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技術 多孔質黒鉛の製造方法および多孔質黒鉛

出願人 株式会社東北テクノアーチTPR工業株式会社
発明者 加藤秀実兪承根和田武
出願日 2015年9月4日 (4年0ヶ月経過) 出願番号 2016-508502
公開日 2017年6月22日 (2年3ヶ月経過) 公開番号 WO2016-039268
状態 特許登録済
技術分野 炭素・炭素化合物
主要キーワード Bi薄膜 微小気孔 燃焼損失 絶対容量 二相構造 Mn相 リガメント 炭素部材
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (20)

課題

より高い耐久性、出力、容量を実現することができる多孔質黒鉛の製造方法および多孔質黒鉛を提供する。

解決手段

脱成分工程により、炭素を含む化合物合金または非平衡合金から成る炭素含有材料11を、この炭素含有材料11の融点よりも低い凝固点を有し、炭素含有材料11から炭素以外の他の主成分が減少して炭素に至るまでの組成変動範囲内における液相線温度最小値よりも低い温度に制御された金属浴12に浸すことにより、炭素以外の他の主成分を選択的に金属浴12内に溶出させて、微小間隙を有する炭素部材13を得る。黒鉛化工程により、脱成分工程で得られた炭素部材13を加熱して黒鉛化する。賦活工程により、黒鉛化工程で黒鉛化された炭素部材に対して賦活処理を行う。

概要

背景

従来、活性炭などの炭素材料は、莫大比表面積による高い反応効率を利用して、各種電池電極等に用いられている(例えば、特許文献1参照)。炭素材料が利用される電極等の性能として、例えば、リチウムイオン電池負極活物質では、高出力、高充放電速度、高容量が、燃料電池電極触媒担持体では、高出力、高耐久性が、電気二重層キャパシタ分極性電極では、高出力、高容量が求められている。

炭素材料として、例えば活性炭やカーボンブラックグラフェンカーボンナノチューブ等が、電極や燃料電池の電極触媒担持体などに利用されている。しかし、活性炭やカーボンブラックは、結晶性が低く接触点が多いため、電気抵抗が高く電気電導率が低くなり、電極内に電圧降下が発生して出力密度や充放電速度の低下を引き起こしてしまうという問題があった。また、結晶性が低いため、耐食性耐久性も低下してしまうという問題もあった。また、グラフェンやカーボンナノチューブ等のクラスターは、電気電導率が高く、比表面積は大きいが、かさ密度が小さいため、電池反応に寄与する炭素量自体は少なくなり、電池の絶対容量を稼ぐことができないという問題があった。

このような問題を解決するために、スルホン化処理および炭化処理を施して得られる多孔質炭素(例えば、非特許文献1参照)や、超音波放射および低触媒濃度のRF溶液を用いて得られる多孔質炭素(例えば、非特許文献2参照)が開発されている。これらの多孔質炭素は、バルク状でかさ密度が大きく、電気電導率を高めることができるため、比較的高い出力や容量を実現することができる。

なお、本発明者等により、表面または全体に微小気孔を有する金属部材を製造することができる、いわゆる金属溶湯脱成分法が開発されている(例えば、特許文献2参照)。

概要

より高い耐久性、出力、容量を実現することができる多孔質黒鉛の製造方法および多孔質黒鉛を提供する。脱成分工程により、炭素を含む化合物合金または非平衡合金から成る炭素含有材料11を、この炭素含有材料11の融点よりも低い凝固点を有し、炭素含有材料11から炭素以外の他の主成分が減少して炭素に至るまでの組成変動範囲内における液相線温度最小値よりも低い温度に制御された金属浴12に浸すことにより、炭素以外の他の主成分を選択的に金属浴12内に溶出させて、微小間隙を有する炭素部材13を得る。黒鉛化工程により、脱成分工程で得られた炭素部材13を加熱して黒鉛化する。賦活工程により、黒鉛化工程で黒鉛化された炭素部材に対して賦活処理を行う。

目的

例えば、燃料電池の電極触媒担持体等では、非特許文献1および2に記載の多孔質炭素で得られる出力や容量よりも高い性能が要求されており、より高い耐久性、出力、容量を有する炭素材料の開発が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

炭素を含む化合物合金または非平衡合金から成る炭素含有材料を、この炭素含有材料の融点よりも低い凝固点を有し、前記炭素含有材料から前記炭素以外の他の主成分が減少して前記炭素に至るまでの組成変動範囲内における液相線温度最小値よりも低い温度に制御された溶融金属に接触させることにより、前記他の主成分を選択的に前記溶融金属に溶出させて、微小間隙を有する炭素部材を得る脱成分工程と、前記脱成分工程で得られた前記炭素部材に対して賦活処理を行う賦活工程とを、有することを特徴とする多孔質黒鉛の製造方法。

請求項2

前記脱成分工程で得られた前記炭素部材を加熱して黒鉛化する黒鉛化工程を有し、前記賦活工程は、前記黒鉛化工程で黒鉛化された前記炭素部材に対して賦活処理を行うことを特徴とする請求項1記載の多孔質黒鉛の製造方法。

請求項3

前記黒鉛化工程は、前記炭素部材を2000℃以上に加熱することを特徴とする請求項2記載の多孔質黒鉛の製造方法。

請求項4

前記脱成分工程は、前記炭素含有材料を前記溶融金属から成る金属浴浸すことにより、前記他の主成分を選択的に前記金属浴内に溶出させて、前記炭素部材を得ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の多孔質黒鉛の製造方法。

請求項5

前記炭素含有材料の融点よりも低い凝固点を有する固体金属を、あらかじめ前記炭素含有材料に接触するよう配置しておく前処理工程を有し、前記脱成分工程は、前記固体金属を加熱して前記溶融金属にすることにより、前記他の主成分を選択的に前記溶融金属に溶出させて、前記炭素部材を得ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の多孔質黒鉛の製造方法。

請求項6

前記脱成分工程は、前記炭素部材を前記溶融金属から離した後、酸またはアルカリ水溶液により、周囲または前記微小間隙の内部に付着した、前記溶融金属の成分および/または前記他の主成分を含む付着混和体のみを選択的に溶出して除去することを、特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の多孔質黒鉛の製造方法。

請求項7

前記溶融金属は、Ag,Bi,Cu,Ga,Ge,Hg,In,Ir,Pb,Pt,Rh,Sb,Sn,Zn、または、これらのうちの少なくとも一つを主成分とする合金である混和体から成り、前記他の主成分は、Al,B,Be,Ca,Ce,Cr,Dy,Er,Eu,Fe,Gd,Hf,Ho,K,La,Li,Lu,Mg,Mn,Mo,Na,Nb,Nd,Pr,Sc,Se,Si,Sm,Sr,Ta,Ti,V,W,Zrのいずれか一つ、もしくは、その複数を含む混和体から成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の多孔質黒鉛の製造方法。

請求項8

前記脱成分工程は、不活性雰囲気中もしくは真空雰囲気中で行われる、または、前記溶融金属にフラックスを添加して大気中で行われることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の多孔質黒鉛の製造方法。

請求項9

バルク状で、黒鉛の(002)回折線より導出される(002)面平均間隔の値が0.342以下であり、かつ、全気孔体積中、2乃至100nmの大きさの気孔を80%以上含み、BET比表面積が100m2/g以上であることを特徴とする多孔質黒鉛。

請求項10

黒鉛の(002)回折線のピーク半値幅が1.02°以下であり、結晶サイズが9nm以上であることを特徴とする請求項9記載の多孔質黒鉛。

請求項11

ラマンスペクトルのDバンドピーク強度(ID)とGバンドのピーク強度(IG)の比ID/IGが0.5以下であり、前記Gバンドでのピーク半値幅が45cm−1以下であることを特徴とする請求項9または10記載の多孔質黒鉛。

請求項12

BET比表面積が2400m2/g以上であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の多孔質黒鉛。

請求項13

シート状であることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載の多孔質黒鉛。

技術分野

0001

本発明は、多孔質黒鉛の製造方法および多孔質黒鉛に関する。

背景技術

0002

従来、活性炭などの炭素材料は、莫大比表面積による高い反応効率を利用して、各種電池電極等に用いられている(例えば、特許文献1参照)。炭素材料が利用される電極等の性能として、例えば、リチウムイオン電池負極活物質では、高出力、高充放電速度、高容量が、燃料電池電極触媒担持体では、高出力、高耐久性が、電気二重層キャパシタ分極性電極では、高出力、高容量が求められている。

0003

炭素材料として、例えば活性炭やカーボンブラックグラフェンカーボンナノチューブ等が、電極や燃料電池の電極触媒担持体などに利用されている。しかし、活性炭やカーボンブラックは、結晶性が低く接触点が多いため、電気抵抗が高く電気電導率が低くなり、電極内に電圧降下が発生して出力密度や充放電速度の低下を引き起こしてしまうという問題があった。また、結晶性が低いため、耐食性耐久性も低下してしまうという問題もあった。また、グラフェンやカーボンナノチューブ等のクラスターは、電気電導率が高く、比表面積は大きいが、かさ密度が小さいため、電池反応に寄与する炭素量自体は少なくなり、電池の絶対容量を稼ぐことができないという問題があった。

0004

このような問題を解決するために、スルホン化処理および炭化処理を施して得られる多孔質炭素(例えば、非特許文献1参照)や、超音波放射および低触媒濃度のRF溶液を用いて得られる多孔質炭素(例えば、非特許文献2参照)が開発されている。これらの多孔質炭素は、バルク状でかさ密度が大きく、電気電導率を高めることができるため、比較的高い出力や容量を実現することができる。

0005

なお、本発明者等により、表面または全体に微小気孔を有する金属部材を製造することができる、いわゆる金属溶湯脱成分法が開発されている(例えば、特許文献2参照)。

0006

特許第4762424号公報
国際公開第WO2011/092909号

先行技術

0007

G. Hasegawa et al., “Fabrication of activated carbons with well-defined macropores derived from sulfonated poly (divinylbenzene) networks”, Carbon, 2010, 48, p.1757-1766
N. Tonanon et al., “ 3D interconnected macroporous carbon monoliths prepared by ultrasonic irradiation”, Carbon, 2005, 43, p.2808-2811

発明が解決しようとする課題

0008

非特許文献1および2に記載の多孔質炭素では、結晶性がやや低く、比表面積もそれほど大きくないため、耐久性や出力、容量にはまだまだ改善の余地があるという課題があった。例えば、燃料電池の電極触媒担持体等では、非特許文献1および2に記載の多孔質炭素で得られる出力や容量よりも高い性能が要求されており、より高い耐久性、出力、容量を有する炭素材料の開発が望まれている。

0009

本発明は、このような課題に着目してなされたもので、より高い耐久性、出力、容量を実現することができる多孔質黒鉛の製造方法および多孔質黒鉛を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0010

上記目的を達成するために、本発明に係る多孔質黒鉛の製造方法は、炭素を含む化合物合金または非平衡合金から成る炭素含有材料を、この炭素含有材料の融点よりも低い凝固点を有し、前記炭素含有材料から前記炭素以外の他の主成分が減少して前記炭素に至るまでの組成変動範囲内における液相線温度最小値よりも低い温度に制御された溶融金属に接触させることにより、前記他の主成分を選択的に前記溶融金属に溶出させて、微小間隙を有する炭素部材を得る脱成分工程と、前記脱成分工程で得られた前記炭素部材に対して賦活処理を行う賦活工程とを、有することを特徴とする。

0011

本発明に係る多孔質黒鉛の製造方法は、脱成分工程で、炭素含有材料から炭素以外の他の主成分を選択的に溶融金属に溶出させることにより、残存した炭素同士が結合を繰り返し、ナノメートル寸法を有する粒子を形成する。さらに、これらの粒子が部分的に結合するため、メソ孔(径2nm〜60nm)やマクロ孔(径60nm以上)などの微小間隙を有する多孔質でバルク状の炭素部材を得ることができる。なお、溶融金属の温度や、炭素含有材料と溶融金属との接触時間、炭素含有材料内の炭素成分比を変化させることによって、製造される炭素部材の間隙サイズや間隙率を変化させることができる。

0012

また、本発明に係る多孔質黒鉛の製造方法は、脱成分工程で得られた炭素部材が既に十分に黒鉛化されている場合には、その炭素部材に対して賦活工程で賦活処理を行うことにより、炭素部材の表面に無数ミクロ孔(径2nm以下)を形成して、比表面積を大きくすることができる。なお、賦活処理は、炭素部材にミクロ孔を形成できるものであれば、二酸化炭素水蒸気、空気などを用いるガス賦活や、塩化亜鉛硫酸塩、リン酸などを用いる薬品賦活など、いかなる方法を使用してもよい。

0013

このように、本発明に係る多孔質黒鉛の製造方法によれば、結晶性、電気電導率および耐久性が高く、比表面積が大きく、バルク状でかさ密度が大きい多孔質黒鉛を得ることができる。得られた多孔質黒鉛は、各種電池の電極等に用いられた場合、メソ・マクロ孔によって構成されるため、性質の熱的安定性が高く、また、比表面積が大きいため、高充放電速度、高出力を得ることができる。また、結晶性および電気電導率が高いため、高出力、高充放電速度、高耐久性を得ることができる。また、かさ密度が大きいため、高容量にすることができる。

0014

本発明に係る多孔質黒鉛の製造方法は、前記脱成分工程で得られた前記炭素部材を加熱して黒鉛化する黒鉛化工程を有し、前記賦活工程は、前記黒鉛化工程で黒鉛化された前記炭素部材に対して賦活処理を行ってもよい。この場合、脱成分工程で得られた炭素部材が十分に黒鉛化されていないときに、その炭素部材を黒鉛化工程で黒鉛化することにより、結晶性を高め、電気抵抗率下げて電気電導率を高めることができる。また、耐久性を高めることもできる。なお、黒鉛化工程では、メソ孔やマクロ孔は消失せず、多孔質構造を維持することができる。

0015

本発明に係る多孔質黒鉛の製造方法は、脱成分工程において、炭素含有材料の炭素以外の他の主成分を溶融金属に溶出可能であれば、いかなる方法で炭素含有材料を溶融金属に接触させてもよい。例えば、前記脱成分工程は、前記炭素含有材料を前記溶融金属から成る金属浴浸すことにより、前記他の主成分を選択的に前記金属浴内に溶出させて、前記炭素部材を得てもよい。また、前記炭素含有材料の融点よりも低い凝固点を有する固体金属を、あらかじめ前記炭素含有材料に接触するよう配置しておく前処理工程を有し、前記脱成分工程は、前記固体金属を加熱して前記溶融金属にすることにより、前記他の主成分を選択的に前記溶融金属に溶出させて、前記炭素部材を得てもよい。

0016

本発明に係る多孔質黒鉛の製造方法で、前記脱成分工程は、前記炭素部材を前記溶融金属から離した後、酸またはアルカリ水溶液により、周囲または前記微小間隙の内部に付着した、前記溶融金属の成分および/または前記他の主成分を含む付着混和体のみを選択的に溶出して除去することが好ましい。この場合、炭素を溶出させず付着混和体のみを選択的に溶出することのできる酸またはアルカリ水溶液を使用することにより、炭素を主成分とし、付着混和体が除去された、多孔質の炭素部材を得ることができる。なお、除去される付着混和体は、例えば、得られる炭素部材の周囲に付着したり、微小間隙の内部に一部付着したり、微小間隙の内部に充填されたりしている。

0017

本発明に係る多孔質黒鉛の製造方法で、前記溶融金属は、Ag,Bi,Cu,Ga,Ge,Hg,In,Ir,Pb,Pt,Rh,Sb,Sn,Zn、または、これらのうちの少なくとも一つを主成分とする合金である混和体から成り、前記他の主成分は、Al,B,Be,Ca,Ce,Cr,Dy,Er,Eu,Fe,Gd,Hf,Ho,K,La,Li,Lu,Mg,Mn,Mo,Na,Nb,Nd,Pr,Sc,Se,Si,Sm,Sr,Ta,Ti,V,W,Zrのいずれか一つ、もしくは、その複数を含む混和体から成ることが好ましい。この場合、特に効率的に多孔質黒鉛を得ることができる。

0018

本発明に係る多孔質黒鉛の製造方法で、前記黒鉛化工程は、前記炭素部材を1500℃以上に加熱することが好ましく、2000℃以上に加熱することがより好ましい。特に、2400℃以上に加熱することが好ましい。これらの場合、炭素部材を効率良く黒鉛化することができ、電気抵抗率を顕著に低下させて、より高い電気電導率および耐食性を有する黒鉛を得ることができる。

0019

本発明に係る多孔質黒鉛の製造方法で、前記脱成分工程は、不活性雰囲気中もしくは真空雰囲気中で行われる、または、前記溶融金属にフラックスを添加して大気中で行われることが好ましい。この場合、大気中においても金属浴が酸化するのを防ぐことができる。

0020

本発明に係る多孔質黒鉛は、バルク状で、黒鉛の(002)回折線より導出される(002)面平均間隔の値が0.342以下であり、かつ、全気孔体積中、2乃至100nmの大きさの気孔を80%以上含み、BET比表面積が100m2/g以上であることを特徴とする。

0021

また、本発明に係る多孔質黒鉛は、黒鉛の(002)回折線のピーク半値幅が1.02°以下であり、結晶サイズが9nm以上であることが好ましい。また、ラマンスペクトルのDバンドピーク強度(ID)とGバンドのピーク強度(IG)の比ID/IGが0.5以下であり、前記Gバンドでのピーク半値幅が45cm−1以下であることが好ましい。また、BET比表面積が300m2/g以上、さらに700m2/g以上であることが好ましく、特に、2400m2/g以上であることが好ましい。また、本発明に係る多孔質黒鉛は、シート状であってもよい。

0022

本発明に係る多孔質黒鉛は、特に、本発明に係る多孔質黒鉛の製造方法により製造されることが好ましい。本発明に係る多孔質黒鉛は、結晶性、電気電導率および耐久性が高く、比表面積が大きく、かさ密度が大きい。このため、各種電池の電極等に用いられた場合、より高い耐久性、出力、容量を実現することができる。

発明の効果

0023

本発明によれば、より高い耐久性、出力、容量を実現することができる多孔質黒鉛の製造方法および多孔質黒鉛を提供することができる。

図面の簡単な説明

0024

Mn−C系状態図である。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の脱成分工程の(a)炭素含有材料を金属浴に浸漬する工程、(b)炭素部材を洗浄する工程を示す概略斜視図である。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の脱成分工程の(a)付着混和体を除去する工程、(d)炭素部材を回収する工程を示す概略斜視図である。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、脱成分工程により得られた炭素部材を示す(a)顕微鏡写真、(b)倍率を(a)の半分にした顕微鏡写真である。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、脱成分工程により得られた炭素部材の細孔分布を示すグラフである。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、(a)黒鉛化処理前の炭素部材の顕微鏡写真、(b)黒鉛化処理後の炭素部材の顕微鏡写真である。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、(a)黒鉛化処理前の炭素部材の図6とは別の部位の顕微鏡写真、(b)黒鉛化処理後の炭素部材の図6とは別の部位の、倍率を(a)の半分にした顕微鏡写真である。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、黒鉛化処理前後の炭素部材のX線回折(XRD)パターンである。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、(a)黒鉛化処理後の炭素部材の細孔分布、(a)黒鉛化処理前の炭素部材の細孔分布を示すグラフである。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、黒鉛化処理前後の図8および図9とは異なる炭素部材の(a)XRDパターン、(b)細孔分布を示すグラフである。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、(a)賦活処理前の炭素部材の顕微鏡写真、(b)賦活処理前の炭素部材の(a)とは異なる部位の顕微鏡写真、(c)賦活処理後の炭素部材の顕微鏡写真、(d)賦活処理後の炭素部材の(c)とは異なる部位の顕微鏡写真である。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、黒鉛化処理および賦活処理による(a)吸着量の変化、(b)細孔分布の変化を示すグラフである。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、酸化ホウ素フラックスを用いて大気雰囲気中で脱成分工程を行ったときの、黒鉛化処理後の炭素部材の(a)走査型電子顕微鏡写真、(b) (a)より高倍率の走査型電子顕微鏡写真、(c)X線回折図形(XRD)パターンである。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、炭素含有材料としてMn85C15を用いたときの、脱成分工程後の炭素部材の(a)α−Mn相由来、(b)Mn23C6化合物由来の構造の走査型電子顕微鏡写真である。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、炭素含有材料としてMn85C15を用いたときの、2000℃での(a)黒鉛化処理前、(b)黒鉛化処理後の炭素部材の走査型電子顕微鏡写真である。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、炭素含有材料としてMn85C15を用いたときの、黒鉛化の加熱温度毎および黒鉛化処理前の(a)N2吸着量、(b)細孔分布を示すグラフである。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、炭素含有材料としてMn85C15を用いたときの、黒鉛化の加熱温度毎および黒鉛化処理前の(a)XRDパターン、(b)ラマンスペクトルである。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、炭素含有材料としてMn85C15を用いたときの、黒鉛化処理前および2500℃での黒鉛化処理後の密度(Density)と体抵抗率(Volume Resistivity)との関係を示すグラフである。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、炭素含有材料としてMn85C15を用いたときの、賦活処理温度に対するBET比表面積および燃焼損失の変化を示すグラフである。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、炭素含有材料としてMn85C15を用いたときの、二酸化炭素を用いた賦活処理による(a)吸脱着量の変化、(b)細孔分布の変化を示すグラフである。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、炭素含有材料としてMn85C15を用いたときの、塩化亜鉛を用いた賦活処理による(a)吸脱着量の変化、(b)細孔分布の変化を示すグラフ、ならびに、賦活処理前後のBET比表面積(SBET)および気孔量(VP)を示すテーブルである。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、炭素含有材料としてMn79C21を用いてZn金属浴で脱成分工程を行って得られた炭素部材の(a)走査型電子顕微鏡写真、(b) (a)より高倍率の走査型電子顕微鏡写真である。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、炭素含有材料としてMn79C21を用いてCu金属浴で脱成分工程を行って得られた炭素部材の(a)走査型電子顕微鏡写真、(b) (a)より高倍率の走査型電子顕微鏡写真、(c) (b)より高倍率の走査型電子顕微鏡写真である。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、炭素含有材料としてMn79C21を用いてCu金属浴で脱成分工程を行って得られた炭素部材のXRDパターンを、同じ炭素含有材料を用いてBi金属浴で脱成分工程を行って得られた炭素部材のXRDパターンと比較した図である。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、脱成分工程後のシート状の炭素部材の(a)走査型電子顕微鏡写真、(b) (a)より高倍率の走査型電子顕微鏡写真である。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法の、脱成分工程後のシート状の炭素部材のラマンスペクトルである。

0025

以下、図面に基づき、実施例を挙げながら、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法は、前駆体の炭素含有材料に対して、脱成分工程、黒鉛化工程、賦活工程を行い、本発明の実施の形態の多孔質黒鉛を製造することができる。なお、脱成分工程により十分に黒鉛化されている場合には、黒鉛化工程を省略することもできる。

0026

[前駆体の作製]
本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法では、まず、炭素含有材料として、炭素と炭素以外の他の主成分とを含む化合物、合金または非平衡合金から成る前駆体を作製する。例えば、図1に示すMn−C系状態図を参考にして、炭素以外の他の成分をMnとした、Mn−C系の前駆合金を作製する。なお、Mnやその合金の溶融体は一般に酸化しやすいため、溶製の際は、アルゴン等の不活性雰囲気中で行うことが好ましい。

0027

[脱成分工程]
次に、図2(a)に示すように、作製された前駆体の炭素含有材料11を、反応性を向上させるために粉末状またはシート状にし、その炭素含有材料11の融点よりも低い凝固点を有する金属浴12の内部に、所定の時間浸漬する。このとき、金属浴12を、炭素含有材料11から炭素以外の他の主成分が減少して炭素に至るまでの組成変動範囲内における液相線温度の最小値よりも低い温度に制御する。例えば、炭素含有材料11としてMn−C系の前駆合金を使用した場合には、図1に示す状態図から、金属浴12を、Mnが減少してCに至るまでの組成変動範囲内における液相線温度の最小値1231℃よりも低い温度に制御する。なお、この場合、600℃以下では反応が起こりにくいため、金属浴12を600℃以上にすることが好ましい。

0028

金属浴12に浸漬する時間は、金属浴12や前駆体の炭素含有材料11の成分により様々であるが、例えば、金属浴12としてBi溶湯やAg溶湯を用い、炭素含有材料11としてMn−C系前駆体を浸漬した場合には、約5〜10分程度である。また、例えば、金属浴12としてBi溶湯を用い、炭素含有材料11としてMn−C系前駆体を浸漬した場合には、密度差により、粉末状のMn−C系前駆体が溶湯表面に浮かぶため、浸漬している間は、棒などで前駆体と溶湯とを撹拌することが好ましい。また、Biやその合金の溶融体は一般に酸化しやすいため、金属浴12としてこれを用いた脱成分工程は、アルゴン等の不活性雰囲気中や真空雰囲気中で行うことが好ましい。

0029

金属浴12に浸漬することにより、炭素含有材料11から炭素以外の他の主成分(例えば、Mn)を選択的に金属浴12の内部に溶出させることができる。これにより、金属浴12の内部に残存した炭素同士が結合を繰り返し、ナノメートル寸法を有する粒子を形成する。さらに、これらの粒子が部分的に結合するため、メソ孔(径2nm〜60nm)やマクロ孔(径60nm以上)などの微小間隙を有する多孔質でバルク状の炭素部材13を得ることができる。

0030

なお、溶湯の表面付近には未反応の前駆体14が残っている可能性があるため、金属浴12から取り出したバルク状の炭素部材13の表面にその未反応の前駆体14が付着してしまう。そこで、図2(b)に示すように、炭素部材13の表面に付着した未反応の前駆体14を、超音波洗浄機等を用いて洗浄し、取り除く。

0031

炭素部材13の周囲や微小間隙の内部には、金属浴12の成分や炭素以外の他の主成分(例えば、Mn)から成る付着混和体が付着している。このため、図3(a)に示すように、その付着混和体のみを選択的に溶出して除去するために、得られた炭素部材13を酸またはアルカリ水溶液15に入れる。図3(a)に示す一例では、炭素部材13を入れる水溶液15は、硝酸水溶液である。このとき、炭素部材13をそのまま入れると反応が遅いため、旋盤などを用いて炭素部材13の上部を細かく削ぎ落し、それをビーカー等に移して、浸る程度の蒸留水を入れ、その後、硝酸を少しずつ入れる。硝酸と付着混和体とが反応し、付着混和体が溶出した後、図3(b)に示すように、ろ過等を行って固体部分の炭素部材13を回収し、水洗・乾燥を施す。こうして、炭素を主成分とし、付着混和体が除去された、多孔質の炭素部材13を得ることができる。

0032

このようにして得られた炭素部材の顕微鏡写真を、図4に示す。また、得られた炭素部材の細孔分布を、図5に示す。なお、図4および図5に示す炭素部材は、前駆体の炭素含有材料Mn80C20(数値原子比:以下、指定がない限り同様とする)を、不活性雰囲気中で、1000℃のBi溶湯の金属浴に10分間浸漬して得られたものである。図4および図5に示すように、得られた炭素部材は、多孔質であり、主にメソ孔(径2nm〜60nm)やマクロ孔(径60nm以上)から成る微小間隙を有していることが確認できる。なお、図4および図5に示す炭素部材は、BET比表面積が223.8m2/gである。

0033

[黒鉛化工程]
次に、得られた炭素部材を加熱して黒鉛化処理を行う。このとき、黒鉛化処理により結晶性を高め、電気抵抗率を下げて電気電導率を高めるために、加熱温度を2000℃以上、特に2400℃以上にすることが好ましい。黒鉛化処理前後の炭素部材の顕微鏡写真を、図6および図7に示す。また、黒鉛化処理前後の炭素部材のX線回折(XRD)パターンを、図8に示す。また、黒鉛化処理前後の炭素部材の細孔分布を、図9に示す。なお、図6乃至図9に示す炭素部材は、前駆体の炭素含有材料Mn80C20を、1200℃のAg溶湯の金属浴に5分間浸漬して得られた炭素部材を、2000℃で1時間加熱して黒鉛化処理したものである。

0034

図6および図7に示すように、黒鉛化処理前後で、炭素部材の外観には、ほとんど変化が認められず、黒鉛化処理前後の炭素部材が高い熱的安定性を有していることが確認された。また、図8に示すように、黒鉛化処理により、(002)回折線の半値幅が狭くなっており、黒鉛化処理により炭素部材の結晶性が向上し、電気電導率および耐食性(耐久性)も向上することが確認された。なお、図8中の黒鉛化後のB13C2のピークは、炭素含有材料であるMn−Cを溶製する際に用いたBNるつぼに由来するものである。

0035

また、図9に示すように、黒鉛化処理前後で、炭素部材の細孔分布はほとんど変化しておらず、黒鉛化処理によっても、炭素部材のメソ孔やマクロ孔は消失せず、多孔質構造が維持されることが確認された。また、黒鉛化処理前後のBET比表面積は、それぞれ53m2/gおよび49m2/gであり、ほとんど変化していないことも確認された。これらのことから、黒鉛化処理前後の炭素部材は熱的安定性の高い状態を有しているといえる。

0036

他の黒鉛化処理の実施例として、前駆体の炭素含有材料Mn80C20を、900℃のBi溶湯の金属浴に10分間浸漬して得られた炭素部材を、2000℃で1時間加熱して黒鉛化処理したものについて、黒鉛化処理前後のXRDパターンを図10(a)に、黒鉛化処理前後の細孔分布を図10(b)に示す。図10(a)に示すように、図8と同様に、黒鉛化処理により、(002)回折線の半値幅が狭くなることが確認された。また、図10(b)に示すように、図9と同様に、黒鉛化処理前後で、炭素部材の細孔分布はほとんど変化しないことが確認された。また、黒鉛化処理前後のBET比表面積は、それぞれ151m2/gおよび135m2/gであり、ほとんど変化していないことも確認された。

0037

[賦活工程]
次に、黒鉛化処理により黒鉛化された炭素部材に対して、賦活処理を行う。賦活処理には、炭素部材にミクロ孔を形成できるものであれば、二酸化炭素や水蒸気、空気などを用いるガス賦活や、塩化亜鉛や硫酸塩、リン酸などを用いる薬品賦活など、いかなる方法を使用してもよい。

0038

黒鉛化処理後の炭素部材に対して、窒素と二酸化炭素との混合ガスを用いて、800℃を2時間維持しながら賦活処理を行ったときの、賦活処理前後の炭素部材の顕微鏡写真を、図11に示す。また、黒鉛化処理および賦活処理による吸着量の変化および細孔分布の変化を、それぞれ図12(a)および(b)に示す。なお、図11および図12に示す炭素部材は、前駆体の炭素含有材料Mn80C20を、900℃のBi溶湯の金属浴に10分間浸漬して得られたものを使用している。また、黒鉛化処理は、その炭素部材を2000℃で1時間加熱することにより行っている。

0039

図11に示すように、賦活処理を行うことにより、黒鉛化された炭素部材の表面が凸凹になることが確認された。また、図12(a)に示すように、賦活処理を行うことにより、黒鉛化された炭素部材の表面の吸着量が増えていることが確認された。また、図12(b)に示すように、賦活処理により、少なくとも直径100nm以下の細孔の容積が増えていることが確認された。また、賦活処理前後のBET比表面積は、それぞれ135m2/gおよび153m2/gであり、賦活処理により増大していることが確認された。

0040

なお、図12(a)および(b)に示すように、黒鉛化処理を行わずに賦活処理を行った場合、黒鉛化処理後に賦活処理を行った場合と比べて、吸着量、細孔容積およびBET比表面積が大きくなっているが、比表面積を大きくするだけでなく、炭素部材の結晶性を高めるためには、賦活処理の前に黒鉛化処理を行うことが好ましい。

0041

図11および図12に示すように、賦活処理により炭素部材の比表面積を大きくすることができた。非特許文献1によれば、マイクロメートル寸法のリガメントとマクロ孔とによって形成される多孔質炭素材料において、窒素と二酸化炭素との混合ガスを用いたガス賦活処理を施すことにより、最大2355m2/gの比表面積を達成している。本発明の実施の形態で用いたガス賦活は、非特許文献1が提供するような黒鉛度の低い炭素材料にはその効果が大きいが、本発明による黒鉛化された炭素部材には効果が小さい。本発明の脱成分工程は、非特許文献1よりも更に一桁小さなサブマイクロメートルスケール寸法のリガメントとマクロ孔とによる多孔質黒鉛材料の形成を可能とする。従って、これに非特許文献1と同様の効果をもたらす賦活効果の強い賦活処理を施せば、2400m2/gを超える大きい比表面積を得ることができると考えられる。

0042

賦活効果の強い賦活処理としては、アルカリ賦活が挙げられるが、これ以外にも次のような金属浴を用いた賦活処理が考えられる。すなわち、炭素原子と分離して反応しない金属浴(例えば、BiやPbなど)に、この金属浴に溶けて(混和)、かつ、炭素とも反応し易い元素(例えば、CaやMn等)を溶解しておく。これに黒鉛化処理を施した多孔質黒鉛を浸漬するが、このとき、金属浴温度を、炭素と、炭素と反応し易い元素との間の反応が、均質反応にならない程度に低い温度に制御する。これにより、黒鉛表面上に不均質な反応領域が生じると期待される。浸漬した多孔質黒鉛を金属浴から引き揚げた後、黒鉛上に残留した金属浴成分、および、炭素と反応し易い元素成分を、酸またはアルカリ水溶液に浸漬することによって取り除くか、場合によっては、そのまま例えば2000℃を越える超高温に加熱してこれらの成分を蒸発除去する。この処理の結果、炭素と反応し易い元素と反応していた黒鉛表面領域は、陥没してミクロ孔またはメソ孔を新たに形成するか、または、この反応領域を起点としてグラフェン層がリガメント本体より部分剥離すると考えられる。この作用により、多孔質黒鉛の表面、および、内部の黒鉛度は維持しつつ、比表面積を飛躍的に向上できると考えられる。

0043

石英管にBiを20グラム挿入し、この上に粉砕した前駆体の炭素含有材料Mn78C22を2グラム投入し、さらにその上からフラックスとして酸化ホウ素(B2O3)粒子を投入した。これをそのまま800℃に加熱しておいた電気炉に入れ、振る等してBiと前駆体との脱成分反応を促進させながら20分保持した。このとき、Biが溶融して石英管内で金属浴になり、炭素含有材料からMnを選択的に金属浴内に溶出させることができる。その後、石英管を電気炉から引き上げ凝固させた。その凝固物を水に浸漬して、酸化ホウ素成分を除去した後、濃硝酸水溶液中に浸漬してMnおよびBi成分を除去した。これを、2000℃で1時間加熱して黒鉛化処理を行った。

0044

黒鉛化処理後の炭素部材の走査型電子顕微鏡写真を図13(a)および(b)に、XRDパターンを図13(c)にそれぞれ示す。図13(a)および(b)に示すように、得られた炭素部材は、多孔質であり、主にメソ孔(径2nm〜60nm)やマクロ孔(径60nm以上)から成る微小間隙を有していることが確認できる。また、図13(c)に示すように、θ=25度付近の(002)回折線の半値幅が明瞭に認められ、炭素部材の結晶性が高いことが確認できる。

0045

この結果から、Bi浴を用いた脱成分工程では、酸化ホウ素をフラックスとして用いることにより、大気雰囲気においても脱成分工程を施すことが可能であり、フラックスを用いずに不活性雰囲気中で作製した場合(例えば、図4図6(b)、図7(b)、図8参照)と同様の形態を有する多孔質黒鉛を作製することができることが確認された。

0046

前駆体の炭素含有材料Mn85C15を、800℃(1073K)のBi金属浴に10分(600秒)間浸漬して多孔質の炭素部材を得た。さらに、周囲や微小間隙中に残存するMn成分およびBi成分を除去するために、その炭素部材を硝酸水溶液中に24時間浸漬した後、洗浄および乾燥を行った。

0047

なお、前駆体のMn85C15は、α−MnとMn23C6化合物との二相構造を有していることから、これらの各相由来の炭素部材の構造の走査型電子顕微鏡写真を、それぞれ図14(a)および(b)に示す。図14(a)に示すα−Mn由来の構造は、図14(b)に示すMn23C6化合物由来の構造よりも、気孔率が高いことが確認された。このことから、α−Mn相がBiを流して拡散させる流路役割を果たしていると考えられる。

0048

[黒鉛化工程]
こうして得られた脱成分工程後の炭素部材について、それぞれ1500℃(1773K)、2000℃(2273K)、および2500℃(2773K)で2時間加熱して、黒鉛化処理を行った。2000℃で黒鉛化処理を行ったときの、黒鉛化処理前後の炭素部材の走査型電子顕微鏡写真を、図15に示す。図15に示すように、黒鉛化処理前後で、炭素部材の外観には、ほとんど変化が認められず、黒鉛化処理前後の炭素部材が高い熱的安定性を有していることが確認された。

0049

黒鉛化の加熱温度毎および黒鉛化処理前のN2吸着量を図16(a)に、細孔分布を図16(b)に示す。また、図16(a)および(b)の結果から、BET比表面積(SBET)および気孔量(VP)を求め、表1に示す。なお、表1には、参考のため、カーボンブラックの一種であるアセチレンブラック(「デンカブラック登録商標)」;電気化学工業株式会社製)の各データも示している。

0050

0051

図16(a)に示すように、黒鉛化処理により、吸着量は若干低下する傾向が認められるが、その低下量自体はあまり大きくないことが確認された。また、図16(b)に示すように、黒鉛化処理前後で、炭素部材の細孔分布はほとんど変化しておらず、黒鉛化処理によっても、炭素部材のメソ孔やマクロ孔は消失せず、多孔質構造が維持されることが確認された。表1に示すように、BET比表面積は、黒鉛化処理により、また加熱温度が高くなるほど低下しているが、約117m2/g以上の比較的高い値を示していることが確認された。また、黒鉛化処理によるBET比表面積の低下にもかかわらず、気孔量は約0.8cm3/g前後で、ほぼ同じ値を示していることが確認された。

0052

黒鉛化の加熱温度毎および黒鉛化処理前のXRDパターンを図17(a)に、ラマンスペクトルを図17(b)に示す。また、図17(a)の結果から、黒鉛の(002)回折線より導出される(002)面平均間隔(d002)、(002)回折線のピーク半値幅(FWHM002)、および、基準面内での結晶サイズ(LC)を求め、表1に示す。また、図17(b)の結果から、Dバンド(ラマンシフトが1350cm−1付近)とGバンド(ラマンシフトが1582cm−1付近)のピーク強度比(ID/IG)、およびGバンドでのピーク半値幅(FWHMG)を求め、表1に示す。

0053

図17(a)および(b)に示すように、加熱温度が高くなるほど、平面性が増大し、欠陥密度が低下していることが確認された。また、表1に示すように、加熱温度が高くなるほど、d002、FWHM002、ID/IGおよびFWHMGは低下するが、LCは大きくなることが確認された。

0054

黒鉛化処理前および2500℃での黒鉛化処理後の密度(Density)と体積抵抗率(Volume Resistivity)との関係を、図18に示す。なお、図18には、参考のため、アセチレンブラック(「デンカブラック(登録商標)」;電気化学工業株式会社製)のデータも示している。図18に示すように、黒鉛化処理により、体積抵抗率が半分程度まで低下することが確認された。以上の図16図18および表1の結果から、黒鉛化処理により炭素部材の結晶性が向上し、電気電導率および耐食性(耐久性)も向上するといえる。

0055

[賦活工程]
脱成分工程後の炭素部材(黒鉛化処理を行っていないもの)について、賦活処理を行った。賦活処理は、二酸化炭素を用いたもの、および塩化亜鉛を用いたものの2つの方法で行った。まず、二酸化炭素を用いた賦活処理では、窒素に二酸化炭素を約10%含有した混合ガスを用いて、それぞれ700℃、800℃、850℃、900℃、および950℃で処理を行った。各温度までの昇温速度を10℃/分とし、各温度になってから2時間維持した。また、混合ガスの流量は、1リットル/分とした。

0056

賦活処理後のBET比表面積および燃焼損失を、図19に示す。なお、賦活処理前のBET比表面積は、184.8m2/gである。図19に示すように、賦活処理を行うことにより、BET比表面積および燃焼損失が増大することが確認された。特に、BET比表面積は、賦活処理の温度が高くなるほど急激に増大し、950℃の賦活処理で約700m2/gになっている。

0057

賦活処理(Activation)前後の吸着量(Quantity Adsorbed)の変化および細孔(Pore)分布の変化を、それぞれ図20(a)および(b)に示す。ここで、図20(a)中の色塗シンボルは窒素の吸着量を示し、白抜きシンボルは窒素の脱着量を示している。図20(a)に示すように、賦活処理を行うことにより、炭素部材の表面の吸着量が増えていることが確認された。また、図20(b)に示すように、賦活処理により、少なくとも直径100nm以下の細孔の容積が増えており、比表面積が増加していることが確認された。特に、処理温度が850℃以上のとき、ミクロ孔だけでなく、直径30nm付近のメソ孔も増加していることが確認された。

0058

賦活処理前後の炭素部材についてX線回折を行い、そのXRDパターンから、黒鉛の(002)回折線より導出される(002)面平均間隔(d002)、および、基準面内での結晶サイズ(LC)を求め、表2に示す。また、賦活処理前後の炭素部材について気孔率を求め、表2に示す。

0059

0060

表2に示すように、d002は、賦活処理の温度によらずほぼ一定の値を示すが、LCおよび気孔率は、賦活処理の温度が高くなるほど大きくなることが確認された。このことから、賦活処理の温度が高くなると、比表面積が大きくなるだけでなく、結晶性も多少向上することが確認された。なお、ここでは、黒鉛化処理を行っていないが、賦活処理の前に黒鉛化処理を行うことにより、LCが大きくなり、炭素部材の結晶性が向上し、電気電導率および耐食性(耐久性)も向上すると考えられる。

0061

次に、二酸化炭素ではなく、塩化亜鉛を用いて賦活処理を行った。塩化亜鉛を用いた賦活処理では、まず、塩化亜鉛と脱成分工程後の炭素部材(黒鉛化処理を行っていないもの)とを、重さ5:1の比率で水50mlに混ぜ、70℃で2時間程度攪拌して含浸させた。その後、水を全部蒸発させるために、120℃で1日程度乾燥させた。乾燥後の物質を電気炉により500℃で4時間加熱して、炭素部材の表面に付着していた塩化亜鉛を蒸発させることで賦活処理を行った。加熱後、1モル塩酸水溶液洗剤し、ろ過して炭素部材を回収した。

0062

賦活処理(Activation)前後の吸着量(Quantity Adsorbed)の変化および細孔(Pore)分布の変化を、それぞれ図21(a)および(b)に示す。ここで、図21(a)中の色塗シンボルは窒素の吸着量を示し、白抜きシンボルは窒素の脱着量を示している。図21(a)に示すように、賦活処理を行うことにより、炭素部材の表面の吸着量が増えていることが確認された。また、図21(b)に示すように、賦活処理により、直径3nm以下の主にミクロ孔の容積が増えていることが確認された。これは、図20(b)に示す二酸化炭素を用いた賦活処理とは異なった傾向を示している。

0063

図21(a)および(b)の結果から、BET比表面積(SBET)および気孔量(VP)を求め、図21(b)中に示す。賦活処理により、BET比表面積および気孔量は増大し、それぞれ426.5m2/gおよび1.02cm3/gであった。特に、BET比表面積は、賦活処理前に比べて2倍以上に増大していることが確認された。

0064

前駆体の炭素含有材料Mn79C21を、700℃(973K)のZn金属浴に、250rpmで撹拌しながら15分(900秒)間浸漬し、多孔質の炭素部材を得た。さらに、周囲や微小間隙中に残存するMn成分およびZn成分を除去するために、その炭素部材を硝酸水溶液中に24時間浸漬した後、洗浄および乾燥を行った。こうして得られた炭素部材の顕微鏡写真を、図22に示す。図22に示すように、得られた炭素部材は、多孔質であり、微小間隙を有していることが確認できる。この結果から、Zn金属浴により脱成分工程を行うことができることが確認された。

0065

前駆体の炭素含有材料Mn79C21を、1150℃(1423K)のCu金属浴に5分(300秒)間浸漬し、多孔質の炭素部材を得た。さらに、周囲や微小間隙中に残存するMn成分およびCu成分を除去するために、その炭素部材を硝酸水溶液中に24時間浸漬した後、洗浄および乾燥を行った。こうして得られた炭素部材の顕微鏡写真を、図23に示す。図23に示すように、得られた炭素部材は、多孔質であり、微小間隙を有していることが確認できる。この結果から、Cu金属浴により脱成分工程を行うことができることが確認された。

0066

得られた炭素部材のXRDパターンを図24に示す。また、図24の結果から、ピーク位置(2θ)、d002、FWHM002を求め、表3に示す。また、得られた炭素部材のラマンスペクトルの結果から、FWHMG、ID/IGを求め、表3に示す。なお、図24および表3には、比較のため、同じ前駆体を1100℃のBi金属浴に15分間浸漬して得られた炭素部材の結果も示す。

0067

0068

表3に示すように、Bi金属浴と比べて、Cu金属浴で脱成分工程を行った方が、d002、FWHM002、ID/IGおよびFWHMGが小さくなることが確認された。このことから、Cu金属浴で脱成分工程を行うことにより、結晶性が高く、電気電導率および耐食性(耐久性)が高い炭素材料が得られるといえる。

0069

シート状の多孔質黒鉛を製造した。1つ目の製造方法として、まず、Si基板上に、前駆体の炭素含有材料のMnC薄膜(Mn85C15の薄膜)をスパッタ成膜し、Si基板ごと1100℃のBi金属浴に10分間浸漬して、シート状の多孔質の炭素部材を得た。さらに、周囲や微小間隙中に残存するMn成分およびBi成分を除去するために、その炭素部材を硝酸水溶液中に3時間浸漬した後、洗浄および乾燥を行った。こうして得られたシート状の炭素部材の走査型電子顕微鏡写真を図25に、ラマンスペクトルを図26に示す。

0070

また、2つ目の製造方法として、Si基板上にBiを成膜し、さらにその上に、前駆体の炭素含有材料のMnC薄膜(Mn85C15の薄膜)をスパッタ成膜した。これを、1100℃まで昇温し、Biと前駆体との脱成分反応を促進させながら10分間保持した。このとき、Biが溶融して金属浴になり、炭素含有材料からMnを選択的に金属浴内に溶出させることができる。この脱成分工程後、Si基板ごと冷却し、周囲や微小間隙中に残存するMn成分およびBi成分を除去するために、その炭素部材を硝酸水溶液中に3時間浸漬した後、洗浄および乾燥を行った。

0071

なお、前駆体のMnC薄膜は、Bi薄膜の上に配置されているが、Biが溶融したときに、MnC薄膜がその溶融金属に接触する配置であれば、いかなる配置であってもよく、例えば、Si基板とBi薄膜との間に配置されていても、Bi薄膜で挟むように配置されていてもよい。また、これらの2つの製造方法では、このシート状の炭素部材の厚さは、前駆体のMnC薄膜の厚さやスパッタのMnC成膜時間で制御可能であり、大きさは、Si基板の大きさや前駆体のMnC薄膜の大きさで制御可能である。

0072

以上の実施例で示したように、本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法によれば、結晶性、電気電導率および耐久性が高く、比表面積が大きく、バルク状でかさ密度が大きい多孔質黒鉛を得ることができる。得られた多孔質黒鉛は、各種電池の電極等に用いられた場合、比表面積が大きいため、熱的安定性が高く、高充放電速度、高出力を得ることができる。また、結晶性および電気電導率が高いため、高出力、高充放電速度、高耐久性を得ることができる。また、かさ密度が大きいため、高容量にすることができる。シート状の多孔質黒鉛は、特に、燃料電池のガス拡散層、リチウムイオン電池の集電体兼負極活物質、各種空気電池空気極担持体などに好適に使用することができる。

0073

なお、本発明の実施の形態の多孔質黒鉛の製造方法で、金属浴は、Ag,Bi,Zn,Cuに限らず、Ga,Ge,Hg,In,Ir,Pb,Pt,Rh,SbまたはSnであっても、これらのうちの少なくとも一つを主成分とする合金である混和体から成っていてもよい。また、前駆体の炭素含有材料の、炭素以外の他の主成分は、Mnに限らず、Al,B,Be,Ca,Ce,Cr,Dy,Er,Eu,Fe,Gd,Hf,Ho,K,La,Li,Lu,Mg,Mo,Na,Nb,Nd,Pr,Sc,Se,Si,Sm,Sr,Ta,Ti,V,W,Zrのいずれか一つ、もしくは、その複数を含む混和体から成っていてもよい。

0074

例えば、代表的な炭素含有材料(カーバイド)について脱成分工程に適した金属浴(溶湯)を検討すると、表4のようになると考えられる。表4は、それぞれの2次元状態図に基づいて検討したものである。

実施例

0075

0076

11炭素含有材料
12金属浴
13炭素部材
14 未反応の前駆体
15 水溶液

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