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技術 燃料電池用電解質膜

出願人 日本ゴア株式会社
発明者 丸山将史矢野良和鈴木健之高根朋幸
出願日 2015年9月29日 (5年1ヶ月経過) 出願番号 2016-553055
公開日 2017年5月18日 (3年5ヶ月経過) 公開番号 WO2016-056430
状態 特許登録済
技術分野 燃料電池(本体)
主要キーワード 粉体焼結法 連続多孔質構造 画像測定システム SiOxコーティング 延伸多孔質PTFE膜 フッ素系アイオノマー 微細多孔質 補強膜
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (2)

課題・解決手段

(課題)低抵抗薄膜化)と高寸法安定性両立できる、燃料電池用電解質膜を提供すること。(解決手段)高分子電解質及びポリテトラフルオロエチレンPTFE)多孔質膜を含んでなる、燃料電池用電解質膜であって、該PTFE多孔質膜小孔内表面に、該PTFE多孔質膜を構成する材料よりも弾性率の高い材料が複合化されて、該複合化されたPTFE多孔質膜が150MPa以上の弾性率を有することを特徴とする、燃料電池用電解質膜。

概要

背景

近年、高効率のエネルギー変換装置として、燃料電池が注目を集めている。燃料電池は、用いる電解質の種類により、アルカリ形、固体高分子形、リン酸形等の低温作動燃料電池と、溶融炭酸塩形固体酸化物形等の高温作動燃料電池とに大別される。これらのうち、電解質としてイオン伝導性を有する高分子電解質膜を用いる固体高分子形燃料電池PEFC)は、コンパクトな構造で高出力密度が得られ、しかも液体を電解質に用いないこと、低温運転することが可能なこと等により簡易なシステムで実現できるため、定置用、車両用携帯用等の電源として注目されている。

固体高分子形燃料電池は、高分子電解質膜の片面を燃料ガス水素等)に、その反対面を酸化剤ガス(空気等)に暴露し、高分子電解質膜を介した化学反応により水を合成し、これによって生じる反応エネルギー電気的に取り出すことを基本原理としている。高分子電解質膜の両面に多孔質触媒電極を配置し、これを熱プレス等で一体形成したものを一般に膜電極接合体MEA)と呼ぶ。高分子電解質膜は、イオン伝導性を有するが、通気性および電子伝導性を有さないことにより、燃料極酸素極とを物理的かつ電子的に隔絶してイオンのみを伝導するものである。

高分子電解質膜は抵抗に大きな影響を及ぼすため、膜厚のより薄いものが求められている。極めて薄いフィルム状の素材である高分子電解質膜は、その取扱いが難しく、電極との接合時、複数の単電池を積層してスタックとして組み合わせる組立作業時等の際に、しわが発生してしまうことがしばしば生じる。このようなしわが発生した状態の高分子電解質膜を用いて組み立てられた単電池、あるいはスタックでは、しわが発生した部位から反応ガス漏洩する可能性が高い。また、しわ等が全くない状態であっても、高分子電解質膜は、薄くすることが求められる上に、スタックを構成する全構成部材の中で最も機械的強度の低い部材であるため、損傷を受けやすい。電解質膜の損傷を受けた箇所では、電子絶縁性ガス不透過性を損なう可能性がある。したがって、固体高分子形燃料電池の信頼性、保守性等の向上を図るためには、高分子電解質膜部位を補強することが望まれる。

概要

(課題)低抵抗(薄膜化)と高寸法安定性両立できる、燃料電池用電解質膜を提供すること。(解決手段)高分子電解質及びポリテトラフルオロエチレンPTFE)多孔質膜を含んでなる、燃料電池用電解質膜であって、該PTFE多孔質膜小孔内表面に、該PTFE多孔質膜を構成する材料よりも弾性率の高い材料が複合化されて、該複合化されたPTFE多孔質膜が150MPa以上の弾性率を有することを特徴とする、燃料電池用電解質膜。

目的

本発明は、低抵抗(薄膜化)と高寸法安定性を両立できる、燃料電池用電解質膜を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

高分子電解質及びポリテトラフルオロエチレンPTFE)多孔質膜を含んでなる、燃料電池用電解質膜であって、該PTFE多孔質膜小孔内表面に、該PTFE多孔質膜を構成する材料よりも弾性率の高い材料が複合化されて、該複合化されたPTFE多孔質膜の少なくとも一方向(MD、又はTD) または両方向(MDとTD)が150MPa以上の弾性率を有することを特徴とする、燃料電池用電解質膜。

請求項2

該高分子電解質がフッ素化アイオノマーであることを特徴とする、請求項1に記載の電解質膜

請求項3

該PTFE多孔質膜を構成するPTFEが延伸多孔質PTFEであることを特徴とする、請求項1または2に記載の電解質膜。

請求項4

該弾性率の高い材料は、SiOx、P2O5、PbO、SrO、BaO、ZrO2の少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解質膜。

請求項5

該弾性率の高い材料は、ポリベンゾイミダゾールPBI)を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解質膜。

請求項6

該弾性率の高い材料の含有率は、該PTFE多孔質膜を基準として1.0wt%〜11wt%であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解質膜。

請求項7

ラジカル分解機能を有する触媒をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電解質膜。

請求項8

該ラジカル分解機能を有する触媒は、セリウムタングステンルテニウムパラジウム、銀、ロジウムジルコニウムイットリウムマンガンモリブデン、鉛、バナジウムチタンの少なくとも一つを含んでなることを特徴とする、請求項7に記載の電解質膜。

技術分野

0001

本発明は、燃料電池用電解質膜に関係する。

背景技術

0002

近年、高効率のエネルギー変換装置として、燃料電池が注目を集めている。燃料電池は、用いる電解質の種類により、アルカリ形、固体高分子形、リン酸形等の低温作動燃料電池と、溶融炭酸塩形固体酸化物形等の高温作動燃料電池とに大別される。これらのうち、電解質としてイオン伝導性を有する高分子電解質膜を用いる固体高分子形燃料電池PEFC)は、コンパクトな構造で高出力密度が得られ、しかも液体を電解質に用いないこと、低温運転することが可能なこと等により簡易なシステムで実現できるため、定置用、車両用携帯用等の電源として注目されている。

0003

固体高分子形燃料電池は、高分子電解質膜の片面を燃料ガス水素等)に、その反対面を酸化剤ガス(空気等)に暴露し、高分子電解質膜を介した化学反応により水を合成し、これによって生じる反応エネルギー電気的に取り出すことを基本原理としている。高分子電解質膜の両面に多孔質触媒電極を配置し、これを熱プレス等で一体形成したものを一般に膜電極接合体MEA)と呼ぶ。高分子電解質膜は、イオン伝導性を有するが、通気性および電子伝導性を有さないことにより、燃料極酸素極とを物理的かつ電子的に隔絶してイオンのみを伝導するものである。

0004

高分子電解質膜は抵抗に大きな影響を及ぼすため、膜厚のより薄いものが求められている。極めて薄いフィルム状の素材である高分子電解質膜は、その取扱いが難しく、電極との接合時、複数の単電池を積層してスタックとして組み合わせる組立作業時等の際に、しわが発生してしまうことがしばしば生じる。このようなしわが発生した状態の高分子電解質膜を用いて組み立てられた単電池、あるいはスタックでは、しわが発生した部位から反応ガス漏洩する可能性が高い。また、しわ等が全くない状態であっても、高分子電解質膜は、薄くすることが求められる上に、スタックを構成する全構成部材の中で最も機械的強度の低い部材であるため、損傷を受けやすい。電解質膜の損傷を受けた箇所では、電子絶縁性ガス不透過性を損なう可能性がある。したがって、固体高分子形燃料電池の信頼性、保守性等の向上を図るためには、高分子電解質膜部位を補強することが望まれる。

0005

特表平11−501964号公報
特開2011−146291号公報
特開2009−170244号公報

先行技術

0006

A. Kusoglu, et al., Mechanical response of fuel cell membranes subjected to a hygro−thermal cycle, Journal of Power Sources 161(2006)987−996
A. Kusoglu, et al., Aspects of fatigue failure mechanisms in polymer fuel cell membrane, Journal of Polymer Science PartB 49(2011)1506−1517

発明が解決しようとする課題

0007

補強された高分子電解質膜に関して、例えば、特許文献1は、電解質材料イオン交換樹脂)の溶液延伸多孔質PTFEに含浸させた後溶媒を除去することを開示している。これにより、延伸多孔質PTFEの孔内をイオン交換材料閉塞させた複合膜の形で補強された高分子電解質膜が得られる。(図1参照。)
しかし、この補強された高分子電解質膜であっても、さらなる強化が求められる。この要因として、電解質材料の膨潤が考えられる。固体高分子形燃料電池に使用される固体電解質膜(電解質材料)は、運転状態に応じて湿潤状態乾燥状態になることから、運転状態に起因する乾湿サイクルに晒される。その際、固体電解質膜(電解質材料)は膨潤・収縮を繰り返すことになり、それが電解質膜の機械的な劣化要因の一つとして考えられている(非特許文献1、2)。また、含水状態によって、高分子電解質膜の寸法が変化し、膜電極接合体の形成時に触媒層の位置や寸法がずれたり、しわが生じたりする問題がある。セル・スタック作製時にも、周囲環境湿度が変化することがあり、高分子電解質膜の寸法がずれたり、しわが発生したりする問題が生じ得る。電解質膜のずれやしわは、MEAの変形や、電解質膜と電極層との剥離を生じ得る、これは、酸化剤ガスと燃料ガスとの混合(クロスリーク)、燃料燃料極側から酸素極側への漏出つながり電池としての機能を失うおそれがある。
一方で、燃料電池スタック高出力密度化コストダウンのため、薄膜の高分子電解質膜の薄膜化も求められている。電解質膜の薄膜化と、乾湿サイクルにて十分な耐久性担保することとは両立が難しい。
文献2では、燃料の水素と酸化剤の酸素がクロスリークして発生する過酸化水素や、過酸化水素から派生するヒドロキシラジカルが、電解質膜の劣化を生じると考え、これを防ぐために、補強膜(PTFE)の表面および内部にラジカル補足剤(CeO2)を付着させてから、補強膜に電解質を含浸させて、電解質膜を作製することを開示している。これにより、効果的にラジカル補足することができ、ラジカルによる電解質膜の劣化を防ぐことを期待している。しかし、この方法では、補強膜(PTFE)を強化して、電解質の膨潤・収縮の問題解決にはつながらない。
文献3は、PTFE延伸多孔質膜(第1の補強材)の両面に、セラミックス多孔体含有層(第2の強化材)を積層し、積層体全体を電解質樹脂に内包した電解質膜を開示している。第1の補強材は膜の伸びを抑制し、第2の補強材は膜の収縮を抑制することを期待している。しかし、第2の強化材は、セラミックス多孔体含有層であり、平均気孔率が40%と低いので、電解質膜中で電解質材料の占める割合が低くなり、電極間の抵抗が高くなってしまう問題がある。

0008

上記に鑑みて、本発明は、低抵抗(薄膜化)と高寸法安定性を両立できる、燃料電池用電解質膜を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明により、以下が提供される。
[1]
高分子電解質及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜を含んでなる、燃料電池用電解質膜であって、
PTFE多孔質膜小孔内表面に、該PTFE多孔質膜を構成する材料よりも弾性率の高い材料が複合化されて、該複合化されたPTFE多孔質膜の少なくとも一方向(縦方向(MD: Machine Direction)、又は横方向(TD: Traverse Direction))、または両方向(MDとTD)が150MPa以上の弾性率を有することを特徴とする、燃料電池用電解質膜。
[2]
該高分子電解質がフッ素化アイオノマーであることを特徴とする、項目[1]に記載の電解質膜。
[3]
該PTFE多孔質膜を構成するPTFEが延伸多孔質PTFEであることを特徴とする、項目[1]または[2]に記載の電解質膜。
[4]
該弾性率の高い材料は、SiOx、P2O5、PbO、SrO、BaO、ZrO2の少なくとも一つを含むことを特徴とする、項目[1]〜[3]のいずれか1つに記載の電解質膜。
[5]
該弾性率の高い材料は、ポリベンゾイミダゾールPBI)を含むことを特徴とする、項目[1]〜[4]のいずれか1つに記載の電解質膜。
[6]
該弾性率の高い材料の含有率は、該PTFE多孔質膜を基準として1.0wt%〜11wt%であることを特徴とする、項目[1]〜[5]のいずれか1つに記載の電解質膜。
[7]
ラジカル分解機能を有する触媒をさらに含むことを特徴とする、項目[1]〜[6]のいずれか1つに記載の電解質膜。
[8]
該ラジカル分解機能を有する触媒は、セリウムタングステンルテニウムパラジウム、銀、ロジウムジルコニウムイットリウムマンガンモリブデン、鉛、バナジウムチタンを少なくとも一つを含んでなることを特徴とする、項目[7]に記載の電解質膜。

発明の効果

0010

本発明の電解質膜は複合化されたPTFE多孔質膜を含み、これが高い弾性率を有することにより、加湿による膨潤(膨張)、乾燥による収縮が抑制され、電解質膜の機械的な劣化が抑制され、優れた寸法安定性を有する電解質膜が実現される。
さらに、複合化はPTFE多孔質膜の小孔内表面で行われるので、PTFE多孔質膜自体の寸法および気孔率にほぼ変化がない。そのため、複合化されたPTFE膜は、強度(弾性率)を大幅に高めながら、高空孔率(別の言い方をすれば低密度)とすることができるので、電解質材料を効率よく含浸することができる。このため、プロトン伝導性が高く、低抵抗の電解質膜が実現される。

図面の簡単な説明

0011

燃料電池スタックと電解質膜の概念

0012

本発明による燃料電池用電解質膜は、高分子電解質及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜を含んでなる、燃料電池用電解質膜であって、
該PTFE多孔質膜の小孔内表面に、該PTFE多孔質膜を構成する材料よりも弾性率の高い材料が複合化されて、該複合化されたPTFE多孔質膜の少なくとも一方向(MD、又はTD) または両方向(MDとTD)が150MPa以上の弾性率を有することを特徴とする、燃料電池用電解質膜である。

0013

本発明による燃料電池用電解質膜は、高分子電解質及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜を含む。
PTFE多孔質膜は、耐熱性耐薬品性に優れ、燃料電池の材料として好ましい材料であり、かつ、フィブリルによって相互に結合されたノードを特徴とする微細多孔質構造あるいはノードなしのフィブリルを特徴とする微細多孔質構造を有している。この微細多孔質構造に、高分子電解質が実質的に含浸せしめられ、電解質膜は電子絶縁性、ガス不透過性を示す。高分子電解質は、イオン伝導性を有するので、燃料極と酸素極の間でのイオンの移動は可能である。PTFE多孔質膜は、高分子電解質を補強する役割をはたし、電解質膜としての強度を高めて、電解質膜の厚さを(高分子電解質材料のみのもの)より一層薄膜化することができ、その厚さを薄膜化することによって、プロトン輸送に対する抵抗が低減することができる。したがって、本発明による燃料電池用電解質膜は、高い強度を有する一方で、より低い抵抗をもたらすことができる。

0014

高分子電解質としては、イオン(プロトン)伝導性を有し、電子絶縁性であり、かつ、ガス不透過性であるものであれば、特に限定はされない。公知の高分子電解質材料の代表例として、フッ素化アイオノマーであってもよく、これは含フッ素高分子骨格とし、スルホン酸基カルボキシル基リン酸基ホスホン基等の基を有する樹脂である。
固体電解質膜の厚さは、抵抗に大きな影響を及ぼすため、電子絶縁性およびガス不透過性を損なわない限りにおいてより薄いものが求められ、具体的には、1〜100μm、好ましくは5〜50μmの範囲内に設定される。
本発明における高分子電解質の材料は、全フッ素化アイオノマーに限定はされず、炭化水素アイオノマー無機高分子アイオノマーとの混合物、または高分子鎖内にC−H結合とC−F結合の両方を含む部分フッ素化アイオノマーであってもよい。炭化水素系アイオノマーの具体例として、スルホン酸基等の電解質基が導入されたポリアミドポリアセタールポリエチレンポリプロピレンアクリル系樹脂ポリエステルポリスルホンポリエーテル等、およびこれらの誘導体脂肪族炭化水素系高分子電解質)、スルホン酸基等の電解質基が導入されたポリスチレン芳香環を有するポリアミド、ポリアミドイミドポリイミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルイミドポリエーテルスルホンポリカーボネート等、およびこれらの誘導体(部分芳香族炭化水素系アイオノマー)、スルホン酸基等の電解質基が導入されたポリエーテルエーテルケトンポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド等、およびこれらの誘導体(全芳香族炭化水素系アイオノマー)等が挙げられる。部分フッ素系アイオノマーの具体例としては、スルホン酸基等の電解質基が導入されたポリスチレンーグラフトエチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリスチレンーグラフトーポリテトラフルオロエチレン等、およびこれらの誘導体が挙げられる。全フッ素系アイオノマーの具体例としては、側鎖にスルホン酸基を有するパーフルオロポリマーであるナフィオン登録商標)膜(デュポン社製)、アシプレクス(登録商標)膜(旭化成社製)およびフレミオン(登録商標)膜(旭硝子社製)が挙げられる。また、無機高分子化合物としては、シロキサン系またはシラン系の、特にアルキルシロキサン系の有機珪素高分子化合物が好適であり、具体例としてポリジメチルシロキサン、γ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。

0015

PTFE多孔質膜は、高分子電解質を補強するために用いられる。PTFEは耐熱性、耐腐食性および加工性に優れたフッ素樹脂である。押出成形ビード圧延などの種々の公知の方法により、PTFEを膜に形成することができる。圧延と延伸を適宜組み合わせることにより、そのPTFE膜は極めて微細な孔を有し、その微細な孔に高分子電解質を含ませることができる。特に、PTFE膜を延伸することにより、空孔率を自在に調整できる。この点で、多孔質PTFEを、延伸多孔質PTFEとしてもよい。

0016

PTFE多孔質膜の空孔率の下限は、35%以上、好ましくは40%以上、50以上、60%以上、70%以上、80%以上でもよい。空孔率の上限は、97%以下、95%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下であってもよい。空孔率が35%未満であると、高分子電解質の含浸量が少なくなることにより、例えば燃料電池用途では発電性能が不十分となる。反対に、空孔率が97%を超えると、電解質膜の補強効果が不十分となる。
多孔質PTFEの平均孔径は、一般に0.01〜50μm、好ましくは0.05〜15μm、より好ましくは0.1〜3μmの範囲内である。平均孔径が0.01μm未満であると、補強すべき高分子電解質を補強材へ含浸することが困難なことがある。反対に、平均孔径が50μmを超えると、電解質膜の補強効果が不十分となる。
また、多孔質PTFEの膜厚は、一般に1〜30μm、好ましくは2〜20μmの範囲内である。膜厚が1μm未満であると、電解質膜の補強効果が不十分なことがある。反対に、膜厚が30μmを超えると、相対的に電解質膜中で電解質材料の占める割合が低くなり、電極間の抵抗が高くなるおそれがある。

0017

本発明では、PTFE多孔質膜の小孔内表面に、PTFE多孔質膜を構成する材料よりも弾性率の高い材料が複合化されている。この複合化されたPTFE多孔質膜の少なくとも一方向(MD、又はTD) または両方向(MDとTD)は150MPa以上の弾性率を有する。ここで、弾性率は、200mm/分の引っ張り速度で、2%伸び時点での弾性率である。

0018

高分子電解質は、運転状態に応じて湿潤状態と乾燥状態になることから、寸法変化(膨潤・収縮)を繰り返すことになり、それが電解質膜の機械的な劣化要因の一つとして考えられている。本発明では、PTFE多孔質膜よりも弾性率の高い材料で、PTFE多孔質膜を複合化することにより、PTFE多孔質膜の弾性率を高めた。その複合化されたPTFE多孔質膜の少なくとも一方向(MD、又はTD) または両方向(MDとTD)は、150MPa以上の弾性率を有する。求められる条件に応じて、弾性率はさらに向上させることができ、300MPa以上の弾性率とすることもできる。150MPa未満では、高分子電解質の膨潤・収縮を十分に抑制することができない。
弾性率が高ければ、寸法変化が生じにくく、電解質膜の機械的な劣化を抑制できる。また一時的に寸法変化が生じた場合でも、ほぼ又は完全にもとの寸法に回復する能力を有するので、恒久的に電解質膜の寸法がずれたり、しわが発生したりする問題を生じない。
さらに、本発明の補強材(複合化PTFE多孔質膜)では、高弾性率に加えて、低密度も両立するように、低密度で高空孔率の補強材(PTFE多孔質膜)の小孔内表面に、弾性率の高い材料を被覆している。これにより、高弾性率かつ高空孔率の複合化された補強材を得ることができる。

0019

PTFE多孔質膜の小孔内表面に、弾性率の高い材料を複合化することについて、より詳しく説明する。PTFE多孔質膜の微細構造は、フィブリルと呼ばれる微細な小繊維と、これらフィブリルを結び付けているノードと呼ばれる粒状の結節から構成されており、フィブリルとノードとの間に極めて微細な空孔が相互に連続した状態で存在し、いわゆる連続多孔質構造を形成している。
本発明においては、該フィブリルとノードからなる骨格を覆うように、PTFE多孔質膜を構成する材料よりも弾性率の高い材料を複合化させているが、フィブリルあるいはノードの大きさと比較すると複合化材の厚みは小さく、フィブリルとノードとの間隙部の空間は依然として存在しており、連続多孔質構造を維持している。すなわち、複合化された多孔質PTFEは、複合化される前の多孔質PTFEとほぼ同等の多孔質構造を維持することができる。そのため、複合化されたPTFE膜は、強度(弾性率)を大幅に高めながら、高空孔率(別の言い方をすれば低密度)とすることができるので、電解質材料を効率よく含浸することができる。その結果、プロトン伝導性が高く、低抵抗の電解質膜が実現される。

0020

複合化する弾性率の高い材料は、弾性率を向上させることができるものであれば、特に限定されないが、燃料電池内で使用されるため、水に対して難溶性であり、酸性雰囲気において、比較的安定して存在するものが好ましい。例えば、無機系材料であれば、弾性率の高い材料は、SiOx、P2O5、PbO、SrO、BaO、ZrO2の少なくとも一つを含んでもよい(ここで、0<x≦2としてもよい)。また、有機系材料であれば、弾性率の高い材料は、ポリベンゾイミダゾール(PBI)を含んでもよい。

0021

複合化する弾性率の高い材料の含有率は、PTFE多孔質膜を基準として、1.0wt%〜11wt%としてもよい。この割合は用途、目的、処理法等により適宜変更し得る。好ましくは、下限を2%以上、4%以上、6%以上としてもよい。好ましくは、上限を9%以下、7%以下、5%以下としてもよい。含有率が1.0wt%未満では、複合化による弾性率を向上する効果が十分に得られない。含有率が11%を超えると、弾性率を向上する効果が飽和する一方で、PTFE多孔質膜の小孔が閉塞ぎみになり、相対的に高分子電解質の占める割合が低下し、抵抗が上昇するおそれが生じる。

0022

複合化する弾性率の高い材料を、PTFE多孔質膜の小孔内表面に複合化する方法は特に限定されず、コーティング、含浸(ディッピング)、スプレー法等を用いて、弾性率の高い材料を含む溶液を塗布してもよい。複合化したPTFE多孔質膜は風乾もしくは熱処理して溶剤蒸発させる。

0023

複合化する弾性率の高い材料は、常法にしたがって有機溶媒を用いたコート液水性乳濁液エアゾールなどの任意の形態に調製できる。コート液の溶媒は、弾性率の高い材料の溶解性あるいは分散性の観点から、好ましいものを選択することができる。また、塗布するPTFE多孔質膜との濡れ性の観点から、コート液の溶媒はフッ素系の溶媒であってもよい。フッ素系の溶媒の例を以下に示すが、これらの例に限定されない。

0024

パーフルオロベンゼンヘキサフルオロメタキシレン等のポリフルオロアロマティック化合物、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミン等のポリフルオロトリアルキルアミン化合物、パーフルオロヘキサンパーフルオロオクタン、(パーフルオロ−n−オクチルエタン、パーフルオロ(2,3,5−トリメチルヘキサン)、などのポリフルオロアルカン化合物、(パーフルオロ−n−オクチル)エチレンなどのポリフルオロオレフィン化合物、パーフルオロシクロヘキサンパーフルオロデカリン等のポリフルオロシクロアルカン化合物、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)などのポリフルオロサイクリックエーテル化合物、さらにトリクロロトリフルオロエタン等のクロロフルオロカーボン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパンなどのクロフルオロハイドロカーボンフッ素含有分子量ポリエーテルなどである。これら溶媒は単独又は混合で用いることができる。

0025

ゾルゲル法を用いて、PTFE多孔質膜の小孔内表面に、弾性の高い材料を複合化してもよい。ゾルゲル法では、加水分解される基を有する分子から出発して、縮合によりコロイド分散的に溶解する粒子ゾル)を形成する。このゾルは、通常、縮合反応を完全には進行させないことで、液体状のコーティング材料として使用できる。細孔内にゾルを所望する程度までコーティングした後、縮合により生成した構造を構築する(ゲル)。この縮合の際に、必要に応じて、ほかの架橋機構(例えば、有機官能基重合)も使用してもよい。このゲルを、熱処理または真空処理することにより、内部に残された溶媒を取り除き、さらに緻密化を促進する。このようにして、細孔内表面に弾性率の高い材料を被覆することができる。ゾルゲル法は、SiOx等の複合化に用いことが好ましい。SiOx等を複合化する他の方法(溶融ガラス法、粉体焼結法等)と比較して、ゾルゲル法は低温で容易に作製することが可能である。また、化学反応を利用し、低温で作製することが可能となることから有機物(PTFE)と無機物(SiOX等)の複合化が可能となる。

0026

本発明の電解質膜は、ラジカル分解機能を有する触媒をさらに含んでもよい。
ラジカル分解機能を有する触媒とは、H2O2+M→・OH+OH−+M+や、H2O2+M→・OOH+H++M等の反応式で生成されるヒドロキシラジカルの生成を抑制するものであり、ヒドロキシラジカルと反応し、ヒドロキシラジカルを水酸化イオンに変えることができる、触媒である(Mはラジカル分解機能を有する触媒)。これにより、ヒドロキシラジカルによる電解質膜の劣化を抑制することができる。

0027

この触媒を電解質膜に含ませる方法は、特に限定されないが、金属酸化物や当該遷移金属の塩等を、高分子電解質の溶液に分散後、該高分子電解質を固化すること、あるいは、当該遷移金属を溶解性または非溶解性の塩または他の化合物の形で高分子電解質に含有させた後、加水分解、ゾルゲル反応酸化還元反応または他の反応によって固体酸化物の形にしてもよい。

0028

過酸化物を分解する触媒能を有する遷移元素または希土類元素としては、固体高分子形燃料電池の運転中に電極層において生成する過酸化物(特に過酸化水素)を速やかに分解するものであれば特に限定はされない。そのような遷移元素または希土類元素の一例として、セリウム、タングステン、ルテニウム、パラジウム、銀、ロジウム、ジルコニウム、イットリウム、マンガン、モリブデン、鉛、バナジウム、チタンが挙げられる。

0029

以下、実施例を用いて、本願発明について説明をするが、本発明は実施例に限定して解釈されるべきものではない。

0030

1.複合化PTFE多孔質膜の作製
PTFE多孔質膜の小孔内表面に、PTFE多孔質膜を構成する材料よりも弾性率の高い材料を複合化して、複合化PTFE多孔質膜を作製した。PTFE多孔質膜に複合化する材料の含有率、種類を変化させて、数種の複合化PTFE多孔質膜を作製した。複合化しないPTFE多孔質膜も作製した。得られた多孔質膜について、弾性率を測定した。

0031

以下に、具体的な複合化PTFE多孔質膜の作製条件を示す。
[実施例1〜4]
SiOx(ガラス状物質コート剤(新技術総合研究所 Siragusital B4547)をIPAにて希釈し、所定の濃度に調整した。濃度調整した液を、比較例1に示す特に処理をしていない延伸多孔質PTFE(日本ゴア(株)製)[空孔率80%、平均孔径0.2μm、膜厚8μm]の小孔内表面にコーティングし、60℃のオーブンにて5分乾燥させることによりSiOxを表面に固着させた延伸多孔質PTFE膜を作製した。SiOxの固着量は、蛍光X線分析装置((株)島津製作所製 XRF−1700)にて定量化した。
[実施例5]
SiOx(ガラス状物質)コート剤(新技術総合研究所 Siragusital B4547)をIPAにて希釈し、所定の濃度に調整した。濃度調整した液を、比較例2に示す酸化セリウムを表面にコーティングした延伸多孔質PTFE(日本ゴア(株)製)の表面にコーティングし、60℃のオーブンにて乾燥させることによりSiOxを表面に固着させた延伸多孔質PTFE膜を作製した。SiOxの固着量は、蛍光X線分析装置((株)島津製作所製 XRF−1700)にて定量化した。
[比較例1]
比較対象として、コーティング処理を行っていない延伸多孔質PTFE(日本ゴア(株)製)を用いた。
[比較例2]
比較対象として、酸化セリウムを表面にコーティングした延伸多孔質PTFE(日本ゴア(株)製)を用いた。酸化セリウムをコーティングする方法は、実施例と同様の方法を用いた。

0032

弾性率測定
上記の実施例、及び比較例で得たPTFE多孔質膜の弾性率を求めた。測定条件は、23℃RH50%の条件にて、引っ張り圧縮試験機((株)エー・アンド・デイRTG−1210)を用いて200mm/分の引っ張り速度でS/Sカーブを取得し、2%伸び時点での弾性率を算出した。弾性率は、MD方向とTD方向のそれぞれを測定した。

0033

実施例、および比較例のPTFE多孔質膜について、そのコーティング材(SiOx)の含有率、弾性率を表1に示す。なお、これらのPTFE多孔質膜について、電子顕微鏡による観察を行ったところ、小孔がコーティング材で閉塞することなく、多孔質構造が維持されていることを確認できた。

0034

- 比較例では、SiOxの固着は測定されなかった。比較例2(実施例5)ではCeO2が測定され、CeO2含有率は1%であった。

0035

コーティング材料(SiOx)の含有率が増加するにつれて、弾性率(MD)および弾性率(TD)が増加することが確認された。比較例は、いずれも弾性率が150MPa未満であった。

0036

2.電解質膜の作製
実施例1〜5および比較例1、2にて示した多孔質膜にそれぞれ、高分子電解質(イオン交換樹脂)溶液(W.L.GORE&Associates,Inc製)を含浸させ(目付量20g/m2)、100℃のオーブンにて5分間乾燥させて、延伸多孔質PTFEにて補強された固体高分子電解質膜(厚み:10μm)を得た。得られた固体高分子電解質膜について、膨潤させたときの寸法変化率、MEAとしたときの発電性能を測定した。

0037

3.膨潤による寸法変化率の測定
CNC画像測定システム((株)ニコン製 NEXIV)を用いて実施例1〜5および比較例1、2で得た多孔質膜を用いた電解質膜の乾燥時の寸法を測定した。続いてそれら電解質膜を100℃に保持したイオン交換水中にて10分間煮沸した後、熱水から電解質膜を取り出し速やかに画像測定システムを用いて膨潤時の寸法を測定した。得られた乾燥時および膨潤時の寸法を用いて、以下の式により、寸法変化率を算出した。
寸法変化率={(膨潤時の寸法)−(乾燥時の寸法)}/(乾燥時の寸法)×100
寸法変化率を表2に示す。

0038

0039

実施例では、MD方向の寸法変化がいずれも0.5%未満あり、良好な寸法安定性が示された。TD方向について、実施例1〜4(比較例1にSiOxコーティングしたもの)は、比較例1よりも寸法変化率が低減しており、寸法安定性の向上が確認された。実施例5(比較例2にSiOxコーティングしたもの)も、比較例2よりも寸法変化率が低減しており、寸法安定性の向上が確認された。

0040

4.膜電極接合体作製および発電試験
以下に示す手順により、電池評価に用いた膜電極接合体(MEA)を作成した。
得られた電解質膜を中央に配置し、アノード極にはPRIMEA(登録商標)#5584 (Pt担持量0.1mg/cm2:日本ゴア(株)製)、カソード極にはPRIMEA(登録商標)#5580 (Pt担持量0.4mg/cm2:日本ゴア(株)製)を用いて熱プレスを行いデカール法にてMEAを作製した。
撥水化カーボンペーパー(CARBEL(登録商標)CNW20B:日本ゴア(株)製)2枚の間に各膜電極接合体を配置して発電セルに組み込み、常圧にて水素(利用率77%)/空気(利用率50%)を供給し、セル温度80℃にて初期発電試験を実施した。ガス露点は高加湿条件として、アノードカソード共に露点80℃のガスを供給した。また、低加湿条件として、アノード・カソード共に露点55℃のガスを供給した。低加湿条件の場合は50kPaの背圧をかけた。そこで得られたセル電圧0.6Vにおける電流密度を表3に示す。

0041

実施例

0042

SiOxのコーティングを行わなかった比較例と比べて、SiOxのコーティングを行った実施例の多くは、電流密度が向上するかまたはほぼ同等であることが確認された。ただし、SiOxのコーティングの含有率が増加するにつれて、電流密度が低下する傾向が確認された、これは相対的に高分子電解質(イオン交換樹脂)の占める割合が低下することによると考えられる。

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