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技術 回転電機制御装置

出願人 アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
発明者 島田有礼宮崎将司サハスブラタ西村圭亮岩月健
出願日 2015年3月30日 (5年10ヶ月経過) 出願番号 2016-513704
公開日 2017年4月13日 (3年10ヶ月経過) 公開番号 WO2015-159694
状態 特許登録済
技術分野 無整流子電動機の制御
主要キーワード 低速演算 理想パルス 観測電圧 観測電流 負極電源 制御終了時刻 変調指令 最低電流値
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (12)

課題・解決手段

回転電機運転効率に対する影響を抑制しつつ、デッドタイムによる電圧誤差を低減して、電気的に回転電機の磁極位置を精度良く導出する。デッドタイム期間に起因する交流出力誤差を低減するデッドタイム補償を行い、ロータの回転によって生じる誘起電圧に基づいて、又は、回転電機に印加された高周波観測信号への応答成分に基づいて演算した磁極位置を用いて、dq軸ベクトル座標系において電流フィードバック制御を行う回転電機制御装置は、dq軸ベクトル座標系において電流指令Id*,Iq*を決定して回転電機を制御する場合に、電機子電流Iaの大きさが予め規定された下限電流Ia_min以上となるように回転電機を制御する。

概要

背景

回転電機、例えば埋め込み磁石型同期モータIPMSM:Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)の制御方法として、ベクトル制御と呼ばれる制御方法が知られている。ベクトル制御では、例えばモータステータコイルに流れるモータ電流を、ロータに配置された永久磁石が発生する磁界の方向であるd軸と、このd軸に直交するq軸とのベクトル成分座標変換してフィードバック制御を行う。この座標変換のためには、ロータの位置(磁極位置)を精度良く検出する必要がある。磁極位置検出にはレゾルバなどの回転センサが用いられることが多いが、磁気的突極性を有するIPMSMに対しては、そのような回転センサを用いないセンサレス磁極位置検出技術も種々提案されている。例えば、ロータの回転によって生じる誘導起電力を利用して電気的に磁極位置を検出する方法が知られている。停止時などモータが極めて低速回転の場合には、誘導起電力が全く或いは僅かしか生じないため、高周波電流高周波電圧観測信号をモータに与えてその応答により磁極位置を推定する方法も提案されている。

ところで、回転電機は直流電力交流電力との間で電力変換を行うインバータを介して駆動制御されることが多い。インバータのスイッチング制御に際しては、上段側のスイッチング素子下段側のスイッチング素子とが共にオン状態となり、インバータの正負両極間が短絡することを防止するために、両スイッチング素子が同時にオフ状態となるような期間、いわゆるデッドタイムが設けられる。このデッドタイムによって、変調指令に基づくスイッチングパルスの有効パルス幅に対して実際の有効パルス幅が小さくなり、直流から交流に変換された後の出力電圧に、指令値に対する誤差が生じる場合がある。この誤差は、電気的に磁極位置を検出する際にも影響を与え、検出誤差の原因となる。このため、有効パルスの始点と終点とを同一時間ずつずらすことによってデッドタイムに起因する出力電圧の誤差を低減するデッドタイム補償が行われる場合がある。

交流の相電流振幅中心に近い(ゼロに近い)タイミングでは、このようなデッドタイム補償が有効に機能する。しかし、相電流の振幅が小さい場合など、相電流の周期に対して、相電流が振幅中心(ゼロ)付近の値を取る期間の割合が大きくなると、磁極位置を精度良く検出できない期間が長くなり、結果として磁極位置検出の精度が低下する。そこで、特開2012−178950号公報(特許文献1)には、モータの制御量を制御するための電流位相を操作することによって検出精度を向上させる技術が提案されている(第7〜9段落、第53〜57段落等)。しかし、この方法では、電流を進み位相遅れ位相とに設定するためにトルクリップルが大きくなる傾向がある。また、電流の位相を調整するための演算負荷も増加する。また、デッドタイムの影響はモータのトルクや、インバータの直流側電圧直流リンク電圧)にも依存するが、デッドタイムの影響が比較的小さい場合にも電流位相の調整等を行うことによって、効率を低下させる可能性がある。

概要

回転電機の運転効率に対する影響を抑制しつつ、デッドタイムによる電圧誤差を低減して、電気的に回転電機の磁極位置を精度良く導出する。デッドタイム期間に起因する交流出力の誤差を低減するデッドタイム補償を行い、ロータの回転によって生じる誘起電圧に基づいて、又は、回転電機に印加された高周波の観測信号への応答成分に基づいて演算した磁極位置を用いて、dq軸ベクトル座標系において電流フィードバック制御を行う回転電機制御装置は、dq軸ベクトル座標系において電流指令Id*,Iq*を決定して回転電機を制御する場合に、電機子電流Iaの大きさが予め規定された下限電流Ia_min以上となるように回転電機を制御する。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
2件

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請求項1

永久磁石が配置されたロータを備え、直流交流との間で電力変換を行うインバータを介して駆動される回転電機制御対象とし、前記ロータの磁極位置センサレス制御によって検出し、前記磁極位置を用い、前記永久磁石が発生する磁界の方向であるd軸と当該d軸に直交するq軸とのdq軸ベクトル座標系において、電流指令と前記回転電機からのフィードバック電流との偏差に基づいて電流フィードバック制御を行い、前記インバータを構成するスイッチング素子制御パルスの始点及び終点を調整して、前記インバータの1相のアームを構成する上段側の前記スイッチング素子及び下段側の前記スイッチング素子が共にオフ状態に制御される期間であるデッドタイム期間に起因する交流出力誤差を、前記制御パルスが基準パルスである場合に比べて低減するデッドタイム補償を行い、前記スイッチング素子をスイッチング制御して前記回転電機を駆動する回転電機制御装置であって、前記回転電機の出力トルクに応じて電機子電流の大きさが最も小さくなるように前記dq軸ベクトル座標系における前記電流指令を決定して前記回転電機を制御する場合に、前記電機子電流の大きさが予め規定された下限電流以上となるように前記回転電機を制御する回転電機制御装置。

請求項2

前記回転電機の出力トルクに応じて、前記電機子電流の大きさが最も小さくなるように前記電流指令を決定する基本制御と、前記基本制御における前記電機子電流の大きさが前記下限電流を下回る場合に、前記電機子電流の大きさが前記下限電流となるように前記電流指令を決定する定電流制御と、を実行可能であり、前記電機子電流の大きさに応じて、前記基本制御と前記定電流制御とを切り替えて実行する請求項1に記載の回転電機制御装置。

請求項3

前記回転電機が回転を始める際には、前記電機子電流をゼロから少なくとも前記下限電流まで階段状に増加させ、前記回転電機が停止する際には、前記電機子電流を少なくとも前記下限電流からゼロまで階段状に減少させる請求項1又は2に記載の回転電機制御装置。

請求項4

前記インバータの直流側電圧である直流リンク電圧が予め規定された下限直流リンク電圧以上の場合において、前記下限電流は、前記直流リンク電圧が大きくなるに従って連続的又は段階的に大きくなるように設定されている請求項1から3の何れか一項に記載の回転電機制御装置。

請求項5

前記ロータの回転速度が予め規定された下限回転速度以上の場合において、前記下限電流は、前記回転速度が大きくなるに従って連続的又は段階的に小さくなるように設定されている請求項1から4の何れか一項に記載の回転電機制御装置。

請求項6

前記下限電流は、前記デッドタイム補償が可能な最低電流値以上に設定されている請求項1から5の何れか一項に記載の回転電機制御装置。

技術分野

0001

本発明は、永久磁石が配置されたロータを備え、直流交流との間で電力変換を行うインバータを介して駆動される回転電機制御対象とする回転電機制御装置に関する。

背景技術

0002

回転電機、例えば埋め込み磁石型同期モータIPMSM:Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)の制御方法として、ベクトル制御と呼ばれる制御方法が知られている。ベクトル制御では、例えばモータステータコイルに流れるモータ電流を、ロータに配置された永久磁石が発生する磁界の方向であるd軸と、このd軸に直交するq軸とのベクトル成分座標変換してフィードバック制御を行う。この座標変換のためには、ロータの位置(磁極位置)を精度良く検出する必要がある。磁極位置検出にはレゾルバなどの回転センサが用いられることが多いが、磁気的突極性を有するIPMSMに対しては、そのような回転センサを用いないセンサレス磁極位置検出技術も種々提案されている。例えば、ロータの回転によって生じる誘導起電力を利用して電気的に磁極位置を検出する方法が知られている。停止時などモータが極めて低速回転の場合には、誘導起電力が全く或いは僅かしか生じないため、高周波電流高周波電圧観測信号をモータに与えてその応答により磁極位置を推定する方法も提案されている。

0003

ところで、回転電機は直流電力交流電力との間で電力変換を行うインバータを介して駆動制御されることが多い。インバータのスイッチング制御に際しては、上段側のスイッチング素子下段側のスイッチング素子とが共にオン状態となり、インバータの正負両極間が短絡することを防止するために、両スイッチング素子が同時にオフ状態となるような期間、いわゆるデッドタイムが設けられる。このデッドタイムによって、変調指令に基づくスイッチングパルスの有効パルス幅に対して実際の有効パルス幅が小さくなり、直流から交流に変換された後の出力電圧に、指令値に対する誤差が生じる場合がある。この誤差は、電気的に磁極位置を検出する際にも影響を与え、検出誤差の原因となる。このため、有効パルスの始点と終点とを同一時間ずつずらすことによってデッドタイムに起因する出力電圧の誤差を低減するデッドタイム補償が行われる場合がある。

0004

交流の相電流振幅中心に近い(ゼロに近い)タイミングでは、このようなデッドタイム補償が有効に機能する。しかし、相電流の振幅が小さい場合など、相電流の周期に対して、相電流が振幅中心(ゼロ)付近の値を取る期間の割合が大きくなると、磁極位置を精度良く検出できない期間が長くなり、結果として磁極位置検出の精度が低下する。そこで、特開2012−178950号公報(特許文献1)には、モータの制御量を制御するための電流位相を操作することによって検出精度を向上させる技術が提案されている(第7〜9段落、第53〜57段落等)。しかし、この方法では、電流を進み位相遅れ位相とに設定するためにトルクリップルが大きくなる傾向がある。また、電流の位相を調整するための演算負荷も増加する。また、デッドタイムの影響はモータのトルクや、インバータの直流側電圧直流リンク電圧)にも依存するが、デッドタイムの影響が比較的小さい場合にも電流位相の調整等を行うことによって、効率を低下させる可能性がある。

先行技術

0005

特開2012−178950号公報

発明が解決しようとする課題

0006

上記背景に鑑みて、回転電機の運転効率に対する影響を抑制しつつ、デッドタイムによる電圧誤差を低減して、電気的に回転電機の磁極位置を精度良く導出することができるセンサレス磁極位置検出技術の提供が望まれる。

課題を解決するための手段

0007

上記に鑑みた回転電機制御装置は、1つの態様として、
永久磁石が配置されたロータを備え、直流と交流との間で電力変換を行うインバータを介して駆動される回転電機を制御対象とし、
前記ロータの磁極位置をセンサレス制御によって検出し、
前記磁極位置を用い、前記永久磁石が発生する磁界の方向であるd軸と当該d軸に直交するq軸とのdq軸ベクトル座標系において、電流指令と前記回転電機からのフィードバック電流との偏差に基づいて電流フィードバック制御を行い、
前記インバータを構成するスイッチング素子の制御パルスの始点及び終点を調整して、前記インバータの1相のアームを構成する上段側の前記スイッチング素子及び下段側の前記スイッチング素子が共にオフ状態に制御される期間であるデッドタイム期間に起因する交流出力の誤差を、前記制御パルスが基準パルスである場合に比べて低減するデッドタイム補償を行い、
前記スイッチング素子をスイッチング制御して前記回転電機を駆動する回転電機制御装置であって、
前記回転電機の出力トルクに応じて電機子電流の大きさが最も小さくなるように前記dq軸ベクトル座標系における前記電流指令を決定して前記回転電機を制御する場合に、前記電機子電流の大きさが予め規定された下限電流以上となるように前記回転電機を制御する。

0008

センサレス制御によって精度よく磁極位置を検出するためには、デッドタイム補償の実行が有用であるが、デッドタイム補償の実施に際しては、一般的に交流の相電流の極性の判定が必要となる。ここで、回転電機が低トルクで駆動されている場合など、相電流の振幅が小さく、相電流の波高が相電流の振幅中心に近い場合には、相電流の極性の判定に高い精度が求められたり、判定精度によっては判定の信頼性が低下したりする可能性がある。本構成によれば、電流指令は、電機子電流が下限電流以上となるように決定されることになる。電機子電流が小さくなることを規制することで、相電流の振幅の大きさを確保できる。即ち、相電流の極性の判定が充分に可能となるように相電流の振幅を確保することができる。電機子電流の大きさが下限電流以上の場合には、電機子電流は規制されないから、回転電機の運転効率に対する影響は、電機子電流の大きさが下限電流未満の場合に限定される。従って、本構成によれば、回転電機の運転効率に対する影響を抑制しつつ、デッドタイムによる電圧誤差を低減して、電気的に回転電機の磁極位置を精度良く導出することができるセンサレス磁極位置検出技術が実現される。

図面の簡単な説明

0009

回転電機制御装置のシステム構成の一例を模式的に示すブロック図
回転電機制御装置の機能構成の一例を模式的に示すブロック図
dq軸ベクトル座標系とδγ軸ベクトル座標系との関係を示す図
αβ軸ベクトル座標系とdq軸ベクトル座標系との関係を示す図
デッドタイムについて説明する図
デッドタイムにより生じる電圧誤差について説明する図
デッドタイム補償の一例について説明する図
電流ベクトル空間における動作点と電流指令との関係を模式的に示す図
定電流制御を含む制御を行う場合の電流指令の一例を模式的に示す波形
下限電流と直流リンク電圧との関係を模式的に示す図
下限電流と回転速度との関係を模式的に示す図

実施例

0010

以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、回転電機制御装置1は、交流の回転電機80の回転状態(磁極位置や回転速度)をレゾルバ等の回転センサを用いることなく、いわゆるセンサレスで検出する機能を備えた制御装置である。本実施形態において、回転電機80は、埋込型永久磁石同期モータ(interior permanent magnet synchronous motor :IPMSM)であり、ロータの永久磁石のN極方向磁気特性と電気的にこれと垂直な方向(電気角で90°ずれた方向)との磁気特性とが異なる突極性逆突極性を含む)を有する。詳細は後述するが、本実施形態においてモータ制御装置は、この突極性を利用して、回転電機80の停止時や低速回転時においてもセンサレス制御により磁極位置や磁極の方向、回転速度などの回転状態を判定する。従って、本発明は、突極性を有する他の方式の回転電機、例えば、シンクロナスリラクタンスモータにも適用することができる。尚、当然ながら、回転電機80は、モータ(電動機)、ジェネレータ発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含むものである。

0011

上述したように、回転電機制御装置1が制御対象とする回転電機80は、永久磁石が配置されたロータを備え、直流と交流との間で電力変換を行うインバータを介して駆動される。換言すれば、回転電機制御装置1は、図1に示すように、インバータ7と直流リンクコンデンサ6とを備える回転電機駆動装置70を制御対象とし、回転電機駆動装置70を介して回転電機80を駆動制御する。インバータ7は、交流の回転電機80に接続されて直流と多相交流(ここでは3相交流)との間で電力変換を行う電力変換装置であり、交流1相分のアームが上段側スイッチング素子と下段側スイッチング素子との直列回路により構成されている。直流リンクコンデンサ6は、このインバータ7の直流側の電圧である直流リンク電圧Vdcを平滑化する。

0012

本実施形態では、回転電機80は、例えばハイブリッド自動車電気自動車等の車両の駆動力源として用いられる。鉄道のように架線から電力の供給を受けることができない自動車のような車両には、回転電機80を駆動するための電力源としてニッケル水素電池リチウムイオン電池などの二次電池バッテリ)や、電気二重層キャパシタなどの直流電源4が搭載されている。本実施形態では、回転電機80に電力を供給するための大電圧大容量の直流電源として、例えば電源電圧200〜400[V]の直流電源4が備えられている。回転電機80は、交流の回転電機であるから、直流電源4と回転電機80との間には、直流と交流(ここでは3相交流)との間で電力変換を行うインバータ7が備えられている。インバータ7の直流側の正極電源ラインPと負極電源ラインNとの間の電圧は、以下“直流リンク電圧Vdc”と称する。直流電源4は、インバータ7を介して回転電機80に電力を供給可能であると共に、回転電機80が発電して得られた電力を蓄電可能である。インバータ7と直流電源4との間には、インバータ7の直流側の正負両極間電圧(直流リンク電圧Vdc)を平滑化する平滑コンデンサ(直流リンクコンデンサ6)が備えられている。直流リンクコンデンサ6は、回転電機80の消費電力の変動に応じて変動する直流電圧(直流リンク電圧Vdc)を安定化させる。

0013

インバータ7は、直流リンク電圧Vdcを有する直流電力を複数相(nを自然数としてn相、ここでは3相)の交流電力に変換して回転電機80に供給すると共に、回転電機80が発電した交流電力を直流電力に変換して直流電源に供給する。インバータ7は、複数のスイッチング素子を有して構成される。スイッチング素子には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やSiC−MOSFET(Silicon Carbide - Metal Oxide SemiconductorFET)やSiC−SIT(SiC - Static Induction Transistor)、GaN−MOSFET(Gallium Nitride - MOSFET)などの高周波での動作が可能なパワー半導体素子を適用すると好適である。図1に示すように、本実施形態では、スイッチング素子としてIGBT3が用いられる。

0014

例えば直流と多相交流(ここでは3相交流)との間で電力変換するインバータ7は、よく知られているように多相(ここでは3相)のそれぞれに対応する数のアームを有するブリッジ回路により構成される。つまり、図1に示すように、インバータ7の直流正極側(直流電源の正極側の正極電源ラインP)と直流負極側(直流電源の負極側の負極電源ラインN)との間に2つのIGBT3が直列に接続されて1つのアームが構成される。3相交流の場合には、この直列回路(1つのアーム)が3回線(3相)並列接続される。つまり、回転電機80のU相、V相、W相に対応するステータコイル8のそれぞれに一組の直列回路(アーム)が対応したブリッジ回路が構成される。

0015

対となる各相のIGBT3による直列回路(アーム)の中間点、つまり、正極電源ラインPの側のIGBT3(上段側IGBT(上段側スイッチング素子))と負極電源ラインN側のIGBT3(下段側IGBT(下段側スイッチング素子))との接続点は、回転電機80のステータコイル8にそれぞれ接続される。尚、各IGBT3には、負極(負極電源ラインN)から正極(正極電源ラインP)へ向かう方向(下段側から上段側へ向かう方向)を順方向として、並列フリーホイールダイオード(FWD)5が備えられている。

0016

図1に示すように、インバータ7は、回転電機制御装置1により制御される。回転電機制御装置1は、マイクロコンピュータ等の論理回路中核部材として構築されたECU(electronic control unit)として構成されている。図2に示すように、回転電機制御装置1は、インバータ制御部10、回転状態情報演算部20を備えて構成されている。インバータ制御部10及び回転状態情報演算部20は、種々の機能部を有して構成されており、各機能部は、マイクロコンピュータ等のハードウェアソフトウェアプログラム)との協働により実現される。例えば、回転電機制御装置1は、車両ECU90等の他の制御装置等からCAN(Controller Area Network)などを介して要求信号として提供される回転電機80の目標トルク目標速度に基づいてトルク指令T*を決定し、インバータ7を介して回転電機80を制御する。

0017

回転電機制御装置1(インバータ制御部10)は、インバータ7を構成するIGBT3のスイッチングパターンの形態(電圧波形制御の形態)として、例えばパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)制御を行う。また、回転電機制御装置1は、ステータ界磁制御の形態として、電機子電流に対して最大トルクを出力する最大トルク制御や、電機子電流に対して最大効率でモータを駆動する最大効率制御などの通常界磁制御基本制御)、及び、トルクに寄与しない界磁電流を流して界磁磁束を弱める弱め界磁制御や、逆に界磁磁束を強める強め界磁制御などの界磁調整制御を有している。本実施形態では、回転電機制御装置1は、回転電機80の回転に同期して回転する2軸の直交ベクトル空間(座標系)における電流ベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を実行して回転電機80を制御する。電流ベクトル制御法では、例えば、永久磁石による界磁磁束の方向に沿ったd軸と、このd軸に対して電気的にπ/2進んだq軸との2軸の直交ベクトル空間において電流フィードバック制御を行う。

0018

ところで、インバータ7を構成する各IGBT3の制御端子であるゲート端子は、ドライバ回路2を介して回転電機制御装置1に接続されており、それぞれ個別にスイッチング制御される。回転電機80を駆動するための高圧系回路と、マイクロコンピュータなどを中核とする回転電機制御装置1などの低圧系回路とは、動作電圧回路の電源電圧)が大きく異なる。このため、各IGBT3に対するゲート駆動信号スイッチング制御信号)の駆動能力(例えば電圧振幅出力電流など、後段の回路を動作させる能力)をそれぞれ高めて中継するドライバ回路2(制御信号駆動回路)が備えられている。低圧系回路の回転電機制御装置1により生成されたIGBT3のゲート駆動信号は、ドライバ回路2を介して高圧回路系のゲート駆動信号としてインバータ7に供給される。ドライバ回路2は、例えばフォトカプラトランスなどの絶縁素子ドライバICを利用して構成される。

0019

このように回転電機80は、インバータ制御部10によりスイッチング制御されるインバータ7を介して、所定の出力トルク及び回転速度で駆動される。この際、回転電機80の各ステータコイルに流れる電流の値がインバータ制御部10にフィードバックされる。インバータ制御部10は、トルク指令T*に応じて決定された電流指令(Id*,Iq*)との偏差に対してPI制御比例積分制御)やPID制御比例積分微分制御)を実行して回転電機80を駆動制御する。このフィードバック制御を実現するため、インバータ7の各相アームと回転電機80の各相ステータコイルとの間に設けられたバスバーなどの導体を流れる電流(Iu,Iv,Iw)が、電流センサ30により検出される。

0020

ここで、インバータ制御部10によるベクトル制御について簡単に説明する。このベクトル制御におけるベクトル空間(座標系)は、回転電機80のロータに配置された永久磁石が発生する磁界の方向であるd軸と当該d軸に電気的に直交するq軸とのdq軸ベクトル座標系(dq軸ベクトル空間)である。本実施形態においてインバータ制御部10は、トルク指令演算部11と、トルク制御部12(電流指令演算部)と、電流制御部13(電圧指令演算部)と、変調制御部14と、3相2相座標変換部15とを備えて構成されている。

0021

本実施形態においては、車両ECU90などの上位のECU等からの速度指令ω*(目標速度)及び実際の回転速度に基づいて、トルク指令演算部11がトルク指令T*(目標トルク)を演算する。尚、本実施形態では、レゾルバ等の回転センサを用いることなくセンサレスで回転電機80の回転を検出するので、実際の回転速度は、回転状態情報演算部20により推定される推定回転速度であり、図2に示すように^(ハット)付きのω(便宜上、文中ではω^と表記する。)である。トルク制御部12は、トルク指令T*に応じて、例えばマップを参照してベクトル制御の電流指令Id*,Iq*を設定する(決定する)。電流指令Id*,Iq*は、上述したdq軸ベクトル座標系に対応して設定される。

0022

電流制御部13は、dq軸ベクトル座標系における電流指令Id*,Iq*と、フィードバック電流Id,Iqとの偏差を例えばPI制御して、dq軸ベクトル座標系における電圧指令Vd*,Vq*を演算する。フィードバック電流Id,Iqは、回転電機80の各ステータコイルに流れる3相電流(Iu,Iv,Iw)の検出値が、3相2相座標変換部15により2相のdq軸ベクトル座標系に座標変換されてフィードバックされたものである。電圧指令Vd*,Vq*は、変調制御部14において3相の電圧指令に座標変換される。また、変調制御部14は、この3相の電圧指令に基づいてインバータ7をスイッチング制御するスイッチング制御信号を、例えばパルス幅変調(PWM)により生成する。

0023

変調制御部14及び3相2相座標変換部15における座標変換は、ロータの磁極位置θに基づいて行われる。つまり、回転電機80をベクトル制御するためには、現実の3相空間と2相のdq軸ベクトル座標系との間での相互の座標変換が必要である。このため、ロータの磁極位置θを精度良く検出する必要がある。本実施形態では、レゾルバなどの回転検出装置を備えることなく、ロータの磁極位置θを推定するセンサレス制御を採用している。従って、磁極位置θは推定磁極位置であり、図1に示すように^付きのθ(便宜上、文中ではθ^と表記する。)である。

0024

回転電機80が回転中においては、誘導起電力に磁極位置情報が含まれるため、インバータ出力電圧とフィードバック電流(Id,Iq)から誘導起電力を推定し、回転速度ω(推定回転速度ω^)、磁極位置θ(推定磁極位置θ^)を推定する。一方、回転電機80が停止している際には当然ながら誘導起電力も生じない。また、回転電機80が低速で回転している際には、誘導起電力も小さくなる。このため、回転速度ω(ω^)及び磁極位置θ(θ^)の演算には、別の手法を用いる必要がある。例えば、回転電機80が停止中あるいは低速で回転中の場合には、電気的な刺激となる高周波の観測信号(観測電流又は観測電圧)を回転電機80に印加し、その応答から回転速度ω(ω^)並びに磁極位置θ(θ^)を演算する。

0025

図2に示すように、本実施形態では、主として、誘導起電力(誘起電圧)を利用することができる高速回転域において回転速度ω(ω^H)並びに磁極位置θ(θ^H)を演算する高速域位置演算部21と、主として、高周波の観測信号を用いて低速回転域において回転速度ω(ω^L)並びに磁極位置θ(θ^L)を演算する低速域位置演算部22との2つの位置演算部を備える。高速域位置演算部21の演算結果(ω^H及びθ^H)と、低速域位置演算部22の演算結果(ω^L及びθ^L)とは、後述するように切替部23によって選択されたり、合成されたりして、トルク指令演算部11や変調制御部14、3相2相座標変換部15で利用される。例えば、切替部23は、低速域位置演算部22による低速演算モード、及び高速域位置演算部21による高速演算モード、低速域位置演算部22による演算結果(ω^L及びθ^L)と高速域位置演算部21の演算結果(ω^H及びθ^H)との回転速度に応じた加重平均を取る合成モードの何れかを選択して、回転速度ω(ω^)と磁極位置θ(θ^)を決定してもよい。また、切替部23は、スイッチ24を制御して、高周波の観測信号(ここでは“Vdh*”)を印加するか否かの切り替えも行う。

0026

以下、高速域位置演算部21及び低速域位置演算部22による回転状態情報(θ^,ω^)の演算手法について簡単に説明する。高速域位置演算部21は、d軸電流によりロータに発生する磁束の回転により発生する誘起電圧、ステータ側のq軸のインダクタンスに流れる電流の変化分により発生する誘起電圧、永久磁石の磁束の回転により発生する誘起電圧を合算した拡張誘起電圧を用いた“拡張誘起電圧モデル”によりロータの磁極位置θ(θ^)を演算する。“拡張誘起電圧モデル”については、市川真士、他による技術論文“拡張誘起電圧モデルに基づく突極型永久磁石同期モータのセンサレス制御(Sensorless Controls of Salient-Pole Permanent Magnet Synchronous Motors Using Extended Electromotive Force Models, T.IEEJapan, vol. N0.12, 2002)”に詳しいので、ここでは詳細な説明は省略する。

0027

尚、磁気的突極性を有する回転電機の回転座標系(dq軸ベクトル座標系)での一般的な回路方程式電圧方程式)は、下記式(1)で表される。ここで、pは微分演算子、Ld,Lqはそれぞれd軸インダクタンス及びq軸インダクタンス、KE誘起電圧定数である。また、“拡張誘起電圧モデル”による電圧方程式は、式(2)で示され、式(2)の第2項が “拡張誘起電圧”(下記式(3))と定義される。式(2) 及び式(3)において“Iq”に付加されている“・”は“Iq”の時間微分を意味しており,ドットの付いた変数に対してのみ微分を作用させるため、式(1)の微分演算子pとは区別した表記となっている。

0028

0029

式(3)の右辺の“(Ld−Lq)ωId”は、d軸電流によりロータに発生する磁束の回転により発生する誘起電圧を示している。式(3)の右辺の“(Ld−Lq)Iq”(時間微分のドットは省略)は、ステータ側のq軸のインダクタンスに流れる電流の変化分により発生する誘起電圧を示している。式(3)の右辺の“ωKE”はロータに取り付けられた永久磁石の磁束の回転により発生する誘起電圧を示している。つまり、回転電機の永久磁石とインダクタンスにおける位置情報は、全て“拡張誘起電圧”に集約されていることになる。詳細な説明は、市川氏らの論文に詳しいので省略するが、式(2)を回転電機のステータに設定された固定座標系(例えばαβ軸ベクトル座標系)に変換すると、磁極位置の推定の際に処理が困難な値(上記技術論文によれば“2θ”)を含む項が存在しなくなるため、推定のための演算が容易となる。一般的な誘起電圧モデルを用いた磁極位置の演算の際には近似を用いる必要が生じて推定精度を低下させる可能性があるが、拡張誘起電圧モデルを用いた場合には、近似は不要となり、高精度な磁極位置θ(θ^)や回転速度ω(ω^)の推定が可能となる。

0030

低速域位置演算部22は、回転電機80に高周波の観測信号を印加し、当該観測信号への応答成分としてフィードバック電流に含まれてフィードバックされる高周波成分に基づいてロータの磁極位置θ(θ^)を演算する。本実施形態では、d軸電圧指令Vdに重畳する高周波の観測信号(Vdh*:Vahcos(ω^ht))が生成される。この観測信号に応じた座標系(γδ軸ベクトル座標系)とdq軸ベクトル座標系との間には、図3に示すように、“θh”(指令値としては位相指令“θh*”)の位相差が存在する。指令値として電圧指令に重畳した位相差に対する応答成分は、回転電機80からのフィードバック電流に含まれる。例えば、ハイパスフィルタを用いてq軸フィードバック電流Iq(δ軸フィードバック電流Iδ)から高周波の観測信号に対する応答成分が抽出され、ハイパスフィルタ、ヘテロダイン回路ミキサー)、ローパスフィルタなどを介して応答成分が復調される。

0031

ここで回転電機80のステータに設定される固定座標系(αβ軸ベクトル座標系)と、dq軸ベクトル座標系との関係を考えると、dq軸ベクトル座標系は、このαβ軸ベクトル座標系に対して回転する座標系となり、磁極位置θは図4に示すようにαβ軸を基準とした位相角“θ”として定義することができる。また、ロータの回転速度ωは、αβ軸ベクトル座標系に対するdq軸ベクトル座標系の回転速度ωとして定義することができる。本実施形態のように、磁極位置θを演算によって推定する場合には、実際のdq軸ベクトル座標系を直接検出することはできない。従って、図4において^(ハット)付きのdq軸によって示すように、演算によって推定された磁極位置θ^に基づく推定dq軸ベクトル座標系が設定される。αβ軸を基準としたロータの磁極位置は、図4に示すように^付きの“θ^”として定義され、αβ軸ベクトル座標系に対する推定dq軸ベクトル座標系の回転速度は^付きの“ω^”として定義される。

0032

図4に示すように、実際のdq軸ベクトル座標系と推定dq軸ベクトル座標系との誤差に相当するΔθをゼロに収束させることにより、推定dq軸ベクトル座標系が実際のdq軸ベクトル座標系に一致する。つまり、Δθをゼロに収束させることにより推定dq軸が実際のdq軸となるので、磁極位置が精度良く検出されることになる。回転状態情報演算部20は、この原理により磁極位置を演算する。例えば、復調された応答成分に対し、位相同期部(PLL:phase locked loop)において“Δθ”が“0”となるようにPI制御が実行される。PI制御の結果、推定回転速度“ω^L”が求められる。回転速度(角速度)を積分すると距離、即ち角度が得られるので、この推定回転速度“ω^L”を積分器を用いて積分することによって、推定磁極位置“θ^L”が求められる。

0033

ところで、インバータのスイッチング制御に際しては、上段側スイッチング素子と下段側スイッチング素子とが共にオン状態となり、正極側と負極側とが短絡することを防止するために、両スイッチング素子が同時にオフ状態となるような期間、いわゆるデッドタイムTdが設けられる(図5参照)。例えば、変調指令に基づく理想的なスイッチングパルス(制御パルス)の立ち上がり破線部)を所定期間遅らせることによってデッドタイムTdが設けられ、基準パルスが生成される。このデッドタイムTdによって、変調指令に基づくスイッチングパルス(理想パルス)の有効パルス幅に対して実際パルス(基本パルス)の有効パルス幅が小さくなり、直流から交流に変換された後の出力電圧に、誤差ΔVが生じる場合がある(図6参照)。デッドタイムTdに起因して生じる電圧の誤差ΔVは、図6に一点鎖線で示すように近似的に方形波電圧みなすことができる。その方形波電圧の振幅(誤差ΔV)は、直流リンク電圧Vdcを“Ed”、変調の際のキャリア周波数を“fc”として、“ΔV≒Ed・Td・fc”で表される。

0034

上述したように、高速域位置演算部21では電圧方程式(式(2))に基づいて磁極位置(θ^H)を演算しており、誤差ΔVはその演算結果に影響を与える。また、低速域位置演算部22では、電圧指令(Vd*,Vq*)に応じた電圧が出力されていることを前提として観測指令に対する応答成分に基づき磁極位置(θ^L)を演算している。従って、出力される電圧に誤差ΔVが生じていると、磁極位置(θ^L)の演算結果に影響を与える。

0035

このため、図7に例示するように、有効パルスの始点と終点とを同一時間ずつずらすことによってデッドタイムTdに起因する出力電圧の誤差ΔVを低減するデッドタイム補償が行われる。例えば、デッドタイム補償は、3相電流(Iu,Iv,Iw)の極性に応じて実行される。図7は、相電流が正の場合のデッドタイム補償の手順を例示している。図7の上段は、変調指令に基づく理論上のスイッチングパルスを示している。相電流が正の場合、この理論上のスイッチングパルスのパルス幅“Tp”が両側に“Td/2”ずつ拡張される(図7中段参照)。具体的には、上段側スイッチング素子のオン期間が両側に“Td/2”ずつ延長され、これに対応する下段側スイッチング素子のオフ期間が“Td/2”ずつ延長される(オフ期間の前後において隣接するオン期間がそれぞれ“Td/2”ずつ短縮される)。次に、図5を参照して上述したように、スイッチングパルスの立ち上がりを、デッドタイムTdに対応する所定期間ずつ遅らせる(図7の下段参照)。上段側スイッチングパルスのオン期間は“Td=(Td/2)×2”延長された後、デッドタイムTd分短縮されるので、延長分と短縮分とが相殺され、理論上のパルス幅“Tp”が維持される。

0036

相電流が負の場合のデッドタイム補償では、上段側スイッチング素子のオン期間が両側に“Td/2”ずつ短縮され、これに対応する下段側スイッチング素子のオフ期間も“Td/2”ずつ短縮される(オフ期間の前後において隣接するオン期間がそれぞれ“Td/2”ずつ拡張される)。つまり、相電流が負の場合のデッドタイム補償は、相電流が正の場合とは逆となり、容易に類推可能であるので図示及び詳細な説明は省略する。

0037

このようなデットタイム補償を行うに際しては、相電流(Iu,Iv,Iw)の極性の判定が必要である。しかし、相電流がゼロの近傍(振幅中心の近傍)では、電流センサ30の分解能や、電流リップルの影響などにより、極性の判定に関する信頼性が低くなる。このため、デッドタイム補償が充分に機能せず、磁極位置の検出精度も低下する可能性がある。また、相電流の振幅が小さい場合、つまり、電機子電流Iaの大きさが小さい場合には、相電流の波高(ピークボトム)においても電流値がゼロに近くなり、極性の判定に関する信頼性が低くなる。このため、本実施形態では、デッドタイム補償が適切に行えるように、相電流の振幅が一定以上となるように調整される。具体的には、回転電機制御装置1は、回転電機80の出力トルクに応じてdq軸ベクトル座標系における電流指令(Id*、Iq*)を決定するに際して、電機子電流Iaの大きさが予め規定された下限電流(Ia_min)以上となるように、電流指令(Id*、Iq*)を決定する。

0038

図8は、電流ベクトル空間(座標系)を示している。図8において、曲線100(曲線101〜103のそれぞれ)は“等トルク線”を表している。等トルク線100(101〜103)は、それぞれ回転電機80が、あるトルクを出力する電機子電流Iaのベクトル軌跡を示している。等トルク線101よりも等トルク線102の方が低トルクであり、さらに等トルク線102よりも等トルク線103の方が低トルクである。電機子電流Iaの大きさは、d軸電流(Id)とq軸電流(Iq)との合成ベクトルの大きさである(Ia2=Id2+Iq2)。尚、uvwの3相座標系におけるu相電流Iuとv相電流Ivとw相電流Iwとの合成ベクトルと、d軸電流(Id)とq軸電流(Iq)との合成ベクトルとは同一であり、電機子電流Iaである。曲線200(曲線201〜203のそれぞれ)は、定電流円を示している。定電流円は、電機子電流Ia大きさが一定値となるベクトル軌跡である。d軸及びq軸の電流指令(Id*、Iq*)は、このような電流ベクトル空間における動作点(例えば、P1,P2,P3)における電流値として設定される。

0039

図8において、曲線400は最大トルク制御(基本制御)を実行する際の動作点のベクトル軌跡(最大トルク制御線)である。上述したように、回転電機制御装置1は、基本制御として、電機子電流Iaに対して最大トルクを出力する最大トルク制御や、電機子電流Iaに対して最大効率でモータを駆動する最大効率制御などを実行する。ここでは、基本制御として、最大トルク制御が実行される形態を例示している。図2に示すトルク制御部12は、基本制御の実行に際して、図8に例示したようなマップを参照して、トルク指令T*に基づき選択される等トルク線100と最大トルク制御線400との交点を動作点として設定し、当該動作点におけるd軸電流とq軸電流とを電流指令(Id*、Iq*)として決定する。当該動作点における電機子電流Iaの大きさが予め規定された下限電流Ia_min以上であれば、最大トルク制御線400上の動作点における電流値が電流指令として決定される。

0040

例えば、図8に示す動作点P1における電機子電流Iaの大きさが下限電流Ia_min以上であり、動作点P2における電機子電流Iaの大きさが、下限電流Ia_min未満であるとする。動作点P1における電機子電流Iaの大きさは、下限電流Ia_min以上であるから、当該動作点P1におけるd軸及びq軸の電流値が電流指令(Id*、Iq*)として決定される。一方、動作点P2では、電機子電流Iaの大きさが、下限電流Ia_min未満であるから、電機子電流Iaの大きさが下限電流Ia_min以上となるまで、等トルク線103上において動作点を移動させる。具体的には、下限電流Ia_minを示す定電流円200と等トルク線103との交点まで動作点を移動させる。本実施形態では、動作点P1における電機子電流Iaの大きさが下限電流Ia_minに設定されている例を示している。従って、定電流円203と等トルク線103との交点が、移動後の動作点P3として設定される。そして、当該動作点P3におけるd軸及びq軸の電流値が電流指令(Id*、Iq*)として決定される。定電流円203は、下記に示す定電流制御における一定の電機子電流(Ia’)のベクトル軌跡でもある。

0041

最大トルク制御線400の上に動作点が設定される基本制御は、換言すれば、回転電機80の出力トルクに応じて、電流の大きさIaが最も小さくなるように電流指令(Id*、Iq*)を決定する制御である。つまり、定電流円200と等トルク線100との接点が動作点となる制御である。一方、等トルク線100の上において、動作点P2から動作点P3に移動させて電流指令を決定する制御は、定電流円200の上に動作点が設定される制御である。従って、本実施形態では、この制御を定電流制御と称する。上述したように、定電流円200は、定電流制御における一定の電機子電流(Ia’)のベクトル軌跡でもあり、定電流制御では定電流円200と等トルク線100との交点に動作点が設定される。

0042

回転電機制御装置1は、基本制御における電機子電流Iaの大きさが下限電流Ia_minを下回る場合に、電機子電流Iaの大きさが下限電流Ia_minとなるように電流指令(Id*、Iq*)を決定する定電流制御を実行する。即ち、回転電機制御装置1(トルク制御部12)は、基本制御と定電流制御とを実行可能であり、トルク指令T*に基づく動作点における電機子電流Iaの大きさに応じて、基本制御と定電流制御とを切り替えて実行する。このような定電流制御を含む制御を行った場合、動作点は図8に矢印Yで示すような軌跡をたどる。

0043

ところで、定電流制御を含む制御を行う場合、回転電機制御装置1は、回転電機80が回転を始める際には、電機子電流Iaをゼロから少なくとも下限電流Ia_minまで階段状に増加させ、回転電機80が停止する際には、電機子電流Iaを少なくとも下限電流Ia_minからゼロまで階段状に減少させると好適である。図9は、定電流制御を含む制御を行う場合の電流指令の一例を模式的に示す波形図である。図9の最上段は速度指令を示しており、図9では、時間の経過に応じて、ゼロから速度を一定速度まで上昇させ、一定速度を保った後、ゼロまで下降させる、いわゆる速度スイープをさせるケースを模式的に示している。図9の上から2段目は、回転電機80の実速度を示しており、ここでは速度指令に対して実速度が良好に追従している形態を示している。図9の上から3段目、及び4段目は、トルク指令を示している。上から3段目は通常の最大トルク制御の際のトルク指令を示している。上から4段目は、定電流制御を含む制御を行う場合のトルク指令を示している。これら2つのトルク指令の波形から明らかなように、トルク指令は、最大トルク制御(基本制御)の場合も、定電流制御を含む場合も同じである。

0044

図9の下から2段目は、最大トルク制御の際の電流指令(電機子電流Iaの指令)を示している。また、図9最下段は、定電流制御を含む制御を行う場合の電流指令を示している。最大トルク制御の際の電流指令は、トルク指令にほぼ比例している。これに対して、定電流制御を含む制御を行う場合には、トルク指令の値が低トルクの領域では、トルク指令に拘わらず、下限電流Ia_min以上の電流指令が設定される。つまり、トルク指令の値が低トルクの領域では、電機子電流Iaの大きさが、下限電流Ia_min未満とならないように、電流指令が設定される。このような低トルクの領域は、図9のような速度スイープをさせる場合には、回転電機80が回転を始めるとき、及び回転電機80が停止するときに現れる。従って、図9の最下段に示すように、回転電機制御装置1は、回転電機80が回転を始める際には、電機子電流Iaをゼロから少なくとも下限電流Ia_minまで階段状に増加させる。また、回転電機制御装置1は、回転電機80が停止する際には、電機子電流Iaを少なくとも下限電流Ia_minからゼロまで階段状に減少させる。

0045

具体的には、回転電機制御装置1は、制御開始時刻“t1”において、階段状に電流指令を下限電流Ia_minまで階段状に増加させ、そのままその電流値を維持させる。最大トルク制御において時刻“t2”からトルク指令に比例して上昇する電流指令が下限電流Ia_minに達する時刻“t3”まで、電流指令は下限電流Ia_minとなる。時刻t1から時刻t3までの電流指令の遷移は、図8における矢印Y1に沿ったベクトル軌跡に対応する。時刻“t3”以降の電流指令の遷移は、最大トルク制御の場合と同様に、トルク指令に比例した電流指令により回転電機80が制御される。時刻“t3”以降の電流指令の遷移は、図8における矢印Y2に沿ったベクトル軌跡に対応する。

0046

回転電機80を減速させ、停止させる場合も同様である。回転電機制御装置1は、時刻“t5”からトルク指令に比例して電流指令を減少させる。時刻“t6”において、減少する電流指令が下限電流Ia_minに達すると、回転電機制御装置1は、電流指令を下限電流Ia_minに固定する。トルク指令に比例する電流指令がゼロとなる時刻“t7”を過ぎた制御終了時刻“t8”において、回転電機制御装置1は、電機子電流Iaをゼロまで階段状に減少させる。時刻“t5”から時刻“t6”までの電流指令の遷移は、最大トルク制御の場合と同様に、図8における矢印Y2に沿った逆方向のベクトル軌跡に対応する。また、時刻“t6”以降の電流指令の遷移は、図8における矢印Y1に沿った逆方向のベクトル軌跡に対応する。

0047

ところで、上述したように、交流電圧の誤差ΔVは、直流リンク電圧Vdcを“Ed”、変調の際のキャリア周波数を“fc”として“ΔV≒Ed・Td・fc”で表される(図6参照)。即ち、誤差ΔVは、直流リンク電圧Vdcに比例し、直流リンク電圧Vdcが低い場合には、誤差ΔVは小さくなり、磁極位置θの導出に与える影響も小さくなる。そのように、磁極位置θの導出に与える影響が少ない場合にも電機子電流Iaを必要以上(基本制御における電流以上)に多く流すと、損失が増大する。従って、下限電流Ia_minの値は、直流リンク電圧Vdcに応じて設定されると好適である。例えば、直流リンク電圧Vdcが予め規定された下限直流リンク電圧Vdc_min未満の場合には、誤差ΔVが磁極位置θの演算に与える影響が軽微であるとして、下限電流Ia_minをゼロに設定し、常に基本制御を行うようにしてもよい。あるいは、直流リンク電圧Vdcに応じて、下限電流Ia_minの値が変動するようにしてもよい。

0048

図10は、そのように直流リンク電圧Vdcに応じて設定される下限電流Ia_minの一例を示している。図10では、インバータ7の直流側の電圧である直流リンク電圧Vdcが予め規定された下限直流リンク電圧Vdc_min以上の場合において、下限電流Ia_minは、直流リンク電圧Vdcが大きくなるに従って大きくなるように設定されている例を示している。図10では、下限電流Ia_minが連続的に大きくなるように設定されている例を示しているが、段階的に大きくなるように設定されていてもよい。

0049

また、高速域位置演算部21により磁極位置θを導出する場合、上述したように式(3)に示す拡張誘起電圧が利用されるが、式(3)より、回転速度ωが大きくなると、“ωId”及び“ωKE”も大きくなり、拡張誘起電圧も大きくなることが分かる(式(3)は下記に再掲)。

0050

0051

誘起電圧(拡張誘起電圧)が交流電圧の誤差ΔVに対して充分大きければ、磁極位置θの導出に際して当該誤差ΔVを無視することができる。式(3)から明らかなように、誘起電圧は、回転電機80のロータの回転速度ωが高くなるに従って大きくなるので、回転速度ωに応じて下限電流Ia_minの値が設定されると好適である。例えば、回転速度ωが予め規定された下限回転速度ω_min未満の場合には、主に低速域位置演算部22により磁極位置θが演算されるので、回転速度ωに対しては下限電流Ia_minを一定の値に設定する。そして、回転速度ωが下限回転速度ω_min以上の場合には、回転速度ωに応じて下限電流Ia_minの値を変動させると好適である。

0052

図11は、そのように回転速度ωに応じて設定される下限電流Ia_minの一例を示している。図11では、回転電機80のロータの回転速度ωが予め規定された下限回転速度ω_min以上の場合において、下限電流Ia_minは、回転速度ωが大きくなるに従って小さくなるように設定されている例を示している。図11では、下限電流Ia_minが連続的に小さくなるように設定されている例を示しているが、段階的に小さくなるように設定されていてもよい。

0053

上述したように、回転電機制御装置1は、デッドタイム補償を確実に実施することによって、デッドタイムTdが磁極位置θの導出に与える影響を低減している。従って、下限電流Ia_minは、デッドタイム補償が可能な最低電流値以上に設定されていると好適である。詳細な説明は省略するが、デッドタイム補償の効果は、3相電流(Iu,Iv,Iw)の検出精度や、3相電流の安定度ノイズ成分の少なさなど)、IGBTなどのスイッチング素子の電気的特性により異なることが知られている。従って、デッドタイム補償が可能な最低電流値は、このような要素に鑑みて設定されると好適である。例えば、この最低電流値は、電流センサ30の分解能や、電流センサ30によって検出される3相電流のリップル成分の振幅、インバータ7を構成するスイッチング素子の素子特性(浮遊容量やオン抵抗など)などに応じて設定されると好適である。

0054

〔その他の実施形態〕
以下、本発明のその他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。

0055

(1)上記においては、自動車の駆動力源となる回転電機を制御対象として本発明の実施形態を例示したが、本発明に係る回転電機制御装置が制御対象とする回転電機は、自動車の駆動力源に限定されるものではない。例えば、自動車に搭載される場合であっても、電動オイルポンプエアーコンディショナーコンプレッサー等を駆動する回転電機であってもよい。また、架線から電力の供給を受ける鉄道等の回転電機であってもよい。また、事業所家庭のエアーコンディショナーや、洗濯機などを駆動する回転電機であってもよい。

0056

(2)上記においては、誘起電圧として拡張誘起電圧を利用する形態を例示したが、磁極位置の演算に際して式(1)に例示したような一般的な電圧方程式に基づく誘起電圧を用いることを妨げるものではない。例えば、一般的な誘起電圧であっても、回転電機の回転速度ωが高くなれば誘起電圧も高くなり、デッドタイムTdに起因する交流電圧の誤差ΔVに対して誘起電圧が充分大きければ、磁極位置θの導出に際して当該誤差ΔVを無視することができる。

0057

(3)上記においては、低速域位置演算部22が、電圧指令に観測信号を重畳させる例を用いて説明したが、低速域位置演算部22の構成はこの形態に限定されるものではない。高周波の観測信号を回転電機に印加して、その応答によって磁極位置を推定する種々の態様を適用することができる。例えば、電流指令に観測信号が重畳される形態であってもよい。

0058

(4)尚、センサレス制御を用いた磁極位置の検出には、上記以外の種々の手法が適用である。

0059

〔実施形態の概要
以下、上記において説明した実施形態における回転電機制御装置(1)の概要について簡単に説明する。

0060

1つの態様として、回転電機制御装置(1)は、
永久磁石が配置されたロータを備え、直流と交流との間で電力変換を行うインバータ(7)を介して駆動される回転電機(80)を制御対象とし、
前記ロータの磁極位置(θ)をセンサレス制御によって検出し、
前記磁極位置(θ)を用い、前記永久磁石が発生する磁界の方向であるd軸と当該d軸に直交するq軸とのdq軸ベクトル座標系において、電流指令(Id*,Iq*)と前記回転電機(80)からのフィードバック電流との偏差に基づいて電流フィードバック制御を行い、
前記インバータ(7)を構成するスイッチング素子(3)の制御パルスの始点及び終点を調整して、前記インバータ(7)の1相のアームを構成する上段側の前記スイッチング素子(3)及び下段側の前記スイッチング素子(3)が共にオフ状態に制御される期間であるデッドタイム期間(Td)に起因する交流出力の誤差を、前記制御パルスが基準パルスである場合に比べて低減するデッドタイム補償を行い、
前記スイッチング素子(3)をスイッチング制御して前記回転電機(80)を駆動する回転電機制御装置(1)であって、
前記回転電機(80)の出力トルクに応じて電機子電流(Ia)の大きさが最も小さくなるように前記dq軸ベクトル座標系における前記電流指令(Id*,Iq*)を決定して前記回転電機(80)を制御する場合に、前記電機子電流(Ia)の大きさが予め規定された下限電流(Ia_min)以上となるように前記回転電機を制御する。

0061

センサレス制御によって精度よく磁極位置(θ)を検出するためには、デッドタイム補償の実行が有用であるが、デッドタイム補償の実施に際しては、一般的に交流の相電流の極性の判定が必要となる。ここで、回転電機(80)が低トルクで駆動されている場合など、相電流の振幅が小さく、相電流の波高が相電流の振幅中心に近い場合には、相電流の極性の判定に高い精度が求められたり、判定精度によっては判定の信頼性が低下したりする可能性がある。本構成によれば、電流指令(Id*,Iq*)は、電機子電流(Ia)が下限電流(Ia_min)以上となるように決定されることになる。電機子電流(Ia)が小さくなることを規制することで、相電流の振幅の大きさを確保できる。即ち、相電流の極性の判定が充分に可能となるように相電流の振幅を確保することができる。電機子電流(Ia)の大きさが下限電流(Ia_min)以上の場合には、電機子電流(Ia)は規制されないから、回転電機(80)の運転効率に対する影響は、電機子電流(Ia)の大きさが下限電流(Ia_min)未満の場合に限定される。従って、本構成によれば、回転電機(80)の運転効率に対する影響を抑制しつつ、デッドタイムによる電圧誤差を低減して、電気的に回転電機(80)の磁極位置(θ)を精度良く導出することができるセンサレス磁極位置検出技術が実現される。

0062

一般的に、回転電機(80)の制御に際しては、基本制御として、電機子電流(Ia)に対して最大トルクを出力する最大トルク制御や、電機子電流(Ia)に対して最大効率で回転電機を駆動する最大効率制御などが行われる。この際には、例えばdq軸ベクトル座標系において、最大トルクを出力する動作点のベクトル軌跡(例えば最大トルク制御線(400))や、最大効率で回転電機(80)を駆動する動作点のベクトル軌跡(例えば最大効率制御線)などの線上に動作点を設定し、当該動作点における電流値が電流指令電流指令(Id*,Iq*)として決定される。一方、電機子電流(Ia)の大きさが予め規定された下限電流(Ia_min)以上となるように、電流指令電流指令(Id*,Iq*)を決定するためには、電機子電流(Ia)が下限電流(Ia_min)となる動作点のベクトル軌跡(例えば定電流円(201〜203))の線上に動作点を設定する必要がある。従って、回転電機制御装置(1)は、少なくともそのような2種類の動作点に基づく制御が可能なように構成されていることが好ましい。尚、ここでは理解を容易にするためにベクトル軌跡や動作点を例示したが、実際の制御において動作点の設定が必須であることを意味するものではない。1つの好適な態様として、回転電機制御装置(1)は、前記回転電機(80)の出力トルクに応じて、前記電機子電流(Ia)の大きさが最も小さくなるように前記電流指令電流指令(Id*,Iq*)を決定する基本制御と、前記基本制御における前記電機子電流(Ia)の大きさが前記下限電流(Ia_min)を下回る場合に、前記電機子電流(Ia)の大きさが前記下限電流(Ia_min)となるように前記電流指令電流指令(Id*,Iq*)を決定する定電流制御と、を実行可能であり、前記電機子電流(Ia)の大きさに応じて、前記基本制御と前記定電流制御とを切り替えて実行するとよい。

0063

ここで、回転電機制御装置(1)は、前記回転電機(80)が回転を始める際には、前記電機子電流(Ia)をゼロから少なくとも前記下限電流(Ia_min)まで階段状に増加させ、前記回転電機(80)が停止する際には、前記電機子電流(Ia)を少なくとも前記下限電流(Ia_min)からゼロまで階段状に減少させると好適である。この構成によれば、低トルク領域においても、適切に下限電流Ia_min以上の電流指令が設定される。

0064

デッドタイム(Td)に起因する交流電圧の誤差は、インバータ(7)の直流側の電圧(直流リンク電圧(Vdc))、及スイッチング素子(3)をスイッチング制御する際の制御パルスの周波数(変調時の変調周波数)、及びデッドタイム(Td)の期間に比例する。従って、直流リンク電圧Vdc)が低い場合には、デッドタイム(Td)に起因する交流電圧の誤差は小さくなり、センサレス制御によって磁極位置(θ)を導出して検出する際に与える影響も小さくなる。そのように、磁極位置(θ)の導出に与える影響が少ない場合にも電機子電流(ia)を必要以上に多く流すと、損失が増大する。従って、下限電流(Ia_min)の値は、直流リンク電圧(Vdc)に応じて設定されると好適である。即ち、1つの態様として、回転電機制御装置(1)は、前記インバータ(7)の直流側の電圧である直流リンク電圧(Vdc)が予め規定された下限直流リンク電圧(Vdc_min)以上の場合において、前記下限電流(Ia_min)は、前記直流リンク電圧(Vdc)が大きくなるに従って連続的又は段階的に大きくなるように設定されていると好適である。

0065

回転電機(80)のロータの回転によって生じる誘起電圧は、ロータの回転速度(ω)に比例して大きくなる。ロータの回転によって生じる誘起電圧に基づいて磁極位置(θ)を演算して検出する場合、誘起電圧が交流電圧の誤差に対して充分大きければ、磁極位置(θ)の導出に際して当該誤差を無視することができるようになる。そのように、磁極位置(θ)の導出に与える影響が少ない場合にも電機子電流(Ia)を必要以上に多く流すと、損失が増大する。誘起電圧は、ロータの回転速度(ω)が高くなるに従って大きくなるので、回転速度(ω)に応じて下限電流(Ia_min)の値が設定されると好適である。即ち、1つの態様として、回転電機制御装置(1)は、前記ロータの回転速度(ω)が予め規定された下限回転速度(ω_min)以上の場合において、前記下限電流(Ia_min)は、前記回転速度(ω)が大きくなるに従って連続的又は段階的に小さくなるように設定されていると好適である。

0066

また、回転電機制御装置(1)は、前記下限電流(Ia_min)が、前記デッドタイム補償が可能な最低電流値以上に設定されていると好適である。デッドタイム(Td)が磁極位置(θ)の導出に与える影響を低減する上では、デッドタイム補償を確実に実施することができることが好ましい。下限電流(Ia_min)が、デッドタイム補償が可能な最低電流値以上に設定されることによって、デデッドタイム補償を確実に実施して、デッドタイム(Td)による電圧誤差を低減して、電気的に回転電機(80)の磁極位置(θ)を精度良く導出することができる。

0067

本発明は、永久磁石が配置されたロータを備え、直流と交流との間で電力変換を行うインバータを介して駆動される回転電機を制御対象とする回転電機制御装置に利用することができる。

0068

1 :回転電機制御装置
3 :IGBT(スイッチング素子)
7 :インバータ
80 :回転電機
90 :車両ECU
Ia :電機子電流
Ia_min:下限電流
Id* :d軸電流指令(電流指令)
Iq* :q軸電流指令(電流指令)
Td :デッドタイム(デッドタイム期間)
Vd :d軸電圧指令
Vdc :直流リンク電圧
Vdc_min:下限直流リンク電圧
ΔV :誤差
θ :磁極位置
θ^ :推定磁極位置(磁極位置)
ω :回転速度
ω^ :推定回転速度(回転速度)
ω_min:下限回転速度

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