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課題・解決手段
概要
背景
ドーナツ類は、世界中で老若男女を問わず好まれている食品の1つであり、日本国内においても種々のドーナツ類が販売されている。例えばケーキドーナツ、フレンチドーナツ、イーストドーナツなどがある。これらは、いずれも小麦粉等の原料生地を混練し、これを成型して、油で揚げる(油ちょう)ことで最終製品となる。該ドーナツ類の製造においては、通常、生地を油で揚げる際に原料の膨張により組織が多孔質状に変っており、油を吸収しやすく、最終製品には大量の油が含まれている。
近年、健康志向の高まりの中で、食物からの油の摂り過ぎにより体内のコレステロールの蓄積が助長されることが明らかになっている。その弊害が強調されるところとなり、日常の食生活における油脂の摂取を抑制しようとする機運が高まっている。このため、ドーナツ類などの油ちょう食品についても、できるだけ油の含有量を低減した製品が志向されるようになっている。
油の含有量を低減した製品の志向が高まる中で、従来よりドーナツ類のような油ちょう食品の製造に際して、できるだけ油の含有量を低減した製品を得る方法が種々提案されている。例えば、油ちょう食品の製造に際して、各種添加成分を添加して、油ちょうにおける吸油含量を低減する方法として、特開昭60−130353号公報には、炭酸カルシウムや、酢酸カルシウムのようなカルシウム剤を生地に添加する方法が、特開平3−143344号公報には、生地におからを加える方法が、特開2000−210026号公報には、生地中にラクトアルブミンを添加する方法が、特開2002−125579号公報には、ドーナッツ生地中にペクチンとバイタルグルテンを添加する方法が開示されている。
また、特開2003−210118号公報には、原料小麦粉等に、ジェットミル等で粉砕した多糖類を添加する方法が、特開2005−58082号公報には、ドーナッツ生地中にペクチンとグルコースオキシダーゼを添加する方法が、特開2005−80583号公報、特開2005−80584号公報には、乾燥酵母、或いはグルタチオン高含有酵母を吸油抑制剤として用いる方法が、特開2005−192506号公報には、鶏肉、豚肉、牛肉のような動物性タンパク質を生地改質組成物として用いる方法が、特開2010−268693号公報には、水溶性セルロースエーテルの水溶液と穀粉類とを含む油ちょう用ドウ組成物を用いる方法が開示されている。これらの開示の方法は、ドーナツ類のような油ちょう食品の製造に際して、油ちょうにおける吸油含量を低減する方法として開示されているものであるが、該方法のものは、添加成分の油ちょう食品における味覚、食感や風味への影響が避けられず、油ちょう食品の吸油量の改善を図ることはできるが、ドーナツ類のような油ちょう食品の味覚や食感において、嗜好性に優れた製品を提供する点では満足のいくものとはなっていない。
ドーナツ類のような油ちょう食品の製造に際して、油ちょうにおける吸油量を低減し、油の含有量を低減した製品を得る方法として、でん粉類を用いる方法も開示されている。例えば、特開2001−333691号公報には、ドーナッツ等の油ちょう品の製造に用いられるベーキングパウダーに、速効性の酸性剤と中速効性の酸性剤からなる膨張剤、重曹からなる膨張剤と、α化でん粉とを含有させ、油ちょう品の油の吸収量を低減させる方法が、特開2004−33139号公報には、原料玄米に、部分α化処理し、乾燥、粉砕した玄米粉を含有させた揚げ物用粉を用いて、吸油量の低減された、サクサクした食感の油ちょう食品を製造する方法が開示されている。
また、特開2004−73140号公報には、でん粉スラリーを油脂の共存化で加熱して調製された油脂α化でん粉質を主原料に配合することにより、油の吸収量を低減したドーナッツ類を製造する方法が、特表2009−537136号公報には、アルキルコハク酸でん粉或いはアルケニルコハク酸でん粉のような疎水性でん粉により、食品材料中のクックアップでん粉或いはインスタントスターチを部分的に置換し、油ちょう食品の吸油量を低減する方法が開示されている。これらの開示のものも、ドーナッツ等の油ちょう食品の製造に際して、油の吸収量の低減を図るものであるが、これらのα化でん粉を含んだ油ちょう食品では、ドーナッツ等の油ちょう食品において望まれる食味、食感、例えば、喫食時のもちもちとした食感を得ることは難しく、油ちょう食品における食味、食感を直接改善するものとはなっていない。また、油ちょう時の吸油低減のためにα化でん粉を多く使用するとドーナツ形状が安定せず、均一なドーナツを得ることが困難であった。
ドーナツ類のような油ちょう食品においては、嗜好性の多様化もあって、ドーナツ類にサクサク感だけでなく、もちもちとした食感(以下、もち食感)を好む消費者が多くなっている。これらの嗜好性を踏まえ、フライ食品に餅様食感を付与したフライ食品の製造方法も開示されている。例えば、特開平10−313787号公報には、タピオカでん粉或いは加工タピオカでん粉(エーテル化、エステル化、酸化、架橋)を主材料として含有し、チーズを混合した原料粉を特に冷凍生地の調製に用いて、吸油率を1.5〜5%(重量)とした餅様食感するフライ食品が開示されている。この開示のものは、特に、冷凍生地を用いたフライ食品の製造に向けられたものであり、生地原料に配合するでん粉類として、タピオカでん粉や、加工タピオカでん粉が使用されているが、該開示の方法を、ドーナツ類のような油ちょう食品の製造に適用したとしても、油ちょう食品の本来の食味、風味を保持した、ソフトなもち食感の油ちょう食品を得ることはできない。
概要
ドーナツ類製造に際して、油ちょう時の吸油量を低減させるとともに、ドーナツ類本来の味覚及び風味が保持され、且つソフトな、もち食感が付与された、吸油含量の低減と、食味、食感において、嗜好性に優れたドーナツ類を提供することを課題とし、該課題を解決するために、小麦粉とでん粉を含むドーナツ類において、小麦粉とでん粉の合計100重量部のうち、糊化開始温度が30℃以上63℃以下であるでん粉及び/又は加工でん粉を5重量部以上90重量部以下含ませることにより、吸油量の低減とモチ食感を付与したドーナツ類を製造する。
目的
これらの開示の方法は、ドーナツ類のような油ちょう食品の製造に際して、油ちょうにおける吸油含量を低減する方法として開示されているものであるが、該方法のものは、添加成分の油ちょう食品における味覚、食感や風味への影響が避けられず、油ちょう食品の吸油量の改善を図ることはできるが、ドーナツ類のような油ちょう食品の味覚や食感において、嗜好性に優れた製品を提供する
効果
実績
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この技術が所属する分野
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請求項1
小麦粉とでん粉を含むドーナツ類において、小麦粉とでん粉の合計100重量部のうち、糊化開始温度が30℃以上63℃以下であるでん粉及び/又は加工でん粉を5重量部以上90重量部以下含ませることを特徴とする吸油量の低減とモチ食感を付与したドーナツ類の製造方法。
請求項2
小麦粉とでん粉を含むドーナツ類において、小麦粉とでん粉の合計100重量部のうち、糊化開始温度が30℃以上63℃以下のでん粉及び/又は加工でん粉の含有量が、15重量部以上70重量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の吸油量の低減とモチ食感を付与したドーナツ類の製造方法。
請求項3
糊化開始温度が30℃以上63℃以下のでん粉が、ワキシータピオカでん粉、ヒドロキシプロピルでん粉及び/又はアセチルでん粉から選択される1又は2以上のでん粉であることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸油量の低減とモチ食感を付与したドーナツ類の製造方法。
請求項4
請求項5
小麦粉とでん粉を含むドーナツ類の製造において、小麦粉とでん粉の合計100重量部のうち、糊化開始温度が30℃以上63℃以下のでん粉及び/又は加工でん粉の含有量を、5重量部以上90重量部以下に調整することにより、製造したドーナツ類の吸油量の低減とモチ食感とを付与する方法。
請求項6
請求項1〜4のいずれかに記載のドーナツ類の製造方法又は請求項5に記載のドーナツ類の吸油量の低減とモチ食感とを付与する方法により製造された吸油量の低減とモチ食感を付与したドーナツ類。
請求項7
技術分野
背景技術
0002
ドーナツ類は、世界中で老若男女を問わず好まれている食品の1つであり、日本国内においても種々のドーナツ類が販売されている。例えばケーキドーナツ、フレンチドーナツ、イーストドーナツなどがある。これらは、いずれも小麦粉等の原料生地を混練し、これを成型して、油で揚げる(油ちょう)ことで最終製品となる。該ドーナツ類の製造においては、通常、生地を油で揚げる際に原料の膨張により組織が多孔質状に変っており、油を吸収しやすく、最終製品には大量の油が含まれている。
0003
近年、健康志向の高まりの中で、食物からの油の摂り過ぎにより体内のコレステロールの蓄積が助長されることが明らかになっている。その弊害が強調されるところとなり、日常の食生活における油脂の摂取を抑制しようとする機運が高まっている。このため、ドーナツ類などの油ちょう食品についても、できるだけ油の含有量を低減した製品が志向されるようになっている。
0004
油の含有量を低減した製品の志向が高まる中で、従来よりドーナツ類のような油ちょう食品の製造に際して、できるだけ油の含有量を低減した製品を得る方法が種々提案されている。例えば、油ちょう食品の製造に際して、各種添加成分を添加して、油ちょうにおける吸油含量を低減する方法として、特開昭60−130353号公報には、炭酸カルシウムや、酢酸カルシウムのようなカルシウム剤を生地に添加する方法が、特開平3−143344号公報には、生地におからを加える方法が、特開2000−210026号公報には、生地中にラクトアルブミンを添加する方法が、特開2002−125579号公報には、ドーナッツ生地中にペクチンとバイタルグルテンを添加する方法が開示されている。
0005
また、特開2003−210118号公報には、原料小麦粉等に、ジェットミル等で粉砕した多糖類を添加する方法が、特開2005−58082号公報には、ドーナッツ生地中にペクチンとグルコースオキシダーゼを添加する方法が、特開2005−80583号公報、特開2005−80584号公報には、乾燥酵母、或いはグルタチオン高含有酵母を吸油抑制剤として用いる方法が、特開2005−192506号公報には、鶏肉、豚肉、牛肉のような動物性タンパク質を生地改質組成物として用いる方法が、特開2010−268693号公報には、水溶性セルロースエーテルの水溶液と穀粉類とを含む油ちょう用ドウ組成物を用いる方法が開示されている。これらの開示の方法は、ドーナツ類のような油ちょう食品の製造に際して、油ちょうにおける吸油含量を低減する方法として開示されているものであるが、該方法のものは、添加成分の油ちょう食品における味覚、食感や風味への影響が避けられず、油ちょう食品の吸油量の改善を図ることはできるが、ドーナツ類のような油ちょう食品の味覚や食感において、嗜好性に優れた製品を提供する点では満足のいくものとはなっていない。
0006
ドーナツ類のような油ちょう食品の製造に際して、油ちょうにおける吸油量を低減し、油の含有量を低減した製品を得る方法として、でん粉類を用いる方法も開示されている。例えば、特開2001−333691号公報には、ドーナッツ等の油ちょう品の製造に用いられるベーキングパウダーに、速効性の酸性剤と中速効性の酸性剤からなる膨張剤、重曹からなる膨張剤と、α化でん粉とを含有させ、油ちょう品の油の吸収量を低減させる方法が、特開2004−33139号公報には、原料玄米に、部分α化処理し、乾燥、粉砕した玄米粉を含有させた揚げ物用粉を用いて、吸油量の低減された、サクサクした食感の油ちょう食品を製造する方法が開示されている。
0007
また、特開2004−73140号公報には、でん粉スラリーを油脂の共存化で加熱して調製された油脂α化でん粉質を主原料に配合することにより、油の吸収量を低減したドーナッツ類を製造する方法が、特表2009−537136号公報には、アルキルコハク酸でん粉或いはアルケニルコハク酸でん粉のような疎水性でん粉により、食品材料中のクックアップでん粉或いはインスタントスターチを部分的に置換し、油ちょう食品の吸油量を低減する方法が開示されている。これらの開示のものも、ドーナッツ等の油ちょう食品の製造に際して、油の吸収量の低減を図るものであるが、これらのα化でん粉を含んだ油ちょう食品では、ドーナッツ等の油ちょう食品において望まれる食味、食感、例えば、喫食時のもちもちとした食感を得ることは難しく、油ちょう食品における食味、食感を直接改善するものとはなっていない。また、油ちょう時の吸油低減のためにα化でん粉を多く使用するとドーナツ形状が安定せず、均一なドーナツを得ることが困難であった。
0008
ドーナツ類のような油ちょう食品においては、嗜好性の多様化もあって、ドーナツ類にサクサク感だけでなく、もちもちとした食感(以下、もち食感)を好む消費者が多くなっている。これらの嗜好性を踏まえ、フライ食品に餅様食感を付与したフライ食品の製造方法も開示されている。例えば、特開平10−313787号公報には、タピオカでん粉或いは加工タピオカでん粉(エーテル化、エステル化、酸化、架橋)を主材料として含有し、チーズを混合した原料粉を特に冷凍生地の調製に用いて、吸油率を1.5〜5%(重量)とした餅様食感するフライ食品が開示されている。この開示のものは、特に、冷凍生地を用いたフライ食品の製造に向けられたものであり、生地原料に配合するでん粉類として、タピオカでん粉や、加工タピオカでん粉が使用されているが、該開示の方法を、ドーナツ類のような油ちょう食品の製造に適用したとしても、油ちょう食品の本来の食味、風味を保持した、ソフトなもち食感の油ちょう食品を得ることはできない。
先行技術
0009
特開昭60−130353号公報
特開平3−143344号公報
特開平10−313787号公報
特開2000−210026号公報
特開2001−333691号公報
特開2002−125579号公報
特開2003−210118号公報
特開2004−33139号公報
特開2004−73140号公報
特開2005−58082号公報
特開2005−80583号公報
特開2005−80584号公報
特開2005−192506号公報
特開2010−268693号公報
特表2009−537136号公報
発明が解決しようとする課題
0010
本発明の課題は、ドーナツ類のような油ちょう食品の製造に際して、健康志向から、できるだけ油の含有量を低減した製品が志向される中で、ドーナツ類製造に際して、油ちょう時の吸油量を低減させるとともに、ドーナツ類本来の味覚及び風味が保持され、且つソフトな、もち食感が付与された、吸油含量の低減と、食味、食感において、嗜好性に優れたドーナツ類及びその製造方法を提供することにある。
課題を解決するための手段
0011
本発明者らは、前記課題を解決するために、ドーナツ類の製造における吸油含量の低減と、ドーナツ類本来の味覚及び風味の保持、及び、ドーナツ類の志向される食感を得る方法について鋭意検討する中で、特定のでん粉及び/又は加工でん粉を、小麦粉及びでん粉を含むドーナッツ原料に特定量含有させることにより、油ちょう時の吸油量を低減し、且つソフトなもち食感を付与することが可能であり、しかも、ドーナツ類本来の味覚及び風味を保持した吸油含量の低減と、食味、食感において、嗜好性に優れたドーナツ類を製造することが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
0012
すなわち、本発明は、小麦粉とでん粉を含むドーナツ類において、小麦粉とでん粉の合計100重量部のうち、糊化開始温度が30℃以上63℃以下であるでん粉及び/又は加工でん粉を5重量部以上90重量部以下含ませることを特徴とする吸油量の低減とモチ食感を付与したドーナツ類の製造方法からなる。
0013
本発明のドーナツ類の製造方法において、小麦粉及びでん粉を含むドーナッツ原料に配合されるでん粉及び/又は加工でん粉としては、糊化開始温度が30℃以上63℃以下のものが用いられるが、特に好ましくは、49℃以上63℃以下のものを用いることができる。また、本発明のドーナツ類の製造方法において、小麦粉及びでん粉を含むドーナッツ原料に配合される糊化開始温度が30℃以上63℃以下のでん粉及び/又は加工でん粉は、小麦粉とでん粉の合計100重量部のうち、該でん粉及び/又は加工でん粉を5重量部以上90重量部以下の割合で配合することができるが、特に、好ましくは、該でん粉及び/又は加工でん粉の含有量が、15重量部以上70重量部以下となるように配合することができる。
0014
本発明のドーナツ類の製造方法において、小麦粉及びでん粉を含むドーナッツ原料に配合される糊化開始温度が30℃以上63℃以下のでん粉及び/又は加工でん粉としては、糊化開始温度が30℃以上63℃以下のワキシータピオカでん粉、ヒドロキシプロピルでん粉及び/又はアセチルでん粉から選択される1又は2以上のでん粉を挙げることができる。該ヒドロキシプロピルでん粉としては、置換度0.06以上0.12以下のヒドロキシプロピルタピオカでん粉を挙げることができる。
0015
本発明は、小麦粉とでん粉を含むドーナツ類の製造において、小麦粉とでん粉の合計100重量部のうち、糊化開始温度が30℃以上63℃以下のでん粉及び/又は加工でん粉の含有量を、15重量部以上70重量部以下に調整することにより、製造したドーナツ類の吸油量の低減とモチ食感とを付与する方法の発明を包含する。
0016
また、本発明は、本発明のドーナツ類の製造方法又はドーナツ類の吸油量の低減とモチ食感とを付与する方法により製造された吸油量の低減とモチ食感を付与したドーナツ類自体の発明を包含する。更に、本発明は、小麦粉とでん粉を含むドーナツ類製造用プレミックスにおいて、小麦粉とでん粉の合計100重量部のうち、糊化開始温度が30℃以上63℃以下であるでん粉及び/又は加工でん粉を5重量部以上90重量部以下含ませるように配合した吸油量の低減とモチ食感を付与したドーナツ類製造用のプレミックスの発明を包含する。
0017
すなわち、本発明は具体的には、
(1)小麦粉とでん粉を含むドーナツ類において、小麦粉とでん粉の合計100重量部のうち、糊化開始温度が30℃以上63℃以下であるでん粉及び/又は加工でん粉を5重量部以上90重量部以下含ませることを特徴とする吸油量の低減とモチ食感を付与したドーナツ類の製造方法や、
(2)小麦粉とでん粉を含むドーナツ類において、小麦粉とでん粉の合計100重量部のうち、糊化開始温度が30℃以上63℃以下のでん粉及び/又は加工でん粉の含有量が、15重量部以上70重量部以下であることを特徴とする上記(1)に記載の吸油量の低減とモチ食感を付与したドーナツ類の製造方法や、
(3)糊化開始温度が30℃以上63℃以下のでん粉が、ワキシータピオカでん粉、ヒドロキシプロピルでん粉及び/又はアセチルでん粉から選択される1又は2以上のでん粉であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の吸油量の低減とモチ食感を付与したドーナツ類の製造方法や、
(4)ヒドロキシプロピルでん粉が、置換度0.06以上0.12以下のヒドロキシプロピルタピオカでん粉であることを特徴とする上記(3)に記載の吸油量の低減とモチ食感を付与したドーナツ類の製造方法、からなる。
0018
また、本発明は、
(5)小麦粉とでん粉を含むドーナツ類の製造において、小麦粉とでん粉の合計100重量部のうち、糊化開始温度が30℃以上63℃以下のでん粉及び/又は加工でん粉の含有量を、5重量部以上90重量部以下に調整することにより、製造したドーナツ類の吸油量の低減とモチ食感とを付与する方法や、
(6)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のドーナツ類の製造方法又は請求項5に記載のドーナツ類の吸油量の低減とモチ食感とを付与する方法により製造された吸油量の低減とモチ食感を付与したドーナツ類や、
(7)小麦粉とでん粉を含むドーナツ類製造用プレミックスにおいて、小麦粉とでん粉の合計100重量部のうち、糊化開始温度が30℃以上63℃以下であるでん粉及び/又は加工でん粉を5重量部以上90重量部以下含ませるように配合したことを特徴とする吸油量の低減とモチ食感を付与したドーナツ類製造用のプレミックス、からなる。
発明の効果
0019
本発明は、ドーナツ類のような油ちょう食品の製造に際して、健康志向及び嗜好性からの要望を満足する、油ちょう時の吸油量を低減させるとともに、ドーナツ類本来の味覚及び風味が保持され、且つソフトな、もち食感が付与された、吸油含量の低減と、食味、食感において、嗜好性に優れたドーナツ類及びその製造方法を提供する。また、本発明のドーナツ類の製造方法は、本発明の小麦粉とでん粉を含むドーナツ類製造用プレミックスを用いることにより、均一な形状をしたドーナツ類を安定的に製造できる方法を提供する。
0020
本発明は、小麦粉とでん粉を含むドーナツ類において、小麦粉とでん粉の合計100重量部のうち、糊化開始温度が30℃以上63℃以下であるでん粉及び/又は加工でん粉を5重量部以上90重量部以下含ませることで、油ちょう時の吸油量が低減され、モチモチした食感に優れたドーナツ類、及び該ドーナツ類を製造する方法からなる。
0021
本発明において、ドーナツ類とは、ベーキングパウダーで膨らませたケーキ生地を油で揚げたケーキドーナツ、イーストで発酵させたパン生地を油で揚げたイーストドーナツ、卵を多量に加えて柔らかい生地をつくり、それを絞り袋につめて輪型にしぼり、油で揚げたフレンチドーナツなどをいう。
0022
本発明では、加工処理を施していないでん粉をでん粉又は生でん粉というのに対し、化学的処理及び/又は物理的処理を施したでん粉を加工でん粉という。一般的な加工でん粉としては、ヒドロキシプロピル化、アセチル化、架橋、酸化及び酸浸漬処理でん粉が挙げられる。ここで、ヒドロキシプロピル化とは、でん粉にプロピレンオキサイドを反応させる処理を指し、アセチル化とは、でん粉に無水酢酸又は酢酸ビニールモノマー等を反応させる処理を指し、常法に従って実施できる。架橋とは、でん粉にメタリン酸塩、オキシ塩化リンなどの架橋剤を加え反応させる等の処理を指し、常法に従って実施できる。酸化とは、でん粉に次亜塩素酸Naを作用させる処理を指し、酸浸漬とはでん粉に硫酸を作用させる処理を指し、いずれも常法に従って実施できる。また、でん粉を水の存在下、ドラムドライヤー、エクストルーダー、スプレードライヤーなどを用いて加熱し、でん粉を一旦糊化させ、その後乾燥することで粉末状にしたでん粉をα化でん粉という。α化でん粉の糊化開始温度は一般に30℃未満である。
0023
でん粉の糊化とは、でん粉粒が水中で急激に吸水し、粘性の強い液となる現象をいう。糊化が始まる温度を糊化開始温度という。糊化開始温度は、例えばブラベンダービスコグラフ(ブラベンダー社製)により測定することができる。
0024
本発明において、糊化開始温度が30℃以上63℃以下の加工でん粉としては、化学的処理により糊化開始温度が30℃以上63℃以下となるように調製したでん粉を挙げることができる。該でん粉類の糊化開始温度において、特に好ましい糊化開始温度のでん粉類としては、49℃以上63℃以下のものを挙げることができる。好ましい加工でん粉としては、ヒドロキシプロピル化でん粉及び/又はアセチル化でん粉を挙げることができる。このような加工でん粉の原料としては、コーンでん粉、ワキシコーンでん粉、馬鈴薯でん粉、ワキシーポテトでん粉、小麦でん粉、もち種小麦でん粉、タピオカでん粉、ワキシータピオカでん粉、サゴでん粉、緑豆でん粉、えんどう豆でん粉、米でん粉、もち米でん粉および甘藷でん粉などのでん粉を挙げることができる。
0025
本発明において、糊化開始温度が30℃以上63℃以下の加工でん粉として用いられるヒドロキシプロピル化でん粉及び/又はアセチル化でん粉において、ヒドロキシプロピル化でん粉のヒドロキシプロピル基の置換割合、アセチル化でん粉のアセチル基の割合を示す指標に置換度(でん粉の無水グルコース残基当たりの置換基のモル数で表す)がある。本発明において好ましい置換度は0.02以上0.20以下であり、より好ましい置換度は0.06以上0.15以下である。この範囲において糊化開始温度が30℃以上63℃以下であれば、油ちょう時の吸油量が低減でき、且つ、もちもちした食感が好ましいものとなる。置換度の測定方法はでん粉・関連糖質実験法(中村,貝沼編,学会出版センター)に記載の方法に準じて測定することができる。
0026
本発明において、糊化開始温度が30℃以上63℃以下の生でん粉としては、ワキシータピオカでん粉を用いることができる。
0027
本発明によれば、小麦粉とでん粉を含むドーナツ類に、糊化開始温度が30℃以上63℃以下のでん粉及び/又は加工でん粉を、小麦粉とでん粉の合計100重量部のうち5重量部以上90重量部以下、より好ましくは、15重量部以上70重量部以下を含ませることで、油ちょう時の吸油量を低減でき、もちもちした食感のドーナツ類を得ることができる。糊化開始温度が30℃以上63℃以下のでん粉及び/又は加工でん粉が90重量部を超えた場合、吸油量については低減できるものの得られるドーナツ類は固くなってしまい好ましくない。糊化開始温度が30℃以上63℃以下のでん粉及び/加工でん粉が5重量部未満では、吸油低減効果及びモチモチした食感が不十分となる。
0028
本発明のドーナッツ類の製造方法においては、小麦粉とでん粉を含むドーナッツ類の製造原料において、小麦粉と糊化開始温度30℃以上63℃以下のでん粉を、本発明の配合割合に従い、ドーナツ類の製造時に混合することにより行うことができるが、該ドーナッツ類の製造原料を、本発明の配合割合により、プレミックスとして調製することができ、本発明のドーナッツ類の製造方法においては、該あらかじめ混合し、調製したプレミックス粉をドーナツの製造原料に用いて行うこともできる。
0029
本発明のドーナッツ類の製造方法においては、上記小麦粉とでん粉原料以外に、必要に応じて、イースト及び/又はベーキングパウダー等の発酵剤及び/又は膨張剤、砂糖、水、更に必要に応じて副原料等を用いることができる。
0030
本発明のドーナッツ類の製造方法において用いることができる副原料としては、例えば、バター、マーガリン、ラード、ショートニング、コーン油、オリーブオイル、サラダオイル、パームオイル、粉末油脂などの動植物油脂、牛乳、生クリーム、濃縮乳、加糖練乳、粉末牛乳、脱脂粉乳、ヨーグルト、チーズ、液状チーズなどの乳製品、ハム、ソーゼージ、ベーコン、ミンチ肉などの畜肉製品、生卵、乾燥卵、乾燥卵白、乾燥卵黄などの卵製品、イチゴ、トマト、キャロット、オニオン、ホウレンソウ、リンゴ、ミカン、ピーチ、パイナップル、レーズンなどの野菜や果物及びそれらのピューレや乾燥品、くるみ、カシューナッツ、ピーナツ、アーモンドなどのナッツ類、ブランデー、リキュール、ラム酒などの洋酒類、シュリンプ、たら子、オキアミ、ワカメなどの海産物、ゴマ、ヒマワリの種、マツの実などの種子類、ペパー、シナモン、ガーリック、カレー粉などの香辛料の他、食塩、チョコレート、ココア、コンソメ、醤油、カスタードクリーム、餡、各種香料、などが挙げられ、これらに限らず、味つけする上で有用な成分は好みに応じていずれも用いることができる。これらの調味成分は、生地に練り込む、中華饅頭や餃子のように具材として包みこむ、表面にトッピングする、或いはこれらを併用して、本発明のドーナツ類に含有させることができる。
0031
本発明のドーナツ類の製造方法は、原料として用いる小麦粉とでん粉の特徴以外に、一般的なドーナツの製造方法を適用することができる。例えば、イーストドーナツは一般に小麦粉及びでん粉を主体とする穀粉類に、イーストと共に食塩、砂糖、その他の副資材および水を加えて混捏し、次いで発酵、成形、ホイロ、油揚げの各工程を経て製造される。ケーキドーナツは、小麦粉及びでん粉を主体とする穀粉類に、ベーキングパウダー、砂糖、その他の副資材および水を加えて混捏し、成形、油揚げの各工程を経て製造される。
0032
以下に、試験例及び実施例により本発明を具体的に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
0033
(加工でん粉の製造と評価)
市販の小麦でん粉、馬鈴薯でん粉、コーンでん粉、ワキシーコーンでん粉、タピオカでん粉、ワキシータピオカでん粉を準備した。公知の方法により各種加工でん粉を製造し、必要に応じて加工でん粉の置換度及び/又は架橋度を常法により測定した。
0034
(糊化開始温度の測定)
各でん粉の糊化開始温度をブラベンダービスコグラフ(ブラベンダー社製)により測定した。
蒸溜水450mlを含んだビーカー中に30〜40gのでん粉(でん粉度6〜8%)を投入、攪拌したのち、でん粉溶液を装置付属の金属製円筒容器に移した。装置付属の撹拌棒を75回転/分で回転させながらでん粉溶液を加熱し、30℃で安定させた。その後、1分間に1.5℃ずつ温度を上昇させながらでん粉溶液の粘度を測定した。でん粉溶液の粘度が増加し始める温度を糊化開始温度とした。この時点ですでに糊化されているでん粉の場合、糊化開始温度を30℃未満とした。
0035
(ドーナツの製造)
表1に示す工程でドーナツを製造した。なお、原料配合は後述の各配合割合に従った。
0036
0037
製造したドーナツを以下のように評価した。
0038
(ドーナツの吸油率の測定)
油ちょう直前のフライ油の重量をW1、油ちょう直後のフライ油の重量をW2とし、油ちょう前後でのフライ油の重量変化からドーナツの吸油量を算出した。ドーナツの吸油率は、ドーナツの吸油量/ドーナツ生地重量×100で算出した。吸油評価は基準との吸油率との差について以下のように判定した。
×:吸油率が増加。
△:吸油率の減少が0%以上〜1%未満。
○:吸油率の減少が1%以上〜3%未満。
◎:吸油率の減少が3%以上。
0040
<もちもちとした食感(基準と比較した場合)>
5点:非常にもちもちとしている。
4点:もちもちとしている。
3点:基準と同程度である。
2点:もちもち感が弱い。
1点:もちもち感が非常に弱い。
0041
<ソフトな食感(基準と比較した場合)>
5点:非常にソフトである。
4点:ソフトである。
3点:基準と同程度である。
2点:少し硬い。
1点:硬い。
0042
<実際の喫食時に感じる油っぽさ(基準と比較した場合)>
5点:油っぽさは感じない。
4点:少し油っぽさがなくなっている。
3点:基準と同程度である。
2点:少し油っぽく感じる。
1点:油っぽく感じる。
0043
<食感評価は点数に対して以下のように判定した。>
×:2点未満。
△:2点以上3点未満。
○:3点以上4点未満。
◎:4点以上。
0044
[試験1:未加工でん粉を用いたドーナツの評価:実施例1、比較例1〜5]
0045
(ドーナツの作製)
表2に示すドーナツの原料配合で、穀粉類として薄力粉のみで作製したドーナツ(基準)と穀粉類のうち、でん粉を20質量%含有したドーナツを作製した。でん粉の種類を表3に示す。
0046
0047
0048
(試験1のドーナツ評価)
試験1で作製したドーナツの評価結果を表4に示す。表4に示すように、未加工でん粉の場合、糊化開始温度が30℃以上63℃以下であるワキシータピオカでん粉を用いたときだけ吸油率は基準に比べて顕著に抑制された。また、モチ食感も好ましかった。
0049
0050
[試験2:加工タピオカでん粉を用いたドーナツの評価:実施例2〜7、比較例6〜8]
0051
(ドーナツの作製)
表5に示すドーナツの原料配合で、穀粉類として小麦粉のみで作製したドーナツ(基準)と穀粉類のうちでん粉を20質量%含有したドーナツを作製した。使用した小麦粉及び加水量に関しては試験1と同様である。加工タピオカでん粉の加工の種類を表6に示す。
0052
0053
0054
(試験2のドーナツ評価)
試験2で作製したドーナツの評価結果を表7に示す。試験1の比較例5に示すように未加工のタピオカでん粉では基準に比べて吸油率が増大したが、特定の加工を施して糊化開始温度が30℃以上63℃以下になった加工タピオカでん粉は吸油率が基準に比較して減少した。特に、ヒドロキシプロピルでん粉については、置換度が0.06以上0.12以下の場合、吸油率が減少し、且つモチ食感がより好ましいものとなった。糊化開始温度が63℃を超える加工タピオカでん粉では、吸油率が基準に比較して増大した。特に、架橋処理単独の加工タピオカでん粉では喫食時に油っぽさが強く感じられた。なお、α化タピオカでん粉(糊化開始温度=30℃未満)を用いた場合、形状が均一に製造できず、またモチ食感も十分ではなかった。
0055
0056
[試験3:原料穀粉中のでん粉の含有量を変化させたドーナツの評価:実施例8〜13、比較例9]
0057
(ドーナツの作製)
表8に示すドーナツの原料配合で、穀粉類として薄力粉のみで作製したドーナツ(基準)と穀粉類のうちヒドロキシプロプルタピオカでん粉をX質量%含有したドーナツを作製した。使用した小麦粉及び加水量については試験1と同様である。でん粉の配合量を表9に示す。
0058
0059
0060
(試験3のドーナツ評価)
試験3で作製したドーナツの評価結果を表10に示す。ヒドロキシプロピルタピオカでん粉を穀粉類のうち5質量%以上配合した場合、基準と比較して吸油率が1%以上低減された。
また、ヒドロキシプロピルタピオカでん粉の含有量が90質量%を超えると、得られたドーナツの吸油率は低減されるものの油ちょう中にドーナツ形状が崩れやすかった。均一な形状が得られる範囲において、吸油率を抑制できることからヒドロキシプロピルタピオカでん粉の含有量は5%〜90%がよかった。ドーナツの吸油率がより抑制でき、モチ食感も好ましいという観点から、原料穀粉中のヒドロキシプロピルタピオカでん粉の配合は15質量%〜70質量%がより好ましことがわかった。
0061
0062
[試験4:タピオカでん粉以外の加工でん粉を用いたドーナツの評価:実施例14〜19、比較例10]
0063
(ドーナツの作製)
表11に示すドーナツの原料配合で、穀粉類として小麦粉のみで作製したドーナツ(基準)と穀粉類のうちでん粉を20質量%含有したドーナツを作製した。使用した小麦粉、加水量については試験1と同様である。加工でん粉に使用したでん粉の種類および加工の種類を表12に示す。
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0065
0066
(試験4のドーナツ評価)
試験4で作製したドーナツの評価結果を表13に示す。馬鈴薯でん粉やワキシータピオカでん粉およびコーンでん粉においても、特定の加工を施して糊化開始温度が30℃以上63℃以下になった加工でん粉は吸油率が基準に比較して減少した。特にヒドロキシプロピル馬鈴薯でん粉やヒドロキシプロピルワキシータピオカでん粉は吸油減少効果が大きかった。
実施例
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本発明は、ドーナツ類のような油ちょう食品の製造に際して、健康志向及び嗜好性からの要望を満足する、油ちょう時の吸油量を低減させるとともに、ドーナツ類本来の味覚及び風味が保持され、且つソフトな、もち食感が付与された、吸油含量の低減と、食味、食感において、嗜好性に優れたドーナツ類及びその製造方法を提供する。