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課題・解決手段

本発明は、薬効発現に必要な脳内TSPO占有率を達成し得る特定の用量で、(1S)−2−アセチル−1−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−5−フルオロ−1,2,3,9−テトラヒドロスピロ[β−カルボリン−4,1’−シクロプロパン]を投与することを特徴とする、ストレス性疾患の予防および/または治療用医薬に関する。

概要

背景

ストレス性疾患、すなわち、ストレスに起因する疾患とは、心理社会的あるいは身体的ストレス刺激ストレッサー)によって、その刺激を受けた生体においてゆがみ(ストレス反応)が生じ、全身の様々な部位で何らかの障害等が発現することをいう。具体的には、ストレッサーにより神経系、内分泌系、免疫系の活動が影響を受けることで、それらが正常に機能しなくなるため、脳自体あるいは末梢臓器への器質的病変をもたらし、過度なストレスを受けた場合には著しい生活の質、いわゆるQOL(Quality of Life)の低下をもたらす疾患を引き起こすことにもなる。

ストレス性疾患としては、例えば、うつ病等の中枢性疾患、過敏性腸症候群(以下、IBS略記することがある)や胃潰瘍等の消化器系疾患本態性高血圧等の循環器系疾患等が挙げられ、これらのストレス性疾患を治療する医薬品としては、心理的ストレッサーの緩和を目的とした、抗うつ薬抗不安薬や、末梢臓器の器質的病変に対する対症療法的な薬物(例えば、制酸薬胃粘膜保護薬等)の開発がなされている。しかしながら、これらの薬物はある程度の効果は発揮するものの、依存性副作用等が発現する頻度も多く根治治療には至っていないのが現状である。

ストレス性疾患の治療に用いられる薬剤には、これまで様々な薬理作用に基づくものが検討されてきたが、なかでもTSPO(Translocator protein 18kDa)は、MBR(ミトコンドリアベンゾジアゼピン受容体)とも呼ばれるタンパク質であり、IBSに代表されるストレス性疾患の薬理標的として注目されている。TSPOは、マクロファージ小グリア細胞反応性アストロサイト等の様々な細胞ミトコンドリア外膜に存在し、コレステロール輸送ステロイド生成関与することが知られている(非特許文献1参照)。ストレス状態時には、ステロイド一種である脳内ニューロステロイド量が変化することにより、興奮性および抑制性情報伝達系バランス崩れることで、神経系、免疫系、内分泌系の活動も変化し、各種ストレス性疾患が引き起こされると考えられている。したがって、ストレッサー負荷より乱れた興奮性・抑制性情報伝達のバランスを、脳内に存在するTSPOに結合し、調節する薬剤を投与することによって、脳内ニューロステロイド量を望ましいバランスに改善し、IBSに代表されるストレス性疾患の治療に有用であると考えられる。

近年、薬剤がその薬理標的である脳内受容体に結合している割合、すなわち受容体占有率薬理効果の発現に重要であり、PET(Positron Emission Tomography;陽電子放出断層撮像法)技術を用いることによって、受容体占有率を画像化・数値化することが可能となってきた。これまで、脳内受容体を標的とする薬剤の有効性を確認するために、PET技術を用いた報告が複数なされている。例えば、ドパミンD2受容体(非特許文献2参照)、ORL1(opioid receptor-like 1)受容体(非特許文献3参照)、カンナビノイド−1受容体(非特許文献4参照)、ニューロキニン(NK)1受容体(非特許文献5参照)等を標的とする医薬品開発に用いられていることが報告されている。その一方で、PET技術の分野では、脳内受容体毎、医薬品毎に、有効性を発現し得る受容体占有率および最適な放射性トレーサー放射性リガンド放射性プローブともいう)も異なることに加え、受容体占有率と血中動態との関係に種差が存在することや、放射性トレーサーの体内動態にも種差が存在すること等から、他の脳内受容体あるいは他の同じ薬理標的の医薬品で得られた情報をそのまま活用できないため、新たな脳内受容体を標的とする新たな医薬品の有効用量を決定することは非常に困難であると考えられる(非特許文献6参照)。例えば、非特許文献5によれば、NK1受容体アンタゴニストであるアプレピタント薬効を発現するためには、90%以上の脳内NK1受容体を占有する必要があり、そのときの血漿中濃度は約100ng/mL以上であることが記されている。

また、TSPOを標的とする放射性トレーサーについては、多数の報告がある(非特許文献7参照)。これらの多くは、TSPOが関与する疾患、例えば、アルツハイマー病神経損傷等の発症時に、TSPOがどのような組織に発現し、またその発現量を検出するためのバイオマーカーとして用いられている(非特許文献8および特許文献1参照)に過ぎない。

本発明化合物は、特許文献2に実施例38として、MBR(TSPO)に親和性を有する化合物として記載され、ストレスに起因する疾患、例えば、IBS、潰瘍性大腸炎クローン病等の予防および/または治療に有用であることが知られている。また、本発明者らは、41st annual meeting of the Society for Neuroscience(2011年11月12日)、42st annual meeting of the Society for Neuroscience(2012年10月17日)および第7回日本分子イメージング学会学術集会(2012年5月25日)にて本発明化合物の基礎実験の結果を発表している。

さらに、本発明者らは、44st annual meeting of the Society for Neuroscience(2014年11月)、第88回日本薬理学年会(2015年3月)、およびDigestive Disease Week 2015(2015年5月)にて、本発明化合物のヒトPET試験結果および臨床結果を発表済みである。

しかしながら、これらの先行技術文献には、各種実動物で得られた結果を用いるとともに、ヒトPET試験に基づくTSPO占有率と血中動態との関係性を調べることにより、本発明化合物のストレス性疾患を対象とした治療に最適な特定の有効用量を決定したことについては、記載も示唆もなされていない。

概要

本発明は、薬効発現に必要な脳内TSPO占有率を達成し得る特定の用量で、(1S)−2−アセチル−1−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−5−フルオロ−1,2,3,9−テトラヒドロスピロ[β−カルボリン−4,1’−シクロプロパン]を投与することを特徴とする、ストレス性疾患の予防および/または治療用の医薬に関する。

目的

ストレス性疾患としては、例えば、うつ病等の中枢性疾患、過敏性腸症候群(以下、IBSと略記することがある)や胃潰瘍等の消化器系疾患、本態性高血圧等の循環器系疾患等が挙げられ、これらのストレス性疾患を治療する医薬品としては、心理的ストレッサーの緩和を目的とした

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

式で示される(1S)−2−アセチル−1−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−5−フルオロ−1,2,3,9−テトラヒドロスピロ[β−カルボリン−4,1’−シクロプロパン]を、1回当たり、ストレス性疾患患者におけるTSPO占有率を約50乃至約85%に到達せしめる用量で投与することを特徴とする、ストレス性疾患の予防および/または治療剤

請求項2

TSPO占有率を約50乃至約85%に到達せしめる用量が、血中濃度として約15乃至約150ng/mLに到達する用量である請求項1記載の剤。

請求項3

投与方法経口投与である請求項1または2記載の剤。

請求項4

経口投与時に、TSPO占有率を約50乃至約85%に到達せしめる用量が、約5乃至約60mgである請求項3記載の剤。

請求項5

ストレス性疾患が、過敏性腸症候群機能性消化管障害うつ病、または不安関連疾患である請求項1乃至4のいずれかに記載の剤。

請求項6

ストレス性疾患が、過敏性腸症候群である請求項5記載の剤。

請求項7

TSPO占有率が、放射性トレーサーとして[11C]PBR28を用いて測定されたTSPO占有率である請求項1乃至6のいずれかに記載の剤。

請求項8

式で示される(1S)−2−アセチル−1−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−5−フルオロ−1,2,3,9−テトラヒドロスピロ[β−カルボリン−4,1’−シクロプロパン]を、1日1回約5乃至約60mgの用量で経口投与することを特徴とする、過敏性腸症候群の予防および/または治療剤。

請求項9

放射性トレーサーとして[11C]PBR28を用いることを特徴とする、ストレス性疾患を予防および/または治療するためのTSPO拮抗薬の有効用量を設定する方法。

請求項10

式で示される(1S)−2−アセチル−1−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−5−フルオロ−1,2,3,9−テトラヒドロスピロ[β−カルボリン−4,1’−シクロプロパン]を、1回当たり、ストレス性疾患の患者におけるTSPO占有率を約50乃至約85%に到達せしめる用量で、ストレス性疾患の患者に投与することからなる、ストレス性疾患の予防および/または治療方法

請求項11

1回当たり、ストレス性疾患の患者におけるTSPO占有率を約50乃至約85%に到達せしめる用量で投与して、ストレス性疾患の予防および/または治療のために使用される、式で示される(1S)−2−アセチル−1−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−5−フルオロ−1,2,3,9−テトラヒドロスピロ[β−カルボリン−4,1’−シクロプロパン]。

請求項12

式で示される(1S)−2−アセチル−1−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−5−フルオロ−1,2,3,9−テトラヒドロスピロ[β−カルボリン−4,1’−シクロプロパン]を、1回当たり、ストレス性疾患の患者におけるTSPO占有率を約50乃至約95%に到達せしめる用量で投与することを特徴とする、ストレス性疾患の予防および/または治療剤。

請求項13

TSPO占有率を約50乃至約95%に到達せしめる用量が、血中濃度として約15乃至約250ng/mLに到達する用量である請求項12記載の剤。

請求項14

投与方法が経口投与である請求項12または13記載の剤。

請求項15

経口投与時に、TSPO占有率を約50乃至約95%に到達せしめる用量が、約5乃至約100mgである請求項14記載の剤。

請求項16

ストレス性疾患が、過敏性腸症候群、機能性消化管障害、うつ病、または不安関連疾患である請求項12乃至15のいずれかに記載の剤。

請求項17

不安関連疾患が、神経症、全般性不安障害社交不安障害、パニック障害多動性障害注意欠陥人格障害双極性障害自閉症である請求項16に記載の剤。

技術分野

0001

本発明は、薬効発現に必要な脳内TSPO占有率を達成し得る特定の用量で、(1S)−2−アセチル−1−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−5−フルオロ−1,2,3,9−テトラヒドロスピロ[β−カルボリン−4,1’−シクロプロパン](以下、本発明化合物略記することがある。)を投与することを特徴とする、ストレス性疾患の予防および/または治療用医薬に関する。

背景技術

0002

ストレス性疾患、すなわち、ストレスに起因する疾患とは、心理社会的あるいは身体的ストレス刺激ストレッサー)によって、その刺激を受けた生体においてゆがみ(ストレス反応)が生じ、全身の様々な部位で何らかの障害等が発現することをいう。具体的には、ストレッサーにより神経系、内分泌系、免疫系の活動が影響を受けることで、それらが正常に機能しなくなるため、脳自体あるいは末梢臓器への器質的病変をもたらし、過度なストレスを受けた場合には著しい生活の質、いわゆるQOL(Quality of Life)の低下をもたらす疾患を引き起こすことにもなる。

0003

ストレス性疾患としては、例えば、うつ病等の中枢性疾患、過敏性腸症候群(以下、IBSと略記することがある)や胃潰瘍等の消化器系疾患本態性高血圧等の循環器系疾患等が挙げられ、これらのストレス性疾患を治療する医薬品としては、心理的ストレッサーの緩和を目的とした、抗うつ薬抗不安薬や、末梢臓器の器質的病変に対する対症療法的な薬物(例えば、制酸薬胃粘膜保護薬等)の開発がなされている。しかしながら、これらの薬物はある程度の効果は発揮するものの、依存性副作用等が発現する頻度も多く根治治療には至っていないのが現状である。

0004

ストレス性疾患の治療に用いられる薬剤には、これまで様々な薬理作用に基づくものが検討されてきたが、なかでもTSPO(Translocator protein 18kDa)は、MBR(ミトコンドリアベンゾジアゼピン受容体)とも呼ばれるタンパク質であり、IBSに代表されるストレス性疾患の薬理標的として注目されている。TSPOは、マクロファージ小グリア細胞反応性アストロサイト等の様々な細胞ミトコンドリア外膜に存在し、コレステロール輸送ステロイド生成関与することが知られている(非特許文献1参照)。ストレス状態時には、ステロイド一種である脳内ニューロステロイド量が変化することにより、興奮性および抑制性情報伝達系バランス崩れることで、神経系、免疫系、内分泌系の活動も変化し、各種ストレス性疾患が引き起こされると考えられている。したがって、ストレッサー負荷より乱れた興奮性・抑制性情報伝達のバランスを、脳内に存在するTSPOに結合し、調節する薬剤を投与することによって、脳内ニューロステロイド量を望ましいバランスに改善し、IBSに代表されるストレス性疾患の治療に有用であると考えられる。

0005

近年、薬剤がその薬理標的である脳内受容体に結合している割合、すなわち受容体占有率が薬理効果の発現に重要であり、PET(Positron Emission Tomography;陽電子放出断層撮像法)技術を用いることによって、受容体占有率を画像化・数値化することが可能となってきた。これまで、脳内受容体を標的とする薬剤の有効性を確認するために、PET技術を用いた報告が複数なされている。例えば、ドパミンD2受容体(非特許文献2参照)、ORL1(opioid receptor-like 1)受容体(非特許文献3参照)、カンナビノイド−1受容体(非特許文献4参照)、ニューロキニン(NK)1受容体(非特許文献5参照)等を標的とする医薬品開発に用いられていることが報告されている。その一方で、PET技術の分野では、脳内受容体毎、医薬品毎に、有効性を発現し得る受容体占有率および最適な放射性トレーサー放射性リガンド放射性プローブともいう)も異なることに加え、受容体占有率と血中動態との関係に種差が存在することや、放射性トレーサーの体内動態にも種差が存在すること等から、他の脳内受容体あるいは他の同じ薬理標的の医薬品で得られた情報をそのまま活用できないため、新たな脳内受容体を標的とする新たな医薬品の有効用量を決定することは非常に困難であると考えられる(非特許文献6参照)。例えば、非特許文献5によれば、NK1受容体アンタゴニストであるアプレピタント薬効を発現するためには、90%以上の脳内NK1受容体を占有する必要があり、そのときの血漿中濃度は約100ng/mL以上であることが記されている。

0006

また、TSPOを標的とする放射性トレーサーについては、多数の報告がある(非特許文献7参照)。これらの多くは、TSPOが関与する疾患、例えば、アルツハイマー病神経損傷等の発症時に、TSPOがどのような組織に発現し、またその発現量を検出するためのバイオマーカーとして用いられている(非特許文献8および特許文献1参照)に過ぎない。

0007

本発明化合物は、特許文献2に実施例38として、MBR(TSPO)に親和性を有する化合物として記載され、ストレスに起因する疾患、例えば、IBS、潰瘍性大腸炎クローン病等の予防および/または治療に有用であることが知られている。また、本発明者らは、41st annual meeting of the Society for Neuroscience(2011年11月12日)、42st annual meeting of the Society for Neuroscience(2012年10月17日)および第7回日本分子イメージング学会学術集会(2012年5月25日)にて本発明化合物の基礎実験の結果を発表している。

0008

さらに、本発明者らは、44st annual meeting of the Society for Neuroscience(2014年11月)、第88回日本薬理学年会(2015年3月)、およびDigestive Disease Week 2015(2015年5月)にて、本発明化合物のヒトPET試験結果および臨床結果を発表済みである。

0009

しかしながら、これらの先行技術文献には、各種実動物で得られた結果を用いるとともに、ヒトPET試験に基づくTSPO占有率と血中動態との関係性を調べることにより、本発明化合物のストレス性疾患を対象とした治療に最適な特定の有効用量を決定したことについては、記載も示唆もなされていない。

先行技術

0010

国際公開第2010/049819号パンフレット
国際公開第2006/068184号パンフレット

0011

プロシーディングス・オブ・ザ・ナシナルアカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ザ・ユナイテッドステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America)、第89巻、3805−3809ページ、1977年
ジャーナル・オブ・クリニカルファーコロジー(Journal of Clinical Pharmacology)、第31巻、第4号、497−502ページ、2011年
ニューロイメージ(NeuroImage)、第68巻、1−10ページ、2013年
プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America)、第104巻、第23号、9800−9805ページ、2007年
バイオロジカル・サイキアトリー(Biological psychiatry)、第55巻、1007−1012ページ、2004年
ザ・ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ソサイエティフォー・エクスペリメンタル・ニューロセラピューティクス(The Journal of the American Society for Experimental NeuroTherapeutics)、第2巻、第2号、226−236ページ、2005年
ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ニュークリア・メディシンアンドモレキュラーイメージング(European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging)、2013年2月22日公開
ジャーナル・オブ・ニュークリア・メディシン(The Journal of Nuclear Medicine)、第52巻、第5号、677−680ページ、2011年

発明が解決しようとする課題

0012

本発明の課題は、本発明化合物をストレス性疾患の予防および/または治療剤として使用するに当たり、最適な用法用量を設定することにある。

課題を解決するための手段

0013

本発明者らは、前記課題を解決するため、実験動物を用いた有効性試験、Ex vivo試験およびPET試験に基づくTSPO占有率と、血中動態の関係性に着目し、かつ種差も考慮した結果、有効性および安全性に優れ、ストレス性疾患の患者への治療効果を達成するための最適な特定の用法用量を見出し、本発明を完成させた。

0014

すなわち、本発明は、
[1] 式



で示される(1S)−2−アセチル−1−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−5−フルオロ−1,2,3,9−テトラヒドロスピロ[β−カルボリン−4,1’−シクロプロパン]を、1回当たり、ストレス性疾患の患者におけるTSPO占有率を約50乃至約85%に到達せしめる用量で投与することを特徴とする、ストレス性疾患の予防および/または治療剤、
[2] TSPO占有率を約50乃至約85%に到達せしめる用量が、血中濃度として約15乃至約150ng/mLに到達する用量である前記[1]記載の剤、
[3]投与方法経口投与である前記[1]または[2]記載の剤、
[4]経口投与時に、TSPO占有率を約50乃至約85%に到達せしめる用量が、約5乃至約60mgである前記[3]記載の剤、
[5] ストレス性疾患が、過敏性腸症候群、機能性消化管障害、うつ病、または不安関連疾患である前記[1]乃至[4]のいずれかに記載の剤、
[6] ストレス性疾患が、過敏性腸症候群である前記[5]記載の剤、
[7] TSPO占有率が、放射性トレーサーとして[11C]PBR28を用いて測定されたTSPO占有率である前記[1]乃至[6]のいずれかに記載の剤、
[8] 式



で示される(1S)−2−アセチル−1−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−5−フルオロ−1,2,3,9−テトラヒドロスピロ[β−カルボリン−4,1’−シクロプロパン]を、1日1回約5乃至約60mgの用量で経口投与することを特徴とする、過敏性腸症候群の予防および/または治療剤、
[9] 放射性トレーサーとして[11C]PBR28を用いることを特徴とする、ストレス性疾患を予防および/または治療するためのTSPO拮抗薬の有効用量を設定する方法、
[10] 式



で示される(1S)−2−アセチル−1−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−5−フルオロ−1,2,3,9−テトラヒドロスピロ[β−カルボリン−4,1’−シクロプロパン]を、1回当たり、ストレス性疾患の患者におけるTSPO占有率を約50乃至約85%に到達せしめる用量で、ストレス性疾患の患者に投与することからなる、ストレス性疾患の予防および/または治療方法
[11] 1回当たり、ストレス性疾患の患者におけるTSPO占有率を約50乃至約85%に到達せしめる用量で投与して、ストレス性疾患の予防および/または治療のために使用される、式



で示される(1S)−2−アセチル−1−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−5−フルオロ−1,2,3,9−テトラヒドロスピロ[β−カルボリン−4,1’−シクロプロパン]、
[12] 式



で示される(1S)−2−アセチル−1−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−5−フルオロ−1,2,3,9−テトラヒドロスピロ[β−カルボリン−4,1’−シクロプロパン]を、1回当たり、ストレス性疾患の患者におけるTSPO占有率を約50乃至約95%に到達せしめる用量で投与することを特徴とする、ストレス性疾患の予防および/または治療剤、
[13] TSPO占有率を約50乃至約95%に到達せしめる用量が、血中濃度として約15乃至約250ng/mLに到達する用量である前記[12]記載の剤、
[14] 投与方法が経口投与である請求項[12]または[13]記載の剤、
[15] 経口投与時に、TSPO占有率を約50乃至約95%に到達せしめる用量が、約5乃至約100mgである前記[14]記載の剤、
[16] ストレス性疾患が、過敏性腸症候群、機能性消化管障害、うつ病、または不安関連疾患である前記[12]乃至[15]のいずれかに記載の剤、
[17] 不安関連疾患が、神経症、全般性不安障害、社交不安障害、パニック障害多動性障害注意欠陥人格障害双極性障害自閉症である前記[16]に記載の剤、
[18] 式



で示される(1S)−2−アセチル−1−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−5−フルオロ−1,2,3,9−テトラヒドロスピロ[β−カルボリン−4,1’−シクロプロパン]を、1回当たり、ストレス性疾患の患者におけるTSPO占有率を約50乃至約95%に到達せしめる用量で、ストレス性疾患の患者に投与することからなる、ストレス性疾患の予防および/または治療方法、および
[19] 1回当たり、ストレス性疾患の患者におけるTSPO占有率を約50乃至約95%に到達せしめる用量で投与して、ストレス性疾患の予防および/または治療のために使用される、式



で示される(1S)−2−アセチル−1−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−5−フルオロ−1,2,3,9−テトラヒドロスピロ[β−カルボリン−4,1’−シクロプロパン]等に関する。

発明の効果

0015

本発明で見出した、ストレス性疾患の治療における本発明化合物の最適な用法用量は、有効性および安全性に優れるため、本発明化合物をストレス性疾患の治療用医薬として用いる際に、最大限の治療効果をもたらすことができる。

図面の簡単な説明

0016

嗅球摘出ラットにおける、本発明化合物の抗うつ作用を表す。
恐怖条件付けストレス負荷ラットにおける、本発明化合物の抗不安作用を表す。
CK−4誘発ストレスモデルにおける、本発明化合物の抗不安作用を表す。
サルPET試験における、本発明化合物の血漿中濃度と脳内TSPO占有率との関係を表す。
ヒトPET試験における、本発明化合物の血漿中濃度と脳内TSPO占有率との関係を表す。
生物学的実施例8に基づいて、本発明化合物をヒトに1日1回反復投与した際の定常状態における、投与量と脳内TSPO占有率の関係の予測結果を表す。縦軸は、TSPO占有率(Receptor Occupancy(%))を表し、横軸は、本発明化合物の投与量(Dose(mg))を表す。
生物学的実施例9に基づいて、本発明化合物をヒトに1日1回反復投与した際の定常状態における、投与量と脳内TSPO占有率の関係の予測結果を表す。縦軸は、TSPO占有率(Receptor Occupancy(%))を表し、横軸は、本発明化合物の投与量(Dose(mg))を表す。
下痢女性IBS患者の各投与群における、便形状スコアベースラインからの推移を表す。縦軸は、ベースラインからの変化量を表し、横軸は、服薬開始からの週を表す。
下痢型女性IBS患者の各投与群における、腹痛スコアのベースラインからの推移を表す。縦軸は、ベースラインからの変化量を表し、横軸は、服薬開始からの週を表す。
下痢型女性IBS患者の各投与群におけるデイリーレスポンダー率を表す。縦軸はデイリーレスポンダー率を表す。
下痢型女性IBS患者の各投与群におけるウイークリーレスポンダー率を表す。縦軸はウイークリーレスポンダー率を表す。

0017

以下、本発明を詳細に説明する。

0018

本発明において、本発明化合物、すなわち、(1S)−2−アセチル−1−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−5−フルオロ−1,2,3,9−テトラヒドロスピロ[β−カルボリン−4,1’−シクロプロパン]は、以下の構造式で表される。

0019

本発明において、本発明化合物は、特許文献2に記載の実施例36(2)→実施例38にしたがって製造することができる。

0020

本発明において、TSPOとは、Translocator protein 18kDaを意味し、MBR(Mitochondrial benzodiazepine receptor;ミトコンドリア型ベンゾジアゼピン受容体)とも呼ばれる受容体タンパク質を意味する。特に、本発明においては、ヒトのTSPOが好ましい。

0021

本発明において、放射性トレーサーとは、放射性リガンドまたは放射性プローブとも称し、TSPOに結合し得る放射性トレーサーを意味する。本発明で用いられる放射性トレーサーとしては、例えば、[3H]PK11195、[11C]PBR28、[11C]DPA713が挙げられる。ここで、当業者であれば自明なことであるが、PK11195は、1−(2−クロロフェニル)−N−メチル−N−(1−メチルプロピルイソキノリン−3−カルボキサミドCAS登録番号:85532−75−8)を意味し、PBR28は、N−(2−メトキシベンジル)−N−[4−(フェノキシピリジン−3−イルアセトアミド(CAS登録番号:253307−65−2)を意味し、DPA713は、N,N−ジエチル−2−[2−(4−メトキシフェニル)−5,7−ジメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イル]アセトアミド(CAS登録番号:386297−97−8)を意味する。本発明における放射性トレーサーとしては、[11C]PBR28が好ましい。

0022

本発明において、TSPO占有率とは、本発明化合物の投与前に放射性トレーサーを投与した際に測定した、放射性トレーサーの脳内TSPOへの結合量と、本発明化合物の投与後に放射性トレーサーを投与した際に測定した、放射性トレーサーの脳内TSPOへの結合量とを用いて算出した、本発明化合物の脳内TSPO占有率を意味する。

0023

本発明において、本発明化合物を、ストレス性疾患の予防および/または治療のために患者に投与する用量としては、ストレス性疾患の患者において、生物学的実施例8に基づいて、1回当たり、TSPO占有率約50乃至約85%を達成させることのできる血(漿)中濃度、すなわち約15乃至約150ng/mLに到達する用量が挙げられる。

0024

本発明において、本発明化合物を、ストレス性疾患の予防および/または治療のために患者に投与する用量としては、ストレス性疾患の患者において、生物学的実施例9に基づいて、1回当たり、TSPO占有率約50乃至約95%を達成させることのできる血(漿)中濃度、すなわち約15乃至約250ng/mLに到達する用量が挙げられる。

0025

本発明において、上記血(漿)中濃度を達成するための、本発明化合物を投与する方法としては特に限定されないが、例えば、経口投与、皮下投与静脈内投与筋肉内投与腹腔内投与経皮投与経鼻投与経肺投与等が挙げられる。

0026

本発明において、上記血中濃度を達成するための、本発明化合物の投与量は投与方法毎に異なり、例えば、経口的な投与の場合、血中濃度が約15乃至約250ng/mLに到達する用量としては、1日1回当たり約5mg乃至約100mgの用量が挙げられる。好ましくは、約20mg乃至約100mg、より好ましくは約50mg乃至約100mg、特に好ましくは約60mgの用量が挙げられる。具体的な用量としては、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mgが挙げられる。当該用量は、ストレス性疾患の症状に応じて、例えば、約100mgを1日最高投与量として、その範囲内で適宜増減する用法で用いてもよい。また、当該用量は、一回投与時の用量、または複数回投与時の用量、例えば1日当たり1〜4回に分けて投与したときの用量であってもよい。複数回投与時、各用量は同一または異なっていてもよい。本発明において、本発明化合物の上記血中濃度を維持し、かつストレス性疾患の予防および/または治療効果を発揮させるための投与期間としては特に限定されないが、例えば、1日〜1年間、1日〜6ヶ月間、1日〜3ヶ月間、1日〜2ヶ月間、1日〜1ヶ月間、1日〜3週間、1日〜2週間、1日〜1週間が挙げられる。

0027

本発明において、ストレス性疾患としては、例えば、過敏性腸症候群、機能性消化管障害、消化性潰瘍十二指腸潰瘍胆道ジスキネジー食道痙攣胃アトニー空気嚥下症慢性胃炎慢性肝炎慢性膵炎摂食障害(例えば、神経性食欲食思)不振症、拒食症過食症等)、神経性心因性嘔吐症、神経性(心因性)嘔気症、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病)、腹部緊満症、胃腸神経症(例えば、腹鳴恐怖等)、不安関連疾患、神経症、パニック障害、睡眠障害、うつ病、反応性うつ病てんかんパーキンソン病パーキンソン症候群統合失調症自律神経失調症ハンチントン病、アルツハイマー病、情動障害認知障害偏頭痛緊張型頭痛群発頭痛外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder;PTSD)、解離性障害不眠症、神経性咳嗽、心因性痙攣発作、心因性失神発作職場不適応、燃え尽き症候群慢性疲労症候群筋痛性脳脊髄炎)、過換気症候群月経前症候群書痙痙性斜頸慢性下痢症慢性便秘症、胃食道逆流症が挙げられる。本発明において、ストレス性疾患として好ましくは、過敏性腸症候群、うつ病、不安関連疾患が挙げられる。

0028

本発明において、機能性消化管障害としては、例えば、機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)、機能性腹痛症候群、機能性胸やけが挙げられる。

0029

本発明において、不安関連疾患としては、例えば、神経症、全般性不安障害(Generalized Anxiety Disorder;GAD)、社交不安障害(Social Anxiety Disorder;SAD)、パニック障害、多動性障害、注意欠陥、人格障害、双極性障害、自閉症等が挙げられる。好ましくは、パニック障害が挙げられる。

0030

[毒性]
本発明化合物の毒性は十分に低いものであり、医薬品として安全に使用することができる。

0031

[医薬品への適用]
本発明化合物は、TSPO拮抗作用を有するため、上記したストレス性疾患の予防および/または治療剤として有用である。

0032

本発明化合物は、1)本発明化合物の上記したストレス性疾患の予防および/または治療効果の補完および/または増強、2)本発明化合物の動態吸収改善、投与量の低減、および/または3)本発明化合物の副作用の軽減のために他の薬剤と組み合わせて、併用薬として投与してもよい。

0033

本発明化合物と他の薬剤の併用薬は、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、また別々の製剤にして投与する形態をとってもよい。この別々の製剤にして投与する場合には、同時投与および時間差による投与が含まれる。また、時間差による投与は、本発明化合物を先に投与し、他の薬剤を後に投与してもよいし、他の薬剤を先に投与し、本発明化合物を後に投与してもかまわず、それぞれの投与方法は同じでも異なっていてもよい。

0034

本発明化合物と併用してもよい他の薬剤としては、例えば、ベンゾジアゼピン系抗不安薬、チエノジアゼピン系抗不安薬、非ベンゾジアゼピン系抗不安薬、CRF拮抗薬、ニューロキニン−1(NK1)拮抗薬、三環式抗うつ薬、四環式抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼMAO阻害薬トリアゾロピリジン系抗うつ薬、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRI)、セロトニン再取り込み阻害薬、ノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)、ノルアドレナリンおよびドパミン脱抑制薬(NDDI)、選択的セロトニン再取り込み促進薬(SSRE)、N−メチル−D−アスパルタート(NMDA)受容体阻害薬、グリシントランスポーター阻害薬、ドパミン前駆物質ドパミン受容体作動薬カテコール−O−メチル基転移酵素(COMT)阻害薬、コリンエステラーゼ阻害薬ニューロテンシン拮抗薬、抗コリン薬、セロトニン・ドパミン拮抗薬、中枢神経刺激薬抗てんかん薬、抗めまい薬、消化管機能調整薬ヒスタミンH2受容体拮抗薬プロトンポンプ阻害薬ムスカリン受容体拮抗薬、防御因子増強薬、プロスタグランジン誘導体オピオイド作動薬5−HT作動薬、5−HT3拮抗薬、クロライドチャネル活性化薬、グアニル酸シクラーゼ阻害薬、膨張性下剤塩類下剤刺激性下剤、親和性ポリアクリル樹脂オピオイドμ受容体作動及びオピオイドδ受容体拮抗薬、トリプトファンヒドロキシラーゼ阻害薬、抗生物質が挙げられる。

0036

本発明において、チエノジアゼピン系抗不安薬としては、例えば、エチゾラムクロチアゼパムが挙げられる。

0037

本発明において、非ベンゾジアゼピン系抗不安薬としては、例えば、クエン酸タンドスピロン塩酸ヒドロキシルジンが挙げられる。

0038

本発明において、ニューロキニン−1拮抗薬としては、例えば、アプレピタント、ホスアプレピタントメグルミンが挙げられる。

0040

本発明において、四環系抗うつ薬としては、例えば、塩酸マプロチリン塩酸ミアンセリン、マレイン酸セチプチリンが挙げられる。

0041

本発明において、モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害薬としては、例えば、塩酸サフラジンが挙げられる。

0042

本発明において、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)としては、例えば、塩酸ミルナシプラン塩酸ベンラファキシン塩酸デュロキセチンが挙げられる。

0043

本発明において、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)としては、例えば、マレイン酸フルボキサミン塩酸パロキセチン塩酸フルオキセチン、塩酸シタロプラム塩酸セルトラリンエスシタロプラムシュウ酸塩が挙げられる。

0044

本発明において、セロトニン再取り込み阻害薬としては、例えば、塩酸トラゾドンが挙げられる。

0045

本発明において、ノルアドレナリン作動性および選択的セロトニン作動性抗うつ薬としては、例えば、ミルタザピンが挙げられる。

0046

本発明において、ノルアドリンおよびドパミン脱抑制薬としては、例えば、アゴメラチンが挙げられる。

0047

本発明において、セロトニン再取り込み促進薬としては、例えば、チアネプチンが挙げられる。

0048

本発明において、N−メチル−D−アスパルタート受容体阻害薬としては、例えば、メマンチンが挙げられる。

0049

本発明において、ドパミン前駆物質としては、例えば、レボドパが挙げられる。

0050

本発明において、ドパミン受容体作動薬としては、例えば、ブロモグリプチンが挙げられる。

0051

本発明において、COMT阻害薬としては、例えば、エンタカポンが挙げられる。

0052

本発明において、コリンエステラーゼ阻害薬としては、例えば、ドネペジルリバスチグミンが挙げられる。

0053

本発明において、抗コリン薬としては、例えば、トリヘキシフェニジルビペリデン臭化イプラトロピウム臭化メペンゾラートが挙げられる。

0054

本発明において、セロトニン・ドパミン拮抗薬としては、例えば、リスペリドン、塩酸ペロスピロ水和物、フマル酸クエチアピンオランザピンが挙げられる。

0055

本発明において、抗てんかん薬としては、例えば、フェノバルビタールフェニトインカルバマゼピンバルプロ酸クロナゼパムレベチラセタムトピラマート、ラモトリキンが挙げられる。

0056

本発明において、抗めまい薬としては、例えば、ジフェニドールベタヒスチンが挙げられる。

0057

本発明において、消化管機能調整薬としては、例えば、マレイン酸トリメブチンポリカルボフィルカルシウムが挙げられる。

0058

本発明において、ヒスタミンH2受容体拮抗薬としては、例えば、シメチジンラニチジンファモチジンニザチジンラフチジンが挙げられる。

0059

本発明において、プロトンポンプ阻害薬としては、例えば、オメプラゾールランソプラゾールラベプラゾールが挙げられる。

0060

本発明において、ムスカリン受容体拮抗薬としては、例えば、ピレンゼピンが挙げられる。

0061

本発明において、防御因子増強薬としては、例えば、ゲファルナートテプレノンスクラルファートアルジオキサ塩酸セトラキサートオルノプロスチルが挙げられる。

0062

本発明において、プロスタグランジン誘導体としては、例えば、オルノプロスチル、ミソプロストールが挙げられる。

0063

本発明において、オピオイド作動薬としては、例えば、アシマドリン、ナルフラフィンが挙げられる。

0064

本発明において、5−HT4作動薬としては、例えば、テガセロドシサプリドクエン酸モサプリドが挙げられる。

0065

本発明において、5−HT3拮抗薬としては、例えば、ラモセトロンアロセトロンシランセトロンが挙げられる。

0066

本発明において、クロライドチャネル活性化薬としては、例えば、ルビプロストンが挙げられる。

0067

本発明において、グアニル酸シクラーゼ作動薬としては、例えば、リナクロチドが挙げられる。

0068

本発明において、膨張性下剤としては、例えば、メチルセルロースカルメロースラクツロースが挙げられる。

0069

本発明において、塩類下剤としては、例えば、硫酸マグネシウム酸化マグネシウムが挙げられる。

0070

本発明において、刺激性下剤としては、例えば、ピコスルファート、ラクツロース、ヒマシ油センナ大黄が挙げられる。

0071

本発明において、親和性ポリアクリル樹脂としては、例えば、ポリカルボフィルカルシウムが挙げられる。

0072

本発明において、オピオイドμ受容体作動及びオピオイドδ受容体拮抗薬としては、例えば、エルキサドリンが挙げられる。

0073

本発明において、トリプトファンヒドロキシラーゼ阻害薬としては、例えば、LX1033が挙げられる。

0074

本発明において、抗生物質としては、例えば、リファキシミンが挙げられる。

0075

以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実験例]
以下に生物学的実験例を示し、これらの実験方法に基づいて、本発明化合物の効果を確認した。

0076

生物学的実施例1:ラットにおける抗ストレス作用及びex vivo脳内占有率の検討
雄性Slc:Wistarラット(日本エスエルシー、使用時11週齢)を用いて、身体・精神的ストレッサーを負荷した(ジャーナル・オブ・ファーマコロジカルサエンス(Journal of Pharmacological Science)、第104号、263〜273ページ、2007年)。媒体(0.5w/v%メチルセルロース400cP溶液)あるいは本発明化合物を0.1、0.3、1および3mg/kgの用量で経口投与した2時間後に、ラットを拘束ストレスケージ(株式会社夏目製作所)に入れることによりストレッサー負荷を開始した。抗ストレス作用の評価は、1時間のストレッサー負荷中に排泄した便重量を計測することにより行った(各群12匹)。ストレッサーを負荷しない正常群の脱糞量(排便湿重量:平均0.04g)と比較して、ストレッサーを負荷した媒体処置群には顕著な脱糞が認められた(排便湿重量:平均1.79g)。本発明化合物の0.1、0.3、1および3mg/kg投与群における排便湿重量は、平均でそれぞれ、1.48、0.96、0.60および0.67gであったことから、0.3、1および3mg/kgの用量で媒体処置群より有意に排便湿重量を抑制することが判明した。

0077

次に、媒体処置群および本発明化合物処置群の脳(大脳皮質および海馬ホモジネートを用い、放射性トレーサーとして[3H]PK11195を用いて、本発明化合物の脳内TSPO占有率を測定した。PK11195は、ジメチルスルホキシドDMSO)を用いて4mmol/Lとなるように溶解し、[3H]PK11195(PerkinElmer, Inc.)は、100nmol/Lのエタノール溶液を調製した後、50mmol/LのHEPESバッファー(シグマアルドリッチ株式会社)で50倍に希釈し調製した。放射性トレーサーの総結合量を求める場合には、Nunc MiniSorp(商品名、12×75mm、Thermo Fisher Scientific Inc.)チューブに50mmol/LのHEPES(99μL)およびDMSO(1μL)を添加した。非特異的結合量を求める場合には、DMSOの代わりに4mmol/LのPK11195(1μL)を添加した。大脳皮質または海馬由来脳ホモジネート(50μL)をチューブに添加し、[3H]PK11195(50μL)(大脳皮質:0.4532nmol/Lの終濃度、海馬:0.4520nmol/Lの終濃度)を加えて撹拌した後、4℃で90分間インキュベーションした。反応終了後、チューブに氷冷した50mmol/LのHEPES(2mL)を加え、0.3w/v%のポリエチレンイミン(シグマアルドリッチ株式会社)で前処置したガラス繊維フィルター(GF/B、Brandel Inc.)上に吸引ろ過して脳ホモジネートを回収した。このガラス繊維フィルターを乾燥後、脳ホモジネートが吸着した部分を、液体シンチレーションバイアルに移した。液体シンチレーションバイアルにACS−IIシンチレーションカクテル(7mL)を加えて撹拌し、放射活性液体シンチレーションカウンター(TRI−CARB2900TR、PerkinElmer Life and Analytical Sciences Inc.)で測定した。各脳ホモジネートにおける[3H]PK11195の特異的結合量(dpm)は、総結合量(dpm)から非特異的結合量(dpm)を差し引いた値とした。本発明化合物投与群の大脳皮質および海馬における脳内TSPO占有率(%)は、下記式にしたがって算出した。

0078

その結果、本発明化合物の0.1、0.3、1及び3mg/kg群の大脳皮質におけるTSPO占有率は平均で11.8、47.7、83.8及び94.5%で、海馬におけるTSPO占有率は平均で25.7、50.7、86.3及び95.1%であった。

0079

生物学的実施例2:抗うつ作用の検討
雄性Crlj:WIラット(日本チャールス・リバー株式会社、手術時週齢:11週齢)を用い,Yamaguchiらの方法(日本薬理学雑誌、第130巻、175〜183ページ、2007年)に準じて、嗅球摘出ラットを作製した。ペントバルビタールナトリウム麻酔したラットの頭部を、脳定位固定装置(ASI Instruments Inc.、NARISHIGE) に固定し、頭皮切開後頭蓋骨の左右嗅球部位 (bregmaから前方に7mm、横に1.8mm) に歯科用ドリルを用いて穴を開け、先端を除いた経口ゾンデに連結したアスピレータで左右嗅球を吸引・除去した後、頭皮を縫合した。手術後のラットを、個々の飼育スペース黒色アクリル板で半分に仕切ったステンレス製五連ケージに入れ、隣が見えないように隔離して飼育した。また、ステンレス製五連ケージを置く飼育全体を黒ビニールシートで覆い、飼育棚内暗い状態にして飼育した。なお、偽手術群のラットは、麻酔下で頭部を固定、頭皮を切開し、頭蓋骨の左右嗅球部位に穴をあけた後、嗅球の吸引・除去を行わず、頭皮を縫合した。また、単離隔離飼育を実施しなかった。手術後14日間経過した後、五味田らの方法(日本薬理学雑誌、第82巻、267〜292ページ、1983年)を参考にして情動過多反応性を評価し、合計評点が20点の動物を実験に使用した。

0080

<情動過多反応性評価基準
A.先に差し出した棒に対する反応
0:無反応
1:対象への関心
2:対象への防御的または逃避行動
3:噛みつくなどの攻撃的行動
4:激しい攻撃的行動
B.空気を吹きかけた時の反応
0:無反応
1:わずかに身体が動くだけ
2:驚愕反応
3:著明な驚愕反応を示すが、飛び上がらない
4:著明な驚愕反応を示し、飛び上がる
C.捕獲や取り扱いに対する抵抗性
0:無抵抗、著明な筋弛緩
1:捕獲や取り扱いが容易
2:捕獲や取り扱いは容易だが、軽度の筋緊張
3:筋緊張有り、捕獲や取り扱いが困難
4:捕獲がきわめて困難で著しい筋緊張
D.尾を鉗子で挟んだ時の反応
0:無反応
1:対象への関心
2:対象への防御的または逃避的行動
3:噛みつくなどの攻撃的行動
4:激しい攻撃的行動
E.テスト中(A〜D)の鳴き声
0:全く鳴かない
1:時々鳴く
2:激しく鳴く

0081

嗅球を摘出したラットに、媒体(0.5% Tween80生理食塩溶液)あるいは本発明化合物を0.3、1、3mg/kgの用量で、1日1回8日間反復経口投与した。偽手術群のラットには、媒体を投与した。情動過多反応性を、投与7日の投与前および投与後1時間に評価した。

0082

図1に示すように(##は、Wilcoxon順位和検定で、偽手術群に対してp<0.01であることを意味し、**は、Steel検定で、媒体対照群に対してp<0.01であることを意味する。)、嗅球摘出後、単独隔離飼育した媒体対照群では偽手術群と比較して、群分け前、投与7日の投与前および投与後における情動過多スコアは有意に高値であった。一方、本発明化合物の0.3、1および3mg/kg反復経口投与群では、媒体対照群と比較して投与7日の投与前および投与後で情動過多スコアは有意に低値であった。この結果から、本発明化合物が抗うつ作用を有することが明らかとなった。

0083

生物学的実施例3:抗不安作用の検討(1)
雄性Crj:CD(SD)ラット(日本チャールス・リバー株式会社、評価時週齢:8週齢)を用い、Funatsuらの方法(ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(Eur. J. Pharmacol.)、第573巻、190〜195ページ、2007年)に準じて、恐怖条件付けストレスを負荷した。恐怖条件付け前日に、防音箱内に設置した電気ショック装置内にラットを入れ、評価環境馴化させた。恐怖条件付け当日に、電気ショック装置内にラットを入れた。3秒間の警告音(60〜70デシベル)に続き5秒間の電流負荷(2.0mA)及び光照射(40W型蛍光灯電球3個)をラットに与える条件付けを、1分間隔で計15回行った。なお、非ストレス負荷群には、恐怖条件付けの間に電流負荷を実施せず、警告音と光照射をラットに与えた。恐怖条件付け翌日、媒体(0.5w/v%メチルセルロース400cP溶液)あるいは本発明化合物(0.3、1および3mg/kg)をラットに経口投与した。投与後2時間に、ラットを電気ショック装置内に入れた。3秒間の警告音に続く5秒間の光照射のみを1分間隔で計30分間、ラットに与え、ストレスを負荷した。ストレスが負荷されている30分間のラットの行動をビデオカメラ撮影し、すくみ時間を計測した。

0084

その結果、図2(###は、t検定で、非ストレス負荷群に対してp<0.001であることを意味し、*は、Dunnett検定で、媒体対照群に対してp<0.05であることを意味する。)に示すように、ストレスを負荷したラットに媒体を投与した群のすくみ時間は、非ストレス負荷群と比較して長かった。このすくみ時間の延長を、本発明化合物は、1および3mg/kgの用量において有意に短縮した。この結果から、本発明化合物が抗不安作用を有することが明らかとなった。

0085

生物学的実施例4:抗不安作用の検討(2)
雄性LEW/CrlCrljラット(日本チャールス・リバー株式会社,評価時週齢:6週齢)を使用した。Rupprechtらの方法(サイエンス(Science)、325、490−493、2009年)に準じて、ラットにコレシストキニンテトラペプチド(CCK—4)(3mg/kg)を皮下投与することによりすくみ行動を誘発し、不安の指標とした。

0086

ラットに媒体(0.5w/v%メチルセルロース400cP溶液)あるいは本発明化合物(1および3mg/kg)を経口投与後2時間に、3mg/kgのCCK−4を皮下投与し、その2分後にラットの前肢を7cmの高さの木製ブロックに載せ、ラットが呼吸に伴う動き以外の動きを一切しない時間をすくみ時間とし、ストップウオッチで計測した。なお、正常群にはCCK−4のかわりにその媒体である1%ジメチルホルムアミドを投与した。カットオフ時間は120秒とした。この試行を約2分間隔で合計5回実施し、それらのすくみ時間の合計を算出した。

0087

その結果、図3(###は、Wilcoxon順位和検定で、正常群に対してp<0.001であることを意味し、*は、Steel検定で、媒体群に対してp<0.05であることを意味し、**は、Steel検定で、媒体群に対してp<0.01であることを意味し、***は、Steel検定で、媒体群に対してp<0.001であることを意味する。)に示すように、ストレスを負荷したラットに媒体を投与した群のすくみ時間は、正常群と比較して長かった。このすくみ時間の延長を、本発明化合物は、1および3mg/kgの用量において有意に短縮した。この結果から、本発明化合物が抗不安作用を有することが明らかとなった。

0088

以上のことから、本発明化合物が抗ストレス作用、抗うつ作用、および抗不安作用を発現するためには、生物学的実施例1〜4の結果から、ラットで0.3〜3mg/kgの用量を投与することによって達成し得る約50%以上の脳内TSPO占有率が必要であり、その最大効果は、ラットの病態モデルで1mg/kg〜3mg/kgの用量で有効性がほぼプラトーに達していることから、約85%〜約95%の脳内TSPO占有率で達成されることが判明した。

0089

生物学的実施例5:ラットex vivo脳内占有率における放射性トレーサーの比較
雄性Slc:Wistarラット(日本エスエルシー、使用時11週齢)を用いて、媒体(0.5w/v%メチルセルロース400cP溶液)あるいは本発明化合物を0.03、0.1、0.3、1および3mg/kgの用量で経口投与した。生物学的実施例1と同様の方法で、投与3時間後の脳(大脳皮質)ホモジネートを用いて、[3H]PK11195あるいは[3H]PBR28(積水メディカル株式会社)の特異的結合量を計測し、媒体処置群の特異的結合量を基準とした本発明化合物の脳内TSPO占有率を測定した(各群8匹)。その結果、[3H]PK11195を放射性トレーサーとして使用した場合、本発明化合物の0.03、0.1、0.3、1および3mg/kg処置群の大脳皮質におけるTSPO占有率は、平均で−1.3、14.9、48.1、80.9および91.3%であった。一方、[3H]PBR28を放射性トレーサーとして使用した場合では、平均で6.5、11.5、40.4、77.7および90.2%であった。以上のことから、[3H]PK11195と[3H]PBR28のいずれの放射性トレーサーを用いた場合でも、本発明化合物のTSPO占有率は同程度であることが判明した。

0090

生物学的実施例6:サルにおけるex vivo脳内占有率の検討
雄性アカゲザル(株式会社新日本科学、使用時4−6kg)を用いて、媒体(0.5w/v%メチルセルロース400cP溶液)あるいは本発明化合物を0.4および1mg/kgの用量で1日2回3日間経口投与後、4日目に1回経口投与した。最終投与2時間後の脳(前帯皮質尾状核扁桃体、海馬および後頭葉)ホモジネートを用いて、生物学的実施例1と同様の方法で、[3H]PBR28の特異的結合量を計測し、媒体処置群の特異的結合量を基準とした本発明化合物の脳内占有率を測定した(媒体群3例、本発明化合物投与群各5例)。その結果、本発明化合物の0.4および1mg/kg群における脳5部位の平均TSPO占有率は平均で37.9および56.6%であった。また、0.4及び1mg/kg群の血漿中の本発明化合物濃度は平均で23.9および154ng/mLであった。

0091

生物学的実施例7:サルにおけるPETを用いた脳内占有率の検討
雄性アカゲザル(ハムリー株式会社、使用時5−8kg)を用いた。3頭のアカゲザルに媒体(0.5w/v%メチルセルロース400cP溶液)あるいは本発明化合物を0.3〜30mg/kgの用量で単回経口投与し、その2時間後に[11C]PBR28を用いたPET計測を以下の要領で実施した。
測定機器PETカメラ;SHR−7700(浜松ホトニクス株式会社)
画像再構成:SHR Control IIプログラム(浜松ホトニクス株式会社)
脳内放射能濃度経時変化および分布体積の算出:PMODプログラム(PMOD Technologies Ltd.)
測定法:68Ge/68Ga校正線源を用いてブランク計測を120分間、Transmission計測を30分間実施した。次に、[11C]PBR28を、約30秒かけて全量を静脈内に投与した。投与開始と同時にEmission 計測(計121分間、55フレーム)を、血漿中濃度測定用動脈採血を行いながら実施した。

0092

また、3頭のアカゲザルに本発明化合物を0.3〜10mg/kgの用量で1日2回3日間経口投与後、4日目に1回経口投与し、最終投与後2時間あるいは24時間に[11C]PBR28を用いたPET計測を実施した。[11C]PBR28の脳内放射能濃度時間変化および[11C]PBR28の未代謝率補正した動脈血血漿放射能から各関心領域小脳、海馬、線条体視床、後頭葉、側頭葉前頭葉頭頂葉)の分布体積を算出し、媒体投与群の分布体積を基準とした脳内TSPO占有率を算出した。また、図4で示すように、各個体における本発明化合物の血漿中濃度と、脳内TSPO占有率の関係を解析し、各個体内で、脳内TSPO占有率は本発明化合物の血漿中濃度に依存していることが判明した。その結果、本発明化合物の約70ng/mLの血漿中濃度で、脳内TSPO占有率が約50%に到達することがわかった。また、この結果から、ex vivoで計測したTSPO占有率−血漿中濃度との関係(生物学的実施例6)とPETで計測した占有率−血漿中濃度との関係に違いが無いことが判明した。

0093

生物学的実施例8:ヒトにおけるPETを用いた脳内占有率の検討(1)
健康成人を用い、本発明化合物を投与する前、および本発明化合物を6〜200mgの用量で単回経口投与した24時間後に、放射性トレーサーとして[11C]PBR28を用いたPET計測を以下の要領で実施した。
測定機器:PET;ECATHR+(Siemens)
測定法:68Ge/68Ga校正線源を用いてブランク計測を90分間、Transmission計測を10〜15分間実施した。次に、[11C]PBR28を、約30秒かけて全量を静脈内に投与した。投与開始と同時にEmission計測(計90分間、26フレーム)を、血漿中濃度測定用に動脈採血を行いながら実施した。

0094

[11C]PBR28の脳内放射能濃度時間変化、非特異的結合量、および[11C]PBR28の未代謝率で補正した動脈血血漿放射能から各関心領域のバインディングポテンシャル(BP)を算出し、投薬前のBPを基準とした脳内占有率を算出した(各群3〜4名)。また、各関心領域それぞれについて、投与前の分布体積を横軸に、投与前の分布体積から投与後の分布体積を差し引いた値を縦軸にして得られるラッセンプロットから全関心領域の平均脳内TSPO占有率を求めた。また、図6で示すように、各個体における本発明化合物の血中濃度と、脳内TSPO占有率の関係を解析するために、Emaxモデルを用いた。本モデルにおけるパラメータとして、最大効果(Emax)およびEmaxの50%を達成する血中濃度(EC50、ng/mL)を用いた。本解析には、解析ソフトとしてNONMEM7.1.2(ICON Development Solutions)を用いた。パラメータおよびEmaxモデルの計算式は以下に示した。

0095

その結果、脳内TSPO占有率を約50%に到達させるための血漿中濃度は、約15ng/mLであり、同様に約85%に到達させるための血漿中濃度は、約150ng/mLであることがわかった。

0096

また、1日1回投与時の定常状態における本発明化合物の血漿中濃度推移を予測し、図5で示す血漿中濃度と脳内TSPO占有率の関係を用いて、脳内TSPO占有率を予測した結果、定常状態においてTSPO占有率の最低値が、約50〜約90%を達成するのに必要な化合物の投与用量は、1日あたり約5mg〜約100mgであることが判明した。

0097

以上の生物学的実施例1〜生物学的実施例8の結果から、ラットにおいて有効な抗ストレス作用、抗うつ作用、および抗不安作用を示すTSPO占有率が約50〜約95%であるとの結果に基づき、サルにおいて抗ストレス作用を発揮し得るTSPO占有率と、血漿中濃度の関係が判明した。さらに、TSPOにおける放射性トレーサーとして[11C]PBR28がヒトで機能したことから、本発明化合物のヒトにおけるTSPO占有率−血漿中濃度の関係が初めて明らかとなり、TSPO占有率−血漿中濃度との相関にサル−ヒト間で種差があることも判明した。

0098

生物学的実施例9:ヒトにおけるPETを用いた脳内占有率の検討(2)
生物学的実施例8とは別の解析方法、すなわち[11C]PBR28の脳内放射能濃度時間変化、非特異的結合量、および[11C]PBR28の未代謝率で補正した動脈血血漿放射能から各関心領域のバインディングポテンシャル(BP)を算出し、投薬前のBPを基準とした脳内占有率を算出した(各群3〜4名)。また、各関心領域の投与前の分布体積(Vt baseline)及び投与前の分布体積から投与後の分布体積を差し引いた値(Vt baseline − Vt onmed)をそれぞれ横軸および縦軸にプロットして得られるラッセンプロットから全関心領域の平均脳内TSPO占有率を求めた。また、図7で示すように、各個体における本発明化合物の血漿中濃度と、脳内TSPO占有率の関係を解析するために、Emaxモデルを用いた本モデルにおけるパラメータとして、最大結合数(Bmax)およびBmaxの50%を達成する血中濃度(Ki、ng/mL)を用いた。本解析ではBmaxを1に固定し、解析ソフトにはSASVersion 9.2(SAS Institute)を用いた。パラメータおよびEmaxモデルの計算式は以下に示した。

0099

1日1回投与時の定常状態における本発明化合物の血漿中濃度推移を予測し、図5で示す血漿中濃度と脳内TSPO占有率の関係を用いて、表2で示すように脳内TSPO占有率を予測した。

0100

以上の生物学的実施例1〜生物学的実施例7の結果から、ラットにおいて有効な抗ストレス作用、抗うつ作用、および抗不安作用を示すTSPO占有率が約50〜約95%であるとの結果に基づき、サルにおいて抗ストレス作用を発揮し得るTSPO占有率と、血漿中濃度の関係が判明した。さらに、TSPOにおける放射性トレーサーとして[11C]PBR28がヒトで機能したことから、本発明化合物のヒトにおけるTSPO占有率−血漿中濃度の関係が初めて明らかとなり、TSPO占有率−血漿中濃度との相関にサル−ヒト間で種差があることも判明した。さらに、生物学的実施例9の結果を組み合わせることにより、ヒトにおける脳内TSPO占有率を予測した結果、定常状態においてTSPO占有率の最低値が、約50〜約95%を達成するのに必要な化合物の投与用量は、1日あたり約5mg〜約100mgであることが判明した。

0101

上記で設定した有効量に基づいて、ヒトでの有効性試験を行うことができる。例えば、下記の3つの臨床試験が挙げられる。

0102

生物学的実施例10:ヒトにおける有効性試験1
臨床試験として、下痢型女性IBS患者を対象に、以下の条件で二重盲検並行群間試験を行った。
目的:IBSの臨床症状に対する有効性の確認
方法:本試験は、米国49施設で実施され、RomeIII(ローマ・スリー)診断基準(Gastroenterology、2006年、第130巻、1480−1491ページ)に合致する下痢型女性IBS患者200名(18〜65)が集積された。被験者は、下記3つの投与群のいずれかに1:1:1の割合で無作為割り付けられ、4週間、1日1回経口服薬した。被験者は、2週間の前観察期間、4週間の服薬期間および4週間の後観察期間中の毎日電子日記にIBS症状を記録した。安全性の観察は、試験期間中を通じて行った。下記評価項目のうち、主評価項目は、4週間の服薬期間の便形状(ブリストル便形状スケール(Bristol Stool Scale;BSS)による評価)、排便回数および腹痛(Numerical Rating Scale (NRS)によるスコア化)のベースライン(前観察期間)からの変化量とした。また、副次的評価項目として、FDAガイダンス(Guidance for Industry Irritable Bowel Syndrome - Clinical Evaluation of Drugs for Treatment)に準じたレスポンダーの解析を行った。
投与群:
(1)偽薬プラセボ)群
(2)本発明化合物(20mg投与)群
(3)本発明化合物(60mg投与)群
評価項目:IBS症状(腹痛、便形状、排便回数、便意切迫感、重症度)、QOL、精神症状、安全性、薬物動態、バイオマーカー
結果:患者層および各パラメータ(便形状、排便回数および腹痛)のベースライン値は、各投与群で同等であった。4週間の服薬期間を通じて、1週間におけるBSSで6または7に相当する便が1回でもあった日数、および1日を通じて最も強く感じた腹痛の週平均スコアにおいて、本発明化合物の60mg投与群において、プラセボ群に対する改善が認められた(図8および図9)。また、本発明化合物の60mg投与群において、プラセボ群と比べてより多くの被験者がレスポンダー基準を満たした(表3、図10および図11)。一方、投与4週目における週当たりの腹痛のない日について評価したところ、プラセボ群では0.61日の増加に対して、20mg投与群では1.16日の増加、60mg投与群では1.51日の増加であった。また、本発明化合物は忍容であり、良好な安全性プロファイルを示した。

0103

なお、腹痛スコアについて、ベースラインよりも30%以上低下した日が服薬期間4週間中の50%以上であった場合、腹痛のデイリーレスポンダーとした。便形状について、BSSで5未満または排便無しの日が服薬期間4週間の50%以上であった場合、便形状のデイリーレスポンダーとした。腹痛スコア(ベースラインよりも30%以上低下)および便形状(BSSで5未満または排便無し)の基準をいずれも満たす日が服薬期間4週間の50%以上であった場合、腹痛および便形状のデイリーレスポンダーとした。

0104

また、腹痛スコアについて、服薬期間4週間中、ベースラインよりも週の平均スコアが30%以上低下した週が、服薬期間4週間中の50%以上であった場合、腹痛のウイークリーレスポンダーとした。便形状について、服薬期間4週間中、ベースラインと比較して、1週間におけるBSSで6または7に相当する便が1回でもあった日数が、50%以上低下した場合、便形状のウイークリーレスポンダーとした。上記した腹痛スコアおよび便形状の基準をいずれも満たした場合、腹痛および便形状のウイークリーレスポンダーとした。

0105

生物学的実施例11:ヒトにおける有効性試験2
臨床試験として、下痢型女性IBS患者を対象に、以下の条件で二重盲検並行群間試験を行う。
目的:バロスタット法を用い、腸管拡張時の知覚および運動に対する有効性を確認
投与群:各群1日1回食後に経口投与;
(1)偽薬(プラセボ)群
(2)本発明化合物(60mg投与)群
投与期間:2週間
評価項目:腸管拡張時の腹痛・切迫感・腸管運動、IBS重症度、QOL、精神症状、安全性、薬物動態、バイオマーカー

0106

生物学的実施例12:ヒトにおけるストレス性疾患(うつ病、不安関連疾患)の治療効果
生物学的実施例10の臨床試験において、PSS(Perceived Stress Scale)(Journal of Health and Social Behavior, 24, 386-396, 1983年参照)、HAM−A(Hamilton Anxiety Scale)(The British journal of medical psychology, 32, 50-55, 1959年参照)およびHAM−D(Hamilton Depression Scale)(Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry, 23, 56-62, 1960年参照)の評価尺度を用いて、本発明化合物60mg投与時のうつ病、不安関連疾患の治療効果を評価した。以下にその結果を示す。表4はPSSスコア、表5はHAM−Aスコア、および表6はHAM−Dスコアの結果をそれぞれ示す。

実施例

0107

上より、本発明化合物60mg投与時において、抗ストレス作用、抗うつ作用、抗不安作用が認められ、うつ病、不安関連疾患の治療効果が示唆された。

0108

本発明によれば、ストレス性疾患の患者において、本発明化合物のTSPO占有率を約50乃至約95%に到達させることができるため、本発明化合物の有効性を最大限に発揮させ、ストレス性疾患の予防および/または治療用の医薬として有用である。

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