止膜の拡散反射光の配光分布を示す。CNV.1のアンチグレア構造は、2次元的な大きさが10μm〜30μm、高さが500nm〜1000nmである。

0130

拡散反射光の配光分布は、図8(b)に示すように、試料フィルムに対して、入射角5°で光を照射し、0°〜25°の受光角で拡散反射光の配光分布を測定した。具体的には、各試料フィルムをガラス板に貼り、ゴニオフォトメーターで、配光分布を測定した。ゴニオフォトメーターとしては、色彩技術研究所製のGP−200を用いた。ここでは、入射角を5°とし、受光角を横軸にとり、拡散反射光強度の最大値を80%として規格化した、相対拡散反射率(%)の常用対数を縦軸にとった配光分布曲線を示す。以下に示す配向分布曲線も特に説明しない限り、同様とする。

0131

CNV.1の配光分布は、受光角5°においてピーク値をとり、受光角0°から10°の範囲内に収まっている。CNV.1の配光分布曲線は、全体的に比較的急峻であり、相対拡散反射率(%)は、受光角5°からずれるにつれて単調に低下している。従来の反射防止膜(CNV.1)は、ヘイズ値が約3と低いにも拘わらず、鏡面反射性が低く、画像がぼやける。したがって、特に、高精細な画像表示パネルに用いると、表示品位を低下させる印象を与える。

0132

一方、EX.1の配光分布曲線は、受光角5°にピーク値をとり、受光角約3°〜約4°および受光角約6°〜約7°の範囲におけるEX.1の相対拡散反射率(%)の変化は、CNV.1の相対拡散反射率(%)の変化よりも急峻であるが、受光角約3°未満および受光角約7°超におけるEX.1の相対拡散反射率(%)の変化は、CNV.1の相対拡散反射率(%)の変化よりも緩やかである。EX.1は、ヘイズ値が約15と、CNV.1よりも高いにも拘わらず、鏡面反射性に優れている。実験例を示して後述するように、本発明の実施形態によるアンチグレア構造を有する反射防止膜(EX.1)は、配光分布曲線の傾きが不連続に変化する点が、受光角が0°以上10°以下の範囲内にあり、かつ、相対拡散反射率(%)が1%以上10%以下の範囲内に存在するという特徴的な拡散反射特性を有するので、従来の反射防止膜(CNV.1)に比べて、鏡面反射性が高く、かつ、適度な拡散反射性能(例えばヘイズ値が約7以上約24以下)を有する。本発明の実施形態による反射防止膜(EX.1)は、例えば、300ppiを超える高精細のディスプレイに用いても、画像が必要以上にぼやけることが抑制され、高い表示品位で反射が抑制された表示を提供することができる。

0133

以下に、実験例を示して、本発明の実施形態によるモスアイ用型およびモスアイ用型の製造方法をさらに詳細に説明する。

0134

[アルミニウム基材の選択]
Al−Mg系のアルミニウム合金
Al−Mg系のアルミニウム合金として、JIS A5052を用いた。JIS A5052は、下記の組成(mass%)を有している。

0135

Si:0.25%以下、Fe:0.40%以下、Cu:0.10%以下、Mn:0.10%以下、Mg:2.2〜2.8%、Cr:0.15〜0.35%、Zn:0.10%以下、その他:個々は0.05%以下、全体は0.15%以下、残部:Al

0136

JIS A5052のアルミニウム合金で形成された円筒状のアルミニウム基材を用いて型基材を作製した。ここでは、ボートホール法で作製されたアルミニウム基材に冷間引抜き加工を施すことなく、バイト切削による鏡面加工を行ったアルミニウム基材を用いた。なお、型基材は、図1(a)を参照して上述した方法によって作製した。無機材料層として、厚さが200nmの酸化タンタル層を形成し、アルミニウム膜としては、厚さが800nmの、TiおよびNを含むアルミニウム合金膜を形成した。アルミニウム合金膜のTi含有率は約1.0mass%で、N含有率は約1.2mass%以上約2.0mass%以下であり、残りはAlおよび不可避不純物である。特に記載しない限り、下記に示す実験例についても同様である。

0137

アルミニウム基材に化学的な梨地処理を行った。梨地処理のためのエッチング液として、フッ化水素アンモニウムを含む水溶液(フッ化水素アンモニウムの濃度は4mass%)を用いた。得られたマクロな凹凸構造は、必要以上に粗く、拡散反射性能が高く、適度なアンチグレア機能を得ることができなかった。

0138

そこで、梨地処理の条件をマイルド(処理の短時間化、処理液の低濃度化、処理温度の低温化)にしたところ、表面にむらが観察された。具体的には、拡散反射性能が低い領域と高い領域とが数cmオーダーで発生した。

0139

以上のことから、Al−Mg系のアルミニウム合金で形成されたアルミニウム基材は、不適であると判断した。

0140

Al−Mg−Si系のアルミニウム合金
Al−Mg−Si系のアルミニウム合金として、JIS A6063を用いた。JIS A6063は、下記の組成(mass%)を有している。

0141

Si:0.20〜0.60%、Fe:0.35%以下、Cu:0.10%以下、Mn:0.10%以下、Mg:0.45〜0.9%、Cr:0.10%以下、Zn:0.10%以下、Ti:0.10%以下、その他:個々は0.05%以下で、全体は0.15%以下、残部:Al

0142

JIS A6063のアルミニウム合金で形成された円筒状のアルミニウム基材を用いて型基材を作製した。ここでは、ボートホール法で作製されたアルミニウム基材に冷間引抜き加工を施すことなく、バイト切削による鏡面加工を行ったアルミニウム基材を用いた。

0143

このアルミニウム基材にフッ化水素アンモニウムを含む水溶液で梨地処理を行った。ボートホール法で作製されたアルミニウム基材の継ぎ目部分を除き、面内にむらがなく、適度なアンチグレア機能を有するマクロな凹凸構造を得ることができた。

0144

次に、冷間引抜き加工を施した後バイト切削による鏡面加工を行ったアルミニウム基材にフッ化水素アンモニウムを含む水溶液で梨地処理を行ったところ、継ぎ目部分も目立たず、面内にむらがなく、適度なアンチグレア機能を有するマクロな凹凸構造を得ることができた。

0145

これらのことから、アルミニウム基材としては、Al−Mg−Si系のアルミニウム合金、特に、JIS A6063で形成されているものが好ましい。特に、冷間引抜き加工が施されたアルミニウム基材は、継ぎ目が目立たないので好ましい。なお、熱間押出し法であっても、マンドレル法で作製されたアルミニウム基材には継ぎ目がないので、冷間引抜き法で作製されたアルミニウム基材と同様に、好適に用いることができる。

0146

図9(a)〜(c)に、フッ化水素アンモニウムを含む水溶液で梨地処理を行ったアルミニウム基材の表面のSEM像(5000倍、SEM像中のフルスケール10μm)を示す。SEM像は、電界放出型走査電子顕微鏡日立製S−4700)を用いて取得した。以下のSEM像も同様である。

0147

図9(a)は、冷間引抜き加工が施されたJIS A6063のアルミニウム基材の表面のSEM像であり、図9(b)は、冷間引抜き加工が施されていないJIS A6063のアルミニウム基材の表面のSEM像であり、図9(c)は、冷間引抜き加工が施されていないJIS A5052のアルミニウム基材の表面のSEM像である。いずれも、フッ化水素アンモニウムを含む水溶液による梨地処理の時間は、45秒である。但し、図9(a)については、前処理として、脱脂および水洗を行った。図9(b)および図9(c)については、前処理として、陽極酸化およびエッチングを行った。これら前処理の効果については後述する。

0148

図9(a)および(b)と、図9(c)とを比較すると明らかなように、JIS A5052のアルミニウム基材の表面(図9(c))は、JIS A6063のアルミニウム基材の表面(図9(a)および(b))に比べて、非常に粗い凹凸構造が形成されている。したがって、アルミニウム基材としては、Al−Mg−Si系のアルミニウム合金、特に、JIS A6063が好ましい。

0149

[脱脂・水洗]
冷間引抜き加工が施されたJIS A6063のアルミニウム基材に梨地処理を行うと、アルミニウム基材の表面にマクロなむらが発生することがあった。このマクロなむらの発生を防止するために、梨地処理の前処理として、脱脂と水洗の検討を行った。

0150

脱脂には、無機アルカリ性洗浄剤(横油脂工業株式会社製のL.G.L)の濃度が3mass%の水溶液を用い、試料をこの水溶液に40℃で、10分間浸漬した。その後、試料を純水中に10分間浸漬することによって水洗した。水洗後の試料を大気中に放置する時間を異ならせた(0分、5分、15分、22時間)試料を用意し、その後に梨地処理を行った。

0151

水洗後に完全に乾燥させずに梨地処理を行ったアルミニウム基材の表面にはむらが発生しなかったが(下記表1の条件C1とC2)、水洗後に一度乾燥させてから梨地処理を行ったアルミニウム基材の表面の全体にむらが見られた(条件C4)。放置時間15分のときはわずかにむらが観察された(条件C3)。

0152

脱脂をした後に水洗をして乾燥させると、アルミニウム基材の表面に、固体水酸化アルミニウム析出し、固着してしまう。この水酸化アルミニウムによって、処理液がアルミニウム基材の表面に作用するのが阻害される結果、むらが発生すると考えられる。したがって、水洗後、アルミニウム基材の表面が乾燥する前に、梨地処理を行うことが好ましい。もちろん、乾燥した後にもう一度水洗して、その後乾燥する前に梨地処理を行えば、むらの発生を防止することができる。水洗工程の後、15分を経過する前に梨地処理を行うことが好ましい。

0153

なお、脱脂の薬剤としては、界面活性剤(日華化学株式会社製のニッカサクリーン)や硫酸などを用いてもよい。

0154

0155

[梨地処理の時間]
アンチグレア機能を有する反射防止膜を形成するためのモスアイ用型を作製するために、梨地処理の時間と拡散反射性能の程度との関係を検討した結果を説明する。以下の実験では、冷間引抜き加工が施されたJIS A6063のアルミニウム基材を用いた。梨地処理のためのエッチング液として、フッ化水素アンモニウムを含む水溶液(フッ化水素アンモニウムの濃度は4mass%)を用いた。

0156

アルミニウム基材に対する梨地処理の時間を5秒〜3分で変化させた型試料を作製した。梨地処理温度は35℃とした。なお、梨地処理を行う前に、界面活性剤を用いて脱脂を行い、水洗後15分を経過するまでに梨地処理を行った。

0157

梨地処理が施されたアルミニウム基材の表面に離型剤(ダイキン工業株式会社製のオプツールDSX)を塗布した後、アクリル系の紫外線硬化樹脂を塗布し、PETフィルム上に転写した状態で紫外線を照射して硬化させた。得られたマクロな凹凸構造を有する試料フィルムを用いて、図8(b)を参照して説明した方法で、配光分布を測定した。ここで用いた試料フィルムのように、このように、モスアイ構造を有さず、アンチグレア構造だけを有する膜を、アンチグレア膜ということがある。

0158

また、参照用の試料フィルムとして、出願人がテレビ用途に用いている種々のアンチグレアフィルム(REF_No.1〜No.4)の配光分布も併せて評価した。ここで用いたアンチグレアフィルムは、微細粒子が分散されたコート剤樹脂)をフィルムの表面に塗布することによって形成されたものであり、微細な粒子によって形成されるマクロな凹凸を有する表面による拡散反射と、コート剤と微粒子との界面における拡散反射(散乱を含む)とによって、アンチグレア機能を発現する。一方、図8(a)を参照して説明した本発明による実施形態の反射防止膜(EX.1)や、以下で説明するアンチグレア膜は、マクロな凹凸を有する表面構造のみによってアンチグレア機能を発現する。

0159

図10Aに拡散反射光の配光分布の測定結果を示す。図10Aも、図8(a)と同様に、入射角を5°とし、受光角を横軸にとり、拡散反射光強度の最大値を80%として規格化した、相対拡散反射率(%)の常用対数を縦軸にとった配光分布曲線を示す。

0160

図10Aの結果から、梨地処理の時間が長くなるにつれて、受光角の大きい拡散反射光の割合が増加していることが分る。すなわち、梨地処理の時間が長くなるにつれて、アンチグレア機能は高くなる。処理時間が37秒のときのヘイズ値は約7、45秒のときのヘイズ値は約10で、75秒のときのヘイズ値は約24で、90秒のときのヘイズ値は約40である。REF_No.1のヘイズ値は2、No.3のヘイズ値が約40で、REFの中で最も大きい。なお、ヘイズ値は、日本電色工業株式会社製のヘーズメーターNDH2000を用いて、(拡散透過率全光線透過率)×100から求めた。

0161

梨地処理の時間が30秒以下では、拡散反射光の配光分布の変化が小さく、アンチグレアの効果がほとんどない。また、梨地処理の時間を90秒以上にしても、拡散反射光の配光分布にほとんど変化がなく、これ以上は、アンチグレアの効果が増大しない。アンチグレア機能の観点からは、梨地処理の時間は30秒超90秒未満が好ましいと言える。

0162

梨地処理時間が37秒以上75秒以下の範囲の試料フィルムの拡散反射光の配光分布は、配光分布曲線の傾きが不連続に変化する点が、受光角が0°以上10°以下の範囲内にあり、かつ、相対拡散反射率(%)が1%以上10%以下の範囲内に存在するという特徴を有している。具体的には、これらの試料フィルムの配光分布曲線の傾きは、受光角が約2°〜約3°および約7°〜約8°において不連続に変化している(傾きの絶対値が不連続に小さくなっている)。これらの試料フィルムは、適度なアンチグレア機能(ヘイズ値が約7以上約24以下)を有するとともに、適度な鏡面反射性を有していることが分かった。

0163

図10Bを参照して、アンチグレア機能と鏡面反射性とを評価した結果を説明する。図10Bは、上述の拡散反射光の配光分布の測定結果に基づいて、ORGで示した白黒パターンを各試料フィルムを介して観察したときの様子を簡単なモデル計算によって求めた結果を示す。すなわち、図8(b)のガラス板の位置に上記の白黒のパターンが配置された状態における、拡散反射光の配光分布を求めたことに相当する。

0164

CNV.1は、図8(a)に示した拡散反射光の配光分布を用いて計算した結果であり、E30、E45、E60およびE90は、それぞれ、図10Aに示した拡散反射光の配光分布を用いて計算した結果であり、数字は梨地処理時間を示している。

0165

図10BのORGで示した白黒のパターンの各領域は、233個のセルピクセルに相当)で構成されている。各セルを観察したときに観察者の眼に届く光の強度を以下のようにして求めた。

0166

例えば、n番目のセルを考える。n番目のセルを観察したときに観察者の眼に届く光の強度は、n番目のセルを出射する光の強度に、上記配光分布曲線の0.0°における相対拡散反射率(%)を掛けた値に、n−1番目およびn+1番目のセルを出射する光の強度に、上記配光分布曲線の0.1°における相対拡散反射率(%)を掛けた値を加え、さらに、n−2番目およびn+2番目のセルを出射する光の強度に、上記配光分布曲線の0.2°における相対拡散反射率(%)を掛けた値を加えるというように、n番目のセルの両側の50個のセルから出射される光の強度を加えた値として求めた。

0167

図10BのCNV.1を見るとわかるように、黒と白との境界線はぼやけて明確に認識することができない。このように、CNV.1の拡散反射機能つき反射防止膜は、ヘイズ値が3と小さいにも拘わらず、鏡面反射性は低く、画像がぼやけてしまう。

0168

一方、図10BのE45〜E60の試料フィルム(アンチグレアフィルム)については、黒と白との境界線を明確に認識することができる。また、アンチグレア機能という点では、黒の領域に侵入したグレーの領域の幅は、CNV.1よりも大きく、アンチグレア機能は高いと言える。

0169

E30の試料フィルムでは、鏡面反射性が高すぎる結果、黒と白との境界線が明確に認識される。また、E90の試料フィルムでは、鏡面反射性が低すぎる結果、黒と白との境界線を明確に認識することができない。これは、目視観察による主観評価の結果とよく対応しており、適度なアンチグレア機能と適度な鏡面反射性とを備える反射防止膜(反射防止表面)を得るためには、上記の梨地処理時間が30秒以上75秒以下が好ましい。

0170

したがって、梨地処理時間が30秒超90秒未満の範囲の試料フィルムは、適度なアンチグレア機能と適度な鏡面反射性とを備えているので、例えば、300ppiを超える高精細のディスプレイに用いても、画像が必要以上にぼやけることが抑制される。

0171

なお、梨地処理の好ましい時間は、処理液の濃度や温度によって、適宜、最適化され得る。例えば、フッ化水素とアンモニウムとを含む水溶液として、フッ化アンモニウムを5mass%含む水溶液を用いた場合、25℃で、120秒間、梨地処理することによって、上記のフッ化水素アンモニウムを4mass%含む水溶液を用いた例(処理時間45〜60秒)と同等の結果を得ることができる。

0172

梨地処理時間が短いと、量産安定性に問題を生じる可能性があるので、スループットを必要以上に低下させない範囲で、量産安定性(制御性)を向上させることが好ましい。そこで、梨地処理の温度を下げることによって、梨地処理の時間を長くすることを検討した。

0173

図11を参照して、濃度が4mass%のフッ化水素アンモニウムを含む水溶液を用いて10℃において梨地処理したときの、梨地処理の時間と拡散反射光の配光分布との関係を説明する。

0174

図11からわかるように、処理時間が2分30秒以上8分以下の範囲の試料フィルムの拡散反射光の配光分布は、REF_No.1〜No.4の拡散反射光の配光分布の範囲内にあり、処理温度を下げても、処理時間を長くすることによって、現在使用している種々のアンチグレアフィルムのアンチグレア性能をほぼカバーするアンチグレア性能を有する表面(アンチグレア構造)を形成できることが分かった。すなわち、処理温度を35℃から10℃に下げることによって、適切な処理時間を、30秒超90秒未満の範囲から、2分30秒以上8分以下の範囲に拡大することができる。このように処理温度を下げることによって、梨地処理の時間のマージンを大きくすることができるという利点が得られる。

0175

なお、フッ化水素アンモニウム水溶液の濃度が4mass%よりも低いと、結晶粒が目立つようになり、適度なアンチグレア機能を付与することができない場合があった。したがって、梨地処理に用いるフッ化水素アンモニウム水溶液の濃度は4mass%以上であることが好ましい。

0176

フッ化水素アンモニウム水溶液の濃度の上限は特に制限されないが、19mass%を超えると適度な拡散反射をもつ表面ができないおそれがあるので、フッ化水素アンモニウム水溶液の濃度は19mass%以下であることが好ましい。

0177

[アルミニウム基材の切削痕の影響の抑制]
冷間引抜き加工を施すことなく、バイト切削による鏡面加工を行ったアルミニウム基材に梨地処理を施すと、アルミニウム基材の表面に切削痕が形成されることがあった。この切削痕は、バイト切削による鏡面加工によって、アルミニウム基材の表面に形成された加工変質層に起因した、エッチングのむらであると考えられる。したがって、梨地処理によって切削痕が形成されるという問題は、バイト切削に限られず、加工変質層の形成を伴う鏡面加工が施されたアルミニウム基材を用いる場合に共通の問題である。なお、冷間引抜き加工を施すと、アルミニウム基材の全体にわたって塑性変形による加工変質層が形成されるので、その後の鏡面加工による影響が低減されると考えられる。

0178

種々検討した結果、フッ化水素とアンモニウムとの塩を含む水溶液による梨地処理の前に、前処理のための陽極酸化工程およびエッチング工程を行うことによって、切削痕を低減させることができることがわかった。すなわち、バイト切削による鏡面加工が施された表面を陽極酸化し、形成された陽極酸化膜をエッチングによって除去することによって、アルミニウム基材の表面に形成される切削痕を低減させることができる。

0179

なお、陽極酸化は、電解液として硫酸水溶液を用いることが好ましい。硫酸水溶液を用いると、蓚酸を用いる場合よりも、柔らかい陽極酸化膜が得られるので、例えば燐酸水溶液によって、容易に除去することができる。硫酸水溶液を用いた陽極酸化は、例えば、20℃で、定電流115A/m2で、24分30秒間にわたって行うことが好ましい。これよりも陽極酸化の時間が短いと、切削痕が形成されることがある。

0180

冷間引抜き加工を施すことなく、バイト切削による鏡面加工を行ったアルミニウム基材(JIS A6063)を用いて作製した型基材を用いて行った実験例の結果を以下に示す。

0181

図12(a)は、蓚酸水溶液(濃度:0.3mass%)を用いて陽極酸化(80V、5℃、10分)した後、燐酸水溶液(濃度:10mass%)を用いてエッチング(30℃、90分)した後のアルミニウム基材のSEM像(5000倍、SEM像中のフルスケール10μm)を示す図であり、図12(b)は、硫酸水溶液(濃度:17mass%)を用いて陽極酸化(定電流115A/m2、20℃、24分30秒)した後、燐酸水溶液(濃度:10mass%)を用いてエッチング(30℃、12分)した後のアルミニウム基材の表面のSEM像(5000倍、SEM像中のフルスケール10μm)を示す図である。

0182

図12(a)からわかるように、蓚酸を用いて陽極酸化したアルミニウム基材の表面には、多数の凹部が形成されている。これは、蓚酸を用いた陽極酸化によって形成された酸化膜は硬く、エッチングされ難いので、酸化膜が一部残存した状態で、ゆっくりとエッチングが進行する。このとき、酸化膜が除去された表面にガルバニック腐食が進行し、その結果、多数の凹部が形成されたと考えられる。なお、ガルバニック腐食は、アルミニウム膜に含まれるTiとAlとの間で起こる。

0183

一方、図12(b)からわかるように、硫酸を用いて陽極酸化したアルミニウム基材の表面にはガルバニック腐食によって形成される凹部は見られない。硫酸を用いた陽極酸化によって形成された酸化膜は柔らかく、エッチングによって容易に除去されたためと考えられる。ここで例示したように、硫酸を用いて陽極酸化すると、その後に12分間にわたってエッチングを行うだけで、陽極酸化膜を除去できる。

0184

硫酸を用いた陽極酸化によって形成された酸化膜を除去するために必要なエッチング時間を検討した。陽極酸化の条件は上記の条件(定電流115A/m2、20℃、24分30秒)と同じとし、燐酸水溶液(濃度:0.3mass%)を用いて、30℃で、エッチング時間を、1分、3分、5分、10分および12分と変化させ、酸化膜の残存の有無を調べた。その結果、エッチングを5分以上行うことによって、酸化膜を除去できることが分かった。実験結果の例を以下に示す。

0185

図13(a)〜(d)に、硫酸を用いて上記の条件で陽極酸化した後の燐酸によるエッチングの時間が異なる試料の表面のSEM像(10000倍、SEM像中のフルスケール200nm)を示す。図13(a)はエッチング時間が12分、図13(b)はエッチング時間が10分、図13(c)はエッチング時間が5分、図13(d)はエッチング時間が3分の試料のSEM像である。エッチング時間が3分の試料(図13(d)参照)以外は、酸化膜が除去されている。但し、5分のエッチングでは目視でむらが確認される場合があったので、エッチング時間は10分以上に設定することが好ましい。

0186

冷間引抜き加工を施すことなく、バイト切削による鏡面加工を行ったアルミニウム基材(JIS A6063)に上述の前処理としての陽極酸化およびエッチングを施した後に行う梨地処理の時間について検討した。前処理の有無によって、アルミニウム基材の表面の状態が異なるので、好ましい梨地処理の時間も違う可能性が考えられるからである。

0187

上述したように陽極酸化およびエッチングを行った後、フッ化水素アンモニウムを含む水溶液(濃度:4mass%、温度:20℃)で、処理時間を30秒、60秒、120秒で梨地処理を行った。得られた型基材を用いて、試料フィルムを作製し、図8(b)を参照して上述したのと同様の方法で、配光特性を評価した結果を図14に示す。図14も、図8(a)と同様に、入射角を5°とし、受光角を横軸にとり、拡散反射光強度の最大値を80%として規格化した、相対拡散反射率(%)の常用対数を縦軸にとった配光分布曲線を示す。

0188

図14からわかるように、梨地処理の時間が30秒の試料フィルムの配光分布は、REF_No.1より狭く、十分なアンチグレア機能を有していない。梨地処理の時間が60秒および120秒の試料の配光分布は、配光分布曲線の傾きが不連続に変化する点が、受光角が0°以上10°以下の範囲内にあり、かつ、相対拡散反射率(%)が1%以上10%以下の範囲内に存在するという特徴を有している。

0189

したがって、冷間引抜き加工を施すことなく、バイト切削による鏡面加工を行ったアルミニウム基材を用いて作製された型基材に、上述の前処理としての陽極酸化およびエッチングを施した後に行う梨地処理の時間は、フッ化水素アンモニウムを含む水溶液(濃度:4mass%、温度:20℃)を用いたとき、60秒以上が好ましいと言える。

0190

図15(a)に、冷間引抜き加工を施した後にバイト切削による鏡面加工を行ったアルミニウム基材に37秒間(図10A参照)梨地処理を行った表面のSEM像を示し、図15(b)に、ボートホール法で作製されたアルミニウム基材に冷間引抜き加工を施すことなく、バイト切削による鏡面加工を行ったアルミニウム基材に、前処理としての陽極酸化およびエッチングを行った後、120秒間(図14参照)梨地処理を行った表面のSEM像を示す。いずれのSEM像も10000倍、SEM像中のフルスケールは5μmである。

0191

図15(a)および(b)からわかるように、梨地処理によって形成されたマクロな凸部(図1(c)のマクロな凸部18p参照)の表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさ(面積円相当径)は、いずれも、約1μm以上5μm以下であることがわかる。マクロな凸部の2次元的な大きさの平均は、マクロな凹部の平均隣接間距離(ADint、図1(b)参照)よりもわずかに小さい。

0192

これらのアルミニウム基材を用いて上述と同様にしてモスアイ用型を作製し、図5を参照して上述したのと同様に、試料フィルムを作製した。得られたアンチグレア機能を備える反射防止膜を、液晶表示パネル(対角4.97インチ、ドットピッチ(図16中のPx)が19.1μm、画素ピッチが約57.3μm、約440ppi)の観察者側の表面に貼りつけ、目視で評価したところ、表示面のぎらつきが抑制され、かつ、画像のぼやけが抑制されていることが分かった。

0193

[アルミニウム基材の表面をエッチングする工程]
梨地処理の前処理として、アルカリ性のエッチング液を用いて、アルミニウム基材の表面をエッチングする工程(基材表面エッチング工程ということがある)について検討した結果を説明する。

0194

バイト切削による鏡面加工を行ったアルミニウム基材に梨地処理を施すと、アルミニウム基材の表面に切削痕が形成されることがあった。この切削痕は、バイト切削による鏡面加工によって、アルミニウム基材の表面に形成された加工変質層に起因した、エッチングのむらであると考えられる。また、切削痕を有する型を用いて形成された反射防止膜を液晶表示パネルに貼ると、モアレが発生することがあった。このモアレは、反射防止膜に転写された切削痕のと、液晶表示パネルのドットピッチ(図16中のPx)または画素ピッチで配列された周期構造(例えば画素列)とが互いに干渉することにより生じると考えられる。

0195

種々検討した結果、フッ化水素とアンモニウムとの塩を含む水溶液による梨地処理の前に、アルカリ性のエッチング液を用いて、アルミニウム基材の表面をエッチングすることによって、切削痕を低減させることができることが分かった。

0196

下記の表2に示すように、梨地処理の前に、条件を変えて基材表面エッチング工程を行った。実験例1〜7は、冷間引抜き加工を施した後バイト切削による鏡面加工を行ったアルミニウム基材(JIS A6063)を用いて作製した型基材を用いて行った。

0197

0198

実験例1で用いたアルカリ性のエッチング液E1は、有機アルカリ性洗浄剤(横浜油脂工業株式会社製のLC−2)の濃度が8mass%の水溶液である。横浜油脂工業株式会社製のLC−2は、以下の組成を含む:2−アミノエタノール(12mass%)、キレート剤(2mass%〜6mass%)、界面活性剤(2mass%〜6mass%)。従って、アルカリ性のエッチング液E1中の2−アミノエタノールの濃度は0.96mass%である。アルカリ性のエッチング液E1のpHは、10.3である。

0199

各アルカリ性のエッチング液のpHは、ハンディpHメータ製品名:D−25、HORIBA社製)を用いて測定した。アルカリ性のエッチング液がキレート剤を含むことによって、エッチングにより溶け出した、アルミニウム基材に含まれる他の金属や不純物が、アルミニウム基材の表面に付着することを防ぐことができる。アルカリ性のエッチング液が界面活性剤を含むことによって、基材表面のエッチングがより均一に行われ得る。

0200

実験例3で用いたアルカリ性のエッチング液E3は、無機アルカリ性洗浄剤(横浜油脂工業株式会社製のL.G.L)の濃度が3mass%の水溶液である。横浜油脂工業株式会社製のL.G.Lは、以下の組成を含む:水酸化カリウム(1mass%〜3mass%)、キレート剤(5mass%〜15mass%)、界面活性剤(5mass%〜15mass%)。従って、アルカリ性のエッチング液E3中の水酸化カリウムの濃度は0.03mass%〜0.09mass%である。アルカリ性のエッチング液E3のpHは、11.7である。

0201

実験例2で用いたアルカリ性のエッチング液E2は、アルカリ性のエッチング液E3を空気に触れる状態で1月以上放置したものである。アルカリ性のエッチング液E2は、アルカリ性のエッチング液E3よりも弱いアルカリ性を有する。アルカリ性のエッチング液E2のpHは、9.92である。

0202

実験例1〜3において、それぞれのアルカリ性のエッチング液(40℃)に試料を所定時間浸漬した後、試料を純水中に浸漬することによって水洗した。水洗後、完全に乾燥させずに梨地処理を行った。梨地処理には、フッ化水素アンモニウムを含む水溶液(濃度:4mass%、温度:10℃)を用い、処理時間は5分とした。

0203

実験例4〜6においては、基材表面エッチング工程の後に梨地処理を行わない。実験例4〜6においては、実験例1〜3で用いたアルカリ性のエッチング液E1〜E3と同じものを用いて、基材表面エッチング工程を行った。

0204

実験例7で用いたアルカリ性のエッチング液E4は、無機アルカリ性洗浄剤(横浜油脂工業株式会社製のL.G.L)の濃度が0.10mass%の水溶液である。従って、アルカリ性のエッチング液E4中の水酸化カリウムの濃度は0.001mass%〜0.003mass%である。アルカリ性のエッチング液E4は、アルカリ性のエッチング液E3と同じ無機アルカリ性洗浄剤を用いて調製したものであるが、その濃度において異なる。アルカリ性のエッチング液E4のpHは、10.38である。実験例7においては、実験例1〜3と同様に、基材表面エッチング工程の後に梨地処理を行った。

0205

実験例1〜7について、それぞれの基材表面エッチング工程および梨地処理(または、基材表面エッチング工程)を行ったアルミニウム基材を型として用いて、アンチグレア膜を形成した。アンチグレア膜は、アルミニウム基材の表面に離型剤(ダイキン工業株式会社製のオプツールDSX)を塗布した後、アクリル系の紫外線硬化樹脂を塗布し、TACフィルム上に転写した状態で紫外線を照射して硬化させることで、形成した。

0206

アルミニウム基材およびアルミニウム基材から得られたアンチグレア膜(試料フィルム)を用いて、アンチグレア機能を評価した結果を表3に示す。

0207

0208

表3において、「Ra」、「むら」および「模様」は、アルミニウム基材を評価した結果であり、「ヘイズ値」、「モアレ」、「防眩性」および「白茶け」は、アンチグレア膜を評価した結果である。「ヘイズ値」および「Ra」は、測定結果であり、「モアレ」、「むら」、「模様」、「防眩性」および「白茶け」は、目視による主観評価である。以下、それぞれについて説明する。

0209

表3の「Ra」は、アルミニウム基材の表面の算術平均粗さRaを測定した結果を示す。算術平均粗さRaは、Veeco製のOptical profiling system(WykoNT1100)を用いて測定した。基材表面エッチング工程および梨地処理によって、アルミニウム基材の表面の算術平均粗さRaは、例えば50nm以上300nm以下となることが好ましい。

0210

表3の「むら」は、アルミニウム基材の表面にむらが発生しているか否かについて目視で評価した結果である。アルミニウム基材の表面の梨地処理が均一に行われているか否かを評価した。表3の「むら」について、「○」はむらがないことを示し、「×」はむらがあることを示す。実験例7においては、基材表面エッチング工程に用いたアルカリ性のエッチング液に含まれる塩基の濃度が低いので、加工変質層を十分に除去することができなかったと考えられる。あとで説明するように、むらが発生しなかった場合(梨地処理が均一に行われた場合)は、アルミニウム基材の表面から例えば約1.4μmが除去された。実験例7においては、基材表面エッチング工程でエッチングされたアルミニウム基材の厚さが小さかったことにより、梨地処理が均一に行われず、むらが発生したと考えられる。

0211

また、実験例7においてむらが発生した理由として、以下のことも考えられる。実験例7において用いたアルカリ性のエッチング液E4は、実験例3において用いたアルカリ性のエッチング液E3と同じ無機アルカリ性洗浄剤を用いて調製したものであるが、その濃度が低い点において異なる。従って、実験例7においては、実験例3と比較して、アルカリ性のエッチング液に含まれる塩基の濃度が低く、アルミニウム基材の表面をエッチングする作用が弱いと考えられる。実験例7においては、アルカリ性のエッチング液に含まれるキレート剤の濃度も同様に低いが、アルミニウム基材に含まれる他の金属や不純物の量によっては、これらのイオン吸着封鎖する機能は、実験例3の場合と比較してあまり低下しないこともある。このような場合には、キレート剤の機能により、アルカリ性のエッチング液によるアルミニウム基材の表面のエッチングの不均一性が増大され得ると考えられる。これが梨地処理の不均一性の増大につながり、結果としてむらが発生したとも考えられる。

0212

アルカリ性のエッチング液に含まれる塩基の濃度は、例えば0.01mass%以上であることが好ましい。アルカリ性のエッチング液に含まれる無機塩基の濃度は、例えば0.03mass%以上であることが好ましい。アルカリ性のエッチング液に含まれる有機塩基の濃度は、例えば0.96mass%以上であることが好ましい。

0213

表3の「模様」は、アルミニウム基材の表面に、模様が形成されているか否かを目視で評価した結果である。ここで、模様とは、例えばアンチグレア構造の数百倍から数千倍の大きさの凹凸形状をいう。表3の「模様」について、「○」は模様が生じていないことを示し、「×」は模様が生じていることを示す。実験例6のアルミニウム基材の表面には、約1mmのオーダーの凹凸形状が生じていた。このアルミニウム基材の表面の模様(凹凸形状)によって、アンチグレア膜を黒いアクリル板の表面に貼りつけたときにも、模様が目立って見えた。この模様は、アンチグレア構造よりも数百倍から数千倍大きいので、アンチグレア機能を有するものではない。

0214

このアルミニウム基材の表面の模様(凹凸形状)は、例えば、実験例6で用いたアルカリ性のエッチング液E3のpHが11.7であり、アルカリ性が強いために生じたと考えられる。強いアルカリ性の塩基によってアルミニウム基材の表面が必要以上に荒らされ、模様が発生したと考えられる。基材表面エッチング工程において、アルカリ性のエッチング液に濃度勾配が生じる可能性も、模様が発生する原因の一つとして考えられ得る。また、アルミニウム基材の表面の模様は、例えば、バイト切削による鏡面加工によって、アルミニウム基材の表面に形成された加工変質層に起因しているとも考えられる。加工変質層に限られず、例えばアルミニウム基材が組成の不均一性を有すると、それが模様発生の原因の一つになることも考えられ得る。

0215

実験例3のアルミニウム基材の表面には、模様が生じていなかった。基材表面エッチング工程後のフッ化水素アンモニウムを含む水溶液を用いた梨地処理によって、アルミニウム基材の表面の加工変質層が部分的に除去された、および/または、アルミニウム基材の表面の模様が目立たなくなったと考えられる。

0216

表3の「ヘイズ値」は、アンチグレア膜のヘイズ値を測定した結果を示す。ヘイズ値は、日本電色工業株式会社製のヘーズメーターNDH2000を用いて、(拡散透過率/全光線透過率)×100から求めた。

0217

表3の「モアレ」は、アンチグレア膜を、液晶テレビ(AQUOS UD1、シャープ株式会社製)のディスプレイパネルの表面に貼りつけ、モアレが発生するか否かを目視で評価した結果である。表3の「モアレ」について「○」は、モアレが発生しなかったことを示し、「×」はモアレが発生したことを示す。

0218

表3の「防眩性」は、アンチグレア膜を、黒いアクリル板の表面に貼りつけ、蛍光灯の映り込みを目視で観察することによって、防眩性の有無を判断した結果である。表3の「防眩性」について「○」は、防眩性があると判断されたことを示し、「×」は、防眩性がないと判断されたことを示す。一般に、ヘイズ値の大きいアンチグレア膜は、アンチグレア機能に優れ、防眩性に優れている。

0219

表3の「白茶け」は、アンチグレア膜を、液晶テレビ(AQUOS UD1、シャープ株式会社製)のディスプレイパネルの表面に貼りつけ、膜を介した像について、白茶けが気になるかどうか聞き取りを行った結果である。聞き取りは5人に対して行い、表3の「白茶け」について「○」は、「白茶けが気になる」と答えた人数が5人中0人であることを示し、「△」は1人以上3人以下であることを示し、「×」は4人以上であることを示す。一般に、ヘイズ値の大きいアンチグレア膜は、そのアンチグレア機能によって、膜を介した像が白っぽく見えやすい。

0220

なお、上記のうち、「防眩性」および「白茶け」の評価は、評価者の実現したいアンチグレア機能の程度によって異なることが考えられる。例えば、上記表3の評価は、ヘイズ値が約7以上約24以下を適度なアンチグレア機能とした場合である。本発明の実施形態による型の製造方法によって製造される型は、例示するものに限られず、よりアンチグレア機能の高い(より大きなヘイズ値(例えば約7以上約28以下)を有する)反射防止膜を形成するためにも用いられ得る。よりアンチグレア機能の低い(より小さなヘイズ値(例えば約1以上約5以下)を有する)反射防止膜を形成するためにももちろん用いられ得る。

0221

基材表面エッチング工程において、アルミニウム基材の表面から例えば約1.4μmが除去された。基材表面エッチング工程でエッチングされる厚さは、例えばエッチング時間、エッチング液の温度等を調整することによって、適宜調整することができる。基材表面エッチング工程でエッチングされることが好ましい厚さは、例えばアルミニウム基材の表面の状態によって異なる。エッチングされる厚さは上記の例に限られず、アルミニウム基材の表面の加工変質層が十分に除去される程度に、エッチングを行うことが好ましい。

0222

上記の実験例より、適度なアンチグレア機能(例えばヘイズ値が約7以上約24以下)を有する反射防止膜を得るためには、基材表面エッチング工程に用いるアルカリ性のエッチング液のpHは、例えば10以上12以下が好ましい。アルカリ性のエッチング液のpHが9以下の場合は、アルミニウム基材の表面の加工変質層を十分に除去することができない可能性がある。アルカリ性のエッチング液のpHが13以上の場合は、アルミニウム基材の表面が必要以上に荒らされ、および/または、むらの原因となり得る可能性がある。

0223

ただし、基材表面エッチング工程に用いるアルカリ性のエッチング液のpHの好ましい範囲は、アルミニウム基材の表面状態によって異なり得る。アルミニウム基材の表面状態は、例えば、アルミニウム基材の種類、作製方法、および/または加工方法によって異なり得る。

0224

[アルカリ性のエッチング液による梨地処理]
梨地処理を、フッ化水素とアンモニウムとの塩を含む水溶液に代えて、アルカリ性のエッチング液によって行うことを検討した結果について説明する。

0225

フッ化水素とアンモニウムとの塩を含む水溶液に代えて、アルカリ性のエッチング液によって梨地処理を行うと、切削痕を低減させることが可能であることが分かった。アルカリ性のエッチング液によって、梨地処理と同時にアルミニウム基材の表面のエッチングが行われ、アルミニウム基材の表面に形成された加工変質層が除去されるためであると考えられる。

0226

下記の表4に示すように、条件を変えてアルカリ性のエッチング液による梨地処理を行った。実験例8〜15は、マンドレル法で作製されたアルミニウム基材に冷間引抜き加工を施すことなく、バイト切削による鏡面加工を行ったアルミニウム基材(JIS A6063)を用いて作製した型基材を用いて行った。

0227

0228

実験例8、9および11においては、アルカリ性のエッチング液E1(上記実験例1で用いたものと同じ)に試料を所定時間浸漬することで、梨地処理を行った。

0229

実験例10においては、アルカリ性のエッチング液E2(上記実験例2で用いたものと同じ)に試料を所定時間浸漬することで、梨地処理を行った。

0230

実験例12で用いたアルカリ性のエッチング液E5は、アルカリ性のエッチング液E1を空気に触れる状態で1月以上放置したものである。アルカリ性のエッチング液E5は、アルカリ性のエッチング液E1よりも弱いアルカリ性を有する。アルカリ性のエッチング液E5のpHは、9.20である。

0231

実験例13および14においては、アルカリ性のエッチング液E3(上記実験例3で用いたものと同じ)に試料を所定時間浸漬することで、梨地処理を行った。

0232

実験例15においては、アルカリ性のエッチング液E4(上記実験例7で用いたものと同じ)に試料を所定時間浸漬することで、梨地処理を行った。

0233

実験例8〜15において、それぞれのアルカリ性のエッチング液(40℃)に試料を所定時間浸漬した後、試料を純水中に浸漬することによって水洗した。水洗後、試料を乾燥させた。

0234

実験例8〜15について、それぞれアルカリ性のエッチング液による梨地処理を行ったアルミニウム基材を型として用いて、アンチグレア膜を形成した。アンチグレア膜は、アルミニウム基材の表面に離型剤(ダイキン工業株式会社製のオプツールDSX)を塗布した後、アクリル系の紫外線硬化樹脂を塗布し、TACフィルム上に転写した状態で紫外線を照射して硬化させることで、形成した。

0235

アルミニウム基材およびアルミニウム基材から得られたアンチグレア膜(試料フィルム)を用いて、アンチグレア機能を評価した結果を表5に示す。評価の方法および表5中の表記は、上記表3について説明したものと同じである。

0236

0237

実験例11においては、モアレが発生した。モアレが発生しなかった実験例8および実験例9と比べると、実験例11においては、試料をアルカリ性のエッチング液E1に浸漬させた時間が短い。実験例11においては、アルミニウム基材の表面の加工変質層のエッチングが十分でなかったことがモアレの発生に起因していると考えられる。

0238

実験例12および実験例15においては、むらが発生した。実験例12においては、用いたアルカリ性のエッチング液E5のpHが9.20であり、アルカリ性が弱いために、加工変質層を十分に除去することができなかったと考えられる。実験例15においては、アルカリ性のエッチング液E4に含まれる塩基の濃度が低いので、加工変質層を十分に除去することができなかったと考えられる。あとで説明するように、むらが発生しなかった場合(梨地処理が均一に行われた場合)は、アルミニウム基材の表面から例えば約1.4μmが除去された。実験例12および実験例15においては、基材表面エッチング工程でエッチングされたアルミニウム基材の厚さが小さかったことにより、梨地処理が均一に行われず、むらが発生したと考えられる。

0239

また、実験例15においてむらが発生した理由として、実験例7について上述したように、キレート剤の機能によることも考えられる。以下に説明する。

0240

実験例15において用いたアルカリ性のエッチング液E4は、アルカリ性のエッチング液に含まれる塩基の濃度が低い。実験例12において用いたアルカリ性のエッチング液E5のpHは9.20であり、アルカリ性が弱い。従って、実験例12および実験例15においては、アルミニウム基材の表面をエッチングする作用が弱いと考えられる。ただし、実験例12および実験例15においては、アルミニウム基材に含まれる他の金属や不純物の量によっては、アルカリ性のエッチング液に含まれるキレート剤が、これらのイオンを吸着・封鎖する機能はあまり低くないこともあると考えられる。このような場合には、キレート剤の機能により、アルカリ性のエッチング液によるアルミニウム基材の表面のエッチングの不均一性が増大され得ると考えられる。これが梨地処理の不均一性の増大につながり、結果としてむらが発生したとも考えられる。

0241

アルカリ性のエッチング液に含まれる塩基の濃度は、例えば0.01mass%以上であることが好ましい。アルカリ性のエッチング液に含まれる無機塩基または有機塩基の濃度は、例えば0.03mass%以上であることが好ましい。アルカリ性のエッチング液に含まれる有機塩基の濃度は、例えば0.96mass%以上であることが好ましい。

0242

実験例13および実験例14においては、模様が発生した。実験例13および実験例14においては、用いたアルカリ性のエッチング液E3のpHが比較的高いので、強いアルカリ性の塩基によってアルミニウム基材の表面が必要以上に荒らされたと考えられる。これにより、模様が発生したと考えられる。また、表3について上述したように、アルミニウム基材の表面に発生した模様は、例えば、バイト切削による鏡面加工によって、アルミニウム基材の表面に形成された加工変質層に起因しているとも考えられる。

0243

上記の実験例から、アルカリ性のエッチング液による梨地処理によって、アルミニウム基材の表面の算術平均粗さRaが、例えば50nm以上200nm以下となることが好ましい。

0244

アルカリ性のエッチング液による梨地処理工程において、アルミニウム基材の表面から例えば約1.4μmが除去された。エッチングされる厚さは、例えばエッチング時間、エッチング液の温度等を調整することによって、適宜調整することができる。エッチングされることが好ましい厚さは、例えばアルミニウム基材の表面の状態によって異なる。エッチングされる厚さは上記の例に限られず、アルミニウム基材の表面の加工変質層が十分に除去される程度に、エッチングを行うことが好ましい。

0245

アルカリ性のエッチング液による梨地処理工程は、アルミニウム基材の表面を、アルカリ性のエッチング液に、例えば45分間以上接触させることにより行う。これにより、アルカリ性のエッチング液による梨地処理工程は、脱脂工程を兼ねることができる。

0246

上記の実験例より、適度なアンチグレア機能(例えばヘイズ値が約7以上約24以下)を有する反射防止膜を得るためには、梨地処理に用いるアルカリ性のエッチング液のpHは、例えば9.5以上11以下が好ましいことが分かる。アルカリ性のエッチング液のpHが9以下の場合は、アルミニウム基材の表面の加工変質層を十分に除去することができない可能性がある。アルカリ性のエッチング液のpHが12以上の場合は、アルミニウム基材の表面が必要以上に荒らされ、および/または、梨地処理が均一に行われない可能性がある。

0247

ただし、梨地処理に用いるアルカリ性のエッチング液のpHの好ましい範囲は、アルミニウム基材の表面状態によって異なり得る。アルミニウム基材の表面状態は、例えば、アルミニウム基材の種類、作製方法、および/または加工方法によって異なり得る。

0248

また、本発明の実施形態による型の製造方法によって製造される型は、例示するものに限られず、よりアンチグレア機能の高い(より大きなヘイズ値(例えば約7以上約28以下)を有する)反射防止膜を形成するためにも用いられ得る。よりアンチグレア機能の低い(より小さなヘイズ値(例えば約1以上約5以下)を有する)反射防止膜を形成するためにももちろん用いられ得る。

0249

このようにして得られた梨地処理が施された円筒状のアルミニウム基材を用いて、上述したように、反転されたモスアイ構造を形成することによって、反射防止機能とアンチグレア機能とを付与できるモスアイ用型が得られる。円筒状のモスアイ用型を用いると、上述したようにロール・ツー・ロール方式で反射防止膜を形成することができる。このとき、反射防止膜を形成するフィルム基材(TACフィルムまたはPETフィルム)と、反射防止膜との密着性を向上させるために、以下のような工程を経ることが好ましい。

0250

TACフィルム上に、溶剤を含む紫外線硬化性樹脂(例えばアクリル樹脂)を付与する(厚さは例えば2μm〜20μm)。このとき、溶剤は、TACフィルムの表面を溶解するもの(例えばケトン系)を選択する。溶剤がTACフィルムの表面を溶解することによって、TACと紫外線硬化性樹脂とが混合した領域が形成される。

0251

この後、溶剤を除去し、モスアイ用型の外周面に、紫外線硬化性樹脂が密着するように、TACフィルムを巻きつける。

0252

続いて、紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させる。この時、紫外線硬化性樹脂の温度を30℃から70℃に保持する。

0253

その後、TACフィルムをモスアイ用型から剥離し、必要に応じて、紫外線を再度照射する。

0254

TACフィルム上にハードコート層を形成する場合には、ハードコート層を形成する材料に、TACフィルムの表面を溶解する溶剤を含有させておいてもよい。この場合、反射防止膜を形成するための紫外線硬化性樹脂に溶剤を含有させる必要はない。

0255

また、PETフィルムを用いる場合には、紫外線硬化性樹脂を付与する前に、水系のプライマー(例えば、ポリエステル系樹脂やアクリル系樹脂)の層(厚さ2μm〜20μm)を形成することが好ましい。この場合も、反射防止膜を形成するための紫外線硬化性樹脂に溶剤を含有させる必要はない。

0256

本発明による型の製造方法は、反射防止膜(反射防止表面)などの形成に好適に用いられる型の製造に用いられる。本発明による反射防止膜は、適度なアンチグレア機能と、優れた反射防止機能とを発現する表面構造を有し、例えば、高精細な表示パネルに好適に用いられる。

0257

10型基材
12アルミニウム基材
14ポーラスアルミナ層
14pミクロな凹部
16無機材料層
18アルミニウム膜
18rアルミニウム残存層
100 モスアイ用型

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