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技術 流体分離用炭素膜、流体分離膜モジュールおよび、流体分離用炭素膜の製造方法

出願人 東レ株式会社
発明者 竹内康作田中健太郎三原崇晃堀口智之
出願日 2015年7月24日 (6年5ヶ月経過) 出願番号 2015-544222
公開日 2017年7月20日 (4年5ヶ月経過) 公開番号 WO2016-013676
状態 特許登録済
技術分野 半透膜を用いた分離 積層体(2)
主要キーワード 液体分離用 破壊加重 連続多孔構造 リグニン樹脂 材料厚み 重量ロス 種混合ガス 平均空隙率
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年7月20日)のものです。
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図面 (2)

課題・解決手段

本発明は、高圧流体を分離・精製することができる、耐圧性に優れ、破損しにくい流体分離用炭素膜を提供する。本発明は、共連続多孔構造を有するコア層と、前記コア層の周囲に形成された実質的に共連続多孔構造を有しないスキン層とを有する流体分離用炭素膜に関する。

概要

背景

種混合ガスから特定のガスを選択的に分離・精製するガス分離法として、膜分離法が知られている。膜分離法は他のガス分離法と比較して省エネルギーな手法であるため、注目されている。

ガス分離法に用いられるガス分離膜素材としては、ポリイミド膜などの有機膜が提案されているが、このような有機膜は耐熱性耐薬品性に劣る課題があった(例えば、特許文献1)。一方、耐熱性に優れるゼオライト分離膜に用いることが報告されているが、ゼオライト膜では耐酸性に乏しく、またそれ単独では所望の形状に成形加工することが困難であるため、多孔質支持体上に膜を形成する必要があった。さらに、その製造工程は煩雑であり、高価であるという課題もあった(例えば、特許文献2)。

上記のような課題を解決すべく、炭素膜を用いた膜分離が注目されている。炭素膜は優れたガス分離性能を示し、なおかつ耐熱性や耐薬品性が要求される環境でも使用できることから、その実用化が期待されている。炭素膜としては、例えば、中空状のセラミックス多孔質体の表面にフェノール樹脂ポリイミドなどの樹脂を塗布し、非酸化性雰囲気下で炭化した炭素膜が報告されている(例えば、特許文献3、4)。しかしながら、このような炭素膜は製造工程が煩雑であり高価であった。また、自立型の炭素膜として中空糸炭素膜についても報告されている(例えば、特許文献5)。中空糸炭素膜は製造工程が比較的単純で安価に製造でき、また、単位容積あたりに占める膜面積を大きくすることができるため、平膜に比べてコンパクト分離膜モジュール製作が可能という利点がある。さらに最近では、炭素膜の課題であった柔軟性や脆さを改善した例についても報告されている(例えば、特許文献6、7、8)。

概要

本発明は、高圧流体を分離・精製することができる、耐圧性に優れ、破損しにくい流体分離用炭素膜を提供する。本発明は、共連続多孔構造を有するコア層と、前記コア層の周囲に形成された実質的に共連続多孔構造を有しないスキン層とを有する流体分離用炭素膜に関する。

目的

本発明の課題は、高圧条件においても破損せずに使用できる、耐圧性に優れた自立型の炭素膜を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

連続多孔構造を有するコア層と、前記コア層の周囲に形成された実質的に共連続多孔構造を有しないスキン層とを有する流体分離用炭素膜

請求項2

前記コア層の共連続多孔構造の構造周期が0.002μm〜10μmである、請求項1に記載の流体分離用炭素膜。

請求項3

前記コア層の中心部における平均空隙率が10〜80%である、請求項1または2に記載の流体分離用炭素膜。

請求項4

前記コア層としての芯部と、前記スキン層としての部を有する芯鞘構造繊維である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の流体分離用炭素膜。

請求項5

丸断面の繊維である、請求項4に記載の流体分離用炭素膜。

請求項6

共連続多孔構造を有するコア層と、前記コア層の周囲に形成された実質的に共連続多孔構造を有しないスキン層と、前記コア層の内側に形成された中空部とを有する流体分離用中空糸炭素膜

請求項7

中空糸炭素膜の断面積Bに対する前記中空部の断面積Aの面積比率(A/B)が0.001〜0.7である、請求項6に記載の流体分離用中空糸炭素膜。

請求項8

前記コア層の構造周期が0.05〜3μmである、請求項6または7に記載の流体分離用中空糸炭素膜。

請求項9

前記コア層の共連続多孔構造における細孔の平均直径が30〜1,500nmである、請求項6〜8のいずれか一項に記載の流体分離用中空糸炭素膜。

請求項10

前記スキン層の厚みが5μm以下である、請求項6〜9のいずれか一項に記載の流体分離用中空糸炭素膜。

請求項11

請求項4または5に記載の流体分離用炭素膜または請求項6〜10のいずれか一項に記載の流体分離用中空糸炭素膜を複数本モジュール化してなる流体分離膜モジュール

請求項12

工程1:炭化可能樹脂10〜90重量%と、消失樹脂90〜10重量%を相溶させ、樹脂混合物とする工程;工程2:工程1で得た樹脂混合物を相分離させ、固定化し、流体分離用炭素膜の前駆体を得る工程;工程3:工程2で得た流体分離用炭素膜の前駆体を焼成により炭化する工程;を有する流体分離用炭素膜の製造方法。

請求項13

工程1:炭化可能樹脂10〜90重量%と、消失樹脂90〜10重量%を相溶させ、樹脂混合物とする工程;工程2:工程1において相溶させた状態の樹脂混合物を中空糸状紡糸するとともに、相分離させて微細構造を形成し、流体分離用中空糸炭素膜の前駆体を得る工程;工程3:工程2で得た流体分離用中空糸炭素膜の前駆体を焼成により炭化する工程;を有する流体分離用中空糸炭素膜の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、耐圧性に優れた流体分離用炭素膜流体分離膜モジュールおよび流体分離用炭素膜の製造方法に関するものである。

背景技術

0002

種混合ガスから特定のガスを選択的に分離・精製するガス分離法として、膜分離法が知られている。膜分離法は他のガス分離法と比較して省エネルギーな手法であるため、注目されている。

0003

ガス分離法に用いられるガス分離膜素材としては、ポリイミド膜などの有機膜が提案されているが、このような有機膜は耐熱性耐薬品性に劣る課題があった(例えば、特許文献1)。一方、耐熱性に優れるゼオライト分離膜に用いることが報告されているが、ゼオライト膜では耐酸性に乏しく、またそれ単独では所望の形状に成形加工することが困難であるため、多孔質支持体上に膜を形成する必要があった。さらに、その製造工程は煩雑であり、高価であるという課題もあった(例えば、特許文献2)。

0004

上記のような課題を解決すべく、炭素膜を用いた膜分離が注目されている。炭素膜は優れたガス分離性能を示し、なおかつ耐熱性や耐薬品性が要求される環境でも使用できることから、その実用化が期待されている。炭素膜としては、例えば、中空状のセラミックス多孔質体の表面にフェノール樹脂ポリイミドなどの樹脂を塗布し、非酸化性雰囲気下で炭化した炭素膜が報告されている(例えば、特許文献3、4)。しかしながら、このような炭素膜は製造工程が煩雑であり高価であった。また、自立型の炭素膜として中空糸炭素膜についても報告されている(例えば、特許文献5)。中空糸炭素膜は製造工程が比較的単純で安価に製造でき、また、単位容積あたりに占める膜面積を大きくすることができるため、平膜に比べてコンパクト分離膜モジュール製作が可能という利点がある。さらに最近では、炭素膜の課題であった柔軟性や脆さを改善した例についても報告されている(例えば、特許文献6、7、8)。

先行技術

0005

日本国特開昭61−133118号公報
日本国特開平7−089714号公報
日本国特開平10−52629号公報
日本国特開2003−286018号公報
日本国特開平5−220360号公報
日本国特開2006−231095号公報
日本国特開2009−034614号公報
日本国特開2013−071073号公報

発明が解決しようとする課題

0006

例えば天然ガス精製プラントでは、主成分であるメタンガスに含まれる不純物二酸化炭素を分離・除去する必要があり、エネルギーの効率利用の観点から数MPa以上の高いガス圧を保持したまま分離・精製することが求められている。また、化学工業においてアルコール酢酸中に含まれる不純物の水を分離・精製する工程においても膜分離法が使われ始めており、分離対象物質透過度を向上させるために高圧で分離・精製することが求められている。

0007

しかしながら、従来の中空糸炭素膜はその圧力によって破損する場合があり、このような用途に用いる場合には耐圧性が十分とはいえなかった。

0008

本発明の課題は、高圧条件においても破損せずに使用できる、耐圧性に優れた自立型の炭素膜を提供することである。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、共連続多孔構造を有するコア層と、実質的に共連続多孔構造を有しないスキン層とを有する構造にすることにより、耐圧性に優れ、高圧条件でも破損しにくい流体分離用の炭素膜が得られることを見出した。

0010

すなわち、本発明は、共連続多孔構造を有するコア層と、前記コア層の周囲に形成された実質的に共連続多孔構造を有しないスキン層とを有する流体分離用炭素膜に関する。

発明の効果

0011

本発明により、耐圧性に優れた炭素膜を作製することができるため、従来の自立型の炭素膜では使用が困難であった高圧条件においても使用可能なガス分離用または液体分離用の分離膜として適用することが可能になる。

図面の簡単な説明

0012

図1は、実施例1の炭素膜のコア層の走査型電子顕微鏡写真である。

0013

<流体分離用炭素膜>
本発明の流体分離用炭素膜(以下、単に「炭素膜」または「膜」ということがある。)は、コア層とスキン層とを有する。

0014

〔コア層〕
コア層は、後述するスキン層の内側に形成される共連続多孔構造を有する層であり、後述する中空糸炭素膜以外の態様においては本発明の流体分離用炭素膜の中心を形成する層である。「共連続多孔構造」とは、枝部(炭素部)と細孔部(空隙部)がそれぞれ連続しつつ三次元的に規則的に絡み合った構造であり、具体的には図1に例示される通り、液体窒素中で充分に冷却した試料ピンセット等により割断した断面を走査型電子顕微鏡で表面観察した際に、奥行き方向に枝部と空隙部がそれぞれ連続した構造が観察されることをいう。このような構造を有することで、枝部がそれぞれ互いに構造体支えあう効果が生じて応力を膜全体に分散させるため、圧縮曲げなどの外力に対して大きな耐性を有し、耐圧性をより向上させることができる。また、コア層は空隙が三次元的に連通しているため、スキン層から中空部へ(外圧式)、あるいは中空部からスキン層へ(内圧式)、ガスや液体などの流体を供給または排出させるための流路としての役割を有し、また同時に、繊維軸方向への流路としての役割も有する。

0015

一般的に膜分離で用いられる樹脂製の中空糸膜の場合、その内部構造の種類として細孔が連通していない独立気泡型と、細孔が連通している連続多孔構造型に分類される。該分類を本発明における炭素膜のコア層に適用した場合、連続多孔構造型に分類され、さらに後述するように、コア層はX線散乱観測されるような均一性の高い共連続多孔構造で構成される。そのため耐圧性が高くなり、供給する流体の圧力が高い場合でも破損せずに使用することが可能となる。

0016

コア層の共連続多孔構造は、構造周期が0.002μm〜10μmであることが好ましい。コア層の構造周期が0.002μm以上であると、空隙部に流体を流す際の圧力損失が低減して、流速を高めることができる。また、圧力損失が低下すると、より省エネルギーで分離・精製できる効果も奏する。構造周期は0.01μm以上であることがより好ましく、0.05μm以上であることがさらに好ましい。一方、構造周期が10μm以下であると、圧縮や曲げといった断面方向にかかる力に強くなるため、耐圧性を向上させることができる。構造周期は8μm以下であることがより好ましい。

0017

コア層の共連続多孔構造の構造周期は、本発明の炭素膜にX線を入射し、小角で散乱して得られた散乱強度ピークトップの位置における散乱角度2θにより、下式で算出されるものである。

0018

0019

L:構造周期(μm)、λ:入射X線波長(μm)
ただしコア層の構造周期が大きくて小角での散乱が観測できない場合がある。その場合はX線コンピュータ断層撮影X線CT)によって構造周期を得る。具体的には、X線CTによって撮影した三次元画像フーリエ変換した後に、その二次元スペクトルの円環平均を取り、一次元スペクトルを得る。その一次元スペクトルにおけるピークトップの位置に対応する特性波長を求め、その逆数としてコア層の構造周期を算出する。

0020

なお、上記の構造周期の解析に際して、後述するスキン層については、構造周期が上記の範囲外となるため解析に影響はなく、上記式で算出される構造周期をもって、コア層の共連続多孔構造の構造周期とする。

0021

本発明の流体分離用炭素膜の共連続多孔構造の均一性が高いと、膜全体に応力を分散させる効果が得られるため、耐圧性が高くなる。共連続多孔構造の均一性は、本発明の炭素膜にX線を入射した際の散乱強度のピーク半値幅により決定できる。具体的には、横軸を散乱角度2θ、縦軸を散乱強度としたときのグラフにおいて、散乱強度のピークの半値幅が小さいほど均一性が高いと判断する。ピークの半値幅は5°以下が好ましく、1°以下がより好ましく、0.1°以下がさらに好ましい。

0022

なお、本発明におけるピークの半値幅とは、ピークの頂点を点Aとし、点Aからグラフの縦軸に平行な直線を引き、該直線とスペクトルベースラインとの交点を点Bとしたとき、点Aと点Bを結ぶ線分中点(点C)におけるピークの幅である。なお、ここでのピークの幅とは、ベースラインに平行で、かつ点Cを通る直線上の幅のことである。

0023

また、コア層の中心部における平均空隙率が10〜80%であることが好ましい。平均空隙率とは、包埋した試料をクロスセクションポリッシャー法(CP法)により精密に形成させた断面を、1±0.1(nm/画素)となる倍率にて70万画素以上の解像度で観察し、その画像から計算に必要な着目領域を512画素四方で設定し、炭素膜の断面積をC、細孔部分面積をDとして、以下の式で算出し、任意の断面20箇所の算術平均値により算出された値である。なお、後述する中空糸炭素膜の場合、中空部は平均空隙率の計算には含めない。

0024

平均空隙率(%)=D/C×100
平均空隙率が高いほどガスや液体の流路として圧力損失が小さく、流速を高めることができる一方、低いほど圧縮や曲げといった断面方向にかかる力に強くなるため、取り扱い性や高圧条件での使用に際して有利となる。そのため、15%以上がより好ましく、18%以上がさらに好ましい。一方、平均空隙率が低いほど耐圧性が向上し、高圧条件で使用することができる。そのため、75%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましい。

0025

なお、上記における中心部とは、膜の断面における質量分布が均一であると仮定した際の重心を指し、例えば膜の形態が丸断面を持つ繊維の場合は、繊維軸と直交する断面において繊維表面からの距離が同一となる点を指す。ただし明確に重心を定義することが困難なフィルム形状の場合は、MDまたはTD方向と直交する断面においてフィルム表面から垂線を引き、その垂線上におけるフィルム厚みの二分の一の寸法である点の集合を中心部とする。また、後述する中空糸炭素膜の場合には、中空糸炭素膜外表面の接線から垂線を引き、垂線上において材料厚みの二分の一の寸法にある点の集合を中心部とする。

0026

本発明の炭素膜のコア層の共連続多孔構造における細孔の平均直径は、小さすぎると圧力損失が増加して流体の透過度が低下するため30nm以上がより好ましく50nm以上がさらに好ましい。また、細孔の平均直径が大きいと、炭素の枝部が構造体全体を支えあう効果が低下して耐圧性が低下するため、3,000nm以下が好ましく、2,500nm以下がより好ましい。ここで細孔の平均直径は水銀圧入法による細孔径分布測定によって得た測定値を用いる。水銀圧入法とは、共連続多孔構造の細孔に圧力を加えて水銀を浸入させ、圧力と圧入された水銀量から細孔容積比表面積を求める。そして細孔を円筒と仮定したときに細孔容積と比表面積の関係から得た細孔直径を算出するものであり、水銀圧入法では5nm〜500μmの細孔直径分布曲線を取得できる。なお、後述するスキン層は実質的に細孔を有しないため、炭素膜全体の細孔の平均直径は、実質的にコア層の細孔の平均直径と同一である。

0027

〔スキン層〕
スキン層は、コア層の周囲に形成された、共連続多孔構造を実質的に有しない層であり、本発明の流体分離用炭素膜の外表面を形成する層である。「共連続多孔構造を実質的に有しない」とは、クロスセクションポリッシャー法(CP法)により形成させた断面を、1±0.1(nm/画素)となる倍率で観察した際に、孔径が解像度以下であることにより明確な細孔が観察されない部分が、前述のX線分析から算出される構造周期Lの3倍の長さを一辺とする正方形の領域以上の面積で存在することを意味する。

0028

スキン層の厚みは特に限定されず、適宜選択することができるが、厚すぎると膜として流体の透過度が低下する傾向が見られることから、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。また、下限についても特に限定されないが、スキン層は膜の形態を保ち、分離機能層としての役割を有する観点から1nm以上であることが好ましく、100nm以上がより好ましい。

0029

炭素膜に共連続多孔構造を実質的に有しないスキン層が存在することで、混合流体を分離・精製するための分離層としての機能を有するとともに、耐圧性を高めることができる。

0030

〔炭素膜の形状〕
本発明の流体分離用炭素膜の形状は繊維状またはフィルム状であることが好ましい。

0031

繊維状とは、繊維の平均直径に対して平均長さが100倍以上のものであり、コア層としての芯部と、スキン層としての部を有する芯鞘構造を有する繊維を指す。膜が繊維状の場合には、中空糸膜用のモジュールを用いて複数本の炭素膜を内蔵した流体分離膜モジュールとすることで、フィルム状と比較して単位体積当りの膜面積を大きくすることができる利点がある。また、断面方向にかかる力に対する耐性が高くなることから、高圧条件で使用することも可能となり、高効率での分離が可能となるため好ましい。

0032

繊維の断面の形状は、丸断面、三角形等の多葉断面、扁平断面や中空断面など任意の形状とすることが可能であるが、丸断面であると耐圧性がより向上するため好ましい。

0033

繊維の平均直径は特に限定されず、任意に決定することができるが、モジュール化する際の取り扱い性を維持する観点から10μm以上であることが好ましい。また曲げ剛性の向上や、モジュール化したときの単位体積当りの膜面積向上の観点から、500μm以下であることが好ましい。繊維の平均長さは任意に決定することができるが、モジュール化する際の取り扱い性向上や流体の透過性能向上の観点から、10mm以上が好ましい。

0034

一方、膜がフィルム状の形態の場合には、スキン層はコア層の両面にあっても、片面のみにあってもよい。スキン層が両面にある場合はフィルム断面からコア層に流体を供給し、両面のスキン層にて分離させることができ、また、スキン層が片面のみにある場合は、フィルムの片面から流体を供給し、スキン層にて分離させることができる。

0035

フィルムの厚みは特に限定されず、任意に決定することができるが、取り扱い性を考慮した場合、0.01μm以上であることが好ましく、曲げ剛性の向上の観点から5000μm以下であることが好ましい。

0036

〔中空糸炭素膜〕
中空断面を持つ炭素膜、すなわち流体分離用中空糸炭素膜(単に「中空糸炭素膜」ということがある)とすることも、本発明の一態様である。以下、流体分離用中空糸炭素膜とする場合について説明する。

0037

本発明の中空糸炭素膜は、コア層の内側にさらに中空部を有する繊維状の炭素膜である。本発明における中空部とは、繊維軸方向に連続的に形成された略同一の直径からなる空隙部を指し、中空部はコア層とともに流体の流路としての役割を有する。中空部を有することで、外圧式、内圧式のいずれの方式で流体を透過させる場合においても流体が繊維軸方向および繊維断面方向に流れる際の圧力損失が低減するため、中空断面を有していない炭素膜と比較して流体の透過度が向上する。特に内圧式の場合、流体がコア層を流れる際の圧力損失が低下するため、透過度がより向上する。

0038

中空糸炭素膜の断面積Bに対する中空部の断面積Aの面積比率(中空面積比率:A/B)は0.001〜0.7であることが好ましい。中空面積比率が大きいほど圧力損失が低下して流体の透過度が向上する。そのため、中空面積比率は0.01以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましい。一方、中空面積比率が小さいほど耐圧性が高くなる。そのため、中空面積比率は0.6以下がより好ましい。中空面積比率が上記の範囲内だと耐圧性と流体の透過度のバランスに優れる。なお、中空糸炭素膜の断面積Bは中空部の断面積Aを含んだ断面積である。また、耐圧性と透過度を両立させるために中空部は複数有していてもよく、その場合は中空部の断面積の総和を中空部の断面積Aとする。

0039

中空糸炭素膜および中空部の断面形状は、丸断面、三角形等の多葉断面、扁平断面など任意の形状とすることが可能であるが、中空糸炭素膜および中空部の断面形状の両方が丸断面であると耐圧性がより向上するため好ましい。

0040

中空糸炭素膜とする場合、コア層の共連続多孔構造の構造周期は0.05μm〜3μmであることが好ましい。コア層の構造周期が0.05μm以上であると、空隙部に流体を流す際の圧力損失が低減し、流体の透過度が向上する。構造周期が3μm以下であると耐圧性が高くなる。構造周期は2.5μm以下がより好ましい。

0041

また、コア層の共連続多孔構造における細孔の平均直径は、小さすぎると圧力損失が増加して流体の透過度が低下するため30nm以上が好ましく50nm以上がより好ましい。また、細孔の平均直径が大きいと、炭素の枝部が構造体全体を支えあう効果が低下して耐圧性が低下するため、1,500nm以下が好ましい。

0042

また、スキン層の厚みが厚いと流体の透過度が低下する傾向があるため、スキン層の厚みは5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。また、下限については特に限定されないが、スキン層は膜の形態を保ち、分離機能層としての役割を有する観点から1nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。

0043

中空部に接するコア層の壁面(以下、「内表面」ということがある)には細孔が形成されていてもよく、また、細孔が形成されていなくてもよい。ここでの細孔とは、内表面を、1±0.1(nm/画素)となる倍率で観察した際に、明確な細孔が観察されることを意味する。内表面に細孔が形成されている場合、コア層と中空部が連通する構造となるため、流体の透過性能が向上する。一方、内表面に細孔が形成されていない場合、内表面においても流体が分離される機能を有するため、流体の分離性能が向上する。

0044

また、本発明の流体分離用炭素膜は、スキン層の外側にさらにコート層を有するものであってもよい。ここで、コート層を形成する成分は特に限定されず、各種有機無機高分子化合物を使用することができる。

0045

<流体分離用炭素膜の製造方法>
本発明の流体分離用炭素膜は、一例として、炭化可能樹脂と消失樹脂とを相溶させて樹脂混合物とする工程(工程1)と、相溶した状態の樹脂混合物を相分離させ、固定化し、炭素膜の前駆体を得る工程(工程2)と、得られた前駆体を焼成により炭化する工程(工程3)とを有する製造方法により製造することができる。

0046

〔工程1〕
工程1は、炭化可能樹脂10〜90重量%と、消失樹脂90〜10重量%と相溶させ、樹脂混合物とする工程である。

0047

ここで炭化可能樹脂とは、焼成により炭化し、枝部(炭素部)として残存する樹脂であり、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の双方を用いることができる。熱可塑性樹脂の場合、加熱や高エネルギー線照射などの簡便なプロセスで不融化処理を実施可能な樹脂を選択することが好ましい。また、熱硬化性樹脂の場合、不融化処理が不要の場合が多く、こちらも好適な材料として挙げられる。熱可塑性樹脂の例としては、ポリフェニレンオキシドポリビニルアルコールポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、全芳香族ポリエステルが挙げられ、熱硬化性樹脂の例としては、不飽和ポリエステル樹脂アルキド樹脂メラミン樹脂ユリア樹脂ポリイミド樹脂ジアリルフタレート樹脂リグニン樹脂ウレタン樹脂などを列挙することができる。これらは単独で用いても、混合された状態で用いても構わないが、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂それぞれで混合することも成形加工の容易さから好ましい。

0048

それらの中でも炭化収率成形性、経済性の観点から熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、全芳香族ポリエステルがより好ましく用いられる。

0049

また消失樹脂とは、後述する工程2に引き続いて、不融化処理と同時もしくは不融化処理後、または焼成と同時のいずれかの段階で除去することのできる樹脂である。消失樹脂を除去する方法については特に限定されず、薬品を用いて解重合するなどして化学的に除去する方法、消失樹脂を溶解する溶媒を添加して溶解除去する方法、加熱して熱分解によって消失樹脂を低分子量化して除去する方法などが好ましく用いられる。これらの手法は単独で、もしくは組み合わせて使用してすることができ、組み合わせて実施する場合にはそれぞれを同時に実施しても別々に実施してもよい。

0050

化学的に除去する方法としては、酸またはアルカリを用いて加水分解する方法が経済性や取り扱い性の観点から好ましい。酸またはアルカリによる加水分解を受けやすい樹脂としては、ポリエステルポリカーボネートポリアミドなどが挙げられる。

0051

消失樹脂を溶解する溶媒を添加して除去する方法としては、混合された炭化可能樹脂と消失樹脂に対して、連続して溶媒を供給して消失樹脂を溶解、除去する方法や、バッチ式で混合して消失樹脂を溶解、除去する方法などが好ましい例として挙げられる。

0052

溶媒を添加して除去する方法に適した消失樹脂の具体的な例としては、ポリエチレンポリプロピレンポリスチレンなどのポリオレフィンアクリル樹脂メタクリル樹脂ポリビニルピロリドン脂肪族ポリエステル、ポリカーボネートなどが挙げられる。中でも溶媒への溶解性から非晶性の樹脂であることがより好ましく、その例としてはポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリカーボネートが挙げられる。

0053

熱分解によって消失樹脂を低分子量化して除去する方法としては、混合された炭化可能樹脂と消失樹脂をバッチ式で加熱して熱分解する方法や、連続して混合された炭化可能樹脂と消失樹脂を加熱源中へ連続的に供給しつつ加熱して熱分解する方法が挙げられる。

0054

消失樹脂は、これらのなかでも、後述する工程3において、炭化可能樹脂を焼成により炭化する際に熱分解により消失する樹脂であることが好ましく、後述する炭化可能樹脂の不融化処理の際に大きな化学変化を起さず、かつ焼成後の炭化収率が10%未満となる熱可塑性樹脂であることが好ましい。このような消失樹脂の具体的な例としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのポリオレフィン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール、ポリビニルピロリドン、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル脂肪族ポリアミド、ポリカーボネートなどを列挙することができ、これらは、単独で用いても、混合された状態で用いても構わない。

0055

工程1においては、炭化可能樹脂と消失樹脂を相溶させ、樹脂混合物(ポリマーアロイ)とする。ここでいう「相溶させ」とは、温度および/または溶媒の条件を適切に選択することにより、光学顕微鏡で炭化可能樹脂と消失樹脂の相分離構造が観察されない状態を作り出すことをいう。

0056

炭化可能樹脂と消失樹脂は、樹脂同士のみの混合により相溶させてもよいし、さらに溶媒を加えることにより相溶させてもよい。

0057

複数の樹脂が相溶する系としては、低温では相分離状態にあるが高温では1相となる上限臨界共溶温度(UCST)型の相図を示す系や、逆に、高温では相分離状態にあるが低温では1相となる下限臨界共溶温度(LCST)型の相図を示す系などが挙げられる。また特に炭化可能樹脂と消失樹脂の少なくとも一方が溶媒に溶解した系である場合には、非溶媒の浸透によって後述する相分離が誘発されるものも好ましい例として挙げられる。

0058

加えられる溶媒については特に限定されず、溶解性の指標となる炭化可能樹脂と消失樹脂の溶解度パラメーターSP値)の平均値からの差の絶対値が、5.0以内であることが好ましい。SP値の平均値からの差の絶対値は、小さいほど溶解性が高いことが知られているため、差がないことが好ましい。またSP値の平均値からの差の絶対値は、大きいほど溶解性が低くなり、炭化可能樹脂と消失樹脂との相溶状態を取ることが難しくなる。このことからSP値の平均値からの差の絶対値は、3.0以下であることが好ましく、2.0以下が最も好ましい。

0059

相溶する系の具体的な炭化可能樹脂と消失樹脂の組み合わせ例としては、溶媒を含まない系であれば、ポリフェニレンオキシド/ポリスチレン、ポリフェニレンオキシド/スチレンアクリロニトリル共重合体、全芳香族ポリエステル/ポリエチレンテレフタレート、全芳香族ポリエステル/ポリエチレンナフタレート、全芳香族ポリエステル/ポリカーボネートなどが挙げられる。溶媒を含む系の具体的な組合せ例としては、ポリアクリロニトリル/ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル/ポリビニルフェノール、ポリアクリロニトリル/ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル/ポリ乳酸、ポリビニルアルコール/酢酸ビニルビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール/ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール/デンプンなどを挙げることができる。

0060

炭化可能樹脂と消失樹脂を混合する方法については限定されず、均一に混合できる限りにおいて公知の種々の混合方式を採用できる。具体例としては、攪拌翼を持つロータリー式ミキサーや、スクリューによる混練押出機などが挙げられる。

0061

また炭化可能樹脂と消失樹脂を混合する際の温度(混合温度)を、炭化可能樹脂と消失樹脂が共に軟化する温度以上とすることも好ましい。ここで軟化する温度とは、炭化可能樹脂または消失樹脂が結晶性高分子であれば融点非晶性樹脂であればガラス転移点温度を適宜選択すればよい。混合温度を炭化可能樹脂と消失樹脂が共に軟化する温度以上とすることで、両者の粘性下げられるため、より効率のよい攪拌、混合が可能になる。混合温度の上限についても特に限定されず、熱分解による樹脂の劣化を防止し、品質に優れた炭素膜の前駆体を得る観点から、400℃以下であることが好ましい。

0062

また、工程1においては、炭化可能樹脂10〜90重量%に対し消失樹脂90〜10重量%を混合する。炭化可能樹脂と消失樹脂が前記範囲内であると、最適な細孔サイズ空隙率を任意に設計できるため好ましい。炭化可能樹脂が10重量%以上であれば、炭化後の膜における力学的な強度を保つことが可能になるほか、収率が向上するため好ましい。また炭化可能な材料が90重量%以下であれば、消失樹脂が効率よく空隙を形成できるため好ましい。

0063

炭化可能樹脂と消失樹脂の混合比については、それぞれの材料の相溶性を考慮して、上記の範囲内で任意に選択することができる。具体的には、一般に樹脂同士の相溶性はその組成比が1対1に近づくにつれて悪化するため、相溶性のあまり高くない系を原料に選択した場合には、炭化可能樹脂の量を増やす、減らすなどして、いわゆる偏組成に近づけることで相溶性を改善することも好ましい態様として挙げられる。

0064

また炭化可能樹脂と消失樹脂を混合する際に、溶媒を添加することも好ましい。溶媒を添加することで炭化可能樹脂と消失樹脂の粘性を下げ、成形を容易にするほか、炭化可能樹脂と消失樹脂を相溶化させやすくなる。ここでいう溶媒も特に限定されず、炭化可能樹脂、消失樹脂のうち少なくともいずれか一方を溶解、膨潤させることが可能な常温で液体であるものであればよく、炭化可能樹脂および消失樹脂をいずれも溶解するものであれば、両者の相溶性を向上させることが可能となるためより好ましい。

0065

溶媒の添加量は、炭化可能樹脂と消失樹脂の相溶性を向上させ、粘性を下げて流動性を改善する観点から炭化可能樹脂と消失樹脂の合計重量に対して20重量%以上であることが好ましい。また一方で溶媒の回収、再利用に伴うコストの観点から、炭化可能樹脂と消失樹脂の合計重量に対して90重量%以下であることが好ましい。

0066

〔工程2〕
工程2は、工程1において相溶させた状態の樹脂混合物を相分離させて微細構造を形成し、固定化する工程である。前述の本発明の流体分離用炭素膜を得る場合、微細構造として共連続相分離構造を形成させる必要がある。

0067

混合された炭化可能樹脂と消失樹脂を相分離させる方法は特に限定されず、例えば温度変化によって相分離を誘発する熱誘起相分離法、非溶媒を添加することによって相分離を誘発する非溶媒誘起相分離法が挙げられる。

0068

これら相分離法は、単独で、もしくは組み合わせて使用することができる。組み合わせて使用する場合の具体的な方法は、例えば凝固浴を通して非溶媒誘起相分離を起こした後、加熱して熱誘起相分離を起こす方法や、凝固浴の温度を制御して非溶媒誘起相分離と熱誘起相分離を同時に起こす方法、口金から吐出された材料を冷却して熱誘起相分離を起こした後に非溶媒と接触させる方法などが挙げられる。

0069

また、中空糸炭素膜とする場合、工程2は、工程1において相溶させた状態の樹脂混合物を中空糸状紡糸するとともに、相分離させて微細構造を形成し、固定化する工程である。

0070

この場合、紡糸と同時に相分離させることが好ましい。このような方法としては、例えば工程1で作製した相溶樹脂合物または溶媒を加えた相溶樹脂溶液二重管構造中空糸紡糸ノズル外管から押し出し、紡糸ノズルの内管から、空気や窒素などのガス、紡糸原液と同一の溶媒、消失樹脂が溶解した溶液、非溶媒、あるいはそれらの混合物などを押し出す方法が挙げられる。

0071

次いで凝固浴中を通過させた後、乾燥することで微細構造を形成し、流体分離用中空糸炭素膜の前駆体を得ることができる。ここで凝固液としては水、アルコール、飽和食塩水、およびそれらと工程1で使用する溶媒との混合溶媒などが挙げられる。なお、内管から溶媒や消失樹脂の溶液を吐出する場合、乾燥工程の前に凝固浴中に浸漬して、内管から吐出した溶媒および消失樹脂を溶出させておくこともできる。

0072

〔消失樹脂の除去〕
工程2において得られた炭素膜の前駆体は、炭化工程(工程3)に供される前、または炭化工程と同時、またはその両方で消失樹脂の除去処理を行うことが好ましい。除去処理の方法は特に限定されない。具体的には、酸、アルカリ、酵素を用いて消失樹脂を化学的に分解、低分子量化して除去する方法や、消失樹脂を溶解する溶媒により溶解除去する方法、電子線、ガンマ線紫外線赤外線などの放射線や熱を用いて消失樹脂を分解除去する方法などが挙げられる。

0073

特に熱分解によって消失樹脂を除去処理することができる場合には、予め消失樹脂の80重量%以上が消失する温度で熱処理を行うこともできるし、炭化工程(工程3)もしくは後述の不融化処理において消失樹脂を熱分解、ガス化して除去することもできる。炭化工程(工程3)もしくは後述の不融化処理において熱処理と同時に消失樹脂を熱分解、ガス化して除去すると、生産性が高くなることから好ましい。

0074

〔不融化処理〕
工程2において得られた炭素膜の前駆体は、炭化工程(工程3)に供される前に不融化処理を行うことが好ましい。不融化処理の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的な方法としては、酸素存在下で加熱することで酸化架橋を起こす方法、電子線、ガンマ線などの高エネルギー線照射して架橋構造を形成する方法、反応性基を持つ物質含浸、混合して架橋構造を形成する方法などが挙げられ、中でも酸素存在下で加熱することで酸化架橋を起こす方法は、プロセスが簡便であり製造コストを低く抑えることが可能である点から好ましい。これらの手法は単独もしくは組み合わせて使用してもよく、それぞれを同時に使用しても別々に使用してもよい。

0075

酸素存在下で加熱することで酸化架橋を起こす方法における加熱温度は、架橋反応を効率よく進める観点から150℃以上が好ましく、炭化可能樹脂の熱分解、燃焼等による重量ロスからの収率悪化を防ぐ観点から、350℃以下が好ましい。

0076

また処理中の酸素濃度については特に限定されないが、18%以上の酸素濃度を持つガスを供給することが製造コストを低く抑えることが可能となるため好ましい。ガスの供給方法については特に限定されないが、空気をそのまま加熱装置内に供給する方法や、ボンベ等を用いて純酸素を加熱装置内に供給する方法などが挙げられる。

0077

電子線、ガンマ線などの高エネルギー線を照射して架橋構造を形成する方法としては、市販の電子線発生装置やガンマ線発生装置などを用いて、炭化可能樹脂へ電子線やガンマ線などを照射することで、架橋を誘発する方法が挙げられる。照射による架橋構造の効率的な導入から照射強度の下限は1kGy以上であると好ましく、主鎖の切断による分子量低下から膜強度が低下するのを防止する観点から1000kGy以下であることが好ましい。

0078

反応性基を持つ物質を含浸、混合して架橋構造を形成する方法は、反応性基を持つ低分子量化合物を炭素膜の前駆体に含浸して、加熱または高エネルギー線を照射して架橋反応を進める方法、予め反応性基を持つ低分子量化合物を混合しておき、加熱または高エネルギー線を照射して架橋反応を進める方法などが挙げられる。

0079

〔工程3〕
工程3は、工程2において得られた炭素膜の前駆体、あるいは必要に応じて消失樹脂の除去および/または不融化処理に供された前駆体を焼成し、炭化して炭素膜を得る工程である。

0080

炭素膜の前駆体を充分に炭化させるために、焼成は不活性ガス雰囲気において400℃以上に加熱することにより行うことが好ましい。ここで不活性ガスとは、加熱時に化学的に不活性であるものを言い、具体的な例としては、ヘリウムネオン、窒素、アルゴンクリプトンキセノン、二酸化炭素などである。中でも窒素、アルゴンを用いることが、経済的な観点から好ましい。また加熱する温度が高いと炭素膜が脆くなる傾向にあるため、1,500℃以下が好ましい。

0081

不活性ガスの流量は、加熱装置内の酸素濃度を充分に低下させられる量であればよく、加熱装置の大きさ、炭素膜の前駆体の供給量、加熱温度などによって適宜最適な値を選択することが好ましい。流量の上限についても特に限定されないが、経済性や加熱装置内の温度変化を少なくする観点から、温度分布や加熱装置の設計に合わせて適宜設定することが好ましい。

0082

連続的に炭化処理を行う場合の加熱方法については、一定温度に保たれた加熱装置内に、膜をローラーコンベヤ等を用いて連続的に供給しつつ取り出す方法であると、生産性を高くすることが可能であるため好ましい。

0083

一方、加熱装置内にてバッチ式処理を行う場合の昇温速度、降温速度の下限は特に限定されないが、昇温、降温にかかる時間を短縮することで生産性を高めることができるため、1℃/分以上の速度が好ましい。また昇温速度、降温速度の上限は特に限定されないが、加熱装置を構成する部材の耐熱衝撃特性よりも遅くすることが好ましい。

0084

以下に本発明の好ましい実施の例を記載するが、これら記載は本発明を制限するものではない。
評価手法
(共連続多孔構造の有無)
中空糸炭素膜を液体窒素中で充分に冷却後、ピンセットで割断して形成した断面のコア層部分を走査型電子顕微鏡で表面観察し、炭素骨格の枝部と細孔部(空隙部)がそれぞれ連続しつつ三次元的に規則的に絡み合った構造が見られた場合、共連続多孔構造を有していると判定した。

0085

(平均空隙率)
炭素膜を樹脂中に包埋し、その後カミソリ等で炭素膜の断面を露出させ、日本電子スパッタリング装置SM−09010を用いて加速電圧5.5kVにて試料表面にアルゴンイオンビームを照射、エッチングを施した。得られた炭素膜の断面を日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−5500にて膜断面の中心部を1±0.1(nm/画素)となる倍率で、70万画素以上の解像度で観察した画像から、計算に必要な膜断面を512画素四方で設定し、炭素膜の断面積をC、細孔部分の面積をDとして、以下の式で任意の断面20箇所の算術平均により平均空隙率を算出した。

0086

平均空隙率(%)=C/D×100
(細孔直径分布曲線の取得)
ボールミル粉砕した炭素膜を300℃、5時間の条件で真空乾燥を行い、吸着したガス成分を除去した。その後、島津製作所製の自動ポロシメータ(オートポアIV9500)を用いて細孔直径分布曲線を取得した。

0087

(構造周期)
炭素膜を試料プレートに挟み、CuKα線光源から得られたX線源から散乱角度10度未満の情報が得られるように、光源、試料および二次元検出器の位置を調整した。二次元検出器から得られた画像データ(輝度情報)から、ビームストッパーの影響を受けている中心部分を除外して、ビーム中心から動径を設け、角度1°毎に360°の輝度値を合算して散乱強度分布曲線を得た。得られた曲線においてピークを持つ位置の散乱角度2θより、連続構造部分の構造周期を下記の式によって得た。

0088

0089

L:構造周期(μm)、λ:入射X線の波長(μm)
また構造周期が1μm以上であり、X線散乱のピークが観測されない場合には、X線顕微鏡で0.3°ステップ、180°以上の範囲で連続回転像を撮影し、CT像を得た。得られたCT像に対してフーリエ変換を実施し、その二次元スペクトルの円環平均を取り、一次元スペクトルを得た。その一次元スペクトルにおけるピークトップの位置に対応する特性波長を求め、その逆数として構造周期を得た。

0090

(炭素膜の柔軟性)
炭素膜を種々の直径の円柱に180°以上巻きつけて、膜が破断するかどうかを観測した。曲げ半径は、膜が破断しない円柱において最小の半径を有する円柱を求め、その円柱の半径の値で示した。

0091

(繊維断面方向の圧縮強度
島津製作所製の微小圧縮試験機を用い、長さ1mmの中空糸炭素膜1本を治具で挟み、0.1mm/minの速度で中空糸炭素膜の繊維断面方向に圧縮して圧縮変位荷重を測定した。そして圧縮強度σを下記の式により中空糸炭素膜10本の算術平均により算出した。

0092

0093

σ:繊維断面方向の圧縮強度(MPa)、F:破壊加重(N)、d:炭素膜の繊維直径(mm)、l:炭素膜の繊維長(mm)
(ガス分離性能の評価)
複数の繊維状炭素膜束ね、束ねた炭素膜の端をエポキシ樹脂系接着剤封止してステンレス製の分離膜モジュールを作製した。このとき、炭素膜の膜面積は3.0cm2であった。ガスの供給側と透過側圧力差を0.5MPaに設定し、単成分のガスを外圧式で供給してISO15105−1:2002の差圧法準拠して測定温度25℃で炭素膜のガス分離性能を求めた。ここで、透過したガスの透過速度Qを下記式により算出し、各単成分ガスの透過速度の比としてガスの分離係数αを算出した。なお、STP標準条件を意味する。

0094

Q = [ガス透過流量(cm3・STP)]/[膜面積(cm2)×時間(s)×圧力差(cmHg)]

0095

[実施例1]
70gのポリサエンス社製ポリアクリロニトリル(MW15万)と70gのシグマアルドリッチ社製ポリビニルピロリドン(MW4万)、および、溶媒として400gの和光純薬工業製ジメチルスルホキシドDMSO)をセパラブルフラスコ投入し、3時間攪拌および還流を行いながら150℃で均一かつ透明な溶液を調製した。このときポリアクリロニトリルの濃度およびポリビニルピロリドンの濃度はそれぞれ10重量%であった。

0096

得られた溶液を25℃まで冷却した後、0.6mmφの1穴口金から3mL/分で溶液を吐出して、25℃に保たれた純水の凝固浴へ導き、その後5m/分の速度で引き取りバット上に堆積させることで原糸を得た。このときエアギャップは5mmとし、また凝固浴中の浸漬長は15cmとした。得られた原糸は半透明であり、相分離を起こしていた。

0097

得られた原糸を25℃に保った循環式乾燥機にて1時間乾燥して原糸表面の水分を乾燥させた後、25℃にて5時間の真空乾燥を行い、乾燥後の原糸を得た。

0098

その後250℃に保った電気炉中へ原糸を投入し、酸素雰囲気化で1時間加熱することで不融化処理を行った。不融化処理を行った原糸は、黒色に変化した。

0099

得られた不融化原糸を窒素流量1L/分、昇温速度10℃/分、到達温度600℃、保持時間5分の条件で炭化処理を行うことで、炭素膜とした。得られた炭素膜のコア層には共連続多孔構造が形成されていた。炭素膜の構造および物性を表1に示す。

0100

次に炭素膜からなる分離膜モジュールを作製し、単成分のガス透過測定を行った。結果を表1に示す。

0101

[実施例2]
到達温度を700℃とした以外は実施例1と同様の方法で炭素膜を得た。得られた炭素膜のコア層には共連続多孔構造が形成されていた。得られた炭素膜の構造および物性を表1に示す。

0102

次に炭素膜からなる分離膜モジュールを作製し、単成分のガス透過測定を行った。結果を表1に示す。

0103

[実施例3]
到達温度を800℃とした以外は実施例1と同様の方法で炭素膜を得た。得られた炭素膜のコア層には共連続多孔構造が形成されていた。炭素膜の構造および物性を表1に示す。

0104

次に炭素膜からなる分離膜モジュールを作製し、単成分のガス透過測定を行った。結果を表1に示す。

0105

[実施例4]
ポリアクリロニトリルおよびポリビニルピロリドンの濃度をそれぞれ13重量%とし、到達温度を1,500℃とした以外は実施例1と同様の方法で炭素膜を得た。得られた炭素膜のコア層には共連続多孔構造が形成されていた。炭素膜の構造および物性を表1に示す。

0106

次に炭素膜からなる分離膜モジュールを作製し、単成分のガス透過測定を行った。結果を表1に示す。

0107

次に、流体分離用中空糸炭素膜とする場合について、実施例に基づいて本発明を説明する。

0108

[実施例5]
実施例1にて調製したポリマー溶液を25℃まで冷却した。その後、二重管構造の中空糸紡糸ノズルの外管から上記で調製した紡糸溶液を3mL/分で、そして内管から窒素ガスを同時に吐出して、25℃に保たれた純水の凝固浴へ導き、その後5m/分の速度で引き取り、バット上に堆積させることで中空糸の原糸を得た。このときエアギャップは5mmとし、また凝固浴中の浸漬長は15cmとした。得られた原糸は半透明であり、相分離を起こしていた。

0109

得られた原糸を25℃に保った循環式乾燥機にて1時間乾燥して原糸表面の水分を乾燥させた後、25℃にて5時間の真空乾燥を行い、乾燥後の中空糸炭素膜前駆体の原糸を得た。

0110

その後250℃に保った電気炉中へ原糸を投入し、酸素雰囲気化で1時間加熱することで不融化処理を行った。不融化処理を行った原糸は、黒色に変化した。

0111

得られた不融化原糸を窒素流量1L/分、昇温速度10℃/分、到達温度600℃、保持時間5分の条件で炭化処理を行うことで、中空糸炭素膜とした。得られた中空糸炭素膜のコア層には共連続多孔構造が形成されており、中空面積比率は0.15であった。炭素膜の構造および物性を表1に示す。

0112

次に炭素膜からなる分離膜モジュールを作製し、単成分のガス透過測定を行った。結果を表1に示す。

0113

[実施例6]
紡糸溶液と窒素ガスの吐出量を調整して中空面積比率を0.25とした以外は実施例5と同様の方法で中空糸炭素膜を得た。得られた中空糸炭素膜のコア層には共連続多孔構造が形成されていた。得られた中空糸炭素膜の構造および物性を表1に示す。

0114

次に炭素膜からなる分離膜モジュールを作製し、単成分のガス透過測定を行った。結果を表1に示す。

0115

[実施例7]
紡糸溶液と窒素ガスの吐出量を調整して中空面積比率を0.5とした以外は実施例5と同様の方法で中空糸炭素膜を得た。得られた中空糸炭素膜のコア層には共連続多孔構造が形成されていた。得られた中空糸炭素膜の構造および物性を表1に示す。

0116

次に炭素膜からなる分離膜モジュールを作製し、単成分のガス透過測定を行った。結果を表1に示す。

0117

[実施例8]
紡糸溶液と窒素ガスの吐出量を調整して中空面積比率を0.73とした以外は実施例5と同様の方法で中空糸炭素膜を得た。得られた中空糸炭素膜のコア層には共連続多孔構造が形成されていた。得られた中空糸炭素膜の構造および物性を表1に示す。

0118

次に炭素膜からなる分離膜モジュールを作製し、単成分のガス透過測定を行った。結果を表1に示す。

0119

[比較例1]
50gのポリサイエンス社製ポリアクリロニトリル(MW15万)および、溶媒として200gの和光純薬工業製ジメチルスルホキシド(DMSO)をセパラブルフラスコに投入し、3時間攪拌および還流を行いながら150℃で均一かつ透明な溶液を調製した。このときポリアクリロニトリルの濃度は20重量%であった。

0120

実施例5と同様の手法にて紡糸および焼成を行い、中空糸炭素膜を得た。このとき、中空面積比率は0.25であった。得られた中空糸炭素膜の断面は一様に緻密な構造であり、共連続多孔構造は確認されなかった。得られた中空糸炭素膜の構造および物性を表1に示す。

0121

次に炭素膜からなる分離膜モジュールを作製し、単成分のガス透過測定を行ったが、ガスの透過量が小さく、測定できなかった。

0122

[比較例2]
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物99ミリモルと、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル60ミリモルと、3,5−ジアミノ安息香酸30ミリモルと、4,4’−ジアミノジフェニルメタン10ミリモルとを、パラクロロフェノール253gと共にセパラブルフラスコに入れて、攪拌しながら180℃で13時間重合させ、芳香族ポリイミド濃度が15重量%の芳香族ポリイミド溶液を調製した。

0123

二重管構造の中空糸紡糸ノズルの外管から上記で調製した紡糸溶液を吐出し、そして内管から窒素ガスを同時に吐出して、25℃に保たれた65重量%のエタノール水溶液からなる凝固浴に浸漬し、その後5m/分の速度で引き取り、バット上に堆積させることで芳香族ポリイミド中空糸の原糸を得た。続いて原糸をエタノールで十分に洗浄したあと、100℃の循環式乾燥機にて1時間乾燥させた後、100℃にて10時間の真空乾燥を行い、芳香族ポリイミド製の非対称中空糸膜を得た。

0124

次に、260℃の温度で30分間、中空糸膜の熱処理を行った後、空気雰囲気オーブン中で270℃にて38時間熱処理し、さらに400℃で30分間、予備熱処理して熱安定化した。続いて、窒素流量1L/分、昇温速度10℃/分、到達温度700℃、保持時間5分の条件で炭化処理を行うことで、中空糸炭素膜とした。

0125

得られた中空糸炭素膜の断面を観察したところ、繊維表層緻密層、そして内部に多孔構造が観察され、多孔構造は独立気泡型であった。中空糸炭素膜の構造および物性を表1に示す。

0126

次に炭素膜からなる分離膜モジュールを作製し、単成分のガス透過測定を行った。結果を表1に示す。

0127

実施例

0128

本出願は、2014年7月24日出願の日本特許出願2014−150400及び2014年9月16日出願の日本特許出願2014−187482に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

0129

本発明の流体分離用炭素膜は、ガスや液体などの流体分離用炭素膜として有用である。特に二酸化炭素の分離回収排気ガスの分離回収、水素回収、ガスの除湿、空気からの酸素や窒素の製造等の分野において有用である。

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