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技術 研磨性に優れたフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板およびその製造方法

出願人 日鉄ステンレス株式会社
発明者 石丸詠一朗川真知
出願日 2015年3月2日 (5年10ヶ月経過) 出願番号 2016-506480
公開日 2017年4月6日 (3年8ヶ月経過) 公開番号 WO2015-133433
状態 特許登録済
技術分野 薄鋼板の熱処理
主要キーワード 微細混合 鏡面材 研磨仕上 調理器具用 耐局部腐食性 複相組織ステンレス鋼 鏡面仕上 航空機関
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (3)

課題・解決手段

反射像を精度良く反射するための鏡面研磨フェライトオーステナイト系二相ステンレス鋼板に施すことにより、長期間使用しても疵や割れが発生し難く、しかも高強度化による軽量化が可能な鏡面仕上製品を提供する。 質量%で、C:0.03%以下、Cr:19.0〜22.0%、N:0.06〜0.20%、Ni、Mn、Cu:1種又は2種以上を合計で5.0〜7.5%、Si、Al:1種又は2種の合計で1.0%以下、P:0.045%以下、Mo:1.0%以下、S:0.005%以下、O:0.01%以下、残部はFeおよび不可避的不純物である組成を有し、フェライト相オーステナイト相との複相組織をもち、フェライトとオーステナイト粒径差ΔGsが15μm以下であることを特徴とする研磨性に優れたフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板。

概要

背景

美麗さの指向が高まりつつある最近では、意匠性や美麗さに優れた鏡面仕上ステンレス鋼が一般建材内装材外装パネルなどの外装材、装飾鏡やカーブミラー等の鏡面材、業務用キッチン調理台シンク天板冷蔵庫の扉などの厨房機器角バットなどの調理器具に使用されている。これらの用途の中で、例として鏡に関連する用途について言えば、従来から使用されているガラス主体にした製品では、衝撃を受けると破損し易く、破損が負傷の原因につながる可能性が高いことから、鏡面仕上したステンレス鋼をガラスに替わる鏡類として使用することが広まっている。

従来から上記用途に使用されているオーステナイト系ステンレス鋼は、焼鈍組織になっているため軟質であり、清掃時や取扱い時等に疵が発生し易く、美観が損なわれる。また、研磨に際しても、脱酸生成物であるAl系酸化物やSi系酸化物などが表面に存在すると地疵の原因となり研磨工程が増加する。

特許文献1には、製鋼段階で脱酸元素であるAl添加量を低減し、製品に含有されるAl2O3の生成を抑制することで研磨時の地疵を無くし、研磨性を向上させた鋼が記載されている。

特許文献2には、光輝焼鈍材を用い最終工程である調質圧延で生じる微細肌荒れを抑制して研磨性を改善するために、結晶粒径と母地のAl濃度を限定した鋼の製造方法が記載されている。

一方、フェライト系ステンレス鋼においては、特許文献3に圧延速度を低下させて圧延潤滑油によって生じるオイルピットの生成を抑制し、オイルピット起因の白筋模様を軽減することで研磨性を改善する鋼が記載されている。

さらに、特許文献4では、フェライト相マルテンサイト相複相鋼板鏡面研磨へ適用することで、フェライト系の加工性マルテンサイト系耐疵付き性両立した鋼が記載されている。

しかしながら、特許文献1では、地疵の少ないオーステナイト系ステンレス鋼は得られるものの、取り扱い時に生じる疵を解消することはできない。特許文献2では、調質圧延後表面うねりが解消され、研磨工程の削減が可能となるものの工程はBA工程に限定される。特許文献3では、圧延時のオイルピット生成が抑制され素材起因の研磨性低下は抑制されるものの、フェライト系ステンレス鋼であるため軟質で粗研磨時の研削疵が深くなった場合には、仕上研磨工程の負荷が増加してしまうので研磨性を劣化させてしまう。

これらの対策として、特許文献4に記載されている鋼が発明されたが、フェライト相+マルテンサイト相の二相ステンレス鋼では、軟質のフェライト相と硬質のマルテンサイト相からなる微細混合組織をもっているため両者の長所が活かされ、鏡面仕上後の光沢度が優れていると共に、適度な加工性及び強度を兼ね備えており、オーステナイト系に比較して耐疵付き性が良好であった。また、微細混合組織であることから、たとえばカーブミラーのように曲率をもつ鏡面にあっては、塑性加工後表面肌荒れが小さく、肌荒れを除去するための研磨負荷は小さくなっていた。しかし、素材の硬度HV350程度と著しく高いため、研磨目が付きにくく研磨装置の負荷と砥石消費量が多くなってしまう課題があった。

概要

反射像を精度良く反射するための鏡面研磨をフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板に施すことにより、長期間使用しても疵や割れが発生し難く、しかも高強度化による軽量化が可能な鏡面仕上製品を提供する。 質量%で、C:0.03%以下、Cr:19.0〜22.0%、N:0.06〜0.20%、Ni、Mn、Cu:1種又は2種以上を合計で5.0〜7.5%、Si、Al:1種又は2種の合計で1.0%以下、P:0.045%以下、Mo:1.0%以下、S:0.005%以下、O:0.01%以下、残部はFeおよび不可避的不純物である組成を有し、フェライト相とオーステナイト相との複相組織をもち、フェライトとオーステナイト粒径差ΔGsが15μm以下であることを特徴とする研磨性に優れたフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板。

目的

本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、反射像を精度良く反射するための鏡面研磨を施した場合であっても、光沢度が高く、かつ研磨装置の負荷および砥石の消費量を抑制できるフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板であって、長期間使用しても疵や割れが発生し難く、しかも高強度化による軽量化が可能な鏡面仕上鋼板を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

質量%で、C:0.03%以下、Cr:19.0〜22.0%、N:0.06〜0.20%、Ni、Mn、Cu:1種又は2種以上を合計で5.0〜7.5%、Si、Al:1種又は2種を合計で1.0%以下、P:0.045%以下、Mo:1.0%以下、S:0.005%以下、O:0.01%以下、残部はFeおよび不可避的不純物である組成を有し、フェライト相オーステナイト相との複相組織をもち、フェライトオーステナイト粒径差ΔGsが15μm以下であることを特徴とする研磨性に優れたフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板

請求項2

前記組成は、さらに、質量%で、Sn:0.005〜0.2%、Nb:0.01〜0.2%、Ti:0.01〜0.2%、B:0.01%以下の1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の研磨性に優れたフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板。

請求項3

前記組成は、さらに、質量%で、Y:0.01〜0.20%、REM:0.01〜0.20%、V:0.005〜0.20%、Al:0.005〜0.20%の1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の研磨性に優れたフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板。

請求項4

鏡面材用である請求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨性に優れたフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板。

請求項5

外装材用である請求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨性に優れたフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板。

請求項6

厨房機器用である請求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨性に優れたフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板。

請求項7

調理器具用である請求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨性に優れたフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板。

請求項8

請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成を有する鋼のスラブ熱間圧延を施し、次いで、熱延板焼鈍酸洗した後、圧延率80%以上で最終パス後板温度が80℃以上となる冷間圧延を実施した後、1000〜1100℃の温度で最終焼鈍し、その後500℃までの冷却速度を25℃/s以上とし、酸洗処理する請求項1〜7のいずれか1項に記載の研磨性に優れたフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、光沢度および写像性の高い鏡面が要求される各種分野で使用される研磨性に優れたステンレス鋼板及びその製造方法に関する。

背景技術

0002

美麗さの指向が高まりつつある最近では、意匠性や美麗さに優れた鏡面仕上ステンレス鋼が一般建材内装材外装パネルなどの外装材、装飾鏡やカーブミラー等の鏡面材、業務用キッチン調理台シンク天板冷蔵庫の扉などの厨房機器角バットなどの調理器具に使用されている。これらの用途の中で、例として鏡に関連する用途について言えば、従来から使用されているガラス主体にした製品では、衝撃を受けると破損し易く、破損が負傷の原因につながる可能性が高いことから、鏡面仕上したステンレス鋼をガラスに替わる鏡類として使用することが広まっている。

0003

従来から上記用途に使用されているオーステナイト系ステンレス鋼は、焼鈍組織になっているため軟質であり、清掃時や取扱い時等に疵が発生し易く、美観が損なわれる。また、研磨に際しても、脱酸生成物であるAl系酸化物やSi系酸化物などが表面に存在すると地疵の原因となり研磨工程が増加する。

0004

特許文献1には、製鋼段階で脱酸元素であるAl添加量を低減し、製品に含有されるAl2O3の生成を抑制することで研磨時の地疵を無くし、研磨性を向上させた鋼が記載されている。

0005

特許文献2には、光輝焼鈍材を用い最終工程である調質圧延で生じる微細肌荒れを抑制して研磨性を改善するために、結晶粒径と母地のAl濃度を限定した鋼の製造方法が記載されている。

0006

一方、フェライト系ステンレス鋼においては、特許文献3に圧延速度を低下させて圧延潤滑油によって生じるオイルピットの生成を抑制し、オイルピット起因の白筋模様を軽減することで研磨性を改善する鋼が記載されている。

0007

さらに、特許文献4では、フェライト相マルテンサイト相複相鋼板鏡面研磨へ適用することで、フェライト系の加工性マルテンサイト系耐疵付き性両立した鋼が記載されている。

0008

しかしながら、特許文献1では、地疵の少ないオーステナイト系ステンレス鋼は得られるものの、取り扱い時に生じる疵を解消することはできない。特許文献2では、調質圧延後表面うねりが解消され、研磨工程の削減が可能となるものの工程はBA工程に限定される。特許文献3では、圧延時のオイルピット生成が抑制され素材起因の研磨性低下は抑制されるものの、フェライト系ステンレス鋼であるため軟質で粗研磨時の研削疵が深くなった場合には、仕上研磨工程の負荷が増加してしまうので研磨性を劣化させてしまう。

0009

これらの対策として、特許文献4に記載されている鋼が発明されたが、フェライト相+マルテンサイト相の二相ステンレス鋼では、軟質のフェライト相と硬質のマルテンサイト相からなる微細混合組織をもっているため両者の長所が活かされ、鏡面仕上後の光沢度が優れていると共に、適度な加工性及び強度を兼ね備えており、オーステナイト系に比較して耐疵付き性が良好であった。また、微細混合組織であることから、たとえばカーブミラーのように曲率をもつ鏡面にあっては、塑性加工後表面肌荒れが小さく、肌荒れを除去するための研磨負荷は小さくなっていた。しかし、素材の硬度HV350程度と著しく高いため、研磨目が付きにくく研磨装置の負荷と砥石消費量が多くなってしまう課題があった。

先行技術

0010

特開平4−99215号公報
特開平8−309405号公報
特開平2−173215号公報
特開平11−152550号公報

発明が解決しようとする課題

0011

本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、反射像を精度良く反射するための鏡面研磨を施した場合であっても、光沢度が高く、かつ研磨装置の負荷および砥石の消費量を抑制できるフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板であって、長期間使用しても疵や割れが発生し難く、しかも高強度化による軽量化が可能な鏡面仕上鋼板を提供することを目的とする。また、当該鏡面仕上鋼板を用いた一般建材、内装材、外装パネルなどの外装材、装飾鏡やカーブミラー等の鏡類、業務用キッチンの調理台、シンク天板、冷蔵庫の扉などの厨房機器、角バット、鍋などの調理器具を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0012

本発明のフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板およびその製造方法は、以下の通りである。

0013

(1)質量%で、C:0.03%以下、Cr:19.0〜22.0%、N:0.06〜0.20%、Ni、Mn、Cu:1種又は2種以上を合計で5.0〜7.5%、Si、Al:1種又は2種を合計で1.0%以下、P:0.045%以下、Mo:1.0%以下、S:0.005%以下、O:0.01%以下、残部はFeおよび不可避的不純物である組成を有し、フェライト相とオーステナイト相との複相組織をもち、フェライトとオーステナイト粒径差ΔGsが15μm以下であることを特徴とする研磨性に優れたフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板。

0014

(2)前記組成が、さらに、質量%で、Sn:0.005〜0.2%、Nb:0.01〜0.2%、Ti:0.01〜0.2%、B:0.01%以下の1種または2種以上を含むことを特徴とする上記(1)に記載の研磨性に優れたフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板。

0015

(3)前記組成が、さらに、質量%で、Y:0.01〜0.20%、REM:0.01〜0.20%、V:0.005〜0.20%、Al:0.005〜0.20%の1種または2種以上を含むことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の研磨性に優れたフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板。

0016

(4)鏡面材用である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の研磨性に優れたフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板。

0017

(5)外装材用である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の研磨性に優れたフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板。

0018

(6)厨房機器用である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の研磨性に優れたフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板。

0019

(7)調理器具用である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の研磨性に優れたフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板。

0020

(8)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の組成を有する鋼のスラブ熱間圧延を施し、次いで、熱延板焼鈍酸洗した後、圧延率80%以上で最終パス後板温度が80℃以上となる冷間圧延を実施した後、1000〜1100℃の温度で最終焼鈍し、その後500℃までの冷却速度を25℃/s以上とし、酸洗処理する上記(1)〜(7)のいずれかに記載の研磨性に優れたフェライト・オーステナイト系二相ステンレス鋼板の製造方法。

発明の効果

0021

本発明の複相組織ステンレス鋼板は、フェライト相+オーステナイト相の混合組織をもっていることから、微細な粒径および研磨性を損なわない程度の高硬度を有し、表面疵の付き難い各種鏡面製品として使用される。また、鏡面仕上した複相組織ステンレス鋼板は、光沢度が高く、SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼板及びSUS430に代表されるフェライト系ステンレス鋼板では表面疵が発生し易いために使用不可能であった分野においても鏡面材、外装材、厨房機器、調理器具用として使用が可能である。

図面の簡単な説明

0022

フェライトとオーステナイトの粒径差と研磨1パス後の表面粗さの関係を示す図である。
研磨1パス後の表面粗さと光沢度の関係を示す図である。

0023

以下、本発明が対象とするステンレス鋼に含まれる合金成分、含有率等を説明する。なお、成分の含有率の%は、質量%を示す。

0024

C:0.03%以下
Cは、強力なオーステナイト生成元素であると共に強化能が大きいことから、高強度化に有効に作用する。しかし、0.03%を超える多量のCが含まれると、熱処理後に多量の炭化物が生成するようになり、耐食性靭性が低下する。したがって、0.03%以下とした。望ましくは、0.01〜0.02%の範囲である。

0025

Cr:19.0〜22.0%
Crは、ステンレス鋼としての耐食性を維持する上で、重要な元素である。フェライト相及びオーステナイト相からなる二相ステンレス鋼では、オーステナイト相へのCr分配が抑制されるので、オーステナイト相の耐食性を確保するためには、19.0%以上が必要である。しかし、22.0%を超える過剰のCrが含まれると、靭性が低下する。過剰なCr含有は、製造性の低下を招く。望ましくは、20.0〜21.0%の範囲である。

0026

Ni、Mn、Cu:1種又は2種以上を合計で5.0〜7.5%
何れもオーステナイト生成元素として作用し、常温でフェライト+オーステナイトの組織を得るために必要な合金元素である。Ni、Mn及び/又はCuの含有率増加に応じてオーステナイト相が多くなり、硬さ(強度)が上昇する。Ni、Mn、Cuの1種又は2種以上を合計で5.0%以上含ませたときに、オーステナイト相の硬度がフェライト相に等しい値となる。しかし、7.5%を超える過剰なNi、Mn及び/又はCuを含有させると、高温でのオーステナイト量が多くなりすぎ、熱間加工性が低下する。望ましくは、5.5〜6.5%の範囲である。

0027

N:0.06〜0.20%
Nは、Cと同様にオーステナイト生成元素であり、そのためN含有率は、他のフェライト生成元素との兼ね合いのもとでの成分含有率から定める必要がある。また、このNは、耐孔食性を向上させる効果もあり、Nの含有率は少なくとも、0.06%必要である。しかし、0.20%を超えると熱間加工性を悪化させるため、0.06〜0.20%とした。望ましくは0.10〜0.18%の範囲である。

0028

Si、Al: 1種又は2種の合計で1.0%以下
SiとAlは、脱酸に必要な元素として知られており、鋼中の清浄度を上げ地疵を低減するために非常に重要な元素である。一方、Siはσ相析出を促進し、脆化の原因となり、Alは鋼中のNと結合してAlNを生成させる原因にもなる。従って、これらの元素は、合計で1.0%以下、好ましくは0.2〜0.6%の範囲内とする。但し、過度の低減は精錬コストの増加に繋がる他、脱酸不良につながるため、下限は0.05%以上が望ましい。

0029

P:0.045%以下
Pは、耐食性に有害な元素であるため少ないほど良い。しかし、過度に含有率を低減するには特殊な製錬技術を要し製造コストアップにつながるため、Pは、0.045%以下に制御する必要がある。

0030

S: 0.005%以下
Sは、フェライトとオーステナイトの粒界に析出して熱間加工性を劣化させるとともに、耐食性にも悪影響を及ぼす元素であるので、低いほど良い。特に、このS含有率が0.005%を超えるとその影響が顕著になるので、Sは、0.005%以下とする。好ましくは、0.002%以下とする。

0031

Mo:1.0%以下
Moは、耐孔食性や耐隙間腐食性などの耐食性の向上に、またフェライト相の固溶強化に寄与する元素である。一方、1.0%を超えると硬化にともなう延性の低下および靭性を劣化させ、製造コストの上昇を招く。従って、Moは1.0%以下の範囲で含有させる。望ましくは、0.5%以下とする。なお、Moは添加量に応じて効果を発揮するが、Moの耐食性向上の効果を十分に得るためには0.01%以上含有させることが好ましい。

0032

O:0.01%以下
Oは、鋼中に酸化物として存在する。酸化物は、一般的に硬度が高く研磨時に鋼表面の疵の原因となりやすいので少ないことが望ましいが、脱酸時間や脱酸に必要な元素により、生産性コストに多大な影響を与える。したがって、0.01%以下とした。望ましくは、0.006%以下とする。

0033

以上を、本発明が対象とするステンレス鋼の基本成分とし、残部および不可避的不純物よりなるものとして、必要に応じて以下の成分も含有できる。

0034

Sn:0.005〜0.2%
Snは、耐食性を向上させる元素であるがフェライト相の固溶強化元素でもあり、硬度差低下から上限を0.2%とした。耐食性を向上させる効果は、0.005%から発揮されるため、0.005〜0.2%とした。望ましくは、0.03〜0.1%の範囲である。

0035

Nb:0.01〜0.2%、Ti:0.01〜0.2%
Nb、Tiはともにフェライト相における安定化元素であり、耐局部腐食性の向上に有効な元素である。しかし、何れも0.01%以下の添加では効果はなく、一方0.2%を超えると多量の析出物が析出するため靭性の劣化により、熱間加工性を劣化させるほか、製造コストの面で不利となる。従って、NbとTiの添加量は、いずれも0.01〜0.2%、望ましくは0.05〜0.12%の範囲とする。

0036

B:0.01%以下
Bは、微量の添加で合金の粒界に存在し、熱間加工性を向上させる元素である。しかし同時に、粒界腐食などの耐食性も劣化させる元素でもある。従って、Bの含有率は、0.01%以下とした。

0037

本発明が対象とするステンレス鋼は、以上の合金成分の外に、さらに、耐酸化性の向上に有効な0.01〜0.20%のY及び0.01〜0.20%のREM(Yを除く希土類金属)、耐酸化性の向上に有効な0.005〜0.20%のV、脱酸に有効な0.005〜0.20%のAlを含むことができる。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、その他元素も添加することができる。

0038

本発明では、ステンレス鋼に含まれる各種合金成分の含有率を以上のように規制すると共に、常温でフェライト相+オーステナイト相の複相組織が得られるように各合金成分を相互に調整している。常温で得られる複相組織としては、実質的に50〜60体積%の展伸フェライト相及び40〜50体積%の粒状オーステナイト相からなる組織が好ましい。

0039

フェライトとオーステナイト粒径差ΔGsが15μm
表1に示す成分の鋼を供試材として、後述の実施例に示されるように、さまざまな粒径を有するフェライト相とオーステナイト相よりなる二相ステンレス鋼の冷延製品を製造し、フェライトとオーステナイトの粒径を電子線後方散乱回折法(EBSD)により測定した。なお、粒径の測定は、1000倍の視野中にある全てのフェライトおよびオーステナイトの粒径を円相当径換算して行った。測定したフェライトおよびオーステナイトの粒径の平均値をそれぞれ求めて、フェライト平均粒径およびオーステナイト平均粒径とした。フェライト平均粒径とオーステナイト平均粒径の差を当該視野のΔGsとした。これを任意の5視野について行い、5視野のΔGsの平均値を鋼板のΔGsとした。次いで、#400バフ研磨を1パス実施した前後の表面粗さRzおよび光沢度Gs60を測定し、粒径差と表面粗さの関係を比較した。図1に示すように、フェライトとオーステナイトの粒径差ΔGs(フェライトの粒径−オーステナイトの粒径)が15μm以下である場合、表面粗さは安定して低下している。表面粗さと光沢度の関係を図2に示すが、表面粗さが低いほど光沢度は良好である。図1及び2より、粒径差が15μm以内である場合には光沢度は350以上を示している。

0040

このような粒径差によって研磨後の表面粗さが安定して低下する現象は、次のように考えられる。冷延製品を研磨した際の表面粗さ低下を阻害する要因は、酸洗処理によって生じる粒界浸食溝内在する介在物による地疵と推定される。この粒界浸食溝は、粒界が選択的に溶解する現象でありオーステナイト相で一般的に生じる。本発明鋼の製品表面には約50%のオーステナイト相が存在しており、この部分の粒界浸食溝を軽減することにより研磨後の表面粗さは改善される。しかしながら、オーステナイト粒径のみを制御することは不可能である。

0041

そこで、フェライトとオーステナイトの粒径差を制御することが重要となる。オーステナイトの粒界浸食溝を軽減するためには、オーステナイト粒径が8μm以下であることが望ましいが、同時にフェライトが粒成長する。本発明鋼のフェライト相はオーステナイト相よりも軟質であるため、粗大粒が存在すると地疵が発生しやすくなってしまう。これらを両立するため、粒径差を15μm以内とする必要がある。

0042

次に、本発明の二相ステンレス鋼板を得るための製造方法を説明する。
上記成分含有率に調整された鋼のスラブに熱間圧延を施し、次いで、熱延板焼鈍、酸洗した後、冷間圧延を実施した後、最終焼鈍し、酸洗処理して製造されるが、粒径差が15μm以下である二相ステンレス鋼にするためには、冷間圧延、最終焼鈍を次のようにする。

0043

冷延率:80%以上で最終パス後の板温度80℃以上
冷延鋼帯を製造するに際しては、結晶粒径差を小さくするため冷延率(冷間圧延における圧延率)を80%以上とする必要がある。冷延により粗大なフェライトの集合組織粉砕し微細な再結晶粒を得るためである。冷延率が80%未満では粗大なフェライト粒の残存が確認できるため、冷延率を80%以上とした。

0044

また、冷延時の歪導入は再結晶粒の生成核となるが、本発明のような高強度鋼では、加工硬化が進むと冷延工程に多大な負荷が生じる。そこで、冷間圧延時の板温度を上昇させることによって負荷を軽減する。この効果は、冷延工程負荷の増加のみならず、再結晶の生成核を過大としないため、結晶粒径の制御においても有用であり、結晶粒径差を15μm以下にするためには、最終パス後の板温度を80℃以上に制御することが必要である。板温度の上限は300℃程度である。なお、最終パス後の板温度は1パス当たりの圧延率や圧延速度を変更することによって制御することが可能である。

0045

最終焼鈍:1000〜1100℃
1000〜1100℃の温度域に加熱する仕上熱処理を施す。1000〜1100℃の温度域は、結晶粒の粒成長挙動について本発明者等が種々調査・研究した結果、見い出されたものであり、研磨性を向上させるために必要なフェライトとオーステナイトの結晶粒径差と硬度差を制御するために重要な要件である。1000℃に達しない加熱温度では、オーステナイトの再結晶が十分に完了しきれず、一部のオーステナイトが回復展伸粒として残存する。粗大粒の粒界浸食溝は深くなるため、研磨仕上後の表面粗さを劣化させる。一方、1100℃を超える高温に加熱すると、材質軟化すると共にフェライトの粗粒化が生じるため、結晶粒径差と硬度差が大きくなり耐疵付き性の低下が生じ、表面粗さの劣化を招き、研磨性の大幅な低下につながる。

0046

冷却速度:25℃/s以上(500℃まで)
1000〜1100℃の温度域に加熱された後、緩冷却されるとフェライト相のN固溶限低下にともない粒界のNが増加し、Cr窒化物の析出が生じる。このCr窒化物はその後のデスケール工程で粒界浸食溝の原因となり、研磨性を劣化させる。したがって、冷却速度は25℃/sとした。また、500℃以下でCr窒化物の析出が抑制されるため、500℃までとした。

0047

この仕上熱処理によって、フェライト相約50〜60体積%及びオーステナイト相約40〜50体積%からなる微細混合組織が得られ、フェライトとオーステナイト粒径差ΔGsが15μm以下をもつ材料となる。

0048

仕上熱処理されたステンレス鋼は、粗研磨仕上、中仕上研磨、最終鏡面研磨仕上が施され、鏡面をもつ製品となる。このようにして得られた製品は、ガラス製の鏡のような衝撃による破損がないため、破損による負傷等のトラブルが防止される。また、表面硬度が高いことから、清掃時や取扱い時等に発生しがちな表面疵も軽減される。したがって、自動車二輪車、各種車両等の交通運輸関連や航空機関連、住宅、ビル店舗道路付帯設備等の建築土木関連、光学医療等の化学機器関連、機械電気電子等の各種機器関連、一般家庭用器具、厨房機器、調理器具、事務機器関連等の広範な分野に適した材料となる。

0049

表1に示した本発明の成分範囲満足する鋼Aと、本発明の成分範囲を満足しない鋼Bよりなるステンレス鋼を溶製し、熱間圧延により板厚6.0mmの熱延鋼帯にした。次いで、熱延鋼帯に980℃×60分の熱延板焼鈍を施し、種々の冷延率となるように板厚を変更し冷間圧延した。得られた冷延鋼板焼鈍炉に導入し、仕上熱処理として表2に示す温度で熱処理を施し、フェライト相+オーステナイト相の複相組織をもつステンレス鋼帯を製造した。

0050

0051

複相組織ステンレス鋼帯から試験片切り出し、#400バフ研磨を1パス施し、鏡面研磨仕上とした。試験片の硬度はHV250程度であるため、研磨装置への負荷が小さく、砥石の消費量を抑制できた。鏡面研磨した各試験片について、JIS B0601’1994の十点平均粗さRzに準拠して表面粗さを測定するとともに、JIS Z8741の鏡面光沢度測定法に準拠して光沢度を測定した。結果を表2に示す。

0052

0053

表2から明らかなように成分範囲および製造条件が本発明範囲を満足する本発明例試験No.1、2、5、6、8、9、12、16、17、19、20、22、23、24、25、26は、フェライト相とオーステナイト相の粒径差が15μm以内となり、研磨後の光沢度Gs60が350以上と良好であった。一方、成分範囲が本発明範囲から外れる鋼Bの比較例試験No.1〜15は、製造条件を満たしていてもフェライト相とオーステナイト相の粒径差が15μm超となり、研磨後の光沢度も劣位な結果であった。

0054

一方、成分が発明範囲を満足する鋼Aを用いても、製造方法が本発明を外れる場合は、研磨後の光沢度が劣位となる場合があった。鋼Aの比較例試験No.3、14、27は、最終パス後の板温度が低く、粒径差が大きくなった結果、研磨後の表面粗度が粗く、光沢度が低位となった。鋼Aの比較例試験No.4は、焼鈍後の冷却速度が遅く、γ相の粒界が酸洗後に粒界浸食溝を生成するため研磨後の表面粗度が粗く、光沢度は低位であった。鋼Aの比較例試験No.7および21は、冷延率が低く焼鈍温度が高いこと、鋼Aの比較例試験No.10および28は冷延率が低いこと、鋼Aの比較例試験No.15は焼鈍温度が高いことから、α相の粗粒化が顕著であり粒径差が本発明範囲を超え、研磨後の光沢度が向上しなかった。鋼Aの比較例試験No.13は、焼鈍温度が低くγ相の再結晶が不十分で展伸粒が残存したため粒界浸食溝が深く、研磨仕上後の表面粗さが劣化した。鋼Aの比較例試験No.11および18は、冷延率や最終パス後に熱処理条件が発明の範囲を超えている上に、冷却速度が遅く粒界浸食溝が顕著となっているため研磨後の表面粗度が粗く、研磨後の光沢が不良であった。

実施例

0055

以上に説明したように、本発明の複相組織ステンレス鋼板は、フェライト相+オーステナイト相の混合組織をもっていることから、微細な粒径および研磨性を損なわない程度の高硬度を有し、表面疵の付き難い各種鏡面製品として使用される。また、鏡面仕上した複相組織ステンレス鋼板は、光沢度が高く、SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼板及びSUS430に代表されるフェライト系ステンレス鋼板では表面疵が発生し易いために使用不可能であった分野においても鏡面材として使用が可能である。

0056

本発明のステンレス鋼を用いれば、自動車、二輪車、各種車両等の交通運輸関連や航空機関連、住宅、ビル、店舗、道路付帯設備等の建築・土木関連、光学、医療等の化学機器関連、機械、電気、電子等の各種機器関連、一般家庭用器具、厨房機器、調理器具、事務機器関連等の鏡面材の破損による負傷等のトラブルの防止、清表面疵の軽減が可能となる。本発明による産業上の効果は極めて顕著である。

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