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技術 ラミニンによる角膜の新規治療

出願人 京都府公立大学法人学校法人同志社千寿製薬株式会社
発明者 小泉範子奥村直毅木下茂
出願日 2015年10月30日 (6年3ヶ月経過) 出願番号 2016-556373
公開日 2017年8月10日 (4年6ヶ月経過) 公開番号 WO2016-067628
状態 特許登録済
技術分野 他の有機化合物及び無機化合物含有医薬 ペプチド又は蛋白質 突然変異または遺伝子工学 動物,微生物物質含有医薬 医薬品製剤 蛋白脂質酵素含有:その他の医薬 ピリジン系化合物 化合物または医薬の治療活性
主要キーワード コーティング無し ペレット群 コーティング用溶液 文部科学省 治療液 水疱性角膜症 細胞接着促進剤 線維化抑制剤
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年8月10日)のものです。
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図面 (15)

課題・解決手段

本発明は、角膜治療技術を提供する。より詳細には、本発明は、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子を含む、角膜内皮疾患の状態の治療または予防剤であって、角膜内皮細胞がともに投与されることをさらに特徴とする技術を提供することによって上記課題が解決された。詳細には、本発明はラミニン511(α5β1γ1)、ラミニン521(α5β2γ1)あるいはこれらのフラグメントを含みうる。

概要

背景

ヒトの角膜内皮細胞は、出生時には1平方ミリメートル当たり約3000個の密度で存在しているが、一度障害を受けると再生する能力を持たない。このように、角膜内皮細胞は、培養が困難であるとされており、移植技術において培養、増殖が困難な現在の状況のため、角膜内皮処置手術が事実上不可能となっている。日本での角膜提供は不足しており、角膜移植待機患者約2600人に対し、年間に国内で行われている角膜移植件数は1700件程度である。

ラミニンとの眼科との関係では特許文献1および2が知られている。

概要

本発明は、角膜の治療技術を提供する。より詳細には、本発明は、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子を含む、角膜内皮疾患の状態の治療または予防剤であって、角膜内皮細胞がともに投与されることをさらに特徴とする技術を提供することによって上記課題が解決された。詳細には、本発明はラミニン511(α5β1γ1)、ラミニン521(α5β2γ1)あるいはこれらのフラグメントを含みうる。

目的

本発明は、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子を含む、角膜内皮等の角膜の疾患、障害または状態の治療または予防剤を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子を含む、角膜内皮疾患、障害または状態の治療または予防剤

請求項2

前記ラミニンは、RGD配列を含む、請求項1に記載の治療または予防剤。

請求項3

前記ラミニンは、α5鎖および/またはγ1鎖を含む、請求項1に記載の治療または予防剤。

請求項4

前記ラミニンは、ラミニン511(α5β1γ1)およびラミニン521(α5β2γ1)を含む、請求項1に記載の治療または予防剤。

請求項5

前記フラグメントは、角膜内皮細胞細胞接着能を有する、請求項1に記載の治療または予防剤。

請求項6

前記因子は、ラミニン511、ラミニン521またはラミニン511−E8フラグメントである、請求項1に記載の治療または予防剤。

請求項7

前記角膜内皮は霊長類のものである、請求項1に記載の治療または予防剤。

請求項8

前記角膜内皮疾患、障害または状態は、フックス角膜内皮ジストロフィ、角膜内皮炎、外傷、ならびに眼科手術の障害および状態からなる群より選択される、請求項1に記載の治療または予防剤。

請求項9

前記角膜内皮疾患、障害または状態は、羞明、霧視、視力障害眼痛流涙充血疼痛水疱性角膜症、眼の不快感コントラスト低下グレア角膜実質浮腫、水疱性角膜症、および角膜混濁からなる群より選択される、請求項1に記載の治療または予防剤。

請求項10

前記角膜内皮は、角膜内皮層、デスメ膜、またはその両方を含む、請求項1に記載の治療または予防剤。

請求項11

前記角膜内皮は、デスメ膜が剥離した状態である、請求項1に記載の治療または予防剤。

請求項12

さらに、角膜内皮細胞を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の治療または予防剤。

請求項13

さらに、ROCK阻害剤を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の治療または予防剤。

請求項14

さらに、角膜内皮細胞およびROCK阻害剤を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の治療または予防剤。

請求項15

前記ROCK阻害剤は、Y-27632((R)−(+)−トランス−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド塩酸塩水和物)、およびその薬学的に受容可能な塩からなる群より選択される、請求項13または14に記載の治療または予防剤。

請求項16

前記因子は、眼内に注入され眼内の組織と接触されることを特徴とする、請求項1に記載の治療または予防剤。

請求項17

前記因子は、約21nM以上で存在する、請求項16に記載の治療または予防剤。

請求項18

さらに角膜内皮細胞が投与されることを特徴とする、請求項1に記載の治療または予防剤。

請求項19

前記因子は、角膜内皮細胞と混合されて提供され、さらに、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子が眼内に注入され眼内の組織と接触されることを特徴とする、請求項1に記載の治療または予防剤。

請求項20

さらに、ROCK阻害剤を含む、請求項19に記載の治療または予防剤。

請求項21

前記ROCK阻害剤は、Y-27632((R)−(+)−トランス−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド2塩酸塩1水和物)、およびその薬学的に受容可能な塩からなる群より選択される、請求項20に記載の治療または予防剤。

請求項22

角膜内皮細胞と混合される前記因子は、約2.1nM以上であり、注入される前記因子は約21nM以上である、請求項19に記載の治療または予防剤。

技術分野

0001

本発明は、ラミニンを用いた新規治療に関する。より詳細には、ラミニンを用いた眼科治療に関し、さらに詳細には角膜内皮の治療および予防に関する。

背景技術

0002

ヒトの角膜内皮細胞は、出生時には1平方ミリメートル当たり約3000個の密度で存在しているが、一度障害を受けると再生する能力を持たない。このように、角膜内皮細胞は、培養が困難であるとされており、移植技術において培養、増殖が困難な現在の状況のため、角膜内皮の処置手術が事実上不可能となっている。日本での角膜提供は不足しており、角膜移植待機患者約2600人に対し、年間に国内で行われている角膜移植件数は1700件程度である。

0003

ラミニンとの眼科との関係では特許文献1および2が知られている。

先行技術

0004

特表2004−500012号公報
特表2003−532647号公報

課題を解決するための手段

0005

本発明者らは、特定のラミニンが、眼科の治療、特に角膜内皮の治療に有用であることを見出したことによって、本発明を完成した。したがって、本発明は、代表的に、以下を提供する。
(1)ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子を含む、角膜内皮疾患、障害または状態の治療または予防剤
(2)前記ラミニンは、RGD配列を含む、項目1に記載の治療または予防剤。
(3)前記ラミニンは、α5鎖および/またはγ1鎖を含む、項目1または2に記載の治療または予防剤。
(4)前記ラミニンは、ラミニン511(α5β1γ1)およびラミニン521(α5β2γ1)を含む、項目1〜3のいずれか一項に記載の治療または予防剤。
(5)前記フラグメントは、角膜内皮細胞の細胞接着能を有する、項目1〜4のいずれか一項に記載の治療または予防剤。
(6)前記因子は、ラミニン511、ラミニン521またはラミニン511−E8フラグメントである、項目1〜5のいずれか一項に記載の治療または予防剤。
(7)前記角膜内皮は霊長類のものである、項目1〜6のいずれか一項に記載の治療または予防剤。
(8)前記角膜内皮疾患、障害または状態は、フックス角膜内皮ジストロフィ、角膜内皮炎、外傷、ならびに眼科手術の障害および状態からなる群より選択される、項目1〜7のいずれか一項に記載の治療または予防剤。
(9)前記角膜内皮疾患、障害または状態は、羞明、霧視、視力障害眼痛流涙充血疼痛水疱性角膜症、眼の不快感コントラスト低下グレア角膜実質浮腫、水疱性角膜症、および角膜混濁からなる群より選択される、項目1〜8のいずれか一項に記載の治療または予防剤。
(10)前記角膜内皮は、角膜内皮層、デスメ膜、またはその両方を含む、項目1〜9のいずれか一項に記載の治療または予防剤。
(11)前記角膜内皮は、デスメ膜が剥離した状態である、項目1〜10のいずれか一項に記載の治療または予防剤。
(12)さらに、角膜内皮細胞を含む、項目1〜11のいずれか1項に記載の治療または予防剤。
(13)さらに、ROCK阻害剤を含む、項目1〜11のいずれか1項に記載の治療または予防剤。
(14)さらに、角膜内皮細胞およびROCK阻害剤を含む、項目1〜11のいずれか1項に記載の治療または予防剤。
(15)前記ROCK阻害剤は、Y-27632((R)−(+)−トランス−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド塩酸塩水和物)、およびその薬学的に受容可能な塩からなる群より選択される、項目13または14に記載の治療または予防剤。
(16)前記因子は、眼内に注入され眼内の組織と接触されることを特徴とする、項目1〜15のいずれか一項に記載の治療または予防剤。
(17)前記因子は、約21nM以上で存在する、項目1〜16のいずれか一項に記載の治療または予防剤。
(18)さらに角膜内皮細胞が投与されることを特徴とする、項目1〜17のいずれか一項に記載の治療または予防剤。
(19)前記因子は、角膜内皮細胞と混合されて提供され、さらに、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子が眼内に注入され眼内の組織と接触されることを特徴とする、項目1〜18のいずれか一項に記載の治療または予防剤。
(20)さらに、ROCK阻害剤を含む、項目1〜19のいずれか一項に記載の治療または予防剤。
(21)前記ROCK阻害剤は、Y-27632((R)−(+)−トランス−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド2塩酸塩1水和物)、およびその薬学的に受容可能な塩からなる群より選択される、項目1〜20のいずれか一項に記載の治療または予防剤。
(22)角膜内皮細胞と混合される前記因子は、約2.1nM以上であり、注入される前記因子は約21nM以上である、項目1〜21のいずれか一項に記載の治療または予防剤。
(23)角膜内皮疾患、障害または状態の治療または予防のために使用するための、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子。
(24)項目2〜22のいずれか1項または複数の項に記載される特徴をさらに備える、項目23に記載の因子。
(25)角膜内皮疾患、障害または状態の治療または予防するための方法であって、該方法は、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子の有効量を該治療または予防を必要とする被験体に投与する工程を包含する、方法。
(26)項目2〜11のいずれか1項または複数の項に記載される特徴をさらに備える、項目25に記載の方法。
(27)さらに、角膜内皮細胞を前記被験体に投与する工程を含む、項目26または26に記載の方法。
(28)さらに、ROCK阻害剤を前記被験体に投与する工程を含む、項目25〜27のいずれか1項に記載の方法。
(29)前記ROCK阻害剤は、Y-27632((R)−(+)−トランス−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド2塩酸塩1水和物)、およびその薬学的に受容可能な塩からなる群より選択される、項目28に記載の方法。
(30)さらに、角膜内皮細胞およびROCK阻害剤を前記被験体に投与する工程を含む、項目25〜29のいずれか1項に記載の方法。
(31)前記因子は前記被験体の眼内に注入され、眼内の組織と接触されることを特徴とする、項目25〜30のいずれか1項に記載の方法。
(32)前記因子は、約21nM以上で存在する、項目25〜31のいずれか1項に記載の方法。
(33)角膜内皮細胞を前記因子とは別に投与する工程をさらに包含する、項目25〜32のいずれか1項に記載の方法。
(34)前記因子は、角膜内皮細胞と混合されて提供され、さらに、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子が眼内に注入され眼内の組織と接触されることを特徴とする、項目25〜33のいずれか1項に記載の方法。
(35)ROCK阻害剤を前記因子とは別に投与する工程をさらに包含する、項目25〜34のいずれか1項に記載の方法。
(36)前記ROCK阻害剤は、Y-27632((R)−(+)−トランス−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド2塩酸塩1水和物)、およびその薬学的に受容可能な塩からなる群より選択される、項目25〜35のいずれか1項に記載の方法。
(37)角膜内皮細胞と混合される前記因子は、約2.1nM以上であり、注入される前記因子は約21nM以上である、項目25〜32のいずれか1項に記載の方法。
(38)ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子の、角膜内皮疾患、障害または状態の治療または予防のための医薬の製造における使用。
(39)項目2〜22のいずれか1項または複数の項に記載される特徴をさらに備える、項目38に記載の使用。
(40)ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子の、角膜内皮疾患、障害または状態の治療または予防のための使用。
(41)項目2〜22のいずれか1項または複数の項に記載される特徴をさらに備える、項目40に記載の使用。

0006

本発明において、上述した1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解することにより、当業者に認識される。

発明の効果

0007

本発明は、眼科、特に角膜内皮細胞(特に、ヒト角膜内皮細胞)の新規治療を可能にした。特に、水疱性角膜症をほぼ完治させるまでの状態にもたらされることができており、また、好ましい実施形態では、デスメ膜を治癒させているところ、このような効果は、従来技術では達成できなかった格別の効果である。

図面の簡単な説明

0008

図1は、ラミニン511−E8フラグメントを用いたウサギ水疱性角膜症モデルにおける培養角膜内皮移植後の前眼部写真である。左からControl:コントロールとしてウサギの角膜内皮細胞を機械的に掻爬したもの、RCEC:作製したモデルに培養したウサギ角膜内皮細胞を前房内に注入してうつむき姿勢を3時間取らせたもの、RCEC+E8:作製したモデルに培養したウサギ角膜内皮細胞を、ラミニン511−E8フラグメントを濃度2.1nMに調整したDMEMととともに前房内に注入してうつむき姿勢を3時間取らせたものの前眼部写真を示す。上段は1週間後であり、下段は2週間後の写真を示す。
図2は、ラミニン511−E8フラグメントを用いたウサギ水疱性角膜症モデルにおける培養角膜移植後の角膜厚の変化である。縦軸は超音波キメーターパキメーターにより測定した角膜厚(μm)を示す。横軸は処置後の日数である。標準誤差をバーで示している。
図3は、ラミニン511−E8フラグメントを用いた培養角膜内皮移植後の組織学的検討結果を示す。左から抗Na+/K+−ATPase抗体、抗ZO−1抗体、抗N−カドヘリン抗体およびファロイジン(Phalloidin)での染色を示す。
図4は、ラミニンとROCK阻害剤を併用したウサギ水疱性角膜症モデルにおける培養角膜内皮移植の検討結果を示す。ウサギの角膜内皮を機械的に剥離して水疱性角膜症モデルを作製した。培養したウサギ角膜内皮細胞を前房内にROCK阻害剤であるY−27632(+)(100μM)とともに注入した個体と、細胞とラミニン511−E8フラグメント(2.1nM)とY−27632(+)(100μM)とともに注入した個体において24時間後の注入した細胞の基質への接着を比較した。(左)にPhalloidinおよびDAPIでの染色写真を示す。上段はラミニン511−E8フラグメントなしかつY−27632(+)(100μM)、下段はラミニン511−E8フラグメントありかつY−27632(+)(100μM)での結果を示す。Phalloidin染色により細胞とラミニン511−E8フラグメント(2.1nM)とY−27632(+)(100μM)とともに注入した個体においてより多くの細胞が接着していることが示された。(右)に細胞密度のデータのグラフを示す。このグラフでは、縦軸は細胞密度(個/mm2)を示す。また接着した細胞密度は有意に細胞とラミニン511−E8フラグメント(2.1nM)とY−27632(+)(100μM)とともに注入した個体において高い値であった(右)。
図5は、ウサギ水疱性角膜症モデルにおける培養角膜内皮移植後の前眼部写真である。左からデスメ膜剥離を行わず角膜内皮細胞を剥離しY−27632(+)(100μM)とともに培養角膜内皮細胞を注入した個体、デスメ膜剥離を行わず角膜内皮細胞を剥離しラミニン511−E8フラグメント(2.1nM)とY−27632(+)(100μM)とともに注入した個体、デスメ膜剥離を行った水疱性角膜症モデルにY−27632(+)(100μM)とともに注入した個体、デスメ膜剥離を行った水疱性角膜症モデルにラミニン511−E8フラグメント(2.1nM)とY−27632(+)(100μM)とともに注入した個体の前眼部写真を示す。上段は、Day3を示し、下段はDay7を示す。
図6は、図5で示した4群の培養角膜内皮移植後の角膜厚(μm)を示す。横軸は処置後の日数である。実線はデスメ膜剥離なしを示し、破線はデスメ膜剥離有を示す。黒丸はいずれもラミニン511−E8フラグメントありを示し、白丸はラミニン511−E8フラグメントなしを示す。デスメ膜を剥離した方が、剥離しない場合に比べて角膜厚の菲薄化遅延した。
図7は、図5で示した4群の培養角膜内皮移植後の眼圧(mmHg)を示す。横軸は処置後の日数である。実線はデスメ膜剥離なしを示し、破線はデスメ膜剥離有を示す。黒丸はいずれもラミニン511−E8フラグメントありを示し、白丸はラミニン511−E8フラグメントなしを示す。細胞移植による合併症として考えられる眼圧上昇はすべての群で認められなかった。
図8は、図6で示した4群の培養角膜内皮移植から14日後の組織学的検討を示す。左から抗Na+/K+−ATPase抗体、抗ZO−1抗体、抗N−カドヘリン抗体およびPhalloidinでの染色を示す。上段からデスメ膜剥離を行わず角膜内皮細胞を剥離しY−27632(+)(100μM)とともに培養角膜内皮細胞を注入した個体、デスメ膜剥離を行わず角膜内皮細胞を剥離しラミニン511−E8フラグメント(2.1nM)とY−27632(+)(100μM)とともに注入した個体、デスメ膜剥離を行った水疱性角膜症モデルにY−27632(+)(100μM)とともに注入した個体、およびデスメ膜剥離を行った水疱性角膜症モデルにラミニン511−E8フラグメント(2.1nM)とY−27632(+)(100μM)とともに注入した個体の染色像を示す。
図9は、ラミニン511−E8フラグメントを併用したサル水疱性角膜症モデルにおける培養角膜内皮移植後の前眼部写真を示す。カニクイザルの角膜内皮細胞を機械的に掻爬したモデルに培養したカニクイザル角膜内皮細胞を前房内に注入してうつむき姿勢を3時間取らせた。左上はDay1、右上はDay3、左下はDay7、右下はDay14を示す。
図10は、サル水疱性角膜症モデルにおいてデスメ膜剥離を行い、ラミニン511−E8フラグメントを併用して培養角膜内皮細胞を移植した後の前眼部写真を示す。カニクイザルの角膜内皮細胞を機械的に掻爬したモデルにおいて、デスメ膜を剥離した後に、培養したカニクイザル角膜内皮細胞を前房内に注入してうつむき姿勢を3時間取らせた。左上はDay1、右上はDay3、左下はDay7、右下はDay14を示す。
図11は、ラミニン511−E8フラグメントを併用したサル水疱性角膜症モデルにおける培養角膜内皮移植後の角膜厚を示す。デスメ膜剥離を行った個体と行わなかった個体の角膜厚(μm)を示す。横軸は処置後の日数である。横軸は移植後の日数を示し、縦軸は角膜厚(μm)を示す。実践はデスメ膜剥離がない例を示し、破線は、デスメ膜剥離を行った個体を示す。黒丸および三角は個体の相違を示す。デスメ膜剥離を行った例では、2個体ともに角膜厚の菲薄化を認めなかった。
図12は、サル水疱性角膜症モデルにおいてデスメ膜剥離を行い、前房内にラミニン511−E8フラグメントフラグメントを21nMの濃度で注入し1時間おくことで生体内でデスメ膜の剥離により露出した角膜実質をコーティングした。その後、ラミニン511−E8フラグメントを併用して培養角膜内皮細胞を移植した後の前眼部写真を示す。左上はDay 1、右上はDay 3、左下はDay 7、右下はDay14を示す。
図13は、インテグリンの角膜内皮細胞の細胞接着への影響を示す。ラミニン511-E8フラグメントを最終濃度2.1nMとなるように添加して角膜内細胞を播種した。その際、左端から順にマウスIgG、抗インテグリンα3抗体、抗インテグリンα6抗体、抗インテグリンα2抗体、抗インテグリンβ1抗体、抗インテグリンα3β1抗体、抗インテグリンα6β1抗体を添加して播種した場合の24時間後の接着細胞数(マウスIgGに対する割合を示す)を示す。なお、右端はコントロールとしてラミニン511-E8フラグメントを添加せずにマウスIgGのみを添加して播種したものを示す。
図14は、細胞接着関連タンパク質活性化はインテグリンを介していることを示す。左端はコントロールとしてラミニン511-E8フラグメント非添加の群、左から2番目以降はラミニン511-E8フラグメントを最終濃度2.1nMとなるように添加した群を用意した。左から2番目以降は順に、マウスIgG、抗インテグリンα3抗体、抗インテグリンα6抗体、抗インテグリンα2抗体、抗インテグリンβ1抗体、抗インテグリンα3β1抗体、抗インテグリンα6β1抗体を添加して播種した場合のウェスタンブロットの結果を示す。上段からp−FAK、FAK、p−パキシリンバックグラウンドのGAPDHを示す。各バンド数値はバンドの強度を数値化して左端のラミニン511-E8無しを1としたときの相対値を示す。

0009

以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。従って、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。

0010

(定義)
本明細書において「角膜内皮細胞」とは当該分野で用いられる通常の意味で用いられる。角膜とは、眼を構成する層状の組織の一つであり、透明であり、最も外界に近い部分に位置する。角膜は、ヒトでは外側(体表面)から順に5層でできているとされ、外側から角膜上皮ボーマン膜固有層、デスメ膜(角膜内皮基底膜)、および角膜内皮で構成される。特に、特定しない限り、上皮および内皮以外の部分は「角膜実質」とまとめて称することがあり、本明細書でもそのように称する。本明細書において「HCEC」(human corneal endothelial cells)とは、ヒト角膜内皮細胞の略称であり、ウサギのものは「RCEC」、サルのものは「MCEC」とも略称する。本発明で使用される角膜内皮細胞は、天然に存在する細胞のほか、幹細胞から分化した細胞、例えばiPS等からの誘導分化細胞を用いることができることが理解される。

0011

本明細書において「単離された」とは、通常の環境において天然に付随する物質が少なくとも低減されていること、好ましくは実質的に含まないことをいう。従って、単離された細胞、組織などとは、天然の環境において付随する他の物質(たとえば、他の細胞、タンパク質、核酸など)を実質的に含まない細胞、組織などをいう。

0012

<ラミニン>
本明細書において「ラミニン」とは細胞外マトリックスの基底膜を構成するタンパク質であり、多細胞体制・組織構築とその維持、細胞接着、細胞移動細胞増殖を促進し、がん細胞と関係が深い。胚発生初期(2細胞期)に発現するとされる。α鎖β鎖およびγ鎖のそれぞれ1本ずつからなるヘテロ三量体である。ラミニンの命名は、発見順の名称(ラミニン−1、ラミニン−2等)が知られていたが、サブユニットとの対応は考慮されていないため本明細書では、より新たな命名法である、α、β、γのサブクラスの名称(3桁の番号、百の位はα、十の位はβ、一の位はγを示す。)を併記する方法を採用し、α1、β1およびγ1の場合、ラミニン111などと称する。ラミニンはα鎖が5種、β鎖が3種,γ鎖が3種、見出だされている。従って、理論的な組み合わせの最大数は、5×3×3=45で、45種類のラミニン分子が可能であるが、天然にすべての組み合わせが存在しているわけではないとされている。各サブユニットは、例えばα鎖についてはLAMA1、LAMA2、LAMA3、LAMA4、LAMA5等と称し、β鎖についてはLAMB1、LAMB2、LAMB3と称し、γ鎖についてはLAMC1、LAMC2、LAMC3と称される。本発明で使用されるラミニンタンパク質は天然型であっても、あるいはその生物学的活性、特に細胞接着促進活性を保持したまま1またはそれ以上のアミノ酸残基が修飾された修飾型であってもよい。また、本発明におけるラミニンタンパク質は本明細書に記載した特徴を有する限り、その起源製法などは限定されない。したがって、本発明で使用されるラミニンタンパク質は、天然産のタンパク質、遺伝子工学的手法により組換えDNAから発現させたタンパク質、あるいは化学合成タンパク質の何れでもよい。本発明で使用されるラミニンタンパク質の由来は特に、限定されないが、好ましくは、ヒト由来のものである。医療材料を得る目的などでヒト細胞を培養する場合には、他の動物に由来する材料の使用を避けるために、ヒト由来のラミニンを用いることが好ましいがこれに限定されない。

0013

ラミニンの結合分子も知られており、α1β1、α2β1、α2β2、α3β1、α6β1、α6β4、α7β1、α9β1、αvβ3、αvβ5、αvβ8がラミニンレセプターとして知られるインテグリンである。

0014

以下の表に代表的なラミニンおよびその説明を記載する。

0015

0016

本明細書において「α1鎖」(LAMA1)とは、細胞外マトリックスにある細胞接着分子のタンパク質・ラミニンのサブユニットの1つであり、LAMA1;LAMA;S−LAM−alphaなどと称する。ヒトLAMA1は、それぞれ遺伝子およびタンパク質の配列がNCBI登録番号のNM_005559およびNP_005550に登録されている。OMIMは150320とのアクセッション番号で同定される。本明細書の目的で使用される場合は、「α1鎖」、「LAMA1」は、特定の配列番号またはアクセッション番号に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質(あるいはそれをコードする核酸)のみならず、機能的に活性なその誘導体、または機能的に活性なそのフラグメント、またはその相同体、または高ストリンジェンシー条件または低ストリンジェンシー条件下で、このタンパク質をコードする核酸にハイブリダイズする核酸にコードされる変異体もまた、意味することが理解される。

0017

本明細書において「α2鎖」(LAMA2)とは、細胞外マトリックスにある細胞接着分子のタンパク質・ラミニンのサブユニットの1つであり、LAMA2;LAMMなどと称する。ヒトLAMA2は、それぞれ遺伝子およびタンパク質の配列がNCBI登録番号のNM_000426およびNP_000417に登録されている。OMIMは156225とのアクセッション番号で同定される。本明細書の目的で使用される場合は、「α2鎖」、「LAMA2」は、特定の配列番号またはアクセッション番号に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質(あるいはそれをコードする核酸)のみならず、機能的に活性なその誘導体、または機能的に活性なそのフラグメント、またはその相同体、または高ストリンジェンシー条件または低ストリンジェンシー条件下で、このタンパク質をコードする核酸にハイブリダイズする核酸にコードされる変異体もまた、意味することが理解される。

0018

本明細書において「α3鎖」(LAMA3)とは、細胞外マトリックスにある細胞接着分子のタンパク質・ラミニンのサブユニットの1つであり、LAMA3;BM600;E170;LAMNA;LOCS;lama3aなどと称する。ヒトLAMA3は、それぞれ遺伝子およびタンパク質の配列がNCBI登録番号のNM_000227およびNP_000218に登録されている。OMIMは600805とのアクセッション番号で同定される。本明細書の目的で使用される場合は、「α3鎖」、「LAMA3」は、特定の配列番号またはアクセッション番号に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質(あるいはそれをコードする核酸)のみならず、機能的に活性なその誘導体、または機能的に活性なそのフラグメント、またはその相同体、または高ストリンジェンシー条件または低ストリンジェンシー条件下で、このタンパク質をコードする核酸にハイブリダイズする核酸にコードされる変異体もまた、意味することが理解される。

0019

本明細書において「α4鎖」(LAMA4)とは、細胞外マトリックスにある細胞接着分子のタンパク質・ラミニンのサブユニットの1つであり、LAMA4;LAMA3;LAMA4*−1;CMD1JJなどと称する。ヒトLAMA4は、それぞれ遺伝子およびタンパク質の配列がNCBI登録番号のNM_001105206およびNP_001098676に登録されている。OMIMは600133とのアクセッション番号で同定される。本明細書の目的で使用される場合は、「α4鎖」、「LAMA4」は、特定の配列番号またはアクセッション番号に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質(あるいはそれをコードする核酸)のみならず、機能的に活性なその誘導体、または機能的に活性なそのフラグメント、またはその相同体、または高ストリンジェンシー条件または低ストリンジェンシー条件下で、このタンパク質をコードする核酸にハイブリダイズする核酸にコードされる変異体もまた、意味することが理解される。

0020

本明細書において「α5鎖」(LAMA5)とは、細胞外マトリックスにある細胞接着分子のタンパク質・ラミニンのサブユニットの1つであり、LAMA5;KIAA1907などと称する。ヒトLAMA5は、それぞれ遺伝子およびタンパク質の配列がNCBI登録番号のNM_005560およびNP_005551に登録されている。OMIMは601033とのアクセッション番号で同定される。本明細書の目的で使用される場合は、「α5鎖」、「LAMA5」は、特定の配列番号またはアクセッション番号に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質(あるいはそれをコードする核酸)のみならず、機能的に活性なその誘導体、または機能的に活性なそのフラグメント、またはその相同体、または高ストリンジェンシー条件または低ストリンジェンシー条件下で、このタンパク質をコードする核酸にハイブリダイズする核酸にコードされる変異体もまた、意味することが理解される。

0021

本明細書において「β1鎖」(LAMB1)とは、細胞外マトリックスにある細胞接着分子のタンパク質・ラミニンのサブユニットの1つであり、LAMB1;CLM;LIS5などと称する。ヒトLAMB1は、それぞれ遺伝子およびタンパク質の配列がNCBI登録番号のNM_002291およびNP_002282に登録されている。OMIMは150240 とのアクセッション番号で同定される。本明細書の目的で使用される場合は、「β1鎖」、「LAMB1」は、特定の配列番号またはアクセッション番号に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質(あるいはそれをコードする核酸)のみならず、機能的に活性なその誘導体、または機能的に活性なそのフラグメント、またはその相同体、または高ストリンジェンシー条件または低ストリンジェンシー条件下で、このタンパク質をコードする核酸にハイブリダイズする核酸にコードされる変異体もまた、意味することが理解される。

0022

本明細書において「β2鎖」(LAMB2)(laminin S)とは、細胞外マトリックスにある細胞接着分子のタンパク質・ラミニンのサブユニットの1つであり、LAMB2;LAMS;NPHS5などと称する。ヒトLAMB2は、それぞれ遺伝子およびタンパク質の配列がNCBI登録番号のNM_002292およびNP_002283に登録されている。OMIMは150325とのアクセッション番号で同定される。本明細書の目的で使用される場合は、「β2鎖」、「LAMB2」は、特定の配列番号またはアクセッション番号に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質(あるいはそれをコードする核酸)のみならず、機能的に活性なその誘導体、または機能的に活性なそのフラグメント、またはその相同体、または高ストリンジェンシー条件または低ストリンジェンシー条件下で、このタンパク質をコードする核酸にハイブリダイズする核酸にコードされる変異体もまた、意味することが理解される。

0023

本明細書において「β3鎖」(LAMB3)とは、細胞外マトリックスにある細胞接着分子のタンパク質・ラミニンのサブユニットの1つであり、LAMB3;BM600−125KDA;LAM5;LAMNB1などと称する。ヒトLAMB3は、それぞれ遺伝子およびタンパク質の配列がNCBI登録番号のNM_000228およびNP_000219に登録されている。OMIMは150310とのアクセッション番号で同定される。本明細書の目的で使用される場合は、「β3鎖」、「LAMB3」は、特定の配列番号またはアクセッション番号に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質(あるいはそれをコードする核酸)のみならず、機能的に活性なその誘導体、または機能的に活性なそのフラグメント、またはその相同体、または高ストリンジェンシー条件または低ストリンジェンシー条件下で、このタンパク質をコードする核酸にハイブリダイズする核酸にコードされる変異体もまた、意味することが理解される。

0024

本明細書において「γ1鎖」(LAMC1)とは、細胞外マトリックスにある細胞接着分子のタンパク質・ラミニンのサブユニットの1つであり、LAMC1;LAMB2などと称する。ヒトLAMC1は、それぞれ遺伝子およびタンパク質の配列がNCBI登録番号のNM_002293およびNP_002284に登録されている。OMIMは150290 とのアクセッション番号で同定される。本明細書の目的で使用される場合は、「γ1鎖」、「LAMC1」は、特定の配列番号またはアクセッション番号に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質(あるいはそれをコードする核酸)のみならず、機能的に活性なその誘導体、または機能的に活性なそのフラグメント、またはその相同体、または高ストリンジェンシー条件または低ストリンジェンシー条件下で、このタンパク質をコードする核酸にハイブリダイズする核酸にコードされる変異体もまた、意味することが理解される。

0025

本明細書において「γ2鎖」(LAMC2)とは、細胞外マトリックスにある細胞接着分子のタンパク質・ラミニンのサブユニットの1つであり、LAMC2;B2T;BM600;CSFEBR2;EBR2A;LAMB2T;LAMNB2などと称する。ヒトLAMC2は、それぞれ遺伝子およびタンパク質の配列がNCBI登録番号のNM_005562およびNP_005553に登録されている。OMIMは150292 とのアクセッション番号で同定される。本明細書の目的で使用される場合は、「γ2鎖」、「LAMC2」は、特定の配列番号またはアクセッション番号に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質(あるいはそれをコードする核酸)のみならず、機能的に活性なその誘導体、または機能的に活性なそのフラグメント、またはその相同体、または高ストリンジェンシー条件または低ストリンジェンシー条件下で、このタンパク質をコードする核酸にハイブリダイズする核酸にコードされる変異体もまた、意味することが理解される。

0026

本明細書において「γ3鎖」(LAMC3)とは、細胞外マトリックスにある細胞接着分子のタンパク質・ラミニンのサブユニットの1つであり、LAMC3;OCCMなどと称する。ヒトLAMC3は、それぞれ遺伝子およびタンパク質の配列がNCBI登録番号のNM_006059およびNP_006050に登録されている。OMIMは604349 とのアクセッション番号で同定される。本明細書の目的で使用される場合は、「γ3鎖」、「LAMC3」は、特定の配列番号またはアクセッション番号に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質(あるいはそれをコードする核酸)のみならず、機能的に活性なその誘導体、または機能的に活性なそのフラグメント、またはその相同体、または高ストリンジェンシー条件または低ストリンジェンシー条件下で、このタンパク質をコードする核酸にハイブリダイズする核酸にコードされる変異体もまた、意味することが理解される。

0027

本明細書において「角膜内皮細胞において発現するラミニン」とは、角膜内皮細胞において通常状態において遺伝子が発現、好ましくはタンパク質レベルで、有意に発現しているラミニンの種類をいう。本明細書における解析により、α5、β1、β2およびγ1が発現していることが確認されている(国際公開2015/080297の図2)。したがって、ラミニン511、ラミニン521が角膜内皮細胞において発現していることが少なくとも確認されている。ラミニン511については、Dev.Dyn.218,213−234,2000、およびJ.Biol.Chem. 277(15),12741−12748,2002に詳細な記載があるので、これらの文献に記載された内容は、本明細書中に援用する。ラミニン511等は、市販されているものを利用することも可能である。例えば、BioLamina社からラミニン511、ラミニン521の組換えタンパク質が市販されており入手可能である。

0028

本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチドポリペプチドなどの「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一態様であり得る。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたもの(本明細書にいう誘導体)であり得る。例えば、ラミニン各鎖の発現レベルは、任意の方法によって決定することができる。具体的には、ラミニン各鎖のmRNAの量、ラミニン各鎖タンパク質の量、そしてラミニン各鎖タンパク質の生物学的な活性を評価することによって、ラミニン各鎖の発現レベルを知ることができる。ラミニン各鎖のmRNAやタンパク質の量は、本明細書に記載したような方法によって決定することができる。

0029

本明細書において「機能的等価物」とは、対象となるもとの実体に対して、目的となる機能が同じであるが構造が異なる任意のものをいう。従って、「ラミニンもしくはラミニン各鎖またはその機能的等価物」または「ラミニン、ラミニン各鎖およびその機能的等価物からなる群」という場合は、ラミニンもしくはラミニン各鎖自体のほか、ラミニンもしくはラミニン各鎖のフラグメント、変異体または改変体(例えば、アミノ酸配列改変体等)であって、眼細胞等の細胞接着能、分化制御および/または増殖促進作用を1つ以上有するもの、ならびに、作用する時点においてラミニンもしくはラミニン各鎖自体またはこのラミニンもしくはラミニン各鎖のフラグメント、変異体もしくは改変体に変化することができるもの(例えば、ラミニンもしくはラミニン各鎖自体またはラミニンもしくはラミニン各鎖のフラグメント、変異体もしくは改変体をコードする核酸、およびその核酸を含むベクター、細胞等を含む)が包含されることが理解される。「ラミニンもしくはラミニン各鎖またはその機能的等価物」または「ラミニン、ラミニン各鎖およびその機能的等価物からなる群」としては、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子が代表例として挙げられる。本発明において、ラミニンもしくはラミニン各鎖の機能的等価物は、格別に言及していなくても、ラミニンもしくはラミニン各鎖と同様に用いられうることが理解される。

0030

本明細書において「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長を有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、このようなラミニンの鎖は、その活性、例えば、増殖促進または維持の因子として機能する場合、そのフラグメント自体も本発明の範囲内に入ることが理解される。本発明に従って、用語「活性」は、本明細書において、最も広い意味での分子の機能を指す。活性は、限定を意図するものではないが、概して、分子の生物学的機能生化学的機能、物理的機能または化学的機能を含む。活性は、例えば、酵素活性、他の分子と相互作用する能力、および他の分子の機能を活性化するか、促進するか、安定化するか、阻害するか、抑制するか、または不安定化する能力、安定性、特定の細胞内位置に局在する能力を含む。適用可能な場合、この用語はまた、最も広い意味でのタンパク質複合体の機能にも関する。本明細書において「生物学的機能」とは、ある遺伝子またはそれに関する核酸分子もしくはポリペプチドについて言及するとき、その遺伝子、核酸分子またはポリペプチドが生体内において有し得る特定の機能をいい、これには、例えば、特異的な抗体の生成、酵素活性、抵抗性の付与等を挙げることができるがそれらに限定されない。本明細書において、生物学的機能は、「生物学的活性」によって発揮され得る。本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質など)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転写促進活性)を発揮する活性が包含され、例えば、ある分子との相互作用によって別の分子が活性化または不活化される活性も包含される。2つの因子が相互作用する場合、その生物学的活性は、その二分子との間の結合およびそれによって生じる生物学的変化、例えば、一つの分子を抗体を用いて沈降させたときに他の分子も共沈するとき、2分子は結合していると考えられる。従って、そのような共沈を見ることが一つの判断手法として挙げられる。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる。従って、「活性」は、結合(直接的または間接的のいずれか)を示すかまたは明らかにするか;応答に影響する(すなわち、いくらか曝露または刺激に応答する測定可能な影響を有する)、種々の測定可能な指標をいい、例えば、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに直接結合する化合物の親和性、または例えば、いくつかの刺激後または事象後上流または下流のタンパク質の量あるいは他の類似の機能の尺度が挙げられる。

0031

本明細書で使用される「機能的に活性な」は、本発明のポリペプチド、フラグメントまたは誘導体が関連する態様に従って、生物学的活性などの、タンパク質の構造的機能、制御機能、または生化学的機能を有する、ポリペプチド、フラグメントまたは誘導体を指す。

0032

本明細書において、ラミニンの「フラグメント」とは、ラミニンの任意のフラグメントを指し、本発明において使用される因子としては、ラミニン全長のみならず、ラミニンのフラグメントも、その機能、特に内皮細胞の細胞接着能を有する限り使用されうることが理解される。したがって本発明において使用されるラミニンのフラグメントは、通常、ラミニンの機能を少なくとも1つ有する。そのような機能としては、特に内皮細胞の細胞接着能が含まれうる。

0033

以下に、本発明で角膜内皮細胞に発現していることが見出されたラミニンについて、その配列について説明する。これらのラミニンは、本発明の好ましい代表例を示すものであり、本発明は、これらの特定のラミニンサブタイプに限定されるものではないことが理解される。

0034

ラミニンα5鎖の代表的なヌクレオチド配列は、
(a)配列番号1に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有する改変体ポリペプチドまたはそのフラグメントであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体もしくは対立遺伝子変異体またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体またはそのフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであり得る。ここで、生物学的活性とは、代表的に、ラミニンα5鎖の有する活性をいう。α5鎖については、Doi M et al.,J.Biol.Chem. 277(15),12741−12748,2002;米国特許第6,933,273号を参照することができる。

0035

ラミニンα5鎖のアミノ酸配列としては、
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
であり得る。ここで、生物学的活性とは、代表的に、ラミニンα5鎖の有する活性をいう。α5鎖については、Doi M et al.,J.Biol.Chem. 277(15),12741−12748,2002;米国特許第6,933,273号を参照することができる。

0036

ラミニンβ1鎖の代表的なヌクレオチド配列は、
(a)配列番号3に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号4に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有する改変体ポリペプチドまたはそのフラグメントであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号3に記載の塩基配列のスプライス変異体もしくは対立遺伝子変異体またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体またはそのフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであり得る。ここで、生物学的活性とは、代表的に、ラミニンβ1鎖の有する活性をいう。β1鎖については、Pillarainen et al.,J.Biol.Chem.262(22),10454−10462,1987;米国特許第6,933,273号を参照することができる。

0037

ラミニンβ1鎖のアミノ酸配列としては、
(a)配列番号4に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号3に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号4に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
であり得る。ここで、生物学的活性とは、代表的に、ラミニンβ1鎖の有する活性をいう。β1鎖については、Pillarainen et al.,J.Biol.Chem.262(22),10454−10462,1987;米国特許第6,933,273号を参照することができる。

0038

ラミニンβ2鎖の代表的なヌクレオチド配列は、
(a)配列番号5に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号6に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有する改変体ポリペプチドまたはそのフラグメントであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号5に記載の塩基配列のスプライス変異体もしくは対立遺伝子変異体またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体またはそのフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであり得る。ここで、生物学的活性とは、代表的に、ラミニンβ2鎖の有する活性をいう。β2鎖については、Wewer UM et al.,Genomics. 1994 Nov 15;24(2):243−52.,1987;米国特許第6,933,273号を参照することができる。

0039

ラミニンβ2鎖のアミノ酸配列としては、
(a)配列番号6に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号6に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号5に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号6に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
であり得る。ここで、生物学的活性とは、代表的に、ラミニンβ2鎖の有する活性をいう。β2鎖については、Wewer UM et al.,Genomics. 1994 Nov 15;24(2):243−52.,1987;米国特許第6,933,273号を参照することができる。

0040

ラミニンγ1鎖の代表的なヌクレオチド配列は、
(a)配列番号7に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号8に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有する改変体ポリペプチドまたはそのフラグメントであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号7に記載の塩基配列のスプライス変異体もしくは対立遺伝子変異体またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体またはそのフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであり得る。ここで、生物学的活性とは、代表的に、ラミニンγ1鎖の有する活性をいう。γ1鎖については、Pillarainen et al.,J.Biol.Chem.263(14),6751−6758,1988;米国特許第6,933,273号を参照することができる。

0041

ラミニンγ1鎖のアミノ酸配列としては、
(a)配列番号8に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号8に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号7に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号8に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、

であり得る。ここで、生物学的活性とは、代表的に、ラミニンγ1鎖の有する活性をいう。γ1鎖については、Pillarainen et al.,J.Biol.Chem.263(14),6751−6758,1988;米国特許第6,933,273号を参照することができる。

0042

本明細書において「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、交換可能で本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成グリコシル化、脂質化、アセチル化リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)が包含される。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。本発明のタンパク質(例えばラミニン各鎖)は、目的とする各鎖遺伝子をコードするDNAを、適当なベクター中に組み込み、これを真核生物または原核生物細胞のいずれかに、各々の宿主で発現可能な発現ベクターを用いて導入し、それぞれの鎖を発現させることにより所望のタンパク質を得ることができる。ラミニンを発現させるために用いることができる宿主細胞は特に限定されるものではなく、大腸菌枯草菌等の原核宿主細胞、および酵母真菌昆虫細胞、植物および植物細胞哺乳動物細胞等の真核生物宿主が挙げられる。目的とするラミニン鎖等を発現するように構築したベクターを、トランスフォーメーショントランスフェクションコンジュゲーションプロトプラスト融合エレクトロポレーション粒子技術、リン酸カルシウム沈殿アグロバクテリウム法、直接マイクロインジェクション等により、上記の宿主細胞中に導入することができる。ベクターを含む細胞を適当な培地中で成長させて、本発明で使用するラミニン鎖等を産生させ、細胞または培地から精製することにより、ラミニン鎖等を得ることができる。精製はサイズ排除クロマトグラフィーHPLCイオン交換クロマトグラフィー、および免疫アフィニティークロマトグラフィー等を用いて行うことができる。

0043

本明細書において、「アミノ酸」は、本発明の目的を満たす限り、天然のものでも非天然のものでもよい。

0044

本明細書において「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、交換可能で本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」を含む。「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチルリボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合ホスホロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体およびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体などが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作製することにより達成され得る(Batzer et al., Nucleic Acid Res.19:5081(1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608(1985); Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98(1994))。本明細書において「核酸」はまた、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換可能に使用される。本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。

0045

本明細書において「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定する遺伝子を構造遺伝子といい、その発現を左右する遺伝子を調節遺伝子という。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」をさすことがある。

0046

アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。同一性の検索は例えば、NCBIのBLAST 2.2.26(2011.10.30発行)を用いて行うことができる。本明細書における同一性の値は通常は上記BLASTを用い、デフォルトの条件でアラインした際の値をいう。ただし、パラメーターの変更により、より高い値が出る場合は、最も高い値を同一性の値とする。複数の領域で同一性が評価される場合はそのうちの最も高い値を同一性の値とする。類似性は、同一性に加え、類似のアミノ酸についても計算に入れた数値である。

0047

本明細書において「ストリンジェント(な)条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明で使用されるラミニンは、具体的に開示された各ラミニンの核酸配列に対して「ストリンジェント(な)条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」によってコードされるものも使用されうることが理解される。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1-38, DNA Cloning 1:Core Techniques, A Practical Approach, Second Edition, Oxford University Press(1995)などの実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。従って、本発明において使用されるポリペプチド(例えば、ラミニンなど)には、本発明で特に記載されたポリペプチドをコードする核酸分子に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドも包含される。これらの低ストリンジェンシー条件は、35%ホルムアミド、5×SSC、50mM Tris−HCl(pH7.5)、5mMEDTA、0.02%PVP、0.02%BSA、100μg/ml変性サケ精子DNA、および10%(重量/体積デキストラン硫酸を含む緩衝液中、40℃で18〜20時間ハイブリダイゼーションし、2xSSC、25mM Tris−HCl(pH7.4)、5mM EDTA、および0.1%SDSからなる緩衝液中、55℃で1〜5時間洗浄し、そして2×SSC、25mM Tris−HCl(pH7.4)、5mM EDTA、および0.1%SDSからなる緩衝液中、60℃で1.5時間洗浄することを含む。

0048

本発明の機能的等価物としては、アミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸の挿入、置換もしくは欠失、またはその一方もしくは両末端への付加されたものを用いることができる。本明細書において、「アミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸の挿入、置換もしくは欠失、またはその一方もしくは両末端への付加」とは、部位特異的変異誘発法等の周知の技術的方法により、あるいは天然の変異により、天然に生じ得る程度の複数個の数のアミノ酸の置換等により改変がなされていることを意味する。

0049

本発明で用いられるラミニン各鎖等の改変アミノ酸配列は、例えば約1〜30個、好ましくは約1〜20個、より好ましくは約1〜9個、さらに好ましくは約1〜5個、特に好ましくは約1〜2個のアミノ酸の挿入、置換、もしくは欠失、またはその一方もしくは両末端への付加がなされたものであることができる。改変アミノ酸配列は、好ましくは、そのアミノ酸配列が、ラミニン各鎖等のアミノ酸配列において1または複数個(好ましくは1もしくは数個または1、2、3、もしくは4個)の保存的置換を有するアミノ酸配列であってもよい。ここで「保存的置換」とは、タンパク質の機能を実質的に改変しないように、1または複数個のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似のアミノ酸は、アミノ酸毎に当該分野において公知である。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニンバリンイソロイシンロイシンプロリントリプトファンフェニルアラニンメチオニンなどが挙げられる。極性中性)アミノ酸としては、グリシンセリンスレオニンチロシングルタミンアスパラギンシステインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニンヒスチジンリジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸グルタミン酸などが挙げられる。

0050

本明細書において「薬剤」、「剤」または「因子」(いずれも英語ではagentに相当する)は、広義には、交換可能に使用され、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、光、放射能、熱、電気などのエネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリドオリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリヌクレオチドの配列に対して一定の配列相同性を(例えば、70%以上の配列同一性)もって相補性を有するポリヌクレオチド、プロモーター領域に結合する転写因子のようなポリペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。ポリペプチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリペプチドに対して特異的に指向された抗体またはその誘導体あるいはその類似物(例えば、単鎖抗体)、そのポリペプチドがレセプターまたはリガンドである場合の特異的なリガンドまたはレセプター、そのポリペプチドが酵素である場合、その基質などが挙げられるがそれらに限定されない。

0051

本明細書において細胞の「正常細胞機能」とは、角膜内皮細胞等の具体的細胞について言う場合、その細胞が本来有している機能をいう。角膜内皮細胞についていえば、そのような機能としては、ZO−1およびNa+/K+−ATPase、角膜移植への適応能(Matsubara M, Tanishima T: Wound-healing of the corneal endothelium in the monkey: a morphometric study, Jpn J Ophthalmol 1982, 26:264-273;Matsubara M, Tanishima T: Wound-healing of corneal endothelium in monkey: an autoradiographic study, Jpn J Ophthalmol 1983, 27:444-450;Van Horn DL, Hyndiuk RA: Endothelial wound repair in primate cornea, Exp Eye Res 1975, 21:113-124およびVan Horn DL, SendeleDD, Seideman S, Buco PJ: Regenerative capacity of the corneal endothelium in rabbit and cat, Invest Ophthalmol Vis Sci 1977, 16:597-613)等が挙げられるがそれらに限定されない。

0052

ZO−1およびNa+/K+−ATPaseは、遺伝子の発現を免疫的な手段またはRTPCR等の核酸レベルでの発現をみることによって評価することができる。Na+/K+−ATPaseおよびZO−1が正常細胞と同程度に発現および/または機能していることを確認することによって、対象の細胞が正常の機能を有しているかどうかを確認することができる。

0053

角膜移植への適応能は、通常ウサギ等の実験動物においても水疱性角膜症モデルとして角膜内皮を機械的に掻爬して、培養細胞の移植試験を行うことができる。しかしながら、ウサギの角膜内皮細胞は生体内で増殖するため、ホストの角膜内皮細胞の増殖による自然治癒の可能性を否定できない(Matsubara M, et al., Jpn J Ophthalmol 1982, 26:264-273;Matsubara M,et al., Jpn J Ophthalmol 1983, 27:444-450;Van Horn DL, et al., Exp Eye Res 1975, 21:113-124およびVan Horn DL, et al., Invest Ophthalmol Vis Sci 1977,16:597-613)。したがって、より正確な移植適応能を評価するためには、霊長類への生着を評価することが好ましい。ヒトへの移植適応能を評価する場合は、霊長類であるカニクイザルなどにおいて、例えば、少なくとも1ヶ月、好ましくは少なくとも2ヶ月、より好ましくは少なくとも3ヶ月、さらに好ましくは少なくとも6ヶ月、さらにより好ましくは少なくとも12ヶ月経過させた後の適応性を評価する。サル等の霊長類での移植適応能を確認することは特にヒトへの適用において重要である。

0054

(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J. et al.(1989).Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001); Ausubel, F. M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Ausubel, F. M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methodsfrom Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Innis, M. A. (1990).PCRProtocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press; Ausubel, F. M. (1992).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Ausubel, F. M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Innis, M. A. et al.(1995). PCR Strategies, Academic Press; Ausubel, F. M. (1999). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Wiley, and annual updates; Sninsky, J. J. et al.(1999).PCR Applications: Protocols for Functional Genomics, Academic Press, Gait, M. J. (1985). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Gait, M. J. (1990). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Eckstein, F.(1991). Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, IRL Press; Adams, R. L. et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids, Chapman & Hall; Shabarova, Z. et al.(1994). Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids, Weinheim; Blackburn, G. M. et al.(1996). Nucleic Acids in Chemistry and Biology, Oxford University Press; Hermanson, G. T. (I996). Bioconjugate Techniques, Academic Press、別冊実験医学遺伝子導入発現解析実験法土社、1997などに記載されている。角膜内皮細胞については、Nancy Joyceらの報告{Joyce, 2004 #161} {Joyce, 2003 #7}がよく知られているが、前述のごとく長期培養継代培養より線維芽細胞様の形質転換を生じるため、効率的な培養法の研究が現在も行われている。これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。

0055

(好ましい実施形態の説明)
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であり、本発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべきである。当業者はまた、以下のような好ましい実施例を参考にして、本発明の範囲内にある改変、変更などを容易に行うことができることが理解されるべきである。また、任意の実施形態が組み合わせ得ることも理解されるべきである。

0056

<治療または予防>
1つの局面において、本発明は、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子を含む、角膜内皮等の角膜の疾患、障害または状態の治療または予防剤を提供する。この局面において、本発明はまた、角膜内皮疾患、障害または状態の治療または予防のために使用するための、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子を提供する。あるいは、この局面において、本発明は、角膜内皮疾患、障害または状態の治療または予防するための方法であって、該方法は、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子の有効量を該治療または予防を必要とする被験体に投与する工程を包含する、方法を提供する。この局面において、角膜についていえば、角膜内皮のほか、上皮等でも、同様に治療または予防効果が奏され得ることが理解される。

0057

特定の実施形態において、本発明は、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子を含む、角膜内皮疾患、障害または状態の治療または予防剤を提供する。

0058

1つの実施形態では、本発明で使用される因子またはラミニンは、RGD配列を含む。理論に拘束されることを望まないが、RGD配列は細胞接着と関連するとされており、ラミニンのうちでも細胞接着能が顕著なものを用いることにより、角膜内皮の疾患、障害または状態を治療または予防することができ、あるいはそれらを改善することができると理解される。

0059

別の実施形態では、本発明で使用される因子またはラミニンは、α5鎖を含む。理論に拘束されることを望まないが、実施例等で示される結果から、α5鎖を含むラミニン種が角膜内皮の疾患、障害または状態を治療または予防することができ、あるいはそれらを改善することが実証されており、α5鎖さえあれば、β鎖またはγ鎖については一定程度フレキシビリティーがあると考えられるからである。

0060

別の実施形態では、本発明で使用される因子またはラミニンは、γ1鎖を含む。理論に拘束されることを望まないが、実施例等で示される結果から、γ1鎖を含むラミニン種が角膜内皮の疾患、障害または状態を治療または予防することができ、あるいはそれらを改善することが実証されており、γ1鎖さえあれば、α鎖またはβ鎖については一定程度フレキシビリティーがあると考えられるからである。

0061

さらに別の実施形態では、本発明で使用される因子またはラミニンは、α5鎖および/またはγ1鎖を含む。理論に拘束されることを望まないが、実施例等で示される結果から、α5鎖および/またはγ1鎖を含むラミニン種が角膜内皮を治療または予防することができ、あるいはそれらを改善することが実証されており、ラミニン511およびラミニン521が効果が実証されていることから、α5鎖および/またはγ1鎖が確定すれば、βについては一定程度フレキシビリティーがあることが示されているからである。

0062

1つの好ましい実施形態では、前記ラミニンは、ラミニン511およびラミニン521を含む。したがって、この実施形態では、本発明の因子は、ラミニン511、ラミニン521またはそれらのフラグメントでありうる。本発明のラミニン511のフラグメントまたはラミニン521のフラグメントは、角膜内皮の疾患、障害または状態を治療または予防することができ、あるいはそれらを改善することができる限り、どのようなフラグメントを用いてもよい。このようなフラグメントとしては、ラミニン511−E8フラグメントおよびラミニン521−フラグメント(それぞれ、配列番号9、10(核酸配列、アミノ酸配列)および配列番号11、12(核酸配列、アミノ酸配列))(Taniguchi Y, Ido H, Sanzen N, Hayashi M, Sato-Nishiuchi R, Futaki S, Sekiguchi K. The C-terminal region of laminin beta chains modulates the integrin binding affinities of laminins. J Biol Chem. 284:7820-7831, 2009、参照。ニッピ株式会社から入手可能)が挙げられるがそれに限定されない。ラミニン511−E8フラグメントおよびラミニン521−フラグメントは、エラスターゼ処理により得られるフラグメントの一つで、ヘテロ量体のcoiled−coilドメインの一部とα鎖C末端領域にある3個のLGドメイン(LG1〜LG3)からなる。E8フラグメントは、ラミニンのα鎖、β鎖、γ鎖が互いにcoiled−coilドメインを介して会合したヘテロ3量体分子のインテグリン結合部位に該当するとされている。したがって、好ましいフラグメントとしては、ラミニン全長において、インテグリン結合部位が実質的に保持されたものを使用することができる。このようなフラグメントは、ラミニン511−E8フラグメント、ラミニン521−フラグメントの情報を元に、適宜改変して作製することができることが理解される。

0063

ここで、ヒトラミニンα5β1γ1のE8フラグメント(本明細書において「ヒトラミニン511−E8」ともいう。)は、マウスラミニンα1β1γ1のE8フラグメント(本明細書において「マウスラミニン111−E8」ともいう。)に相当するヒトラミニンα5β1γ1(本明細書において「ヒトラミニン511」ともいう)のフラグメントを意味する。本明細書中では、用語「ラミニン511−E8フラグメント」は、「Laminin511−E8フラグメント」「Laminin511 E8」「Laminin511−E8」とも表記される。ラミニンのE8フラグメントは、マウスラミニンα1β1γ1(以下、「マウスラミニン111」と記す。)をエラスターゼ消化して得られたフラグメントの中で、強い細胞接着活性をもつフラグメントとして同定されたものである(Edgar D., Timpl R., Thoenen H. The heparin-binding domain of lamininis responsible for its effects on neurite outgrowth and neuronal survival.EMBOJ., 3:1463-1468, 1984.、Goodman SL., Deutzmann R., von der Mark K. Two distinct cell-binding domains in laminin can independently promote nonneuronal cell adhesion and spreading. J. Cell Biol., 105:589-598, 1987.)。ヒトラミニン511およびヒトラミニン332についてもエラスターゼで消化した際にマウスラミニン111−E8フラグメントに相当するフラグメントの存在が推定されている。本発明に用いられるヒトラミニン511−E8フラグメントは、ヒトラミニン511のエラスターゼ消化産物であることを要するものではなく、マウスラミニン111−E8フラグメントと同様の細胞接着活性を有し、同様の構造を有し、同程度の分子量を有するヒトラミニン511のフラグメントであればよい。ヒトラミニン511−E8フラグメントの製造方法は特に限定されず、例えば、全長のヒトラミニン511をエラスターゼ等のタンパク質分解酵素で消化し、目的のフラグメントを分取、精製する方法や、組換えタンパク質として製造する方法などが挙げられる。製造量品質均一性製造コスト等の観点から、組換えタンパク質として製造することが好ましい。組換えヒトラミニン511−E8フラグメントは、公知の遺伝子組換え技術を適宜用いることにより製造することができる。組換えヒトラミニン511−E8フラグメントの製造方法としては、例えば、ヒトラミニン511−E8フラグメントのα鎖、β鎖およびγ鎖の各タンパク質をコードするDNAをそれぞれ取得し、これをそれぞれ発現ベクターに挿入し、得られた3種類の発現ベクターを適切な宿主細胞に共導入して発現させ、3量体を形成しているタンパク質を公知の方法で精製することにより製造できる(例えば、Hiroyuki Ido, et al, “The requirement of the glutamic acid residue at the third position from the carboxyl termini of the laminin γ chains in integrin binding by laminins” The Journal of Biological Chemistry, 282, 11144-11154, 2007.参照)。具体的な作製方法としては、特願2011-78370を参照することができる。同様のフラグメントは、ヒトラミニン521を用いても作製することができる。これは、ラミニン521−E8フラグメントと称され、ラミニン511−E8フラグメントと同様に作製することができ、ラミニン511−E8フラグメントと同様の活性を保持することが理解される。本発明では、同様に、α5鎖および/またはγ1鎖を含む任意のラミニンについて、同様に、E8フラグメントを製造することができることが理解され、そのようなE8フラグメントは、本発明において全長のものと同様に使用することができることが理解される。

0064

1つの好ましい実施形態では、前記ラミニンは、ラミニン511(α5β1γ1)およびラミニン521(α5β2γ1)を含み、あるいは、前記因子は、ラミニン511、ラミニン521、ラミニン511−E8フラグメントまたはラミニン521−E8フラグメントである。

0065

別の実施形態では、本発明において使用される前記フラグメントは、角膜の細胞(例えば、角膜内皮細胞)の細胞接着能を有する。

0066

1つの実施形態では、使用される因子(例えば、ラミニンまたはそのフラグメント)の濃度は、治療または予防効果がある限りどのような濃度でもよく(有効濃度ともいい、治療の場合治療有効濃度、予防の場合予防有効濃度ともいう。)、例えば、約0.1nM以上、約0.2nM以上、約0.3nM以上、約0.4nM以上、約0.5nM以上、約0.6nM以上、約0.7nM以上、約0.8nM以上、約0.9nM以上、約1nM以上、約2nM以上、約2.1nM以上、約3nM以上、約4nM以上、約5nM以上、約6nM以上、約7nM以上、約8nM以上、約9nM以上、約10nM以上、約15nM以上、約20nM以上、約21nM以上、約25nM以上、約30nM以上、約40nM以上、約50nM以上、約60nM以上、約70nM以上、約80nM以上、約90nM以上、約100nM以上等を挙げることができるがこれらに限定されない。

0067

1つの実施形態では、本発明が対象とする部位は、角膜内皮を含む。したがって、本発明が対象とする疾患、障害または状態としては、本発明が対象とする角膜内皮疾患、障害または状態を含むが、これらに限定されない。

0068

1つの実施形態では、前記眼科の部位は霊長類のものであり、別の実施形態では前記眼科の部位はヒトのものである。

0069

1つの実施形態では、前記眼の細胞は霊長類のものであり、別の実施形態では前記眼の細胞はヒトのものである。

0070

1つの実施形態では、前記角膜内皮は霊長類のものであり、別の実施形態では前記角膜内皮はヒトのものである。

0071

1つの実施形態では、前記角膜内皮の細胞は霊長類のものであり、別の実施形態では前記角膜内皮の細胞はヒトのものである。理論に束縛されることを望まないが、本明細書の実施例では、角膜内皮をモデルとしてラミニンでの治療ないし予防効果が、ウサギのみならず霊長類でも実証されていることから、任意の哺乳動物において同様の治療ないし予防効果が奏されると当業者には理解される。

0072

本発明が対象とする角膜内皮疾患、障害または状態としては、角膜内皮の移植が必要な疾患、例えば水疱性角膜症、角膜浮腫角膜白斑、特に、角膜ジストロフィ、外傷または内眼手術に起因する角膜内皮障害によって生じる水疱性角膜症の治療における移植片として用いることができる。このような水疱性角膜症、角膜内皮障害などの原因としては、手術のほかフックス角膜内皮ジストロフィ、外傷、偽落屑症候群、角膜内皮炎等を挙げることができる。

0073

別の実施形態では、前記角膜内皮疾患、障害または状態としては、羞明、霧視、視力障害、眼痛、流涙、充血、疼痛、水疱性角膜症、眼の不快感、コントラスト低下、グレア、角膜実質の浮腫、水疱性角膜症、および角膜混濁等を挙げることができる。

0074

本発明の角膜内皮の疾患、障害または状態の治療または予防の対象は、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラットハムスター、ウサギ、ネコイヌウシヒツジ、サル等)があげられ、好ましくは霊長類(例えば、ヒト)である。

0075

1つの実施形態では、本発明が対象とする角膜内皮は、角膜内皮層、デスメ膜、またはその両方を含む。

0076

好ましい実施形態では、本発明が対象とする角膜内皮は、デスメ膜を含む。あるいは、本発明が対象とする角膜内皮は、デスメ膜が剥離された状態の角膜内皮を含む。本発明の技術では、従来完治が難しかったデスメ膜を剥離した状態をも治療し得ることができることが見出されており、その点においては質的な改善がみられるともいえる。

0077

併用療法
別の局面において、本発明は、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子と、角膜内皮細胞とを用いる、角膜内皮の疾患、障害または状態の治療または予防剤を提供する。ここで、本発明の因子と角膜内皮細胞とは、混合物として用いてもよく、別々に投与されてもよい。したがって、この局面において、本発明は、角膜内皮疾患、障害または状態の治療または予防するための方法であって、該方法は、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子の有効量を該治療または予防を必要とする被験体に投与する工程、ならびに角膜内皮細胞および/またはROCK阻害剤を前記被験体に投与する工程を包含する、方法を提供する。この局面の本発明の方法において用いられる因子(ラミニン、そのフラグメント等)、角膜内皮細胞、ROCK阻害剤等は、本明細書において説明される任意の形態を用いることができることが理解される。

0078

理論に拘束されることを望まないが、角膜内皮細胞と、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子とを治療自体に用いることによって、実施例において実証されるように、白濁していた角膜が透明化し、角膜厚が菲薄化し、機能を示すマーカーも正常に戻っており、さらに、従来にないほどの治療成績が達成された。また、治療に係る期間についても2,3日で効果が顕著に表れ、1週間でほぼ完治している例があるなど、その期間についても顕著に短いことが特徴として挙げられる。

0079

別の局面において、本発明は、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子と、ROCK阻害剤(この用語は、「Rhoキナーゼ阻害剤」と同義である。)とを用いる、角膜内皮の疾患、障害または状態の治療または予防剤を提供する。ここで、本発明の因子とROCK阻害剤とは、混合物として用いてもよく、別々に投与されてもよい。本発明の方法において用いられる因子(ラミニン、そのフラグメント等)は、本明細書において説明される任意の形態を用いることができることが理解される。

0080

本発明において、「Rhoキナーゼ」とは、Rhoの活性化に伴い活性化されるセリン/スレオニンキナーゼを意味する。例えば、ROKα(ROCK−II:Leung, T. et al., J.Biol.Chem., 270, 29051-29054, 1995)、p160ROCK(ROKβ、ROCK−I:Ishizaki, T. et al., TheEMBO J., 15(8), 1885-1893, 1996)およびその他のセリン/スレオニンキナーゼ活性を有するタンパク質が挙げられる。

0081

ROCK阻害剤としては、下記文献:米国特許4678783号、特許第3421217号、国際公開第95/28387、国際公開99/20620、国際公開99/61403、国際公開02/076976、国際公開02/076977、国際公開第2002/083175、国際公開02/100833、国際公開03/059913、国際公開03/062227、国際公開2004/009555、国際公開2004/022541、国際公開2004/108724、国際公開2005/003101、国際公開2005/039564、国際公開2005/034866、国際公開2005/037197、国際公開2005/037198、国際公開2005/035501、国際公開2005/035503、国際公開2005/035506、国際公開2005/080394、国際公開2005/103050、国際公開2006/057270、国際公開2007/026664などに開示された化合物があげられる。かかる化合物は、それぞれ開示された文献に記載の方法により製造することができる。具体例として、1−(5−イソキノリンスルホニルホモピペラジンまたはその塩(たとえば、ファスジル(1−(5−イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン))、(+)−トランス−4−(1−アミノエチル)−1−(4−ピリジルカルバモイルシクロヘキサン((R)−(+)−トランス−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド)またはその塩(たとえば、Y−27632((R)−(+)−トランス−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド2塩酸塩1水和物)など)などが挙げられ、これらの化合物は、市販品(和光純薬株式会社、旭化成ファーマ等)を好適に用いることもできる。

0082

好ましい実施形態では、本発明において使用されるROCK阻害剤(Rhoキナーゼ阻害剤)は、Y-27632((R)−(+)−トランス−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド2塩酸塩1水和物)等を挙げることができるがそれに限定されない。

0083

本発明で使用される「角膜内皮細胞」は、任意の角膜内皮細胞を用いることができ、単離したものでも培養したものであってもよい。角膜内皮細胞は、本発明者らが開発した手法で正常に培養する方法で培養したものであってもよいが、その他の手法で培養したものであってもよい。例えば、WO2013/100208に記載される手法によって培養したものを使用することができる。例えば、線維化抑制剤は、前記角膜内皮細胞の培養の間常に存在させ、他方、接着促進剤は、一定期間(例えば、24時間〜72時間、あるいは48時間等)存在させた後、いったん該接着促進剤を欠損させ、再度該細胞接着促進剤は、一定期間(例えば、24時間〜72時間、あるいは48時間等、この期間は毎回変動してもよく同じであってもよい)存在させることができる。あるいは、これらの培養法において、接着促進剤を使用しないパターンもあり得る。例えば、以下の3種類例示することができる。

0084

(培養法1)
初代培養および継代培養時には接着促進作用をもつROCK阻害剤であるY−27632(例えば、WAKO、カタログ番号:253−00513から入手可能)を最終濃度10μmol/lとして48時間添加する。

0085

(培養法2)
ROCK阻害剤であるY−27632を最終濃度10μmol/lとして培養中は常に添加する。

0086

(培養法3)
Y−27632を添加しないで基本培地としてSB431542(例えば、Merck Millipore,Billerica,MAから入手可能)(1μmol/l)およびSB203580(1μmol/l)を添加したもので培養する。

0087

使用される培地としては、従来販売され使用されている培地成分であってもよく、あるいは、別途角膜内皮用に開発された成分であってもよい。そのような培地成分の例としては、OptiMEM、DMEM,M199、MEM等(これらは、INVITROGEN等から入手可能)を挙げることができるがこれらに限定されない。典型的な例としては、ヒトはOpti−MEM I Reduced−Serum Medium, Liquid(INVITROGENカタログ番号:31985−070)+8%FBS(BIOWEST、カタログ番号:S1820−500)+200mg/ml CaCl2・2H2O(SIGMA カタログ番号:C7902−500G)+0.08%コンドロイチン硫酸(SIGMA カタログ番号:C9819−5G)+20μg/mlアスコルビン酸(SIGMA カタログ番号:A4544−25G)+50μg/mlゲンタマイシン(INVITROGEN カタログ番号:15710−064)+5ng/ml EGF(INVITROGEN カタログ番号:PHG0311)を3T3フィーダー細胞用の馴化させたものを基本培地としてSB431542(1μmol/l)およびSB203580(1μmol/l)を例示することができる。

0088

<1>角膜内皮細胞の採取および試験管内での培養
角膜内皮細胞はレシピエント自身または適切なドナーの角膜から常法で採取される。本発明における移植条件を考慮すれば、同種由来の角膜内皮細胞を準備すればよい。例えば、角膜組織のデスメ膜と内皮細胞層を角膜実質から剥離した後、培養皿に移し、ディスパーゼなどで処理する。これによって角膜内皮細胞はデスメ膜より脱落する。デスメ膜に残存している角膜内皮細胞はピペッティングなどによって脱落させることができる。デスメ膜を除去した後、適切な培養液(例えば、WO2013/100208に記載される)中で角膜内皮細胞を培養する。培地または培養液としては例えば市販のDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)(例えば、INVITROGEN、カタログ番号:12320等を)にFBS(ウシ胎仔血清)(例えば、BIOWEST、カタログ番号:S1820−500)、b−FGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)(例えば、INVITROGEN、カタログ番号:13256−029)、およびペニシリンストレプトマイシンなどの抗生物質を適宜添加し、さらにWO2013/100208に例示される培養正常化剤の成分を添加したものを使用することができる。本発明の因子をコーティングして培養を行うことで角膜内皮細胞の培養容器表面への接着が促され、良好な増殖が行われる。また、培養液にラミニンを添加して培養する場合は、培養皿の表面にI型コラーゲンIV型コラーゲンフィブロネクチン、ラミニンまたはウシ等の角膜内皮細胞の細胞外マトリックスなどをコーティングしてあるものを使用することが好ましい。あるいは、通常の培養容器をFNC coating mix(登録商標)(50ml(AES−0407)、ATHENA、カタログ番号:0407)等の市販のコーティング剤で処理したものを用いてもよい。角膜内皮細胞を培養する際の温度条件は、角膜内皮細胞が生育する限りにおいて特に限定されないが、例えば約25℃〜約45℃、増殖効率を考慮すれば好ましくは約30℃〜約40℃、さらに好ましくは約37℃である。培養方法は、通常の細胞培養用インキュベーター内で、加湿下、約5〜10%のCO2濃度の環境下で行われる。

0089

<2>継代培養
培養に供された角膜内皮細胞が増殖した後に継代培養を行うことができる。好ましくはサブコンフルエントないしコンフルエントになった時点で継代培養を行う。継代培養は次のように行うことができる。まずトリプシン−EDTA等で処理することによって細胞を培養容器表面から剥がし、次いで細胞を回収する。回収した細胞に本発明の培養正常化剤または培地を加えて細胞浮遊液とする。細胞を回収する際、あるいは回収後に遠心処理を行うことが好ましい。かかる遠心分離処理によって細胞密度の高い細胞浮遊液を調製することができる。好ましい細胞密度は、約1〜2×106個/mLである。尚、ここでの遠心分離処理の条件としては、例えば、500rpm(30g)〜1000rpm(70g)、1〜10分を挙げることができるがこれらに限定されない。

0090

細胞浮遊液は上記の初期培養と同様に培養容器に播種され、培養に供される。継代時の希釈倍率は細胞の状態によっても異なるが、約1:2〜1:4、好ましくは約1:3である。継代培養は上記の初期培養と同様の培養条件で行うことができる。培養時間は使用する細胞の状態などによっても異なるが、例えば7〜30日間である。以上の継代培養は必要に応じて複数回行うことができる。ROCK阻害剤等を用いれば、培養初期の細胞接着を亢進させることにより、培養期間の短縮が可能となる。

0091

密度勾配遠心分離を用いた高密度角膜内皮細胞の純化
1つの実施形態では、細胞として、密度勾配遠心分離を用いた高密度角膜内皮細胞の純化して本発明に用いることができる。その方法は代表的に以下のとおりである。低密度細胞と高密度細胞が入り混じった培養ヒト角膜内皮細胞を適宜の手段(例えば、OptiPrepTM)を用いて800×gで15分間密度勾配遠心分離を行うことができる。ペレットおよび上清に含まれる細胞を回収してペレット群および上清群としてそれぞれ適宜の個数(例えば、420個/mm2)ずつ播種し培養することができる。30日後に位相差顕微鏡による形態を観察し、免疫染色による角膜内皮機能関連マーカーの発現の解析および細胞密度・細胞面積を測定する。遠心分離後培養した細胞はペレット群、上清群共単層多角形細胞形態を示し、Na+/K+−ATPaseおよびZO−1発現がみられる細胞が得られる。そしてペレット群が一般に細胞密度が有意に高い。細胞面積の中央値(四分位範囲)は、一般にペレット群で低値であり、散らばりが小さい。したがって、これにより、密度勾配遠心分離により高密度の細胞を純化することができ、本発明において使用され得るものであることが理解される。

0092

<コーティング>
1つの局面において、本発明は、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子を含む、角膜内皮の疾患、障害または状態の治療または予防剤であって、該因子は、眼内に注入され眼内の組織と接触されることを特徴とする治療または予防剤を提供する。したがって、この局面において、本発明はまた、角膜内皮疾患、障害または状態の治療または予防するための方法であって、該方法は、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子の有効量を該治療または予防を必要とする被験体に投与する工程を包含する方法であって、ここで前記因子は前記被験体の眼内に注入され、眼内の組織と接触されるものであることを特徴とする方法を提供する。この局面の本発明の方法において用いられる因子(ラミニン、そのフラグメント等)は、本明細書において説明される任意の形態を用いることができることが理解される。ここでは、因子は、眼内に注入され眼内の組織と接触される結果、眼内で、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子のコーティング(本明細書においてラミニンコーティングともいう)が形成されることにより、角膜の治癒が促進されるものと理解される。

0093

1つの実施形態では、コーティングの際に用いられる前記因子の濃度は、治療または予防効果がある限りどのような濃度でもよく(有効濃度ともいい、コーティングの場合コーティング有効濃度ともいう)、例えば、約0.1nM以上、約0.2nM以上、約0.3nM以上、約0.4nM以上、約0.5nM以上、約0.6nM以上、約0.7nM以上、約0.8nM以上、約0.9nM以上、約1nM以上、約2nM以上、約2.1nM以上、約3nM以上、約4nM以上、約5nM以上、約6nM以上、約7nM以上、約8nM以上、約9nM以上、約10nM以上、約15nM以上、約20nM以上、約21nM以上、約25nM以上、約30nM以上、約40nM以上、約50nM以上、約60nM以上、約70nM以上、約80nM以上、約90nM以上、約100nM以上等を挙げることができるがこれらに限定されない。

0094

1つの好ましい実施形態では、前記因子は角膜内皮付近に注入され角膜内皮を構成する細胞や組織と接触された後、同時に、またはその前に、さらに角膜内皮細胞等の角膜細胞が投与されてもよい。したがって、本発明では、角膜内皮細胞は前記因子とは別に投与されてもよい。角膜内皮細胞等の角膜細胞の投与されるタイミングは、好ましくは、前記因子が眼内に注入され眼内の組織と接触された(コーティングの)後または同時であり、より好ましくは、前記因子眼内に注入され眼内の組織と接触された後である。このように投与された角膜内皮細胞等の角膜細胞は、コーティングの存在により、角膜内皮組織への定着が促進され、治療効果が顕著に促進されることが判明した。

0095

別の局面では、本発明は、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子と角膜内皮細胞等の角膜細胞と混合した混合物を含む角膜内皮の疾患、障害または状態の治療または予防剤であって、ここでは、該ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子とは別に、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子が眼内に注入され眼内の組織、好ましくは治療または予防の対象となる組織部分(例えば、角膜内皮等)と接触される。したがって、この局面において、本発明は、角膜内皮疾患、障害または状態の治療または予防するための方法であって、該方法は、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子の有効量を該治療または予防を必要とする被験体に投与する工程を包含し、ここで、前記因子は、角膜内皮細胞と混合されて提供され、さらに、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子が眼内に注入され眼内の組織と接触されることを特徴とする方法を提供する。この局面において、上記混合物は、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子が眼内に注入され眼内の組織と接触された(コーティングの)後、同時に、またはその前に投与されてもよく、混合物の投与のタイミングは、好ましくは、該因子が眼内に注入され眼内の組織と接触された後または同時であり、より好ましくは、該因子が眼内に注入され眼内の組織と接触された後である。理論に拘束されることを望まないが、このようなコーティングをすることによって、上記因子と角膜内皮細胞等の角膜細胞の混合物の定着が促進される環境が提供されるため、角膜の治癒が促進されるものと理解される。角膜内皮細胞等の角膜細胞は、本明細書において説明される任意の形態または公知の任意の形態を用いることができることが理解される。

0096

好ましい実施形態では、コーティングの態様において、本発明の治療または予防剤はまた、さらに、ROCK阻害剤を含む。ROCK阻害剤は前記因子とは同時、連続または別に投与されてもよい。

0097

ROCK阻害剤は、本明細書において別途説明する任意の形態を採ることができ、好ましくは、Y-27632((R)−(+)−トランス−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド2塩酸塩1水和物)等であってよい。

0098

1つの実施形態では、本発明において、1つの前記角膜内皮細胞等の角膜細胞と混合される因子は、約2.1nM以上であり、注入される前記因子は約21nM以上である。
(使用)

0099

別の局面では、本発明は、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子の、角膜内皮疾患、障害または状態の治療または予防のための医薬の製造における使用を提供する。あるいは、この局面において、本発明は、ラミニンおよびそのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの因子の、角膜内皮疾患、障害または状態の治療または予防のための使用を提供する。本発明の使用において用いられる因子(ラミニン、そのフラグメント等)は、本明細書において説明される任意の形態を用いることができることが理解される。

0100

本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値の範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。また、本明細書において「約」との表記は、特に言及しない限り有効数字四捨五入する場合の数値を示すか、あるいは特定の値の場合その値の±10%を示す。

0101

以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。

0102

以下に、本発明の実施例を記載する。該当する場合生試料等の取り扱いは、厚生労働省文部科学省等において規定される基準を遵守して行った。

0103

(実験手法:培養角膜内皮細胞の調製)
(手法)・(培養)ウサギ角膜内皮細胞(RCEC、入手先および培養方法):以下の実験に使用したウサギ角膜内皮細胞は、角膜組織から内皮細胞層を含むデスメ膜を剥離し,DMEM(Gibco-Invitrogen)に溶解した1.2U/ml Dispase I[(三光純薬)カタログ番号:GD81060]に入れて、37℃でインキュベートした。1時間後,ピペッティングでデスメ膜から角膜内皮細胞を剥離して回収し、1000rpm 5分間遠心分離して上清を除去した.沈殿している角膜内皮細胞に培養培地を加えて混和し、FNC Coating Mixをコートした6ウェルプレートへ全量を播種した。培養培地はDMEM(カタログ番号:12320;Gibco-Invitrogen)に10% FBS、50μg/mlゲンタマイシン(カタログ番号:15710−064;Invitrogen) 、10μg/ml Y−27632(カタログ番号:6880005;Calbiochem, La Jolla,CA) 、2ng/ml塩基性線維芽細胞増殖因子(basicfibroblast growth factor;カタログ番号:13256−029;bFGF; Invitrogen)を加えたものを使用した。ウサギの角膜内皮細胞(CEC)の培養には、サルと同様、以前に報告した系[Koizumi Nら、Exp Eye Res.,2012;95:60-67;Koizumi Nら、Invest Ophthalmol Vis Sci..2007;48:4519-4526;Okumura Nら、Am J Pathol. 2012;181:268-277]を使用した。

0104

培地交換は2日ごとに行った。継代は50〜80%コンフルエントになった時点で行った。継代方法は、Ca2+Mg2+非含有(free)PBS(PBS−;Nissui Pharmaceutical Co., Ltd., Tokyo. Japan)で細胞を洗浄し、TrypLETM Select(カタログ番号:12563;Invitrogen)を加え,37℃で5分間インキュベートした。プレートから細胞を剥離して回収し、1000rpm 5分間遠心分離後、培養培地を加えて細胞懸濁液とした。FNC Coating Mixをコートしたプレートへ1:2の密度で細胞を播種した。

0105

これを培養角膜内皮細胞として用いた。

0106

統計解析
サンプルの比較の平均値における統計的有意差P値)は、スチューデントt検定を用いて決定した。複数のサンプルセットの比較における統計的有意差は、ダネット多重比較検定を用いて解析した。グラフに示す値は平均±SEを表す。

0107

(実施例1:ラミニン511−E8フラグメントを用いたウサギ水疱性角膜症モデルにおける培養角膜内皮移植実験)
本実施例では、ラミニンとして、ラミニン511−E8フラグメントを用い、病態モデルとして、ウサギ水疱性角膜症モデルを用いて、培養角膜内皮移植を行った。

0108

(方法および材料)
(使用した試薬等)
本実施例では、以下の試薬等を使用した。
・培養ウサギ角膜内皮細胞(RCECとも略称する。上記のとおり調製したもの)
・ラミニン511 E8フラグメント(株式会社ニッピ、382-02413)
・ウサギ水疱性角膜症モデル(以下の(移植方法)に記載されるように作製)
・このほか、実験手法中において言及したもの
(移植方法)
図1に示す実験は以下のように行った。

0109

ウサギの角膜内皮を20ゲージシリコーン針(Soft Tapered Needle; Inami & Co., Ltd., Tokyo, Japan)を用いて機械的に剥離して水疱性角膜症モデルを作製した。Control群は、作製したモデルに細胞を注入しなかった。RCEC群は、作製したモデルの前房内に、培養したウサギ角膜内皮細胞を注入してうつむき姿勢を3時間取らせた。また、RCEC+E8群は、作製したモデルの前房内に、培養したウサギ角膜内皮細胞を、濃度2.1nMに調整したラミニン511−E8フラグメントを含有するDMEMととともに注入してうつむき姿勢を3時間取らせた。

0110

(角膜厚の測定)
図2に示す測定実験は以下のように行った。

0111

図1にて作製した個体について、経時的に超音波パキメーター(ultrasound pachymeter;SP-2000; Tomey, Nagoya, Japan)により角膜厚を測定した。測定不可の場合は測定可能上限値である1200μmとした。

0112

(組織学的検討)
図3の組織学的検討は、以下のように行った。この検討は、正常機能の確認のためのものであり、Na+/K+−ATPaseおよびZO−1による免疫染色で確認したものである。角膜内皮細胞の機能であるポンプ機能バリア機能を確認するためである。Na+/K+−ATPaseおよびZO−1はそれぞれ、角膜内皮細胞の機能であるポンプ機能、バリア機能の正常性を示す。手法は以下のとおりである。

0113

(染色等の細胞観察方法組織学的試験))
細胞観察は位相差顕微鏡にて行った。また、細胞を固定した後に機能関連マーカーとしてZO−1、Na+/K+−ATPaseを用いて免疫染色を行い蛍光顕微鏡にて観察を行った。組織染色検査のために、ウサギから摘出した角膜組織を4%ホルムアルデヒドで10分間室温(RT)で固定し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)とともに30分間インキュベートした。再生された角膜内皮組織の表現型を調べるために、密着結合関連タンパク質であるZO−1、ポンプ機能に関連するタンパク質であるNa+/K+−ATPaseの免疫組織化学分析を行った。細胞の機能に関連するマーカーとしてZO−1およびNa+/K+−ATPaseを使用した。ZO−1、Na+/K+−ATPaseの染色は、それぞれ、ZO−1ポリクローナル抗体(Zymed Laboratories, Inc., South San Francisco, CA)、Na+/K+−ATPaseモノクローナル抗体(Upstate Biotec, Inc., Lake Placid, NY)の1:200希釈を用いて実施した。二次抗体には、Alexa Fluor(登録商標)488標識(Life Technologies Corp., Carlsbad, CA))の1:2000希釈を使用した。次いで、細胞の核をDAPI(Vector Laboratories, Inc., Burlingame, CA)で染色した。また、細胞の形態を1:400希釈のAlexa Fluor(登録商標)488-conjugated phalloidin (Life Technologies Corp., Carlsbad, CA)により染色した。次いで、スライドを蛍光顕微鏡(TCSSP2 AOBS;Leica Microsystems, Welzlar, Germany)で観察した。

0114

(結果)
結果を図1〜3に示す。図1は、ラミニン511−E8フラグメントを用いたウサギ水疱性角膜症モデルにおける培養角膜内皮移植後の前眼部写真である。左からControl:コントロールとしてウサギの角膜内皮細胞を機械的に掻爬したもの、RCEC:作製したモデルに培養したウサギ角膜内皮細胞を前房内に注入してうつむき姿勢を3時間取らせたもの、RCEC+E8:作製したモデルに培養したウサギ角膜内皮細胞を、濃度2.1nMに調整したラミニン511−E8フラグメントを含有するDMEMととともに前房内に注入してうつむき姿勢を3時間取らせたものの前眼部写真を示す。上段は1週間後であり、下段は2週間後の写真を示す。コントロール群およびRCEC群では角膜が混濁したが、RCEC+E8群では角膜が透明治癒したことから、細胞をラミニンとともに注入した場合には角膜が透明治癒することが示された。

0115

図2には、ラミニン511−E8フラグメントを用いたウサギ水疱性角膜症モデルにおける培養角膜移植後の角膜厚の変化を示す。示されるように、角膜厚は投与後から顕著に減少をはじめ、角膜厚を超音波パキメーターパキメーターで測定したところ、ControlおよびRCEC群では約1200μm以上(測定限界))と、角膜が肥厚した状態が維持されたが、RCEC+E8群においては、7日目に平均637μmにまで角膜厚が菲薄化した。このことは細胞をラミニンとともに移植することで、角膜内皮が再生されポンプおよびバリア機能が再生されたことが理解される。

0116

図3は、ラミニン511−E8フラグメントを用いた培養角膜内皮移植後の組織学的検討結果を示すものである。図に示すように、正常の角膜内皮細胞に発現する遺伝子産物が発現していた。詳細には、ポンプ機能を示すNa+/K+−ATPaseおよびタイトジャンクションを示すZO−1(バリア機能)が発現した。加えて、アドレンスジャンクションを示すN-カドヘリンも正常に発現していることが示される。また、ファロイディン(phalloidin)染色によれば形態も正常のものと同様の多角形の一層の細胞であることが示された。以上から、この細胞が正常な機能を回復していることが明らかになった。

0117

この結果から、ラミニンまたはそのフラグメントは、角膜内皮細胞とともに投与することで、顕著に角膜内皮疾患または障害を治癒させ、しかも正常の機能を回復させることができることが理解される。

0118

(実施例2:ラミニンとROCK阻害剤を併用したウサギ水疱性角膜症モデルにおける培養角膜内皮移植実験)
以前、培養した角膜内皮細胞をROCK阻害剤とともに前房内に注入することで、細胞の基質への接着を促進することを報告した。そこでラミニンとROCK阻害剤との併用効果を検討した。

0119

(方法および材料)
(使用した試薬等)
本実施例では、以下の試薬等を使用した。
・培養ウサギ角膜内皮細胞(RCEC、上記のとおり調製したもの)
・ラミニン511−E8フラグメント(実施例1と同じ;株式会社ニッピ、382-02413)
・Y−27632((R)−(+)−トランス−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド2塩酸塩1水和物)(カタログ番号:6880005;Calbiochem, La Jolla,CA)
・ウサギ水疱性角膜症モデル(実施例1と同じ;作製法は(移植方法)に記載)
・このほか、実験手法中において言及したもの
(移植方法)
図4に示す実験は以下のように行った。

0120

ウサギの角膜内皮を機械的に剥離して水疱性角膜症モデルを作製した。培養したウサギ角膜内皮細胞を前房内にROCK阻害剤であるY−27632(+)(100μM)とともに注入した個体と、細胞とラミニン511−E8フラグメント(2.1nM)とY−27632(+)(100 μM)とともに注入した個体において24時間後の注入した細胞の基質への接着を比較した。24時間後に安楽死させ角膜組織を摘出してファロイディン(phalloidin)染色を行い、接着した細胞の形態および細胞数を評価した。

0121

図5〜8に示す測定実験は以下のように行った。

0122

(移植方法)
デスメ膜剥離を行わず角膜内皮細胞を剥離しY−27632(+)(100μM)とともに培養角膜内皮細胞を注入、デスメ膜剥離を行わず角膜内皮細胞を剥離しラミニン511−E8フラグメント(2.1nM)とY−27632(+)(100μM)とともに注入、デスメ膜剥離を行った水疱性角膜症モデルにY−27632(+)(100μM)とともに注入、デスメ膜剥離を行った水疱性角膜症モデルにラミニン511−E8フラグメント(2.1nM)とY−27632(+)(100μM)とともに注入の4群で各4匹ずつで試験を行った。

0123

(角膜厚および眼圧の測定)
超音波パキメーター(Ultrasound pachymeter)(SP-2000; Tomey, Nagoya, Japan)により角膜厚を測定した。測定不可の場合は測定可能上限値である1200μmとした。また眼圧はトノベット(MEテクニカ、東京)により測定した。

0124

(組織学的検討)
図8に示す組織学的検討は、実施例1と同様の様式で行った。

0125

(結果)
図4に、ラミニンとROCK阻害剤を併用したウサギ水疱性角膜症モデルにおける培養角膜内皮移植の24時間後の細胞の基質への接着についての結果を示す。ファロイディン染色により細胞とラミニン511−E8フラグメント(2.1nM)とY−27632(+)(100μM)とともに注入した個体においてより多くの細胞が接着していることが示された。また接着した細胞密度は有意に細胞とラミニン511−E8フラグメント(2.1nM)とY−27632(+)(100μM)とともに注入した個体において高い値であった(ラミニン不存在下で平均717.3個/mm2であり、ラミニン存在下で平均1662.8個/mm2にまで増加した。)。このことはROCK阻害剤にラミニンを併用することでも、ラミニンはさらに細胞接着を生体内で促進するものと理解される。

0126

図5はデスメ膜剥離を行わず角膜内皮細胞を剥離しY−27632(+)(100 μM)とともに培養角膜内皮細胞を注入、デスメ膜剥離を行わず角膜内皮細胞を剥離しラミニン511−E8フラグメント(2.1nM)とY−27632(+)(100 μM)とともに注入、デスメ膜剥離を行った水疱性角膜症モデルにY−27632(+)(100μM)とともに注入、デスメ膜剥離を行った水疱性角膜症モデルにラミニン511−E8フラグメント(2.1nM)とY−27632(+)(100μM)とともに注入の4群での前眼部写真を示す。細胞注入後1週間の時点で、デスメ膜の剥離の有無、ラミニンの使用の有無にかかわらず角膜は透明化した。

0127

図6、7はそれぞれ角膜厚、眼圧を示すグラフである。角膜厚はデスメ膜を剥離した方が、剥離しない場合に比べて角膜厚の菲薄化が遅延したが、最終的にはともに菲薄化した。眼圧は観察期間を通じて正常範囲内であった。

0128

図8には、ラミニン511−E8フラグメントを用いた培養角膜内皮移植後の組織学的検討を示す。ここでは、図に示すように、すべての群においてNa+/K+−ATPase(ポンプ機能)およびZO−1(バリア機能)を発現しており、N−カドヘリンも正常に発現していることが示された。また、ラミニン511−E8フラグメント添加群においてファロイジン染色によれば形態も正常組織と同様の多角形の一層の細胞であり、正常であることが示された。加えて、ラミニン511−E8フラグメント添加群においてポンプ機能およびタイトジャンクションが正常に発現しており、アドヘレンスジャンクションも正常であり、正常の形態が示されていることから、ラミニン511−E8フラグメント添加群においてこの細胞が正常な機能を回復していることが明らかになった。

0129

この結果から、ラミニンまたはそのフラグメントは、ROCK阻害剤とともに用いて、角膜内皮細胞とともに投与することで、顕著に角膜内皮疾患または障害を治癒させ、しかも正常の機能を回復させる機能がより改善することができることが理解される。

0130

(実施例3:サル水疱性角膜症モデルにおける例)
次に、霊長類の例としてサル水疱性角膜症モデルを用いて、同様のラミニンとROCK阻害剤と角膜内皮細胞の移植併用の効果を確認した。

0131

(方法および材料)
(使用した試薬等)
本実施例では、以下の試薬等を使用した。
・培養サル角膜内皮細胞(ウサギの培養方法と同様に調製したものであるが、以下に再度説明する。)
・ラミニン511−E8フラグメント(実施例1と同じ;株式会社ニッピ、382-02413)
・Y−27632((R)−(+)−トランス−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド2塩酸塩1水和物)(実施例2と同じ;カタログ番号:6880005; Calbiochem, La Jolla, CA)
・サル水疱性角膜症モデル(以下の(移植方法)に記載されるように作製した。)
(培養方法)
サル角膜内皮細胞(MCEC)は以下のように入手および培養することができる。具体的には、角膜組織から内皮細胞層を含むデスメ膜を剥離し,DMEM(Gibco-Invitrogen)に溶解した1.2U/ml Dispase I[(三光純薬) カタログ番号:GD81060]に入れて、37℃でインキュベートした。1時間後,ピペッティングでデスメ膜から角膜内皮細胞を剥離して回収し、1000rpm 5分間遠心分離して上清を除去した.沈殿している角膜内皮細胞に培養培地を加えて混和し、FNC Coating Mixをコートした6ウェルプレートへ全量を播種した。培養培地はDMEM(カタログ番号:12320;Gibco-Invitrogen)に10% FBS、50μg/mlゲンタマイシン(カタログ番号:15710−064;Invitrogen)、10μg/ml Y−27632(カタログ番号:6880005;Calbiochem, La Jolla,CA)、2ng/ml塩基性線維芽細胞増殖因子(basicfibroblast growth factor;カタログ番号:13256-029;bFGF; Invitrogen)を加えたものを使用した。ウサギの角膜内皮細胞(CEC)の培養には、サルと同様、以前に報告した系[Tan DTら、Lancet., 2012;379:1749-1761; Koizumi Nら、 Exp Eye Res., 2012;95:60-67; Koizumi Nら、 Invest Ophthalmol Vis Sci..2007;48:4519-4526;Okumura Nら、 Am J Pathol. 2012;181:268-277]を使用した。

0132

培地交換は2日ごとに行った。継代は50〜80%コンフルエントになった時点で行った。継代方法は、Ca2+Mg2+非含有(free)PBS(PBS−;Nissui Pharmaceutical Co., Ltd., Tokyo. Japan)で細胞を洗浄し、TrypLETM Select(カタログ番号:12563;Invitrogen)を加え,37℃で5分間インキュベートした。プレートから細胞を剥離して回収し、1000rpm 5分間遠心分離後、培養培地を加えて細胞懸濁液とした。FNC Coating Mixをコートしたプレートへ1:2の密度で細胞を播種した。

0133

(移植方法)
カニクイザルの角膜内皮を20ゲージシリコーン針(Soft Tapered Needle; Inami & Co., Ltd., Tokyo, Japan)を用いて機械的に剥離して水疱性角膜症モデルを作製した。図9では、水疱性角膜症モデルの前房内に、培養したサル角膜内皮細胞5.0×105個を、濃度2.1nMに調整したラミニン511−E8フラグメントを含有するDMEMととともに注入してうつむき姿勢を3時間取らせた。図10では、作製した水疱性角膜症モデルにおいてデスメ膜剥離を行い同様に、この水疱性角膜症モデルの前房内に、培養したサル角膜内皮細胞5.0×105個を、濃度2.1nMに調整したラミニン511−E8フラグメントを含有するDMEMととともに注入してうつむき姿勢を3時間取らせた。

0134

(角膜厚の測定)
超音波パキメーター(Ultrasound pachymeter)(SP-2000; Tomey, Nagoya, Japan)により角膜厚を測定した。測定不可の場合は測定可能上限値である1200μmとした。

0135

(結果)
結果を図9〜10に示す。図9は、ラミニン511−E8フラグメントを併用したサル水疱性角膜症モデルにおける培養角膜内皮移植後の前眼部写真を示す。生体内での角膜内皮増殖が著しく制限される霊長類モデルにおいても本発明のラミニンまたはそのフラグメントは、ROCK阻害剤とともに用いて、角膜内皮細胞とともに投与することで、水疱性角膜症が治癒することが分かった。一方で、図10は、サル水疱性角膜症モデルにおいてデスメ膜剥離を行い、ラミニン511-E8フラグメントを併用して培養角膜内皮細胞を移植した後の前眼部写真を示す。カニクイザルの角膜内皮細胞を機械的に掻爬したモデルにおいては、角膜の透明治癒は得られなかった。ウサギ水疱性角膜症モデルにおいては透明治癒が得られたが、カニクイザルモデルにおいては治療効果が得られなかった。このことはデスメ膜を剥離すること移植した細胞の角膜への接着が低下するために動物種によっては角膜内皮が再生しない可能性が示唆された。図11にデスメ剥離を行わずに移植した個体と、デスメ剥離を行って移植した個体の角膜厚の変化をグラフに示す。デスメ剥離群においては角膜厚が菲薄化しなかった一方、デスメ膜剥離しない場合には菲薄化した。

0136

(実施例4:デスメ膜剥離被験体におけるラミニンコーティングでの治療例)
次に、別途デスメ膜剥離により露出した角膜裏側の実質をラミニンでコーティングすることで、ラミニンとROCK阻害剤と角膜内皮細胞の移植併用の効果が改善することを確認した。

0137

(方法および材料)
(使用した試薬等)
本実施例では、以下の試薬等を使用した。
・培養サル角膜内皮細胞(実施例3のように調製したもの)
・ラミニン511−E8フラグメント(実施例1と同じ;株式会社ニッピ、382-02413)
・Y−27632((R)−(+)−トランス−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド2塩酸塩1水和物)(実施例2と同じ;カタログ番号:6880005;Calbiochem, La Jolla,CA)
(方法)
カニクイザルの角膜内皮を20−ゲージシリコーン針(Soft Tapered Needle; Inami & Co., Ltd., Tokyo, Japan)を用いて機械的に剥離して水疱性角膜症モデルを作製した。作製した水疱性角膜症モデルにおいてデスメ膜剥離を行い、水疱性角膜症モデルの前房内に、ラミニン511−E8フラグメントを21nMの濃度で注入し1時間おいた。このことにより、デスメ膜の剥離により露出した角膜実質を生体内でコーティングした。その後実施例3と同様に、水疱性角膜症モデルの前房内に、培養したサル角膜内皮細胞5.0×105個を、濃度2.1nMに調整したラミニン511−E8フラグメントを含むDMEMととともに注入してうつむき姿勢を3時間取らせた。

0138

(結果)
結果を図12に示す。図12に示すようにデスメ膜を剥離したのちに前房内にラミニン511−E8フラグメントを21nMの濃度で注入して角膜実質をコーティングすることで、コーティング無しでは得られなかった(図10)角膜の透明治癒が得られた。このことはラミニンは細胞懸濁液とともに注入することで、細胞接着を促進するのみならず、生体内のコーティング剤としても用い、細胞の生体内における生着を促進することが可能であることを示す。

0139

(実施例5:インテグリンの角膜内皮細胞の細胞接着への影響)
本実施例では、各種インテグリンの角膜内皮細胞の細胞接着への影響を調べた。

0140

(方法および材料)
(使用した試薬等)
本実施例では、以下の試薬等を使用した。
・コントロールは、ラミニン511-E8フラグメント非添加の群を意味する
・マウスIgG(DAKO、X0931)
・抗インテグリンα3(Millipore、MAB1952Z-20)
・抗インテグリンα6(Millipore、MAB1378-20)
・抗インテグリンα2(Millipore、MAB1950Z-20)
・抗インテグリンβ1(R&D Systems、MAB17781)
・抗インテグリンα3β1および抗インテグリンα6β1は上記を組み合わせたものを使用した。
・ラミニン511-E8フラグメント(上記実施例と同じである)
(方法)
ヒト角膜内皮細胞を培養している培養皿から培地を完全に除去し、PBS(-)で2回洗浄した。洗浄後、リン酸緩衝液を添加し、37℃(5% CO2)で5分間インキュベートした。その後、PBS(-)を除去し、TrypLETMSelect(10X)(Life Technologies、A12177-01)を添加し、37℃(5% CO2)で10分間インキュベートした。その後、Opti-MEMI(Life Technologies、31985-070)を添加し、細胞を回収した。回収後、1200rpmで3分間遠心分離し、Opti-MEMIにて細胞懸濁液を作製した。この時、コントロールとしてラミニン511-E8フラグメント非添加の群、ラミニン511-E8フラグメントを最終濃度2.1nMとなるように添加した群を用意した。同時に、ラミニン511-E8フラグメント添加群にはmouseIgG、インテグリン中和抗体を最終濃度2μg/mlになるように添加し、調整した。調整後、96well plateの1wellあたり5000個の細胞を播種し、37℃(5%CO2)で24時間インキュベートした。播種24時間後、培地を完全に除去し、PBS(-)で2回洗浄した。洗浄後、培地とCellTiter−Glo Luminescent Cell Viability Assay (Promega Corporation, Madison, WI)を1:1の割合で添加し、2分間遮光振盪した後、10分間静置した。その後測定した。24h,*p<0.01, Dunnet検定, n=6。
(結果)
結果を図13に示す。示されるように、ラミニン511-E8フラグメントを播種時に培地に添加することで角膜内皮細胞の細胞接着はコントロールに対して促進されたが、インテグリンβ1の中和抗体により、細胞接着はコントロールと同程度まで抑制された。

0141

(実施例6:細胞接着関連タンパク質の活性化とインテグリンとの関連性)
次に、本実施例では、細胞接着関連タンパク質の活性化はインテグリンを介していることを実証した。

0142

(材料および方法)
(試薬等)
原則として実施例5と同じ条件を用いた。
・マウスIgG(実施例5と同じである)
・抗インテグリンα3(実施例5と同じである)
・抗インテグリンα6(実施例5と同じである)
・抗インテグリンα2(実施例5と同じである)
・抗インテグリンβ1(実施例5と同じである)
・抗インテグリンα3β1(実施例5と同じである)
・抗インテグリンα6β1(実施例5と同じである)
(方法)
ヒト角膜内皮細胞を培養している培養皿から培地を完全に除去し、PBS(-)で2回洗浄した。洗浄後、リン酸緩衝液を添加し、37℃(5% CO2)で5分間インキュベートした。その後、PBS(-)を除去し、TrypLETMSelect(10X)(Life Technologies、A12177-01)を添加し、37℃(5% CO2)で10分間インキュベートした。その後、Opti-MEMI(Life Technologies、31985-070)を添加し、細胞を回収した。回収後、1200rpmで3分間遠心分離し、Opti-MEMIにより、細胞懸濁液を作製した。この時、コントロールとしてラミニン511-E8フラグメント非添加の群、ラミニン511-E8フラグメントを最終濃度2.1nMとなるように添加した群を用意した。同時に、ラミニン511-E8フラグメント添加群にはmouseIgG、インテグリン中和抗体を最終濃度2μg/mlになるように添加し、調整した。調整後、12well plateの1wellあたり1×105個の細胞を播種し、播種3時間後にタンパク質を回収した。ウエスタンブロッティング法により、Phospho-FAK(Cell Signaling TECHNOLOGY、8556S)、FAK(Cell Signaling TECHNOLOGY、3285S)、p-Paxillin(Cell Signaling TECHNOLOGY、2541S)の検出を行った。各抗体の希釈倍率は1:1000とした。デンシトメトリーはImage Jを用いて定量した。

0143

(結果)
結果を図14に示す。示されるように、播種3時間後ではp-FAKはラミニン511-E8フラグメントにより促進されたが、インテグリン中和抗体によりコントロールと同程度まで抑制された。p-Paxillinもラミニン511-E8フラグメントにより促進されたが、インテグリンβ1の中和抗体によりコントロールと同程度まで抑制された。このことからE8はインテグリンを介して接着関連タンパク質を活性化することで細胞接着を促進していることがわかる。

0144

また、実施例5および6から、ラミニン511−E8フラグメントを添加することにより、非添加の細胞と比較して早期の細胞接着を認め、24時間後の接着細胞数は137.3±2.8%と有意に増加した(p<0.01)。また、インテグリンα3β1およびα6β1の中和抗体によりラミニン511−E8フラグメントによる細胞接着作用は抑制され、ラミニン511−E8フラグメント非添加細胞と同程度となった(p<0.01)。FAKのリン酸化はラミニン511−E8フラグメントにより促進されたがインテグリン中和抗体によって抑制されていることから、ラミニン511はインテグリンと結合しFAKのリン酸化を促進することで角膜内皮細胞の基質接着性を促進するものと考えられる。したがって、ラミニン511−E8フラグメント等のラミニンは角膜内皮細胞移植に応用できるものと考えられる。

0145

(実施例7:製剤例:ラミニン細胞混合製剤
本実施例では、製剤例として、本発明の因子を含有する治療液を以下のようにして製造する。

0146

常法により下に示す液を調製する。
ラミニン511、ラミニン521および/またはそれらのフラグメント(0.75μg/cm2)
最終濃度が2.1nM
培養角膜内皮細胞(実施例1等に準じて調製したものを適量)
適宜の緩衝液適量
全量 100mL

0147

(実施例8:製剤例:ラミニンコーティング用組成物
本実施例では、製剤例として、本発明の因子を含む、コーティング用溶液を以下のように製造する。

0148

常法により下に示すコーティング液を調製する。
ラミニン511、ラミニン521および/またはそれらのフラグメント(0.75μg/cm2)
最終濃度が21nM
適宜の緩衝液適量
全量 100mL
各成分は、実施例1〜4に記載のように入手することができる。

実施例

0149

以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本出願は、2014年10月31日に出願された日本国出願特願2014−222947号に基づく優先権の利益を主張し、その内容は、その全体が参照によって本明細書に援用される。

0150

本発明は、眼科、特に角膜内皮細胞(特に、ヒト角膜内皮細胞)の新規治療を可能にした。特に、水疱性角膜症をほぼ完治させるまでの状態にもたらされることができているため、製薬業において特に有用である。

0151

配列番号1:ラミニンα5鎖核酸配列(NM_005560)
配列番号2:ラミニンα5鎖アミノ酸配列(NP_005551)
配列番号3:ラミニンβ1鎖核酸配列(NM_002291)
配列番号4:ラミニンβ1鎖アミノ酸配列(NP_002282)
配列番号5:ラミニンβ2鎖核酸配列(NM_002292)
配列番号6:ラミニンβ2鎖アミノ酸配列(NP_002283)
配列番号7:ラミニンγ1鎖核酸配列(NM_002293)
配列番号8:ラミニンγ1鎖アミノ酸配列(NP_002284)

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