図面 (/)

技術 負極活物質材料、負極及び電池

出願人 新日鐵住金株式会社
発明者 山本祐義禰宜教之永田辰夫
出願日 2015年2月25日 (3年10ヶ月経過) 出願番号 2016-505072
公開日 2017年3月30日 (1年9ヶ月経過) 公開番号 WO2015-129265
状態 特許登録済
技術分野 電池の電極及び活物質 粉末冶金
主要キーワード 接触面領域 実測プロファイル 特定合金 熱弾性型マルテンサイト変態 貯蔵サイト 双晶変形 体心正方格子 分類記号
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年3月30日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (8)

課題・解決手段

量当たりの放電容量及び充放電サイクル特性を改善可能な負極活物質材料を提供する。本実施形態の負極活物質材料は、材料A及び材料Bのうち少なくとも1種と、材料Cとを含有する。材料A:ラマンスペクトルにおける、1580cm-1のピーク強度に対する1360cm-1のピーク強度の比が0.5以下である炭素質粉末材料。材料B:ラマンスペクトルにおける、1580cm-1のピーク強度に対する1360cm-1のピーク強度の比が0.5超である炭素質粉末材料。材料C:合金相からなる活物質を主成分とする粉末材料。この合金相は、金属イオンを放出するとき又は前記金属イオンを吸蔵するときに熱弾性無拡散変態する。

概要

背景

近年、家庭用ビデオカメラノートパソコン、及び、スマートフォン等の小型電子機器等の普及が進み、電池高容量化及び長寿命化技術課題となっている。

ハイブリッド自動車プラグインハイブリッド車、及び、電気自動車がさらに普及するために、電池のコンパクト化も技術課題となっている。

現在、リチウムイオン電池には、黒鉛系の負極活物質材料が利用されている。しかしながら、黒鉛系の負極活物質材料は、上述の技術課題を有する。

そこで、黒鉛系負極活物質材料よりも高容量な合金系負極活物質材料が注目されている。合金系負極活物質材料としては、シリコン(Si)系負極活物質材料、スズ(Sn)系負極活物質材料が知られている。よりコンパクトで長寿命なリチウムイオン電池の実用化のために、上記合金系負極活物質材料に対して様々な検討がなされている。

しかしながら、合金系負極活物質材料の体積は、充放電時に大きな膨張及び収縮を繰り返す。そのため、合金系負極活物質材料は容量が劣化しやすい。例えば、充電に伴う黒鉛の体積膨張収縮率は、12%程度である。これに対して、充電に伴うSi単体又はSn単体の体積膨張収縮率は400%前後である。このため、Sn単体の負極板が充放電を繰り返すと、顕著な膨張収縮が起こり、負極板の集電体に塗布された負極合剤ひび割れを起こす。その結果、負極板の容量が急激に低下する。これは、主に、体積膨張収縮により一部の活物質遊離して負極板が電子伝導性を失うことに起因する。

米国特許出願公開第2008/0233479号(特許文献1)には、合金系負極活物質材料の上述の課題の解決策が提案されている。具体的には、特許文献1の負極材料は、Ti−Ni系超弾性合金と、超弾性合金中に形成されるSi粒子とを備える。リチウムイオン吸蔵及び放出に伴って起こるシリコン粒子の大きな膨張収縮変化を、超弾性合金により抑制できる、と特許文献1には記載されている。

概要

量当たりの放電容量及び充放電サイクル特性を改善可能な負極活物質材料を提供する。本実施形態の負極活物質材料は、材料A及び材料Bのうち少なくとも1種と、材料Cとを含有する。材料A:ラマンスペクトルにおける、1580cm-1のピーク強度に対する1360cm-1のピーク強度の比が0.5以下である炭素質粉末材料。材料B:ラマンスペクトルにおける、1580cm-1のピーク強度に対する1360cm-1のピーク強度の比が0.5超である炭素質粉末材料。材料C:合金相からなる活物質を主成分とする粉末材料。この合金相は、金属イオンを放出するとき又は前記金属イオンを吸蔵するときに熱弾性無拡散変態する。

目的

本発明の目的は、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池に利用され、質量当たりの放電容量及び/又は充放電サイクル特性を改善可能な負極活物質材料を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

負極活物質材料であって、材料Aと、材料Cとを含有し、前記負極活物質材料中の、前記材料Cの質量に対する前記材料Aの質量の比が0.01〜7である、負極活物質材料。材料A:ラマンスペクトルにおける、1580cm-1のピーク強度に対する1360cm-1のピーク強度の比が0.5以下である炭素質粉末材料。材料C:金属イオンを放出するとき又は前記金属イオンを吸蔵するときに熱弾性無拡散変態する合金相からなる活物質を主成分とする粉末材料

請求項2

請求項1に記載の負極活物質材料であってさらに、前記材料Bを含有し、前記負極活物質材料中の、前記材料A、前記材料B及び前記材料Cの合計質量に対する前記材料Bの質量の比が0.01〜0.2である、負極活物質材料。材料B:ラマンスペクトルにおける、1580cm-1のピーク強度に対する1360cm-1のピーク強度の比が0.5超である炭素質粉末材料。

請求項3

請求項1又は請求項2に記載の負極活物質材料であって、前記合金相は、前記金属イオンを吸蔵するときに前記熱弾性型無拡散変態し、前記金属イオンを放出するときに逆変態する、負極活物質材料。

請求項4

請求項3に記載の負極活物質材料であって、前記熱弾性型無拡散変態後の前記合金相は、Ramsdell表記で2Hである結晶構造を含有し、前記逆変態後の前記合金相は、Strukturbericht表記でDO3である結晶構造を含有する、負極活物質材料。

請求項5

請求項3又は請求項4に記載の負極活物質材料であって、前記合金相は、Cuと、Snとを含有する、負極活物質材料。

請求項6

負極活物質材料であって、材料Aと、材料Cとを含有し、前記負極活物質材料中の、前記材料Cの質量に対する前記材料Aの質量の比が0.01〜7である、負極活物質材料。材料A:ラマンスペクトルにおける、1580cm-1のピーク強度に対する1360cm-1のピーク強度の比が0.5以下である炭素質粉末材料。材料C:10〜20at%又は21〜27at%のSnを含有し、残部はCu及び不純物からなる合金相からなる活物質を主成分とする粉末材料。

請求項7

負極活物質材料であって、材料Aと、材料Cとを含有し、前記負極活物質材料中の、前記材料Cの質量に対する前記材料Aの質量の比が0.01〜7である、負極活物質材料。材料A:ラマンスペクトルにおける、1580cm-1のピーク強度に対する1360cm-1のピーク強度の比が0.5以下である炭素質粉末材料。材料C:Sn:10〜35at%と、Ti:9.0at%以下、V:49.0at%以下、Cr:49.0at%以下、Mn:9.0at%以下、Fe:49.0at%以下、Co:49.0at%以下、Ni:9.0at%以下、Zn:29.0at%以下、Al:49.0at%以下、Si:49.0at%以下、B:5.0at%以下、及び、C:5.0at%以下からなる群から選択される1種以上とを含有し、残部はCu及び不純物からなる合金相からなる活物質を主成分とする粉末材料。

請求項8

請求項6又は請求項7に記載の負極活物質材料であってさらに、前記材料Bを含有し、前記負極活物質材料中の、前記材料A、前記材料B及び前記材料Cの合計質量に対する前記材料Bの質量の比が0.01〜0.2である、負極活物質材料。材料B:ラマンスペクトルにおける、1580cm-1のピーク強度に対する1360cm-1のピーク強度の比が0.5超である炭素質粉末材料。

請求項9

請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の負極活物質材料を含む負極。

請求項10

請求項9に記載の負極を備える電池

技術分野

0001

本発明は、電極活物質材料に関し、さらに詳しくは、負極活物質材料に関する。

背景技術

0002

近年、家庭用ビデオカメラノートパソコン、及び、スマートフォン等の小型電子機器等の普及が進み、電池高容量化及び長寿命化技術課題となっている。

0003

ハイブリッド自動車プラグインハイブリッド車、及び、電気自動車がさらに普及するために、電池のコンパクト化も技術課題となっている。

0004

現在、リチウムイオン電池には、黒鉛系の負極活物質材料が利用されている。しかしながら、黒鉛系の負極活物質材料は、上述の技術課題を有する。

0005

そこで、黒鉛系負極活物質材料よりも高容量な合金系負極活物質材料が注目されている。合金系負極活物質材料としては、シリコン(Si)系負極活物質材料、スズ(Sn)系負極活物質材料が知られている。よりコンパクトで長寿命なリチウムイオン電池の実用化のために、上記合金系負極活物質材料に対して様々な検討がなされている。

0006

しかしながら、合金系負極活物質材料の体積は、充放電時に大きな膨張及び収縮を繰り返す。そのため、合金系負極活物質材料は容量が劣化しやすい。例えば、充電に伴う黒鉛の体積膨張収縮率は、12%程度である。これに対して、充電に伴うSi単体又はSn単体の体積膨張収縮率は400%前後である。このため、Sn単体の負極板が充放電を繰り返すと、顕著な膨張収縮が起こり、負極板の集電体に塗布された負極合剤ひび割れを起こす。その結果、負極板の容量が急激に低下する。これは、主に、体積膨張収縮により一部の活物質遊離して負極板が電子伝導性を失うことに起因する。

0007

米国特許出願公開第2008/0233479号(特許文献1)には、合金系負極活物質材料の上述の課題の解決策が提案されている。具体的には、特許文献1の負極材料は、Ti−Ni系超弾性合金と、超弾性合金中に形成されるSi粒子とを備える。リチウムイオン吸蔵及び放出に伴って起こるシリコン粒子の大きな膨張収縮変化を、超弾性合金により抑制できる、と特許文献1には記載されている。

0008

米国特許出願公開第2008/0233479号

先行技術

0009

しかしながら、特許文献1に開示された手法で同二次電池充放電サイクル特性が十分に向上しない可能性もある。そもそも、特許文献1で提案された負極活物質材料を実際に製造するのは極めて困難である。

0010

本発明の目的は、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池に利用され、質量当たり放電容量及び/又は充放電サイクル特性を改善可能な負極活物質材料を提供することである。

課題を解決するための手段

0011

本実施形態の負極活物質材料は、材料Aと、材料Cとを含有する。
材料A:ラマンスペクトルにおける、1580cm-1のピーク強度に対する1360cm-1のピーク強度の比が0.5以下である炭素質粉末材料。
材料C:合金相からなる活物質を主成分とする粉末材料。この合金相は、金属イオンを放出するとき又は前記金属イオンを吸蔵するときに熱弾性無拡散変態する。
負極活物質材料が材料Aを含有する場合において、材料A/材料Cの質量比は、0.01〜7である。

0012

本実施形態の負極活物質材料は、質量当たりの放電容量及び/又は充放電サイクル特性を改善できる。

図面の簡単な説明

0013

図1は、DO3構造の斜視図である。
図2Aは、本実施形態の合金相の母相のDO3構造の模式図である。
図2Bは、マルテンサイト相の1種であるγ1’相の2H構造の模式図である。
図2Cは、DO3構造から2H構造への熱弾性型無拡散変態を説明するための結晶面の模式図である。
図2Dは、図2Cと異なる他の結晶面の模式図である。
図2Eは、図2C及び図2Dと異なる他の結晶面の模式図である。
図3は、本発明例1の合金相の充放電前後のX線回折プロファイルと、リートベルト法によるシミュレート結果とを示す図である。

0014

以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。

0015

本実施の形態による負極活物質材料は、材料Aと、材料Cとを含有する。
材料A:ラマンスペクトルにおける、1580cm-1のピーク強度に対する1360cm-1のピーク強度の比が0.5 以下である炭素質粉末材料。
材料C:合金相からなる活物質を主成分とする粉末材料。この合金相は、金属イオンを放出するとき又は前記金属イオンを吸蔵するときに熱弾性型無拡散変態する。
負極活物質材料が材料Aを含有する場合において、材料A/材料Cの質量比は、0.01〜7である。

0016

本明細書にいう「負極活物質材料」は、好ましくは、非水電解質二次電池用の負極活物質材料である。本明細書にいう「熱弾性型無拡散変態」は、いわゆる熱弾性型マルテンサイト変態を意味する。「金属イオン」は、例えば、リチウムイオン、マグネシウムイオンナトリウムイオン等である。好ましい金属イオンは、リチウムイオンである。

0017

材料Cは、上記合金相以外の他の相を含有してもよい。他の相は例えば、シリコン(Si)相、スズ(Sn)相、上記合金相以外の他の合金相(熱弾性型無拡散変態しない合金相)等である。

0018

好ましくは、上記合金相は、材料Cの主成分(主相)である。「主成分」とは、50%体積以上を占める成分を意味する。合金相は、本発明の主旨を損なわない範囲で不純物を含有してもよい。しかしながら、不純物はできるだけ少ない方が好ましい。

0019

本実施形態の負極活物質材料を用いて形成された負極は、非水電解質二次電池に使用した場合、黒鉛からなる負極よりも高い放電容量(質量当たりの放電容量)を有する。さらに、本実施形態の負極活物質材料を含む負極を用いた非水電解質二次電池は、従来の合金系負極を用いた場合よりも、容量維持率が高い。したがって、この負極活物質材料は、非水電解質二次電池の充放電サイクル特性を十分に向上することができる可能性が高い。また、本実施形態の負極活物質材料を含む負極を用いた非水電解質二次電池は、不可逆容量が小さい。

0020

高い容量維持率を示すのは、材料Cにおいて充放電時に発生する膨張収縮による歪が、熱弾性型無拡散変態によって緩和されるためと考えられる。また、材料Cに、少なくとも材料Aが混合されていることも、容量維持率を向上すると考えられる。さらに、材料Aが材料Cと混合されていることは、不可逆容量を小さくする(初回クーロン効率を高める)と考えられる。詳細は後述する。

0021

材料Aは、黒鉛化度の高い炭素質材料(即ち、黒鉛系炭素質材料)である。一方、材料Bは、低結晶性の炭素質材料である。ラマンスペクトルの1360cm−1のピーク低結晶性炭素質材料のピークであり、1580cm−1のピークは黒鉛系炭素質材料のピークである。炭素質材料の1360cm−1/1580cm−1ピーク強度比が大きいほど、その材料は黒鉛化度が低い(低結晶性である)ことを意味する。逆にこのピーク強度比が小さいほど、黒鉛化度が高いことを意味する。

0022

上述の負極活物質材料はさらに、材料Bを含有してもよい。
材料B:ラマンスペクトルにおける、1580cm-1のピーク強度に対する1360cm-1のピーク強度の比が0.5超である炭素質粉末材料。

0023

負極活物質材料が材料Bを含有する場合において、材料B/(材料A+材料B+材料C)の質量比は、0.01〜0.2であることが好ましい。

0024

材料Cにおける合金相は、次の4つのタイプ1〜タイプ4のいずれのタイプでもよい。

0025

タイプ1の合金相は、金属イオンを吸蔵するときに熱弾性型無拡散変態し、金属イオンを放出するときに逆変態する。この場合、合金相は、常態で母相である。

0026

タイプ2の合金相は、金属イオンを吸蔵するときに逆変態し、金属イオンを放出するときに熱弾性型無拡散変態する。この場合、合金相は、常態でマルテンサイト相である。

0027

タイプ3の合金相は、金属イオンを吸蔵するときに補足変形(すべり変形または双晶変形)し、金属イオンを放出するときに元のマルテンサイト相に戻る。この場合、合金相は、常態でマルテンサイト相である。

0028

タイプ4の合金相は、金属イオンを吸蔵するときにマルテンサイト相から別のマルテンサイト相となり、金属イオンを放出するときに元のマルテンサイト相に戻る。この場合、合金相は常態でマルテンサイト相である。

0029

タイプ1の合金相の場合、好ましくは、熱弾性型無拡散変態後の合金相の結晶構造がRamsdell表記で2H、3R、6R、9R、18R、M2H、M3R、M6R、M9R及びM18Rのいずれかであり、逆変態後の合金相の結晶構造がStrukturbericht表記でDO3である。さらに好ましくは、熱弾性型無拡散変態後の合金相の結晶構造は上記2Hであり、逆変態後の合金相の結晶構造は上記DO3である。

0030

タイプ1の合金相の場合、好ましくは、合金相は、Cuと、Snとを含有し、熱弾性型無拡散変態後に上記2H構造を含有し、逆変態後に上記DO3構造を含有する。

0031

上記合金相は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Si、B及びCからなる群から選択される1種以上と、Snとを含有し、残部はCu及び不純物でもよい。

0032

上記合金相はさらに、サイト欠損を含む、F−Cell構造のδ相と、2H構造のε相と、単斜晶のη’相と、DO3構造を有する相からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。

0033

サイト欠損を含むこれらのδ相、ε相、η’相、及びDO3構造を有する相はいずれも、負極活物質材料中に、金属イオン(Liイオン等)の貯蔵サイト及び拡散サイトを形成する。そのため、負極活物質材料の放電容量及びサイクル特性がさらに改善される。

0034

上記負極活物質材料において、上記合金相の相変態前後の単位胞体積膨張率又は体積収縮率は、好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。単位胞の体積膨張率は下式(1)で定義され、単位胞の体積収縮率は下式(2)で定義される。
(単位胞の体積膨張率)=[(金属イオン吸蔵時の単位胞の体積)−(金属イオン放出時の単位胞の体積)]/(金属イオン放出時の単位胞の体積)×100・・・(1)
(単位胞の体積収縮率)=[(金属イオン吸蔵時の単位胞の体積)−(金属イオン放出時の単位胞の体積)]/(金属イオン吸蔵時の単位胞の体積)×100・・・(2)
式(1)及び式(2)中の「金属イオン放出時の単位胞の体積」には、吸蔵時の単位胞の結晶格子範囲に対応する放出時の単位胞の体積が代入される。

0035

上述の負極活物質材料は、電極、特に非水電解質二次電池の電極を構成する活物質として使用することができる。非水電解質二次電池は例えば、リチウムイオン二次電池である。

0036

以下、本実施形態による負極活物質材料について詳述する。

0037

<負極活物質材料>
本発明の実施の形態に係る負極活物質材料は、材料Aと、材料Cとを含有する。
材料A:ラマンスペクトルにおける、1580cm-1のピーク強度に対する1360cm-1のピーク強度の比が0.5 以下である炭素質粉末材料。
材料C:合金相からなる活物質を主成分とする粉末材料。
好ましくは、材料Cの合金相は、金属イオンを放出するとき又は金属イオンを吸蔵するときに熱弾性型無拡散変態する。

0038

熱弾性型無拡散変態は、熱弾性型マルテンサイト変態とも呼ばれる。以下、本明細書では、熱弾性型マルテンサイト変態を単に「M変態」といい、マルテンサイト相を単に「M相」という。金属イオンを吸蔵又は放出するときにM変態する合金相を、「特定合金相」ともいう。

0039

上述の負極活物質材料はさらに、材料Bを含有してもよい。
材料B:ラマンスペクトルにおける、1580cm-1のピーク強度に対する1360cm-1のピーク強度の比が0.5超である炭素質粉末材料。

0040

(I)材料Cについて
好ましくは、材料Cは、特定合金相を有する粉末材料である。特定合金相は、M相及び母相の少なくとも一方を主体とする。特定合金相は、充放電の際に金属イオンの吸蔵及び放出を繰り返す。そして、金属イオンの吸蔵及び放出に応じて、特定合金相はM変態、逆変態、補足変形等する。これらの変態挙動は、金属イオンの吸蔵及び放出時に合金相が膨張及び収縮することにより生じる歪みを緩和する。

0041

特定合金相は、上記タイプ1〜タイプ4のいずれのタイプでもよい。好ましくは、特定合金相は、タイプ1である。つまり、特定合金相は好ましくは、金属イオンを吸蔵するときにM変態し、金属イオンを放出するときに逆変態する。

0042

特定合金相の結晶構造は、特に限定されるものではない。合金相がタイプ1であって、逆変態後の特定合金相(つまり母相)の結晶構造がβ1相(DO3構造)である場合、M変態後の特定合金相(つまりM相)の結晶構造は例えば、β1'相(単斜晶のM18R1構造、又は、斜方晶の18R1構造)、γ1'相(単斜晶のM2H構造、又は、斜方晶の2H構造)、β1''相(単斜晶のM18R2構造、又は、斜方晶の18R2構造)、α1'相(単斜晶のM6R構造、又は、斜方晶の6R構造)等である。

0043

特定合金相の母相の結晶構造がβ2相(B2構造)である場合、特定合金相のM相の結晶構造は例えば、β2’相(単斜晶のM9R構造、又は、斜方晶の9R構造)、γ2’相(単斜晶のM2H構造、又は、斜方晶の2H構造)、α2’相(単斜晶のM3R構造、又は、斜方晶の3R構造)である。

0044

合金相の母相が面心立方格子である場合、合金相のM相の結晶構造は例えば、面心正方格子体心正方格子である。

0045

上記2H、3R、6R、9R、18R、M2H、M3R、M6R、M9R、M18R等の記号は、Ramsdellの分類による積層構造の結晶構造の表現法として用いられるものである。H及びRの記号は、積層面に垂直な方向の対称性がそれぞれ六方対称及び菱面対称であることを意味する。先頭にMが付記されていない場合、その結晶構造が斜方晶であることを意味する。先頭にMが付記されている場合、その結晶構造が単斜晶であることを意味する。同じ分類記号であっても積層の順番の違いによって区別する場合がある。例えば、2種類のM相であるβ1'相とβ1''相は、積層構造が異なることから、それぞれ18R1、18R2、又は、M18R1、M18R2等と表記して、区別される場合がある。

0046

一般的に、通常の形状記憶効果擬弾性効果におけるM変態及び逆変態には、体積収縮あるいは体積膨張を伴うことが多い。本実施の形態に係る負極活物質材料が電気化学的に金属イオン(例えばリチウムイオン)を放出又は吸蔵する場合、それぞれの変態の方向における体積収縮又は体積膨張の現象整合的に結晶構造が変化する場合が多いと考えられる。

0047

しかし、本実施の形態による負極活物質材料は、特にその制約に限定されない。特定合金相において、金属イオンの吸蔵及び放出に伴ってM変態あるいは逆変態が起こる際、通常の形状記憶効果や擬弾性効果の際に現れる結晶構造以外の結晶構造が生成してもよい。

0048

特定合金相がタイプ3である場合、金属イオンの吸蔵又は放出に伴い特定合金相がすべり変形又は双晶変形する。すべり変形では、格子欠陥として転位が導入されるため、可逆的な変形が困難である。したがって、特定合金相がタイプ3である場合、双晶変形が主体的で起こることが望ましい。

0049

[材料Cの化学組成
上述の特定合金相からなる活物質を含有する材料Cの化学組成は、M変態及び逆変態時の結晶構造が上記結晶構造を含有すれば、特に限定されない。

0050

特定合金相がタイプ1である場合、特定合金相の化学組成は例えば、Cu(銅)とSn(スズ)とを含有する。

0051

特定合金相がタイプ1である場合、好ましくは、金属イオンの放電による逆変態後の特定合金相の結晶構造はDO3構造であり、金属イオンの吸蔵によるM変態後の特定合金相の結晶構造は2H構造である。

0052

好ましくは、材料Cの特定合金相は、Snを含有し、残部はCu及び不純物である。さらに好ましくは、特定合金相は、10〜20at%又は21〜27at%のSnを含有し、残部はCu及び不純物からなり、M変態後に2H構造を含有し、逆変態後にDO3構造を含有する。材料C中のさらに好ましいSn含有量は、13〜16at%、18.5〜20at%、又は、21〜27at%である。

0053

特定合金相の化学組成は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Si、B及びCからなる群から選択される1種以上と、Snとを含有し、残部はCu及び不純物であってもよい。

0054

好ましくは、この場合の特定合金相の化学組成は、Sn:10〜35at%と、Ti:9.0at%以下、V:49.0at%以下、Cr:49.0at%以下、Mn:9.0at%以下、Fe:49.0at%以下、Co:49.0at%以下、Ni:9.0at%以下、Zn:29.0at%以下、Al:49.0at%以下、Si:49.0at%以下、B:5.0at%以下、及び、C:5.0at%以下からなる群から選択される1種以上とを含有し、残部はCu及び不純物からなる。上記Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Si、B及びCは任意元素である。

0055

Ti含有量の好ましい上限は、上記のとおり9.0at%である。Ti含有量のさらに好ましい上限は6.0at%であり、さらに好ましくは、5.0at%である。Ti含有量の好ましい下限は、0.1at%であり、さらに好ましくは、0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。

0056

含有量の好ましい上限は、上記のとおり、49.0at%である。V含有量のさらに好ましい上限は30.0at%であり、さらに好ましくは15.0at%であり、さらに好ましくは10.0at%である。V含有量の好ましい下限は、0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは、1.0at%である。

0057

Cr含有量の好ましい上限は、上記のとおり49.0at%である。Cr含有量のさらに好ましい上限は30.0at%であり、さらに好ましくは15.0at%であり、さらに好ましくは10.0at%である。Cr含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。

0058

Mn含有量の好ましい上限は、上記のとおり9.0at%である。Mn含有量のさらに好ましい上限は6.0at%であり、さらに好ましくは5.0at%である。Mn含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。

0059

Fe含有量の好ましい上限は、上記のとおり49.0at%である。Fe含有量のさらに好ましい上限は30.0at%であり、さらに好ましくは15.0at%であり、さらに好ましくは10.0at%である。Fe含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。

0060

Co含有量の好ましい上限は、上記のとおり49.0at%である。Co含有量のさらに好ましい上限は30.0at%であり、さらに好ましくは15.0at%であり、さらに好ましくは10.0at%である。Co含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。

0061

Ni含有量の好ましい上限は、上記のとおり9.0at%である。Ni含有量のさらに好ましい上限は5.0at%であり、さらに好ましくは2.0at%である。Ni含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。

0062

Zn含有量の好ましい上限は、上記のとおり29.0at%である。Zn含有量のさらに好ましい上限は27.0at%であり、さらに好ましくは25.0at%である。Zn含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。

0063

Al含有量の好ましい上限は、上記のとおり49.0at%である。Al含有量のさらに好ましい上限は30.0at%であり、さらに好ましくは15.0at%であり、さらに好ましくは10.0at%である。Al含有量の好ましい下限は0.1%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。

0064

Si含有量の好ましい上限は、上記のとおり49.0at%である。Si含有量のさらに好ましい上限は30.0at%であり、さらに好ましくは15.0at%であり、さらに好ましくは10.0at%である。Si含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。

0065

B含有量の好ましい上限は5.0at%である。B含有量の好ましい下限は0.01at%であり、さらに好ましくは0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。

0066

C含有量の好ましい上限は5.0at%である。C含有量の好ましい下限は0.01at%であり、さらに好ましくは0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。

0067

好ましくは、材料Cはさらに、サイト欠損を含有するF−Cell構造のδ相、サイト欠損を含有する2H構造のε相、サイト欠損を含有する単斜晶のη’相、及び、サイト欠損を含有するDO3構造を有する相からなる群から選択される1種以上を含有する。以下、サイト欠損を含有するこれらのδ相、ε相、η’相、及びDO3構造を有する相を、「サイト欠損相」ともいう。ここで、「サイト欠損」とは、結晶構造中の特定の原子サイトにおいて、占有率が1未満の状態であることを意味する。

0068

これらのサイト欠損相は、結晶構造中に複数のサイト欠損を含む。これらのサイト欠損は、金属イオン(Liイオン等)の貯蔵サイト、又は、拡散サイトとして機能する。そのため、材料Cが、M変態後に2H構造となり、逆変態後にDO3構造となる合金相と、上記サイト欠損相の少なくとも1相とを含有すれば、負極活物質材料の放電容量及びサイクル特性がさらに向上する。

0069

材料Cの化学組成はさらに、放電容量を増大させることを目的として、任意元素として、第2族元素及び/又は希土類元素REM)を含有してもよい。第2族元素は例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)等である。REMは例えば、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)等である。

0070

材料Cは、上記特定合金相からなるものであってもよいし、上記特定合金相と、金属イオン活性な別の活物質相を含有してもよい。別の活物質相は例えば、スズ(Sn)相、シリコン(Si)相、アルミニウム(Al)相、Co−Sn系合金相、Cu6Sn5化合物相(η’相又はη相)等である。

0071

[特定合金相の体積膨張率及び体積収縮率について]
上記特定合金相が金属イオンの吸蔵及び放出に伴ってM変態又は逆変態する場合、特定合金相の単位胞の好ましい体積膨張収縮率は20%以下である。この場合、金属イオンの吸蔵及び放出に伴う体積変化による歪を十分に緩和することができる。特定合金相の単位胞のさらに好ましい体積膨張収縮率は10%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。

0072

特定合金相の体積膨張収縮率は、充放電中のその場X線回折により、測定することができる。具体的には、水分が露点−80℃以下に管理された純アルゴンガス雰囲気中のグローブボックス内で、X線を透過するベリリウム製の窓を備えた専用の充放電セルに、負極活物質材料の電極板セパレータ対極リチウム及び電解液実装して密封する。そして、この充放電セルをX線回折装置に装着する。装着後、充放電過程における初回充電状態と初回の放電状態における特定合金相のX線回折プロファイルを得る。このX線回折プロファイルから特定合金相の格子定数を求める。特定合金相の結晶格子対応関係を考慮の上、この格子定数から体積変化率を算出することができる。

0073

充放電サイクル過程で、半値幅などによりX線回折プロファイルの形状が変化する場合等は、必要に応じて5〜20回程度の充放電を繰り返してから解析を行う。そして、信頼性の高い複数のX線回折プロファイルからその体積変化率の平均値を求める。

0074

[負極活物質材料が含有する合金相の結晶構造の解析方法
(1)負極活物質材料中の材料Cが含有する相(合金相を含む)の結晶構造は、X線回折装置を用いて得られたX線回折プロファイルに基づいて、リートベルト法により解析可能である。具体的には、次の方法により、結晶構造を解析する。

0075

負極に使用される前の負極活物質材料については、材料Cに対してX線回折測定を実施して、X線回折プロファイルの実測データを得る。得られたX線回折プロファイル(実測データ)に基づいて、リートベルト法により、材料C中の相の構成を解析する。リードベルト法による解析には、汎用解析ソフトである「RIETAN2000」(プログラム名)及び「RIETAN−FP」(プログラム名)のいずれかを使用する。

0076

(2)電池内の充電前の負極内の負極活物質材料の結晶構造についても、(1)と同じ方法により特定する。具体的には、充電前の状態で、電池をアルゴン雰囲気中のグローブボックス内で分解し、電池から負極を取り出す。取り出された負極をマイラ箔に包む。その後、マイラ箔の周囲を熱圧着機で密封する。マイラ箔で密封された負極をグローブボックス外に取り出す。

0077

続いて、負極を無反射試料板シリコン単結晶の特定結晶面が測定面に平行になるように切り出した板)にヘアスプレーで貼り付けて測定試料を作製する。測定試料をX線回折装置に測定試料をセットして、測定試料のX線回折測定を行い、X線回折プロファイルを得る。得られたX線回折プロファイルに基づいて、リートベルト法により負極内の負極活物質材料の結晶構造を特定する。

0078

(3)1〜複数回の充電後及び1〜複数回の放電後の負極内の負極活物質材料の結晶構造についても、(2)と同じ方法により特定する。

0079

具体的には、電池を充放電試験装置において満充電させる。満充電された電池をグローブボックス内で分解して、(2)と同様の方法で測定試料を作製する。X線回折装置に測定試料をセットして、X線回折測定を行う。

0080

また、電池を完全放電させ、完全放電された電池をグローブボックス内で分解して(2)と同様の方法で測定試料を作製し、X線回折測定を行う。

0081

<材料Cの製造方法>
上記特定合金相を含有する材料Cの製造方法について説明する。

0082

特定合金相を含む材料Cの原料溶湯を製造する。例えば、上述の化学組成を有する溶湯を製造する。溶湯は、アーク溶解又は抵抗加熱溶解等の通常の溶解方法素材を溶解して製造される。次に、溶湯を用いて造塊法によりインゴットバル合金)を製造する。

0083

または、好ましくは、溶湯を急冷凝固させることにより、薄鋳片または粒子を製造する。この方法を急冷凝固方法という。急冷凝固方法は例えば、ストリップキャスティング法メルトスピン法ガスアトマイズ法、溶湯紡糸法、水アトマイズ法、油アトマイズ法等である。

0084

溶製によって得られたバルク合金(インゴット)を(1)切断したり、(2)ハンマーミル等で粗く破砕したり、(3)ボールミルや、アトライタディスクミルジェットミルピンミル等で機械的に微粉砕したりして、必要な粒度に調整する。バルク合金が延性を有し、通常の粉砕が困難な場合、ダイヤモンド砥粒を埋め込んだグラインダーディスク等により、バルク合金を切削粉砕してもよい。これらの粉砕工程において、応力誘起によるM相が生成する場合、合金設計や、熱処理粉砕条件などを適宜組み合わせて、その生成比率を必要に応じて調整する。アトマイズ法による粉末が溶製のまま或いは熱処理を施した状態で使用することができる場合には、特に粉砕工程を必要としない場合もある。また、ストリップキャスティング法により溶製材を得る場合においてその延性により破砕が困難である場合には、シャーリングなどの機械的な裁断によってその溶製材を所定のサイズに調整する。また、かかる場合、必要な段階においてその溶製材を熱処理等してM相や母相の比率等を調整してもよい。

0085

熱処理により特定合金相の構成比率などを調整する場合には、材料を必要に応じて不活性雰囲気中で所定の温度及び時間で保持した後に急冷してもよい。この際、材料のサイズに応じて水、塩水、油、液体窒素等の焼き入れ媒体を選択し、その焼き入れ媒体を所定の温度に設定することによって、冷却速度を調整してもよい。また、水等の媒体への焼き入れ後、直ちに液体窒素サブゼロ処理することにより、特定合金相の構成比率を調製したり、マルテンサイト変態温度を調整してもよい。

0086

(II)材料A及び材料Bについて
ラマンスペクトルの1360cm−1のピークは低結晶性炭素質材料のピークであり、1580cm−1のピークは黒鉛系炭素質材料のピークである。従って、炭素質材料の1360cm−1/1580cm−1で表わされるピーク強度比(以下、「ピーク強度比」という)が大きいほど、その材料は黒鉛化度が低い(低結晶性である)ことを意味する。逆にこのピーク強度比が小さいほど、黒鉛化度が高いことを意味する。

0087

ピーク強度比が0.5以下と小さい材料Aは、黒鉛化度の高い炭素質材料(即ち、黒鉛系炭素質材料)である。一方、ピーク強度比が0.5超と大きい材料Bは、低結晶性の炭素質材料である。

0088

材料Cは、高い放電容量を有する材料である。本発明の負極活物質材料は、この材料Cに、少なくとも材料Aを含有し、さらに好ましくは材料Bを含有する。これにより、負極活物質材料の容量維持率が向上し、すなわちサイクル特性が向上する。この混合により、さらに不可逆容量が小さくなる効果もある。

0089

黒鉛系炭素質材料である材料Aは、材料Cと混合することにより、負極活物質材料の容量を増大させるとともに容量維持率を向上させる。

0090

具体的には、黒鉛系炭素質材料である材料Aが、材料Cと混合すれば、負極合剤として負極板に塗布した後にプレスする際に、黒鉛性炭素質材料である材料Aが容易に変形し、硬質の材料Cの表面との接触性が良好となる。そのため、負極活物質材料の電子伝導性が高まる。そのため、放電容量が増大する。さらに、充放電サイクルを繰り返す過程において、接触面領域に電解液由来絶縁性皮膜が形成しにくい。そのため、容量維持率が向上する。以上のとおり、材料Aは、混合粉末である負極活物質材料の放電容量を増大し、さらに、容量維持率を向上する。これらの効果を十分得るため、材料Aのピーク強度比は0.5以下である。材料Aのピーク強度比は好ましくは0.4以下である。

0091

材料Aは黒鉛系炭素質材料の粉末であり、必要なラマンスペクトルのピーク強度比を示す炭素質材料の粉末であれば、特に製造方法は制限されない。材料Aの製造方法としては、例えば、球状化天然黒鉛ピッチ粉末を混合し、窒素気流中で焼成する。ラマン値の測定に際しては、事前黒鉛粒子表面のピッチコート層アルゴンスパッタによって除去し、バルクの性質を検出する。天然黒鉛の選択により、黒鉛化度や平均粒径の異なる炭素質材料を調製することができる。

0092

材料Aの粉末の比表面積は1.5m2/g以下であることが好ましい。比表面積が1.5m2/g以下であれば、1サイクル目に負極表面に付着する表面被膜の量が抑えられ、この表面被膜の形成による不可逆容量が増大するのを抑えることができる。比表面積を1.5m2/g以下に調整するには、粉砕を黒鉛化前に行えばよい。粉砕後に黒鉛化を行うと、粉砕で生成した亀裂や表面欠陥が黒鉛化の熱処理時に閉塞されるため、比表面積の小さい粉末になる。

0093

材料Bは低結晶性炭素質材料の粉末である。材料Bは、材料A及び材料Cと混合することにより、活物質材料活物質合剤)中の電子伝導性を高め、容量維持率を向上する。具体的には、充放電サイクルを繰り返す過程において、材料Cの活物質粒子同士の接触面領域に導電性の良好な材料Bの微細な粒子が存在する。このため、電子伝導性を維持し、容量維持率を向上する。これらの効果を十分得るため、材料Bのピーク強度比は0.5超とする。材料Bのピーク強度比は、好ましくは0.6以上である。

0094

材料Bとして使用するのに適した炭素質材料の粉末は、カーボンブラックであり、なかでもアセチレンブラックケッチェンブラックといった導電性の高いカーボンブラックが好ましい。

0095

材料A及び材料Bは多孔質である。そのため、これらの粒子内部の空隙に電解液が浸透する。これにより、材料A及び材料Bは、金属イオンの伝導を担う機能をも有する。そのため、材料A及び材料Bは、合金活物質である材料Cの負極としての電気容量ポテンシャルを十分に引き出して利用でき、放電容量を増大させる。

0096

さらに、材料Cの活物質粒子の表面は材料Aや材料Bと界面を形成する。この場合、電解液と直接接する界面の比率が低減されて、電解質由来分解性皮膜が形成されにくい。そのため、不可逆容量が小さくなる。

0097

材料A、材料Bのいずれも、粒度は特に限定されない。しかし、特に材料Aは比表面積が小さいことが好ましい。具体的には、材料Aの好ましい平均粒度D50は5μm以上であり、さらに好ましくは10μm以上である。一方、材料Bは、特にこれがカーボンブラックである場合には一般に非常に微細な粉末であるが、それで差し支えない。後述するように材料Cの周辺に材料A及び材料Bを存在させるには、材料A及び材料Bが微粉末である方が材料Cの周辺により均一に存在させることができ好都合である。

0098

(III)材料A,B,Cの混合割合
本発明に係る負極活物質材料(混合材料)は、材料Cと、材料A及び材料Bからなる群から選択される1種以上と、を含有する。各材料の好ましい混合割合は次の通りである。

0099

負極活物質が材料Bを含有する場合、材料B/(材料A+材料B+材料C)の質量比は、好ましくは、0.01〜0.2である。F1=材料B/(材料A+材料B+材料C)と定義する。F1中の「材料A」、「材料B」及び「材料C」には、対応する材料の質量が代入される。

0100

F1が0.01以上であれば、材料Cの膨張をより充分に吸収することができ、より良好なサイクル特性が得られる。また、F1が0.2以下であれば、不可逆容量の増大を抑えることができる。F1のさらに好ましい下限は0.05である。F1のさらに好ましい上限は0.08である。

0101

負極活物質材料が材料A及び材料Cを含有する場合、材料A/材料Cの質量比は、好ましくは、0.01〜7である。F2=材料A/材料Cと定義する。F2中の「材料A」及び「材料C」には、対応する材料の質量が代入される。

0102

F2が0.01以上であれば、不可逆容量の増大を抑えることができる。さらに、材料Cの割合がより適切であるため、サイクル特性の低下も抑えることができる。F2が7以下であれば、より大きな負極容量を確保できる。F2のさらに好ましい下限は0.15である。F2のさらに好ましい上限は0.25である。

0103

<負極活物質材料の製造方法>
上述の材料A(及び好ましくはさらに材料B)と、上述の製造方法により得られた材料Cの粉末とを混合することにより、負極活物質材料を製造する。混合方法は特に限定されない。

0104

<負極の製造方法>
本発明の実施の形態に係る負極活物質材料を用いた負極は、当業者に周知の方法で製造することができる。

0105

例えば、本発明の実施の形態による負極活物質材料の粉末に対して、ポリフッ化ビニリデンPVDF)、ポリメチルメタクリレートPMMA)、ポリテトラフルオロエチレンPTFE)、スチレンブタジエンラバーSBR)等のバインダを混合し、さらに負極に十分な導電性を付与するために天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック等の炭素材料粉末を混合する。これにN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミドDMF)、水などの溶媒を加えてバインダを溶解した後、必要であればホモジナイザガラスビーズを用いて十分に攪拌し、スラリ状にする。このスラリを圧延銅箔電析銅箔などの活物質支持体に塗布して乾燥する。その後、その乾燥物にプレスを施す。以上の工程により、負極板を製造する。

0106

混合するバインダは、負極の機械的強度電池特性の観点から5〜10質量%程度であることが好ましい。支持体は、銅箔に限定されない。支持体は例えば、ステンレスニッケル等の他の金属の薄箔や、ネット状のシートパンチングプレート金属素線ワイヤーで編み込んだメッシュなどでもよい。

0107

負極活物質材料の粉末の粒径は、電極厚み電極密度、すなわち電極容量に影響を及ぼす。電極の厚みは薄ければ薄い程よい。電極の厚みが薄ければ、電池中に含まれる負極活物質材料の総面積を大きくすることができるからである。そのため、負極活物質材料の粉末の平均粒径は100μm以下であることが好ましい。負極活物質材料の粉末の平均粒径が小さい程、その粉末の反応面積が増大し、レート特性に優れる。しかしながら、負極活物質材料の粉末の平均粒径が小さすぎれば、酸化などで粉末表面の性状が変化してリチウムイオンがその粉末に進入しにくくなる。この場合、経時的にはレート特性や充放電効率が低下する場合がある。したがって、負極活物質材料の粉末の好ましい平均粒径は0.1〜100μmであり、さらに好ましくは、1〜50μmである。

0108

<電池の製造方法>
本実施形態による非水電解質二次電池は、上述の負極と、正極と、セパレータと、電解液又は電解質とを備える。電池の形状は、円筒型角形であってもよいし、コイン型シート型等でもよい。本実施形態の電池は、ポリマー電池等の固体電解質を利用した電池でもよい。

0109

本実施形態の電池の正極は、好ましくは、金属イオンを含有する遷移金属化合物を活物質として含有する。さらに好ましくは、正極は、リチウム(Li)含有遷移金属化合物を活物質として含有する。Li含有遷移金属化合物は例えば、LiM1−xM’xO2、又は、LiM2yM’O4である。ここで、式中、0≦x、y≦1、M及びM’はそれぞれ、バリウム(Ba)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、スズ(Sn)、スカンジウム(Sc)及びイットリウム(Y)の少なくとも1種である。

0110

ただし、本実施形態の電池は、遷移金属カルコゲン化物バナジウム酸化物及びそのリチウム(Li)化合物ニオブ酸化物及びそのリチウム化合物有機導電性物質を用いた共役系ポリマー;シェプレ相化合物活性炭活性炭素繊維等、といった他の正極材料を用いてもよい。

0111

本実施形態の電池の電解液は、一般に、支持電解質としてのリチウム塩有機溶媒に溶解させた非水系電解液である。リチウム塩は例えば、LiClO4,LiBF4,LiPF6,LiAsF6,LiB(C6H5),LiCF3SO3,LiCH3SO3,Li(CF3SO2)2N,LiC4F9SO3,Li(CF2SO2)2,LiCl,LiBr,LiI等である。これらは、単独で用いられてもよく組み合わせて用いられてもよい。有機溶媒は、プロピレンカーボネートエチレンカーボネートエチルメチルカーボネートジメチルカーボネートジエチルカーボネートなどの炭酸エステル類が好ましい。但し、カルボン酸エステルエーテルをはじめとする他の各種の有機溶媒も使用可能である。これらの有機溶媒は、単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。

0112

セパレータは、正極及び負極の間に設置される。セパレータは絶縁体としての役割を果たす。セパレータはさらに、電解質の保持にも大きく寄与する。本実施形態の電池は周知のセパレータを備えればよい。セパレータは例えば、ポリオレフィン系材質であるポリプロピレンポリエチレン、又はその両者の混合布、もしくは、ガラスフィルターなどの多孔体である。上述の負極と、正極と、セパレータと、電解質が溶解している電解液とを容器収納して、電池を製造する。

0113

以下、実施例を用いて上述の本実施形態の負極活物質材料、負極及び電池をより詳細に説明する。なお、本実施形態の負極活物質材料、負極及び電池は、以下に示す実施例に限定されない。

0114

次の方法により、表1に示す本発明例1〜本発明例10及び比較例1〜比較例5の粉状の負極活物質材料、負極、コイン電池を製造した。そして、負極活物質材料の充放電による結晶構造の変化を確認した。さらに、電池の放電容量(質量当たりの放電容量)、及び、サイクル特性を調査した。

0115

0116

[本発明例1]
[材料Cの製造]
負極活物質材料の最終的な化学組成が、表1中の「材料Cの合金相化学組成」欄に記載の化学組成となるように、複数の素材(元素単体試薬)の混合物アルゴンガス雰囲気中の窒化ホウ素製ノズル中で高周波溶解させ、溶湯を製造した。

0117

回転する銅ロール上にその溶湯を噴射して、急冷凝固箔帯を製造した。箔帯の厚みは20〜40μmであった。この箔帯を擂潰機自動乳鉢)で粉砕して45μm以下の合金粉末にした。この合金粉末を材料Cとした。この材料Cの化学組成は、表1中の「材料Cの合金相化学組成」欄に記載のとおりであった。たとえば、表1中の本発明例1の「Cu−23at%Sn−5at%Si」は、本発明例1の材料Cの化学組成が、23at%のSnと、5at%のSiとを含有し、残部がCu及び不純物であることを意味する。

0118

[材料Aの製造]
材料Aは、球状化天然黒鉛にピッチ粉末を2質量%混合し、窒素気流中で1000℃で焼成して製造した。得られた材料Aの平均粒径(D50)は20μmであった。この材料Aのピーク強度比は、表1に記載のとおりであった。ラマン値の測定に際しては、事前に黒鉛粒子表面のピッチコート層をアルゴンスパッタによって除去し、バルクの性質を検出した。

0119

[材料B]
材料Bとして、市販のアセチレンブラックを用いた。この材料Bの平均粒径(D50)は35nmであった。表1中の「混合比」欄の「B/(A+B+C)」欄はF1値が記載されており、「A/C」欄にはF2値が記載されている。

0120

[負極の製造]
上述の材料A、材料B及び材料Cを、表1に記載の割合で混合した混合物(負極活物質材料)と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)(2倍希釈液)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースCMC)とを、質量比85:10:5(配合量は1g:0.134g:0.067g)で混合した。そして、混練機を用いて、スラリ濃度が27.2%となるように混合物に蒸留水を加えて負極合剤スラリを製造した。スチレンブタジエンゴムは水で2倍に希釈されたものを使用しているため、量上、0.134gのスチレンブタジエンゴムが配合された。

0121

製造された負極合剤スラリを、アプリケータ(150μm)を用いて金属箔上に塗布した。スラリが塗布された金属箔を、100℃で20分間乾燥させた。乾燥後の金属箔は、表面に負極活物質材料からなる塗膜を有した。塗膜を有する金属箔に対して打ち抜き加工を実施して、直径13mmの円板状の金属箔を製造した。打ち抜き加工後の金属箔を、プレス圧500kgf/cm2で押圧して、板状の負極を製造した。結晶構造の特定以外の負極活物質材料の評価・測定に用いる負極では、金属箔は銅箔とした。なお、結晶構造の特定に用いる負極では、金属箔はニッケル箔とした。

0122

[電池の製造]
製造された負極と、電解液としてEC−DMC−EMCVC−FECと、セパレータとしてポリオレフィン製セパレータ(φ17mm)と、正極材として板状の金属Li(φ19×1mmt)とを準備した。準備された負極、電解液、セパレータ、正極を用いて、2016型のコイン電池を製造した。コイン電池の組み立てをアルゴン雰囲気中のグローブボックス内で行った。

0123

[結晶構造の特定]
負極に使用する前の材料Cと、初回充電前の負極中の材料Cと、1〜5回充放電した後の負極中の材料Cの結晶構造を、次の方法により特定した。対象となる負極活物質材料に対してX線回折測定を実施して、実測データを得た。そして、得られた実測データに基づいて、リートベルト法により、対象となる負極活物質材料に含まれる結晶構造を特定した。さらに具体的には、次の方法により結晶構造を特定した。

0124

(1)負極に使用される前の材料Cの結晶構造解析
負極に使用される前の材料Cに対してX線回折測定を実施して、X線回折プロファイルの実測データを得た。

0125

具体的には、リガク製の製品名SmartLab(ロータターゲット最大出力9KW;45kV−200mA)を用いて、材料Cの粉末のX線回折プロファイルを取得した。

0126

得られたX線回折プロファイル(実測データ)に基づいて、リートベルト法により、材料C中の合金相の結晶構造を解析した。

0127

DO3規則構造は、図1に示されるような規則構造である。Cu-Sn系の合金では、図1中、黒丸の原子サイトに主にCuが存在し、白丸の原子サイトに主にSnが存在する。第3元素の添加によって、それぞれのサイトが置換される場合もある。このような結晶構造は、空間群の分類上、International Table(Volume−A)のNo.225(Fm−3m)となることが知られている。この空間群番号の結晶構造の格子定数や原子座標は、表2に示される通りとなる。

0128

0129

そこで、この空間群番号の構造モデルリートベルト解析初期構造モデルとして、リートベルト解析によりこの化学組成のβ1相(DO3構造)の回折プロファイル計算値(以下、計算プロファイルという)を求めた。リートベルト解析にはRIETAN−FP(プログラム名)を用いた。

0130

さらに、γ1’相の結晶構造の計算プロファイルも求めた。γ1’の結晶構造は、Ramsdell記号の表記では2H構造であり、空間群はInternational Table(Volume−A)のNo.59−2(Pmmn)である。No.59−2(Pmmn)の格子定数及び原子座標を表3に示す。

0131

0132

上記表3の空間群番号の結晶構造をリートベルト解析の初期構造モデルとして、RIETAN−FPを用いて、計算プロファイルを求めた。図3中の(d)はDO3構造の計算プロファイルであり、(c)は2H構造の計算プロファイルである。

0133

解析の結果、本発明例1の材料Cには、M相の1種であるγ1’相(2H構造)の母相であるβ1相(DO3構造)が単独で存在した。

0134

(2)負極中の負極活物質材料の結晶構造解析
充電前の負極内の負極活物質材料中の材料Cの結晶構造についても、(1)と同じ方法により特定した。実測のX回折プロファイルは、次の方法で測定した。

0135

充電前の状態で、上述のコイン電池をアルゴン雰囲気中のグローブボックス内で分解し、コイン電池から板状の負極(ニッケル箔を含む)を取り出した。取り出された負極をマイラ箔(デュポン社製)に包んだ。その後、マイラ箔の周囲を熱圧着機で密封した。マイラ箔で密封された負極をグローブボックス外に取り出した。

0136

続いて、負極をリガク製無反射試料板(シリコン単結晶の特定結晶面が測定面に平行になるように切り出した板)にヘアスプレーで貼り付けて測定試料を作製した。

0137

後述の(4)に記載のX線回折装置に測定試料をセットして、後述の(4)に記載の測定条件で、測定試料のX線回折測定を行った。

0138

(3)充電後及び放電後の負極中の負極活物質材料の結晶構造の解析
1〜5回の充電後及び1〜5回の放電後の負極内の負極活物質材料中の材料Cの結晶構造についても、(1)と同じ方法により特定した。実測のX線回折プロファイルは、次の方法で測定した。

0139

上述のコイン電池を充放電試験装置において満充電させた。満充電されたコイン電池をグローブボックス内で分解して、(2)と同様の方法で測定試料を作製した。後述(4)に記載のX線回折装置に測定試料をセットして、後述(4)の測定条件で測定試料のX線回折測定を行った。

0140

また、上述のコイン電池を完全放電させた。完全放電されたコイン電池をグローブボックス内で分解して(3)と同様の方法で測定試料を作製した。後述(4)に記載のX線回折装置にこの測定試料をセットして、後述(4)の測定条件で測定試料のX線回折測定を行った。

0141

コイン電池で充放電を繰り返した後の負極についても、同様の方法によりX線回折測定を行った。

0142

(4)X線回折装置と測定条件
・装置:リガク製 SmartLab
X線管球:Cu−Kα線
X線出力:45kV,200mA
入射モノクロメータ:ヨハンソン素子(Cu−Kα2線及びCu−Kβ線カット
光学系:Bragg−Brentano Geometry
・入射平行スリット:5.0degree
入射スリット:1/2degree
長手制限スリット:10.0mm
受光スリット1:8.0mm
・受光スリット2:13.0mm
受光平行スリット:5.0degree
ゴニオメータ:SmartLabゴニオメータ
X線源ミラー間距離:90.0mm
・X線源−選択スリット間距離:114.0mm
・X線源−試料間距離:300.0mm
試料−受光スリット1間距離:187.0mm
・試料−受光スリット2間距離:300.0mm
・受光スリット1−受光スリット2間距離:113.0mm
・試料−検出器間距離:331.0mm
検出器:D/Tex Ultra
スキャンレンジ:10−120degrees、または、10−90degrees
スキャンステップ:0.02degrees
スキャンモード連続スキャン
スキャン速度:2degrees/min.または、2.5degrees/min.

0143

(5)X線回折測定データの解析結果
(2)及び(3)で得られたX線回折データ図3に示す。図3中の(e)は、(2)で求めた負極板のX線回折プロファイルである。(f)は1回目の充電後の負極活物質材料のX線回折プロファイルであり、(g)は1回目の放電後のX線回折プロファイルである。図3中の(a)は、マイラー箔単独について同様のX線回折を行った、X線回折実測プロファイルである。図3中の(b)は、集電体に用いたNi箔の回折線識別するために計算したNiのX線回折プロファイルである。図3中の(c)は、本実施例の化学組成における2H構造の計算プロファイルであり、図3中の(d)は、本実施例の化学組成におけるDO3構造の計算プロファイルである。
(5−1)
(2)及び(3)で得られたX線回折データから、負極活物質材料と電解液との間で大きな化学反応が進行していないことを確認できた。

0144

(5−2)
充電後の負極活物質材料(図3(f))、及び、放電後の負極活物質材料(図3(g))のX線回折プロファイルから、回折角2θが43.5°近傍(M相(γ1'相)に起因する位置)の位置(以下、M相の最強回折線という)において、回折線が繰り返し可逆的に変化した。すなわち、構造変化示唆された。

0145

(5−3)
そこで、「充電後の負極活物質材料」及び「放電後の負極活物質材料」の結晶構造をリートベルト法を用いて特定した。

0146

例えば、負極活物質材料において、図1及び図2Aに示す母相のDO3構造では、図2Dに示す結晶面Aと、図2Cに示す結晶面Bとが交互に積層する。DO3構造と、M相の一種であるγ1'相との間で相変態が起こる場合、図2A及び図2Bに示すとおり、結晶面Bがせん断応力により規則的にシャフリングを起こして結晶面B'の位置にずれる。この場合、ホスト格子の拡散を伴わずして相変態(M変態)が起こる。M変態後の2H構造では、図2Dに示す結晶面Aと、図2Eに示す結晶面B’とが交互に積層する。

0147

そこで、充電後及び放電後の負極活物質材料のX線回折プロファイルの実測データと、β1相(DO3構造)の計算プロファイル(図3(d):代表的な回折線の2θ角度位置に●(黒丸)印を表記)と、γ1'相(2H構造)の計算プロファイル(図3(c) :代表的な回折線の2θ角度位置に■(黒四角)印を表記)とを対比して、本実施例の負極中の負極活物質材料の結晶構造がM変態を伴うものであるか、そうでないもの(つまり、充放電時にホスト格子の拡散を伴うもの)かを判断した。

0148

図3(f)を参照して、X線回折プロファイルでは、初回の充電により、43.5°近傍のM相の最強回折線の強度が増加し、続く放電により、その強度が低下した。この回折線はRIETAN−FPの計算プロファイルから、次に説明するとおり、M変態によりM相(γ1')が形成されたことに由来すると判断できた。

0149

具体的には、(f)に示すとおり、2H構造では、1回目の充電後のX線回折プロファイルには、43.5°のM相の最強回折線をはじめとする図3(c)の2H構造に対応する2θ角度位置(■(黒四角)印)のいくつかのピーク強度が増加した。一方、DO3構造に対応する●(黒丸)印のピーク強度のいくつかは減少した。特に、43.5°近傍の強度ピークは、2H以外の他の結晶構造のX線プロファイル(シミュレート結果)に現れるものではなかった。活物質以外に測定時に現れる構成部材のX線回折線については、図3中の(a)および(b)に、それぞれ、マイラー箔の実測回折プロファイルと、集電体のニッケルの計算プロファイルを示し、主要な回折線の2θ角度位置には、それぞれ◇(白菱形)印と△(白三角)印を示した。図3(f)及び(g)の実測プロファイルには、これらの部材に由来する回折線が現れるため、対応する位置に◇(白菱形)印と△(白三角)印を示した。なお、本発明例の負極活物質材料は、黒鉛との複合材であるため、黒鉛に由来する回折線が現れており、図3中の(e)(f)(g)には、その旨を記載している。

0150

上より、本実施例の負極は、充電によりM変態してM相(2H構造)となり、放電により母相(DO3構造)となる合金相を含有した。すなわち、本実施例の負極は、金属イオンであるリチウムイオンを吸蔵するときにM変態し、リチウムイオンを放出するときに逆変態する合金相を含有した。本実施例の負極では、充電時にM変態、放電時に逆変態が繰り返されていた。

0151

充放電サイクルと共に回折線の半値幅が減少した。このことから、リチウムイオンの吸蔵及び放出によって、負極活物質材料の歪が緩和されたと考えられる。

0152

[コイン電池の充放電性能評価]
次に、本発明例1の電池の放電容量、サイクル特性及び不可逆容量を評価した。

0153

対極に対して電位差0.005Vになるまで0.1mAの電流値(0.075mA/cm2の電流値)又は、1.0mAの電流値(0.75mA/cm2の電流値)でコイン電池に対して定電流ドープ(電極へのリチウムイオンの挿入、リチウムイオン二次電池の充電に相当)を行った。その後、0.005Vを保持したまま、7.5μA/cm2になるまで定電圧で対極に対してドープを続け、ドープ容量を測定した。

0154

次に、0.1mAの電流値(0.075mA/cm2の電流値)又は、1.0mAの電流値(0.75mA/cm2の電流値)で、電位差1.2Vになるまで脱ドープ(電極からのリチウムイオンの離脱、リチウムイオン二次電池の放電に相当)を行い、脱ドープ容量を測定した。

0155

ドープ容量、脱ドープ容量は、この電極をリチウムイオン二次電池の負極として用いた時の充電容量、放電容量に相当する。したがって、測定されたドープ容量を充電容量と定義し、測定された脱ドープ容量を放電容量と定義した。

0156

「(1サイクル目の充電容量−1サイクル目の放電容量)/1サイクル目の放電容量」を、初回クーロン効率(%)として算出した。

0157

上述と同一条件で、充放電を20回繰り返した。そして、「20サイクル目の脱ドープ時の放電容量」を「1サイクル目の脱ドープ時の放電容量」で除して100を乗じたものを、容量維持率(%)とした。

0158

本発明例1のコイン電池において、初回放電容量、20サイクル目の放電容量、容量維持率、および初回クーロン効率は、表1に記載のとおりであった。

0159

[本発明例2〜6,9及び10,比較例1〜2及び5について]
本発明例2〜6,9及び10と、比較例1及び5とでは、材料A、材料B及び材料Cの混合比を表1に示すとおりに変更した以外は、本発明例1と同様にして、負極活物質材料、負極及びコイン電池を製造した。

0160

比較例2では、本発明例1で用いた材料Cのみを負極活物質として用いた以外は、本発明例1と同様にして、負極活物質材料、負極及びコイン電池を製造した。

0161

本発明例1と同様にして、結晶構造の特定、及び、コイン電池の各種充放電性能評価をおこなった。結晶構造の特定の結果は、本発明例1と同様であった。すなわち、本発明例2〜6,9及び10、比較例1〜2及び5の材料Cの合金相が、リチウムイオンを吸蔵するときにM変態し、リチウムイオンを放出するときに逆変態する結晶構造を有することが確認された。コイン電池の各種充放電性能評価の結果は、表1の通りであった。

0162

[本発明例7,比較例3について]
本発明例7では、材料Cの最終的な化学組成が、表1に記載の組成となるようにした以外は、本発明例1と同様にして、負極活物質材料、負極及びコイン電池を製造した。

0163

比較例3では、本発明例7で用いた材料Cのみを負極活物質として用いた以外は、本発明例1と同様にして、負極活物質材料、負極及びコイン電池を製造した。

0164

本発明例1と同様にして、結晶構造の特定、及び、コイン電池の各種充放電性能評価をおこなった。結晶構造の特定の結果は、本発明例1と同様であった。すなわち、本発明例7及び比較例3の材料Cの合金相が、リチウムイオンを吸蔵するときにM変態し、リチウムイオンを放出するときに逆変態する結晶構造を有することが確認された。コイン電池の各種充放電性能評価の結果は、表1の通りであった。

0165

[本発明例8,比較例4について]
本発明例8では、材料Cの最終的な化学組成が、表1に記載の組成となるようにした以外は、本発明例1と同様にして、負極活物質材料、負極及びコイン電池を製造した。

0166

比較例4では、本発明例8で用いた材料Cのみを負極活物質として用いた以外は、本発明例1と同様にして、負極活物質材料、負極及びコイン電池を製造した。

0167

本発明例1と同様にして、結晶構造の特定、及び、コイン電池の各種充放電性能評価をおこなった。結晶構造の特定によると、充放電に伴い、合金相は次のように変化した。初回充電前はM相(2H構造)、初回充電後はM相(2H構造)、初回放電後は母相(DO3構造)となり、以降は、充電によりM変態してM相(2H構造)となり、放電により母相(DO3構造)となった。すなわち、本発明例8及び比較例4の負極は、金属イオンであるリチウムイオンを吸蔵するときにM変態し、リチウムイオンを放出するときに逆変態する合金相を有することが確認された。コイン電池の各種充放電性能評価の結果は、表1の通りであった。

0168

表1を参照して、本発明例1〜10では、少なくとも材料Aと材料Cとを含有し、さらに、混合比も適切であった。そのため、初回放電容量及び20サイクル時の放電容量が95mAh/g以上であり、容量維持率が80%以上であった。さらに、初回クーロン効率は50%以上であった。

0169

なお、本発明例1〜3では、F2(=A/C)が0.01〜7であり、かつ、F1(=B/(A+B+C))が0.01〜0.2であった。一方、本発明例9及び10では、F1が0.01〜0.2の範囲外であった。そのため、放電容量(初回及び20サイクル後)及び初回クーロン効率は、本発明例1〜3の方が本発明例9及び10よりも高かった。

0170

一方、比較例1では材料A/材料Cの質量比が7を超えた。そのため、初回及び20サイクル時放電容量が95mAh/g未満であった。

0171

比較例2〜4の負極活物質材料は、材料Cを含有するものの、材料A及び材料Bを含有しなかった。そのため、初回及び20サイクル時放電容量、容量維持率、及び、初回クーロン効率がいずれも低かった。

0172

比較例5の負極活物質材料ではF1(材料Aの質量/材料Cの質量)が0.01%未満であった。そのため、、初回及び20サイクル時放電容量及び容量維持率が低かった。

実施例

0173

以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

新着 最近 公開された関連が強い 技術

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する挑戦したい社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ