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技術 リポタンパクの分析方法

出願人 岡崎三代
発明者 岡崎三代
出願日 2015年4月2日 (4年4ヶ月経過) 出願番号 2016-511999
公開日 2017年4月13日 (2年4ヶ月経過) 公開番号 WO2015-152371
状態 特許登録済
技術分野 生物学的材料の調査,分析 クロマトグラフィによる材料の調査、分析
主要キーワード 逆数関数 ガウス分布曲線 有色成分 実測値データ 基準体積 CE値 スカイライト ガウス近似
関連する未来課題
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この項目の情報は公開日時点(2017年4月13日)のものです。
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図面 (18)

課題・解決手段

本発明によれば、試料中に含まれるリポタンパクトータルコレステロール及びトリグリセリド濃度を用いて、コレステロールエステル又はフリーコレステロール濃度を算出することができる。また、本発明によれば、ある分画でのリポタンパク粒子サイズを用いて、当該分画におけるリポタンパクの粒子濃度を算出することができる。本発明においては、被験試料に含まれるトータルコレステロール(Cho)濃度及びトリグリセリド(TG)濃度を検出する。検出されたCho濃度及びTG濃度を用いてコレステロールエステル(CE)濃度又はフリーコレステロール(FC)濃度を算出する。さらに、算出されたコレステロールエステル(CE)濃度又はフリーコレステロール(FC)濃度を用いて、ある分画におけるリポタンパクの粒子濃度を算出できる。

概要

背景

下記特許文献1には、被験試料に含まれるリポタンパクを、ゲル濾過液体クロマトグラフィー法により粒子サイズに依存して分離し、その後、分離したリポタンパクに含まれるコレステロール及びトリグリセリドトリアシルグリセロール)を定量する方法が記載されている。この方法によれば、得られたクロマトグラムを、ガウス分布曲線近似法等の波形処理によって、カイロミクロン超低比重リポタンパク低比重リポタンパク及び高比重リポタンパクに分画することができる。

下記特許文献2には、ゲル濾過液体クロマトグラフィー法により被験試料に含まれるリポタンパクを粒子サイズに依存して分離し、その後、分離したリポタンパクに含まれるコレステロール及びトリグリセリドを定量する方法において、リポタンパクを20個のサブクラスに分離する方法が開示されている。

しかしながら、特許文献2に開示された分離方法は、特定のカラムを使用した場合にのみ適用され、20個のサブクラスに関する各ピーク位置(すなわち粒子サイズ)についても根拠となる理論的裏付けのないものであった。例えば、LDL(low density lipoprotein)の粒子サイズについても、GGE法ポリアクリルアミド密度勾配ゲル電気泳動法)では25.5nmをカットオフ値に設定し、NMR法では電子顕微鏡で観察したサイズを基準にして20nm程度と設定し、ゲルろ過FPLC法ではGGE法におけるサイズを基準にして25.5nmと設定し、ゲルろ過HPLCではラテックスビーズ球状タンパク質を基準にして25.5nmと設定している。また、光散乱法を基準にすれば、これらサイズの見積もり方によってまちまちの値になる。さらに、超遠心平衡法分子量を求めてサイズを計算すれば、また別の値になる。

したがって、粒子サイズを基準にしてリポタンパクのサブクラスを規定し、血清サンプルに含まれるリポタンパクをサブクラス間で比較する事は混乱を生じることなる。

そこで、本発明者は、下記特許文献3において、
・リポタンパク代謝に起因してVLDL、LDL及びHDLサイズの範囲が狭いと考えられる代謝異常患者などにおいて観測されるピークの位置を基準にすること;
・この基準位置を使用することによって、分離能分離範囲の異なるゲルろ過カラムを使った場合であっても、複数のサンプルにおけるサブクラス間の比較が可能となること
を提案した。これにより、20個のサブクラスにおけるコンポーネントピークを、カラムの種類に依存しない形態で決定することが可能となった。

概要

本発明によれば、試料中に含まれるリポタンパクのトータルコレステロール及びトリグリセリド濃度を用いて、コレステロールエステル又はフリーコレステロール濃度を算出することができる。また、本発明によれば、ある分画でのリポタンパク粒子サイズを用いて、当該分画におけるリポタンパクの粒子濃度を算出することができる。本発明においては、被験試料に含まれるトータルコレステロール(Cho)濃度及びトリグリセリド(TG)濃度を検出する。検出されたCho濃度及びTG濃度を用いてコレステロールエステル(CE)濃度又はフリーコレステロール(FC)濃度を算出する。さらに、算出されたコレステロールエステル(CE)濃度又はフリーコレステロール(FC)濃度を用いて、ある分画におけるリポタンパクの粒子濃度を算出できる。

目的

本発明の第1の目的は、試料中のリポタンパクのトータルコレステロール及びトリグリセリド濃度を用いて、コレステロールエステル又はフリーコレステロール濃度を算出することである

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

被験試料に含まれるリポタンパクトータルコレステロール(Cho)濃度及びトリグリセリド(TG)濃度を検出するステップと、前記トータルコレステロール濃度及びトリグリセリド濃度を用いてコレステロールエステル(CE)濃度又はフリーコレステロール(FC)濃度を算出するステップと、を備えることを特徴とする、リポタンパクの分析方法

請求項2

前記コレステロールエステル濃度の算出は、前記トータルコレステロール濃度と、トリグリセリド濃度と、コレステロールエステル濃度又はフリーコレステロール濃度との間でのモデル化された関係を用いて行われている請求項1に記載のリポタンパクの分析方法。

請求項3

前記モデル化された関係とは、次の式である、請求項2に記載のリポタンパクの分析方法:y=b1/x +b0(1)ただし、x:Cho/(Cho+TG)y:CE/Chob1:係数b0:定数Cho:トータルコレステロール濃度TG:トリグリセリド濃度CE:コレステロールエステル濃度である。

請求項4

前記モデル化された関係とは、次の式である、請求項2に記載のリポタンパクの分析方法:y=b1x'+ b0(2)ただし、x':(Cho+TG)/Choy:CE/Chob1:係数b0:定数Cho:トータルコレステロール濃度TG:トリグリセリド濃度CE:コレステロールエステル濃度である。

請求項5

前記モデル化された関係とは、次の式である、請求項2に記載のリポタンパクの分析方法:y'=b2×x''2+b1'×x''+b0'(5)ただし、x'':Cho/(TG+Cho)×100y':CE/(TG+CE)×100b2:係数b1':係数b0':定数Cho:トータルコレステロール濃度TG:トリグリセリド濃度CE:コレステロールエステル濃度である。

請求項6

前記トータルコレステロール濃度の検出と、前記コレステロールエステル濃度又はフリーコレステロール濃度の算出とが、リポタンパクの粒子サイズに基づく分画ごとに行われる請求項1〜5のいずれか1項に記載のリポタンパクの分析方法。

請求項7

前記コレステロールエステル(CE)を内部に含むリポタンパクの粒子濃度を算出するステップをさらに含んでおり、前記粒子濃度の算出は、tVc/基準Vcにより実行される、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリポタンパクの分析方法、ここで、tVc=tVtg+tVce+tVfcc;tVc:被験試料中のある分画での全リポタンパクのコアー体積の総和;tVtg:前記分画での全リポタンパクのコアー中のトリグリセリドの体積の総和;tVce:前記分画での全リポタンパクのコアー中のコレステロールエステルの体積の総和;tVfcc:前記分画での全リポタンパクのコアー中のフリーコレステロールの体積の総和;基準Vc:前記分画におけるリポタンパクの粒子1個のコアー体積である。

請求項8

前記粒子濃度の算出が、リポタンパクの粒子サイズに基づく分画ごとに行われる請求項7に記載のリポタンパクの分析方法。

請求項9

被験試料に含まれるリポタンパクのトータルコレステロール(Cho)濃度及びトリグリセリド(TG)濃度を検出する検出部と、前記トータルコレステロール濃度及びトリグリセリド濃度を用いてコレステロールエステル(CE)濃度又はフリーコレステロール(FC)濃度を算出する算出部と、を備えることを特徴とする、リポタンパクの分析装置

請求項10

請求項1〜8のいずれか1項に記載の分析方法におけるステップをコンピュータにより実行するためのコンピュータプログラム

技術分野

0001

本発明は、リポタンパク分析方法に関するものである。特に、本発明は、リポタンパクの分析により得られた実測データから、コレステロールエステル又はフリーコレステロールの濃度、更にはリポタンパクの粒子濃度を高い信頼性で算出できる技術に関するものである。

背景技術

0002

下記特許文献1には、被験試料に含まれるリポタンパクを、ゲル濾過液体クロマトグラフィー法により粒子サイズに依存して分離し、その後、分離したリポタンパクに含まれるコレステロール及びトリグリセリドトリアシルグリセロール)を定量する方法が記載されている。この方法によれば、得られたクロマトグラムを、ガウス分布曲線近似法等の波形処理によって、カイロミクロン超低比重リポタンパク低比重リポタンパク及び高比重リポタンパクに分画することができる。

0003

下記特許文献2には、ゲル濾過液体クロマトグラフィー法により被験試料に含まれるリポタンパクを粒子サイズに依存して分離し、その後、分離したリポタンパクに含まれるコレステロール及びトリグリセリドを定量する方法において、リポタンパクを20個のサブクラスに分離する方法が開示されている。

0004

しかしながら、特許文献2に開示された分離方法は、特定のカラムを使用した場合にのみ適用され、20個のサブクラスに関する各ピーク位置(すなわち粒子サイズ)についても根拠となる理論的裏付けのないものであった。例えば、LDL(low density lipoprotein)の粒子サイズについても、GGE法ポリアクリルアミド密度勾配ゲル電気泳動法)では25.5nmをカットオフ値に設定し、NMR法では電子顕微鏡で観察したサイズを基準にして20nm程度と設定し、ゲルろ過FPLC法ではGGE法におけるサイズを基準にして25.5nmと設定し、ゲルろ過HPLCではラテックスビーズ球状タンパク質を基準にして25.5nmと設定している。また、光散乱法を基準にすれば、これらサイズの見積もり方によってまちまちの値になる。さらに、超遠心平衡法分子量を求めてサイズを計算すれば、また別の値になる。

0005

したがって、粒子サイズを基準にしてリポタンパクのサブクラスを規定し、血清サンプルに含まれるリポタンパクをサブクラス間で比較する事は混乱を生じることなる。

0006

そこで、本発明者は、下記特許文献3において、
・リポタンパク代謝に起因してVLDL、LDL及びHDLサイズの範囲が狭いと考えられる代謝異常患者などにおいて観測されるピークの位置を基準にすること;
・この基準位置を使用することによって、分離能分離範囲の異なるゲルろ過カラムを使った場合であっても、複数のサンプルにおけるサブクラス間の比較が可能となること
を提案した。これにより、20個のサブクラスにおけるコンポーネントピークを、カラムの種類に依存しない形態で決定することが可能となった。

先行技術

0007

特開平9−15225号公報
特開2002−139501号公報
国際公開第2006/057440号公報

発明が解決しようとする課題

0008

ところで、前記したコレステロールの値は、トータルコレステロール(Cho)の濃度である。Choは、脂肪酸と結合したコレステロールエステル(CE)と、脂肪酸と結合していないフリーコレステロール(FC)とからなる。CE又はFCの濃度を個別に測定できれば、疾患状態の判定や、疾患(例えば動脈硬化)の作用機序解明に役立つことが期待される。

0009

しかしながら、従来、CEやFCの濃度を個別に測定するには、特殊な手順を必要としており、測定時間や測定コストが大きくなるという問題があった。

0010

一方、本発明者は、リポタンパクの特定についてさらに研究を進めたところ、以下の知見を得た:
試料中のリポタンパクのCho及びトリグリセリド(TG)濃度と、CE濃度との間に、一定の相関があること;
・ある分画のリポタンパクの粒子サイズとCE濃度が取得できれば、当該分画におけるリポタンパクの粒子濃度を算出可能であること。

0011

本発明は、前記の知見に鑑みてなされたものである。本発明の第1の目的は、試料中のリポタンパクのトータルコレステロール及びトリグリセリド濃度を用いて、コレステロールエステル又はフリーコレステロール濃度を算出することである。本発明の第2の目的は、ある分画のリポタンパク粒子サイズをさらに用いて、当該分画におけるリポタンパクの粒子濃度を算出することである。

課題を解決するための手段

0012

前記した課題を解決する手段は、以下の項目のように記載できる。

0013

(項目1)
被験試料に含まれるリポタンパクのトータルコレステロール(Cho)濃度及びトリグリセリド(TG)濃度を検出するステップと、
前記Cho濃度及びTG濃度を用いてコレステロールエステル(CE)濃度又はフリーコレステロール(FC)濃度を算出するステップと、
を備えることを特徴とする、リポタンパクの分析方法。

0014

(項目2)
前記CE濃度の算出は、前記Cho濃度と、TG濃度と、CE濃度又はFC濃度との間でのモデル化された関係を用いて行われている
項目1に記載のリポタンパクの分析方法。

0015

(項目3)
前記モデル化された関係とは、次の式である、項目2に記載のリポタンパクの分析方法:
y=b1/x +b0 (1)
ただし、
x : Cho/(Cho+TG)
y : CE/Cho
b1:係数
b0:定数
である。

0016

項目3において、前記モデル化された関係とは、前記式(1)と等価な関係を含む。

0017

(項目4)
前記モデル化された関係とは、次の式である、項目2に記載のリポタンパクの分析方法:
y=b1x '+b0 (2)
ただし、
x' : (Cho+TG)/Cho
y : CE/Cho
b1:係数
b0:定数
である。

0018

項目4において、前記モデル化された関係とは、前記式(2)に等価な関係を含む。

0019

(項目5)
前記モデル化された関係とは、次の式である、項目2に記載のリポタンパクの分析方法:
y'=b2×x''2+b1'×x''+b0' (5)
ただし、
x'' : Cho/(TG+Cho)×100
y' : CE/(TG+CE)×100
b2:係数
b1':係数
b0':定数
である。

0020

項目5において、前記モデル化された関係とは、前記式(5)に等価な関係を含む。

0021

(項目6)
前記Cho濃度の検出と、前記CE濃度又はFC濃度の算出とが、リポタンパクの粒子サイズに基づく分画ごとに行われる
項目1〜5のいずれか1項に記載のリポタンパクの分析方法。

0022

(項目7)
前記コレステロールエステル(CE)を内部に含むリポタンパクの粒子濃度を算出するステップをさらに含んでおり、
前記粒子濃度の算出は、tVc/基準Vcにより実行される、項目1〜6のいずれか1項に記載のリポタンパクの分析方法、
ここで、
tVc=tVtg+tVce+tVfcc;
tVc:被験試料中のある分画での全リポタンパクのコアー体積の総和;
tVtg:前記分画での全リポタンパクのコアー中のトリグリセリドの体積の総和;
tVce:前記分画での全リポタンパクのコアー中のコレステロールエステルの体積の総和;
tVfcc:前記分画での全リポタンパクのコアー中のフリーコレステロールの体積の総和;
基準Vc:前記分画におけるリポタンパクの粒子1個のコアー体積
である。

0023

(項目8)
前記粒子濃度の算出が、リポタンパクの粒子サイズに基づく分画ごとに行われる項目7に記載のリポタンパクの分析方法。

0024

(項目9)
被験試料に含まれるリポタンパクのトータルコレステロール(Cho)濃度及びトリグリセリド(TG)濃度を検出する検出部と、
前記Cho濃度及びTG濃度を用いてコレステロールエステル(CE)濃度又はフリーコレステロール(FC)濃度を算出する算出部と、
を備えることを特徴とする、リポタンパクの分析装置

0025

(項目10)
項目1〜8のいずれか1項に記載の分析方法におけるステップをコンピュータにより実行するためのコンピュータプログラム

発明の効果

0026

本発明によれば、試料中のリポタンパクのトータルコレステロール及びトリグリセリド濃度を用いて、コレステロールエステル又はフリーコレステロールの濃度を算出することができる。また、本発明によれば、さらに、ある分画におけるリポタンパク粒子サイズを用いて、当該分画におけるリポタンパクの粒子濃度を算出することも可能になる。

図面の簡単な説明

0027

本発明の一実施形態に用いるリポタンパクの分析装置の一例についての概略的な説明図である。
横軸を検出時間(min)とし、縦軸検出値mV)としたときの、Cho及びTGに関するクロマトグラムである。
G1〜G20からなる20個のピークのうち、G5、G6、G7、G9、G10、G15、G17及びG18をアンカーピークとして定義する際の根拠となるデータの例を示す説明図である。
図3とは異なるカラムを用いて得られたデータの例を示す説明図である。
図4とはさらに異なるカラムを用いて得られたデータの例を示す説明図である。
ガウス近似により20個のピークに分割した解析例を示す説明図である。図6aは図2のCho、図6bは図2のTGのクロマトグラムに対応している。
実測Cho/(実測TG+実測Cho)をx、実測のCE/Choをyとしたときの回帰モデルを示す説明図である。
実測のCho値及びTG値を用いた(Cho+TG)/Cho又は(1+TG/Cho)をxとし、実測のCE値を用いたCE/Choをyとしたときの回帰モデルを示す説明図である。
回帰モデルを前提として算出されたCE値をyとし、実測のCE値をxとしたときの散布図である。
球状リポタンパクにおける油滴モデルを説明するための説明図であって、G01からG13分画におけるモデルの図である。
球状リポタンパクにおける油滴モデルを説明するための説明図であって、G14からG20分画におけるモデルの図である。
リポタンパク分析装置のカラムとしてXLカラム(TSKgel Lipopropak XLカラム)とシリカカラム(SkylightPak-LDLカラム)を用いた実測値を用いて、本実施形態の方法により粒子濃度を計算した結果を対比して示す説明図である。
XLカラムとSupカラム(Superose 6HR 10/30カラム)を用いた場合における、図11と同様の結果を対比して示す説明図である。
実測Cho/(実測TG+実測Cho)%をx''とし、実測CE/(実測TG+実測CE)%をy'としたときの二次回帰モデルを示す説明図である。
図14の左側は、実測のアポB分子濃度と本発明の実施形態により算出したアポB含有リポタンパク粒子濃度との相関を示すグラフである。図14の右側は、実測のアポA-I分子濃度と本発明の実施形態により算出したアポA-I含有リポタンパク粒子濃度との相関を示すグラフである。
健常者コントロール)およびCETP欠損症患者の検体におけるアポB重量濃度とアポB含有リポタンパク粒子濃度との相関についての、補正前後の結果を示すグラフである。
健常者(コントロール)およびCETP欠損症患者の検体におけるアポB重量濃度とアポB含有リポタンパク粒子濃度との相関についての、別の補正方法による補正前後の結果を示すグラフである。

実施例

0028

以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。

0029

(リポタンパク分析装置の構成)
まず、説明の前提として、本実施形態に用いるリポタンパクの分析装置の一例を、図1に基づいて説明する。

0030

この装置は、図1に示すように、被験試料に含まれるリポタンパク成分を分離するためのカラム1と、カラム1から溶出されたリポタンパクを含む溶離液を二つに分配するスプリッター2と、スプリッター2によって分配された第1流路3及び第2流路4と、第1流路3に配置されたトータルコレステロール(以下「Cho」と称する)反応部5と、第2流路4に配置されたトリグリセリド(以下「TG」と称する)反応部6と、第1流路3におけるCho反応部5の下流に配置されたCho検出部7と、第2流路4におけるTG反応部6の下流に配置されたTG検出部8と、本装置動作制御を行い、かつCho検出部7及びTG検出部8から信号が入力されるシステムコントローラ9と、システムコントローラ9に接続された演算装置10とを備えている。ここで、被験試料とは、特に限定されず、血清血漿髄液組織液及びリンパ液等の生体由来液体サンプル、並びに細胞培養系由来分泌粒子を含有するサンプルを意味する。

0031

また、図1の装置は、血清試料をカラム1に供給するサンプラ11と、カラム1に溶離液を供給するための第1ポンプ12と、第1ポンプ12によってカラム1に供給する溶離液から気体を除去するデガッサー13とをさらに備えている。

0032

図1の装置で使用できるカラム1としては、特に限定されないが、ゲルろ過用充填剤充填してなるカラムを用いることが特に好ましい。特に、カラム1としては、800〜1200オングストローム平均細孔径の充填剤を有するものを例示できる。平均細孔径が800オングストローム未満の充填剤ではCMやVLDLなどの分子サイズの大きいリポタンパクは細孔内に入り難くなり、一方、平均細孔径が1200オングストロームを超える充填剤ではLDLやHDLなどの分子サイズの小さいリポタンパクの分離が悪化するため、前述の通り平均細孔径が800〜1200オングストロームのものが好ましい。中でも平均細孔径が900〜1100オングストロームの充填剤は、分離能に優れるため、最終的により精度の高いリポタンパクの分析を行うことを可能とする。

0033

また、充填剤としては、液体クロマトグラフィーでの使用に充分耐える機械的強度を有するものを選択する必要がある。このような充填剤は、例えば、シリカゲルポリビニルアルコールポリヒドロキシメタクリレート及びその他の親水性樹脂基材とするもの(例えばTSKgel Lipopropak、商品名、東ソー(株)製)を一例として示すことができる。

0034

溶離液としては、リン酸緩衝液トリス緩衝液ビス−トリス緩衝液等を例示できるが、リポタンパクを分離できるものであれば特に制限はない。緩衝液の濃度としては20〜200mM、特に好ましくは50〜100mMの範囲が良い。緩衝液の濃度が20mM未満では緩衝能が小さく、200mMを超えると後述の酵素試薬とCho又はTGの反応が阻害される恐れが生じるからである。緩衝液のpHは、5〜9、特に好ましくは7〜8である。緩衝液のpHが5未満、あるいはpHが9を超えると、前記同様、酵素試薬との反応が阻害される恐れが生じるからである。しかし、Cho及び/又はTGの測定を、酵素を用いないで行う場合等はこの限りではない。

0035

Cho反応部5は、カラム1から溶出されたリポタンパクを含む溶離液に含まれるChoを定量するための試薬を備えるCho用試薬タンク14と、第2ポンプ15を介して連結されている。ここで、Choを定量するための試薬としては、特に限定されないが、例えば、コレステロールエステラーゼコレステロールオキシダーゼパーオキシダーゼなどの酵素と、N-エチル-N-(3-メチルフェニル)-N'-サクシニルエチレンジアミン4-アミノアンチピリン、N-エチル-N-(3-スルホプロピル)-m-アニシジンなどの色素とを組み合わせた酵素−色素試薬を用いることができる。試薬としては、例えば、市販のデタミナーLTCII(協和デックス株式会社)、LタイプCHO・H(和光純薬工業株式会社)試薬を好適に用いることができる。なお、これらの試薬は、Choと反応して、蛍光検出器紫外可視検出器などの分光器で検出可能な蛍光や吸収を有する反応生成物を与える。

0036

TG反応部6は、カラム1から溶出されたリポタンパクを含む溶離液に含まれるTGを定量するための試薬を備えるTG用試薬タンク16と、第2ポンプ15を介して連結されている。ここで、TGを定量するための試薬としては、特に限定されないが、例えば、アスコルビン酸オキシダーゼグリセロールキナーゼグリセロール−3リン酸オキシダーゼリポプロテインリパーゼ及びパーオキシダーゼ等の酵素と、キノン発色色素等の色素とを組み合わせた酵素−色素試薬を用いることができる。キノン系発色色素としては、N−エチル−N−(3−メチルフェニル)−N'−サクシニルエチレンジアミン又はN−エチル−N−(3−スルホプロピル)−m−アニシジンと4−アンチアミノピリジン酸化縮合体が挙げられる。試薬としては、例えば、市販のデタミナーLTGII(協和メデックス株式会社)、LタイプTG・H(和光純薬工業株式会社)試薬を好適に用いることができる。

0037

なお、これら、Cho反応部5及びTG反応部6は、上述した試薬とCho又はTGとの反応温度を制御するための反応コイルをそれぞれ備えている。Cho反応部5及びTG反応部6において、上述した試薬とCho又はTGとの反応温度は、35〜50℃、好ましくは45〜50℃とする。反応温度が35℃未満では反応が不十分になりやすく、また、50℃を超えると反応中に酵素が劣化する恐れが生じるからである。

0038

Cho検出部7は、Cho反応部5でChoと試薬とが反応して生成した反応生成物の吸光度を検出するための、例えば紫外可視光検出器(図示せず)を備えている。また、TG検出部8は、TG反応部6でTGと試薬とが反応して生成した反応生成物の吸光度を検出するための、例えば紫外可視光検出器(図示せず)を備えている。例えば、上述した試薬としてキノン系発色色素を用いた場合、紫外可視検出器の測定波長は、540〜560nmとすれば良い。

0039

システムコントローラ(クロマトグラム生成部)9は、Cho検出部7及びTG検出部8からの出力信号が入力され、Choに関するクロマトグラム及びTGに関するクロマトグラムを結果として出力する機能を備えている。システムコントローラ9から出力されるクロマトグラムとしては、例えば、図2に示すように、横軸を検出時間(min)とし、縦軸を検出値(mV)として、Choに関するクロマトグラムとTGに関するクロマトグラムとを重ねて表示することができる。

0040

演算装置10としては、例えば、後述する分析プログラムインストールしたコンピュータを使用することができる。演算装置10は、システムコントローラ9に接続されており、システムコントローラ9から出力されるクロマトグラムを分析プログラムによってデータ処理し、被験試料に含まれるリポタンパクを20個のコンポーネントピークに分離するとともにCho量及びTG量を算出する機能を有する。なお、この演算装置10は、インターネット、LAN或いはイントラネット等の情報通信回線網を介してシステムコントローラ9と接続されていても良い。

0041

(リポタンパク分析装置の動作)
上述したリポタンパク分析装置によれば、先ず、カラム1によって粒子サイズに依存して各種リポタンパクを分離し、その後、カラム1から溶出された溶出液に含まれるCho及びTGを定量している。したがって、リポタンパク分析装置によれば、カラム1の分離能に依存して、リポタンパクのサブクラス毎にCho及びTGを定量することができる。

0042

リポタンパクは、その粒子の大きさ、水和密度、及び電気泳動度などの性質の違いにより幾つかのクラスに分類されている。本分析装置においては、以下に説明する分析プログラムに従って、血清試料に含まれるリポタンパクを20個のコンポーネントピークに分離する。

0043

以下、分析プログラムについて説明する。分析プログラムは、第1ステップ及び第2ステップからなる手順に従って演算装置10を制御する。

0044

(分析の第1ステップ)
先ず、第1ステップでは、演算装置10の入力手段を介してシステムコントローラ9から出力されるクロマトグラムを入力信号として入力する。すなわち、分析プログラムは、第1ステップによって、システムコントローラ9から出力されるクロマトグラムを入力信号として入力する検出手段としてコンピュータを実行させる。

0045

第1ステップを詳細に説明すると、先ず、演算装置10の入力手段を介して、図2に示したようなChoに関するクロマトグラムとTGに関するクロマトグラムとを入力すると、例えば、演算装置10に内在する記憶装置或いは演算装置10により記録可能な記録媒体にこれらクロマトグラム及び/又はクロマトグラムの基となる数値データが記憶される。

0046

(分析の第2ステップ)
次に、第2ステップでは、入力したクロマトグラムを波形処理して20個のサブクラスに分離し、ガウス近似波形を算出する。すなわち、分析プログラムは、第2ステップによって、ガウス近似波形を算出する波形処理手段としてコンピュータを実行させる。波形処理手段により、ステップ1で入力したクロマトグラムを20個の独立したピークに分離することができる。以下の説明において、20個の独立したピークを、サイズの大きいものから順にG1〜G20と称する。G1及びG2はカイロミクロン(CM)に相当するコンポーネントピークであり、G3〜G7は超低密度比重)リポタンパク(VLDL)に相当するコンポーネントピークであり、G8〜G13は低密度リポタンパク(LDL)に相当するコンポーネントピークであり、G14〜G20は高密度リポタンパク(HDL)に相当するコンポーネントピークである。VLDLに相当するコンポーネントピークの中で、G3〜G5は大VLDLであり、G6は中VLDLであり、G7は小VLDLである。LDLに相当するコンポーネントピークのなかで、G8は大LDLであり、G9は中LDLであり、G10は小LDLであり、G11〜G13は極小LDLである。HDLに相当するコンポーネントピークのなかで、G14及びG15は極大HDLであり、G16は大HDLであり、G17は中HDLであり、G18は小HDLであり、G19及びG20は極小HDLである。

0047

第2ステップにおける波形処理手段は、第1ステップで入力したクロマトグラム或いは数値データを20個のコンポーネントピークに分離して、G1〜G20を含むガウス近似波形を算出する処理を演算装置10に実行させる手段である。ここで、20個のコンポーネントピークは、リポタンパクのサイズにより分類されるコンポーネントピークである。

0048

20個のコンポーネントピークの各ピーク位置は、以下のように定義される。G1〜G20からなる20個のピークについて、先ず基準となるピーク(アンカーピーク)のピーク位置(溶出時間(検出時間))が決められ、次にアンカーピークを除くピーク(他の必須ピーク)のピーク位置が決められる。具体的に、一例として、G5、G6、G7、G9、G10、G15、G17及びG18をアンカーピークとし、G1〜G4、G8、G11〜G14、G16、G19及びG20を他の必須ピークとする。G5、G6、G7、G9、G10、G15、G17及びG18をアンカーピークとして定義する際の根拠となるデータの例を図3に示す。

0049

(アンカーピークの決定)
健常中年男性(30〜40代)の集団におけるVLDLサイズ、LDLサイズ、HDLサイズはある範囲の幅に分布することから、アンカーピークのうちG6、G9及びG17の溶出位置を決定する(図3(a)参照)。より具体的には、複数の健常中年男性(30〜40歳代)について、採取した血清試料を用いて図2に示したようなChoに関するクロマトグラム及びTGに関するクロマトグラムを取得する。取得したクロマトグラムには、大分類としてのVLDL、LDL及びHDLに相当するピークがこの順に出現している。複数の健常中年男性について取得したクロマトグラムにおける、VLDL、LDL及びHDLに相当するピーク位置の平均値を算出し、平均VLDLサイズ、平均LDLサイズ及び平均HDLサイズをそれぞれG6、G9及びG17の溶出位置(粒子サイズ)として定義する。

0050

また、リポタンパクリパーゼ活性が無いかまたは非常に低い症例では、TGリッチリポタンパクのトリグリセリドが分解されず、VLDLは大サイズのまま血中に留まっている。従ってリポタンパクリパーゼ活性が無いかまたは非常に低い症例の集団はVLDLのサイズは健常男性より有意に大きく、所定のサイズの範囲内に分布している。このVLDLの平均溶出位置を、アンカーピークのうちG5の溶出位置として定義する(図3(b)参照)。

0051

さらに、血中に存在するコレステロールエステル転送タンパクの働きによって、VLDLからLDLへトリグリセリドが渡され、その代わりにコレステロールエステルがLDLからVLDLに渡される。LDLはトリグリセリドリッチな粒子となり、肝性リパーゼによってLDL内のトリグリセリドが分解され、LDLは小型化する。この小型化されたLDLのサイズはリポタンパクリパーゼ活性が無いかまたは非常に低い症例の集団では、健常男性のLDLサイズより有意に小さく、あるサイズの範囲内に分布している。従って、このLDLの平均溶出位置を、アンカーピークのうちG10の溶出位置として定義する(図3(b)参照)。

0052

さらにまた、リポタンパクリパーゼ活性が無いかまたは非常に低い症例では、LDLやVLDLからHDLにトリグリセリドが渡され、その代わりにHDLからコレステロールエステルがLDLやVLDLに渡される。その結果、HDLはトリグリセリドリッチとなり、HDL内のトリグリセリドは肝性リパーゼによって分解されHDLは小型化する。したがって、リポタンパクリパーゼ活性が無いかまたは非常に低い症例の集団では、HDLのサイズは健常男性のHDLより有意にサイズ小さく、そのサイズもある範囲内に分布している。したがって、このHDLの平均溶出位置を、アンカーピークのうちG18の溶出位置として定義する(図3(b)参照)。

0053

さらにまた、コレステロールエステル転送タンパク欠損症ではHDLからLDLやVLDLにコレステロールエステルを渡し、その代わりにLDLやVLDLからトリグリセリドを受け取れないため、HDLはコレステロールエステルリッチになってそのサイズは大型化する。特にコレステロールエステル転送タンパク完全欠損症ではHDL中にはトリグリセリドがほとんど存在しない。コレステロールエステル転送タンパクの完全欠損症のHDLサイズは、健常男性より有意に大型化し、あるサイズの範囲内に分布している。したがって、このHDLの平均溶出位置を、アンカーピークのうちG15の溶出位置として定義する(図3(d)参照)。

0054

さらにまた、アポE2/2のIII型高脂血症例においては、アポEの158番目のArgがCysへ置換する事により、アポEをリガンドとするLDL受容体(アポB/E)、LDL受容体関連タンパク質、VLDL-受容体との結合領域がコンフォーメーション変異して、小VLDL(レムナント)の取り込みが低下し、血中に小VLDLに相当する成分が増加し、特異的なピークが観察される。従って、この症例群におけるVLDLの平均溶出位置を、アンカーピークのうちG7の溶出位置として定義する(図3(c)参照)。小VLDLの溶出位置は、超遠心分離によって1.006g/mlと1.019g/mlの間に密度を有する画分として、アポE2/2のIII型高脂血症例を含む複数の被験者から分離された中密度(比重)リポタンパク(IDL)に対応している(Shinichi Usui, Yukichi Hara, Seijin Hosaki, and Mitsuyo Okazaki, Journal of Lipid Research, Volume 43, p 805-814, (2002)参照)。さらに、IDL画分のコレステロール量は、本発明における小VLDLにおけるコレステロール量と高度に相関している。したがって、アンカーピークG7によって規定される小VLDLは、アポE2/2のIII型高脂血症例において顕著に増加しており、レムナントリポタンパク及び/又はIDLに対応している。

0055

図3に示したデータは、TSKgel Lipopropak XLカラム(東ソー(株)製)を使用して得られたデータであるが、アンカーピークとして定義する際の根拠となるデータとしては、他のカラムを使用して得られるデータを使用しても良い。

0056

例えば、図4に示すように、Superose 6HR 10/30カラム(アマシャムファルマシア社製)を用いて同様にデータを得ることができ、このデータに基づいてアンカーピークを定義することもできる。この場合、健常中年男性(30〜40歳代)プロファイルからG9及びG17の溶出位置を定義できる(図4(a))。リポタンパクリパーゼ活性が無いかまたは非常に低い症例のプロファイルからG10及びG18の溶出位置を定義できる(図4(b))。アポE2/2のIII型高脂血症例のプロファイルからG7の溶出位置を定義できる(図4(c))。コレステロールエステル転送タンパクの完全欠損症のプロファイルからG15の溶出位置を定義できる(図4(d))。

0057

更に、図5に示すように、SkylightPak-LDLカラム(スカイライトバイオテック社製)を用いて同様にデータを得ることができ、このデータに基づいてアンカーピークを定義することもできる。この場合、健常中年男性(30〜40歳代)プロファイルからG6、G9及びG17の溶出位置を定義することができる(図5(a))。リポタンパクリパーゼ活性が無いかまたは非常に低い症例のプロファイルからG10及びG18の溶出位置を定義することができる(図5(b))。アポE2/2のIII型高脂血症例のプロファイルからG7の溶出位置を定義できる(図5(c))。コレステロールエステル転送タンパクの完全欠損症のプロファイルからG15の溶出位置を定義できる(図5(d))。

0058

以上のようにして、G5、G6、G7、G9、G10、G15、G17及びG18をアンカーピークとして、それぞれの溶出位置を定義する。

0059

(他の必須ピークの決定)
次に、他の必須ピークについては、数学的にピークの位置と幅が決まるものである。他の必須ピークは、コンポーネントピークのサイズとその分布を固定した(つまり時間と幅を固定した)ガウス近似によるコンポーネントピークの解析をするために必要なピークである。他の必須ピークに相当するリポタンパクのサブクラスの分布幅は、LDLとHDLではほぼ同じと仮定し、アンカーピークの間をほぼ等間隔に埋めるもとする。G10とG15の間には4個の他の必須ピーク(ピーク11-14)を設定し、G7とG9の間には1個の他の必須ピーク(ピーク8)を設定し、G15とG17の間には1個の他の必須ピーク(ピーク16)を設定し、G18の後に2個の他の必須ピークピーク19-20)を設定する。なお、HDLに属する他の必須ピーク(ピーク16-20)の位置は、別のHDL専用カラムによる分析で、健常者集団のピーク観測頻度と再クロマトによる実験値との対応を参考に定義することができる。

0060

またコンポーネントピークのG8〜G20については、ほぼその位置は等間隔で幅も同等となるように決めた。さらにコンポーネントピークの2,3,4はVoidのピーク1とアンカーピークのG5の間におけるガウス近似をするために必要なピークで、ピーク間隔と幅の規則から決めた。

0061

さらに、コンポーネントピークの幅の最小値は、その分析系で得られる遊離グリセロール(分子量92のサイズが単一の粒子であり、図2中FGと表記)の幅とし、幅の最大値は隣り合うピーク間隔の2倍と定義することができる。

0062

20個のコンポーネントピークに対して、ピーク幅は、SD(分)=ピークの半値幅(秒)÷143で表される数値で設定することができる。具体的に20個のコンポーネントピークのピーク幅としては、G01について0.33min、G02について0.40min、G03について0.55min、G04について0.55min、G05について0.55min、G06について0.50min、G07について0.40min、G08について0.38min、G09について0.38min、G10について0.38min、G11について0.38min、G12について0.38min、G13について0.38min、G14について0.38min、G15について0.38min、G16について0.38min、G17について0.38min、G18について0.38min、G19について0.38min、G20について0.48minを入力或いは予め設定する。

0063

第2ステップにおける波形処理手段は、例えば、ガウス波形処理計算アルゴリズムを適用して実行することができる。ガウス波形処理計算アルゴリズムによれば、以下のようにして20個のコンポーネントピークに分離することができる。

0064

すなわち、先ず、クロマトグラム上の単一ピークの形を対称ガウス分布であると仮定すると、時刻tにおけるピークの高さh(t)は、
h(t)=H×exp(-(t-T)2/2σ2)
と書ける。ここで、Tはピーク位置であり、σは幅(標準偏差)であり、Hはピークの高さの最大値である。なお、ピーク形は他に、(1)Peason VII, (2)Lorentzian, (3)exponentially modified Gaussian, (4)Weibull, (5)bi-Gaussian, (6)poisson, (7)Gram-Charlier, (8)combination of Gauss and Cauchy functions, (9)combination of statistical moments, (10)cam-driven analog peakなどが知られており、これら(1)〜(10)のいずれかの形であると仮定することも可能である。

0065

そして、n番目のピークの高さhn(t)は、n番目のピークの位置Tn、幅(標準偏差)σnを用いて
hn(t)= Hn×exp(-(t-Tn)2/2σn2) …I
と書ける(Hnはn番目のピーク最大値(高さ))。

0066

ここで、exp(-(t-Tn)2/2σn2)=Gn(t)とおくと式Iは
hn(t)= Hn×Gn(t) …II
と書ける。

0067

N個のピークはそれぞれ独立であると仮定すると、時刻tにおける合成波形A(t)は、
A(t)=h1(t)+ h2(t)+・・・・+ hn-1(t)+ hn(t)
= H1×G1(t)+ H2×G2(t) + ・・・・+ Hn-1×Gn-1(t) + Hn×Gn(t) …III
となる。

0068

データポイント数をmとすると、III式は下のようにm個だけ書ける。
A(t1)= H1×G1(t1)+ H2×G2(t1) + ・・・・+ Hn-1×Gn-1(t1) + Hn×Gn(t1)
A(t2)= H1×G1(t2)+ H2×G2(t2) + ・・・・+ Hn-1×Gn-1(t2) + Hn×Gn(t2)
・・・・・
A(tm)= H1×G1(tm)+ H2×G2(tm) + ・・・・+ Hn-1×Gn-1(tm) + Hn×Gn(tm)

0069

時刻tにおける実際のクロマトグラム波形をR(t)とすると、R(t)=A(t)となるようなピーク数n、ピークの位置T、幅(標準偏差)σを求めるのが、curve fitting methodである。実際には、すべての時刻でR(t)=A(t)とはならないから、非線形最小二乗法により、 (R(t)-A(t))2の和が最小となるパラメータを求める。

0070

なお、curve fitting method以外でも、例えば、iterative method (FleTCher Powell, Marquardt, Newton-Raphson, Simplex minimization, Box-Complex methodなど)を適用することもできる。但し、curve fitting method以外の手法においては、initial valueが計算結果に影響を及ぼすこと、波形(GaussianなのかLorentzianなのか)をあらかじめ仮定しなければならないこと、ピーク数が大きいと(4個以上)収束が難しいこと、などが欠点とされている。したがって、いかに真の値に近い初期値を求めるかがポイントとなり、これらの欠点をクリアするためのピーク分離法として、(1)factor analysis、(2)moments analysis、(3)orthogonal polynominal analysis及び(4)inverse diffusion modelなどが最近報告され、これらを本アルゴリズムに適用することもできる。

0071

ここでti (i=1,2,・・・,m)は定数であるため、任意のGn(ti)も定数となる。すると上記III式は、
A(t1)= H1×G1(t1)+ H2×G2(t1) + ・・・・+ H19×Gn-1(t1) + H20×G20(t1)
A(t2)= H1×G1(t2)+ H2×G2(t2) + ・・・・+ H19×Gn-1(t2) + H20×G20(t2)
・・・・・
A(tm)= H1×G1(tm)+ H2×G2(tm) + ・・・・+ H19×G19(tm) + H20×G20(tm)
のようにm個できる。R(t)=A(t)とすると、未知数がH1、H2、・・・・、H19、H20の20個で構成される一次式がm個できることとなる。仮にm=20なら、一次連立方程式解くことにより解は求まる。

0072

実際のデータにおいてはデータポイント数が20ではないが、本アルゴリズムにおいては、高速処理するために計算しやすい20ポイント(例えば、20個のサブクラスにおけるピークの位置20ヵ所)を便宜的に選んで計算する。なお、本アルゴリズムにおいては、データポイント数を20ヶ所選択することに代えて、最小二乗法でパラメータを求めることも可能である。

0073

以上で説明した第1ステップ及び第2ステップからなる手順によれば、システムコントローラ9から出力されたクロマトグラム(例えば図2に示すクロマトグラム)を20個のサブクラスに分離することができる(図6)。20個のサブクラスに分離することによって得られるプロファイルは、内臓脂肪面積(VFA)との相関関係が顕著に見られることから、VFAの蓄積に起因する疾患のリスク検査する際に有効に利用される。

0074

内臓脂肪の蓄積に起因する疾患としては、例えば、虚血性心疾患を中心とする動脈硬化性疾患を挙げることができる。すなわち、近年、生活習慣変遷に伴って栄養過多運動不足に陥り、脂肪蓄積肥満を来たし、その結果、多数のリスクファクター集積を伴って虚血性心疾患を中心とする動脈硬化性疾患の増加を招いている。これはインスリン抵抗性を起こす遺伝的素因に肥満などの後天的因子が加わり、インスリン抵抗性が生じて発症するものである。上流に位置する成因基盤としては、腹腔内臓脂肪蓄積が重要である。肥満者はもちろん非肥満者においても腹腔内内臓脂肪の蓄積は糖尿病高血圧、高脂血症、冠動脈疾患(coronary artery disease (CAD))の発症に密接に関与している。したがって、内臓脂肪の蓄積に起因する疾患としては、糖尿病、高血圧、高脂血症、冠動脈疾患を挙げることができる。

0075

(本実施形態における油滴モデルの仮定)
以上の説明を前提として、本実施形態において被験試料中のCEまたはFCの濃度、あるいはリポタンパクの粒子濃度を算出するために、以下の参考文献を参考にリポタンパクの粒子構造モデルである「油滴モデル」を仮定する。

0076

(1)Yang CY, Gu ZW, Weng SA, Kim TW, Chen SH, Pownall HJ, Sharp PM, Liu SW, Li WH, Gotto AM Jr, et al. Structure of apolipoprotein B-100 of human low density lipoproteins. Arteriosclerosis 1989;9:96-108.
(2)Schumaker VN, Phillips ML, Chatterton JE. Apolipoprotein B and low-density lipoprotein structure: implications for biosynthesis of triglyceride-rich lipoproteins. Adv Protein Chem 1994;45:205-248.
(3)Segrest JP, GarberDW, BrouilletteCG, Harvey SC, AnantharamaiahGM. The amphipathic alpha helix: a multifunctional structural motif in plasma apolipoproteins. Adv Protein Chem 1994;45:205-248.
(4)McNamara JR, SmallDM, Li Z, Schaefer EJ. Differences in LDL subspecies involve alterations in lipid composition and conformational changes in apolipoprotein B. J Lipid Res 1996;37:1924-1935.

0077

以下、図10A、Bを参照しながら油滴モデルを説明する。油滴モデルでは、以下を仮定している。
球状粒子である;
表層(S)がリン脂質PL)、アポリポタンパク及び遊離コレステロール(FC)からなる;
・コアー(C)がトリグセリト(TG)及びコレステロールエステル(CE)からなる;
・アポBを含有するリポタンパク中のアポBの約15〜20%を占める疎水性部分は、コアーに存在する;
・表層に存在するFCの約6分の1はコアーに分配されている;
・粒子サイズが同じリポタンパクの表層(S)の体積とコアー(C)の体積との比はほぼ一定である;
・粒子サイズが同じリポタンパクの表層(S)中のFCが占める体積(Vfc)と、CEが占める体積(Vce)及びTGが占める体積(Vtg)からなるコアー(C)の体積(Vce+Vtg)との比(Vfc:Vce+Vtg)はほぼ一定である;
糖タンパクであるアポBには多くのO結合糖鎖が存在する。O結合糖鎖は全て球状リポタンパク粒子の表層外に突き出ており、アポB含有リポタンパクのS層(厚さts:図10A参照)のさらに外側に、糖鎖を含む水和層(OS、厚さtos)が存在する;
・アポBを含有するリポタンパク粒子1個にはアポB分子が1個含まれる;
・アポA-Iを含有するリポタンパク粒子1個にはアポA-I分子が平均1個以上(好ましくは平均1〜4個、さらに好ましくは平均2〜4個)含まれる。

0078

(本実施形態における重量濃度と体積の換算
ここで、図1のリポタンパク分析装置において、リポタンパク中の脂質は重量濃度mg/dLの単位で測定されている。一方、油滴モデルにおける単位は体積である。単位をそろえるために、まず重量をモル(mM)換算(すなわちmg/dL×10÷脂質の分子量)し、さらに偏比容(partial specific volume)より求めた以下の分子体積を用いて体積に換算する。

0079

各分子の偏比容は文献値から適宜導出でき、以下に各分子の分子体積の算出例を記載する。
TG:偏比容1.093, 分子量885.45, 分子体積1.607nm3
CE:偏比容1.058, 分子量651.1, 分子体積1.1443nm3
FC:偏比容0.968, 分子量386.7, 分子体積0.6223nm3
PL:偏比容0.970, 分子量775, 分子体積1.287nm3
アポB-100:偏比容0.740, 分子量550000, 分子体積 676.1nm3
アポB-48:偏比容0.740, 分子量264000, 分子体積 324.5nm3
アポA-I:偏比容0.740, 分子量28300, 分子体積34.8nm3

0080

なお、アポBにはアポB-48とアポB-100が存在するが、アポB-48は主にG01とG02に分離されるCMに存在するため、CMの基準Vc(後述)を計算する場合にアポB-48の値を使う以外は、前記アポBはアポB-100の値を用いる。

0081

(本実施形態におけるCE濃度の算出)
以上の説明を前提として、本実施形態におけるコレステロールエステル(CE)濃度の算出方法を、さらに図7を参照しながら説明する。

0082

(Cho及びTGの検出)
まず、図1のリポタンパク分析装置を用いて、被験試料に含まれるトータルコレステロール(Cho)濃度及びトリグリセリド(TG)濃度(mg/dl)を検出する。この検出手法は前記したとおりである。また、この検出は、リポタンパクの粒子サイズに基づく、既述した分画ごとに行われる。

0083

(CE濃度の算出)
ついで、検出されたCho濃度及びTG濃度を用いて、演算装置(算出部)10により、コレステロールエステル(CE)濃度を算出する。

0084

具体的には、CE濃度の算出は、Cho濃度、TG濃度およびCE濃度との間でのモデル化された関係を用いて行われる。以下、さらに具体的な算出例を、図7を参照しながら説明する。

0085

回帰式の特定)
まず、Choは脂肪酸と結合したCEと脂肪酸と結合していないFCとからなることから、実測のCE値とCho値の比CE/Choをyとする。一方、リポタンパクの主要成分であるChoとTGの実測値の和に占める実測Cho値の割合Cho/(Cho+TG)をxとする。リポタンパク構造を考えるうえで、xとyの間には相関関係があると仮定し、モデルを検討したところ、次の逆数関数フィッティングすることができた。
y=b1×1/x +b0 (0<x≦1.0, y≧0) (1)

0086

図7には、分画G06、G09、G17のそれぞれにおけるフィッティングの結果を、そのときの係数b1、定数b0の値と共に示す。

0087

図7でフィッティングに用いた実測値データは、健常者80名に対して得られたものである。また、図7中の矢印は、健常者80名の平均値を指しており、これをアンカー点として用いた。このフィッティングにおいては、回帰式の表す曲線がアンカー点を必ず通ること、Cho分子数がCE分子数とFC分子数の和であること、および油滴モデルの仮定(特に、同じサイズのリポタンパク粒子においてはリポタンパク表層(S)にあるFCつまりFCsの体積VfcsとCE+TGの体積(Vce+Vtg)との比が一定であること)の全てにあてはまることを条件とした。

0088

より詳しくは、Cho分子数がCE分子数とFC分子数の和であることは、CEの脂肪酸部分オレイン酸と仮定してChoおよびFCの分子量が386.7、CEの分子量が651.1とすると
Cho濃度/386.7=FC濃度/386.7+CE濃度/651.1
FC濃度=Cho濃度−CE濃度/1.684
であることと同義であるといえる。

0089

また、体積比Vfcs:(Vce+Vtg)が一定(Vfcs/(Vce+Vtg)=A(定数))であることは、「重量濃度換算すると1モルあたりのFC、CE、TGの重量濃度(mg/dl)比は、386.7:651.1:885.45 = 1:1.684:2.290 であり、同じく分子体積の比は、0.6223:1.1443:1.607 = 1:1.8388:2.582となること」から、FCs濃度とCE濃度×1.09+TG濃度×1.127との比が一定(FCs濃度/(CE濃度×1.09+TG濃度×1.127)=A)であることと同義であるといえる。さらに、下記表1に健常者集団80名のG01−G20の各分画での実測値による重量濃度の比(FCs濃度/(CE濃度+TG濃度)=B)と当該実測値から算出した体積比Aとの比較を示す。なお、表1中のG20bはG20分画の値をバックグランド補正した値を意味する(後述)。AとBの値は、ほぼ等価であり、重量濃度の比は体積比を近似できるといえる。また、各分画の重量比および体積比ともばらつきは少なく、このことから、同じサイズのリポタンパク粒子において、体積比Vfcs:(Vce+Vtg)が一定であるとは、FCs濃度とCE濃度+TG濃度との比が一定であると言い換えることができる。

0090

0091

なお、式(1)の1/xをx'に置き換えると、式(1)は次の一次式に変形できる。

0092

y=b1×x' +b0 (x'≧1.0, y>0) (2)

0093

すなわち、式(1)と式(2)は等価である。式(2)を用いて、式(1)と同様の条件でフィッティングできる(図8)。図8中の矢印は、健常者80名の平均値すなわちアンカー点を指している。

0094

フィッティングの条件については、前記以外にも様々な条件が設定可能であり、条件により式(1)または式(2)のb1、b0の値は変動する。G01−G20の各分画について、前記条件において健常者80名の実測値の平均値から定めたアンカー点を95%信頼区間の範囲で変動させた場合にb1、b0がとりえる値の範囲を下記表2に示す。リポタンパクの粒子サイズに基づく各分画における前記式(1)または式(2)での係数b1、定数b0の値を、下記表2の範囲に含まれるように設定することができる。なお、表2中のG20bはG20分画の値をバックグランド補正した値を意味する(後述)。

0095

0096

式(1)または式(2)を用いると、各分画の実測CE/実測Cho比は、各分画の実測のCho値とTG値のみの関数となる。よって、この回帰式を用いることによって、CE値(計算CE値)を、CE値の直接の実測なしで、実測Choと実測TGから算出することが可能となる。

0097

なお、CE値とFC値とは、前記の換算式を用いて換算可能なので、どちらを算出対象とするかは、計算処理上はほぼ等価であるということができる。

0098

健常者80名について、式(1)を用いて算出した計算CE値をyとし、実測のCE値をxとして、G06分画、G09分画、G17分画での散布図を図9に示す。相関係数r>0.987の非常に高い相関が確認された。

0099

また、下記表3に、健常者80名の実測Cho値から求めた計算CE値と実測CE値について、平均値±SDと、95%信頼区間と、実測CE値と計算CE値の相関係数とを示す。油滴モデルの適用が困難であるpreβ1HDLが含まれるG20分画を除いて、全分画でr>0.961の高い相関が得られた。なお、表3中のG20bはG20分画の値をバックグランド補正した値を意味する(後述)。

0100

0101

さらに、頻度の少ない代謝異常症であるアポE2/2(III型)検体、LPL(リポタンパクリパーゼ)欠損症等の超高TG(>1200mg/dL)検体、CETP欠損症の検体の測定値図7プロットしたところ、式(1)の回帰式の範囲に分布している。一方、LCATレシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ)欠損症や原発性胆汁性肝硬変(PBC:Primary BiliaryCirrhosis)等の検体ではTGリッチなLDL球状粒子として知られているLp(Y)の測定値(G09)は回帰式の範囲に分布しているが、球状粒子でなく袋状や円盤状粒子であるLp(X)の測定値(G06、G19)は、油滴モデルに合致しないため回帰式の範囲から大きく外れている。これは油滴モデルと本実施形態のモデル回帰式の妥当性を実証しているといえる。

0102

したがって、本実施形態の方法によれば、実測のCho及びTGの濃度を用いて、CEの濃度(又はFCの濃度)を高い信頼性で算出することができる。このため、CE濃度やFC濃度を実測することなく、これらの値を、診断や各種研究に役立てることができる。

0103

しかも、本実施形態の方法では、CE濃度やFC濃度の実測を省略できるので、これらの値を得るための時間及びコストを削減できるという実際上の利点もある。

0104

さらに、本実施形態では、分画ごと(例えば前記した20分画ごと、あるいはいくつかの分画を統合したメジャークラスごと)に前記したCE濃度及びFC濃度を算出できる。さらに、本実施形態では、各分画毎に算出したCE濃度及びFC濃度を用いて、いくつかの分画の値を合計して、統合した値として算出することもできる。よって、本実施形態では、このようにして得た各種の値を利用した診断等が可能になる。また、分画ごとにリポタンパクの粒子径が決まることを利用して、下記のようにリポタンパクの粒子濃度の算出も可能になる。

0105

(リポタンパクの粒子濃度の算出方法)
次に、リポタンパクの粒子濃度(単位:M)を算出する手法を説明する。

0106

本発明者による前記特許文献3から分かるように、ある分画に属するリポタンパクの粒子サイズはほぼ一定であると仮定できる(この点についてはさらに後述する)。そこで、ある分画に属する粒子濃度の算出は、当該分画の全リポタンパク粒子のコアー体積の総和(tVc)をリポタンパク粒子1個のコアー体積(基準Vc)で除することによって算出できる。

0107

ここで、
tVc=tVtg+tVce+tFcc;
tVc:当該分画での全リポタンパクのコアー体積の総和;
tVtg:当該分画での全リポタンパクのコアー中のトリグリセリドの体積の総和;
tVce:当該分画での全リポタンパクのコアー中のコレステロールエステルの体積の総和;
tVfcc:当該分画での全リポタンパクのコアー中のフリーコレステロールの体積の総和;
基準Vc:当該分画におけるリポタンパクの一粒子のコアーの体積
である。

0108

(tVcの算出)
図1のリポタンパク分析装置で測定した任意の分画のリポタンパクの濃度を前述の方法により体積に換算する。油滴モデルの仮定により、リポタンパク粒子の表層のFCの6分の1程度はコアーに分配されているため、リポタンパクにおける各分画での実測のコアーの全体積(tVc)は、TGの全体積(tVtg)と、CEの全体積(tVce)と、コアーに分配されているFCの全体積(tVfcc)との和となる。

0109

より具体的には、
tVtg=TG(mg/dL)/88.545×1.607(nm3)
tVce =CE(mg/dL)/65.11×1.1443(nm3)
tVfcc=[FC(mg/dL)/38.67×0.6223(nm3)]×1/6
となる。これにより、任意の分画における実測または計算のTG濃度、CE濃度およびFC濃度がわかれば、tVcが算出できる。

0110

(基準Vcの算出)
本発明者による前記特許文献3に記載のリポタンパク分析方法では、粒子サイズに基づいて20分画を定義した。この文献によるコンポーネントピーク1から20によって分離される分画をG01からG20とする。20分画のサイズは、文献では直径(nm)で定義されているが、以下の説明ではその半径(Rhplc、単位nm)で記述することとする。算出の前提を以下にまとめる。
・ゲルろ過によるリポタンパクの分離は、リポタンパク粒子の最大水和層のサイズ(糖鎖により形成される不定形の水和層を含めて最大となるサイズ:図10A、B参照)の違いによる分離である。従って、前述のゲルろ過分離によって定義されたG01からG20の粒子径(Rhplc)は、リポタンパク粒子の最大水和層のサイズと同義である。
・大きさが一定のリポタンパク粒子においてコアーが占める1粒子当たりの体積(基準Vc)は一定であり、その体積は、Rhplcで定義されたG01からG20の分画でのコアー半径(Rc、単位nm)によって、次式(3)及び(4)で算出される:
基準Vc(nm3)=4/3πRc3 (nm3)−アポB分子体積×(0.15〜0.20) 式(3)
Rc (nm) = Rhplc−ts− tos 式(4)

0111

ここで、文献値等から、ts=2.3nm、tos=1.0〜1.4nm(アポB含有リポタンパク) or 0〜0.6nm(アポB非含有リポタンパク)とする。

0112

なお、アポB含有リポタンパクは、G01−G13に存在し、アポBに含まれる糖鎖によりOS層を形成する(図10A参照)。一方、アポB非含有リポタンパクのうち球状の粒子はG14−G20に存在するHDL粒子である。これは、S層に1分子以上のアポA-Iを含み、このアポA-Iは糖鎖を含まない。そのため、アポB分子体積は0であり、またアポA-Iには糖鎖が含まれていないためにOS層を形成しない場合もある。ただし、HDL分画にはアポA-I以外に糖鎖を含むアポリポタンパクが含まれることがある。例えば、アポリポタンパクEにはO-結合糖鎖が含まれ、OS層を形成するため、tosとして当該分画では0.2〜0.6nmを差し引くこととする(図10B参照)。

0113

(G01−G02の基準Vc計算の補正)
なお、本発明者による前記特許文献3に記載のリポタンパク分析方法において、カラムの排除体積として分離されるG01は、G02と統合してCM相当分画とする。そのコアー半径Rcは、
・本来のサイズ定義RhplcであるG01での直径>90nmと,G02での直径75nmとを用い、
・さらにCMの主要脂質成分であるTG検出波形のG01とG02での健常者80名でのヒストグラムを用いて
加重平均サイズを求めることにより、例えば41.2nm(Rhplc)として算出できる。

0114

つまり、G01+G02でのVcは、例えばto=2.3nm、tos=1.4nmとすると
基準Vc(G01+G02)=4/3×π×(41.2−2.3−1.4)3 −324.5×0.2nm3
として算出できる。

0115

(G20のバックグラウンド補正
また、G20分画でのクロマト波形検出では、血中の有色成分を拾いこんでいる。そこで、バックグランドの補正を行なって、G20分画中のTG検出値とCho検出値を補正し、補正した値を、前記したG20bとして用いる。酵素試薬の代わりに溶離液を送液して得られたクロマトグラムにおいて、通常のG20分画サイズ範囲付近に現れるバックグラウンドのピークXの時間と幅を用いて、TG検出の20分画ガウス近似ピーク分離に、ピークXを追加した21個のピーク分離を行ない、ピークXをバックグランドとして差し引く。Cho検出のバックグランドは、TG検出と検出波長や酵素試薬の色素源が同じ場合は、TG検出パターンのピークXの面積を差し引く。検出波長や色素源がCho検出とTG検出で異なる場合は、その調整が必要となる。多くの場合、ピークXの面積は、TG検出クロマトグラムによるG20分画の面積の80〜90%に相当するため、ここではG20でのTG検出値の80〜90%が血中の有色成分を反映しているとしてその分を差し引く。また、Cho検出値では、クロマト波形からTG検出値の80〜90%に相当する面積を差し引く。バックグランド補正した値をG20bとし、その補正したTG濃度(mg/dL)、またはCho濃度を用いる。

0116

前記の計算方法に従って算出したG06、G09、G17の基準Vc(コアー基準体積)の一例は、それぞれ13180nm3、2980nm3、128nm3である。ただし、Rhplc、ts、tos等の条件によって基準Vcは変動する。G01−G20の各分画について前記条件により基準Vcがとりえる好ましい値の範囲を表4に示す。すなわち、リポタンパクの粒子サイズに基づく各分画における基準Vcを、表4の範囲に含まれる値に設定することができる。

0117

0118

なお、図11には、リポタンパク分析装置のカラムとしてXLカラム(TSKgel Lipopropak XLカラム)とシリカカラム(SkylightPak-LDLカラム)を用いた実測値を用いて、本実施形態の方法により粒子濃度を計算した結果を対比して示す。また、図12には、XLカラムとSupカラム(Superose 6HR 10/30カラム)を用いた同様の結果を対比して示す。これらから分かるように、カラムの種類が異なっていても、得られる粒子濃度の値にはほとんど差異がない。したがって、本実施形態の方法は、カラムの種類に依存せずに実施することが可能である。ただし、XLカラムでのG01、シリカカラムのG04、SupカラムのG06より大きな分画に関しては、カラムの排除体積の影響があるので、分画の統合や調整が必要となる。

0119

さらに、図14の左側の図は、実測のアポB分子濃度と本実施形態により算出したアポB含有リポタンパク粒子濃度との相関を示し、図14の右側の図は、実測のアポA-I分子濃度と本実施形態により算出したアポA-I含有リポタンパク粒子濃度との相関を示す。前者の濃度比は概ね1:1、後者は概ね2.8:1であり、油滴モデルと一致する。

0120

(コアー組成比を反映した二次回帰式の特定)
油滴モデルにおいてTGとCEからなるコアー中のCEの占める割合であるコアー組成比(コアーCE%)は、実測CE/(実測TG+実測CE)×100(%)と記載できる。このコアーCE%は、個人ごとに、リポタンパク代謝を反映して、各分画において変動していると考えられる。本発明の別の実施形態として、実測のコアーCE%をy'として、実測の式(1)のxとの関係を、次の二次回帰式でフィッティングする。x'' = x ×100とすると、
y'=b2×x''2+b1' ×x''+b0'(0<x''≦100, 0≦y'≦100) (5)

0121

式(5)によって、実測のコアーCE%は、x×100、すなわち実測のChoと実測のTGの組合変数であるCho/(Cho+TG)×100を変数とする二次式で表される。これにより、xはコアーCE%を反映した(コアーCE%の変化に伴って変化する)値といえる。

0122

図13に、分画G06、分画G09、分画G17についてのフィッティングの結果を、そのときの係数b2、b1'、定数b0'の値と共に示す。図13によれば、健常者集団のデータ点が式(5)のモデルの近似曲線内に分布していることがわかる。

0123

図13で用いた実測値データは、健常者80名に対して得られたものである。また、図13中の矢印は、健常者80名の平均値であり、これをアンカー点として用いた。二次回帰式の表す曲線がアンカー点を必ず通ること、Cho分子数がCE分子数とFC分子数の和であること、および油滴モデルの仮定(特に、同じサイズのリポタンパク粒子においてはリポタンパク表層(S)にあるFCつまりFCsの体積VfcsとCE+TGの体積(Vce+Vtg)との比が一定であること)の全てにあてはまることを条件とした。

0124

さらに、頻度の少ない代謝異常症であるアポE2/2(III型)検体、LPL(リポタンパクリパーゼ)欠損症等の超高TG(>1200mg/dL)検体、CETP欠損症の検体の測定値を図13にプロットしたところ、式(5)の回帰式の範囲に分布している。一方、LCAT(レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ)欠損症や原発性胆汁性肝硬変(PBC)等の検体ではTGリッチなLDL球状粒子として知られているLp(Y)の測定値(G09)は回帰式の範囲に分布しているが、球状粒子でなく袋状や円盤状粒子であるLp(X)の測定値(G06、G19)は、油滴モデルに合致しないため回帰式の範囲から大きく外れている。これは油滴モデルと本実施形態のモデル回帰式の妥当性を実証しているといえる。

0125

下記表5に、式(5)のモデル中で油滴モデルの仮定を前提としてx''がとりえる計算値の範囲と、一般検診規模スタディで得られた実測値を用いたx''の値の範囲とを示す。式(5)のモデルのx''は、大規模集団で得られるx''の範囲を十分にカバーできることを確認できる。また健常者80名について、各分画の実測値のコアーCE%(y')とコアーCE%の反映値(x'')の相関係数(2次式)について示す(表5)。G20を除く全ての分画でr>0.93の非常に高い相関を示している。

0126

0127

(CETP欠損における補正)
コレステリルエステル転送蛋白(CETP)は、HDLのコレステロールをVLDLやLDLに転送することでHDLやLDLの量・質を調整している。ヒトCETP欠損症患者や元来CETPをもたないラットマウスは、CETPの欠損により、HDL(通常G14〜G20分画に存在する)のサイズが巨大化し、極小LDL(G11〜G13)画分に巨大化HDLとして混入してしまう。そのため、適切な極小LDLおよび巨大化HDLの粒子濃度を算出することができない。この問題を解決するために以下のように補正を行う。

0128

アポBはアポB含有リポタンパク質1粒子に原則1分子含まれること(油滴モデル)から血清中のアポBの分子数はアポB含有リポタンパク質(G1〜G13)画分のリポタンパク質の総粒子数とほぼ同じと考えられる。まず、健常者(コントロール)群についてアポB分子濃度実測値と本実施形態により算出したG1〜G13の総粒子数の関係(回帰式)とを求め、CEPT欠損群のアポB分子濃度実測値と前記回帰式とから、理想的なG1〜G13の総粒子数(理想粒子数)を算出する。次に、CEPT欠損群について本実施形態により算出したG1〜G13総粒子数から前記理想粒子数を差し引くと極小LDL(G11〜G13)画分に混入した巨大化HDLの粒子数が得られる。さらに、本実施形態により算出した補正前の極小LDL(G11〜G13)の粒子数から巨大化HDLの粒子数を差し引くことで、補正された極小LDL(補正G11〜G13)の粒子数が算出できる。図15に、健常者(コントロール)およびCETP欠損症患者検体のアポB重量濃度とアポB含有リポタンパク粒子濃度の相関の前記方法による補正結果を示す。補正前と補正後を比較すると、CETP欠損症患者検体の相関が適正化されたことがわかる。

0129

また、例えばG12の基準Vcを巨大化HDL粒子数に乗ずることで巨大化HDLのTG+CE体積を求め、コアー組成比がHDL(例えばG14)と同じと仮定して巨大化HDLのTG、CE濃度を求めることができる。さらに本実施形態により算出した補正前のG11〜G13のTG、CE濃度から巨大化HDLのTG、CE濃度を差し引くことにより、補正G11〜13のTG、CE濃度を求めることができる。

0130

この補正方法は、LDLと同様なコアー組成をもち、アポ(a)がアポBにS-S結合して巨大化したLp(a)や凍結融解の繰り返しによりLDLが会合して巨大化した会合LDLの粒子数等を算出する場合にも応用できる。

0131

また、別の補正方法として、健常者(コントロール)群において最も谷となるピーク(CETP欠損で巨大化HDLが混入しない、例えばG11)に対する隣接するピーク(CETP欠損で巨大化HDLが混入する、例えばG12、G13)の脂質濃度の比の平均値を求めておき、CETP欠損症検体のG11にその比を乗ずれば、G12、G13に混入した巨大化HDLを除く真のG12、G13の脂質濃度が算出される。実測のG12、G13脂質濃度から真の脂質濃度を引けば、混入した巨大化HDLの脂質濃度が算出でき、Cho濃度、TG濃度と本実施形態の回帰モデルおよび油滴モデルからそれぞれの粒子数を算出することができる。図16に、健常者(コントロール)およびCETP欠損症患者検体のアポB重量濃度とアポB含有リポタンパク粒子濃度との相関についての前記別の補正方法による補正結果を示す。補正前と補正後を比較すると、CETP欠損症患者検体の相関が適正化されたことがわかる。

0132

(まとめ)
前記各実施形態により、リポタンパク代謝を解析することができる。例えば、G06分画は、健常者集団においても、Cho/(Cho+TG)に相当する値(前記したx, x', x''に対応)の分布範囲が広いことがわかる。これは、粒子サイズが同じでも、コアー中のCE%組成比の変動が大きいためであると推測される。また、CEリッチVLDLを含むような脂質代謝異常症(III型高脂血症や高レムナント血症など)でのCE値を正確に推定することができる。すなわち、Cho/TG検出システムで得られたCho及びTGの実測データを用いて、FCを実測する必要なく、正確にCE値を見積もることができる。さらに、既に述べたように、そのCE値を用いて正確な粒子濃度の算出も可能となる。また、CETP欠損により巨大化したHDLを含む検体や、粒子の会合やアポ(a)の結合によって巨大化した会合LDLやLp(a)についても、前記補正を行うことにより、粒子濃度、TG、CE濃度等を算出することが可能である。

0133

なお、本発明の内容は、前記各実施形態に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載された範囲内において、具体的な構成に対して種々の変更を加えうるものである。

0134

1カラム
2スプリッター
3 第1流路
4 第2流路
5 Cho反応部
6 TG反応部
7 Cho検出部
8 TG検出部
9システムコントローラ
10演算装置(算出部)
11サンプラ
12 第1ポンプ
13デガッサー
14 Cho用試薬タンク
15 第2ポンプ
16 TG用試薬タンク

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